(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】非水電解液添加剤、それを含む非水電解液、蓄電デバイス、電動デバイス及び電力貯蔵システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20240604BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240604BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240604BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240604BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2022580382
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(86)【国際出願番号】 CN2020140548
(87)【国際公開番号】W WO2022141010
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】王 仁和
(72)【発明者】
【氏名】余 樂
(72)【発明者】
【氏名】趙 衛軍
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0237126(US,A1)
【文献】国際公開第2012/053644(WO,A1)
【文献】特開2010-192430(JP,A)
【文献】特開2014-232704(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063964(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-0587
C07D 327/00-10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で示される化合物
を含むことを特徴とする、非水電解液用添加剤。
【化1】
Mは対カチオンであり、
mは1~3の整数であり、
X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、酸素または硫黄から選択され、
R
1はハロゲン、ハロゲン化C
1~10アルキル及びハロゲン化C
3~10シクロアルキルから選択され、
R
2及びR
3は、それぞれ独立して、ハロゲン、ハロゲン化C
1~10アルキル及びハロゲン化C
3~10シクロアルキルから選択され、あるいは
R
2及びR
3は、それぞれ独立して、酸素または硫黄から選択され、R
2及びR
3はそれらと接続される原子と共に、共同で式(II)で示される部分を形成し、
【化2】
式中、X
5及びX
6は、それぞれ独立して、酸素または硫黄から選択される。
【請求項2】
R
1はハロゲンから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の
非水電解液用添加剤。
【請求項3】
R
2及びR
3は、それぞれ独立して、ハロゲンから選択され、あるいは
R
2及びR
3は、それぞれ独立して、酸素であり、R
2及びR
3はそれらと接続される原子と共に、共同で式(II)で示される部分を形成し、式中、X
5及びX
6は、それぞれ独立して、酸素であることを特徴とする、請求項1に記載の
非水電解液用添加剤。
【請求項4】
前記対カチオンは、金属カチオンまたは第四級アミン基であることを特徴とする、請求項1に記載の
非水電解液用添加剤。
【請求項5】
前記金属カチオンは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及びその組み合わせから選択され、
前記第四級アミン基は、テトラメチルアミン、テトラエチルアミン、テトラプロピルアミン、テトラブチルアミンから選択されることを特徴とする、請求項4に記載の
非水電解液用添加剤。
【請求項6】
前記式(I)の化合物が、
【化3】
【化4】
及びその組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の
非水電解液用添加剤。
式中、M及びmは、請求項1~5のいずれかに定義される通りであり、
M
m+は、請求項4または5に定義される金属カチオンまたは第四級アミン基であり、
mは1から3の整数である。
【請求項7】
前記式(I)の化合物が、
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
及びその組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の
非水電解液用添加剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載
の非水電解液用添加剤を含むことを特徴とする、非水電解液。
【請求項9】
非水電解液の合計重量に基づき、式(I)で示される化合物の前記非水電解液における含有量
は0.1~10重量%であることを特徴とする、請求項
8に記載の非水電解液。
【請求項10】
前記非水電解液は、さらに、非水溶媒を含み、
ここで、非水溶媒は、環状エステル、鎖状エステル及びその組み合わせから選択され、
前記環状エステルは、環状カーボネートで
あることを特徴とする、請求項
8または
9に記載の非水電解液。
【請求項11】
前記環状カーボネートは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、1,2-ブテンカーボネート、2,3-ブテンカーボネート、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、トランスまたはシス4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート及びその組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項
10に記載の非水電解液。
【請求項12】
前記鎖状エステルは、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸ブチル、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート及びその組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項
10に記載の非水電解液。
【請求項13】
前記非水電解液は、さらに、第1のリチウム塩を含み、
前記第1のリチウム塩は、LiPF
6、LiBF
4、LiBCl
4、LiAsF
6、LiClO
4、LiAlO
2、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiSbF
6及びその組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項
8または
9に記載の非水電解液。
【請求項14】
前記非水電解液は、さらに、第2のリチウム塩を含み、それは、P=O構造を含むリチウム塩、-S(=O)
2-構造を含むリチウム塩、アニオンとしてシュウ酸ホウ素錯体を含むリチウム塩及びその組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項
13に記載の非水電解液。
【請求項15】
前記第1のリチウム塩及び第2のリチウム塩の合計含有量は10から20重量%であり、
第1のリチウム塩の含有量は8から16重量%であることを特徴とする、請求項
14に記載の非水電解液。
【請求項16】
前記非水電解液は、さらに、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、1,3-プロパンスルトン、硫酸ビニル、プロピレンカーボネートから選択される1種以上の添加剤を任意で含むことを特徴とする、請求項
8または
9に記載の非水電解液。
【請求項17】
前記添加剤の含有量は約0から10重量%であることを特徴とする、請求項
16に記載の非水電解液。
【請求項18】
請求項
8~
17のいずれかに記載の非水電解液を含み、
二次電池であることを特徴とする、蓄電デバイス。
【請求項19】
請求項
18に記載の蓄電デバイスを含み、
電気自動
車及び電動二輪
車から選択されることを特徴とする、電動デバイス。
【請求項20】
請求項18に記載の蓄電デバイスを含むことを特徴とする、電力貯蔵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池技術分野に関し、具体的には、硫酸塩系化合物、それを含む非水電解液及び蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池において、電解液には、リチウム塩、非水溶媒及び添加剤が含まれ、少量の添加剤で、現在のリチウムイオン電池に普遍的に存在するサイクル寿命の短さ及び安全上の問題等の技術的課題をピンポイントで解決することができる。
【0003】
現在、非水電解液二次電池において、VC(ビニレンカーボネート)が最も好ましい成膜添加剤として認識され、その還元電位は、EC(エチレンカーボネート)、PC(プロピレンカーボネート)及びDEC(ジエチルカーボネート)等より高く、炭素負極上で優先的に還元され得る。しかし、VCは生産が難しく、価格も相対的に高く、且つ高温性能を改善する必要がある。したがって、負極の成膜を向上させ、電池の高温性能を向上させ、電池のサイクルの安定性を向上させることができる、より優れた性能の電解液添加剤を開発する必要がある。
【0004】
CN101847750Aは、リチウム塩、直鎖状カーボネート溶媒、少なくとも1種のアンモニウムカチオン、リン酸系溶媒媒及びシュウ酸ホウ酸塩を含む添加剤を含み、改善された熱安定性、難燃性及び高速度及びサイクル寿命性能等の電気化学特性を有する充電式リチウム電池の難燃性電解質を公開している。CN107293784Aは、リチウム塩、有機溶媒及び添加剤を含む電解液及びリチウムイオン電池を公開しており、ここで、添加剤は、リン酸シランエステル化合物及び/又はホウ酸シランエステル化合物、フルオロカーボン界面活性剤及び過充電防止添加剤を含み、リチウムイオン電池は、高温保存性能、高温サイクル性能、過充電性能、レート性能を兼備する。CN105830271Aは、ホスホノギ酸化合物及び前記化合物を含む非水電解液及び蓄電デバイスを公開しており、前記非水電解液は、高温下で高負荷充放電サイクルを維持し、負極熱安定性の低下を抑制し、蓄電デバイスの安全性を向上させる特性を有する。CN103493277Aは、トリフルオロメチルベンゼン化合物及び前記化合物を含む非水電解液及び蓄電デバイスを公開しており、前記非水電解液は、高温度範囲における電気化学特性を向上させることができる。
【発明の概要】
【0005】
ある実施態様において、本発明は、式(I)で示される化合物を提供する。
【0006】
【0007】
Mは対カチオンであり、
【0008】
mは1~3の整数であり、
【0009】
X1、X2、X3及びX4は、それぞれ独立して、酸素または硫黄から選択され、
【0010】
R1は、ハロゲン、ハロゲン化C1~10アルキル及びハロゲン化C3~10シクロアルキルから選択され、
【0011】
R2及びR3は、それぞれ独立して、ハロゲン、ハロゲン化C1~10アルキル及びハロゲン化C3~10シクロアルキルから選択され、あるいは
【0012】
R2及びR3は、それぞれ独立して、酸素または硫黄から選択され、R2及びR3はそれらと接続される原子と共に、共同で式(II)で示される部分を形成し、
【0013】
【0014】
式中、X5及びX6は、それぞれ独立して、酸素または硫黄から選択される。
【0015】
ある好ましい実施形態において、X1、X2、X3及びX4は酸素である。
【0016】
ある実施形態において、前記対カチオンは、金属カチオンまたは第四級アミン基である。
【0017】
ある好ましい実施形態において、前記化合物は、
【0018】
【0019】
【0020】
及びその組み合わせから選択され、式中、M及びmは以上で定義される通りであり、
【0021】
特に、Mm+は、金属カチオンまたは第四級アミン基であり、
【0022】
mは1~3の整数である。
【0023】
ある好ましい実施形態において、前記化合物は、
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
及びその組み合わせから選択される。
【0029】
別の態様では、本発明は、本発明の式(I)で示される化合物を含む非水電解液用添加剤を提供する。
【0030】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の式(I)で示される化合物及びそれを含む非水電解液用添加剤を含む非水電解液を提供する。
【0031】
別の態様では、本発明は、本発明の式(I)で示される化合物または本発明の非水電解液を含む蓄電デバイスを提供する。
【0032】
さらに別の態様では、本発明は、非水電解液添加剤に用いる式(I)で示される化合物の用途を提供する。
【0033】
別の態様では、本発明は、本発明の蓄電デバイスを含む電動デバイスを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を詳細に説明する。このような記載は専ら説明を目的とするものであって、本発明を制限することは意図していない。当業者ならば、本明細書に開示された内容から、本発明の他の利点および公開を容易に理解することができる。本発明は、他の異なる特定の実施形態を通じて実施または応用することもできる。当業者は、本開示の精神から逸脱することなく、様々な修正および変更を行うことができる。
【0035】
一般的な定義及び技術用語
【0036】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は、別段の指定がない限り、参照によりその全体が組み込まれる。
【0037】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾するときは、本明細書に記載されている定義が優先される。
【0038】
別段の指定がない限り、全てのパーセンテージ、部数、比率等は全て重量によるものである。
【0039】
好ましい範囲、または好ましい上限数値と好ましい下限数値の形式である量、濃度または他の値またはパラメータが表わされるときは、その範囲が具体的に開示されているかどうかに関係なく、範囲の上限または好ましい数値と範囲の下限または好ましい数値との任意の対を組み合わせることによる任意の範囲が具体的に開示されていると理解するべきである。別段の指定がない限り、本明細書で言及される数値範囲は、範囲の端点、及び前記範囲内の全ての整数及び分数を含む。本発明の範囲は、範囲を定義するときに引用された特定の数値に限定されない。例えば、“1~8”は、1、2、3、4、5、6、7、8及び2つの任意の値からなる任意の副範囲、例えば、2~6、3~5を含む。また、例えば、C1~10アルキルは、炭素原子数1~10のアルキルを表し、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、及び、2つの任意の値からなる任意の副範囲、例えば、1~8、2~7、3~6を含む。また、例えば、C3~10シクロアルキルは炭素原子数3~10のアルキル基を含み、3、4、5、6、7、8、9、10、及び、2つの任意の値からなる任意の副範囲、例えば、3~8、4~7、5~6を含む。
【0040】
別段の説明がない限り、本明細書で言及されるパーセンテージ、部数、比率等は全て重量によるものである。
【0041】
技術用語“約”、“およそ”が数値変数と併用される場合、一般的に、前記変数の数値及び前記変数の全ての数値は、実験誤差内(例えば、平均値95%の信頼区間内)にあるか、指定数値の±10%内にあるか、より広い範囲内にある。
【0042】
技術用語“含む”、“備える”、“有する”、“包含する”または“関連する”及びその本明細書における他の変形形式は、包含形式または開放形式によるものであり、且つ言及されていない他の要素または方法工程を排除するものではない。当業者ならば、“含む”等の前記技術用語は、“…からなる”の含意を有することを理解するべきである。“…からなる”の表現は、記載されていない任意の要素、工程または成分を排除する。“基本的に…からなる”の表現は、範囲が指定された要素、工程または成分に限定され、加えて、保護を請求する主題の基本的かつ新規な特徴に実質に影響を与えない任意の要素、工程または成分に限定される。“含む”の表現は、“基本的に…からなる”及び“…からなる”の表現を含むことを理解するべきである。
【0043】
技術用語“…から選択される”は、その後に言及される組中の1以上の要素を含み、独立して選択することができ、さらに2以上の要素の組み合わせを含んでも良いことを指す。
【0044】
本明細書で使用される技術用語“任意”または“任意に”は、その後に記載される事件または状況が発生する可能性も、発生しない可能性もあり、前記記載は、前記事件が発生する状況及び前記事件が発生しない状況を含むことを指す。
【0045】
本明細書において、数値または範囲の端値が記載されているときは、開示される内容は、それが引用する特定の値または端値を含むと理解するべきである。
【0046】
本明細書で使用される技術用語“1種以上の”または“少なくとも1種の”は、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種またはそれ以上の種を含む。
【0047】
別段の説明がない限り、技術用語“その組み合わせ”及び“その混合物”は、前記各要素の複数の成分の混合物、例えば、2種、3種、4種から最大可能な多成分混合物を指す。
【0048】
技術用語“ハロ”または“ハロゲン”または“ハロゲン化”は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)原子を示し、好ましくは、フッ素、塩素、臭素原子を指すと理解するべきである。
【0049】
技術用語“アルキル”は、炭素原子及び水素原子からなる直鎖状または分岐状の飽及び脂肪炭化水素基であり、それは単結合により分子の残りの部分と接続される。“アルキル”は炭素原子数1~10であって良く、即ち、“C1~C10アルキル”である。例えば、C1~C4アルキル、C1~C3アルキル、C1~C2アルキル、C3アルキル、C4アルキル、C3~C6アルキルである。アルキルの非限定的な実例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、2-メチルブチル、1-メチルブチル、1-エチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、ネオペンチル、1,1-ジメチルプロピル、4-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-エチルブチル、1-エチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,1-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチルまたは1,2-ジメチルブチル、またはそれらの異性体が挙げられるが、これらに限定されない。“サブユニット”は、自由原子価電子を含む炭素原子から1つの水素原子を取り除くことによって得られ、分子の他の部分と接続する結合部位を2つ有する基を指す。例えば、“アルキレン”または“アルキリデン”は、飽及び直鎖状または分枝状の二価の炭化水素基を指す。“アルキレン”の実例は、メチレン(-CH2-)、エチレン(-C2H4-)、プロピレン(-C3H6-)、ブチレン(-C4H8-)、ペンチレン(-C5H10-)、ヘキシレン(-C6H12-)、1-メチルエチレン(-CH(CH3)CH2-)、2-メチルエチレン(-CH2CH(CH3)-)、メチルプロピレンまたはエチルプロピレン等を含むがこれらに限定されない。
【0050】
技術用語“シクロアルキル”は、本明細書において、単独または他の基と組み合わせて使用される場合、飽及び非芳香族単環式または多環式(二環式等)の炭化水素環(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル等の単環式、または、スピロ、縮合または架橋システム(ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、または、ビシクロ[5.2.0]ノニル、デカリン等)を含む二環式を指す。例えば、技術用語“C3~10シクロアルキル”は、3~10個の環炭素原子(3、4、5、6、7、8、9または10個等)を有するシクロアルキルを指す。
【0051】
本発明の化合物は、カチオンと本発明の化合物の塩を形成するアニオンの形態であってもよい。前記カチオンは、金属カチオン、アンモニウムイオン、第四級アミン基を含むがこれらに限定されない。
【0052】
技術用語“対イオン”は、本願の化合物と反対の電荷を有する物質を指し、それは、例えば、金属カチオンまたはアンモニウムイオン等の荷電イオンであって良く、例えば、第四級アミン基等の荷電基であっても良い。
【0053】
技術用語“鎖状エステル”は、直鎖状構造を有するエステル系化合物を指し、その実例は、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート等を含むがこれらに限定されない。
【0054】
技術用語“環状エステル”は、環状構造を有するエステル系化合物を指し、その実例は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、トランスまたはシス4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートを含むがこれらに限定されない。
【0055】
技術用語“電解液”は、化学電池、電解コンデンサ等で使用される媒体であり、それは化学電池及び電解コンデンサ等の通常の動作のために、イオンを提供することができる。
【0056】
技術用語“非水電解液”は、非水溶媒を用いた電解液を指す。
【0057】
技術用語“電解質塩”は、イオン塩を指し、それは電解質組成物の溶媒に少なくとも部分的に溶解し、電解質組成物の溶媒において少なくとも部分的にイオンに解離し、導電性電解質組成物を形成する。リチウム塩を電解質塩として使用することが好ましい。
【0058】
技術用語“アノード”は、電気化学電池の電極を指し、そこでは酸化が発生する。一次電池では、電池において、アノードは負に帯電した電極である。二次電池(即ち、再充電可能な電池)において、アノードは、放電中に酸化が発生し、充電中に還元が発生する電極である。
【0059】
技術用語“カソード”は、電気化学電池の電極を指し、そこでは還元が発生する。一次電池では、電池において、カソードは正に帯電した電極である。二次電池(即ち、再充電可能な電池)において、カソードは、放電中に還元が発生し、充電中に酸化が発生する電極である。
【0060】
技術用語“リチウムイオン電池”は、再充電可能な電池の類型を指し、リチウムイオンは放電中にアノードからカソードに移動し、充電中にカソードからアノードに移動する。
【0061】
技術用語“二次電池”は、電気化学反応が可逆的である電気化学電池を指し、使用寿命中に充電及び放電を繰り返して使用するために再充電または再充電可能な電池を指す。
【0062】
技術用語“化成”は、電池の製造過程において、電池が得られた後、小電流で電池を充放電する処理を指す。電池の化成処理は、電池の電気性能を安定させるのに貢献する。
【0063】
技術用語“エージング”は、電池の製造過程において、電池を組み立てて液体を充填し、第1の化学処理を行った後、一定温度で一定時間放置する操作を指す。電池のエージング処理は、SEI構造を再編成して、緩い多孔質膜を形成し、電池の性能をより安定させるのに貢献する。
【0064】
技術用語“SEI”または“SEI膜”は、電池の最初の充放電過程において、固液界面で電極材料と電解質とが反応して、電極材料の表面を覆うパッシベーション層を形成することを指す。
【0065】
技術用語“電気自動車”は、電気を動力源とする自動車を指し、電気自動車の実例は、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグイン式ハイブリッド電気自動車(PHEV)等を含むがこれらに限定されない。
【0066】
技術用語“電動二輪車”は、電気を動力源とする二輪車を指し、電動二輪車の実例は、E-バイク及びE-スクーター等を含むがこれらに限定されない。
【0067】
式(I)の化合物
【0068】
ある実施態様において、本発明は、以下を特徴とする、式(I)の化合物を提供する。
【0069】
【0070】
式中、Mは対カチオンであり、mは1~3の整数であり、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ独立して、酸素または硫黄から選択され、R1は、ハロゲン、ハロゲン化C1~10アルキル及びハロゲン化C3~10シクロアルキルから選択され、R2及びR3は、それぞれ独立して、ハロゲン、ハロゲン化C1~10アルキル及びハロゲン化C3~10シクロアルキルから選択され、または、R2及びR3は、それぞれ独立して、酸素または硫黄から選択され、R2及びR3はそれらと接続される原子と共に、共同で式(II)で示される部分を形成し、
【0071】
【0072】
式中、X5及びX6は、それぞれ独立して、酸素または硫黄から選択される。
【0073】
ある好ましい実施形態において、前記X1、X2、X3及びX4は酸素である。
【0074】
ある好ましい実施形態において、R1はハロゲンから選択される。ある好ましい実施形態において、R1は、フッ素、塩素及び臭素から選択される。ある特に好ましい実施形態において、R1はフッ素である。
【0075】
別の実施形態において、R2及びR3は、それぞれ独立して、ハロゲンから選択される。ある好ましい実施形態において、R2及びR3は、それぞれ独立して、フッ素、塩素及び臭素から選択される。ある特に好ましい実施形態において、R2及びR3は、それぞれ独立して、フッ素である。
【0076】
別の好ましい実施形態において、R2及びR3は、それぞれ独立して、酸素であり、R2及びR3はそれらと接続される原子と共に、共同で式(II)で示される部分を形成する。ある好ましい実施形態において、R2及びR3は、それぞれ独立して、酸素であり、R2及びR3はそれらと接続される原子と共に、共同で式(II)で示される部分を形成し、式中、X5及びX6は、それぞれ独立して、酸素である。
【0077】
ある具体的実施形態において、R1はフッ素であり、R2及びR3は、それぞれ独立して、フッ素である。別の具体的実施形態において、R1はフッ素であり、R2及びR3は、それぞれ独立して、酸素であり、R2及びR3はそれらと接続される原子と共に、共同で式(II)で示される部分を形成し、式中、X5及びX6は、それぞれ独立して、酸素である。
【0078】
対カチオンMm+の価数状態に応じて、mは1~3の整数に対応する。例えば、対カチオンMm+がリチウムイオン(Li+)である場合、mは1に対応し、Rは上記で限定される置換基である。また、例えば、対カチオンMm+がカルシウムイオン(Ca2+)である場合、mは2に対応する。また、例えば、対カチオンMm+が第四級アミン基である場合、mは1に対応する。
【0079】
ある好ましい実施形態において、前記化合物は、
【0080】
【0081】
【0082】
及びその組み合わせから選択され、式中、M及びmは以上で定義される通りであり、
【0083】
特に、Mm+は前掲の金属カチオンまたは第四級アミン基であり、mは1~3の整数である。
【0084】
ある好ましい実施形態において、前記化合物は、
【0085】
【0086】
(本明細書では、LiSF3C2O5とも示す)、
【0087】
【0088】
(本明細書では、LiSFC4O9とも示す)、
【0089】
【0090】
(本明細書では、TBASF3C2O5とも示す)、
【0091】
【0092】
(本明細書では、TBASFC4O9とも示す)及びその組み合わせから選択される。
【0093】
本明細書において、TBA+は第四級アミン基テトラブチルアミン、即ち、
【0094】
【0095】
を表す。したがって、
【0096】
【0097】
及び
【0098】
【0099】
は、
【0100】
【0101】
及び
【0102】
【0103】
と示すこともできる。
【0104】
対カチオン
【0105】
本明細書の化合物における対カチオンは、金属カチオン、アンモニウムイオン、第四級アミン基等を含むが、これらに限定されない。
【0106】
ある好ましい実施形態において、前記対カチオンは、金属カチオンまたは第四級アミン基である。
【0107】
ある好ましい実施形態において、前記対カチオンは金属カチオンである。金属カチオンは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土金属カチオン、遷移金属カチオン等を含んでも良い。ある好ましい実施形態において、前記式(I)の化合物が含む金属カチオンは、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土金属カチオンである。ある好ましい実施形態において、前記式(I)の化合物が含む金属カチオンは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及びその組み合わせから選択される。ある特に好ましい実施形態において、前記式(I)の化合物が含む金属カチオンは、リチウムイオンである。
【0108】
別の好ましい実施形態において、前記対カチオンは第四級アミン基である。ある好ましい実施形態において、前記式(I)の化合物が含む第四級アミン基は、テトラメチルアミン、テトラエチルアミン、テトラプロピルアミン、テトラブチルアミンから選択される。ある好ましい実施形態において、前記式(I)の化合物が含む第四級アミン基はテトラブチルアミンである。
【0109】
非水電解液用添加剤
【0110】
別の態様では、本発明は、前記式(I)で示される化合物を含むことを特徴とする、非水電解液用添加剤を提供する。
【0111】
式(I)の化合物を含む非水電解液
【0112】
別の態様では、本発明は、本発明の式(I)で示される化合物を含む非水電解液を提供する。本発明の非水電解液において、1種以上の本発明の式(I)で示される化合物を含んでも良く、即ち、式(I)で示される1種の化合物を用いることができ、1種以上の式(I)で示される化合物の混合物または組み合わせを用いることもできる。
【0113】
式(I)で示される化合物作を非水電解液中の添加剤とすることで、負極において還元成膜され、電極表面を不動態化し、リチウムイオンを自由に電極を出入りさせることができ、溶媒分子が通過できないため、これにより、溶媒分子の共挿入による電極の損傷を防止することができ、前記非水電解液を含む電池のサイクル効率及び可逆容量等の性能を向上させることができる。また、式(I)の化合物は相対的に高い還元電圧を有し、負極において優先的に還元成膜されることができ、前記非水電解液を含む電池の高温性能を向上させ、電池のサイクルの安定性を向上させることができる。
【0114】
ある実施形態において、非水電解液の合計重量に基づき、式(I)の化合物の非水電解液における含有量は約0.1~10重量%である。ある好ましい実施形態において、非水電解液の合計重量に基づき、式(I)の化合物の非水電解液における含有量は約0.2~6重量%である。ある好ましい実施形態において、非水電解液の合計重量に基づき、式(I)の化合物の非水電解液における含有量は約1重量%である。例えば、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.5重量%、約0.8重量%、約1重量%、約1.5重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約8.5重量%、約9重量%、約10重量%である。低すぎる式(I)の化合物の含有量では、前記非水電解液を含む電池のサイクル寿命を有効に改善することができない。一方、高すぎる式(I)の化合物の含有量では、前記非水電解液を含む電池を高温で動作させた場合に、過剰なガスが発生し、電池膨張の問題を引き起こす。
【0115】
非水溶媒
【0116】
ある実施形態において、非水電解液は非水溶媒を含んでも良い。使用できる非水溶媒の実例は、環状エステル、鎖状エステル、エーテル、アミド、リン酸エステル、スルホン、ニトリル、S=O結合を含む化合物等を含むが、これに限定されない。
【0117】
ある好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される非水溶媒は、環状エステル、鎖状エステル及びその組み合わせから選択される。
【0118】
環状カーボネート
【0119】
環状エステルは、環状カーボネート、ラクトンを含むが、これに限定されない。ある好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される非水溶媒は環状カーボネートである。
【0120】
環状カーボネートの実例は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート(VC)、1,2-ブテンカーボネート、2,3-ブテンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、トランスまたはシス4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(両者を“DFEC”と総称する)、4-エチニル-1,3-ジオキソラン-2-オン(EEC)等を含むが、これに限定されない。
【0121】
ある好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される非水溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ブテンカーボネート及びその組み合わせから選択される。ある好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される非水溶媒はエチレンカーボネートである。
【0122】
別の好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される非水溶媒は、炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合等の不飽和結合を含む環状カーボネートである。ある好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される非水溶媒は、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4-エチニル-1,3-ジオキソラン-2-オン及びその組み合わせから選択される。ある特に好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される非水溶媒はビニレンカーボネートである。
【0123】
別の好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される非水電解液は、フッ素原子を含む環状カーボネートである。ある好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される非水電解液は、フルオロエチレンカーボネート、トランスまたはシス4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン及びその組み合わせから選択される。
【0124】
適切な不飽和結合含有環状カーボネート非水溶媒の含有量は、前記非水電解液を含む電池の低温及び高温特性を向上させ、高温充電保存後の負荷特性を向上させるのに貢献する。高すぎる不飽和結合含有環状カーボネートの含有量は、電解液の粘度を上昇させ、電池中の電荷移動効率を低下させ、電池の効率を低下させる。低すぎる不飽和結合含有環状カーボネートの含有量は、電池の導電率を低下させ、電池の効率を低下させる。
【0125】
適切なフッ素原子含有環状カーボネートの非水溶媒の含有量は、前記非水電解液を含む電池の低温及び高温特性を向上させ、高温充電保存後の負荷特性を向上させるのに貢献する。高すぎるフッ素原子含有環状カーボネートの含有量は、電解液の粘度を上昇させ、電池中の電荷移動効率を低下させ、電池の効率を低下させる。低すぎるフッ素原子的環状カーボネートの含有量は、電池の導電率を低下させ、電池の効率を低下させる。
【0126】
ある些実施形態において、非水溶媒は単一環状カーボネート溶媒である。
【0127】
別の些実施形態において、非水溶媒は混合溶媒である。ある好ましい実施形態において、前記非水溶媒は、2種以上の環状カーボネート溶媒を含む。混合溶媒を用いる場合、前記非水電解液を含む電池の高温における電気化学性能をさらに向上させることができる。別の好ましい実施形態において、前記非水溶媒は、3種以上の環状カーボネート溶媒を含む。混合環状カーボネートの組み合わせは、環状カーボネートと不飽和結合含有環状カーボネート、環状カーボネートとフッ素原子含有環状カーボネート、不飽和結合含有環状カーボネートとフッ素原子含有環状カーボネートまたは環状カーボネートと不飽和結合含有環状カーボネートとフッ素原子含有環状カーボネート等を含むがこれに限定されず、ここで、環状カーボネート、不飽和結合含有環状カーボネート、フッ素原子含有環状カーボネートの選択は、前掲の通りである。
【0128】
鎖状カーボネート
【0129】
鎖状エステルは、鎖状カーボネート、鎖状スルホネート等を含むがこれに限定されない。ある好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される非水溶媒は鎖状カーボネートである。
【0130】
鎖状カーボネートの実例は、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート等を含むがこれに限定されない。
【0131】
ある好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される非水電解液は、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート及びその組み合わせから選択されることが好ましい。ある好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される非水電解液は、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びその組み合わせから選択されることが好ましい。
【0132】
前記非水電解液を含む電池について、適切な鎖状カーボネートの含有量は、好ましい電池性能の取得に貢献する。高すぎる鎖状カーボネートの含有量は、電池の導電率を低下させ、電池の効率を低下させる。低すぎる鎖状カーボネートの含有量は、電解液の粘度を向上させ、電池中の電荷移動効率を低下させ、電池の効率を低下させる。
【0133】
ある実施形態において、非水溶媒は単一鎖状カーボネート溶媒である。
【0134】
別のいくつかの実施形態において、非水溶媒は混合溶媒である。ある好ましい実施形態において、前記非水溶媒は、2種以上の鎖状カーボネート溶媒を含む。混合溶媒を用いる場合、前記非水電解液を含む電池の高温における電気化学性能をさらに向上させることができる。別の好ましい実施形態において、前記非水溶媒は、3種以上の鎖状カーボネート溶媒を含む。非水溶媒電解液の非水溶媒が鎖状カーボネートの混合物である場合、その選択は、前掲の通りである。
【0135】
その他の溶媒
【0136】
ラクトン
【0137】
ある実施形態において、非水溶媒としてのラクトンは、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン及びα-アンゲリカラクトン及びその組み合わせから選択される。
【0138】
エーテル
【0139】
ある実施形態において、非水溶媒としてのエーテルは、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン及び1,4-ジオキサン等の環状エーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン及びその組み合わせから選択される。
【0140】
アミド
【0141】
ある実施形態において、非水溶媒としてのアミドはジメチルホルムアミドである。
【0142】
リン酸エステル
【0143】
ある実施形態において、非水溶媒としてのリン酸エステルは、リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル及びその組み合わせから選択される。
【0144】
ニトリル
【0145】
ある実施形態において、非水溶媒としてのニトリルは、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリルまたはアジポニトリル、ピメロニトリル及びその組み合わせから選択される。
【0146】
S=O結合を含む化合物
【0147】
ある実施形態において、非水溶媒としてのS=O結合を含む化合物は、1,3-プロパンスルトン、1,3-ブタンスルトン及び1,4-ブタンスルトン等のスルトン化合物、亜硫酸エチレン、ヘキサヒドロベンゾ[1,3,2]ジオキソラン-2-オキシド(1,2-シクロヘキサンジオール環状亜硫酸塩ともいう)、5-ビニル-ヘキサヒドロ-1,3,2-ベンゾジオキシチオール-2-オキシド等の環状亜硫酸化合物、1,2-エチレングリコールジメタンスルホネート、1,2-プロパンジオールジメタンスルホネート、1,3-プロパンジオールジメタンスルホネート、1,4-ブタンジオールジメタンスルホネート、1,5-ペンタンジオールジメタンスルホネート、2-プロピニルメタンスルホネート及びメチレンメタンジスルホネート等のスルホネート化合物、ジビニルスルホン、1,2-ビス(ビニルスルホニル)エタン、ビス(2-ビニルスルホニルエチル)及びその組み合わせから選択される。
【0148】
適切な物性を達成するために、前記非水溶媒は混合して用いることができる。ここで、混合して用いられる非水溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、エーテル、アミド、リン酸エステル、スルホン、ニトリル、S=O結合を含む化合物から選択され、環状カーボネート、鎖状カーボネート、エーテル、アミド、リン酸エステル、スルホン、ニトリル及びS=O結合を含む化合物の選択は、前掲の通りである。
【0149】
ある好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される非水溶媒は環状カーボネートと鎖状カーボネートの組み合わせであり、ここで、環状カーボネート及び鎖状カーボネートの選択は、いずれも前掲の通りである。前記非水電解液を含む電池について、このような組み合わせは、高低温及び高温サイクル特性及び高温充電保存後の負荷特性を向上させることができる。
【0150】
前記非水電解液を含む電池について、適切な環状カーボネートと鎖状カーボネートの質量比は、好ましい電池性能の取得に貢献する。ある好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、環状カーボネート溶媒と鎖状カーボネート溶媒の質量比は3:7である。高すぎる環状カーボネート溶媒と鎖状カーボネート溶媒の質量比は、電解液の粘度を向上させ、前記非水電解液を含む電池における電荷移動効率を低下させ、電池の効率を低下させる。低すぎる環状カーボネート溶媒と鎖状カーボネート溶媒の質量比は、電池の導電率を低下させ、電池の効率を低下させる。
【0151】
ある具体的実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される非水溶媒はエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジエチルカーボネートである。ある好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される非水溶媒はエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジエチルカーボネートであり、その質量比は3:4:3~3:6:1である。ある好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される非水溶媒はエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジエチルカーボネートであり、その質量比は3:5:2である。
【0152】
電解質塩
【0153】
電解質塩は、イオン塩を指し、それは電解質組成物の溶媒に少なくとも部分的に溶解し、電解質組成物の溶媒において少なくとも部分的にイオンに解離し、導電性電解質組成物を形成する。
【0154】
ある実施形態において、本発明の非水電解液において、リチウム塩またはオニウム塩を電解質塩として用いる。ある好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、リチウム塩を電解質塩として用いる。
【0155】
リチウム塩
【0156】
リチウム塩は、カチオンとしてリチウムを有する塩を指す。電池の動作過程において、電解質リチウム塩のリチウムイオンは、電池の正負極間でイオンを輸送する作用を果たし、電池性能の発揮に対して重要である。また、電池中の電解質リチウム塩の種類、純度、含有量及びリチウム塩と他の物質の組み合わせは、電池の容量、充放電性能、寿命及び安全性等に対して異なる程度で影響し得る。
【0157】
本発明の非水電解液において、使用されるリチウム塩は、第1のリチウム塩及び第2のリチウム塩を含み、ここで、第1のリチウム塩は無機リチウム塩であり、第2のリチウム塩は有機基を含むリチウム塩である。
【0158】
第1のリチウム塩
【0159】
ある実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される第1のリチウム塩は、LiPF6、LiBF4、LiBCl4、LiAsF6、LiClO4、LiAlO2、LiCl、LiI、LiSbF6及びその組み合わせから選択される。ある好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される第1のリチウム塩は、LiPF6、LiBF4及びその組み合わせから選択される。
【0160】
第1のリチウム塩は、一般的に、好ましいイオン化能力を有し、溶媒中で容易にイオン化され、大量の遊離リチウムイオンを得ることができるので、適切な第1のリチウム塩は、非水電解液に対して十分な含有量のリチウムイオンを提供し、非水電解液の導電率を向上させるのに貢献する。ある実施形態において、第1のリチウム塩の含有量は約8~16重量%である。ある好ましい実施形態において、第1のリチウム塩の含有量は約10~15重量%である。ある好ましい実施形態において、第1のリチウム塩の含有量は約13.5~14.5重量%である。例えば、約8重量%、約8.5重量%、約9重量%、約9.5重量%、約10重量%、約10.5重量%、約11重量%、約11.5重量%、約12重量%、約12.5重量%、約13重量%、約13.5重量%、約13.9重量%、約14重量%、14.1重量%、約14.5重量%、約15重量%、約15.5重量%、約16重量%である。多すぎる第1のリチウム塩の含有量は、非水電解液の粘度を向上させ、前記非水電解液を含む電池中の電荷移動効率を低下させ、これにより電池の効率を低下させる。
【0161】
第2のリチウム塩
【0162】
ある実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される第2のリチウム塩は、P=O構造を含みリチウム塩、-S(=O)2-構造を含むリチウム塩、アニオンとしてシュウ酸ホウ素錯体を含むリチウム塩及びその組み合わせから選択される。
【0163】
P=O構造を含むリチウム塩は、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、モノフルオロリン酸リチウム(Li2PO3F)等を含むがこれに限定されない。
【0164】
-S(=O)2-構造を含むリチウム塩は、-S(=O)2O構造を含むリチウム塩、-S(=O)2-N--S(=O)2-構造を含むリチウム塩等を含むがこれに限定されない。ある好ましい実施形態において、-S(=O)2-構造を含むリチウム塩は、-S(=O)2-N--S(=O)2-構造を含むリチウム塩である。ある好ましい実施形態において、-S(=O)2-N--S(=O)2-構造を含むリチウム塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)等から選択される。
【0165】
アニオンとしてシュウ酸ホウ素錯体を含むリチウム塩は、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiODFP)、リチウムジフルオロシュウ酸ホウ酸塩(LiODFB)、リチウムホウ酸塩(LiBOB)等を含むがこれに限定されない。
【0166】
ある好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される第2のリチウム塩は、LiPO2F2、Li2PO3F、LiODFB、LiODFP、LiBOB、LiTFSI、LiFSI及びその組み合わせから選択される。ある好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、使用される第2のリチウム塩は、LiPO2F2、LiODFB、LiODFP、LiBOB、LiTFSI、LiFSI及びその組み合わせから選択される。
【0167】
適切な第2のリチウム塩は、少量のリチウムイオンを提供すると同時に、電極成膜にも関与することができ、前記非水電解液を含む電池の性能を向上させるのに貢献することができる。ある実施形態において、第2のリチウム塩の含有量は約0.5~5重量%であり、ある好ましい実施形態において、第2のリチウム塩の含有量は約1.5~4重量%である。ある好ましい実施形態において、第2のリチウム塩の含有量は約1.9~3.6重量%である。例えば、約0.5重量%、約0.8重量%、約1重量%、約1.5重量%、約1.9重量%、約2重量%、約2.3重量%、約2.5重量%、約2.8重量%、約3重量%、約3.3重量%、約3.5重量%、約3.6重量%、約4重量%、約4.5重量%、約5重量%である。高すぎる第2のリチウム塩の含有量は、電解液の粘度を上昇させ、電池中の電荷移動効率を低下させ、電池の効率を低下させる。低すぎる第2のリチウム塩の含有量は、前記非水電解液を含む電池の性能を向上させる作用がない。ある実施形態において、本発明の非水電解液において、電解質リチウム塩として、第1のリチウム塩と第2のリチウム塩の組み合わせを用いる。このような組み合わせは、電池負極の熱安定性を向上させ、リチウムイオンの透過性を向上させるのに貢献する。
【0168】
適切な第1のリチウム塩及び第2のリチウム塩の合計含有量は、リチウム塩と他の添加剤の相互作用に貢献し、電気抵抗を低減し、ガスの発生を抑制する効果を実現すると同時に、電極成膜の改善に貢献する。ある実施形態において、本発明の非水電解液において、第1のリチウム塩及び第2のリチウム塩の合計含有量は約10~20重量%である。ある好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、第1のリチウム塩及び第2のリチウム塩の合計含有量は約11~17.6重量%である。ある好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、第1のリチウム塩及び第2のリチウム塩の合計含有量は約15.4~17.5重量%である。例えば、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約12.5重量%、約13重量%、約13.5重量%、約14重量%、約15重量%、約15.4重量%、約15.5重量%、約16重量%、約16.3重量%、約16.5重量%、約17重量%、約17.5重量%、約17.6重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%である。高すぎる第1のリチウム塩及び第2のリチウム塩の合計含有量は、電解液の粘度を上昇させ、電解液中の電荷移動効率を低下させ、導電率を低下させる。低すぎる第1のリチウム塩及び第2のリチウム塩の合計含有量は、電解液導電率を向上させる作用を実現することができない。
【0169】
その他の添加剤
【0170】
本発明の非水電解液においては、さらに、直鎖状カーボネート、環状カーボネート、環状スルホネートまたはその組み合わせから選択される他の添加剤を任意に含んでも良い。
【0171】
直鎖状カーボネート及び環状カーボネートの選択は、前掲の通りであり、ここで、直鎖状カーボネート及び環状カーボネートは、溶媒以外の他のカーボネートから選択される。
【0172】
環状スルホネートの実例は、1,3-プロパンスルトン(PS)、硫酸ビニル(DTD)等を含むがこれに限定されない。
【0173】
ある実施形態において、本発明の非水電解液において、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、1,3-プロパンスルトン、硫酸ビニル、プロピレンカーボネートから選択される1種以上の添加剤をさらに含んでも良い。
【0174】
ある実施形態において、本発明の非水電解液において、前記他の添加剤の含有量は約0~10重量%である。ある好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、前記他の添加剤の含有量は約2~7重量%である。あるさらに好ましい実施形態において、本発明の非水電解液において、前記他の添加剤の含有量は約4~6重量%である。例えば、約0重量%、約1重量%、約2重量%、約2.5重量%、約3重量%、約3.5重量%、約4重量%、約4.5重量%、約5重量%、約5.5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%である。適切な他の添加剤の含有量は、電池の性能の向上、例えば、電池の高温安定性、低温安定性及び成膜安定性等の向上に貢献する。例えば、本発明の非水電解液に硫酸ビニルを加えると、前記非水電解液を含む電池の低温性能を有効に改善すると同時に、高温サイクル性能及び高温保存性能に貢献する。
【0175】
蓄電デバイス
【0176】
別の態様では、本発明は、本発明の式(I)で示される化合物、または本発明の非水電解液を含む、蓄電デバイスを提供する。
【0177】
ある好ましい実施形態において、前記蓄電デバイスは、正極と、負極と、電解質塩が非水溶媒に溶解された非水電解質とを含む二次電池である。本発明において、本発明の非水電解液以外の正極、負極等の構成要素は、特に制限なく使用することができる。
【0178】
正極材料
【0179】
正極的活性物質は、コバルト、マンガン及びニッケルから選択される1種以上と、与リチウムからなる複合金属酸化物を含んでも良い。ある実施形態において、前記正極活性物質は、単一成分である。別の実施形態において、前記正極活性物質は、前記複合金属酸化物の混合物である。
【0180】
ある好ましい実施形態において、本発明に使用されるリチウム複合金属酸化物は、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiCo1-xNixO2(0.01<x<1)、LiNi1~3Co1~3Mn1~3O2、LiNi0.65Co0.15Mn0.2O2、LiNi0.55Co0.15Mn0.3O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.55Co0.1Mn0.35O2、LiNi1/2Mn3/2O4、LiCo0.98Mg0.02O2及びその組み合わせから選択される。ある好ましい実施形態において、本発明で使用されるリチウム複合金属酸化物は、LiNi0.65Co0.15Mn0.2O2、LiNi0.55Co0.15Mn0.3O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2またはLiNi0.55Co0.1Mn0.35O2及びその組み合わせから選択される。
【0181】
また、過充電時の安全性またはサイクル特性を向上させ、または4.3V以上の充電電位で使用できるようにするために、リチウム複合金属酸化物の一部は他の元素で置換されていても良い。例えば、コバルト、マンガン、ニッケルの一部をSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、Cu、Bi、Mo、La等の少なくとも1種以上の元素で置換しても良く、またはOの一部をSまたはFで置換しても良く、またはこれらの他の元素を含む化合物をカバーしても良い。
【0182】
ここで、満充電状態において、正極の充電電位は、Li換算で4.3V以上のときに使用できるリチウム複合金属酸化物が好ましく、例えば、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2である。固溶体は、4.4V以上で使用できるリチウム複合金属酸化物がより好ましく、例えば、LiCo1-xMxO2(ここで、MはSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、Cuから選択される少なくとも1種以上の元素であり、0.001≦x≦0.05である)、LiNi1~3Mn1~3Co1~3O2、LiNi0.65Co0.15Mn0.2O2、LiNi0.55Co0.15Mn0.3O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2またはLiNi0.55Co0.1Mn0.35O2、LiNi1/2Mn3/2O4、Li2MnO3とLiMO2(MはCo、Ni、Mn、Fe等の遷移金属)がより好ましい。高い充電電圧で動作するリチウム複合金属酸化物を用いると、その充電時に電解液と反応して、特に高温での電極の電気化学特性が低下しやすいが、本発明に記載の二次電池は、これらの電気化学特性の低下を抑制することができる。特に、Mnを含む正極の場合、正極からのMnイオンの溶出により電池の抵抗が上昇しやすい傾向にあるため、広い温度範囲で使用すると、電極の電気化学的特性が低下しやすい傾向にあるが、本発明に記載の二次電池では、電池の正極材料として前記材料を用いることにより、これらの電気化学特性の低下を抑制することができる。
【0183】
正極は、以下の例示的な方法により製造することができる。前記正極活性物質とアセチレンブラック、カーボンブラック等の導電剤及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体等のバインダーを混合し、そこに1-メチル-2-ピロリドン等の高沸点溶媒を加えて混練して正極合剤を調製した後、前記正極合剤を、集電体のアルミニウム箔またはステンレス製の鋼帯に塗布、乾燥、プレス成形した後、約50~250oCの温度で、真空下で約2時間熱処理する。
【0184】
負極材料
【0185】
負極の活性物質は、リチウム金属またはリチウム合金中のリチウムをインターカレートまたはデインターカレートできる炭素材料であって良く、それは易黒鉛化炭素、(002)面の結晶面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化炭素、(002)面の結晶面間隔が0.34nm以下の黒鉛等を含むがこれに限定されない。また、負極活性物質は、スズ(単体)、スズ化合物、ケイ素(単体)、ケイ素化合物、Li4Ti5O12等のチタン酸リチウム化合物及びその組み合わせであっても良い。
【0186】
ある好ましい実施形態において、本発明の蓄電デバイス使用される負極活性物質は、ケイ素元素、ケイ素化合物、人造黒鉛、天然黒鉛またはケイ素酸素複合人造黒鉛から選択される。ある好ましい実施形態において、本発明の蓄電デバイス使用される負極活性物質は、人造黒鉛、天然黒鉛またはケイ素酸素複合人造黒鉛から選択される。
【0187】
負極は、以下の方法により製造することができる。前記正極の製造と同じ導電剤、バインダー、高沸点溶媒を用いて混練して負極合剤を調製した後、前記負極合剤を、集電体の銅箔等に塗布、乾燥、プレス成形した後、約50~250oC左右の温度で、真空下で約2時間熱処理する。
【0188】
二次電池の製造
【0189】
本発明の二次電池は、以下の例示的な方法により製造することができる。
【0190】
正負極シートとポリエチレン製セパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータの順に積層し、そして負極で終了させ、ベアセルを取得する。ベアセルをホットプレスし、セパレータ表面のポリフッ化ビニリデン(PVDF)が各磁極片を結合する。ホットプレス後のベアセルをタブで溶接した後、打ち抜いたアルミプラスチックフィルムに入れ、ホットメルト封止することで、注液口付きの封止済電池を取得する。封止済電池を真空炉で十分に焼成、乾燥させた後、注液口から一定量の電解液を注入し、注液口を真空環境下で封止して二次電池を取得する。
【0191】
二次電池の性能
【0192】
本発明の二次電池は、以下の方法により試験することができる。
【0193】
(1)二次電池の初期放電容量試験
【0194】
作製した電池を治具に載置し、前記電池を25oCで第1の定電流で4.3Vまで充電した後、第2の定電流で2.8Vまで放電する。任意に、前記操作を繰り返して第2のサイクルを行い、電池を安定させる。任意に、第3の充放電サイクルを行い、ここでは、第3の定電流で4.3Vまで充電した後、4.3Vの定電圧で電流値が0.05C電流に達するまで充電を実施し、第5の定電流で2.8Vまで放電する。任意に、第4の充放電サイクルを行い、ここでは、第6の定電流で4.3Vまで充電した後、4.3Vの定電圧で電流値が0.05Cに達するまで充電を実施し、第7の定電流で2.8Vまで放電する。前記操作の後、最終的に初期放電容量を得ることができる。ここで、第1から第7の定電流は、1C、5C、0.1C、0.2C等であって良い。1Cは、電池を基準容量で1時間放電する電流値を表し、5Cは、前記電流値の5倍を表し、0.1C及び0.2Cは、それぞれ前記電流値の1/10及び1/5を表す。
【0195】
(2)二次電池サイクル試験
【0196】
指定された電位範囲内で1Cの電流で充放電を繰り返し、各サイクルの容量を記録し、電池容量が最初のサイクルの容量の80%に達したときに試験を終了する。
【0197】
(3)二次電池直流抵抗(DCR)試験
【0198】
指定温度において、電池を1Cの電流で50%SOC(電池の残存容量を反映する荷電状態)まで放電し、電流を4Cに増加させ、30秒間維持し、更新された安定電圧と元のプラットフォーム電圧の差を検出し、その数値と3C電流値の比が、即ち、電池の直流抵抗である。サイクル終了後のDCRとサイクル開始時のDCRを比較して、DCRの上昇率を取得する。
【0199】
(4)二次電池が生成するガスの体積変化試験
【0200】
二次電池を細い紐で固定した後、25℃の水中に完全に浸漬し、浸漬前後の重量差を記録し、25℃の水の密度で体積差を換算して取得する。
【0201】
(5)二次電池の60oCにおける容量回復率試験
【0202】
充電後の二次電池を60oCの環境に置き、60日間放置して、60日後の可逆容量を測定し、60日前と比較した容量回復率を取得する。
【0203】
ある実施形態において、本発明の二次電池の初期直流抵抗(DCR)は約1.10~1.35mオームである。ある好ましい実施形態において、本発明の二次電池の初期直流抵抗(DCR)は、約1.12~1.35mオームが好ましい。例えば、約1~10mオーム、約1.12mオーム、約1.13mオーム、約1.14mオーム、約1.15mオーム、約1.17mオーム、約1.2mオーム、約1.21mオーム、約1.22mオーム、約1.23mオーム、約1.24mオーム、約1.25mオーム、約1.26mオーム、約1.27mオーム、約1.28mオーム、約1.29mオーム、約1~30mオーム、約1~31mオーム約1~32mオーム、約1~33mオーム、約1~34mオーム、約1~35mオーム、約1~36mオーム、約1~37mオーム、約1~38mオーム、約1~39mオーム、約1.40mオームである。
【0204】
ある実施形態において、前記4つの充放電サイクルの後、本発明の二次電池の直流抵抗の上昇率は約15%~約35%である。ある好ましい実施形態において、前記4つの充放電サイクルの後、本発明の二次電池の直流抵抗の上昇率は約20%~約29%である。例えば、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%である。
【0205】
ある実施形態において、前記4つの充放電サイクルの後、本発明の二次電池が生成するガスの体積の上昇率は約3%~約20%である。ある好ましい実施形態において、前記4つの充放電サイクルの後、本発明の二次電池が生成するガスの体積の上昇率は約3%~約11%である。例えば、は約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%である。
【0206】
ある実施形態において、本発明の二次電池を60℃の環境で60日放置した後、二次電池の直流抵抗の上昇率は約10%~約30%である。ある好ましい実施形態において、本発明の二次電池を60℃の環境で60日放置した後、二次電池の直流抵抗の上昇率は約15%~約22%である。例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約21%、約22%、約23%、約25%、約30%である。
【0207】
ある実施形態において、本発明の二次電池を60℃の環境で60日放置した後、二次電池の容量回復率は約90%~約98%である。ある好ましい実施形態において、本発明の二次電池を60℃の環境で60日放置した後、二次電池の容量回復率は約92%~約98%である。例えば、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%である。
【0208】
ある実施形態において、本発明の二次電池を60℃の環境で60日放置した後、二次電池が生成するガスの体積の上昇率は約1%~約50%である。ある好ましい実施形態において、本発明の二次電池を60℃の環境で60日放置した後、二次電池が生成するガスの体積の上昇率は約1%~約10%である。例えば、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%である。
【0209】
ある実施形態において、将本発明の二次電池を-30oCの環境に放置し、前記4つの充放電サイクルの後、本発明の二次電池の直流抵抗の上昇率は約10%である。
【0210】
ある実施形態において、本発明の二次電池が80%SOHに達するとき、そのサイクル数は約1900~2800である。ある好ましい実施形態において、本発明の二次電池が80%SOHに達するとき、そのサイクル数は約1995~2501である。例えば、約1995、約2004、約2125、約2131、約2198、約2209、約2212、約2293、約2501である。
【0211】
電動デバイス
【0212】
また、本発明は、本発明の蓄電デバイスを含むことを特徴とする、電動デバイスを提供する。
ある好ましい実施形態において、前記電動デバイスは、電気自動車、電動二輪車及び電力貯蔵システムから選択される。
【0213】
ある好ましい実施形態において、前記電動デバイスは電気自動車であり、前記電気自動車は、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグイン式ハイブリッド電気自動車(PHEV)から選択されることが好ましい。
【0214】
別の態様では、本発明は、式(I)の化合物を非水電解液添加剤に用いる用途に関する。
【0215】
式(I)の化合物を非水溶媒電解液の添加剤とすることで、本発明の二次電池の負極成膜を改善することができ、本発明の二次電池のサイクルの安定性を向上させることができる。二次電池は、複数回の充放電後、二次電池の直流抵抗及び生成されるガスの体積の上昇率はいずれも相対的に低くなる。また、二次電池の非水溶媒電解液に式(I)の化合物を加えた後、二次電池の高温性能、例えば、高温安定性等も改善される。ここで、本発明の二次電池を60℃の環境で60日放置した後、二次電池の直流抵抗の上昇率及び生成されるガスの体積の上昇率はわずかにしか変化せず、容量回復率は92%以上に達した。また、二次電池の非水溶媒電解液に式(I)の化合物を加えた後、二次電池の低温性能も同様に改善された。
【実施例】
【0216】
以下の実施例は、本発明を限定するものではなく、本発明の技術的解決策を明確に説明するための単なる例であることに留意されたい。当業者であれば、前記説明に基づいて、他の異なる形態の変更または修正を行うこともでき、すべての実施方法をここに列挙することは必要ではなく、不可能でもあり、変更または修正は、依然として本発明の保護範囲内にある。
【0217】
別段の説明がない限り、本明細書で使用される器具および試薬材料は市販されている。
【0218】
器具
【0219】
温度ボックス:Giant Force Instrument Enterprise Co., Ltd.より購入 (EEPCT-408-40-SSP-AR)
【0220】
充放電機:盛弘より購入(BTS0510C80-HP)
【0221】
材料
【0222】
本明細書で使用される試薬材料、例えば、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びLiPF6等は、Shanghai SinopharmまたはSigma-Aldrich Companyより購入。
【0223】
比較例3から5では、従来技術の化合物LiSC4O8、LiSF2C2O4またはその組み合わせが二次電池の添加剤としてそれぞれ用いられ、ここで、LiSC4O8の構造は、
【0224】
【0225】
【0226】
である。
【0227】
化合物の構造は、核磁気共鳴(19F NMR)及び液体クロマトグラフィー質量分析(HPLC-MS) によって判断される。
【0228】
19F NMRは、Bruker 500 MHz AVANCE III核磁気共鳴分光計で測定し、測定溶媒は重水素化クロロホルム(CDCl3)であり、内部標準はクロロホルム(CDF3)であり、化学シフト(δ)は10-6(ppm)を単位として与えられる。
【0229】
液体クロマトグラフィーには、イオンクロマトグラフィーを使用した。クロマトカラム:Metrosep ASUPP7-250(4.0mm内径×250mm)。検出器は、メトロームモデル819コンダクタンス検出器を使用した。イオンクロマトグラフィーの測定条件は次の通りである。
【0230】
クロマトカラム温度:45oC;流速:0.7mL/min;溶離液:10 mMの炭酸ナトリウム(Na2CO3)溶液、35%体積濃度のアセトニトリル;サンプリング体積:100μL;導電率検出器の測定範囲及びフルスケール:100 μS/s。
【0231】
質量分析は、Agilent 6410 三連四重極質量分析計を用いて測定される。質量分析測定条件は次の通りである。
【0232】
質量分析類型は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)である。ネブライザ圧力:45 psig;乾燥ガス流速:12L/min;乾燥ガス温度:350oC;キャピラリ電圧:1750V;フラグメント電圧:120V;衝突エネルギー:30V。
【0233】
合成実施例
化合物
【0234】
【0235】
(本明細書では、LiSF3C2O5とも示す)の合成
【0236】
SO2F2と無水シュウ酸を混合し、前記混合物にP2O5を加えて無水物に脱水し、カラムクロマトグラフィーにより得られた混合物を分離して、フルオロ硫酸シュウ酸無水物を取得し、それをLiFと混合し、攪拌して塩を形成して、前記化合物を取得する。
【0237】
MS m/z(ESI):173[M]-;
【0238】
19F NMR(471MHz,CDCl3)δ:65。
【0239】
化合物
【0240】
【0241】
(本明細書では、LiSFC4O9とも示す)の合成
【0242】
SO3と無水シュウ酸を混合し、前記混合物にP2O5を加えて無水物に脱水し、カラムクロマトグラフィーにより得られた混合物を分離して、フルオロ硫酸シュウ酸無水物を取得し、それをLiFと混合し、攪拌して塩を形成して、前記化合物を取得する。
【0243】
MS m/z(ESI):207[M]-;
【0244】
19F NMR(471MHz,CDCl3)δ:72。
化合物
【0245】
【0246】
(本明細書では、TBASF3C2O5とも示す)は、化合物
【0247】
【0248】
と類似の方法で合成される。
【0249】
MSm/z (ESI):173[M]-;
【0250】
19F NMR (471mHz,CDCl3)δ:65。
【0251】
化合物
【0252】
【0253】
(本明細書では、TBASFC4O9とも示す)は、化合物
【0254】
【0255】
MSm/z(ESI):207[M]-;
【0256】
19F NMR(471mHz,CDCl3)δ:72。
【0257】
製造実施例
【0258】
二次電池正極の製造
【0259】
本発明の二次電池の正極は、以下の方法により製造することができる。
【0260】
正極活性物質、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)を無水N-メチルピロリドン溶媒に加えて混合し、スラリーを製造する。ここで、正極活性物質、アセチレンブラックとポリフッ化ビニリデン(PVDF)の質量比は90:5:5である。得られたスラリーを導電助剤でプレコートされたアルミニウム箔の片面に塗布し、ここで、アルミニウム箔の厚さは15μmである。アルミニウム箔を乾燥処理した後、ロールプレス機によりアルミニウム箔の厚さを80μmまで圧延する。次いで、取得した電極片を、活物質層が幅30mm×長さ40mm、未塗工部が幅5mm×長さ9mmの形状に切断する。得られた製品が、即ち、二次電池の正極片である。
【0261】
二次電池負極の製造
【0262】
本発明の二次電池の負極は、以下の方法により製造することができる。
【0263】
負極活性物質、質量分数が1%のカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性分散液及び質量分数が50%のスチレンブタジエンゴムの水性分散液を混合し、スラリーを製造する。負極活性物質、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性分散液及びスチレンブタジエンゴムの水性分散液の質量比は98:100:2である。得られたスラリーを厚さが10μmの銅箔の一面に塗布する。銅箔を乾燥処理した後、ロールプレス機で圧延し、得られた電極片を、活物質層が幅30mm×長さ40mm、未塗工部が幅5mm×長さ9mmの形状に切断する。得られた製品が、即ち、二次電池の負極片である。
【0264】
二次電池電解液の製造
【0265】
本発明の二次電池の電解液は、以下の方法により製造することができる。
【0266】
乾燥したアルゴンガスの雰囲気において、異なる非水溶媒を混合し、次いで、十分に乾燥したリチウム塩及び添加剤を混合溶媒に添加し、他の添加剤を添加して非水電解液を得る。
【0267】
二次電池の製造
【0268】
本発明の二次電池は、以下の方法により製造することができる。
【0269】
正極極片、負極極片及びポリエチレン製セパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータの順に積層し、そして負極で終了させ、ベアセルを取得する。ベアセルをホットプレスし、セパレータ表面のPVDFが各磁極片を結合する。ホットプレス後のベアセルををタブで溶接した後、打ち抜いたアルミプラスチックフィルムに入れ、ホットメルト封止することで、注液口付きの封止済電池を取得する。封止済電池を真空炉で十分に焼成、乾燥させた後、注液口から一定量の電解液を注入し、注液口を真空環境下で封止して、本発明の二次電池を取得する。
【0270】
前記方法により、実施例1~9及び比較例1~3の二次電池を製造する。
【0271】
実施例1
【0272】
乾燥したアルゴンガスの雰囲気において、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を3:5:2の質量比で混合する。充分乾燥した第1のリチウム塩LiPF6を添加し、その非水電解液における含有量を14.5重量%とする。非水電解液の合計重量に基づき、第2のリチウム塩として、1.5%のLiPF2O2(ジフルオロリン酸リチウム)及び1%のLiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩)を、4%のVC(ビニレンカーボネート)、0.5%のPS(1,3-プロパンスルトン)及び1%のLiSF3C2O5の成分を添加し、非水電解液を取得する。前記方法により二次電池を製造し、ここで、正極活性物質はLiNi0.65Co0.15Mn0.2O2であり、負極活性物質は人造黒鉛である。
【0273】
実施例2
【0274】
乾燥したアルゴンガスの雰囲気において、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を3:5:2の質量比で混合する。充分乾燥した第1のリチウム塩LiPF6を添加し、その非水電解液における含有量を14.5重量%とする。非水電解液の合計重量に基づき、第2のリチウム塩として、1.5%のLiPF2O2(ジフルオロリン酸リチウム)及び1%のLiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩)を、4%のVC(ビニレンカーボネート)、0.5%のPS(1,3-プロパンスルトン)、0.2%のLiSF3C2O5及び0.8%のTBASF3C2O5の成分を添加し、非水電解液を取得する。前記方法により二次電池を製造し、ここで、正極活性物質はLiNi0.65Co0.15Mn0.2O2であり、負極活性物質は人造黒鉛である。
【0275】
実施例3
【0276】
乾燥したアルゴンガスの雰囲気において、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を3:5:2の質量比で混合する。充分乾燥した第1のリチウム塩LiPF6を添加し、その非水電解液における含有量は13.0重量%である。非水電解液の合計重量に基づき、第2のリチウム塩として、1.5%のLiPF2O2(ジフルオロリン酸リチウム)及び1%のLiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩)を、4%のVC(ビニレンカーボネート)、0.5%のPS(1,3-プロパンスルトン)及び1%のLiSFC4O9の成分を添加し、非水電解液を取得する。前記方法により二次電池を製造し、ここで、正極活性物質はLiNi0.65Co0.15Mn0.2O2であり、負極活性物質は人造黒鉛である。
【0277】
実施例4
【0278】
乾燥したアルゴンガスの雰囲気において、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を3:5:2の質量比で混合する。充分乾燥した第1のリチウム塩LiPF6を添加し、その非水電解液における含有量は13.0重量%である。非水電解液の合計重量に基づき、第2のリチウム塩として、1.5%のLiPF2O2(ジフルオロリン酸リチウム)及び1%のLiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩)を、4%のVC(ビニレンカーボネート)、0.5%のPS(1,3-プロパンスルトン)、0.2%のLiSFC4O9及び0.8%のTBASFC4O9の成分を添加し、非水電解液を取得する。前記方法により二次電池を製造し、ここで、正極活性物質はLiNi0.65Co0.15Mn0.2O2であり、負極活性物質は人造黒鉛である。
【0279】
実施例5
【0280】
乾燥したアルゴンガスの雰囲気において、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を3:5:2の質量比で混合する。充分乾燥した第1のリチウム塩LiPF6を添加し、その非水電解液における含有量は13.0重量%である。非水電解液の合計重量に基づき、第2のリチウム塩として、1%のLiPF2O2(ジフルオロリン酸リチウム)、1%のLiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩)及び1%のLiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)を、4%のDTD(硫酸ビニル)、0.5%のVC(ビニレンカーボネート)、1%のPS(1,3-プロパンスルトン)、0.8%のLiSF3C2O5及び0.2%のLiSFC4O9の成分を添加し、非水電解液を取得する。前記方法により二次電池を製造し、ここで、正極活性物質はLiNi0.55Co0.15Mn0.3O2であり、負極活性物質は人造黒鉛である。
【0281】
実施例6
【0282】
乾燥したアルゴンガスの雰囲気において、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を3:6:1の質量比で混合する。充分乾燥した第1のリチウム塩LiPF6を添加し、その非水電解液における含有量を13.5重量%とする。非水電解液の合計重量に基づき、第2のリチウム塩として、1%のLiPF2O2(ジフルオロリン酸リチウム)、0.5%のLiODFP(ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム)及び0.4%のLiBF4を、0.5%のDTD(硫酸ビニル)、4%のPC(プロピレンカーボネート)、0.5%のVC(ビニレンカーボネート)、1%のPS(1,3-プロパンスルトン)、0.5%のLiSF3C2O5及び0.5%のLiSFC4O9の成分を添加し、ここで、正極活性物質はLiNi0.55Co0.15Mn0.3O2であり、負極活性物質は天然黒鉛である。
【0283】
実施例7
【0284】
乾燥したアルゴンガスの雰囲気において、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を3:5:2の質量比で混合する。充分乾燥した第1のリチウム塩LiPF6を添加し、その非水電解液における含有量は14重量%である。非水電解液の合計重量に基づき、第2のリチウム塩として、1%のLiPF2O2(ジフルオロリン酸リチウム)及び0.5%のLiODFB(リチウムジフルオロシュウ酸ホウ酸塩)を、3%のFEC(フルオロエチレンカーボネート)、1%のPS(1,3-プロパンスルトン)、3%のLiSF3C2O5及び3%のLiSFC4O9の成分を添加し、ここで、正極活性物質はLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2であり、負極活性物質はケイ素酸素複合人造黒鉛である。
【0285】
実施例8
【0286】
乾燥したアルゴンガスの雰囲気において、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を3:4:3の質量比で混合する。充分乾燥した第1のリチウム塩LiPF6を添加し、その非水電解液における含有量は14重量%である。非水電解液の合計重量に基づき、第2のリチウム塩として、1%のLiPF2O2(ジフルオロリン酸リチウム)、1.5%のLiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩)、0.1%のLiBF4及び1%のLiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)を、4%のDMC(ジメチルカーボネート)、0.5%のVC(ビニレンカーボネート)、1.5%のPS(1,3-プロパンスルトン)、0.5%のLiSF3C2O5及び0.5%のLiSFC4O9、ここで、正極活性物質はLiNi0.65Co0.15Mn0.3O2であり、負極活性物質は天然黒鉛である。
【0287】
実施例9
【0288】
乾燥したアルゴンガスの雰囲気において、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を3:5:2の質量比で混合する。充分乾燥した第1のリチウム塩LiPF6を添加し、その非水電解液における含有量は10重量%である。非水電解液の合計重量に基づき、第2のリチウム塩として、1%のLiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩)及び1%のLiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、2%のVC(ビニレンカーボネート)、1%のPS(1,3-プロパンスルトン)、2%のLiSF3C2O5及び2%のLiSFC4O9の成分を添加し、ここで、正極活性物質はLiNi0.55Co0.1Mn0.35O2であり、負極活性物質は人造黒鉛である。
【0289】
比較例1
【0290】
乾燥したアルゴンガスの雰囲気において、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を3:5:2の質量比で混合する。充分乾燥した第1のリチウム塩LiPF6を添加し、その非水電解液における含有量は13重量%である。非水電解液の合計重量に基づき、第2のリチウム塩として、1.5%のLiPO2F2(ジフルオロリン酸リチウム)及び1%のLiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩)を、4%のVC(ビニレンカーボネート)、0.5%のPS(1,3-プロパンスルトン)の成分を添加し、ここで、正極活性物質はLiNi0.65Co0.15Mn0.2O2であり、負極活性物質は人造黒鉛である。
【0291】
比較例2
【0292】
乾燥したアルゴンガスの雰囲気において、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を3:5:2の質量比で混合する。充分乾燥した第1のリチウム塩LiPF6を添加し、その非水電解液における含有量は14重量%である。非水電解液の合計重量に基づき、第2のリチウム塩として、1%のLiPO2F2(ジフルオロリン酸リチウム)及び0.5%のLiODFB(リチウムジフルオロシュウ酸ホウ酸塩)を、3%のFEC(フルオロエチレンカーボネート)、1%のPS(1,3-プロパンスルトン)の成分を添加し、ここで、正極活性物質はLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2であり、負極活性物質はケイ素酸素複合人造黒鉛である。
【0293】
比較例3
【0294】
乾燥したアルゴンガスの雰囲気において、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を3:6:1の質量比で混合する。充分乾燥した第1のリチウム塩LiPF6を添加し、その非水電解液における含有量を13.5重量%とする。非水電解液の合計重量に基づき、第2のリチウム塩として、1%のLiPF2O2(ジフルオロリン酸リチウム)、0.5%のLiODFP(ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム)及び0.4%のLiBF4を、0.5%のDTD(硫酸ビニル)、4%のPC(プロピレンカーボネート)、0.5%のVC(ビニレンカーボネート)、1%のPS(1,3-プロパンスルトン)の成分を添加し、ここで、正極活性物質はLiNi0.55Co0.15Mn0.3O2であり、負極活性物質は天然黒鉛である。
【0295】
比較例4
【0296】
比較例4の二次電池の製造は実施例1を参照されたく、ここで、実施例1のLiSF3C2O5の代わりに、1%のLiSC4O8を添加剤として用いた。
【0297】
比較例5
【0298】
比較例5の二次電池の製造は実施例1を参照されたく、ここで、実施例1のLiSF3C2O5の代わりに、1%のLiSF2C2O4を添加剤として用いた。
【0299】
比較例6
【0300】
比較例6の二次電池の製造は実施例9を参照されたく、ここで、LiPF6の含有量は12重量%であり、さらに、実施例9のLiSF3C2O5及びLiSFC4O9。の代わりに、1%のLiSC4O8及び1%のLiSF2C2O4を添加剤として用いた。
【0301】
試験
【0302】
本発明の二次電池は、次の方法により試験することができる。
【0303】
(1)二次電池の初期放電容量及びサイクル試験
【0304】
作製した電池を化成エージング処理した後に治具に載置し、25oCにおいて、1Cの電流で活性化後の電池を4.3Vまで充電し、0.05C電流まで定電圧し、さらに1Cで2.8Vまで放電し、放電容量を記録した。初回の放電サイクルで電池の初期DCRを記録し、その後、電池の放電容量が初回のサイクル容量の80%となるまでサイクル試験を行なって、サイクル終了後の電池のDCR、DCR上昇率、電池が80%SOH(電池健康状態)に達したときのサイクル数及び生成ガス体積変化を記録した。
【0305】
ここで、二次電池の直流抵抗及び生成するガスの体積の変化は、それぞれ次の方法により測定される。
【0306】
(i)二次電池の直流抵抗(DCR)試験
【0307】
指定温度において、電池を1Cの電流で50%SOC(充電状態であり、電池の残存容量を反映する)まで放電し、電流を4Cまで増加し、30秒間維持し、更新された安定電圧と元プラットフォーム電圧の差を測定する。その数値と3C電流値の比が、即ち、電池の直流抵抗である。サイクル終了後のDCRとサイクル開始時のDCRを比較して、DCRの上昇率を取得する。
【0308】
(ii)二次電池が生成するガスの体積変化試験
【0309】
二次電池を細い紐で固定した後、25℃の水中に完全に浸漬し、浸漬前後の重量差を記録し、25℃の水の密度で体積差を換算して取得する。
【0310】
(2)二次電池の60oCにおける容量回復率試験
【0311】
実施例5、6、7、比較例2及び3をエージング処理した後、25oCにおいて、1Cの電流で活性化後の電池を4.3Vまで充電し、0.05C電流まで定電圧する。さらに、二次電池を60oC環境に60日放置し、その60日の容量回復率を記録した。
【0312】
(3)二次電池の60oCにおけるサイクル試験
【0313】
実施例5、6及び7、比較例2及び3をエージング処理した後、60oCにおいて、1Cの電流で活性化後の電池を4.25Vまで充電し、0.05C電流まで定電圧し、さらに1Cで3.0Vまで放電し、放電容量を記録した。最初の放電サイクルで電池の初期DCRを記録し、その後、電池の放電容量が初回のサイクル容量の80%となるまでサイクル試験を行って、サイクル終了後の電池のDCR、DCR上昇率及び生成ガス体積変化を記録した。
【0314】
(4)二次電池の-30oCにおけるサイクル試験
【0315】
実施例6及び比較例3を化成エージングした後、-30oCにおいて1Cの電流で活性化後の電池を4.25Vまで充電し、0.05C電流まで定電圧し、さらに1Cで3.0Vまで放電し、放電容量を記録した。初回の放電サイクルで電池の初期DCRを記録し、その後、電池の放電容量が初回のサイクル容量の80%となるまでサイクル試験を行って、サイクル終了後の電池のDCR上昇率を記録した。
【0316】
結果
【0317】
表1は、実施例1~9の二次電池の初期放電容量試験、サイクル試験、直流抵抗(DCR)試験、生成するガスの体積変化の試験結果である。表2は、実施例5~7の二次電池の60℃における容量回復率試験及び-30℃における直流抵抗(DCR)上昇率の試験結果である。
【0318】
【0319】
a25oCにおいて、電池が80%SOHに達するときのサイクル数;bサイクル末期DCR上昇率
【0320】
表1で示されるように、実施例1~9の二次電池は、より低い初期直流抵抗を有し、約1.13~1.35mオームに過ぎない。充放電サイクルの後、実施例1~9の二次電池の直流抵抗の上昇率も相対的に低下し、約20%~約29%に過ぎず、さらに、二次電池が生成するガスの体積の上昇率最寄り低く、約3%~約11%に過ぎない。これより分かるように、式(I)の化合物を添加剤とすることで、本発明の二次電池は、好ましい安定性を有し、複数回の充放電サイクルの後、二次電池の直流抵抗はわずかに上昇するに過ぎず、生成するガスの体積変化も大きくない。また、実施例1~9の二次電池が80%SOHに達するとき、相対的に高いサイクル数を有し、1995~2501である。これより分かるように、式(I)の化合物を添加剤とすることで、本発明の二次電池は、使用寿命がより長くなる。
【0321】
【0322】
a60oCにおける60日後のDCR上昇率;b60oCにおける60日後の容量回復率;c60oCにおける60日後の生成ガス体積上昇率;d-30oCにおけるサイクル終了後のDCR上昇率
【0323】
実施例5から7において、他の添加剤DTD(硫酸ビニル)、PC(プロピレンカーボネート)またはFEC(フルオロエチレンカーボネート)を添加し、式(I)の化合物と共同で作用し、電池の高温安定性または低温安定性を向上させるのに貢献する。表2で示されるように、本発明の二次電池は優れた高温性能を有し、高温(例えば、約60oC)で複数回充放電した場合、二次電池の直流抵抗の上昇率は15%~22%に過ぎず、容量回復率は92%~98%に達することができ、且つ生成ガス体積上昇率は4~7%に過ぎない。低温(例えば、約-30oC)で複数回充放電した場合、二次電池の直流抵抗の上昇率は10%に過ぎない。これより分かるように、式(I)の化合物を添加剤とし、他の添加剤共同で作用し、二次電池の高温及び低温安定性をさらに向上させるのに貢献する。
【0324】
表3は、比較例の二次電池の初期放電容量試験、サイクル試験、直流抵抗(DCR)試験、生成するガスの体積変化の試験結果であり、試験条件は表1で用いたものと同様である。
【0325】
【0326】
a25oCにおいて、電池が80%SOHに達するサイクル数;bサイクル末期DCR上昇率
【0327】
表3で示されるように、実施例3及び7と比べ、比較例1及び2は式(I)の化合物を添加しておらず、得られる二次電池が80%SOHに達するとき、それが有するサイクル数は573~1567に過ぎず、実施例1~9よりもはるかに低い。これより分かるように、式(I)の化合物を添加剤とすることで、二次電池の使用寿命を有効に向上させることができる。また、実施例1~9と比べ、比較例1~2は相対的に高いDCRを有し、電池の動作効率は低下する。また、比較例1~2は顕著に高いDCR上昇率及び生成ガス体積上昇率を有する。これより分かるように、式(I)の化合物を添加剤とすることで、二次電池の安定性を有効に向上させ、DCR上昇率及び生成ガス体積上昇率を低下させることができる。
【0328】
表3で示されるように、実施例1と比べ、比較例4~6は、それぞれ1%のLiSC4O8、1%のLiSF2C2O4、1%のLiSC4O8及び1%のLiSF2C2O4を二次電池の添加剤として加えている。まず、得られる二次電池が80%SOHに達するとき、それが有するサイクル数は721~890に過ぎず、実施例の化合物よりもはるかに低い。これより分かるように、従来技術の二次電池添加剤と比べ、本願の式(I)の化合物を添加剤とすることで、二次電池の使用寿命を有効に改善することができる。また、実施例の化合物と比べ、比較例4~6は相対的に高いDCRを有し、電池の動作効率は低下する。また、比較例4~6は相対的に高い生成ガス体積上昇率を有する。これより分かるように、従来技術の二次電池の添加剤と比べ、本願の式(I)の化合物を添加剤とすることで、二次電池の安定性を有効に向上させ、生成ガス体積上昇率を低下させることができる。
【0329】
表4は、比較例2及び3の二次電池の60oCにおけるDCR上昇率、容量回復率及び生成ガス体積上昇率の試験結果、及び比較例3の二次電池の-30 oCにおける直流抵抗(DCR)上昇率の試験結果であり、試験条件派表2で用いたものと同様である。
【0330】
【0331】
a60oCにおける60日後のDCR上昇率;b60oCにおける60日後の容量回復率;c60oCにおける60日後の生成ガス体積上昇率;d-30oCにおけるサイクル終了後のDCR上昇率
【0332】
表4で示されるように、実施例7と比べ、比較例2の二次電池を60oCの環境下に60日放置した後、二次電池は明らかに高いDCR上昇率及び相対的に低い容量回復率を有するから、式(I)の化合物を添加剤とすることで、二次電池の高温性能を向上させることができる。また、実施例6と比べ、比較例3は低温(例えば、約-30oC)で複数回充放電した場合、二次電池の直流抵抗の上昇率は50%であり、実施例6よりもはるかに高い。これより分かるように、式(I)の化合物を添加剤とすることで、二次電池の低温性能を向上させることができる。
【0333】
以上は、本発明の具体的実施例であるに過ぎず、本発明の権利範囲を限定するものではなく、本発明を用いて行われる同等の変換、または、他の関連技術分野への直接的または間接的応用は、いずれも同様に本発明の特許保護の範囲に含まれることとする。