IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーダブリュアイ(シャンハイ)カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7498242流体で浸されたボールねじを有する圧力平衡化PSUピストンを備えるブレーキ・バイ・ワイヤ・システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】流体で浸されたボールねじを有する圧力平衡化PSUピストンを備えるブレーキ・バイ・ワイヤ・システム
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/138 20060101AFI20240604BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20240604BHJP
   B60T 13/68 20060101ALI20240604BHJP
   B60T 11/16 20060101ALI20240604BHJP
   B60T 13/122 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B60T13/138 A
B60T8/17 B
B60T13/68
B60T11/16 B
B60T13/122 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022166667
(22)【出願日】2022-10-18
(65)【公開番号】P2023060842
(43)【公開日】2023-04-28
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】63/257097
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】202211204184.4
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513311479
【氏名又は名称】ビーダブリュアイ(シャンハイ)カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BWI(SHANGHAI)CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100175617
【弁理士】
【氏名又は名称】三崎 正輝
(74)【代理人】
【識別番号】100219117
【弁理士】
【氏名又は名称】金 亨泰
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ シャオシー
(72)【発明者】
【氏名】パスカル シュメット
(72)【発明者】
【氏名】デービッド フレドリック ロイター
(72)【発明者】
【氏名】ルオ ドンチアン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ノーバート ボージメンケ
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0189542(US,A1)
【文献】特開2017-052318(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0334148(US,A1)
【文献】特表2022-520392(JP,A)
【文献】国際公開第2020/164748(WO,A1)
【文献】特開2003-137084(JP,A)
【文献】特開平05-065060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/138
B60T 8/17
B60T 13/68
B60T 11/16
B60T 13/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一回路マスタシリンダ(MC)(30)であって、第一MC流体通路(34)に流体連通状態で連結されるとともに、該単一回路マスタシリンダ(MC)(30)に連結されるブレーキペダル(36)への押圧力に応じて前記第一MC流体通路(34)に流体を供給するよう構成される単一回路マスタシリンダ(MC)と、
圧力供給ユニット(PSU)アセンブリ(40)であって、
ボールねじアクチュエータ(118)に連結される電気モータ(42)と、
前記電気モータ(42)とは反対側に末端部(130)を有するピストン用内空部(102)を形成するPSU筐体(100)と、
前記ピストン用内空部内(102)に配置されるとともに前記ボールねじアクチュエータ(118)によって前記ピストン用内空部内を摺動可能であり前記ピストン用内空部(102)を第一チャンバ(46)と第二チャンバ(48)とに分割するPSUピストン(45)であって、前記第一チャンバ(46)および前記第二チャンバ(48)がそれぞれ液圧流体を収容しているPSUピストン(45)と、
を有するPSUアセンブリ(40)と、
を備える電気・液圧制動システムであって、
前記PSUアセンブリ(40)の前記第一チャンバ(46)から少なくとも一の車輪制動装置(22a,22b,22c,22d)への流体連通を行うPSU流体通路(50)と、
前記PSUアセンブリ(40)の前記第二チャンバ(48)と流体連通状態にある補充流体通路(54)と、
前記補充流体通路(54)から前記PSU流体通路(50)への流体の流れを可能にするとともに反対方向の流体の流れを遮断するよう構成される逆止弁(58)と、
を更に備え、
前記ボールねじアクチュエータ(118)は、それぞれが前記ピストン用内空部(102)に配置されるとともに前記液圧流体に浸漬されている複数のボールベアリング(124)を有するアクチュエータ・ナット・アセンブリ(120,124)を備える
電気・液圧制動システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電気・液圧制動システムであって、
前記PSUピストン(45)はカップ形状であり、
前記アクチュエータ・ナット(120)および前記複数のボールベアリング(124)は、それぞれ、前記カップ形状の前記PSUピストン(45)内に配置される電気・液圧制動システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気・液圧制動システムであって、前記PSUアセンブリ(40)は、さらに、前記電気モータ(42)によって駆動されるとともに、流体が前記ピストン用内空部(102)から漏出するのを防止するための環状封止器(128)を貫通するよう延設されるスピンドル(122)を備える電気・液圧制動システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電気・液圧制動システムであって、さらに、
前記PSUアセンブリ(40)から少なくとも一の車輪制動装置(22a,22b,22c,22d)へと流体を送出するよう構成される少なくとも一の制動回路(74,76)と、
前記少なくとも一の制動回路(74,76)と前記少なくとも一の車輪制動装置(22a,22b,22c,22d)との間の流体の流れを制御するための印加弁および放出弁のうちの少なくとも一方を有する制御弁マニホールド(78)と、
を備えており、
前記圧力供給ユニット・アセンブリ(40)は、流体を排出するよう構成される少なくとも一のPSUポート(132,134)を有し、
前記PSUポート(132,134)は、前記少なくとも一の制動回路(74,76)を介して前記制御弁マニホールド(78)と、間に被作動弁が接続されることなく、流体連通状態にある電気・液圧制動システム。
【請求項5】
請求項1または2に記載の電気・液圧制動システムであって、さらに、ペダル感覚エミュレータ(PFE)(39)であって、PFE内空部内を摺動可能であり上部チャンバを下部チャンバから分離するPFEピストンを有するPFEを備えており、
前記PFE(39)の圧縮に応じて前記PFE(39)の前記下部チャンバから前記PSUアセンブリ(40)の前記第二チャンバ(48)へと流体を送出するよう、前記PFE(39)の前記下部チャンバが前記PSUアセンブリ(40)の前記第二チャンバ(48)へと流体連通状態で連結されており、
前記マスタシリンダ(30)から前記PFE(39)の前記上部チャンバへの流体経路を形成するよう、前記第一MC流体通路(34)が前記PFE(39)の前記上部チャンバに流体連通状態で連結されている電気・液圧制動システム。
【請求項6】
請求項に記載の電気・液圧制動システムであって、さらに、
液圧流体を収容するとともに該液圧流体を前記マスタシリンダ(30)へと供給する流体貯留器(24)と、
前記流体貯留器(24)と直接流体連通状態にある戻り流体通路(52)と、
前記ピストン用内空部(102)の前記第二チャンバ(48)および前記PFE(39)の前記下部チャンバのそれぞれと流体連通状態にある中間流体通路(64)と、
前記戻り流体通路(52)と前記中間流体通路(64)との間の流体連通状態を選択的に制御するPSU貯留器分離弁(62)と、
を備える電気・液圧制動システム。
【請求項7】
請求項に記載の電気・液圧制動システムであって、さらに、前記ピストン用内空部(102)の前記第二チャンバ(48)と前記中間流体通路(64)との間に配置されるとともに、前記ピストン用内空部(102)の前記第二チャンバ(48)から前記中間流体通路(64)への流体の流れを可能とし反対方向の流体の流れを遮断するよう構成される逆止弁(66)を備える電気・液圧制動システム。
【請求項8】
請求項に記載の電気・液圧制動システムであって、さらに、
前記PFE(39)の前記下部チャンバと前記中間流体通路(64)との間に配置されるとともに、前記PFE(39)の前記下部チャンバから前記中間流体通路(64)への流体の流れを可能とし反対方向の流体の流れを遮断するよう構成される逆止弁(70)、または
前記PFE(39)の前記下部チャンバと前記中間流体通路(64)と間の流体連通状態を選択的に制御するPFE分離バルブ(212)
を備える電気・液圧制動システム。
【請求項9】
請求項1または2に記載の電気・液圧制動システムであって、さらに、
それぞれが前記PSUアセンブリ(40)から少なくとも一の対応する車輪制動装置(22a,22b,22c,22d)へと流体を送出するよう構成される第一制動回路(74)および第二制動回路(76)と、
前記PSUアセンブリ(40)から前記第一制動回路(74)への流体連通を行うPSU流体通路(50)と、
前記PSU流体通路(50)と前記第二制動回路(76)と間の流体連通状態を選択的に制御する制動回路分離弁(312)と、
を備える電気・液圧制動システム。
【請求項10】
請求項1または2に記載の電気・液圧制動システムであって、さらに、
前記PSUアセンブリ(40)から少なくとも一の車輪制動装置(22a,22b,22c,22d)へと流体を送出するよう構成されるPSU流体通路(50)と、
前記PSU流体通路(50)と前記少なくとも一の車輪制動装置(22a,22b,22c,22d)との間の流体の流れを制御するための印加弁および放出弁のうちの少なくとも一方を有する制御弁マニホールド(78)と、
前記PSU流体通路(50)と前記制御弁マニホールド(78)との間に配置されるとともに、前記PSU流体通路と前記制御弁マニホールドとの間の差動圧力が所定量を超える場合にのみ前記PSU流体通路と前記制御弁マニホールドとの間の対向する二つの方向の流体の流れを可能とするよう構成される双方向性逆止弁(82)と、
を備える電気・液圧制動システム。
【請求項11】
請求項1または2に記載の電気・液圧制動システムであって、さらに、
それぞれが前記PSUアセンブリ(40)から少なくとも一の対応する車輪制動装置(22a,22b,22c,22d)へと流体を送出するよう構成される第一制動回路(74)および第二制動回路(76)と、
前記PSUアセンブリ(40)から前記第一制動回路(74)と前記第二制動回路(76)とへの流体連通を行うPSU流体通路(50)と、
前記第一制動回路(74)を通る流体の流れのみを制限するよう構成される制動回路平衡化孔(314)と、
を備える電気・液圧制動システム。
【請求項12】
請求項1または2に記載の電気・液圧制動システムであって、さらに、
上面(171,173,175)と、前記上面(171,173,175)とは反対側にある底面とを有するとともに、前記ピストン用内空部(102)を形成するPSU筐体(100)を有する液圧制御ユニット(HCU)本体(170,172,174)と、
前記HCU本体(170,172,174)の前記上面(171,173,175)に装着される流体貯留器(24)と、
を備えており、
前記PSUアセンブリ(40)の前記電気モータ(42)は前記HCU本体(170,172,174)の前記底面に装着され、
前記PSUアセンブリ(154)は前記HCU本体(174)の前記上面(175)を超えては延設されない電気・液圧制動システム。
【請求項13】
請求項1または2に記載の電気・液圧制動装置システムのための圧力供給ユニット(PSU)アセンブリであって、
前記電気モータ(42)と、
前記電気モータ(42)に連結されるスピンドル(122)を有するとともに、回転運動を直線運動へと変換するよう構成される前記ボールねじアクチュエータ(118)と、
前記電気モータ(42)に接続される前記PSU筐体(100)と、
前記ピストン用内空部(102)内に配置されるとともに、前記ボールねじアクチュエータ(118)によって前記ピストン用内空部(102)で平行移動可能である前記PSUピストン(45)と、
を備えており、
前記ボールねじアクチュエータ(118)は、それぞれが前記ピストン用内空部(102)の前記第二チャンバ(48)に配置されるとともに前記液圧流体に浸漬されている複数のボールベアリング(124)を有する前記アクチュエータ・ナット・アセンブリ(120,124)を備え
前記PSUアセンブリ(40)の前記第一チャンバ(46)が前記PSU流体通路(50)と接続され、前記PSUアセンブリ(40)の前記第二チャンバ(48)が前記補充流体通路(54)と接続されることで、前記PSUピストン(45)の圧力平衡を可能とする、
圧力供給ユニット(PSU)アセンブリ。
【請求項14】
請求項1に記載のPSUアセンブリ(40)であって、
スピンドル(122)が、流体が前記ピストン用内空部(102)から漏出するのを防止するための環状封止器(128)を貫通するよう延設され、
前記環状封止器(128)はリップシールを有し、
前記PSUアセンブリ(40)は、さらに、前記電気モータ(42)によって駆動されるとともに前記電気モータ(42)の速度より遅い速度で前記スピンドル(122)を駆動するよう構成される歯車機構(126)を備えるPSUアセンブリ。
【請求項15】
単一回路マスタシリンダ(MC)(30)であって、第一MC流体通路(34)に流体連通状態で連結されるとともに、該単一回路マスタシリンダ(MC)(30)に連結されるブレーキペダル(36)への押圧力に応じて前記第一MC流体通路(34)に流体を供給するよう構成される単一回路マスタシリンダ(MC)と、
圧力供給ユニット(PSU)アセンブリ(40)であって、
ボールねじアクチュエータ(118)に連結される電気モータ(42)と、
前記電気モータ(42)とは反対側に末端部(130)を有するピストン用内空部(102)を形成するPSU筐体(100)と、
前記ピストン用内空部内(102)に配置されるとともに前記ボールねじアクチュエータ(118)によって前記ピストン用内空部内を摺動可能であり前記ピストン用内空部(102)を第一チャンバ(46)と第二チャンバ(48)とに分割するPSUピストン(45)であって、前記第一チャンバ(46)および前記第二チャンバ(48)がそれぞれ液圧流体を収容しているPSUピストン(45)と、
を有するPSUアセンブリ(40)と、
を備える電気・液圧制動システムであって、
ペダル感覚エミュレータ(PFE)(39)であって、PFE内空部内を摺動可能であり上部チャンバを下部チャンバから分離するPFEピストンを有するPFEを更に備えており、
前記ボールねじアクチュエータ(118)は、それぞれが前記ピストン用内空部(102)に配置されるとともに前記液圧流体に浸漬されている複数のボールベアリング(124)を有するアクチュエータ・ナット・アセンブリ(120,124)を備え、
前記PFE(39)の圧縮に応じて前記PFE(39)の前記下部チャンバから前記PSUアセンブリ(40)の前記第二チャンバ(48)へと流体を送出するよう、前記PFE(39)の前記下部チャンバが前記PSUアセンブリ(40)の前記第二チャンバ(48)へと流体連通状態で連結されており、
前記マスタシリンダ(30)から前記PFE(39)の前記上部チャンバへの流体経路を形成するよう、前記第一MC流体通路(34)が前記PFE(39)の前記上部チャンバに流体連通状態で連結されている、
電気・液圧制動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、車両(例えば自動車)の制動システムに関する。より詳細には、本開示は、圧力が平衡状態にあるピストンを有する圧力供給ユニット(PSU)を備えるブレーキ・バイ・ワイヤ・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車およびハイブリッド自動車が世界の市場において急激に広まっていくにつれ、制動の際の装置の電動機・発電機出力機能を用いることによってバッテリ寿命を大きく伸せることがよく理解されてきている。しかしながら、電池を再充電するために用いられる発電機モードの入力トルクは、ペダル力/移動量(トラベル)対車両減速の運転手入力機能と整合していない。このような複雑な機能を実現するためには、車両の液圧ブレーキに、発電機制動トルクと運転手が必要とする制動トルクとの差を印加しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
工業界では、回生制動混合課題として一般に知られているこの必要性が長年理解されてきた。これを達成する最も効率的な方法は、「ワイヤによる制動(ブレーキ・バイ・ワイヤ)」技術を用いることである。これを実現するための効率的な制動(ブレーキ)ペダルは、ペダルを操作桿とすることであり、この場合、運転手による所望の車両減速の意図を解釈するシステムECUに信号を送信するために、操作桿を移動量センサおよび/または力センサに接続する必要がある。また、ブレーキペダル「感覚(フィーリング)」を、力と移動量との適切な関係に基づいて類似実現(シミュレート)しておく必要があり、ブレーキペダル「感覚」は、マスタシリンダが車輪制動装置(ホイールブレーキ)に直接印加する力とは別の感覚をもたらす必要がある。
【0004】
ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムは、典型的には、車輪制動装置を作動させるために加圧流体を供給する圧力供給ユニット(PSU)を有する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、電気・液圧制動システムを提供する。電気・液圧制動システムは、単一回路
マスタシリンダ(MC)を備える。マスタシリンダ(MC)は、第一MC流体通路に流体
連通状態で連結されるとともに、マスタシリンダ(MC)に連結されるブレーキペダルへ
の押圧力に応じて第一MC流体通路に流体を供給するよう構成される。電気・液圧制動シ
ステムは、また、圧力供給ユニット(PSU)アセンブリを備える。圧力供給ユニット(
PSU)アセンブリは、電気モータとPSU筐体とPSUピストンとを有する。電気モー
タは、ボールねじアクチュエータに連結される。PSU筐体は、電気モータとは反対側に
末端部を有するピストン用内空部を形成する。PSUピストンは、ピストンボア内に配置
されるとともに、ボールねじアクチュエータによってピストンボア内を摺動可能でありピ
ストンボアを第一チャンバと第二チャンバとに分割する。第一チャンバおよび第二チャン
バがそれぞれ液圧流体を収容する。ボールねじアクチュエータは、複数のボールベアリン
グを有するアクチュエータ・ナット・アセンブリを備える。複数のボールベアリングのそ
れぞれは、ピストン用内空部に配置されるとともに液圧流体に浸漬される。電気・液圧制動システムは、PSUアセンブリの第一チャンバから少なくとも一の車輪制動装置への流体連通を行うPSU流体通路と、PSUアセンブリの第二チャンバと流体連通状態にある補充流体通路と、補充流体通路からPSU流体通路への流体の流れを可能にするとともに反対方向の流体の流れを遮断するよう構成される逆止弁と、を更に備える。
【0006】
また、本発明は、電気・液圧制動システムのための圧力供給ユニット(PSU)アセン
ブリを提供する。PSUアセンブリは、電気モータとボールねじアクチュエータとPSU
筐体とPSUピストンとを備える。ボールねじアクチュエータは、電気モータに連結され
るスピンドルを有するとともに、回転運動を直線運動へと変換するよう構成される。PS
U筐体は、電気モータに連結されるとともに、電気モータとは反対側に末端部を有するピ
ストン用内空部を形成する。PSUピストンは、ピストンボア内に配置されるとともに、
ボールねじアクチュエータによってピストンボア内で平行移動可能であり、ピストンボア
を第一チャンバと第二チャンバとに分割する。第一チャンバおよび第二チャンバのそれぞ
れは液圧流体を収容している。ボールねじアクチュエータは、複数のボールベアリングを
有するアクチュエータ・ナット・アセンブリを備える。複数のボールベアリングのそれぞ
れは、ピストン用内空部の第二チャンバに配置されるとともに液圧流体に浸漬される。PSUアセンブリの第一チャンバがPSU流体通路と接続され、PSUアセンブリの第二チャンバが補充流体通路と接続されることで、PSUピストンの圧力平衡を可能とする。
【0007】
本発明の設計のさらなる詳細、特徴および利点は、添付の図面を参照した以下の実施形態の説明から理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両のブレーキ・バイ・ワイヤ・システムの概略ブロック図を示す。
図2】本開示のブレーキ・バイ・ワイヤ・システムの概略図を示す。
図3】本開示の一の面にかかる圧力供給ユニット(PSU)の断面図を示す。
図4】他のPSUと大きさを比較した本開示のPSUの断面図を示す。
図5A-5C】本開示の一の面にかかる三つの異なるPSUの断面図を示す。
図6A-6C】それぞれが図5A~5Cに示す三つの異なるPSUのうちの対応する一つを有するワンボックス型ブレーキ・バイ・ワイヤ・デバイスの斜視図を示す。
図7】横置きモータ構成の本開示のPSUを有するワンボックス型ブレーキ・バイ・ワイヤ・デバイスの断面図を示す。
図8】本開示の一の面にかかるさらなる特徴を有する、図2の10バルブ型ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムの概略図を示す。
図9】本開示の一の面にかかる11バルブ型ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムの概略図を示す。
図10】本開示の一の面にかかる12バルブ型ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムの概略図を示す。
図11】PSUがマスタブレーキシリンダと軸方向に並んで配置された、軸方向延設構成を有するワンボックス型ブレーキ・バイ・ワイヤ・デバイスを示す。
図12】横置きモータ構成のワンボックス型ブレーキ・バイ・ワイヤ・デバイスを示す。
図13】モータ上側配置構成のワンボックス型ブレーキ・バイ・ワイヤ・デバイスを示す。
図14】モータ下側配置構成のワンボックス型ブレーキ・バイ・ワイヤ・デバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照しながら、本発明を、以下の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、それぞれが対応する作動器(アクチュエータ)を例えば液圧シリンダを有する複数の車輪制動装置(ブレーキ)22a,22b,22c,22dを有する、車両における例えば自動車における、ブレーキ・バイ・ワイヤ(BbW)システム10の概略ブロック図を示す。基本的なブレーキ・バイ・ワイヤ(BBW)構造は、既に自動車産業において確立されている。車両のマスタシリンダ30は、故障時のシステム・フォールバック・モードにおいてホイールブレーキ22a,22b,22c,22dのうちの一つ以上に力を直接印加する、またはホイールブレーキ22a,22b,22c,22dから分離され一般的な制動システムの力、移動量および減衰を再現するペダル感覚模倣器エミュレータ39に接続される。ブレーキペダル移動量および/またはブレーキペダル力および/または制動圧力(ブレーキ圧)は、ブレーキ電子制御ユニット(ECU)90への入力信号として、システム10により用いられる。その結果、ECUは、適当な信号を圧力供給ユニット(PSU)アセンブリ40へ送信する。PSUアセンブリ40は、高効率ブラシレスモータと、一つ以上のPSUピストンを移動させるボールねじアセンブリと、を有することができ、電気マスタシリンダとも呼ぶことができよう。マスタシリンダ30および/またはPSUアセンブリ40を、一連の制御弁(コントロール・バルブ)15を介してホイールブレーキ22a,22b,22c,22dに連結することができる。一連のコントロール・バルブ15として、例えばアンチロックブレーキ(ABS)、電子トラクションコントロール等の機能を提供するための印加弁および放出弁(図示せず)を、ホイールブレーキ22a,22b,22c,22dのそれぞれに対して備えることができる。
【0011】
従来のバキューム・ブースタ・ブレーキシステムの感覚を再現しながら、運転手(ドライバ)がどれほど速くそしてどれほど強くブレーキをかけるよう意図しているかを、ブレーキペダル入力は定義する。ブレーキECU90は、また、回生モードにおいて一つ以上の電気モータを使用して車両を減速するよう、ドライブ制御ユニット(DCU)18に信号を送信することもできる。ドライブ制御ユニット(DCU)は、パワートレイン制御モジュール(PCM)18とも呼ぶことができる。
【0012】
図2は、車両の複数のホイールブレーキ22a,22b,22c,22dの動作を制御するBbWシステム20の概略図を示す。ホイールブレーキ22a,22b,22c,22dのそれぞれは、制動装置(ブレーキ)アクチュエータ13のうちの対応する一つを有することができる。また、ホイールブレーキ22a,22b,22c,22dは、他の制動システムとは例えば電気的回生制動とは区別して基本ブレーキと呼ぶこともできる。
【0013】
BbWシステム20は、液圧流体を保持し、単一回路構成である単一回路マスタシリンダ30へと液圧流体を供給する流体貯留器(リザーバ)24を有する。単一回路マスタシリンダ30をマスタシリンダ(MC)30と呼ぶこともある。流体レベルセンサ25(例えばフロートスイッチ)は、流体リザーバ24の液圧流体の液面(レベル)を監視する。制動(ブレーキ)ペダル36は、ブレーキリンケージ38を押圧するよう、その結果、マスタシリンダ(MC)30を作動させてマスタシリンダ(MC)30を通って吸入流体通路32から流体を噴出させてマスタシリンダ(MC)流体通路34を加圧するように、連結される。移動量(トラベル)センサ37は、ブレーキペダル36の位置を監視する。圧力センサ33は、第一MC流体通路34の圧力を監視する。
【0014】
特にマスタシリンダ30へのホイールブレーキ22a,22b,22c,22d操作が解除されたときにブレーキ操作の自然な感覚を選択的に提供するために、PFE39は流体連通状態となるようMC流体通路34に連結される。PFE39は、PFE39を上部室(チャンバ)と下部室(チャンバ)とに分割するPFEピストンと、PFEピストンを上部チャンバへと付勢するばねと、を有する。PFE39の上部チャンバは、MC流体通路34に流体連通状態で連結される。
【0015】
PSUアセンブリ40は、流体リザーバ24からPSU流体通路50へと液圧流体を供給する電気モータ42およびPSUポンプ44を有する。PSUアセンブリ40は、戻り(リターン)流体通路52から流体を吸い込むことができる。リターン流体通路52は、流体リザーバ24に接続され、周囲の大気圧にまたは周囲の大気圧近くに保持される。第二圧力センサ51は、PSU流体通路50の圧力を監視する。ロータ角度センサ43を、モータのロータの位置を決定するよう、したがってPSUポンプ44の位置を決定するよう、電気モータ42に連結することができる。PSUポンプ44は、第一室(チャンバ)46を第二室(チャンバ)48から分離するPSUピストン45を有する。PSUポンプ44は、ボールねじアクチュエータ118に連結される電気モータ42を有する。ボールねじアクチュエータ118は、回転運動を直線運動へと変換してPSUピストン45を移動させる。
【0016】
PSUアセンブリ40の第一チャンバ46は、PSU流体通路50に直接接続される。電気モータ42から離間する方向へのPSUピストン45の移動に応じて、流体は第一チャンバ46から押し出されそしてPSU流体通路50へと入っていく。PSUアセンブリ40の第二チャンバ48は、補充流体通路54に直接接続される。第一逆止弁56によって、戻り流体通路52から補充流体通路54へと流体の流れを可能にすると同時に反対方向の流体の流れを遮断することができる。PSU補充逆止弁(PRCV)ともいうことができる第二逆止弁58によって、補充流体通路54からPSU流体通路50への流体の流れを可能にすると同時に反対方向の流体の流れを遮断することができる。
【0017】
通常閉じている電磁弁(ノーマルクローズド・ソレノイドバルブ)とすることができるPSUリザーバ分離バルブ(PRIV)62は、戻り流体通路52と中間流体通路64との間の流体の流れを選択的に制御する。第三逆止弁66は、中間流体通路64と補充流体通路54との間に接続されるとともに、補充流体通路54から中間流体通路64へと流体の流れを可能とすると同時に反対方向の流体の流れを遮断するよう構成される。
【0018】
ブレーキペダル36の印加によるPFEピストンの移動に応じて流体を送出するよう、排出流体通路68はPFE39の下部チャンバに接続される。第四逆止弁69は、排出流体通路68と吸入流体通路32との間に接続されるとともに、吸入流体通路32から排出流体通路68へと流体の流れを可能とすると同時に反対方向の流体の流れを遮断するよう構成される。第五逆止弁70は、排出流体通路68と中間流体通路64との間に接続されるとともに、排出流体通路68から中間流体通路64へと流体の流れを可能とすると同時に反対方向の流体の流れを遮断するよう構成される。
【0019】
通常閉じている電磁弁(ノーマルクオープン・ソレノイドバルブ)とすることができるマスタシリンダ分離バルブ(MCIV)72は、MC流体通路34とPSU流体通路50との間の流体の流れを選択的に制御する。PSU流体通路50からの流体供給は、第一制動回路74と第二制動回路76とに分割される。
【0020】
制御弁マニホールド78によって、二つのブレーキ回路74,76が、対応するホイールブレーキ22a,22b,22c,22dに流体連通状態で接続される。制御弁マニホールド78は、ホイールブレーキ22a,22b,22c,22dのそれぞれに対応する印加弁80aおよび放出弁80bを有し、これにより、ホイールブレーキ22a,22b,22c,22dのうちの対応する一つと、二つブレーキ回路74,76のうちの関連する一方と、間の流体の流れを選択的に制御する。印加弁80aおよび放出弁68bをまとめてアンチロックブレーキシステム(ABS)バルブと呼ぶこともでき、ABSにおいて用いることができる。なお、印加弁80aおよび放出弁80bを、例えば牽引摩擦制御(トラクション・コントロール)および/または駆動力移動(トルク・ベクタリング)等の他の機能のために用いることもできる。
【0021】
ある態様では、図2に示す通り、双方向逆止弁82が、二つの制動回路74,76のそれぞれにおけるPSU流体通路50と制御弁マニホールド78との間に配置されている。双方向逆止弁82は、そこを流れる圧力差がある閾値を超えた場合にのみ、いずれの方向の流体の流れも可能とする。双方向逆止弁82は、システムにおける漏出(例えばホイールブレーキ22a,22b,22c,22dのいずれへの供給を行うブレーキラインの漏出)が生じた場合に失われる流体の量を制限することができる。
【0022】
ドライバがブレーキをかけたときに、MCIV72は閉じPRIV62は開く。一般的なブレーキペダル力および移動量と類似な力を実現するよう、マスタシリンダ30からの流体がPFE39へと流れる。その移動量情報を電子制御ユニット(ECU)90に送信でき、そしてECUは適切な電流をPSUモータ42に通電し、これにより、ボールねじを回転させてPSUピストン45を機械的に移動させる。こうして、流体が、二重逆止弁82を通り、ABS印加弁80aを通って移動し、最終的にホイールブレーキ22a,22b,22c,22dに達することで圧力を印加して車両を減速させる。
【0023】
図3は、本開示のPSUアセンブリ40の断面図を示す。PSUアセンブリ40は、制動流体をPSU流体通路50へと吐出するようPSUポンプ44を動作するように構成される電気モータ42を有する。
【0024】
PSUアセンブリ40は、ピストン用内空部(ピストンボア)102を形成するPSU筐体(ハウジング)100を有する。また、PSUハウジング100は、電気モータ42を収容する後室(リアチャンバ)104を形成する。隔壁(パーティション)106によって、ピストンボア102を後室104から分離している。パーティション106によって、ピストンボア102が制動流体を収容しながら、後室104を流体がない状態(ドライ状態)に保持できる。電気モータ42は、ロータ112に連結されるモータ軸(シャフト)110を有する。電気モータは、ステータ114を流れる電流に応じて動作する。シャフト軸受116によって、モータシャフト110をロータ112の両側で支持することができる。
【0025】
PSUポンプ44は、ボールねじアクチュエータ118によって押し出しかつ/または引っ張られるPSUピストン45を有する。ボールねじアクチュエータ118は、回転運動を直線運動へと変換してPSUピストン45を移動させる。ボールねじアクチュエータ118は、回転軸(スピンドル)122とアクチュエータ・ナット・アセンブリ120,124とを有する。アクチュエータ・ナット・アセンブリ120,124は、ナット120と、スピンドル122とアクチュエータ・ナット120との間に配置される複数の玉軸受(ボールベアリング)124と、を有する。アクチュエータ・ナット120は、PSUピストン45に取り付けられる。電気モータ42は、スピンドル122を回転させるよう構成される。スピンドルには、ねじが形成されており、アクチュエータ・ナット120を直線経路に沿って移動させるよう構成されている。こうして、PSUピストン45が、ピストンボア102において二つの方向のいずれにも(電気モータ42へと向かう方向または離間する方向に)平行移動できる。したがって、ボールねじアクチュエータは、電気モータ42によるスピンドル122の回転に応じて、PSUピストン45をピストンボア102内で直線的に平行移動させる。アクチュエータ・ナット120および複数のボールベアリング124は、それぞれ、ピストンボア102内に配置され、液圧流体に浸漬される。
【0026】
ある態様では、図3に示す通り、PSUピストン45は、一端が開いた円筒形状(カップ形状)である。アクチュエータ・ナット120および複数のボールベアリング124は、それぞれ、カップ形状のPSUピストン内に配置される。
【0027】
ある態様では、図3に示す通り、アクチュエータ・ナット120および複数のボールベアリング124は、それぞれ、第二チャンバ48内に配置される。なお、PSUアセンブリ40は異なる構成を有することができる。例えば、アクチュエータ・ナット120および複数のボールベアリング124を第一チャンバ46内に配置することもできる。
【0028】
ある実施形態では、一つ以上のボールベアリング124を、ボール・ねじ境界を形成するよう、スピンドル122とアクチュエータ・ナット120との間に配置することもできる。一つ以上の遊星減速歯車を有することができる歯車機構(ギヤセット)126によって、電気モータ42のモータシャフト110とスピンドル122とを機械的に連結し、スピンドル122を減速させるとともに印加されるトルクを増加することもできる。ギヤセット126は、電気モータ42によって駆動されるとともに、電気モータ42のモータシャフト110の速度より遅い速度でスピンドル122を駆動するよう構成される。
【0029】
環状封止器(リングシール)128が、スピンドル122とパーティション106との間に配置され、スピンドル122の回転を可能にしながらピストンボア102と後室104との間を液密状態で封止する。リングシール128はリップシールを有することができる。なお、他の種類のシールを用いることもできる。これにより、PSUピストン45の背面に封入する流体によって、ピストンシール140の背面に補充流体通路54からの制動圧力を印加し、PSU通路50からピストンシール140の前面へと印加される制動圧力と均衡させ、その結果、圧力平衡が得られる。
【0030】
PSUピストン45は、ピストンボア102内に配置されるとともに、アクチュエータ・ナット120の押し出しおよび/または引っ張りに応じて直線的に移動するよう構成される。ピストンボア102は、パーティション106と末端部130との間で延びている。ピストンボア102は、PSUピストン45から末端部130へと延びる第一チャンバ46を形成する。また、ピストンボア102は、パーティション106からPSUピストン45へと延びる第二チャンバ48を形成する。第一PSUポート132は、第一チャンバ46と外部流体回路との間の流体連通を提供する。第一PSUポート132を、PSU流体通路50に流体連通状態で連結することができ、これにより、流体を供給できる。第二PSUポート134は、第二チャンバ48と外部流体回路との間の流体連通を提供する。第二PSUポート134を、補充流体通路54に流体連通状態で連結することができ、これにより、第二チャンバ48と補充流体通路54との間で流体を出入りさせることができる。
【0031】
ある態様では、図3に示す通り、PSUピストン45は、ピストンシール140を、例えば第一チャンバ46と第二チャンバ48との間のPSUピストン45を通り抜ける流体の漏れを防止するリップシールを、有する。また、ある態様では、図3に示す通り、PSUピストン45は、第一回転防止構造142を、例えばピストンボア102の対応する第二回転防止構造144と係合する一つ以上の凸部を、有する。例えば、第二回転防止構造144は、対応する第一回転防止構造142を受けるよう構成される一以上の直線状の谷部またはキー溝を有することができる。第一回転防止構造と第二回転防止構造とを合わせることによって、回転防止構造142,144が、PSUピストン45の回転を防止するとともに、ピストンボア102内でのPSUピストン45の直線的な平行移動を可能にする。
【0032】
本開示の一の面では、PSUアセンブリ40は、ボールねじのスピンドルを用いており、封止されている第二チャンバ48を有する。これにより、PSUピストン45を移動させるようアクチュエータロッドを用いる他の設計に対して三つの大きな設計上の違いが得られる。第一の違いは、PSUアセンブリ40の全長を、一般的な駆動方式(すなわちピストンの一方の側だけに流体があるPSU16)とほぼ同じ程度の長さへと大きく低減できることにある。次に、第二の違いは、このPSUアセンブリはボールねじを制動流体に浸漬するとことにある。そして、第三の違いは、面積不均衡の原因となるアクチュエータロッドがないので、PSUピストン45の面積均衡化の必要性を排除できることにある。図4は、PSUピストン45を移動させるためにアクチュエータロッドを有する他のPSUと大きさを比較した本開示のPSUアセンブリの断面図を示している。
【0033】
図5A図5Cは、三つの異なるPSUの断面図を示す。図5Aは、ピストンの両側に流体がある圧力平衡化設計の双方向作用(ダブルアクティング)構成を有するとともにボールねじ型線形(リニア)アクチュエータをピストンに連結するアクチュエータロッドを有する第一PSUアセンブリ150を示す。図5Bは、本開示にかかる第二PSUアセンブリ152を示す。第二PSUアセンブリ152を、本開示のPSUアセンブリ40と同一することもでき、その場合リングシール128の代わりにリップシールを用いることもできる。図5Cは、ピストンの一方の側にのみ流体がある従来設計の第三PSUアセンブリ154を示す。
【0034】
図6Aは、図5Aの第一PSUアセンブリ150を有する第一ワンボックス型ブレーキ・バイ・ワイヤ・デバイス160を示す。第一ワンボックス型ブレーキ・バイ・ワイヤ・デバイス160は、電気モータ42とは反対側に第一上面171を有する第一液圧制御ユニット(HCU)本体170を備える。第一PSUアセンブリ150は、第一HCU本体170の側面に沿って、第一上面171を大きく越えて第一上面171の上方へと延設されている。図6Bは、図5Bの第二PSUアセンブリ152を有する第二ワンボックス型ブレーキ・バイ・ワイヤ・デバイス162を示す。第二ワンボックス型ブレーキ・バイ・ワイヤ・デバイス162は、電気モータ42とは反対側に第二上面173を有する第二液圧制御ユニット(HCU)本体172を備える。第二PSUアセンブリ152は、第二HCU本体172の側面に沿って延設されて第二上面173を少し越えて第二上面173の上方へと突出している、つまり、その突出している程度は、第一PSUアセンブリ150が第一PSUアセンブリ150の第一上面171より上方に延設される程度より小さい。図6Cは、図5Cの第三PSUアセンブリ154を有する第三ワンボックス型ブレーキ・バイ・ワイヤ・デバイス164を示す。第三ワンボックス型ブレーキ・バイ・ワイヤ・デバイス164は、電気モータ42とは反対側に第三上面175を有する第三HCU本体174を備える。第三PSUアセンブリ154は、第三HCU本体174の側面に沿って延設され、第三上面175と同一面で終端している。図5A図5Bに示したそれぞれのPSU間の差異の例としては、別体としたアクチュエータをなくしたことによる大きさおよび重さの低減である。ボールねじは、流体がない状態ではなく、制動流体に浸された状態にある。
【0035】
図7は、第四ワンボックス型ブレーキ・バイ・ワイヤ・デバイス166の断面図を示す。第四ワンボックス型ブレーキ・バイ・ワイヤ・デバイスもまた圧力平衡化PSUピストン45と同様な構成を有する。ピストンシール140の背面は補充流体通路54からの制動圧力を受けると同時に、ピストンシール140の前面もPSU通路50からの圧力を受けて、これにより、圧力平衡を得ることができる。ここで示す第四PSUアセンブリ156は、モータシャフトが水平であり、第四HCU本体176のマスタシリンダ・ボア(図示せず)に対して横向きとなるようモータ42が配置される横置きモータ構成である。第四PSUアセンブリ156は、図5Bの第二PSUアセンブリ152と同様なまたは同一の構成を有することができる。横置きモータ構成である第四ワンボックス型ブレーキ・バイ・ワイヤ・デバイス166は、占める空間を低減できるとともに、コストがかかるモータからECUへのコネクタをなくすことができる。この設計には、全体のコストを最小限に抑え、モータ効率を最大限に活用し、通電するモータ電流を最小限に抑えるよう、遊星歯車列(遊星ギヤトレイン)を駆動する一般的なブラシレスモータを含めることができる。通電するモータ電流を低減することにより、モータに電力を供給するための電子機器のコストをさらに削減できる。スピンドル上に回転リップシールを有する圧力平衡化PSUピストンと、遊星ギヤ機構と一体化した横置きモータ配置と、の設計は、まさに独特な組み合わせである。
【0036】
図9は、本開示の一の面にかかるさらなる特徴を有する、図2の10バルブ型ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムの概略図を示す。図8には、一体型アセンブリとしてのワンボックス型10バルブBbWデバイス220が含まれている。10バルブ型システムは、制御弁マニホールド78の八つのソレノイドバルブに加えて、PRIV62とMCIV72とを有する10個の被作動バルブを備えるシステムであるので、そう呼ぶものとする。また、図8は、各種センサを監視し、各種アクチュエータ(例えばPSUアセンブリ40の電気モータ42およびソレノイドバルブ)を制御するための電気接続を有する電子制御ユニット(ECU)90を有する10バルブ型BbWデバイス220を示している。また、ECU90は、通信ネットワーク(例えばコントローラ・エリア・ネットワーク(Controller Area Network)(CANバス))を介して車両の一以上の外部コントローラ92に接続される。また、ECU90は、一以上の電気駐車制動(エレクトリック・パーキング・ブレーキ)アクチュエータEPBの動作および/または他の機能を制御するよう構成される。また、ECU90は、駐車制動(パーキング・ブレーキ)スイッチ93から駐車制動命令(パーキング・ブレーキ・コマンド)を通信ネットワークを介して受信するよう構成される。任意選択的にまたは追加的に、パーキング・ブレーキ・スイッチ93をECU90へと配線によって接続することもできる。
【0037】
図8に示す10バルブ型設計には、PSUアセンブリ40およびマスタシリンダ30が含まれる。ブレーキ・バイ・ワイヤ・モードにおいてドライバがブレーキペダルに力を印加したときには、MCIV72は閉じPRIV62は開く。一般的なブレーキペダル力および移動量と類似な力を実現するよう、流体がマスタシリンダ30からのPFE39へと流れる。その移動量情報がECU90に送信され、そしてECUは適切な電流をPSUモータに通電し、これにより、ボールねじを回転させてPSUピストン45を機械的に移動させる。こうして、流体が、二重逆止弁82を通り、ABS印加弁80aを通って移動し、最終的にホイールブレーキに達することで圧力を印加して車両を減速させる。
【0038】
これは、ABS停止時においてホイールブレーキから放出される流体が取り込まれるのではなく大気圧でリザーバへと戻るよう流れる「オープン」システムであるので、PSUを補充する必要がある。このことは、PSUピストン45の後側の圧力を止めるPRIV62を最初に閉じておくことで、達成できる。ボールねじおよびPSUピストン45は後退する。これにより、PSUピストン45の後側の流体を、PSU第二逆止弁58を介して、強制的にPSUピストン45の正面側に流れさせることができる。補充の際には、PSUピストン45の両側の圧力は維持される。PSUピストン45が移動するときPSUピストン45の両側が同じ容積で移動するからである。
【0039】
図9は、本開示の一の面にかかる11バルブ型ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムの概略図を示す。11バルブ型ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムは、ここに記載するいくつかの変更が加えられた点を除いて、図8の10バルブ型システムと同様または同一とすることができる。11バルブ型ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムは、ノーマルオープン・ソレノイドバルブとすることができるPFE分離バルブ(PFIV)212を有し、これにより、中間流体通路64と排出流体通路68とを選択的に接続する。また、11バルブ型ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムは、図8の10バルブ型システムに含まれるいくつかの逆止弁(例えば第三逆止弁66、第四逆止弁69および第五逆止弁70)を含まない。
【0040】
図9には、一体型アセンブリとしてのワンボックス型11バルブBbWデバイス320が含まれている。11バルブ型システムは、制御弁マニホールド78の八つのソレノイドバルブに加えて、PRIV62とMCIV72とPFIV212とを有する11個の被作動バルブを備えるシステムであるので、そう呼ぶものとする。
【0041】
図9に示す11バルブ型設計には、PSUアセンブリ40およびマスタシリンダ30が含まれる。ブレーキ・バイ・ワイヤ・モードにおいてドライバがブレーキペダルに力を印加したときには、MCIV72は閉じPRIV62は開く。一般的なブレーキペダル力および移動量と類似な力を実現するよう、マスタシリンダ30からの流体がPFE39へと流れる。その移動量情報がECU90に送信され、そしてECUは適切な電流をPSUモータ42に通電し、これにより、ボールねじを回転させてPSUピストン45を機械的に移動させる。こうして、流体が、二重逆止弁82を通り、ABS印加弁80aを通って移動し、最終的にホイールブレーキに達することで圧力を印加して車両を減速させる。
【0042】
これは、ABS停止時においてホイールブレーキから放出される流体が取り込まれるのではなく大気圧でリザーバへと戻るよう流れる「オープン」システムであるので、PSUを補充する必要がある。このことは、ピストンの後側の圧力を止めるPRIV62およびPFIV212を最初に閉じておくことで、達成できる。(PFIV212によって、四つの逆止弁をなくすことができ、ブレーキの空気抜き整備を容易に行うことができる。)ボールねじおよびPSUピストン45は後退する。これにより、PSUピストン45の後側の流体を、PSU第二逆止弁58を介して、強制的にPSUピストン45の正面側に流れさせることができる。補充の際には、PSUピストン45の両側の圧力は維持される。PSUピストン45が移動するときPSUピストン45の両側が同じ容積で移動するからである。
【0043】
図10は、本開示の一の面にかかる12バルブ型ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムの概略図を示す。12バルブ型ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムは、ここに記載するいくつかの変更が加えられた点を除いて、図9の11バルブ型システムと同様または同一とすることができる。12バルブ型ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムは、ノーマルオープン・ソレノイドバルブとすることができる制動回路分離バルブ(BCIV)312を有し、これにより、PSU流体通路50と第二制動回路76とを選択的に接続する。
【0044】
図10には、一体型アセンブリとしてのワンボックス型12バルブBbWデバイス420が含まれている。12バルブ型システムは、制御弁マニホールド78の八つのソレノイドバルブに加えて、PRIV62とMCIV72とPFIV212と制動回路分離バルブ312とを有する12個の被作動バルブを備えるシステムであるので、そう呼ぶものとする。また、図10のワンボックス12バルブ型BbWデバイス420は、第一制動回路74を通ってホイールブレーキ22a,22b,22c,22dのうちの二つのみへの流体の流れを制限するよう構成される制動回路平衡化孔(ブレーキ・サーキット・バランス・オリフィス(Brake Circuit Balance Orifice))(BCBO)314を有する。BCBO314は、二重逆止弁82の供給側の逆止弁と直列に接続されて、PSU流体通路50からホイールブレーキ22a,22b,22c,22dのうちの対応するブレーキへの流体の流れを調整する。
【0045】
図10に示す12バルブ型設計には、PSUアセンブリ40およびマスタシリンダ30が含まれる。ブレーキ・バイ・ワイヤ・モードにおいてドライバがブレーキペダルに力を印加したときには、MCIV72は閉じPRIV62は開く。一般的なブレーキペダル力および移動量と類似な力を実現するよう、マスタシリンダ30からの流体がPFE39へと流れる。その移動量情報がECU90に送信され、そしてECUは適切な電流をPSUモータ42に通電し、これにより、ボールねじを回転させてPSUピストンを機械的に移動させる。こうして、流体が、BCIV312とBCBO314と二重逆止弁82とを通り、ABS印加弁80aを通って移動し、最終的にホイールブレーキ22a,22b,22c,22dに達することで圧力を印加して車両を減速させる。BCBO314は、対角分離(ダイアゴナル・スプリット)システムにおける二つの対角回路間の流れを均衡させることができる。
【0046】
これは、ABS停止時においてホイールブレーキ22a,22b,22c,22dから放出される流体が取り込まれるのではなく大気圧で流体リザーバ24へと戻るよう流れる「オープン」システムであるので、PSUアセンブリ40を補充する必要がある。このことは、PSUピストン45の後側の圧力を止めるPRIV62およびPFIV212を最初に閉じておくことで、達成できる。(PFIV212によって、四つの逆止弁をなくすことができ、ブレーキの空気抜き整備を容易に行うことができる。)ボールねじおよびPSUピストン45は後退する。これにより、PSUピストン45の後側の流体を、PSU第二逆止弁58を介して、強制的にPSUピストン45の正面側に流れさせることができる。補充の際には、PSUピストン45の両側の圧力は維持される。PSUピストン45が移動するときPSUピストン45の両側が同じ容積で移動するからである。
【0047】
図11は、電気モータ42およびPSUアセンブリ40のピストンボア102がマスタシリンダ30と軸方向に並んで配置されており、第五HCU178がPSUおよびマスタシリンダ30の軸方向配置構造の側方に配置されている軸方向配置構成である第五ワンボックス型ブレーキ・バイ・ワイヤ・デバイス165を示す。図12は、流体リザーバ24が上部に取り付けられ、ECU90が電気モータ42とは反対側の第四HCU本体176の側面に取り付けられた組立状態の図7の第四ワンボックス型ブレーキ・バイ・ワイヤ・デバイス166を示す。図13は、モータ上側配置構成の第六ワンボックス型ブレーキ・バイ・ワイヤ・デバイス168を示す。図14は、流体リザーバ24が上部に取り付けられ、ECU90が電気モータ42とは反対側の第三HCU本体174の側面に取り付けられた、モータ下側配置構成の組立状態の図6Cの第三ワンボックス型ブレーキ・バイ・ワイヤ・デバイス164を示す。
【0048】
図14に示すように、第三ワンボックス型ブレーキ・バイ・ワイヤ・デバイス164は、第三HCU本体174の上面に装着される流体リザーバ24を有する。PSUアセンブリ40の電気モータ42は、流体リザーバ24とは反対側の第三HCU本体174の底面に装着される。また、ピストンボア102を形成するPSUハウジング100を有する第三PSUアセンブリ154は、第三HCU本体174の上面を越えては延設されない。
【0049】
本開示のワンボックス型BbWデバイス220,320,420は、あらゆる構成の外装形状(パッケージ)とできる。例えば、ワンボックス型BbWデバイス220,320,420はいずれも、図11に示すPSUアセンブリ40がマスタシリンダ30と軸方向に並んで配置された軸方向配置構成を有することができる。追加的にまたは任意選択的に、ワンボックス型BbWデバイス220,320,420はいずれも、図12に示す電気モータ42が水平方向にマスタシリンダ30に対して横方向に延設されるモータシャフトを有する横置きモータ構成を有することができる。追加的にまたは任意選択的に、ワンボックス型BbWデバイス220,320,420はいずれも、図13に示す電気モータ42がマスタシリンダ30の上方に配置されるモータ上側配置構成を有することができる。追加的にまたは任意選択的に、ワンボックス型BbWデバイス220,320,420はいずれも、図14に示すモータ下側配置構成を有することができる。
【0050】
本開示の一の面では、自動車両のための第一ブレーキシステムを提供する。第一ブレーキシステムは、本開示の10バルブ型ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムを有することができる。第一ブレーキシステムは、通常のブレーキ・バイ・ワイヤ・モード動作において車両のドライバによって、電気的作動を介して、作動可能である。また、第一ブレーキシステムは、少なくとも一の故障時代替動作(フォールバック・オペレーティング)モードにおいて、同ドライバによって動作可能である。フォールバック・オペレーティング・モードにおいては、ブレーキペダル36への力の印加に応じて、電力を全く必要とせず、ホイールブレーキ22a,22b,22c,22dの一つ以上を直接動作可能である。
【0051】
本開示の一の面では、第一ブレーキシステムは、筐体(ハウジング)と最終的にホイールブレーキ22a,22b,22c,22dに接続される単一の圧力室(チャンバ)を有する単一のピストンとを有するブレーキ・マスタシリンダを作動させるためのブレーキペダルを備えることができる。単一のピストンは、最終的にホイールブレーキに接続される単一の圧力室(チャンバ)を有する。運転手によるブレーキシステムの作動に応じて、ブレーキペダルによって印加される作動力は単一のピストンに印加され、そして、ブレーキペダルが作動されないときにはピストンは戻り(リターン)ばねによって初期位置に位置する。
【0052】
本開示の一の面では、第一ブレーキシステムは、さらに、圧力チャンバと関係するリザーバ・チャンバを有する、大気圧を受ける圧力媒体のための圧力媒体リザーバを備えることもできる。
【0053】
本開示の一の面では、第一ブレーキシステムは、さらに、ブレーキペダルの作動移動量またはブレーキペダルに接続される少なくともピストンの作動移動量を検出する移動量検知器と、ブレーキ・バイ・ワイヤ・モードにおける運転手に好ましい踏み応えのブレーキペダル感覚を伝達する、マスタシリンダ圧力チャンバに液圧で直接接続されるペダル感覚エミュレータと、を備えることもできる。
【0054】
本開示の一の面では、第一ブレーキシステムは、さらに、ブレーキシステム圧力を分配する、メイン・ハウジング・ボアへと封入される浮動式(フローティング)ピストンから構成される電気的に制御可能な圧力供給ユニットを備えることもできる。フローティング・ピストンは、ピストン回転を防止しながらピストン平行移動を可能とするメイン・ハウジング・ボアの少なくとも一の溝と接続する少なくとも一の回転防止機構を有する。
【0055】
本開示の一の面では、第一ブレーキシステムは、さらに、ブレーキシステム圧力を供給するよう、一方の端部のボールねじアセンブリの独立被作動ボールねじナットによって移動される圧力供給ユニット・ピストンを備えることもできる。前記ボールねじアセンブリのボールねじスピンドルは、ボールベアリングの内側軌道輪(インナレース)に固定するよう取り付けられる。ボールベアリングの外側軌道輪(アウタレース)は、メイン・ハウジングの段差状ボアに固定するよう取り付けられる。ボールベアリングのインナレースは、前記ボールねじスピンドルの回転を可能とするが、平行移動を防止する。
【0056】
本開示の一の面では、第一ブレーキシステムにおいて、前記ボールねじアセンブリスピンドルは、また、ラジアル・リップシールを有する対応するボアにおいてメイン・ハウジングへと封止され、これにより、ボールねじアセンブリ・ナットと転動玉(ローラ・ボール)とを制動流体に浸すことができると同時に、ベアリング・インナレースを収容している領域への制動流体の侵入を防止することができる。
【0057】
本開示の一の面では、第一ブレーキシステムにおいて、前記ボールベアリング・インナレースは、遊星ギヤセットアセンブリの遊星ギヤが回転可能に装着される少なくとも一のピンを収容することができる。遊星ギヤセットアセンブリのアウタリングギヤは、メインボアの段差状ボアに固定して取り付けられる。遊星ギヤセットアセンブリの太陽歯車(サンギヤ)は、電気モータの出力軸に固定して取り付けられる。モータをブラシレスモータとすることができる。
【0058】
本開示の一の面では、第一ブレーキシステムは、さらに、マスタシリンダを制動回路から分離するよう、マスタシリンダ出口ポートとホイールブレーキとの間に配置される通常閉じている弁(ノーマルオープン・バルブ)を備えることもできる。
【0059】
本開示の一の面では、第一ブレーキシステムは、さらに、リザーバへの電気制御圧力源のモータ側を分離するための通常閉じている弁(ノーマルクローズド・バルブ)を備えることもできる。
【0060】
本開示の一の面では、第一ブレーキシステムは、ペダル感覚エミュレータから上記のノーマルクローズド・バルブへの流れを可能とするとともに反対方向の流れを禁止する一連の逆止弁を備えることもできる。
【0061】
本開示の一の面では、第一ブレーキシステムは、さらに、圧力供給ユニットとホイールブレーキのうちの二つとの間に配置される互いに並列な順方向フロー逆止弁および逆方向フロー逆止弁と、圧力供給ユニットとホイールブレーキのうちの他の組との間に配置される互いに並列な第二順方向フロー逆止弁および第二逆方向フロー逆止弁と、を備えることもできる。
【0062】
本開示の一の面では、第一ブレーキシステムは、さらに、電子制御ユニットによって生成される信号に基づいて車輪毎にブレーキ圧力を設定する各ホイールブレーキのための吸入弁および排出弁を備えることもできる。吸入弁は、非作動時には流体をホイールブレーキへと送出し、作動時には車輪圧力の上昇を制限または禁止し、排出弁は、非作動時にはホイールブレーキからリザーバへの圧力媒体の流出を禁止し、作動時には流出を可能にするとともに制御し、吸入弁が閉じられると、ホイールブレーキ圧力が低下する。
【0063】
本開示の一の面では、自動車両のための第二ブレーキシステムを提供する。第二ブレーキシステムは、本開示の11バルブ型ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムを有することができる。第二ブレーキシステムは、通常のブレーキ・バイ・ワイヤ・モード動作において車両のドライバによって、電気的作動を介して、作動可能である。また、第二ブレーキシステムは、少なくとも一の故障時代替動作(フォールバック・オペレーティング)モードにおいて、同ドライバによって動作可能である。フォールバック・オペレーティング・モードにおいては、ブレーキペダル36への力の印加に応じて、電力を全く必要とせず、ホイールブレーキ22a,22b,22c,22dの一つ以上を直接動作可能である。
【0064】
本開示の一の面では、第二ブレーキシステムは、さらに、筐体(ハウジング)と最終的にホイールブレーキに接続される単一の圧力室(チャンバ)を有する単一のピストンとを有するブレーキ・マスタシリンダを作動させるためのブレーキペダルを備えることができる。単一のピストンは、最終的にホイールブレーキに接続される単一の圧力室(チャンバ)を有する。運転手によるブレーキシステムの作動に応じて、ブレーキペダルによって印加される作動力は単一のピストンに印加され、そして、ブレーキペダルが作動されないときにはピストンはリターンばねによって初期位置に位置する。
【0065】
本開示の一の面では、第二ブレーキシステムは、また、圧力チャンバと関係するリザーバ・チャンバを有する、大気圧を受ける圧力媒体のための圧力媒体リザーバを備えることができる。
【0066】
本開示の一の面では、第二ブレーキシステムは、また、ブレーキペダルの作動移動量またはブレーキペダルに接続される少なくともピストンの作動移動量を検出する移動量検知器を備えることができる。
【0067】
本開示の一の面では、第二ブレーキシステムは、また、ブレーキ・バイ・ワイヤ・モードにおける運転手に好ましい踏み応えのブレーキペダル感覚を伝達する、マスタシリンダ圧力チャンバに液圧で直接接続されるペダル感覚エミュレータを備えることができる。
【0068】
本開示の一の面では、第二ブレーキシステムは、また、ブレーキシステム圧力を分配する、メイン・ハウジング・ボアへと封入される浮動式(フローティング)ピストンから構成される電気的に制御可能な圧力供給ユニットを備えることもできる。フローティング・ピストンは、ピストン回転を防止しながらピストン平行移動を可能とするメイン・ハウジング・ボアの少なくとも一の溝と接続する少なくとも一の回転防止機構を有する。
【0069】
本開示の一の面では、第二ブレーキシステムは、また、ブレーキシステム圧力を供給するよう、一方の端部のボールねじアセンブリの独立被作動ボールねじナットによって移動される圧力供給ユニット・ピストンを備えることもできる。前記ボールねじアセンブリのボールねじスピンドルは、ボールベアリングのインナレースに固定するよう取り付けられる。ボールベアリングのアウタレースは、メイン・ハウジングの段差状ボアに固定するよう取り付けられる。ボールベアリングのインナレースは、前記ボールねじスピンドルの回転を可能とするが、平行移動を防止する。
【0070】
本開示の一の面では、第二ブレーキシステムにおいて、前記ボールねじアセンブリスピンドルは、また、ラジアル・リップシールを有する対応するボアにおいてメイン・ハウジングへと封止され、これにより、ボールねじアセンブリ・ナットとローラ・ボールとを制動流体に浸すことができるが、ベアリング・インナレースを収容している領域への制動流体の侵入を防止することができる。
【0071】
本開示の一の面では、第二ブレーキシステムにおいて、前記ボールベアリング・インナレースは、遊星ギヤセットアセンブリの遊星ギヤが回転可能に装着される少なくとも一のピンを収容することができる。遊星ギヤセットアセンブリのアウタリングギヤは、メインボアの段差状ボアに固定して取り付けられる。遊星ギヤセットアセンブリの太陽歯車(サンギヤ)は、電気モータの出力軸に固定して取り付けられる。モータをブラシレスモータとすることができる。
【0072】
本開示の一の面では、第二ブレーキシステムは、また、マスタシリンダを制動回路から分離するよう、マスタシリンダ出口ポートとホイールブレーキとの間に配置される通常閉じている弁(ノーマルオープン・バルブ)を備えることもできる。
【0073】
本開示の一の面では、第二ブレーキシステムは、また、リザーバへの電気制御圧力源のモータ側を分離するための通常閉じている弁(ノーマルクローズド・バルブ)を備えることもできる。
【0074】
本開示の一の面では、第二ブレーキシステムは、また、回生サイクルの際にペダル感覚エミュレータを圧力供給ユニットから分離するためのノーマルオープン・バルブを備えることもできる。
【0075】
本開示の一の面では、第二ブレーキシステムは、また、圧力供給ユニットとホイールブレーキのうちの二つとの間に配置される互いに並列な順方向フロー逆止弁および逆方向フロー逆止弁と、圧力供給ユニットとホイールブレーキのうちの他の組との間に配置される互いに並列な第二順方向フロー逆止弁および第二逆方向フロー逆止弁と、を備えることもできる。
【0076】
本開示の一の面では、第二ブレーキシステムは、また、電子制御ユニットによって生成される信号に基づいて車輪毎にブレーキ圧力を設定する各ホイールブレーキのための吸入弁および排出弁を備えることもできる。吸入弁は、非作動時には流体をホイールブレーキへと送出し、作動時には車輪圧力の上昇を制限または禁止し、排出弁は、非作動時にはホイールブレーキからリザーバへの圧力媒体の流出を禁止し、作動時には流出を可能にするとともに制御し、吸入弁が閉じられると、ホイールブレーキ圧力が低下する。
【0077】
本開示の一の面では、自動車両のための第三ブレーキシステムを提供する。第三ブレーキシステムは、本開示の12バルブ型ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムを有することができる。第三ブレーキシステムは、通常のブレーキ・バイ・ワイヤ・モード動作において車両のドライバによって、電気的作動を介して、作動可能である。また、第三ブレーキシステムは、少なくとも一のフォールバック・オペレーティング・モードにおいて同ドライバによって動作可能である。フォールバック・オペレーティング・モードにおいては、車両ドライバによるブレーキシステムの動作のみが可能である。
【0078】
本開示の一の面では、第三ブレーキシステムは、さらに、筐体(ハウジング)と最終的にホイールブレーキに接続される単一の圧力室(チャンバ)を有する単一のピストンとを有するブレーキ・マスタシリンダを作動させるためのブレーキペダルを備えることができる。単一のピストンは、最終的にホイールブレーキに接続される単一の圧力室(チャンバ)を有する。運転手によるブレーキシステムの作動に応じて、ブレーキペダルによって印加される作動力は単一のピストンに印加され、そして、ブレーキペダルが作動されないときにはピストンはリターンばねによって初期位置に位置する。
【0079】
本開示の一の面では、第三ブレーキシステムは、また、圧力チャンバと関係するリザーバ・チャンバを有する、大気圧を受ける圧力媒体のための圧力媒体リザーバを備える。
【0080】
本開示の一の面では、第三ブレーキシステムは、また、ブレーキペダルの作動移動量またはブレーキペダルに接続される少なくともピストンの作動移動量を検出する移動量検知器を備えることができる。
【0081】
本開示の一の面では、第三ブレーキシステムは、また、ブレーキ・バイ・ワイヤ・モードにおける運転手に好ましい踏み応えのブレーキペダル感覚を伝達する、マスタシリンダ圧力チャンバに液圧で直接接続されるペダル感覚エミュレータを備えることができる。
【0082】
本開示の一の面では、第三ブレーキシステムは、また、ブレーキシステム圧力を分配する、メイン・ハウジング・ボアへと封入される浮動式(フローティング)ピストンから構成される電気的に制御可能な圧力供給ユニットを備えることもできる。フローティング・ピストンは、ピストン回転を防止しながらピストン平行移動を可能とするメイン・ハウジング・ボアの少なくとも一の溝と接続する少なくとも一の回転防止機構を有する。
【0083】
本開示の一の面では、第三ブレーキシステムは、また、ブレーキシステム圧力を供給するよう、一方の端部のボールねじアセンブリの独立被作動ボールねじナットによって移動される圧力供給ユニット・ピストンを備えることもできる。前記ボールねじアセンブリのボールねじスピンドルは、ボールベアリングのインナレースに固定するよう取り付けられる。ボールベアリングのアウタレースは、メイン・ハウジングの段差状ボアに固定するよう取り付けられる。ボールベアリングのインナレースは、前記ボールねじスピンドルの回転を可能とするが、平行移動を防止する。
【0084】
本開示の一の面では、第三ブレーキシステムにおいて、前記ボールねじアセンブリスピンドルは、また、ラジアル・リップシールを有する対応するボアにおいてメイン・ハウジングへと封止され、これにより、ボールねじアセンブリ・ナットとローラ・ボールとを制動流体に浸すことができるが、ベアリング・インナレースを収容している領域への制動流体の侵入を防止することができる。
【0085】
本開示の一の面では、第三ブレーキシステムにおいて、前記ボールベアリング・インナレースは、遊星ギヤセットアセンブリの遊星ギヤが回転可能に装着される少なくとも一のピンを収容することができる。遊星ギヤセットアセンブリのアウタリングギヤは、メインボアの段差状ボアに固定して取り付けられる。遊星ギヤセットアセンブリの太陽歯車(サンギヤ)は、電気モータの出力軸に固定して取り付けられる。モータをブラシレスモータとすることができる。
【0086】
本開示の一の面では、第三ブレーキシステムは、また、マスタシリンダを制動回路から分離するよう、マスタシリンダ出口ポートとホイールブレーキとの間に配置される通常閉じている弁(ノーマルオープン・バルブ)を備えることもできる。
【0087】
本開示の一の面では、第三ブレーキシステムは、また、制動回路を二つの同等な部分へと分割するノーマルオープン・バルブを備えることもできる。
【0088】
本開示の一の面では、第三ブレーキシステムは、また、対角分離回路の分割回路の一方へと均等化された流れを供給するための分流(フィルタード)オリフィス・アセンブリを備えることもできる。
【0089】
本開示の一の面では、第三ブレーキシステムは、また、圧力供給ユニットとホイールブレーキのうちの二つとの間に配置される互いに並列な順方向フロー逆止弁および逆方向フロー逆止弁と、圧力供給ユニットとホイールブレーキのうちの他の組との間に配置される互いに並列な第二順方向フロー逆止弁および第二逆方向フロー逆止弁と、を備えることもできる。
【0090】
本開示の一の面では、第三ブレーキシステムは、また、電子制御ユニットによって生成される信号に基づいて車輪毎にブレーキ圧力を設定する各ホイールブレーキのための吸入弁および排出弁を備えることもできる。吸入弁は、非作動時には流体をホイールブレーキへと送出し、作動時には車輪圧力の上昇を制限または禁止し、排出弁は、非作動時にはホイールブレーキからリザーバへの圧力媒体の流出を禁止し、作動時には流出を可能にするとともに制御し、吸入弁が閉じられると、ホイールブレーキ圧力が低下する。
【0091】
以上の説明は、他を排除するものではなく、本開示を限定するものではない。特定の実施形態のそれぞれの要素または特徴はその特定の実施形態に必ずしも限定されるものではなく、特段の定めや記載がない限り、適用可能な場合には実施形態間で置き換え可能である。それぞれの要素または特徴は、種々の変形が可能である。このような変形は、本開示から逸脱するものではなく、このような変更はすべて本開示の範囲内にある。
【符号の説明】
【0092】
10 ブレーキ・バイ・ワイヤ・システム
13 ブレーキ・アクチュエータ
15 制御弁
18 ドライブ制御ユニット(DCU)
20 BbWシステム
22a,22b,22c,22d ホイールブレーキ
24 流体リザーバ
25 流体レベルセンサ
30 マスタシリンダ
32 吸入流体通路
33 圧力センサ
34 MC流体通路
36 ブレーキペダル
37 移動量センサ
39 ペダル感覚エミュレータ(PFE)
40 PSUアセンブリ
42 電気モータ
43 ロータ角度センサ
44 PSUポンプ
45 PSUピストン
46 第一チャンバ
48 第二チャンバ
50 PSU流体通路
51 第二圧力センサ
52 戻り流体通路
54 補充流体通路
56 第一逆止弁
58 第二逆止弁
62 PSUリザーバ分離バルブ(PRIV)
64 中間流体通路
66 第三逆止弁
68 排出流体通路
69 第四逆止弁
70 第五逆止弁
72 マスタシリンダ分離バルブ(MCIV)
74 第一制動回路
76 第二制動回路
78 制御弁マニホールド
80a 印加弁
80b 放出弁
82 双方向逆止弁
90 電子制御ユニット(ECU)
92 外部コントローラ
100 PSU筐体(ハウジング)
102 ピストン用内空部(ピストンボア)
104 後室(リアチャンバ)
106 隔壁(パーティション)
110 モータ軸(シャフト)
116 シャフト軸受
118 ボールねじアクチュエータ
120 アクチュエータ・ナット
122 回転軸(スピンドル)
124 ボールベアリング
126 歯車機構(ギヤセット)
128 環状封止器(リングシール)
130 末端部
132 第一PSUポート
134 第二PSUポート
140 ピストンシール
142 第一回転防止構造
144 第二回転防止構造
150,152,154,156 PSUアセンブリ
170,172,174,176 HCU本体
171,173,175 上面
212 PFE分離バルブ(PFIV)
220,320,420 ワンボックス型BbWデバイス
312 制動回路分離バルブ(BCIV)
314 制動回路平衡化孔
図1
図2
図3
図4
図5A-5C】
図6A-6C】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14