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特許7498271高耐久性を有する燃料電池用電極、その製造方法、及びそれを含む膜-電極アセンブリー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】高耐久性を有する燃料電池用電極、その製造方法、及びそれを含む膜-電極アセンブリー
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/90 20060101AFI20240604BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20240604BHJP
   B01J 31/28 20060101ALI20240604BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20240604BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20240604BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20240604BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240604BHJP
【FI】
H01M4/90 M
B01J23/42 M
B01J31/28 M
B01J37/04 102
H01M4/86 B
H01M4/88 K
H01M8/10 101
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022523721
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 KR2020018963
(87)【国際公開番号】W WO2021137513
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】10-2019-0178200
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョンホ
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/032802(WO,A1)
【文献】特開2017-006809(JP,A)
【文献】特開2011-044243(JP,A)
【文献】特表2010-506822(JP,A)
【文献】特開2014-050791(JP,A)
【文献】特表2016-504176(JP,A)
【文献】特表2019-522884(JP,A)
【文献】特開2010-244700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86-4/98
B01J 37/04
B01J 23/42
B01J 31/28
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体(support)及び該担体上に担持されている金属触媒粒子を含む触媒;及び
前記触媒の少なくとも一部上にコートされたイオノマー層(ionomer layer)を含み、
前記イオノマー層は、イオノマー及びキレート剤を含み、
前記キレート剤は、ジメルカプロール(dimercaprol)である、燃料電池用電極。
【請求項2】
前記イオノマー層は、化学的結合ではなく物理的結合のみによって前記触媒と結合している、請求項1に記載の燃料電池用電極。
【請求項3】
前記イオノマーは、フッ素系イオノマー又は炭化水素系イオノマーである、請求項1に記載の燃料電池用電極。
【請求項4】
触媒、イオノマー、キレート剤、及び分散媒を含む電極スラリーを準備する段階;
前記電極スラリーをフィルム(film)又は膜(membrane)上にコートしてスラリー層(slurry layer)を形成する段階;及び
前記スラリー層から前記分散媒を除去する段階を含み、
前記キレート剤は、ジメルカプロール(dimercaprol)である、燃料電池用電極の製造方法。
【請求項5】
前記電極スラリーは、前記イオノマー100重量部を基準に0.01~10重量部の前記キレート剤を含む、請求項に記載の燃料電池用電極の製造方法。
【請求項6】
前記電極スラリー準備段階は、
前記イオノマーと前記キレート剤を含む混合物(mixture)を準備する段階;
前記触媒と前記分散媒を含む触媒分散液(catalyst dispersion)を準備する段階;
前記混合物を前記触媒分散液と混合して混合液を得る段階;及び
均質混合器(homogenizer)、高圧分散器(high pressure homogenizer)、ボールミル(ball mill)、パウダーミキサー(powder mixer)、又は共鳴音響混合器(resonant acoustic mixer)を用いて前記混合液に対する分散工程を行う段階を含む、請求項に記載の燃料電池用電極の製造方法。
【請求項7】
前記触媒分散液準備段階は、
前記触媒を水にぬらす段階;及び
水にぬらした前記触媒を前記分散媒に分散させる段階を含む、請求項に記載の燃料電池用電極の製造方法。
【請求項8】
触媒、イオノマー、キレート剤、及び分散媒を含む電極スラリーを準備する段階;
前記電極スラリーをフィルム(film)又は膜(membrane)上にコートしてスラリー層(slurry layer)を形成する段階を含み、
前記電極スラリー準備段階は、
前記イオノマーと前記キレート剤を含む混合物を準備する段階;
前記触媒を含む触媒分散液を準備する段階;
前記混合物を前記触媒分散液と混合して混合液を得る段階;
均質混合器、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー、又は共鳴音響混合器を用いて前記混合液に対する分散工程を行う段階;
前記分散された混合液を乾燥させて固形物を得る段階;
前記固形物を熱処理する段階;及び
均質混合器、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー、又は共鳴音響混合器を用いて、前記熱処理された固形物を前記分散媒に分散させる段階を含む、燃料電池用電極の製造方法。
【請求項9】
前記触媒分散液は、前記触媒を水に分散させることによって準備する、請求項に記載の燃料電池用電極の製造方法。
【請求項10】
触媒、イオノマー、キレート剤、及び分散媒を含む電極スラリーを準備する段階;
前記電極スラリーをフィルム(film)又は膜(membrane)上にコートしてスラリー層(slurry layer)を形成する段階;及び
前記スラリー層から前記分散媒を除去する段階を含み、
前記電極スラリー準備段階は、
前記イオノマーを含むイオノマー分散液と前記触媒を含む触媒分散液とを混合して第1混合液を得る段階;
均質混合器、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー、又は共鳴音響混合器を用いて前記第1混合液に対する分散工程を行う段階;
前記分散された第1混合液を乾燥させて固形物を得る段階;
前記固形物を熱処理する段階;
前記熱処理された固形物を前記分散媒と混合して第2混合液を得る段階;
前記イオノマーと前記キレート剤を含む混合物を準備する段階;
前記混合物を前記第2混合液と混合して第3混合液を得る段階;及び
均質混合器、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー、又は共鳴音響混合器を用いて前記第3混合液に対する分散工程を行う段階を含む、燃料電池用電極の製造方法。
【請求項11】
前記触媒分散液は、水を分散媒として含む、請求項10に記載の燃料電池用電極の製造方法。
【請求項12】
触媒、イオノマー、キレート剤、及び分散媒を含む電極スラリーを準備する段階;
前記電極スラリーをフィルム(film)又は膜(membrane)上にコートしてスラリー層(slurry layer)を形成する段階;及び
前記スラリー層から前記分散媒を除去する段階を含み、
前記電極スラリー準備段階は、
前記イオノマーと前記キレート剤を含む混合物を準備する段階;
前記触媒を含む触媒分散液を準備する段階;
前記混合物の一部を前記触媒分散液と混合して第1混合液を得る段階;
均質混合器、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー、又は共鳴音響混合器を用いて前記第1混合液に対する分散工程を行う段階;
前記分散された第1混合液を乾燥させて固形物を得る段階;
前記固形物を熱処理する段階;
前記熱処理された固形物と前記混合物の残りを前記分散媒に混合して第2混合液を得る段階;及び
均質混合器、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー、又は共鳴音響混合器を用いて前記第2混合液に対する分散工程を行う段階を含む、燃料電池用電極の製造方法。
【請求項13】
前記触媒分散液は、前記触媒を水に分散させることによって準備する、請求項12に記載の燃料電池用電極の製造方法。
【請求項14】
アノード;
カソード;及び
前記アノードと前記カソードとの間の高分子電解質膜を含み、
前記アノードと前記カソードの少なくとも一方は、請求項1の電極である、膜-電極アセンブリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用電極、その製造方法、及びそれを含む膜-電極アセンブリーに関し、より具体的には、金属触媒粒子の凝集(agglomeration)、沈積(precipitation)、溶出(dissolution)、及び/又は移動(migration)による触媒の劣化を防止することによって高い耐久性を有する燃料電池用電極、その製造方法、及びそれを含む膜-電極アセンブリーに関する。
【背景技術】
【0002】
膜-電極アセンブリー(Membrane-Electrode Assembly:MEA)とセパレーター(separator)[‘バイポーラプレート(bipolar plate)’ともいう。]とからなる単位セル(unit cell)の積層構造を用いて電気を発生させる高分子電解質膜燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell:PEMFC)は、高いエネルギー効率性と環境にやさしい特徴から、化石エネルギーを代替できる次世代エネルギー源として注目されている。
【0003】
前記膜-電極アセンブリーは、一般に、アノード(anode)(‘燃料極’ともいう。)、カソード(cathode)(‘空気極’ともいう。)、及びそれらの間における高分子電解質膜(Polymer Electrolyte Membrane:PEM)を含む。
【0004】
水素ガスのような燃料がアノードに供給されると、アノードでは水素の酸化反応によって水素イオン(H+)と電子(e-)が生成される。生成された水素イオンは、高分子電解質膜(PEM)を通じてカソードに伝達され、生成された電子は、外部回路を通じてカソードに伝達される。カソードに供給される空気中の酸素が前記水素イオン及び前記電子と結合して還元されることによって水が生成される。
【0005】
燃料電池用電極の形成のための金属触媒(metal catalyst)としては、高い触媒活性及び高い耐腐食性を有する白金又は白金系合金が使用されている。
【0006】
また、触媒の活性表面積を増加させるための努力の一環として、電気伝導性を有する担体(support)(例えば、炭素、金属酸化物、Cなど)の表面上に金属触媒粒子を分散させて形成した触媒が一般的に使用されている。
【0007】
図1は、電圧サイクリングテスト(voltage cycling test:VC test)前後の通常の燃料電池用電極を示す模式図(schematic diagram)である。
【0008】
通常の燃料電池用電極は、触媒10及び該触媒10上のイオノマー層20を含む。前記触媒10は、担体11及び該担体11上に担持されている金属触媒粒子12を含む。
【0009】
図1に例示するように、燃料電池が長期間駆動されると、高い電圧及び高い酸性環境のため、前記金属触媒の凝集(agglomeration)11a、沈積(precipitation)、溶出(dissolution)、及び/又は移動(migration)11bが起き、前記触媒10の劣化(degradation)が加速化する。したがって、燃料電池の長期間駆動による触媒の劣化を防止することが、燃料電池の耐久性及び寿命の向上に非常に重要である。
【0010】
触媒の劣化を防止するための一環として、金属触媒粒子の表面を炭素殻でコートすることが提案されたこともあるが、前記炭素殻は触媒の活性面積を減少させる他、ガス及び/又は水のような物質の伝達も妨害し、燃料電池の出力性能を低下させるという点で好ましくない。しかも、炭素殻を導入する別個の工程が必要であり、不経済的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、上のような関連技術の制限及び欠点に起因する問題点を防止できる燃料電池用電極、その製造方法、及びそれを含む膜-電極アセンブリーに関する。
【0012】
本発明の一観点は、金属触媒粒子の凝集、沈積、溶出、及び/又は移動による触媒の劣化を防止することによって高い耐久性を有する燃料電池用電極を提供することである。
【0013】
本発明の他の観点は、金属触媒粒子の凝集、沈積、溶出、及び/又は移動による触媒の劣化を防止することによって高い耐久性を有する燃料電池用電極を製造する方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の観点は、高い耐久性を有する膜-電極アセンブリーを提供することである。
【0015】
上に言及された本発明の観点の他にも、本発明の別の特徴及び利点が以下に説明されるか、そのような説明から、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上のような本発明の一観点によって、担体(support)及び該担体上に担持されている金属触媒粒子を含む触媒;及び、前記触媒の少なくとも一部上にコートされたイオノマー層(ionomer layer)を含み、前記イオノマー層は、イオノマー及びキレート剤を含む、燃料電池用電極が提供される。
【0017】
前記イオノマー層は、化学的結合ではなく物理的結合のみによって前記触媒と結合していてよい。
【0018】
前記イオノマーは、フッ素系イオノマー又は炭化水素系イオノマーであってよい。
【0019】
前記キレート剤は、ジメルカプロール(dimercaprol)、フタロシアニン(phthalocyanine)、M-フタロシアニン(M-phthalocyanine)(ここで、Mは、Cu、Co、Fe、又はMoである。)、ペニシラミン(penicillamine)、サクシマー(succimer)、デフェロキサミン(deferoxamine)、EDTA、EGTA、プルシアンブルー(prussian blue)、ビタミンB-12(vitamin B-12)、アルファ-リポ酸(α-lipoic acid)、エチレンジアミン(ethylenediamine)、トリエチルアミン(triethylamine)、フェナントロリン(phenanthroline)、デスフェリオキサミン(desferrioxamine)、デフェリプロン(deferiprone)、又はこれらの2以上の混合物であってよい。
【0020】
前記キレート剤は、ジメルカプロール、ペニシラミン、サクシマー、アルファ-リポ酸、トリエチルアミン、デフェリプロン、又はこれらの2以上の混合物であってよい。
【0021】
前記キレート剤は、少なくとも1個のS原子を含むことができる。
【0022】
少なくとも1個のS原子を含む前記キレート剤は、ジメルカプロール、ペニシラミン、サクシマー、アルファ-リポ酸、又はこれらの2以上の混合物であってよい。
【0023】
前記キレート剤は、少なくとも2個のS原子を含むことができる。
【0024】
少なくとも2個のS原子を含む前記キレート剤は、ジメルカプロール、サクシマー、アルファ-リポ酸、又はこれらの2以上の混合物であってよい。
【0025】
本発明の他の観点によって、触媒、イオノマー、キレート剤、及び分散媒を含む電極スラリーを準備する段階;前記電極スラリーをフィルム(film)又は膜(membrane)上にコートしてスラリー層(slurry layer)を形成する段階;及び、前記スラリー層から前記分散媒を除去する段階を含む、燃料電池用電極の製造方法が提供される。
【0026】
前記電極スラリーは、前記イオノマー100重量部を基準に0.01~10重量部の前記キレート剤を含むことができる。
【0027】
前記電極スラリー準備段階は、前記イオノマーと前記キレート剤を含む混合物(mixture)を準備する段階;前記触媒と前記分散媒を含む触媒分散液(catalyst dispersion)を準備する段階;前記混合物を前記触媒分散液と混合して混合液を得る段階;及び、均質混合器(homogenizer)、高圧分散器(high pressure homogenizer)、ボールミル(ball mill)、パウダーミキサー(powder mixer)、又は共鳴音響混合器(resonant acoustic mixer)を用いて前記混合液に対する分散工程を行う段階を含むことができる。
【0028】
前記触媒分散液準備段階は、前記触媒を水にぬらす段階;及び、水にぬらした前記触媒を前記分散媒に分散させる段階を含むことができる。
【0029】
前記電極スラリー準備段階は、前記イオノマーと前記キレート剤を含む混合物を準備する段階;前記触媒を含む触媒分散液を準備する段階;前記混合物を前記触媒分散液と混合して混合液を得る段階;均質混合器、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー、又は共鳴音響混合器を用いて前記混合液に対する分散工程を行う段階;前記分散された混合液を乾燥させて固形物を得る段階;前記固形物を熱処理する段階;及び、均質混合器、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー、又は共鳴音響混合器を用いて、前記熱処理された固形物を前記分散媒に分散させる段階を含むことができる。
【0030】
前記触媒分散液は、前記触媒を水に分散させることによって準備することができる。
【0031】
前記電極スラリー準備段階は、前記イオノマーを含むイオノマー分散液と前記触媒を含む触媒分散液とを混合して第1混合液を得る段階;均質混合器、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー、又は共鳴音響混合器を用いて前記第1混合液に対する分散工程を行う段階;前記分散された第1混合液を乾燥させて固形物を得る段階;前記固形物を熱処理する段階;前記熱処理された固形物を前記分散媒と混合して第2混合液を得る段階;前記イオノマーと前記キレート剤を含む混合物を準備する段階;前記混合物を前記第2混合液と混合して第3混合液を得る段階;及び、均質混合器、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー、又は共鳴音響混合器を用いて前記第3混合液に対する分散工程を行う段階を含むことができる。
【0032】
前記触媒分散液は、水を分散媒として含むことができる。
【0033】
前記電極スラリー準備段階は、前記イオノマーと前記キレート剤を含む混合物を準備する段階;前記触媒を含む触媒分散液を準備する段階;前記混合物の一部を前記触媒分散液と混合して第1混合液を得る段階;均質混合器、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー、又は共鳴音響混合器を用いて前記第1混合液に対する分散工程を行う段階;前記分散された第1混合液を乾燥させて固形物を得る段階;前記固形物を熱処理する段階;前記熱処理された固形物と前記混合物の残りを前記分散媒に混合して第2混合液を得る段階;及び、均質混合器、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー、又は共鳴音響混合器を用いて前記第2混合液に対する分散工程を行う段階を含むことができる。
【0034】
前記触媒分散液は、前記触媒を水に分散させることによって準備することができる。
【0035】
本発明のさらに他の観点によって、アノード;カソード;及び、前記アノードと前記カソードとの間の高分子電解質膜を含み、前記アノードと前記カソードの少なくとも一方は、上記の電極である、膜-電極アセンブリーが提供される。
【0036】
上のような本発明に関する一般的な叙述は、本発明を例示又は説明するためのもので、本発明の権利範囲を制限するものではない。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、キレート剤が添加された電極スラリーを用いて燃料電池用電極を形成することにより、イオノマーと共に前記キレート剤を含むイオノマー層が前記触媒の少なくとも一部を覆うようにする。このような本発明のイオノマー層は、前記金属触媒粒子から派生する金属イオンを捕まえておくが、環境変化時に再び元に復帰できるようにすることにより、金属触媒粒子の凝集及び沈積を抑制し、金属触媒の溶出及び移動を防止することができる。
【0038】
したがって、本発明によれば、金属触媒粒子の凝集、沈積、溶出、及び/又は移動による触媒の劣化を防止することにより、燃料電池用電極及びそれを含む膜-電極アセンブリーの耐久性を向上させることができ、よって、燃料電池の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
添付の図面は、本発明の理解を助け、本明細書の一部を構成するためのものであり、本発明の実施例を例示し、発明の詳細な説明と一緒に本発明の原理を説明する。
【0040】
図1】電圧サイクリングテスト(voltage cycling test:VC test)前後の通常の燃料電池用電極を示す模式図(schematic diagram)である。
【0041】
図2】本発明の一実施例に係る燃料電池用電極の模式図である。
【0042】
図3】電圧サイクリングテスト後の本発明の一実施例に係る燃料電池用電極を示す模式図である。
【0043】
図4】実施例1の電極スラリーで形成された電極の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【0044】
図5】(a)及び(b)は、実施例1の電極スラリーで形成された電極の電圧サイクリングテスト前後のTEM写真である。
【0045】
図6】(a)及び(b)は、比較例1の電極スラリーで形成された電極の電圧サイクリングテスト前後のTEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下では添付の図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。ただし、以下に説明される実施例は、本発明の明確な理解を助けるための例示的な目的で提示されるだけで、本発明の範囲を制限しない。
【0047】
図2は、本発明の一実施例に係る燃料電池用電極100の模式図である。
【0048】
図2に例示するように、本発明の燃料電池用電極100は、触媒110、及び該触媒110の少なくとも一部の上にコートされたイオノマー層(ionomer layer)120を含む。
【0049】
前記触媒110は、担体111、及び該担体111上に担持されている金属触媒粒子112を含む。
【0050】
前記担体111は、(i)炭素系担体、(ii)ジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、及びセリアのような多孔性無機酸化物担体、又は(iii)ゼオライト担体であってよい。
【0051】
前記炭素系担体は、黒鉛、スーパーP(super P)、炭素繊維(carbon fiber)、炭素シート(carbon sheet)、カーボンブラック(carbon black)、ケッチェンブラック(Ketjen Black)、デンカブラック(Denka black)、アセチレンブラック(acetylene black)、カーボンナノチューブ(carbon nanotube,CNT)、炭素球体(carbon sphere)、炭素リボン(carbon ribbon)、フラーレン(fullerene)、活性炭素(active carbon)、カーボンナノワイヤー(carbon nanowire)、カーボンナノボール(carbon nanoball)、カーボンナノホーン(carbon nanohorn)、カーボンナノケージ(carbon nanocage)、カーボンナノリング(carbon nanoring)、規則性ナノ多孔性炭素(ordered nano-/meso-porous carbon)、カーボンエアロゲル(carbon aerogel)、メソポーラスカーボン(mesoporous carbon)、グラフェン(graphene)、安定化カーボン(stabilized carbon)、又はそれらの2以上の組合せであってよい。
【0052】
前記金属触媒粒子112は、白金(Pt)粒子又は白金系合金粒子であってよい。
【0053】
前記白金系合金は、Pt-Pd、Pt-Mn、Pt-Sn、Pt-Mo、Pt-W、Pt-Ru、Pt-Ru-W、Pt-Ru-Ni、Pt-Ru-Mo、Pt-Ru-Rh-Ni、Pt-Ru-Sn-W、Pt-Ru-Ir-Ni、Pt-Co、Pt-Co-Mn、Pt-Co-Ni、Pt-Co-Fe、Pt-Co-Ir、Pt-Co-S、Pt-Co-P、Pt-Fe、Pt-Fe-Ir、Pt-Fe-S、Pt-Fe-P、Pt-Au-Co、Pt-Au-Fe、Pt-Au-Ni、Pt-Ni、Pt-Ni-Ir、Pt-Cr、又はPt-Cr-Irであってよい。
【0054】
本発明の前記イオノマー層120は、イオノマー及びキレート剤を含む。
【0055】
本発明の一実施例によれば、前記イオノマー層120は、化学的結合ではなく物理的結合のみによって前記触媒110と結合することにより、前記触媒110の触媒活性の低下を防止することができる。
【0056】
前記イオノマー層120のイオノマーは、陽イオン伝達のためのものであり、前記触媒110と高分子電解質膜(PEM)間の接着力の向上のためのバインダーとしての機能も有する。
【0057】
前記イオノマーは、スルホン酸基、カルボキシル基、ボロン酸基、リン酸基、イミド基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、及びスルホン酸フルオリド基からなる群から選ばれる一つ以上のイオン伝導性基を有してよい。
【0058】
例えば、前記イオノマーは、ポリ(ペルフルオロスルホン酸)、ポリ(ペルフルオロカルボン酸)などのようなフッ素系イオノマーであってよい。
【0059】
代案として、前記イオノマーは、スルホン化したポリイミド(sulfonated polyimide:S-PI)、スルホン化したポリアリールエーテルスルホン(sulfonated polyarylethersulfone:S-PAES)、スルホン化したポリエーテルエーテルケトン(sulfonated polyetheretherketone:SPEEK)、スルホン化したポリベンズイミダゾール(sulfonated polybenzimidazole:SPBI)、スルホン化したポリスルホン(sulfonated polysulfone:S-PSU)、スルホン化したポリスチレン(sulfonated polystyrene:S-PS)、スルホン化したポリホスファゼン(sulfonated polyphosphazene)、スルホン化したポリキノキサリン(sulfonated polyquinoxaline)、スルホン化したポリケトン(sulfonated polyketone)、スルホン化したポリフェニレンオキシド(sulfonated polyphenylene oxide)、スルホン化したポリエーテルスルホン(sulfonated polyether sulfone)、スルホン化したポリエーテルケトン(sulfonated polyether ketone)、スルホン化したポリフェニレンスルホン(sulfonated polyphenylene sulfone)、スルホン化したポリフェニレンスルフィド(sulfonated polyphenylene sulfide)、スルホン化したポリフェニレンスルフィドスルホン(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone)、スルホン化したポリフェニレンスルフィドスルホンニトリル(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone nitrile)、スルホン化したポリアリーレンエーテル(sulfonated polyarylene ether)、スルホン化したポリアリーレンエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether nitrile)、スルホン化したポリアリーレンエーテルエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether ether nitrile)、ポリアリーレンエーテルスルホンケトン(sulfonated polyarylene ether sulfone ketone)などのような炭化水素系イオノマーであってよい。
【0060】
前記イオノマー層120のキレート剤は、燃料電池が長期間駆動することによって金属触媒粒子112から派生する金属イオンを捕まえておくが、環境変化時に再び元の位置に復帰し得るように許容することにより、金属触媒粒子112の凝集及び沈積を抑制し、また金属触媒の溶出及び移動を防止することができる。
【0061】
図3は、電圧サイクリングテスト後の本発明の一実施例に係る燃料電池用電極を示す模式図であり、金属触媒粒子111bから派生した金属イオン(Pt2+)がキレート剤[ジメルカプロール(dimercaprol)]と配位結合をすることにより、金属触媒粒子の凝集111aが最小化し、前記金属イオン(Pt2+)は環境変化に応じて後で元来の金属触媒粒子111bに復帰でき、金属触媒の溶出及び/又は移動による触媒110の劣化が防止され得ることを示す。
【0062】
本発明のキレート剤は、ジメルカプロール(dimercaprol)、フタロシアニン(phthalocyanine)、M-フタロシアニン(M-phthalocyanine)(ここで、Mは、Cu、Co、Fe、又はMoである。)、ペニシラミン(penicillamine)、サクシマー(succimer)、デフェロキサミン(deferoxamine)、EDTA、EGTA、プルシアンブルー(prussian blue)、ビタミンB-12(vitamin B-12)、アルファ-リポ酸(α-lipoic acid)、エチレンジアミン(ethylenediamine)、トリエチルアミン(triethylamine)、フェナントロリン(phenanthroline)、デスフェリオキサミン(desferrioxamine)、デフェリプロン(deferiprone)、又はこれらの2以上の混合物であってよく、より好ましくは、ジメルカプロール、ペニシラミン、サクシマー、アルファ-リポ酸、トリエチルアミン、デフェリプロン、又はこれらの2以上の混合物であってよい。
【0063】
本発明のキレート剤は、少なくとも1個のS原子を含むことが好ましく、例えば、ジメルカプロール、ペニシラミン、サクシマー、アルファ-リポ酸、又はこれらの2以上の混合物であってよい。
【0064】
本発明のキレート剤は、少なくとも2個のS原子を含むことがより好ましく、例えば、ジメルカプロール、サクシマー、アルファ-リポ酸、又はこれらの2以上の混合物であってよい。
【0065】
S原子は、他の原子(例えば、N原子)に比べて、金属触媒粒子111bから派生する金属イオンとよりよく結合し、結合力もより強いので、前記金属イオンを効果的に捕まえておき、電極100の耐久性を向上させることができる。特に、ジメルカプロールは、生化学的にも重金属の解毒剤として使用される程度にキレート結合をよく形成する。
【0066】
以下では、本発明の燃料電池用電極100の製造方法を具体的に説明する。
【0067】
本発明の方法は、(i)触媒、イオノマー、キレート剤、及び分散媒を含む電極スラリーを準備する段階、(ii)前記電極スラリーをフィルム(film)又は膜(membrane)上にコートしてスラリー層(slurry layer)を形成する段階、及び(iii)前記スラリー層から前記分散媒を除去する段階を含む。
【0068】
前記触媒、前記イオノマー、及び前記キレート剤のそれぞれは、上で具体的に説明したので、ここではそれに関する説明は省略する。
【0069】
前記分散媒は、水、親水性溶媒、有機溶媒、又はこれらの2以上の混合物であってよい。
【0070】
前記親水性溶媒は、炭素数1~12の線形又は分枝形の飽和又は不飽和炭化水素を主鎖として含み、アルコール、イソプロピルアルコール、ケトン、アルデヒド、カーボネート、カルボキシレート、カルボン酸、エーテル及びアミドからなる群から選ばれる一つ以上の官能基を有する化合物であってよい。
【0071】
前記有機溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)又はこれらの2以上の混合物であってよいが、これらに制限されない。
【0072】
本発明の一実施例によれば、前記電極スラリーの分散媒は、エタノール、蒸留水、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ブタノール、又はこれらの2以上の混合物であってよいが、これらに制限されない。
【0073】
前記電極スラリーは、前記イオノマー100重量部を基準に0.01~10重量部の前記キレート剤を含むことができる。前記キレート含有量が0.01重量部未満であると、満足すべき触媒劣化防止効果が得られない。一方、前記キレート含有量が10重量部を超えると、金属触媒の活性が阻害され、燃料電池の性能低下を招く。
【0074】
前記電極スラリーを用いて、デカル転写(decal transfer)又は直接コーティング(direct coating)によって高分子電解質膜(PEM)の少なくとも一面上に電極を形成する。
【0075】
すなわち、デカル転写方式では、前記電極スラリーを離型フィルム上にコートしてスラリー層を形成し、乾燥工程によって前記スラリー層から前記分散媒を除去することで電極を形成し、前記電極が高分子電解質膜(PEM)と接触するように前記離型フィルムと前記高分子電解質膜(PEM)を積層した状態で熱圧着(hot pressing)した後、前記離型フィルムを除去する。
【0076】
直接コーティング方式では、高分子電解質膜(PEM)の一面上に、電極ウィンドウを有するマスクフィルムを載せた状態で、前記電極スラリーを前記一面上にコートしてスラリー層を形成し、乾燥工程によってスラリー層から前記分散媒を除去することで電極を形成した後、前記マスクフィルムを除去する。
【0077】
本発明の前記電極スラリーは、様々な方法によって準備されてよい。
【0078】
電極スラリー準備のための第1方法は、(i)前記イオノマーと前記キレート剤を含む混合物(mixture)を準備する段階、(ii)前記触媒と前記分散媒を含む触媒分散液(catalyst dispersion)を準備する段階、(iii)前記混合物を前記触媒分散液と混合して混合液を得る段階、及び(iv)均質混合器(homogenizer)、高圧分散器(high pressure homogenizer)、ボールミル(ball mill)、パウダーミキサー(powder mixer)、又は共鳴音響混合器(resonant acoustic mixer)を用いて前記混合液に対する分散工程を行う段階、を含むことができる。
【0079】
前記イオノマーと前記キレート剤を含む混合物は、イオノマー分散液に前記キレート剤を添加後に均質に混合することによって得られてよい。前記イオノマー分散液は、商業的に購買可能なフッ素系イオノマー分散液(例えば、Nafion分散液)であってよい。
【0080】
前記触媒分散液は、前記触媒を水にぬらした後、上述した本発明の電極スラリー用分散媒に分散させることによって得られてよい。前記触媒を水にぬらす理由は、触媒の高い反応性によって触媒がアルコールなどと先に接触する際に発火することがあるためである。
【0081】
電極スラリー準備のための第2方法は、(i)前記イオノマーと前記キレート剤を含む混合物を準備する段階、(ii)前記触媒を含む触媒分散液を準備する段階、(iii)前記混合物を前記触媒分散液と混合して混合液を得る段階、(iv)均質混合器、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー、又は共鳴音響混合器を用いて、前記混合液に対する分散工程を行う段階、(v)前記分散された混合液を乾燥させて固形物を得る段階、(vi)前記固形物を熱処理する段階、及び(vii)均質混合器、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー、又は共鳴音響混合器を用いて、前記熱処理された固形物を前記分散媒に分散させる段階、を含むことができる。
【0082】
前記イオノマーと前記キレート剤を含む混合物は、イオノマー分散液に前記キレート剤を添加後に均質に混合することによって得られてよい。前記イオノマー分散液は、商業的に購買可能なフッ素系イオノマー分散液(例えば、Nafion分散液)であってよい。
【0083】
前記触媒分散液は、前記触媒を水に分散させることによって準備することができる。水を分散媒として使用する理由は、触媒の高い反応性によって触媒がアルコールなどと先に接触する際に発火することがあるためである。
【0084】
前記乾燥段階は、60~90℃で5~10時間行われてよく、前記熱処理段階は、90~150℃で1~3時間行われてよい。
【0085】
電極スラリー準備のための第3方法は、(i)前記イオノマーを含むイオノマー分散液と前記触媒を含む触媒分散液とを混合して第1混合液を得る段階、(ii)均質混合器、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー、又は共鳴音響混合器を用いて前記第1混合液に対する分散工程を行う段階、(iii)前記分散された第1混合液を乾燥させて固形物を得る段階、(iv)前記固形物を熱処理する段階、(v)前記熱処理された固形物を前記分散媒と混合して第2混合液を得る段階、(vi)前記イオノマーと前記キレート剤を含む混合物を準備する段階、(vii)前記混合物を前記第2混合液と混合して第3混合液を得る段階、及び(viii)均質混合器、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー、又は共鳴音響混合器を用いて前記第3混合液に対する分散工程を行う段階を含むことができる。
【0086】
前記イオノマー分散液は、商業的に購買可能なフッ素系イオノマー分散液(例えば、Nafion分散液)であってよい。
【0087】
前記触媒分散液は、水を分散媒として含むことができる。
【0088】
前記乾燥段階は、60~90℃で5~10時間行われてよく、前記熱処理段階は、90~150℃で1~3時間行われてよい。
【0089】
電極スラリー準備のための第4方法は、(i)前記イオノマーと前記キレート剤を含む混合物を準備する段階、(ii)前記触媒を含む触媒分散液を準備する段階、(iii)前記混合物の一部を前記触媒分散液と混合して第1混合液を得る段階、(iv)均質混合器、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー、又は共鳴音響混合器を用いて前記第1混合液に対する分散工程を行う段階、(v)前記分散された第1混合液を乾燥させて固形物を得る段階、(vi)前記固形物を熱処理する段階、(vii)前記熱処理された固形物と前記混合物の残りを前記分散媒と混合して第2混合液を得る段階、及び(viii)均質混合器、高圧分散器、ボールミル、パウダーミキサー、又は共鳴音響混合器を用いて前記第2混合液に対する分散工程を行う段階を含むことができる。
【0090】
前記イオノマーと前記キレート剤を含む混合物は、イオノマー分散液に前記キレート剤を添加後に均質に混合することによって得られてよい。前記イオノマー分散液は、商業的に購買可能なフッ素系イオノマー分散液(例えば、Nafion分散液)であってよい。
【0091】
前記触媒分散液は、前記触媒を水に分散させることによって準備することができる。
【0092】
前記乾燥段階は、60~90℃で5~10時間行われてよく、前記熱処理段階は、90~150℃で1~3時間行われてよい。
【0093】
上述した4つの方法のいずれか一方法によって準備した電極スラリーを用いて、高分子電解質膜(PEM)の両面にアノード及びカソードを、上述したデカル転写方式又は直接コーティング方式によってそれぞれ形成することで、本発明の膜-電極アセンブリー(MEA)を製造することができる。
【0094】
代案として、本発明の膜-電極アセンブリー(MEA)は、アノード、カソード、及びそれらの間における高分子電解質膜(PEM)を含み、前記アノードとカソードのいずれか一方のみが本発明の電極であり、他方は通常の電極であってよい。
【0095】
以下、具体的な実施例を用いて本発明を具体的に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、これによって本発明の権利範囲が制限されてはならない。
【0096】
実施例1
【0097】
0.04gのジメルカプロール(dimercaprol)を5gのポリ(ペルフルオロスルホン酸)分散液(固形物含有量:10wt.%)に添加後に均質に混合することによって混合物を得た。1gのPt/C触媒を水にぬらした後、10gの分散媒(イソプロピルアルコール)に分散させて触媒分散液を得た。前記混合物と前記触媒分散液を混合して混合液を得た後、高圧分散器を用いて前記混合液に対する分散工程を行うことで、電極スラリーを完成した。
【0098】
実施例2
【0099】
0.04gのジメルカプロールを5gのポリ(ペルフルオロスルホン酸)分散液(固形物含有量:10wt.%)に添加後に均質に混合することによって混合物を得た。1gのPt/C触媒を100gの水に分散させて触媒分散液を得た。前記混合物と前記触媒分散液を混合して混合液を得た後、高圧分散器を用いた分散工程を前記混合液に対して行った。前記分散された混合液を80℃で8時間乾燥させて固形物を得、この固形物を120℃で2時間熱処理した。熱処理された固形物を、高圧分散器を用いて10gの分散媒(イソプロピルアルコール)に分散させることで、電極スラリーを完成した。
【0100】
実施例3
【0101】
1gのPt/C触媒を100gの水に分散させて得た触媒分散液を、4gのポリ(ペルフルオロスルホン酸)分散液(固形物含有量:10wt.%)と均質に混合して第1混合液を得た後、高圧分散器を用いて前記第1混合液に対する分散工程を行った。前記分散された第1混合液を80℃で8時間乾燥させて固形物を得、この固形物を120℃で2時間熱処理した。熱処理された固形物を10gの分散媒(イソプロピルアルコール)と混合して第2混合液を得た。前記第2混合液を、0.04gのジメルカプロールと1gのポリ(ペルフルオロスルホン酸)分散液(固形物含有量:10wt.%)との混合物に混合して第3混合液を得た。次に、高圧分散器を用いて前記第3混合液に対する分散工程を行うことで、電極スラリーを完成した。
【0102】
実施例4
【0103】
0.04gのジメルカプロールを5gのポリ(ペルフルオロスルホン酸)分散液(固形物含有量:10wt.%)に添加後に均質に混合し、総5.04gの混合物を得た。1gのPt/C触媒を100gの水に分散させて触媒分散液を得た。4gの前記混合物と前記触媒分散液とを混合して第1混合液を得た。次に、高圧分散器を用いて前記第1混合液に対する分散工程を行った。前記分散された第1混合液を80℃で8時間乾燥させて固形物を得、この固形物を120℃で2時間熱処理した。熱処理された固形物、1.04gの前記混合物、及び10gの分散媒(イソプロピルアルコール)を混合して第2混合液を得た。次に、高圧分散器を用いて前記第2混合液に対する分散工程を行うことで、電極スラリーを完成した。
【0104】
比較例1
【0105】
1gのPt/C触媒を水にぬらした後に10gの分散媒(イソプロピルアルコール)に分散させることによって触媒分散液を得た。次に、前記触媒分散液を5gのポリ(ペルフルオロスルホン酸)分散液(固形物含有量:10wt.%)と混合した後、高圧分散器を用いた分散工程を行うことで、電極スラリーを完成した。
【0106】
比較例2
【0107】
1gのPt/C触媒を100gの水に分散させて得た触媒分散液を、5gのポリ(ペルフルオロスルホン酸)分散液(固形物含有量:10wt.%)と混合して混合液を得た。次に、高圧分散器を用いて前記混合液に対する分散工程を行った。分散された前記混合液を80℃で8時間乾燥させて固形物を得、この固形物を120℃で2時間熱処理した。熱処理された前記固形物を10gの分散媒(イソプロピルアルコール)と混合した後、高圧分散器を用いた分散工程を行うことで、電極スラリーを完成した。
【0108】
[CVテスト及び電圧サイクリングテスト]
【0109】
電極スラリーを回転ディスク電極(Rotating Disk Electrode:RDE)にキャスティング後に乾燥させることによって電極を製造した。電気化学測定装置を用いて前記電極に対してCV(Cyclic Voltammetry)テスト(温度:常温、電解質溶液:Nで飽和した0.1MのHClO水溶液)を行い、前記電極の電気化学的活性面積(ECSA)を測定した。次に、前記電解質溶液をOで飽和させた後、0.6~1.0Vの電圧サイクリングテスト(30,000サイクル)を行った。次に、前記電圧サイクリングテスト後の前記電極のECSAを、前述の方法で測定した。
【0110】
電圧サイクリングテスト前後のECSA測定値に基づいてECSA減少率を算出し、その結果を下表1に示した。
【0111】
【表1】
【0112】
上の表1から分かるように、実施例の電極スラリーで形成された電極が全般的に、比較例の電極スラリーで形成された電極に比べて格段に低いECSA減少率を示した。
【0113】
一方、図4は、実施例1の電極スラリーで形成された電極の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。図4から、実施例1の電極スラリーで形成された電極において、キレートを含むイオノマー層が触媒の周辺によく分布していることが確認できる。
【0114】
図5の(a)及び(b)は、実施例1の電極スラリーで形成された電極の電圧サイクリングテスト前後のTEM写真であり、図6の(a)及び(b)は、比較例1の電極スラリーで形成された電極の電圧サイクリングテスト前後のTEM写真である。
【0115】
図5及び図6を比較すると、電圧サイクリングテストによる金属触媒粒子の凝集及び金属触媒溶出が、比較例1の電極スラリーで形成された電極に比べて実施例1の電極スラリーで形成された電極において遥かに抑制されていることが分かる。すなわち、本発明の電極に含まれているキレート剤が触媒の劣化を防止し、電極の耐久性を向上させることができることを確認した。
図1
図2
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図6(a)】
図6(b)】