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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】放射能汚染測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/169 20060101AFI20240604BHJP
   G21F 9/00 20060101ALI20240604BHJP
   G21C 17/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
G01T1/169 A
G21F9/00 Z
G21C17/00 500
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022023619
(22)【出願日】2022-02-18
(65)【公開番号】P2023120655
(43)【公開日】2023-08-30
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】599041606
【氏名又は名称】三菱電機プラントエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】松尾 慶一
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-263804(JP,A)
【文献】特開2017-173239(JP,A)
【文献】特開2017-211347(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0181360(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/169
G21F 9/00
G21C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有感面を有し、前記有感面により検査対象物の放射性物質による表面汚染量を検出する放射線検出器と、
前記検査対象物の表面形状を計測する形状計測部と、
前記形状計測部による計測結果に基づいて前記表面形状からの距離が許容距離範囲内になるように位置決め制御された前記放射線検出器による検出結果から、前記表面汚染量が許容値以内であるか否かの判定処理を実行するコントローラと
を備えた放射能汚染測定装置であって、
前記コントローラは、
前記形状計測部によって計測された前記表面形状と前記有感面との前記許容距離範囲内での位置関係を用いて、あらかじめ決められた検査時間内に、前記検査対象物において前記表面汚染量を検出することができる検出可能表面部分と、前記表面汚染量を検出することができない検出不可能表面部分とを特定し、前記検出可能表面部分と前記検出不可能表面部分とを識別表示させる表示処理を実行し、
前記検査対象物は、前記放射線検出器に対向する前記検査対象物の面を異ならせる複数の設置面を有しており、
前記コントローラは、
前記複数の設置面のうちの第1の設置面で設置した場合について前記表示処理を実行することで、前記検出可能表面部分としての第1の検出可能表面部分と、前記検出不可能表面部分としての第1の検出不可能表面部分とを特定し、
前記複数の設置面のうちの前記第1の設置面とは異なる第2の設置面で設置した場合について前記表示処理を実行することで、前記検出可能表面部分としての第2の検出可能表面部分と、前記検出不可能表面部分としての第2の検出不可能表面部分とを特定し、
前記第1の検出不可能表面部分と前記第2の検出不可能表面部分との論理積をとることで、前記第1の設置面および前記第2の設置面のそれぞれで設置面を異ならせて前記表面汚染量の検出処理を繰り返し実施した際の最終的な検出不可能表面部分を特定する
放射能汚染測定装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記形状計測部によって計測された前記表面形状を単位面の集合体に分割し、
前記単位面ごとに前記有感面との前記位置関係を用いて、それぞれの単位面に基準値の汚染が存在する場合に前記有感面により計測される計数率をシミュレーションし、
それぞれの単位面を、前記計数率に基づいて前記検出可能表面部分と前記検出不可能表面部分とに分類し、
前記検出可能表面部分と前記検出不可能表面部分とを識別表示させるための表示データを生成し、表示器に対して前記表示データを表示させる
ことで前記表示処理を実行する請求項1に記載の放射能汚染測定装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記検査対象物と前記有感面との距離および角度を前記位置関係として規定し、前記距離および前記角度をパラメータとして変化させた場合の検出器機器効率の事前測定結果からあらかじめ作成された、前記位置関係と前記検出器機器効率とを対応付けた機器効率テーブルを記憶し、
前記形状計測部によって計測された前記表面形状を単位面の集合体に分割し、それぞれの前記単位面と前記有感面との位置関係に対応する検出器機器効率を前記機器効率テーブルから抽出することで、前記表面形状を前記検出可能表面部分と前記検出不可能表面部分とに分類し、
前記検出可能表面部分と前記検出不可能表面部分とを識別表示させるための表示データを生成し、表示器に対して前記表示データを表示させる
ことで前記表示処理を実行する請求項1に記載の放射能汚染測定装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記検査対象物と前記有感面との距離および角度を前記位置関係として規定し、前記距離および前記角度をパラメータとして変化させた場合の検出器機器効率の事前シミュレーション結果からあらかじめ作成された、前記位置関係と前記検出器機器効率とを対応付けた機器効率テーブルを記憶し、
前記形状計測部によって計測された前記表面形状を単位面の集合体に分割し、それぞれの前記単位面と前記有感面との位置関係に対応する検出器機器効率を前記機器効率テーブルから抽出することで、前記表面形状を前記検出可能表面部分と前記検出不可能表面部分とに分類し、
前記検出可能表面部分と前記検出不可能表面部分とを識別表示させるための表示データを生成し、表示器に対して前記表示データを表示させる
ことで前記表示処理を実行する請求項1に記載の放射能汚染測定装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記形状計測部によって計測された前記表面形状を単位面の集合体に分割し、
前記単位面と前記有感面との距離および角度を前記位置関係として規定し、前記距離および前記角度をパラメータとして変化させた場合の前記距離および前記角度と、前記単位面について前記表面汚染量を検出することができるか否かを示す検出可否データとを対応付けてあらかじめ作成された検出可否テーブルを記憶し、
単位面ごとに、前記有感面に対する前記単位面の距離および角度に対応する検出可否データを前記検出可否テーブルから抽出することで、前記表面形状のそれぞれの単位面を前記検出可能表面部分と前記検出不可能表面部分とに分類し、
前記検出可能表面部分と前記検出不可能表面部分とを識別表示させるための表示データを生成し、表示器に対して前記表示データを表示させる
ことで前記表示処理を実行する請求項1に記載の放射能汚染測定装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記複数の設置面として3以上の設置面がある場合に、
前記複数の設置面の中から2つの設置面を前記第1の設置面および前記第2の設置面として選択して前記最終的な検出不可能表面部分を特定する処理を、2つの設置面のすべての組合せについて繰り返し実施し、
検出不可能表面部分が最小となる前記第1の設置面と前記第2の設置面の組合せを最も効率的な検査方法として特定し、
前記最も効率的な検査方法に関する情報を表示させる
請求項1から5のいずれか1項に記載の放射能汚染測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査対象物の放射性物質による表面汚染を高精度に測定するための装置に関し、特に、放射線検出器により検出可能な表面部分と検出不可能な表面部分とを識別するための情報を提供する放射能汚染測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電離放射線障害防止規則では、敷地境界の線量率がある値を超える放射能を取扱う場合には、管理区域を設置して、管理区域から物品を持ち出す場合には、放射能による汚染の検査を行うことが規定されている。そのため、原子力関連施設では、物品搬出モニタが用いられている。また、検査対象物の放射性物質による表面汚染を検出するために、複数の放射線検出器を用いる従来技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4853725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検査対象物の放射能汚染を自動検査する物品搬出モニタのような装置において、放射線検出器は、検査面積を確保するため、ある一定の大きさが必要になり、放射線検出器の可動範囲には制限が出てくる。
【0005】
従って、検査対象の形状が複雑になると、検査対象の全ての面に放射線検出器を近づけることができず、設定された時間内で検査ができる部分と検査ができない部分が出てくる。
【0006】
放射能による表面汚染の検出には、β線を測定することが一般的である。ただし、β線は透過力が弱く、放射線検出器の有感面から離れた部分あるいは有感面からは陰になる部分は検査ができない可能性がある。
【0007】
一方、放射線検出器の有感面から離れている部分であっても、時間を掛ければ検査ができる部分もある。また、検査環境のバックグランド線量率も検出可否あるいは検査時間に影響を与える。
【0008】
現状では、自動検査装置で検査を行った後に、オペレータが検査対象の形状をみて、自動検査装置で検査ができていないと思われる部分について手作業で検査を行っているのが実情である。しかしながら、このような手作業は、オペレータの経験に頼る部分があり、場合によっては、手作業による検査を行ったにもかかわらず、実際には検査ができていない部分が残ってしまうおそれがある。
【0009】
また、このように、検査できた部分と検査できていない部分が判らないことも、自動検査装置が普及していない理由の1つと考えられる。この結果、自動検査装置を導入せずに、全て、手作業での検査を行う場合も多い。
【0010】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、検査対象物の表面において、放射線検出器により表面汚染量を検出することができる部分とできない部分を識別するための情報を提供することができる放射能汚染測定装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る放射能汚染測定装置は、有感面を有し、有感面により検査対象物の放射性物質による表面汚染量を検出する放射線検出器と、検査対象物の表面形状を計測する形状計測部と、形状計測部による計測結果に基づいて表面形状からの距離が許容距離範囲内になるように位置決め制御された放射線検出器による検出結果から、表面汚染量が許容値以内であるか否かの判定処理を実行するコントローラとを備えた放射能汚染測定装置であって、コントローラは、形状計測部によって計測された表面形状と有感面との許容距離範囲内での位置関係を用いて、あらかじめ決められた検査時間内に、検査対象物において表面汚染量を検出することができる検出可能表面部分と、表面汚染量を検出することができない検出不可能表面部分とを特定し、検出可能表面部分と検出不可能表面部分とを識別表示させる表示処理を実行し、検査対象物は、放射線検出器に対向する検査対象物の面を異ならせる複数の設置面を有しており、コントローラは、複数の設置面のうちの第1の設置面で設置した場合について表示処理を実行することで、検出可能表面部分としての第1の検出可能表面部分と、検出不可能表面部分としての第1の検出不可能表面部分とを特定し、複数の設置面のうちの第1の設置面とは異なる第2の設置面で設置した場合について表示処理を実行することで、検出可能表面部分としての第2の検出可能表面部分と、検出不可能表面部分としての第2の検出不可能表面部分とを特定し、第1の検出不可能表面部分と第2の検出不可能表面部分との論理積をとることで、第1の設置面および第2の設置面のそれぞれで設置面を異ならせて表面汚染量の検出処理を繰り返し実施した際の最終的な検出不可能表面部分を特定するものである。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、検査対象物の表面において、放射線検出器により表面汚染量を検出することができる部分とできない部分を識別するための情報を提供することができる放射能汚染測定装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施の形態1に係る放射能汚染検査装置の全体構成を説明するための図である。
図2】本開示の放射能汚染測定装置における有感面と検査対象物の各表面との位置関係に関する説明図である。
図3】本開示の実施の形態1において、ある表面形状を6個の単位面による集合体に分割した場合を例示した説明図である。
図4】本開示の実施の形態1に係る放射能汚染測定装置において、検査対象物の表面における検出可能表面部分と検出不可能表面部分とを識別表示させるための手法1に関する一連処理を示すフローチャートである。
図5】本開示の実施の形態1における「位置関係」に関する説明図である。
図6】本開示の実施の形態1における識別表示の具体例を示した説明図である。
図7】本開示の実施の形態1に係る放射能汚染測定装置において、検査対象物の表面における検出可能表面部分と検出不可能表面部分とを識別表示させるための手法2に関する一連処理を示すフローチャートである。
図8】本開示の実施の形態1に係る放射能汚染測定装置において、検査対象物の表面における検出可能表面部分と検出不可能表面部分とを識別表示させるための手法3に関する一連処理を示すフローチャートである。
図9】本開示の実施の形態2において、設置面を変えて2回の検査を行った後の識別表示の具体例を示した説明図である。
図10】本開示の実施の形態2において、2台の放射線検出器を用いて、検査対象物の検査を1回行った後の識別表示の具体例を示した説明図である。
図11】本開示の実施の形態2において、自動検査を1回行う場合の最も効率的な検査方法に関するガイダンス情報の表示例を示した図である。
図12】本開示の実施の形態2において、自動検査を2回行う場合の最も効率的な検査方法に関するガイダンス情報の表示例を示した図である。
図13】本開示の実施の形態2において、2台の放射線検出器を用いて、自動検査を1回行う場合の最も効率的な検査方法に関するガイダンス情報の表示例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の放射能汚染測定装置の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。本開示に係る放射能汚染測定装置は、検査対象物の表面を表面汚染量を検出することができる検出可能表面部分と、表面汚染量を検出することができない検出不可能表面部分とに分類し、分類結果を識別するための情報を提供する機能を備えている点を技術的特徴とするものである。
【0015】
実施の形態1.
まず始めに、本開示に係る放射能汚染検査装置の全体構成について、図1を用いて説明する。図1は、本開示の実施の形態1に係る放射能汚染検査装置の全体構成を説明するための図である。図1に示すように、本実施の形態1に係る放射能汚染検査装置は、放射線検出器10、形状計測部20、駆動部30、コントローラ40、および表示器50を備えて構成されている。
【0016】
放射線検出器10は、平面形状の有感面を有し、有感面により検査対象物1の放射性物質による表面汚染量を検出する検出器である。形状計測部20は、放射能汚染量の測定対象である検査対象物1の表面形状を計測する。駆動部30は、形状計測部20で測定された検査対象物1の表面形状に対して、放射線検出器10の有感面を、放射性物質による表面汚染量の検出に適した距離まで移動させる。
【0017】
コントローラ40は、形状計測部20による計測結果に基づいて、表面形状からの距離が許容距離範囲内になるように、駆動部30に位置決め指令を出力することで、放射線検出器の位置決め制御を行う。また、コントローラ40は、位置決め制御された放射線検出器10による検出結果から、検査対象物1の表面汚染量が許容値以内であるか否かの判定処理を実行する。
【0018】
さらに、本開示におけるコントローラ40は、検査対象物1の表面を単位面の集合として分割し、単位面ごとに表面汚染量を検出することができる検出可能表面部分と、表面汚染量を検出することができない検出不可能表面部分とに分類し、分類結果を表示器50に識別表示させる機能を備えている点を技術的特徴としている。そこで、この技術的特徴について、以下に詳細に説明する。
【0019】
まず、放射線検出器10の有感面11と、検査対象物1との位置関係について説明する。図2は、本開示の放射能汚染測定装置における有感面11と検査対象物1の各表面との位置関係に関する説明図である。
【0020】
図2においては、説明を簡略化するために、検査対象物1が8個の表面P1~P8を有している場合を例示している。ここで表面P1は、検査対象物1の放射性物質による表面汚染量を検出するために、放射線検出器10と対向する位置に検査対象物1を設置するための設置面に相当する。また、図2は、有感面11から検査対象物1までの距離が自動検査可能な許容距離範囲内になるように、放射線検出器10が位置決めされた状態を示している。
【0021】
検査対象物1におけるそれぞれの検査対象表面の検出可否は、放射線検出器の性能が決まれば、次の(1)~(6)の要素に依存することとなる。
(1)有感面11と検査対象表面との距離
(2)有感面11と検査対象表面との角度
(3)有感面11からの見通し
(4)検査時間
(5)バックグランド線量率
(6)検査対象核種
【0022】
図2の例では、表面P4~P6は、有感面11と対向する面であり、放射線検出器10による自動検査が可能な検出可能表面部分に相当する。また、表面P3、P7は、有感面11に対して垂直な面であり、時間を掛けることで自動検査が可能な検出可能表面部分に相当する。また、表面P1、P2、P8は、有感面11からは陰になる面であり、時間を掛けても自動検査することができない検出不可能表面部分に相当する。
【0023】
以下では、放射線検出器10を用いて検査対象物1の放射性物質による表面汚染量を検出する前に、あるいは検出した後に、検査対象物1の表面における検出可能表面部分と検出不可能表面部分とを表示器50に識別表示させるための具体的な手法について詳細に説明する。
【0024】
なお、実際の検査対象物1の表面形状は、図2で簡略化して示したような形状には限られず、種々の複雑な形状を有している。そこで、本実施の形態1では、検査対象物1の表面形状を単位面の集合体に分割し、それぞれの単位面ごとに検出可否を判定することで、検出可能表面部分と検出不可能表面部分とを表示器50に識別表示させる。
【0025】
図3は、本開示の実施の形態1において、ある表面形状Aを6個の単位面A1~A6による集合体に分割した場合を例示した説明図である。それぞれの単位面ごとに検出可能表面部分に相当するか、検出不可能表面部分に相当するかが判定され、識別表示されることとなる。
【0026】
<手法1:計算機シミュレーションを用いる識別表示手法>
図4は、本開示の実施の形態1に係る放射能汚染測定装置において、検査対象物1の表面における検出可能表面部分と検出不可能表面部分とを表示器50に識別表示させるための手法1に関する一連処理を示すフローチャートである。図4に示した手法1では、検査対象物1の放射線計測を計算機シミュレーションし、各単位面の検出可否を認識するものである。
【0027】
まず始めに、ステップS401において、形状計測部20は、検査対象物1の表面形状の計測処理を実行する。例えば、形状計測部20として、ステレオカメラ、レーザスキャナ等の形状認識機器を使用することで、検査対象物1の3次元形状を認識することができる。複雑な検査対象の3次元形状を認識するためには、必要に応じて、複数の方向から形状認識することとなる。
【0028】
次に、ステップS402において、コントローラ40は、先の図3に示したような単位面への分割処理を実行する。コントローラ40は、形状計測部20により認識された検査対象物1の3次元形状を、例えば、1×1cmの大きさからなる単位面の集合体に分割する。
【0029】
次に、ステップS403において、コントローラ40は、放射線検出器10の有感面11と各単位面との位置関係に関する演算処理を実行する。実際の検査時には、放射線検出器10を検査対象物1にできるだけ近づけて許容距離範囲内となるように位置決めした後に、表面汚染量の検出が行われる。そこで、コントローラ40は、実際の検査時での位置決め完了後における放射線検出器10と各単位面との位置関係を演算する。
【0030】
図5は、本開示の実施の形態1における「位置関係」に関する説明図である。図5に示すように、位置関係には、以下の3つの要素が含まれている。
面間距離:有感面11と単位面との距離に相当。
面の角度:有感面11と単位面の角度に相当。互いに対向している状態での角度は0度に相当する。
オフセット:それぞれの単位面に関する、有感面11の中央からのオフセット量に相当。
【0031】
次に、ステップS404において、コントローラ40は、それぞれの単位面について、計数率を求める演算処理を実行する。具体的は、コントローラ40は、単位面に検査対象核種基準値の汚染が存在することをシミュレーションして、その汚染を放射線検出器10に設定された検査時間で測定した場合の計数率を計算する。
【0032】
なお、設置場所のバックグランド(バックグランド平均値および標準偏差σ)は前もって測定しておき、データとして記憶部に記憶させておくことができる。なお、検査対象の代表核種は、通常は指定される。
【0033】
次に、ステップS405において、コントローラ40は、それぞれの単位面について求まった計数率に基づいて検出可否の判定処理を実行する。コントローラ40は、計数率、実際の検査時間、バックグランドから、それぞれの単位面の汚染を検出できるか否か、すなわち、各単位面が検出可能表面部分であるか、検出不可能表面部分であるかを判定することとなる。
【0034】
具体的には、コントローラ40は、下式(1)が成立する場合には、その単位面は検出可能表面部分に該当すると判定する。
ステップS404で求まった計数率 > バックグランド平均値+n*σ (1)
ただし
n:信頼の水準により決定される定数
σ:バックグランドの標準偏差
【0035】
なお、汚染の基準面積(例えば、10×10cm)が規定されている場合には、コントローラ40は、単位面の計数率を複数個加算(論理和)することで、基準面汚染をシミュレーションして基準面積の汚染を検査可能か否かの判断を行う。
【0036】
次に、ステップS406において、コントローラ40は、それぞれの単位面について、ステップS405での判定結果である検出可能表面部分と検出不可能表面部分とを表示器50に識別表示させるための表示データを識別情報として生成する表示処理を実行する。
【0037】
コントローラ40は、検査対象物1を模擬的に表示するとともに、検出可能表面部分と検出不可能表面部分とを、例えば色の違いあるいはパターンの違いによって識別表示させることで識別情報を提供することができる。
【0038】
また、実際の検査を終了した後には、検出可能表面部分のうち、汚染ありと判断された部分と汚染なしと判断された部分とをさらに色の違いあるいはパターンの違いによって識別表示させることができる。
【0039】
図6は、本開示の実施の形態1における識別表示の具体例を示した説明図である。図6では、実際の検査を行った後の識別表示例を示しており、コントローラ40は、検査対象物1の表面を以下の3パターンを用いることで、識別表示させることができる。
ストライプなし部分:検査可能表面部分であり、実際の検査で汚染なしと判断された表面部分
斜めストライプ部分:検査可能表面部分であり、実際の検査で汚染ありと判断された表面部分
縦ストライプ部分 :検査不可能表面部分であり、実際の検査が行われていない表面部分
【0040】
<手法2:実測データを用いる識別表示手法>
図7は、本開示の実施の形態1に係る放射能汚染測定装置において、検査対象物1の表面における検出可能表面部分と検出不可能表面部分とを表示器50に識別表示させるための手法2に関する一連処理を示すフローチャートである。
【0041】
図7に示した手法2では、検査対象(核種)毎に、放射線検出器の位置関係(面間距離、面間角度、オフセット)およびバックグランド毎の機器効率(検出器機器効率)を実測しておき、実測データを用いて単位面の汚染による計数率を演算し、各単位面の検出可否を認識するものである。
【0042】
まず始めに、ステップS701において、コントローラ40は、放射線検出器10の有感面11と各単位面との位置関係、およびバックグランドを変化させた場合の機器効率データの事前測定結果に基づいて作成された、位置関係およびバックグランドと機器効率とを関連付けた機器効率テーブルを記憶部に記憶しておく。
【0043】
ここで、機器効率とは、検査対象物1から放射される全放射線の検出割合を意味する。例えば、検査対象物1から毎秒100個の放射線が放出されており、放射線検出器10が毎秒10個の放射線を検出できる場合には、機器効率は10%として規定される。
【0044】
各測定点における機器効率は、例えば、検査対象物1の測定面と有感面11との距離を1cmずつ増やして測定点を変化させながら、事前測定される。なお、各測定点では、検査対象物の測定面を、例えば5度ずつ(90/5=18個)傾けて、合計18個の機器効率を事前測定することが考えられる。
【0045】
また、検査対象物1の測定面中心を放射線検出器10の中心からオフセットさせた場合、およびバックグランドを変化させた場合についての機器効率データもさらに事前測定することができる。なお、バックグランドを変えた場合の機器効率データは、測定ではなく、計算で求めてもよい。
【0046】
そして、コントローラ40は、このようにして、位置関係およびバックグランドをパラメータとして事前収集された機器効率を、位置関係およびバックグランドと機器効率とを関連付けた機器効率テーブルとしてテーブル化し、記憶しておく。
【0047】
なお、コントローラ40は、機器効率テーブルを記憶する代わりに、事前収集結果に基づいて、位置関係およびバックグランドをパラメータとして機器効率を算出するための関数を記憶しておくことも可能である。
【0048】
次に、ステップS702において、コントローラ40は、実際に放射能汚染測定を実施する検査環境でのバックグランド平均値およびその標準偏差を測定する。
【0049】
次に、ステップS703において、形状計測部20は、検査対象物1の表面形状の計測処理を実行する。例えば、形状計測部20として、ステレオカメラ、レーザスキャナ等の形状認識機器を使用することで、検査対象物1の3次元形状を認識することができる。複雑な検査対象の3次元形状を認識するためには、必要に応じて、複数の方向から形状認識することとなる。
【0050】
次に、ステップS704において、コントローラ40は、先の図3に示したような単位面への分割処理を実行する。コントローラ40は、形状計測部20で認識された検査対象物1の3次元形状を、例えば、1×1cmの大きさからなる単位面の集合体に分割する。
【0051】
次に、ステップS705において、コントローラ40は、放射線検出器10の有感面11と各単位面との位置関係に関する演算処理を実行する。実際の検査時には、放射線検出器10を検査対象物1にできるだけ近づけて許容距離範囲内となるように位置決めした後に、表面汚染量の検出が行われる。そこで、コントローラ40は、実際の検査時での位置決め完了後における放射線検出器10と各単位面との位置関係を演算する。
【0052】
具体的には、コントローラ40は、先の図5を用いて説明したように、面間距離、面の角度、オフセットの3つの要素で規定される「位置関係」を演算することとなる。
【0053】
次に、ステップS706において、コントローラ40は、それぞれの単位面について求まった位置関係に対応する機器効率に基づいて検出可否の判定処理を実行する。具体的には、コントローラ40は、それぞれの単位面についてステップS705で求まった位置関係に最も近い位置関係に対応する機器効率を、機器効率テーブルから抽出する。
【0054】
さらに、コントローラ40は、それぞれの単位面について、抽出した機器効率を使用して放射線検出器10の計数率を算出する。そして、コントローラ40は、計数率、実際の検査時間、バックグランドから、それぞれの単位面の汚染を検出できるか否か、すなわち、各単位面が検出可能表面部分であるか、検出不可能表面部分であるかを判定することとなる。具体的な判定手法は、先のステップS405における判定手法と同一であり、詳細な説明は省略する。
【0055】
次に、ステップS707において、コントローラ40は、それぞれの単位面について、ステップS706での判定結果である検出可能表面部分と検出不可能表面部分とを表示器50に識別表示させるための表示データを識別情報として生成する表示処理を実行する。具体的な表示処理は、先のステップS406における表示処理と同一であり、詳細な説明は省略する。
【0056】
なお、上述した手法2は、事前測定結果に基づいて機器効率データを生成し、位置関係に応じた機器効率を求めるためのテーブルあるいは関数を記憶しておくものであった。しかしながら、機器効率データに関しては、種々の位置関係に対する事前測定結果に基づいて生成する代わりに、計算機による事前シミュレーション結果に基づいて生成しておくことも可能である。
【0057】
<手法3:位置関係から直接検出可否を判定する識別表示手法>
図8は、本開示の実施の形態1に係る放射能汚染測定装置において、検査対象物1の表面における検出可能表面部分と検出不可能表面部分とを表示器50に識別表示させるための手法3に関する一連処理を示すフローチャートである。
【0058】
図8に示した手法3では、検査対象(核種)毎に放射線検出器の位置関係(面間距離、面間角度、オフセット)を変化させて、それぞれの位置関係における単位面に検査基準値の汚染が存在する場合の検出可否を、シミュレーションまたは実測を行った結果として求めてデータベース化し、各単位面の検出可否を認識するものである。
【0059】
まず始めに、ステップS801において、コントローラ40は、シミュレーションあるいは実測に基づいて、種々の位置関係と検出可否データとを対応付けた検出可否テーブルを記憶部に記憶させておく。
【0060】
例えば、位置関係が1~N(Nは2以上の整数)とすると、それぞれの位置関係n(n=1~N)が、面間距離、面間角度、オフセットの値により特定され、位置関係1~Nのそれぞれが、検出可否に関する情報である検出可能表面部分あるいは検出不可能表面部分として関連付けられて、検出可否テーブルとしてあらかじめ記憶されることとなる。
【0061】
次に、ステップS802において、形状計測部20は、検査対象物1の表面形状の計測処理を実行する。例えば、形状計測部20として、ステレオカメラ、レーザスキャナ等の形状認識機器を使用することで、検査対象物1の3次元形状を認識することができる。複雑な検査対象の3次元形状を認識するためには、必要に応じて、複数の方向から形状認識することとなる。
【0062】
次に、ステップS803において、コントローラ40は、先の図3に示したような単位面への分割処理を実行する。コントローラ40は、形状計測部20により認識された検査対象物1の3次元形状を、例えば、1×1cmの大きさからなる単位面の集合体に分割する。
【0063】
次に、ステップS804において、コントローラ40は、放射線検出器10の有感面11と各単位面との位置関係に関する演算処理を実行する。実際の検査時には、放射線検出器10を検査対象物1にできるだけ近づけて許容距離範囲内となるように位置決めした後に、表面汚染量の検出が行われる。そこで、コントローラ40は、実際の検査時での位置決め完了後における放射線検出器10と各単位面との位置関係を演算する。
【0064】
具体的には、コントローラ40は、先の図5に示したように、それぞれの単位面について、面間距離、面の角度、オフセットの3つの要素を含む位置関係を演算する。
【0065】
次に、ステップS805において、コントローラ40は、それぞれの単位面について求まった位置関係に対応する検出可否に関する情報を、検出可否テーブルを参照して特定する。具体的には、コントローラ40は、それぞれの単位面についてステップS804で求まった位置関係に最も近い位置関係に対応する検出可否に関する情報を、検出可否テーブルから抽出する。この結果、コントローラ40は、それぞれの単位面が、検出可能表面部分であるか、あるいは検出不可能表面部分であるかを判定することができる。
【0066】
次に、ステップS806において、コントローラ40は、それぞれの単位面について、ステップS805での判定結果から、検出可能表面部分と検出不可能表面部分とを表示器50に識別表示させるための表示データを識別情報として生成する表示処理を実行する。具体的な表示処理は、先のステップS406における表示処理と同一であり、詳細な説明は省略する。
【0067】
以上のように、実施の形態1によれば、検査対象物の表面を単位面の集合として分割し、単位面ごとに表面汚染量を検出することができる検出可能表面部分と、前記表面汚染量を検出することができない検出不可能表面部分とに分類し、分類結果に基づいて検出可能表面部分と検出不可能表面部分とを表示器に識別表示させる機能を備えている。このように、放射線検出器により表面汚染量を検出することができる部分とできない部分を識別情報として提供することで、オペレータは、自動検査できていない部分を容易に特定でき、手作業により検査すべき部分を容易に認識することができる。
【0068】
実施の形態2.
本実施の形態検2では、先の実施の形態1で詳述した各手法により、検査対象物1の各単位面について、表面汚染量を検出することができる検出可能表面部分と、前記表面汚染量を検出することができない検出不可能表面部分とに分類した後の、具体的な告知方法について説明する。
【0069】
<告知方法1:1回の検査結果を踏まえて、検出不可能表面部分を告知する方法>
告知方法1は、先の実施の形態1の図6として示した識別表示を行う方法に相当する。オペレータは、図6の表示内容を視認することで、自動検査の結果として汚染が検出されなかった部分、自動検査の結果として汚染が検出された部分、自動検査が実施できていない部分、を容易に識別することができる。
【0070】
さらに、オペレータは、自動検査が実施できていない部分を、手作業による検査を実施すべき箇所として容易に識別することができる。
【0071】
なお、自動検査を行う前段階では、汚染が検出されたか否かを識別表示することはできないが、自動検査を行った場合を想定して、表面汚染量を検出することができる検出可能表面部分と、前記表面汚染量を検出することができない検出不可能表面部分との2つに分類した識別情報を提供することができる。
【0072】
<告知方法2:複数回の検査結果を踏まえて、検出不可能表面部分を告知する方法>
例えば、設置面を変えて複数回の検査を行えば、自動検査が実施できていない部分を減らすことができる。図9は、本開示の実施の形態2において、設置面を変えて2回の検査を行った後の識別表示の具体例を示した説明図である。
【0073】
図9(A)は、1回目の検査を行った後に、1回目の検査だけによって汚染が検出されなかった部分、汚染が検出された部分、検査が実施できていない部分を識別した状態を示しており、先の図6と同様の表示内容を示している。
【0074】
また、図9(B)は、2回目の検査を行った後に、2回目の検査だけによって汚染が検出されなかった部分、汚染が検出された部分、検査が実施できていない部分を識別した状態を示している。
【0075】
さらに、図9(C)は、2回の検査結果を統合し、1回目と2回目の検査を行った後に、2回の検査とも汚染が検出されなかった部分、少なくともいずれかの検査によって汚染が検出された部分、1回目も2回目も検査が実施できていない部分を識別した状態を示している。
【0076】
すなわち、コントローラ40は、検査(スキャン)毎に汚染が検出されなかった部分、汚染が検出された部分、検査が実施できていない部分を記憶しておき、最終的に、複数回にわたる各検査結果の論理和あるいは論理積を用いることで、複数回の検査が完了した後に、汚染が検出されなかった部分、汚染が検出された部分、検査が実施できていない部分を表示器50に識別表示させることができる。
【0077】
オペレータは、図9(C)の表示内容を視認することで、設置面を異ならせて複数回の自動検査を行った結果として、汚染が検出されなかった部分、汚染が検出された部分、自動検査が実施できていない部分、を容易に識別することができる。さらに、オペレータは、自動検査が実施できていない部分を、手作業による検査を実施すべき箇所として容易に識別することができる。
【0078】
なお、自動検査を行う前段階では、汚染が検出されたか否かを識別表示することはできないが、複数回にわたる自動検査を行った場合を想定して、表面汚染量を検出することができる検出可能表面部分と、前記表面汚染量を検出することができない検出不可能表面部分との2つに分類した識別情報を提供することができる。
【0079】
なお、上述した告知方法2では、1台の放射線検出器10を用いて、検査対象物1の設置状態を変えて複数回の検査を行う場合について説明した。しかしながら、複数台の放射線検出器10を用いることで、異なる方向からの複数回の検査を1回で実施することが可能となる。
【0080】
図10は、本開示の実施の形態2において、2台の放射線検出器10(1)、10(2)を用いて、検査対象物1の検査を1回行った後の識別表示の具体例を示した説明図である。図10では、検査対象物1の上下に2台の放射線検出器10(1)、10(2)を配置した例を示しており、1回の検査を行うことで、先の図9(C)と同様の識別情報を提供することができる。
【0081】
<告知方法3:最も効率的な検査方法をガイダンス情報として告知する方法>
告知方法3では、実際に自動検査を行う前段階に、検査ができていない部分を最小化するためには、検査対象物1をどのような向きにして自動検査を行うべきかを、最も効率的な検査方法に関するガイダンス情報として告知するものである。
【0082】
検査を行う前に、事前に識別表示を行う場合には、自動検査を実施した結果として汚染が検出された部分の特定はできないものの、自動検査できる部分と自動検査できない部分を識別表示することは可能である。
【0083】
そこで、自動検査を1回だけ行う場合には、コントローラ40は、検査対象物1の向きを変えた場合に考えられる種々の設置パターンについて、先の実施の形態1に示したようないずれかの識別表示手法を実施することで、1回の自動検査を行った後に自動検査できる部分と自動検査できない部分を分類することができる。
【0084】
その後、コントローラ40は、それぞれの設置パターンごとに、検査不可能表面部分となった単位面の数をカウントすることで、自動検査できない部分の面積に相当する値を定量的に評価することができる。
【0085】
そして、最終的に、コントローラ40は、検査不可能表面部分となった単位面の数が最も少ない設置パターンを特定し、特定した設置パターンによる識別表示を、最も効率的な検査方法に関するガイダンス情報として告知することができる。図11は、本開示の実施の形態2において、自動検査を1回行う場合の最も効率的な検査方法に関するガイダンス情報の表示例を示した図である。
【0086】
図11を視認したオペレータは、検査対象物1を図11に示すような向きで放射線検出器10に対して設置することで、自動検査できない部分を最小化できるとともに、その際に、自動検査できない部分、すなわち手作業で検査すべき部分を容易に特定することができる。
【0087】
次に、自動検査を2回行う場合には、コントローラ40は、検査対象物1の向きを変えた場合に考えられる種々の設置パターンの組合せについて、先の実施の形態1に示したようないずれかの識別表示手法による検出処理を繰り返し実施することで、2回の自動検査を行った後に自動検査できる部分と自動検査できない部分を分類することができる。
【0088】
その後、コントローラ40は、それぞれの設置パターンの組合せごとに、検査不可能表面部分となった単位面の数をカウントすることで、選択した組合せごとに、自動検査できない部分の面積に相当する値を定量的に評価することができる。
【0089】
そして、最終的に、コントローラ40は、検査不可能表面部分となった単位面の数が最も少ない設置パターンの組合せを特定し、特定した設置パターンの組合せによる識別表示を、最も効率的な検査方法に関するガイダンス情報として告知することができる。図12は、本開示の実施の形態2において、自動検査を2回行う場合の最も効率的な検査方法に関するガイダンス情報の表示例を示した図である。
【0090】
図12(A)は、最も効率的な自動検査を行うために、1回目の検査を行う場合の放射線検出器10に対する検査対象物1の向きと、その際に自動検査できない部分を識別するための図である。
【0091】
図12(B)は、最も効率的な自動検査を行うために、2回目の検査を行う場合の放射線検出器10に対する検査対象物1の向きと、その際に自動検査できない部分を識別するための図である。
【0092】
さらに、図12(C)は、最も効率的な自動検査を行った際に、最終的に自動検査ができない部分を識別するための図である。
【0093】
実際には、コンピュータは、図12(A)および図12(B)の設置パターンの組合せ以外にも、他の設置パターンの組合せについても比較評価し、最終的に検査不可能表面部分となった単位面の数が最も少ない設置パターンの組合せを特定することとなるが、他の設置パターンの組合せについては、図面を用いた説明を省略する。
【0094】
図12を視認したオペレータは、検査対象物1を、図12(A)および図12(B)に示すような異なる向きで放射線検出器10に対して設置することで、2回の自動検査後に自動検査できない部分を最小化できるとともに、その際に、自動検査できない部分、すなわち手作業で検査すべき部分を容易に特定することができる。
【0095】
なお、図12では、1台の放射線検出器10を用いて、自動検査を2回行う場合の最も効率的な検査方法に関するガイダンス情報の表示例について説明した。しかしながら、複数台の放射線検出器10を用いることで、異なる方向からの複数回の検査を1回で実施することを想定して、自動検査を1回行う場合の最も効率的な検査方法に関するガイダンス情報を表示させることも可能となる。
【0096】
図13は、本開示の実施の形態2において、2台の放射線検出器10(1)、10(2)を用いて、自動検査を1回行う場合の最も効率的な検査方法に関するガイダンス情報の表示例を示した図である。図13では、検査対象物1の上下に2台の放射線検出器10(1)、10(2)を配置したことを想定した例を示しており、1回の検査を行うことで、先の図12(C)と同様のガイダンス情報を提供することができる。
【0097】
以上のように、実施の形態2によれば、自動検査を行った後の識別表示の告知、あるいは自動検査を行う前の識別表示の告知を行う機能を備えている。いずれの場合も、自動検査できない部分を容易に特定でき、手作業での検査をスムーズに実施することができる。
【0098】
また、実際の検査を行う前に、自動検査できない部分を最小化できるようにするための、検査対象物の最適な設置方法に関するガイダンス情報を告知する機能を有している。この結果、手作業を行うべき部分を容易に特定できるとともに、手作業で検査を行うべき領域が最小化されることで手作業による検査時間を最小化することができ、検査効率の改善を図ることができる。
【符号の説明】
【0099】
1 検査対象物、10 放射線検出器、11 有感面、20 形状計測部、30 駆動部、40 コントローラ、50 表示器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13