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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】工作機械システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4155 20060101AFI20240604BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20240604BHJP
   B23Q 41/08 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
G05B19/4155 N
B23Q15/00 301F
B23Q41/08 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022536316
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2021025878
(87)【国際公開番号】W WO2022014476
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2020120586
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】樽井 賀彦
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-274016(JP,A)
【文献】特開平03-170256(JP,A)
【文献】特開平11-239922(JP,A)
【文献】特開2004-310747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B19/18-19/416
G05B19/42-19/46
B23Q15/00
B23Q41/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワークの加工順序を含む加工スケジュール情報を記憶するスケジュール記憶部と、
該スケジュール記憶部に記憶されている前記加工スケジュール情報内のいずれかのワークをユーザに指定させ、指定された前記ワークの優先順位を設定させる優先順位設定部と
少なくとも1つのプロセッサとを備え、
該プロセッサが、各前記ワークの加工を開始する時点において、前記スケジュール記憶部に記憶されている前記加工スケジュール情報のいずれかの前記ワークに前記優先順位が設定されているか否かを確認し、前記優先順位設定部により前記優先順位が設定された前記ワークについては前記優先順位に従って加工し、前記優先順位が設定されていない前記ワークについては、前記優先順位が設定されている前記ワークの加工の後に、前記加工順序に従って加工する工作機械システム。
【請求項2】
前記優先順位設定部が、前記スケジュール記憶部に記憶されている前記ワークの識別情報および前記加工順序を表示するモニタと、該モニタ上に表示されたいずれかの前記ワークの前記識別情報を前記ユーザに選択させて前記優先順位を入力させる入力装置とを備え、
入力された前記優先順位を前記識別情報に対応付けた新たな前記加工スケジュール情報を前記スケジュール記憶部に記憶させる請求項1に記載の工作機械システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
生産スケジュールに従ってワークの加工を行う工作機械が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
生産スケジュールに、ワークの加工の優先順位を予め記憶しておき、生産スケジュールに従うワークの加工ができなかった場合に、次に高い優先順位のワークから加工を行うこととしている。
【0003】
また、ワークの移動を管理するトラッキングファイルを備える加工システムが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
トラッキングファイル内のデータの移動、削除および追加等の編集を可能として、トラッキングファイル内の加工順序を入れ替えたり、途中の工程にワークを割り込ませたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/138870号
【文献】特開昭63-163904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のワークの加工順序は、加工開始前に予め設定されているが、ワークの品種が複数ある場合に、加工開始後に、後ろの加工順序のワークを急遽優先的に加工する必要が生ずる場合がある。このような場合に、特許文献2のようにファイル内のデータを入れ替える作業は煩わしく、短時間に実施することができない。
したがって、加工開始後に発生した加工順序の入替を簡易かつ短時間に実施することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、複数のワークの加工順序を含む加工スケジュール情報を記憶するスケジュール記憶部と、該スケジュール記憶部に記憶されている前記加工スケジュール情報内のいずれかのワークをユーザに指定させ、指定された前記ワークの優先順位を設定させる優先順位設定部と、少なくとも1つのプロセッサとを備え、該プロセッサが、各前記ワークの加工を開始する時点において、前記スケジュール記憶部に記憶されている前記加工スケジュール情報のいずれかの前記ワークに前記優先順位が設定されているか否かを確認し、前記優先順位設定部により前記優先順位が設定された前記ワークについては前記優先順位に従って加工し、前記優先順位が設定されていない前記ワークについては、前記優先順位が設定されている前記ワークの加工の後に、前記加工順序に従って加工する工作機械システムである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態に係る工作機械システムを示す全体構成図である。
図2図1の工作機械システムを示すブロック図である。
図3図1の工作機械システムに用いられる加工スケジュール情報の一例を示す図である。
図4図1の工作機械システムにおける初期状態のモニタの表示例を示す図である。
図5図1の工作機械システムの動作を説明するフローチャートである。
図6図5のフローチャートのワークの加工処理ルーチンを説明するフローチャートである。
図7図4の状態から1番目のワークが加工中または加工終了した状態のモニタの表示例を示す図である。
図8図7の状態で優先順位が設定された状態のモニタの表示例を示す図である。
図9図7の優先順位1位のワークが、2番および3番のワークよりも先に加工された状態のモニタの表示例を示す図である。
図10図7の優先順位2位のワークが、5番から7番のワークよりも先に加工された状態のモニタの表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態に係る工作機械システム1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る工作機械システム1は、図1および図2に示されるように、ワークWを加工する工作機械2と、工作機械2に対しワークWのロードおよびアンロードを行うロボット3と、工作機械2およびロボット3を制御する制御装置4とを備えている。図1中、符号5は、工作機械2に供給する複数のワークWを収容するワークストッカである。
【0009】
ワークストッカ5は、例えば、その上面に、9個のワークWを3×3列に配列した状態に収容している。ワークストッカ5上のワークWには、ワークストッカ5上の位置によって、それぞれ1番から9番までの番号(識別情報)が付されている。
【0010】
ロボット3は、図1に示す例では6軸多関節型ロボットである。ロボット3は、先端に、ワークWを把持可能なハンド6を備えている。ロボット3の構造は任意でよい。
【0011】
制御装置4は、図2に示されるように、少なくとも1つのプロセッサ7と、加工スケジュール情報が記憶されているメモリ(スケジュール記憶部)8と、メモリ8に記憶されている加工スケジュール情報内のいずれかのワークWをユーザに指定させ、指定されたワークWの優先順位を設定させる優先順位設定部9とを備えている。
優先順位設定部9は、モニタ10と、キーボード(入力装置)11とを備えている。
加工スケジュール情報は、例えば、図3に示されるように、ワークWの番号と、ワークストッカ5上におけるワークWの有無と、ワークWの状態と、優先順位とを含んでいる。本実施形態においては、ワークWの番号がそのままワークWの加工順序を意味している。
【0012】
各ワークWの番号には、ワークWの有無の情報と、優先順位とが対応付けられている。
ワークWの有無は、例えば、ワークストッカ5上にワークWをセットしたときに、ユーザが加工スケジュール情報に入力する。ワークストッカ5上にワークWがある場合には、加工スケジュール情報のワークWの有無は「有」と設定される。そして、ワークWの有無は、ワークWが加工中である場合および加工が終了した後には加工スケジュール情報のワークWの有無は「無」となる。
【0013】
優先順位は、必要に応じてユーザが、例えば、数字により入力することができる。例えば、4番のワークWの優先順位を1位に設定し、8番のワークWの優先順位を2位に設定すると、図3に示されるように、4番のワークWに対応する優先順位が1となり、8番のワークWに対応する優先順位が2となる。
【0014】
制御装置4は、例えば、図4に示されるように、ワークストッカ5上のワークWの配列と、加工スケジュール情報とをモニタ10に表示する。加工開始前の初期状態においては、図4に示されるように、ワークストッカ5上に全てのワークWが配列され、優先順位は設定されていないものとする。
【0015】
ユーザは、ワークWの加工開始前および加工中の任意の時点において、未加工のワークW内に加工順序を早めたいワークWがある場合には、キーボード11によって、対応するワークWの番号を指定し、その優先順位に数字を入力することができる。制御装置4は、優先順位が入力されたときには、メモリ8に記憶されている加工スケジュール情報を、入力された優先順位が加えられた加工スケジュール情報に更新する。
【0016】
制御装置4は、各ワークWの加工開始時点において、メモリ8に記憶されている加工スケジュール情報内に、優先順位が設定されているか否かを確認する。優先順位が設定されていない場合には、ワークWの番号順の加工順序でワークWを加工する。一方、優先順位が設定されている場合には、優先順位に従ってワークWを加工し、優先順位が設定されている全てのワークWの加工後に、優先順位が設定されていないワークWを番号順の加工順序でワークWを加工する。
【0017】
さらに具体的には、制御装置4は、図5に示されるように、ワーク番号NをN=1に初期化する(ステップS1)。次いで、制御装置4は、N番のワークWの加工開始前に、プロセッサ7によってメモリ8内の加工スケジュール情報を読み出して、優先順位が設定されているか否かを確認する(ステップS2)。優先順位が設定されていない場合には、N番のワークWの有無を判定する(ステップS3)。
【0018】
N番のワークWがない場合には、番号Nをインクリメントして(ステップS4)、ステップS2からの工程を繰り返す。
N番のワークWがある場合には、ワークWの加工処理を実施する(ステップS5)。
図4の初期状態では、優先順位が設定されておらず、ワークストッカ5上に全てのワークWが存在するので、N番目のワークWの加工処理が実施される(ステップS5)。
【0019】
ステップS5のワークWの加工処理工程では、図6に示されるように、制御装置4が、ロボット3を制御してワークストッカ5上のN番のワークWを把持させ、工作機械2にロードさせる(ステップS51)。
ワークWがロードされた状態で、制御装置4は、工作機械2を制御してワークWの加工を実施する(ステップS52)。
【0020】
加工が終了すると、制御装置4は、ロボット3を制御して、工作機械2から加工済のワークWをアンロードさせる(ステップS53)。この後に、番号NのワークWの有無の情報を「無」に変更する(ステップS54)。これにより、モニタ10の表示は、図7に示されるように変更される。
【0021】
制御装置4は、ワークWの加工処理が終了したときには、全てのワークWの加工が終了したか否か(ワークWの番号Nが最大値Nmaxか否か)を判定する(ステップS6)。終了していない場合には、ステップS4に進み、N=2にインクリメントされてからステップS2に戻る。
【0022】
ユーザは、任意の時点で優先順位を入力可能である。例えば、図7に示されたモニタ10の表示の状態において、優先順位を入力するには、キーボード11を操作して、未加工かつワークストッカ5上に存在するワークWの番号を指定し、優先順位を入力する。これにより、例えば、図8に示されるように、加工スケジュール情報が変更される。ワークストッカ5上に存在しないワークWの番号については、優先順位の指定が禁止されてもよい。
【0023】
ステップS2に戻った時点において、優先順位が設定されている場合には、優先順位が高いワークW、すなわち、優先順位の数字が最も小さいワークWであって、未加工のワークWの番号Npを検索する(ステップS7)。
例えば、図8の場合には、番号Npとして、優先順位1位の「4番」が検索されるので、ワーク番号N(=2)を一時的にNtempに退避し(ステップS8)、ワーク番号Nを、検索された番号Np(=4)に置き換える(ステップS9)。この状態で、図6のワークWの加工処理を実施する(ステップS5)。
【0024】
4番のワークWの加工処理が終了したときには、制御装置4は、退避しておいたNtemp(=2)をワーク番号Nに戻す(ステップS10)。そして、制御装置4は、モニタ10の表示を図9に示されるように変更し、ステップS2からの工程を繰り返す。ステップS2に戻った時点において、優先順位が高くかつ未加工のワークWは、優先順位2位の「8番」であるため、ワーク番号N(=2)を一時的にNtempに退避し(ステップS8)、ワーク番号Nを、検索された番号Np(=8)に置き換える(ステップS9)。この状態で、図6のワークWの加工処理を実施する(ステップS5)。
【0025】
8番のワークWの加工処理が終了したときには、制御装置4は、退避しておいたNtemp(=2)をワーク番号Nに戻す(ステップS10)。そして、制御装置4は、モニタ10の表示を図10に示されるように変更し、ステップS2からの工程を繰り返す。ステップS2に戻った時点において、優先順位が設定された未加工のワークWは存在しないので、ステップS3に進んで、N(=2)番目のワークWの有無が判断され、2番目のワークWの加工処理が行われる。その後、N=3,5,6,7,9の順序で、残りのワークWの加工処理が行われる。
【0026】
このように、本実施形態に係る工作機械システム1によれば、優先順位が設定されていない状態においては、予め設定された加工スケジュール情報における加工順序に従ってワークWの加工処理が順次行われる。一方、未加工のワークWに優先順位が設定された場合には、各ワークWの加工開始前に優先順位の有無が判定されるので、優先順位が後付けされたワークWの加工を優先的に実施することができる。
【0027】
すなわち、全てのワークWの加工開始前に予め加工スケジュール情報に優先順位を設定しておかなくても、ワークWの加工開始後に未加工のワークWについて優先順位を後付けで設定して、優先的に加工することができる。この場合において、加工スケジュール情報に予め設定されている加工順序とは別に優先順位を設定するので、設定されている加工順序を編集する必要がなく、簡易かつ短時間に加工順序を入れ替えることができるという利点がある。
【0028】
特に、ワークWの品種が複数ある場合に、いずれかのワークWの加工開始後に、後ろの加工順序のワークWを急遽優先的に加工する必要が生じた場合に、簡易かつ短時間に加工順序を入れ替えることができる。
なお、本実施形態においては、ワークストッカ5上に3×3=9個のワークWが配列されている場合を例示したが、ワークWの数および配列は任意でよい。
【0029】
また、加工済のワークWをワークストッカ5上の元の位置に戻さないことにより、ワークWの有無の情報を用いて、ユーザが優先順位を設定可能なワークWを判断できることとした。これに代えて、加工済のワークWをワークストッカ5上の元の位置に戻してもよい。この場合には、ワークWの有無の情報に代えて、未加工か加工済かの情報を表示することにしてもよい。
【0030】
また、本実施形態においては、モニタ10上にワークストッカ5上のワークWの配列および加工スケジュール情報を表示したが、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0031】
1 工作機械システム
7 プロセッサ
8 メモリ(スケジュール記憶部)
9 優先順位設定部
10 モニタ
11 キーボード(入力装置)
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10