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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】保存茶製品
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
A23F3/16
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021547496
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2020051530
(87)【国際公開番号】W WO2020164873
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】19157077.9
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521193094
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・マイコック
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス-アン・シモンズ
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】重松 洋子 ほか,紅茶香気成分の比較分析,日本食品工業学会誌,1994年,Vol.41, No.11,pp.768-777
【文献】笹倉 栄恵,家政学雑誌,1970年,21(3),pp.160-165
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00- 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防腐組成物を含む、レディ・トゥ・ドリンク飲料又は飲料濃縮物である茶製品であって、前記防腐組成物が、
(A) ヘキサナール、
(B) E-2-ヘキセナール、
(C) E-2-ヘキセノール、
(D) E-リナロールオキシド、
(E) メタノール、及び
(F) サリチル酸メチルを含み、
前記茶製品中の(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)の総濃度が、10ppmから10000ppmであり、
前記茶製品中のリナロール濃度の(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)の総濃度に対する比が1:14から1:800であるような濃度で、茶製品がリナロールを含む、茶製品。
【請求項2】
前記茶製品中の(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)の総濃度が35ppmから5000ppmである、請求項1に記載の茶製品。
【請求項3】
前記茶製品中のリナロールの(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)の総濃度に対する比が1:18から1:500である、請求項1又は2に記載の茶製品。
【請求項4】
0.05質量%から3質量%の茶固形物を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の茶製品。
【請求項5】
2から6のpHを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の茶製品。
【請求項6】
200ppm未満のソルベートを含む、請求項1から5のいずれ一項に記載の茶製品。
【請求項7】
100ppm未満のベンゾエートを含む、請求項1から6のいずれ一項に記載の茶製品。
【請求項8】
天然若しくは合成のフルーツフレーバー及び/又は天然若しくは合成のハーブフレーバーを追加的に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の茶製品。
【請求項9】
1種又は複数の甘味料を含み、前記甘味料が栄養性甘味料、非栄養性甘味料、又はそれらの組み合わせである、請求項1から8のいずれ一項に記載の茶製品。
【請求項10】
25質量%から75質量%の水を含む飲料濃縮物である、請求項1から9のいずれか一項に記載の茶製品。
【請求項11】
バッグインボックス容器に包装されている、請求項10に記載の茶製品。
【請求項12】
保存茶製品を調製するための方法であって、レディ・トゥ・ドリンク飲料又は飲料濃縮物である茶製品に防腐組成物を添加する工程を含み、前記防腐組成物が、
(A) ヘキサナール、
(B) E-2-ヘキセナール、
(C) E-2-ヘキセノール、
(D) E-リナロールオキシド、
(E) メタノール、及び
(F) サリチル酸メチルを含み、
前記茶製品中の(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)の総濃度が10ppmから10000ppmであり、
前記茶製品中のリナロール濃度の(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)の総濃度に対する比が1:14から1:800であるような濃度で、茶製品がリナロールを含む、方法。
【請求項13】
前記保存茶製品を包装する追加の工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記保存茶製品を低温殺菌又は滅菌する追加の工程を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防腐組成物を含む茶製品、特にレディ・トゥ・ドリンク飲料又は飲料濃縮物のいずれかであるこのような製品に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の微生物によって引き起こされる腐敗は、食品廃棄の一因である。腐敗は、食用としての適性が低減し、最終的にはその食品が人にとって食べられないものとなるよう食品が劣化する過程である。
【0003】
食品マトリックス上又は食品マトリックス内で増殖するカビ及び/又は酵母は、食品腐敗の原因となる可能性がある。バクテリアもまた食品腐敗の原因となり得る。バクテリアが食品を分解する過程において通常は酸及び代謝物が産生され、たとえバクテリア自体は有害でなくとも、その老廃物は味覚にとって不快な場合があり、或いは健康に有害な場合すらある。
【0004】
消費者は、インスタント食品が新鮮なままであり長期の保存期間を有することをますます望んでいる。食料品(例えば飲料、スプレッド、ドレッシング、インスタント食品等)への防腐剤の添加は、食品産業において一般的に行われている。防腐剤の市場は、消費者の要求に応じて拡大している。
【0005】
多くの国には、一部の防腐剤を含む特定の食品添加物の、食品や飲料中での使用を禁ずる規制がある。そのような規制は広範に多様であり得るが、食品に対しては、化学防腐剤、特に合成された化学防腐剤のレベルはますます少なく、低くなるという明確な傾向がある。
【0006】
飲料製品中で高頻度に使用される防腐剤として、ソルベート及びベンゾエートがある。残念なことに、このような防腐剤を使用すると、ある種の飲料のフレーバーを損なう可能性があることが多い。更に、消費者の中には、これらの防腐剤を一種の避けた方がよい化学添加物とみなす人もいる。実際、いわゆる「クリーンラベル」食品製品に対する消費者の傾向は高まっている。
【0007】
しかし、既存の防腐剤を「クリーンラベル」代替物と置き換えることは困難である。特に、「天然の」代替物の多くは十分な抗真菌活性を持たないため、ソルベートを置き換えることは難題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、特に抗真菌活性の観点で、ソルベートの有益な資質をもたらしてくれるであろう「クリーンラベル」防腐剤が求められている。同様に、合成防腐剤を低レベルで含む飲料の配合も望まれるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、ある種の揮発性芳香化合物が、食品腐敗微生物、特にカビや酵母等の真菌の増殖を防止するのに効果的であることを見出した。具体的には、芳香化合物の特定の組み合わせが、微生物による飲料製品の腐敗を低減及び/又は防止し得ることを確認した。
【0010】
第1の態様では、本発明は、防腐組成物を含む、レディ・トゥ・ドリンク飲料又は飲料濃縮物である茶製品であって、防腐組成物が、
(A) ヘキサナール、
(B) E-2-ヘキセナール、
(C) E-2-ヘキセノール、
(D) E-リナロールオキシド、
(E) メタノール、及び
(F) サリチル酸メチルを含み、
茶製品中の(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)の総濃度が10ppmから10000ppmであり、茶製品中のリナロール濃度の(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)の総濃度に対する比が1:14から1:800であるような濃度で、茶製品がリナロールを含む、茶製品に関する。
【0011】
第2の態様では、本発明はまた、保存茶製品を調製するための方法であって、レディ・トゥ・ドリンク飲料又は飲料濃縮物である茶製品に防腐組成物を添加する工程を含み、防腐組成物が、
(A) ヘキサナール、
(B) E-2-ヘキセナール、
(C) E-2-ヘキセノール、
(D) E-リナロールオキシド、
(E) メタノール、及び
(F) サリチル酸メチル
を含み、茶製品中の(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)の総濃度が10ppmから10000ppmであり、茶製品中のリナロール濃度の(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)の総濃度に対する比が1:14から1:800であるような濃度で、茶製品がリナロールを含む、方法も提供する。
【0012】
発明はまた、レディ・トゥ・ドリンク飲料又は飲料濃縮物用の防腐剤としての、ヘキサナール、E-2-ヘキセナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルを含む組成物の使用に関し得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第一の態様では、本発明は、防腐組成物を含む、レディ・トゥ・ドリンク飲料又は飲料濃縮物である茶製品に関する。
【0014】
茶製品は茶固形物を含有することになる。本明細書で使用する場合、用語「茶固形物」は、植物カメリア・シネンシスのシネンシス種(Camellia sinensis var. sinensis)及び/又はカメリア・シネンシスのアッサミカ種(Camellia sinensis var. assamica)の葉から得られる乾燥物質を意味する。茶固形物は、任意の適した供給源、例えば茶抽出物(好ましくは粉末形態)、圧縮茶搾汁液等によって供給され得る。当業者は、そのような原料を得る方法を知っている。
【0015】
茶は、それ自体がある種の抗微生物特性を有することが知られているが、この特性(すなわち、酵母及びカビの増殖抑制)は、茶固形物の濃度が3%を超えた場合でのみ明らかになっている。茶系飲料(茶濃縮物を含む)にとっては典型的な、これよりも低い濃度では、茶は、微生物による腐敗の可能性を高める栄養素とし作用する。茶製品は、好ましくは製品の0.01質量%から3質量%、より好ましくは0.05質量%から3質量%、最も好ましくは0.1質量%から2質量%の茶固形物を含む。
【0016】
本明細書で使用する場合、用語「飲料」は、実質的には水性組成物を意味する。飲料は任意の形態であってもよい。例えば、レディ・トゥ・ドリンク形態又は濃縮形態であってもよい。「レディ・トゥ・ドリンク飲料」は、人がそのまま摂取するのに適した飲用組成物を意味し、好ましくは、少なくとも85質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、最も好ましくは少なくとも95質量%の水を含む。「飲料濃縮物」は、摂取前に、通常は水性液体(例えば、水、炭酸水又は牛乳等)での希釈が必要な飲料組成物を意味し、従ってこの形態は、レディ・トゥ・ドリンク形態よりも、通常は固形物含有量が高い(従って含水量は低い)ということになる。例えば、希釈前は、飲料濃縮物は、好ましくは25から85質量%、より好ましくは40質量%から80質量%、最も好ましくは50質量%から75質量%の水を含む。
【0017】
茶製品は防腐組成物を含み、防腐組成物は、(A)ヘキサナール、(B)E-2-ヘキセナール、(C)E-2-ヘキセノール、(D)E-リナロールオキシド、(E)メタノール、及び(F)サリチル酸メチルを含む。茶製品中の(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)の総濃度は、10ppmから10000ppmである。つまり、茶製品中のヘキサナールとE-2-ヘキセナールとE-2-ヘキセノールとE-リナロールオキシドとメタノールとサリチル酸メチルの総濃度は、10ppmから10000ppmである。
【0018】
理論に拘束されることを望むものではないが、発明者らは、含有する防腐組成物濃度が非常に低い茶製品は、より早い時点で微生物によって腐敗する傾向があり得ると考えている。従って、保存期間が延びた製品を提供するためには、茶製品中の(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)の総濃度は、好ましくは少なくとも35ppm、より好ましくは少なくとも60ppm、最も好ましくは少なくとも75ppmである。
【0019】
良好な防腐組成物は、茶製品の感覚特性を妨げることなく腐敗微生物を阻害する。理論に拘束されることを望むものではないが、発明者らは、防腐組成物中の1種又は複数の高濃度の揮発性化合物が、茶製品の感覚刺激特性に影響を及ぼし得る(例えば、望まれないフレーバーノートを導入する等によって)と考えている。従って、茶製品中の(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)の総濃度は、好ましくは5000ppm以下、より好ましくは3000ppm以下、最も好ましくは1500ppm以下である。
【0020】
本発明者らは、高濃度のリナロールは、防腐組成物の有効性を制限する傾向があることを見出した。従って、茶製品は、限定された量のリナロールを含む。より正確には、茶製品中のリナロール濃度の(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)の総濃度に対する比が、1:14から1:800、好ましくは1:15から1:650、1:18から1:500、又は更に1:20から1:450であるような濃度で、茶製品はリナロールを含む。茶製品中のリナロール濃度の(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)の総濃度に対する比の範囲を指定する場合には、いずれの下限もいずれの上限に関連付けられ得ることに注意されたい。
【0021】
本発明の茶製品は、酸性のpH(すなわち7未満のpH)を有することが好ましい。例えば、製品は、2から6のpH(20℃)を有してもよい。具体的には、pH(20℃)は、好ましくは5以下、より好ましくは4.5以下、最も好ましくは2から4である。
【0022】
酸性のpHを実現するために、保存飲料は、好ましくは1種又は複数の酸味料を含む。適した酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、アスコルビン酸、リン酸等の有機酸及びそれらの塩が挙げられる。1種又は複数のこれらの酸味料の混合物も適している。酸味料がクエン酸及び/又はその塩を含む場合には、特にバランスの良いフレーバーが提供され得る。クエン酸(及び/又はその塩)、リンゴ酸(及び/又はその塩)並びにアスコルビン酸(及び/又はその塩)の混合物も、良いフレーバーを提供する。典型的には、保存飲料中の酸味料の濃度は、0.001から1質量%、より好ましくは0.01から0.5質量%ということになる。
【0023】
腐敗から保護される飲料を考案する場合に、より一般的に使用されるいくつかの防腐剤がソルベートである。本明細書で使用する場合、用語「ソルベート」には、ソルビン酸(E200)並びにその塩が含まれ、その塩にはソルビン酸ナトリウム(E201)、ソルビン酸カリウム(E202)及びソルビン酸カルシウム(E203)が含まれる。ソルベートは特に効果的な抗真菌剤であり、「天然の」代用物を見出すことは難題であった。本発明者らは、本発明の防腐組成物が、飲料製品中のソルベートを完全に、又は部分的に置き換えるために使用できることを見出した。例えば、このような防腐組成物によって、レディ・トゥ・ドリンク飲料又は飲料濃縮物中で使用するソルベートのレベルを低減することが可能となり得る(その一方で、依然として従来の量のソルベートと同じ抗腐敗効果を達成する)。飲料製品中のソルビン酸カリウムの典型的な量は250ppmから1000ppmである。従って、本発明による茶製品は、好ましくは200ppm未満のソルベート、より好ましくは100ppm未満のソルベート、更により好ましくは50ppm未満のソルベート、最も好ましくは10ppm未満のソルベートを含む。
【0024】
ベンゾエートは、一般的に使用される別の種類の防腐剤の代表例であり、特にソフトドリンクのような酸性食品において使用される。本発明者らは、本発明の防腐組成物が、飲料製品中のベンゾエートを完全に、又は部分的に置き換えるために使用できることを見出した。例えば、防腐組成物によって、レディ・トゥ・ドリンク飲料又は飲料濃縮物中で使用するベンゾエートのレベルを低減することが可能となり得る(その一方で、依然として従来の量のソルベートと同じ抗腐敗効果を達成する)。本明細書で使用する場合、用語「ベンゾエート」には、安息香酸(E210)並びにその塩が含まれ、その塩には安息香酸ナトリウム(E211)、安息香酸カリウム(E212)及び安息香酸カルシウム(E213)が含まれる。飲料中の安息香酸ナトリウムの典型的な量は150ppmから1000ppmである。従って、本発明による茶製品は、好ましくは500ppm未満のベンゾエート、より好ましくは100ppm未満のベンゾエート、更により好ましくは50ppm未満のベンゾエート、最も好ましくは10ppm未満のベンゾエートを含む。
【0025】
茶製品はフレーバー飲料、より好ましくはフルーツフレーバー飲料、最も好ましくはフルーツフレーバー茶飲料であることが特に好ましい。適したフレーバーには、天然若しくは合成のフルーツフレーバー及び/又は天然若しくは合成のハーブフレーバーが含まれる。フルーツフレーバーの例としては、リンゴ、アンズ、カシス、サクランボ、クランベリー、ブドウ、グレープフルーツ、グアバ、キーウィ、レモン、ライム、ライチ、マンダリンミカン、マンゴー、ネクタリン、オレンジ、モモ、セイヨウナシ、パイナップル、プラム、パッションフルーツ、ラズベリー及びイチゴが挙げられる。ハーブフレーバーの例としては、カモミール、キク、エルダーフラワー、サンザシ、ハイビスカス、ジャスミン、マテ、ミント(例えば、ペパーミント、スペアミント)、モクセイ、バラ及びバーベナ(例えば、レモンバーベナ)が挙げられる。
【0026】
消費者は、甘い味の飲料を好む。従って、茶製品は、好ましくは栄養性甘味料、非栄養性甘味料、又はそれらの混合物を含む。
【0027】
非栄養性甘味料によって、エネルギー含有量が低いにもかかわらず依然として心地よい甘い味がするように、飲料を配合することが可能になる。健康志向の消費者は、このような飲料を好む場合が多い。非栄養性甘味料の好ましい例としては、アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムK、グリチルリチン、ステビア由来甘味剤(例えば、ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドC、ズルコシドA等、好ましい例はステビオシド及び/又はレバウジオシド)、スクラロース、及びそれらの混合物が挙げられる。フレーバーのバランスがよいため、最も好ましい非栄養性甘味料はアセスルファムK、アスパルテーム、スクラロース、レバウジオシドA、又はそれらの混合物である。非栄養性甘味料の濃度は、甘味料の相対的な甘味及び飲料の組成に依存することになる。典型的には、茶製品は、飲料の0.00001から10質量%、より好ましくは0.001から1質量%、最も好ましくは0.01から0.1質量%の量で非栄養性甘味料を含むことになる。
【0028】
一方で、消費者は栄養性甘味料の認知された天然性を好む可能性がある。栄養性甘味料の例としては、グルコース、スクロース、フルクトース及びそれらの混合物が挙げられる。特に好まれる天然の栄養性甘味料の例は、蜂蜜である。
【0029】
茶製品は、高いカロリー含有量(例えば、飲料100gあたり100kCal超、好ましくは150から1000kCalのエネルギー含有量)を有する可能性がある。そのような製品は、好ましくは、1種又は複数の栄養性甘味料を、場合によっては1種又は複数の非栄養性甘味料との組み合わせで、含む。
【0030】
好ましい一実施形態では、茶製品は低カロリー飲料である(例えば、飲料100gあたり100kCal未満のエネルギー含有量を有する)。一回分の飲料が10kCal未満、より好ましくは5kCal未満、最も好ましくは1kCal未満の総エネルギー含有量を有することが特に好ましい。低カロリー飲料は、好ましくは、1種又は複数の非栄養性甘味料を含む。
【0031】
茶製品がレディ・トゥ・ドリンク飲料又は飲料濃縮物であるかどうかに関係なく、茶製品は包装されていることが好ましい。適した包装容器の例には、ビン、缶、カートン、パウチ及び小袋が挙げられるが、これらに限定されない。飲料濃縮物に対して、特に好ましい包装形態は、バッグインボックス(BiB)容器である。BiB容器には、典型的には、ブラダー(bladder)(例えば、ビニール袋、又は金属蒸着フィルム及び/若しくはビニールの層から作られた袋)が含まれ、それが(典型的には段ボールから作られた)箱の中に固定されている。この形態に詰められた製品は、室温で数カ月の間、安定に貯蔵することができる。茶製品が飲料濃縮物である場合、製品は、好ましくは、バッグインボックス容器内に包装されている。
【0032】
茶製品は、好ましくは、例えば低温殺菌又は滅菌によって、衛生化されている。
【0033】
紅茶製品は、どのように好都合に製造されてもよいが、好ましくは本発明による方法が使用される。上記で提示したように、本発明の一態様は、保存茶製品を調製するための方法であって、レディ・トゥ・ドリンク飲料又は飲料濃縮物である茶製品に防腐組成物を添加することを含み、防腐組成物が、
(A) ヘキサナール、
(B) E-2-ヘキセナール、
(C) E-2-ヘキセノール、
(D) E-リナロールオキシド、
(E) メタノール、及び
(F) サリチル酸メチルを含み、
茶製品中の(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)の総濃度が10ppmから10000ppmであり、茶製品中のリナロール濃度の(A)+(B)+(C)+(D)+(E)+(F)の総濃度に対する比が1:14から1:800であるような濃度で、茶製品がリナロールを含む、方法に関する。
【0034】
本方法は、好ましくは、上記の茶製品を調製するために使用され、従って茶製品に対して記載された好ましい技術的特徴もまた、本方法に準用する。
【0035】
好ましくは、本方法は、茶製品を包装する追加の工程及び/又は茶製品を低温殺菌若しく滅菌する追加の工程を含む。本方法が衛生化の工程を伴うことが特に好ましく、この工程は、60から100℃の間の温度で、1から20分の時間、茶製品を加熱することを含む。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「含む」は、用語「から本質的になる」及び「からなる」を包含する。用語「含む」を使用する場合、列記された工程又は選択項目は網羅的である必要はない。実施例及び比較実験を除き、又は別途明示的に示された場合を除き、すべての数値は「約」という語によって修飾されていると理解されるべきである。本明細書で使用する場合、不定冠詞「a」又は「an」及びその対応する定冠詞「the」は、別途明示されない限り、少なくとも1つ、或いは1つ又は複数を意味する。
【0037】
別途明示しない限り、「xからyまで」の形式で表現される数値範囲は、x及びyを含むと理解される。値及び量の任意の範囲を指定する場合、いずれの特定の上限値又は上限量も、いずれの特定の下限値又は下限量に関連付けられ得る。本明細書に含有するすべてのパーセンテージ及び比は、別途示されない限り、質量で計算される。
【0038】
上記の個々のセクションで言及した本発明の種々の特徴は、必要に応じて、他のセクションに準用する。従って、1つのセクションにおいて明示された特徴を、必要に応じて他のセクションで明示された特徴と組み合わせることができる。いかなるセクションの見出しも便宜のためのみに加えられたものであり、本開示を限定することを意図するものでは決してない。
【0039】
以下の実施例は本発明を例示することを意図しており、本発明を、それらの実施例それ自体に限定することを意図するものではない。
【実施例
【0040】
芳香分子の組み合わせを、いくつかの一般的な真菌腐敗微生物の増殖阻害に対して試験した。
【0041】
低温充填された非保存(non-preserved)モモフレーバー茶濃縮物を、培地として使用した。この茶濃縮物は、紅茶抽出物粉末(8.4g/L)、フレーバー(5.04g/L)、スクロース(444g/L)、クエン酸(11.7g/L)、アスコルビン酸(1.2g/L)及び水(残部)を含有する。
【0042】
培地を、2種類の酵母(Candida parapsilosis及びZygosaccharomyces bailii)の細胞懸濁液からなる種菌、又は2種類のカビ(Paecilomyces variotti及びNeosartorya fischeri)の細胞懸濁液からなる種菌のいずれかでスパイクした。いずれの場合も、培地を、およそ1000cfu/mlのレベルでスパイクした。各時点に対して、すべての試料及び対照を3連で調製した。
【0043】
試料は25℃でインキュベートし、培養期間は1から12週間の間であった。各時点において、各試料及び各対照の段階希釈物をOMEAプレート上に蒔いた。段階希釈物の希釈液はMRDであり、各時点において、各試料及び各対照に対し、最低3希釈物を取ってプレートに蒔いた。プレートを25℃で3から5日間インキュベートし、腐敗微生物の増殖を視覚的に確認した。
【0044】
(実施例1)
芳香組成物原液を調製した。Table 1(表1)に、4つのそのような芳香組成物原液(試料1から4)中に存在する芳香化合物をまとめる。各芳香組成物原液における化合物(含まれる場合)の濃度は、以下の通りであった:メタノール(12900ppm)、E-2-ヘキセナール(6280ppm)、リナロール(3170ppm)、Z-3-ヘキセノール(1070ppm)、E-リナロールオキシド(973ppm)、サリチル酸メチル(833ppm)、ヘキサナール(509ppm)、E-2-ヘキセノール(492ppm)、アセトアルデヒド(365ppm)、Z-2-ペンテン-1-オール(344ppm)、1-ペンテン-3-オール(251ppm)、1-ペンテン-3-オン(107ppm)。
【0045】
【表1】
【0046】
真菌の増殖阻害試験のために、培地が2%(体積で)の当該芳香組成物を含有するように、適切な原液を培地(すなわち、非保存モモフレーバー茶濃縮物)中に希釈した。各試験には、適切な対照を含めた。これらの対照は、以下の通りである。
【0047】
対照1: 陽性対照(すなわち、種菌でスパイクした、いかなる芳香組成物も含まない培地)、
対照2: 陰性対照(すなわち、2%の芳香組成物を含む非スパイク培地)、及び
対照3: 無菌対照(すなわち、いかなる芳香組成物も含まない非スパイク培地)。
【0048】
真菌増殖阻害試験の結果をTable 2(表2)(下記)にまとめる。データは、10分の1段階希釈由来であり、3連の試料の平均である。
【0049】
対照に関しては、陽性対照(対照1)は、使用した種菌に関係なく、すべての時点において>300cfu/mlの結果であった。陰性対照(対照2)及び無菌対照(対照3)の双方は、すべての時点において<1cfu/mlの結果であった(データはTable 2(表2)に含まれない)。
【0050】
ヘキサナール、E-2-ヘキセナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルの6つをすべて含む試料(すなわち試料1、2、4及び5)はすべて、酵母及びカビの双方に対して、少なくともいくらかの抗真菌活性を示す。その一方で、試料3(リナロールのみ)は、酵母又はカビに対して抗真菌活性を示さなかった。
【0051】
列記した6化合物及びリナロールを含む試料(すなわち試料1及び5)は、長期抗真菌剤としての効果は劣り、1か月未満の期間で最も効果的であることが分かる。対照的に、ヘキサナール、E-2-ヘキセナール、E-2-ヘキセノール、E-リナロールオキシド、メタノール及びサリチル酸メチルの6つをすべて含むがリナロールを含まない試料(すなわち試料2及び4)は長期の抗真菌活性を示し、試料4は酵母とカビの双方に対して、少なくとも12週間の抗真菌活性を示す。
【0052】
【表2】