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特許7498293NF-κB抑制剤のエキソソーム基盤伝達の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】NF-κB抑制剤のエキソソーム基盤伝達の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20240604BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240604BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240604BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20240604BHJP
【FI】
A61K38/17 ZNA
A61K35/12
A61K9/127
A61P13/12
A61K45/00
A61K47/42
C07K14/47
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022559527
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 IB2021052708
(87)【国際公開番号】W WO2021198961
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】10-2020-0039011
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】63/112,154
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/112,155
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520154612
【氏名又は名称】イリアス バイオロジクス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,チュルヒ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,キュンスン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ジェ-クァン
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-528674(JP,A)
【文献】Front. Immunol.,2019年,vol.10,Article 815, p.1-12
【文献】Inflammation,2016年,vol.39, no.2,p.569-574
【文献】Acta Cir. Bras.,2019年,vol.34, issue 2,e201900209, p.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/17
A61K 45/00
A61P 13/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚血-再灌流損傷(IRI)又は敗血症により誘導された急性腎障害(acute kidney injury;AKI)治療するための組成物であって、スーパーリプレッサー(super-repressor;SR)-IκB(srIκB)を含むエキソソーム(exosome)を含む組成
【請求項2】
組成物が全身経路により投与される、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
組成物が経口、経皮、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下または混合経路を通じて投与される、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物
【請求項4】
全身経路が腹腔内又は静脈内経路である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
炎症剤がさらに投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物
【請求項6】
キソソームが光特異的結合タンパク質(photo-specific binding protein)をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物
【請求項7】
srIκBが配列番号1有するアミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物
【請求項8】
srIκBを含むエキソソームが第1光特異的結合タンパク質及び/又は第2光特異的結合タンパク質をさらに含み、
第1光特異的結合タンパク質がエキソソーム特異的マーカーに接合されて融合タンパク質Iを形成し;
第2光特異的結合タンパク質がsrIκBに接合されて融合タンパク質IIを形成する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物
【請求項9】
虚血-再灌流損傷(IRI)又は敗血症(sepsis)により誘導された急性腎障害(AKI)の治療のための薬剤学的組成物の製造のための、スーパーリプレッサー-IκB(srIκB)を含むエキソソームの使用。
【請求項10】
組成物が全身経路により投与される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
組成物が経口、経皮、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下または混合経路を通じて投与される、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
全身経路が腹腔内又は静脈内経路である、請求項10に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は、NF-κBの抑制剤を含有するエキソソーム(exosome)を用いて急性腎障害(acute kidney injury)を治療する方法に関する。本開示内容は、NF-κB抑制剤を含有するエキソソームを用いて敗血症(sepsis)により誘発された疾患を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
AKIは短期的副作用に寄与するだけでなく、生存者は慢性腎臓病(CKD)及び末期腎臓疾患(ESRD)を病むことがある。病因の最も重要な構成要素の一つとして、NF-κBの体系的抑制はAKIの重症度に影響を及ぼす。葉酸により誘導された疾患モデルにおいて、NF-κBの抑制はRelA及びNF-κB2活性化を減少させてAKI損傷を軽減させる。
【0003】
800超の合成及び天然材料は、NF-κBの活性化の調節に部分的に関与することが公知となっている。いくつかの研究は、レニン-アンジオテンシン-アルドステロンシステム(RAAS)の遮断または腫瘍壊死因子-α(TNF-α)遮断剤などのNF-κB信号伝達の遮断が腎臓損傷を軽減させることを示した。しかし、これらの作用メカニズムは多面的で特異性が欠如する。ナノ技術の最近の進歩は、NF-κB信号伝達を標的化する特定の遺伝子配列またはナノ粒子を生産できるようにした。しかし、NF-κB抑制剤はまだヒトへの使用のためには商業的に承認されていない。
【0004】
統制されない炎症は、敗血症反応の顕著な特徴である。Toll様受容体(TLR)により媒介される宿主病源体相互作用は、炎症誘発性(pro-inflammatory)サイトカイン、ケモカイン及び免疫活性化分子の生成を刺激する。この炎症誘発性反応後に、免疫細胞の多様な定量的及び機能的欠陥を含む補償免疫抑制反応が伴う。病源体により誘導された細胞変形は、このような変化を調節する時に中枢的役割をする核因子カッパーB(NF-κB)転写因子を用いて、宿主遺伝子発現の顕著な変化を伴う。腫瘍壊死因子(TNF)-α及びインターロイキン(IL)-1を含みNF-κBの調節制御の下にいくつかのサイトカインは、この転写因子の追加活性化を誘導して炎症反応と敗血性ショックを強化できる。また、NF-κBは、主にBcl-xL、A1及びA20などの抗アポトーシス遺伝子の転写を増強させることを通じてアポトーシス反応に関与する。従って、NF-κB活性化と関連した炎症は、2つの相互作用メカニズム、即ち、炎症誘発性媒介因子の発現増加及び好中球などの細胞母集団の寿命延長により悪化することがあり、これは、活性化して炎症誘発性分子を生成し、急性炎症プロセスで直接関与する。
【0005】
敗血症により誘発される肺炎(pneumonia)、サイトカインストーム症候群(cytokine storm syndrome)、呼吸困難症候群(respiratory distress syndrome)及び臓器不全(organ failure)などの多様な疾患がある。敗血症は、急性微生物感染による先天性免疫系の活性化により誘発される全身炎症症候群であり、集中治療単位の死亡率の主要原因である。さらに、広範囲に相違する症状を有する敗血症により誘発された多様な疾患があり、そのうちの一部は致命的である。不幸にも、敗血症に対する一般的治療法(即ち、抗生剤)は、サイトカイン症候群または損傷された臓器などの敗血症により誘発された相違する疾患を治療するのに効果的でないことがある。現在、敗血症により誘発された疾患に対する臨床的使用が可能な治療法はない。従って、効果的な代替療法の開発が急務である。700以上の抑制剤がNF-κBに対して報告されているが、現在まで治療剤として承認された抑制剤はない。さらに、多様なステロイド性及び非ステロイド性抗炎症剤はNF-κBを遮断することが公知となっているが、これらの効果はNF-κBを抑制するのに特異的でない。
【0006】
成功的な遺伝子及び薬物伝達は、需要者に悪影響を及ぼさないながら、標的分子を作用部位に安定的に伝達するための適切なベクターの選択を必要とする。組換えアデノウイルス、リポソーム、リガンド接合されたナノ粒子及び超音波微細気泡を含む多様な類型のベクターは、これらの安定性及び高ローディング(loading)容量により薬物伝達に効率的であることが報告されている。しかし、特定のおそれ及び制限がこれらの使用と連関した。これらは網状内皮システムにより速やかに認識されて除去されたが、不均一な粒子サイズ及び非特異的吸収パターンは生物担体としての使用を制限した。アデノウイルスベクターの高い免疫原性は、投与後に免疫反応を誘発し得、ウイルス自体は高用量で毒性であり得る。リポソームの使用は、また、有害免疫原性及び非IgE媒介された過敏反応を誘導しうる。
【0007】
治療用タンパク質を伝達するための現在の従来戦略は、合成ナノ粒子内のタンパク質のエンベロッピング(enveloping)を含む。最も好ましいタンパク質伝達システムはリポソーム及び高分子ナノ粒子(PNP)である。リポソームは、水性環境中の多様な大きさ及び形状に自己組織化燐脂質膜を有する合成小胞である。PNPは、10~1000mmの大きさを有する固体コロイド粒子であり、カーゴ(cargo)タンパク質がナノ粒子マトリックス(nanoparticle matrix)に捕獲(entrapping)、カプセル化(encapsulating)または付着され得る生分解性高分子(biodegradable polymer)で構成されている。しかし、リポソームは互いに融合または凝集する傾向があり、その結果、経時的にリポソームカーゴの早期放出をもたらす。PNPはリポソームより安定性がより良好であり得るが、生体適合性及び長期間潜在的安全性は依然として問題である。また、タンパク質をリポソーム及びPNPでカプセル化することは、合成または組換えタンパク質の生成及び生体外カプセル化プロセスを必要とし、EXPLOR技術は、天然エキソソーム生合成を通じてカーゴローディングエキソソームを生成できる安定した細胞の生成及び維持を必要とする。また、エキソソームは生体適合性、固有の毒性の最小化または不在、循環中の長い半減期、組織を標的化する固有の能力などの理想的タンパク質伝達システムの多数の好ましい特徴を有している。
【0008】
最近、エキソソームは、遺伝子/薬物の伝達のための新規なバイオ担体として相当な注目を受けた。エキソソームは、生物活性物質を受容者細胞に伝達したり標的細胞の信号伝達経路に影響を及ぼすことにより、細胞間の通信で重要な役割をする細胞外小胞(EV)である。エキソソームは、他の生物活性剤より貯蔵しやすく、より大きい安定性を示す。エキソソームは、生物学的障壁を克服できる高い能力を有しており、特定細胞類型を標的化する表面分子を運搬することができ、従って、オフターゲット効果(off-target effect)をより少なく誘発する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第10702581号
【文献】韓国特許第10-2100420号
【非特許文献】
【0010】
【文献】N. Yim et al., Nature Communications 7, 12277 (2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示内容は、NF-κB抑制剤を含むエキソソームを含む組成物の有効量を対象体に投与することを含み、これを必要とする患者において急性腎障害(AKI)を治療する方法を提供する。
【0012】
本開示内容は、また、NF-κB抑制剤を含むエキソソームを含む組成物の有効量を対象体に投与することを含む、これを必要とする対象体において敗血症により誘発された疾患を治療する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】HEK293Tから生産された操作されたエキソソームの特性化。(A)スーパーリプレッサー(super-repressor)IκBローディングエキソソーム(エキソ-srIκB)(上部)の生産に用いられるDNA作製物の概略図、及び光可逆的タンパク質-タンパク質相互作用を用いるカーゴタンパク質保有エキソソーム生合成、いわゆる、EXPLOR技術(下部)。(B)エキソ-ナイーブ及びエキソ-srIκBの代表的TEMイメージ。スケールバー:100nm。(C)エキソ-ナイーブ(上部)及びエキソ-srIκB(下部)の濃度及び大きさ分布はゼータビュー(Zetaview)装置により決定された。(D)標的タンパク質(srIκB、mCherry、CD9及びGFP)、エキソソーム陽性マーカー(CD63、TSG101、Alix及びGAPDH)及びエキソソーム陰性マーカー(細胞小器官マーカー;プロヒビチン、カルネキシン、GM130及びヌクレオポリンp62)の発現を分析するためのHEK293T細胞及びHEK203T細胞由来のエキソソームのイムノブロッティング。ナイーブ細胞及びエキソ-ナイーブはエキソ-srIκBの陰性対照群として用いられた。
図2】腎臓IRI後のエキソ-srIκBの腎臓保護効果。(A)腎臓IRI手術及びエキソソーム伝達の実験図式。各マウスグループに3×10pnのエキソ-ナイーブまたはエキソ-srIκBを1時間間隔で3回(計9×10pn)腹腔内注射した。IRI手術後24時間または48時間後にマウスを犠牲にし、追加評価のために血清及び組織を収集した。(B-D)処理類型(エキソ-ナイーブ対エキソ-srIκB)、薬物伝達時期(前処理対後処理)及び追跡時点により相違するグループ間のBUN、クレアチニン及びNGALの血清水準(24時間及び48時間)、これは、エキソ-srIκB処理の腎臓保護効果を奏する(前処理24-h、n=10;前処理48-h、n=4-5;後処理24-h、n=5-10;後処理48-h、n=4-11)。(E)左側:各グループの腎臓切片で皮質管細胞(cortical tubular cell)の代表的PAS染色イメージ。通常の近位管刷子縁(brush border)()または刷子縁の損失(o);クロマチン凝縮(黒色矢印);露出された(denuded)基底膜(黒色矢印);液胞化(vacuolization)(黄色矢印);スケールバー、100μM。右側:病理学的管損傷;各グループからの多数の腎臓サンプルは、エキソ-ナイーブ処理によるものよりエキソ-srIκB処理による管損傷がより少ないことを示す(前処理24-h、n=5;後処理24-h、n=5)。グループ間の比較は、ボンフェローニ(Bonferroni)事後試験と共に一方向ANOVAを用いて評価した。データは平均±SD値で提示された。***P<0.001、エキソ-ナイーブ-虚偽及びエキソ-ナイーブ-IRI手術グループ比較時。#P<0.05及び###P<0.001、エキソ-ナイーブ-IRI及びエキソ-srIκB-IRI手術グループ比較時。
図3】エキソ-srIκB処理後にIRI誘導されたNF-κB活性化の抑制。(A)それぞれの実験マウスグループからの腎臓核抽出物を用いてNF-κB p65発現のウェスタンブロット分析。核抽出物を細胞質分画から生化学的に分離し、NF-κB p65及びラミンB1発現をウェスタンブロッティングを通じて分析した。IRI誘導されたNF-κB信号伝達の活性化は、手術前後エキソ-srIκB処理により有意に抑制された。(B)腎臓IRI後のNF-κB p65の増加したDNA結合活性は、手術前後エキソ-srIκB処理により抑制された。(C)左側:各処理グループからのNF-κB p65抗体を用いた代表的IHCイメージ。スケールバー、50μM。右側:各実験グループにおいてNF-κB p65の免疫組織化学検出を示すグラフ表示。エキソ-srIκBによる処理は、対照群グループと比較し、NF-κB発現を減少させた(前処理24-h、n=5-8;前処理48時間、n=4-5;後処理24-h、n=5-10;後処理48-h、n=4-11)。グループ間の比較は、ボンフェローニ(Bonferroni)事後試験と共に一方向ANOVAを用いて評価した。データは平均±SD値で表された。**P<0.01、***P<0.001、エキソ-ナイーブ-虚偽及びエキソ-ナイーブ-IRI手術グループ比較時。#P<0.05、##P<0.01、###P<0.001、エキソ-ナイーブ-IRI手術グループ及びエキソ-srIκB-IRI手術グループ比較時。
図4A-B】炎症誘発性サイトカイン/ケモカイン及び接着分子の発現は、局所的かつ全身的にエキソ-srIκB処理により悪影響を受ける。(A)各実験グループから全体腎臓溶解物をqRT-PCRに用いて、IL-1β、IL-6、Tnf-α、Ccl2、Ccl5及びCxc12を含み炎症誘発性サイトカインの発現水準を測定した。このような遺伝子のmRNA水準は腎臓中のIR損傷後に有意に増加し、この効果はエキソ-srIκB処理により軽減された(前処理24-h、n=5-8;前処理48-h、n=4-5;後処理24-h、n=5-10;後処理48-h、n=4-11)。(B)各実験グループの血清を用いた多重サイトカイン研究は、また、エキソ-srIκB処理による虚血後のマウスグループにおいて炎症誘発性サイトカイン水準の類似した減少傾向を示した。
図4C-E】炎症誘発性サイトカイン/ケモカイン及び接着分子の発現は、局所的かつ全身的にエキソ-srIκB処理により悪影響を受ける。(C)qRT-PCRデータは、虚血後のエキソ-ナイーブ処理グループにおいてIcam-1 mRNAの増加した水準及びエキソ-srIκB処理によるIcam-1 mRNAの有意な減少を示す。(D)各グループからの全体腎臓溶解物のウェスタンブロット分析結果はエキソ-srIκB処理によりIR損傷腎臓においてICAM-1の減少した発現を立証した。(E)ICAM-1 IHC染色(左側)及びICAM-1 IHCのグラフ表示(右側)を示す代表的腎臓切片は、エキソ-srIκB処理がC57BL/6Jマウスの虚血後の腎臓でICAM-1発現を減少させたことを示す。スケールバー、50μM(B-E:前処理24-h、n=5;前処理48-h、n=4-5;後処理24-h、n=5;後処理48-h、n=3-6)。グループ間の比較は、ボンフェローニ(Bonferroni)事後試験とともに一方向ANOVAを用いて評価した。データは平均±SD値で表された。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、エキソ-ナイーブ-虚偽及びエキソ-ナイーブIRI手術グループ比較時。#P<0.05、##P<0.01、###P<0.001、エキソナイーブ-IRI及びエキソ-srIκB-IRI手術グループ比較時。
図5】エキソ-srIκB処理はIR誘導された腎臓アポトーシスを改善する。(A)左側:各実験グループからの腎臓から切断されたカスパーゼ-3と切断されたPARPタンパク質の発現を比較したウェスタンブロット分析結果。右側:グラフ表示は、エキソ-srIκB処理が、エキソ-ナイーブ処理と比較し、切断されたカスパーゼ3の水準及び切断されたPARPを低下させたことを示す。(B)左側:TUNEL染色の代表的イメージ(FITC標識)が提示されている。アポトーシス細胞は緑色(白色矢印)であり、DAPIは対比染色として用いた。スケールバー、50μM。右側:各グループからの腎臓切片においてTUNEL陽性細胞を示す棒グラフ。エキソ-srIκB処理は、より少ない数のアポトーシス細胞を誘導した(前処理24-h、n=5、前処理48-h、n=4-5、後処理24-h、n=5、後処理48-h、n-3-6)。グループ間の比較は、ボンフェローニ(Bonferroni)事後試験と共に一方向ANOVAを用いて評価した。データは平均±SD値で表した。***P<0.001、エキソ-ナイーブ-虚偽及びエキソ-ナイーブ-IRI手術グループ比較時。#P<0.05、##P<0.01及び###P<0.001、エキソ-ナイーブ-IRI及びエキソ-srIκB IRI手術グループ比較時。
図6A】腎臓虚血-再灌流損傷後のエキソソームの生体分布。(a)生体内イメージング及びエキソソーム伝達の実験図式。
図6B-C】腎臓虚血-再灌流損傷後のエキソソームの生体分布。(b)段階的生体内イメージングは、DiD標識されたエキソソーム(緑色)の静脈エキソ-srIκBで処理された虚血後の腎臓において好中球(Ly6G、赤色)及びマクロファージ(F4/80、青色)への吸収を示す。白色矢印は免疫細胞に含まれたDiD標識されたエキソソームを示す。白色波線は腎臓間質を示す。(c)腎臓IRI手術後の脾臓においてDiD標識されたエキソソーム(緑色)の生体分布は外部実質(parenchyma)において好中球(Ly6G、赤色)及びマクロファージ(F4/80 青色)へのエキソソーム吸収を示す。経過時間が表示される。スケールバー、20μm。
図7A-C】エキソ-srIκB処理はIR誘導されたAKI後の腎臓免疫細胞母集団を調節する。(A)手術後24時間でマウスを犠牲にした。KMNCは、酵素消化、機械的破壊及びパーコール(Percoll)密度勾配を用いて濃厚化させた。このような方法を用いて決定された総腎臓細胞数は、実験グループ間で統計的差を示さなかった。(B)フローサイトメトリーのグラフ表示は、酵素消化、機械的破壊及びパーコール密度勾配を用いて、単離された腎臓細胞の中でIRI後に、より高比率の腎臓CD45細胞を示した。エキソ-srIκB処理は腎臓免疫細胞の虚血後の急増(surge)を軽減させた。(C)追加の免疫細胞マーカーを用いて追加で染色した結果は、濃厚化したKMNC中の好中球(CD45Ly6G)、炎症誘発性/抗炎症性単核食細胞(CD45Ly6C/CD45F4/80)T細胞(CD45CD3)を含む多系統免疫細胞の頻度が、また、虚血後の腎臓でエキソ-srIκB処理により減少したことを示した。
図7D-F】エキソ-srIκB処理はIR誘導されたAKI後の腎臓免疫細胞母集団を調節する。(D-F)Ly6G、Ly6C及びF4/80を標的化する各実験グループの虚血後の腎臓について免疫蛍光研究を行った。Alexa Fluor 647と接合された2次抗体を全ての免疫蛍光実験に用いた。データは、エキソ-srIκB処理後の虚血後の腎臓でAlexa Fluor 647染色細胞(白色矢印)の減少した頻度を示し、これは、エキソ-srIκB処理された腎臓に、より少ない好中球(Ly6G)及びエキソ-srIκBプロ/抗炎症性単核食細胞(Ly6C/F4/80)があったことを示唆する。近位管細胞をLTL(緑色)で染色し、DAPIを対比染色として用いた。スケールバー、50μM、(実験グループ当たりn=5)。グループ間の比較は、ボンフェローニ事後試験と共に一方向ANOVAを用いて評価した。データは平均±SD値で表示した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、エキソ-ナイーブ-虚偽及びエキソ-ナイーブ-IRI手術グループ比較時。#P<0.05、##P<0.01、エキソ-ナイーブ-IRI及びエキソ-srIκB-IRI手術グループ比較時。
図8A-F】エキソ-srIκBの静脈内伝達は虚血性AKIモデルにおいて腹腔内伝達と比較して類似した生物学的効果を奏する。(a)腎臓IRI手術及びエキソソーム伝達の実験図式。各マウスグループに、再灌流1時間後9×10pnのエキソ-ナイーブ、エキソ-srIκBまたはPBSを静脈内注射した。IRI手術後24時間または48時間にマウスを致死させ、追加評価のために血清及び組織を収集した。(b-d)治療類型(PBS対エキソ-ナイーブ対エキソ-srIκB)及び追跡観察時点(24-h及び48-h)により相違するグループ間のBUN、クレアチニン及びNGALの血清水準、これは、エキソ-srIκB処理の腎臓保護効果(実験グループ当たりn=5)を示す。(e)各実験マウスグループからの腎臓核抽出物を用いてNF-κB p65発現のウェスタンブロット分析。核抽出物を細胞質分画から生化学的に分離し、NF-κB p65及びラミンB1発現はウェスタンブロッティングを通じて分析した。NF-κB信号伝達のIRI誘導された活性化は、手術後のエキソ-srIκB処理により有意に抑制された。(f)腎臓IRI後のNF-κB p65の上昇したDNA結合活性は手術後のエキソ-srIκB処理により抑制された。
図8G-H】エキソ-srIκBの静脈内伝達は虚血性AKIモデルにおいて腹腔内伝達と比較して類似した生物学的効果を奏する。(g)qRT-PCRデータは、虚血後のエキソ-ナイーブ処理グループでIcam-1 mRNAの増加した水準及びエキソ-srIκB処理によりIcam-1 mRNAの顕著な減少を示す。(h)各グループからの総腎臓溶解物のウェスタンブロット分析結果は、エキソ-srIκB処理によりIR損傷した腎臓でICAM-1の減少した発現を立証した。グループ間の比較は、ボンフェローニ事後試験で一方向ANOVAを用いて評価した。データは平均±SD値で表した。ns;有意でない、**P<0.01、***P<0.001.PBS-虚偽及びエキソ-ナイーブ-IRI手術グループ比較時。#P<0.05、##P<0.01、###P<0.001、エキソ-ナイーブIRI及びエキソ-srIκB-IRI手術グループ比較時。
図9】(1)操作されたエキソソーム生成及び特性化。(A)スーパーリプレッサーIκB-ローディングされたエキソソーム(エキソ-srIκB)(上部)の生産に用いられるDNA作製物の概略図。融合タンパク質及び提案された活動を示す概略図(下部)。(B)透過電子顕微鏡(TEM)を通じたエキソ-ナイーブ及びエキソ-srIκBの形態学的特性化。(C)mCherryまたはsrIκBを安定的に発現するHEK293T細胞及びこれらHEK293T細胞からのエキソソームを溶解させ、指示されたタンパク質に対して免疫ブロッティングした。
図10】(2)エンドトキシン血症及び盲腸結紮及び穿孔(CLP)誘導された敗血症においてエキソ-srIκBの保護効果。(A)リン酸塩緩衝食塩水(PBS)処理された、エキソ-ナイーブ及びエキソ-srIκB処理された敗血症マウスの生存曲線。リポポリサッカライド(LPS) C57BL/6マウス(n=5-6/グループ)、LPS BALB/cマウス(n=10/グループ)及びCLP C57BL/6マウス(n=14-15/グループ)。**p<0.01、*p<0.05 PBS処理された敗血症グループと比較。(B)エキソソーム処理されたマウスの血漿で腫瘍壊死因子(TNF)-α、インターロイキン(IL)-6、IL-1β及びCCL4/マクロファージ炎症タンパク質(MIP)-1βの水準をLPS注射またはCLP後24時間で測定した。**p<0.01、*p<0.05 PBS処理された敗血症グループと比較。†p<0.05エキソ-ナイーブ処理された敗血症グループと比較。(C)虚偽(sham)、PBSを有するCLP、エキソ-ナイーブを有するCLP、エキソ-srIκBを有するCLPからの腎臓切片の皮質管細胞の代表的イメージ、近位管の正常な刷子縁(*)または刷子縁損失(○);クロマチン凝縮(白色矢印);露出された基底膜(白色矢尻);液胞化(黄色矢印);スケールバー、100μM。(D)各グループの代表的腎臓サンプルの病理学的腎臓損傷点数(score)。*p<0.05 PBS処理された敗血症グループと比較。†p<0.05エキソ-ナイーブ処理された敗血症グループと比較。
図11】(3)LPS注射マウスにおいてエキソソーム生体分布。(A)偽マウスの肝臓で好中球(LysMgfp/+、緑色;Ly6G、青色)内にmCLING標識されたエキソソーム(赤色)吸収の生体内イメージング。(B)LPS処理されたC57BL/6マウスにおいて肝臓のLy6G好中球細胞(緑色)内部のmCLING標識されたエキソソーム(赤色)の代表的低速撮影(time-lapse)イメージング。(C)虚偽及びLPS処理されたLysMGFP/+マウスの脾臓内部でmCLING標識されたエキソソーム(赤色)の流れの段階的イメージ。経過時間が表示される。紫紅色、自己蛍光;スケールバー、50μm。
図12】(4)試験管内で核因子カッパーB(NF-κB)信号伝達に及ぼすエキソ-srIκBの抑制効果。(A)HEK293-NF-κB-ルシフェラーゼ細胞(2×10細胞)を、エキソ-ナイーブまたはエキソ-srIκB 2×10粒子と共に培養した。24時間後、細胞を追加18時間0.5ng/ml TNF-αで処理した。ルシフェラーゼ活性を測定し、正規化した。(B)エキソ-srIκBはNF-κB-ルシフェラーゼ細胞から容量依存的にNF-κB活性化を抑制した。(C)THP-1細胞(5×10細胞)を1μg/ml LPSで刺激させ、エキソ-srIκB 5×10粒子で処理した。上清を収集し、TNF-α及び単球走化性タンパク質(monocyte chemoattractant protein;MCP)-1の生成に対して検定した。JSH-23(50μM)を陽性対照群として用いた。**p<0.01 (D)mCLING標識されたエキソ-srIκBと共に培養されたヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の免疫蛍光。代表的イメージが提示されている。核はHoechstで標識した。(E)HUVECを300ng/ml LPSで24時間刺激した。細胞を単一細胞懸濁液で収穫し、ヒト細胞間細胞付着分子(ICAM)-1に対する特定フィコエリトリン(PE)接合された抗体を用いてフローサイトメトリーを通じて評価した。
図13】(S1)エキソソーム特性化。(A)操作されたエキソソームを生成するために用いられる手順の概略図。(B)エキソ-ナイーブ、エキソ-mCherry及びエキソ-srIκBの希釈されたサンプルで類似の大きさ分布を立証するナノ粒子追跡分析(NTA)の代表的グラフ。
図14】(S2)敗血症のマウスモデルにおいてエキソ-srIκBの抑制効果。(A)体温変化は、野生型及びLPS処理されたC57BL/6マウスに指示されたエキソソームを注射した後にモニタリングした。**p<0.01 PBS処理されたLPSグルーブと比較。(B)LPS及びPBS(左側)、エキソ-ナイーブ(中間)及びエキソ-srIκB(右側)で処理したC57BL/6(上部パネル)及びBALB/c(下部パネル)マウスの切片で腎臓皮質領域の代表的イメージ。近位管の正常刷子縁(*)または刷子縁損失(○);クロマチン凝縮(赤色矢印);露出された基底膜(赤色矢印);液胞化(青色矢印);スケールバー、100μM。(C)LPS誘導された敗血症マウスのエキソ-ナイーブとエキソ-srIκB処理されたグループ間の各臓器で浸潤されたLy6G細胞の数の比教。(D)IL-10の水準はPBS-、エキソ-ナイーブ-及びエキソ-srIκB処理された敗血症マウスの血漿で測定した。NS、有意でない。
図15】(S3)LPSチャレンジの存在または不在下のマウスにおけるエキソソームの生体分布。(A)LPSの静脈内投与後に生体内イメージングシステムを用いて腎臓から検出されたmCLING標識されたエキソソームの分析。
図16】(S4)HUVECでLPS誘導された炎症反応に対するエキソ-srIκBの抑制効果。(A)HUVEC(7×10細胞)を24時間エキソ-srIκB 1×10 粒子と共に培養し、続いて、36ng/ml LPSで刺激した。24時間後に上清を収集し、それぞれIL-8(左側)及びMCP-1(右側)の生産を分析した。JSH-23(50μM)を陽性対照群として用いた。***p<0.001ジメチルスルホキシド(DMSO)と比較。#p<0.05 LPS単独で処理された細胞と比較。(B)HUVECを24時間エキソ-srIκBで前処理し、続いて、36ng/mlのLPS刺激を1時間行った。ウェスタンブロッティングを用いてp65及びIκBαのタンパク質水準を評価した。GAPDH及びヒストンH3(HH3)をそれぞれ細胞質細胞溶解物及び核分画に対する内因性対照群として用いた(左側)。この標的DNA配列、5’-GGGACTTTCC-3’に対する核NF-κBの結合は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)を通じて測定した(右側)。
図17】LPS誘導された敗血症で肺損傷に対するエキソ-srIκBの保護効果。 (1)肺胞;(2)毛細管;(3)好中球;(4)肺胞マクロファージ;(5)鬱血;(6)出血;(7)壊死を示すH&E染色を示す。
図18】LPS誘導された敗血症で肺損傷に対するエキソ-srIκBの保護効果。 虚偽、ナイーブエキソソーム、エキソ-srIκB処理された敗血症マウスの生存曲線を示す。
図19】LPS誘導された敗血症で肺損傷に対するエキソ-srIκBの保護効果。 エキソ-srIκB処理された敗血症マウスの血漿中のTNF-αの水準を示す。
図20】LPS誘導された敗血症で肺損傷に対するエキソ-srIκBの保護効果。 (1)中央静脈及び(2)免疫細胞の浸潤を示すH&E染色を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示内容は、EXPLOR技術[参照:Yim et al., Nature Communications 7, 12277 (2016)]を提供し、これは、虚血性AKI過程に及ぼすこれらの影響を評価するために、srIκBをエキソソームにローディングし、エキソ-srIκBを全身的に伝達するために用いられた。2つの組換えタンパク質、CIBN-EGFP-CD9及びsrIκB-mCherry-CRY2を生産したヒト胚腎臓(HEK)293T細胞株を、青色光照明を用いてCRY2及びCIBNの一時的ドッキングを誘導することによりsrIκB含有エキソソーム(エキソ-srIκB)を生産するために用いた(図1A)。対照群エキソソーム(エキソ-ナイーブ)は、無損傷のHEK293T細胞で生成した。結果は、光遺伝学的に操作されたエキソソームが治療剤として活用され得、エキソ-srIκBが免疫反応調節及びアポトーシスを通じてIR誘導された腎臓損傷を軽減させることを確認した。
【0015】
本開示内容(特に、特許請求の範囲の文脈で)を説明する脈絡で用いられる用語の単数表現(「a」、「an」、「the」)及び類似の指示語は、本願で異なって明示されたり文脈により矛盾しない限り、単数及び複数をいずれも含むことと解釈されるべきである。本願において値の範囲を認容することは、単に範囲内にあるそれぞれの個別値を個別に言及する短縮方法として機能することが単に意図される。本願において特に指示されない限り、それぞれの個別値は、それぞれが本願において個別に言及されたことと同様に本明細書に導入される。本願に記載された全ての方法は、本願において特に指示されたり文脈上、明確に矛盾しない限り、任意の適した順序で行われ得る。本願に提供された任意の及び全ての例または例示的言語(例:「例えば」)の使用は、単に本開示内容をより十分に説明するためのものであり、特に請求された開示内容の範囲を制限しない。本明細書の如何なる言語も、本開示内容の実施に必須の任意の非請求要素を示すことと解釈されてはならない。
【0016】
本願に用いられたように、用語「約」は、例えば、ヌクレオチド配列の長さ、誤差程度、寸法、組成物中の成分量、濃度、容積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流速、圧力及びこれと類似の値及びこの範囲の変形を意味し、例えば、化合物、組成物、濃縮物または使用剤形を製造するために用いられる典型的測定及び取扱手続を通じて;この手続で不注意な誤りを通じて;これら方法を行うために用いられる出発物質または成分の製造、供給元または純度の差を通じて;及び考慮事項などを通じて発生し得る数量の変動を指す。用語「約」は、また、例えば、特定の初期濃度または混合物を有する組成物、剤形または細胞培養物の老化により相違する量、及び特定初期濃度または混合物を有する組成物または剤形の混合または処理により相違する量を含む。用語「約」により修正されても、添付の特許請求の範囲はこのような量に対する等価物を含む。用語「約」は、言及された基準値と類似した値の範囲を追加で指すことができる。特定の実施形態において、用語「約」は言及された基準値の50、25、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%以下に属する値の範囲を指す。
【0017】
本願で使用される「対象体」という用語は、ヒトまたは非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ラビット、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、または霊長類)を指す。
【0018】
AKI
NF-κB信号伝達による免疫反応はAKIに関与することができ、エキソ-srIκBは敗血症による腎臓損傷で腎臓損傷を改善する効果を発揮できる。本願の一部の実施例では、抑制剤の投与が虚血性AKI過程を軽減させるかどうかを評価した。本願の実施例ではEXPLOR技術を用いてIRI手術前後にsrIκBをマウスに伝達し、その結果を対照群と比較した。その結果、エキソ-srIκB処理されたマウスは、対照群グループと比較し、より低水準の血清BUN及びクレアチニン数値を示し、これによりIR誘導されたAKIから予防及び治療効果を発揮することを確認した。一方、エキソ-srIκBの投与が腎臓のNF-κB信号に局所的に影響を及ぼすかどうかを確認した結果、エキソ-srIκBは、対照群グループと比較し、NF-κBの核転座及び核結合活性を著しく減少させることが明らかになった。NF-κB経路は、免疫反応プロセスで重要な役割をすることができる。エキソ-srIκB治療グループと対照群グループ、IL-1β、IL-6でPan炎症性サイトカイン/ケモカインの遺伝子発現を比較した結果、CCL2、CCL5、CXCL2及びTNF-αを含む多数の炎症媒介因子の顕著な減少が確認された。最後に、本願の実施例では、NF-κB抑制剤の処理が腎臓免疫細胞母集団に影響を及ぼすかどうかを比較するためにフローサイトメトリーを行い、好中球、単核球/マクロファージ及びT細胞を含む多重免疫細胞母集団の頻度が顕著に減少することが観察された。
【0019】
IRIは炎症性カスケード及び酸化ストレスを誘導し、サイトカインストームを誘発し、アポトーシス及び隣接組織に対する構造的損傷を誘導する。NF-κB信号伝達経路はIRI刺激、特に、低酸素症/再灌流の初期段階中に損傷された細胞からの高水準の迅速な反応により細胞生存及び炎症を調節できる。例えば、移動性グループbox 1(HMGB1)、熱衝撃タンパク質(HSP)及び病源体/損傷に連関した分子パターン(PAMP/DAMP)などの多数の内因性因子が放出される。これら内因性分子は、IL-1RなどのToll様受容体(TLR)及びパターン認識受容体(PRP)を刺激することができる。TLR及びIL-1Rは同一の細胞内ドメインを共有し、抑制タンパク質IκB残基をリン酸化し、IκBキナーゼ(IKK)を活性化し、これは最終的にプロテアソームによるIκBの分解を誘導する。このプロセスは、ヘテロ二量体(例:p50/p65)が細胞質から核に移動することを可能にし、これはDNAに結合し、TNF-α、IL-1、IL-6及びIL-8を含む炎症性媒介因子の転写を促進し、NF-κB信号伝達を加速化する。この炎症誘発性カスケードは、アポトーシスを誘導し、IRIに露出された腎管細胞で白血球の移動/活性化を促進することにより周辺の微細環境を調節できる。本開示内容の虚血性AKIモデルは、また、NF-κB信号伝達の活性化を誘導でき、これは偽手術グループと比較して腎臓免疫細胞母集団に有意に影響を及ぼす多数の炎症性サイトカイン/ケモカイン遺伝子の発現を誘導する。最近の研究には、TLR拮抗剤、サイトカイン拮抗剤、IKK複合体拮抗剤、プロテアソーム抑制剤、特定NF-κB複合体に特異的なデコイオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、及び多様な器官でRelタンパク質翻訳を抑制するODNが含まれる。これは、多様な薬理学的抑制剤を用いてNF-κB信号伝達を抑制することによりIRIでNF-κBを遮断する効果を奏する。セリン残基32及び36に突然変異を有するIκBαタンパク質はリン酸化されず、従って、細胞質においてNF-κBとの多量体として存在し、分解されないため、NF-κB核転座(translocation)を保留(holding)する。この非分解性IκBα、いわゆるスーパーリプレッサーIκBα(srIκB)はアポトーシスを誘導し、抗腫瘍効果を奏することが公知となっている。
【0020】
本開示内容において、エキソ-srIκBの治療効果は急性腎炎を現す腎臓IRIモデルで提示される。エキソ-srIκBは、白血球の移動/活性化を制限できる炎症誘発性媒介因子の生産を下向調節し、炎症細胞の早期アポトーシスを誘導して炎症段階の早期終結を誘導することによりAKIのプロセスを調節する。本開示内容において、エキソ-srIκBの投与は腎臓内免疫細胞母集団の頻度にのみ影響を及ぼし、脾臓内免疫細胞母集団の頻度には影響を及ぼさないことを確認した。このような結果は、エキソ-srIκBが細胞増殖を選択的に抑制したり、腎臓常駐免疫細胞でアポトーシスを促進することを示す。一方、エキソ-srIκBの生体内伝達は、損傷した腎臓への脾臓免疫細胞の流出を遮断することと解釈され得る。本開示内容において、エキソ-srIκBは、NF-κB信号の活性を抑制することにより、マウスにおいてIR誘導されたAKIを軽減させることが明らかになった。また、エキソ-srIκBの生体耐伝達は、炎症誘発性遺伝子の発現を減少させ、好中球、単核球/マクロファージ及びT細胞を含む腎臓免疫細胞母集団を減少させることにより腎臓の全体炎症状態を改善できる。従って、一つの側面で、本開示内容は、srIκBが搭載されたエキソソームに関し、より詳細には配列番号1のアミノ酸配列で表されるsrIκBが搭載されたエキソソームに関する。以下、srIκBはカーゴタンパク質と表されてもよい。
【0021】
一部の実施形態において、本願に記載されたAKIは虚血再灌流(IR)誘導されたAKI、リポポリサッカライド(LPS)誘導されたAKIまたは敗血症誘導されたAKIであるが、これらに限定されない。虚血再灌流(IR)誘導された急性腎障害(AKI)は、対象体が全身性低灌流を病んでおり、続いて、血流及び再酸素化の回復を伴う場合に発生し得る比較的一般的であるが、重症の医学的状態である。最も一般の臨床例は、腎臓移植または心臓手術を受けた患者、及び敗血症、外傷または心筋梗塞を有する患者を含む。腎臓IR損傷(IRI)は、高罹患率/死亡率と関連があり、心臓、肺及び肝臓を含む他の遠位器官で機能障害を誘発することが公知となっている。IR誘導されたAKIにおいて、低酸素症及び再灌流は活性酸素種(ROS)を生成し、続いて、アポトーシス及び炎症を含むカスケード反応、及び後続的に腎不全を発生させる。免疫学的反応は、腎臓IRI及び修復に相当な影響を及ぼし得る。サイトカイン生産及び細胞生存を調節する核因子(NF)-κB信号伝達は、IR誘導されたAKIに有意に関与し、この抑制は虚血性AKIを緩和させることができる。
【0022】
EXPLOR、外科的に操作されたエキソソーム技術を用いて、NF-κB(エキソ-srIκB)のエキソソームスーパーリプレッサー抑制剤をエキソソームにローディングし、本願の実施例に提示された通り、腎臓IR手術後に/前にB6 WTマウスに投与した。結果は、対照群エキソソーム(エキソ-ナイーブ)注射グループの結果と比較した。エキソ-srIκB処理は、エキソ-ナイーブ処理グループより虚血後のマウスにおいて、より低水準の血清血中ウレア窒素、クレアチニン及び好中球ゼラチナーゼ連関のリポカリンをもたらした。エキソ-srIκBの全身伝達は、虚血後の腎臓でNF-κB活性を減少させてアポトーシスの水準を低下させた。虚血後の腎臓は、対照群と比較し、エキソ-srIκB処理により炎症誘発性サイトカイン及び付着分子の遺伝子発現の減少を示した。エキソ-srIκB処理は、また、虚血後の腎臓免疫細胞母集団に有意に影響を及ぼし、対照群と比較して好中球、単核球/マクロファージ及びT細胞の頻度を低下させた。従って、エキソソーム伝達を通じたNF-κB信号伝達の調節はIR誘導されたAKIを含むAKIに対する新規な治療方法として用いられる。
【0023】
本発明のもう一つの実施形態において、エキソソームは、スーパー-リプレッサー(SR)IκB(srIκB、配列番号1)と呼ばれるNF-κBの生物学的抑制剤の突然変異形態を含有するように操作される[参照:N. Yim et al., Nature Communications 7, 12277 (2016)]。
【0024】
下記実施例に提示された通り、安定して形質感染された細胞においてエキソソームに多量のsrIκBのローディングのために、光遺伝学的に操作されたエキソソームシステム(EXPLOR)を用いた。下記実施例は、精製されたsrIκBローディングされたエキソソーム(エキソ-srIκBs)の腹腔内注射が敗血性マウスモデルにおいて死亡率と全身炎症を弱化させることを確認する。蛍光染料で標識されたエキソソームを用いた生体分布研究において、エキソ-srIκBはマウスの脾臓及び肝臓で、主に好中球で、及びより少ない程度の単核球で観察された。さらに、実施例はエキソ-srIκBが、脂質多糖類(LPS)または腫瘍壊死因子(TNF)-αに反応し、単核球THP-1細胞及びヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)で炎症反応を軽減させることを確認する。このような結果は、エキソ-srIκBがNF-κB活性化を抑制することにより全身性炎症及び敗血症誘導された死亡から保護できることを確認する。
【0025】
本開示内容は、これを必要とする対象体において急性腎障害(AKI)を治療する方法であり、対象体にNF-κB抑制剤を含むエキソソームを含む組成物の有効量を投与することを含む、方法を提供する。一部の実施形態において、NF-κBの抑制剤はNF-κB抑制タンパク質、この断片及びこの混合物からなるグループから選択される。
【0026】
前記組成物は、エキソソーム生理学的に許容される水系溶液または懸濁液である。
【0027】
NF-κB抑制剤は、NF-κB抑制薬物、NF-κB抑制タンパク質またはこの断片、またはこれらの混合物から選択される。
【0028】
好ましくは、NF-κB抑制剤は、スーパーリプレッサーIκB、IκB-α、IκB-β、IκB-ε、BCL-3、これらの突然変異体(mutant)、及びこれらの混合物からなるグループから選択される。
【0029】
本開示内容の更に他の好ましい実施形態において、本開示内容のエキソソームは、スーパーリプレッサー(SR)IκB(srIκB、配列番号1)と呼ばれるNF-κBの突然変異形態の生物学的抑制剤を含有する。
【0030】
本開示内容の一つの実施形態において、srIκBは、Alaで置換されたIκB(配列番号2)のSer32及びSer36を有する。
【0031】
配列番号1 ホモサピエンス、スーパー-リプレッサー-IκB(srIκB)
MFQAAERPQEWAMEGPRDGLKKERLLDDRHDAGLDAMKDEEYEQMVKELQEIRLEPQEVPRGSEPWKQQLTEDGDSFLHLAIIHEEKALTMEVIRQVKGDLAFLNFQNNLQQTPLHLAVITNQPEIAEALLGAGCDPELRDFRGNTPLHLACEQGCLASVGVLTQSCTTPHLHSILKATNYNGHTCLHLASIHGYLGIVELLVSLGADVNAQEPCNGRTALHLAVDLQNPDLVSLLLKCGADVNRVTYQGYSPYQLTWGRPSTRIQQQLGQLTLENLQMLPESEDEESYDTESEFTEFTEDELPYDDCVFGGQRLTL
【0032】
配列番号2 ホモサピエンス、IκB-α
MFQAAERPQEWAMEGPRDGLKKERLLDDRHDSGLDSMKDEEYEQMVKELQEIRLEPQEVPRGSEPWKQQLTEDGDSFLHLAIIHEEKALTMEVIRQVKGDLAFLNFQNNLQQTPLHLAVITNQPEIAEALLGAGCDPELRDFRGNTPLHLACEQGCLASVGVLTQSCTTPHLHSILKATNYNGHTCLHLASIHGYLGIVELLVSLGADVNAQEPCNGRTALHLAVDLQNPDLVSLLLKCGADVNRVTYQGYSPYQLTWGRPSTRIQQQLGQLTLENLQMLPESEDEESYDTESEFTEFTEDELPYDDCVFGGQRLTL
【0033】
配列番号3 組換えsrIκBαペプチド
DRHDAGLDAMKDE
【0034】
一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は、配列番号1または配列番号2と少なくとも85%の配列同一性(sequence identity)を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも86%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも87%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも88%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも89%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも91%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも92%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも93%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも94%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも96%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1で表される。
【0035】
一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも86%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも87%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも88%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも89%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも91%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも92%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも93%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも94%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも96%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施例において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1で表される。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2で表示される。
【0036】
本開示内容の特定の実施形態において、エキソソームは、光特異的結合タンパク質(photo-specific binding protein)をさらに含む。一部の実施形態において、光特異的結合タンパク質は、照射時に互いに可逆的に相互作用する第1光特異的結合タンパク質及び/又は第2光特異的結合タンパク質を含む。一部の実施形態において、第1光特異的結合タンパク質はエキソソーム特異的マーカーに接合して第1融合タンパク質(融合タンパク質I)を形成する。一部の実施形態において、第2光特異的結合タンパク質はNF-κB抑制タンパク質に接合して第2融合タンパク質(融合タンパク質II)を形成する。一部の実施形態において、融合タンパク質I及び融合タンパク質IIは、第1光特異的結合タンパク質及び第2光特異的結合タンパク質を通じて可逆的に連結される。一部の実施形態において、第1光特異的結合タンパク質は、エキソソームの内側に向かう方向に位置するようにエキソソーム特異的マーカーに接合される。
【0037】
追加の実施形態において、第1光特異的結合タンパク質及び第2光特異的結合タンパク質は、CIB、CIBN、PhyB、PIF、FKF1、GIGANTEA、CRYまたはPHRを含むが、これらに限定されないグループから選択される。
【0038】
追加の実施形態において、第1光特異的結合タンパク質はCIBまたはCIBNであり、第2光特異的結合タンパク質はCRYまたはPHRであるか;第1光特異的結合タンパク質はCRYまたはPHRであり、第2光特異的結合タンパク質はCIBまたはCIBNである。
【0039】
追加の実施形態において、第1光特異的結合タンパク質はPhyBであり、第2光特異的結合タンパク質はPIFであるか、第1光特異的結合タンパク質はPIFであり、第2光特異的結合タンパク質はPhyBである。
【0040】
追加の実施形態において、第1光特異的結合タンパク質はGIGANTEAであり、第2光特異的結合タンパク質はFKF1であるか、第1光特異的結合タンパク質はFKF1であり、第2光特異的結合タンパク質はGIGANTEAである。
【0041】
一部の実施形態において、エキソソーム特異的マーカーは、CD9、CD63、CD81またはCD82を含むが、これらに限定されないグループから選択される。追加の実施形態において、エキソソーム特異的マーカーはCD9である。追加の実施形態において、エキソソーム特異的マーカーはCD63である。追加の実施形態において、エキソソーム特異的マーカーはCD81である。追加の実施形態において、エキソソーム特異的マーカーはCD82である。
【0042】
一部の実施形態において、エキソソームは約50nm~約200nmの直径を有する。一部の実施形態において、エキソソームは約50nm~約75nmの直径を有する。一部の実施形態において、エキソソームは約75nm~約100nmの直径を有する。一部の実施形態において、エキソソームは約100nm~約125nmの直径を有する。一部の実施形態において、エキソソームは約125nm~約150nmの直径を有する。一部の実施形態において、エキソソームは約150nm~約175nmの直径を有する。一部の実施形態において、エキソソームは約175nm~約200nmの直径を有する。実施形態において、エキソソームは約50nm~約150nmの直径を有する。一部の実施形態において、エキソソームは約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150以上の直径及び/又は約75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200以下の直径を有する。
【0043】
全ての細部事項を記載することなく、米国特許第10702581号及び韓国特許第10-2100420号の内容は、本開示内容のNF-κB抑制剤を含有するエキソソームを製造するための組成物及び方法を提供するために参照により本願に導入される。
【0044】
本開示内容は、また、治療学的有効薬物の持続放出を提供するが、従来の持続効果は治療剤の反復投与を必要とする。
【0045】
本開示内容はまた、NF-κB抑制剤を担持する細胞外小胞(エキソソーム)及び薬剤学的に許容される担体または担体らを含む薬剤学的組成物を提供する。
【0046】
IR誘導されたAKIの病態生理学を理解するにおいて最近の注目すべき進歩にもかかわらず、虚血性AKIを治療するための臨床的効能及び安全性が立証された薬物は開発されておらず;従って、関連の死亡率及び罹患率の水準が重要である。NF-κB信号伝達はIR誘導されたAKIの過程に深く関与するため、エキソソームを用いたNF-κB抑制剤の全身伝達が虚血性AKI過程を軽減させるかを評価した。EXPLOR技術を用いて光学的に制御されたエキソソームの生合成を通じて、エキソ-srIκBをIRI手術前後にマウスに伝達し、結果を対照群グループの結果と比較した。その結果は、エキソ-srIκB処理の提供を受けたマウスグループがIR誘導されたAKIから保護されたことを示し;これは、対照群グループより良好な生化学的及び組織学的結果を示した。エキソ-srIκBの全身伝達は虚血後の腎臓でNF-κB信号伝達を抑制し、これは炎症誘発性サイトカイン/ケモカイン及び付着分子の発現を減少させ、アポトーシスを軽減させた。最後に、NF-κB処理は腎臓免疫細胞母集団に影響を及ぼし、フローサイトメトリー及び免疫蛍光分析を通じて好中球、単核球/マクロファージ及びT細胞を含む複数の免疫細胞母集団頻度の顕著な減少が観察された。
【0047】
IRIの初期過程で、炎症誘発性カスケード及び酸化ストレスはNF-κB経路活性化をもたらし、続いて、細胞生存及び炎症の調節を誘導する。低酸素症/再灌流の初期段階で高い移動性グループbox1、熱衝撃タンパク質及び病源体/損傷連関した分子パターンを含む複数の内因性因子が放出され、このような分子はToll様受容体(TLR)及びインターロイキン-1受容体(IL-1R)などのパターン認識受容体を刺激する。このプロセスは、その後にIκBキナーゼ(IKK)を活性化させてプロテアソームによるIκB分解を誘導する。続いて、ヘテロ二量体(例:p50/p65)はシトソールから核に移動し、これらはTNF-α、IL-1、IL-6及びIL-8を含む炎症媒介因子の転写を促進し、また、NF-κB信号伝達をさらに促進する。これら炎症誘発性カスケードは、IRIに提供された細尿管細胞でアポトーシスを誘導し、白血球の移動/活性化を促進させることにより周辺の微細環境を調節する。本実験的虚血性AKIモデルは、腎臓IRI後のNF-κB信号伝達の活性化を再現でき、これは腎臓免疫細胞母集団に有意に影響を及ぼす多発性炎症性サイトカイン/ケモカイン及び組織アポトーシスの増加した発現を誘導できる。
【0048】
最近の実験研究は、TLR拮抗剤、サイトカイン拮抗剤(33)、IKK複合体拮抗剤、プロテアソーム抑制剤及び多様な器官で特定のNF-κB複合体に特異的なデコイオリゴデオキシヌクレオチドを含み、NF-κB信号伝達の選択的薬理学的抑制剤を用いて、IRIに対するNF-κB遮断の効果に関するより詳細な証拠を示した。srIκBは、セリン残基32及び36に突然変異を有する非分解性IκBαタンパク質である。このタンパク質はNF-κB核転座及び後続NF-κB信号伝達を防止する。srIκBは、好中球浸潤及び肺浮腫を減少させて肺IRIモデルにおいて保護効果を立証し、また、化学抵抗性を減少させて抗腫瘍効果を奏することが公知となっている。しかし、腎臓損傷の過程でsrIκB処理の効果は完全に評価されていない。生命工学エキソソームをベクターとして用いることにより、チェら(Choi et al)は、最近の敗血性AKIモデルにおいてsrIκB処理の治療的利点を示した。下記実施例は、また、腎臓IRIモデルにおいてエキソ-srIκB処理の保護効果を立証し、多様な類型のAKIでエキソソームを通じてsrIκB伝達の治療的潜在力を拡張する。
【0049】
炎症プロセスの調節は、虚血性AKIの分野において重要な治療的考察であった。脾臓切除術及び抗TNF-α製剤、インフリキシマブの使用は、炎症性サイトカインの発現及びマクロファージ/単核球の蓄積を低下させ、実験的な虚血性AKIモデルにおいて保護効果を奏した。白血球及びマクロファージの移動を抑制することは腎臓機能を保存し、細胞死滅を軽減させた。提供された例は、エキソ-srIκB処理が炎症誘発性サイトカイン/ケモカイン及び接着分子の発現を下向調節し、アポトーシスを減少させ、IR-損傷した腎臓で多系統免疫細胞の蓄積を軽減させることを示した。このような結果は、エキソ-srIκBが炎症誘発性カスケードの下向調節を通じて虚血性AKIの過程を変形させ、後続の白血球の移動/活性化を制限し、アポトーシスを防止することを示唆する。
【0050】
エキソソームは、他の類型のベクターをコンベアとして用いるよりいくつかの利点を有する。第1に、EVは循環中の分解から自然に保護され、自己使用される場合に非免疫原性である。エキソソームはまた、これらの固有の細胞標的化の特性を通じて、血液-脳障壁などの天然障壁を克服できる。さらに、エキソソームは、吸収、細胞内運送及び標的細胞へのカーゴの最終伝達の過程で受容者細胞固有のメカニズムを用いる。このような特性を維持しながら、EXPLOR技術は、エキソソームから制御可能な可逆的分離を通じてカーゴタンパク質の細胞内水準を顕著に増加させることができた。治療タンパク質の細胞内伝達には、低精製効率、宿主に対する免疫反応の誘導及び限定されたシトソール伝達を含みいくつかの技術的障害があり、EXPLOR技術を用いたこのような新規のエキソソーム伝達方法は、以前の技術のものと比較し、エキソソームローディング性能、伝達効率及び純度を顕著に改善させた。下記実施例は、EXPLOR技術を用いたエキソ-srIκBの効率のよい伝達が実験的IRI後に腎臓結果に有意な改善をもたらすことを示す。
【0051】
全身エキソ-srIκB処理は、腎臓内の免疫細胞母集団の頻度にのみ影響を及ぼすが、脾臓内のものには影響を及ぼさない。これは、増殖を軽減させたりアポトーシスを促進する腎臓常駐免疫細胞に選択的に作用したり、損傷した腎臓への脾臓免疫細胞の流出を遮断するエキソ-srIκBの全身伝達に選択的に作用するエキソ-srIκBに関与できる。腎臓常駐免疫細胞及びリンパ器官からの免疫細胞は、相違する起源、表現型及び機能的特性を有することが公知となっている。キメラマウスまたは生体内イメージングを用いた追加研究は、滞留腎臓免疫細胞を循環免疫細胞と区別でき、全身エキソ-srIκB処理により影響を受ける免疫細胞母集団に対するより多くの情報を提供できる。
【0052】
活性治療剤のカーゴを伝達するための担体としてエキソソームを用いることは、IR誘導されたAKIモデルにsrIκBを伝達する安全で効率のよい方法である。エキソ-srIκB処理は、NF-κB信号伝達を下向調節し、虚血性損傷した腎臓において炎症及びアポトーシスを改善することによりマウスにおいてIR誘導されたAKIを軽減させる。エキソソームを用いて標的細胞に対する免疫抑制タンパク質の直接細胞内伝達は、IR誘導されたAKIの有望な治療道具であり、ヒト腎臓IRIにおいてエキソ-srIκBの治療の可能性はさらに探索されなければならない。
【0053】
敗血症により誘発された疾患
敗血症は、多数の臓器不全及び過多な炎症反応を伴い、複雑な病態生理学的特徴を有し、あらゆる症状を効果的に治療できる治療剤を開発することは容易ではない。敗血症は、先天性免疫系の強力な活性化を通じて開示され、病源体によるパターン認識受容体(PRR)の活性化により媒介され、補体システム、凝固システム及び血管内皮の活性化を誘導して正常な恒常性が困難である。
【0054】
本願の実施例で提示された通り、エキソ-srIκBの効果は、敗血症マウスモデルにおいてNF-κB活性の抑制を通じて炎症反応を解決し、臓器損傷を減少させることができた。srIκBは、NF-κBが核に流入し、転写因子として作用することを防止する分解不可能な形態のIκBαである。例えば、srIκBがローディングされた免疫抑制性エキソソームを生成するために、機能性タンパク質をエキソソームに搭載できる最近の技術が活用された。敗血症マウスモデル(例えば、全身伝達)においてエキソ-srIκBを全身に伝達することにより、本願の実施例は、エキソソームが好中球及びマクロファージに伝達され、これは敗血症炎症反応の主要参加者であることを確認した。また、本実施例の両方のマウス敗血症モデルにおいて、エキソ-srIκB処理は、TNF-α、IL-1β及びIL-6などの炎症誘発性マーカーを有意に減少させたが、抗炎症性サイトカインIL-10を減少させていない。エキソソームをLPS注射1時間後に注射した場合にも、エキソ-srIκBの有意な治療効果が観察された。従って、エキソ-srIκBによる処理は免疫抑制状態に転換される前に敗血症の初期段階にも適用され得る。
【0055】
炎症誘発性サイトカインは敗血症により誘発された急性腎障害(AKI)において重要な役割をすることができる。本願の実施例においてCLP手術またはLPS注射により誘発されたAKIを有するマウスモデルにおいて、組織病理学的検査の結果として、糸球体構造が破壊され、細尿管上皮細胞が縮退され、重症細胞内浮腫及び鬱血が敗血症誘導されたグループの細尿管で発生することを確認した。しかし、エキソ-srIκB投与は病変の重症度、腎臓損傷及び炎症細胞の浸潤を減少させた。
【0056】
好中球の組織浸潤は、敗血症において主要なプロセスであり得る。例えば、好中球を枯渇させ、好中球の動員を抑制するための特異的付着分子を標的化する一部の研究では、敗血症において組織損傷を減少させることができ、保護され得ることが報告された。TNF-α及びIL-1βは、MCP-1及びIL-8などのケモカインの発現のための主要媒介因子であり、これは、炎症反応中に好中球及び単核球/マクロファージに対する重要な化学誘引剤である。このようなケモカインは、活性化後の単核球/マクロファージの局所浸潤を開始する。しかし、HUVECにおいて、エキソ-srIκBはLPS誘導されたMCP-1及びIL-8の放出を減少させ、これにより単核球/マクロファージ浸潤を抑制することが示された。このようなデータは、本願の生体内研究で得られた結果と一致する。本実施例において、エキソ-srIκB処理は敗血症動物モデルの脾臓、腎臓、肺及び肝臓で好中球の浸潤を有意に減少させた。敗血症の病態生理学において好中球の重要な役割を考慮するとき、エキソ-srIκBの組織保護効果は、少なくとも腎臓において好中球の浸潤の減少と関連され得る。
【0057】
一部の実施形態において、脾臓は、腎臓及び肝臓などの他の臓器と比較し、高水準の好中球を示す。炎症誘発性サイトカインは脾臓で発生し得、他の臓器に影響を及ぼし得る。炎症誘発性サイトカインをコードする大部分の遺伝子は、LPSにより誘発された敗血性炎症反応において重要な転写因子の一つであるNF-κBの調節の下に存在し得る。エキソ-srIκB処理の存在または不在によりNF-κB反応リポータータンパク質の発現を本願の実施例で調査し、p65の転座を確認した。エキソ-srIκBは、NF-κBサブユニット65の核転座を遮断することにより、NF-κB信号活性化を抑制した。
【0058】
一部の実施形態において、エキソソームは、敗血症マウスモデルにおいて免疫抑制タンパク質の治療的伝達のためのメカニズムとして用いられる。エキソソームは、srIκBを細胞に伝達できる優れた担体であり、敗血症の治療のための新たなオプションを提供できる。免疫抑制タンパク質を生体内で標的細胞に直接伝達する方法は、以前に確立していないが、本開示内容によるエキソ-srIκBはNF-κBの抑制剤として作用し、これにより炎症関連遺伝子の発現及び直接炎症反応を抑制する。本願の実施例は、これを抑制して敗血症の炎症誘発性サイトカインストーム及びそれによる臓器損傷を軽減させることができる。
【0059】
脂質多糖類(LPS;エンドトキシンモデル)または盲腸結紮及び穿孔(CLP、多菌性モデル)のいずれか一つにより誘導された敗血症の動物モデルにおいて、最近の研究は、多様な化学的特性と作用メカニズムを有するNF-κB抑制剤が敗血性致死から動物を保護するということを立証した。700以上のNF-κB抑制剤が報告されたが、現在までヒトに用いられるように承認されたNF-κB遮断剤はない。多様なステロイド及び非ステロイド性抗炎症剤がNF-κBを遮断することが明らかになったが、これらの効果は非常に多面的(pleiotropic)であり、特異性が欠如する。NF-κB活性化経路で核心要素の特異的抑制を目的とする新規の治療戦略は最近開発中であり、敗血症により誘発された一つ以上の疾患に対する敗血症治療及び治療としての潜在的効能に対する期待が高い。リン酸化部位を有さない操作されたIκBαタンパク質を発現する遺伝的作製物、スーパーリプレッサーIκB(srIκB)も用いられた。特定のリン酸化部位でIκBα突然変異(Ser32及びSer36がAlaで代替される)は、延長された半減期を有するIκBαの優性活性形態をもたらす。このようなsrIκBはIκBαの安定した細胞質プールを誘導し、これにより核NF-κB活性化を防止する。
【0060】
ここで、エキソソームは、srIκBを治療用標的に伝達する治療用コンベアとして用いられた。エキソソームは、多様なタンパク質及び調節遺伝子を標的細胞に移動させる強力な治療媒介因子として認識されてきた。これらは非免疫原性ナノ小胞として機能し、血清プロテアーゼ及び免疫反応からこれらのカーゴを保護することができる。可溶性タンパク質をエキソソームにローディングすることはEXPLORと呼ばれる技術により可能になり、これは、自然なエキソソーム生合成プロセス及び光遺伝学により制御される可逆的タンパク質-タンパク質相互作用を用いる。特定の標的タンパク質をエキソソームにローディングするために、2つの組換えタンパク質、CIBN-EGFP-CD9及びsrIκB-mCherry-CRY2を安定的に発現するHEK293T細胞株が生成された(図1A)。以前の研究と一致し、EXPLOR技術を用いて、srIκBローディングされたエキソソームを生産した。srIκBローディングエキソソームはエキソ-srIκBとして指定され、無損傷のHEK293T細胞から生成されたエキソソームはエキソ-ナイーブとして指定された。治療の目的でエキソ-srIκBを敗血症モデルに適用することにより、敗血症誘導された臓器損傷は改善され、炎症誘発性サイトカインの分泌を抑制し、これにより敗血症患者の全般的生存率を改善させた。
【0061】
本開示内容は、これを必要とする対象体において敗血症により誘発された疾患を治療する方法であって、NF-κB抑制剤を含むエキソソームを含む組成物の有効量を前記対象体に投与することを含む、方法を提供する。
【0062】
実施形態において、疾患は肺炎、サイトカインストーム症候群、呼吸困難症候群及び臓器不全からなるグループから選択されるが、これらに限定されるものではない。一部の実施形態において、疾患は肺炎である。一部の実施形態において、疾患はサイトカインストーム症候群である。一部の実施形態において、疾患は呼吸困難症候群である。一部の実施形態において、疾患は臓器不全である。
【0063】
実施形態において、NF-κBの抑制剤はNF-κB抑制タンパク質、この断片及びこれらの混合物からなるグループから選択される。実施形態において、NF-κB抑制剤はスーパー抑制剤(SR)-IκB(srIκB)、IκB-α、IκB-β、IκB-ε、BCL-3、これらの突然変異体及びこれらの混合物からなるグループから選択される。実施形態において、NF-κB抑制剤はスーパーリプレッサー(SR)-IκB(srIκB)である。
【0064】
実施形態において、組成物は、経口、経皮、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下または混合経路を通じて投与される。一部の実施形態において、組成物は経口経路を通じて投与される。一部の実施形態において、組成物は経皮経路を通じて投与される。一部の実施形態において、組成物は腹腔内経路を通じて投与される。一部の実施形態において、組成物は静脈内経路を通じて投与される。一部の実施形態において、組成物は筋肉内経路を通じて投与される。一部の実施形態において、組成物は皮下経路を通じて投与される。一部の実施形態において、組成物は混合経路を通じて投与される。
【0065】
実施形態において、方法は、抗炎症剤を対象体に投与することをさらに含む。
【0066】
実施形態において、NF-κB抑制剤を含むエキソソームは、光特異的結合タンパクをさらに含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1または配列番号2と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも86%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも87%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも88%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも89%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも91%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも92%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも93%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも94%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも96%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1で表される。
【0067】
一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも86%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも87%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも88%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも89%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも91%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも92%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも93%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも94%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも96%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号1で表される。一部の実施形態において、NF-κB抑制剤は配列番号2で表される。
【0068】
一部の実施形態において、光特異的結合タンパク質は第1光特異的結合タンパク質及び/又は第2光特異的結合タンパク質である。実施形態において、第1光特異的結合タンパク質はエキソソーム特異的マーカーに接合されて融合タンパク質Iを形成し;第2光特異的結合タンパク質はNF-κB抑制剤に接合されて融合タンパク質IIを形成する。実施形態において、融合タンパク質I及び融合タンパク質IIは、第1光特異的結合タンパク質及び第2光特異的結合タンパク質を通じて可逆的に連結される。実施形態において、第1光特異的結合タンパク質はエキソソームの内側に向かう方向に位置するようにエキソソーム特異的マーカーに接合される。
【0069】
一部の実施形態において、第1光特異的結合タンパク質及び第2光特異的結合タンパク質はCIB、CIBN、PhyB、PIF FKF1、GIGANTEA、CRY及びPHRからなるグループから選択される。実施形態において、第1光特異的結合タンパク質はCIBであり、第2光特異的結合タンパク質はCRYである。一部の実施形態において、第1光特異的結合タンパク質はCIBNであり、第2光特異的結合タンパク質はCRYである。一部の実施形態において、第1光特異的結合タンパク質はCIBであり、第2光特異的結合タンパク質はPHRである。一部の実施形態において、第1光特異的結合タンパク質はCIBNであり、第2光特異的結合タンパク質はPHRである。
【0070】
一部の実施形態において、第1光特異的結合タンパク質はCRYまたはPHRであり、第2光特異的結合タンパク質はCIBまたはCIBNである。一部の実施形態において、第1光特異的結合タンパク質はCRYであり、第2-特異的結合タンパク質はCIBである。一部の実施形態において、第1光特異的結合タンパク質はCRYであり、第2光特異的結合タンパク質はCIBNである。一部の実施形態において、第1光特異的結合タンパク質はPHRであり、第2光特異的結合タンパク質はCIBである。一部の実施形態において、第1光特異的結合タンパク質はPHRであり、第2光特異的結合タンパク質はCIBNである。
【0071】
一部の実施形態において、第1光特異的結合タンパク質はPhyBであり、第2光特異的結合タンパク質はPIFである。実施形態において、第1光特異的結合タンパク質はPIFであり、第2光特異的結合タンパク質はPhyBである。
【0072】
一部の実施形態において、第1光特異的結合タンパク質はGIGANTEAであり、第2光特異的結合タンパク質はFKF1である。実施形態において、第1光特異的結合タンパク質はFKF1であり、第2光特異的結合タンパク質はGIGANTEAである。
【0073】
一部の実施形態において、エキソソーム特異的マーカーはCD9、CD63、CD81及びCD82からなるグループから選択される。一部の実施形態において、エキソソーム特異的マーカーはCD9である。一部の実施形態において、エキソソーム特異的マーカーはCD63である。一部の実施形態において、エキソソーム特異的マーカーはCD81である。一部の実施形態において、エキソソーム特異的マーカーはCD82である。
【0074】
一部の実施形態において、エキソソームは約50nm~約200nmの直径を有する。一部の実施形態において、エキソソームは約50nm~約75nmの直径を有する。一部の実施形態において、エキソソームは約75nm~約100nmの直径を有する。一部の実施形態において、エキソソームは約100nm~約125nmの直径を有する。一部の実施形態において、エキソソームは約125nm~約150nmの直径を有する。一部の実施形態において、エキソソームは約150nm~約175nmの直径を有する。一部の実施形態において、エキソソームは約175nm~約200mmの直径を有する。実施形態において、エキソソームは約50nm~約150nmの直径を有する。一部の実施形態において、エキソソームは約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145 150以上の直径及び/又は約75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145 150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200以下の直径を有する。
【0075】
一部の実施形態において、前記組成物は生理学的に許容される担体または担体らをさらに含む薬剤学的組成物である。
【0076】
EXPLOR(登録商標)技術
最近、エキソソームは、遺伝子/薬物伝達のための新規なバイオ担体として重要な注目を受けた。エキソソームは、生物活性物質を受容者細胞に伝達したり、標的細胞の信号伝達経路に影響を及ぼすことにより細胞間の通信で重要な役割をする細胞外小胞(EV)である。エキソソームは貯蔵がより容易であり、より大きい安定性を示す。エキソソームは、生物学的障壁を克服できる高用量を有し、特定の細胞類型を標的化する表面分子を運搬でき、従って、オフ標的効果がより少ない。しかし、エキソソームの臨床的適用において、多量の純粋なエキソソームを得、可溶性タンパク質をエキソソームにローディングすることは重大な課題であった。イムら(Yim et al.)により開発された新規な、光遺伝学的に操作されたエキソソーム技術である「光可逆的タンパク質-タンパク質相互作用を通じたタンパク質ローディングのためのエキソソーム」(EXPLOR)を使用し、エキソソームの生産効率及び生物学的互換性で顕著な発展がなされた。このEXPLOR技術は、最近、チェら(Choi et al.)により実験的敗血症モデルに採択され;これらはスーパーリプレッサーIκB(srIκB)を含有するエキソソームをマウスに伝達した。これは、NF-κBの核転座を防止するカッパーB(IκB)抑制剤の非分解性形態であった。これらの研究は、エキソ-srIκB処理がマウス敗血症モデルにおいて全身炎症反応及び後続する臓器機能障害を改善させることを示した。
【0077】
実施例
動物:雄性C57BL/6Jマウスを、延世医療センターの中央動物施設で特定の病源体非含有条件(specific pathogen-free condition)で飼育させた。全ての実験に6-7週齢の雄マウスを用いた。また、C56BL/6、C57BL/6N、BALB/cマウスは、オリエントバイオ(Orientbio)(大韓民国城南)から購入した。好中球及びマクロファージにおいてGFPを本質的に発現するLysMGFP/+マウスは、Dr.M.Kim(University of Rochester, Rochester, NY, USA)により寛大に提供された。
【0078】
エキソソーム単離:2つの組換えタンパク質、CIBN-EGFP-CD9及びsrIκB-mCherry-CRY2を発現するHEK293T細胞株を用いてsrIκBローディングされたエキソソームを生産した。無損傷のHEK293T細胞をエキソ-ナイーブの生産に用いた。安定した細胞を37℃で24時間T175フラスコに播種した。培地を除去した後、細胞を洗浄し、エキソソーム枯渇した培地に再懸濁させた。続いて、細胞をCOインキュベータで460nm発光ダイオードの連続青色光照明に露光させた。72時間後、細胞培養上清を回収し、遠心分離して細胞と破片を除去し、0.22μmのポリエーテルスルホンフィルタを通じて濾過し;タンジェンシャルフロー・フィルトレーション及びサイズ排除クロマトグラフィの組合わせを用いてエキソソームを単離した。一部の実施例において、エキソ-srIκBを生産するために、安定した細胞をT175フラスコに播種した。1日後、培地を注意して除去し、細胞をPBSで洗浄し、エキソソーム枯渇した培地を添加した。続いて、細胞をCOインキュベータで460nm発光ダイオードの連続青色光照明に露光させた。72時間後、細胞培養上清を回収し、1,000gで15分間遠心分離して細胞及び細胞破片を除去し、続いて、0.22μmのポリエーテルスルホン(PES)フィルタを通じて濾過して巨大粒子を除去した。エキソソームを分子量カットオフ(MWCO)基盤の膜濾過を用いて単離した。単離したエキソソームをSECで精製した。
【0079】
透過電子顕微鏡:TEMを通じてEVの形態を観察するために、5μLのEVを15秒間炭素コーティングされた銅グリッド(Electron Microscopy Sciences、Hatfield、PA)に吸収させた。過量の液体を除去した後、サンプルを2%のウラニルアセテート(Electron Microscopy Sciences)で陰性で染色した。TEMイメージは、200kVで作動するTecnai G2 Retrofit電子顕微鏡(FEI company Hillsboro、OR)を用いて得た。細胞外小胞(EV)は陰性染色を通じて形態学的に評価した。まず、PBSに懸濁した5μlのEVをグロー放電炭素コーティングされた銅グリッド(Electron Microscopy Sciences, Hatfield, PA, USA)にローディングした。3~5秒間サンプルを吸着した後、グリッドを濾紙でブロッティングし、2%のウラニルアセテート(UA)で染色した。続いて、乾燥機を用いてサンプルを20秒間乾燥させた。EVは200kVの電圧でTecnai G2 Retrofit(FEI Company Hillsboro, OR, USA)で観察した。
【0080】
ナノ粒子追跡分析:EVの粒子数及び大きさ分布は488nmのレーザが内蔵されたゼータビュー(Zetaview)装置(PMX120、Particle Metrix Germany)を用いてNTAにより測定した。製造業者の指示に従って、粒子非含有PBSでサンプルを希釈した(血清1:100~1:10000)。サンプルを25℃でカメラレベル78及びシャッター80で一定の流動条件で分析した。NTAにより決定された大きさ分布は、懸濁液でEVの流体力学的直径に対応する。ブラウン運動速度から粒子数を計算し、粒子運動速度を基盤に2次元ストークス-アインシュタイン方程式を用いて大きさを決定した。特定サンプルを0.2μMの濾過されたPBSで1:100~1:10,000に希釈した。EV濃度はフレーム当たり50~200粒子数を基盤に測定された。各測定に対し、11セル位置で2サイクルのスキャニングを下記設定で行った:焦点、自動焦点;全てのサンプルに対するカメラ感度、78.0;シャッター、70;及びセル温度、25℃。EV濃度はml当りの粒子数(pn/ml)で表した。
【0081】
免疫ブロッティング:細胞をHalt(登録商標)プロテアーゼ及びフォスファターゼ抑制剤カクテル(100X)(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を含有するRIPA緩衝液に溶解させ、腎臓をトリトンX-100溶解緩衝液に溶解させた。溶解物を4℃で10-20分間9,000~16,000×gで遠心分離させ、上清を後続のイムノブロッティングのために-70℃に保管した。タンパク質濃度は、BCA検定(Pierce(登録商標) BCA Protein Assay、Thermo Scientific TM)を用いて測定した。タンパク質抽出物をLaemmliサンプル緩衝液(Bio-Rad、Hercules、CA)に溶解させ、100℃で5分間加熱した。タンパク質をアクリルアミド変性SDS-ポリアクリルアミドゲルで電気泳動してニトロセルロース(NC)膜に移した。トランスファー膜を遮断緩衝液A(PBS、0.1% Tween-20及び5%無脂肪ミルク)で22℃で1時間インキュベーション(incubation)した後、srIκBに対する1次抗体(カスタマイズ型抗体、Abelon、ソウル、大韓民国)、mCherry、Alix、TSG101、GM130、カルネキシン(Abcam Cambridge、UK)、CD9、CD63(SBI、Tokyo、Japan)、GAPDH(Santa Cruz Biotechnology、Dallas、TX)、プロヒビチン(NOVUSBIO, Centennial,CO)、ヌクレオポリンp62(BD bioscience、San Jose,CA)、NF-κB(クローン8242S、Cell signalling technology、Danvers、MA)、Lamin B1(Clone ab133741),ICAM-1(Clone AF796、R&D Systems)、切断されたカスパーゼ-3(Clone 9661L,細胞信号伝達技術)、切断されたPARP(クローン9544S、細胞信号伝達技術)及びβ-アクチン(A5441、Sigma-Aldrich)と共に4℃で一晩中インキュベーションした。膜を特定の2次抗体で洗浄し、インキュベーションした後、これらを化学発光剤[Clarity及びClarity Max ECL Western Blotting Substrates(Bio-Rad)またはWest-Q Pico Dura ECL溶液(GenDEPOT, Katy, TX)]を用いて発色させた。イメージ(Image)Jソフトウェア(NIH)を用いて各グループに対するバンドの相対的光学密度を測定した。
【0082】
マウス腎臓虚血再灌流モデル:マウスを、チレタミン/ゾラゼパム(Zoletil(登録商標))-キシラジン(Rompun(登録商標))混合物(1mg/kg)の腹腔内投与を通じて麻酔させ、加熱された手術用パッド(37℃)に位置させた。両側IRIは背側アプローチ法を使用して行った。腎臓のペディクルを解剖し、マイクロクランプ(Jeungdo Bio & Plant、ソウル、大韓民国)を各腎臓ペディクルに30分間位置させた。偽動物は、麻酔及び両側背側切開を単独で提供を受けた。手術中、マウスを温かい普通の生理食塩水1mlで水和させて脱水を防止した。虚血30分後、両クランプをいずれも除去し、Autoclip(登録商標)創傷閉鎖システム(Harvard apparatus、マサチューセッツ州ホリストン)で創傷を閉鎖する前に血流回復を確認した。動物に飲食物及び飲水に自由にアプローチさせて回復させた。マウスをIRI手術の24時間または48時間後に犠牲にした。追加分析のために各マウスから血清、脾臓及び腎臓を収集した。Cobas C502自動分析機(Roche diagnostics、Basel、Switzerland)を用いて血清BUN及びクレアチニン数値を分析した。
【0083】
酵素結合免疫吸着検定(ELISA):サンプルを1:100~1000倍に希釈した後に製造業者のプロトコル(マウスリポカリン-2/NGAL定量的ELISAキット)(R&D Systems Minneapolis、MN)により、マウスELISAキットを用いて血清NGAL水準を測定した。
【0084】
THP-1及びHUVEC培養物から収集された上清のTNF-α、IL-8及びMCP-1水準は、市販のELISAキット(R&D Systems、Minneapolis、MN USA)を用いて測定し、HUVECでNF-κB活性はトランスAM NF-κB p65キット(Active Motif、Carlsbad、CA、USA)を用いて測定した。高級CLP手続後に指した時点で心臓穿孔を通じて収集されたマウス血漿中のTNF-α、CCL-4/マクロファージ炎症タンパク質(MIP)-1β、IL-6及びIL-1βの水準は、マウス磁気ルミネックスイースクリーニングアッセイキット(Magnetic Luminex eScreening Assay kit)(R&D Systems)を用いて測定した。検定は、製造業者の指示に従って行った。全てのサンプル及び標準は、ルミネックス(Luminex)200TMシステム(Merck Millipore、Darmstadt、Germany)を用いて二重に検定した。指した時点で血清TNF-α、IL-1β、IL-6及びCCL4を測定するために、LPSエンドトキシン血症手続後の心臓穿孔を通じて血液サンプルを収集し、室温で2時間凝血させ、続いて、4℃で20分間2,000gで遠心分離した。
【0085】
NE-PER核及び細胞質抽出:腎臓を収集し、小片に切断し、PBSで洗浄し、腎臓の重量によりNE-PER核及び細胞質抽出試薬キット(ThermoFisher、Waltham、MA)から得られた特定容積の細胞質抽出試薬(CER)1でビードで均質化した。15秒の激烈な渦動及び10分間の氷上におけるインキュベーション後、CER IIを各腎臓サンプルに添加した後、氷上で1分間インキュベーションし、16,000×gで5分間遠心分離した。上清を細胞質抽出物で収集し、不溶性分画を核抽出試薬に懸濁させた。16,000×gで10分間遠心分離した後、全ての上清を収集して核抽出物として用いた。
【0086】
腎臓損傷点数及び免疫組織化学の組織病理学的評価:ホルマリン固定された及びパラフィン包埋された腎臓組織サンブルの5マイクロメートル厚の切片をヘマトキシリン-エオシン(HE)及びIHC染色を通じて処理した。組織学的に腎臓損傷を評価するために、各スライドをHEで染色した。腎臓病理学者(JIY)は、盲目的に皮質部位の全体管中の壊死管の比率を点数化した。腎臓損傷は、総管中の損傷した管の比率により点数化した:0、正常;1、<25%損傷;2、25~50%損傷;3,50~75%損傷、4、75~90%損傷;及び5、>90%損傷。損傷した管に対する組織学的基準は、管刷子縁の損失、液胞化、クロマチン凝縮、及び露出された管基底膜を含んだ。一般に、50-100管を含む5つのランダムに選択された高出力領域で細尿管を評価して点数化した。
【0087】
IHCの場合、組織切片を脱パラフィン化し、エチルアルコールで再水和し、水道水で洗浄した。ブラック・アンド・デッカー(Black & Decker)の植物性蒸し器を用いて、抗原を20分間10mMのクエン酸ナトリウム緩衝液で検索した。スライドを22℃で30分間10%のロバ血清で遮断し、PBSを用いて洗浄した。NF-κB(Clone 8242S、Cell signalling technology、Danvers、MA)及びICAM-1(Clone AF796、R&D Systems)に対する1次抗体を、ウシ血清アルブミン中の2%のカゼインを用いて適切な濃度に希釈し、スライドに添加し、4℃で一晩中インキュベーションした。洗浄後、2次抗体(Dako、Carpinteria、CA)を22℃で1時間適用した。ジアミノベンジジンを2分間添加し、ヘマトキシリンを用いてスライドを対照染色した。染色強度の半定量的点数は、400倍の倍率の下にデジタルイメージ分析(MetaMorph version 4.6r5, Universal Imaging Corp., Downingtown, PA)を通じて各切片で少なくとも5フィールドを調査して得た。
【0088】
NF-κBのDNA結合活性の測定:20μgの腎臓核抽出物を用いて、TransAM NF-κB検定キット(ActiveMotif, Carlsbad, CA)を用いて製造業者のプロトコルによりDNAに対するp65/c-Rel(NF-κB)の結合活性を測定した。
【0089】
定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応:全体腎臓RNA抽出の確立した方法を用いた。簡単にいって、全体腎臓サンプルを700μlのRNAiso試薬(Takara Bio Inc., Otsu, Shiga, Japan)で均質化させた。続いて、160μlのクロロホルムを腎臓細胞の均質化したサンプルに添加した。続いて、混合物を30秒間激烈に振盪させ、22℃で3分間維持し、4℃で16,000×gで15分間遠心分離した。3相の上部に位置した水性相を、他の相との汚染を防止するために、新鮮なチューブに注意して移した。400μlのイソプロパノールを添加して抽出されたRNAを沈殿させ、4℃で30分間16,000×gで遠心分離した。RNAペレットを70%のエタノールで洗浄し、2分間空気乾燥し、滅菌されたジエチルピロカーボネート処理された蒸溜水に溶解させた。抽出されたRNAの量及び品質は260及び280nmの波長で分光光度測定で評価した。単離されたRNAをCDNA合成キット(Takara Bio Inc, Shiga Prefecture,Japan)を用いてcDNAで逆転写させた。各DNAの5μlを10μlのSYBR Green PCRマスターミックス(Master Mix)(Applied Biosystems,Foster City,CA)及び5pmolのセンス/アンチセンスプライマーと混合した。プライマー濃度は、各プライマーに対する最適濃度を確認する予備実験後に決定した。IL-1α、IL-1β、Il-2、Il-4、Il-6、Il-10、Il-17α、Ccl2、Ccl3、Ccl5、Cxcl2、Ifn-γ、Tnf-α及びIcam-1の発現水準はABI PRISM 7700配列検出システム(Applied Biosystems)を用いて測定した。PCR条件は次の通りである:初期加熱段階は95℃で9分間行った後、94.5℃で30分間35サイクルの変性、60℃で30秒間アニーリング、72℃で1分間伸長、72℃で7分間最終拡張。各プライマーの配列データは表1に提示されている。
【0090】
【表1】
【0091】
各サンプルを分離チューブ中で三重に実行し、cDNAを含まない陰性対照群を各検定に並行して実行した。リアルタイムPCR後、温度を2℃/minの速度で60℃から95℃に増加させて溶融曲線を作成した。それぞれの遺伝子の発現値を18S rRNAの値に対して正規化し、2-△△CTとの比較C方法を用いて相対倍数発現値を計算した。
【0092】
血清中の多重サイトカイン検定:IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10、IL-17A、CCL2、CCL3、CCL5、CXCL2、IFN-γ及びTNF-αを含む、13個の炎症性サイトカイン及びケモカインは、1:2希釈された血清を用いて、メーカーのプロトコル(EMD Millipore Billerica、MA)によりミリフレックスマウスサイトカイン/ケモカイン磁気ビードパネル(Milliplex Mouse Cytokine/Chemokine Magnetic bead Panel)マルチプレックス検定キットを用いて分析した。定量化は、ルミネックス(Luminex)200マイクロプレートリーダー(EMD Millipore)を用いて行った。
【0093】
末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼdUTPニック末端標識検定:細胞死滅を、市販キット(S7110,Merck,Millipore,Billerica,MA)を用いてFITC標識されたTUNEL検定で評価した。ホルマリン固定された腎臓組織のTUNEL陽性細胞は、400倍拡大したデジタルイメージ分析(MetaMorph version 4.6r5,Universal Imaging Corp.)で各セクションの最小5フィールドを調査して確認した。
【0094】
マウスからの腎臓単核細胞及び脾臓細胞の単離:KMNCは確立したプロトコルにより単離した。両方の腎臓を放血後に除去し、脱カプセル化し、微細に切り、37℃で30分間コラゲナーゼ類型I(1mg/ml)(Worthington Biochemical Lakewood、NJ)でインキュベーションした。酵素消化後、70μmのストレーナ(BDbioscience、San Jose、CA)を通じた組織の機械的破壊により単一細胞腎臓懸濁液を達成した。製造業者の指示に従って、等張性パーコール密度勾配(GE Healthcare、Chicago、IL)(ブレーキオフモードで30分間1,500×g)を用いてRTで遠心分離した後にKMNCを収集した。収集された細胞を洗浄し、5% FBSを含むRPMI培地に再懸濁し、Countess(登録商標) II FL自動化細胞計数機(Life Technologies Waltham、MA)を用いて自動的に計数した。
【0095】
脾臓細胞は、70μmのストレーナ(BD bioscience)を用いて脾臓の機械的破壊を通じて収集し、RBC溶解溶液(Qiagen,Hilden,Germany)と共に3分間インキュベーションし、赤血球を除去する。
【0096】
腎臓CD4 T細胞のFACS選別:FACS選別のために、KMNCを抗CD16/CD32 Fcブロック(クローン93、Biolegend,San Diego,CA)と共に氷上で10分間事前インキュベーションし、モノクローナルAb抗CD45(APC,Clone 30-F11,Biolegend)、抗Ly6G(APC-Fire 750、Clone 1A8、Biolegend)、抗Ly6C(FITC、Clone HK1.4、Biolegend)、抗F4/80(PerCP-Cy5.5,Clone BM8,Biolegend)及び抗CD3(PE, Clone 17A2, Biolegend)で4℃で30分間染色した。FACS緩衝液(5% FBSを含むPBS)で洗浄及び再懸濁後、FACS Divaソフトウェア(BD Biosciences)及びFlowJoソフトウェア(バージョン10.2)を用いて染色された細胞をLSRIIで分析した。破片/致死細胞及び二重線を除去した後、各サンプルをCD45、Ly6G、Ly6C、F4/80及びCD3の発現に基づいて分析した。OneComp eBeads(ThermoFisher)を補正に用いた。
【0097】
免疫蛍光:脱パラフィン化、再水化及び抗原検索を行った後、スライドを22℃で30分間10%の塩素血清で遮断し、リン酸塩緩衝食塩水を用いてTween-20で洗浄した。Ly-6G(Clone ab25377,Abcam,Cambridge,UK),Ly-6C(Clone ab15627,Abcam)、F4/80(Clone ab6640,Abcam)及びフルオレセイン(FITC)接合されたローツステトラゴノロブスレクチン(LTL)(Clone FL-1321 Vector laboratories、Burlingame、CA)に対する1次抗体をウシ血清アルブミン中の2%のカゼインを用いて適切な濃度に希釈し、スライドに添加し、4℃で一晩中インキュベーションした。洗浄後、ヤギ抗ラットIgG Alexa Fluor 647(ab150167、Abcam)を22℃で1時間適用した。続いて、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)(MBD0015,Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)を用いてスライドを対比染色した。染色強度は、デジタルイメージ分析(MetaMorph version 4.6r5、Universal Imaging Corp.)を通じて400倍の倍率で各セクションで最小5フィールドを調査して半定量的に点数化した。
【0098】
統計:データは、平均値±標準偏差(SD)値で表した。統計的差は、Prism 8(GraphPad、San Diego、CA)を用いたボンフェローニ事後試験を用いた一方向ANOVAを用いて分析した。P<0.05の場合、結果は統計学的に有意な差を示した。
【0099】
LPSのエンドトキシン血症モデル:LPSエンドトキシン血症のマウスモデルを生成するために、エシェリキア・コリ(Sigma-Aldrich,Milwaukee,WI,USA)に由来するLPSを雄マウスに注射した。
【0100】
高級CLP敗血症モデル及び治療摂生:ORIENTBIO(大韓民国京畿道城南市)から購入した雄性C57BL/6マウスは、小さい変更を伴うその前に記載された手続を用いて9-10週齢で高級CLPに提供した。全てのマウスを収容し、国際実験動物管理協会(Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care International)により承認された延世大医科大学生医学研究所の特定の病源体非含有地域で実験を行った。マウスを、全ての手続前に、80mg/kgのケタミン及び10mg/kgのキシラジン混合物のip注射を通じて麻酔した。麻酔後、腹膜を無菌方式で開封し、盲腸を遠位末端で4-0黒色絹糸1cmを用いて結紮し、23ゲージ(gauge)ニードルで穿孔した。穿孔後、ニードルを除去し、両方の穿孔を通じて少量の便を押し出して開通性を確保した。続いて、盲腸を腹腔内に再度入れ、腹部の切開部を6-0ナイロン縫合糸で封合し、ステンレススチール除去可能な創傷クリップを皮膚に用いた。この手続後、体重20g当たり予熱された食塩水1mlを皮下投与した。虚偽処理されたマウスは、盲腸の結紮及び穿孔を除いては同様の手続を経た。この手続後、1.0×10粒子のエキソ-ナイーブまたはエキソ-srIκBを0、6、12及び18時間でip注射を通じてマウスに投与した。対照群として、同一容積のリン酸塩緩衝液(PBS)を同様の方式で注射した。動物をCLP後に初期48時間は2時間ごとに評価し、続いて、5日間は4時間ごとに評価した。サンプルを収集し、CLP後18時間以内に手続の結果を評価した。
【0101】
生体内イメージング:レーザースキャニング生体内共焦点顕微鏡(IVM-C;IVIM Technology、大田、大韓民国)を用いて、エキソ-srIκBの生体分布及び抗腐敗効果を可視化した。生体内イメージングの間、homoeothermic controllerを用いてマウスの体温を37℃に維持した。マウスをゾレチル(30mg/kg)及びキシラジン(10mg/kg)の筋肉内注射で麻酔させた。肝臓、脾臓及び腎臓を含む内部臓器にアプローチするために、皮膚及び腹膜の両方に10mmの小さい切開を行った。露出された臓器は、イメージング中に食塩水を反復的に適用して水和状態に維持した。エキソソーム生体分布を、エキソ-ナイーブまたはエキソ-srIκB注射前後に広域z-スタック(stack)イメージングを通じて可視化した。生体内でC57BL/6Nマウスの好中球を蛍光標識するために、Alexa Fluor 555(A20009;Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA)と接合された抗-Ly6G抗体(BD Bioscience,San Jose,CA,USA)を静脈内注射した。mCLING ATTO 647N(Synaptic System、Gottingen、Germany)で標識されたナイーブまたはsrIκBエキソソームを尾静脈カテーテルまたは31-Gインシュリン注射器を通じて静脈内注射した。敗血症モデルを生成するために、イメージング前に1~16時間高容量LPS(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)を静脈内注射した。
【0102】
共焦点顕微鏡検査:エキソソーム吸収分析のために、エキソソームをダルベッコ PBS(DPBS)0.5mlで希釈した。続いて、製造者の指示に従って、懸濁液を647N標識されたmCLING-ATTO(シナプティック・システム)と共にインキュベーションした。続いて、遠心分離を通じて混合物のペレットを得、300μlの再懸濁されたペレットをHUVECと共にインキュベーションした。24時間後、細胞をDPBSで洗浄し、4%のパラホルムアルデヒド溶液に固定させた。Hoechstは核染色に用いられた。ツァイス(Zeiss)710共焦点顕微鏡(Zeiss Oberkochen、Germany)を用いてイメージを記録した。
【0103】
ルシフェラーゼ検定:HEK293細胞を、NF-κBの反応要素(SL-0012;Signosis、Santa Clara、CA、USA)の下に調節されたルシフェラーゼ受容体作製物で安定してトランスフェクションさせ、製造業者の指示に従って成長させた。細胞を37℃で24時間エキソソームで処理し、SpectraMax ID3マイクロプレートリーダ-(Molecular Devices,Sunnyvale、CA、USA)を用いてルシフェラーゼ活性を測定した(E1501;Promega,Madison,WI,USA)。
【0104】
フローサイトメトリー:HUVEC上で発現された表面マーカーの水準をフローサイトメトリーを用いて評価した。細胞を分離し、遠心分離を通じて収穫し、ヒトICAM-1(BD Biosciences)に特異的なフィコエリスリン(PE)接合された抗体で暗状態で30分間氷上で標識し、続いて、広範囲に洗浄した。全てのサンプルをBD Celestaフローサイトメトリー(BD Biosciences)で分析した。データはBD FACSDivaソフトウェアを用いて分析した。IgGlk(BD Biosciences)に特異的なPE接合された抗体をアイソフォーム対照群として用いた。
【0105】
実施例1.操作されたエキソソームの特性化及び分析
エキソソーム製造、回収及び精製は、図13に示された通り、以前の研究で完全に記載されている。粒子の大きさは大部分30~120nmであり、平均サイズは101nmである。透過電子顕微鏡(TEM)は、ナノ粒子追跡分析(NTA)結果に応じて大きさを有する無損傷のカップ状の膜小胞を示した(図1、B及びC)。エキソ-srIκBに対するイムノブロッティング分析結果は、CD63、TSG101、Alix及びGAPDHなどの陽性エキソソームマーカーを有するsrIκB、mCherry、CD9及びGFPを含む標的タンパク質の強力な発現を示した。エキソ-srIκBは、プロヒビチン、カルネキシン、GM130及びヌクレオポリン62を含む細胞小器官マーカーの発現が欠如した。エキソ-ナイーブはエキソソームマーカーを除いた如何なるマーカーも発現しなかった(図1D)。
【0106】
実施例2.エキソ-srIκBの注射は腎臓虚血再灌流損傷を改善する。
まず、腎臓IRI過程でエキソ-srIκBの役割を調査した。各実験グループを3×10pnのエキソ-srIκBまたは、腎臓IRIの前後に、エキソ-ナイーブを1時間間隔(合計9×10pn)で3回腹腔内注射した。(前処理:IRI手術前に3、2及び1時間、後処理:IRI手術後に1、2及び3時間)。マウスを手術24または48時間後に犠牲にした(図2A)。
【0107】
興味深いことに、エキソ-srIκBの提供を受けたマウスグループは、前処理及び後処理モデル(24-h/48-h BUN及び両モデルにおいてクレアチニン、P<0.001)の両方で、IRI手術後にエキソ-ナイーブ注射グループより血清血液ウレア窒素(BUN)及びクレアチニンの顕著に、より低い水準を示した(図2B及び2C)。血清好中球ゼラチナーゼ連関のリポカリン(NGAL)の水準は、エキソ-ナイーブグループと比較し、前処理及び後処理モデルのエキソ-srIκB注射グループにおいて有意に減少した(P<0.001)(図2D)。組織学的評価結果は、また、前/後処理モデルにおいて、エキソ-ナイーブグループと比較し、エキソ-srIκB治療の提供を受けたマウスグループで、より低い管損傷点数を示した(P<0.05対エキソ-ナイーブ注射グループ)(図2E)。総合的に、このようなデータはエキソ-srIκBの全身伝達が虚血性AKIの進行を直接予防することを示す。
【0108】
実施例3.全身エキソ-sIκB処理はIR-損傷した腎臓において腎臓NF-κB信号伝達を抑制する。
全身エキソ-srIκB処理がIR誘導されたAKI過程に影響を及ぼす根本的メカニズムを理解するために、エキソ-srIκBの全身伝達をまず研究し、腎臓において局所NF-κB信号伝達を抑制するかどうかを決定した。それぞれ相違する実験グループの腎臓核抽出物中のNF-κB p65タンパク質の発現はウェスタンブロッティングを通じて測定した。9×10pnのエキソ-srIκBを用いた全身処理は、エキソ-ナイーブ処理グループで発見されたものと比較し、IRI前(IRI 24時間後、P<0.05;48時間、P<0.01)及びIRI後(IRI 24-/48時間後、P<0.01)(図3A)処理モデルにおいてIR誘導されたNF-κB核転座を減少させた。この発見は、各実験グループの腎臓核抽出物を用いてp65のDNA結合活性を測定することにより再確認された。エキソ-srIκB処理は、処理時点(前処理:IRI 24-/48-時間後、P<0.05;後処理:IRI 2-/48時間、P<0.01)と関係なく、エキソ-ナイーブグループと比較し、腎臓IRI後にNF-κBのDNA結合活性を有意に下向調節した(図3B)。NF-κB免疫組織化学(IHC)染色を通じた追加検証は、対照群処理グループと比較し、エキソ-srIκB処理グループでNF-κBの発現が有意に減少したことが示された(前処理:IRI 24時間後、P<0.05;48-h、P<0.001及び後処理:IRI 24-/48-h後、P<0.05)(図3C)。従って、全身エキソ-srIκB処理はIR後の腎臓で腎臓NF-κB信号伝達を減少させることができる。
【0109】
実施例4.エキソ-srIκBは虚血後の腎臓の炎症を改善する。
全身性エキソソームsrIκB処理が腎臓IRI誘導された炎症を局所軽減させるかどうかを追加で調査するために、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)を通じてIL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6、Il-10、Il-17α、Ccl2、Ccl3、Ccl5、Cxcl2、Ifn-γ及びTnf-αを含む中枢炎症性媒介因子の遺伝子発現水準を決定した。IRI前にエキソ-TIκBの9×10pnを用いた処理は、IR損傷した腎臓でEx-ナイーブ処理されたグループのものと比較し、Il-1β、Il-6、Tnf-α、Ccl2、Ccl5及びCxc12の発現水準を有意に抑制させた(図4A)。多重サイトカイン分析は、また、相違する実験グループの血清を用いて行った。結果は、腎臓転写データより有意ではなかったが、対照群グループでのものと比較し、エキソ-srIκB処理グループでIL-6、TNF-α、CCL2、CCL5及びCXCL2を含む炎症性サイトカインの発現が減少する明白な傾向があった(図4B)。
【0110】
さらに、付着分子の発現に対するエキソソームsrIκBの処理の効果は、処理グループの中で転写/翻訳細胞内付着分子1(ICAM-1)の水準を比較することにより評価した。QRT-PCR結果は、前/後処理のモデルの両方でエキソ-srIκB処理グループでエキソ-ナイーブ処理より有意に低水準のIcam-1発現を示した(図4C)。この結果は、ウェスタンブロッティング及びIHC染色を通じて翻訳水準で再現された(図4、D及びE)。従って、全身エキソ-srIκB伝達は、IR誘導されたAKIで炎症誘発性サイトカイン/ケモカイン及び付着分子の発現を下向調節できる。
【0111】
実施例5.エキソ-srIκBは虚血後の腎臓でアポトーシスを軽減する。
プログラム細胞致死を調節する時にNF-κBの公知となった役割に基づいて、エキソ-srIκBが虚血後の腎臓でアポトーシスにいかに影響を及ぼしたかを調査した。腎臓IRI手術は腎臓細胞で有意なアポトーシスを誘導し、これはウェスタンブロット分析で切断されたカスパーゼ-3及び切断されたポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)水準の急激な増加を示した。損傷の前/後にエキソ-srIκBの全身伝達は、切断されたカスパーゼ-3及び切断されたPARPの発現水準を実質的に下向調節でき、これはエキソ-srIκBが虚血後の腎臓でアポトーシスに対する保護効果を奏することを示唆する(図5A)。末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼdUTPニック末端標識(TUNEL)染色を用いて腎臓細胞損傷の程度を決定した。対照群と比較し、エキソ-srIκB処理された腎臓は前/後処理モデルにおいて有意に少ない数のTUNEL陽性細胞を示した(図5B)。
【0112】
実施例6.腎臓虚血再灌流損傷後のエキソソーム生体分布
腎臓IRIモデルにおいてエキソ-srIκBの生体分布は、細胞類型が虚血後の腎臓でエキソ-srIκBの保護効果を調整することをより十分に理解するために調査した。マウスに、IRI手術1時間前にフルオロクロム標識されたLy6G及びF4/80抗体を静脈内注射し、再灌流1時間後に9×10pnのエキソ-srIκBを静脈内注射した。生体内イメージングは再灌流後10分、5時間及び24時間に行った(図6A)。好中球を可視化するための抗Ly6G抗体(Fluor 555)及びマクロファージを可視化するための抗F4/80抗体(Fluor 488)だけでなく、DiD標識されたエキソソーム注射後の生体内イメージングはエキソ-srIκB及びエキソ-ナイーブのいずれも虚血後の腎臓で好中球(Ly6G)及びマクロファージ(F4/80)により吸収されるということを確認した(図6B)。本発明者らは、IRI後の細尿管でDiD(緑色)信号の軽微な増加を観察し、細尿管細胞によるエキソソーム吸収可能性を高めたが、信号強度はDiD標識されたエキソソーム注射前のものと有意に相違しなかった(データは提示されない)。脾臓は同時に観察され、これは、外部実質領域の好中球及びマクロファージでエキソソームの吸収を示した(図6C)。内部実質領域は有意な吸収を示さなかった(データは提示されない)。
【0113】
実施例7.エキソ-srIκBの全身伝達は腎臓IRI後に腎臓免疫細胞母集団に影響を及ぼす
免疫細胞は、虚血性AKIの過程で重要な役割を提供することが公知となっており;従って、IRI手術前にエキソソームsrIκB処理を提供することが各免疫細胞類型の母集団に影響を及ぼすかを評価した。虚血性AKIの24時間後、実験グループ間の機械的破壊、酵素分解及びパーコール密度勾配方法の複数の段階を通じて単離された腎臓細胞の総数に対する差異はなかったが、エキソ-srIκB処理グループは、エキソ-Niave処理されたグループのものより腎臓単核細胞(KMNC)の有意な低頻度を有した(P<0.05)(図7、A及びB)。追加分析は、エキソ-srIκB注射グループがエキソ-ナイーブ注射グループのものより総KMNC中の好中球(CD45Ly6G)(P<0.01)プロ/抗炎症性単核食細胞(CD45Ly6C/CD45F4/80)(それぞれP<0.01/P<0.05)、及びT細胞(CD45CD3)(P<0.05)の有意な低頻度を有することを示した(図7C)。IR損傷腎臓の免疫蛍光の結果は、また、エキソ-srIκB注射腎臓で好中球及び単核食細胞頻度の減少を示した(図7D)。しかし、エキソ-srIκB処理は、虚血性AKI後の脾臓の総免疫細胞数または頻度に有意な影響を及ぼさなかった。エキソ-srIκB及びエキソ-ナイーブ処理グループとの間でT細胞(CD45CD3)を除いて、総免疫細胞(CD45)、好中球(CD45Ly6G)、プロ/抗炎症単核食細胞(CD45Ly6C/CD45F4/80)の総細胞数及び頻度の差はなかった。これは、虚血性AKIの前に全身エキソ-srIκB処理が腎臓免疫細胞の増殖/輸送に顕著な局所的影響を及ぼすが、脾臓免疫細胞には顕著な局所的影響を有さないことを確認する。
【0114】
実施例8.エキソ-srIκBの静脈内伝達
腹腔内エキソソーム伝達において類似の保護効果が静脈内伝達で発見されるかどうかを検証するために、静脈内注射方式を用いて一部実験を繰り返した。改善された生化学的結果、その上、エキソ-srIκBの静脈内伝達によるNF-κB信号伝達及びICAM-1発現の減少した水準は図8に示されたように再現された。従って、エキソ-srIκB結果の静脈内伝達も虚血性AKIモデルで腹腔内伝達と比較して類似の生物学的効果をもたらす。
【0115】
実施例9.srIκBローディングされたエキソソーム追加特性化及び分析
十分なエキソソームを生産するために、それぞれの細胞類型から培養培地を収集した。
【0116】
HUVECはアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ATCC,Manassas,VA,USA)から購入して10%胎児ウシ血清(FBS;Atlas Biologicals,Fort Worth,CO,USA)、ヘパリン(Sigma-Aldrich)、内皮細胞成長補充剤(BD Biosciences)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Thermo Fisher)を含むF-12K培地(ATCC)で培養した。第3~第6継代培養間のHUVECを全ての実験に用いた。ヒト単核球(THP-1)をATCCから購入し、10% FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン及び0.05mM 2-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich)が添加されたRPMI 1640培地(Welgene Daegu Korea)で培養した。
【0117】
タンジェンシャルフロー・フィルトレーション(TFF)及びサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)の組合わせを用いてエキソソームを単離した(図13A)。結合能力を超える不純物がSECカラムにローディングされる危険を減少させるために、サンプルを、TFFを通じて透析濾過(diafiltration)及び濃縮させた。TFF後、濃縮された培地を追加精製のためにSECカラムにローディングした。続いて、第2TFFを行ってエキソソームを濃縮させた。段階的精製を通じて単離された各類型のエキソソームはナノ粒子追跡分析(NTA)を通じて分析され、これによりエキソソームの大きさ及び濃度を特性化した(図13B)。直径が30~120nmである粒子が全ての粒子の80%以上を占め、平均サイズは101nmで示され、これはエキソソーム特徴的大きさ範囲(30~120nm)と一致する。また、透過電子顕微鏡(TEM)は、エキソ-ナイーブ及びエキソ-srIκBから得られたNTA結果に対応する大きさを有する無損傷のカップ状の膜小胞(intact cup-shaped membrane vesicles)を示した(図9B)。本発明の製剤でエキソソームをさらに特性化するために、2つの一般的エキソソームマーカーを調査した。これらはウェスタンブロッティングを通じてテトラスパニンCD63及びTSG101であった。
【0118】
以前の研究で記載された通り、ウェスタンブロッティングを行った。下記タンパク質を標的化する抗体を用いた:IκBα(CST4812;Cell Signaling Technology,Danvers,MA,USA), p65(CST6956S;Cell Signaling Technology), CD9(NBP2-22187;NOVUSBIO,Centennial,CO,USA), CD63(EXOAB-CD63A-1;SBI,Tokyo,Japan), TSG101(ab228013;Abcam,Cambridge,UK),GM130(ab52649;Abcam),GAPDH(sc-47724;Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA,USA),Histone H3(ab1791;Abcam),mCherry(ab125096;Abcam)及びGFP(CST2555;Cell Signaling Technology)。
【0119】
CD63及びTSG101の存在はサンプルで明確に観察される一方、骨脂由来汚染物質GM130は細胞溶解物のみで検出された(図9C)。エキソソーム製剤のこのような分析は、これらがエキソソームの特性を有することを示す。また、srIκB安定した細胞株から単離されたエキソソームにsrIκB-mCherry-CRY2(130kDa)が強力にローディングされることを観察した。
【0120】
実施例10.エキソ-srIκBは敗血症マウスで生存を改善させ、急性器官損傷を緩和させる
エキソ-srIκBの腹腔内(i.p.)注射がエンドトキシン衝撃(endotoxic shock)から保護する効果があるかどうかを調査した。動物に致死量のLPS(C57BL/6の場合、40mg/kgの体重、BALB/cの場合、20mg/kgの体重)で単一i.p注射後、エキソ-srIκBを単一i.p.注射した(6時間間隔)。LPS誘導された敗血症による死亡率が100%である対照群C57BL/6マウスと比較し、エキソ-srIκBで処理されたマウスはLPS誘導死亡率に顕著に耐性を示し;マウスの大部分は敗血症から治癒(rescue)され、生存が延長された(図10A、上部)。エキソ-srIκB-媒介効果はLPS誘導された温度降下から適当な保護と関連があった(図14A)。BALB/cマウスを用いてLPS誘導された敗血症のマウスモデルを開発した。エキソ-srIκB処理はBALB/cマウスにおいてLPS誘導された敗血症の生存率を有意に改善させた(図10A、中間)。続けて、腹部敗血症の標準化したマウスモデルにおいてCLP誘導された敗血症モデルを用いて、生存においてエキソ-srIκBの役割を調査した。動物は7日のモニタリング期間生存し、これはエキソ-srIκBが敗血症死亡率に対して持続的保護を提供することを示す(図10A、下部)。エキソ-srIκB処理が敗血症により誘導された炎症を緩和させるかどうかをさらに調査するために、酵素結合免疫吸着検定(ELISA)を使用して血清で主要炎症因子の濃度を決定した。LPS誘導された敗血症を有するエキソ-srIκB処理グループにおいて炎症誘発性サイトカインTNFα、IL-1β及びIL-6及びケモカイン四塩化炭素(CCL4)の発現水準が有意に減少することが観察された(図10B、上部)。また、CLPグループにおいてTNF-α及びCCL4の血清水準が虚偽操作対照群マウスの血清水準より有意に高く観察されたが、CLP及びエキソ-srIκBがいずれも処理されたマウスでは上昇しなかった(図10B、下部)。このような結果はエキソ-srIκBがLPSまたはCLPにより誘導された炎症を緩和させ、急性炎症プロセスから敗血症マウスを保護することを示唆する。
【0121】
多数の研究は、急性腎損傷(AKI)が敗血症の頻繁で深刻な合併症として、敗血症の50%以上の事例で発生し、死亡率が非常に高いことを明らかにした。敗血症マウスモデルにおいてCLP誘導されたAKIでエキソ-srIκBの役割を決定するために、腎臓組織学的検査を行った。偽手術を行ったグループと比較し、リン酸塩緩衝された食塩水(PBS)で処理されたマウス及びエキソ-ナイーブマウスの細尿管細胞は、液胞化、刷子縁の喪失、及び管上皮細胞の核凝縮と関連して相当な損傷を示した(図10C)。特に、エキソ-srIκB処理は管部位に対する損傷を顕著に減少させ、近位管を保存し、敗血症誘導された腎臓損傷に対するエキソ-srIκBの治療の可能性を立証した。このような結果はLPS誘導されたAKIの結果と一致する(図14B)。組織学的腎臓損傷の重症度をさらに定量した結果、エキソ-srIκB処理は両敗血症モデルで損傷点数を約50%まで有意に減少させることが示された(図10D)。エキソ-srIκBは、たとえ一部損傷した部位が発見されても、細尿管で退行性変化を改善させた。このようなデータは敗血症マウスで腎臓生理学的構造及び機能を改善するのにエキソ-srIκBの重大な重要性を示唆する。
【0122】
実施例11.LPS注射後のエキソソーム生体分布
LPS注射された敗血症マウスモデルにおいてエキソソーム生体分布の変化を調査した。生体内生体分布は、注文製作された生体内ビデオレートレーザースキャニング共焦点顕微鏡システム(custom-made intravital video-rate laser scanning confocal microscopy system)を用いて分析した。好中球(緑色蛍光タンパク質[GFP]及びAlexa 555)及びマクロファージ(GFP)を可視化するために抗Ly6G抗体が既に注射されたLysMgfp/+トランスジェニックC57BL/6マウスにmCLING蛍光染料標識されたエキソソームを静脈内注射した。大部分のエキソソームが速やかに、即ち、静脈内エキソソーム注射後、数分間以内に好中球及びマクロファージにより吸収されることを観察した(図11A)。
【0123】
エキソソームは、主に肝臓の好中球に伝達され(図11B)、LPS誘導されたマウスの脾臓で、好中球及びマクロファージの動員増加及びエキソソーム摂取(uptake)増加が観察された(図11C)。mCLING標識されたエキソソームは、また、LPS注射されたマウスの腎臓で好中球に伝達された(図15A)。このような観察は、敗血症マウスモデルにおいて治療用エキソソームが好中球及びマクロファージを標的に30分以内に成功裏に伝達されたことを示唆する。
【0124】
実施例12.エキソ-srIκBは敗血症連関の炎症を緩和させる
試験管内エキソ-srIκBの標的特異性及び効率を確認した。エキソ-srIκBはNF-κBルシフェラーゼリポーター遺伝子を安定的に発現するHEK293細胞においてTNF-α誘導されたNF-κB活性化を有意に遮断したが、エキソ-ナイーブは遮断しなかった(図12A)。エキソ-srIκBの量を増加させることは容量依存的方式でNF-κBリポーター活性を減少させ、これはエキソソームから放出されたsrIκBがNF-κB転写活性を防止することを示す(図12B)。
【0125】
全ての敗血症反応性細胞の中で、単核球/マクロファージは免疫反応を促進させるのに最も重要な役割をし、敗血症マウスにおいてこれら細胞の枯渇は死亡率を増加させる。THP-1細胞は細胞培養モデルで単核球として広範囲に用いられる。THP-1細胞がLPSで刺激された時、エキソ-ナイーブと比較し、エキソ-srIκBによる処理はNF-κB転写調節の下にある炎症性サイトカインTNF-α及び単球走化性タンパク質(MCP)-1の分泌を減少させた(図12C)。また、エキソ-srIκBの効果を、NF-κBの標的DNA結合を妨害する、一般に用いられるNF-κB抑制剤であるJSH-23の効果と比較した。例示的データは、エキソ-srIκB及びJSH-23がTHP-1細胞でLPS誘導されたNF-κB活性化及びサイトカイン生成の抑制と関連して匹敵する効果を奏することを示した(図12C、レーン(lane)4対レーン6)。
【0126】
敗血症は内皮に対する単核球付着を特徴とする。正常な条件で、内皮細胞は休止(quiescent)であり、単核球と相互作用しない。しかし、炎症環境で、活性化された内皮細胞は単核球に結合する細胞間細胞接着分子(intercellular cell adhesion molecule,ICAM)-1などの接着分子を発現する。接着分子の発現は敗血症の発生中に活性化することが広範囲に想定される。
【0127】
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)で細胞付着分子の発現に対するエキソ-srIκBの効果を研究するために、実施例は、まず、エキソ-srIκBsが細胞に内在化するかどうかを調査した。mCLING標識されたエキソ-srIκBはHUVECで検出され、24時間後に最大内在化が観察された(図12D)。また、HUVECでICAM-1発現がエキソ-srIκB処理により有意に抑制されることを確認した(図12E)。IL-8及びMCP-1は、また、血管内皮に対する単核球の移動及び付着を誘発し、これら細胞が周辺組織で血管外流出するように誘導した。IL-8及びMCP-1の発現は細菌及びウイルス感染による急性炎症中に、多様な組織において以前に観察され、重症敗血症と関連がある。エキソ-srIκBはHUVECでNF-κBの転写活性を抑制させることにより(図16B)、LPS誘導されたIL-8及びMCP-1生産を抑制させたことが明らかになった(図16A)。このような結果は、エキソ-srIκBが敗血症でNF-κB媒介された炎症反応を減少させることを確認する。
【0128】
実施例13.LPS誘導された敗血症において肺損傷に対するエキソ-srIκBの保護効果
動物は、致死量のLPS(30mg/kgの体重)で30分間単一腹腔内注射、続いて、10時間エキソ-srIκB(1×1010)の単一静脈内注射の提供を受けた。肺組織を図17に提示された通りH&E染色で分析した。10時間LPSを注射したグループは、好中球浸潤及び肺胞マクロファージの増殖、肺胞内及び肺胞外充血を示し、出血が進行された。肺胞内皮細胞の損傷、その上、歯槽骨壊死が観察される。エキソソーム投与は、鬱血が若干観察される場合にも、肺胞壁拡張、好中球浸潤及び肺胞マクロファージ増殖を軽減させた。
【0129】
30mg/kg LPSを、1グループ当たり10匹のマウスからなるLPS投与グループ(陰性対照群)及び3容量エキソ-srIκB投与グループに投与した。投与30分後、エキソ-srIκBをi.vで1回投与し、図18に提示された通り72時間生存率を評価した。対照群C57BL/6マウスと比較し、高容量のエキソ-srIκBで処理されたマウスはLPS誘導された死亡率に耐性があり、生存率が延長された。
【0130】
30mg/kg LPSを、1グループ当たり5匹のマウスからなるLPS投与グループ(陰性対照群)及び3容量エキソ-srIκB投与グループに投与した。投与30分後、エキソ-srIκBをi.vで1回投与し、各時点で剖検して血漿を得た。得られたTNF-αの血漿水準はELISA方法で測定した(図19)。炎症誘発性サイトカインTNF-αの発現水準はLPS誘導された敗血症を有するエキソ-srIκB処理グループにおいて時間依存的方式で減少した。
【0131】
動物は、致死量のLPS(30mg/kgの体重)で30分間単一腹腔内注射、続いて、エキソ-srIκB(1×1010)の単一静脈内注射の提供を受けた。肝組織をH&E染色で分析した(図20)。LPS投与1時間後、中央静脈周囲のKupffer及び免疫細胞の浸潤が若干観察されたが、エキソソーム投与グループでは炎症細胞の浸潤が軽減された。LPS投与10時間後、Kupffer及び中央静脈周辺の免疫細胞の浸潤が有意に増加し、肝細胞間の結合組織損傷が観察された。エキソソーム投与グループでは浸潤が減少したが、肝細胞の壊死及び浮腫プロセスは次第に軽減することが予想された。従って、エキソソームの反復投与は保護効果を増強させることが期待される。
【0132】
AKIを治療するための実施形態
実施形態1.これを必要とする対象体において急性腎障害(AKI)を治療するための方法であって、NF-κB抑制剤を含むエキソソームを含む組成物の有効量を前記対象体に投与する、方法。
【0133】
実施形態2.前記実施形態のいずれか一つにおいて、NF-κBの抑制剤がNF-κB抑制タンパク質、この断片、及びこれらの混合物からなるグループから選択される、方法。
【0134】
実施形態3.前記実施形態のいずれか一つにおいて、NF-κB抑制剤がスーパーリプレッサー(SR)-IκB(srIκB)、IκB-α、IκB-β、IκB-ε、BCL-3、これらの突然変異体及びこれらの混合物からなるグループから選択される、方法。
【0135】
実施形態4.前記実施形態のいずれか一つにおいて、NF-κB抑制剤がスーパーリプレッサー(SR)-IκB(srIκB)である、方法。
【0136】
実施形態5.前記実施形態のいずれか一つにおいて、組成物が経口、経皮、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、または混合経路を通じて投与される、方法。
【0137】
実施形態6.前記実施形態のいずれか一つにおいて、対象体がヒトである、方法。
【0138】
実施形態7.前記実施形態のいずれか一つにおいて、前記方法が対象体に抗炎症剤を投与することをさらに含む、方法。
【0139】
実施形態8.前記実施形態のいずれか一つにおいて、NF-κB抑制剤を含むエキソソームが光特異的結合タンパク質をさらに含む、方法。
【0140】
実施形態9.前記実施形態のいずれか一つにおいて、NF-κB抑制剤が配列番号1または配列番号と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、方法。
【0141】
実施形態10.前記実施形態のいずれか一つにおいて、NF-κB抑制剤が配列番号1で表される、方法。
【0142】
実施形態11.前記実施形態のいずれか一つにおいて、NF-κB抑制剤が配列番号2で表される、方法。
【0143】
実施形態12.前記実施形態のいずれか一つにおいて、前記光特異的結合タンパク質が第1光特異的結合タンパク質及び/又は第2光特異的結合タンパク質であり;第1光特異的結合タンパク質がエキソソーム特異的マーカーに接合されて融合タンパク質Iを形成し;第2光特異的結合タンパク質がNF-κB抑制剤に接合されて融合タンパク質IIを形成する、方法。
【0144】
実施形態13.前記実施形態12において、融合タンパク質I及び融合タンパク質IIが第1光特異的結合タンパク質及び第2光特異的結合タンパク質を通じて可逆的に結合する、方法。
【0145】
実施形態14.前記実施形態12または13において、第1光特異的結合タンパク質がエキソソームの内側に向かう方向に位置するようにエキソソーム特異的マーカーに接合されている、方法。
【0146】
実施形態15.前記実施形態12~14のいずれか一つにおいて、第1光特異的結合タンパク質及び第2光特異的結合タンパク質がCIB、CIBN、PhyB、PIF、FKF1、GIGANTEA、CRY及びPHRからなるグループから選択される、方法。
【0147】
実施形態16.前記実施形態15において、第1光特異的結合タンパク質がCIBまたはCIBNであり、第2光特異的結合タンパク質がCRYまたはPHRである、方法。
【0148】
実施形態17.前記実施形態15において、第1光特異的結合タンパク質がCRYまたはPHRであり、第2光特異的結合タンパク質がCIBまたはCIBNである、方法。
【0149】
実施形態18.前記実施形態15において、第1光特異的結合タンパク質がPhyBであり、第2光特異的結合タンパク質がPIFである、方法。
【0150】
実施形態19.前記実施形態15において、第1光特異的結合タンパク質がPIFであり、第2光特異的結合タンパク質がPhyBである、方法。
【0151】
実施形態20.前記実施形態15において、第1光特異的結合タンパク質がGIGANTEAであり、第2光特異的結合タンパク質がFKF1である、方法。
【0152】
実施形態21.前記実施形態15において、第1光特異的結合タンパク質がFKF1であり、第2光特異的結合タンパク質がGIGANTEAである、方法。
【0153】
実施形態22.前記実施形態12~21において、エキソソーム特異的マーカーがCD9、CD63 CD81及びCDS2からなるグループから選択される、方法。
【0154】
実施形態23.前記実施形態のいずれか一つにおいて、エキソソームが約50nm~約200nmの直径を有する、方法。
【0155】
実施形態24.前記実施形態のいずれか一つにおいて、エキソソームが約50nm~約150nmの直径を有する、方法。
【0156】
実施形態25.前記実施形態のいずれか一つにおいて、組成物が生理学的に許容される担体を含む薬剤学的組成物である、方法。
【0157】
実施形態26.AKIを治療するための実施形態1~16に記載されたNF-κB抑制剤をさらに含むエキソソームを含む組成物。
【0158】
実施形態27.AKIを治療するための実施形態1~16に記載されたNF-κB抑制剤を含むエキソソームを含む組成物の用途。
【0159】
他の疾患を治療するための実施形態
実施形態1.これを必要とする対象体において敗血症により誘発された疾患を治療する方法であって、NF-κB抑制剤を含むエキソソームを含む組成物の有効量を前記対象体に投与することを含む、方法。
【0160】
実施形態2.前記実施形態のいずれか一つにおいて、疾患が肺炎、サイトカインストーム症候群、呼吸困難症候群、及び臓器不全からなるグループから選択される、方法。一部の実施形態において、疾患は肺炎である。一部の実施形態において、疾患はサイトカインストーム症候群である。一部の実施形態において、疾患は呼吸困難症候群である。一部の実施形態において、疾患は臓器不全である。
【0161】
実施形態3.前記実施形態のいずれか一つにおいて、NF-κB抑制剤がNF-κB抑制タンパク質、この断片、及びこれらの混合物からなるグループから選択される、方法。
【0162】
実施形態4.前記実施形態のいずれか一つにおいて、NF-κB抑制剤がスーパーリプレッサー(SR)-IκB(srIκB)、IκB-α、IκB-β、IκB-ε、BCL-3、これらの突然変異体及びこれらの混合物からなるグループから選択される、方法。
【0163】
実施形態5.前記実施形態のいずれか一つにおいて、NF-κB抑制剤がスーパーリプレッサー(SR)-IκB(srIκB)である、方法。
【0164】
実施形態6.前記実施形態のいずれか一つにおいて、組成物が経口、経皮、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、または混合経路を通じて投与される、方法。
【0165】
実施形態7.前記実施形態のいずれか一つにおいて、対象体がヒトである、方法。
【0166】
実施形態8.前記実施形態のいずれか一つにおいて、前記方法が対象体に抗炎症剤を投与することをさらに含む、方法。
【0167】
実施形態9.前記実施形態のいずれか一つにおいて、NF-κB抑制剤を含むエキソソームが光特異的結合タンパク質をさらに含む、方法。
【0168】
実施形態10.前記実施形態のいずれか一つにおいて、NF-κB抑制剤が配列番号1または配列番号2と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、方法。
【0169】
実施形態11.前記実施形態10において、NF-κB抑制剤が配列番号1で表される、方法。
【0170】
実施形態12.前記実施形態10において、NF-κB抑制剤が配列番号2で表される方法。
【0171】
実施形態13.前記実施形態のいずれか一つにおいて、前記光特異的結合タンパク質が第1光特異的結合タンパク質及び/又は第2光特異的結合タンパク質であり;第1光特異的結合タンパク質がエキソソーム特異的マーカーに接合されて融合タンパク質Iを形成し;第2光特異的結合タンパク質がNF-κB抑制剤に接合されて融合タンパク質IIを形成する、方法。
【0172】
実施形態14.前記実施形態13において、融合タンパク質I及び融合タンパク質IIが第1光特異的結合タンパク質及び第2光特異的結合タンパク質を通じて可逆的に結合する方法。
【0173】
実施形態15.前記実施形態13または14において、第1光特異的結合タンパク質がエキソソームの内側に向かう方向に位置するようにエキソソーム特異的マーカーに接合されている方法。
【0174】
実施形態16.前記実施形態13~15のいずれか一つにおいて、第1光特異的結合タンパク質及び第2光特異的結合タンパク質がCIB、CIBN、PhyB、PIF、FKF1、GIGANTEA、CRY及びPHRからなるグループから選択される、方法。
【0175】
実施形態17.前記実施形態16において、第1光特異的結合タンパク質がCIBまたはCIBNであり、第2光特異的結合タンパク質がCRYまたはPHRである、方法。
【0176】
実施形態18.前記実施形態のいずれか一つにおいて、第1光特異的結合タンパク質がCRYまたはPHRであり、第2光特異的結合タンパク質がCIBまたはCIBNである、方法。
【0177】
実施形態19.前記実施形態16において、第1光特異的結合タンパク質がPhyBであり、第2光特異的結合タンパク質がPIFである、方法。
【0178】
実施形態20.前記実施形態16において、第1光特異的結合タンパク質がPIFであり、第2光特異的結合タンパク質がPhyBである、方法。
【0179】
実施形態21.前記実施形態16において、第1光特異的結合タンパク質がGIGANTEAであり、第2光特異的結合タンパク質がFKF1である、方法。
【0180】
実施形態22.前記実施形態16において、第1光特異的結合タンパク質がFKF1であり、第2光特異的結合タンパク質がGIGANTEAである、方法。
【0181】
実施形態23.前記実施形態13~22において、エキソソーム特異的マーカーがCD9、CD63、CD81及びCD82からなるグループから選択される、方法。
【0182】
実施形態24.前記実施形態のいずれか一つにおいて、エキソソームが約50nm~約200nmの直径を有する方法。
【0183】
実施形態25.前記実施形態のいずれか一つにおいて、エキソソームが約50nm~約150nmの直径を有する、方法。
【0184】
実施形態26.前記実施形態のいずれか一つにおいて、組成物が生理学的に許容される担体をさらに含む薬剤学的組成物である、方法。
【0185】
実施形態27.敗血症により誘発された疾患を治療するための実施形態1~16に記載されたNF-κB抑制剤を含むエキソソームを含む組成物。
【0186】
実施形態28.敗血症により誘発された疾患を治療するための実施形態1~16に記載されたNF-κB抑制剤を含むエキソソームを含む組成物の用途。
【0187】
本開示内容は、多様な特定材料、過程及び実施例を参照して本願で記載及び説明されたが、本開示内容は、その目的のために選択された材料及び過程の特定組合わせに限定されないものと理解される。このような詳細の多数の変形が当業者により理解されるように暗示される。本明細書及び実施例は単に例示としてのみ考慮されることが意図され、本開示内容の真正な範囲及び精神は下記特許請求の範囲により提示される。本願で言及された全ての参考文献、特許及び特許出願はその全体が参照により本願に導入される。
図1
図2
図3
図4A-B】
図4C-E】
図5
図6A
図6B-C】
図7A-C】
図7D-F】
図8A-F】
図8G-H】
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【配列表】
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