(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】カプセル封入された光吸収剤を含む眼鏡用レンズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/00 20060101AFI20240604BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20240604BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
G02C7/00
G02B1/04
G02B5/22
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022097360
(22)【出願日】2022-06-16
(62)【分割の表示】P 2019507286の分割
【原出願日】2017-08-09
【審査請求日】2022-07-06
(32)【優先日】2016-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・フロマンタン
(72)【発明者】
【氏名】ティッパラット・レルトワッタナセリ
(72)【発明者】
【氏名】ワランヤ・ポンパン
(72)【発明者】
【氏名】サンヤ・ホクプトサ
【審査官】鈴木 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-064019(JP,A)
【文献】特表2014-527094(JP,A)
【文献】国際公開第2015/097186(WO,A1)
【文献】特開2005-107192(JP,A)
【文献】米国特許第04367170(US,A)
【文献】特開平09-230131(JP,A)
【文献】特開平03-118069(JP,A)
【文献】国際公開第2008/139824(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/017191(WO,A1)
【文献】特表2015-507649(JP,A)
【文献】特開2013-133410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/00
G02B 1/04
G02B 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- モノマー又はオリゴマーの重合を開始するための触媒の存在下で、少なくとも1種のアリル又は非アリルモノマー又はオリゴマーを重合することによって得られるマトリックス;並びに
- 少なくとも1種の光吸収剤を含む非コアシェルナノ粒子であって前記マトリックスの中に分散されている非コアシェルナノ粒子;
を含有する複合基材を含む眼鏡用レンズであって;
- 前記非コアシェルナノ粒子が光吸収剤をカプセル封入しており、
- 前記光吸収剤がフォトクロミック染料ではない、眼鏡用レンズ。
【請求項2】
前記マトリックスが、熱可塑性樹脂から選択される、あるいは熱硬化性樹脂から選択される、請求項1に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項3】
前記光吸収剤が、着色剤、無色の光吸収剤、又はこれらの混合物から選択される、請求項1又は2に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項4】
前記光吸収剤のモル吸光係数が5000より大きい、請求項1~3のいずれか1項に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項5】
前記非コアシェルナノ粒子が、内側から外側まで均質な組成を有し、その中に前記光吸収剤が均一に分布している、請求項1~4のいずれか1項に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項6】
前記非コアシェルナノ粒子が有機化合物を全く含まない外表面を示す、請求項1~5のいずれか1項に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項7】
前記非コアシェルナノ粒子が、無機酸化物を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項8】
ISO489:1999に従って測定される前記非コアシェルナノ粒子の屈折率が1.47~1.74である、請求項1~7のいずれか1項に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項9】
動的光散乱法に従って測定される前記非コアシェルナノ粒子のサイズが1nm~10μmである、請求項1~8のいずれか1項に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項10】
前記非コアシェルナノ粒子中の前記光吸収剤の量が、前記非コアシェルナノ粒子の総重量を基準として0.0001~90重量%である、請求項1~9のいずれか1項に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項11】
前記マトリックス中の前記非コアシェルナノ粒子の量が、前記マトリックスの重量を基準として0.01~2重量%である、請求項1~10のいずれか1項に記載の眼鏡用レンズ。
【請求項12】
a)マトリックスを調製することができるモノマー又はオリゴマーを準備する工程;
b)前記モノマー又はオリゴマーの中に分散可能な粉末の形態であるか、前記モノマー又はオリゴマーの中に分散可能な液体中の非コアシェルナノ粒子の分散液の形態のいずれかで、光吸収剤をカプセル封入している非コアシェルナノ粒子を調製する工程;
c)前記モノマー又はオリゴマーの重合を開始するための触媒を準備する工程;
d)前記非コアシェルナノ粒子が分散されている重合性液体組成物を得るために、前記モノマー又はオリゴマーと、前記非コアシェルナノ粒子と、前記触媒とを混合する工程
;
f)前記重合性液体組成物を硬化させる工程;
を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の眼鏡用レンズの作製方法。
【請求項13】
工程d)と工程f)の間に、e)前記重合性液体組成物を基材上に堆積させる工程を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマー又はオリゴマーと、触媒と、前記モノマー又はオリゴマー中に分散されたナノ粒子の中に含まれる少なくとも1種の光吸収剤とに由来する組成物を含有する、光線を効率的に吸収する眼鏡用レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の目に到達して入る光は、約380~780nmの波長を含む可視光と、紫外領域の光(約280~380nmのUV-A及びUV-B光)及び赤外領域(約780~1400nmまでの近赤外光)を含む非可視光とに分けられる。
【0003】
紫外光は人間の目に有害であることが知られている。特に、これは眼の老化を加速させる場合があり、これは初期の白内障又はより極度の障害(光角膜炎又は「雪盲」等)をもたらし得る。
【0004】
高エネルギー可視(HEV)光としても知られる青色光は、380~500nmの間の青紫帯域の可視光に相当する。テレビ、ノートパソコン、タブレット、及びスマートフォンなどのデジタル機器から発せられる青色光や蛍光灯やLEDの光に長時間曝されることは、青色光が網膜に到達する可能性があるため有害である。ある特定の範囲の青色光は、光網膜炎、デジタル眼精疲労、又はコンピュータビジョン症候群を引き起こすことが示されており、コンピュータビジョン症候群には、眼のかすみ、焦点の合わせにくさ、ドライアイ、眼の炎症、頭痛、首及び背中の痛み;概日リズムの乱れ;メラニン産生の減少;加齢性黄斑変性症;緑内障;網膜変性疾患;乳がん及び前立腺がん;糖尿病;心臓疾患;肥満;及びうつ病が含まれる。約420~450nmの範囲の青色光が特に有害であると考えられている。
【0005】
眼鏡用レンズに光吸収剤を配合することによって、紫外光及び青色光による損傷を防止することができる。
【0006】
光吸収性眼鏡用レンズを作製するために、3つの異なる方法を使用することができる。1つ目の方法は、欧州特許第1085349号明細書に開示されているように、光吸収剤が入っている浴中で重合したレンズを含浸させることである。しかしながら、この方法はレンズの製造プロセスに工程を追加することになり、これはコストと時間の点で望ましくない。
【0007】
2つ目の方法は、米国特許第5949518号明細書に開示されているように、眼鏡用レンズの表面上に光線を吸収することができる物質をコーティングすることである。しかしながら、コーティング中に多量の光吸収剤を配合するとその機械的性質が弱まる。
【0008】
3つ目の方法は、欧州特許第1085348号明細書に教示されているように、バルク液体配合物(すなわち重合前)に光吸収剤を配合することである。この文献では、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート又はビス(β-エピチオプロピル)スルフィドモノマーと、触媒としてのジイソプロピルペルオキシジカーボネートと、光吸収剤としての2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-ベンゾトリアゾールとを含有する熱硬化性組成物が、レンズ用のモールドに流し込まれ、重合するまで加熱される。しかしながら、この方法によって得られるレンズは、光吸収剤の分解のため望ましくない黄変を生じる傾向がある。
【0009】
レンズの黄変は、重合中のラジカルと光吸収剤との間の相互作用により生じる。この黄変作用は、高濃度の触媒を使用して重合を開始させる場合、とりわけアリルモノマーのような反応性が弱いモノマーを用いる場合に特に明白である。
【0010】
レンズの黄変は、美容上の理由のため、及びこれがレンズ装着者の色の知覚に影響を及ぼして最終的にはレンズの透過率を低下させる可能性があるため、望ましくない。
【0011】
特に、青色光を吸収するレンズについては、2つの黄変作用が重なる場合がある。ラジカルと光吸収剤との間の相互作用は、上述したように黄変を生じさせる。レンズを通過する光に関しては、青色光の一部が吸収され、結果としてレンズ装着者には透過光が黄色がかって見える。
【0012】
より少ない触媒を使用する場合にはレンズの黄変を防ぐことができたものの、重合が完了せず、またレンズの機械的特性が許容できないものになる。
【0013】
米国特許出願公開第20120188503号明細書には、アザポルフィリン染料の吸収特性が重合プロセスに確実に耐えられるように、ペルオキソジカーボネートとは異なる温和な触媒の使用が開示されている。提案されている代替の過酸化物の中では、ペルオキシエステル及びペルケタールが特に好ましい。
【0014】
欧州特許第2282713号明細書、欧州特許第2263788号明細書、及び日本特許第3347140号公報などの特許には、日焼けから保護するための化粧品用途のための無機マトリックス中に封入された紫外線吸収剤が記載されている。しかしながら、ナノ粒子中及び化粧品組成物中に含まれる多量の紫外線吸収剤は、眼鏡用レンズの作製のための液体重合性組成物との相溶性を有していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】欧州特許第1085349号明細書
【文献】米国特許第5949518号明細書
【文献】欧州特許第1085348号明細書
【文献】米国特許出願公開第20120188503号明細書
【文献】欧州特許第2282713号明細書
【文献】欧州特許第2263788号明細書
【文献】日本特許第3347140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このようなことから、重合中に影響を受けない所定の吸収スペクトルを有する眼鏡用レンズが必要とされている。
【0017】
出願人は、熱硬化性組成物中に分散されているナノ粒子の中に光吸収剤を封入することによってこの要求を満たすことができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の目的は、
- モノマー又はオリゴマーの重合を開始するための触媒の存在下で、少なくとも1種のアリル又は非アリルモノマー又はオリゴマーを重合することによって得られるマトリックス;並びに
- 少なくとも1種の光吸収剤を含むナノ粒子であって前記マトリックスの中に分散されているナノ粒子;
を含有する複合基材を含む眼鏡用レンズであって:
- ナノ粒子が光吸収剤をカプセル封入している眼鏡用レンズである。
【0019】
好ましくは、光吸収剤はフォトクロミック染料ではない。
【0020】
光吸収剤のカプセル封入は多くの利点を有する。最も重要なことには、これにより、マトリックスを形成するために使用されるモノマー、触媒、及び/又は添加剤と不適切な形で相互作用し得る様々な化合物を使用することが可能になる。そのような不適切な相互作用としては、溶解性の問題、分解、色の変化などが挙げられる。
【0021】
例えば、影響を受けやすい材料をカプセル封入することは、封入しないと分解させることになる場合に、マトリックスと反応することを防ぐことができる。
【0022】
無機粒子は、水溶性の光吸収剤のための優れたカプセル封入材料である。実際、これらの粒子は、モノマーなどの非プロトン性媒体との優れた相溶性を示す。表面修飾により、これらの粒子をほとんどの媒体と相溶性にすることができる。これによって、疎水性溶媒又はマトリックス中で水溶性光吸収剤を使用することが可能になる。
【0023】
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)などのいくつかの用途では、染料は互いに近くに維持されなければならない。FRETは、ストークスシフトを増加させることができる興味深い技術である:第1の蛍光性の光吸収剤Aによって吸収された光は、光を吸収及び再放出することができる第2の光吸収剤Bに向かって再放出され、それにより波長シフトが生じる。この移動が起こるためには、光吸収剤AとBの両方が、相互の分極、したがってエネルギー移動が可能なように十分に空間的に近接していなければならない。そのような短い距離は非常に高濃度にすることで達成することができ、これはほとんどの眼科的用途には適合しない(コスト、機械的特性、色、又は美容のいずれかの点で)。両方の薬剤をカプセル封入することは、低い光吸収剤濃度で非常に必要とされる近さをもたらす:両方の薬剤は、例えば単一のカプセルの中に閉じ込めることができる。
【0024】
同じ原理により、影響を受けやすい光吸収性化合物の近くに酸化防止剤を確実に局所的に高濃度に存在させることができる。
【0025】
光吸収剤をカプセル封入することは、光吸収を調整することも可能にし得る。実際、ナノ粒子マトリックス組成の変化、又はアニーリング条件への曝露でのより少ない程度での変化は、カプセル封入された光吸収剤の吸収波長の変化をもたらす場合があり、これはマトリックスを適切に修正することによって前記吸収波長を調整することを可能にし得る。
【0026】
カプセル封入のもう1つの利点は、これがほとんどの化合物の光安定性を高めることである。
【0027】
いくつかの蛍光吸収剤の量子収率は、これらがナノ粒子中に隠されている場合に大きく増加する。光電池、及び適切な光学素子(導波路、集光器として機能するレンズ)に連結されると、そのような効果は、アクティブアイウェアシステムに電力を供給することを可能にし得る。
【0028】
最後ではあるが大切なこととして、ナノ粒子は標準化剤とみなすことができる:カプセル封入される光吸収剤が何であろうと、モノマーと相互作用するナノ粒子の外表面は同じにすることができ、そのため配合物の中に同様な基材が既に配合されている場合、異なる光吸収剤を用いても、所定の光吸収剤を配合物の中に容易に配合することができる。
【0029】
本発明において、光吸収剤は、好ましくはフォトクロミック染料ではない。「フォトクロミック染料」とは、315~420nmの間の任意の波長のUV-A又は紫色の可視光によって活性化された場合に、可視光透過率が著しく低下する程度まで暗くなることができる染料を意味することが意図されている。実際には、フォトクロミック染料は2つの異なる分子配置を有する。UV-A又は紫色の可視光により励起されると、フォトクロミック染料は分子変化し、それにはこれらが分散されるマトリックス中でいくらかの柔軟性が必要とされる。ナノ粒子においてそのような柔軟性を得ることは非常に困難である。
【0030】
非フォトクロミック光吸収剤は分子の構造を変化させない。光の吸収は分子軌道のエネルギー遷移と関連しており、これは、光吸収剤が中に埋め込まれているマトリックスの影響をほとんど受けない。
【0031】
本発明の第2の目的は、
a)マトリックスを調製することができるモノマー又はオリゴマーを準備する工程;
b)モノマー又はオリゴマーの中に分散可能な粉末の形態であるか、モノマー又はオリゴマーの中に分散可能な液体中のナノ粒子の分散液の形態のいずれかで、光吸収剤をカプセル封入しているナノ粒子を調製する工程;
c)前記モノマー又はオリゴマーの重合を開始するための触媒を準備する工程;
d)ナノ粒子が分散されている重合性液体組成物を得るために、モノマー又はオリゴマーと、ナノ粒子と、触媒とを混合する工程;
e)任意選択的に重合性液体組成物を基材上に堆積させる工程;
f)重合性液体組成物を硬化させる工程;
を含む、本発明の眼鏡用レンズの作製方法である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】重合前(点線)及び重合後(実線)のポリマーを主体とするナノ粒子中に光吸収剤(OMNISTAB(商標)47、最大吸収波長424nm)を含む組成物の波長の関数としての透過率のグラフである。
【
図2】カプセル封入されていない光吸収剤(点線)及びポリマーを主体とするナノ粒子中にカプセル封入された光吸収剤(実線)を用いたレンズについての、波長の関数としての透過率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の眼鏡用レンズは、ポリマーマトリックスと、その中に分散されたナノ粒子とを含み、ナノ粒子は光吸収剤をカプセル封入している。
【0034】
好ましくは、光吸収剤はフォトクロミック染料ではない。
【0035】
ポリマーマトリックス(本明細書では「マトリックス」ともいう)は、前記モノマー又はオリゴマーの重合を開始するための触媒の存在下で、少なくとも1種のアリル又は非アリルモノマー又はオリゴマーを重合することによって得られる。
【0036】
ポリマーマトリックス及びその中に分散されているナノ粒子は、そのため、複合基材、すなわち最終的な眼鏡用レンズにおいてその前面及び後面に対応する2つの主表面を有する複合材料を一緒に形成する。
【0037】
ある実施形態では、眼鏡用レンズは、本質的にポリマーマトリックスとその中に分散されているナノ粒子とからなる。
【0038】
別の実施形態では、眼鏡用レンズは、ポリマーマトリックスとその中に分散されているナノ粒子とのコーティングがその上に堆積されている光学基材を含む。
【0039】
ポリマーマトリックスは、好ましくは透明マトリックスである。
【0040】
ポリマーマトリックスは、有利には、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(メチル(メタ)アクリレート)、セルローストリアセテート、又はこれらのコポリマーなどの熱可塑性樹脂から選択することができ、あるいは環状オレフィンコポリマー、アリルエステルのホモポリマー又はコポリマー、直鎖又は分岐の脂肪族又は芳香族ポリオールの炭酸アリルのホモポリマー又はコポリマー、(メタ)アクリル酸及びそのエステルのホモポリマー又はコポリマー、チオ(メタ)アクリル酸及びそのエステルのホモポリマー又はコポリマー、ウレタン及びチオウレタンのホモポリマー又はコポリマー、エポキシのホモポリマー又はコポリマー、スルフィドのホモポリマー又はコポリマー、ジスルフィドのホモポリマー又はコポリマー、エピスルフィドのホモポリマー又はコポリマー、チオール及びイソシアネートのホモポリマー又はコポリマーなどの熱硬化性樹脂、並びにこれらの組み合わせから選択される。
【0041】
光吸収剤は、好ましくは染料又は顔料などの着色剤、無色の光吸収剤、又はこれらの混合物から選択される。そのような光吸収剤の例は以降に示されている。
【0042】
光吸収剤のモル吸光係数は、その最大吸収で好ましくは5000より大きい。実際、高いモル吸光係数は、優れた減衰性能のため非常に低い濃度での光吸収剤の使用を可能にすることから好ましい。マトリックス中の光吸収剤の濃度はマトリックス中のナノ粒子の濃度及び光吸収剤におけるナノ粒子の担持の関数であるため、高いモル吸光係数は増加させることが困難な場合があるナノ粒子担持に関する制約を制限し、眼鏡用レンズのヘイズや機械的な弱さをもたらし得るナノ粒子の濃度を抑える。
【0043】
ある実施形態では、ナノ粒子は、内側から外側まで均質な組成を有し、その中に光吸収剤が均一に分布している。この特徴により、ナノ粒子全体の光学特性を正確に制御することができる。
【0044】
別の実施形態では、ナノ粒子は光吸収剤を含むコアとコアを囲むシェルとを有する。シェルは、好ましくはコアからマトリックスを分離するように選択される。そのため、シェルの性質は、好ましくは対応する粒子が中で使用されることが意図されているマトリックスと関連付けられる。
【0045】
ナノ粒子は、有機化合物を全く含まない外表面を示してもよい。
【0046】
ナノ粒子は、SiO2、TiO2、ZrO2、Al2O3、又はこれらの混合物などの無機酸化物を含んでいてもよい。
【0047】
ISO489:1999に従って測定されるナノ粒子の屈折率は、好ましくは1.47~1.74である。より好ましくは、ナノ粒子の屈折率はポリマーマトリックスの屈折率と同一である。実際、両方の屈折率が近いほど、組成物の全体の透過率に対するナノ粒子の影響が少なくなる。
【0048】
動的光散乱法に従って測定されるナノ粒子のサイズは、好ましくは1nm~10μm、より好ましくは10nm~5μmである。
【0049】
ナノ粒子中の光吸収剤の量は、ナノ粒子の総重量を基準として0.0001~90重量%、特には0.01~50重量%、より具体的には0.1~10重量%であってもよい。
【0050】
ポリマーマトリックス中のナノ粒子の量は、ポリマーマトリックスの重量を基準として0.01~2重量%、好ましくは0.05~1重量%であってもよい。
【0051】
本発明の前記マトリックスを生成するために使用される重合性液体組成物(以降「重合性組成物」という)は、モノマー又はオリゴマーと、触媒と、光吸収剤を含むナノ粒子とを含有する。前記モノマー又はオリゴマーは、アリル化合物又は非アリル化合物のいずれかであってもよい。
【0052】
本発明による組成物の中に含まれるアリルモノマー又はアリルオリゴマーは、アリル基を含む化合物である。
【0053】
好適なアリル化合物の例としては、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、エチレングリコールビス(アリルカーボネート)、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)のオリゴマー、エチレングリコールビス(アリルカーボネート)のオリゴマー、ビスフェノールAビス(アリルカーボネート)、ジアリルフタレート類(ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、及びジアリルテレフタレート等)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
好適な非アリル化合物の例としては、アクリル基又はメタクリル基を有するアクリルモノマーとして知られる熱硬化性材料が挙げられる。(メタ)アクリレートは、一官能性(メタ)アクリレート、又は2~6個の(メタ)アクリル基を有する多官能性(メタ)アクリレート、又はこれらの混合物であってもよい。限定するものではないが、(メタ)アクリレートモノマーは以下から選択される:
・ アルキル(メタ)アクリレート、特には
-アダマンチン、ノルボルネン、イソボルネン、シクロペンタジエン、又はジシクロペンタジエンから誘導された(メタ)アクリレート、
-メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレートなどのC1~C4アルキル(メタ)アクリレート;
・ ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、又はフルオレン(メタ)アクリレートなどの芳香族(メタ)アクリレート;
・ ビスフェノールから、特にはビスフェノールAから誘導される(メタ)アクリレート;
・ ポリエトキシル化ビスフェノレートジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシル化フェノール(メタ)アクリレートなどのポリアルコキシル化芳香族(メタ)アクリレート;
・ ポリチオ(メタ)アクリレート;
・ アルキル(メタ)アクリル酸とポリオール又はエポキシとのエステル化生成物;
・ 並びにこれらの混合物。
【0055】
(メタ)アクリレートは、特にハロゲン置換基、エポキシ、チオエポキシ、ヒドロキシル、チオール、スルフィド、カーボネート、ウレタン、又はイソシアネート官能基で更に官能化されていてもよい。
【0056】
好適な非アリル化合物の他の例としては、ポリウレタン又はポリチオウレタンマトリックス、すなわち少なくとも2つのイソシアネート官能基を有するモノマー又はオリゴマーと少なくとも2つのアルコール、チオール、又はエピチオ官能基を有するモノマー又はオリゴマーとの混合物、を調製するために使用される熱硬化性材料が挙げられる。
【0057】
少なくとも2つのイソシアネート官能基を有するモノマー又はオリゴマーは、2,2’メチレンジフェニルジイソシアネート(2,2’MDI)、4,4’ジベンジルジイソシアネート(4,4’DBDI)、2,6トルエンジイソシアネート(2,6TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、4,4’メチレンジフェニルジイソシアネート(4,4’MDI)などの対称芳香族ジイソシアネート;又は2,4’メチレンジフェニルジイソシアネート(2,4’MDI)、2,4’ジベンジルジイソシアネート(2,4’DBDI)、2,4トルエンジイソシアネート(2,4TDI)などの非対称芳香族ジイソシアネート;又はイソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,5(又は2,6)-ビス(イソ-シアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(NDI)、又は4,4’ジイソシアナト-メチレンジシクロヘキサン(H12MDI)などの脂環式ジイソシアネート;又はヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネート;又はこれらの混合物から選択することができる。
【0058】
チオール官能基を有するモノマー又はオリゴマーは、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトアセテート、4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ビス[(2-メルカプトエチル)チオメチル]-1,4-ジチアン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアンウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアンウンデカン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアンウンデカン、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0059】
エピチオ官能基を有するモノマー又はオリゴマーは、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、及びビス[4-(β-エピチオプロピルチオ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(β-エピチオプロピルオキシ)シクロヘキシル]スルフィドから選択することができる。
【0060】
前記マトリックスを生成するために使用される重合性液体組成物は:
a)少なくとも1種のモノマー又はオリゴマー、
b)前記モノマー又はオリゴマーの重合を開始するための少なくとも1種の触媒;
c)前記モノマー又はオリゴマー中に分散されているナノ粒子に含まれる少なくとも1種の光吸収剤;
を含有する。
【0061】
モノマー又はオリゴマーがアリル型である場合、本発明によるマトリックスを生成するために使用される重合性組成物中の前記アリルモノマー又はオリゴマーの量は、組成物の総重量を基準として、20~99重量%、特には50~99重量%、より具体的には80~98重量%、更に具体的には90~97重量%であってもよい。特に、マトリックスを生成するために使用される重合性組成物は、組成物の総重量を基準として、20~99重量%、特には50~99重量%、より具体的には80~98重量%、更に具体的には90~97重量%のジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)のオリゴマー、又はこれらの混合物を含有していてもよい。
【0062】
特定の実施形態によれば、触媒はジイソプロピルペルオキシジカーボネート(IPP)である。
【0063】
本発明による重合性組成物の中の触媒の量は、組成物の総重量を基準として、1.0~5.0質量%、特には2.5~4.5質量%、より具体的には3.0~4.0質量%であってもよい。
【0064】
マトリックスを生成するために使用される重合性組成物は、上述したアリルモノマー又はオリゴマーと重合することができる第2のモノマー又はオリゴマーも含有していてもよい。好適な第2のモノマーの例としては:スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、及びベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルキルモノ(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリルオキシプロパン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリルオキシジエトキシ)フェニル]プロパン、及び2,2-ビス[4-((メタ)-アクリルオキシポリエトキシ)フェニル]プロパンなどのジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びテトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレートなどのトリ(メタ)アクリレート;テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレートなどのテトラ(メタ)アクリレート;が挙げられる。これらのモノマーは、単独で使用されても2種以上の組み合わせで使用されてもよい。上の記載において、「(メタ)アクリレート」は「メタクリレート」又は「アクリレート」を意味し、「(メタ)アクリルオキシ」は「メタクリルオキシ」又は「アクリルオキシ」を意味する。
【0065】
本発明によるマトリックスを生成するために使用される重合性組成物中の第2のモノマー又はオリゴマーの量は、組成物の総重量を基準として、1~80重量%、特には1~50重量%、より具体的には2~20重量%、更に具体的には3~10重量%であってもよい。
【0066】
モノマー又はオリゴマーが(メタ)アクリル型のものである場合、本発明によるマトリックスを生成するために使用される重合性組成物中の前記(メタ)アクリルモノマー又はオリゴマーの量は、組成物の総重量を基準として、20~99重量%、特には50~99重量%、より具体的には80~98重量%、更に具体的には90~97重量%である。
【0067】
(メタ)アクリルのモノマーの例は、上で定義したアルキルモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、又はテトラ(メタ)アクリレートである。これらのモノマーは、単独で使用されても2種以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0068】
マトリックスを生成するために使用される重合性組成物は、上述した(メタ)アクリルモノマー又はオリゴマーと重合することができる第2のモノマー又はオリゴマーも含有していてもよい。好適な第2のモノマーの例としては、スチレンなどの芳香族ビニル化合物が挙げられる。これらのモノマーは単独で使用されても2種以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0069】
本発明によるマトリックスを生成するために使用される重合性組成物中の第2のモノマー又はオリゴマーの量は、組成物の総重量を基準として、1~80重量%、特には1~50重量%、より具体的には2~20重量%、更に具体的には3~10重量%であってもよい。
【0070】
本発明によるマトリックスがポリウレタン又はポリチオウレタン型のものである場合、少なくとも2つのイソシアネート官能基を有するモノマー又はオリゴマーと、少なくとも2つのアルコール、チオール、又はエピチオ官能基を有するモノマー又はオリゴマーとは、好ましくは全ての重合性官能基が完全に反応するような化学量論比で選択される。
【0071】
本発明による組成物の中に含まれる触媒は、例えば有機過酸化物、有機アゾ化合物、有機スズ化合物、及びこれらの混合物などの、モノマーの重合を開始させるのに適した触媒である。
【0072】
好適な有機過酸化物の例としては、ジイソプロピルペルオキシド及びジ-t-ブチルペルオキシドなどのジアルキルペルオキシド;メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソプロピルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、及びシクロヘキサンペルオキシド等のケトンペルオキシド;ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルペルオキシジカーボネート、及びイソプロピル-sec-ブチルペルオキシジカーボネートなどのペルオキシジカーボネート;t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート及びt-ヘキシルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート等のペルオキシエステル;ベンゾイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、及びラウロイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド;2,2-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、及び1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサンなどのペルオキシケタール;及びこれらの混合物が挙げられる。
【0073】
好適な有機アゾ化合物の例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0074】
好適な有機スズ化合物の例は、ジメチルスズクロリド、ジブチルスズクロリド、及びこれらの混合物である。
【0075】
本発明による組成物中に分散されているナノ粒子に含まれる光吸収剤は、好ましくは紫外線、可視光、及び/又は近赤外光を吸収することができる化合物である。
【0076】
特に、光吸収剤は、染料又は顔料などの着色剤;無色の光吸収剤;及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。染料、顔料、及び着色剤の好適な例は、アゾ又はローダミン又はシアニン又はポリメチン又はメロシアニン又はフルオレセイン又はピリリウム又はポルフィリン又はフタロシアニン又はペリレン又はクマリン又はアクリジン又はインドレニン又はインドール-2-イリデン又はベンズアントロン又はアントラピリミジン又はアントラピリドン又はベンゾトリアゾール又はベンゾフェノン又はアントラキノン又はトリアジン又はオキサラニリド族に属する化合物;希土類クリプテート又はキレートなどの金属錯体;アルミン酸塩、ケイ酸塩、及びアルミノケイ酸塩である。
【0077】
特定の実施形態では、着色剤及び無色の光吸収剤は青色光吸収剤である。すなわち、これらは380~500nmの青紫帯域の可視光を吸収する。この吸収は特異的であってもよく、選択的な吸収剤は380~500nmの帯域に吸収ピークを有する。この吸収は非特異的であってもよいが、紫外線吸収剤の幅広い吸収帯の副作用と関連付けられる。
【0078】
光吸収剤が青色光吸収剤である場合、得られる眼鏡用レンズは、特定の範囲の青色光、特に420nm~450nmの範囲にわたる平均光透過率により特徴付けることができる。好ましくは、青色光吸収剤は、本発明の重合性組成物から得られる眼鏡用レンズが420nm~450nmの範囲で85%未満、より好ましくは75%未満の平均光透過率(以降TB%)となるように選択される。
【0079】
特定の実施形態によれば、本発明による組成物中に含まれる青色光吸収剤は、メタロポルフィリン、特には疎水性メタロポルフィリンである。
【0080】
別の実施形態によれば、本発明による組成物中に含まれる青色光吸収剤は、オーラミンO;クマリン343;クマリン314;プロフラビン;ニトロベンゾオキサジアゾール;ルシファーイエローCH;9,10ビス(フェニルエチニル)アントラセン;クロロフィルa;クロロフィルb;4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(4-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン;2-[4-(ジメチルアミノ)スチリル]-1-メチルピリジニウムヨージド、3,3’-ジエチルオキサカルボシアニンヨージド、ルテイン、ゼアキサンチン、β-カロテン又はリコペン又はペリレン;及びこれらの混合物である。
【0081】
別の実施形態によれば、本発明による組成物の中に含まれる青色光吸収剤はポルフィリン又はその誘導体である。ポルフィリンのいくつかの例としては、5,10,15,20-テトラキス(4-スルホナトフェニル)ポルフィリンナトリウム塩錯体;5,10,15,20-テトラキス(N-アルキル-4-ピリジル)ポルフィリン錯体;5,10,15,20-テトラキス(N-アルキル-3-ピリジル)ポルフィリン金属錯体、及び5,10,15,20-テトラキス(N-アルキル-2-ピリジル)ポルフィリン錯体、並びにこれらの混合物が挙げられ、これらの中のアルキルは、メチル、エチル、ブチル、及び/又はプロピルから選択される。全てのこれらのポルフィリンは非常に優れた水溶性を示し、300℃まで安定である。ポルフィリンの他の例としては、ジプロトン化テトラフェニルポルフィリン、マグネシウムオクタエチルポルフィリン、マグネシウムテトラメシチルポルフィリン、テトラキス(2,6-ジクロロフェニル)ポルフィリン、テトラキス(o-アミノフェニル)ポルフィリン、テトラメシチルポルフィリン、亜鉛テトラメシチルポルフィリン、亜鉛テトラフェニルポルフィリン、Mg(II)メソ-テトラ(4-スルホナトフェニル)ポルフィン四ナトリウム塩、マンガン(III)5,10,15,20-テトラ(4-ピリジル)-21H、23H-ポルフィリンクロリドテトラキス(メトクロリド)、5,10,15,20-テトラキス(4-スルホナトフェニル)-21H、23H-ポルフィンマンガン(III)クロリド、5,10,15,20-テトラキス(4-スルホナトフェニル)-ポルフィン-Cu(II)、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H、23H-ポルフィンマンガン(III)クロリド、亜鉛5,10,15,20-テトラ(4-ピリジル)-21H、23H-ポルフィンテトラキス(メトクロリド)、5,10,15,20-テトラキス(4-メトキシフェニル)-21H、23H-ポルフィンコバルト(II)、5,10,15,20-テトラキス(4-メトキシフェニル)-21H、23H-ポルフィン、5,10,15,20-テトラキス(4-メトキシフェニル)-21H、23H-ポルフィン鉄(III)クロリド、亜鉛5,10,15,20-テトラ(4-ピリジル)-21H、23H-ポルフィンテトラキス(メトクロリド)、5,10,15,20-テトラキス(1-メチル-4-ピリジニオ)ポルフィリンテトラ(p-トルエンスルホネート)、5,10,15,20-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)-21H、23H-ポルフィン、4,4’、4’’、4’’’-(ポルフィン-5,10,15,20-テトライル)テトラキス(安息香酸)が挙げられる。
【0082】
別の実施形態によれば、本発明による組成物の中に含まれる青色光吸収剤は金属錯体であり、その中の金属は、Cr(III)、Ag(II)、In(III)、Mg(II)、Mn(III)、Sn(IV)、Fe(III)、又はZn(II)であってもよい。特に、Cr(III)、Ag(II)、In(III)、Mn(III)、Sn(IV)、Fe(III)、又はZn(II)を主体とする金属錯体は、pH<6で金属を失わないことからこれらが酸の影響を受けにくくより安定な錯体を与えるという利点を有する。
【0083】
ある特定の実施形態では、着色剤及び無色の光吸収剤は紫外線吸収剤である。すなわちこれらは380nm未満の帯域の紫外光を吸収する。光吸収剤が紫外線吸収剤である場合、得られる眼鏡用レンズはUVカットを示す。「UVカット」とは、本明細書に記載の方法に従って測定される透過率が1%未満である最も高い波長を意味する。好ましくは、紫外線吸収剤は、本発明の重合性組成物から得られる眼鏡用レンズが少なくとも380nmでのUVカットを有するように選択される。
【0084】
特定の実施形態によれば、本発明による組成物の中に含まれる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、オキサラニリド、及びこれらの混合物である。
【0085】
ある特定の実施形態では、着色剤及び無色の光吸収剤は近赤外(NIR)吸収剤である。すなわち、これらは約780nm~約1400nmの帯域の赤外光を吸収する。特に、セミキノン又は二核混合原子価ルテニウム錯体が好適なNIR吸収剤である。
【0086】
ナノ粒子中の光吸収剤の量は、ナノ粒子の重量を基準として0.0001~90重量%、特には0.01~50重量%、より具体的には0.1~10重量%である。
【0087】
本発明によれば、光吸収剤は、本発明による組成物中に分散されているナノ粒子の中にカプセル封入される。すなわち、光吸収剤は前記ナノ粒子の中に含まれるかグラフト化される。
【0088】
ナノ粒子は、光吸収剤が中に貯蔵され保護される貯蔵器のように振る舞う。光吸収剤は、ナノ粒子中に均一に分散されてもよく、あるいはナノ粒子のコア中に局在していてもよい。光吸収剤は、ナノ粒子の表面又は空隙の内部に局在していてもよい。
【0089】
実際、本発明による組成物からの活性反応物、すなわちラジカル重合に関与するラジカルは、ナノ粒子の内部に拡散することができないであろう。光吸収剤がナノ粒子の表面又は空隙の中に位置する場合、活性反応物がそれらに到達する可能性があるものの、グラフト化された又は捕捉された添加剤の移動性が妨げられるため、反応の可能性が下がり、添加剤も保護される。
【0090】
本発明の文脈において、「ナノ粒子」という用語は、本明細書に開示の動的光散乱法により測定される、1nm~10μmの範囲、好ましくは10nm~5μmの範囲の、その最も長い方向で測定されるサイズを有する任意の形状の個別化された粒子を意味することが意図されている。
【0091】
本発明のナノ粒子は、ポリマーを主体とする(すなわちこれらがポリマーを含有する)ものであっても、あるいは無機物質を主体とする(すなわちこれらが無機酸化物を含有する)ものであってもよい。
【0092】
好ましい実施形態では、ナノ粒子の中に含まれるポリマー又は無機酸化物は透明な材料である。
【0093】
第1の実施形態によれば、本発明による組成物の中に分散されているナノ粒子はポリマーを含む。
【0094】
ポリマーを主体とするナノ粒子は、例えばラテックスナノ粒子、コアシェルナノ粒子、光吸収剤が上にグラフトされたナノ粒子、デンドリマーナノ粒子、120℃より高い融点を有するポリマーを含むナノ粒子などの様々な種類のものであってもよい。ポリマーを主体とするナノ粒子は、保護層で更に被覆されていてもよい。
【0095】
好ましくは、前記ポリマーを主体とするナノ粒子は、アクリルポリマー、ビニルポリマー、アリルポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択されたポリマーを含む。好ましくは、ポリマーを主体とするナノ粒子は、アクリルポリマー、より好ましくはメチルメタクリレートとエチレングリコールジメタクリレートとのコポリマーを含む。
【0096】
ポリマーを主体とするナノ粒子は、溶媒蒸発、ナノ析出、乳化重合、界面重合、噴霧乾燥、及びコアセルベーションによって調製することができる。好ましくは、ポリマーを主体とするナノ粒子は、ミニエマルション重合又はマイクロエマルション重合などの乳化重合によって調製される。
【0097】
光吸収剤を含有する、ポリマーを主体とするナノ粒子は、水などの溶媒;光吸収剤;アクリルモノマー、ビニルモノマー、アリルモノマー、及びこれらの混合物などのモノマー;有機アゾ化合物、ペルオキソ二硫酸塩、ペルオキシエステル、又はペルケタールなどの温和な触媒;少なくとも1種の界面活性剤、好ましくはドデシルスルホン酸ナトリウムなどのイオン性界面活性剤;並びに任意選択的な網状化剤:を混合することによる乳化重合によって調製することができる。イオン性界面活性剤の使用は、イオン反発により、重合中のモノマー液滴の合体及び重合後のナノ粒子の凝集を回避するのに有利に役立つ。温和な触媒の使用は、ペルオキシジカーボネートなどの強い触媒で生じる光吸収剤の分解を有利に防止する。網状化剤の使用は、ナノ粒子を有利に緻密化し、それにより光吸着添加剤のナノ粒子からの漏出を防止し、レンズの重合中のナノ粒子内部へのラジカルの移動を防止する。
【0098】
いくつかの実施形態では、光吸収剤はポリマーを主体とするナノ粒子内部で共重合可能である。「共重合可能」とは、光吸収剤が不飽和基又は官能基などの反応性基を含み、前記反応性基がポリマーを主体とするナノ粒子を調製するために使用される材料と共有結合を形成できることを意味する。
【0099】
第2の実施形態によれば、本発明による組成物中に分散されているナノ粒子は無機酸化物を含む。好ましくは、前記無機物を主体とするナノ粒子は、SiO2、TiO2、ZrO2、Al2O3、及びこれらの混合物からなる群から選択される無機酸化物を含む。
【0100】
無機物を主体とするナノ粒子は、Stoeber合成又は逆マイクロエマルションによって調製することができる。
【0101】
光吸収剤を含むシリカナノ粒子は、テトラエチルオルトシリケートと光吸収剤とをエタノールなどの低分子量アルコール及びアンモニアを含有する過剰の水の中で混合することによるStoeber合成によって調製することができる。Stoeber法では、光吸収剤は、シリカと共有結合を形成できるように、例えば従来のシラン、好ましくはアルコキシシランでシリル化できるように官能化されなければならない。Stoeber合成により、有利なことには制御可能なサイズの単分散SiO2粒子が得られる。
【0102】
光吸収剤を含有するシリカ又はシリカ-金属酸化物ナノ粒子は、シクロヘキサン及びn-ヘキサノールなどの油相;水;Triton X-100などの界面活性剤;光吸収剤;テトラエチルオルトシリケート、チタンアルコキシレート、及びアルミニウムアルコキシドなどの1種以上の無機酸化物前駆体;並びに水酸化ナトリウムなどのpH調整剤;を混合することによる、逆(油中水型)マイクロエマルションにより調製することができる。逆マイクロエマルション法では、Stoeber合成でカプセル封入されたものよりも多量の極性の光吸収剤を無機酸化物マトリックス中にカプセル封入することができる。カプセル化収率は非常に高く、そのため高価な光吸収剤の無駄遣いを回避することができる。更に、この方法により、有利なことには、特に逆マイクロエマルションの場合に、粒径を容易に制御することができる。加えて、この方法により、シリカナノ粒子中にTiO2、ZrO2、又はAl2O3を添加することができる。
【0103】
Stoeber合成及び逆(油中水型)マイクロエマルションによって得られる無機物を主体とするナノ粒子は、高度に網状化され、疎水性シリカ基で被覆されているため、光吸着剤のナノ粒子からの漏出が防止され、レンズの重合中のナノ粒子内部へのラジカルの移動が防止される。
【0104】
好ましい実施形態では、ナノ粒子の屈折率は1.47~1.56であり、好ましくは、ナノ粒子の屈折率は、ISO 489:1999に従って測定される重合したモノマー又はオリゴマーの屈折率と同一である。実際、ナノ粒子の屈折率が重合したモノマー又はオリゴマーの屈折率に近い場合、眼鏡用レンズはより少ない光散乱を示し、そのため光強度の減少及び/又はヘイズがより少ない。
【0105】
ポリマーを主体とするナノ粒子の屈折率は、ナノ粒子を調製するために使用されるモノマー又はモノマー混合物の種類に依存する。そのため、アリル系ナノ粒子の屈折率は1.5であり、アクリル系又はビニル系のナノ粒子の屈折率は、アクリルモノマー又はビニルモノマーを芳香族基含有モノマーと共重合することにより増加させることができる。
【0106】
無機物を主体とするナノ粒子の屈折率は、ナノ粒子を調製するために使用される無機酸化物又は無機酸化物の混合物の種類に依存する。そのため、SiO2ナノ粒子の屈折率は1.47~1.5であり、SiO2とTiO2との混合物、SiO2とZrO2との混合物、又はSiO2とAl2O3との混合物を含むナノ粒子の屈折率は、1.56に到達し得る。
【0107】
有利には、ナノ粒子は、動的光散乱法に従って測定される1nm~10μm、好ましくは10nm~5μmのサイズを示す。実際、ナノ粒子のサイズが10μm未満の場合、眼鏡用レンズはより少ない光散乱を示し、そのため光強度のより少ない低下を示す。そのようなナノ粒子は、マイクロエマルション重合によって、又はそれらのサイズを粉砕工程で小さくすることによって、直接得ることができる。
【0108】
組成物中のナノ粒子の量は、組成物の重量を基準として0.01~2重量%、好ましくは0.05~1重量%である。
【0109】
液体重合性組成物及び眼鏡用レンズの調製方法
本発明による眼鏡用レンズの作製を行うための方法は:
a)マトリックスを調製することができるモノマー又はオリゴマーを準備する工程;
b)モノマー又はオリゴマーの中に分散可能な粉末の形態であるか、モノマー又はオリゴマーの中に分散可能な液体中のナノ粒子の分散液の形態のいずれかで、光吸収剤をカプセル封入しているナノ粒子を調製する工程;
c)前記モノマー又はオリゴマーの重合を開始するための触媒を準備する工程;
d)ナノ粒子が分散されている重合性液体組成物を得るために、モノマー又はオリゴマーと、ナノ粒子と、触媒とを混合する工程;
e)任意選択的に重合性液体組成物を基材上に堆積させる工程;
f)重合性液体組成物を硬化させる工程;
を含む。
【0110】
好ましくは、硬化は熱硬化である。
【0111】
本明細書において、基材の表面上に堆積されるとされるコーティングは、(i)基材の上に位置する、(ii)基材と必ずしも接触しない、すなわち1つ以上の中間層が基材と対象の層との間に配置され得る、及び(iii)基材を必ずしも完全に被覆しない、コーティングとして定義される。
【0112】
コーティングは、湿式処理、気体処理、及びフィルム転写などの様々な方法により堆積又は形成することができる。
【0113】
好ましい実施形態によれば、組成物は均一になるまで撹拌され、その後硬化前に脱気及び/又は濾過されてもよい。
【0114】
好ましい実施形態によれば、ナノ粒子が液体中の分散液の形態で与えられる場合、分散液はモノマー又はオリゴマー内に分散可能なものであり、特には分散する液体は本発明によるマトリックスを生成するために使用されるモノマー又はオリゴマーである。
【0115】
上述した本発明の重合性組成物は、レンズを形成するための注型用のモールドに流し込まれ、40~130℃、特には75~105℃、又は特には100~150℃、又は特には45~95℃の温度で加熱することにより重合されてもよい。好ましい実施形態によれば、加熱は5~24時間、好ましくは7~22時間、より好ましくは15~20時間継続されてもよい。
【0116】
その後、注型用のモールドは分解することができ、レンズを水、エタノール、又はイソプロパノールで洗浄することができる。
【0117】
眼鏡用レンズは、その後、耐摩耗コーティング、反射防止コーティング、防汚コーティング、帯電防止コーティング、防曇コーティング、偏光コーティング、着色コーティング、及びフォトクロミックコーティングからなる群から選択される1つ以上の機能性コーティングで被覆されてもよい。
【0118】
本明細書では、眼鏡用レンズは、眼を保護する及び/又は視力を矯正するために眼鏡フレームに合うように設計されたレンズとして定義される。前記眼鏡用レンズは、非矯正用眼鏡レンズ(プラノレンズ又はアフォーカルレンズともいう)であっても矯正用眼鏡レンズであってもよい。矯正レンズは、単焦点、二焦点、三焦点、又は累進レンズであってもよい。
【0119】
ナノ粒子中に含まれる光吸収剤の使用
本発明は、モノマー又はオリゴマーの重合を開始するための触媒による前記光吸収剤の分解を防止するためにナノ粒子中に含まれている光吸収剤の使用にも関する。触媒による光吸収剤の分解の防止は、重合前の組成物の吸収スペクトルを重合後の眼鏡用レンズのものと比較することによって評価することができる。吸収スペクトルが光吸収剤の最大吸収波長で同じ透過率の低下を示す場合、光吸収剤は重合中に触媒によって分解されないとみなすことができる。
【0120】
好ましい実施形態によれば、ナノ粒子中に含まれる光吸収剤の使用は、硬化した眼鏡用レンズの黄変を防止する。実際、重合中の触媒による光吸収剤の分解は分解生成物を生成し、これはレンズの望ましくない黄変をもたらす。硬化した眼鏡用レンズの黄色度指数(YI)は、ASTM D-1925に従って測定することができる。
【0121】
以下の実施例により本発明をより詳しく説明するが、これらの実施例は純粋に例示を目的として与えられており、いかなる形でも本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【実施例】
【0122】
測定方法
以降の測定は、イソプロピルアルコールで洗浄された、中心の厚さが2mmのレンズに対して行う。
【0123】
420~450nmの範囲にわたっての平均光透過率(TB%)は、ISO 8980-3-2003に従って測定された透過率曲線から計算する。
【0124】
ナノ粒子のサイズは標準的な動的光散乱法によって測定する。この手法は、ランダムなブラウン運動を行っているナノ粒子の懸濁液からの散乱光の強度の時間依存ゆらぎを測定する。これらの強度ゆらぎの分析によって拡散係数を決定することができ、これは、ストークス-アインシュタインの関係を使用して粒子サイズとして表すことができる。
【0125】
ヘイズ値は、ASTM D1003-00の方法に従って、BYK-GardnerのHaze-Guard Plus(著作権)ヘイズメーター(色差計)を使用する光透過測定により測定する。本出願における全ての「ヘイズ」値への言及は、この規格によるものである。装置は最初に製造元の指示に従って校正する。次に、予め校正した計測器の透過光線上に試料を配置し、ヘイズ値を3つの異なる試験片位置から記録して平均化する。
【0126】
本発明のレンズの比色係数は、15°の入射角での標準光源D 65及び観察者(10°の角度)を考慮して、国際比色系CIE L*a*b*に従って測定する。すなわち380~780nmの間で計算する。
【0127】
材料
実施例では次の化合物を使用する:
【0128】
【0129】
実施例1:光吸収剤を含有する、ポリマーを主体とするナノ粒子のミニエマルション重合による調製
メチルメタクリレートとエチレングリコールジメタクリレートとから50:50の重量比でモノマーブレンド物(5g)を調製し、このモノマーブレンド物の中にOMNISTAB(商標)47(10mg、Deltachem Co.Ltdから入手可能)を溶解させる。このブレンド物を、窒素雰囲気下、80℃でSDS(0.5g)及びAIVN(0.05g)を含有する50mlの水溶液に滴下する。モノマーブレンド物の添加が完了した後、混合物を更に2時間、80℃で更に混合し、次いで遠心分離し、エタノールで洗浄し、乾燥する。ナノ粒子は、200nm~1000nmの範囲のサイズ及び1.5の屈折率を有する。
【0130】
ナノ粒子をCR39(登録商標)(モノマー中に12.5重量%のナノ粒子)中に分散させてマスターバッチ(マスター1)を調製する。
【0131】
実施例2:光吸収剤を含有する、無機物を主体とするナノ粒子(屈折率約1.47)の逆マイクロエマルションによる調製
実施例2a:シクロヘキサン(7.5ml)、n-ヘキサノール(1.8ml)、Triton X-100(1.5g)、OMNISTAB(商標)47(40mg、Deltachem Co;Ltdから入手可能)、TEOS(0.1ml)、及び水酸化アンモニウム30%(0.06ml)の混合物を24時間混合する。その後、アセトンを添加し、粒子を遠心分離によって回収し、エタノールで洗浄して乾燥させる。ナノ粒子は、100nmを中心とする単分散のサイズ、及び約1.47の沈降シリカに対応する屈折率を有する。
【0132】
ナノ粒子をCR-39(登録商標)(モノマー中に12.5重量%のナノ粒子)中に分散させてマスターバッチ(マスター2a)を調製する。
【0133】
実施例2b:7.56gのTriton X-100、5.86gのヘキサン-1-オール、23.46gのシクロヘキサン、1.6mlの脱イオン水、0.32mlのメチレンブルー溶液(CAS:61-73-4、1重量%水溶液、光吸収剤)、0.4mlのTEOS、及び0.24mlの30%水酸化アンモニウム水溶液を混合し、室温で24時間撹拌する。
【0134】
24時間後、得られた溶液に1体積のアセトン(約50ml)を添加し、粒子を遠心分離により回収し、アセトン又は水で洗浄し、室温で一晩乾燥し、80℃のオーブン中で3時間アニールする。
【0135】
その後、得られた0.2gの乾燥した無機ナノ粒子を、約20mlのアセトン及び研磨剤としての1mmのサイズのジルコニウムビーズの中で、磁気撹拌下で再分散させる。混合物を最後に濾過してジルコニウムビーズを除去する。その後、99.8gのCR-39(登録商標)を添加し、アセトンを真空下で除去してマスターバッチ(マスター2b)を得る。
【0136】
実施例2c:7.56gのTriton X-100、30mlのヘキサン-1-オール、7.2mlのシクロヘキサン、1.6mlの脱イオン水、0.32mlのメチレンブルー溶液(CAS:61-73-4、1重量%水溶液、光吸収剤)、0.4mlのTEOS、及び0.24mlの30%水酸化アンモニウム水溶液を混合し、室温で24時間撹拌する。
【0137】
24時間後、得られた溶液に1体積のアセトン(約50ml)を添加し、粒子を遠心分離により回収し、アセトン又は水で洗浄し、室温で一晩乾燥する。ナノ粒子は、100nmの単分散のサイズ、及び約1.47の沈降シリカに対応する屈折率を有する。
【0138】
ナノ粒子を実施例2bの通りにCR-39(登録商標)中に分散させてマスターバッチ(マスター2c)を調製する。
【0139】
実施例2d:1.6mlの代わりに1.76mlの脱イオン水を使用し、7.54gの代わりに7.4gのTriton X-100を使用したことを除いては実施例2cを再現した(マスター2d)。ナノ粒子は、80nmの単分散のサイズを有する。
【0140】
実施例2e:1.6mlの代わりに2.16mlの脱イオン水を使用し、7.54gの代わりに7gのTriton X-100を使用したことを除いては実施例2cを再現した(マスター2e)。ナノ粒子は、50nmの単分散のサイズを有する。
【0141】
実施例2c~2eは、脱イオン水とTriton X-100との間の比率がナノ粒子の最終的なサイズを規定することを示している:比率が大きいほど、ナノ粒子は小さくなる。
【0142】
実施例2f:1.6mlの代わりに1.44mlの脱イオン水を使用し、7.54gの代わりに7gのTriton X-100を使用したことを除いては実施例2cを再現した(マスター2f)。更に、0.16mlの5,10,15,20-テトラキス(4-スルホナトフェニル)-ポルフィン-Cu(II)(TSPP-Cu(II))溶液(脱イオン水の中で0.01M)を添加した。ナノ粒子は100nmの単分散のサイズを有する。
【0143】
下の表Aにまとめられているように、同じ調製手順で他の光吸収剤を使用した。
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
実施例3:光吸収剤を含有する、無機物を主体とするナノ粒子(屈折率1.5超)の逆マイクロエマルションによる調製
実施例3a:実施例2cで得たナノ粒子を36.5重量%のテトラブチルオルトチタネート(TBOT)の水溶液の中に入れる。
【0148】
実施例2bで得た1gのナノ粒子を、20体積の水:1体積のエタノールの混合物25mlの中に分散させる。その後、1.85mlのHCl(37重量%水溶液)を混合物に添加する。反応を磁気撹拌子により15分間撹拌する。その後、9.1gのテトラブチルオルトチタネート(TBOT)を滴下し、混合物を室温で3時間連続的に撹拌する。
【0149】
チタニアの薄層がシリカを主体とするナノ粒子上に堆積され、コアシェルナノ粒子が生成する。これらのナノ粒子をエタノールで洗浄し、室温で乾燥し、次いで180℃で2時間アニールする。これは100nmの単分散のサイズを有し、約1.54の屈折率を有する。
【0150】
実施例2bの通りであるがアクリルモノマーとしてCR-39(登録商標)の代わりにSK-1.60光学樹脂モノマーを使用してマスターバッチを調製する(マスター3a)。
【0151】
実施例3b:15.0gのTBOTを添加したこと以外は3aを再現する。ナノ粒子は100nmの単分散のサイズを有し、1.55より大きい屈折率を有する。
【0152】
CR-39(登録商標)の代わりに4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオールを使用すること以外は実施例2bの通りにマスターバッチを調製する(マスター3b)。
【0153】
実施例4:光吸収剤を含有する、無機物を主体とするナノ粒子(屈折率約1.47)のStoeber法による調製
384mLのメタノールを1000mlの瓶に入れる。次いで、96mlのNH4OH(30重量%水溶液)及び6.4mlのメチレンブルー(CAS:61-73-4、2重量%の脱イオン水溶液)を添加する。混合物を400rpmで10分間撹拌する(磁気撹拌)。その後、3.2mlのTEOSを滴下し、800rpmで2時間撹拌する。
【0154】
反応が完了した後、粒子サイズを動的光散乱により確認する。平均粒子サイズは約200~230nm(単分散)である。
【0155】
メタノールの体積を500から100mlに減らすために、混合物を丸底フラスコに移して1時間留去し、次いで4000rpmで45分間遠心分離する。上清みを除去し、ナノ粒子をメタノール中の濃縮分散液として回収する。
【0156】
その後、混合物を次の手順で2回洗浄する:50mlのメタノールを超音波をかけながら添加して粒子を再分散させる。ナノ粒子を4000rpmで30分間遠心分離することにより回収する。
【0157】
ナノ粒子を周囲温度で一晩空気乾燥させ、次いでめのう乳鉢で粉砕する。その後、ナノ粒子を180℃で2時間アニールする。
【0158】
250mlの瓶の中で0.3gのナノ粒子を99.7gのCR-39(登録商標)モノマーと混合する。マスターバッチを30分間超音波処理する。4000rpmで30分間遠心分離を行って凝集粒子を除去する。上清みを回収してマスターバッチ(マスター4)を得る。
【0159】
実施例5:光吸収剤を含有する、無機物を主体とするナノ粒子(屈折率1.5超)のStoeber法による調製
実施例4で得たナノ粒子を36.5重量%のテトラブチルオルトチタネート(TBOT)の水溶液の中に入れる。
【0160】
実施例4で得た1gのナノ粒子を、20体積の水:1体積のエタノールの混合物25mlの中に分散させる。その後、1.85mlのHCl(37重量%水溶液)を混合物に添加する。反応を磁気撹拌子により15分間撹拌する。その後、9.1gのテトラブチルオルトチタネート(TBOT)を滴下し、混合物を室温で3時間連続的に撹拌する。
【0161】
チタニアの薄層がシリカを主体とするナノ粒子上に堆積され、コアシェルナノ粒子が生成する。これらのナノ粒子をエタノールで洗浄し、室温で乾燥し、次いで180℃で2時間アニールする。これは200~230nmの単分散のサイズを有し、約1.54の屈折率を有する。
【0162】
実施例4の通りであるがアクリルモノマーとしてCR-39(登録商標)の代わりにSK-1.60光学樹脂モノマーを使用してマスターバッチを調製する(マスター5)。
【0163】
実施例6:本発明による眼鏡用レンズの作製
【0164】
【0165】
表1の成分を室温でビーカーの中に量り入れて混合することによりモノマーブレンド物を製造する。CR39(登録商標)とCR39E(登録商標)を最初に混合する。均一になった後、マスターバッチ中のナノ粒子を添加し、その後完全に分散するまでビーカーの中身を再度混合する。最後に、IPPを添加し、混合物を十分に攪拌し、その後脱気及び濾過する。
【0166】
その後、シリンジを使用して直径71mmのガラス製バイプラノモールドに組成物を充填し、温度を45℃から85℃に15時間で徐々に上昇させ、その後85℃で5時間一定に保つ制御された電気オーブンの中で重合を行った。その後モールドを分解し、得られたレンズはその中心で2mmの厚さを有していた。
【0167】
図1に示されているように、重合前のマスター1を含む組成物の透過スペクトル及び重合後のレンズの透過スペクトルは、光吸収剤の最大吸収波長(424nm)で同じ透過率の低下を示す。したがって、本発明による眼鏡用レンズでは、染料は重合中にIPP触媒によって分解されなかった。光吸収剤の吸収領域外での両方のスペクトルの違いは、重合中に起こる化学変換(触媒の脱離、不飽和基の反応等)と関連することは自明である。
【0168】
図2に示されているように、得られた眼鏡用レンズは420nm~450nmの範囲で77%の平均透過率TB%を有する。対照的に、カプセル封入されていない染料を含む同じ眼鏡用レンズは、91%の平均透過率TB%を有する。そのため、本発明によるカプセル封入された染料を含む眼鏡用レンズは、カプセル封入されていない染料を含む対応する眼鏡用レンズよりも優れた青色光の吸収を示す。
【0169】
レンズのヘイズ(光拡散)、粒子サイズ、及び残留色(CIE Labモデルに従ってb*により測定)に対する、光吸収剤としてのメチレンブルーの影響を、様々なナノ粒子を用いて評価した。メチレンブルー水溶液の濃度を0.2%ずつ0.4%から1%の間で変化させたことを除いては実施例2bの条件を再現することで、異なる濃度のメチレンブルーを有するナノ粒子を得る。
【0170】
ナノ粒子中のメチレンブルー濃度の増加は、同じ着色効果を得るために必要とされる粒子がより少ないことから、ヘイズについて肯定的な傾向を示した。1%のメチレンブルー溶液を用いて得た粒子では、平均透過率TB%は、ヘイズ性能を低下させることなしに、0.4%のメチレンブルー溶液を用いて得た粒子と比較して0.5から0.3に低下した。
【0171】
メチレンブルーの濃度を増加させると、粒子サイズも増加した。0.4%では、測定された粒子サイズは約80nmである一方で、0.6%では約90nmであり、0.8%と1%の両方では95nmであった。
【0172】
測定から、脱イオン水で洗浄したナノ粒子によって生じたヘイズが、同様の残留色について、アセトンで洗浄したナノ粒子のものよりも約20~40%低いことも示された(Lab系におけるb*の減少により測定)。
【0173】
【0174】
表2の成分を室温でビーカーの中に量り入れて混合することによりモノマーブレンド物を製造する。均一になった後、混合物を脱気及び濾過する。
【0175】
シリンジを使用して直径71mmのバイプラノモールドに組成物を充填する。重合は、温度を25℃から95℃まで16.5時間で徐々に上昇させ、次いで95℃で2時間一定に保つ制御された電子オーブンの中で行われる。その後モールドを分解し、中心で2mmの厚さを有する透明なレンズを得る。
【0176】
【0177】
表3の成分を以下の方法で秤量及び混合することによりモノマーブレンド物を製造する。
【0178】
2,5(又は2,6)-ビス(イソ-シアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、DMC、及びZelec UN(登録商標)を、最初に室温で1時間、真空下で混合する。均一になった後、混合物を5℃まで冷却し、次いでN2ガスを瓶の内部に移して真空を開放する。その後、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール、及びマスター3bを添加し、次いで真空下、混合物を5℃で完全に分散するまで撹拌する。N2置換により真空を開放する。
【0179】
シリンジを使用して直径71mmのバイプラノモールドにモノマー混合物を充填する。重合サイクルを15℃で開始し、その後温度を16時間で130℃まで徐々に上昇させ、3時間一定に保持する。その後モールドを分解し、中心で2mmの厚さを有する透明なレンズを得る。