(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用の正極およびリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240604BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240604BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240604BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20240604BHJP
C08F 214/18 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/58
H01M4/136
C08F214/18
(21)【出願番号】P 2022558531
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(86)【国際出願番号】 KR2021016787
(87)【国際公開番号】W WO2022203149
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0039316
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ス・リム・イ
(72)【発明者】
【氏名】スン・ウク・ジョン
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-073549(JP,A)
【文献】特開2012-015297(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092677(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/239781(WO,A1)
【文献】特表2015-522928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/62
H01M 4/58
H01M 4/136
C08F 214/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体、第1合材層および第2合材層が順次に積層された構造を有し、
前記第1合材層は、フッ素系ホモポリマーを含有する第1バインダーを含み、
前記第2合材層は、混和性官能基を有するフッ素系コポリマーを含有する第2バインダーを含み、
前記混和性官能基は、(メタ)アクリル酸、C1~10のアルキル(メタ)アクリレート、C1~10のアルキル(メタ)アクリロニトリルおよびC1~10のアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される1種以上のモノマーに由来
し、
前記混和性官能基の含有量は、フッ素系コポリマーを基準にして0.1モル%~10モル%である、リチウム二次電池用の正極。
【請求項2】
前記第1バインダーおよび前記第2バインダーは、下記式1を満たし、
[式1]
1.0≦Mw
2nd/Mw
1st≦2.0
前記式1中、
Mw
1stは第1バインダーの重量平均分子量を示し、
Mw
2ndは第2バインダーの重量平均分子量を示
し、
前記第1バインダーの重量平均分子量の単位と前記第2バインダーの重量平均分子量の単位は同じである、請求項1に記載のリチウム二次電池用の正極。
【請求項3】
前記第1バインダーは、10,000g/mol~1,000,000g/molの重量平均分子量(Mw
1st)を有する、請求項1に記載のリチウム二次電池用の正極。
【請求項4】
前記第1合材層は、前記第1合材層の全体100重量部に対して、
75~98重量部の第1活物質、
2~20重量部の前記第1バインダーおよび
5重量部以下の第1導電材を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用の正極。
【請求項5】
前記第1活物質は、下記化学式1で示すリン酸鉄リチウムを含み、
[化学式1]
Li
1+xFe
1-yM
1
y(PO
4-z)X
z
前記化学式1中、
M
1はAl、MgおよびTiのうちから選ばれた1種以上であり、XはF、SおよびNのうちから選ばれた1種以上であり、
-0.5≦x≦+0.5、0≦y≦0.5、0≦z≦0.1である、請求項
4に記載のリチウム二次電池用の正極。
【請求項6】
前記第1合材層は、下記式2および式3のうちの一つ以上の条件を満たし、
[式2]
4≦a/b≦20
[式3]
15<a/c
前記式2および式3中、
aは
第1合材層の全体100重量部に対する第1活物質
の重量部の値を示し、
bは
第1合材層の全体100重量部に対する第1バインダー
の重量部の値を示し、
cは
第1合材層の全体100重量部に対する第1導電材
の重量部の値を示す、請求項1に記載のリチウム二次電池用の正極。
【請求項7】
第2合材層は、前記第2合材層の全体100重量部に対して、
80~98重量部の第2活物質、
1~10重量部の第2バインダーおよび
10重量部以下の第2導電材を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用の正極。
【請求項8】
前記第1合材層および前記第2合材層は、下記式4~式6のうちの一つ以上の条件を満たし、
[式4]
a<a’
[式5]
b>b’
[式6]
c<c’
前記式4~式6の中、
aは
第1合材層の全体100重量部に対する第1活物質の
重量部の値を示し、
bは
第1合材層の全体100重量部に対する第1バインダーの
重量部の値を示し、
cは
第1合材層の全体100重量部に対する第1導電材の
重量部の値を示し、
a’は
第2合材層の全体100重量部に対する第2活物質の
重量部の値を示し、
b’は
第2合材層の全体100重量部に対する第2バインダーの
重量部の値を示し、
c’は
第2合材層の全体100重量部に対する第2導電材の
重量部の値を示す、請求項1に記載のリチウム二次電池用の正極。
【請求項9】
前記第1合材層の平均厚さは0.1μm~300μmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用の正極。
【請求項10】
前記第1合材層の平均厚さは0.1μm~10μmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用の正極。
【請求項11】
請求項1に記載のリチウム二次電池用の正極、負極、および前記正極と前記負極との間に位置する分離膜を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用の正極およびリチウム二次電池に関するものであって、具体的には、安全性が向上されたリチウム二次電池用の正極およびリチウム二次電池に関するものである。本出願は、2021年3月26日付の韓国特許出願第10-2021-0039316号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器に対する技術開発と需要が増加するにつれて、エネルギー源としての二次電池に対する需要が急激に増している。このような二次電池のうち、高いエネルギー密度と作動電位を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いというリチウム二次電池が商用化されて広く使用されている。
【0003】
最近になって、電気自動車のような中大型デバイスの電源として、リチウム二次電池が用いられており、リチウム二次電池の高容量、高エネルギー密度、および低コスト化がさらに求められている。これより、高価なCoを代替して、安価なNi、Mn、Feなどを使用するための研究が活発に行われている。
【0004】
このようなリチウム二次電池の主な研究課題のうちの一つは、高容量、高出力の電極活物質を具現しながらも、それを用いた電池の安全性を向上させることである。現在のリチウム二次電池は耐久性と安全性を確保するために、特定の電圧領域(一般的に、4.4V以下)で使用するように設計している。しかしながら、意図せずにセル電位がそれ以上(~12Vまで)に上がることがあるが、このように許容された電流または電圧を超えた過充電の状態が続くと、リチウム二次電池が爆発または発火するなどの安全上に深刻な問題を引き起こし得る。特に、電気自動車、ハイブリッド自動車などの電源として中大型電池パックに使用されるリチウム二次電池は、長期間の寿命が要求されると同時に、多数の電池セルが密集する特性上、安全性の確保がさらに重要となる。
【0005】
これに関し、特許文献1は、正極集電体と正極活物質層との間に過充電防止層を介在して過充電時の抵抗を増加させて充電電流を遮断し、電池の安全性を確保するという技術を開示している。しかしながら、上記のように過充電防止層を備えた電極は安全性が向上される。しかし、過充電防止層と正極活物質層の組成の違いに起因する層間クラックが発生し、電池の寿命特性が不良となり得る。また、電極の貫通抵抗が低くて、針状体による浸透時に安全性が低減されるという限界がある。
【0006】
したがって、安全性を向上させながらも寿命特性の低下が発生せず、外部からの釘のような金属体が電極を貫通する場合の貫通抵抗を増加させた二次電池用の正極に対する技術開発が必要であるのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国公開特許2019-0047203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これより、本発明の目的は、外部からの釘のような金属体が電極を貫通する場合に、貫通抵抗を増加させて電池の安全性を確保することができ、電池の寿命特性を向上させることができる二次電池用の正極およびそれを含むリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した問題を解決するために、
本発明は、一実施形態において、
集電体、第1合材層および第2合材層が順次に積層された構造を有し、且つ
上記第1合材層は、フッ素系ホモポリマーを含有する第1バインダーを含み、
上記第2合材層は、混和性官能基を有するフッ素系コポリマーを含有する第2バインダーを含み、
上記混和性官能基は、(メタ)アクリル酸、C1~10のアルキル(メタ)アクリレート、C1~10のアルキル(メタ)アクリロニトリルおよびC1~10のアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される1種以上のモノマーに由来する、リチウム二次電池用の正極を提供する。
【0010】
このとき、上記第1バインダーおよび第2バインダーは、下記式1を満たすことができる:
【0011】
[式1]
1.0≦Mw2nd/Mw1st≦2.0
【0012】
式1中、Mw1stは第1バインダーの重量平均分子量を示し、Mw2ndは第2バインダーの重量平均分子量を示す。
【0013】
また、上記第1バインダーは、10,000g/mol~1,000,000g/molの重量平均分子量(Mw1st)を有し得る。
【0014】
また、上記混和性官能基の含有量は、フッ素系コポリマーを基準にして0.1モル%~10モル%であり得る。
【0015】
また、上記第1合材層は、全体100重量部に対して、第1活物質75~98重量部、第1バインダー2~20重量部および第1導電材5重量部以下で含み得る。
【0016】
ここで、上記第1活物質は、下記化学式1で示すリン酸鉄リチウムを含み得る:
【0017】
[化学式1]
Li1+xFe1-yM1
y(PO4-z)Xz
【0018】
上記化学式1中、
M1はAl、MgおよびTiのうちから選ばれた1種以上であり、XはF、SおよびNのうちから選ばれた1種以上であり、
-0.5≦x≦+0.5、0≦y≦0.5、0≦z≦0.1である。
【0019】
また、上記第1合材層は、下記式2および式3のうちのいずれか1つ以上の条件を満たすことができる:
【0020】
[式2]
4≦a/b≦20
【0021】
[式3]
15<a/c
【0022】
上記式2および式3中、
aは第1活物質の含有量を示し、
bは第1バインダーの含有量を示し、
cは第1導電材の含有量を示す。
【0023】
また、上記第2合材層は、全体100重量部に対して、第2活物質80~98重量部、第2バインダー1~10重量部および第2導電材10重量部以下で含み得る。
【0024】
また、上記第1合材層および第2合材層は、下記式4~式6のうちのいずれか1つ以上の条件を満たすことができる:
【0025】
[式4]
a<a’
【0026】
[式5]
b>b’
【0027】
[式6]
c<c’
【0028】
上記式4~式6中、
a、bおよびcは、上記式2および式3で定義したものと同じであり、
a’は第2活物質の含有量を示し、
b’は第2バインダーの含有量を示し、
c’は第2導電材の含有量を示す。
また、上記第1合材層の平均厚さは0.1μm~300μmであってもよく、具体的には0.1μm~10μmであってもよい。
【0029】
さらに、本発明は、一実施形態において、本発明に係る上記正極、負極および上記正極と負極との間に位置する分離膜を含む、リチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るリチウム二次電池用の正極は、正極集電体上に第1合材層および第2合材層を順次に含み、且つ第1合材層と第2合材層に混和性および分子量が異なる異種のフッ素系バインダーを使用することで、外部から釘のような金属体が電極を貫通する場合に、貫通抵抗を増加させて電池の安全性を確保し得るのみならず、正極を構成する各層の界面接着力と合材層の電解液に対する濡れ性を同時に高めることができるので、電池の寿命特性に優れるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な実施形態を有することができる。そのため、特定の実施形態を詳細な説明で詳細に説明する。
【0032】
しかしながら、これは、本発明を特定の実施形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解すべきである。
【0033】
本発明において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解すべきである。
【0034】
また、本発明において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるというのは、上部のみならず下部に配置される場合も含むものであり得る。
【0035】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0036】
<リチウム二次電池用の正極>
本発明は、一実施形態において、
集電体、第1合材層および第2合材層が順次に積層された構造を有し、且つ
上記第1合材層は、フッ素系ホモポリマーを含有する第1バインダーを含み、
上記第2合材層は、混和性官能基を有するフッ素系コポリマーを含有する第2バインダーを含み、
上記混和性官能基は、(メタ)アクリル酸、C1~10のアルキル(メタ)アクリレート、C1~10のアルキル(メタ)アクリロニトリルおよびC1~10のアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される1種以上のモノマーに由来する、リチウム二次電池用の正極を提供する。
【0037】
本発明に係るリチウム二次電池用の正極は、集電体上に第1合材層と第2合材層が順次に積層された構造を有する。
【0038】
このとき、上記第1合材層は第1活物質、第1バインダーおよび第1導電材を含み、上記第2合材層は第2活物質、第2バインダーおよび第2導電材を含み得る。
【0039】
具体的には、上記第1合材層および第2合材層は、可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な正極活物質であって、第1活物質および第2活物質をそれぞれ含み得る。
【0040】
一例として、上記第1合材層に含まれた第1活物質は、下記化学式1で示すリン酸鉄リチウム1種以上を含み得る:
【0041】
[化学式1]
Li1+xFe1-yM1
y(PO4-z)Xz
【0042】
上記化学式1中、M1はAl、MgおよびTiのうちから選択された1種以上であり、XはF、SおよびNのうちから選択された1種以上であり、-0.5≦x≦+0.5、0≦y≦0.5、0≦z≦0.1である。
【0043】
上記第1活物質は、化学式1で示すリン酸鉄リチウムであって、LiFePO4、Li(Fe,Al)PO4、Li(Fe,Mg)PO4およびLi(Fe,Ti)PO4からなる群から選択される1種以上の化合物を含むことができ、具体的にはLiFePO4を用いることができる。
【0044】
上記化学式1で示すリン酸鉄リチウムはオリビン構造を有し得る。オリビン構造を有するリン酸鉄リチウムは、約4.5Vの過充電電圧以上で、内部のリチウムが抜け出しながら体積が収縮することになるが、これにより、第1合材層の導電パス(Path)を速やかに遮断させて第1合材層が絶縁層として作用することになる。また、第1合材層の抵抗が増加し、充電電流が遮断されて過充電終了電圧に到達させるという効果がある。このために、上記第1活物質は、過充電電圧の条件で、第1合材層を絶縁層に速やかに転換されるように比表面積が大きく、粒度が小さい形態を有し得る。具体的に、上記第1活物質は、平均サイズが10μm未満、より具体的には平均サイズが9μm以下、8μm以下、7μm以下、0.01~8μm、0.01~6μm、0.01~5μm、0.01~3μm、または0.1~1μmであり得る。
【0045】
他の一例として、第2合材層に含まれた第2活物質は、下記化学式2で示すリチウムニッケル酸化物1種以上を含むことができ、場合によっては第1活物質に含まれた化学式1で示すリン酸鉄リチウムと併用され得る:
【0046】
[化学式2]
LipNi1-q-r-sCoqMnrM2
sO2
【0047】
上記化学式2中、M2は、Al、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb、MoおよびCrからなる群から選ばれるいずれか1種以上の元素であり、0.9≦p≦1.5、0≦q≦1、0≦r≦0.5、0≦s≦0.1、0≦q+r+s≦1である。
【0048】
上記第2活物質は、化学式2で示すリチウムニッケル酸化物に必ずしも限定されるものではないが、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物や1以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+x1Mn2-x1O4(ここで、x1は0~0.33である)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiV3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-x2Ma
x2O2(ここで、Ma=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x2=0.01~0.3である)で示すNiサイト型リチウムニッケル酸化物、化学式LiMn2-x3Mb
x3O2(ここで、Mb=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x3=0.01~0.1である)またはLi2Mn3McO8(ここで、Mc=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;LiNix4Mn2-x4O4(ここで、x4=0.01~1である)で表されるスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn2O4;ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3などを含み得る。
【0049】
具体的には、上記化学式2で示すリチウムニッケル酸化物は、LiCoO2、LiCo0.5Zn0.5O2、LiCo0.7Zn0.3O2、LiNiO2、LiNi0.5Co0.5O2、LiNi0.6Co0.4O2、LiNi1/3Co1/3Al1/3O2、LiMnO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、およびLiNi0.7Co0.1Mn0.1Al0.1O2からなる群から選択される1種以上の化合物を含むことができ、より具体的にはLiCoO2、LiCo0.7Zn0.3O2、LiNi0.5Co0.5O2またはLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2をそれぞれ単独で使用するか、または併用し得る。
【0050】
また、上記第1合材層および第2合材層は、下記化学式3で示すリチウムコバルト酸化物を含む正極添加剤を含む:
【0051】
[化学式3]
LiaCo1-bM3
bO4
【0052】
上記化学式3中、M3は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選択される1種以上の元素であり、aおよびbはそれぞれ5≦a≦7、0≦b≦0.3である。
【0053】
上記正極添加剤は、多くのリチウムを含有することにより、初期充電時の負極における非可逆的な化学的物理的反応に起因して発生したリチウムの消耗に、リチウムを提供することができる。これにより、電池の充電容量が増加し、非可逆容量が減少して寿命特性が改善され得る。
【0054】
このような正極添加剤として、本発明は、化学式3で示すリチウムコバルト酸化物を含む。このとき、化学式3で示すリチウムコバルト酸化物はLi6CoO4、Li6Co0.5Zn0.5O4、Li6Co0.7Zn0.3O4などを含み得る。
【0055】
また、上記正極添加剤の含有量は、第1合材層または第2合材層の全体100重量部に対して、0.1~5重量部であってもよく、具体的には0.1~3重量部、または1~3重量部であってもよい。本発明は、正極添加剤の含有量を上記のように調節することで、電池の初期充電容量を極大化しながら、後の充放電時に発生されるガス量を低減させることができる。
【0056】
また、上記第1合材層および第2合材層は、各層に含有まれた活物質と導電材などを結合させ、同時に集電体と第1合材層および/または第1合材層と第2合材層の接着力を付与するために、第1バインダーおよび第2バインダーをそれぞれ含む。
【0057】
このとき、第1合材層に含まれる第1バインダーは、1種のフッ素系モノマーに由来するホモポリマーであり得る。具体的に、上記第1バインダーは、フッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ化ビニル(VF)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、ペンタフルオロプロペン、3,3,3‐トリフルオロ‐1‐プロペン、2‐トリフルオロメチル‐3,3,3‐トリフルオロプロペンなどのフッ素系モノマーに由来するものであり得る。
【0058】
一例として、上記第1バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ホモポリマーを含み得る。本発明で使用される「フッ化ビニリデンホモポリマー」または「PVDF」は、フッ化ビニリデンを90モル%以上;95モル%以上;または、フッ化ビニリデンを98モル%以上使用して重合されたものを意味し得る。本発明は、第1バインダーとして、別途の官能基を含まずにフッ化アルキル鎖のみで構成されたフッ素系モノマーに由来するフッ素系ホモポリマーを用いることで、電解液に対するスウェリングを一定の範囲内に低く維持しながら比表面積が大きい10μm未満の活物質との副反応を最小限に抑えて、電池の容量および寿命が低下され且つ第1合材層と集電体の接合力が低くなることを防止し得る。
【0059】
また、上記第1バインダーの重量平均分子量(Mw1st)は、10,000g/mol~1,000,000g/molであってもよく、具体的には50,000g/mol~1,000,000g/mol;100,000g/mol~1,000,000g/mol;300,000g/mol~1,000,000g/mol;500,000g/mol~1,000,000g/mol;750,000g/mol~1,000,000g/mol;850,000g/mol~1,000,000g/mol;200,000g/mol~500,000g/mol;300,000g/mol~700,000g/mol;400,000g/mol~850,000g/mol;または100,000g/mol~250,000g/molであってもよい。
【0060】
本発明は、第1バインダーの重量平均分子量(Mw1st)を上記範囲に調節することで、低い分子量によって第1合材層に含まれる第1活物質と第1導電材が凝集されるのを防止する一方、高い分子量によって第1合材層形成用の組成物の粘度が急激に増加することを防止し得る。
【0061】
また、上記第1バインダーは、下記式1を満たすことができる:
【0062】
[式1]
1.0≦Mw2nd/Mw1st≦2.0
【0063】
式1中、Mw1stは第1バインダーの重量平均分子量を示し、Mw2ndは第2バインダーの重量平均分子量を示す。
【0064】
上記式1は、第2合材層に含まれた第2バインダーに対する第1合材層に含まれた第1バインダーの重量平均分子量の割合に対する条件を示したものであって、本発明で使用される第2バインダーが第1バインダーと比較して重量平均分子量が同等であるか、または2倍以内で大きいものであり得ることを意味する。具体的に、本発明は、上記式1を1~2で満たすことができ、より具体的には1.05~1.95;1.05~1.5;1.05~1.2;1.2~1.5;1.6~2;1.8~2;または1.3~1.95で満たすことができる。本発明は、上記式1の条件を満たすことで、第1バインダーと第2バインダーの重量平均分子量の偏差により第1合材層と第2合材層の界面性能が低下されることを防止する一方、電池の寿命が劣位されることを防ぐことができる。
【0065】
また、上記第2バインダーは、2種以上のフッ素系モノマーを用いて得られるフッ素系コポリマーであり得る。具体的に、上記フッ素系コポリマーは、フッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ化ビニル(VF)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、ペンタフルオロプロペン、3,3,3‐トリフルオロ‐1‐プロペンおよび2‐トリフルオロメチル‐3,3,3‐トリフルオロプロペンからなる群から選択される2種以上のフッ素系モノマーを共重合したものであり得る。
【0066】
また、上記フッ素系コポリマーは混和性官能基を含み得る。ここで、「混和性官能基」とは、第2合材層に含まれる固相物質、例えば、第2活物質および第2導電材との混和性を向上させ、正極の合材層と電解液の親和性を向上させることができる官能基を意味し得る。このような混和性官能基としては、例えば、(メタ)アクリル酸、C1~10のアルキル(メタ)アクリレート、C1~10のアルキル(メタ)アクリロニトリルおよびC1~10のアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される1種以上のモノマーに由来する官能基を含み得る。
【0067】
また、上記混和性官能基の含有量は、第2バインダーであるフッ素系コポリマー全体100モル%を基準にして0.1~10モル%であってもよく、具体的には1~5モル%;3~8モル%;5~10モル%;または1~3モル%であってもよい。本発明は、フッ素系コポリマーに含まれた混和性官能基の含有量を上記範囲に制御することで、混和性官能基の含有量が低くて第2活物質と第2導電材との混和性が十分に具現されないことを防止する一方、10モル%以上の混和性官能基により第1合材層と第2合材層の接着力が低下されることを予防し得る。
【0068】
一例として、上記フッ素系コポリマーは、フッ素系モノマーであって、約70~99モル%のフッ化ビニリデン(VdF)と1~30%のヘキサフルオロプロペン(HFP)とを共重合して製造されたコポリマーであり得る。また、(メタ)アクリル酸を用いて上記コポリマー全体100モル%に対して3~5モル%の混和性官能基を含むことができる。
【0069】
また、第1合材層および第2合材層に含まれた第1導電材および第2導電材としては、それぞれ天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよび炭素繊維からなる群から選択される1種以上を含むことができる。例えば、上記第1導電材および第2導電材はアセチレンブラックを含むことができる。
【0070】
さらに、上記第1合材層は、第1活物質、第1バインダーおよび第1導電材を特定の含量および/または含量割合で含まれ得る。具体的に、上記第1合材層は、全体100重量部に対して、第1活物質75~98重量部、第1バインダー2~20重量部および第1導電材5重量部以下で含み得る。より具体的に、上記第1合材層は、全体100重量部に対して、第1活物質を80~98重量部;85~98重量部;90~98重量部;75~85重量部;85~95重量部;85~90重量部;または90~95重量部で含み得る。また、上記第1合材層は、全体100重量部に対して、第1バインダーを4~20重量部;4~15重量部;4~12重量部;4~8重量部;8~20重量部;8~15重量部;または15~25重量部で含むことができ、第1導電材を5重量部以下;3重量部以下;0.5~3重量部;または0.5~2.5重量部で含み得る。
【0071】
また、上記第1合材層は、下記式2および式3のうちのいずれか1つ以上の条件を満たすことができる:
【0072】
[式2]
4≦a/b≦20
【0073】
[式3]
15<a/c
【0074】
上記式2および式3中、aは第1活物質の含有量を示し、bは第1バインダーの含有量を示し、cは第1導電材の含有量を示す。
【0075】
上記式2は、第1合材層に含まれた第1活物質と第1バインダーとの含量割合が4~20(すなわち、4≦a/b≦20)であることを示す条件であって、本発明の正極は、上記式2を4~20;4~10;4~8;5~10;8~19;8~11;または15~20で満たすことができる。本発明は、式2の条件を上述の範囲に満たすことで、第1活物質と第1バインダーの含量割合が4未満に低くてエネルギー密度が減少し、寿命が劣位されるのを防止する一方、上記含量割合が20を超えて集電体と第1合材層との間の接着力が低下し、充放電サイクル寿命と安定性性能が低下されることを防止し得る。
【0076】
また、上記式3は、第1合材層に含まれた第1活物質と第1導電材の含量割合が15を超える(すなわち、15<a/c)ことを示す条件であって、本発明の正極は、上記式3を15超過;20超過;40超過;50超過;70超過;30~85;35~50;40~50;45~50;40~85;50~85;70~85;または40~47で満たすことができる。本発明は、式3の条件を上述の範囲で満たすことで、第1活物質と第1導電材との含量割合が15未満と低い場合に、第1合材層の抵抗が著しく低くて非理想的な状況で短絡抵抗が増加されず、安全性この低くなるという問題を防ぐことができる。
【0077】
また、上記第2合材層は、第1合材層と同様に、第2活物質、第2バインダーおよび第2導電材は特定の含量および/または含量割合で含まれ得る。
【0078】
具体的に、上記第2合材層は、全体100重量部に対して、第2活物質80~98重量部、第2バインダー1~10重量部および第2導電材10重量部以下で含むことができる。より具体的に、上記第2合材層は、全体100重量部に対して、第2活物質を85~98重量部;75~98重量部;75~85重量部;85~95重量部;85~90重量部;90~95重量部;90~98重量部;または93~97重量部で含むことができる。また、上記第1合材層は、全体100重量部に対して、第1バインダーを1~10重量部;1~5重量部;または1~3重量部で含むことができ、第1導電材を10重量部以下;7.5重量部以下;5重量部以下;4重量部以下;1~4.5重量部;または2~4重量部で含むことができる。
【0079】
また、上記第2合材層は、下記式4~式6のうちのいずれか1つ以上の条件を満たすことができる:
【0080】
[式4]
a<a’
【0081】
[式5]
b>b’
【0082】
[式6]
c<c’
【0083】
上記式4~式6中、a、bおよびcは、上記式2および式3で定義したものと同じであり、a’は第2活物質の含有量を示し、b’は第2バインダーの含有量を示し、c’は第2導電材の含有量を示す。
【0084】
上記式4~式6は、第1合材層と第2合材層に含まれた各活物質、バインダーおよび導電材の含量割合を示したものであって、具体的には、第1合材層に含まれた第1活物質と第1導電材は、それぞれ第2合材層に含まれた第2活物質と第2導電材より含有量が低く、第1合材層に含まれた第1バインダーは第2合材層に含まれた第2バインダーより含有量が高いことを意味する。本発明は、第1合材層と第2合材層に含まれた各成分の含有量を上記式4~式6のうちのいずれか1つ以上を満たすように制御することで、各層の界面で脱着が発生するのを防止する一方、非理想的な状況における第1合材層と第2合材層の短絡抵抗を増加させることができる。
【0085】
また、上記第1合材層と第2合材層は平均厚さがそれぞれ500μm以下であり得る。例えば、上記第1合材層と第2合材層の平均厚さは、それぞれ0.1μm~300μmであってもよく、具体的には0.1μm~200μm;0.1μm~100μm;0.1μm~50μm;0.1μm~20μm;0.1μm~10μm;0.1μm~5μm;1μm~3μm;10μm~50μm;50μm~100μm;100μm~300μm;または100μm~200μmであってもよい。例えば、上記第1合材層の平均厚さは3±0.5μmであり、第2合材層の平均厚さは150±10μmであり得る。また、上記第1合材層の平均厚さは8±0.5μmであり、第2合材層の平均厚さは60±5μmであり得る。
【0086】
また、本発明に係るリチウム二次電池用の正極は、正極集電体として当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものを用いることができる。例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素などを用いることができ、アルミニウムやステンレススチールの場合はカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを用いることもできる。また、上記正極集電体は、表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が可能である。また、上記正極集電体の平均厚さは、製造される正極の導電性と総厚さを考えて3~500μmで好適に適用され得る。
【0087】
本発明に係るリチウム二次電池用の正極は、上述したように正極集電体上に第1合材層および第2合材層を順次に含み、且つ第1合材層と第2合材層に混和性および分子量が異なる異種のフッ素系バインダーを用いることで、外部から釘のような金属体が電極を貫通する場合に、貫通抵抗を増加させて電池の安全性を確保し得るのみならず、正極を構成する各層の界面接着力と合材層の電解液にに対する濡れ性を全て高めることができるので、電池の寿命特性に優れるという利点がある。
【0088】
<リチウム二次電池>
また、本発明は、一実施形態において、
上述された本発明の正極、負極および上記正極と上記負極との間に位置する分離膜を含むリチウム二次電池を提供する。
【0089】
本発明に係るリチウム二次電池は、上述された本発明の正極と負極との間に分離膜が位置する電極組立体を含み、上記正極と負極が電解液に濡れるように上記電極組立体がリチウム塩含有の電解液に含浸される構造を有し得る。
【0090】
ここで、上記負極は、負極集電体上に負極活物質を塗布、乾燥およびプレッシングすることにより製造され、必要に応じて上記のような導電材、有機バインダー高分子、充填剤などが選択的にさらに含まれ得る。
【0091】
また、上記負極活物質は、例えば、天然黒鉛のように層状結晶構造が完全になされているグラファイト、低結晶性層状結晶構造(graphene structure;炭素の六角形ハニカム模様の平面が層状に配列された構造)を有するソフトカーボンおよびこのような構造が非結晶性の部分と混合されているハードカーボン、人造黒鉛、膨張黒鉛、炭素繊維、難黒鉛化炭素、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、活性炭などの炭素および黒鉛材料や;LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe’yOz(MeはMn、Fe、Pb、Ge、Me’はAl、B、P、Si、周期表の第1族、第2族、第3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;錫系合金;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4、Bi2O5などの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li‐Co‐Ni系材料;チタン酸化物;リチウムチタン酸化物などを使用し得る。
【0092】
一例として、上記負極活物質は、黒鉛とケイ素(Si)含有粒子を共に含むことができ、上記黒鉛としては、層状結晶構造を有する天然黒鉛と等方型構造を有する人造黒鉛のうちのいずれか1つ以上を含むことができ、上記ケイ素(Si)含有粒子としては、金属成分としてケイ素(Si)を主成分とする粒子であって、ケイ素(Si)粒子、酸化ケイ素(SiO2)粒子、または上記ケイ素(Si)粒子と酸化ケイ素(SiO2)粒子とが混合されたものを含み得る。
【0093】
この場合、上記負極活物質は全体100重量部に対して、黒鉛80~95重量部;およびケイ素(Si)含有粒子1~20重量部で含み得る。本発明は、負極活物質に含まれた黒鉛とケイ素(Si)含有粒子の含有量を上記のような範囲に調節することで、電池の初期充放電時のリチウム消耗量と非可逆容量損失を減らしながら単位質量当たりの充電容量を向上させることができる。
【0094】
また、上記負極合材層は、100μm~200μmの平均厚さを有することができ、具体的には100μm~180μm、100μm~150μm、120μm~200μm、140μm~200μm又は140μm~160μmの平均厚さを有することができる。
【0095】
また、上記負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに、高い導電性を有するものであれば特に制限されない。例えば、銅、ステンレススチール、ニッケル、チタン、焼成炭素などを用いることができ、銅やステンレススチールの場合は、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。また、上記負極集電体は、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質との結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が可能である。また、上記負極集電体の平均厚さは、製造される負極の導電性と総厚さを考えて3~500μmで好適に適用され得る。
【0096】
また、上記分離膜は、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄膜が使用され得る。具体的に、上記分離膜は、当業界で通常に用いられるものであれば、特に限定されない。例えば、耐化学性および疎水性のポリプロピレン;ポリエチレン;ポリエチレン-ポリプロピレンコポリマー;ガラス繊維からなる群から選ばれる1種以上を用いて作られたシートや不織布などが使用されることができ、場合によっては、上記シートや不織布のような多孔性高分子基材に無機物粒子/有機物粒子が有機バインダー高分子によってコーティングされた複合分離膜が使用されることもあり得る。
【0097】
また、上記分離膜の気孔直径は、平均0.01~10μmであり、厚さは平均5~300μmであり得る。一例として、上記分離膜の気孔直径は平均0.01~1μmであり、平均厚さは10~30μmであり得る。
【0098】
また、上記分離膜の通気度は150~350sec/100mlであってもよく、具体的には160~300sec/100mlまたは200~280sec/100mlであってもよい。本発明は、分離膜の通気度を上記のような範囲に制御することで、電解質に対する濡れ性と電池の電気的性能を高く維持しながら、外部からの針状の導体が貫通される場合に、電池の発熱および/または発火などを防止し得る。
【0099】
一方、上記電極組立体は、ゼリーロール状に巻取されて円筒形電池、角形電池またはパウチ型電池に収容されるか、あるいは折り畳み又はスタック&折り畳み形態でパウチ型電池に収容されることもできるが、これに限定されない。
【0100】
また、本発明に係る上記リチウム塩含有電解液は、電解液とリチウム塩からなることができ、上記電解液としては、非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用され得る。
【0101】
上記非水系有機溶媒としては、例えば、N‐メチル‐2‐ピロリジノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ‐ブチロラクトン、1,2‐ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2‐メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3‐ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3‐ジメチル‐2‐イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、ピロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用され得る。
【0102】
上記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエージテーションリジン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使用され得る。
【0103】
上記無機固体電解質としては、例えば、Li3N、LiI、Li5Ni2、Li3N‐LiI‐LiOH、LiSiO4、LiSiO4‐LiI‐LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4‐LiI‐LiOH、Li3PO4‐Li2S‐SiS2などのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用され得る。
【0104】
上記リチウム塩は、非水系電解質に溶解され易い物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4-フェニルボロン酸リチウム、イミドなどが使用され得る。
【0105】
また、電解液には、充放電特性、難燃性などの改善を目的として、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n‐グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N‐置換オキサゾリジノン、N,N‐置換されたイミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどを添加されることもあり得る。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含ませることもでき、高温保存特性を向上させるために二酸化炭素ガスをさらに含ませることもでき、FEC(Fluoro‐Ethylene Carbonate)、PRS(Propene sultone)などをさらに含ませることができる。
【0106】
<電池モジュール>
さらに、本発明は、一実施形態において、上述された二次電池を単位電池として含む電池モジュールを提供し、上記電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0107】
上記電池パックは、高温安定性および長いサイクル特性と高いレート特性などが要求される中大型デバイスの電源として使用されることもでき、このような中大型デバイスの具体的な例としては、電池的モーターによって動力を受けて動く電動工具(power tool);電気自動車(electric vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(hybrid electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug‐in hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車;電動自転車(E‐bike)、電動スクーター(E‐scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどを挙げることができ、より具体的にはハイブリッド電気自動車(hybrid electric Vehicle、HEV)が挙げられるが、これに限定されない。
【0108】
以下、本発明を実施例および実験例に基づいてより詳細に説明する。
【0109】
ただし、下記実施例および実験例は、ただ本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例および実験例に限定されるものではない。
【0110】
<実施例1~5および比較例1~10、リチウム二次電池用の正極の製造>
第1活物質としてLiFePO4(平均粒度(D50):1μm、BET比表面積:15m2/g)、第1バインダーとしてPVDFホモポリマー、第1導電材としてカーボンブラックを準備し、N‐メチルピロリドン(NMP)溶媒中で混合して第1合材層用スラリーを製造した。
【0111】
それとは別途に、第2活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、第2バインダーとしてPVDF‐HFPコポリマー(PVDF:HFP=75~85mol%:15~25mol%)、第2導電材としてカーボンブラックを準備し、N‐メチルピロリドン(NMP)溶媒中で混合して第2合材層用スラリーを製造した。このとき、上記第2バインダーは、混和性官能基としてメチルアクリレート基を含有するPVDF‐HFPコポリマーを用いた。
【0112】
また、第1バインダーの重量平均分子量(Mw1st)、第2バインダーに対する第1バインダーの重量平均分子量の割合(Mw2nd/Mw1st)、および第2バインダーに含まれた混和性官能基の含有量は、下記表1に示すとおりである。また、各スラリーに含まれた活物質、バインダーおよび導電材は、下記表2に示したように秤量して混合された。
【0113】
上記で準備された第1合材層用スラリーおよび第2合材層用スラリーをアルミニウム箔に順次に塗布し、乾燥および圧延してアルミニウム箔上に第1合材層および第2合材層が形成されたリチウム二次電池用の正極を製造した。このとき、上記第1合材層および第2合材層の平均厚さはそれぞれ8μmおよび120μmであった。
【0114】
【0115】
【0116】
<実験例>
本発明に係るリチウム二次電池用の正極の性能を評価するために、下記のような実験を行った。
【0117】
イ)電解液濡れ性の評価
表面接触角は、Drop Shape Analysis System(DSA100)(KRUSS、Germany)を用いて測定した。具体的に、実施例および比較例で製造されたリチウム二次電池用の正極の表面にシリンジの針で脱イオン水を1滴、滴下した。その後、正極の表面に滴化された脱イオン水のドロップ写真をキャプチャし、キャプチャされた写真を分析して接触角を測定した。このような過程を20回を繰り返し行い、その平均値を得た。その結果を下記表3に示した。
【0118】
ロ)層間接着力の評価
実施例および比較例で製造された正極を、横および縦の長さがそれぞれ25mm、70mmとなるように切断し、プレスを用いて70℃、4MPaの条件でラミネーションして試片を作製した。準備された試片を両面テープを用いてガラス板に貼り付けて固定し、このときに集電体がガラス板に対面するように配置した。引張試験器を用いて試片の第2合材層部分を25℃で100mm/min速度で90°の角度で剥離する。このときの剥離力をリアルタイムで測定し、その平均値を第1合材層と第2合材層の界面接着力「B」として定義した。集電体と第1合材層との界面接着力「A」も同一の方法で測定し、その結果を下記表3に示した。
【0119】
ハ)釘の貫通試験
実施例および比較例で製造された各正極を用いて、リチウム二次電池を製造した。具体的には、負極活物質として、天然黒鉛、カーボンブラック導電材およびPVDFバインダーをN-メチルピロリドン溶媒中で85:10:5の重量比で混合して負極形成用スラリーを製造し、それを銅箔に塗布して負極を製造した。
【0120】
製造された負極を分離膜を間に置いて準備された正極上に積層して電極組立体を製造し、製造された電極組立体を電池ケースの内部に位置させた後、ケース内部に電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。このとき、分離膜としては多孔質ポリエチレン(PE)フィルム(厚さ:約16μm、気孔直径:0.9μm、通気度:200~280sec/100ml)を用いた。また、電解液は、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート(EC/DMC/EMCの混合体積比は3/4/3)からなる有機溶媒に1.0M濃度のリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)を溶解させて製造した。
【0121】
製造されたリチウム二次電池に対してPV8450認証条件と同じく直径3mmの金属体を80mm/secの速度で降下してセルを貫通させたときの発火の有無を評価し、その結果を下記表3に示した。
【0122】
ニ)サイクル寿命性能の評価
釘の貫通試験と同じ方法で、実施例と比較例で製造された正極をそれぞれ用いてリチウム二次電池を製造した。製造された各リチウム二次電池を対象に25℃で充電終止電圧4.25V、放電終止電圧2.5V、0.33C/0.33Cの条件で200回の充放電(n=200)を行いながら容量維持率(Capacity Retention[%])を測定した。このとき、上記容量維持率は下記式7を用いて算出し、その結果を下記表3に示した。
【0123】
[式7]
容量維持率(%)=(n回の充放電時の放電容量/1回の充放電時の放電容量)×100
【0124】
【0125】
上記表3に示すように、本発明によって製造された実施例の電極組立体は、電池の寿命はもちろん、安全性を向上させるという効果があることが分かる。
【0126】
具体的に、実施例で製造された正極は、接触角が85°未満、より具体的には80°未満、75°未満、または68~73°であることが示された。これは、第1バインダーに混和性官能基を含まないか、あるいは顕著に少ない含有量で含む比較例8および比較例9の正極よりも電解液に対する濡れ性に優れることを意味する。
【0127】
また、実施例の正極は各層間の界面接着性が改善されて、集電体と第1合材層との接着力(A)と、第1合材層と第2合材層との接着力(B)とがそれぞれ、380N/m以上および26N/m以上として高く示された。また、上記正極は釘の貫通時に短絡抵抗が増加して、発火が抑制されることが確認された。
【0128】
さらに、実施例によって製造された正極は、200回の充放電後にも全て95%以上の容量維持率を示すものとして確認された。これは、比較例の正極と比べて、電池の寿命がより向上されたことを意味する。
【0129】
このような結果から、本発明に係るリチウム二次電池用の正極は、正極集電体上に第1合材層および第2合材層を順次に含み、かつ第1合材層と第2合材層に混和性および分子量が異なる異種のフッ素系バインダーを用いることで、外部から釘のような金属体が電極を貫通する場合に、貫通抵抗を増加させて電池の安全性を確保し得るのみならず、正極を構成する各層の界面接着力と合材層の電解液に対する濡れ性を高めることができるので、電池の寿命特性に優れるという利点がある。
【0130】
以上では、本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、当該技術分野における熟練した当業者または当該技術分野における通常の知識を有する者なら、特許請求の範囲に記載された本発明の思想および技術領域を逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させることができることが理解できる。
【0131】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限定されず、特許請求の範囲によって定められるべきである。