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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】車両の操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240604BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022521098
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2021014018
(87)【国際公開番号】W WO2022208804
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500024274
【氏名又は名称】ティッセンクルップ・プレスタ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】判治 宗嗣
(72)【発明者】
【氏名】クルチャール・ダーヴィド
(72)【発明者】
【氏名】セペッシー・イムレ
(72)【発明者】
【氏名】ドンバイ・ラースロー
(72)【発明者】
【氏名】カカス・ペーテル
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-535192(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122562(WO,A1)
【文献】特開2012-139097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵装置であって、
操舵操作を受け付ける操舵部材と、
前記操舵部材から機械的に切り離され、車輪を転舵するように構成された転舵機構と、
前記操舵部材の操舵角を検出する操舵角センサと、
前記車輪の転舵角を検出する転舵角センサと、
前記転舵機構に駆動力を与える転舵アクチュエータと、
前記操舵操作に対する反力を前記操舵部材に付与する少なくとも2つの反力モータを含む反力アクチュエータと、
前記転舵角が前記操舵角に対して所定関係になるように前記転舵アクチュエータを駆動制御するとともに、前記反力が前記車輪の転舵状態に応じた値になるように前記反力アクチュエータを駆動制御する制御装置とを備え、
前記反力アクチュエータの通常の動作中には、前記制御装置は、前記反力モータを制御して、前記反力アクチュエータの出力を、前記反力モータのそれぞれに0よりも大きな所定の配分比をもって分担させ、
前記制御装置は、前記反力モータの故障を検出する故障検出部を備え、前記反力モータの1つが正常であり、他のすべての故障が検出された場合、故障が検出された前記反力モータの前記1つの出力を、増加させることなく所定の制限値まで漸減させ
前記制御装置は、前記反力モータの前記1つの前記出力を前記制限値まで漸減させる際の減少率を、車速が高いほど小さく設定する、車両の操舵装置。
【請求項2】
車両の操舵装置であって、
操舵操作を受け付ける操舵部材と、
前記操舵部材から機械的に切り離され、車輪を転舵するように構成された転舵機構と、
前記操舵部材の操舵角を検出する操舵角センサと、
前記車輪の転舵角を検出する転舵角センサと、
前記転舵機構に駆動力を与える転舵アクチュエータと、
前記操舵操作に対する反力を前記操舵部材に付与する少なくとも2つの反力モータを含む反力アクチュエータと、
前記転舵角が前記操舵角に対して所定関係になるように前記転舵アクチュエータを駆動制御するとともに、前記反力が前記車輪の転舵状態に応じた値になるように前記反力アクチュエータを駆動制御する制御装置とを備え、
前記反力アクチュエータの通常の動作中には、前記制御装置は、前記反力モータを制御して、前記反力アクチュエータの出力を、前記反力モータのそれぞれに0よりも大きな所定の配分比をもって分担させ、
前記制御装置は、前記反力モータの故障を検出する故障検出部を備え、前記反力モータの1つが正常であり、他のすべての故障が検出された場合、故障が検出された前記反力モータの前記1つの出力を、増加させることなく所定の制限値まで漸減させ
前記制御装置は、前記車両の旋回走行中に、前記反力モータの前記1つの前記出力を前記制限値まで漸減させる際の減少率を直進走行中の前記減少率に比べて小さくする、車両の操舵装置。
【請求項3】
車両の操舵装置であって、
操舵操作を受け付ける操舵部材と、
前記操舵部材から機械的に切り離され、車輪を転舵するように構成された転舵機構と、
前記操舵部材の操舵角を検出する操舵角センサと、
前記車輪の転舵角を検出する転舵角センサと、
前記転舵機構に駆動力を与える転舵アクチュエータと、
前記操舵操作に対する反力を前記操舵部材に付与する少なくとも2つの反力モータを含む反力アクチュエータと、
前記転舵角が前記操舵角に対して所定関係になるように前記転舵アクチュエータを駆動制御するとともに、前記反力が前記車輪の転舵状態に応じた値になるように前記反力アクチュエータを駆動制御する制御装置とを備え、
前記反力アクチュエータの通常の動作中には、前記制御装置は、前記反力モータを制御して、前記反力アクチュエータの出力を、前記反力モータのそれぞれに0よりも大きな所定の配分比をもって分担させ、
前記制御装置は、前記反力モータの故障を検出する故障検出部を備え、前記反力モータの1つが正常であり、他のすべての故障が検出された場合、故障が検出された前記反力モータの前記1つの出力を、増加させることなく所定の制限値まで漸減させ
前記制御装置は、前記操舵角の絶対値が所定値より大きいときのみに、前記反力モータの前記1つの前記出力を漸減させる、車両の操舵装置。
【請求項4】
前記制限値は、前記操舵部材に外力が加えられない状態で、前記反力アクチュエータが前記操舵部材を駆動可能な値以上である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車両の操舵装置。
【請求項5】
前記操舵部材は、ステアリングシャフトの軸線周りに回転可能なステアリングホイールを含み、
前記制限値は、運転者の片腕に相当する荷重が前記ステアリングホイールに作用したときのトルクを相殺するのに必要な前記反力モータの前記出力よりも小さい請求項に記載の車両の操舵装置。
【請求項6】
前記操舵部材を振動させる振動装置を更に備え、前記制御装置が前記振動装置の動作を制御するように構成され、
前記制御装置は、前記車両の直進走行中に、前記振動装置を駆動して前記操舵部材を振動させる共に、前記反力モータの前記1つの前記出力を漸減させる請求項1~請求項のいずれか1項に記載の車両の操舵装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記車両の直進走行中のみに前記振動装置を駆動し、前記振動装置を駆動している間は前記転舵角が変化しないように前記転舵アクチュエータを制御する請求項に記載の車両の操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアバイワイヤ式の車両の操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者が操作するステアリングホイール等の操舵部材と、操舵部材から機械的に切り離され、車輪の転舵角を変化させる転舵機構とを有するステアバイワイヤ式の車両の操舵装置が公知である。転舵機構は、車輪の転舵角を変更するための駆動力を発生する転舵アクチュエータによって駆動される。操舵部材には、操舵操作に対する反力が反力アクチュエータによって付与される。
【0003】
このようなステアバイワイヤ式の操舵装置において、転舵モータが故障した場合においても舵取りが困難となることを防止するべく、操舵機構の相異なる位置に1対に転舵モータが設けられたものが公知である(特許文献1)。この操舵装置では、制御装置は必要な転舵力を所定の比率にて配分して各転舵モータの出力目標値を決定する。一方の転舵モータが故障した場合、制御装置は故障側の転舵モータの出力を禁じ、非故障側の転舵モータの出力を増やすべく配分の比率を変更し、非故障側の転舵モータ単独での舵取りを行わせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-218000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の操舵装置では、反力アクチュエータとして1つの反力モータだけが設けられている。そのため、反力モータが故障した場合には、操舵部材に付与される操舵反力が急激に小さくなるために、運転者が操舵部材を過度に切り込み、運転者の意図に反して操舵角が大きくなる虞がある。
【0006】
ここで、特許文献1に記載のモータを2つ設ける転舵アクチュエータの構成を反力アクチュエータに適用することが考えられる。この場合、一方の反力モータが故障したときには、他方の反力モータの出力が増加し、故障した反力モータの損失による不足分を補うことになる。その結果、運転者は残された反力モータにより、支障なく車両を操作することができる。しかしながら、運転者は、車両の操作を支障なく継続できることから、冗長性の失われた状態で運転を続けることが考えられる。そのような状態に於いて、他方の反力モータも故障することがあり得る。この場合には、やはり操舵部材に付与される操舵反力が急激に小さくなるために、運転者が操舵部材を過度に切り込み、運転者の意図に反して操舵角が大きくなる虞がある。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑み、反力モータが故障した場合に、運転者が操舵部材を過度に切り込むことによって運転者の意図に反して操舵角が大きくなることを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のある実施形態は、車両(2)の操舵装置(1)であって、操舵操作を受け付ける操舵部材(10)と、前記操舵部材から機械的に切り離され、車輪(3)を転舵するように構成された転舵機構(11)と、前記操舵部材の操舵角(β)を検出する操舵角センサ(21)と、前記車輪の転舵角(α)を検出する転舵角センサ(32)と、前記転舵機構に駆動力を与える転舵アクチュエータ(13)と、前記操舵操作に対する反力(T)を前記操舵部材に付与する少なくとも2つの反力モータ(14)を含む反力アクチュエータ(15)と、前記転舵角が前記操舵角に対して所定関係になるように前記転舵アクチュエータを駆動制御するとともに、前記反力が前記車輪の転舵状態に応じた値(Tt)になるように前記反力アクチュエータを駆動制御する制御装置(16)とを備え、前記制御装置は、前記反力モータの故障を検出する故障検出部(36)を備え、前記反力モータの1つが正常であり、他のすべての故障が検出された場合、前記反力モータの前記1つの出力(Tta)を所定の制限値(TL)まで漸減させる。
【0009】
この構成によれば、1つ以外の他のすべての反力モータが故障した後、旋回走行中に正常であった反力モータが失陥したとしても、反力モータの出力は所定の制限値まで漸減しており、急に操舵反力が無くなることがないため、運転者が操舵部材を過度に切り込むことが抑制される。
【0010】
好ましくは、前記反力アクチュエータの通常の動作中には、前記制御装置は、前記反力モータを制御して、前記反力アクチュエータの出力を、前記反力モータにより所定の配分比をもって分担するとよい。
【0011】
この構成によれば、いずれの反力モータが故障するかに関わらず、結果として生じる反力の減少は同じであり、また、そのようなときの反力の低下を最小限に抑えることができる。
【0012】
好ましくは、前記制限値は、前記操舵部材に外力が加えられない状態で、前記反力アクチュエータが前記操舵部材を駆動可能な値(例えば、1Nm)以上であるとよい。
【0013】
この構成によれば、反力アクチュエータは反力モータの正常な1つの出力によって操舵部材を駆動できる。そのため、旋回走行中に運転者が操舵部材から手を離したときに、セルフアライメントトルクによって車輪及び操舵部材が中立位置に戻るときのように、制御装置は反力アクチュエータを駆動することで操舵部材を中立位置へ戻すことができる。また、これにより操舵角及び転舵角がともに0°になることから、中立位置にある操舵部材から直進状態であることを運転者が認知し易い。
【0014】
好ましくは、前記操舵部材は、ステアリングシャフト(18)の軸線周りに回転可能なステアリングホイール(19)を含み、前記制限値は、運転者の片腕に相当する荷重が前記ステアリングホイールに作用したときのトルク(例えば、6.35Nm)を相殺するのに必要な前記反力モータの前記出力よりも小さいとよい。
【0015】
この構成によれば、制御装置が反力モータの正常な1つ出力を制限値に制御しているときに、運転者が片腕の荷重をステアリングホイールに加えると、ステアリングホイールは腕の荷重方向へ回転する。即ち、運転者は片腕の重量のみで、ステアリングホイールを回転させ得ることとなる。つまり、運転者は、両腕でステアリングホイールを把持するか、片腕でステアリングホイールを把持する場合には力で腕を支えなければならない。そのため、その状態で正常だった1つの反力モータが故障して操舵反力が無くなっても、運転者がステアリングホイールを過度に切り込むことが抑制される。
【0016】
好ましくは、前記制御装置は、前記反力モータの前記1つの前記出力を前記制限値まで漸減させる際の減少率(R)を、車速(V)が高いほど小さく設定するとよい。
【0017】
この構成によれば、高速走行時には低速走行時に比べて反力モータの出力の減少率が小さくなり、操舵部材が運転者の意図に反して操舵されることが抑制される。よって、車両の直線安定性が向上する。
【0018】
好ましくは、前記制御装置は、前記車両の旋回走行中に、前記反力モータの前記1つの前記出力を前記制限値まで漸減させる際の減少率を直進走行中の前記減少率に比べて小さくするとよい。
【0019】
車両の旋回走行中には運転者が操舵部材に操舵力を加えており、旋回走行中に操舵反力が素早く減少すると、運転者の操舵力と操舵反力との釣り合いが崩れ、操舵部材が切り込まれる虞がある。この構成によれば、旋回走行中には反力モータの出力の減少率が小さいため、操舵反力の減少に運転者が慣れやすく、意図しない操舵部材の切り込みが抑制される。
【0020】
好ましくは、前記制御装置は、前記操舵角の絶対値(|β|)が所定値(βth)より大きいときのみに、前記反力モータの前記1つの前記出力を漸減させるとよい。
【0021】
車両の直進走行中に反力モータの出力が減少すると、次に旋回を始める時(操舵角を所定値以上にした時)に、操舵反力が運転者の想定よりも小さくなっていることから、運転者が操舵部材を過度に切り込む虞がある。この構成によれば、直進走行中には反力モータの出力が減少しないため、次に旋回を始める時に、操舵部材の過度な切り込みが抑制される。
【0022】
好ましくは、前記操舵部材を振動させる振動装置(15)を更に備え、前記制御装置が前記振動装置の動作を制御するように構成され、前記制御装置は、前記車両の直進走行中に、前記振動装置を駆動して前記操舵部材を振動させる共に、前記反力モータの前記1つの前記出力を漸減させるとよい。
【0023】
この構成によれば、車両の直進走行中においても、操舵部材が振動することによって操舵反力が減少していることを運転者に認識させることができる。
【0024】
好ましくは、前記制御装置は、前記車両の直進走行中のみに前記振動装置を駆動し、前記振動装置を駆動している間は前記転舵角が変化しないように前記転舵アクチュエータを制御するとよい。
【0025】
この構成によれば、車両の直進走行中に操舵部材の振動に起因して車両が蛇行することを防止できる。
【発明の効果】
【0026】
以上の構成によれば、反力モータの1つが正常であり、他のすべてが故障した場合に、運転者が操舵部材を過度に切り込むことによって運転者の意図に反して操舵角が大きくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る操舵装置の構成図
図2】制御装置が実行する反力トルク制御のフロー図
図3】操舵装置の動作の例を示すタイムチャート
図4】(A)車速ゲイン、(B)舵角ゲインを示す、減少率設定用のゲインマップ
図5】別の実施形態における舵角ゲインを示す減少率設定用のゲインマップ
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る車両2の操舵装置1の実施形態について説明する。図1に示すように、操舵装置1は、ステアバイワイヤ(SBW)式の車両操舵装置である。操舵装置1が設けられる車両2は、左右の前輪3及び左右の後輪(不図示)を備えた4輪自動車である。左右の前輪3は、転舵角αが変更可能にナックル7を介して車体8(図1において、下部の輪郭のみを表示)に支持され、転舵輪として機能する。転舵角αは、平面視において前輪3の前後方向に対する角度をいう。操舵装置1は、前輪3の転舵角αを変更する。
【0029】
操舵装置1は、車体8に操作可能に設けられた操舵部材10と、前輪3を転舵する転舵機構11とを有する。転舵機構11には、駆動力を与える2つの転舵モータ12(第1転舵モータ12A、第2転舵モータ12B)を含む転舵アクチュエータ13が設けられている。以下、2つの転舵モータ12の一方を区別することなく指す場合に、単に転舵モータ12ということがある。操舵部材10には、反力トルクTを与える2つの反力モータ14(第1反力モータ14A、第2反力モータ14B)を含む反力アクチュエータ15が設けられている。以下、2つの反力モータ14の一方を区別することなく指す場合に、単に反力モータ14ということがある。転舵アクチュエータ13及び反力アクチュエータ15は、制御装置16によって動作を制御される。転舵アクチュエータ13及び反力アクチュエータ15は、転舵モータ12及び反力モータ14を複数備える冗長系とされている。制御装置16も、それが複数設けられる冗長系とされてもよい。
【0030】
操舵部材10は、運転者による操舵操作を受け付ける。操舵部材10は、車体8に回転可能に支持されたステアリングシャフト18と、ステアリングシャフト18の一端に設けられたステアリングホイール19とを有する。ステアリングシャフト18は車体8に設けられたステアリングコラム(不図示)に回転可能に支持され、その後端はステアリングコラムから後方に突出している。ステアリングホイール19は、ステアリングシャフト18の後端に結合され、ステアリングシャフト18と一体に回転する。
【0031】
2つの反力モータ14は電動モータであり、それぞれギヤを介してステアリングシャフト18に連結されている。反力モータ14の少なくとも一方に電力が供給されて反力アクチュエータ15が作動すると、反力モータ14の出力(回転トルク)がステアリングシャフト18に操舵反力として伝達される。反力モータ14は回転トルクを発生させることにより、操舵操作に対する反力トルクTを操舵部材10に付与する。
【0032】
操舵装置1は、ステアリングシャフト18の軸線を中心とした回転角を操舵角βとして検出する操舵角センサ21を有する。操舵角センサ21は公知のロータリエンコーダであってよい。また、操舵装置1は、ステアリングシャフト18に加わるトルクを操舵トルクTsとして検出するトルクセンサ22を有する。トルクセンサ22は、ステアリングシャフト18におけるステアリングホイール19と反力アクチュエータ15との間の部分に加わる操舵トルクTsを検出する。操舵トルクTsは、運転者によってステアリングホイール19に加えられる操作トルクと、反力アクチュエータ15によってステアリングシャフト18に加えられる反力トルクTとによって定まる。トルクセンサ22は、磁歪式トルクセンサやひずみゲージ等の公知のトルクセンサ、又は反力アクチュエータ15の電動モータに流れる電流値に基づいた推定値を利用したものであってよい。
【0033】
操舵装置1は、第1反力モータ14A及び第2反力モータ14Bの回転角θを検出する2つの第1回転角センサ23(23A、23B)を有する。各第1回転角センサ23は、公知のレゾルバやロータリエンコーダであってよい。
【0034】
転舵機構11は、車幅方向に延びるラック軸26を有する。ラック軸26は、車幅方向に移動可能にギヤハウジング(不図示)に支持されている。ラック軸26の左右の端部は、タイロッド30を介して左右の前輪3をそれぞれ支持するナックル7に接続されている。ラック軸26が車幅方向に移動することによって、前輪3の転舵角αが変化する。転舵機構11は、操舵部材10から機械的に切り離されている。
【0035】
2つの転舵モータ12は電動モータであり、それぞれギヤを介してラック軸26に連結されている。転舵モータ12の少なくとも一方に電力が供給されて転舵アクチュエータ13が作動すると、転舵モータ12の出力(回転トルク)が左右方向の力に変換されてラック軸26に駆動力として作用する。ラック軸26が車幅方向に移動することにより、左右の前輪3の転舵角αが変化する。
【0036】
操舵装置1は、2つの転舵モータ12の回転角θを検出する2つの第2回転角センサ31(31A、31B)を有する。各第2回転角センサ31は、公知のレゾルバやロータリエンコーダであってよい。また、操舵装置1は、前輪3の転舵角αを検出する転舵角センサ32を有する。本実施形態では、転舵角センサ32は、ラック軸26の車幅方向における位置であるラック位置を検出するラックストロークセンサであり、ラック位置に基づいて前輪3の転舵角αを検出する。
【0037】
制御装置16は、CPUやメモリ、プログラムを記憶した記憶装置等を含む電子制御装置である。制御装置16には、操舵角センサ21、トルクセンサ22、2つの第1回転角センサ23、2つの第2回転角センサ31、転舵角センサ32が接続されている。制御装置16は、これらのセンサからの信号に基づいて、操舵角β、操舵トルクTs、各反力モータ14の回転角θ、各転舵モータ12の回転角θ、転舵角αに対応した信号を取得する。また、制御装置16は、車速センサ33、横加速度センサ34に接続され、車速V、車体8の横加速度Gy等を取得する。
【0038】
制御装置16は、反力アクチュエータ15及び転舵アクチュエータ13に接続され、反力アクチュエータ15(2つの反力モータ14)及び転舵アクチュエータ13(2つの転舵モータ12)を制御する。制御装置16は、操舵角βに応じて転舵アクチュエータ13を制御し、且つ転舵角αに応じて反力アクチュエータ15を制御する。
【0039】
以下、制御装置16のSBWモードにおける制御を具体的に説明する。制御装置16は、操舵角センサ21によって検出された操舵角βに基づいて、操舵角βに対して所定関係をなす目標転舵角αtを演算する。制御装置16は、例えば操舵角βに所定のギヤ比Kを掛けることによって目標転舵角αtを演算するとよい(αt=β×K)。ギヤ比Kは例えば0.01~0.5であり、一例として0.125であるとよい。そして、制御装置16は、転舵角αが目標転舵角αtとなるように、目標転舵角αtと転舵角αとの偏差Δα(=αt-α)に基づいて各転舵モータ12に供給すべき第1電流値A1を演算する。すなわち、制御装置16は、偏差Δαに基づいて、転舵モータ12のフィードバック制御を行う。制御装置16は、第1転舵モータ12A及び第2転舵モータ12Bのそれぞれの第1電流値A1を、所定の配分比(例えば、50%:50%)となるように演算する。転舵アクチュエータ13に供給される第1電流値A1の合計値は、偏差Δαが大きいほど大きく、第1電流値A1の合計値が大きくなるほど、転舵アクチュエータ13の出力が大きくなり、転舵角αの変化速度が速くなる。
【0040】
制御装置16は、前輪3の転舵状態に応じて、具体的には偏差Δαに基づいて、両反力モータ14に発生させるべき目標反力トルクTtを演算する。目標反力トルクTtは、転舵角αの偏差Δαが大きいほど大きく設定される。目標反力トルクTtはΔαに所定の係数を掛けることによって演算されるとよい。制御装置16は、目標反力トルクTtに基づいて、第1反力モータ14A及び第2反力モータ14Bのそれぞれに発生させるべき配分反力トルクTta及びTtbを演算する。反力モータ14の故障が検出されていない場合、第1反力モータ14A及び第2反力モータ14Bの配分反力トルクTta及びTtbは、例えば、50%:50%の配分比となるように演算されるとよい。そして、制御装置16は、演算した各配分反力トルクTta及びTtbに基づいて、対応する反力モータ14に供給すべき第2電流値A2を演算する。反力モータ14に供給される電流値(第1反力モータ14Aと第2反力モータ14Bとの間で分配される第2電流値A2)は、所定のマップを参照することによって決定ことができる。
【0041】
制御装置16は、各第2電流値A2を対応する反力モータ14に供給し、反力アクチュエータ15に出力(回転トルク)を発生させる。反力アクチュエータ15の出力は、ステアリングシャフト18に運転者の操作入力に抗する反力トルクTとして加えられる。これにより、運転者は、操舵操作に対する反力(抵抗力)をステアリングホイール19から受けることができる。
【0042】
また制御装置16は、反力モータ14に供給する第2電流値A2に、高周波にて交番的に正負反転する成分を付加することにより、ステアリングホイール19に回転微振動を加えることができる。ステアリングホイール19の回転微振動は、ステアリングホイール19を把持する運転者への警報として利用される。このとき、反力アクチュエータ15は操舵部材10を振動させる振動装置として機能する。制御装置16は反力アクチュエータ15を振動装置として機能させるように制御する。
【0043】
また、制御装置16は、各転舵モータ12及び各反力モータ14の故障を検出する故障検出部36を備えている。例えば、反力モータ14のいずれかが故障すると反力トルクが半減する。それにより、いずれかの反力モータ14が故障したことを検出することができる。1つの反力モータ14の故障を検出した場合、故障検出部36は、第1反力モータ14A及び第2反力モータ14Bのそれぞれに順次トルク指令値を与えることで、個別に反力トルクTを発生させ、適切な反力トルクTが検出されるか否かに応じ、故障したのがいずれの反力モータ14であるかを特定することができる。
【0044】
図2は制御装置16が実行する反力トルク制御のフロー図である。制御装置16は、起動すると、次の反力トルク制御を実行する。制御装置16はまず、各センサの出力を取得する(ステップST1)。次に制御装置16は、転舵角αの偏差Δαに基づいて、両反力モータ14に発生させるべき目標反力トルクTt(合計値)を演算する(ステップST2)。制御装置16は、故障検出部36によって反力モータ14の故障が検出されているか否かを判定する(ステップST3)。反力モータ14の故障が検出されていない場合(ST3:No)、制御装置16は、両反力モータ14の配分比を、上記のように通常時の配分比である50%:50%に設定する(ステップST4)。
【0045】
続いて、制御装置16は、上記配分比になるような演算した各反力モータ14の配分反力トルクTtaに基づいて、各反力モータ14に供給すべき第2電流値A2を演算する(ステップST5)。制御装置16は、演算した第2電流値A2を各反力モータ14に供給する(ステップST6)。これにより、反力アクチュエータ15の出力が、反力トルクTとして操舵部材10に付与される。ステップST6にて第2電流値A2を出力した後、制御装置16は上記手順を繰り返す。
【0046】
一方、ステップST3にて反力モータ14の故障が検出されている場合(ST3:Yes)、制御装置16は、第1反力モータ14Aが故障しているか否かを判定する(ステップST7)。第1反力モータ14Aの故障が検出されている場合(ST7:Yes)、制御装置16は、第1反力モータ14Aの配分比を0に設定する(ステップST8)。第1反力モータ14Aの故障が検出されていない場合(ST7:No)、制御装置16は、第2反力モータ14Bの配分比を0に設定する(ステップST9)。続いて、制御装置16は、故障していない他方の反力モータ14(以下、単に「正常な反力モータ14」という)の配分比を、通常時の配分比である50%から漸減させる漸減処理を実行する(ステップST10)。ステップST10にて正常な反力モータ14の配分比を設定した後、制御装置16は、上記のステップST5へ処理を進め、ステップST6で第2電流値A2を出力した後、上記手順を繰り返す。ステップST10において、制御フローがステップST5に進む前に、正常な反力モータ14の出力が漸減される。この場合も、ステップST5で第2電流値A2が演算され、ステップST6で第2電流値A2が出力される。このプロセスは、反力アクチュエータ15の出力が制限値TLに到達し、この値に保たれるまで繰り返される。
【0047】
制御装置16がこのようにして反力トルク制御を実行することにより、反力モータ14の出力である反力トルクTは以下のように変化する。図3は、操舵装置1の動作の例を示すタイムチャートである。図3に示すように、正常に作動していた第1反力モータ14A及び第2反力モータ14Bの一方(図示例では第1反力モータ14A)が、時点t1にて故障する。制御装置16の故障検出部36は、時点2において、故障した反力モータ14を特定する。故障した反力モータ14を特定すると、制御装置16は、故障した側の反力モータ14の出力を0に設定し、正常な反力モータ14の出力を50%から所定の制限値TLまで漸減させる漸減処理(ランプダウン処理)を開始する。漸減処理の進行により、正常な反力モータ14の出力は時点t3にて制限値TLになる。時点t3以降、制御装置16は正常な反力モータ14の出力を制限値TLに維持する。制限値TLは、正常な反力モータ14の通常時の配分比、すなわち50%よりも低ければよい。
【0048】
このように、反力モータ14の一方の故障が検出された場合、制御装置16は正常な反力モータ14の出力を所定の制限値TLまで漸減させる。これにより、反力モータ14の出力は時点t3において所定の制限値TLまで漸減しており、反力トルクの減少に慣れてくるため、その後に車両2の旋回走行中に正常な反力モータ14が失陥したとしても、急に反力トルクTが無くなることがない。そのため、運転者がステアリングホイール19を過度に切り込むことが抑制される。
【0049】
制限値TLはここでは百分率で表されるが、通常の反力トルク値に対する百分率を意味する。具体的には、制限値TLは、ステアリングホイール19に、運転者による操舵トルク等の外力が加えられていない状態で、反力アクチュエータ15がステアリングホイール19を回転駆動可能な値以上であるとよい。操舵部材10は回転操作時に回転摩擦を発生するため、この摩擦抵抗に打ち勝つ値として、制限値TLは例えば1Nm以上であるとよい。また、制限値TLは、運転者の片腕に相当する荷重がステアリングホイール19に作用したときのトルクを相殺するのに必要な反力モータ14の出力よりも小さいとよい。運転者の片腕の荷重が3.5kgf、ステアリングホイール19の半径が0.18mとすると、運転者の片腕に相当する荷重がステアリングホイール19に作用したときのトルクは、6.35Nmである。よって、制限値TLは、1Nm以上且つ6.35Nm未満であるとよい。
【0050】
このように制限値TLが1Nm以上に設定されることにより、反力アクチュエータ15は正常な反力モータ14の出力によって操舵部材10を駆動できる。そのため、旋回走行中に運転者がステアリングホイール19から手を離したときに、セルフアライメントトルクによって前輪3及び操舵部材10が中立位置に戻るときのように、制御装置16は反力アクチュエータ15を駆動することで操舵部材10を中立位置へ戻すことができる。また、これにより操舵角β及び転舵角αがともに0°になることから、中立位置にあるステアリングホイール19から直進状態であることを運転者が認知し易い。
【0051】
また、制限値TLが6.35Nm未満に設定されることにより、制御装置16が正常な反力モータ14の出力を制限値TLに制御しているときに、運転者が片腕の荷重をステアリングホイール19に加えると、ステアリングホイール19は腕の荷重方向へ回転する。即ち、運転者は片腕の重量のみで、ステアリングホイール19を回転させ得ることとなる。つまり、運転者は、両腕でステアリングホイール19を把持するか、片腕でステアリングホイール19を把持する場合には力で腕を支えなければならない。そのため、その状態で正常な反力モータ14が故障して反力トルクTが無くなっても、運転者がステアリングホイール19を過度に切り込むことが抑制される。
【0052】
次に、漸減処理について詳細に説明する。制御装置16は、正常な反力モータ14の出力を漸減するに際し、出力の減少率Rを設定し、正常な反力モータ14の出力を減少率Rに基づいて徐々に減少させる。ここで、減少率Rは、単位時間あたりに減少させる出力の大きさと定義される。減少率Rが大きいほど反力モータ14の出力は速く減少し、減少率Rが小さいほど反力モータ14の出力は遅く減少する。つまり、減少率Rが大きいほど、図3に「減少率R」として示す角度が大きく、50%から制限値TLに至るまでの時間T(T=t4-t3)が短い。制御装置16は、この減少率Rを、一定の値ではなく可変の値として設定する。制御装置16は、例えば、減少率Rの一定の標準値として標準減少率RSを5%/secに設定し、車両2の運動状態等を示す各種のパラメータに応じ、標準減少率RSを変化させるようにして、減少率Rを演算するとよい。
【0053】
具体的には、制御装置16は次のようにして減少率Rを演算する。図4は、減少率設定用のゲインマップであり、(A)は車速ゲインG1を、(B)は舵角ゲインG2を示している。図4(A)に示すように、車速ゲインG1は、車速Vが高いほど小さくなるように設定されている。図4(B)に示すように、舵角ゲインG2は、操舵角βの絶対値|β|が大きいほど小さくなるように設定されている。舵角ゲインG2は、操舵角βの絶対値|β|が所定値βth以下のときは1に設定される。制御装置16は、車速Vに基づいて車速ゲインマップから車速ゲインG1を設定し、操舵角βに基づいて舵角ゲインマップから舵角ゲインG2を設定する。制御装置16は、標準減少率RSに車速ゲインG1及び舵角ゲインG2を乗じることにより減少率Rを演算する。よって、車両2の旋回走行中の減少率Rは、車両2の直進走行中の減少率Rに比べて小さくなる。
【0054】
このように制御装置16は、正常な反力モータ14の出力の減少率Rを、車速Vが高いほど小さく設定する。これにより、高速走行時には低速走行時に比べて反力モータ14の出力の減少率Rが小さくなり、ステアリングホイール19が運転者の意図に反して操舵されることが抑制される。つまり、操舵が軽くなる状態変化に運転者が慣れやすい。よって、車両2の直線安定性が向上する。
【0055】
ところで、車両2の旋回走行中には運転者がステアリングホイール19に操舵トルクを加えており、旋回走行中に反力トルクTが素早く減少すると、運転者の操舵トルクと反力トルクTとの釣り合いが崩れ、ステアリングホイール19が切り込まれる虞がある。本実施形態では、図4(B)に示すように制御装置16は、車両2の旋回走行中に、正常な反力モータ14の出力の減少率Rを直進走行中の減少率Rに比べて小さくする。これにより、旋回走行中には反力モータ14の出力の減少率Rが小さいため、反力トルクTの減少に運転者が慣れやすく、意図しないステアリングホイール19の切り込みが抑制される。
【0056】
反力モータ14の一方が故障し、車両2が直進している間、他方の反力モータ14の出力が減少し続けた場合、その後に於ける旋回に際して(操舵角βの絶対値が所定の値βth以上の場合)、反力トルクTが予想以上に低下していることとなることから、その旋回時にステアリングホイール19を過度に回す可能性がある。
【0057】
そこで、本実施形態では、制御装置16は、反力アクチュエータ15を制御して、操舵部材10が振動装置として機能するようにする。例えば、反力モータ14の1つが故障した場合、通常の反力モータ14の出力に振動成分を重ね合わせることができる。その結果、運転者は、反力モータ14の1つが故障したことを報知され、反力トルクTが低下していることを認知でき、それにより、必要な措置を講じることが促される。
【0058】
制御装置16は、車両2の直進走行中のみに反力アクチュエータ15を操舵部材10に対する振動装置として駆動するとよい。そして制御装置16は、振動装置として反力アクチュエータ15を駆動している間は転舵角αが変化しないように転舵アクチュエータ13を制御する。具体的には、制御装置16は、転舵アクチュエータ13の目標転舵角αtの演算に用いる操舵角βにローパスフィルタ処理を行う。これにより、目標転舵角αtが操舵角βの微小変化に応じて変化することが防止される。ただし、転舵アクチュエータ13の制御方法はこれに限定されるものではない。制御装置16がこのよう転舵アクチュエータ13を制御することにより、車両2の直進走行中に操舵部材10の振動に起因して車両2が蛇行することが防止される。
【0059】
図5は本発明の別の実施形態を示す。この別の実施形態では、操舵角βが所定値βth以下の場合、即ち車両が実質的に直進している場合、舵角ゲインG2は実質的にゼロされる。操舵角βの絶対値|β|が所定値βthを超えると、舵角ゲインG2は操舵角βの絶対値|β|の増大に応じて大きくなる。したがって、この代替実施形態では、操舵角βが所定値βth以下の場合、又は車両が実質的に直進している場合、反力トルクTの減少率Rはゼロとされる。
【0060】
その結果、直進時に反力モータ14の出力が低下しないため、その後の旋回操作開始時にステアリングホイール19が過度に回されることが防止される。一方、車両がある程度旋回している場合、反力トルクの減少率Rは比較的大きな値となってよい。コーナリング時に反力トルクTが徐々に低下するのであれば、運転者は反力トルクTの低下に慣れることができる。
【0061】
本別実施形態でも、車両2の直進走行時にステアリングホイール19に振動を付与することもできるが、本別実施形態では、直進走行時には反力トルクの低下が進行していないことから、制御装置16が反力アクチュエータ15を振動装置として作動させる必要はない。むしろ、直進走行時に反力アクチュエータ15を振動装置として作動させ続けると、反力アクチュエータ15が発熱することがあり、そのような事態を回避することができる。
【0062】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。上記実施形態では、反力アクチュエータ15が2つの反力モータ14を含んでいるが、反力アクチュエータ15が3つ以上の反力モータ14を含んでいてもよい。この場合、反力モータ14の1つが正常であり、他のすべての故障が検出されたときに、制御装置16は正常な1つの反力モータ14の目標反力トルクTtを制限値TLまで漸減させればよい。
【0063】
また上記実施形態では、通常時に、制御装置16が両反力モータ14の配分比を50%:50%に設定しているが、60%:40%や、70%:30%等に設定してもよい。この場合、一方の反力モータ14が故障したときに、制御装置16が正常な反力モータ14の配分比を50%に設定した後に、その出力を所定の制限値TLまで漸減させるとよい。或いは、配分比が小さい方の反力モータ14が故障した場合に、制御装置16が正常な反力モータ14の出力をその値から漸減させてもよい。また、両転舵モータ12の配分比も、50%:50%に限定されるものではない。
【0064】
また、減少率Rは、各現電流値に比例する減少の割合として定義することもでき、その場合の減少率Rは指数関数的減衰定数によって表すことができる。
【0065】
この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、角度、手順など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更することができる。一方、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 :操舵装置
2 :車両
3 :前輪
10 :操舵部材
11 :転舵機構
13 :転舵アクチュエータ
14 :反力モータ
14A :第1反力モータ
14B :第2反力モータ
15 :反力アクチュエータ(振動装置)
16 :制御装置
18 :ステアリングシャフト
19 :ステアリングホイール
21 :操舵角センサ
32 :転舵角センサ
33 :車速センサ
34 :横加速度センサ
36 :故障検出部
R :減少率
T :反力トルク(反力)
TL :制限値
Tt :目標反力トルク
Tta :配分反力トルク(出力)
V :車速
α :転舵角
β :操舵角
βth :所定値
|β| :操舵角の絶対値
図1
図2
図3
図4
図5