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特許7498192有機エレクトロルミネセント化合物及びそれを含む有機エレクトロルミネセントデバイス
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  • 特許-有機エレクトロルミネセント化合物及びそれを含む有機エレクトロルミネセントデバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネセント化合物及びそれを含む有機エレクトロルミネセントデバイス
(51)【国際特許分類】
   H10K 85/60 20230101AFI20240604BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240604BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20240604BHJP
【FI】
H10K85/60
C09K11/06 690
H10K50/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021556762
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 KR2020003997
(87)【国際公開番号】W WO2020197240
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0033609
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0030777
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509266480
【氏名又は名称】デュポン スペシャルティ マテリアルズ コリア リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DUPONT SPECIALTY MATERIALS KOREA LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オ、ホンセ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、スンウ
(72)【発明者】
【氏名】キル、ジュンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ソンジン
(72)【発明者】
【氏名】キム、スンアイ
(72)【発明者】
【氏名】カン、ヒリョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、サンヒ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヒョソン
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/159964(WO,A1)
【文献】特開2014-160813(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021841(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0099547(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0099510(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-102/20
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式1:
【化1】
(式中、
~X12は、それぞれ独立して、N又はCRを表し;
~Tは、それぞれ独立して、N又はCRを表し;
~Yは、それぞれ独立して、N又はCRを表し、ここで、Y~Yの少なくとも1つは、Nであり;
は、単結合、置換若しくは非置換(C6~C30)アリーレン又は置換若しくは非置換(3~30員)ヘテロアリーレンを表し;及び
Ar、Ar及びR~Rは、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換若しくは非置換(C1~C30)アルキル、置換若しくは非置換(C6~C30)アリール、置換若しくは非置換(3~30員)ヘテロアリール、置換若しくは非置換(C3~C30)シクロアルキル、置換若しくは非置換(C1~C30)アルコキシ、置換若しくは非置換トリ(C1~C30)アルキルシリル、置換若しくは非置換ジ(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールシリル、置換若しくは非置換(C1~C30)アルキルジ(C6~C30)アリールシリル、置換若しくは非置換トリ(C6~C30)アリールシリル、置換若しくは非置換モノ-若しくはジ-(C1~C30)アルキルアミノ、置換若しくは非置換モノ-若しくはジ-(C6~C30)アリールアミノ又は置換若しくは非置換(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールアミノを表すか;或いは隣接する置換基に結合されて環を形成し得、ここで、複数のR~Rが存在する場合、Rのそれぞれ、Rのそれぞれ及びRのそれぞれは、同じであるか又は異なり得
、Ar 、Ar 及びR ~R における前記置換(C1~C30)アルキル、前記置換(C6~C30)アリール(レン)、前記置換(3~30員)ヘテロアリール(レン)、前記置換(C3~C30)シクロアルキル、前記置換(C1~C30)アルコキシ、前記置換トリ(C1~C30)アルキルシリル、前記置換ジ(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールシリル、前記置換(C1~C30)アルキルジ(C6~C30)アリールシリル、前記置換トリ(C6~C30)アリールシリル、前記置換モノ-又はジ-(C1~C30)アルキルアミノ、前記置換モノ-又はジ-(C6~C30)アリールアミノ及び前記置換(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールアミノの置換基は、それぞれ独立して、重水素;ハロゲン;シアノ;カルボキシル;ニトロ;ヒドロキシル;(C1~C30)アルキル;ハロ(C1~C30)アルキル;(C2~C30)アルケニル;(C2~C30)アルキニル;(C1~C30)アルコキシ;(C1~C30)アルキルチオ;(C3~C30)シクロアルキル;(C3~C30)シクロアルケニル;(3~7員)ヘテロシクロアルキル;(C6~C30)アリールオキシ;(C6~C30)アリールチオ;非置換の又は(C6~C30)アリールで置換された(5~30員)ヘテロアリール;非置換の又は(5~30員)ヘテロアリールで置換された(C6~C30)アリール;トリ(C1~C30)アルキルシリル;トリ(C6~C30)アリールシリル;ジ(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールシリル;(C1~C30)アルキルジ(C6~C30)アリールシリル;アミノ、モノ-又はジ-(C1~C30)アルキルアミノ;非置換の又は(C1~C30)アルキルで置換されたモノ-又はジ-(C6~C30)アリールアミノ;(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールアミノ;(C1~C30)アルキルカルボニル;(C1~C30)アルコキシカルボニル;(C6~C30)アリールカルボニル;ジ(C6~C30)アリールボロニル;ジ(C1~C30)アルキルボロニル;(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールボロニル;(C6~C30)アリール(C1~C30)アルキル及び(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールからなる群から選択される少なくとも1つである
によって表される有機エレクトロルミネセント化合物であって、前記化合物は、
【化2】
でもないし、
【化3】
でもない、有機エレクトロルミネセント化合物
【請求項2】
式1は、以下の式2又は式3:
【化4】
(式中、
a及びbは、それぞれ独立して、1~6の整数を表し、ここで、a及びbが2以上の整数である場合、Rのそれぞれは、同じであるか又は異なり得;
Y’は、CR、O又はSを表し;
及びRは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換(C1~C30)アルキル又は置換若しくは非置換(C6~C30)アリールを表し;及び
~X12、Y~Y、L、Ar及びArは、請求項1で定義された通りである)
によって表される、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物。
【請求項3】
~X12は、それぞれ独立して、N又はCRを表し;
~Tは、それぞれ独立して、N又はCRを表し;
~Yは、それぞれ独立して、N又はCRを表し、ここで、Y~Yの少なくとも1つは、Nであり;
は、単結合、置換若しくは非置換(C6~C12)アリーレン又は置換若しくは非置換(5~15員)ヘテロアリーレンを表し;
Ar及びArは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換(C6~C18)アリール又は置換若しくは非置換(5~15員)ヘテロアリールを表し;及び
~Rは、それぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換(C6~C12)アリール又は置換若しくは非置換(5~15員)ヘテロアリールを表すか;或いは隣接する置換基に結合されて環を形成し得る、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物。
【請求項4】
~X12は、それぞれ独立して、CRを表し;
~Tは、それぞれ独立して、N又はCRを表し;
~Yは、それぞれ独立して、N又はCRを表し、ここで、Y~Yの少なくとも1つは、Nであり;
は、単結合、非置換(C6~C12)アリーレン又は非置換(5~15員)ヘテロアリーレンを表し;
Ar及びArは、それぞれ独立して、非置換の若しくは1個以上の重水素で置換された(C6~C18)アリール又は非置換(5~15員)ヘテロアリールを表し;及び
~Rは、それぞれ独立して、水素、非置換(C6~C12)アリール又は非置換(5~15員)ヘテロアリールを表すか;又は隣接する置換基に結合されて環を形成し得る、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物。
【請求項5】
式1によって表される前記化合物が、以下:
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
から選択される、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物を含む有機エレクトロルミネセント材料。
【請求項7】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物を含む有機エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項8】
前記有機エレクトロルミネセント化合物は、発光層に含まれる、請求項に記載の有機エレクトロルミネセントデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機エレクトロルミネセント化合物及びそれを含む有機エレクトロルミネセントデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
小分子緑色有機エレクトロルミネセントデバイス(OLED)は、発光層及び電荷輸送層からなるTPD/ALq3二層を使用することにより、1987年にEastman KodakのTangらによって最初に開発された。その後、OLEDの開発が急速に達成され、OLEDは、商業化されてきた。有機エレクトロルミネセントデバイスは、有機発光材料に電気を印加することによって電気エネルギーを光に変換し、通常、アノード、カソード及び2つの電極間に形成された有機層を含む。OLEDの有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、正孔補助層、発光補助層、電子阻止層、発光層(ホスト材料及びドーパント材料を含有する)、電子緩衝層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等を含み得る。有機層において使用される材料は、機能に応じて、正孔注入材料、正孔輸送材料、正孔補助材料、発光補助材料、電子阻止材料、発光材料、電子緩衝材料、正孔阻止材料、電子輸送材料、電子注入材料等に分類することができる。
【0003】
この分野では、有機エレクトロルミネセントデバイスの発光効率、寿命の特徴、電力効率等を改善できる有機エレクトロルミネセント材料について研究されている。更に、有機エレクトロルミネセント材料の熱的特性を改善することにより、高温での蒸着における材料損傷を防止し、デバイス製造におけるプロセスフローを改善する試みが実施されている。
【0004】
韓国特許出願公開第2018-0099510号明細書は、アザアズレンを含む融合構造の化合物を開示している。しかしながら、前記参考文献は、本開示の化合物構造と同一の化合物を具体的に開示していない。
【0005】
有機エレクトロルミネセント化合物を蒸着させるには、高温が必要とされる。しかしながら、高温では、化合物の劣化が発生することが多い。更に、化合物は、蒸着のためのるつぼの1種である蒸着源中に入れられる。本明細書では、蒸着源の不均一な加熱のため、蒸着材料によって蒸着源の入口が阻止される現象である目詰まりが発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的としては、以下の少なくとも1つが挙げられる。第一に、本開示は、相当に低温での蒸着が可能であるため、蒸着中の化合物劣化が低下する有機エレクトロルミネセント化合物を提供する。第二に、本開示は、目詰まり現象を低減させ得る有機エレクトロルミネセントデバイスを提供する。第三に、本開示は、上述の有機エレクトロルミネセント化合物によって製造される有機エレクトロルミネセントデバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的が、以下の式1:
【化1】
(式中、
~X12は、それぞれ独立して、N又はCRを表し、
~Tは、それぞれ独立して、N又はCRを表し;
~Yは、それぞれ独立して、N又はCRを表し、ここで、Y~Yの少なくとも1つは、Nであり;
は、単結合、置換若しくは非置換(C6~C30)アリーレン又は置換若しくは非置換(3~30員)ヘテロアリーレンを表し;及び
Ar、Ar及びR~Rは、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換若しくは非置換(C1~C30)アルキル、置換若しくは非置換(C6~C30)アリール、置換若しくは非置換(3~30員)ヘテロアリール、置換若しくは非置換(C3~C30)シクロアルキル、置換若しくは非置換(C1~C30)アルコキシ、置換若しくは非置換トリ(C1~C30)アルキルシリル、置換若しくは非置換ジ(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールシリル、置換若しくは非置換(C1~C30)アルキルジ(C6~C30)アリールシリル、置換若しくは非置換トリ(C6~C30)アリールシリル、置換若しくは非置換モノ-若しくはジ-(C1~C30)アルキルアミノ、置換若しくは非置換モノ-若しくはジ-(C6~C30)アリールアミノ又は置換若しくは非置換(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールアミノを表すか;或いは隣接する置換基に結合されて環を形成し得、ここで、複数のR~Rが存在する場合、Rのそれぞれ、Rのそれぞれ及びRのそれぞれは、同じであるか又は異なり得る)
によって表される有機エレクトロルミネセント化合物によって達成され得ることを見出した。
【0008】
発明の有利な効果
本開示によると、低温で蒸着でき、且つ/又は目詰まり現象を低減できる有機エレクトロルミネセント化合物を得ることができる。更に、そのような有機エレクトロルミネセント化合物を使用することにより、有機エレクトロルミネセントデバイスの性能の低下を防止でき、且つ/又はデバイスを製造するプロセスを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の有機エレクトロルミネセント化合物及び従来の有機エレクトロルミネセント化合物の三次元構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本開示について詳細に説明する。しかしながら、以下の説明は、本開示を説明することを意図しており、決して本開示の範囲を限定することを意味するものではない。
【0011】
本開示における用語「有機エレクトロルミネセント化合物」は、有機エレクトロルミネセントデバイスに使用され得る化合物を意味する。必要に応じて、有機エレクトロルミネセント化合物は、有機エレクトロルミネセントデバイスを構成する任意の層に含まれ得る。
【0012】
本開示における用語「有機エレクトロルミネセント材料」は、有機エレクトロルミネセントデバイスに使用され得、且つ少なくとも1種の化合物を含み得る材料を意味する。必要に応じて、有機エレクトロルミネセント材料は、有機エレクトロルミネセントデバイスを構成する任意の層に含まれ得る。例えば、有機エレクトロルミネセント材料は、正孔注入材料、正孔輸送材料、正孔補助材料、発光補助材料、電子阻止材料、発光材料、電子緩衝材料、正孔阻止材料、電子輸送材料、電子注入材料等であり得る。
【0013】
本開示の有機エレクトロルミネセント材料は、式1によって表される少なくとも1種の化合物を含み得る。式1によって表される化合物は、発光層、電子輸送層及び/又は電子緩衝層等に含まれ得るが、それらに限定されない。発光層に含まれる場合、式1によって表される化合物は、ホスト材料として含まれ得、ここで、ホスト材料は、緑色又は赤色有機エレクトロルミネセントデバイスのホスト材料であり得る。更に、電子輸送層に含まれる場合、式1によって表される化合物は、電子輸送材料として含まれ得る。更に、電子緩衝層に含まれる場合、式1によって表される化合物は、電子緩衝材料として含まれ得る。
【0014】
以下では、式1によって表される化合物をより詳細に説明する。
【0015】
本明細書では、用語「(C1~C30)アルキル」は、炭素原子数が好ましくは1~20個及びより好ましくは1~10個である鎖を構成する1~30個の炭素原子を有する、直鎖状又は分岐状アルキルであることを意味する。上記のアルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル等を含み得る。用語「(C2~C30)アルケニル」は、炭素原子数が好ましくは2~20個、より好ましくは2~10個である鎖を構成する2~30個の炭素原子を有する、直鎖状又は分岐鎖状アルケニルであることを意味する。上記のアルケニルは、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-メチルブタ-2-エニル等を含み得る。用語「(C2~C30)アルキニル」は、炭素原子の数が好ましくは2~20個、より好ましくは2~10個である鎖を構成する2~30個の炭素原子を有する、直鎖若しくは分岐状アルキニルであることを意味する。上記のアルキニルは、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-メチルペンタ-2-イニル等を含み得る。用語「(C3~C30)シクロアルキル」は、炭素原子数が好ましくは、3~20個、より好ましくは3~7個である3~30個の環骨格炭素原子を有する、単環式又は多環式炭化水素であることを意味する。上記のシクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を含み得る。用語「(3~7員)ヘテロシクロアルキル」は、3~7個、好ましくは5~7個の環骨格原子を有し、且つB、N、O、S、Si及びPからなる群、好ましくはO、S及びNからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含むシクロアルキルであることを意味する。上記のヘテロシクロアルキルは、テトラヒドロフラン、ピロリジン、チオラン、テトラヒドロピラン等を含み得る。用語「(C6~C30)アリール(レン)」は、環骨格炭素原子数が好ましくは6~25個、より好ましくは6~18個である6~30個の環骨格炭素原子を有する芳香族炭化水素に由来する、単環式環又は縮合環ラジカルであることを意味する。上記のアリール(レン)は、部分的に飽和され得、且つスピロ構造を含み得る。上記のアリールは、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、ナフチル、ビナフチル、フェニルナフチル、ナフチルフェニル、フェニルターフェニル、フルオレニル、フェニルフルオレニル、ベンゾフルオレニル、ジベンゾフルオレニル、フェナントレニル、フェニルフェナントレニル、アントラセニル、インデニル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニル、クリセニル、ナフタセニル、フルオランテニル、スピロビフルオレニル、アズレニル等を含み得る。より具体的には、上記のアリールは、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、ベンズアントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、ナフタセニル、ピレニル、1-クリセニル、2-クリセニル、3-クリセニル、4-クリセニル、5-クリセニル、6-クリセニル、ベンゾ[c]フェナントリル、ベンゾ[g]クリセニル、1-トリフェニレニル、2-トリフェニレニル、3-トリフェニレニル、4-トリフェニレニル、1-フルオレニル、2-フルオレニル、3-フルオレニル、4-フルオレニル、9-フルオレニル、ベンゾフルオレニル、ジベンゾフルオレニル、2-ビフェニリル、3-ビフェニリル、4-ビフェニリル、o-ターフェニル、m-ターフェニル-4-イル、m-ターフェニル-3-イル、m-ターフェニル-2-イル、p-ターフェニル-4-イル、p-ターフェニル-3-イル、p-ターフェニル-2-イル、m-クアテルフェニル、3-フルオランテニル、4-フルオランテニル、8-フルオランテニル、9-フルオランテニル、ベンゾフルオランテニル、o-トリル、m-トリル、p-トリル、2,3-キシリル、3,4-キシリル、2,5-キシリル、メシチル、o-クメニル、m-クメニル、p-クメニル、p-t-ブチルフェニル、p-(2-フェニルプロピル)フェニル、4’-メチルビフェニリル、4’’-t-ブチル-p-ターフェニル-4-イル、9,9-ジメチル-1-フルオレニル、9,9-ジメチル-2-フルオレニル、9,9-ジメチル-3-フルオレニル、9,9-ジメチル-4-フルオレニル、9,9-ジフェニル-1-フルオレニル、9,9-ジフェニル-2-フルオレニル、9,9-ジフェニル-3-フルオレニル、9,9-ジフェニル-4-フルオレニル等を含み得る。
【0016】
用語「(3~30員)ヘテロアリール(レン)」は、3~30個の環骨格原子を有し、且つB、N、O、S、Si及びPからなる群から選択される少なくとも1個、好ましくは1~4個のヘテロ原子を含むアリールであることを意味する。上記のヘテロアリール(レン)は、単環式環又は少なくとも1つのベンゼン環と縮合した縮合環であり得、部分的に飽和であり得、少なくとも1つのヘテロアリール又はアリール基をヘテロアリール基に単結合によって連結することによって形成されたものであり得、且つスピロ構造を含み得る。上記のヘテロアリールは、フリル、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、トリアジニル、テトラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラザニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル及びピリダジニル等の単環式環型ヘテロアリール並びにベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソインドリル、インドリル、ベンゾインドリル、インダゾリル、ベンゾチアジアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、ベンゾキナゾリニル、キノキサリニル、ベンゾキノキサリニル、ナフチリジニル、カルバゾリル、ベンゾカルバゾリル、ジベンゾカルバゾリル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナントリジニル、ベンゾジオキソリル及びジヒドロアクリジニル等の縮合環型ヘテロアリールを含み得る。より具体的には、上記のヘテロアリールは、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、ピラジニル、2-ピリジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、6-ピリミジニル、1,2,3-トリアジン-4-イル、1,2,4-トリアジン-3-イル、1,3,5-トリアジン-2-イル、1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、1-ピラゾリル、1-インドリジニル、2-インドリジニル、3-インドリジニル、5-インドリジニル、6-インドリジニル、7-インドリジニル、8-インドリジニル、2-イミダゾピリジニル、3-イミダゾピリジニル、5-イミダゾピリジニル、6-イミダゾピリジニル、7-イミダゾピリジニル、8-イミダゾピリジニル、3-ピリジニル、4-ピリジニル、1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル、4-インドリル、5-インドリル、6-インドリル、7-インドリル、1-イソインドリル、2-イソインドリル、3-イソインドリル、4-イソインドリル、5-イソインドリル、6-イソインドリル、7-イソインドリル、2-フリル、3-フリル、2-ベンゾフラニル、3-ベンゾフラニル、4-ベンゾフラニル、5-ベンゾフラニル、6-ベンゾフラニル、7-ベンゾフラニル、1-イソベンゾフラニル、3-イソベンゾフラニル、4-イソベンゾフラニル、5-イソベンゾフラニル、6-イソベンゾフラニル、7-イソベンゾフラニル、2-キノリル、3-キノリル、4-キノリル、5-キノリル、6-キノリル、7-キノリル、8-キノリル、1-イソキノリル、3-イソキノリル、4-イソキノリル、5-イソキノリル、6-イソキノリル、7-イソキノリル、8-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、6-キノキサリニル、1-カルバゾリル、2-カルバゾリル、3-カルバゾリル、4-カルバゾリル、9-カルバゾリル、アザカルバゾリル-1-イル、アザカルバゾリル-2-イル、アザカルバゾリル-3-イル、アザカルバゾリル-4-イル、アザカルバゾリル-5-イル、アザカルバゾリル-6-イル、アザカルバゾリル-7-イル、アザカルバゾリル-8-イル、アザカルバゾリル-9-イル、1-フェナントリジニル、2-フェナントリジニル、3-フェナントリジニル、4-フェナントリジニル、6-フェナントリジニル、7-フェナントリジニル、8-フェナントリジニル、9-フェナントリジニル、10-フェナントリジニル、1-アクリジニル、2-アクリジニル、3-アクリジニル、4-アクリジニル、9-アクリジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-オキサジアゾリル、5-オキサジアゾリル、3-フラザニル、2-チエニル、3-チエニル、2-メチルピロール-1-イル、2-メチルピロール-3-イル、2-メチルピロール-4-イル、2-メチルピロール-5-イル、3-メチルピロール-1-イル、3-メチルピロール-2-イル、3-メチルピロール-4-イル、3-メチルピロール-5-イル、2-t-ブチルピロール-4-イル、3-(2-フェニルプロピル)ピロール-1-イル、2-メチル-1-インドリル、4-メチル-1-インドリル、2-メチル-3-インドリル、4-メチル-3-インドリル、2-t-ブチル-1-インドリル、4-t-ブチル-1-インドリル、2-t-ブチル-3-インドリル、4-t-ブチル-3-インドリル、1-ジベンゾフラニル、2-ジベンゾフラニル、3-ジベンゾフラニル、4-ジベンゾフラニル、1-ジベンゾチオフェニル、2-ジベンゾチオフェニル、3-ジベンゾチオフェニル、4-ジベンゾチオフェニル、1-シラフルオレニル、2-シラフルオレニル、3-シラフルオレニル、4-シラフルオレニル、1-ゲルマフルオレニル、2-ゲルマフルオレニル、3-ゲルマフルオレニル、4-ゲルマフルオレニル等を含み得る。更に、「ハロゲン」は、F、Cl、Br及びIを含む。
【0017】
更に、「オルト(o-)」、「メタ(m-)」及び「パラ(p-)」は、それぞれ置換基の相対位置を表す接頭辞である。オルトは、2つの置換基が互いに隣接していることを示し、例えばベンゼン誘導体における2つの置換基が1位及び2位を占めている場合、それは、オルト位と呼ばれる。メタは、2つの置換基が1位及び3位にあることを示し、例えばベンゼン誘導体における2つの置換基が1位及び3位を占めている場合、それは、メタ位と呼ばれる。パラは、2つの置換基が1位及び4位にあることを示し、例えばベンゼン誘導体における2つの置換基が1位及び4位を占めている場合、それは、パラ位と呼ばれる。
【0018】
本明細書では、表現「置換又は非置換」における「置換」は、特定の官能基中の水素原子が別の原子又は別の官能基、即ち置換基で置き換えられていることを意味する。置換(C1~C30)アルキル、置換(C6~C30)アリール(レン)、置換(3~30員)ヘテロアリール(レン)、置換(C3~C30)シクロアルキル、置換(C1~C30)アルコキシ、置換トリ(C1~C30)アルキルシリル、置換ジ(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールシリル、置換(C1~C30)アルキルジ(C6~C30)アリールシリル、置換トリ(C6~C30)アリールシリル、置換モノ-又はジ-(C1~C30)アルキルアミノ、置換モノ-又はジ-(C6~C30)アリールアミノ及び置換(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールアミノの置換基は、重水素;ハロゲン;シアノ;カルボキシル;ニトロ;ヒドロキシル;(C1~C30)アルキル;ハロ(C1~C30)アルキル;(C2~C30)アルケニル;(C2~C30)アルキニル;(C1~C30)アルコキシ;(C1~C30)アルキルチオ;(C3~C30)シクロアルキル;(C3~C30)シクロアルケニル;(3~7員)ヘテロシクロアルキル;(C6~C30)アリールオキシ;(C6~C30)アリールチオ;非置換の又は(C6~C30)アリールで置換された(5~30員)ヘテロアリール;非置換の又は(5~30員)ヘテロアリールで置換された(C6~C30)アリール;トリ(C1~C30)アルキルシリル;トリ(C6~C30)アリールシリル;ジ(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールシリル;(C1~C30)アルキルジ(C6~C30)アリールシリル;アミノ;非置換の又は(C1~C30)アルキルで置換されたモノ-又はジ-(C1~C30)アルキルアミノ;モノ-又はジ-(C6~C30)アリールアミノ;(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールアミノ;(C1~C30)アルキルカルボニル;(C1~C30)アルコキシカルボニル;(C6~C30)アリールカルボニル;ジ(C6~C30)アリールボロニル;ジ(C1~C30)アルキルボロニル;(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールボロニル;(C6~C30)アリール(C1~C30)アルキル;及び(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールからなる群から選択される少なくとも1つであり得る。本開示の一実施形態によれば、置換基は、それぞれ独立して、重水素、(C1~C6)アルキル及び/又は(C6~C12)アリールからなる群から選択される少なくとも1つであり得る。具体的には、置換基は、それぞれ独立して、重水素、メチル及び/又はフェニル等からなる群から選択される少なくとも1つであり得る。
【0019】
式1は、以下の式2又は式3:
【化2】
(式中、
a及びbは、それぞれ独立して、1~6の整数を表し、ここで、a及びbが2以上の整数である場合、Rのそれぞれは、同じであるか又は異なり得;
Y’は、CR、O又はSを表し;
及びRは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換(C1~C30)アルキル又は置換若しくは非置換(C6~C30)アリールを表し;及び
~X12、Y~Y、L、Ar及びArは、式1で定義された通りである)
によって表され得る。
【0020】
式1では、X~X12は、それぞれ独立して、N又はCRを表す。本開示の一実施形態では、X~X12は、それぞれ独立して、CRを表す。
【0021】
式1では、T~Tは、それぞれ独立して、N又はCRを表す。
【0022】
式1では、Y~Yは、それぞれ独立して、N又はCRを表し、ここで、Y~Yの少なくとも1つは、Nである。
【0023】
式1では、Lは、単結合、置換若しくは非置換(C6~C30)アリーレン又は置換若しくは非置換(3~30員)ヘテロアリーレンを表す。本開示の一実施形態によれば、Lは、単結合、置換若しくは非置換(C6~C12)アリーレン又は置換若しくは非置換(5~15員)ヘテロアリーレンを表す。本開示の別の実施形態によると、Lは、単結合、非置換(C6~C12)アリーレン又は非置換(5~15員)ヘテロアリーレンを表す。ヘテロアリーレンは、窒素、酸素及び硫黄の1つ以上を含み得る。例えば、Lは、単結合、フェニレン、ピリジレン等を表し得る。
【0024】
式1では、Ar、A2及びR~Rは、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換若しくは非置換(C1~C30)アルキル、置換若しくは非置換(C6~C30)アリール、置換若しくは非置換(3~30員)ヘテロアリール、置換若しくは非置換(C3~C30)シクロアルキル、置換若しくは非置換(C1~C30)アルコキシ、置換若しくは非置換トリ(C1~C30)アルキルシリル、置換若しくは非置換ジ(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールシリル、置換若しくは非置換(C1~C30)アルキルジ(C6~C30)アリールシリル、置換若しくは非置換トリ(C6~C30)アリールシリル、置換若しくは非置換モノ-若しくはジ-(C1~C30)アルキルアミノ、置換若しくは非置換モノ-若しくはジ-(C6~C30)アリールアミノ又は置換若しくは非置換(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールアミノを表すか;或いは隣接する置換基に結合されて環を形成し得、ここで、複数のR~Rが存在する場合、Rのそれぞれ、Rのそれぞれ及びRのそれぞれは、同じであるか又は異なり得る。
【0025】
本開示の一実施形態によれば、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換(C6~C18)アリール又は置換若しくは非置換(5~15員)ヘテロアリールを表す。本開示の別の実施形態によると、Ar及びArは、それぞれ独立して、非置換の若しくは1個以上の重水素で置換された(C6~C18)アリール又は非置換(5~15員)ヘテロアリールを表す。Ar及びArは、互いに同じであるか又は異なり得る。例えば、Ar及びArは、それぞれ独立して、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントレニル、1個以上の重水素で置換されたフェニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル等を表し得る。
【0026】
本開示の一実施形態によれば、R~Rは、それぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換(C6~C12)アリール又は置換若しくは非置換(5~15員)ヘテロアリールを表すか;或いは隣接する置換基に結合されて環を形成し得る。本開示の別の実施形態によれば、R~Rは、それぞれ独立して、水素、非置換(C6~C12)アリール若しくは非置換(5~15員)ヘテロアリールを表すか;又は隣接する置換基に結合されて環を形成し得る。例えば、Rは、それぞれ独立して、水素、フェニル等を表し得るか、又は隣接する置換基に結合されてベンゼン環を形成し得る。例えば、Rは、それぞれ独立して、水素、フェニル、ピリジル等を表し得るか、又は隣接する置換基に結合されて、ベンゼン環、ピリジン環、1つ以上のメチルで置換されたインデン環、1つ以上のフェニルで置換されたインデン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環等を形成し得る。例えば、Rは、それぞれ独立して、水素を表し得る。
【0027】
本開示の一実施形態によると、X~X12は、それぞれ独立して、N又はCRを表し;T~Tは、それぞれ独立して、N又はCRを表し;Y~Yは、それぞれ独立して、N又はCRを表し、ここで、Y~Yの少なくとも1つは、Nであり;Lは、単結合、置換若しくは非置換(C6~C12)アリーレン又は置換若しくは非置換(5~15員)ヘテロアリーレンを表し;Ar及びArは、それぞれ独立して、置換若しくは非置換(C6~C18)アリール又は置換若しくは非置換(5~15員)ヘテロアリールを表し;及びR~Rは、それぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換(C6~C12)アリール又は置換若しくは非置換(5~15員)ヘテロアリールを表すか;或いは隣接する置換基に結合されて環を形成し得る。
【0028】
本開示の別の実施形態によると、X~X12は、それぞれ独立して、CRを表し;T~Tは、それぞれ独立して、N又はCRを表し;Y~Yは、それぞれ独立して、N又はCRを表し、ここで、Y~Yの少なくとも1つは、Nであり;Lは、単結合、非置換(C6~C12)アリーレン又は非置換(5~15員)ヘテロアリーレンを表し;Ar及びArは、それぞれ独立して、非置換の若しくは1つ以上の重水素で置換された(C6~C18)アリール又は非置換(5~15員)ヘテロアリールを表し;及びR~Rは、それぞれ独立して、水素、非置換(C6~C12)アリール若しくは非置換(5~15員)ヘテロアリールを表すか;又は隣接する置換基に結合されて環を形成し得る。
【0029】
本開示の式では、隣接する置換基が互いに結合されて環を形成する場合、環は、置換若しくは非置換の単環式若しくは多環式(3~30員)の脂肪族環若しくは芳香族環又はそれらの組み合わせであり得る。更に、形成された環は、B、N、O、S、Si及びPから選択される少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくはN、O及びSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有し得る。本開示の一実施形態によれば、環骨格原子の数は、5~20個である。本開示の別の実施形態によれば、環骨格原子の数は、5~15個である。例えば、縮合環は、置換若しくは非置換ジベンゾチオフェン環、置換若しくは非置換ジベンゾフラン環、置換若しくは非置換ナフタレン環、置換若しくは非置換フェナントレン環、置換若しくは非置換フルオレン環、置換若しくは非置換ベンゾチオフェン環、置換若しくは非置換ベンゾフラン環、置換若しくは非置換インドール環、置換若しくは非置換インデン環、置換若しくは非置換ベンゼン環又は置換若しくは非置換カルバゾール環であり得る。
【0030】
本開示の式では、ヘテロアリール(レン)は、それぞれ独立して、B、N、O、S、Si及びPから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有し得る。更に、ヘテロ原子は、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換又は非置換(C1~C30)アルキル、置換又は非置換(C6~C30)アリール、置換又は非置換(5~30員)ヘテロアリール、置換又は非置換(C3~C30)シクロアルキル、置換又は非置換(C1~C30)アルコキシ、置換又は非置換トリ(C1~C30)アルキルシリル、置換又は非置換ジ(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールシリル、置換又は非置換(C1~C30)アルキルジ(C6~C30)アリールシリル、置換又は非置換トリ(C6~C30)アリールシリル、置換又は非置換モノ-又はジ-(C1~C30)アルキルアミノ、置換又は非置換モノ-又はジ-(C6~C30)アリールアミノ及び置換又は非置換(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールアミノからなる群から選択される少なくとも1つに結合され得る。
【0031】
式1によって表される化合物としては、以下の化合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【0032】
本開示による式1によって表される化合物は、当業者に公知の合成方法によって製造することができる。例えば、本開示の有機エレクトロルミネセント化合物は、以下の反応スキームに示される通りに合成することができるが、これらに限定されない。
【0033】
[反応スキーム1]
【化8】
反応スキーム1では、X~X12、T~T、Y~Y、L、Ar及びArは、式1で定義された通りである。
【0034】
化合物Aは、韓国特許出願公開第2018-0099510号明細書等に開示された方法を参照することによって調製することができる。式1によって表される化合物の例示的な合成例を上に記載したが、当業者であれば、それらの全てがブッフバルト-ハートウィッグクロスカップリング反応、N-アリール化反応、鈴木クロスカップリング反応、分子内酸誘発環化反応、Pd(II)触媒酸化的環化反応、SN置換反応、SN置換反応、ホスフィン媒介性還元的環化反応等に基づくことと、具体的な合成例に明記されていないが、上の式1で定義されている置換基が結合している場合でも上記の反応が進行することとを容易に理解できるであろう。
【0035】
本開示は、式1によって表される化合物を含む有機エレクトロルミネセント材料及び有機エレクトロルミネセント材料を含む有機エレクトロルミネセントデバイスを提供する。
【0036】
有機エレクトロルミネセント材料は、本開示による化合物のみからなり得るか、又は有機エレクトロルミネセント材料に含まれる従来の材料を更に含み得る。
【0037】
本開示の式1によって表される有機エレクトロルミネセント化合物は、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、正孔補助層、発光補助層、電子輸送層、電子緩衝層、電子注入層、中間層、正孔阻止層及び電子阻止層の少なくとも1つ、好ましくは発光層に含まれ得る。発光層に使用される場合、本開示の式1によって表される有機エレクトロルミネセント化合物は、ホスト材料として含まれ得る。好ましくは、発光層は、少なくとも1種のドーパントを更に含み得る。必要に応じて、本開示の有機エレクトロルミネセント化合物は、共ホスト材料として使用され得る。即ち、発光層は、第2ホスト材料として、本開示の式1によって表される有機エレクトロルミネセント化合物(第1ホスト材料)以外の有機エレクトロルミネセント化合物を更に含み得る。この場合、第1ホスト材料と第2ホスト材料との間の重量比は、1:99~99:1の範囲である。層中に2種以上の材料が含まれる場合、層を形成するために混合蒸着が実行され得るか、又は層を形成するために共蒸着が別個に実施され得る。
【0038】
第2のホスト材料は、公知のホスト材料の何れかから選択され得る。好ましくは、第2ホスト材料は、以下の式11~16:
H-(Cz-L-M (11)
H-(Cz)-L-M (12)
【化9】
(式中、Czは、以下の構造:
【化10】
を表し、
Aは、-O-又は-S-を表し;
21~R24は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換若しくは非置換(C1~C30)アルキル、置換若しくは非置換(C6~C30)アリール、置換若しくは非置換(5~30員)ヘテロアリール又はSiR252627(式中、R25~R27は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換(C1~C30)アルキル又は置換若しくは非置換(C6~C30)アリールを表す)を表し;Lは、単結合、置換若しくは非置換(C6~C30)アリーレン又は置換若しくは非置換(5~30員)ヘテロアリーレンを表し;Mは、置換若しくは非置換(C6~C30)アリール又は置換若しくは非置換(5~30員)ヘテロアリールを表し;Y及びYは、それぞれ独立して、-O-、-S-、-N(R31)-又は-C(R32)(R33)-を表し、且つY及びYは、同時には存在せず;R31~R33は、それぞれ独立して、置換若しくは非置換(C1~C30)アルキル、置換若しくは非置換(C6~C30)アリール又は置換若しくは非置換(5~30員)ヘテロアリール(式中、R32及びR33は、同じであるか又は異なり得る)を表し;及びh及びiは、それぞれ独立して、1~3の整数を表し、j、k、l及びmは、それぞれ独立して、1~4の整数を表し、qは、1~3の整数を表し、ここで、h、i、j、k、l、m又はqが2以上の整数を表す場合、(Cz-L)のそれぞれ、(Cz)のそれぞれ、R21のそれぞれ、R22のそれぞれ、R23のそれぞれ又はR24のそれぞれは、同じであるか又は異なり得る)
【化11】
(式中、
~Yは、それぞれ独立して、CR34又はNを表し;
34は、水素、置換若しくは非置換(C1~C30)アルキル、置換若しくは非置換(C6~C30)アリール又は置換若しくは非置換(5~30員)ヘテロアリールを表し;
及びBは、それぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換(C6~C30)アリール又は置換若しくは非置換(5~30員)ヘテロアリールを表し;
は、置換若しくは非置換(C6~C30)アリール又は置換若しくは非置換(5~30員)ヘテロアリールを表し;及び
は、単結合、置換若しくは非置換(C6~C30)アリーレン又は置換若しくは非置換(5~30員)ヘテロアリーレンを表す)
によって表される化合物からなる群から選択され得る。
【0039】
具体的には、第2ホスト材料の例としては、以下:
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
(式中、TPSは、トリフェニルシリル基を表す)
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスに含まれるドーパントは、少なくとも1種のリン光性又は蛍光性ドーパント、好ましくは少なくとも1種のリン光性ドーパントである。本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスに適用されるリン光性ドーパント材料は、特に限定されないが、好ましくはイリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、銅(Cu)及び白金(Pt)の金属化錯体化合物から選択され得、より好ましくはイリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、銅(Cu)及び白金(Pt)のオルト金属化錯体化合物から選択され得、一層より好ましくはオルト金属化イリジウム錯体化合物であり得る。
【0041】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスに含まれるドーパントは、以下の式101で表される化合物であり得るが、それには限定されない。
【化18】
【0042】
式101では、Lは、以下の構造1~3:
【化19】
(式中、R100~R103は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、非置換の若しくはハロゲンで置換された(C1~C30)アルキル、置換若しくは非置換(C3~C30)シクロアルキル、置換若しくは非置換(C6~C30)アリール、シアノ、置換若しくは非置換(3~30員)ヘテロアリール又は置換若しくは非置換(C1~C30)アルコキシを表すか;或いは隣接するR100~R103に結合されて、ピリジンと共に置換若しくは非置換の縮合環、例えば置換若しくは非置換キノリン、置換若しくは非置換イソキノリン、置換若しくは非置換ベンゾフロピリジン、置換若しくは非置換ベンゾチエノピリジン、置換若しくは非置換インデノピリジン、置換若しくは非置換ベンゾフロキノリン、置換若しくは非置換ベンゾチエノキノリン又は置換若しくは非置換インデノキノリン環を形成し得;
104~R107は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、非置換の若しくはハロゲンで置換された(C1~C30)アルキル、置換若しくは非置換(C3~C30)シクロアルキル、置換若しくは非置換(C6~C30)アリール、シアノ、置換若しくは非置換(3~30員)ヘテロアリール、シアノ又は置換若しくは非置換(C1~C30)アルコキシを表すか;或いは隣接するR104~R107に結合されて、ベンゼンと共に置換若しくは非置換の縮合環、例えば置換若しくは非置換ナフチル、置換若しくは非置換フルオレン、置換若しくは非置換ジベンゾチオフェン、置換若しくは非置換ジベンゾフラン、置換若しくは非置換インデノピリジン、置換若しくは非置換ベンゾフロピリジン又は置換若しくは非置換ベンゾチエノピリジン環を形成し得;
201~R220は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、非置換の若しくはハロゲンで置換された(C1~C30)アルキル、置換若しくは非置換(C3~C30)シクロアルキル又は置換若しくは非置換(C6~C30)アリールを表すか;或いは隣接するR201~R220に結合されて、置換又は非置換の縮合環を形成し得;及び
sは、1~3の整数を表す)
から選択される。
【0043】
ドーパント化合物の具体的な例は、以下の通りであるが、これらに限定されない。
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【0044】
本開示による有機エレクトロルミネセントデバイスは、第1電極;第2電極;及び第1電極と第2電極との間の少なくとも1つの有機層を含む。
【0045】
第1電極及び第2電極の一方は、アノードであり得、他方は、カソードであり得る。有機層は、発光層を含み得、且つ正孔注入層、正孔輸送層、正孔補助層、発光補助層、電子輸送層、電子緩衝層、電子注入層、中間層、正孔阻止層及び電子阻止層から選択される少なくとも1つの層を更に含み得る。層のそれぞれは、多層から更になり得る。
【0046】
第1電極及び第2電極は、それぞれ透過性の導電性材料、半透過性の導電性材料又は反射性の導電性材料で形成され得る。有機エレクトロルミネセントデバイスは、第1電極及び第2電極を形成する材料の種類に従ってトップエミッション型、ボトムエミッション型又は両面エミッション型であり得る。更に、正孔注入層は、p型ドーパントで更にドープされ得、電子注入層は、n型ドーパントで更にドープされ得る。
【0047】
本開示の一実施形態によれば、本開示による有機エレクトロルミネセントデバイスは、本開示の有機エレクトロルミネセント化合物に加えて、電子輸送材料、電子注入材料、電子緩衝材料及び正孔阻止材料から選択される少なくとも1つとしてアジン系化合物を更に含み得る。
【0048】
有機層は、アリールアミン系化合物及びスチリルアリールアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を更に含み得る。
【0049】
更に、本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスでは、有機層は、周期表の第1族の金属、第2族の金属、第4周期の遷移金属、第5周期の遷移金属、d-遷移元素のランタニド及び有機金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属又は前記金属を含む少なくとも1種の錯体化合物を更に含み得る。
【0050】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスは、本開示の有機エレクトロルミネセント化合物に加えて、当技術分野において公知である、青色、赤色又は緑色発光化合物を含有する少なくとも1つの発光層を更に含むことによって白色光を発し得る。更に、それは、必要に応じて、黄色又は橙色発光層を更に含み得る。
【0051】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスでは、カルコゲナイド層、金属ハロゲン化物層及び金属酸化物層から選択される少なくとも1つの層(以下では「表面層」)は、好ましくは、1つ又は両方の電極の内面上に配置され得る。具体的には、ケイ素又はアルミニウムのカルコゲナイド(酸化物を含む)層は、好ましくは、エレクトロルミネセント媒体層のアノード面上に配置され、金属ハロゲン化物層又は金属酸化物層は、好ましくは、エレクトロルミネセント媒体層のカソード面上に配置される。表面層は、有機エレクトロルミネセントデバイスに動作安定性を提供し得る。好ましくは、カルコゲナイドとしては、SiO(1≦X≦2)、AlO(1≦X≦1.5)、SiON、SiAlON等が挙げられ;金属ハロゲン化物としては、LiF、MgF、CaF、希土類金属フッ化物等が挙げられ;金属酸化物としては、CsO、LiO、MgO、SrO、BaO、CaO等が挙げられる。
【0052】
正孔注入層、正孔輸送層若しくは電子阻止層又はそれらの組み合わせは、アノードと発光層との間に使用され得る。正孔注入層は、アノードから正孔輸送層又は電子阻止層への正孔注入障壁(又は正孔注入電圧)を下げるために多層であり得、ここで、多層のそれぞれは、2種の化合物を同時に使用し得る。正孔輸送層又は電子阻止層も多層であり得る。
【0053】
電子緩衝層、正孔阻止層、電子輸送層若しくは電子注入層又はそれらの組み合わせは、発光層とカソードとの間に使用することができる。電子緩衝層は、電子の注入を制御する及び発光層と電子注入層との間の界面特性を改善するために多層であり得、ここで、多層のそれぞれは、2種の化合物を同時に使用し得る。正孔阻止層又は電子輸送層は、多層であり得、多層のそれぞれが複数の化合物を使用し得る。
【0054】
発光補助層は、アノードと発光層との間又はカソードと発光層との間に配置され得る。発光補助層がアノードと発光層との間に配置される場合、それは、正孔注入及び/若しくは正孔輸送を促進するために又は電子のオーバーフローを防止するために使用することができる。発光補助層がカソードと発光層との間に配置される場合、それは、電子注入及び/若しくは電子輸送を促進するために又は正孔のオーバーフローを防止するために使用することができる。更に、正孔補助層は、正孔輸送層(又は正孔注入層)と発光層との間に配置され得、正孔輸送速度(又は正孔注入速度)を促進又は阻止するのに有効であり得、それにより電荷平衡が制御されることを可能にする。更に、電子阻止層は、正孔輸送層(又は正孔注入層)と発光層との間に配置され得、発光層からオーバーフローする電子を阻止し、励起子を発光層中に閉じ込めて光漏れを防ぎ得る。有機エレクトロルミネセントデバイスが2つ以上の正孔輸送層を含む場合、更に含まれる正孔輸送層は、正孔補助層又は電子阻止層として使用され得る。正孔補助層及び電子阻止層は、有機エレクトロルミネセントデバイスの効率及び/又は寿命を改善する効果を有し得る。
【0055】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスにおいて、電子輸送化合物と還元性ドーパントとの混合領域又は正孔輸送化合物と酸化性ドーパントとの混合領域は、好ましくは、電極の対の少なくとも1つの表面上に配置される。この場合、電子輸送化合物は、アニオンに還元されるため、従って混合領域からエレクトロルミネセント媒体に電子を注入する及び輸送することがより容易になる。更に、正孔輸送化合物は、カチオンに酸化され、従って混合領域からエレクトロルミネセント媒体に正孔を注入及び輸送することがより容易になる。好ましくは、酸化性ドーパントは、様々なルイス酸及びアクセプター化合物を含み、還元性ドーパントは、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、希土類金属及びこれらの混合物を含む。還元性ドーパント層は、白色光を放出する2つ以上の発光層を有する有機エレクトロルミネセントデバイスを作製するための電荷生成層として使用することができる。
【0056】
本開示の一実施形態による有機エレクトロルミネセント材料は、白色有機発光デバイスのための発光材料として使用され得る。白色有機発光デバイスは、R(赤)、G(緑)、B(青)又はYG(黄緑)の発光ユニットの配置に応じて、並行配置(並列)法、積層法又は色変換材料(CCM)法等の様々な構造を有することが示唆されている。更に、本開示の一実施形態による有機エレクトロルミネセント材料は、量子ドット(QD)を含む有機エレクトロルミネセントデバイスにも適用され得る。
【0057】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスの各層を形成するために、真空蒸発、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式膜形成法又はインクジェット印刷、スピンコーティング、ディップコーティング、フローコーティング等の湿式膜形成法を用いることができる。本開示の第1及び第2のホスト化合物は、膜を形成するために共蒸発又は混合蒸発され得る。
【0058】
湿式膜形成法を用いる場合、薄膜は、それぞれの層を形成する材料をエタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の任意の好適な溶媒に溶解又は拡散させることによって形成され得る。溶媒は、各層を形成する材料が、膜を形成するのにいかなる問題も引き起こさない溶媒に可溶であるか又は分散可能である限り、特に制限されない。
【0059】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスを用いることにより、ディスプレイシステム、例えばスマートホン、タブレット、ノートブック、PC、TV若しくは自動車のためのディスプレイシステム又は照明システム、例えば屋外若しくは屋内照明システムを作製することが可能である。
【0060】
以下では、本開示の化合物の調製方法及びこれらの特性について、本開示の代表的な化合物に関して詳細に説明する。しかしながら、本開示は、以下の実施例に限定されない。
【実施例
【0061】
実施例1:化合物A-1の調製
【化25】
化学的1-1(20.0g、69mmol)、化合物1-2(29.3g、76mmol)、硫酸銅(4.4g、27.6mmol)、炭酸カリウム(19.0g、137mmol)及びo-ジクロロベンゼン(343mL)をフラスコに入れ、次いで混合物を18時間還流させた。この反応溶液を室温に冷却し、メタノール(4L)に滴加すると、固体生成物が得られた。得られた固体化合物をカラムクロマトグラフィーによって精製すると、14.4gの黄色固体化合物A-1が得られた(収率:35%)。(M.P.=210℃、蒸着温度(DT)=300℃)
【0062】
実施例2:化合物A-2の調製
【化26】
化合物1-1(16.4g,56mmol)、化合物1-3(22.1g、56mmol)、硫酸銅(3.6g、22.4mmol)、炭酸カリウム(15.6g、112mmol)及びo-ジクロロベンゼン(282mL)をフラスコに入れ、次いで混合物を18時間還流させた。この反応溶液を室温に冷却し、メタノール(4L)に滴加すると、固体生成物が得られた。得られた固体化合物をカラムクロマトグラフィーによって精製すると、6.1gの黄色固体化合物A-2が得られた(収率:18%)。(M.P.=214℃、蒸着温度(DT)=300℃)
【0063】
実施例3:化合物A-3の調製
【化27】
化合物1-1(7.5g,25.8mmol)、化合物1-4(12.0g、25.8mmol)、硫酸銅(2.0g、12.8mmol)、炭酸カリウム(7.1g、51.4mmol)及びo-ジクロロベンゼン(258mL)をフラスコに入れ、次いで混合物を18時間還流させた。この反応溶液を室温に冷却し、メタノール(4L)に滴加すると、固体生成物が得られた。得られた固体化合物をカラムクロマトグラフィーによって精製すると、8gの黄色固体化合物A-3が得られた(収率:44%)。(M.P.=230℃、蒸着温度(DT)=343℃)
【0064】
実施例4:化合物A-4の調製
【化28】
化合物1-1(6.0g,20.5mmol)、化合物1-5(9.5g、20.5mmol)、硫酸銅(1.6g、10.2mmol)、炭酸カリウム(5.6g、40.9mmol)及びo-ジクロロベンゼン(105mL)をフラスコに入れ、次いで混合物を18時間還流させた。この反応溶液を室温に冷却し、メタノール(4L)に滴加すると、固体生成物が得られた。得られた固体化合物をカラムクロマトグラフィーによって精製すると、1.8gの黄色固体化合物A-4が得られた(収率:12%)。(M.P.=137℃、蒸着温度(DT)=330℃)
【0065】
実施例5:化合物A-5の調製
【化29】
化合物1-1(12.9g、44.3mmol)、化合物1-6(14.6g、33.2mmol)、硫酸銅(3.5g、22.1mmol)、炭酸カリウム(12.2g、88.6mmol)及びo-ジクロロベンゼン(342mL)をフラスコに入れ、次いで混合物を18時間還流させた。この反応溶液を室温に冷却し、メタノール(4L)に滴加すると、固体生成物が得られた。得られた固体化合物をカラムクロマトグラフィーによって精製すると、9.5gの黄色固体化合物A-5が得られた(収率:33%)。(M.P.=223℃、蒸着温度(DT)=330℃)
【0066】
実施例6:化合物A-7の調製
【化30】
化合物1-1(8.3g、28.6mmol)、化合物1-7(12.0g、28.6mmol)、硫酸銅(2.3g、14.3mmol)、炭酸カリウム(7.7g、57.2mmol)及びo-ジクロロベンゼン(150mL)をフラスコに入れ、次いで混合物を18時間還流させた。この反応溶液を室温に冷却し、メタノール(4L)に滴加すると、固体生成物が得られた。得られた固体化合物をカラムクロマトグラフィーによって精製すると、4.4gの黄色固体化合物A-7が得られた(収率:22%)。(M.P.=242℃、蒸着温度(DT)=320℃)
【0067】
実施例7:化合物A-9の調製
【化31】
化合物1-1(2.8g、9.6mmol)、化合物1-8(5.0g、14.5mmol)、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(キサントホス)リガンド(0.8g、1.4mmol)、tert-ブトキシドナトリウム(2.8g、29.0mmol)、酢酸パラジウム(Pd(OAc))(0.15g、0.6mmol)及びo-キシレン(48mL)をフラスコに入れ、次いで混合物を18時間還流させた。この反応混合物を室温に冷却し、水と酢酸エチルで抽出し、真空中で乾燥させると、固体生成物が得られた。得られた固体化合物をカラムクロマトグラフィーによって精製すると、1.5gの黄色固体化合物A-9が得られた(収率:26%)。(M.P.=240℃、蒸着温度(DT)=306℃)
【0068】
実施例8:化合物A-21の調製
【化32】
化合物1-1(9.0g、30.9mmol)、化合物1-9(12.2g、30.9mmol)、硫酸銅(2.5g、15.4mmol)、炭酸カリウム(8.5g、61.8mmol)及びo-ジクロロベンゼン(150mL)をフラスコに入れ、次いで混合物を18時間還流させた。この反応溶液を室温に冷却し、メタノール(4L)に滴加すると、固体生成物が得られた。得られた固体化合物をカラムクロマトグラフィーによって精製すると、13.1gの黄色固体化合物A-21が得られた(収率:65%)。(M.P.=258℃、蒸着温度(DT)=331℃)
【0069】
実施例9:化合物A-61の調製
【化33】
化合物1-10(5.0g、13.6mmol)、化合物1-2(5.8g、15.0mmol)、硫酸銅(0.87g、5.4mmol)、炭酸カリウム(3.76g、27.2mmol)及びo-ジクロロベンゼン(70mL)をフラスコに入れ、次いで混合物を18時間還流させた。この反応溶液を室温に冷却し、メタノール(4L)に滴加すると、固体生成物が得られた。得られた固体化合物をカラムクロマトグラフィーによって精製すると、3.0gの黄色固体化合物A-61が得られた(収率:33%)。(M.P.=266℃、蒸着温度(DT)=319℃)
【0070】
実施例10:化合物A-71の調製
【化34】
化合物1-1(7.2g、24.7mmol)、化合物1-11(10.3g、24.7mmol)、フッ化セシウム(18.8g、123.4mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.15g、1.23mmol)及び1-メチル-2-ピロリジノン(NMP)(125mL)をフラスコに入れ、次いで混合物を18時間還流させた。この反応溶液を室温に冷却し、メタノール(4L)に滴加すると、固体生成物が得られた。得られた固体化合物をカラムクロマトグラフィーによって精製すると、7.7gの黄色固体化合物A-71が得られた(収率:45%)。(M.P.=153℃、蒸着温度(DT)=317℃)
【0071】
実施例11:化合物A-82の調製
【化35】
化合物1-1(5.2g、17.7mmol)、化合物1-12(6.0g、14.9mmol)、炭酸セシウム(12.1g、37.2mmol)及びジメチルスルホキシド(DMSO)(100mL)をフラスコに入れ、次いで混合物を18時間還流させた。この反応溶液を室温に冷却し、メタノール(4L)に滴加すると、固体生成物が得られた。得られた固体化合物をカラムクロマトグラフィーによって精製すると、1.8gの黄色固体化合物A-82が得られた(収率:18%)。(M.P.=271℃、蒸着温度(DT)=318℃)
【0072】
実施例12:化合物A-84の調製
【化36】
化合物1-1(5.2g、17.7mmol)、化合物1-13(6.0g、14.9mmol)、炭酸セシウム(14.5g、44.6mmol)及びジメチルスルホキシド(100mL)をフラスコに入れ、次いで混合物を18時間還流させた。この反応溶液を室温に冷却し、メタノール(4L)に滴加すると、固体生成物が得られた。得られた固体化合物をカラムクロマトグラフィーによって精製すると、1.4gの黄色固体化合物A-84が得られた(収率:14%)。(M.P.=177℃、蒸着温度(DT)=354℃)
【0073】
実施例13:化合物A-101の調製
【化37】
化合物1-1(4.5g、15.4mmol)、化合物1-14(6.6g、15.4mmol)、フッ化セシウム(11.7g、77.2mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(0.1g、0.77mmol)及び1-メチル-2-ピロリジノン(80mL)をフラスコに入れ、次いで混合物を18時間還流させた。この反応溶液を室温に冷却し、メタノール(4L)に滴加すると、固体生成物が得られた。得られた固体化合物をカラムクロマトグラフィーによって精製すると、6.4gの黄色固体化合物A-101が得られた(収率:59%)。(M.P.=156℃、蒸着温度(DT)=332℃)
【0074】
実施例14:化合物A-102の調製
【化38】
化合物1-1(6.8g、23.3mmol)、化合物1-15(12.8g、19.4mmol)、硫酸銅(1.5g、9.7mmol)、リン酸三カリウム(8.2g、38.8mmol)及びo-ジクロロベンゼン(100mL)をフラスコに入れ、次いで混合物を18時間還流させた。この反応溶液を室温に冷却し、メタノール(4L)に滴加すると、固体生成物が得られた。得られた固体化合物をカラムクロマトグラフィーによって精製すると、3.0gの黄色固体化合物A-102が得られた(収率:24%)。(M.P.=159℃、蒸着温度(DT)=324℃)
【0075】
実施例15:化合物A-103の調製
【化39】
化合物1-10(13.4g、36.5mmol)、化合物1-15(20.0g、30.4mmol)、硫酸銅(2.4g、15.2mmol)、リン酸三カリウム(12.9g、60.8mmol)及びo-ジクロロベンゼン(160mL)をフラスコに入れ、次いで混合物を18時間還流させた。この反応溶液を室温に冷却し、メタノール(4L)に滴加すると、固体生成物が得られた。得られた固体化合物をカラムクロマトグラフィーによって精製すると、3gの黄色固体化合物A-103が得られた(収率:14%)。(M.P.=325℃、蒸着温度(DT)=349℃)
【0076】
実施例16:化合物A-104の調製
【化40】
化合物1-1(12.0g、40.9mmol)、化合物1-16(25.0g、34.1mmol)、硫酸銅(2.7g、17.1mmol)、リン酸三カリウム(14.5g、68.2mmol)及びo-ジクロロベンゼン(230mL)をフラスコに入れ、次いで混合物を18時間還流させた。この反応溶液を室温に冷却し、メタノール(5L)に滴加すると、固体生成物が得られた。得られた固体化合物をカラムクロマトグラフィーによって精製すると、7.5gの黄色固体化合物A-104が得られた(収率:28%)。(M.P.=238℃、蒸着温度(DT)=350℃)
【0077】
実施例17:化合物A-105の調製
【化41】
化合物1-17(17.0g、49.8mmol)、化合物1-2(19.3g、49.8mmol)、硫酸銅(4.0g、24.9mmol)、炭酸カリウム(13.8g、99.6mmol)及びo-ジクロロベンゼン(250mL)をフラスコに入れ、次いで混合物を18時間還流させた。この反応溶液を室温に冷却し、メタノール(5L)に滴加すると、固体生成物が得られた。得られた固体化合物をカラムクロマトグラフィーによって精製すると、8.4gの黄色固体化合物A-105が得られた(収率:26%)。(M.P.=267℃、蒸着温度(DT)=302℃)
【0078】
比較例:ホストとしての比較化合物と共に蒸着されるOLEDの製造
比較化合物を含むOLEDは、以下の通りに製造した:OLEDのためのガラス基板上の透明電極酸化インジウム錫(ITO)薄膜(10Ω/sq)(ジオマテック株式会社、日本)は、順次、アセトン、エタノール及び蒸留水での超音波洗浄にかけ、次いでイソプロパノール中に保存した。ITO基板は、真空蒸着装置の基板ホルダーに装着した。化合物HI-1は、真空蒸着装置のセルに入れ、次いで装置のチャンバー中の圧力を10-6トールに制御した。その後、セルに電流を流し、上記で導入された物質を蒸発させ、これによりITO基板に厚さ80nmの第1の正孔注入層を形成した。次に、化合物HI-2を真空蒸着装置の別のセルに入れ、セルに電流を流して蒸着させ、それにより第1の正孔注入層上に厚さ5nmの第2の正孔注入層を形成した。次いで、化合物HT-1を真空蒸着装置のセルに入れ、セルに電流を流して蒸発させ、これにより第2の正孔注入層に厚さ10nmの第1の正孔輸送層を形成した。次いで、化合物HT-2を真空蒸着装置の別のセルに入れ、セルに電流を流して蒸発させ、これにより第1の正孔輸送層に厚さ60nmの第2の正孔輸送層を形成した。正孔注入層及び正孔輸送層を形成した後、その上に以下の通りに発光層を形成した:表1に示した化合物をホストとして真空蒸着装置の1つのセルに入れ、化合物D-39をドーパントとして別のセルに入れた。2種の材料を異なる速度で蒸発させ、ホストとドーパントとの総量に基づいて3重量%のドープ量でそれぞれ蒸着させ、第2の正孔輸送層に厚さ40nmの発光層を形成した。次に、化合物ET-1及び化合物EI-1を2つの他のセル内において1:1の比で蒸発させ、発光層に厚さ35nmの電子輸送層を蒸着した。電子輸送層上に厚さ2nmの電子注入層として化合物EI-1を蒸着した後、電子注入層上に別の真空蒸着装置によって厚さ80nmのAlカソードを蒸着した。こうして、OLEDを製造した。
【0079】
上記の調製プロセスにおいて使用したホスト化合物の融点(M.P.)及び蒸着温度(DT)は、それぞれ285℃及び350℃である。
【0080】
デバイス実施例1~5:本開示による化合物をホストとして用いて蒸着されるOLEDの製造
表1に示した化合物を発光層のホストとして使用したこと以外、比較例に記載した方法と同一方法でOLEDを製造した。
【0081】
比較例及びデバイス実施例1~5において製造されたOLEDの1,000ニットの輝度での駆動電圧、発光効率及びCIE色座標並びに使用した化合物の蒸着温度(DT)を下記の表1に提供した。
【0082】
【表1】
【0083】
本開示による有機エレクトロルミネセント化合物をホストとして使用することによって製造されたOLEDは、比較化合物をホストとして使用することによって製造されたOLEDと比較して低い蒸着温度及び高い発光効率を有した。
【0084】
理論によって拘束されることを意図するものではないが、アザアズレン及び窒素含有6員複素環構造を含む融合構造がリンカーによって結合されている化合物内では、リンカーがフェニレン又は融合フェニレンであり、アザアズレン及び窒素含有6員複素環構造を含む融合構造がオルト位置で相互に結合されている場合、2つの構造の平面が捻れ、従ってHOMO及びLUMO値が増加する。従って、メタ位及びパラ位と比較して、電子及び正孔は、ドーパントによってより効率的に輸送されることが理解される。
【0085】
更に、理論によって拘束されることを意図するものではないが、有機エレクトロルミネセント化合物の分子内では、捻れる2つの平面に従い、分子間の相互作用の低下に起因して結晶化度が低下され得る。従って、化合物の融点は、低下され、これにより蒸着中の目詰まりの減少が可能になる。
【0086】
更に、ホスト化合物の蒸着温度の低下に起因して、低温での材料の蒸着が可能である。従って、蒸着中の化合物の分解を減少させることができる。即ち、有機エレクトロルミネセントデバイスの調製プロセスにおいて熱安定性が増加し得る。図1は、本開示の有機エレクトロルミネセント化合物及び従来の有機エレクトロルミネセント化合物の三次元構造を示す。
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
図1