(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】傾きロック装置を備えた傾斜式車両
(51)【国際特許分類】
B62K 5/10 20130101AFI20240604BHJP
B62K 5/027 20130101ALI20240604BHJP
B62K 5/05 20130101ALI20240604BHJP
B62K 5/08 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B62K5/10
B62K5/027
B62K5/05
B62K5/08
(21)【出願番号】P 2021559636
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(86)【国際出願番号】 IB2020053073
(87)【国際公開番号】W WO2020208476
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】102019000005556
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】ラッファエッリ,アンドレーア
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/046280(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/059099(WO,A2)
【文献】特開2004-122832(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146660(WO,A1)
【文献】特開2017-056906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/10
B62K 5/02
B62K 5/05
B62K 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム(3)、
少なくとも一つの後側駆動輪(5)、
左右方向(L-R)に並べて配置された左前側操舵輪(7')及び右前側操舵輪(7'')、
車両(1)の中央面(M)に対して横方向に左右方向(L-R)に延びる上側クロス部材(13)、車両(1)の中央面(M)に対して横方向に左右方向(L-R)に延びる下側クロス部材(15)、上側クロス部材(13)と下側クロス部材(15)とを接続する左直立部(16')、及び上側クロス部材(13)と下側クロス部材(15)とを接続する右直立部(16'')を備えた傾斜四節リンク(11)、
前記左直立部(16')に接続され、各操舵軸線(21A')を中心に左直立部(16')に対して回転するようにされた左支持アーム(21')であって、左サスペンション(33')を介して左前側操舵輪(7')が接続された左支持アーム(21')、
前記右直立部(16'')に接続され、各操舵軸線(21A'')を中心に右直立部(16'')に対して回転するようにされた右支持アーム(21'')であって、右サスペンション(33'')を介して右前側操舵輪(7'')が接続された右支持アーム(21')、
左右方向に延び、第一端部(23.1)の位置で左支持アーム(21')に対して枢着され、第二端部(23.2)の位置で右支持アーム(21'')に枢着され、各操舵軸線(21A'、21A'')を中心とする左支持アーム(21')の回転運動及び右支持アーム(21'')の回転運動に追従するようにされ、かつ、車両(1)が傾斜運動を実行する時に各傾斜軸線(24X)を中心に左支持アーム(21')及び右支持アーム(21'')に対して回転するようにされた横方向構成要素(23)、並びに、
傾きロック装置(50'、50'')
を備えた傾斜式車両(1)であって、
前記傾きロック装置(50'、50'')が
支持アーム(21';21'')に対するばね運動を実行する、各サスペンション(33';33'')の第一部材(47'、47'';45'、45'';120'、120'';151'、151'';161'、161'')と、傾斜軸線(24X)を中心とした横方向構成要素の回転に比例する回転運動を実行するように、横方向構成要素(23)に機械的に接続され、各操舵輪(7';7'')に関連付けられた第二部材(57'、57'';24.1'、24.1'';105)とをお互いに対して拘束させることによって、単一の作動装置を用いて、各サスペンション(33';33'')のばね運動及び傾斜軸線(24X)を中心とした前記横方向構成要素の回転運動をロックするよう適合された、前記左前側操舵輪(7')及び右前側操舵輪(7'')の少なくとも一方用の第一ブレーキ(53'、53'')と、
前記単一の作動装置によって、各サスペンション(33''、33')の少なくともばね運動をロックするよう適合された、前記左前側操舵輪(7')及び右前側操舵輪(7'')の他方用の第二ブレーキ(53''、53')と
を備えている
ことを特徴とする車両。
【請求項2】
前記第二ブレーキ(53''、53')が、さらに、前記左前側操舵輪(7')及び右前側操舵輪(7'')の他方のサスペンション(33''、33')の第一部材(47''、47';45''、45';120''、120';151''、151';161''、161')と、各操舵輪(7''、7')に関連付けされ、傾斜軸線(24X)を中心とした横方向構成要素(23)の回転に比例した回転運動を実行する追加第二部材(57''、57';24.1''、24.1';105)とをお互いに対して拘束するように適合されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
各第二部材(57''、57';24.1''、24.1';105)が、各支持アーム(21'、21'')に回転のために支持されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
横方向構成要素が、操舵柱(27)によって車両(1)のハンドルバー(29)に接続された操舵棒(23)である
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の車両。
【請求項5】
傾きロック装置が、支持アーム(21';21'')上で支持され、各サスペンション(33';33'')の第一部材(45';45'')に機械的に接続され、サスペンションばね運動(33')に比例する運動で支持アーム(21';21'')に対して動くようにされた、前記左前側操舵輪(7')及び右前側操舵輪(7'')の各々のための追加部材(55'、55'';103'、103'')をさらに備え、
前記
第一ブレーキが、前記追加部材(55'、55'';103'、103'')及び前記第二部材(57'、57'';10
5';10
5'')をお互いに対してロックするように適合されている
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の車両。
【請求項6】
前記追加部材(55'、55'';103'、103'')が、支持アーム(21';21'')に回転可能に接続され、各サスペンション(33';33'')のばね運動に比例して、支持アーム(21';21'')に対して回転するよう適合されている
ことを特徴とする請求項5に記載の車両。
【請求項7】
前記第二部材(57';57'';105';105'')が、支持アーム(21';21'')に回転可能に接続され、傾斜軸線(24X)を中心とした横方向構成要素(23)の回転運動に比例して、支持アーム(21';21'')に対して回転するよう適合されている
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の車両。
【請求項8】
第二部材(105';105'')が、支持アーム(21';21'')に回転可能に接続され、傾斜軸線(24X)を中心とする横方向構成要素(23)の回転運動に比例して、支持アーム(21';21'')に対して回転するよう適合され、
追加部材(55';55'')及び第二部材(57';57'')が、実質的に並行でかつ離間した軸線(56A;24X)の各々を中心として
支持アーム(21';21'')に対して回転するよう配置されている
ことを特徴とする請求項6に記載の車両。
【請求項9】
各ブレーキ(53';53'')がディスクブレーキであり、キャリパ(55';55'')及びディスクセクタ(57';57'')を備え、
前記キャリパが追加部材(55';55'')の一部であり、前記ディスクセクタが第二部材(57';57'')の一部であるか、又はその逆である
ことを特徴とする請求項8に記載の車両。
【請求項10】
第二部材(105';105'')が、支持アーム(21';21'')に回転可能に支持され、傾斜軸線(24X)を中心とした横方向構成要素(23)の回転運動に比例して、支持アーム(21';21'')に対して回転するよう適合され、
追加部材(103';103'')及び第二部材(105';105'')が、
支持アーム(21';21'')に対して共通軸を中心に回転するよう配置されている
ことを特徴とする請求項6に記載の車両。
【請求項11】
前記第一ブレーキ(53';53'')が、追加部材(103';103'')及び第二部材(105';105'')を相互に角度的にロックするように構成されている
ことを特徴とする請求項10に記載の車両。
【請求項12】
前記
第一ブレーキがドラムブレーキである
ことを特徴とする請求項11に記載の車両。
【請求項13】
追加部材(55';55'';103';103'')が、ロッド(63';63'')を用いて、サスペンション(33';33'')の第一部材(47'、47'';45'、45'';120'、120'')に接続されている
ことを特徴とする請求項5~12の何れか一項に記載の車両。
【請求項14】
追加部材(55'、55'')が、サスペンション(33'、33'')の第一部材(45'、45'')に堅固に接続され、
第二部材(57'、57'')が、傾斜軸線(24X)を中心とした横方向構成要素(23)の回転運動を第二部材(57';57'')に伝達するロッド(64';64'')を介して横方向構成要素(23)に拘束されている
ことを特徴とする請求項5~11の何れか一項に記載の車両。
【請求項15】
サスペンション(33'、33'')の第一部材(47'、47'';45'、45'')が、サスペンション四節リンクの要素を備えている
ことを特徴とする請求項13又は14に記載の車両。
【請求項16】
サスペンションの第一部材(120';120'')が、線形運動を行う要素を備えている
ことを特徴とする請求項13に記載の車両。
【請求項17】
各サスペンション(33';33'')が、各支持アーム(21';21'')に回転可能に結合された第一クランク(45'、45'')と、各支持
アーム(21';21'')に回転可能に結合された第二クランク(47';47'')を備えたサスペンション四節リンクを有し、
傾きロック装置が、サスペンション四節リンクの第一クランク(45';45'')に回転軸線(126';126'')を中心に回転可能に支持された、前記左前側操舵輪(7')及び右前側操舵輪(7'')の各々のための追加部材(103'、103'')を備え、
追加部材(103'、103'')が、第一クランク(45';45'')に前記回転軸線(126';126'')を中心に回転可能に支持された第二部材(105';105'')と同軸であり、
追加部材(103';103'')が第二クランク(47';47'')に機械的に接続され、サスペンション(33';33'')のばね運動に比例して前記回転軸線(126';126'')を中心に回転するようにされ、
第二部材(105';105'')が横方向構成要素(23)に機械的に接続され、傾斜軸線(24X)を中心とした横方向構成要素(23)の回転に比例して、前記回転軸線を中心に回転するようにされ、
前記
第一ブレーキ(53';53'')が、追加部材(103';103'')と第二部材(105';105'')とをお互いに対して回転方向にロックするよう適合されている
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の車両。
【請求項18】
前記
第一ブレーキ(53'、53'')がドラムブレーキである
ことを特徴とする請求項17に記載の車両。
【請求項19】
各サスペンション(33'、33'')がサスペンション四節リンクを備え、
各サスペンション四節リンクが、各支持アーム(21';21'')に回転可能に結合された第一クランク(153'、153'')、各支持アーム(21';21'')に回転可能に結合された第二クランク(155'、155'')、及び前記第一クランク及び第二クランクによって支持アーム(21'、21'')に接続された車輪支持部(151'、151'')を備え、
各サスペンション四節リンクが、各車輪(7';7'')の回転軸線に直交する面で動き、
第一ブレーキ及び第二ブレーキ(53'、53'')の各第一ブレーキ部材(55'、55'')が、左前側操舵輪(7')及び右前側操舵輪(7'')の車輪支持部(151';151'')に堅固に連結され、
第一ブレーキ及び第二ブレーキ(53'、53'')の各第二ブレーキ部材(57';57'')が、各支持アーム(21'、21'')に揺動可能に結合され、
かつ、横方向構成要素(23)に機械的に接続され、傾斜軸線(24X)を中心として横方向構成要素(23)の回転に比例した回転運動を実行するようにした
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の車両。
【請求項20】
サスペンション四節リンクが、ワット式四節リンク、ロバーツ式四節リンク及びチェビシェフ四節リンクの一つである
ことを特徴とする請求項19に記載の車両。
【請求項21】
各サスペンション(33'、33'')が、弾性部材(35'、35'')及びショックアブソーバ(37'、37'')を含むサスペンション組立体を備え、
各サスペンション組立体が、各
支持アーム(21'、21'')に接続された上端部と、サスペンション組立体の下端を各支持アーム(21'、21'')に機械的に接続する揺動アーム(163'、163'')にヒンジ結合された下端部とを有し、
第一ブレーキ及び第二ブレーキ(53'、53'')の各々が、サスペンション組立体の下端に堅固の結合された第一ブレーキ部材(55'、55'')と、各
支持アーム(21'、21'')及びサスペンション組立体の上端部の一方にヒンジ結合された第二ブレーキ部材(57'、57'')を備え、
第二ブレーキ部材(57'、57'')が横方向構成要素(23)に機械的に接続され、傾斜軸線(24X)を中心とする横方向構成要素(23)の回転に比例した回転運動を実行するようにした
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂、傾斜式車両、即ち、車両の長手方向に延びる中央面を中心とした傾斜運動を有する車両の分野に関する。本明細書に開示する実施形態は、三輪又はそれ以上の車輪を備えた鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の分野では、二輪鞍乗型車両(例えば、オートバイやスクータ)のハンドリングという特徴及び四輪車両の安定性を組み合わせた車両の提供が増加している。前記車両には、二つの前側操舵輪及び一つの後側駆動輪を備えた三輪式車両及び四輪車両、典型的には、クワッドバイクと称される車両が含まれる。
【0003】
より詳細には、上述した三輪車両には二つの操舵輪が設けられており、前記操舵輪は、ハンドルバーを介して運転者によって制御される車両の操舵を実行するのに車輪であり、かつ、傾斜運動で横方向に傾斜したり傾けたりされ得る。傾斜運動は、実質的に進行方向に向いた軸線を中心とした揺動運動である。三輪車両は、さらに、駆動輪を備え、前記駆動輪はエンジンに駆動的に連結され、駆動トルクを提供し、トラクションを可能にするよう意図されたものであり、一方、対を成す前輪は車両の方向性を提供するよう意図されたものである。
【0004】
対を成す前輪は、操舵運動に加えて傾斜運動を提供し、かつ、衝撃吸収サスペンションによって車両のフレームに連結され弾性運動を可能にする。対を成す二つ前輪を使用することで、通常の二輪車両と比較して,傾斜式車両は、自動車と同様に前輪を地面に二重に支持するので、より高い安定性を有する。
【0005】
前輪は、前輪を前側フレームに接続する一つ又は二つの四節リンクを介在させることで、車輪自体を実質的に同期して傾けることができるような運動機構を用いて相互に接続されている。さらにまた、このような車両は、各前輪に一つずつ、二つの独立した衝撃吸収サスペンションが設けられていることが多い。各サスペンションは、弾性部材(スプリング)と粘性部材(ショックアブソーバ)とを備えている。
【0006】
三輪又は四輪傾斜式車両は高い安定性を示すが、潜在的に特定の条件下では、制御されない傾斜運動のために転倒する可能性がある。これは、特に低速走行時や、停車中、駐車中に発生し得る。このような不都合を回避するために、三輪又は四輪傾斜式車両には、一般的に、傾きロック装置又は傾き制御装置が設けられており、自動車が停止している時や低速で走行している時に誤って転倒することを防止している。傾きロック装置又は傾き制御装置を備えた三輪車両は、例えば、国際公開WO2017115293、国際公開WO2017115294、国際公開WO2017115295、国際公開WO2017115296、国際公開WO2017115297、国際公開WO2018116210、国際公開WO2018116211及びそれらに記載された従来技術文献に開示されている。
【0007】
米国特許US7264251には、傾きロック機構を備えた三輪車両が開示されている。前記三輪車両は四節リンクを備えている。
前記四節リンクは、
車両の中央面に対して横方向、即ち、右左方向に延びる第一クロス部材(上側クロス部材)、
車両の中央面に対して横方向、即ち、右左方向に延びる第二クロス部材(下側クロス部材)、
上側クロス部材の第一端部と下側クロス部材の第一端部とを連結し、車両の中央面に対して一方の側、例えば左側に位置する第一直立部、及び
上側クロス部材の第二端部と下側クロス部材の第二端部とを連結する第二直立部
を備えている。
前輪を支持する支持アームは、前記直立部に関連付けされている。対向する駆動輪と支持アームとの間のばね運動を可能にする衝撃吸収サスペンションが各アームに関連付けされている。前記支持アームは、操舵棒に結合され、ハンドルバーよって与えられる操舵運動を車輪の二つの支持アームに伝達する。車両の傾斜運動をロックするために、前側フレームに対する傾斜四節リンクのクロスバーの回転を防止するブレーキが設けられている。各車輪は、サスペンションによって支持アームに拘束されているので、二つのサスペンション、即ち、左右サスペンションの不均等な圧縮による傾斜運動を回避するために、傾きロック装置は、二つのロック部材を備えており、前記ロック部材は、作動時に、二つのサスペンションの伸縮運動を阻止し、二つのサスペンションのばね運動をロックする。傾きロック装置が作動すると、前輪は、前側フレームに対して操舵運動のみを実行し得る。
【0008】
前記傾きロック装置は非常に効率的であるが、ロックを実行するために三つのアクチュエータを必要とするという問題がある。前記三つのアクチュエータは、傾斜式四節リンクの傾斜運動をロックするアクチュエータと、二つのサスペンションの伸び運動及び縮み運動、即ち、伸縮をロックする二つの異なるアクチュエータから成る。
【0009】
同じ効果を有するが、従来技術の装置の欠点を克服する傾きロック装置があれば便利である。特に、必要とするアクチュエータの数がより少なく、従って、構造が簡単で、費用対効果が高く、さらに、煩雑さが低い傾きロック装置が有用である。
【発明の概要】
【0010】
従来技術の装置の欠点の一つ又は複数を解消又は緩和するために、請求項1に記載の傾きロック装置を備えた車両が提供される。本発明による車両の特に有利な実施形態及び特徴は、従属項において定義される。
【0011】
詳細には、フレーム、少なくとも一つの駆動後輪、並びに、左操舵輪及び右操舵輪から成る二つの前側操舵輪を備えた傾斜式車両が提供される。前記車両は、さらに、傾斜四節リンクを有する。前記傾斜四節リンクは、車両の中央面に対して横方向に延びる上側クロス部材、車両の中央面に対して横方向に延びる下側クロス部材、並びに、前記上側クロス部材及び下側クロス部材を連結する左直立部及び右直立部から成る二つの直立部を有する。さらに、各操舵軸線を中心に左直立部に対して回転するように、左直立部に結合された左支持アームが設けられている。左前側操舵輪は、左サスペンションを介して左支持アームに連結されている。同様に、車両の右側には、各操舵軸線を中心に右直立部に対して回転するように、前記四節リンクの右直立部に結合された右支持アームが設けられている。右前側操舵輪は、右サスペンションを介して前記右支持アームに連結されている。横方向構成要素、例えば、操舵棒が設けられており、該横方向構成要素は、その第一端部で左支持アームに、その第二端部で右支持アームに枢着され、左右の前側操舵輪の各操舵軸線を中心とした左支持アーム及び右支持アームの回転運動に追従するようにされている。さらに、前記横方向構成要素は、車両が傾斜運動を実行する時に、各傾斜軸線を中心に、左支持アーム及び右支持アームに対して回転するように適合されている。傾斜軸線は相互に並行であり、かつ、傾斜四節リンクの軸線と並行である。
【0012】
典型的には、車両には、傾きロック装置が設けられており、前記傾きロック装置は、前記左前側操舵輪及び右前側操舵輪の少なくとも一方に対する第一ブレーキを備えており、この第一ブレーキは、単一の作動装置によって、各サスペンションのばね運動及び傾斜軸線を中心とした前記横方向構成要素の回転運動をロックするように適合されている。傾斜軸線を中心とした横方向構成要素の回転運動のロックは、支持アームに対するばね運動を実行する各サスペンションの第一部材と、傾斜軸線を中心とした横方向構成要素の回転に比例した回転運動を実行するように横方向構成要素に機械的に連結され、かつ、各操舵輪に関連付けされた第二部材とを相互に拘束することによって達成される。第一部材及び第二部材は、本明細書に開示された複数の実施例を参照して以下に詳細に説明するように、直接、又は、それらの間に配置された中間構成要素を介して、相互に拘束される。さらに、傾きロック装置は、前記左前側操舵輪及び右前側操舵輪の他方に対する第二ブレーキを備え、前記第二ブレーキは、前記単一の作動装置によって、少なくとも、各サスペンションのばね運動をロックするように適合されている。
【0013】
このようにして、車両の少なくとも一側において、単一のブレーキでサスペンションをロックして、各車輪のばね運動を阻止し、さらに、傾斜四節リンクの傾斜運動をロックする。車両の反対側において、ブレーキは、関連するサスペンションのばね動作をロックするだけでよい。
【0014】
以下の詳細な説明から明らかになるように、幾つかの実施例では、第一部材、第二部材又はそれら両方が、各ブレーキと一体化されているか、又は、各ブレーキの一部を形成し、即ち、一方又は両方が各ブレーキの部材であり得る。
【0015】
実用的な実施例では、第二ブレーキもまた、傾斜軸線を中心とした横方向構成要素の回転運動をロックするように適合されている。このようにして、車両の左側と右側に対して、実質的に対称な構造が得られる。
【0016】
幾つかの実施例では、傾きロック装置は、各前側操舵輪に対して、支持アームに(直接又は間接的に)支持され、サスペンションに機械的に連結された第一部材を備え、各サスペンションのばね運動に比例した動きで支持アームに対して動作するようにされている。さらにまた、前記傾きロック装置は、前側操舵輪の少なくとも一方、好ましくは、各前側操舵輪に対して、支持アームに(直接又は間接的に)支持され、横方向構成要素に機械的に接続された第二部材を備え、傾斜軸線を中心とした横方向構成要素の回転運動に比例する動きで、支持アームに対して動作するようにされている。ブレーキは、前記第一部材及び前記第二部材をお互いに対してロックするように適合されている。
【0017】
例えば、第一部材は、支持アームに回転可能に連結され、各サスペンションのばね運動に比例して、支持アームに対して回転するよう適合されている。
【0018】
実施可能な実施例では、第二部材は、支持アームに回転可能に連結され、傾斜軸線を中心とした横方向構成要素の回転運動に比例して、支持アームに対して回転するよう適合されている。
【0019】
本明細書で開示された実施例では、傾きロック装置は、前記左前側操舵輪及び右前側操舵輪の各々に対して、支持アームに支持され、各サスペンションの第一部材に機械的に連結された追加部材を備え、サスペンションばね運動に比例した動きで、支持アームに対して動作するようにされている。ブレーキは、前記追加部材及び前記第二部材をお互いに対してロックするよう適合されている。この明細書で開示されている実施例では、追加部材は、各ブレーキと一体化されるか、又は、それ自身が各ブレーキの部材を形成し得る。同様に、第二部材は、各ブレーキと一体化されるか、又は、それ自身が各ブレーキの部材を形成し得る。
本発明を例示的に示し、かつ、非限定的な実施例で説明する添付図面を参照した以下の説明によってより良く理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施例による三輪車両の部品を取り外した状態の底側斜視図である。
【
図3】
図1及び
図2の車両の前端の、
図2のIII-III線に沿った側面図である。
【
図8】別の実施例における傾きロック装置を示している。
【
図9】別の実施例による三輪車両の、部品を取り外した状態の底側斜視図である。
【
図18】傾きロック装置の別の実施例を示している。
【
図19】傾きロック装置の別の実施例を示している。
【
図20】傾きロック装置の別の実施例を備えた車両の前面図である。
【
図24】ワット式四節リンクを使用する車輪サスペンションを備えた、別の実施例による三輪車両の前側支持部の前面図である。
【
図28】
図23及び
図25の前側支持部の右側操舵輪の支持アーム、車輪支持部及びブレーキの側面図である。
【
図29】
図23及び
図25の前側支持部の右側操舵輪の支持アーム、車輪支持部及びブレーキの斜視図である。
【
図30】部品を取り外した状態の支持アームの図面である。
【
図31】部品を取り外した状態の支持アームの
図30と異なる方向から見た図面である。
【
図34】ロバーツ四節リンクを使用する車輪サスペンションを備えた実施例の
図32と同じ方向から見た簡略斜視図である。
【
図35】ロバーツ四節リンクを使用する車輪サスペンションを備えた実施例の
図33と同じ方向から見た簡略側面図である。
【
図36】チェビシェフ四節リンクを使用する車輪サスペンションを備えた実施例の
図32と同じ方向から見た簡略斜視図である。
【
図37】チェビシェフ四節リンクを使用する車輪サスペンションを備えた実施例の
図33と同じ方向から見た簡略側面図である。
【
図38】本発明に係る傾きロック装置の別の実施例を備えた三輪車両の右側操舵前輪の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の図を参照すると、矢印Fは車両の前進方向を示しており、二重矢印L-Rは、車両の左右方向を示しており、矢印U-Dは、車両の上下方向を示している。「左」、「右」、「上」、「下」という用語は、静止した、即ち、傾いていない車両に座っているドライバーに対して参照される。また、「横方向」は左右方向、即ち、車両の中央面に対して横方向に延びる方向を意味する。
【0022】
【0023】
要約すると、この第一実施例において、傾斜式鞍乗型車両は、少なくとも二つの前側操舵輪を備え、横方向、即ち、左右方向に延びる傾斜式四節リンクを備えている。前記傾斜式四節リンクは、二つのクロス部材、即ち、上側クロス部材及び下側クロス部材を有し、前記二つのクロス部材は、二つの直立部、即ち、右側直立部及び左側直立部によって結合されている。各々サスペンションを介して前側右操舵輪及び前側左操舵輪を支持する左右の支持アームが前記直立部に取り付けられている。二つの支持アームは、横方向構成要素によって接続されている。前記横方向構成要素は操舵棒から成り得、操舵棒は、二つの軸線、即ち、傾斜軸線及び傾斜軸線に直交する軸線周りの回転を可能にする各結合部材を用いて、その二つ端部で二つの支持アームに拘束されている。第一ブレーキ部材は、典型的にはディスクブレーキであり、前記横方向構成要素の少なくとも一端、好ましくは両端に関連付けられている。第一ブレーキ部材は、各車輪支持アームに、回転軸線周りに回転可能に支持されている。第一ブレーキ部材は、傾斜軸線周りの横方向構成要素の回転運動と一体的に、指示アームに対して回転する。第一ブレーキ部材は、第二ブレーキ部材に関連付けられており、第二ブレーキ部材は、各車輪支持アームに、第一ブレーキ部材の回転軸線と並行であるが離間した回転軸線周りに回転可能に支持されている。前記第二ブレーキ部材は、各車輪のサスペンションの少なくとも一つの要素、例えば、ロッドによって拘束されており、ばね運動、即ち、サスペンションの運動に比例した回転運動で支持アームに対して回転するようにされている。ブレーキを作動させると、二つのブレーキ部材が相互にロックされる。これらブレーキ部材は、並行ではあるが同軸ではない回転軸線周りで支持アームに支持されているので、ブレーキを作動させることによって、支持アームに対する両方のブレーキ部材の運動がロックされ、従って、サスペンションのばね運動及び車両の傾斜運動がロックされることになる。
【0024】
以下に、添付図面を参照して第一実施例をより詳細に説明していく。
図1~
図7において、車両1は、フレーム3、エンジン(図示せず)に駆動的に連結され、駆動トルクを供給する後側駆動輪5、及び一対の前側操舵輪を備えている。より詳細には、車両1は、第一前側操舵輪7'、即ち、左前側操舵輪7'と、第二前側操舵輪7''、即ち、右前側操舵輪7''を備えている。以下、車両1の中央線面Mに対して左右対称な構成部材、構成群、又は構成要素には、同じ参照符号の後に、中心面線Mの左側の構成要素等に対してはカンマを付して、中心洗面Mの構成要素等に対してはダブルカンマを付して参照する。
【0025】
図1~
図7に示す実施例では、車両1の前側部分、以下、前側支持部として参照する部分に、全体を符号9で示す操舵運動機構が設けられており、この操舵運動機構9は、前側操舵輪7'及び7''が、同期して操舵運動及び傾斜運動を行うことを可能にしている。ここで、操舵運動は、各操舵軸線周りの前側操舵輪7'及び7''の運動を意味し、それにより、前進方向Fの直進軌道に対して、車両の軌道に変化を与える。ここで、傾斜運動は、例えば、車両がカーブを曲がる時等に、車両1が垂直面に対して傾くことを可能にする運動を意味する。
【0026】
図示実施例では、操舵運動機構9は、四節リンク11、より正確には並行四辺形節リンク、以下、傾斜四節リンク11と称するを備えている。
【0027】
傾斜四節リンク11は、実質的に相互に並行な第一上側クロス部材13と、第二下側クロス部材15とを備えている。上側クロス部材13及び下側クロス部材15は、左右方向、即ち、中心線面Mに対して横方向にのびている。
【0028】
二つのクロス部材13及び15は、二つの中間点で、ヒンジ13A及び15Aによって、各々フレーム3に揺動可能に支持されている。このようにして二つのクロス部材13及び15は、相互に並行であり、車両1のフレーム3の中心線面Mに位置する各回転軸線を中心に回転可能であり、例えば、車両が高速でカーブを曲がる時に、傾斜運動を実行し得る。
【0029】
傾斜四節リンク11は、さらに、二つの直立部、即ち、左直立部16'及び右直立部16''を備えている。二つの直立部16'及び16''は、上側クロス部材13及び下側クロス部材15にヒンジ接続され、傾斜式四節リンクを形成している。符号17'、19'及び符号17''、19''は、車両1の両側にあるヒンジを示しており、これらヒンジを介して、直立部16'及び16''はクロス部材13及び15にヒンジ接続されている。より詳細には、上側クロス部材13は、ヒンジ17'によって、その第一端部13.1の一で左直立部16'にヒンジ接続され、かつ、ヒンジ17''によって、その第二端部13.2の位置で右直立部16''にヒンジ接続されている。同様に、クロス部材15は、ヒンジ19'によって、その第一端部15.1の位置で左直立部16'にヒンジ接続され、ヒンジ19''によって、その第二端部15.2の位置で右直立部16''にヒンジ接続されている。ヒンジ17'、17''及び19'、19''は、クロス部材13及び15並びに直立部16'、16''の相互回転軸線を画定している。ヒンジ17'、17''及び19'、19''によって画定された回転軸線は、フレーム3に対するクロス部材13及び15の回転軸線と並行である。
【0030】
操舵運動機構9は、傾斜四節リンク11に加えて、前側操舵輪7'、7''が接続された一対の支持アームを備えている。より詳細には、左側支持アーム21'は左前側操舵輪7'を支持し、右側支持アーム21''は右前側操舵輪7''を支持している。
【0031】
図示実施例では、二つの支持アーム21'、21''は、ハーフフォークの形状をしているが、他の構成でもよいことは理解されるべきである。各支持アーム21'、21''は、傾斜四節リンク11に接続され、符号21A',21A''で示された各操舵軸線周りで、左前輪7'及び右前輪7''に対して各々回転するようにされている。操舵軸線21A'及び21A''は、矢印Uの方向にほぼ向けられており、より詳細には、前記操舵軸線は、垂直方向に対して僅かに後方に傾けられている。
【0032】
図面実施例では、支持アーム21'、21''の上側部分は、傾斜四節リンク11の各直立部16'、16''内に収容されている。この目的のために、二つの直立部16'、16''は、中空円筒本体で形成され得、その内部には、車輪7'、7''の支持アーム21'、21''のベアリング(図示せず)が設けられている。
【0033】
操舵軸線21A'、21A''周りの二つの支持アーム21'、21''の操舵運動を制御するために、左右方向に延びる横方向構成要素23が設けられている。図示実施例では、横方向構成要素23は、操舵棒、即ち、操舵柱からの操舵運動を二つの支持アーム21'、21''に伝達し、従って、二つの前側操舵輪7'、7''に伝達するバーを構成している。従って、以下、横方向構成要素23は、操舵棒23として参照する。操舵棒23は、その左端部23.1で連結部材24'によって左直立部16'にヒンジ結合され、その右端部23.2で連結部材24''によって右直立部16''にヒンジ結合されている。各連結部材24'、24''は、操舵棒23と各直立部16'、16''との間の二つの相互回転軸線を画定している。連結部材24'によって画定された二つの回転軸線が、
図3,4,及び5に、符号24X及び24Yで示されている。二つの連結部材24'、24''の軸線24Xは、車両1の前進方向Fに向けられており、車両1が傾斜運動を実行する時に、操舵棒23が、支持アーム21'、21''に対して回転すること、従って、直立部16'、16''に対して回転することを可能にする。従って、軸線24Xは、この明細書では、傾斜軸線としても参照される。軸線24Yは、上下方向(矢印U-D)に向けられており、操舵運動を実行するように操舵棒23が直立部16'、16''に対して回転することを可能にする。
【0034】
操舵棒23は、車両1のハンドルバー29を用いて操作される操舵柱27による制御下で二重矢印f23(
図1、2及び6参照)に沿って移動可能である。操舵柱27は、その中心点で、トランスミッション31によって操舵棒23に連結されている。操舵柱23の軸線周りのハンドルバー29の回転によって、矢印f23に従った操舵棒23の並進が生じ、この動きは、連結部材24'、24''によって、操舵軸線21A',21A''周りで同時に回転する前側操舵輪7'、7''の支持アーム21'、21''に伝達される。
図2に二重矢印Rで概略的に示した車両1のローリング運動、即ち、傾斜運動によって、他方で、各端部23.1,23.2の各傾斜軸線24X周りで、支持アーム21'、21''に対する操舵棒23の回転が生じる。
【0035】
概して、傾斜運動及び操舵運動は、走行中に発生する。車両1が静止している時は、以下で明らかにするように、傾斜運動をロックして、操舵運動を自由にしておくことが望ましく、傾きロック装置は、以下に詳細に説明するように、この目的のために設けられている。
【0036】
各前側操舵輪7'、7''は、サスペンション33'、33''によって各支持アーム21'、21''に接続されている。サスペンションは、当業者に良く知られているように異なる形状を有することができる。従って、以下に説明された添付図面に示されているサスペンションは、限定されるものではなく、例示として解釈されなければならない。
【0037】
図示実施例では、各サスペンション33'、33''は、弾性部材35'、35''(図示実施例では、コイルスプリング)と、粘性部材、即ち、ショックアブソーバ37'、37''とを備えている。非限定的図示実施例では、弾性部材35'、35''及びショックアブソーバ37'、37''は、相互に同軸である。弾性部材35'、35''及びショックアブソーバ37'、37''から成る組立体は、アタッチメント38'、38''(以下、「サスペンション機構38'、38''」として参照する)と共に、サスペンション33'、33''を形成する。弾性部材35'、35''及びショックアブソーバ37'、37''から成る組立体は、各支持アーム21'、21''上の一点に接続され、かつ、サスペンション機構38'、38''上の一点に接続されている。各サスペンション機構38'、38''は、各前側操舵輪7'、7''を支持する。サスペンション機構38'、38''は、各前側操舵輪7'、7''が回転可能に設けられたシャフト(図示せず)に堅固に拘束されている。
【0038】
図示実施例では、サスペンション機構38'、38''は、各前側操舵輪7'、7''の回転軸線を含む平面上で動くサスペンション四節リンクで構成されている。
【0039】
符号41'、41''及び43'、43''は、弾性部材35'、35''及びショックアブソーバ37'、37''から成る組立体の、操舵輪の各支持アーム21'、21''及びサスペンション機構38'、38''に対する拘束点を示している(特に、
図2,4,5参照)。
【0040】
概して、サスペンション機構38'、38''は、各前側操舵輪7'、7''と各支持アーム21'、21''との間のばね運動が可能になるように配置されている。このばね運動は、衝撃吸収サスペンション33'、33''、より詳細には、弾性部材35'、35''及びショックアブソーバ37'、37''の伸縮運動に対応する。
【0041】
より具体的には、図示実施例では、サスペンション機構38'、38''は、各々二つのクランク(oロッカー)45'、47'及び45''、47''を備えたサスペンション四節リンクで構成されている。図示実施例では、各サスペンション四節リンクが、各車輪の回転軸線を含む平面上で揺動するように設けられている一方、他の実施例では、サスペンション四節リンクの揺動面は、添付図面に示された揺動面に対して直交することができ、即ち、サスペンション四節リンクの揺動面は、各車輪の回転軸線に直交することができる。
【0042】
図示実施例では、各クランク45'、47'及び45''、47''は、前側操舵輪7'、7''の各支持アーム21'、21''に、符号49'、51'及び49''、51''で示す位置で枢止されている。走行中、地面の凸凹によって、車両1のばね下質量に対する車両1のばね上質量のばね運動が生じる。ばね上質量は、サスペンションを通して車輪に作用する車両1の質量の部分を意味する。このようなばね上質量は、特に、フレーム、荷重、エンジン等から成り、一方、ばね下質量は、サスペンションによって支持されない、特に、車輪やブレーキ等の車両1の部分を意味する。
【0043】
前側操舵輪7'、7''に対するばね上質量のばね運動は、ショックアブソーバ33'、33''のスプリング35'、35''及びショックアブソーバ37'、37''の伸縮運動を含み、これにサスペンション四節リンク38'、38''の揺動運動が対応する。サスペンション33'、33''のこの運動により、車両が静止している、又は殆ど静止している状態において、二つのサスペンションが同じ動きで同期して動く時に車両のピッチ運動を生じさせ、二つのサスペンションが相互に異なる伸縮をする時に車両1の傾斜運動を生じさせることができる。
【0044】
車両1が低速で走行している時、又は静止している時に、車両1が転倒する危険を回避するために、傾斜四節リンク11の変形によるものと、二つのサスペンション33'、33''の不均等な伸縮によるものの両方に起因する傾斜運動をロックする必要がある。この目的のために、以下に詳細に説明するロック装置が設けられる。
【0045】
要約すると、傾きロック装置は、単一のアクチュエータで、車両1の少なくとも一方側のばね運動をロックし、好ましくは、車両1の両側のばね運動をロックし、さらには、傾斜によって決められる操舵運動機構9の少なくとも一つの部材の回転運動をロックするように配置されている。
【0046】
詳細には、図示実施例では、両方のサスペンション33'、33''の伸縮運動をロックし、さらに、操舵運動を残したまま、即ち、軸線24Yを中心として操舵棒23の回転運動は自由のまま、傾斜軸線24Xを中心とした操舵棒23の回転運動をロックする傾きロック装置が設けられている。
【0047】
より詳細には、図示実施例えは、サスペンション機構38'、38''及び操舵棒23を相互に堅固に接続する傾きロック装置が設けられる。左前側操舵輪7'に関連する傾きロック装置の構成要素が、特に、
図4及び
図5で見ることができる。右前側操舵輪7''に関連する傾きロック装置の構成要素は、左前側操舵輪7'に関連する構成要素と実質的に対称であるので、詳細には説明しない。傾きロック装置の左右の構成要素は、上述した車両の残りの構成要素にも適用した方式に従って、図面において、同じ参照符号に、車両1の左側の構成要素にはカンマ「'」を付し、車両1の右側の構成要素にはダブルカンマ「''」を付して示されている。
【0048】
特に
図4及び
図5を参照すると、左前側操舵輪7'に関連する傾きロック装置の構成要素の組立体が、概して、符号50'で示されている。前記傾きロック装置は、ブレーキ53'、特に、ディスクブレーキを備え、前記ブレーキ53'は、キャリパ55'及びディスクセクタ57'を有する。キャリパ55'は、支持アーム21'によって支持され、それ自身の回転軸線を中心に支持アーム21'に対して回転できるようにされており、同様に、ディスクセクタ57'は支持アーム2上に支持され、それ自身の回転軸線を中心に支持アーム21'に対して回転することができるようにされており、前記ディスクセクタ57'の回転軸線は、キャリパ55'の回転軸線と並行で、かつ、それから離間されている。
図7において、符号56'は、ブレーキ53'のキャリパ55'のアクチュエータ、例えば、油圧式アクチュエータを示している。実際には、二つのディスクブレーキ53'、53''を作動させるために単一の油圧ポンプが設けられ得る。以下に開示される全ての実施例において、同じ作動システムが使用され得る。以下の説明から明らかになるように、ブレーキは、支持アームに対するばね運動を実行する各サスペンション33'、33''の第一部材と、横方向構成要素23に機械的に接続された第二部材とを相互に拘束、即ち、ロックするように適合されている。
図1~
図7の実施例では、第一部材は、サスペンション33'、33''のクランク45'、47'又は45''、47''の一つである。第二部材は、ディスクセクタ57'、57''である。キャリパ55'、55''は、サスペンションばね運動に比例した動きをするように、各支持アーム21'、21''に回転可能に支持され、第一部材(クランク45'、45'')に機械的に接続された、追加部材を表している。
【0049】
以下に開示する複数の実施例及び図示実施例では、対照的なブレーキ配置53'、53''が提供されることに留意されたい。しかしながら、実際には、横方向構成要素23のロックは、前記二つのブレーキの一方のみによって実行され得る。
【0050】
キャリパ55'、55''は、支持アーム21'、21''に支持された傾きロック装置の追加部材である。(以下の説明から明らかになるように)前記追加部材、即ち、キャリパ55'、55''には、各サスペンション33'、33''のばね運動に比例する、支持アームに対する運動が与えられる。典型的には、前記運動は、往復回転運動であり得る。
【0051】
前述したように、ディスクセクタ57'、57''は、傾きロック装置の第二部材であり、第二部材は支持アーム21'、21''に支持され、かつ、操舵棒23に機械的に接続され、傾斜軸線24Xを中心とした操舵棒23の回転運動に比例した運動で、支持アーム21'、21''に対して動くようにされている。
【0052】
キャリパ55'及びディスクセクタ57'は、キャリパ55'及びディスクセクタ57'の支持アーム21'に対する回転運動中、車両1の姿勢に拘わらず、ディスクセクタ57'の周囲縁部が常にキャリパ55'の内部に留まるように配置されている。
【0053】
より詳細には、図示実施例では、ディスクセクタ57'は連結部材24'と一体であり、ディスクセクタ57'の回転軸線を表す傾斜軸線24Xを中心に、揺動するように、即ち、連結部材24'と一体的に往復回転するようにされている。
図4には、傾斜軸線24Xを中心としたディスクセクタ57'の揺動運動が、二重矢印f57で示されている。従って、ディスクセクタ57'は、傾斜軸線24Xを中心とした操舵棒23の傾斜運動に追従する。
【0054】
逆に、キャリパ55'は、支持アーム21'に対するキャリパ55'の回転軸線を表す傾斜軸線24Xと並行な軸線56Aを有するシャフト56'に設けられている(特に、
図5参照)。前記シャフト56'は、前側操舵輪7'の支持アーム21'の付属物61'に拘束されている。従って、キャリパ55'は、前側操舵輪7'の支持アーム21'に対して、軸線56Aを中心に回転可能である。キャリパ55'の揺動運動は、以下に説明するようにキャリパ55'に伝達される対応する衝撃吸収サスペンション33'のばね運動によって生じる。実際には、ブレーキ53'のキャリパ55'は、衝撃吸収サスペンション33'の伸縮運動に比例して軸線56Aを中心に揺動する。
【0055】
キャリパ55'及びディスクセクタ57'の配置は、図示した配置と逆にすることができ、即ち、キャリパ55'を、軸線24Aを中心に回転するように連結部材24'と一体に形成し、ディスクセクタ57'を、衝撃吸収サスペンション33'の動きに従って軸線56Aを中心に揺動するようにシャフト56Aに設け、かつ、衝撃吸収サスペンション33'に連結することができる。
【0056】
ブレーキ53'のキャリパ55'を衝撃吸収サスペンション33'に連結するために、剛性取付部材が設けられる。図示実施例では、前記剛性取付部材は、衝撃吸収サスペンション33'からの運動、従って、サスペンション機構38'からの運動をキャリパ55'に伝達するロッド63'から成る。ロッド63'は、実質的に剛体であり、動作中にその長さが一定に保たれる。ロッド63'の第一端部は、第一連結部材、好ましくは、ボール式連結部材65'によってキャリパ55'に連結される。ロッド63'の第二端部は、第二連結部材、好ましくは、ボール式連結部材67'によって、サスペンション機構38'、より詳細には、衝撃吸収サスペンション33'の伸縮運動(即ち、ばね運動)に追従して動く部材に連結される。
【0057】
図示実施例では、ロッド63'は、ボール式連結部材67'によってクランク45'、47'の一方の延長部、特に、クランク45'の延長部に接続されている。このようにして、ばね運動は、ロッド63'によってブレーキ53'のキャリパ55'に伝達され、キャリパ55'が、ばね運動に比例する角度で、従って、衝撃吸収サスペンション33'の伸縮運動に比例する角度で、シャフト56'の軸線56Aを中心に揺動するようになる。
図4には、ロッド63'の運動が二重矢印f63で示されており、かつ、対応するキャリパ55'の運動が二重矢印f55で示されている。
【0058】
傾きロック装置の動作をより直接的に理解するために、
図7は、傾きロック装置の構成要素と、それと相互作用する車両1の構成要素、より正確には操舵及び傾斜システムの構成要素が概略的に示されている。上述したように、傾きロック装置は、ダブルタイプであり、車両1の右側及び左側に対して実質的に対称である。
図7には、傾きロック装置を形成する二つの組立体、即ち、ダブル傾きロック装置50'(左)及び50''(右)が示されており、左側組立体にはカンマ(')を付し、右側組立体にはダブルカンマ('')を付した同じ符号が付されている。
【0059】
傾きロック装置50'、50''の動作は以下の通りである。車両1が走行中であり、例えば、軌道に沿ってカーブを描くために自由に傾斜運動を行わなければならない時、傾きロック装置50'、50''は非作動にされる。言い換えれば、この状態では、車両1は、傾斜四節リンク11の変形によって許容される傾斜運動を行うことができ、即ち、中心面Mに対して左右に傾斜することができる。ばね運動、即ち、二つの衝撃吸収サスペンション33'、33''の伸縮もまた自由に許容される。操舵運動、即ち、操舵柱27、操舵棒23及び前側操舵輪7'、7''の支持アーム21'、21''の回転もまた自由に許容される。
【0060】
車両1が静止している時、又は、車両1が自由に傾くことが必要でない、又は適切でないような非常に低速で走行している時に、車両1が傾いたり、さらには転倒したりすることの要因となる傾斜四節リンク11の変形及び/又は二つの衝撃吸収サスペンション33'、33''の異なる伸縮を防止するためにダブル傾きロック装置50'、50''は作動される。これには二つのディスクブレーキ53'、53''の作動が必要になる。二つのブレーキ53'、53''のキャリパ55'、55''が閉じられ、従って、各キャリパ55'、55''及び各ディスクセクタ57'、57''は相互にロックされた状態になる。その結果、キャリパ55'、55''及びディスクセクタ57'、57''の回転軸線が相互に離間しているため、支持アーム21'、21''に対するロッド63'の移動が阻止され、各衝撃吸収サスペンション33'、33''もロックされたままになる。その結果、ばね運動は阻害される。また、各傾斜軸線24Xを中心とした連結部材24'、24''の回転運動もロックされ、従って、操舵棒23はこれらの軸線を中心に回転できなくなる。傾斜四節リンク11の変形が阻害され、従って、傾斜運動が抑制される。
【0061】
従って、二つブレーキ53'、53''の作動により、車両1の前側支持部の、操舵運動を除いた全ての運動がロックされる。従って、二つのアクチュエータ56'、56''のみによって、傾斜軸線24Xを中心としたステリングバー23の回転を阻止して傾斜運動がロックされ、同時に、二つのサスペンション33'、33''の伸縮運動を阻止することで、両方の前側操舵輪7'、7''のばね運動もロックされる。従って、車両1の両側で、それぞれの単一のブレーキ53'、53''が、傾斜運動及びばね運動をロックし、操舵棒23と、サスペンション機構38'、38''のばね下要素、この実施例ではクランク45'、45''とを効果的に一体化させる。二つの構成要素(操舵棒23及びクランク45'、45'')が隣接していないので、即ち、それらが相互にヒンジ接続されていないので、クランク45'、45''の運動をキャリパ55'に伝達するロッド63'、63''から成る伝達部材が設けられる。
【0062】
図1~
図7の実施例では、ディスクセクタ57'、57''を各ブレーキ53'、53''のキャリパ55'、55''に堅固に拘束することで、サスペンション機構38'、38''の構成要素(クランク45'、45'')の一方に操舵棒23が拘束され、傾斜運動及びばね運動のロックが得られる。ブレーキ53'、53''の二つの部材は、この実施例では、前側操舵輪7'、7''の各支持アーム21'、21''上でヒンジ接続されている。しかしながら、この構成は、唯一の解決手段ではない。
【0063】
図8の実施例
図8の実施例は、傾きロック装置のブレーキ53'、53''の部材の配置が異なる点で、
図1~
図7の実施例と異なる。
【0064】
要約すると、
図8の実施例では、傾斜式鞍乗型車両には、少なくとも二つの前側操舵輪が設けられており、横方向、即ち、左右方向に延びる傾斜四節リンクを備えている。傾斜四節リンクは、上側クロス部材及び下側クロス部材から成る二つのクロス部材を備え、これらクロス部材は、右直立部及び左直立部から成る二つの直立部によって連結されている。各々、サスペンションを介して右前側操舵輪及び左前側操舵輪を支持する右側支持アーム及び左側支持アームが前記直立部に関連付けられている。二つの支持アームは横方向構成要素によって連結され、前記横方向構成要素は操舵棒から成り得る。操舵棒は、傾斜軸線及び傾斜軸線に直交する軸線から成る二つの軸線周りの回転を可能にする連結部材によって、その二つの端部が二つの支持アームに拘束されている。傾斜軸線周りの横方向構成要素の回転運動を伝達する伝達部材が、横方向構成要素の少なくとも一方の端部、好ましくは、両方の端部に関連付けられている。前記伝達部材、例えば、ロッドは、回転運動を、第一ブレーキ部材、典型的には、ブレーキディスクに伝達し、前記第一ブレーキ部材は、車輪の各支持アームによって支持され、横方向構成要素の傾斜運動に比例した動きで、回転軸線周りに支持アームに対して回転するように適合されている。前記第一ブレーキ部材は、サスペンションの部材に堅固に連結された第二ブレーキ部材に関連付けられており、サスペンションの傾斜運動に比例する回転運動で、それ自身の軸線周りで支持アームに対して回転する。支持アームに対する第一ブレーキ部材及び第二ブレーキ部材の回転軸線は、並行であるが、離間されている。ブレーキを作動させることによって、ブレーキの二つの部材はお互いに対してロックされ、従って、前記部材が同軸でない軸線周りで回転可能であることから、両方のブレーキ部材の、それらが設けられている支持アームに対する動きがロックされ、従って、サスペンションのばね運動及び車両の傾斜運動がロックされる。
【0065】
この実施例では、車両1の構造は、実質的に、
図1~
図7を参照して説明した通りである。
図8には、傾きロック装置の異なる実施例が、右側構成要素50''に限定して概略的に示されており、この実施例では、ブレーキの部材が再び符号53''で示されており、前記ブレーキの部材53''は、支持アーム21''の底部、即ち、サスペンション33''の一部を形成するサスペンション機構38''にヒンジ接続されている。サスペンション33''のばね35''及びショックアブソーバ37''は省略されている。
【0066】
より具体的には、
図8を参照すると、サスペンション機構38''は、支持アーム21''に符号49''の位置でヒンジ接続された第一クランク45''と、支持アーム21''に符号51''の位置でヒンジ接続された第二クランク47''とを有する四節リンクを備えている。ブレーキ53''は、前記クランク45''と一体であり、支点49''を中心にそれと共に一体的に揺動するキャリパ55''を有する。前記キャリパ55''は、ブレーキ53''のディスクセクタ57''と共働する。ディスクセクタ57''は、クランク47''もヒンジ接続されている支点51''の位置で支持アーム21''にヒンジ接続されている。
【0067】
以下の説明から明らかになるように、各ブレーキ構造体53'、53''は、ばね運動を実行する各サスペンションの第一部材と、傾斜軸線を中心とした前記横方向構成要素の回転に比例する回転運動を実行するために、前記横方向構成要素23に機械的に接続された第二部材とを相互にロック、即ち、拘束する。この実施例では、第一部材はサスペンション四節リンク38'、38''のクランク45'、45''である。第二部材はディスクセクタ57'、57''である。
【0068】
図1~
図7の実施例で先に説明したように、傾きロック装置50'、50''は、第一部材45'、45''及び第二部材57'、57''に加えて、支持アーム21'、21''によって支持され、第一部材45'、45''に機械的に接続された追加部材を備えている。
図8の実施例では、前記追加部材は、ブレーキのキャリパ55'、55''である。
【0069】
ディスクセクタ57''は、クランク47''と一体には回転せず、ロッド64''によって連結部材24''に接続されている。連結部材24''は、連結部材24''の傾斜軸線24Xを中心に回転する付属部材24.1''を有し得る。前記ロッド64''は、第一ボール式連結部材66''によって、第一端部の位置で前記連結部材24''に、より正確には前記連結部材24''の付属部材24.1''に接続されている。さらに、前記ロッド64''は、その第二端部の位置で、第二ボール式連結部材68''によってディスクセクタ57''に接続されている。前記ロッド64''は、操舵棒23と一体的に、傾斜軸線24Xを中心に回転する。このようにして、傾斜軸線24Xを中心とした操舵棒23の回転運動は、ブレーキ53''のディスクセクタ57''に伝達される。ロッド64''によってもたらされる伝達のおかげで、ディスクセクタ57''は、傾斜軸線24Xを中心とした操舵棒23と支持アーム21''との相対回転角度に比例した角度で、支点51''の軸線を中心に回転する。ブレーキ53''のキャリパ44''は、クランク45''の揺動角度に等しい角度、即ち、ばね運動を決定する角度で、支持アーム21''に対して、支点49''を中心に揺動する。
【0070】
上述した構成は、車両1の右側に対称的に反映される。
図8に示されていない車両1の残りの部分及び構成要素は、
図1~
図7を参照して既に説明したように構成され得る。
【0071】
図1~
図7の実施例について上述したように、配置を逆にして、キャリパ55''をサスペンション機構38''の第二クランク47''の支点51''にヒンジ結合し、ディスクセクタ57''を第一クランク45''と一体とし、支点49''を中心に揺動するように構成することもできる。
【0072】
図8に示したタイプの傾きロック装置50''が設けられた車両1の動作は以下の通りである。車両1が、通常走行中であり、かつ、傾斜運動を自由に実行する必要がある場合、即ち、車両1が走行する路面に直交する中心面Mを中心に自由に傾斜する必要がある場合、傾きロック装置は非作動にされる。ブレーキ53''は非作動でる。また、車両1の左側においてブレーキ53''と対称的に形成されて配置された、ブレーキ53'も非作動である。
【0073】
傾きロック装置を作動する必要がある場合、例えば、車両1が非常に低速で走行していたり、停止しようとしていたり、静止又は駐車している場合、ディスクブレーキ53''(
図8参照)及び53''(
図8には示されていない)の二つのアクチュエータ56''、56'を作動させれば十分である。このようにして、ディスクセクタ57'、57''と、各キャリパ55'、55''とは相互に一体にされる。その結果、右側では、操舵棒23,ロッド64''、ディスクセクタ57''、キャリパ55''及びクランク45''がロックされ、支持アーム21''に対して回転ができなくなる。同様に、クランク45''が属するのと同じサスペンション四節リンクの一部である第二クランク47''もロックされる。
【0074】
その結果、クランク45''、47''が、左前側操舵輪7''の支持アーム21''に対して回転できなくなるので、右前側操舵輪7''のばね運動が阻止される。車両1の左側の鏡面配置により、右前側操舵輪7'のばね運動もまた、ロックされる。操舵棒23が傾斜軸線24Xを中心に回転することができないため、傾斜運動、即ち、傾斜四節リンク11の変形はロックされる。
【0075】
図8の実施例においても、寸法の観点から特に有利な特徴が提供される。キャリパ55''は、ブレーキパッド(図示せず)が支点49''によって画定された回転軸線の位置に配置されるように設けられる。このようにして、ディスクセクタ57''とキャリパ55''との間の相対的な動きが最小化される。
【0076】
図示された全ての実施例において、傾斜運動のロックの起動は、手動又は自動で行われ得る。例えば、第二のケースでは、速度センサが設けられ得、車両1の前進速度が所定の値より低くなった時に、傾きロックを起動させることができる。
【0077】
本明細書で説明した全ての実施例において、二つのブレーキ53'、53''は、機械式、油圧式又は電気式アクチュエータ、又はその他の方法で作動され得る。例えば、各キャリパ55'、55''には、二つのキャリパに加圧流体を供給する単一の油圧ポンプによって作動され得る、それ自身の油圧アクチュエータが設けられ得る。別の実施例では、例えば、機械式、電気式又は油圧制御によって、二つのキャリパ55'、55''に作用するトラクションケーブルを備えた機械式制御が提供され得る。全ての場合において、両方のブレーキ53'、53''を作動させるには、単一の作動機構で十分であり得る。
【0078】
本明細書に開示された実施例では、傾きロック装置は、車両1の各側のディスクブレーキで構成される。ブレーキによって得られる傾斜運動及びばね運動のロックにより、通常の走行状態では、各々並行であるが離間した軸線を中心に支持アーム21'、21''に対して自由に回転できる二つの部材(ディスクセクタ57'、57''及びキャリパ55'、55'')を相互に一体化する。さらにまた、二つの部材の回転運動は、傾斜軸線24Aを中心とした操舵棒23の回転運動及びサスペンション33'、33''の部材(45'、45'')の回転運動に比例している。
【0079】
別の実施例では、車両1の各側でブレーキに作用して、通常の走行状態では、共通軸線を中心に独立して回転することができ、傾斜運動及びばね運動に比例する前記軸線を中心とした回転を実行する二つの同軸部材の回転運動を直接ロックすることが可能である。
【0080】
図9~
図17の実施例
先の実施例において説明した傾きロック装置のブレーキは、本質的には、ディスクブレーキであり、ブレーキの二つの部材の相互ロックによって、インターロック拘束力を発生するように、二つの部材は、並行だが同軸でない軸線周りに回転する。別の実施例では、ブレーキは、共通の軸線周りに各車輪の支持アームに対して回転する二つの同軸部材を備えたブレーキであり得る。この場合、ブレーキは、ドラムブレーキであり得る。
【0081】
以下、
図9~
図17を参照して、このような実施例をより詳細に説明する。
【0082】
要約すると、この実施例では、傾斜式鞍乗型車両に、横方向、即ち、左右方向に延びる傾斜四節リンクを有する少なくとも二つの前側操舵輪が設けられている。傾斜四節リンクは、上側クロス部材及び下側クロス部材から成る二つのクロス部材を備え、前記クロス部材は、右直立部及び左直立部から成る二つの直立部によって結合されている。各々、各サスペンションを介して右前側操舵輪及び左前側操舵輪を支持する右側支持アーム及び左側支持アームが前記直立部に関連付けられている。二つの支持アームは、操舵棒で構成され得る横方向構成要素によって結合されており、前記横方向構成要素は、その二つの端部で、二つの軸線、即ち、傾斜軸線及び傾斜軸線に直交する軸線を中心に回転可能にする各連結部材によって二つの支持アームに拘束されている。第一ブレーキ部材、典型的には、ドラムブレーキが、横方向構成要素の少なくとも一端、好ましくは両端に関連付けられており、前記第一ブレーキ部材は、車輪の各支持アームによって支持され、傾斜軸線を中心とした横方向構成要素の動きに異例する動きで回転するよう適合されている。第二ブレーキ部材は、第一ブレーキ部材に関連付けされている。第二ブレーキ部材は、各車輪の支持アームに回転可能に支持されており、第一ブレーキ部材と同軸である。第二ブレーキ部材は、各車輪のサスペンションの少なくとも一つの要素に拘束され、ばね運動、即ち、サスペンションの運動に比例する回転運動で支持アームに対して回転するようにされている。ブレーキを作動させることによって、ブレーキの両方の部材の回転運動が、それらが設けられた支持アームに対してロックされ、その結果、サスペンションのばね運動及び車両の傾斜運動がロックされる。
【0083】
ここで図面を参照すると、
図9~
図17には、相互に同軸の部材をロックするブレーキを備えた実施例が開示されている。同じ符号は、
図1~
図7を参照して説明した部材と同一又は同等の部材を示しており、再度説明はしない。
【0084】
図1~
図7の実施例と
図9~
図17の実施例との間の主な違いは、符号53'、53''が付された傾斜運動をロックするブレーキの形状の違い、及びロックされる部材、即ち、ブレーキによって相互に一体化される部材の回転軸線の配置の違いである。従って、以下の説明では、これらの特徴に焦点を当てる。
【0085】
この実施例では、ブレーキ53'、53''は、特殊なドラムブレーキから成り、車両1の前側支持部の二つの部材と一体化された、二つの異なる同軸トラックに作用するシューを備え、ロックされていない傾斜状態では、ブレーキの軸線を中心に相互に回転する。より正確には、第一部材は各支持アーム21'、21''に拘束され、第二部材はサスペンション33'、33''に拘束され、図示実施例ではブレーキシューを担持している第三部材は操舵棒23に拘束され、傾斜運動によって生じる操舵棒23と支持アーム21'、21''との間の傾斜軸線24Xを中心とした相互回転角度に比例する角度で、その回転軸線を中心に回転するようにされている。
【0086】
図9~
図17を参照すると、各ドラムブレーキ53'、53''は、各支持アーム21'、21''に堅固に接続された第一部材101'、101''を備えている。各ブレーキは、さらに、サスペンション33'、33''に接続された第二部材103'、103''を有する。より具体的には、ロッド、即ち、張力・圧縮ロッド63'、63''が、第二部材103'、103''をサスペンション機構38'、38''のクランク45'、45''に接続している。
図1~
図7を参照して説明した先の実施例と同様に、ロッド63'、63''は、クランクと支持アーム21'、21''との間のピボット軸周りのクランク45'、45''の揺動運動を、ブレーキの部材、この実施例では、部材103'、103''に伝達することを目的とする。ドラムブレーキの第二部材103'、103''は、傾斜軸線24X周りに回転可能に設けられている。従って、ドラムブレーキ53'、53''の第二部材103'、103''は、クランク45'、45''のばね運動に比例する回転運動で、傾斜軸線24Xを中心に回転する。ロッド63'、63''は、ボール式連結部材67'、67''によって各クランク45'、45''に連結され得、かつ、ボール式連結部材65'、65''によって、付属部材103あに固定され得る部材103'、103''に連結され得る。
【0087】
各ドラムブレーキ53'、53''は、さらに、連結部材24'、24''と一体化された第三部材105'、105''を備え、前記連結部材24'、24''は、操舵棒23の各端部23.1,23.2を対応する支持アーム21'、21''に連結する。より詳細には、各ドラムブレーキ53'、53''の第三部材105'、105''は、各連結部材24'、24''の傾斜軸線24Xを中心に回転する部分と一体化されている。従って、ドラムブレーキ53'、53''の第三部材105'、105''も、車両1が横方向に傾斜している時、例えば、カーブに沿って走行している時に、支持アーム21'、21''に対して操舵棒23によって実行される回転に対応する軸線24Xを中心とした回転を行うことで、支持アーム21'、21''に対して傾斜軸線24Xを中心に回転する。
【0088】
先に説明した実施例のように、ブレーキ53'、53''は、支持アーム21'、21''に対するばね運動を実行する各サスペンション33'、33''の第一部材45'、45''と、傾斜軸線を中心とした横方向構成要素の回転運動に比例する回転運動を実行するために横方向構成要素23に機械的に接続された第二部材とを相互に拘束、即ち、ロックするよう適合されている。
図9~
図17の実施例では、第二部材は、各ブレーキ53'、53''の部材105'、105''である。また、この実施例では、傾きロック装置50'、50''は、支持アーム21'、21''によって支持され、かつ、第一部材、即ち、クランク45'、45''に運動学的に接続された追加部材を有する。前記追加部材は、この実施例では、ドラムブレーキの第二部材103'、103''である。
【0089】
図15~
図17には、各ドラムブレーキ53'、53''の詳細が示されている。図示ドラムブレーキは、符号53で示されており、また、同様に、ドラムブレーキの一部である個々の構成部材及び構成要素には、同じ構造が車両1の左側及び右側の両方にあることを示すために、カンマ又はダブルカンマなしの参照符号が付されている。
【0090】
第三部材105にヒンジ結合されたシュー107は、図示実施例では、ドラムブレーキ53の第三部材105と一体化されたピン109を中心に揺動する。前記シュー107は、ばね111によって非作動位置に保持され、ピン109の軸背周りに揺動することで、作動機構113の制御の下、拡張され得る。前記シュー107は、相互に同軸である円形トラック101A及び103A上に作用する。トラック101Aは、部材101上に形成され、トラック103Aは部材103上に形成されている。従って、単一の作動機構113をシュー107に作用させることによって、部材101,103,105は相互にロックされ、傾斜軸線24Xを中心に相互に回転することができなくなる。この構成により、この実施例のドラムブレーキの場合、部材101,103,105が、相互に相対的に、共通の軸線(軸線24X)を中心とした回転運動を実行することが可能になり、前記回転運動は、比較的小さい角度、典型的には数十度の角度に制限される。
【0091】
図16Bの斜視図では、部材105が取り外されており、部材103に、それを介してピボットピン109及び作動機構113が突出するスロット103Xが設けられていることを示している。前記スロット103Xは、ブレーキがロックされていない時にドラムブレーキ53の部材間の相対的な回転を可能にする。
【0092】
二つのドラムブレーキ53'、53''は、任意の適切な方法で作動され得る。図示実施例では、中心位置に符号121で示された油圧シリンダ・ピストン式アクチュエータが設けられており(
図9,10及び14参照)、前記アクチュエータは、ブレーキ53'、53''に各々作用する二つのトラクションケーブル123'、123''を制御する。
【0093】
図9~
図17の傾きロック装置の作用は以下の通りである。車両1が走行している時は、傾きロック装置は非作動にされている。ドラムブレーキ53'、53''も非作動である。その結果、車両1は、傾斜四節リンク11の変形運動及び傾斜軸線24Xを中心とした操舵棒23の対応する回転運動によって、自由にロールすることができる。さらに、各サスペンション33'、33''は、左前側操舵輪7'及び右前側操舵輪7''のために独立したばね運動を自由に実行することができる。
【0094】
例えば、車両1が停止又は駐車される場合に、傾きロック装置が作動されると、二つのドラムブレーキ53'、53''が作動され、各ドラムブレーキ53'、53''の部材101'、101''及び103'、103''が部材105'、105''に対してロックされ、操舵棒23、支持アーム21'、21''及びサスペンション機構38'、38''から成るシステムを実質的に剛体にする。このようにして、二つのサスペンション33'、33''の傾斜運動及びばね運動は阻害される。
【0095】
軸線13A及び15Aを中心としたクロス部材13,15の回転を伴う傾斜運動は、単一のドラムブレーキ53'、53''のトラック101Aに作用させることによってもロックされ得ることは理解されるべきである。実際、操舵棒23の軸線24Xを中心とした支持アーム21'、21''に対する相互回転が一度ロックされると、傾斜四節リンク全体がロックされ変形できなくなる。従って、二つのドラムブレーキ53'、53''の一方がトラック101Aを欠き、その各シュー107を部材103(従って、ロッド63及びクランク45)と対応する支持アーム21との間の相対的な角度運動をロックするためのみに使用してもよい。中心軸線Mに対する車両1の望ましくない傾きをもたらす非対称なばね運動を避けるために、前記角度運動は、車両1の右側及び左側の両方でロックされる必要がある。
【0096】
図18及び
図19の実施例
図9~
図17の実施例では、軸線24Xを中心とした操舵棒23の動きは、ブレーキ53'、53''の第三部材105'、105''に直接伝達され、ばね運動はロッド63'、63''によって部材103'、103''に伝達される。しかしながら、別の構成も可能であり、ブレーキ53'、53''が底部、即ち、サスペンション33'、33''に配置され、
図8の実施例に基づいた構成と同じアプローチで、伝達ロッドが、傾斜軸線24Xを中心とした対応する支持アーム21'、21''に対する操舵棒23の揺動運動をブレーキの部材伝達するために使用される。
【0097】
要約すると、この実施例では、傾斜式鞍乗型車両に、横方向、即ち、左右方向に延びる傾斜四節リンクを備えた少なくとも二つの前側操舵輪が設けられる。前記傾斜四節リンクは、上側クロス部材及び下側クロス部材から成る二つのクロス部材を備え、前記二つのクロス部材は、右直立部及び左直立部から成る二つの直立部によって連結されている。各サスペンションを介して各々右前側操舵輪及び左前側操舵輪を支持する右支持アーム及び左支持アームが、直立部材に関連付けされている。二つの支持アームは横方向構成要素によって結合されており、前記横方向構成要素は、操舵棒から成り得、その二つの端部で、傾斜軸線及び傾斜軸線に直交する軸線の二つの軸線を中心とした回転を可能にする各連結部材によって、二つの支持アームに拘束されている。傾斜軸線を中心とした回転運動を伝達する部材、例えば、ロッドは、横方向構成要素の少なくとも一方の端部、好ましくは、両方の端部に関連付けされている。前記伝達部材は、傾斜軸線周りの回転運動を第一ブレーキ部材、典型的にはドラムブレーキに伝達し、前記第一ブレーキ部材はサスペンションの構成要素、例えば、サスペンション四節リンクのクランクに回転可能に支持されている。取付部材、例えば、ロッドは、第一ブレーキ部材を横方向構成要素に連結し、傾斜運動に比例する回転運動を第一ブレーキ部材に伝達するようにしている。従って、第一ブレーキ部材は、傾斜運動に比例する動作で、サスペンション構成要素によって担持された軸を中心に回転する。第二ブレーキ部材は、第一ブレーキ部材に関連付けられ、第一ブレーキ部と同軸に支持され、かつ、ブレーキの第一及び第二部材間の共通軸線を中心に、ばね運動に比例する回転運動で回転するように、サスペンションに拘束されている。ブレーキを作動させることによって、ブレーキの両方の部材の回転運動がロックされ、従って、サスペンションのばね運動及び車両の傾斜運動がロックされる。
【0098】
ここで、図面を参照すると、
図18及び
図19には、ドラムブレーキ53'、53''の三つの部材の共通の回転軸が、サスペンション機構38'、38''の構成要素の一つ、具体的にはサスペンション四節リンクのクランク45''によって支持されている実施例の正面図及び斜視図が示されている。
図18及び
図19には、車両1の右側に配置された傾きロック装置の構成要素だけが示されているが、左側の構成要素は実質的に対称であることは理解される。同じ符号は、先の実施例で既に説明した部材と同一又は同等の部材を示す。
【0099】
より具体的には、
図18及び
図19を参照すると、サスペンション機構38''は、先の実施例の説明と同様に、符号49''で示す位置で支持アーム21''にヒンジ接続された第一クランク45''と、符号51''で示す位置で支持アーム21''にヒンジ接続された第二クランク47''とを有する。
【0100】
ドラムブレーキ53''は、第一部材101''、第二部材103''及び第三部材105''を備え、
図15~
図17で説明したものと実質的に同一の構造を有する。
図18及び
図19には、ドラムブレーキ53が、より明確にするために、部分的に開いた状態で、部品を取り外して示されている。部材105''は、ドラムブレーキ53''のシュー107''を支持し、前記シュー107''は、部材101''及び部材103''に設けられた二つの同軸トラックに各々作用する。部材101''はクランク45''に支持されており、特に
図18に示すように、ブレーキ53''が非作動の時に軸線126を中心に自由に回転できるようにされている。部材103''は部材101''と同軸に設けられており、付属部材103Aを介してクランク47''に接続され、クランク47''に対して、軸線126と並行な軸線103Bを中心に自由に回転することができるようにされている。さらにまた、部材103は、軸線126を中心にクランク45''に対して自由に回転する。実際には、クランク45''、クランク47''、支持アーム21''及び部材103''は四節リンクを形成しており、サスペンション四節リンク38''が変形するのと同様に、サスペンションのばね運動に追従して揺動して変形する。
【0101】
シュー107''がヒンジ結合される部材105''は、軸線126''周りにヒンジ結合され、ボール式連結部材68''によってロッド64にヒンジ結合される。従って、部材105''は、軸線126''周りで回転し、操舵棒23の支持アーム21''に対する軸線24X周りの傾斜に起因する角度運動に対応する角度運動を実行する。
【0102】
上述した構成は、図示していないが車両1の左側に対称的に設けられている。
図18及び
図19に示されていない車両1の残りの部分及び構成要素は、
図1~
図17を参照して既に説明したように構成され得る。
【0103】
従って、この実施例では、各ブレーキ53'、53''は、支持アーム21'、21''に対するばね運動を実行するサスペンションの第一部材、即ち、クランク45'、45''と、横方向構成要素23に機械的に接続されたブレーキの第二部材、即ち、部材105'、105''とを相互に拘束、即ち、ロックするように適合されている。ドラムブレーキ53'、53''の部材103'、103''は、傾きロック装置の追加部材を表す。
【0104】
図18及び
図19に示したタイプの傾きロック装置を備えた車両1の動作は以下の通りである。車両1が通常走行状態にあり、傾斜運動、即ち、車両1が走行している路面に対して直交する中央面Mを中心とした傾きを自由に実行しなければならない時は、傾きロック装置は非作動にされる。ドラムブレーキ53''も非作動である。また、車両1の左側に、ブレーキ53''に対して鏡面的に設けられたブレーキ53'も非作動である。各ドラムブレーキの部材101,103,105は、相互に、かつ、サスペンション機構38'、38''のクランク45'、45''に対して、共通軸線126''、126'を中心に回転することができる。
【0105】
傾きロック装置を作動させる必要がある場合、例えば、車両1が非常に低速で走行していたり、停止、静止又は駐車している場合には、ドラムブレーキ53''(
図18及び
図19参照)及び53'(図示せず)を作動させれば十分である。従って、二つのドラムブレーキ53'、53''の各々の部材101,103,105は相互に一体にされる。その結果、右側では、操舵棒23、ロッド64''、ディスクセクタ57''及び三つの部材101''、103''、105''がロックされ、支持アーム21''に対して回転することができなくされる。同様に、クランク45''が属する同じサスペンション四節リンクの一部である第二クランク47''がロックされる。
【0106】
その結果、クランク45''、47''が左前側操舵輪7の支持アーム21''に対して回転できないので、左前側操舵輪7''のばね運動が防止される。車両1の左側の鏡面構造によって、右前側操舵輪7'のばね運動もロックされる。傾斜軸線24X周りの操舵棒23の回転を不能とすることで、傾斜運動、即ち、傾斜四節リンク11の変形がロックされる。
【0107】
図20~
図23の実施例
本明細書で説明する実施例では、ばね運動はサスペンション機構38'、38''の回転運動である。その結果、傾きロック装置は、連結部材24'、24''によって画定された傾斜軸線24Xを中心とした操舵棒23の回転を、一側でロックし、他側ではサスペンション機構38'、38''の回転運動をロックするように構成される。しかしながら、傾斜運動及びばね運動のロックが達成される原理は、ばね運動が回転運動の代わりに直線運動であるシステムにも適用可能である。
【0108】
図20~
図23は、回転運動の代わりに直線ばね運動を可能にするようにサスペンション機構38'、38''が設けられた実施例を示している。同じ符号は、先に説明した実施例の車両と同一又は同等の部材を示し、再度説明はしない。
図20~
図23の実施例では、ドラムブレーキが設けられているが、
図1~
図7に示したようにディスクブレーキを使用する可能性を排除するものではない。
【0109】
図20~
図23において、各サスペンション33'、33''は、アーム120'、120''が堅固に接続されるスプリングショックアブソーバ組立体を備えている。各アームは、各前側操舵輪7'、7''のピンを回転可能に支持している。符号122'(
図22及び
図23参照)は、車輪7'のピンの支持ベアリングを収容するシートを示している。
【0110】
図示実施例では、各サスペンション33'、33''は、サスペンションの長手方向軸線を中心とした回転運動を回避するように、相互に並行なばね及びショックアブソーバから成る二つの組立体を備えている。各サスペンション33'、33''は、第一端部の位置で、各支持アーム21'、21''に固定されている。この実施例では、サスペンション33'、33''が各支持アーム21'、21''の下方(即ち、前側操舵輪7'、7''に向かって)延びているので、支持アーム21'、21''は、先の実施例で設けられた支持アームより短い。各サスペンション33'、33''の第二端部、即ち、下端はアーム120'、120''に拘束されている。サスペンション33'、33''の伸縮は、前側操舵輪7'、7''の線形ばね運動に対応している。
【0111】
各ドラムブレーキ53'、53''は、先に実施例のロッド63'、63''に相当するロッド63'、63''によって、対応するサスペンション33'、33''の各下端部に接続されている。従って、前側操舵輪7'、7''の線形ばね運動に対応するサスペンションの伸縮動作は、各ドラムブレーキ53'、53''の部材103'、103''に、往復回転運動として伝達される。従って、ドラムブレーキ53'、53''がロックされると、二つのサスペンション33'、33''のばね運動も阻止される。
【0112】
従って、先に説明した実施例と同様に、傾きロック装置の各ブレーキ53'、53''は、サスペンション33'、33''の第一部材120'、120''と、傾斜軸線24Xを中心とした横方向構成要素23の回転に比例した回転運動を実行するように横方向構成要素230に機械的に連結された第二部材、即ち、ブレーキ部材105'、105''とを相互に拘束、即ち、ロックする。傾きロック装置の追加部材は、ドラムブレーキの部材103'、103''によって表されている。
【0113】
図24~
図33の実施例
要約すると、
図24~
図33の実施例には、単純化するために、傾斜式鞍乗型車両1の前側支持部1Aのみが示されている。
【0114】
図24及び
図25には、前側支持部1Aの斜視図及び側面図が示されている。
図26及び
図27は、右前側操舵輪7''及び前側支持部の関連部分のみを示している。
図28,29,30及び31は、右側支持アーム及び傾きロック装置の各ブレーキの側面図及び斜視図を示している。この実施例の傾きロック装置の構造の理解を容易にするために、
図32及び
図33は、前側支持部材1Aの斜視図及び側面図を、模式的及び簡略的に示している。
【0115】
車両は、二つの前側操舵輪、即ち、左前側操舵輪7'及び右前側操舵輪7''を備えている。車両は、さらに、横方向、即ち、左右方向に延びる傾斜四節リンク11を備えている。傾斜四節リンクは、上側クロス部材13及び下側クロス部材15から成る二つのクロス部材を備え、前記クロス部材は、右直立部16'及び左直立部16''から成る二つの直立部によって連結されている。各々、サスペンション33''、33'を介して右前側操舵輪7''及び左前側操舵輪7'を支持する右支持アーム21'及び左支持アーム21''が設けられている。支持アーム21'、21''は、直立部16'、16''に関連付けされており、その上側部分は直立部に収容され、前側操舵輪7'、7''の操舵軸線を中心にその中で回転するようにされている。二つの支持アーム21'、21''は、横方向構成要素23によって相互に連結されており、前記横方向構成要素23は、操舵棒から成り得、その両端部が、二つの軸線、即ち、傾斜軸線24X及び傾斜軸線に直交する軸線24Yを中心とした回転を可能にする連結部材24'、24''によって支持アーム21'、21''に拘束されている。
【0116】
例えば、ブレーキディスクであるブレーキは、少なくとも一つの支持アーム21'、21''に関連付けされている。
図24~
図33の実施例では、左側ブレーキ53'及び右側ブレーキ53''が、各々、左支持アーム21'及び右支持アーム21''に設けられている。二つのブレーキは、車両1の中心面に対して相互に対称である。各ブレーキは、第一ブレーキ部材55'、55''と、第二ブレーキ部材57'、57''を有する。ブレーキ部材57'、57''は、ディスクセクタであり、ブレーキ部材55'、55''は、前記ディスクセクタと協働するブレーキキャリパであるか、又はブレーキキャリパを有する。
【0117】
ブレーキ部材57'、57''は、各車輪支持アーム21'、21''に回転可能に支持されており、回転軸線57Xを中心に回転するようにされている。ブレーキ部材57'、57''は、傾斜軸線24Xを中心とした横方向構成要素23の回転運動に比例して、支持アーム21'、21''に対して回転する。傾斜軸線24Xを中心とした横方向構成要素23の回転運動は、機械的伝達手段によって、各ブレーキ53'、53''のブレーキ部材57'、57''に伝達される。
【0118】
前記伝達手段の一実施例の構成要素が
図30及び
図31によりよく示されており、この図面では明瞭化のために包囲部材は取り除かれている。各機械的伝達手段は、第一ボール式連結部材66'、66''によって、第一上端の位置で揺動アーム70'、70''に連結された各ロッド64'、64''を有し得る。揺動アーム70'、70''は、それが横方向構成要素23と共に、軸線24Xを中心に剛体的に揺動するように連結部材24'、24''に連結され、前記軸線24Xを中心とした横方向構成要素23の角度傾斜運動に対応する角度運動を実行する。各ロッド64'、64''の対向する下端は、別のボール式連結部材68'、68''によって、別の揺動アーム72'、72''に連結されている。前記別の揺動アーム72'、72''は、各支持アーム21'、21''にヒンジ止めされ、各ブレーキ部材57'、57''に剛体的に連結されている。実施例では、ブレーキ部材57'、57''及び別の揺動アーム72'、72''は支持アーム21'、21''の二つの対向する側部に配置されている。
【0119】
要約すると、横方向構成要素23が、軸線24Xを中心に支持アーム21'、21''に対して揺動する時、各ブレーキ53'、53''のブレーキ部材57'、57''は軸線57Xを中心に比例的に揺動する。
【0120】
各ブレーキ部材57'、57''は、各ブレーキ部材55'、55''と協働するように適合されている。
図24~
図33の実施例では、ブレーキ部材55'、55''は、各前側操舵輪7'、7''のサスペンション33'、33''の各サスペンション機構38'、38''の一部を係止する各車輪支持部151'、151''に剛体的に設けられている。各車輪支持部151'、151''は、各車輪7'、7''の軸線を回転可能に支持している。
【0121】
各車輪支持部151'、151''は、二つのロッカー、即ち、クランク153'、153''及び155'、155''によって、各支持アーム21'、21''に連結されている。車輪支持部151'、151''、二つのロッカー153'、153''、155'、155''及び支持アーム21'、21''は、各車輪7'、7''の各サスペンション四節リンクを形成している。
図24~
図33の実施例では、四節リンクは、所謂、ワット式四節リンクである。四節リンクは、各車輪7'、7''の回転軸線に直交する平面にある。
【0122】
サスペンション四節リンクを主体とする各サスペンション機構38'、38''は、ばね35'、35''及びショックアブソーバ37'、37''と共に、各サスペンション33'、33''を形成する。ばね35'、35''及びショックアブソーバ37'、37''によって形成される各組立体は、一端が車輪支持部151'、151''に、他端が支持アーム21'、21''に連結されている。
【0123】
ワット式四節リンクは、サスペンション機構38'、38''がばね運動している間、各前側操舵輪7'、7''の軸線、従って、車輪の中心が、ほぼ直線的な軌道に沿って動くように設計されている。
【0124】
幾つかの実施例では、各ブレーキ部材55'、55''は、そのキャリパの中心が可能な限り各前側操舵輪7'、7''の軸線に近づくような位置で、各車輪支持部151'、151''に剛体的に設けられている。このようにして、ブレーキ53'、53''の作動要素(キャリパ)は、各車輪のばね運動中、ほぼ直線的な軌道に沿って動く。
【0125】
反対に、ブレーキ部材57'、57''は、ヒンジを中心に揺動し、それにより、車両の傾き、即ち、傾斜軸線24Xを中心とした横方向構成要素23の回転に比例した動きで、各支持部材21'、21''に連結される。
【0126】
図1~
図8の実施例のように、例えば、各ブレーキ53'、53''はディスクブレーキであり、図示していないがそのディスクは、ブレーキ部材57'、57''によって形成され、そのキャリパは、ブレーキ部材55'、55''の内側に配置される。
【0127】
二つのブレーキ53'、53''が作動すると、車両の各側部にあるサスペンション四節リンク38'、38''が、支持アーム21'、21''にたいしてロックされるようになり、即ち、ロッカー153'、153''及び155'、155''が、それらを支持アーム21'、21''に連結するヒンジを中止に回転できないようになる。ブレーキ部材57'、57''は、軸線57Aを中心とした回転が阻止される。各揺動アーム72'、72''及びバー64'、64''によってブレーキ部材57'、57''と横方向構成要素23との間が連結されているので、傾斜軸線24Aを中心とした横方向構成要素23の回転運動も阻止される。その結果、車両1の傾き動作及びサスペンション33'、33''のばね動作が阻止される。
【0128】
要約すると、この実施例では、傾きロック装置は、
(A)支持アーム21'、21''に対するばね運動を実行する各サスペンション33'、33''の車輪支持部151'、151''によって表される第一部材と、
(B)傾斜軸線24Xを中心とした横方向構成要素23の回転に比例する回転運動を実行するように、横方向構成要素23に機械的に連結されたブレーキ部材57'、57''によって表される第二部材と
をお互いに対して拘束することによって、サスペンションのばね運動及び車両の傾斜運動をブロックする。
【0129】
図34及び
図35の実施例
図34及び
図35は、
図32及び
図33と同様に概略的かつ簡単な方法で、別の実施例による車両の前側支持部の斜視図及び側面図を示している。
図24~
図33の符号と同じ符号は、同一又は同等の部材又は構成要素を示すために使用され、再度説明はしない。
図32及び
図33と同様に、各サスペンション33'、33''の幾つかの構成要素は、特に、スプリングやショックアブソーバ等は、明確化のために省略されている。
【0130】
図24~
図33(より具体的には
図32及び33)の実施例と、
図34及び35の実施例との間の主たる違いは、サスペンション四節リンク、即ち、サスペンション機構38'、38''の構造にある。
図24~
図33では、サスペンション機構38'、38''を形成するサスペンション四節リンクは、ワット式四節リンクである。
図34及び
図35の実施例では、サスペンション四節リンク38'、38''は、所謂、ロバーツ式四節リンクである。
図34及び
図35のロバーツ式四節リンク38'、38''を形成する構成要素には、サスペンション四節リンクの機能的に同等な構成要素を特定するために、
図24~
図33に使用した参照符号と同じ符号を付す。
【0131】
図36及び
図37の実施例
図36及び
図37は、別の実施例による車両の前側支持部の斜視図及び側面図を、
図32及び
図33と同様に概略的かつ簡単化した方法で示している。
図24~
図33と同じ符号を同一又は同等の部品及び構成要素に付し、再度説明はしない。
【0132】
図24~
図33(より具体的には
図32及び
図33)の実施例と、
図36及び
図37の実施例との間の主たる違いは、サスペンション四節リンク38'、38''の構造にある。
図24~
図33では、サスペンション四節リンク38'、38''はワット式四節リンクである。
図36及び
図37の実施例では、サスペンション四節リンク38'、38''は、所謂、チェビシェフ式四節リンクである。
図36及び
図37のチェビシェフ四節リンク38'、38''を形成する構成要素には、機能的に同等の構成要素に対して、
図24~
図33で使用した符号と同じ符号を付す。
【0133】
ロバーツ式四節リンク及びチェビシェフ四節リンクは両方共、各前輪の軸線が配置されている点が、ほぼ直線的な軌道に沿って動くように設計されている。
【0134】
図38~
図41の実施例
以下、
図38~
図41を参照して傾きロック装置の別の実施例を説明していく。これらの図面には車両の前側支持部の右側部分のみが示されている。前側支持部の左側部分は、前側支持部の右側部分と対称である。
図38~
図41に示されていない車両の残りの部分は、先の実施例に関して上述したものと実質的に同じであり得る。具体的には、車両は、上側クロス部材13及び下側クロス部材15並びに、上側及び下側クロス部材を連結する左直立部16'及び右直立部16''を有する傾斜四節リンクを備えている。各前側操舵輪7'、7''は、サスペンション33'、33''に関連付けされた各支持アーム21'、21''によって支持されている。サスペンションは、ばね35'、35''及びショックアブソーバ37'、37''に加えてサスペンション機構38'、38''を含む。
【0135】
ここで具体的に
図38~
図41を参照すると、ブレーキ、例えば、ディスクブレーキは、少なくとも一つの支持アーム21'、21''に関連付けされている。
図38~
図41の実施例では、右ブレーキ53''を示して以下に説明するが、車両の左側にも不図示の対称構造が設けられている。ブレーキ53''は、ブレーキキャリパを備えた第一ブレーキ部材55''と、ブレーキディスクセクタを含む第二ブレーキ部材57''を備えている。
【0136】
ブレーキ部材57''は、回転軸線57X(
図41参照)を中心に回転するように各支持アーム21''に回転可能に支持されている。ブレーキ部材57''は、傾斜軸線24Xを中心とした横方向構成要素23の回転運動に比例して、支持アーム21''に対して回転する。
【0137】
傾斜軸線24Xを中心とした横方向構成要素23の回転運動は、機械的伝達機構によってブレーキ53''のブレーキ部材57''に伝達される。
図38~
図41の実施例では、前記機械的伝達機構は、第一ボール式連結部材66''によって、その第一上端の位置で揺動アーム70''に連結された各ロッド64''を有する。前記揺動アーム70''は、軸線24Xを中心に揺動するように、連結部材24''に連結され、前記軸線24Xを中心とした横方向構成要素23の角度傾斜運動に対応する角度運動を実行するようにされている。ロッド64''の下端は、別のボール式連結部材68''によってブレーキ部材57''に連結されている。
【0138】
要約すると、横方向構成要素23が軸線24Xを中心に支持アーム21''に対して揺動すると、ブレーキ部材57''が軸線57Xを中心に比例的に揺動する。図示していないが、対称的な構造が、車両の左側にも設けられている。
【0139】
ブレーキ部材57''は、ブレーキ部材55''と協働するよう適合されている。
図38~
図41の実施例では、ブレーキ部材55''は、サスペンション33''のばね35''及びショックアブソーバ37''によって形成された組立体の下端に堅固に連結されている。具体的には、ブレーキ部材55''は、ブラケット161''を介して、ばね・ショックアブソーバ組立体の下端に堅固に連結されている。ばね・ショックアブソーバ組立体の上端は、連結部材、例えば、球状連結部材を通して支持アーム21''に結合されている。ばね・ショックアブソーバ組立体の下端は、さらに、揺動アーム163''によって、支持アーム21''の下端に結合されている。揺動アーム163''は、163Xの位置で支持アーム21''にヒンジ止めされ、かつ、符号163Yの位置でばね・ショックアブソーバ組立体の下端にヒンジ止めされている。軸線163Yは、前側操舵輪7''の回転軸線と同軸である。揺動アーム163は、本明細書で使用している意味でのサスペンション機構38''を形成し、サスペンション機構38''は、ばね・ショックアブソーバ組立体と組み合わせて各サスペンション33''を形成している。
【0140】
通常の動作状態の下では、ブレーキ53''は非作動である。車両は、水平軸線を中心として傾斜し得る。車両が傾斜すると、横方向構成要素23は軸線24Xを中心として支持アーム21''に対して回転する。車輪7''は、ばね・ショックアブソーバ組立体の伸縮を含むばね運動と、サスペンション機構38'''(揺動アーム167'')の揺動運動を実行し得る。
【0141】
車両が静止、例えば、駐車している時は、傾斜が阻止され、サスペンション33''のばね運動がロックされるべきである。ブレーキ53''が作動されると、ブレーキ部材55''及び57''が相互に拘束されるようになる。これによりサスペンション33''がロックされ、車輪7''のばね運動が阻止される。同時に、ブレーキ53''をロックすることによって、ロッド64''によって形成された機械的伝達機構及び横方向構成要素23にブレーキ部材57''を連結する揺動アーム70''によって、横方向構成要素23の軸線24Xを中心とした支持アーム21''に対する回転が阻止される。傾斜運動がブロックされる。
【0142】
車両の左側の対称的なブレーキ53'は、左側サスペンション33'(図示せず)をロックする。二つのブレーキ53'、53''の作動により、車両の動きがロックされ、先に説明した実施例のように、二つのブレーキ及び単一の作動装置のみで傾斜運動及びばね運動が阻止される。
【0143】
要約すると、この実施例では、傾きロック装置は、
(A)支持アーム21''に対するばね運動を実行する各サスペンション33''の揺動アーム163''によって表される第一部材と、
(B)傾斜軸線24Xを中心とした横方向構成要素23の回転に比例する回転運動を実行するように、横方向構成要素23に機械的に連結されたブレーキ部材57''によって表される第二部材と
を相互に拘束することによって、サスペンションのばね運動及び車両の傾斜運動をブロックする。
【0144】
【0145】
図38~
図41の実施例と、
図42~
図45の実施例との間の主たる違いは、ブレーキ部材57''の揺動点である。
図38~
図41では、ブレーキ部材57''は支持アーム21''にヒンジ止めされているが、
図42~
図45の実施例では、ブレーキ部材57''は、軸線57Xを中心に、ばね35''及びショックアブソーバ37''によって形成された組立体の上端に堅固に連結されたブラケット166''にヒンジ止めされている。ブラケット166''及びばね・ショックアブソーバ組立体の上端は、ボール式連結部材を介して、支持アーム21''に連結されており、
図38~
図41の実施例のように、車輪7''のばね運動を可能にする。
【0146】
ブレーキ部材57''及びブレーキ部材55''を、ばね・ショックアブソーバ組立体35''及び37''のサスペンションの上端及び下端に各々結合することによって、二つのブレーキ部材57''及び55''間で完全な線形運動が得られる。
【0147】
【0148】
本発明を様々な具体的な実施形態の観点から説明してきたが、特許請求の範囲の概念と範囲を逸脱することなく、様々な修正、変更、省略が可能であることは、当業者には明らかである。