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特許7498278オルリスタット中間体の製造における酵素の用途及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】オルリスタット中間体の製造における酵素の用途及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/6436 20220101AFI20240604BHJP
   C12N 9/04 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C12P7/6436
C12N9/04 ZNA
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022541240
(86)(22)【出願日】2021-01-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 CN2021070495
(87)【国際公開番号】W WO2021139689
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】202010015510.1
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522108194
【氏名又は名称】植恩生物技術股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】徐 天帥
(72)【発明者】
【氏名】▲ぐん▼ 大勇
(72)【発明者】
【氏名】肖 玉梅
(72)【発明者】
【氏名】王 章洪
(72)【発明者】
【氏名】黄 治川
(72)【発明者】
【氏名】黄 山
(72)【発明者】
【氏名】張 磊
(72)【発明者】
【氏名】高 ▲しん▼
(72)【発明者】
【氏名】沈 軍偉
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109022473(CN,A)
【文献】DATABASE GenBank, accession no. WP_015245403, version WP_015245403.1 [online],[2023年8月4日検索],2019年06月20日,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/WP_015245403
【文献】DATABASE GenBank, accession no. WP_010403640, version WP_010403640.1 [online],[2023年8月4日検索],2019年06月20日,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/WP_010403640
【文献】DATABASE Uniport KB, accession no. L0DC34 [online],[2023年8月4日検索],2013年03月06日,https://www.uniprot.org/uniprottkb/L0DC34/entry
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 7/64
C12N 9/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基質のオルリスタット中間体への転化における酵素の使用であって、
前記酵素が作用する前記基質はβ-カルボニルテトラデカノエートであり、構造式は、式Iに示されるとおりであり、
前記オルリスタット中間体は(R)-β-ヒドロキシテトラデカノエートであり、構造式は、式IIに示されるとおりであり、
構造式IのRはメチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基のいずれかであり、
構造式IIのRはメチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基のいずれかであり、
前記酵素はケト還元酵素であり、前記酵素のアミノ酸配列は配列番号1に示されるとおりであり、
前記基質の濃度は、100~150g/Lであり、
前記酵素と前記基質の質量比は、1:10であり、
前記酵素によって前記基質の99%超が前記オルリスタット中間体に転化される
ことを特徴とする前記使用
【請求項2】
前記酵素は、酵素粉末、酵素液及び固定化酵素の少なくとも1つである
ことを特徴とする請求項1に記載の使用
【請求項3】
構造式が式Iに示されるとおりであるβ-カルボニルテトラデカノエートである基質と、ケト還元酵素であって、アミノ酸配列が配列番号1に示されるとおりである酵素とを含み、
前記基質の濃度は、100~150g/Lであり、
前記酵素と前記基質の質量比は、1:10であり、
構造式IのRはメチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基のいずれかである
ことを特徴とする組成物。
【請求項4】
組成物の混合物であって、
請求項3に記載の組成物と、グルコースと、グルコース脱水素酵素と、NADPと、緩衝液で構成され、
記グルコース脱水素酵素の配列は配列番号3に示されるとおりであり、
だし、前記組成物の混合物のpHは6.0~8.0であり、
前記緩衝液はPBS緩衝液又はTris-HCl緩衝液であり、
前記NADPの濃度は、0.1~0.5g/Lであり、
前記基質と前記グルコースのモル比は、1:1.2~4であり、
前記緩衝液の濃度は、0.01~0.5mol/Lであ
ことを特徴とする組成物の混合物
【請求項5】
請求項4に記載の組成物の混合物を20~40℃において最大15時間攪拌して、オルリスタット中間体の反応液を得、
ただし、前記オルリスタット中間体は(R)-β-ヒドロキシテトラデカノエートであり、構造式は、式IIに示されるとおりであり、
構造式IIのRはメチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基のいずれかであり、
前記酵素によって前記基質の99%超が前記オルリスタット中間体に転化される
ことを特徴とすオルリスタット中間体を製造する方法。
【請求項6】
NaOH水溶液をpH調整剤として使用する、
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
得られた反応液において溶媒で前記オルリスタット中間体を抽出する
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒は、無水エタノール又は酢酸エチルである
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
得られた抽出物を減圧濃縮し、冷却して結晶化させて、白色の結晶性固体である化合物IIを得、
ただし、構造式IIのRはメチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基のいずれかである
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬品と生化学技術の分野に属し、具体的には、(R)-β-ヒドロキシテトラデカノエート系化合物の生合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満治療薬は、主に、中枢神経系作用型減量薬と非中枢神経系作用型減量薬の2種類に分けられる。中枢神経系作用型減量薬の減量効果は明らかであるが、副作用が大きいため、臨床上の使用が制限されている。その中で、フェンフルラミンは肺高血圧症と肥大型心臓弁膜症を引き起こす可能性があるため、1997年に市場から撤退した。シブトラミンは深刻な心血管疾患リスクをもたらす可能性があるため、2010年に国家食品薬品監督管理局から生産、販売と使用の中止を命じられた。ロルカセリン(locaserin、商品名Belviq)は2012年6月にアメリカ食品医薬品局(FDA)によって販売が承認されたが、心臓弁膜症と心血管系有害事象をもたらすリスクがあるため、臨床上の使用に向け安全性の検証が必要である。
【0003】
オルリスタット(Orlistat)は最初の非中枢神経系作用型減量薬で、現在、世界で唯一のOTC減量薬である。1998年に発売されて以来、有効性が確実で安全性が高いことから、肥満治療の第一選択薬となっている。オルリスタットは消化管の脂肪加水分解酵素に直接作用し、明らかな脂肪吸収阻害効果を有し、その標的は非常に特異的で、他の消化酵素に影響を与えず、しかも効果を発揮させるに全身に吸収される必要がなく、全身薬物曝露量が非常に低く、主な副作用は消化管反応であり、安全性が高い。オルリスタットは20年以上にわたって世界的に販売されており、現在145か国以上で販売が承認され、多くの臨床応用によってその優れた有効性と安全性が検証されている。
【0004】
オルリスタットの市場需要は大きいため、オルリスタット及びその中間体の効率的な合成方法を見つけるのは非常に重要である。(R)-β-ヒドロキシテトラデカノエートはオルリスタットを合成する重要な中間体で、当該中間体の光学純度は極めて重要な指標である。では、どうすれば光学的に純粋な(R)-β-ヒドロキシテトラデカノエートを効率的に得られるのか。
【0005】
中国特許CN101538285Bには、調製された(R)-金属触媒[(R)-Ru(MeOBIPHEP)Cl・NEtによって触媒される不斉水素化が開示されている。しかし、当該化学触媒反応でee値が98.5%を超える生成物を得るには強酸と60barの高圧下において反応させる必要がある。当該方法には次のいくつかの欠点がある。1)高価な(R)-配位子と貴金属触媒の使用が必要である。2)触媒は直前に調製する必要があり、プロセスの安定性を保証しにくい。3)高圧水素化装置が必要である。4)耐酸性装置が必要である。5)反応制御が不十分だとee値に影響する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、先行技術の上記の欠点に対し、酵素法を利用して系統的な改良を行って、オルリスタットの重要中間体の大規模な生産を実現した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の第1の目的は、オルリスタット中間体の製造における酵素の新規な用途を提供することであり、当該酵素は基質β-カルボニルテトラデカノエートに効果的に作用するため、純度の高いオルリスタット中間体を製造することができる。
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の技術的解決策は次のとおりである。
オルリスタット中間体(最終生成物)の製造における酵素の用途であって、前記酵素が作用する基質はβ-カルボニルテトラデカノエート(原料)であり、構造式は、式Iに示されるとおりである。前記オルリスタット中間体は(R)-β-ヒドロキシテトラデカノエートであり、構造式は、式IIに示されるとおりである。構造式IのRは、1~3個の炭素原子を含む飽和アルキル基を指し、構造式IIのRは、1~3個の炭素原子を含む飽和アルキル基を指す。
【0009】
前記酵素はケト還元酵素であり、前記酵素のアミノ酸配列は、配列番号1に示されるもの及び相同性が90%を超えるアミノ酸配列であり、Singulisphaera acidiphilaに由来し、NCBIデータベースの登録番号はWP_015245403.1であり、短鎖脱水素酵素ファミリーに属し、及び/又は、配列番号2に示されるもの及び相同性が90%を超えるアミノ酸配列であり、Sphingomonas echinoidesに由来し、NCBIデータベースの登録番号はWP_010403640.1であり、短鎖脱水素酵素ファミリーに属する。及び/又は、配列番号4に示されるもの及び同一性が80%以上のアミノ酸配列であり、Rhodotorula toruloidesに由来し、NCBIデータベースの登録番号はEGU12837.1であるタンパク質の短縮型であり、短鎖脱水素酵素ファミリーに属する。又は、前記酵素は、ケト還元酵素とグルコース脱水素酵素の融合酵素であり、前記融合酵素のアミノ酸配列は配列番号8及び/又は配列番号9に示されるとおりである。本発明者らは、驚くべきことに、天然型又は遺伝子/タンパク質工学操作を経た前記酵素は前記基質に対して優れた触媒効果を有し、光学純度の高い前記最終生成物を得るという事実を見出した。
【0010】
さらに、配列番号1及び/又は配列番号2との同一性/相同性が90%以上、配列番号4との同一性/相同性が80%以上、配列番号8及び/又は配列番号9の酵素もオルリスタット中間体の製造に使用することができる。
【0011】
さらに、前記ケト還元酵素とグルコース脱水素酵素の融合酵素において、ケト還元酵素とグルコース脱水素酵素はリンカーによって接続されている。
さらに、前記リンカーのアミノ酸配列は配列番号5に示されるとおりである。
【0012】
さらに、前記ケト還元酵素とグルコース脱水素酵素の融合酵素はケト還元酵素-リンカー-グルコース脱水素酵素、又はグルコース脱水素酵素-リンカー-ケト還元酵素である。任意選択で、前記グルコース脱水素酵素のアミノ酸配列は、配列番号3に示されるとおりである。
【0013】
さらに、前記酵素は、いずれも、酵素粉末及び/又は酵素液及び/又は固定化酵素である。
【0014】
さらに、構造式IのRは、メチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基のいずれかであり、構造式IIのRは、メチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基のいずれかである。
【0015】
本発明の第2の目的は、融合酵素を提供することであり、前記融合酵素はケト還元酵素とグルコース脱水素酵素の融合酵素であり、前記融合酵素のアミノ酸配列は配列番号8及び/又は配列番号9に示されるとおりである。
【0016】
さらに、前記融合酵素においてケト還元酵素とグルコース脱水素酵素はリンカーによって接続されている。任意選択で、前記リンカーのアミノ酸配列は配列番号5に示されるとおりである。
【0017】
さらに、前記融合酵素はケト還元酵素-リンカー-グルコース脱水素酵素、又はグルコース脱水素酵素-リンカー-ケト還元酵素である。
任意選択で、前記ケト還元酵素のアミノ酸配列は配列番号1及び/又は配列番号2、及び/又は配列番号4に示されるもの並びに同一性/相同性が80%以上のアミノ酸配列である。
任意選択で、前記グルコース脱水素酵素のアミノ酸配列は、配列番号3に示されるとおりである。
【0018】
本発明の第3の目的は、いずれの前記融合酵素をコードするヌクレオチド配列及びその構築方法を提供することである。
【0019】
前記融合酵素のヌクレオチド配列は配列番号6又は配列番号7に示されるとおりである。
【0020】
さらに、前記ヌクレオチド配列の構築方法は、配列番号3に示されるグルコース脱水素酵素の遺伝子断片の3’末端に配列番号5に示されるリンカー配列を挿入し、次に、配列番号4に示されるケト還元酵素の遺伝子断片を接続して、配列番号6に示されるヌクレオチド配列の組換えプラスミドを構成することを含む。
【0021】
さらに、前記融合酵素の配列番号6のヌクレオチド配列を両端の制限酵素切断部位NdeIとXhoIによってベクターpET28aに接続させて、二重酵素融合発現プラスミドpET28a-G3790を構成し、その後、大腸菌に導入してスクリーニング、接種、培養を経て菌体を得る。菌体を破砕、遠心分離して粗酵素液を得、粗酵素液を凍結乾燥して酵素粉末を得る。
【0022】
さらに、前記ヌクレオチド配列の構築方法は、配列番号4に示されるケト還元酵素の遺伝子断片の3’末端に配列番号5に示されるリンカー配列を挿入し、次に、配列番号3に示されるグルコース脱水素酵素の遺伝子断片を接続して、配列番号7に示されるヌクレオチド配列を構成することを含む。
【0023】
さらに、前記融合酵素の配列番号7のヌクレオチド配列を両端の制限酵素切断部位NdeIとXhoIによってベクターpET28aに接続させて、二重酵素融合発現プラスミドpET28a-G3790を構成し、その後、大腸菌に導入してスクリーニング、接種、培養を経て菌体を得る。菌体を破砕、遠心分離して粗酵素液を得、粗酵素液を凍結乾燥して酵素粉末を得る。
【0024】
本発明の第4の目的は、組成物を提供することであり、当該組成物において両者が酵素と基質の協調的関係を形成しており、構造式IIに示される生成物を得る。
【0025】
上記の目的を達成するための本発明の技術的解決策は次のとおりである。
前記酵素のいずれかと基質とを含む組成物であって、前記基質は前記β-カルボニルテトラデカノエートである。前記β-カルボニルテトラデカノエートの構造式は式Iに示されるとおりである。前記酵素はケト還元酵素又はケト還元酵素とグルコース脱水素酵素の融合酵素であり、前記ケト還元酵素のアミノ酸配列は配列番号1及び/又は配列番号2、及び/又は配列番号4に示されるもの並びに同一性/相同性が80%以上のアミノ酸配列である。前記融合酵素のアミノ酸配列は配列番号8及び/又は配列番号9に示されるとおりである。
構造式IのRは、1~3個の炭素原子を含む飽和アルキル基を指す。
【0026】
さらに、前記融合酵素においてケト還元酵素とグルコース脱水素酵素はリンカーによって接続されている。任意選択で、前記リンカーのアミノ酸配列は配列番号5に示されるとおりである。
【0027】
さらに、前記融合酵素は、ケト還元酵素-リンカー-グルコース脱水素酵素、又はグルコース脱水素酵素-リンカー-ケト還元酵素である。
【0028】
さらに、前記グルコース脱水素酵素のアミノ酸配列は、配列番号3に示されるとおりである。
【0029】
さらに、前記酵素は、酵素粉末及び/又は酵素液及び/又は固定化酵素である。
【0030】
さらに、構造式IのRは、メチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基のいずれかであり、構造式IIのRは、メチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基のいずれかである。
【0031】
さらに、前記組成物において、前記酵素と前記基質の質量比は、1:1.1~150である。
【0032】
好ましくは、前記組成物において、前記酵素と前記基質の質量比は、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、1:100、1:110、1:120、1:130、1:140及び/又は1:150である。
【0033】
本発明の第5の目的は、(R)-β-ヒドロキシテトラデカノエートを製造するための反応系を提供することであり、当該反応系では高温高圧の過酷な条件に頼らなくても(R)-β-ヒドロキシテトラデカノエートを得ることができる。
【0034】
上記の目的を達成するための本発明の技術的解決策は次のとおりである。
前記反応系は式Iに示される基質と、酵素と、グルコースと、グルコース脱水素酵素と、NADPと、緩衝液で構成される。ここで、前記酵素はケト還元酵素であり、前記ケト還元酵素のアミノ酸配列は配列番号1及び/又は配列番号2、及び/又は配列番号4に示されるもの並びに同一性/相同性が80%以上のアミノ酸配列である。又は、前記反応系は式Iに示される基質と、酵素と、グルコースと、NADPと、緩衝液で構成される。ここで、前記酵素は、ケト還元酵素とグルコース脱水素酵素の融合酵素であり、前記ケト還元酵素のアミノ酸配列は配列番号1及び/又は配列番号2、及び/又は配列番号4に示されるもの並びに同一性/相同性が80%以上のアミノ酸配列である。前記ケト還元酵素とグルコース脱水素酵素の融合酵素のアミノ酸配列は、配列番号8及び/又は配列番号9に示されるとおりである。
構造式IのRは、1~3個の炭素原子を含む飽和アルキル基を指す。
【0035】
さらに、前記グルコース脱水素酵素のアミノ酸配列は、配列番号3に示されるとおりである。さらに、前記融合酵素においてケト還元酵素とグルコース脱水素酵素はリンカーによって接続されている。任意選択で、前記リンカーのアミノ酸配列は、配列番号5に示されるとおりである。
【0036】
さらに、前記融合酵素は、ケト還元酵素-リンカー-グルコース脱水素酵素、又はグルコース脱水素酵素-リンカー-ケト還元酵素である。
【0037】
さらに、前記グルコース脱水素酵素のアミノ酸配列は、配列番号3に示されるとおりである。
【0038】
さらに、前記酵素は、酵素粉末及び/又は酵素液及び/又は固定化酵素である。
【0039】
さらに、構造式IのRは、メチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基のいずれかであり、構造式IIのRは、メチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基のいずれかである。
【0040】
さらに、前記反応系のpHは6.0~8.0である。
【0041】
さらに、前記反応系において、前記緩衝液は、PBS緩衝液又はTris-HCl緩衝液である。
【0042】
さらに、前記反応系において、前記基質の濃度は、20~150g/Lである。
【0043】
さらに、前記反応系は、前記NADPの濃度が0.1~0.5g/Lであることを特徴とする。
【0044】
さらに、前記反応系において、構造式が式Iに示される化合物と前記グルコースのモル比は、1:1.2~4である。
【0045】
さらに、前記反応系において、前記緩衝液の濃度は、0.01~0.5mol/Lである。
【0046】
さらに、前記反応系の反応時間は15時間を超えず、反応液を得る。
【0047】
本発明の第6の目的は、オルリスタット中間体の製造方法を提供することであり、当該方法は産業上の大規模生産に適する。
【0048】
(R)-β-ヒドロキシテトラデカノエートの生合成方法であって、反応式は次のとおりである。
化合物I及び化合物IIのRは1~3個の炭素原子を含む飽和アルキル基を指し、好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基である。
前記生合成方法は、ケト還元酵素、グルコース、グルコース脱水素酵素及びNADP中で、又は、ケト還元酵素とグルコース脱水素酵素の融合酵素、グルコース及びNADP中で、化合物Iを反応させて、化合物IIを得ることを含む。
【0049】
本発明の実施形態において、前記生合成方法は次のステップを含む。化合物Iを緩衝液に加え、さらにケト還元酵素又はケト還元酵素とグルコース脱水素酵素の融合酵素と、グルコース、グルコース脱水素酵素(ケト還元酵素とグルコース脱水素酵素の融合酵素を加える場合は、グルコース脱水素酵素を加える必要はない)と、NADPとを加えて、混合溶液を得、前記混合溶液を20~40℃で撹拌しながら反応させ、全過程においてNaOH水溶液でpHを調整し、液体クロマトグラフィーを利用して反応の転化率をモニターする。転化率が99%以上になったら反応を終了させ、抽出溶媒を加えて抽出し、有機相を合わせて減圧濃縮し、冷却して結晶化させて、白色固体生成物である化合物IIを析出させる。任意選択で、さらに、n-ヘキサンで再結晶させて純度のより高い生成物を得る。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態において、前記NaOH水溶液の濃度は2Mであってもよい。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態において、前記緩衝液のpHは6.0~8.0である。好ましくは、前記緩衝液は、PBS(即ちリン酸塩)緩衝液又はTris-HCl緩衝液であり、より好ましくは、前記緩衝液は、濃度が0.01~0.5mol/LのPBSリン酸緩衝液又は0.01~0.5mol/LのTris-HCl緩衝液である。
【0052】
本発明の実施形態において、前記反応の過程でpHを7.0~7.5の範囲に限定する。
【0053】
本発明の実施形態において、前記ケト還元酵素のアミノ酸配列は、本願の配列番号1、配列番号2及び配列番号4に示されるとおりである。前記ケト還元酵素とグルコース脱水素酵素の融合酵素のアミノ酸配列は、配列番号8及び/又は配列番号9に示されるとおりである。前記ケト還元酵素又はケト還元酵素とグルコース脱水素酵素の融合酵素の形態は、酵素粉末、酵素液、又は固定化酵素であってもよい。前記グルコース脱水素酵素のアミノ酸配列は、本願の配列番号3に示されるとおりであり、前記グルコース脱水素酵素の形態は、酵素粉末、酵素液、又は固定化酵素であってもよい。
【0054】
本発明の実施形態において、前記NADPはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を指し、即ち還元型補酵素II(NADPH)の酸化型である。前記混合溶液中のNADPの濃度は、0.1~0.5g/Lである。
【0055】
本発明の実施形態において、前記混合溶液中の化合物Iの濃度は、20~150g/Lである。
【0056】
本発明の実施形態において、前記混合溶液中の化合物Iとグルコースのモル比は、1:1.2~4である。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態において、好ましくは、前記反応の温度を35℃に維持する。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態において、前記抽出溶媒で2回抽出する。前記抽出溶媒は、無水エタノール又は酢酸エチルである。
【0059】
前記技術的解決策の内容をまとめると、次のとおりになる。
前記反応系においてオルリスタット中間体を製造する方法であって、前記反応系を20~40℃で撹拌しながら反応させて、前記オルリスタット中間体の反応液を得、前記オルリスタット中間体は(R)-β-ヒドロキシテトラデカノエートであり、構造式は、式IIに示されるとおりである
【0060】
さらに、前記方法では、NaOH水溶液をpH調整剤として使用する。
【0061】
さらに、前記方法では、前記反応時間は15時間を超えない。
【0062】
さらに、前記方法では、得られた反応液中の溶媒を用いて前記オルリスタット中間体を抽出する。
【0063】
さらに、前記方法では、前記溶媒は、無水エタノール又は酢酸エチルである。
【0064】
さらに、前記方法では、得られた抽出物を減圧濃縮し、冷却して結晶化させて、白色の結晶性固体である化合物IIを得る。
【0065】
前記オルリスタット中間体から製造されるオルリスタットである。
【発明の効果】
【0066】
本発明の有益な効果は次のとおりである。
本発明で使用する前記酵素が耐えることができる基質濃度は150g/Lに達しており、酵素活性は基質又は生成物によって阻害されない。
【0067】
本発明のオルリスタット中間体の製造方法は酵素法であり、当該方法は条件が穏やかで、高度な装置を必要とせず、実行しやすい。また、当該方法では排ガス・廃水・固形廃棄物の発生量が少なく、重金属汚染が生じず、環境配慮型プロセスであるため、工業的生産にも有利である。
【0068】
本発明において酵素触媒プロセスの転化率は99%以上と高く、キラルee値は99%以上に達しており、15時間以内に反応が完了し、生成物の濃度が高く、また、基質がほぼ完全に転化するため反応液の後処理ステップの簡素化が可能となり、簡単な抽出・結晶化ステップだけで純度の高い生成物が得られるため、コストが大幅に削減される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1図1は実施例5で測定された転化率のHPLCクロマトグラムである。
図2図2は実施例5の生成物の純度のHPLCクロマトグラムである。
図3図3は実施例5の生成物のキラル純度のHPLCクロマトグラムである。
図4図4は融合酵素G3790発現プラスミドのプラスミドマップである。
図5図5は融合酵素3790G発現プラスミドのプラスミドマップである。
図6図6はG3790融合酵素タンパク質バンドである。
図7図7は3790G融合酵素タンパク質バンドである。
【発明を実施するための形態】
【0070】
実施例を挙げるのは本発明の一層の説明のためであり、本発明の内容が実施例に限定されるわけではない。したがって、当業者が上記の発明の概要に従って実施形態に本質的でない改良と調整を行う場合、そのいずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【0071】
本発明は、β-カルボニルテトラデカノエートが酵素の触媒作用で(R)-β-ヒドロキシテトラデカノエートに還元されることに関し、反応式は次のとおりである。
補酵素NADPと、グルコースと、グルコース脱水素酵素とを含む環境において、特定の酵素の触媒効果により、基質β-カルボニルテトラデカノエートからキラル純度の非常に高い(R)-β-ヒドロキシテトラデカノエートを得る。触媒酵素は一般に短鎖脱水素酵素ファミリーのもので、例えば、本発明の実施例の様々なケト還元酵素である。異なる酵素の融合酵素であってもよく、例えば、本発明のいくつかの実施例の還元酵素とグルコース脱水素酵素が融合した融合酵素である。なお、グルコース脱水素酵素の作用でグルコースが脱水素化してHを放出し、その後、補酵素NADPがHを取得し、β-カルボニルテトラデカノエートの還元反応に加わることで、β-ヒドロキシテトラデカノエートを得る。
【0072】
本発明のケト還元酵素JR3789はSingulisphaera acidiphilaに由来し、NCBIデータベースの登録番号はWP_015245403.1であり、短鎖脱水素酵素ファミリーに属し、当該ケト還元酵素のアミノ酸配列は配列番号1に示され、サイズは249のアミノ酸である。
【0073】
アミノ酸配列の配列番号1は次のとおりである。
MGKLDNKVAVITGGNSGMGLATAQRFVSEGAYVFITGRRQAELDKAVDLIGKNVTGVQGDVSNLADLDRLYATVKEQKGRVDVLFANAGVGELAPLGSITEEQFDKVFNINVRGLLFTVQKALPLFQDGGSIILNASIASIKGMPAFSVYSASKAAVRSFARSWTVDLKGRKIRINTLSPGPIDTPILSGLASTEEELKQVKADLAAQVPLGRMGTSDEIANVALFLASDDSSYVTGIELFVDGGMAQI。
【0074】
本発明のケト還元酵素JR37150はSphingomonas echinoidesに由来し、NCBIデータベースの登録番号はWP_010403640.1であり、短鎖脱水素酵素ファミリーに属し、当該ケト還元酵素のアミノ酸配列は配列番号2に示され、サイズは259のアミノ酸である。
【0075】
アミノ酸配列の配列番号2は次のとおりである。
MARLAGKVALVTGGASVPGLGSATAIRFAQEGATVYLTDRDLAGAQAVAAQITAAGGRATALEHDVTSEADWDRVLAAIDAAEGRLDILVNNAGIAVLGPLEDVTAADFLRQNDVNLNSVFHGSKRALVMMRRPGDGGTARGGSIINISSVAGLIGVPGCGSYAASKGGVRLFSKVVALEGAADGVRCNSVHPGMIATNIQGVALEDNAANFDAVMALIPMVRMGEPEDIANMNLFLASDESRYITGAEFVVDGGMTAR。
【0076】
本発明のグルコース脱水素酵素GDHはBacillus subtilis QB928に由来し、NCBIデータベースの登録番号はAFQ56330.1であり、短鎖脱水素酵素ファミリーに属し、当該脱水素酵素のアミノ酸配列は配列番号3に示され、サイズは263のアミノ酸である。
【0077】
アミノ酸配列の配列番号3は次のとおりである。
MYMYPDLKGKVVAITGAASGLGKAMAIRFGKEQAKVVINYYSNKQDPNEVKEEVIKAGGEAVVVQGDVTKEEDVKNIVQTAIKEFGTLDIMINNAGLENPVPSHEMPLKDWDKVIGTNLTGAFLGSREAIKYFVENDIKGNVINMSSVHEVIPWPLFVHYAASKGGIKLMTETLALEYAPKGIRVNNIGPGAINTPINAEKFADPKQKADVESMIPMGYIGEPEEIAAVAAWLASKEASYVTGITLFADGGMTQYPSFQAGRG。
【0078】
本発明のケト還元酵素JR3790はRhodotorula toruloidesに由来し、NCBIデータベースの登録番号はEGU12837.1であるタンパク質の短縮型(70~317位)であり、短鎖脱水素酵素ファミリーに属し、当該ケト還元酵素のアミノ酸配列は配列番号4に示され、サイズは248のアミノ酸である。
【0079】
アミノ酸配列の配列番号4は次のとおりである。
MSSPAPTVYVISGASRGIGFAITSILAQHDNVLIFAGARDLKSAQLNELAQKSSGKVIPVKLESTSVEDAAALAKVVEEKAGKVDYVLAVAGISQSTDPIAQVSLDDVRRHFEVNTIGPLVLFQALLPLTTKSTAPHFIVVSTIAGSIASMPQVTFPVSAYAISKTAVNSAVGRIAIEHPDLDAFVCHPGFVSSDMVKQFAEKTGAPLSDFESFGMITPEESAASLVKLFDEAKKETHSGKFFNVDGT。
【0080】
リンカー配列の配列番号5は次のとおりである。
EFEEEEKKKQQEEEAERLRRIQEEMEKERKRREEDEERRRKEEEERRMKLEMEAKRKQEEEERKKREDDEKRKKKKL。
【0081】
HPLCの構成は次のとおりである。OD-Hカラムを使用する。移動相はn-ヘキサン:イソプロパノール=98:2で、流速は1.0mL/minである。装置仕様は、DAD1C,Sig=210,4 Ref=360,100である。
【0082】
前記酵素(配列番号1、配列番号2)及びグルコース脱水素酵素(配列番号3)はいずれも南京金斯瑞生物科技有限公司が合成した製品である。
【0083】
実施例1:
1gのβ-カルボニルテトラデカン酸メチル、1.5gのグルコースを秤量して100mLの三つ口フラスコに加え、次いで、濃度50mMでpH7.0のPBS緩衝液50mLを加えた。三つ口フラスコを恒温水槽に入れ、撹拌速度を800rpmに調整し、温度を35℃とし、その後、それぞれ10mgのNADPと、25mgのグルコース脱水素酵素GDH酵素粉末(配列番号3)と、100mgのケト還元酵素JR3789酵素粉末(配列番号1)とを加えて、混合反応液を得、濃度2MのNaOH溶液で調整してpHを7.0~7.5に維持し、温度を35℃に維持し、HPLCで反応の進行をモニターした。反応は9時間で終了し、転化率を測定すると99%を超えていた。
【0084】
反応終了後、最初に60℃に昇温して15分間保温し、その後、20~25℃に冷却して、80mLの酢酸エチルを加えて抽出し、20分間撹拌し、濾過して、濾液を層分離させて有機相を得た。さらに水相を50mLの酢酸エチルで1回抽出し、層分離させて、有機相を得た。有機相を合わせて、減圧濃縮した後、ゆっくりと冷却して、生成物を析出させ、粗生成物を得た。純度は98.10%で、光学純度は98.45%であった。粗生成物に2倍量のn-ヘキサンを加えて加熱して溶解させ、冷却して結晶化させ、結晶を収集し、室温で風乾して、0.89gの白色の結晶生成物を得た。測定すると純度は99.99%で、ee値は99.91%で、総収率は89%であった。
【0085】
実施例2:
1gのβ-カルボニルテトラデカン酸エチル、1.5gのグルコースを秤量して100mLの三つ口フラスコに加え、次いで、濃度50mMでpH7.0のPBS緩衝液50mLを加えた。三つ口フラスコを恒温水槽に入れ、撹拌速度を900rpmに調整し、温度を35℃とし、その後、それぞれ10mgのNADPと、35mgのグルコース脱水素酵素GDH酵素粉末(配列番号3)と、150mgのケト還元酵素JR3789酵素粉末(配列番号1)とを加えて、混合反応液を得、濃度2MのNaOH溶液で調整してpHを7.0~7.5に維持し、温度を35℃に維持し、HPLCで反応の進行をモニターした。反応は10時間で終了し、転化率を測定すると99%を超えていた。
【0086】
反応終了後、最初に60℃に昇温して15分間保温し、その後、20~25℃に冷却して、80mLの酢酸エチルを加えて抽出し、20分間撹拌し、濾過して、濾液を層分離させて有機相を得た。さらに水相を50mLの酢酸エチルで1回抽出し、層分離させて、有機相を得た。有機相を合わせて、減圧濃縮した後、ゆっくりと冷却して、生成物を析出させ、0.84gの白色生成物を得た。純度は98.42%で、ee値は98.15%で、総収率は84%であった。
【0087】
実施例3:
5gのβ-カルボニルテトラデカン酸メチル、7.5gのグルコースを秤量して100mLの三つ口フラスコに加え、次いで、濃度50mMでpH7.0のPBS緩衝液50mLを加えた。三つ口フラスコを恒温水槽に入れ、撹拌速度を800rpmに調整し、温度を35℃とし、その後、それぞれ50mgのNADPと、125mgのグルコース脱水素酵素GDH酵素粉末(配列番号3)と、500mgのケト還元酵素JR3789酵素粉末(配列番号1)とを加えて、混合反応液を得、濃度2MのNaOH溶液で調整してpHを7.0~7.5に維持し、温度を35℃に維持し、HPLCで反応の進行をモニターした。反応は13時間で終了し、転化率を測定すると99%を超えていた。
【0088】
反応終了後、最初に60℃に昇温して15分間保温し、その後、20~25℃に冷却して、80mLの酢酸エチルを加えて抽出し、20分間撹拌し、濾過して、濾液を層分離させて有機相を得た。さらに水相を50mLの酢酸エチルで1回抽出し、層分離させて、有機相を得た。有機相を合わせて、減圧濃縮した後、ゆっくりと冷却して、生成物を析出させ、4.65gの白色生成物を得た。純度は98.12%で、ee値は98.45%で、総収率は93%であった。
【0089】
実施例4:
5gのβ-カルボニルテトラデカン酸メチル、7.5gのグルコースを秤量して100mLの三つ口フラスコに加え、次いで、濃度50mMでpH7.0のPBS緩衝液50mLを加えた。三つ口フラスコを恒温水槽に入れ、撹拌速度を800rpmに調整し、温度を35℃とし、その後、それぞれ50mgのNADPと、300mgのグルコース脱水素酵素GDH酵素粉末(配列番号3)と、800mgのケト還元酵素JR37150酵素粉末(配列番号2)とを加えて、混合反応液を得、濃度2MのNaOH溶液で調整してpHを7.0~7.5に維持し、温度を35℃に維持し、HPLCで反応の進行をモニターした。反応は35時間で終了し、転化率を測定すると99%を超えていた。
【0090】
反応終了後、最初に60℃に昇温して15分間保温し、その後、20~25℃に冷却して、100mLの酢酸エチルを加えて抽出し、20分間撹拌し、濾過して、濾液を層分離させて有機相を得た。さらに水相を60mLの酢酸エチルで1回抽出し、層分離させて、有機相を得た。有機相を合わせて、減圧濃縮した後、ゆっくりと冷却して、生成物を析出させ、4.55gの白色生成物を得た。純度は98.62%で、光学純度は99.66%で、総収率は91%であった。
【0091】
実施例5:
7.5gのβ-カルボニルテトラデカン酸メチル、11.25gのグルコースを秤量して100mLの三つ口フラスコに加え、次いで、濃度50mMでpH7.0のPBS緩衝液50mLを加えた。三つ口フラスコを恒温水槽に入れ、撹拌速度を800rpmに調整し、温度を35℃とし、その後、それぞれ150mgのNADPと、200mgのグルコース脱水素酵素GDH酵素粉末(配列番号3)と、750mgのケト還元酵素JR3789酵素粉末(配列番号1)とを加えて、混合反応液を得、濃度2MのNaOH溶液で調整してpHを7.0~7.5に維持し、温度を35℃に維持し、HPLCで反応の進行をモニターした。反応は15時間で終了し、転化率を測定すると99%を超えていた。測定結果は表1、HPLCクロマトグラムは図1に示されるとおりである。
【0092】
反応終了後、最初に60℃に昇温して15分間保温し、その後、20~25℃に冷却して、100mLの酢酸エチルを加えて抽出し、20分間撹拌し、濾過して、濾液を層分離させて有機相を得た。さらに水相を80mLの酢酸エチルで1回抽出し、層分離させて、有機相を得た。有機相を合わせて、減圧濃縮した後、ゆっくりと冷却して、生成物を析出させ、粗生成物を得た。純度は99.60%で、ee値は98.68%であった。粗生成物に2倍量のn-ヘキサンを加えて加熱して溶解させ、冷却して結晶化させ、濾過し、室温で風乾して、6.53gの白色の結晶生成物を得た。測定すると純度は99.99%で、ee値は99.86%で、総収率は87%であった。生成物の純度測定データは表2、HPLCクロマトグラムは図2、生成物のキラル純度データは表3、HPLCクロマトグラムは図3に示されるとおりである。
【表1】
【表2】
【表3】
【0093】
実施例6:
(1)融合酵素G3790発現プラスミドの構築
グルコース脱水素酵素GDH(配列番号3)の遺伝子断片の3’末端にリンカー(配列番号5)の遺伝子配列を挿入し、次に、ケト還元酵素JR3790(配列番号4)の遺伝子断片を接続して、融合酵素G3790配列(配列番号6)(合成は南京金斯瑞生物科技有限公司)を構成し、両端の制限酵素切断部位NdeIとXhoIによってベクターpET28aに接続させて、二重酵素融合発現プラスミドpET28a-G3790を構成した。前記組換えプラスミドのプラスミドマップは図4に示されるとおりである。
【0094】
(2)融合酵素3790G発現プラスミドの構築
ケト還元酵素JR3790(配列番号4)の遺伝子断片の3’末端にリンカー(配列番号5)の遺伝子配列を挿入し、次に、グルコース脱水素酵素GDH(配列番号3)の遺伝子断片を接続して、融合酵素配列(配列番号7)(合成は南京金斯瑞生物科技有限公司)を構成し、両端の制限酵素切断部位NdeIとXhoIによってベクターpET28aに接続させて、二重酵素融合発現プラスミドpET28a-3790Gを構成した。前記組換えプラスミドのプラスミドマップは図5に示されるとおりである。
【0095】
(3)融合酵素G3790及び融合酵素3790Gの製造
構築した融合酵素発現プラスミドpET28a-G3790及びpET28a-3790Gを大腸菌コンピテントE.coli BL21(DE3)株に導入し、スクリーニングして陽性クローン形質転換体を得、組換えプラスミドを含む単クローンを選択して5mLのLB培地(100μg/mLカナマイシン)を加えた試験管に接種し、37℃下200rpmで一晩培養した後、2%の接種量で菌液を、1LのLB培地を加えた三角フラスコに移し、37℃下200rpmでOD600が約0.6になるまで培養して、誘導物質としてイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)(最終濃度0.3mM)を加え、25℃下で引き続き12時間培養し、遠心分離して菌体を収集した。菌体をPBS(pH=7.0)で希釈した後、再懸濁して超音波破砕を実施し、遠心分離して上清、すなわち粗酵素液を得た。
【0096】
発現した粗酵素液に対し、それぞれSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)タンパク質バンド同定を行った。図6はG3790融合酵素のタンパク質電気泳動結果で、レーンMはタンパク質マーカー(GenScript)で、レーン1は全細胞を破砕した後の総タンパク質、レーン2は全細胞を破砕・遠心分離した上清であった。融合酵素の理論的な分子量は67kDaで、アミノ酸配列は配列番号8に示されるとおりである。図7は3790G融合酵素のタンパク質電気泳動結果で、レーンMはタンパク質マーカー(GenScript)で、レーン1は全細胞を破砕した後の総タンパク質、レーン2は全細胞を破砕・遠心分離した上清であった。2つの融合酵素の理論的な分子量はいずれも67kDaで、アミノ酸配列は配列番号9に示されるとおりである。前記2つの融合酵素はいずれも可溶性タンパク質であり、分子量は対応する理論分子量に近かった。
【0097】
粗酵素液をそれぞれ一晩予備凍結し、24~36時間凍結乾燥して、融合酵素G3790酵素粉末及び融合酵素3790G酵素粉末を得た。
【0098】
(4)オルリスタット中間体の製造
7.5kgのβ-カルボニルテトラデカン酸メチル、9.375kgのグルコースを秤量して100Lガラス製反応容器に加え、次いで、濃度50mMでpH7.0のPBS緩衝液25Lを加えた。高低温循環恒温槽で反応容器の温度を35℃に維持し、機械的撹拌速度を180rpmに調整し、その後、それぞれ18gのNADPと、800gの3790G酵素粉末とを加えて、混合反応液を得、濃度2MのNaOH溶液で調整してpHを7.0~7.5に維持し、HPLCで反応の進行をモニターした。反応は13時間で終了し、転化率を測定すると99%を超えていた。
【0099】
反応終了後、最初に60℃に昇温して30分間保温し、その後、20~25℃に冷却して、吸引濾過してケーキを収集し、ケーキに15Lの酢酸エチルを加えて抽出し、20分間撹拌し、吸引濾過して有機相を収集した。さらに、2Lの酢酸エチルでケーキを抽出して1回洗浄し、有機相を得た。有機相を合わせて、減圧濃縮した後、ゆっくりと冷却して、生成物を析出させ、粗生成物を得た。純度は98.5%で、ee値は98.6%であった。粗生成物に2倍量のn-ヘキサンを加えて加熱して溶解させ、冷却して結晶化させ、濾過し、室温で風乾して、6.45kgの白色の結晶生成物を得た。測定すると純度は99.70%で、ee値は99.88%で、総収率は86%であった。
【0100】
なお、上記の実施例は、本発明の技術的解決策を非限定的に説明するためのものに過ぎず、好ましい実施例を挙げて本発明を詳しく説明しているが、当業者が理解しているように、本発明の技術的解決策に対し、その趣旨と範囲を逸脱することなく修正又は同等な置換を行うことができ、そのいずれも本発明の特許請求の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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