(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】モータコアの製造方法及びモータコア
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20240604BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20240604BHJP
H02K 1/04 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B29C45/14
H02K15/02 F
H02K1/04 Z
(21)【出願番号】P 2022044420
(22)【出願日】2022-03-18
【審査請求日】2023-11-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592105804
【氏名又は名称】下田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】田中 康紀
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-78208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/14
H02K 15/02
H02K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータコアの製造方法であって、
所定形状に形成された金属板を積層した積層体であって、前記積層体の積層方向両端の間に延びるスロットが形成された前記積層体を、成形型の内部に配置する工程と、
少なくとも一方の面に熱接着層を有する熱接着性樹脂フィルムを前記積層体の前記スロットに配置する工程であって、前記熱接着性樹脂フィルムの前記熱接着層と前記スロットを形成する前記積層体の表面とが向かい合うように、前記熱接着性樹脂フィルムを配置する工程と、
前記積層体を前記成形型の内部に配置する工程と、前記熱接着性樹脂フィルムを前記積層体の前記スロットに配置する工程との後に、前記成形型を閉じ
て当該成形型内に樹脂を射出することにより、
前記成形型の内部に配置されている前記積層体の前記積層方向両端に樹脂成形体を一体成形するとともに、前記積層体の前記積層方向両端において、前記熱接着性樹脂フィルムの前記熱接着層を前記樹脂成形体に接着する工程と、
を有するモータコアの製造方法。
【請求項2】
さらに、
前記熱接着性樹脂フィルムを前記積層体の前記スロットに配置する工程の後、前記成形型を閉じる前に、前記積層体の前記スロットに配置された前記熱接着性樹脂フィルムを所定温度以上まで加熱することにより、前記熱接着層を前記積層体に接着する工程を有する、請求項1に記載のモータコアの製造方法。
【請求項3】
前記熱接着性樹脂フィルムは、一方の面のみに前記熱接着層を有する熱接着性ポリフェニレンサルファイドフィルムである、請求項1又は2に記載のモータコアの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂成形体は、ポリフェニレンサルファイドにより一体成形される、請求項3に記載のモータコアの製造方法。
【請求項5】
前記金属板は、平面視で環状に形成される、請求項1又は2に記載のモータコアの製造方法。
【請求項6】
前記金属板は、平面視で略T字形状に形成される、請求項1又は2に記載のモータコアの製造方法。
【請求項7】
所定形状に形成された金属板を積層した積層体であって、前記積層体の積層方向両端の間に延びるスロットが形成された前記積層体と、
少なくとも一方の面に熱接着層を有する熱接着性樹脂フィルムであって、前記熱接着性樹脂フィルムの前記熱接着層
を有する面と前記スロットを形成する前記積層体の表面とが向かい合
い、且つ、前記熱接着性樹脂フィルムの他方の面と電気モータの巻線とが向かい合うように前記スロットに配置された前記熱接着性樹脂フィルムと、
前記積層体の前記積層方向両端に一体成形された樹脂成形体であって、前記積層体の前記積層方向両端において、前記熱接着性樹脂フィルムの前記熱接着層が接着された前記樹脂成形体と、
を有するモータコア。
【請求項8】
前記熱接着性樹脂フィルムの前記熱接着層は前記積層体に接着されている、請求項7に記載のモータコア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータコアの製造方法及びモータコアに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果ガスの排出量削減のために、各種動力源(例えば自動車の駆動力源や車載空調機器の動力源など)の電動化が促進されている。これに伴い、電気モータの効率向上が求められている。
【0003】
電気モータのコア(モータコア)は、一般的には電磁鋼板の薄板を積層することにより製造される。このモータコアの従来の製造方法においては、まず、電磁鋼板の薄板をプレス加工により所定の形状に打ち抜き、その打ち抜かれた薄板を所定枚数積層する。積層された薄板は、カシメ、接着、レーザ溶着等の方法により互いに仮止めされ、さらに外周を溶接することにより固定される(例えば、特許文献1参照)。その後、モータコアと巻線との間を絶縁するための絶縁紙が、モータコアに形成されたスロット内に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カシメやレーザ溶着により薄板同士を結合した場合、結合部分の近傍で渦電流が発生することにより鉄損が生じる。また、接着を用いる方法では、接着強度のバラつきが生じたり、モータコアの側面からはみ出した接着材を除去するために工数が増大したりする等の問題がある。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、鉄損の低減と工数削減とを両立することのできる、モータコアの製造方法及びモータコアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明によるモータコアの製造方法は、所定形状に形成された金属板を積層した積層体であって、積層体の積層方向両端の間に延びるスロットが形成された積層体を、成形型の内部に配置する工程と、少なくとも一方の面に熱接着層を有する熱接着性樹脂フィルムを積層体のスロットに配置する工程であって、熱接着性樹脂フィルムの熱接着層とスロットを形成する積層体の表面とが向かい合うように、熱接着性樹脂フィルムを配置する工程と、積層体を成形型の内部に配置する工程と、熱接着性樹脂フィルムを積層体のスロットに配置する工程との後に、成形型を閉じて当該成形型内に樹脂を射出することにより、成形型の内部に配置されている積層体の積層方向両端に樹脂成形体を一体成形するとともに、積層体の積層方向両端において、熱接着性樹脂フィルムの熱接着層を樹脂成形体に接着する工程と、を有する。
このように構成された本発明では、積層体を構成する金属板が、樹脂成形体及び熱接着性樹脂フィルムによって固定されるので、カシメやレーザ溶着により金属板同士を結合したり、金属板同士の固定に接着剤を用いたりする必要がない。これにより、鉄損の低減と工数削減とを両立することができる。また、熱接着性樹脂フィルムは、従来モータコアと巻線との間を絶縁するために用いられていた絶縁紙(例えばアラミド紙)のように繊維を排出することがないので、例えば空調機器のコンプレッサの動力源など高い清浄度が必要とされる環境における使用にも適している。
【0008】
本発明において、好ましくは、モータコアの製造方法は、熱接着性樹脂フィルムを積層体のスロットに配置する工程の後、成形型を閉じる前に、積層体のスロットに配置された熱接着性樹脂フィルムを所定温度以上まで加熱することにより、熱接着層を積層体に接着する工程を有する。
このように構成された本発明においては、成形型の型締め前に熱接着性樹脂フィルムを熱接着層により積層体のスロット内に仮止めすることができる。これにより、成形型の型締めの際に熱接着性樹脂フィルムの位置がずれることがなく、熱接着性樹脂フィルムの位置決めを高精度に行うことができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、熱接着性樹脂フィルムは、一方の面のみに熱接着層を有する熱接着性ポリフェニレンサルファイドフィルムである。
このように構成された本発明においては、成形型の型締め前に熱接着性ポリフェニレンサルファイドフィルムを熱接着層により積層体のスロット内に容易に仮止めすることができ、熱接着性ポリフェニレンサルファイドフィルムの位置決めを高精度に行うことができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、樹脂成形体は、ポリフェニレンサルファイドにより一体成形される。
このように構成された本発明においては、樹脂成形体を容易に形成できるとともに、積層体を構成する金属板の固定に十分な強度で熱接着性ポリフェニレンサルファイドフィルムを樹脂成形体に接着することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、金属板は、平面視で環状に形成される。
【0012】
本発明において、好ましくは、金属板は、平面視で略T字形状に形成される。
【0013】
本発明の他の側面によれば、本発明によるモータコアは、所定形状に形成された金属板を積層した積層体であって、積層体の積層方向両端の間に延びるスロットが形成された積層体と、少なくとも一方の面に熱接着層を有する熱接着性樹脂フィルムであって、熱接着性樹脂フィルムの熱接着層を有する面とスロットを形成する積層体の表面とが向かい合い、且つ、熱接着性樹脂フィルムの他方の面と電気モータの巻線とが向かい合うようにスロットに配置された熱接着性樹脂フィルムと、積層体の積層方向両端に一体成形された樹脂成形体であって、積層体の積層方向両端において、熱接着性樹脂フィルムの熱接着層が接着された樹脂成形体と、を有する。
このように構成された本発明においては、積層体を構成する金属板が、樹脂成形体及び熱接着性樹脂フィルムによって固定されるので、カシメやレーザ溶着により金属板同士を結合したり、金属板同士の固定に接着剤を用いたりする必要がない。これにより、鉄損の低減と工数削減とを両立することができる。また、熱接着性樹脂フィルムは、従来モータコアと巻線との間を絶縁するために用いられていた絶縁紙(例えばアラミド紙)のように繊維を排出することがないので、例えば空調機器のコンプレッサの動力源など高い清浄度が必要とされる環境における使用にも適している。
【0014】
本発明において、好ましくは、熱接着性樹脂フィルムの熱接着層は積層体に接着されている。
このように構成された本発明においては、成形型の型締め前に熱接着性樹脂フィルムを熱接着層により積層体のスロット内に仮止めすることができる。これにより、成形型の型締めの際に熱接着性樹脂フィルムの位置がずれることがなく、熱接着性樹脂フィルムの位置決めを高精度に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のモータコアの製造方法及びモータコアによれば、鉄損の低減と工数削減とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態によるモータコアの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態による積層体を構成する金属板の平面図である。
【
図3】本発明の実施形態によるモータコアの断面図であり、(a)は
図1のA-A断面図、(b)は
図1のB-B断面図である。
【
図4】本発明の実施形態による熱接着性樹脂フィルムと樹脂成形体との接着部を示す拡大断面図である。
【
図5】本発明の実施形態によるモータコアの製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図6】本発明の変形例によるモータコアの概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるモータコアの製造方法及びモータコアについて説明する。
【0018】
図1は、本実施形態によるモータコアの概略構成を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態のモータコア1は全体として円筒形であり、インナーロータ方式のモータ(例えばブラシレスDCモータ)のステータとして用いられる。
【0019】
モータコア1は、円環形状に形成された金属板2を積層した円筒形の積層体3を有している。積層体3の内周には、この積層体3の積層方向両端の間に延びるスロット3aが、積層体3の内周に沿って周方向に所定の間隔で形成されている。
【0020】
図2は、積層体3を構成する金属板2の平面図である。金属板2は、例えば電磁鋼板の薄板(例えば板厚0.2mm)を、プレス加工等の機械加工により所定形状に形成したものである。
図2に示すように、本実施形態による金属板2は、平面視で円環形状に形成されている。より詳細には、金属板2は、平面視で円環形状の円環部2aと、円環部2aの内周から径方向内側に延びる複数の腕部2bと、円環部2aの外周に形成された複数の溝部2cとを備えている。腕部2bは円環部2aの内周に沿って周方向に所定の間隔で配列されており、金属板2を積層することにより、隣接する腕部2bの間の空間によってスロット3aが形成される。
【0021】
また、
図1に示すように、積層体3の積層方向両端には、一体成形された樹脂成形体6が設けられている。樹脂成形体6は、積層体3の積層方向両端のそれぞれを覆うように形成された一対の本体6aと、積層体3の外周に沿って積層体3の積層方向に延び、一対の本体6aを連結する連結部6bとを備えている。
【0022】
一対の本体6aは、それぞれ金属板2と同様の平面形状を有しており、積層体3の端面全体を覆うように形成されている。これにより、積層体3の腕部に巻線が巻き回されたときに、樹脂成形体6の本体6aと、スロット3aに配置された後述する熱接着性ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム4とによって、巻線と積層体3との間が絶縁される。本実施形態の樹脂成形体6の材料としては、例えばPPS樹脂等、射出成形により成形可能な各種樹脂を用いることができる。
【0023】
図3は、本実施形態によるモータコア1の断面図であり、(a)は
図1のA-A断面図、(b)は
図1のB-B断面図である。
図1及び
図3(b)に示すように、連結部6bは、一対の本体6aの間を、積層された金属板2の溝部2cに沿って積層方向に延び、一対の本体6aを連結している。連結部6bが、積層された金属板2の溝部2cを埋めるように一体成形されることにより、積層された各金属板2の面内の動きが規制されるとともに、連結部6bにより連結された一対の本体6aにより、積層された金属板2の積層方向の動きが規制される。
【0024】
また、
図1及び
図3(a)に示すように、積層体3に形成されたスロット3aには、熱接着性PPSフィルム4が配置されている。
図4は、本実施形態による熱接着性PPSフィルム4と樹脂成形体6との接着部を示す拡大断面図である。
【0025】
図4に示すように、熱接着性PPSフィルム4は、熱接着層4aとPPS樹脂層4bとを有し、熱接着層4aは熱接着性PPSフィルム4の一方の面のみに設けられている。熱接着性PPSフィルム4は、熱接着層4aと、スロット3aを形成する積層体3及び樹脂成形体6の本体6aの表面とが向かい合うように、スロット3aに配置されている。熱接着性PPSフィルム4の熱接着層4aは、対向する樹脂成形体6の本体6aの表面(つまりスロット3aを形成する本体6aの表面)に接着されるとともに、対向する積層体3の表面(つまりスロット3aを形成する積層体3の表面)の少なくとも一部(例えば、樹脂成形体6の本体6aに隣接する積層体3の部分)に接着されている。
【0026】
熱接着性PPSフィルム4は、例えば、PPS樹脂組成物と共重合PPS樹脂とを、それぞれ別個の溶融押出装置に供給して溶融状態とした後に積層し、冷却後に延伸することにより得られる。熱接着性PPSフィルム4の詳細な製造方法は、例えば、特開2009-274441号公報に記載されている。熱接着性PPSフィルム4の熱接着層4aは、所定温度(例えば200℃~300℃)まで加熱されると溶融状態となる。溶融状態の熱接着層4aを被接着物に圧着しつつ、熱接着層4aのガラス転移温度以下まで急冷することにより、熱接着性PPSフィルム4と被接着物とが接着された構造体を得る事ができる。
【0027】
次に、上記のように構成される本実施形態のモータコア1の製造方法を説明する。
図5は、本実施形態によるモータコア1の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【0028】
図5に示すように、まず、ステップS1において、プレス加工により金属板2の材料となる金属材(例えば電磁鋼帯)から金属板2を打ち抜く。
【0029】
次に、ステップS2において、成形型の内部に、ステップS1において打ち抜かれた金属板2を積層した積層体3を配置する。この際、予め金属板2を積層した積層体3を成形型の内部に配置してもよく、成形型の内部において金属板2を積層して積層体3を形成するようにしてもよい。
【0030】
次に、ステップS3において、積層体3の各スロット3aに熱接着性PPSフィルム4を配置する。次いで、ステップS4において、熱接着性PPSフィルム4を所定温度(例えば200℃~300℃)まで加熱し、熱接着性PPSフィルム4の熱接着層4aを積層体3の表面に熱融着させることにより、熱接着性PPSフィルム4を積層体3のスロット3a内に仮止めする。このとき、熱接着性PPSフィルム4の熱接着層4aは、スロット3aを形成する積層体3の表面の一部(例えば、樹脂成形体6の本体6aに隣接する積層体3の部分)のみに接着されれば良いが、スロット3aを形成する積層体3の表面全体に接着されてもよい。また、ステップS2からS4の順序を適宜入れ替えても良い。例えば、予め金属板2を積層した積層体3の各スロット3aに熱接着性PPSフィルム4を配置し(ステップS3)、熱接着性PPSフィルム4を所定温度まで加熱して積層体3のスロット3a内に仮止め(ステップS4)した後、積層体3を成形型の内部に配置(ステップS2)してもよい。
【0031】
次に、ステップS5において、成形型の型締めを行う。上記のとおり、ステップS3において熱接着性PPSフィルム4は熱接着層4aにより積層体3のスロット3a内に仮止めされているので、成形型の型締めの際に熱接着性PPSフィルム4の位置がずれることがなく、熱接着性PPSフィルム4の位置決めを高精度に行うことができる。
【0032】
次に、ステップS6において、成形型のキャビティ内に溶融樹脂を射出することにより、樹脂成形体6の射出成形を行う。このとき、樹脂成形体6の本体6aに相当する位置のキャビティに射出された溶融樹脂が熱接着性PPSフィルム4の熱接着層4aに接触することにより、熱接着層4aも溶融樹脂と同程度の温度まで上昇し、溶融状態となる。その後、成形型内の樹脂を冷却することにより、樹脂成形体6が固化する。このとき、熱接着性PPSフィルム4の熱接着層4aは、対向する樹脂成形体6の本体6aの表面(つまりスロット3aを形成する本体6aの表面)に接着された状態で固化する。これにより、積層体3を構成する金属板2が、樹脂成形体6及び熱接着性PPSフィルム4によって固定される。
【0033】
次に、ステップS7において、成形型を開き、積層体3、熱接着性PPSフィルム4及び樹脂成形体6が一体となったモータコア1を離型する。
【0034】
<変形例>
次に、本発明の実施形態の変形例を説明する。
図6は、本発明の変形例によるモータコア1の概略構成を示す斜視図である。上述した実施形態では、モータコア1が円環形状に形成された金属板2を積層した円筒形の積層体3を有している場合を例示したが、金属板2の形状は円環形状には限られない。例えば、
図6に示すように、平面視で略T字形状に形成された金属板2を積層したT形柱状の積層体3をモータコア1が有するようにしてもよい。この場合、
図6に示したT形柱状のモータコア1を円環状に配列することにより、全体として円筒形のモータコア1を得る事ができる。
【0035】
図6の変形例では、T字形状の金属板2の長手方向に延びる部分が腕部2bに相当し、この金属板2を積層した積層体3の腕部の両側面に熱接着性PPSフィルム4が配置される。本変形例によるモータコア1の製造方法の流れは、
図5に示したフローチャートの流れと同様である。
【0036】
<作用効果>
次に、上述した実施形態及び別実施形態によるモータコア1の製造方法及びモータコア1の作用効果について説明する。
【0037】
まず、モータコア1の製造方法は、熱接着性PPSフィルム4の熱接着層4aとスロット3aを形成する積層体3の表面とが向かい合うように、熱接着性PPSフィルム4を配置する工程と、熱接着性PPSフィルム4を所定温度以上まで加熱することにより、熱接着層4aを積層体3に接着する工程と、成形型を閉じた後に成形型内に樹脂を射出することにより、積層体3の積層方向両端に樹脂成形体6を一体成形するとともに、積層体3の積層方向両端において、熱接着性PPSフィルム4の熱接着層4aを樹脂成形体6に接着する工程とを有するので、成形型の型締め前に熱接着性PPSフィルム4を熱接着層4aにより積層体3のスロット3a内に仮止めすることができる。これにより、成形型の型締めの際に熱接着性PPSフィルム4の位置がずれることがなく、熱接着性PPSフィルム4の位置決めを高精度に行うことができる。また、積層体3を構成する金属板2が、樹脂成形体6及び熱接着性PPSフィルム4によって固定されるので、カシメやレーザ溶着により金属板2同士を結合したり、金属板2同士の固定に接着剤を用いたりする必要がない。これにより、鉄損の低減と工数削減とを両立することができる。また、熱接着性PPSフィルム4は、従来モータコアと巻線との間を絶縁するために用いられていた絶縁紙(例えばアラミド紙)のように繊維を排出することがないので、例えば空調機器のコンプレッサの動力源など高い清浄度が必要とされる環境における使用にも適している。
【0038】
また、一方の面のみに熱接着層4aを有する熱接着性PPSフィルム4を用いるので、成形型の型締め前に熱接着性PPSフィルム4を熱接着層4aにより積層体3のスロット3a内に容易に仮止めすることができ、熱接着性PPSフィルム4の位置決めを高精度に行うことができる。
【0039】
また、樹脂成形体6は、PPSにより一体成形されるので、樹脂成形体6を容易に形成できるとともに、積層体3を構成する金属板2の固定に十分な強度で熱接着性PPSフィルム4を樹脂成形体6に接着することができる。
【0040】
また、金属板2が、平面視で環状に形成される場合、又は、平面視で略T字形状に形成される場合の何れにおいても、上述した作用効果を奏することができる。
【0041】
また、モータコア1は、熱接着性PPSフィルム4の熱接着層4aとスロット3aを形成する積層体3の表面とが向かい合うようにスロット3aに配置された熱接着性PPSフィルム4を有し、熱接着層4aが積層体3に接着されている。また、モータコア1は、積層体3の積層方向両端に一体成形された樹脂成形体6を有し、積層体3の積層方向両端において、熱接着性PPSフィルム4の熱接着層4aが樹脂成形体6に接着されている。
これにより、成形型の型締め前に熱接着性PPSフィルム4を熱接着層4aにより積層体3のスロット3a内に仮止めすることができるので、成形型の型締めの際に熱接着性PPSフィルム4の位置がずれることがなく、熱接着性PPSフィルム4の位置決めを高精度に行うことができる。また、積層体3を構成する金属板2が、樹脂成形体6及び熱接着性PPSフィルム4によって固定されるので、カシメやレーザ溶着により金属板2同士を結合したり、金属板2同士の固定に接着剤を用いたりする必要がない。これにより、鉄損の低減と工数削減とを両立することができる。また、熱接着性PPSフィルム4は、従来モータコアと巻線との間を絶縁するために用いられていた絶縁紙(例えばアラミド紙)のように繊維を排出することがないので、例えば空調機器のコンプレッサの動力源など高い清浄度が必要とされる環境における使用にも適している。
【符号の説明】
【0042】
1 モータコア
2 金属板
2a 円環部
2b 腕部
2c 溝部
3 積層体
3a スロット
4 熱接着性PPSフィルム
4a 熱接着層
4b PPS樹脂層
6 樹脂成形体
6a 本体
6b 連結部