(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】種々の疾患を処置するために有用なBCKDK阻害剤としての5-(チオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 409/04 20060101AFI20240604BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240604BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240604BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20240604BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240604BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240604BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240604BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240604BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240604BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240604BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240604BHJP
A61P 3/08 20060101ALI20240604BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240604BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240604BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240604BHJP
A61P 27/12 20060101ALI20240604BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240604BHJP
A61P 19/04 20060101ALI20240604BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240604BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240604BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20240604BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240604BHJP
A61P 15/14 20060101ALI20240604BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20240604BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20240604BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240604BHJP
A61K 31/41 20060101ALI20240604BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240604BHJP
C12N 9/99 20060101ALN20240604BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20240604BHJP
【FI】
C07D409/04 CSP
A61P1/16 ZNA
A61P3/06
A61P9/04
A61P9/00
A61P9/10
A61P13/12
A61P9/12
A61P11/00
A61P3/10
A61P25/00
A61P3/08
A61P3/00
A61P19/02
A61P27/02
A61P27/12
A61P17/00
A61P19/04
A61P1/04
A61P7/00
A61P13/02
A61P35/00
A61P15/14
A61P15/08
A61P13/10
A61P43/00 121
A61K31/41
A61K45/00
C12N9/99
C12N15/54
(21)【出願番号】P 2021576779
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 IB2020055974
(87)【国際公開番号】W WO2020261144
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-05-25
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】サミット クマール バタチャリア
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ライアン バトラー
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン ジェイムズ フィリプスキ
(72)【発明者】
【氏名】べサニー リン カーモス
(72)【発明者】
【氏名】ルイ エンジェル マルティネス―アルシナ
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル アラン ミラー
(72)【発明者】
【氏名】大本 清之
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン レイマー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー リチャード リース
(72)【発明者】
【氏名】レイチェル ジェーン ロス フラック
(72)【発明者】
【氏名】ユアン ザング
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-524904(JP,A)
【文献】特表2006-517933(JP,A)
【文献】特開平3-204875(JP,A)
【文献】国際公開第2011/073298(WO,A1)
【文献】特表2014-506895(JP,A)
【文献】JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,2014年,289,30,20583-20593
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 409/04
A61P 1/16
A61P 3/06
A61P 9/04
A61P 9/00
A61P 9/10
A61P 13/12
A61P 9/12
A61P 11/00
A61P 3/10
A61P 25/00
A61P 3/08
A61P 3/00
A61P 19/02
A61P 27/02
A61P 27/12
A61P 17/00
A61P 19/04
A61P 1/04
A61P 7/00
A61P 13/02
A61P 35/00
A61P 15/14
A61P 15/08
A61P 13/10
A61P 43/00
A61K 31/41
A61K 45/00
C12N 9/99
C12N 15/54
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】
[式中、
R
1は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、エチニル、(C
1~C
4)アルキル、(C
3~C
4)シクロアルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、(C
1~C
4)フルオロアルキルまたは(C
1~C
4)フルオロアルコキシであり、ここで、R
2がHであり、R
3がHである場合、R
1は、フルオロ、クロロ、アミノ、シアノ、エチニル、(C
2~C
4)アルキル、(C
3~C
4)シクロアルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、(C
1~C
4)フルオロアルキルまたは(C
1~C
4)フルオロアルコキシであり、
R
2は、H、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、エチニル、(C
1~C
4)アルキル、(C
3~C
4)シクロアルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、(C
1~C
4)フルオロアルキルまたは(C
1~C
4)フルオロアルコキシであり、
R
3は、H、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、エチニル、(C
1~C
4)アルキル、(C
3~C
4)シクロアルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、(C
1~C
4)フルオロアルキルまたは(C
1~C
4)フルオロアルコキシである]
または前記化合物の薬学的に許容できる塩。
【請求項2】
R
2が、Hである、請求項1に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項3】
R
1が、フルオロ、クロロ、ブロモ、(C
1~C
2)アルキルまたは(C
1~C
2)フルオロアルキルである、請求項2に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項4】
R
3が、フルオロ、クロロまたはブロモである、請求項3に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項5】
R
3が、クロロである、請求項4に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項6】
R
3が、フルオロ、クロロまたはブロモである、請求項2に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項7】
R
3が、Hである、請求項1に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項8】
R
1が、フルオロ、クロロ、ブロモ、(C
1~C
2)アルキルまたは(C
1~C
2)フルオロアルキルである、請求項7に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項9】
R
2が、フルオロ、クロロまたはブロモである、請求項8に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項10】
5-(5-クロロ-4-フルオロ3-メチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール、
5-(5-クロロ-3-ジフルオロメチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール、
5-(5-フルオロ-3-メチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール、
5-(5-クロロ-3-メチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール、
5-(3,5-ジクロロチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール、
5-(4-ブロモ-3-メチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール、
5-(4-ブロモ-3-エチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール、および
5-(4-クロロ-3-エチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール
からなる群から選択される化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項11】
【化2】
である化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項12】
5-(5-クロロ-4-フルオロ3-メチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾールである化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項13】
【化3】
である化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項14】
5-(5-クロロ-3-ジフルオロメチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾールである化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項15】
脂肪肝、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、肝線維症を伴う非アルコール性脂肪性肝炎、肝硬変を伴う非アルコール性脂肪性肝炎または肝硬変および肝細胞癌を伴う非アルコール性脂肪性肝炎
の処置
のための、請求項1から14に記載の化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩を含む
医薬組成物。
【請求項16】
非アルコール性脂肪性肝炎
の処置
のための、請求項15に記載の
医薬組成物。
【請求項17】
心不全、うっ血性心不全、冠状動脈性心疾患、末梢血管疾患、腎血管疾患、肺高血圧症、血管炎、急性冠症候群を処置し、心血管リスクを修正する
ための、請求項1から14のいずれかに記載の化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩を含む
医薬組成物。
【請求項18】
心不全
の処置の
ための、請求項17に記載の
医薬組成物。
【請求項19】
I型糖尿病、II型真性糖尿病、特発性I型糖尿病(Ib型)、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)、早期発症型2型糖尿病(EOD)、若年発症型非定型糖尿病(YOAD)、若年発生成人型糖尿病(MODY)、栄養不良関連糖尿病、妊娠性糖尿病、冠状動脈性心疾患、虚血性脳卒中、血管形成術後の再狭窄、末梢血管疾患、間欠性跛行、心筋梗塞、脂質異常症、食後脂肪血症、耐糖能異常(IGT)の状態、空腹時血漿グルコース異常の状態、代謝性アシドーシス、ケトン症、関節炎、糖尿病性網膜症、黄斑変性、白内障、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、慢性腎不全、糖尿病性神経障害、代謝症候群、症候群X、高血糖症、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、インスリン抵抗性、グルコース代謝異常、皮膚および結合組織障害、足潰瘍および潰瘍性結腸炎、内皮機能不全および血管コンプライアンス異常、高アポBリポタンパク質血症、ならびにメープルシロップ尿症の処置
のための、請求項1から14のいずれかに記載の化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩を含む
医薬組成物。
【請求項20】
II型真性糖尿病
の処置
のための、請求項19に記載の
医薬組成物。
【請求項21】
肝細胞癌、腎臓腎明細胞癌、頭頸部扁平上皮細胞癌、結腸直腸腺癌、中皮腫、胃腺癌、副腎皮質癌、乳頭状腎細胞癌、頸部および子宮頚管内の癌、膀胱尿路上皮癌、肺腺癌の処置のための、請求項1から14のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容できるその塩を含む
医薬組成物。
【請求項22】
肝細胞癌
の処置
のための、請求項21に記載の
医薬組成物。
【請求項23】
請求項1から14のいずれかに記載の化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩と、薬学的に許容できる担体、ビヒクルまたは賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項24】
請求項1から14のいずれかに記載の化合物である第1の化合物、または前記化合物の薬学的に許容できる塩、
抗糖尿病剤、非アルコール性脂肪性肝炎処置剤、非アルコール性脂肪肝疾患処置剤または抗心不全処置剤である第2の化合物、および
医薬担体、ビヒクルまたは賦形剤
を含む治療有効量の組成物を含む医薬組合せ組成物。
【請求項25】
前記第2の化合物が、4-(4-(1-イソプロピル-7-オキソ-1,4,6,7-テトラヒドロスピロ[インダゾール-5,4’-ピペリジン]-1’-カルボニル)-6-メトキシピリジン-2-イル)安息香酸、[(1R,5S,6R)-3-{2-[(2S)-2-メチルアゼチジン-1-イル]-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル}-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ-6-イル]酢酸、2-[(1R,3R,5S)-3-({5-シクロプロピル-3-[2-(トリフルオロメトキシ)フェニル]-1,2-オキサゾール-4-イル}メトキシ)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-4-フルオロ-1,3-ベンゾチアゾール-6-カルボン酸、(S)-2-(5-((3-エトキシピリジン-2-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-N-(テトラヒドロフラン-3-イル)ピリミジン-5-カルボキサミドもしくは2-[(4-{6-[(4-シアノ-2-フルオロベンジル)オキシ]ピリジン-2-イル}ピペリジン-1-イル)メチル]-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンズイミダゾール-6-カルボン酸、または薬学的に許容できるその塩である、請求項24に記載の医薬組合せ組成物。
【請求項26】
前記非アルコール性脂肪性肝炎処置剤または非アルコール性脂肪肝疾患処置剤が、ACC阻害剤、KHK阻害剤、DGAT-2阻害剤、FXRアゴニスト、メトホルミン、インクレチン類似体、またはインクレチン受容体モジュレーターである、請求項24に記載の医薬組合せ組成物。
【請求項27】
前記抗糖尿病剤が、SGLT-2阻害剤、メトホルミン、インクレチン類似体、インクレチン受容体モジュレーター、DPP-4阻害剤、またはPPARアゴニストである、請求項24に記載の医薬組合せ組成物。
【請求項28】
前記抗糖尿病剤が、メトホルミン、シタグリプチンまたはエルツグリフロジンである、請求項24に記載の医薬組合せ組成物。
【請求項29】
前記抗心不全剤が、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、アンジオテンシン-受容体ネプリライシン阻害剤、ベータアドレナリン作動性受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、または血管拡張剤である、請求項24に記載の医薬組合せ組成物。
【請求項30】
構造:
【化4】
を有する化合物、または薬学的に許容できるその塩を含む結晶。
【請求項31】
(CuKα放射線、1.54056Åの波長)10.6±0.2、15.9±0.2、23.5±0.2および32.1±0.2の2シータ値を含む粉末x線回折パターンを有する、請求項30に記載の結晶。
【請求項32】
構造:
【化5】
を有する化合物、または薬学的に許容できるその塩を含む結晶。
【請求項33】
(CuKα放射線、1.54056Åの波長)24.5±0.2、26.8±0.2、33.9±0.2および39.1±0.2の2シータ値を含む粉末x線回折パターンを有する、請求項32に記載の結晶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分枝鎖アルファケト酸デヒドロゲナーゼキナーゼ阻害剤である化合物、そのような阻害剤を含有する医薬組成物、ならびに、例えば、糖尿病、NASHおよび心不全を処置するための、そのような阻害剤の使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
分枝鎖アミノ酸(BCAA)は、健常な対象における必須アミノ酸の約40%を占め、バランスの取れた食事を通して獲得されなくてはならない。分枝鎖アミノ酸は、過剰だと毒性であるが、タンパク質合成および細胞シグナリングプロセスのために必要とされる。BCAAは、分枝鎖アミノトランスフェラーゼ(BCAT)によってアミノ基転移されて、それらのアルファ-ケト酸形態:アルファ-ケトイソカプロエート(KIC/ケトロイシン)、2-ケト-3-メチルバレレート(KMV/ケトイソロイシン)およびアルファ-ケトイソバレレート(KIV/ケトバリン)になる。次いで、分枝鎖ケト酸(BCKA)は、分枝鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ(BCKDH)酵素複合体によって酸化的に脱炭酸され、これは、BCKDH E1α/β四量体、BCKDH E2およびBCKDH E3サブユニットの多重コピーからなる。複合体は、BCKDHキナーゼ(BCKDK)によって媒介される阻害的リン酸化によって調節され、この同じリン酸化部位は、ホスファターゼPPM1Kによって脱リン酸化される。複合体リン酸化の阻害は、BCKDH活性を、故に、BCKAの不可逆的な異化作用を促進する。(Lynch CJ、Adams SH:Branched-chain amino acids in metabolic signalling and insulin resistance.Nat Rev Endocrinol 2014、10:723~36。)Bckdk欠損マウスが複数の組織においてBCKDH活性の増大を呈することから、マウスにおけるBckdkの欠失は、この調節を裏付ける。(Joshi MA、Jeoung NH、Obayashi M、Hattab EM、Brocken EG、Liechty EA、Kubek MJ、Vattem KM、Wek RC、Harris RA:Impaired growth and neurological abnormalities in branched-chain alpha-keto acid dehydrogenase kinase-deficient mice.Biochem J 2006、400:153~62。)
【0003】
米国特許第9,078,865号は、例えば、1つまたは複数の分枝鎖アミノ酸または分枝鎖アルファ-ケト酸の血漿中レベルを減少させる方法であって、それを必要とする個体に、例えばメープルシロップ尿症(MSUD)として公知である新生児における代謝の先天異常を処置するために、治療有効量の、式:フェニル-CH2-(CH2)n-COOHの少なくとも1つの化合物[式中、nは、0、2、4、6または8である]を投与するステップを含む方法を対象とする。分枝鎖ケト酸尿症とも呼ばれるMSUDは、常染色体劣性障害である。
【0004】
BCAA異化作用と心血管代謝の健康との間には、強い相関がある。BCAA/BCKAレベルの増大は、複数の研究において2型糖尿病患者の血漿中で観察されてきた。(Wang TJ、Larson MG、Vasan RS、Cheng S、Rhee EP、McCabe E、Lewis GD、Fox CS、Jacques PF、Fernandez C、O’Donnell CJ、Carr SA、Mootha VK、Florez JC、Souza A、Melander O、Clish CB、Gerszten RE:Metabolite profiles and the risk of developing diabetes.Nat Med 2011、17:448~53;Newgard CB、An J、Bain JR、Muehlbauer MJ、Stevens RD、Lien LF、Haqq AM、Shah SH、Arlotto M、Slentz CA、Rochon J、Gallup D、Ilkayeva O、Wenner BR、Yancy WS,Jr.、Eisenson H、Musante G、Surwit RS、Millington DS、Butler MD、Svetkey LP:A branched-chain amino acid-related metabolic signature that differentiates obese and lean humans and contributes to insulin resistance.Cell Metab 2009、9:311~26。)
【0005】
PPM1Kレベルの低減およびBCKDKレベルの増大が、ヒトNASHにおいて観察された。(Lake AD、Novak P、Shipkova P、Aranibar N、Robertson DG、Reily MD、Lehman-McKeeman LD、Vaillancourt RR、Cherrington NJ:Branched chain amino acid metabolism profiles in progressive human nonalcoholic fatty liver disease.Amino Acids 2015、47:603~15。)
【0006】
異化経路における酵素についてのmRNAレベルの低減は、ヒト糖尿病患者の骨格筋においても観察されてきた。(Lerin C、Goldfine AB、Boes T、Liu M、Kasif S、Dreyfuss JM、De Sousa-Coelho AL、Daher G、Manoli I、Sysol JR、Isganaitis E、Jessen N、Goodyear LJ、Beebe K、Gall W、Venditti CP、Patti ME:Defects in muscle branched-chain amino acid oxidation contribute to impaired lipid metabolism.Mol Metab 2016、5:926~36。)
【0007】
同様に、マウス心臓からのメタボロミクスおよびRNAプロファイリングデータは、BCAA/BCKA異化経路における遺伝子が心不全において下方調節されることも示唆する。(Lai L、Leone TC、Keller MP、Martin OJ、Broman AT、Nigro J、Kapoor K、Koves TR、Stevens R、Ilkayeva OR、Vega RB、Attie AD、Muoio DM、Kelly DP:Energy metabolic reprogramming in the hypertrophied and early stage failing heart:a multisystems approach.Circ Heart Fail 2014、7:1022~31;Sun H、Olson KC、Gao C、Prosdocimo DA、Zhou M、Wang Z、Jeyaraj D、Youn JY、Ren S、Liu Y、Rau CD、Shah S、Ilkayeva O、Gui WJ、William NS、Wynn RM、Newgard CB、Cai H、Xiao X、Chuang DT、Schulze PC、Lynch C、Jain MK、Wang Y:Catabolic Defect of Branched-Chain Amino Acids Promotes Heart Failure.Circulation 2016、133:2038~49。)
【0008】
これらのデータを合わせると、BCAA異化作用が、複数のヒト病状において正常に機能しないことが示唆される。BCAA異化作用を増大させるための1つの機序は、BCKDK阻害剤である。BCKDKを阻害することによって、BCKDH活性が増大することになり、BCAA異化作用を増大させることになる。BCKDKに関係するいくつかの初期研究はあったが、BCKDK阻害活性を有し、本明細書において記述される病気の処置、予防または兆候の削減において有用な医薬作用物質が依然として必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式Iの化合物
【0011】
【化1】
[式中、
R
1は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、エチニル、(C
1~C
4)アルキル、(C
3~C
4)シクロアルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、(C
1~C
4)フルオロアルキルまたは(C
1~C
4)フルオロアルコキシであり、ここで、R
2がHであり、R
3がHである場合、R
1は、フルオロ、クロロ、アミノ、シアノ、エチニル、(C
2~C
4)アルキル、(C
3~C
4)シクロアルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、(C
1~C
4)フルオロアルキルまたは(C
1~C
4)フルオロアルコキシであり、
R
2は、H、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、エチニル、(C
1~C
4)アルキル、(C
3~C
4)シクロアルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、(C
1~C
4)フルオロアルキルまたは(C
1~C
4)フルオロアルコキシであり、
R
3は、H、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、エチニル、(C
1~C
4)アルキル、(C
3~C
4)シクロアルキル、(C
1~C
4)アルコキシ、(C
1~C
4)フルオロアルキルまたは(C
1~C
4)フルオロアルコキシである]
または前記化合物の薬学的に許容できる塩を対象とする。
【0012】
本発明は、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、肝線維症を伴う非アルコール性脂肪性肝炎、肝硬変を伴う非アルコール性脂肪性肝炎(steatohepotitis)または肝硬変および肝細胞癌を伴う非アルコール性脂肪性肝炎を処置する方法であって、そのような処置を必要とするヒト等の哺乳動物に、治療有効量の式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩を投与するステップを含む方法も対象とする。
【0013】
本発明は、心不全、うっ血性心不全、冠状動脈性心疾患、末梢血管疾患、腎血管疾患、肺高血圧症、血管炎、急性冠症候群を処置し、心血管リスクを修正する方法であって、そのような処置を必要とするヒト等の哺乳動物に、治療有効量の式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩を投与するステップを含む方法も対象とする。
【0014】
本発明は、I型糖尿病、II型真性糖尿病、特発性I型糖尿病(Ib型)、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)、早期発症型2型糖尿病(EOD)、若年発症型非定型糖尿病(YOAD)、若年発生成人型糖尿病(MODY)、栄養不良関連糖尿病、妊娠性糖尿病、冠状動脈性心疾患、虚血性脳卒中、血管形成術後の再狭窄、末梢血管疾患、間欠性跛行、心筋梗塞、脂質異常症、食後脂肪血症、耐糖能異常(IGT)の状態、空腹時血漿グルコース異常の状態、代謝性アシドーシス、ケトン症、関節炎、糖尿病性網膜症、黄斑変性、白内障、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、慢性腎不全、糖尿病性神経障害、代謝症候群、症候群X、高血糖症、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、インスリン抵抗性、グルコース代謝異常、皮膚および結合組織障害、足潰瘍および潰瘍性結腸炎、内皮機能不全および血管コンプライアンス異常、高アポBリポタンパク質血症、ならびにメープルシロップ尿症を処置する方法であって、そのような処置を必要とするヒト等の哺乳動物に、治療有効量の式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩を投与するステップを含む方法も対象とする。
【0015】
本発明は、肝細胞癌、腎臓腎明細胞癌、頭頸部扁平上皮細胞癌、結腸直腸腺癌、中皮腫、胃腺癌、副腎皮質癌、乳頭状腎細胞癌、頸部および子宮頚管内の癌(cervical and endocervical carcinoma)、膀胱尿路上皮癌、肺腺癌を処置する方法であって、そのような処置を必要とするヒト等の哺乳動物に、治療有効量の式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩を投与するステップを含む方法も対象とする。
【0016】
本発明は、治療有効量の式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩と、薬学的に許容できる担体、ビヒクルまたは賦形剤とを有する医薬組成物も対象とする。
【0017】
本発明は、
式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩である第1の化合物、
抗糖尿病剤、非アルコール性脂肪性肝炎処置剤、非アルコール性脂肪肝疾患処置剤または抗心不全処置剤である第2の化合物、および
医薬担体、ビヒクルまたは賦形剤
を有する治療有効量の組成物を含む医薬組合せ組成物も対象とする。
【0018】
先述の概要および下記の詳細な記述はいずれも、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される通りの本発明の制限ではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例6、形態1の結晶形態を示す特徴的なx線粉末回折パターンの図である(縦軸:強度(CPS);横軸:2シータ(度))。
【
図2】実施例10、形態1の結晶形態を示す特徴的なX線粉末回折パターンの図である(縦軸:強度(CPS);横軸:2シータ(度))。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、本発明の例示的な実施形態の下記の詳細な記述およびその中に含まれる例を参照することにより、より容易に理解され得る。
【0021】
本発明は、作製のための具体的な合成方法に限定されず、それらは当然変動し得ることを理解されたい。本明細書において使用される術語は、特定の実施形態を記述することのみを目的とし、限定的であることを意図したものではないことも理解されたい。本明細書においておよびこの後の請求項において、若干数の用語を参照することになり、これらは下記の意味を有すると定義されるものとする。
【0022】
本明細書において使用される場合、「a」または「an」は、1つまたは複数を意味し得る。請求項において使用される場合、語「を含む」と併せて使用される際は、語「a」または「an」は、1つまたは1つ超を意味し得る。本明細書において使用される場合、「別の」は、少なくとも第2またはそれ以上を意味し得る。
【0023】
用語「約」は、公称値のプラスまたはマイナス10%の近似を示す相対的な用語を指し、一実施形態では、プラスまたはマイナス5%、別の実施形態では、プラスまたはマイナス2%を指す。本開示の分野では、このレベルの近似は、該値がより狭い範囲を必要とするように具体的に述べられているのでない限り、適切である。
【0024】
用語「アルキル」は、単独でまたは組み合わせて、直鎖状または分枝鎖状であってよい、式CnH2n+1の非環式飽和炭化水素基を意味する。そのような基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチルおよびt-ブチルを含む。アルキルおよび種々の他の炭化水素含有部分からなる炭素原子は、該部分における炭素原子の下限および上限の数字を指定する接頭辞によって指し示される、すなわち、接頭辞Ci~Cjは、境界も含めて整数「i」から整数「j」炭素原子の部分を指し示す。故に、例えば、C1~C3アルキルは、境界も含めて1から3個の炭素原子のアルキルを指す。
【0025】
「フルオロアルキル」は、1、2または3個のフルオロ原子で置換されている、本明細書で定義されている通りのアルキルを意味する。例示的な(C1)フルオロアルキル化合物は、フルオロメチル、ジフルオロメチルおよびトリフルオロメチルを含み、例示的な(C2)フルオロアルキル化合物は、1-フルオロエチル、2-フルオロエチル、1,1-ジフルオロエチル、1,2-ジフルオロエチル、1,1,1-トリフルオロエチル、1,1,2-トリフルオロエチル等を含む。
【0026】
「シクロアルキル」は、式CnH2n-1の完全水素化基である非芳香族環を指す。そのような炭素環式環の例は、シクロプロピルおよびシクロブチルを含む。
【0027】
「アルコキシ」が意味するのは、オキシを介して結合している直鎖飽和アルキルまたは分枝鎖飽和アルキルである。そのようなアルコキシ基(指定された長さは特定の例を包含すると仮定する)の例示は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、第三級ブトキシ、ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、第三級ペントキシ、ヘキソキシ、イソヘキソキシ、ヘプトキシおよびオクトキシである。
【0028】
「フルオロアルコキシ」が意味するのは、1、2または3個のフルオロ原子で置換されている、本明細書で定義されている通りのアルコキシである。例示的な(C1)フルオロアルコキシ化合物は、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシおよびトリフルオロメトキシを含み、例示的な(C2)フルオロアルキル化合物は、1-フルオロエトキシ、2-フルオロエトキシ、1,1-ジフルオロエトキシ、1,2-ジフルオロエトキシ、1,1,1-トリフルオロエトキシ、1,1,2-トリフルオロエトキシ等を含む。
【0029】
「化合物」は、本明細書において使用される場合、配座異性体(例えば、シスおよびトランス異性体)およびすべての光学異性体(例えば、鏡像異性体およびジアステレオマー)、そのような異性体のラセミ、ジアステレオマーおよび他の混合物、ならびに溶媒和物、水和物、同形体、多形体、互変異性体、エステル、塩形態およびプロドラッグを含む、任意の薬学的に許容できる誘導体もしくは変化物を含む。表現「プロドラッグ」は、投与後に何らかの化学的または生理的プロセスを介してインビボで薬物を放出する薬物前駆体である化合物を指す(例えば、プロドラッグが生理的pHにされてまたは酵素作用を介して所望の薬物形態に変換される)。例示的なプロドラッグは、開裂時に対応する遊離酸を放出し、本発明の化合物のそのような加水分解性エステル形成残基は、カルボキシル部分を有するものを含むがこれらに限定されず、ここで、遊離水素は、(C1~C4)アルキル、(C2~C7)アルカノイルオキシメチル、4から9個までの炭素原子を有する1-(アルカノイルオキシ)エチル、5から10個までの炭素原子を有する1-メチル-1-(アルカノイルオキシ)-エチル、3から6個までの炭素原子を有するアルコキシカルボニルオキシメチル、4から7個までの炭素原子を有する1-(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、5から8個までの炭素原子を有する1-メチル-1-(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、3から9個までの炭素原子を有するN-(アルコキシカルボニル)アミノメチル、4から10個までの炭素原子を有する1-(N-(アルコキシカルボニル)アミノ)エチル、3-フタリジル、4-クロトノラクトニル、ガンマ-ブチロラクトン-4-イル、ジ-N,N-(C1~C2)アルキルアミノ(C2~C3)アルキル(β-ジメチルアミノエチル等)、カルバモイル-(C1~C2)アルキル、N,N-ジ(C1~C2)アルキルカルバモイル-(C1~C2)アルキルおよびピペリジノ-、ピロリジノ-またはモルホリノ(C2~C3)アルキルによって置きかえられている。
【0030】
本明細書において使用される場合、矢じり、「
【0031】
【0032】
【化3】
」は、置換基の、別の基との結合点を示す。
【0033】
用語「哺乳動物」は、ヒト、家畜またはコンパニオンアニマルを指す。
【0034】
用語「コンパニオンアニマル(単数または複数)」は、ペットまたは家庭動物として飼われている動物を指す。コンパニオンアニマルの例は、イヌ、ネコ、およびハムスター、モルモット、スナネズミ等を含むげっ歯類、ウサギ、フェレットを含む。
【0035】
用語「家畜」は、食品もしくは繊維等の製品を作製するためまたはその労働のために農業環境で養育または飼育されている動物を指す。一部の実施形態では、家畜は、哺乳動物、例えばヒトによる消費に好適である。家畜動物の例は、ウシ、ヤギ、ウマ、ブタ、子ヒツジを含むヒツジ、およびウサギを含む。
【0036】
「患者」は、例えば、モルモット、マウス、ラット、スナネズミ、ネコ、ウサギ、イヌ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、サル、チンパンジーおよびヒト等の温血動物を指す。
【0037】
用語「処置すること」または「処置」は、疾患、障害もしくは状態に関連する症状の緩和、またはそれらの症状のさらなる進行もしくは悪化の停止を意味する。患者の疾患および状態に応じて、用語「処置」は、本明細書において使用される場合、治癒的、緩和的および防護的処置の1つまたは複数を含み得る。処置は、本発明の医薬製剤を他の療法と組み合わせて投与することを含むこともできる。
【0038】
「治療有効量」は、(i)特定の疾患、状態もしくは障害を処置するもしくは予防する、(ii)特定の疾患、状態もしくは障害の1つもしくは複数の症状を減衰させる、向上させるもしくは排除する、または(iii)本明細書において記述される特定の疾患、状態もしくは障害の1つもしくは複数の症状の発症を予防するもしくは遅延させる、本発明の化合物の量を意味する。
【0039】
用語「薬学的に許容できる」は、患者への投与に好適である、物質(例えば、本発明の化合物)およびその任意の塩、または本発明の物質もしくは塩を含有する組成物を意味する。
【0040】
一実施形態では、本発明は、R2が、Hである、式Iの化合物、または薬学的に許容できるその塩を含む。
【0041】
別の実施形態では、本発明は、R1が、フルオロ、クロロ、ブロモ、(C1~C2)アルキルまたは(C1~C2)フルオロアルキルである、式Iの化合物、または薬学的に許容できるその塩を含む。
【0042】
別の実施形態では、本発明は、R3が、フルオロ、クロロまたはブロモである、式Iの化合物、または薬学的に許容できるその塩を含む。
【0043】
別の実施形態では、本発明は、R3が、クロロである、式Iの化合物、または薬学的に許容できるその塩を含む。
【0044】
別の実施形態では、本発明は、R3が、フルオロ、クロロまたはブロモである、式Iの化合物、または薬学的に許容できるその塩を含む。
【0045】
別の実施形態では、本発明は、R3が、Hである、式Iの化合物、または薬学的に許容できるその塩を含む。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、R1が、フルオロ、クロロ、ブロモ(C1~C2)アルキルまたは(C1~C2)フルオロアルキルである、式Iの化合物、または薬学的に許容できるその塩を含む。
【0047】
別の実施形態では、本発明は、R2が、フルオロ、クロロまたはブロモである、式Iの化合物、または薬学的に許容できるその塩を含む。
【0048】
別の実施形態では、本発明は、
5-(5-クロロ-4-フルオロ3-メチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール、
5-(5-クロロ-3-ジフルオロメチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール、
5-(5-フルオロ-3-メチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール、
5-(5-クロロ-3-メチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール、
5-(3,5-ジクロロチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール、
5-(4-ブロモ-3-メチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール、
5-(4-ブロモ-3-エチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール、および
5-(4-クロロ-3-エチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール
からなる群から選択される化合物、または薬学的に許容できるその塩を含む。
【0049】
本発明の本発明の別の実施形態は、構造
【0050】
【化4】
を有する化合物、ならびに前記化合物または薬学的に許容できるその塩を含む結晶を含む。
【0051】
本発明の別の実施形態は、そのような処置を必要とするヒト等の哺乳動物に、治療有効量を投与することを含む、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、肝線維症を伴う非アルコール性脂肪性肝炎、肝硬変を伴う非アルコール性脂肪性肝炎または肝硬変および肝細胞癌を伴う非アルコール性脂肪性肝炎を処置する際の医薬として使用するための、式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩の使用を含む。
【0052】
本発明の別の実施形態は、そのような処置を必要とするヒト等の哺乳動物に、治療有効量を投与することを含む、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、肝線維症を伴う非アルコール性脂肪性肝炎、肝硬変を伴う非アルコール性脂肪性肝炎または肝硬変および肝細胞癌を伴う非アルコール性脂肪性肝炎を処置する際の医薬の製造のための、式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩の使用を含む。
【0053】
本発明の別の実施形態は、そのような処置を必要とするヒト等の哺乳動物に、治療有効量の式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩を投与することを含む、心不全、うっ血性心不全、冠状動脈性心疾患、末梢血管疾患、腎血管疾患、肺高血圧症、血管炎、急性冠症候群を処置し、心血管リスクを修正する際の医薬として使用するためのものである、式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩の使用を含む。
【0054】
本発明の別の実施形態は、そのような処置を必要とするヒト等の哺乳動物に、治療有効量の式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩を投与することを含む、心不全、うっ血性心不全、冠状動脈性心疾患、末梢血管疾患、腎血管疾患、肺高血圧症、血管炎、急性冠症候群を処置し、心血管リスクを修正する際の医薬の製造のための、式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩の使用を含む。
【0055】
本発明の別の実施形態は、そのような処置を必要とするヒト等の哺乳動物に、治療有効量の式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩を投与することを含む、I型糖尿病、II型真性糖尿病、特発性I型糖尿病(Ib型)、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)、早期発症型2型糖尿病(EOD)、若年発症型非定型糖尿病(YOAD)、若年発生成人型糖尿病(MODY)、栄養不良関連糖尿病、妊娠性糖尿病、冠状動脈性心疾患、虚血性脳卒中、血管形成術後の再狭窄、末梢血管疾患、間欠性跛行、心筋梗塞、脂質異常症、食後脂肪血症、耐糖能異常(IGT)の状態、空腹時血漿グルコース異常の状態、代謝性アシドーシス、ケトン症、関節炎、糖尿病性網膜症、黄斑変性、白内障、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、慢性腎不全、糖尿病性神経障害、代謝症候群、症候群X、高血糖症、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、インスリン抵抗性、グルコース代謝異常、皮膚および結合組織障害、足潰瘍および潰瘍性結腸炎、内皮機能不全および血管コンプライアンス異常、高アポBリポタンパク質血症、ならびにメープルシロップ尿症を処置する際の医薬として使用するためのものである、式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩の使用を含む。
【0056】
本発明の別の実施形態は、そのような処置を必要とするヒト等の哺乳動物に、治療有効量の式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩を投与することを含む、I型糖尿病、II型真性糖尿病、特発性I型糖尿病(Ib型)、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)、早期発症型2型糖尿病(EOD)、若年発症型非定型糖尿病(YOAD)、若年発生成人型糖尿病(MODY)、栄養不良関連糖尿病、妊娠性糖尿病、冠状動脈性心疾患、虚血性脳卒中、血管形成術後の再狭窄、末梢血管疾患、間欠性跛行、心筋梗塞、脂質異常症、食後脂肪血症、耐糖能異常(IGT)の状態、空腹時血漿グルコース異常の状態、代謝性アシドーシス、ケトン症、関節炎、糖尿病性網膜症、黄斑変性、白内障、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、慢性腎不全、糖尿病性神経障害、代謝症候群、症候群X、高血糖症、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、インスリン抵抗性、グルコース代謝異常、皮膚および結合組織障害、足潰瘍および潰瘍性結腸炎、内皮機能不全および血管コンプライアンス異常、高アポBリポタンパク質血症、ならびにメープルシロップ尿症を処置する際の医薬の製造のための、式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩の使用を含む。
【0057】
本発明の別の実施形態は、そのような処置を必要とするヒト等の哺乳動物に、治療有効量の式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩を投与することを含む、肝細胞癌、腎臓腎明細胞癌、頭頸部扁平上皮細胞癌、結腸直腸腺癌、中皮腫、胃腺癌、副腎皮質癌、乳頭状腎細胞癌、頸部および子宮頚管内の癌(cervical and endocervical carcinoma)、膀胱尿路上皮癌、または肺腺癌を処置する際の医薬として使用するためのものである、式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩の使用を含む。
【0058】
本発明の別の実施形態は、そのような処置を必要とするヒト等の哺乳動物に、治療有効量の式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩を投与することを含む、肝細胞癌、腎臓腎明細胞癌、頭頸部扁平上皮細胞癌、結腸直腸腺癌、中皮腫、胃腺癌、副腎皮質癌、乳頭状腎細胞癌、頸部および子宮頚管内の癌、膀胱尿路上皮癌、または肺腺癌を処置する際の医薬の製造のための、式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩を含む組成物の使用を含む。
【0059】
本発明は、1個または複数の原子が、同じ原子数であるが自然界において通常見られる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置きかえられている、式Iのすべての薬学的に許容できる同位体標識化合物を含む。
【0060】
本発明の化合物への包含に好適な同位体の例は、2Hおよび3H等の水素、11C、13Cおよび14C等の炭素、36Cl等の塩素、18F等のフッ素、13Nおよび15N等の窒素、15O、17Oおよび18O等の酸素、ならびに35S等の硫黄の同位体を含む。
【0061】
式Iのある特定の同位体標識化合物、例えば、放射性同位体を組み込んだものは、薬物および/または基質組織分布研究において有用である。放射性同位体トリチウム、すなわち3H、および炭素-14、すなわち14Cは、それらの組み込みの容易性および即時の検出手段を考慮すると、この目的のために特に有用である。
【0062】
重水素、すなわち2H等のより重い同位体による置換は、より優れた代謝安定性から生じるある特定の治療上の利点、例えば、インビボ半減期の増大または必要投薬量の低減をもたらし得、故にいくつかの状況において好ましい場合がある。
【0063】
11C、18F、15Oおよび13N等の陽電子放出同位体による置換は、基質受容体占有率を検査するための陽電子放出断層撮影(PET)研究において有用となり得る。
【0064】
式Iの同位体標識化合物は、概して、当業者に公知である従来の技術によって、または添付の実施例および調製において記述されているものに類似のプロセスによって、先に用いた非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用して調製することができる。
【0065】
本発明のある特定の化合物は、複数の結晶形態(概して「多形体」と称する)で存在し得る。多形体は、種々の条件下、例えば、再結晶のための異なる溶媒もしくは異なる溶媒混合物を使用する結晶化;異なる温度での結晶化;ならびに/または結晶化中の非常に速いから非常に遅い冷却に及ぶ種々の冷却モードによって調製され得る。多形体は、本発明の化合物を加熱または融解すること、続いて、徐または急速冷却によって取得してもよい。多形体の存在は、固体プローブNMRスペクトル法、IRスペクトル法、示差走査熱量測定、粉末X線回折またはそのような他の技術によって決定され得る。
【0066】
用語「薬学的に許容できる塩」内に包含される塩は、概して、遊離塩基または遊離酸を好適な有機もしくは無機酸または好適な有機もしくは無機塩基とそれぞれ反応させて、患者への投与に好適な本発明の化合物の塩を提供することによって調製される、本発明の化合物を指す。塩基塩が好ましいが、一部の化合物は酸塩も形成し得る。好適な酸付加塩は、非毒性塩を形成する酸から形成される。例は、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、べシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グロクロン酸塩、六フッ化リン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸塩、糖酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩およびキシナホ酸塩(xinofoate)を含む。
【0067】
好適な塩基塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成される。例は、アルミニウム塩、アルギニン塩、カルシウム塩、コリン塩、ジエチルアミン塩、グリシン塩、リジン塩、マグネシウム塩、メグルミン塩、オラミン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、トリメチルアミン(trimethamine)塩および亜鉛塩を含む。酸および塩基のヘミ塩、例えば、ヘミ硫酸塩およびヘミカルシウム塩が形成されてもよい。好適な塩の総説については、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use、StahlおよびWermuth著(Wiley-VCH、2002)を参照されたい。
【0068】
酸および塩基のヘミ塩、例えば、ヘミ硫酸塩およびヘミカルシウム塩が形成されてもよい。好適な塩の総説については、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use、StahlおよびWermuth著(Wiley-VCH、2002)を参照されたい。
【0069】
式Iの化合物の薬学的に許容できる塩は、3つの方法:
(i)式Iの化合物を所望の酸もしくは塩基と反応させることによって、
(ii)本発明の化合物の好適な前駆体から酸もしくは塩基に不安定な保護基を除去することによって、または好適な環式前駆体、例えばラクトンもしくはラクタムを、所望の酸もしくは塩基を使用して開環することによって、または
(iii)本発明の化合物の1つの塩を、適切な塩基との反応によってまたは好適なイオン交換カラムを利用して別の塩に変換することによって
の1つまたは複数によって調製され得る。
【0070】
3つの反応はすべて、典型的には溶液中で行われる。得られた塩は、凝結して濾過によって収集され得るか、または溶媒の蒸発によって回収され得る。得られた塩におけるイオン化の程度は、完全なイオン化からほぼ非イオン化まで変動し得る。
【0071】
式Iの化合物および薬学的に許容できるその塩は、非溶媒和および溶媒和形態で存在し得る。用語「溶媒和物」は、本明細書において、式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩と、1つまたは複数の薬学的に許容できる溶媒分子、例えばエタノールを含む分子錯体を記述するために使用される。用語「水和物」は、前記溶媒が水である場合に用いられる。
【0072】
有機水和物のための現在認可されている分類システムは、単離された部位、チャネルまたは金属イオン配位水和物を定義するものである。Polymorphism in Pharmaceutical Solids、K.R.Morris著(H.G.Brittain編、Marcel Dekker、1995)を参照されたい。単離部位水和物は、有機分子を介在させることによって水分子が互いの直接接触から単離されているものである。チャネル水和物では、水分子が格子チャネルにあり、ここで水分子は他の水分子に隣接している。金属イオン配位水和物では、水分子は金属イオンと結合している。
【0073】
溶媒または水が密接に結合している場合、錯体は、湿度とは無関係な明確に定義された化学量論を有し得る。しかしながら、溶媒または水がチャネル溶媒和物および吸湿性化合物のように弱く結合している場合、水/溶媒含有量は、湿度および乾燥条件に依存し得る。そのような場合は、非化学量論が標準となる。
【0074】
本発明の範囲内には、薬物および少なくとも1つの他の成分が化学量論または非化学量論量で存在する、多成分錯体(塩および溶媒和物以外)も含まれる。この種類の錯体は、クラスレート(薬物ホスト包接錯体)および共結晶を含む。後者は、典型的には、非共有相互作用を介して互いに結合した中性分子構成要素の結晶性錯体として定義されるが、中性分子と塩との錯体であってもよい。共結晶は、融解結晶化によって、溶媒からの再結晶によって、または成分を一緒に物理的に細砕することによって調製され得る。Chem Commun、17、1889~1896、O.AlmarssonおよびM.J.Zaworotko著(2004)を参照されたい。多成分錯体の一般的総説については、J Pharm Sci、64(8)、1269~1288、Haleblian著(1975年8月)を参照されたい。
【0075】
式Iの化合物の活性代謝物(プロドラッグを含む)、すなわち、薬物の投与時に、多くの場合、酸化または脱アルキル化によってインビボで形成される化合物も、本発明の範囲内に含まれる。本発明に従う代謝物のいくつかの例は、
(i)式Iの化合物がメチル基を含有する場合、そのヒドロキシメチル誘導体(-CH3→-CH2OH)、および
(ii)式Iの化合物がアルコキシ基を含有する場合、そのヒドロキシ誘導体(-OR→-OH)
を含む。
【0076】
本発明の化合物は、完全に非晶質から完全に結晶性に及ぶ一連の固体状態で存在し得る。用語「非晶質」は、材料が分子レベルで長距離秩序を欠き、温度に応じて、固体または液体の物理的特性を呈し得る、状態を指す。典型的には、そのような材料は、顕著なX線回折パターンを与えず、固体の特性を呈しながら、より正式には液体として記述される。加熱すると、固体から液体特性への変化が起こり、これは、状態変化、典型的には二次(「ガラス転移」)を特徴とする。用語「結晶性」は、材料が分子レベルで規則的秩序のある内部構造を有し、定義されたピークを持つ顕著なX線回折パターンを与える、固相を指す。そのような材料は、十分に加熱すると、液体の特性も呈するが、固体から液体への変化は、相変化、典型的には一次(「融点」)を特徴とする。
【0077】
式Iの化合物は、好適な条件に供された場合、中間状態(中間相または液晶)でも存在し得る。中間状態は、真の結晶性状態と真の液体状態との間の中間体(融解または溶液のいずれか)である。温度における変化の結果として生じる液晶性は、「サーモトロピック」として記述され、水または別の溶媒等の第2の成分の添加によって得られるものは、「リオトロピック」として記述される。リオトロピック中間相を形成する潜在性を有する化合物は、「両親媒性」として記述され、イオン性(-COO-Na+、-COO-K+または-SO3
-Na+等)または非イオン性(-N-N+(CH3)3等)極性頭基を保有する分子からなる。さらなる情報については、Crystals and the Polarizing Microscope、N.H.HartshorneおよびA.Stuart著、第4版(Edward Arnold、1970)を参照されたい。
【0078】
式Iの化合物は、多形および/または1もしくは複数種の異性(例えば、光学、幾何または互変異性異性)を呈し得る。式Iの化合物は、同位体標識されていてもよい。そのような変形は、それらの構造的特色を参照することによるものであり、したがって本発明の範囲内であるとして定義される、式Iの化合物には暗黙である。
【0079】
用語「室温または周囲温度」は、18から25℃の間の温度を意味し、「HPLC」は、高圧液体クロマトグラフィーを指し、「MPLC」は、中圧液体クロマトグラフィーを指し、「TLC」は、薄層クロマトグラフィーを指し、「MS」は、質量スペクトルまたは質量分光法または質量分析を指し、「NMR」は、核磁気共鳴分光法を指し、「DCM」は、ジクロロメタンを指し、「DMSO」は、ジメチルスルホキシドを指し、「DME」は、1,2-ジメトキシエタンを指し、「EtOAc」は、酢酸エチルを指し、「MeOH」は、メタノールを指し、「Ph」は、フェニル基を指し、「Pr」は、プロピルを指し、「トリチル」は、トリフェニルメチル基を指し、「ACN」は、アセトニトリルを指し、「DEAD」は、アゾジカルボン酸ジエチルを指し、「DIAD」は、アゾジカルボン酸ジイソプロピルを指す。
【0080】
概して、本発明の化合物は、化学分野で公知のものに類似のプロセスを含むプロセスによって、特に本明細書に含有される記述を踏まえて、作製することができる。本発明の化合物の製造のためのある特定のプロセスは、本発明のさらなる特色として提供され、下記の反応スキームによって例証される。他のプロセスは、実験の項において記述され得る。式Iの化合物の調製のための具体的な合成スキームは、以下で概説する。テトラゾールは概して高エネルギー官能基であり、テトラゾール含有分子の合成および取り扱いにおいては注意を払うべきであることに留意されたい。
【0081】
本明細書において使用される場合、表現「反応不活性溶媒」および「不活性溶媒」は、所望生成物の収量に悪影響を及ぼす方式で、出発材料、試薬、中間体または生成物と相互作用しない、溶媒またはその混合物を指す。
【0082】
式I化合物の調製における最初の注記として、本明細書において記述される化合物の調製に有用な調製方法のいくつかは、遠隔官能基(例えば、式I前駆体中の第一級アミン、第二級アミン、カルボキシル)の保護を必要とし得ることに留意されたい。そのような保護の必要性は、遠隔官能基の性質および調製方法の条件に応じて変動することになる。そのような保護の必要性は、当業者によって容易に決定される。そのような保護/脱保護方法の使用も、当業者が備える技能の範囲内である。保護基の概要およびそれらの使用については、T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley&Sons、New York、1991を参照されたい。
【0083】
例えば、ある特定の化合物は、保護しないまま放置すると、分子の他の部位における反応に干渉し得る第一級アミンまたはカルボン酸官能基を含有する。したがって、そのような官能基は、その後のステップで除去され得る適切な保護基によって保護されてよい。アミンおよびカルボン酸保護のための好適な保護基は、ペプチド合成において一般的に使用される保護基(アミンにはN-tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルおよび9-フルオレニルメチレンオキシカルボニル(fluorenylmethylenoxycarbonyl)、ならびにカルボン酸には低級アルキルまたはベンジルエステル等)を含み、これらは概して、記述されている反応条件下では化学的に反応性でなく、典型的には、式I化合物中の他の官能基を化学的に変化させることなく除去され得る。
【0084】
本発明の化合物は、不斉またはキラル中心を含有してよく、したがって、異なる立体異性形態で存在し得る。別段の定めがない限り、本発明の化合物のすべての立体異性形態、およびラセミ混合物を含むそれらの混合物は、本発明の一部を形成することが意図されている。加えて、本発明は、すべての幾何および位置異性体を内包する。例えば、本発明の化合物が二重結合または縮合環を組み込む場合、シスおよびトランス形態の両方ならびに混合物は、本発明の範囲内に内包される。
【0085】
本発明のキラル化合物(およびそのキラル前駆体)は、不斉固定相を持つ、ならびに、0から50%までのイソプロパノール、典型的には2から20%まで、および0から5%までのアルキルアミン、典型的には0.1%のジエチルアミン(DEA)またはイソプロピルアミンを含有する炭化水素、典型的にはヘプタンまたはヘキサンからなる移動相を持つ樹脂上で、クロマトグラフィー、典型的には高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)または超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)を使用して、鏡像異性的に富化された形態で取得され得る。溶離液の濃縮は、富化混合物をもたらす。
【0086】
ジアステレオマー混合物は、クロマトグラフィーおよび/または分別結晶によって等、当業者に周知の方法によって、それらの物理化学的差異に基づいてそれらの個々のジアステレオ異性体に分離され得る。鏡像異性体は、適切な光学活性化合物(例えば、キラルアルコールまたはモーシェル酸クロリド等のキラル補助基)との反応によって鏡像異性混合物をジアステレオマー混合物に変換し、ジアステレオ異性体を分離し、個々のジアステレオ異性体を対応する純粋な鏡像異性体に変換する(例えば、加水分解する)ことによって、分離することができる。鏡像異性体は、キラルHPLCカラムの使用によって分離することもできる。代替として、特異的な立体異性体は、光学活性出発材料を使用することによって、光学活性試薬、基質、触媒もしくは溶媒を使用する不斉合成によって、または1つの立体異性体を不斉転換によって他のものに変換することによって、合成されてよい。
【0087】
本発明の化合物が、2つ以上の立体中心を保有し、絶対または相対立体化学が名称に記されている場合、呼称RおよびSは、各分子について従来のIUPAC番号スキームに従う番号の昇順(1、2、3等)の各立体中心をそれぞれ指す。本発明の化合物が、1つまたは複数の立体中心を保有し、立体化学が名称にも構造にも記されていない場合、該名称または構造は、ラセミ形態を含む化合物のすべての形態を包含するように意図されていることが理解される。
【0088】
本発明の化合物は、オレフィン様二重結合を含有してよい。そのような結合が存在する場合、本発明の化合物は、シスおよびトランス配置としてならびにそれらの混合物として存在する。用語「シス」は、2つの置換基の互いおよび環平面に対する配向(両方「上」または両方「下」のいずれか)を指す。同様に、用語「トランス」は、2つの置換基の互いおよび環平面に対する配向(置換基は環の反対側にある)を指す。
【0089】
本発明の中間体および化合物は、異なる互変異性形態で存在し得ることも可能であり、すべてのそのような形態は本発明の範囲内に内包される。用語「互変異性体」または「互変異性形態」は、低エネルギー障壁を介して相互交換可能である異なるエネルギーの構造異性体を指す。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピック互変異性体としても公知)は、ケト-エノールおよびイミン-エナミン異性化等のプロトンの移動を介する相互変換を含む。プロトン互変異性体の具体例は、プロトンが4個の環窒素間を次の通りに移動し得るテトラゾール部分である。
【0090】
【0091】
原子価互変異性体は、結合性電子のいくつかの再編成による相互変換を含む。
【0092】
複数種の異性を呈する化合物およびその1つまたは複数の混合物を含む、式(I)の化合物のすべての立体異性体、幾何異性体および互変異性形態が本発明の特許請求されている化合物の範囲内に含まれる。対イオンが光学活性である酸付加もしくは塩基塩、例えば、D-乳酸もしくはL-リジン、またはラセミである該塩、例えば、DL-酒石酸もしくはDL-アルギニンも含まれる。
【0093】
式Iの化合物は、本明細書で提供される一般スキームおよび実施例に従って調製され得る。
【0094】
一般スキーム
式Iの化合物は、スキームI~IXに従って調製され得る。
【0095】
【0096】
当業者ならば、テトラゾール形成のための様々な方法があることを認識するであろう。式Iテトラゾール化合物[式中、R1、R2およびR3は、上述した通りである]は、式Aニトリルから、適切なアジド源との環化反応によって調製され得る。この転換のための条件は、下記の例示的な手順を含む、ニトリルの、有機、有機金属または有機ケイ素アジドとの、ルイスまたはブレンステッド酸を用いるまたは用いない反応を含むがこれらに限定されない。式Aニトリルは、例えば、アジドトリブチルスタンナンとの、またはアジ化ナトリウムとのトリエチルアミン塩酸塩もしくは好ましくはピリジン塩酸塩等のアミン塩の存在下での反応によって、対応する式Iに環化される。好適な非プロトン性溶媒は、ニトロベンゼン、トルエン、NMPおよび好ましくはDMFを含む。代わりに、環化を、DMF、水または好ましくはプロパノール等のアルコール等の好適な極性溶媒中、硫酸銅、臭化亜鉛または好ましくは塩化亜鉛を含むルイス酸によって触媒することができる。反応物を、約25℃から約120℃、典型的には約90℃の温度で、約4時間から約48時間、典型的には約12時間にわたって加熱する。
【0097】
【0098】
式Aニトリルは、スキームIIにおける例示的な手順を含む様々な方法によって調製され得る。式Aニトリルは、例えば、式Bハロゲン化チオフェン、式Cアルデヒド、式Dオキシム、式E酸または当業者に公知である他の前駆体から、調製され得る。
【0099】
式Aニトリルは、LGが、ハロゲン、例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物またはスルホネート等の好適な脱離基である場合、式Bの対応する化合物から、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等の好適な触媒-配位子の組合せの存在下、好適な溶媒、例を挙げるとDMF等の極性非プロトン性溶媒中、約50℃から約150℃まで、通常115℃前後で加熱しながら、約2から24時間、通常約16時間の期間にわたる、シアン化銅または好ましくはシアン化亜鉛等のシアン化物源との反応によって、調製される。
【0100】
式Aニトリルは、例えば、式Dのオキシムの脱水からも調製され得る。これは、アセトニトリル、DCM、DMFまたはトルエンを含むある範囲の溶媒中、酢酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、塩化ホスホリルまたは好ましくは塩化チオニルを含む様々な試薬によって、遂行することができる。反応は、室温で進行させてよい、または、反応は、適切な溶媒の還流温度まで加熱してよい。好適な反応時間は、典型的には、約20分間から48時間の間である。式Dのオキシムは、今度は、式Cのアルデヒドから、ヒドロキシルアミン塩酸塩等のヒドロキシルアミン源による凝縮を介して調製され得る。反応は、水、エタノール、DMFまたはNMP等の極性溶媒を含む様々な好適な溶媒中で行われ、ピリジン等の好適な塩基が使用され得る。反応は、室温で起こり得る、または、反応は、適切な溶媒の還流温度まで加熱され得る。好適な反応時間は、典型的には、約20分間から48時間の間である。
【0101】
式Cの必須のアルデヒドは、対応するアルコールの酸化を含むがこれに限定されない当業者に公知である様々な方法によって調製され得る。例えば、式Gの化合物は、約1から48時間の期間にわたる、約0℃から約70℃の温度、好ましくは約室温における、アセトニトリル、酢酸エチル、THFまたは好ましくはDCMを含む様々な溶媒中の、デス・マーチンペルヨージナン、クロロクロム酸ピリジニウムまたは好ましくは酸化マンガン(IV)を含む様々な条件によって、酸化され得る。
【0102】
代わりに、式Aのニトリルは、ピリジン等の塩基の存在下、三塩化シアヌル、バージェス試薬、塩化チオニル、塩化ホスホリルまたは好ましくはトリフルオロ酢酸無水物を含む様々な試薬を使用する、式Fのアミドの脱水を介して調製され得る。溶媒が使用される場合、好適な溶媒は、THF、DMFまたは好ましくはDCMを含む。前記の反応のための好適な温度は、典型的には、0℃から100℃の間である。好適な反応時間は、典型的には、約20分間から48時間までである。式Fのアミドは、対応する式E酸から、約1時間から約24時間、好ましくは約2時間にわたる、約0℃から100℃の間の温度、好ましくは周囲温度における、DMF等の好適な極性非プロトン性溶媒中の1,1’-カルボニルジイミダゾールを含む様々な条件下での反応によって好都合なことに調製され得る。記述されているものに加えて、この転換を達成するための他の手法があることが、当業者には明らかとなるであろう。
【0103】
【0104】
式IAの化合物では、前述のテトラゾール環化の後に、追加の誘導体化が実施され得る。例えば、式IAの化合物は、当業者に利用可能である様々な方法によって、ハロゲン化され得る。例えば、R3がCl(またはBr)である式Iの化合物は、酢酸、アセトニトリルまたは好ましくはDMF等の様々な好適な極性溶媒中、N-クロロコハク酸イミド(またはN-ブロモコハク酸イミド)等の好適な試薬を使用して調製され得る。反応のための好適な温度は、約0℃から100℃の間、好ましくは約50℃である。反応時間は、約2から約48時間まで、典型的には約16時間である。
【0105】
そのような誘導体化は、n-ブチルリチウムまたはLDA等の適切な塩基を使用し、続いて、THF等の好適な極性非プロトン性溶媒中、N-ハロコハク酸イミド、1,2-ジブロモエタン、N-フルオロ-N-(フェニルスルホニル)ベンゼンスルホンアミド、クロロホルメート、ハロゲン化アルキル等の求電子試薬またはDMF等のホルミル源を添加して、実施することもできる。反応を実行するための好適な温度は、約-100℃から室温の間、典型的には、経時的に室温に加温しながら、-78℃前後である。好適な反応時間は、約1から約24時間の間である。一部の場合には、誘導体化の前にテトラゾール基を保護することが望ましい場合がある。故に、スキームIIIにおける式IAPの化合物では、PGは、トリチル基等の適切なアミン保護基である。保護基の選択に応じて、テトラゾール保護の部位は、N1もしくはN2またはN1およびN2の混合物であってよいことに留意すべきである。保護基は、トリエチルアミン等の適切な塩基の存在下、DCM等の適切な非プロトン性溶媒中でのトリフェニルメチルクロリドとの反応等、当技術分野で公知の手順を使用して、導入され得る。上記の通りの誘導体化により、式IPの化合物をもたらし、脱保護時に式Iの化合物を得る。脱保護は、当業者に利用可能である様々な方法によって実現される。例えば、PGがトリチル保護を指す式IPの化合物は、DCM等の好適な非プロトン性溶媒中、トリフルオロ酢酸およびトリエチルシランにより、約-30℃から約80℃までの温度、好ましくは約室温で、約10分間から24時間、典型的には約1時間の期間をかけて、脱保護され得る。
【0106】
【0107】
同様に、式IBの化合物では、前述のテトラゾール環化の後に、追加の誘導体化が、当業者に利用可能である様々な方法によって実施され得る。例えば、そのような誘導体化は、n-ブチルリチウムまたはLDA等の適切な塩基を使用し、続いて、THF等の好適な極性非プロトン性溶媒中、N-ハロコハク酸イミド、1,2-ジブロモエタン、N-フルオロ-N-(フェニルスルホニル)ベンゼンスルホンアミド、もしくはハロゲン化アルキル等の他のアルキル化剤、クロロホルメート等の求電子試薬、またはDMFもしくはホルミルピペリジン等のホルミル化試薬を添加して、実施することができる。反応を実行するための好適な温度は、約-100℃から室温の間、典型的には、経時的に室温に加温しながら、-78℃前後である。好適な反応時間は、約1から約24時間の間である。これらの反応で得られた生成物の多くは、さらに誘導体化され得る。例えば、このように産生されたアルデヒドは、それ自体が、還元、酸化、二フッ素化(difluorination)または当業者に公知である他の転換に供され得る。一部の場合には、誘導体化の前にテトラゾール基を保護することが望ましい場合がある。故に、スキームIVにおける式IBPの化合物では、PGは、トリチル基等の適切なアミン保護基である。保護基は、トリエチルアミン等の適切な塩基の存在下、DCM等の適切な非プロトン性溶媒中でのトリフェニルメチルクロリドとの反応等、当技術分野で公知の手順を使用して、導入され得る。上記の通りの誘導体化により、式IPの化合物をもたらし、脱保護時に式Iの化合物を得る。脱保護は、当業者に利用可能である様々な方法によって実現される。例えば、PGがトリチル保護を指す式IPの化合物は、DCM等の好適な溶媒中、トリフルオロ酢酸およびトリエチルシランにより、約-30℃から約80℃までの温度、好ましくは約室温で、約10分間から24時間、典型的には約1時間の期間をかけて、脱保護され得る。
【0108】
式Aの化合物は、テトラゾール形成の前に、当業者に公知である様々な方法によってさらに精巧化され得る。そのような転換は、スキームV、VIおよびVIIに示す通りの例を含むがこれらに限定されない。ある特定の事例では、これらの一般的なアプローチの2つ以上、またはそれらの部分の組合せは、式Aのチオフェンニトリルへのアクセスを得るように組み合わせられてよい。
【0109】
【0110】
例えば、式AFの化合物では、テトラゾール環化の前に、追加の誘導体化が実施され得る。例えば、式AFの化合物は、当業者に利用可能である様々な方法によってハロゲン化され得る。例えば、R3がCl(またはBr)である式Iの化合物は、酢酸、アセトニトリルまたは好ましくはDMF等の様々な好適な極性溶媒中、N-クロロコハク酸イミド(またはN-ブロモコハク酸イミド)等の好適な試薬を使用して、調製され得る。反応のための好適な温度は、約0℃から100℃の間、好ましくは約50℃である。反応時間は、約2から約48時間まで、典型的には約16時間である。
【0111】
式AGまたは式Aの化合物は、式AFの化合物から、n-ブチルリチウムまたはLDA等の適切な塩基を使用し、続いて、THF等の好適な極性非プロトン性溶媒中、N-ハロコハク酸イミド、1,2-ジブロモエタン、N-フルオロ-N-(フェニルスルホニル)ベンゼンスルホンアミド、クロロホルメート、ハロゲン化アルキル等の求電子試薬またはDMF等のホルミル源を添加して、調製してもよい。反応を実行するための好適な温度は、約-100℃から室温の間、典型的には、経時的に室温に加温しながら、-78℃前後である。好適な反応時間は、約1から約24時間の間である。これらの誘導体の多くは、式Aの追加の化合物にアクセスするためのさらなる操作にそれら自体が好適であり得ることが、当業者には明らかとなるであろう。
【0112】
【0113】
同様の方式で、誘導体化は、式AHの化合物に対して、n-ブチルリチウムまたはLDA等の適切な塩基を使用し、続いて、THF等の好適な極性非プロトン性溶媒中、N-ハロコハク酸イミド、1,2-ジブロモエタン、N-フルオロ-N-(フェニルスルホニル)ベンゼンスルホンアミド、クロロホルメート、ハロゲン化アルキル等の求電子試薬またはDMF等のホルミル源の添加によって、実施してもよい。反応を実行するための好適な温度は、約-100℃から室温の間、典型的には、経時的に室温に加温しながら、-78℃前後である。好適な反応時間は、約1から約24時間の間である。これらの誘導体の多くは、式Aの追加の化合物にアクセスするためのさらなる操作にそれら自体が好適であり得ることが、当業者には明らかとなるであろう。例えば、R2臭化物は、DMF等の適切な極性非プロトン性溶媒中、塩化銅等の試薬により、R2塩化物にさらに変換され得る。好適な反応温度は、約2時間から約48時間、典型的には約24時間にわたって、約50℃から約200℃、典型的には約140℃である。
【0114】
【0115】
LGが臭化物またはヨウ化物等の好適な脱離基である式AJの化合物は、下記の例示的な手順を含むがこれに限定されない様々な反応を介する、R1における追加の変形の化合物の前駆体であってよい。例えば、R1がアルキルである式Aの化合物は、式AJの化合物から調製され得る。この反応のための好適な条件は、炭酸セシウム等の好適な塩基の存在下、カリウムアルキルトリフルオロボレート等の適切なカップリングパートナーとの、遷移金属触媒、好ましくはパラジウム触媒カップリング反応を含む。反応は、トルエン等の好適な非プロトン性溶媒中、約室温から約120℃、好ましくは約100℃の温度で、実施される。好適な反応時間は、約1時間から約48時間、典型的には約24時間である。
【0116】
チオフェンニトリル前駆体は、スキームIIに従って式Aの化合物を調製する前に、誘導体化してもよい。スキームVIIIおよびIXならびに下記の例示的な手順においてにおいて描写されるものを含むがこれらに限定されない、当業者に利用可能な多数の出発材料および方法がある。
【0117】
【0118】
式B1のアルデヒドは、還元、オレフィン化、二フッ素化または当業者に公知である他の転換を含む様々な修飾に供され得る。例えば、式B1の化合物におけるアルデヒド基は、DCM等の好適な非プロトン性溶媒中、(ジエチルアミノ)硫黄トリフルオリド等の試薬を使用して、ジフルオロメチル基に変換され得る。反応のための好適な温度は、約0℃から溶媒が還流する温度まで、典型的には約室温である。この反応のための好適な時間は、約1時間から約48時間まで、典型的には約16時間である。
【0119】
【0120】
式Eのカルボン酸等のニトリル前駆体は、スキームIIのようにそれらのニトリルへの変換の前に、さらに精巧化されてもよい。例えば、スキームIXでは、式Eの化合物は、式E1の化合物から、n-ブチルリチウム等の適切な強塩基との反応、続いて、THF等の好適な極性非プロトン性溶媒中、DMFもしくはアセトアルデヒド等のカルボニル化合物、ハロゲン化アルキルまたはN-ハロコハク酸イミドを含むがこれらに限定されない求電子試薬の添加によって、調製され得る。好適な反応温度は、約1から12時間、典型的には約3時間の期間にわたる、約-80℃から約室温、好ましくは約-70℃、続いて、約室温に加温する期間および約1から24時間の追加の反応時間である。
【0121】
上述した式I化合物のための出発材料および試薬も、容易に入手可能であるか、または有機合成の従来の方法を使用して当業者によって簡単に合成され得る。例えば、本明細書において使用される化合物の多くは、大きな科学的関心および実需がある化合物に関連するか、またはそれに由来し、したがって、多くのそのような化合物が、市販されているか、または文献において報告されているか、または文献において報告されている方法によって他の市販されている物質から簡単に調製される。
【0122】
本発明は、治療有効量の式Iの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩と、薬学的に許容できる担体、ビヒクルまたは賦形剤とを有する医薬組成物も対象とする。
【0123】
本発明の化合物は、本明細書において記述される疾患/状態の処置のための他の医薬作用物質(例えば、抗アテローム性動脈硬化および抗血栓剤)と併せて使用されてもよい。本発明は、
式Iのいずれかの化合物または前記化合物の薬学的に許容できる塩である第1の化合物、
抗糖尿病剤、非アルコール性脂肪性肝炎処置剤、非アルコール性脂肪肝疾患処置剤または抗心不全処置剤である第2の化合物、および
医薬担体、ビヒクルまたは賦形剤
を有する治療有効量の組成物を含む医薬組合せ組成物も対象とする。
【0124】
本発明の一実施形態では、前記非アルコール性脂肪性肝炎処置剤または非アルコール性脂肪肝疾患処置剤は、ACC阻害剤、KHK阻害剤、DGAT-2阻害剤、FXRアゴニスト、メトホルミン、インクレチン類似体またはインクレチン受容体モジュレーターである。
【0125】
本発明の別の実施形態では、前記抗糖尿病剤は、SGLT-2阻害剤、メトホルミン、インクレチン類似体、インクレチン受容体モジュレーター、DPP-4阻害剤またはPPARアゴニストである。
【0126】
本発明の別の実施形態では、前記抗糖尿病剤は、メトホルミン(metfomin)、シタグリプチンまたはエルツグリフロジン(ertuglifozin)である。
【0127】
本発明の別の実施形態では、前記抗心不全剤は、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、アンジオテンシン-受容体ネプリライシン阻害剤、ベータアドレナリン作動性受容体遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬または血管拡張剤である。
【0128】
組合せ剤
本発明の化合物は、単独でまたは1つもしくは複数の追加の治療剤と組み合わせて投与され得る。「組み合わせて投与される」または「併用療法」が意味するのは、本発明の化合物および1つまたは複数の追加の治療剤が、処置されている哺乳動物に同時発生的に投与されることである。組み合わせて投与される場合、各成分は、同時にまたは異なる時点にて任意の順序で順次に投与されてよい。故に、各成分は、所望の治療効果を提供するように、別個にではあるが時間的に十分に近くなるように投与されてよい。語句「同時発生的投与」、「共投与」、「同時投与」および「同時に投与される」は、化合物が組み合わせて投与されることを意味する。故に、本明細書において記述される予防および処置の方法は、組合せ剤の使用を含む。
【0129】
組合せ剤は、哺乳動物に治療有効量で投与される。「治療有効量」が意味するのは、単独でまたは追加の治療剤と組み合わせて哺乳動物に投与される場合に、所望の疾患/状態(例えば、NASH、心不全または糖尿病)を処置するために有効な、本発明の化合物の量である。
【0130】
本発明の化合物のNASH/NAFLD活性を考慮すると、それらは、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)および/または非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)ならびに関連疾患/状態の処置のための他の作用物質、例を挙げると、オルリスタット、TZDおよび他のインスリン感作剤、FGF21類似体、メトホルミン、オメガ-3-酸エチルエステル(例えば、ロバザ)、フィブレート、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(例えば、プラバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、NK-104(別名イタバスタチン、またはニスバスタチン(nisvastatin)もしくはニスバスタチン(nisbastatin))およびZD-4522(別名ロスバスタチン、またはアタバスタチンもしくはビサスタチン(visastatin))、エゼチミブ、プロブコール、ウルソデオキシコール酸、TGR5アゴニスト、FXRアゴニスト、ビタミンE、ベタイン、ペントキシフィリン、CB1アンタゴニスト、カルニチン、N-アセチルシステイン、還元グルタチオン、ロルカセリン、ナルトレキソンとブプロピオン(buproprion)との組合せ、SGLT2阻害剤(ダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン、トフォグリフロジン、エルツグリフロジン、ASP-1941、THR1474、TS-071、ISIS388626およびLX4211ならびにWO2010023594におけるものを含む)、フェンテルミン、トピラメート、GLP-1受容体アゴニスト、GIP受容体アゴニスト、デュアルGLP-1受容体/グルカゴン受容体アゴニスト(すなわち、OPK88003、MEDI0382、JNJ-64565111、NN9277、BI456906)、デュアルGLP-1受容体(receprtor)/GIP受容体アゴニスト(すなわち、チルゼパチド(LY3298176)、NN9423)、アンジオテンシン受容体遮断薬アセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)阻害剤、ジアシルグリセロールO-アシルトランスフェラーゼ1(DGAT-1)阻害剤、例を挙げると、WO09016462もしくはWO2010086820において記述されているもの、AZD7687もしくはLCQ908、ジアシルグリセロールO-アシルトランスフェラーゼ2(DGAT-2)阻害剤、PNPLA3阻害剤、FGF21類似体、FGF19類似体、PPARアゴニスト、FXRアゴニスト、AMPK活性化因子、SCD1阻害剤またはMPO阻害剤と共投与されてよい。
【0131】
例示的なGLP-1受容体アゴニストは、リラグルチド、アルビグルチド、エキセナチド、アルビグルチド、リキシセナチド、デュラグルチド、セマグルチド、HM15211、LY3298176、Medi-0382、NN-9924、TTP-054、TTP-273、エフェグレナタイド、下記を含む、WO2018109607において記述されているもの、および2019年6月11日に出願されたPCT/IB2019/054867において記述されているもの:
2-({4-[2-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[2-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-7-フルオロ-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[(2S)-2-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[(2S)-2-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-7-フルオロ-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[2-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[2-(4-シアノ-2-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[2-(5-クロロピリジン-2-イル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[2-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-3-(1,3-オキサゾール-2-イルメチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-カルボン酸;
2-({4-[2-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-[(1-エチル-1H-イミダゾール-5-イル)メチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[2-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-(1,3-オキサゾール-4-イルメチル)-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[2-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-(ピリジン-3-イルメチル)-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[2-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-(1,3-オキサゾール-5-イルメチル)-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[2-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-[(1-エチル-1H-1,2,3-トリアゾール-5-イル)メチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[2-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-(1,3-オキサゾール-2-イルメチル)-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[2-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-7-フルオロ-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[2-(4-シアノ-2-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-(1,3-オキサゾール-2-イルメチル)-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[(2S)-2-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-7-フルオロ-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[(2S)-2-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[(2S)-2-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-7-フルオロ-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[(2S)-2-(4-シアノ-2-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[(2S)-2-(5-クロロピリジン-2-イル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[(2S)-2-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-[(1-エチル-1H-イミダゾール-5-イル)メチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[(2R)-2-(4-シアノ-2-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[(2R)-2-(5-クロロピリジン-2-イル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[(2R)-2-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-[(1-エチル-1H-イミダゾール-5-イル)メチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[2-(5-クロロピリジン-2-イル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[(2S)-2-(5-クロロピリジン-2-イル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[(2R)-2-(5-クロロピリジン-2-イル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸;
2-({4-[2-(5-クロロピリジン-2-イル)-2-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-4-イル]ピペリジン-1-イル}メチル)-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸、DIAST-X2;および
2-[(4-{6-[(4-シアノ-2-フルオロベンジル)オキシ]ピリジン-2-イル}ピペリジン-1-イル)メチル]-1-[(2S)-オキセタン-2-イルメチル]-1H-ベンゾイミダゾール-6-カルボン酸、または薬学的に許容できるその塩を含む。
【0132】
例示的なACC阻害剤は、4-(4-[(1-イソプロピル-7-オキソ-1,4,6,7-テトラヒドロ-1’H-スピロ[インダゾール-5,4’-ピペリジン]-1’-イル)カルボニル]-6-メトキシピリジン-2-イル)安息香酸およびフィルソコスタット(GS-0976)ならびに薬学的に(phamaceutally)許容できるその塩を含む。
【0133】
例示的なFXRアゴニストは、トロピフェクサー(tropifexor)(2-[(1R,3R,5S)-3-({5-シクロプロピル-3-[2-(トリフルオロメトキシ)フェニル]-1,2-オキサゾール-4-イル}メトキシ)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-4-フルオロ-1,3-ベンゾチアゾール-6-カルボン酸)、シロフェクサール(cilofexor)(GS-9674)、オベチコール酸、LY2562175、Met409、TERN-101およびEDP-305ならびに薬学的に許容できるその塩を含む。
【0134】
例示的なDGAT2阻害剤は、
(S)-2-(5-((3-エトキシピリジン-2-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-N-(テトラヒドロフラン-3-イル)ピリミジン-5-カルボキサミド;
2-(5-((3-エトキシ-5-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-N-((3R,4S)-4-フルオロピペリジン-3-イル)ピリミジン-5-カルボキサミド;
2-(5-((3-エトキシ-5-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-N-((3S,5S)-5-フルオロピペリジン-3-イル)ピリミジン-5-カルボキサミド;
2-(5-((3-エトキシピリジン-2-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-N-((3R,4S)-4-フルオロピペリジン-3-イル)ピリミジン-5-カルボキサミド;
2-(5-((3-エトキシピリジン-2-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-N-((3R,4R)-4-フルオロピペリジン-3-イル)ピリミジン-5-カルボキサミド;
2-(5-((3-エトキシ-5-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-N-((3R,4R)-4-フルオロピペリジン-3-イル)ピリミジン-5-カルボキサミド;および
2-(5-((3-エトキシピリジン-2-イル)オキシ)ピリジン-3-イル)-N-((3S,5S)-5-フルオロピペリジン-3-イル)ピリミジン-5-カルボキサミド;または薬学的に許容できるその塩を含む。
【0135】
例示的なKHK阻害剤は、[(1R,5S,6R)-3-{2-[(2S)-2-メチルアゼチジン-1-イル]-6-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル}-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ-6-イル]酢酸および薬学的に許容できるその塩を含む。
【0136】
本発明の化合物の抗糖尿病活性を考慮すると、それらは、他の抗糖尿病剤と共投与されてよい。好適な抗糖尿病剤は、インスリン、メトホルミン、GLP-1受容体アゴニスト(本明細書で上述したもの)、アセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)阻害剤(本明細書で上述したもの)、SGLT2阻害剤(本明細書で上述したもの)、モノアシルグリセロールO-アシルトランスフェラーゼ阻害剤、ホスホジエステラーゼ(PDE)-10阻害剤、AMPK活性化因子、スルホニル尿素(例えば、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、ダイアビニーズ、グリベンクラミド、グリピジド、グリブリド、グリメピリド、グリクラジド、グリペンチド、グリキドン、グリソラミド(glisolamide)、トラザミドおよびトルブタミド)、メグリチニド、α-アミラーゼ阻害剤(例えば、テンダミスタット、トレスタチンおよびAL-3688)、α-グルコシドヒドロラーゼ阻害剤(例えば、アカルボース)、α-グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アジポシン(adiposine)、カミグリボース、エミグリテート、ミグリトール、ボグリボース、プラディマイシン-Qおよびサルボスタチン)、PPARγアゴニスト(例えば、バラグリタゾン、シグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾン、イサグリタゾン、ピオグリタゾンおよびロシグリタゾン)、PPARα/γアゴニスト(例えば、CLX-0940、GW-1536、GW-1929、GW-2433、KRP-297、L-796449、LR-90、MK-0767およびSB-219994)、タンパク質チロシンホスファターゼ-1B(PTP-1B)阻害剤(例えば、トロズスクエミン、ヒルチオサール(hyrtiosal)抽出物、およびZhang,S.ら、Drug Discovery Today、12(9/10)、373~381(2007)によって開示されている化合物)、SIRT-1活性化因子(例えば、レスベラトロル、GSK2245840またはGSK184072)、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)阻害剤(例えば、WO2005116014におけるもの、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン、デュトグリプチン、リナグリプチンおよびサクサグリプチン)、インスリン分泌促進剤(secreatagogues)、脂肪酸酸化阻害剤、A2アンタゴニスト、c-junアミノ末端キナーゼ(JNK)阻害剤、グルコキナーゼ活性化因子(GKa)、例を挙げると、WO2010103437、WO2010103438、WO2010013161、WO2007122482において記述されているもの、TTP-399、TTP-355、TTP-547、AZD1656、ARRY403、MK-0599、TAK-329、AZD5658またはGKM-001、インスリン、インスリン模倣物質、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤(例えば、GSK1362885)、VPAC2受容体アゴニスト、グルカゴン受容体モジュレーター、例を挙げると、Demong,D.E.ら、Annual Reports in Medicinal Chemistry 2008、43、119~137において記述されているもの、GPR119モジュレーター、特にアゴニスト、例を挙げると、WO2010140092、WO2010128425、WO2010128414、WO2010106457、Jones,R.M.ら、Medicinal Chemistry 2009、44、149~170において記述されているもの(例えば、MBX-2982、GSK1292263、APD597およびPSN821)、FGF21誘導体または類似体、例を挙げると、Kharitonenkov,A.ら、Current Opinion in Investigational Drugs 2009、10(4)359~364において記述されているもの、TGR5(GPBAR1とも称される)受容体モジュレーター、特にアゴニスト、例を挙げると、Zhong,M.、Current Topics in Medicinal Chemistry、2010、10(4)、386~396において記述されているものおよびINT777、GPR40アゴニスト、例を挙げると、TAK-875を含むがこれに限定されない、Medina,J.C.、Annual Reports in Medicinal Chemistry、2008、43、75~85において記述されているもの、GPR120モジュレーター、特にアゴニスト、高親和性ニコチン酸受容体(HM74A)活性化因子、およびSGLT1阻害剤、例を挙げるとGSK1614235を含む。本発明の化合物と組み合わせることができる抗糖尿病剤のさらなる代表的な一覧は、例えば、WO2011005611の28頁35行から30頁19行において見ることができる。
【0137】
他の抗糖尿病剤は、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ酵素の阻害剤またはモジュレーター、フルクトース1,6-ジホスファターゼの阻害剤、アルドースレダクターゼの阻害剤、ミネラルコルチコイド受容体阻害剤、TORC2の阻害剤、CCR2および/またはCCR5の阻害剤、PKCアイソフォーム(例えば、PKCα、PKCβ、PKCγ)の阻害剤、脂肪酸シンターゼの阻害剤、セリンパルミトイルトランスフェラーゼの阻害剤、GPR81、GPR39、GPR43、GPR41、GPR105、Kv1.3、レチノール結合タンパク質4、グルココルチコイド受容体、ソマトスタチン(somatostain)受容体(例えば、SSTR1、SSTR2、SSTR3およびSSTR5)のモジュレーター、PDHK2またはPDHK4の阻害剤またはモジュレーター、MAP4K4の阻害剤、IL1ベータを含むIL1ファミリーのモジュレーター、RXRアルファのモジュレーターを含み得る。加えて、好適な抗糖尿病剤は、Carpino,P.A.、Goodwin,B.Expert Opin.Ther.Pat、2010、20(12)、1627~51によって収載されている機序を含む。
【0138】
本発明の化合物の抗心不全活性を考慮すると、それらは、ACE阻害剤(例えば、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、トランドラプリル)、アンジオテンシンII受容体遮断薬(例えば、カンデサルタン、ロサルタン、バルサルタン)、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害剤(サクビトリル/バルサルタン)、Ifチャネル遮断薬イバブラジン、ベータ-アドレナリン遮断剤(例えば、ビソプロロール、コハク酸メトプロロール、カルベジロール)、アルドステロンアンタゴニスト(例えば、スピロノラクトン、エプレレノン)、ヒドララジンおよび二硝酸イソソルビド、利尿薬(例えば、フロセミド、ブメタニド、トルセミド、クロロチアジド、アミロライド、ヒドロクロロチアジド、インダパミド、メトラゾン、トリアムテレン)、またはジゴキシン等の他の抗心不全剤と共投与されてよい。
【0139】
本発明の化合物は、抗高血圧剤と組み合わせて使用されてもよく、そのような抗高血圧活性は、標準的なアッセイ(例えば、血圧測定)に従って、当業者により容易に決定される。好適な抗高血圧剤の例は、アルファアドレナリン作動性遮断薬;ベータアドレナリン作動性遮断薬;カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ジルチアゼム、ベラパミル、ニフェジピンおよびアムロジピン);血管拡張剤(例えば、ヒドララジン)、利尿薬(diruetics)(例えば、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、フルメチアジド、ヒドロフルメチアジド、ベンドロフルメチアジド、メチルクロロチアジド、トリクロロメチアジド、ポリチアジド、ベンズチアジド、エタクリン酸チクリナフェン(tricrynafen)、クロルタリドン、トルセミド、フロセミド、ムソリミン(musolimine)、ブメタニド、トリアムテレン(triamtrenene)、アミロライド、スピロノラクトン);レニン阻害剤;ACE阻害剤(例えば、カプトプリル、ゾフェノプリル、フォシノプリル、エナラプリル、セラノプリル、シラザプリル(cilazopril)、デラプリル、ペントプリル、キナプリル、ラミプリル、リシノプリル);AT-1受容体アンタゴニスト(例えば、ロサルタン、イルベサルタン、バルサルタン);ET受容体アンタゴニスト(例えば、シタクスセンタン、アトラセンタン(atrsentan)ならびに米国特許第5,612,359号および同第6,043,265号で開示されている化合物);デュアルET/AIIアンタゴニスト(例えば、WO00/01389で開示されている化合物);中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害剤;バソペプチダーゼ(vasopepsidase)阻害剤(デュアルNEP-ACE阻害剤)(例えば、ゲモパトリラトおよびニトレート)を含む。例示的な抗狭心症剤は、イバブラジンである。
【0140】
好適なカルシウムチャネル遮断薬(L型またはT型)の例は、ジルチアゼム、ベラパミル、ニフェジピンおよびアムロジピンならびにミベフラジル(mybefradil)を含む。
【0141】
好適な強心配糖体の例は、ジギタリスおよびウアバインを含む。
【0142】
一実施形態では、式I化合物は、1つまたは複数の利尿薬と共投与されてよい。好適な利尿薬の例は、(a)ループ利尿薬、例を挙げると、フロセミド(LASIX(商標)等)、トルセミド(DEMADEX(商標)等)、ブメタニド(bemetanide)(BUMEX(商標)等)およびエタクリン酸(EDECRIN(商標)等);(b)チアジド系利尿薬、例を挙げると、クロロチアジド(DIURIL(商標)、ESIDRIX(商標)またはHYDRODIURIL(商標)等)、ヒドロクロロチアジド(MICROZIDE(商標)またはORETIC(商標)等)、ベンズチアジド、ヒドロフルメチアジド(SALURON(商標)等)、ベンドロフルメチアジド、メチクロルチアジド(methychlorthiazide)、ポリチアジド、トリクロルメチアジドおよびインダパミド(LOZOL(商標)等);(c)フタルイミジン系利尿薬、例を挙げると、クロルタリドン(HYGROTON(商標)等)およびメトラゾン(ZAROXOLYN(商標)等);(d)キナゾリン系利尿薬、例を挙げると、キネタゾン;ならびに(e)カリウム保持性利尿薬、例を挙げると、トリアムテレン(DYRENIUM(商標)等)およびアミロライド(MIDAMOR(商標)またはMODURETIC(商標)等)を含む。
【0143】
別の実施形態では、式Iの化合物は、ループ利尿薬と共投与されてよい。また別の実施形態では、ループ利尿薬は、フロセミドおよびトルセミドから選択される。また別の実施形態では、式Iの1つまたは複数の化合物は、フロセミドと共投与されてよい。また別の実施形態では、式Iの1つまたは複数の化合物は、トルセミドと共投与されてよく、これは、トルセミドの制御または調節放出形態であってもよい。
【0144】
別の実施形態では、式Iの化合物は、チアジド系利尿薬と共投与されてよい。また別の実施形態では、チアジド系利尿薬は、クロロチアジドおよびヒドロクロロチアジドからなる群から選択される。また別の実施形態では、式Iの1つまたは複数の化合物は、クロロチアジドと共投与されてよい。また別の実施形態では、式Iの1つまたは複数の化合物は、ヒドロクロロチアジドと共投与されてよい。
【0145】
別の実施形態では、式Iの1つまたは複数の化合物は、フタルイミジン系利尿薬と共投与されてよい。また別の実施形態では、フタルイミジン系利尿薬は、クロルタリドンである。
【0146】
好適なミネラルコルチコイド受容体アンタゴニストの例は、スピロノラクトン(sprionolactone)およびエプレレノンを含む。
【0147】
好適なホスホジエステラーゼ阻害剤の例は、PDE III阻害剤(シロスタゾール等)およびPDE V阻害剤(シルデナフィル等)を含む。
【0148】
当業者ならば、本発明の化合物が、PCI、ステント留置術、薬剤溶出ステント、幹細胞療法および植え込み型ペースメーカー、除細動器等の医療機器、または心臓再同期療法を含む、他の心血管または脳血管処置と併せて使用されてもよいことを認識するであろう。
【0149】
特に、単一の投薬量単位として提供される場合、組み合わさった活性原料間に化学的相互作用の潜在性が存在する。この理由から、式I化合物および第2の治療剤を単一の投薬量単位中で組み合わせる場合、それらは、活性原料を単一の投薬量単位中で組み合わせても、活性原料間の物理的接触が最小化される(すなわち、低減される)ように製剤化される。例えば、1つの活性原料は、腸溶コーティングされてよい。活性原料の1つを腸溶コーティングすることにより、組み合わさった活性原料間の接触を最小化することが可能なだけでなく、これらの成分が胃では放出されず腸で放出されるように、胃腸管内のこれらの成分のうちの1つの放出を制御することも可能である。活性原料のうちの1つを、胃腸管全体を通して持続放出を達成し、組み合わさった活性原料間の物理的接触を最小化する働きもする材料でコーティングしてもよい。さらに、この成分の放出が腸でのみ起こるように、持続放出成分を追加で腸溶コーティングすることもできる。また別のアプローチは、活性成分をさらに分離するために、1つの成分が、持続および/または腸溶放出ポリマーでコーティングされ、他の成分も、低粘度グレードのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のポリマーまたは当技術分野で公知の通りの他の適切な材料でコーティングされている、組合せ製品の製剤化を伴うであろう。ポリマーコーティングは、他の成分との相互作用に対する追加の障壁を形成する働きをする。
【0150】
本発明の組合せ製品の成分間の接触を最小化するこれらおよび他の手法は、単一剤形で投与されるか、別個の形態であるが同じ方式によって同時に投与されるかにかかわらず、本開示を理解すれば、当業者には容易に明らかとなるであろう。
【0151】
併用療法処置では、本発明の化合物および他の薬物療法の両方が、従来の方法によって哺乳動物(例えば、ヒト、男性または女性)に投与される。
【0152】
本発明の式I化合物、それらのプロドラッグならびにそのような化合物およびプロドラッグの塩はいずれも、哺乳動物、特にヒトにおいてBCKDKを阻害する作用物質としての治療的使用に適応しており、故に、そのような作用が関係する種々の状態(例えば、本明細書において記述されるもの)の処置に有用である。
【0153】
本発明に従って処置され得る疾患/状態は、NASH/NAFLD、糖尿病および心不全ならびに関連疾患/状態を含むがこれらに限定されない。
【0154】
特に、BCKDKの阻害は、BCAAレベルの増大がヒトNASH試料で観察されたことから、NASH/NAFLDおよび関連疾患/状態に関連する(Lake AD、Novak P、Shipkova P、Aranibar N、Robertson DG、Reily MD、Lehman-McKeeman LD、Vaillancourt RR、Cherrington NJ:Branched chain amino acid metabolism profiles in progressive human nonalcoholic fatty liver disease.Amino Acids 2015、47:603~15)。PPM1K mRNAレベルの低減およびBCKDKタンパク質レベルの増大も、ヒトNASHで観察された(Lake AD、Novak P、Shipkova P、Aranibar N、Robertson DG、Reily MD、Lehman-McKeeman LD、Vaillancourt RR、Cherrington NJ:Branched chain amino acid metabolism profiles in progressive human nonalcoholic fatty liver disease.Amino Acids 2015、47:603~15)。肥満マウスまたはラットのBCKDK阻害剤による処置は、肝臓脂肪症およびトリグリセリド含有量を低減させ、ラットにおけるPPM1Kの過剰発現は、肝臓トリグリセリド含有量を低減させた(White PJ、McGarrah RW、Grimsrud PA、Tso SC、Yang WH、Haldeman JM、Grenier-Larouche T、An J、Lapworth AL、Astapova I、Hannou SA、George T、Arlotto M、Olson LB、Lai M、Zhang GF、Ilkayeva O、Herman MA、Wynn RM、Chuang DT、Newgard CB:The BCKDH Kinase and Phosphatase Integrate BCAA and Lipid Metabolism via Regulation of ATP-Citrate Lyase.Cell Metab 2018、27(6)、1281~1293)。さらに、NASHにおける第III相研究のための規制当局に認められた条件付承認は、肝生検によって取得される組織学的代理マーカーに基づく。これらの一般に許容されている代理は、i)線維症の悪化(すなわち、線維症段階における数値的増大)のないNASHの消散;ii)NASHの悪化のない線維症における1つまたは複数の段階低減である。詳細は、Ratziu、A critical review of endpoints for non-cirrhotic NASH therapeutic trials、Journal of Hepatology、2018、68.353~361およびその中の参考文献において見られ得る。
【0155】
したがって、BCKDKの活性化とNASH/NAFLDおよび関連疾患/状態の発生との間の正の相関を考慮すると、本発明の式I化合物、それらのプロドラッグならびにそのような化合物およびプロドラッグの塩は、それらの薬理作用のおかげで、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、肝線維症を伴う非アルコール性脂肪性肝炎、肝硬変を伴う非アルコール性脂肪性肝炎、または肝硬変および肝細胞癌を伴う非アルコール性脂肪性肝炎の予防、停止および/または退縮に有用である。
【0156】
加えて、BCKDKの増大は、BCKAの増大が心不全患者の心臓で観察されたことから、心不全および関連疾患/状態に関連する。(Sun H、Olson KC、Gao C、Prosdocimo DA、Zhou M、Wang Z、Jeyaraj D、Youn JY、Ren S、Liu Y、Rau CD、Shah S、Ilkayeva O、Gui WJ、William NS、Wynn RM、Newgard CB、Cai H、Xiao X、Chuang DT、Schulze PC、Lynch C、Jain MK、Wang Y:Catabolic Defect of Branched-Chain Amino Acids Promotes Heart Failure.Circulation 2016、133:2038~49。)
【0157】
心不全では、BCKDHを活性化する調節ホスファターゼ(PPM1K)が下方調節され、BCKDKが上方調節され、故に、BCAA異化作用は心不全において正常に機能しない可能性が高い。(Sun H、Olson KC、Gao C、Prosdocimo DA、Zhou M、Wang Z、Jeyaraj D、Youn JY、Ren S、Liu Y、Rau CD、Shah S、Ilkayeva O、Gui WJ、William NS、Wynn RM、Newgard CB、Cai H、Xiao X、Chuang DT、Schulze PC、Lynch C、Jain MK、Wang Y:Catabolic Defect of Branched-Chain Amino Acids Promotes Heart Failure.Circulation 2016、133:2038~49。)
【0158】
BCKDHおよびBCKDKはいずれも遍在的に発現されるが、BCKDHを脱リン酸化する調節ホスファターゼPPM1Kは、心臓組織において最も高度に発現される。PPM1K欠損マウスは、加齢性心不全を発生し、横大動脈狭窄(TAC)心不全モデルに供すると心機能が悪化した。(Sun H、Olson KC、Gao C、Prosdocimo DA、Zhou M、Wang Z、Jeyaraj D、Youn JY、Ren S、Liu Y、Rau CD、Shah S、Ilkayeva O、Gui WJ、William NS、Wynn RM、Newgard CB、Cai H、Xiao X、Chuang DT、Schulze PC、Lynch C、Jain MK、Wang Y:Catabolic Defect of Branched-Chain Amino Acids Promotes Heart Failure.Circulation 2016、133:2038~49。)
【0159】
BCKDKの阻害剤の使用は、3つの異なる前臨床心不全モデル(TAC、左前下行枝結紮術/心筋梗塞、および虚血/再灌流)において心臓機能を改善した。(Sun H、Olson KC、Gao C、Prosdocimo DA、Zhou M、Wang Z、Jeyaraj D、Youn JY、Ren S、Liu Y、Rau CD、Shah S、Ilkayeva O、Gui WJ、William NS、Wynn RM、Newgard CB、Cai H、Xiao X、Chuang DT、Schulze PC、Lynch C、Jain MK、Wang Y:Catabolic Defect of Branched-Chain Amino Acids Promotes Heart Failure.Circulation 2016、133:2038~49;Wang W、Zhang F、Xia Y、Zhao S、Yan W、Wang H、Lee Y、Li C、Zhang L、Lian K、Gao E、Cheng H、Tao L:Defective branched chain amino acid catabolism contributes to cardiac dysfunction and remodeling following myocardial infarction.Am J Physiol Heart Circ Physiol 2016、311:H1160~H9;Li T、Zhang Z、Kolwicz SC,Jr.、Abell L、Roe ND、Kim M、Zhou B、Cao Y、Ritterhoff J、Gu H、Raftery D、Sun H、Tian R:Defective Branched-Chain Amino Acid Catabolism Disrupts Glucose Metabolism and Sensitizes the Heart to Ischemia-Reperfusion Injury.Cell Metab 2017、25:374~85。)
【0160】
したがって、心臓または末梢組織においてBCKDKを阻害することは、代謝性疾患および心臓機能にとっての利益を実証するはずである。
【0161】
したがって、BCKDKの活性化と心不全および関連疾患/状態の発生との間の正の相関を考慮すると、本発明の式I化合物、それらのプロドラッグならびにそのような化合物およびプロドラッグの塩は、それらの薬理作用のおかげで、心不全、うっ血性心不全、不安定狭心症、末梢動脈疾患、肺高血圧症、血管炎または哺乳動物が心筋梗塞を経験した場合(二次予防(2回目の心筋梗塞))の予防、停止および/または退縮に有用である。
【0162】
加えて、BCKDKの増大は、血漿BCAAが空腹時グルコースレベルの増大した患者において上方調節されることから、糖尿病および関連疾患/状態に関連し、血漿中のBCKA濃度における1つの標準偏差の増大は、糖尿病を発生する可能性を、50%を超えて増大させる。(Wang TJ、Larson MG、Vasan RS、Cheng S、Rhee EP、McCabe E、Lewis GD、Fox CS、Jacques PF、Fernandez C、O’Donnell CJ、Carr SA、Mootha VK、Florez JC、Souza A、Melander O、Clish CB、Gerszten RE:Metabolite profiles and the risk of developing diabetes.Nat Med 2011、17:448~53;Newgard CB、An J、Bain JR、Muehlbauer MJ、Stevens RD、Lien LF、Haqq AM、Shah SH、Arlotto M、Slentz CA、Rochon J、Gallup D、Ilkayeva O、Wenner BR、Yancy WS,Jr.、Eisenson H、Musante G、Surwit RS、Millington DS、Butler MD、Svetkey LP:A branched-chain amino acid-related metabolic signature that differentiates obese and lean humans and contributes to insulin resistance.Cell Metab 2009、9:311~26;Menni C、Fauman E、Erte I、Perry JR、Kastenmuller G、Shin SY、Petersen AK、Hyde C、Psatha M、Ward KJ、Yuan W、Milburn M、Palmer CN、Frayling TM、Trimmer J、Bell JT、Gieger C、Mohney RP、Brosnan MJ、Suhre K、Soranzo N、Spector TD:Biomarkers for type 2 diabetes and impaired fasting glucose using a nontargeted metabolomics approach.Diabetes 2013、62:4270~6。)
【0163】
遺伝子解析は、PPM1K遺伝子座における機能喪失突然変異がBCAA/BCKAレベルを増大させ、2型糖尿病の発生に関連することを示唆する。(Lotta LA、Scott RA、Sharp SJ、Burgess S、Luan J、Tillin T、Schmidt AF、Imamura F、Stewart ID、Perry JR、Marney L、Koulman A、Karoly ED、Forouhi NG、Sjogren RJ、Naslund E、Zierath JR、Krook A、Savage DB、Griffin JL、Chaturvedi N、Hingorani AD、Khaw KT、Barroso I、McCarthy MI、O’Rahilly S、Wareham NJ、Langenberg C:Genetic Predisposition to an Impaired Metabolism of the Branched-Chain Amino Acids and Risk of Type 2 Diabetes:A Mendelian Randomisation Analysis.PLoS Med 2016、13:e1002179。)
【0164】
糖尿病性、肥満マウスまたはラットのBCKDK阻害剤による処置は、空腹時血糖、耐糖能試験における血糖を改善し、インスリンレベルを低減させ、インスリン感受性を改善した。ラットにおけるPPM1Kの過剰発現も、血糖を改善し、インスリンレベルを低減させた。(White PJ、McGarrah RW、Grimsrud PA、Tso SC、Yang WH、Haldeman JM、Grenier-Larouche T、An J、Lapworth AL、Astapova I、Hannou SA、George T、Arlotto M、Olson LB、Lai M、Zhang GF、Ilkayeva O、Herman MA、Wynn RM、Chuang DT、Newgard CB:The BCKDH Kinase and Phosphatase Integrate BCAA and Lipid Metabolism via Regulation of ATP-Citrate Lyase.Cell Metab 2018。)
【0165】
したがって、BCKDKと糖尿病および関連疾患/状態の発生との間の正の相関を考慮すると、本発明の式I化合物、それらのプロドラッグならびにそのような化合物およびプロドラッグの塩は、それらの薬理作用のおかげで、I型糖尿病、II型真性糖尿病、特発性I型糖尿病(Ib型)、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)、早期発症型2型糖尿病(EOD)、若年発症型非定型糖尿病(YOAD)、若年発生成人型糖尿病(MODY)、栄養不良関連糖尿病、妊娠性糖尿病、冠状動脈性心疾患、虚血性脳卒中、血管形成術後の再狭窄、末梢血管疾患、間欠性跛行、心筋梗塞、脂質異常症、食後脂肪血症、耐糖能異常(IGT)の状態、空腹時血漿グルコース異常の状態、代謝性アシドーシス、ケトン症、関節炎、糖尿病性網膜症、黄斑変性、白内障、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、慢性腎不全、糖尿病性神経障害、代謝症候群、症候群X、高血糖症、高インスリン血症、高トリグリセリド血症(hypertrygliceridemia)、インスリン抵抗性、グルコース代謝異常、皮膚および結合組織障害、足潰瘍および潰瘍性結腸炎、内皮機能不全および血管コンプライアンス異常、ならびに高アポBリポタンパク質血症の予防、停止および/または退縮に有用である。
【0166】
本発明の化合物の投与は、本発明の化合物を全身におよび/または局部的に送達する任意の方法を介することができる。これらの方法は、経口ルート、非経口、十二指腸内ルート、口腔、鼻腔内等を含む。概して、本発明の化合物は、経口的に投与されるが、例えば、経口投与が標的に不適切である場合または患者が薬物を摂取することができない場合には、非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、皮下または髄内)が利用され得る。
【0167】
ヒト患者への投与では、本明細書における化合物の経口1日用量は、当然ながら、投与のモードおよび頻度、病状、ならびに患者の年齢および状態等に応じて、1mgから5000mgの範囲内であってよい。経口1日用量は、使用され得る3mgから2000mgの範囲内である。さらなる経口1日用量は、5mgから1000mgの範囲内である。便宜上、本発明の化合物は、単位剤形で投与され得る。所望ならば、1日当たり複数回用量の単位剤形を使用して、総1日用量を増大させることができる。単位剤形は、例えば、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、250、500または1000mgの本発明の化合物を含有する、錠剤またはカプセル剤であってよい。総1日用量は、単回または分割用量で投与されてよく、内科医の裁量で、本明細書で記される典型的な範囲外となり得る。
【0168】
ヒト患者への投与では、本明細書における化合物の注入1日用量は、当然ながら、投与のモードおよび頻度、病状、ならびに患者の年齢および状態等に応じて、1mgから2000mgの範囲内であってよい。さらなる注入1日用量は、5mgから1000mgの範囲内である。総1日用量は、単回または分割用量で投与されてよく、内科医の裁量で、本明細書で記される典型的な範囲外となり得る。
【0169】
これらの化合物を、例えば上記で詳述した適応症のために、ヒト以外の動物に投与してもよい。各活性原料の投与される正確な投薬量は、処置されている動物の種類および病状の種類、動物の年齢、ならびに投与ルートを含むがこれらに限定されない任意の数の要因に応じて変動することになる。
【0170】
式I化合物と併せて(in conjuction with)使用される組合せ医薬作用物質の投薬量は、処置されている適応症に有効なものが使用される。そのような投薬量は、上記で参照したおよび本明細書で提供されるもの等の標準的なアッセイによって決定することができる。組合せ剤は、同時にまたは任意の順序で順次に投与され得る。
【0171】
これらの投薬量は、約60kgから70kgの重量を有する平均的なヒト対象に基づく。内科医は、乳児および高齢者等、その重量がこの範囲外となる対象のための用量を決定することが容易にできるであろう。
【0172】
投薬量レジメンは、最適な所望の応答を提供するように調整され得る。例えば、単回ボーラスが投与されてよく、数回の分割用量が経時的に投与されてよく、または、用量が、治療状況の緊急事態によって指し示されるように比例的に低減もしくは増大されてよい。投与の容易さおよび投薬量の均一性のために投薬量単位形態で非経口組成物を製剤化することがとりわけ有利である。投薬量単位形態は、本明細書において使用される場合、処置される哺乳動物対象のための単位投薬量として適した物理的に不連続な単位を指し、所定分量の活性化合物を含有する各単位は、所望の治療効果を、必要とされる医薬担体と一緒に生成するように算出した。本発明の投薬量単位形態についての仕様は、(a)化学療法剤の独自の特徴および実現される特定の治療または予防効果、ならびに(b)個体における感受性の処置のためにそのような活性化合物を化合物化する技術分野に固有の限定によって決定付けられ、それらに直接依存する。
【0173】
故に、当業者ならば、本明細書で提供される開示に基づき、用量および投薬レジメンが治療技術分野において周知の方法に従って調整されることが分かるであろう。すなわち、最大耐量を容易に確立することができ、検出可能な治療的利益を患者に提供するために各作用物質を投与する一次的な要求と同様に、患者に検出可能な治療的利益を提供する有効量も決定され得る。したがって、ある特定の用量および投与レジメンが本明細書において例示されているが、これらの例は、本発明を実践する際に患者に提供され得る用量および投与レジメンを何ら限定するものではない。
【0174】
用量値は、緩和すべき状態の種類および重症度とともに変動し得、単回または複数回用量を含み得ることに留意されたい。任意の特定の対象では、個々の必要性および組成物を投与するまたはその投与を監督する人物の専門的判定に従って、具体的な投薬量レジメンが経時的に調整されるべきであること、ならびに、本明細書において明記されている投薬量範囲は例示的なものにすぎず、特許請求されている組成物の範囲も実践も制限することを意図していないことを、さらに理解されたい。例えば、用量は、薬物動態または薬力学的パラメーターに基づいて調整されてよく、該パラメーターは、毒性効果および/または検査値等の臨床効果を含み得る。故に、本発明は、当業者によって決定される通りの患者内の用量漸増を包含する。化学療法剤の投与のための適切な投薬量およびレジメン(regiments)を決定することは、関連技術分野において周知であり、本明細書において開示される教示が提供されれば、当業者により、包含されると理解されるであろう。
【0175】
本発明はさらに、医薬(単位投薬量錠剤または単位投薬量カプセル剤等)として使用するための式Iの化合物の使用を含む。別の実施形態では、本発明は、処置方法について論じた上記の項において先に同定された状態の1つまたは複数を処置するための医薬(単位投薬量錠剤または単位投薬量カプセル剤等)の製造のための、式Iの化合物の使用を含む。
【0176】
本発明の医薬組成物は、単回単位用量として、または複数の単回単位用量として、調製、包装またはバルク販売されてよい。本明細書において使用される場合、「単位用量」は、所定量の活性原料を含む医薬組成物の不連続な量である。活性原料の量は、概して、対象に投与されるであろう活性原料の投薬量、または、例えばそのような投薬量の2分の1もしくは3分の1等、そのような投薬量の好都合な割合に等しい。
【0177】
本発明の化合物または組合せは、単独で投与され得るが、概して、当技術分野において公知である1つまたは複数の好適な医薬添加剤、アジュバント、賦形剤または担体との混和物で投与され、意図されている投与ルートおよび標準的な医薬実務に関して選択されることになる。本発明の化合物または組合せは、治療必要性に見合った、所望の投与ルートおよび放出プロファイルの特異性に応じて、即時、遅延、調節、持続、パルスまたは制御放出剤形を提供するように製剤化されてよい。
【0178】
医薬組成物は、本発明の化合物または組合せを、概して組成物の約1%から約75%、80%、85%、90%またはさらには95%(重量で)の範囲内、通常は約1%、2%または3%から約50%、60%または70%の範囲内、より頻繁には約1%、2%または3%から50%未満、例を挙げると約25%、30%または35%の範囲内の量で含む。
【0179】
具体的な量の活性化合物を用いて種々の医薬組成物を調製する方法は、当業者に公知である。例えば、Remington:The Practice of Pharmacy、Lippincott Williams and Wilkins、Baltimore Md、第20版、2000を参照されたい。
【0180】
非経口注射に好適な組成物は、概して、薬学的に許容できる滅菌水溶液もしくは非水溶液、分散体、懸濁液、または乳剤、および滅菌注射用溶液または分散体への復元のための滅菌粉末を含む。好適な水性および非水性担体または賦形剤(溶媒およびビヒクルを含む)の例は、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール等)、それらの好適な混合物、オリーブ油等の植物油を含むトリグリセリド、およびオレイン酸エチル等の注射用有機エステルを含む。好ましい担体は、Condea Vista Co.、Cranford、N.J.から入手可能な、グリセリンまたはプロピレングリコールを加えたMiglyol(登録商標)ブランドカプリル/カプリン酸エステル(例えば、Miglyol(登録商標)812、Miglyol(登録商標)829、Miglyol(登録商標)840)である。妥当な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散体の場合には必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。
【0181】
非経口注射のためのこれらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤等の添加剤も含有してよい。組成物の微生物汚染の予防は、種々の抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等を用いて遂行することができる。等張剤、例えば、砂糖、塩化ナトリウム等を含むことも望ましい場合がある。吸収を遅延させることができる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によって、注射用医薬組成物の持続的吸収を起こすことができる。
【0182】
経口投与のための固体剤形は、カプセル剤、錠剤、チュアブル錠、キャンディー剤、丸剤、散剤およびマルチ微粒子調製物(顆粒剤)を含む。そのような固体剤形では、本発明の化合物または組合せは、少なくとも1つの不活性添加剤、賦形剤または担体と混和される。好適な添加剤、賦形剤または担体は、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム等の材料、ならびに/または(a)1つもしくは複数の充填剤もしくは増量剤(例えば、微結晶性セルロース(FMC Corp.からAvicel(商標)として入手可能)デンプン、ラクトース、スクロース、マンニトール、ケイ酸、キシリトール、ソルビトール、デキストロース、リン酸水素カルシウム、デキストリン、アルファ-シクロデキストリン、ベータ-シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、中鎖脂肪酸、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等);(b)1つもしくは複数の結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、プルラン、アルファ化デンプン、寒天、トラガカント、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、アカシア等);(c)1つもしくは複数の保湿剤(例えば、グリセロール等);(d)1つもしくは複数の崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、バレイショもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定の複合ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム(Edward Mendell Co.からExplotab(商標)として入手可能)、架橋ポリビニルピロリドン、クロスカルメロースナトリウムA型(Ac-di-sol(商標)として入手可能)、ポリアクリリンカリウム(polyacrilin potassium)(イオン交換樹脂)等);(e)1つもしくは複数の溶液緩染剤(例えば、パラフィン等);(f)1つもしくは複数の吸収加速剤(例えば、第四級アンモニウム化合物等);(g)1つもしくは複数の湿潤剤(例えば、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセロール等);(h)1つもしくは複数の吸着剤(例えば、カオリン、ベントナイト等);ならびに/または(i)1つもしくは複数の滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸ポリオキシル、セタノール、タルク、水素化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、ジメチルポリシロキサン、微結晶性ワックス、黄蝋、白蝋、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム等)を含む。カプセル剤および錠剤の場合には、剤形は緩衝剤も含み得る。
【0183】
同様の種類の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖等の添加剤および高分子量ポリエチレングリコール等を使用して、軟質または硬質充填ゼラチンカプセル剤における充填剤としても使用され得る。
【0184】
錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤および顆粒剤等の固体剤形は、腸溶コーティングおよび当技術分野において周知である他のもの等のコーティングおよび外殻を用いて調製され得る。それらは、乳白剤を含有してもよく、本発明の化合物および/または追加の医薬作用物質を遅延方式で放出するような組成のものであってもよい。使用され得る包埋組成物の例は、ポリマー性物質およびワックスである。薬物は、適切な場合、上記で言及した添加剤の1つまたは複数を加えた、マイクロカプセル形態であってもよい。
【0185】
錠剤では、活性剤は、典型的には、製剤の50%未満(重量で)、例えば、重量で5%または2.5%等の約10%未満を構成することになる。製剤の主部は、充填剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤を含み、香味剤を含んでいてもよい。これらの添加剤の組成は、当技術分野において周知である。高頻度で、充填剤/賦形剤は、下記の成分:微結晶性セルロース、マンニトール、ラクトース(全種類)、デンプンおよびリン酸二カルシウムのうちの2つ以上の混合物を含むことになる。充填剤/賦形剤混合物は、典型的には、製剤の98%未満、好ましくは95%未満、例えば93.5%を構成する。好ましい崩壊剤は、Ac-di-sol(商標)、Explotab(商標)、デンプンおよびラウリル硫酸ナトリウムを含む。存在する場合、崩壊剤は、通常、製剤の10%未満または5%未満、例えば約3%を構成することになる。好ましい滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムである。存在する場合、滑沢剤は、通常、製剤の5%未満または3%未満、例えば約1%を構成することになる。
【0186】
錠剤は、標準的な錠剤化プロセス、例えば、直接圧縮または湿式、乾式もしくは融解造粒、融解凝固プロセスおよび押出によって製造され得る。錠剤核は、単または多層であってよく、当技術分野において公知の適切な保護膜でコーティングされ得る。
【0187】
経口投与のための液体剤形は、薬学的に許容できる乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤を含む。本発明の化合物または組合せに加えて、液体剤形は、当技術分野において一般的に使用される不活性賦形剤、例を挙げると、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(例えば、綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ種子油等)、Miglyole(登録商標)(CONDEA Vista Co.、Cranford、N.J.から入手可能)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタン脂肪酸エステル、またはこれらの物質の混合物等を含有してよい。
【0188】
そのような不活性賦形剤のほかに、組成物は、湿潤剤、乳化および懸濁化剤、甘味、香味および着香剤等の添加剤も含み得る。
【0189】
本発明の化合物または組合せの経口液体形態は、活性化合物が完全に溶解する溶液を含む。溶媒の例は、経口投与に好適なすべての薬学的に先例のある溶媒、特に、本発明の化合物が良好な溶解度を示すもの、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、食用油ならびにグリセリルおよびグリセリドベースの系を含む。グリセリルおよびグリセリドベースの系は、例えば、下記のブランド製品(および対応するジェネリック製品):Captex(商標)355EP(トリカプリル酸/カプリン酸グリセリル、Abitec製、Columbus Ohio)、Crodamol(商標)GTC/C(中鎖トリグリセリド、Croda製、Cowick Hall、UK)またはLabrafac(商標)CC(中鎖トリグリセリド(triglyides)、Gattefosse製)、Captex(商標)500P(三酢酸グリセリル、すなわちトリアセチン、Abitec製)、Capmul(商標)MCM(中鎖モノおよびジグリセリド、Abitec製)、Migyol(商標)812(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、Condea製、Cranford N.J.)、Migyol(商標)829(カプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリド、Condea製)、Migyol(商標)840(ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、Condea製)、Labrafil(商標)M1944CS(オレオイルマクロゴール-6グリセリド、Gattefosse製)、Peceol(商標)(モノオレイン酸グリセリル、Gattefosse製)およびMaisine(商標)35-1(モノオレイン酸グリセリル、Gattefosse製)を含み得る。特に興味深いのは、中鎖(約C.sub.8からC.sub.10)トリグリセリド油である。これらの溶媒は、高頻度で、組成物の主部、すなわち、約50%超、通常は、約80%、例えば約95%または99%超を構成する。アジュバントおよび添加物が、溶媒とともに、主に矯味剤、嗜好性および香味剤、酸化防止剤、安定剤、質感および粘度調整剤ならびに可溶化剤として含まれていてもよい。
【0190】
懸濁剤は、本発明の化合物または組合せに加えて、懸濁化剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタ水酸化物、ベントナイト、寒天、ならびにトラガカント、またはこれらの物質の混合物等の担体をさらに含んでよい。
【0191】
直腸または膣内投与のための組成物は、好ましくは、坐剤を含み、これは、本発明の化合物または組合せを、通常の室温では固体であるが体温では液体であり、したがって、直腸または膣腔内で融解し、それにより、活性成分を放出する、ココアバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤ワックス等の好適な非刺激性添加剤または担体と混合することによって調製され得る。
【0192】
本発明の化合物または組合せの局所投与のための剤形は、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、散剤およびスプレー剤を含む。薬物は、薬学的に許容できる添加剤、賦形剤または担体、および、必要とされ得る任意の保存剤、緩衝液または噴射剤と混和される。
【0193】
本発明の化合物の多くは、水への溶解度が乏しい、例えば約1μg/mL未満である。したがって、上記で論じた中鎖トリグリセリド油等の可溶化非水性溶媒中の液体組成物は、これらの化合物のための好ましい剤形である。
【0194】
スプレー乾燥プロセスによって形成された分散体を含む固体非晶質分散体も、本発明の溶解度が乏しい化合物のための好ましい剤形である。「固体非晶質分散体」が意味するのは、溶解度が乏しい化合物の少なくとも一部が非晶質形態であり、水溶性ポリマー中に分散されている、固体材料である。「非晶質」が意味するのは、溶解度が乏しい化合物が結晶性ではないことである。「結晶性」が意味するのは、化合物が各次元において少なくとも100の繰り返し単位の三次元の長距離秩序を呈することである。故に、非晶質という用語は、本質的に秩序を有さない材料だけでなく、わずかな程度の秩序を有し得るがその秩序が三次元未満であるおよび/または短距離しかない材料も含むように意図されている。非晶質材料は、当技術分野において公知の技術、例を挙げると、粉末x線回折(PXRD)結晶学、固体状態NMR、または示差走査熱量測定(DSC)等の熱的技術によって特徴付けられ得る。
【0195】
好ましくは、固体非晶質分散体中の溶解度が乏しい化合物の少なくとも大部分(すなわち、少なくとも約60wt%)が非晶質である。化合物は、比較的純粋な非晶質ドメインまたは領域中の固体非晶質分散体内に、ポリマー全体に均質に分布している化合物の固溶体またはこれらの状態もしくはそれらの間の中間にある状態の任意の組合せとして、存在することができる。好ましくは、固体非晶質分散体は実質的に均質であり、そのため、非晶質化合物はポリマー全体に可能な限り均質に分散されている。本明細書において使用される場合、「実質的に均質」は、固体非晶質分散体内の比較的純粋な非晶質ドメインまたは領域中に存在する化合物の割合が比較的小さく、薬物の総量のおよそ20wt%未満、好ましくは10wt%未満であることを意味する。
【0196】
固体非晶質分散体における使用に好適な水溶性ポリマーは、溶解度が乏しい化合物と有害な方式で化学的に反応せず、薬学的に許容できるものであり、生理的に関連するpH(例えば、1~8)で水溶液への少なくともいくらかの溶解度を有するという意味で、不活性であるべきである。ポリマーは、中性またはイオン化可能であることができ、1~8のpH範囲の少なくとも一部を上回る、少なくとも0.1mg/mLの水溶解度を有するべきである。
【0197】
本発明での使用に好適な水溶性ポリマーは、セルロースであっても非セルロースであってもよい。ポリマーは、水溶液中で中性またはイオン化可能であってよい。これらのうち、イオン化可能およびセルロースポリマーが好ましく、イオン化可能セルロースポリマーがより好ましい。
【0198】
例示的な水溶性ポリマーは、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、トリメリト酸酢酸セルロース(CAT)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマー(PEO/PPO、ポロキサマーとしても公知である)、ならびにそれらの混合物を含む。とりわけ好ましいポリマーは、HPMCAS、HPMC、HPMCP、CMEC、CAP、CAT、PVP、ポロキサマー、およびそれらの混合物を含む。最も好ましいのは、HPMCASである。欧州特許出願公開第0901786A2号を参照されたく、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0199】
固体非晶質分散体は、溶解度が乏しい化合物の少なくとも大部分(少なくとも60%)が非晶質状態であるという結果をもたらす固体非晶質分散体を形成するための任意のプロセスに従って調製され得る。そのようなプロセスは、機械的、熱的および溶媒プロセスを含む。例示的な機械的プロセスは、製粉および押出;高温溶融、溶媒修飾溶融(solvent-modified fusion)および融解凝固プロセスを含む融解プロセス;ならびに非溶媒沈殿、スプレーコーティングおよびスプレー乾燥を含む溶媒プロセスを含む。例えば、下記の米国特許を参照されたく、その関連する開示は、参照により本明細書に組み込まれる:押出プロセスにより分散体を形成することを記述する第5,456,923号および第5,939,099号;製粉プロセスにより分散体を形成することを記述する第5,340,591号および第4,673,564号;ならびに融解凝固プロセスにより分散体を形成することを記述する第5,707,646号および第4,894,235号。好ましいプロセスでは、固体非晶質分散体は、欧州特許出願公開第0901786A2号で開示される通り、スプレー乾燥によって形成される。このプロセスでは、化合物およびポリマーが、アセトンまたはメタノール等の溶媒に溶解され、次いで、スプレー乾燥によって溶媒が溶液から迅速に除去されて、固体非晶質分散体を形成する。固体非晶質分散体は、化合物の最大約99wt%、例えば、所望される通りに1wt%、5wt%、10wt%、25wt%、50wt%、75wt%、95wt%、または98wt%を含有するように調製され得る。
【0200】
固体分散体は、それ自体が剤形として使用されてもよいし、またはカプセル剤、錠剤、液剤もしくは懸濁剤等の他の剤形の調製において製造使用製品(MUP)としての働きをしてもよい。水性懸濁剤の例は、2%ポリソルベート-80中に2.5mg/mLの化合物を含有する1:1(w/w)化合物/HPMCAS-HFスプレー乾燥分散体の水性懸濁剤である。錠剤またはカプセル剤において使用するための固体分散体は、概して、典型的にはそのような剤形において見られる他の添加剤またはアジュバントと混合されることになる。例えば、カプセル剤のための例示的な充填剤は、2:1(w/w)化合物/HPMCAS-MFスプレー乾燥分散体(60%)、ラクトース(高速流)(15%)、微結晶性セルロース(例えば、アビセル.sup.(R0-102)(15.8%)、ナトリウムデンプン(7%)、ラウリル硫酸ナトリウム(2%)およびステアリン酸マグネシウム(1%)を含有する。
【0201】
HPMCASポリマーは、日本、東京の信越化学工業株式会社からそれぞれAqoa(登録商標)-LF、Aqoat(登録商標)-MFおよびAqoat(登録商標)-HFとして、低、中および高グレードで入手可能である。より高いMFおよびHFグレードが概して好ましい。
【0202】
下記の段落は、非ヒト動物に有用な、例示的な製剤、投薬量等について記述するものである。本発明の化合物および本発明の化合物と抗肥満剤との組合せの投与は、経口的にまたは非経口的に達成され得る。
【0203】
有効用量が受けられるような量の、本発明の化合物または本発明の化合物と別の抗肥満剤との組合せが投与される。概して、動物に経口的に投与される1日用量は、体重1kg当たり約0.01から約1,000mgの間、例えば、約0.01から約300mg/kgの間、または約0.01から約100mg/kgの間、または体重1kg当たり約0.01から約50mgの間、または約0.01から約25mg/kg、または約0.01から約10mg/kgまたは約0.01から約5mg/kgの間である。
【0204】
好都合なことに、本発明の化合物(または組合せ)は、治療投薬量の化合物が日常の給水とともに摂取されるように、飲用水中に担持され得る。化合物は、好ましくは液体の水溶性濃縮物(水溶性塩の水溶液等)の形態で、飲用水に直接計り入れることができる。
【0205】
好都合なことに、本発明の化合物(または組合せ)は、そのままで、またはプレミックスもしくは濃縮物とも称される動物飼料サプリメントの形態で、飼料に直接添加することもできる。添加剤、賦形剤または担体中の化合物のプレミックスまたは濃縮物は、より一般的には、飼料への作用物質の包含に用いられる。好適な添加剤、賦形剤または担体は、所望される通りに、水、種々のミール、例を挙げると、アルファルファミール、大豆ミール、綿実油ミール、アマニ油ミール、トウモロコシ穂軸ミールおよびコーンミール、糖蜜、尿素、骨ミール、ならびに養鶏飼料において一般に用いられるような鉱物ミックス等の、液体または固体である。特に有効な添加剤、賦形剤または担体は、それ自体がそれぞれ動物飼料、すなわち、そのような飼料のごく一部である。担体は、プレミックスがブレンドされる完成飼料中における化合物の一様分布を容易にする。好ましくは、化合物は、プレミックス、その後、飼料に徹底的にブレンドされる。この点において、化合物は、大豆油、コーン油、綿実油等の好適な油性ビヒクルに、または揮発性有機溶媒に分散または溶解され、次いで、担体とブレンドされてよい。完成飼料中における化合物の量が、所望のレベルの化合物を取得するために適切な割合のプレミックスを飼料とブレンドすることによって調整され得ることから、濃縮物中における化合物の割合は、幅広い変動が可能であることが分かるであろう。
【0206】
高効力濃縮物は、飼料製造業者によって、上述した通りに大豆油ミールおよび他のミール等のタンパク質性担体とブレンドされて、動物に直接給餌するために好適な濃縮サプリメントを生成し得る。そのような事例では、動物は、通常食を消費することが許可される。代替として、そのような濃縮サプリメントを飼料に直接添加して、治療有効レベルの本発明の化合物を含有する栄養的にバランスの取れた完成飼料を生成してよい。混合物をツインシェルブレンダー内等の標準的な手順によって徹底的にブレンドして、均質性を確実にする。
【0207】
サプリメントが飼料の最上層として使用される場合、これは同様に、仕上げ加工された飼料の頂部全体にわたる化合物の分布の均一性を確実にするのに役立つ。
【0208】
赤身肉の沈着を増大させるためおよび赤身肉対脂肪の比を改善するために有効な飲用水および飼料は、概して、本発明の化合物を、飼料または水中約0.001から約500ppmまでの化合物を提供するために十分な量の動物飼料と混合することによって調製される。
【0209】
好ましい薬用のブタ、ウシ、ヒツジおよびヤギ飼料は、概して、飼料1トン当たり約1から約400グラムまでの本発明の化合物(または組合せ)を含有し、これらの動物のための最適量は、通常、飼料1トン当たり約50から約300グラムである。
【0210】
好ましい養鶏および家庭内ペット飼料は、通常、飼料1トン当たり約1から約400グラムおよび好ましくは約10から約400グラムの本発明の化合物(または組合せ)を含有する。
【0211】
動物における非経口投与では、本発明の化合物(または組合せ)は、ペーストまたはペレットの形態で調製され、通常、赤身肉の沈着における増大および赤身肉対脂肪の比における改善が求められる動物の頭部または耳の皮膚の下に、移植片として投与されてよい。
【0212】
ペースト製剤は、ピーナッツ油、ゴマ油、コーン油等の薬学的に許容できる油中に薬物を分散させることによって調製され得る。
【0213】
有効量の本発明の化合物、医薬組成物または組合せを含有するペレットは、本発明の化合物または組合せを、カーボワックス、カルナウバ(carnuba)ロウ等の賦形剤と混和することによって調製され得、ペレット化プロセスを改善するために、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム等の滑沢剤を添加してよい。
【0214】
当然ながら、所望される赤身肉の沈着における増大および赤身肉対脂肪の比における改善を提供するであろう所望の用量レベルを実現するために、複数のペレットが動物に投与され得ることが認識される。その上、移植片は、動物の体内における妥当な薬物レベルを維持するために、動物の処置期間中、周期的に作製されてもよい。
【0215】
これらの作用物質および/または本発明の化合物を含有するリポソームは、米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号において記述されているもの等、当技術分野において公知の方法によって調製される。循環時間が強化されたリポソームは、米国特許第5,013,556号において開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いる逆相蒸発法によって産生され得る。リポソームは、定義された細孔径のフィルターを通して押出されて、所望の直径を持つリポソームを産出する。
【0216】
これらの作用物質および/または本発明の化合物は、例えば、コアセルベーション技術によって、または、界面重合、例えば、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルによって、それぞれコロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)もしくはマクロエマルション中に調製されたマイクロカプセルに封入されてもよい。そのような技術は、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Mack Publishing(2000)で開示されている。
【0217】
持続放出調製物が使用され得る。持続放出調製物の好適な例は、本発明の化合物を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスを含み、このマトリックスは、造形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)または’ポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸および7L-グルタミン酸エチルのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例を挙げると、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドで構成される注射用マイクロスフェア)で使用されているもの、イソ酪酸酢酸スクロース、ならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。
【0218】
静脈内投与に使用される製剤は、無菌でなくてはならない。これは、例えば、滅菌濾過膜に通す濾過によって容易に遂行される。本発明の化合物は、概して、無菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針によって貫通可能な栓を有する静脈注射溶液バッグまたはバイアルに入れられる。
【0219】
好適な乳剤は、市販されている脂肪乳剤、例を挙げると、Intralipid(商標)、Liposyn(商標)、Infonutrol(商標)、Lipofundin(商標)およびLipiphysan(商標)を使用して調製され得る。活性原料は、予め混合されたエマルション組成物に溶解されるか、または代替として、油(例えば、大豆油、サフラワー油、綿実油、ゴマ油、コーン油またはアーモンド油)およびリン脂質(例えば、卵リン脂質、大豆リン脂質または大豆レシチン)と水との混合時に形成されたエマルションに溶解されるかのいずれかであってよい。乳剤の等張性を調整するために、他の原料、例えば、グリセロールまたはグルコースを添加してよいことが分かるであろう。好適な乳剤は、典型的には、最大20%、例えば、5から20%の間の油を含有することになる。脂肪乳剤は、0.1から1.0μm、特に0.1から0.5μmの間の脂肪小滴を含み、5.5から8.0の範囲内のpHを有することができる。
【0220】
エマルション組成物は、本発明の化合物を、Intralipid(商標)またはその成分(大豆油、卵リン脂質、グリセロールおよび水)と混合することによって調製されるものであることができる。
【0221】
吸入または吹送のための組成物は、薬学的に許容できる、水性もしくは有機溶媒またはそれらの混合物中の溶液および懸濁液、ならびに粉末を含む。液体または固体組成物は、上記で明記した通りの好適な薬学的に許容できる添加剤を含有してよい。一部の実施形態では、組成物は、局部的または全身的効果のために経口または鼻呼吸ルートによって投与される。好ましくは無菌の薬学的に許容できる溶媒中の組成物は、ガスの使用によって噴霧され得る。噴霧溶液は、噴霧デバイスから直接吸い込まれ得るか、または、噴霧デバイスを、フェイスマスク、テントもしくは間欠陽圧呼吸器に取り付けてよい。溶液、懸濁液または粉末組成物は、製剤を適切な方式で送達するデバイスから、好ましくは経口的にまたは鼻内に投与され得る。
【0222】
本明細書における化合粒は、経口、口腔、鼻腔内、非経口(例えば、静脈内、筋肉内または皮下)もしくは直腸投与のために、または吸入による投与に好適な形態で、製剤化され得る。本発明の化合物は、持続送達のために製剤化されてもよい。
【0223】
ある特定の量の活性原料を用いて種々の医薬組成物を調製する方法は、公知であるか、または、本開示を踏まえて、当業者には明らかとなるであろう。医薬組成物を調製する方法の例については、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版(Lippincott Williams&Wilkins、2000)を参照されたい。
【0224】
本発明に従う医薬組成物は、0.1%~95%、好ましくは1%~70%の本発明の化合物を含有してよい。いずれにせよ、投与される組成物は、ある分量の本発明に従う化合物を、処置されている対象の疾患/状態を処置するために有効な量で含有することになる。
【0225】
本発明は、別個に投与され得る活性原料の化合物を用いる本明細書において記述される疾患/状態の処置に関する態様を有することから、本発明は、別個の医薬組成物をキット形態で組み合わせることにも関する。キットは、2つの別個の医薬組成物:式Iの化合物、そのプロドラッグまたはそのような化合物もしくはプロドラッグの塩と、上述した通りの第2の化合物とを含む。キットは、容器、分割されたボトルまたは分割されたホイル小包等の別個の組成物を含有するための手段を含む。典型的には、キットは、別個の成分の投与指示書を含む。キット形態は、別個の成分が好ましくは異なる剤形(例えば、経口および非経口)で投与され、異なる投薬間隔で投与される場合、または、組合せの個々の成分の滴定が処方医師によって所望される場合に、特に有利である。
【0226】
そのようなキットの例は、いわゆるブリスターパックである。ブリスターパックは、包装業界において周知であり、医薬単位剤形(錠剤、カプセル剤等)の包装に広く使用されている。ブリスターパックは、概して、好ましくは透明なプラスチック材料のホイルで覆われた比較的剛性の材料のシートからなる。包装プロセス中に、陥凹がプラスチックホイル中に形成される。陥凹は、錠剤またはカプセル剤が梱包されるサイズおよび形状を有する。次に、錠剤またはカプセル剤が陥凹に入れられ、比較的剛性の材料のシートが、陥凹が形成された方向とは反対のホイルの面で、プラスチックホイルに対して密封される。結果として、錠剤またはカプセル剤は、プラスチックホイルとシートとの間の陥凹内に密封される。好ましくは、シートの強さは、陥凹に圧力を手動で印加することによって錠剤またはカプセル剤をブリスターパックから除去することができ、それにより、シート内の陥凹の場所に開口部が形成されるようなものである。次いで、錠剤またはカプセル剤を、前記開口部を介して除去することができる。
【0227】
キットへの記憶補助を、例えば、錠剤またはカプセル剤の隣に、そのように指定されている錠剤またはカプセル剤を摂取すべきレジメンの日数の数字と一致する数字の形態で提供することが望ましい場合がある。そのような記憶補助の別の例は、例えば、例えば次の通りにカードに印刷されたカレンダーである:「第一週、月曜日、火曜日等・・・第二週、月曜日、火曜日、・・・」等。記憶補助の他の変形形態は容易に明らかとなるであろう。「1日用量」は、所与の日に服用される単一の錠剤もしくはカプセル剤または数個の丸剤もしくはカプセル剤であることができる。また、式I化合物の1日用量は、1個の錠剤またはカプセル剤からなっていてもよく、一方、第2の化合物の1日用量は、数個の錠剤またはカプセル剤からなっていてもよく、逆も然りである。記憶補助はこれを反映すべきである。
【0228】
本発明の別の具体的な実施形態では、1日用量を一度に1回分ずつそれらの意図された使用順序で分注するように設計されたディスペンサーが提供される。好ましくは、ディスペンサーは、レジメンへのコンプライアンスをさらに容易にするように、記憶補助を装備している。そのような記憶補助の例は、分注された1日用量の数を指し示す機械的計数器である。そのような記憶補助の別の例は、液晶表示器と、または、例えば、前回の1日用量が服用された日付を読み出し、かつ/または次の用量を服用すべき日付を思い出させる、可聴リマインダーシグナルと連結された、電池式マイクロチップメモリである。
【0229】
また、本発明は、一緒に投与され得る活性原料の組合せを用いる、本明細書において記述される疾患/状態に関する態様を有するため、本発明は、別個の医薬組成物を、単一の錠剤もしくはカプセル剤、二重層もしくは多層錠剤もしくはカプセル剤等の(であるがこれらに限定されない)単一剤形で、または、錠剤もしくはカプセル剤内の隔離された成分もしくは区画の使用によって組み合わせることにも関する。
【0230】
活性原料は、薬学的に許容できる賦形剤、添加剤、ビヒクルまたは担体から選択される追加の溶媒、共溶媒、添加剤または錯体形成剤を加えてまたは加えずに、水性または非水性ビヒクル中の溶液として送達され得る。
【0231】
活性原料は、薬学的に許容できる添加剤を加えて、固体分散体としてまたは自己乳化薬物送達系(SEDDS)として製剤化され得る。
【0232】
活性原料は、即時放出または調節放出の錠剤またはカプセル剤として製剤化され得る。代替として、活性原料は、追加の添加剤を加えずに、カプセル殻内の活性原料として単独で送達され得る。
【実施例】
【0233】
実験手順
下記は、本発明の種々の化合物の合成を例証する。本発明の範囲内の追加の化合物は、これらの実施例において例証される方法を使用して、単独でまたは当技術分野において概して公知である技術と組み合わせてのいずれかで調製され得る。
【0234】
実験は、概して、特に酸素または水分に感受性の試薬または中間体を用いる場合には、不活性雰囲気(窒素またはアルゴン)下で行った。市販の溶媒および試薬は、概してさらに精製することなく使用した。適切な場合、無水溶媒、概して、Acros OrganicsのAcroSeal(登録商標)製品、Sigma-AldrichのAldrich(登録商標)Sure/Seal(商標)、またはEMD ChemicalsのDriSolv(登録商標)製品を用いた。他の場合には、下記の水のQC基準に到達するまで、4Å分子篩を詰めたカラムに市販の溶媒を通過させた:a)ジクロロメタン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミドおよびテトラヒドロフランについては100ppm未満;b)メタノール、エタノール、1,4-ジオキサンおよびジイソプロピルアミンについては180ppm未満。非常に感受性が高い反応では、溶媒を、金属ナトリウム、水素化カルシウムまたは分子篩でさらに処理し、使用直前に蒸留した。生成物は、概して、真空下で乾燥させた後、さらなる反応に持ち越すか、または生物学的検査に送った。質量分析データは、液体クロマトグラフィー-質量分析(LCMS)、大気圧化学イオン化(APCI)またはガスクロマトグラフィー-質量分析(GCMS)設備のいずれかにより報告される。核磁気共鳴(NMR)データについての化学シフトは、用いた重水素化溶媒からの残留ピークを参照してパーツパーミリオン(ppm、δ)で表現される。
【0235】
検出可能な中間体を経由して進行する反応に、概して、LCMSが続き、その後の試薬の添加前に完全変換まで進行させた。他の実施例または方法における手順を参照する合成では、反応条件(反応時間および温度)は変動し得る。概して、反応に、薄層クロマトグラフィーまたは質量分析が続き、適切な場合、ワークアップに供した。精製は、実験間で変動し得、概して、溶離液/勾配に使用する溶媒および溶媒比は、適切なRfSまたは保持時間を提供するように選択した。これらの調製および実施例におけるすべての出発材料は、市販されているか、または当技術分野において公知のもしくは本明細書において記述される通りの方法によって調製できるかのいずれかである。
【0236】
後述する化合物および中間体は、ACD/ケムスケッチ2017.2.1、ファイルバージョンN40E41、ビルド96719(Advanced Chemistry Development,Inc.、Toronto、Ontario、Canada)が提供する命名規則を使用して命名した。ACD/ケムスケッチ2017.2.1が提供する命名規則は、当業者に周知であり、ACD/ケムスケッチ2017.2.1が提供する命名規則は、概して、有機化合物の命名法におけるIUPAC(国際純正応用化学連合)勧告およびCASインデックスルールに適合すると考えられる。
【0237】
用語「濃縮した」、「蒸発させた」および「真空で濃縮した」は、60℃未満の浴温度を持つロータリーエバポレーターにおける、減圧での溶媒の除去を指す。略語「min」および「h」は、それぞれ「分」および「時間」を表す。「室温」または「周囲温度」は、15℃から25℃の間の温度を意味し、「UPLC」は、超高速液体クロマトグラフィーを指す。
【0238】
水素化は、加圧水素ガス下、Parrシェーカー内で、または、完全水素および1~2mL/分の間の流速で、指定された温度にて、Thales-nano Hキューブフロー式水素化装置内で、実施され得る。
【0239】
HPLC、UPLC、LCMSおよびSFC保持時間は、手順において注記されている方法を使用して測定した。
【0240】
警告:テトラゾールは、概して高エネルギー官能基とみなされ、テトラゾール含有分子の合成および取り扱いにおいては注意を払うべきである。
【0241】
(実施例1)
5-(4-ブロモ-3-メチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール(1)
【0242】
【化15】
ステップ1. 4,5-ジブロモ-3-メチルチオフェン-2-カルボニトリル(C1)の合成。
臭素(9.98mL、195mmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(16mL)中の3-メチルチオフェン-2-カルボニトリル(4.0g、32mmol)の0℃溶液に添加し、反応混合物を60℃に16時間にわたって加熱した。飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(80mL)の添加後、混合物を15℃で1時間にわたって撹拌し、得られた固体を濾過を介して収集し、水で洗浄して、C1をオフホワイトの固体として提供した。収量:7.78g、27.7mmol、87%。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 2.46 (s, 3H).
【0243】
ステップ2. 4-ブロモ-3-メチルチオフェン-2-カルボニトリル(C2)の合成。
酢酸(50mL)および水(12.5mL)中のC1(5.0g、18mmol)および亜鉛(2.33g、35.6mmol)の混合物を、105℃で1時間にわたって撹拌した。反応混合物を冷却した後、これを真空で濃縮し、残留物を酢酸エチル(50mL)に溶解し、水(3×50mL)および希炭酸ナトリウム水溶液(3×50mL)で順次に洗浄した。減圧下での溶媒の除去により、C2を褐色固体として提供し、これをさらに精製することなく後続のステップにおいて使用した。収量:2.40g、11.9mmol、66%。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ7.47 (s, 1H), 2.42 (s, 3H).
【0244】
ステップ3. 5-(4-ブロモ-3-メチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール(1)の合成。
アジ化ナトリウム(927mg、14.3mmol)およびピリジン塩酸塩(1.37g、11.9mmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(50mL)中のC2(2.40g、11.9mmol)の溶液に添加した。次いで、反応混合物を110℃に16時間にわたって加熱し、その後すぐに、これを、水(50mL)で処理し、酢酸エチルおよびテトラヒドロフラン(1:1、3×50mL)の混合物で抽出した。合わせた有機層を真空で濃縮し、逆相HPLC(カラム:Phenomenexシナジーマックス-RP、10μm;移動相A:水中0.225%ギ酸;移動相B:アセトニトリル;勾配:20%から40%B)を介して精製して、1を白色固体として得た。収量:961mg、3.92mmol、33%。LCMS m/z 245.0 (臭素同位体パターンが認められる) [M+H]+.
1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ7.71 (s, 1H), 2.55 (s, 3H).
【0245】
(実施例2)
5-(5-フルオロ-3-メチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール(2)
【0246】
【化16】
ステップ1. 5-(3-メチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール(C3)の合成。
N,N-ジメチルホルムアミド(30mL)中の3-メチルチオフェン-2-カルボニトリル(1.00g、8.12mmol)の溶液に、アジ化ナトリウム(0.633g、9.74mmol)、続いて、ピリジン塩酸塩(0.938g、8.12mmol)を添加した。反応混合物を100℃で16時間にわたって撹拌し、その後すぐに、これを、室温に冷却し、水酸化ナトリウム水溶液(4.85M;10mL、48mmol)で処理し、30分間にわたって撹拌させた。得られた混合物をジエチルエーテル(100mL)とともに激しく撹拌し、水性層をジエチルエーテル(2×100mL)で洗浄し、これらの有機層を廃棄した。次いで、水性層を塩酸(6M;およそ35mL)の滴下添加によってpH1に酸性化し、ジエチルエーテル(3×100mL)で抽出した。これらの有機層を合わせ、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(150mL)で抽出し、得られた水性層をジエチルエーテル(2×100mL)で洗浄し、再度これらの有機層を廃棄した。水性層を塩酸(6M;およそ100mL)の添加によってpH1に酸性化し、ジエチルエーテル(3×100mL)で抽出した。これらの合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して、C3を黄色固体として提供した。収量:557mg、3.35mmol、41%。LCMS m/z 167.0 [M+H]
+.
1H NMR (400 MHz, メタノール-d
4) δ7.60 (d, J = 5.1 Hz, 1H),
7.07 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 2.55 (s, 3H).
【0247】
ステップ2. 5-(3-メチルチオフェン-2-イル)-2-トリチル-2H-テトラゾール(C4)の合成。
トリエチルアミン(0.171mL、1.23mmol)およびトリフェニルメチルクロリド(0.189g、0.678mmol)を、ジクロロメタン(2mL)中のC3(0.102g、0.614mmol)の溶液に添加し、反応混合物を室温で16時間にわたって撹拌させた。次いでこれをジクロロメタン(100mL)で希釈し、水(3×100mL)および飽和塩化ナトリウム水溶液(150mL)で順次に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して、C4を白色固体として提供した。この材料は、1H NMR分析により、完全に純粋ではなかった。収量:260mg、推定定量的。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d), 特徴的ピーク: δ6.93
(d, J = 5.0 Hz, 1H), 2.49 (s, 3H).
【0248】
ステップ3. 5-(5-フルオロ-3-メチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール(2)の合成。
リチウムジイソプロピルアミドの溶液(2.0M;0.636mL、1.27mmol)を、テトラヒドロフラン(5mL)中のC4(前ステップから;260mg、0.614mmol)の-78℃溶液に、内部反応温度が-76℃を超えて上昇しないような速度で、滴下方式にて添加した。添加の完了後、反応混合物を-78℃で5時間にわたって撹拌させ、その後すぐに、テトラヒドロフラン(2mL)中のN-フルオロ-N-(フェニルスルホニル)ベンゼンスルホンアミド(401mg、1.27mmol)の溶液を滴下添加した。撹拌を-78℃で30分間にわたって続け、次いで、反応混合物を室温に16時間かけて加温させた。水を添加し、得られた混合物を酢酸エチルで2回抽出し、合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。保護基を除去するために、残留物をジクロロメタン(5mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(0.490mL、6.36mmol)、続いて、トリエチルシラン(0.508mL、3.18mmol)で処理した。反応混合物を室温で1時間にわたって撹拌した後、これを重炭酸ナトリウム水溶液で希釈し、ジクロロメタンで3回洗浄した。有機層を廃棄し、水性層を1M塩酸の添加によってpH1に調整した。次いで、水性層をジクロロメタンで3回抽出し、これらの有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。逆相HPLC(カラム:WatersサンファイアC18、5μm;移動相A:水中0.05%トリフルオロ酢酸;移動相B:アセトニトリル中0.05%トリフルオロ酢酸;勾配:5%から95%B)を介する精製により、2を固体として提供した。収量:6.4mg、34.7μmol、6%。LCMS m/z 185.1 [M+H]+. 1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ6.43 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 2.53 (s, 3H).
【0249】
(実施例3および4)
5-(4-クロロ-3-エチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール、アンモニウム塩(3)および5-(4-ブロモ-3-エチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール、アンモニウム塩(4)
【0250】
【化17】
ステップ1. 3,4-ジブロモチオフェン-2-カルボニトリル(C5)の合成。
ピリジン(5.25mL、64.9mmol)を、アセトニトリル(27mL)中の3,4-ジブロモチオフェン-2-カルバルデヒド(2.93g、10.9mmol)およびヒドロキシルアミン塩酸塩(0.830g、11.9mmol)の混合物に滴下方式にて20分間かけて添加した。反応混合物を室温で1.5時間にわたって撹拌させ、その後すぐに、トリフルオロ酢酸無水物(3.77mL、26.7mmol)を30分間かけて滴下方式にて添加した。室温でさらに2.5時間後、反応混合物を塩酸(0.05M;200mL)および酢酸エチル(150mL)の混合物に注ぎ入れた。水性層を酢酸エチル(2×100mL)で抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(勾配:ヘプタン中0%から40%酢酸エチル)により、C5を薄黄色固体として提供した。収量:2.34g、8.77mmol、80%。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ7.58 (s, 1H).
【0251】
ステップ2. 4-ブロモ-3-エチルチオフェン-2-カルボニトリル(C6)の合成。
トルエン(11mL)および水(1mL)中の、C5(1.00g、3.75mmol)、カリウムエチルトリフルオロボレート(0.509g、3.74mmol)、酢酸パラジウム(II)(84.1mg、0.375mmol)、ジ(1-アダマンチル)-n-ブチルホスフィン(0.161g、0.449mmol)および炭酸セシウム(3.66g、11.2mmol)を含有する反応ベッセルを排気し、窒素を投入した。この排気サイクルを2回繰り返し、次いで、反応混合物を100℃に24時間にわたって加熱した。室温に冷却した後、これをジクロロメタン(100mL)と水(150mL)との間に分配し、水性層をジクロロメタン(2×100mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配:ヘプタン中0%から30%酢酸エチル)を介して精製した。C6を少量の不純物とともに含有する薄黄色の油性材料を単離し、この材料を後続のステップに進めた。収量:236mg、1.09mmol、29%。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d), 生成物ピークのみ: δ7.46
(s, 1H), 2.84 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.25 (t, J = 7.6 Hz, 3H).
【0252】
ステップ3. 4-クロロ-3-エチルチオフェン-2-カルボニトリル(C7)の合成。
N,N-ジメチルホルムアミド(54mL)中のC6(0.235g、1.09mmol)の溶液に、塩化銅(I)(0.215g、2.17mmol)を添加し、反応混合物を140℃に16時間にわたって加熱した。これを室温に冷却した後、反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)とジエチルエーテル(100mL)との間に分配した。有機層を、飽和塩化アンモニウム水溶液(2×100mL)、水(3×100mL)および飽和塩化ナトリウム水溶液(200mL)で順次に洗浄し、次いで、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。シリカゲル上でのクロマトグラフィー(勾配:ヘプタン中0%から15%酢酸エチル)により、無色油(166mg)を提供し、GCMS分析は、出発材料C6{GCMS m/z 215 (臭素同位体パターンが観察された) [M+]}および生成物C7{GCMS m/z 171 (塩素同位体パターンが観察された) [M+]}の両方が存在することを指し示した。この材料を後続のステップに直接進めた。
【0253】
ステップ4. 5-(4-クロロ-3-エチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール、アンモニウム塩(3)および5-(4-ブロモ-3-エチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール、アンモニウム塩(4)の合成。
アジ化ナトリウム(88.0mg、1.35mmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(3.6mL)中のC7およびC6(前ステップから;0.166g、1.09mmol未満)の溶液に添加し、続いて、ピリジン塩酸塩(134mg、1.16mmol)を添加した。反応混合物を100℃で16時間にわたって撹拌し、その後すぐに、これを、室温に冷却し、水酸化ナトリウム水溶液(4.85M;10mL、48mmol)で処理した。得られた混合物を30分間にわたって撹拌した後、これをジエチルエーテル(100mL)で希釈し、5分間にわたって激しく撹拌した。水性層をジエチルエーテル(2×100mL)で洗浄し、有機層を廃棄し、水性層を塩酸(6M;およそ35mL)の滴下添加によってpH1に酸性化した。次いでこれを、ジエチルエーテル(3×100mL)で抽出し、合わせた有機層を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(150mL)で抽出した。この塩基性水性層をジエチルエーテル(2×100mL)で洗浄し、塩酸(6M;およそ100mL)の添加によってpH1に酸性化し、ジエチルエーテル(3×100mL)で抽出した。これらの3つの有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して、薄黄色固体(131mg)を提供した。2つの成分を、逆相HPLC(カラム:WatersクロスブリッジC18、5μm;移動相A:水中0.03%水酸化アンモニウム(v/v);移動相B:アセトニトリル中0.03%水酸化アンモニウム(v/v);勾配:5%から20%B)を使用して分離した。クロロ生成物3を固体として単離した。収量:2ステップにわたって20.3mg、87.6μmol、8%。LCMS m/z 215.2 (塩素同位体パターンが認められる) [M+H]+.
1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ7.87
(s, 1H), 2.99 (q, J = 7.4 Hz, 3H), 1.14 (t, J = 7.5 Hz, 5H).
【0254】
ブロモ生成物4を白色固体として単離した。収量:2ステップにわたって40.6mg、0.147mmol、13%。LCMS m/z 259.1 (臭素同位体パターンが認められる) [M-H+].
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ7.62
(s, 1H), 7.20 (br s, 1H), 7.08 (br s, 1H), 6.95 br (s, 1H), 3.05 (q, J = 7.4
Hz, 2H), 1.11 (t, J = 7.4 Hz, 3H).
【0255】
(実施例5)
5-[3-(ジフルオロメチル)チオフェン-2-イル]-1H-テトラゾール(5)
【0256】
【化18】
ステップ1. 2-ブロモ-3-(ジフルオロメチル)チオフェン(C8)の合成。
ジクロロメタン(17mL)中の2-ブロモチオフェン-3-カルバルデヒド(0.95g、5.0mmol)の溶液を0℃に冷却し、次いで、滴下方式にて(ジエチルアミノ)硫黄トリフルオリド(2.0mL、15mmol)で処理した。反応混合物を室温に加温させ、16時間にわたって撹拌させ、その後すぐに、これを、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(300mL)で小分けにして慎重に処理した。水性層をジクロロメタン(3×100mL)で抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、C8を油性橙色固体(1.04g)として提供した。この材料の一部を後続のステップにおいて直接使用した。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ7.33 (d, J = 5.8 Hz, 1H), 7.13 (d, J =
5.7 Hz, 1H), 6.68 (t, J
HF = 54.8 Hz, 1H).
【0257】
ステップ2. 3-(ジフルオロメチル)チオフェン-2-カルボニトリル(C9)の合成。
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(542mg、0.469mmol)およびシアン化亜鉛(0.551g、4.69mmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(17mL)中のC8(前ステップから;0.50g、2.4mmol以下)の溶液に添加した。反応バイアルを密封し、117℃に16時間にわたって加熱し、その後すぐに、これを、室温に冷却し、この時点での反応混合物のGCMS分析は、生成物の存在を示した:GCMS m/z 159.0 [M+]. 反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(100mL)で希釈し、ジエチルエーテル(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層を水(3×150mL)および飽和塩化ナトリウム水溶液(150mL)で順次に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。シリカゲル上でのクロマトグラフィー(勾配:ヘプタン中0%から40%酢酸エチル)によってC9を油性薄黄色残留物として得た。収量:2ステップにわたって115mg、0.723mmol、30%。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ7.66 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.32 (d, J =
5.2 Hz, 1H), 6.84 (t, JHF = 54.6 Hz, 1H).
【0258】
ステップ3. 5-[3-(ジフルオロメチル)チオフェン-2-イル]-1H-テトラゾール(5)の合成。
アジ化ナトリウム(56.4mg、0.867mmol)およびピリジン塩酸塩(83.5mg、0.723mmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(3mL)中のC9(115mg、0.723mmol)の溶液に添加し、反応混合物を100℃に24時間にわたって加熱した。これを室温に冷却した後、反応混合物を水酸化ナトリウム水溶液(4.85M;5mL)で処理し、30分間にわたって撹拌させた。次いでこれを、ジクロロメタン(50mL)で希釈し、5分間にわたって激しく撹拌し、その後すぐに、層を分離し、水性層をジクロロメタン(2×50mL)で洗浄した。ジクロロメタン層を廃棄し、水性層を濃塩酸の滴下添加によってpH1に酸性化し、次いで、ジクロロメタン(3×50mL)で抽出した。これらの有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮し、翌日、橙色固体が存在し、これをジクロロメタン(2mL)で粉砕し、次いで、ジクロロメタン(2×3mL)でさらに洗浄して、5を白色固体(15.7mg)として得た。濾液を減圧下で濃縮して、追加の5を白色固体(72mg)として提供した。収量:87.7mg、0.434mmol、60%。LCMS m/z 201.2 [M-H+] 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6)
δ7.95 (d, J = 5.3 Hz, 1H), 7.55 (t, JHF =
54.7 Hz, 1H), 7.47 (d, J = 5.3 Hz, 1H).
【0259】
(実施例6)
5-[5-クロロ-3-(ジフルオロメチル)チオフェン-2-イル]-1H-テトラゾール(6)
【0260】
【化19】
N,N-ジメチルホルムアミド(0.36mL)中の5(72mg、0.36mmol)の溶液に、N-クロロコハク酸イミド(72.0mg、0.539mmol)を添加した。反応混合物を50℃に16時間にわたって加熱し、その後すぐに、これを、水酸化ナトリウム水溶液(1M;10mL)で希釈し、酢酸エチル(2×10mL)で洗浄した。次いで、水性層を塩酸(1M;15mL)によりpH1に酸性化し、ジクロロメタン(2×10mL)で抽出し、これらのジクロロメタン層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。残留物をジクロロメタン(25mL)に溶解し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(50mL)で処理し、10分間にわたって撹拌し、その後すぐに、水性層をジクロロメタン(3×25mL)で洗浄した。次いでこれを、塩酸(3M;およそ10mL)の添加によってpH1に酸性化し、ジクロロメタン(3×25mL)で抽出した。これらの3つの有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配:ジクロロメタン中0%から20%メタノール)に供した。単離された材料をジクロロメタンで粉砕して、6を白色固体として得た。収量:31mg、0.13mmol、36%。LCMS m/z 235.1 (塩素同位体パターンが認められる) [M-H
+].
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ7.57
(s, 1H), 7.50 (t, J
HF = 54.4 Hz, 1H).
【0261】
(実施例7)
5-(3-クロロチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール(7)
【0262】
【化20】
アジ化ナトリウム(0.543g、8.35mmol)およびピリジン塩酸塩(0.805g、6.97mmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(26mL)中の3-クロロチオフェン-2-カルボニトリル(1.00g、6.96mmol)の溶液に添加し、反応混合物を100℃に16時間にわたって加熱した。これを室温に冷却した後、反応混合物を水酸化ナトリウム水溶液(4.85M;10mL)で処理し、30分間にわたって撹拌させた。次いでこれを、ジクロロメタン(100mL)で希釈し、5分間にわたって激しく撹拌し、その後すぐに、層を分離し、水性層をジクロロメタン(2×100mL)で洗浄した。ジクロロメタン層を廃棄し、水性層を濃塩酸の滴下添加によってpH1に酸性化し、次いで、ジクロロメタン(3×100mL)で抽出した。これらの有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮し、得られた固体をジクロロメタン(10mL)で粉砕して、7を白色固体として提供した。収量:536mg、2.87mmol、41%。LCMS m/z 185.1 (塩素同位体パターンが認められる) [M-H
+].
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ7.98
(d, J = 5.4 Hz, 1H), 7.31 (d, J = 5.3 Hz, 1H).
【0263】
(実施例8)
5-(5-ブロモ-3-クロロチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール(8)
【0264】
【化21】
n-ブチルリチウム(2.5M;0.429mL、1.07mmol)を、テトラヒドロフラン(3.0mL)中のジイソプロピルアミン(0.108g、1.07mmol)の-78℃溶液に添加した。添加が完了した後、反応混合物を1時間にわたって撹拌し、0℃に加温し、30分間にわたって撹拌し、次いで、-78℃に冷却した。テトラヒドロフラン(1.0mL)中の7(0.100g、0.536mmol)の溶液を、添加全体を通して内部反応温度を-70℃未満に維持する速度で、滴下添加した。反応混合物を-78℃で1時間にわたって撹拌した後、テトラヒドロフラン(1.0mL)中の1,2-ジブロモエタン(92.8μL、1.08mmol)の溶液を添加し、撹拌を-78℃で1.5時間にわたって続けた。次いで、反応混合物を室温にゆっくりと加温させ、その後すぐに、これを、塩酸(1M;10mL)に注ぎ入れ、酢酸エチル(3×25mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して、油性薄橙色残留物(98mg)を提供した。この材料の一部(30mg)を、逆相HPLC(カラム:WatersサンファイアC18、5μm;移動相A:水中0.05%トリフルオロ酢酸;移動相B:アセトニトリル中0.05%トリフルオロ酢酸;勾配:15%から55%B)を介して精製して、8を得た。収量:8.8mg、33μmol、20%。LCMS m/z 265.0 (ブロモクロロ同位体パターンが認められる) [M+H]
+.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ7.57
(s, 1H).
【0265】
(実施例9)
5-(5-クロロ-3-メチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール(9)
【0266】
【化22】
アジ化ナトリウム(421mg、6.47mmol)および塩化亜鉛(735mg、5.39mmol)を、1-プロパノール(14mL)中の5-クロロ-3-メチルチオフェン-2-カルボニトリル(850mg、5.39mmol)の溶液に添加し、反応混合物を、激しく撹拌しながら95℃で終夜加熱した。次いでこれを、1M塩酸に添加し、30分間にわたって撹拌し、その後すぐに、混合物を酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(勾配:ジクロロメタン中0%から20%メタノール)により、精製された材料を提供し、次いでこれを、ジクロロメタンおよびヘプタンで粉砕して、9を白色固体として得た。収量:853mg、4.25mmol、79%。LCMS m/z 201.1 (塩素同位体パターンが認められる) [M+H]
+.
1H NMR (400 MHz, メタノール-d
4) δ6.99 (s, 1H), 2.51 (s, 3H).
【0267】
(実施例10)
5-(5-クロロ-4-フルオロ-3-メチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール(10)
【0268】
【化23】
ステップ1. 5-(5-クロロ-3-メチルチオフェン-2-イル)-2-トリチル-2H-テトラゾール(C10)の合成。
トリエチルアミン(0.139mL、0.997mmol)およびトリフェニルメチルクロリド(0.208g、0.746mmol)を、ジクロロメタン(10mL)中の9(100mg、0.498mmol)の溶液に添加し、反応混合物を室温で18時間にわたって撹拌した。次いでこれを、ジクロロメタン(100mL)で希釈し、水(3×100mL)および飽和塩化ナトリウム水溶液(150mL)で順次に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。ジエチルエーテルおよびヘプタンによる残留物の粉砕により、C10を白色固体として提供した。収量:189mg、0.427mmol、86%。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ7.40 - 7.29 (m, 9H), 7.17 - 7.12 (m,
6H), 6.77 (s, 1H), 2.44 (s, 3H).
【0269】
ステップ2. 5-(5-クロロ-4-フルオロ-3-メチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール(10)の合成。
テトラヒドロフラン(41mL)中のC10(1.84g、4.14mmol)の-78℃溶液に、リチウムジイソプロピルアミド(テトラヒドロフラン/ヘキサン/エチルベンゼン中2.0M溶液;4.14mL、8.28mmol)を、内部反応温度が-70℃を超えないような速度で、滴下方式にて添加した。反応混合物を-78℃で2時間にわたって撹拌した後、テトラヒドロフラン(10mL)中のN-フルオロ-N-(フェニルスルホニル)ベンゼンスルホンアミド(2.61g、8.28mmol)の溶液を滴下添加した。撹拌を-78℃で30分間にわたって続け、その後すぐに、反応混合物を室温に16時間かけて加温させた。次いで、水(50mL)を添加し、得られた混合物をエチルエーテル(3×50mL)で抽出し、合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して、橙色油を提供した。この材料をジクロロメタン(15mL)に溶解し、トリエチルシラン(1.66mL、10.4mmol)およびトリフルオロ酢酸(1.60mL、20.8mmol)で順次に処理した。この反応混合物を室温で1.5時間にわたって撹拌した後、これを減圧下で濃縮し、残留物を水と酢酸エチルとの間に分配した。水性層を酢酸エチルで2回抽出し、合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。得られた材料をメタノール中でスラリー化し、濾過して、白色固体を除去した。濾液を真空で濃縮し、得られた材料のLCMS分析は、生成物の存在を指し示した:LCMS m/z 219.1 (塩素同位体パターンが観察された) [M+H]+.
精製を、逆相HPLC(カラム:Princeton QB-C18、5μm;移動相A:水中0.1%ギ酸;移動相B:アセトニトリル中0.1%ギ酸;勾配:5%から100%B)を介して達成し、生成物をアセトニトリルおよび水中のスラリーとして取得し、濾過により、10をベージュ色結晶性固体(172mg)として得た。1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ2.48 (br s, 3H).
【0270】
逆相精製による濾液を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。得られた固体をジクロロメタンおよびヘプタンで粉砕して、追加の10(85.9mg)を得た。1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ2.48 (d, J = 1.0 Hz, 3H).
合わせた収量:258mg、1.18mmol、28%。
【0271】
(実施例11)
5-(4,5-ジクロロ-3-メチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール(11)
【0272】
【化24】
テトラヒドロフラン(5mL)中のC10(98.9mg、0.223mmol)の-78℃溶液に、リチウムジイソプロピルアミドの溶液(テトラヒドロフラン/ヘプタン/エチルベンゼン中2.0M、Sigma-Aldrich;0.223mL、0.446mmol)を、内部反応温度が-70℃を超えないような速度で、滴下方式にて添加した。反応混合物を-78℃で3時間にわたって撹拌した後、テトラヒドロフラン(2mL)中のN-クロロコハク酸イミド(59.6mg、0.446mmol)の溶液を滴下添加し、撹拌を-78℃で30分間にわたって続けた。次いで、反応混合物を16時間かけて室温に達させ、その後すぐに、水(20mL)を添加し、得られた混合物を酢酸エチル(2×25mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して、橙色油を提供し、これをジクロロメタン(5mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(0.172mL、2.23mmol)、続いて、トリエチルシラン(0.178mL、1.11mmol)で処理した。この反応混合物を室温で4時間にわたって撹拌した後、これを水とジクロロメタンとの間に分配した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮し、逆相HPLC(カラム:WatersサンファイアC18、5μm;移動相A:水中0.05%トリフルオロ酢酸;移動相B:アセトニトリル中0.05%トリフルオロ酢酸;勾配:30%から70%B)に供して、11を固体として得た。収量:12mg、51μmol、23%。LCMS m/z 234.9 (ジクロロ同位体パターンが認められる) [M+H]
+.
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ2.67 (s, 3H).
【0273】
(実施例12)
5-(3,5-ジクロロチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール、アンモニウム塩(12)
【0274】
【化25】
ステップ1. (3,5-ジクロロチオフェン-2-イル)メタノール(C11)の合成。
N-クロロコハク酸イミド(1.59g、11.9mmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(20mL)中の(3-クロロチオフェン-2-イル)メタノール(1.69g、11.4mmol)の溶液に添加し、反応混合物を25℃で18時間にわたって撹拌した。次いでこれを、酢酸エチル(20mL)で希釈し、水(3×10mL)および飽和塩化ナトリウム水溶液(10mL)で順次に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して、C11を薄黄色油として得た。収量:1.30g、7.10mmol、62%。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ6.75 (s, 1H), 4.74 (s, 2H), 1.97 (br s,
1H).
【0275】
ステップ2. 3,5-ジクロロチオフェン-2-カルバルデヒド(C12)の合成。
ジクロロメタン(30mL)中のC11(1.30g、7.10mmol)の溶液に、酸化マンガン(IV)(6.17g、71.0mmol)を添加した。反応混合物を20℃で2時間にわたって撹拌した後、これを濾過し、真空で濃縮して、C12を白色固体として提供した。収量:900mg、4.97mmol、70%。
【0276】
ステップ3. 3,5-ジクロロチオフェン-2-カルバルデヒドオキシム(C13)の合成。
1-メチルピロリジン-2-オン(5mL)中のヒドロキシルアミン塩酸塩(192mg、2.76mmol)の溶液に、C12(500mg、2.76mmol)を添加した。反応混合物を100℃に2時間にわたって加熱し、次いで、室温に冷却させ、その後すぐに、重炭酸ナトリウム水溶液(50mL)を添加した。得られた混合物をtert-ブチルメチルエーテル(3×15mL)で抽出し、合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して、C13(541mg)を黄色固体として提供し、これを後続のステップに直接進行させた。1H NMR分析により、この材料は、いくらかの1-メチルピロリジン-2-オンを含有しており、EおよびZオキシム異性体の混合物であると判断された。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d), 生成物ピークのみ: δ[8.27
(s)および7.83 (s), 合計1H], [6.89
(s)および6.80 (s), 合計1H].
【0277】
ステップ4. 3,5-ジクロロチオフェン-2-カルボニトリル(C14)の合成。
トルエン(10mL)中のC13(前ステップから;541mg、2.76mmol以下)の溶液を、塩化チオニル(0.401mL、5.50mmol)で処理し、反応混合物を100℃に20分間にわたって加熱した。真空での揮発物の除去により、C14(491mg)を褐色固体として提供し、その一部を後続のステップに直接持ち込んだ。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ6.93 (s, 1H).
【0278】
ステップ5. 5-(3,5-ジクロロチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール、アンモニウム塩(12)の合成。
C14(前ステップから;250mg、1.40mmol以下)およびアジドトリブチルスタンナン(0.50mL、1.8mmol)の混合物を、90℃で16時間にわたって加熱し、その後すぐに、これを、飽和フッ化カリウム水溶液(20mL)で処理し、追加で2時間にわたって撹拌した。次いで、反応混合物を水(20mL)で希釈し、酢酸エチル(3×15mL)で抽出し、合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(2×10mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(勾配:ジクロロメタン中0%から10%メタノール)、続いて、逆相HPLC(カラム:AgelaデュラシェルC18、5μm;移動相A:水中0.05%水酸化アンモニウム;移動相B:アセトニトリル;勾配:0%から60%B)により、12を白色固体として得た。収量:3ステップにわたって13.4mg、56.3μmol、4%。LCMS m/z 220.6 (ジクロロ同位体パターンが認められる) [M+H]+.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ7.27
(s, 1H), 7.24 (br s, 1H), 7.11 (br s, 1H), 6.99 (br s, 1H).
【0279】
(実施例13)
5-(3-ブロモ-5-エチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール(13)
【0280】
【化26】
ステップ1. 3-ブロモ-5-エチルチオフェン-2-カルボン酸(C15)の合成。
テトラヒドロフラン(10mL)中の5-エチルチオフェン-2-カルボン酸(835mg、5.35mmol)の-65℃溶液に、n-ブチルリチウム(856mg、13.4mmol)を含有する溶液を添加した。反応混合物を-65℃で3時間にわたって撹拌し、その後すぐに、テトラヒドロフラン(10mL)中のN-ブロモコハク酸イミド(1.43g、8.03mmol)の溶液を-65℃で添加した。添加後、反応混合物を15℃にゆっくりと加温し、15℃で16時間にわたって撹拌し、このとき、これを1M塩酸の添加によってpH4に調整した。水(10mL)を添加し、得られた混合物を酢酸エチル(3×30mL)で抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して、C15を褐色ガム状物(1.26g)として提供し、これを後続のステップにおいて直接使用した。LCMS m/z 237.0 (臭素同位体パターンが観察された) [M+H]
+.
【0281】
ステップ2. 3-ブロモ-5-エチルチオフェン-2-カルボキサミド(C16)の合成。
N,N-ジメチルホルムアミド(15mL)中のC15(前ステップから;1.26g、5.35mmol以下)および1,1’-カルボニルジイミダゾール(1.30g、8.02mmol)の混合物を、25℃で2時間にわたって撹拌した。次いで、反応混合物を水酸化アンモニウム溶液(20mL)に注ぎ入れ、20分間にわたって撹拌し、酢酸エチル(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(4×10mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮し、シリカゲル上でのクロマトグラフィー(勾配:石油エーテル中0%から75%酢酸エチル)により、C16を白色固体として得た。収量:2ステップにわたって475mg、2.03mmol、38%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ7.80 - 7.60 (br s, 1H), 7.47 - 7.29 (br s, 1H), 6.95 (s, 1H), 2.79
(q, J = 7.5 Hz, 2H), 1.22 (t, J = 7.5 Hz, 3H).
【0282】
ステップ3. 3-ブロモ-5-エチルチオフェン-2-カルボニトリル(C17)の合成。
ジクロロメタン(10mL)中のC16(475mg、2.03mmol)およびピリジン(0.225mg、2.84mmol)の0℃溶液に、トリフルオロ酢酸無水物(511mg、2.43mmol)を添加した。反応混合物を20℃で1時間にわたって撹拌し、その後すぐに、これを、ジクロロメタン(10mL)で希釈し、水(3×5mL)および飽和塩化ナトリウム水溶液(3×5mL)で順次に洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、これを濾過し、次いで、真空で濃縮して、C17を褐色油として提供した。収量:440mg、2.04mmol、定量的。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ6.81 (t, J = 1.1 Hz, 1H), 2.87 (qd, J =
7.5, 1.1 Hz, 2H), 1.33 (t, J = 7.5 Hz, 3H).
【0283】
ステップ4. 5-(3-ブロモ-5-エチルチオフェン-2-イル)-1H-テトラゾール(13)の合成。
N,N-ジメチルホルムアミド(2mL)中の、C17(100mg、0.463mmol)、アジ化ナトリウム(36.1mg、0.555mmol)およびピリジン塩酸塩(53.5mg、0.463mmol)の混合物を、110℃で16時間にわたって撹拌した。次いで、反応混合物を飽和塩化ナトリウム水溶液(20mL)で希釈し、酢酸エチル(3×5mL)で抽出し、合わせた有機層を真空で濃縮し、逆相HPLC(カラム:YMC-アクタストライアートC18、7μm;移動相A:0.225%ギ酸を含有する水;移動相B:アセトニトリル;勾配:38%から58%B)を介して精製して、13を黄色固体として得た。収量:16.7mg、64.4μmol、14%。LCMS m/z 259.2 (臭素同位体パターンが認められる) [M+H]+.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ7.12
(s, 1H), 2.88 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 1.27 (t, J = 7.5 Hz, 3H).
【0284】
表1における例は、同定されている実施例を合成する際に使用したものに類似のプロセスによって作製した。以下で挙げる具体的な化合物を含む、適切な類似の出発材料を用いた。「合成方法;非商業的出発材料」と題された欄において、典型的には、合成方法は、実施例を提供することによって記述され、適切な場合、「セミコロン」の後に、非商業的出発材料が、例えば実施例を参照して記述される。
【0285】
【0286】
【0287】
【表1-3】
1. 実施例13においてC15からのC17の合成について記述した方法を使用して、3-クロロ-5-メチルチオフェン-2-カルボン酸を必須の3-クロロ-5-メチルチオフェン-2-カルボニトリルに変換した。
2. メチル5-ブロモ-3-メトキシチオフェン-2-カルボキシレートの水酸化ナトリウム媒介性加水分解により、出発材料5-ブロモ-3-メトキシチオフェン-2-カルボン(carboylic)酸を提供した。
3. テトラゾール形成中、メチルエーテルの部分的開裂が起こり、実施例15および16の両方を生成物として提供した。
4. Y.Yeら、Organic Lett.2012、14、4979~4981の方法を使用して、(5-シアノ-4-メチルチオフェン-2-イル)ボロン酸を必須の3-メチル-5-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-カルボニトリルに変換した。
5. 3-メチルチオフェン-2-カルボニトリルの、リチウムジイソプロピルアミド、続いて、N,N-ジメチルホルムアミドとの反応により、5-ホルミル-3-メチルチオフェン-2-カルボニトリルを提供し、この材料を(ジエチルアミノ)硫黄トリフルオリドで処理して、必須の5-(ジフルオロメチル)-3-メチルチオフェン-2-カルボニトリルを得た。
6. 3-ブロモチオフェン-2-カルボニトリルを、メチルジフルオロ(フルオロスルホニル)アセテートおよびヨウ化銅(I)と、昇温で反応させて、必須の3-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-カルボニトリルを得た。
7. メチル3-メトキシチオフェン-2-カルボキシレートの水酸化ナトリウム媒介性加水分解により、3-メトキシチオフェン-2-カルボン酸を提供し、これを、実施例13においてC15からのC17の合成について記述した方法を使用して、3-メトキシチオフェン-2-カルボニトリルに変換した。
8. 分析的HPLCのための条件。カラム:WatersアトランティスdC18、4.6×50mm、5μm;移動相A:水中0.05%トリフルオロ酢酸(v/v);移動相B:アセトニトリル中0.05%トリフルオロ酢酸(v/v);勾配:4.0分間かけて5.0%から95%B、線形;流速:2mL/分。
9. C17の、必須の5-エチル-3-メチルチオフェン-2-カルボニトリルへの変換は、[1,1’-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)の存在下、昇温での、トリメチルボロキシンおよび炭酸セシウムとの反応によって行った。
10. 5-ブロモ-3-メチルチオフェン-2-カルボニトリルは、5-ブロモ-3-メチルチオフェン-2-カルボン酸から、実施例13においてC15からC17への変換について記述した方法を使用して、合成した。
11. 実施例24のメチルエーテルの、三臭化ホウ素による開裂により、実施例37を得た。
【0288】
下記のプロトコールは、当然ながら、当業者によって変動し得る。
【0289】
タンパク質産生
BCKDKタンパク質は、NからC末端まで:6xHis、MBP、TEVプロテアーゼ部位(ENLYFQG)、ビオチンアクセプターペプチド(GLNDIFEAQKIEWHE)、およびヒトBCKDK(タンパク質前処理の残基31~412)を含有するpETベクターを使用して産生した。タンパク質を、LB培地中のBL21(DE3)大腸菌(E.coli)においてGroEL-GroESと共発現させ、0.5mMのIPTGおよび0.5mg/mLのL-アラビノースを用いて1のOD600でタンパク質生成を誘発し、26℃で16時間にわたって成長させた。マイクロフルイダイザーを使用して、100mMのリン酸カリウムpH7.5、500mMのNaCl、0.1mMのEDTA、1%Tween-20、0.25%トリトンX-100、10%グリセロール、1mMのDTTおよびプロテアーゼ阻害剤に、細菌を溶解した。MBPタグ付きタンパク質を、アミロース樹脂を使用する親和性クロマトグラフィーによって精製し、TEVプロテアーゼインキュベーションによってBCKDKからMBPを除去し、続いて、50mMのHEPES pH7.5、500mMのNaCl、300mMのL-アルギニン、2mMのMgCl2、1mMのDTTおよび10%グリセロール中でゲル濾過クロマトグラフィーを行った。
【0290】
大腸菌(E.coli)を含有するpETベクターLplAを、LB培地中のBL21(DE3)大腸菌(E.coli)において発現させ、0.75mMのIPTGを用いて1のOD600でタンパク質生成を誘発し、30℃で16時間にわたって成長させた。マイクロフルイダイザーを使用して、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液pH7.5、350mMのNaCl、1.5mMのMgCl2および1mMのDTTに、細菌を溶解した。1M硫酸アンモニウムを加えた透明溶解液からLplAタンパク質を沈殿させ、50mMのリン酸ナトリウムpH7.5、350mMのNaCl、1.5mMのMgCl2、1mMのDTTおよび10%グリセロール中、ゲル濾過クロマトグラフィーによってさらに精製した。
【0291】
BCKDHE1α-E2融合基質をpETベクター中にクローン化し、NからC末端まで:E2のリポイル結合ドメイン(残基62~160前処理)、TEVプロテアーゼ部位(LENLYFQG)、E1α由来の残基331~345(前処理)、および6xHisを含有させた(Tso,S.C.ら、J Biol Chem 2014、289(30)、20583~20593)。融合基質を、LB培地中のBL21(DE3)大腸菌(E.coli)において発現させ、0.75mMのIPTGを用いて1のOD600でタンパク質生成を誘発し、30℃で16時間にわたって成長させた。マイクロフルイダイザーを使用して、50mMのリン酸ナトリウムpH7.5、350mMのNaCl、10mMのイミダゾール、10%グリセロール、1mMのDTTおよびプロテアーゼ阻害剤に、細菌を溶解した。融合基質を、Ni-NTA親和性クロマトグラフィーによって精製し、続いて、50mMのリン酸ナトリウムpH7.5、350mMのNaCl、1.5mMのMgCl2、1mMのDTTおよび10%グリセロール中でゲル濾過クロマトグラフィーを行った。リポイル化のために、融合基質を、LplAとともに10:1(基質:LplA)比にて、20mMのリン酸ナトリウムpH7.4、6mMのMgCl2、4mMのATP、2mMのDTT、3mMのDL-6,8-チオクト酸中、37℃でインキュベートした。アジレント1290 UPLCと連結されたアジレント6530 Q-TOFを使用して、反応をモニターした。最終的なリポイル化した融合基質を、50mMのHEPES pH7.5、350mMのNaCl、1.5mMのMgCl2、1mMのDTT、10%グリセロール中、ゲル濾過クロマトグラフィーによって精製した。
【0292】
インビトロFRET
BCKDK活性は、上述した通りのHISタグ付き融合BCKDHE1α-E2基質タンパク質のリン酸化によってモニターし、時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(TR-FRET)アッセイシステムを使用して検出した。化合物を384ウェルプレートにスポットし、平板培養した化合物に、精製したヒトBCKDKタンパク質を添加した。インキュベーション後、LBD-リンカー-E1リン酸化配列を、15μMのATPの存在下で添加した。反応をEDTAで終了させた。リン酸化基質を、ウサギ抗E1ホスホSer293抗体(Bethyl Laboratories-A304-672A)の添加によって認識し、TR-FRETシグナルを、抗HISドナー分子(ユーロピウム;Perkin Elmer-AD0205、AD0110、AD0111)および抗ウサギアクセプター分子(ユーライト;Perkin Elmer-TRF502D、TRF502M、TRF502R)の添加によって発生させた。リン酸化E1の認識は、ドナーおよびアクセプター分子を近接させ、320nmにおける励起は、ユーロピウムドナーからユーライトアクセプター色素へのエネルギー移動を引き起こし、これが今度は、665nmにおいて光を産生した。シグナル強度は、BCKDK媒介性基質リン酸化のレベルに比例していた。反応を、DMSOでゼロパーセントの効果および600μMの、公知のBCKDK阻害剤であるラディシコールで100パーセントの効果に正規化した。IC50曲線は、ABASEソフトウェア(IDBS、Boston MA)を使用して産生した。
【0293】
表2では、上述のアッセイに従う以下の実施例について、アッセイデータ(IC50S)が提示される(試験した反復の数(数)に基づき、幾何平均として2つの(2)有効数字に対して)。
【0294】
【0295】
【0296】
【0297】
ホスホBCKDHAアルファLISA
アッセイを行う前に、ChromaLink(商標)ワンショット抗体ビオチン化キットB-9007-009Kを使用してBCKDH抗体(Bethyl A303-790A)をビオチン化し、ホスホSer293 BCKDHA抗体(Bethyl A304-672A)をアルファLISAアクセプタービーズに直接コンジュゲートした(カスタムコンジュゲーションは、Perkin ElmerのLance/Delfia Custom Services、Boston MAによって実施した)。ヒト骨格筋細胞(Gibco A11440)を、384ウェルプレート中、7500生細胞/ウェルの密度で平板培養し、培地補足物およびニワトリ胚抽出物を含有する骨格筋成長培地(Promocell C-23060およびC-23160、MP92850145)中で成長させた。終夜インキュベーション後、培地を除去し、アッセイ培地(PBS中で10倍希釈した成長培地)中のBCKDK阻害剤を添加した。60分後、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、2nMのビオチン化全BCKDH抗体を含有する10μLの緩衝液(Cell Signaling 9803番)中で溶解させた。試料を60分間にわたってインキュベートし、1×アルファ緩衝液中のホスホ-S293 BCKDH抗体にコンジュゲートされた5μLのアルファLISAアクセプタービーズを添加した。60分間のインキュベーション後、1×アルファ緩衝液中の5μLのストレプトアビジンドナービーズ(40μg/μL)ビーズを、光から保護しながら添加した。S293 BCKDHのリン酸化を意味する、ホスホおよび全BCKDH抗体が近接内である場合には、蛍光を放出した。蛍光をエンビジョンプレートリーダーでモニターした。ゼロパーセントの効果をDMSO処理から決定し、最大効果をBCKDK阻害剤BT2と比べて評価した。(Tso,S.C.;Gui,W.J.;Wu,C.Y.ら、Benzothiophene carboxylate derivatives as novel allosteric inhibitors of branched-chain alpha-ketoacid dehydrogenase kinase.J Biol Chem 2014、289、20583~20593。)IC50曲線は、ActivityBaseソフトウェア(IDBS、Boston MA)を使用して産生した。下記の化合物についてのIC50を決定した:実施例1 18±2.3μM(n=5)、実施例9 11±0.87μM(n=2)。
【0298】
糖尿病動物モデル
60%高脂肪食を給餌したマウス(Research Diets 12492)に、実施例1を1日間にわたってPO投薬し、終夜絶食させ、アルファトラック血糖測定器で血中グルコースを測定した。翌朝、動物に再度実施例1をPO投薬し、1時間後、直ちにアルファトラック血糖測定器(Zoetis、Parsippany、NJ)を使用して再度血中グルコースを測定して、空腹時グルコースレベルを評価した後、1g/kgのデキストロースを経口強制飼養した。血中グルコースを、強制飼養の15、30、60および120分後に測定し、データをプロットし、グラフパッドプリズム8.0(GraphPad Software、La Jolla、CA)を使用して曲線下面積として分析した。ビヒクルまたは実施例1を上記の通りに投薬した動物について、平均±SEM空腹時血漿グルコースレベルは、185±18(ビヒクル、n=7)、194±14(3mg/kg、n=9)、160±11(10mg/kg、n=10)、136±9mg/dL(30mg/kg、n=9)であった。ビヒクル処置群のパーセントとしての耐糖能試験についての曲線下面積は、100.0±7(ビヒクル、n=7)、106±9(3mg/kg、n=9)、99±2(10mg/kg、n=10)、72±4(30mg/kg、n=9)であった。
【0299】
心不全ラットモデル
ダール食塩感受性雄ラット(Charles River株SS/JrHsdMcwiCrl)に、対照食または6%高食塩食(iD03121701-6%NaClを添加したAIN-76aげっ歯類食)を合計21週間にわたって給餌した。5週目に、高食塩食給餌ラットに、100mg/kgのBT2またはビヒクルを、1日1回、研究の最後の16週間にわたって、PO投薬した。心エコー検査を18週目に実施した(心筋性能指数(MPI):対照食0.567±0.034、高食塩+ビヒクル0.810±0.039、高食塩+BT2 0.660±0.030;等容性弛緩時間(IVRT):対照食23.154±0.60ms、高食塩+ビヒクル36.507±2.20ms、高食塩+BT2 31.605±1.78ms;拡張期心室中隔厚(IVDd):対照2.03±0.088mm、高食塩+ビヒクル2.877±0.110mm、高食塩+BT2 2.489±0.089mm)。NT-pro-BNP(MSD K153JKD;対照294.9±26.04pg/mL、高食塩+ビヒクル1003.0±200.8pg/mL、高食塩+BT2 503.4±84.96pg/mL)、およびproANP(MSD K153MBD;対照33.50±5.4ng/mL、高食塩65.19±8.3ng/mL、高食塩+BT2 38.81±7.0ng/mL)レベルを、血漿中、MSDアッセイを使用して、終了時点で測定した。安楽死の際に心臓重量を測定し、脛骨の長さに対して正規化した(心臓/脛骨対照0.033±0.001g/mm;高食塩+ビヒクル0.042±0.001g/mm、高食塩+BT2 0.038±0.001g/mm)。
【0300】
心不全マウスモデル
雄成体マウス(8~16週齢、Charles River株C57BL6/NCrl)を横大動脈狭窄に使用した。手術の1週間前、動物にBT2(40mg/kg)またはビヒクルを投薬した。手術当日、動物に麻酔をかけ、胸腔を開き、大動脈弁領域を清潔にし、絹縫合糸を横大動脈の周囲に配置した。疑似マウスは縛らなかったが、TACマウスでは、縫合糸を針に巻き付けて縛った。マウスを回復させ、BT2(40mg/kg)またはビヒクルのいずれかを1日1回経口的に投薬した。心エコー検査を連続的に実施した。安楽死の際に心臓重量および肺重量を測定した。BT2について取得されたデータは、Sunら、Circulation.2016年5月24日;133(21):2038~49.doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.115.020226において報告されている。
【0301】
粉末X線回折
粉末X線回折分析を、実施例6(反応条件および単離条件は実施例6に類似するものであった)および実施例10の化合物について、Cu放射線源が装備されたBruker AXS D8エンデバー回折計を使用して行った。発散スリットを、3mm連続照明に設定した。回折される放射線をPSD-リンクスアイ検出器によって検出し、検出器PSD開口部は4.105度に設定した。X線管電圧およびアンペア数は、それぞれ40kVおよび40mAに設定した。データは、0.020度のステップ幅および0.5秒のステップ時間を使用し、3.0から40.0度2シータまでのCu波長で、シータ-シータゴニオメーターに収集した。試料は、それらをシリコン低バックグラウンド試料ホルダーに入れ、収集中に回転させることによって調製した。データはBruker DIFFRAC Plusソフトウェアを使用して収集し、分析はEVA diffract plusソフトウェアによって実施した。PXRDデータファイルは、ピーク検索前には加工しなかった。EVAソフトウェアにおけるピーク検索アルゴリズムを使用して、1の閾値を持つ選択されたピークを使用して、予備的なピーク割り当てを行った。妥当性を確実にするために、調整を手動で行い、自動割り当ての出力を視覚的に確認し、ピーク位置をピーク最大値に調整した。3%以上の相対強度を持つピークを概して選択した。分離されなかったまたはノイズと一致するピークは選択しなかった。USPにおいて述べられているPXRDからのピーク位置に関連する典型的な誤差は、最大0.2°2-シータである(USP-941)。特徴的なx線粉末回折パターンを、
図1および2で提供する。これらの図からのPXRDデータについて、さらに後述する。
【0302】
【0303】
【0304】
【0305】
本出願全体を通して、種々の刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、あらゆる目的のための参照によりその全体が本出願に組み込まれる。
【0306】
本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、本発明において種々の修正および変形が為され得ることが、当業者には明らかであろう。本発明の他の実施形態は、本明細書の考察および本明細書において開示される発明の実践から、当業者に明らかであろう。本明細書および例は、例示的なものにすぎないとみなされ、本発明の真の範囲および趣旨は、下記の特許請求の範囲によって指し示されることが意図されている。