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特許7498317ハニカム積層体の製造方法、ハニカム積層体、積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ハニカム積層体の製造方法、ハニカム積層体、積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/12 20060101AFI20240604BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B32B3/12 A
B32B3/12 B
B32B5/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023002660
(22)【出願日】2023-01-11
(62)【分割の表示】P 2019120769の分割
【原出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2023029580
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 優
(72)【発明者】
【氏名】安井 達彦
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/174217(WO,A1)
【文献】特開2006-328292(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0233344(US,A1)
【文献】米国特許第04353947(US,A)
【文献】特開平03-090340(JP,A)
【文献】特開平06-047850(JP,A)
【文献】特開2000-238154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカムコアの両面に、炭素繊維織物、一方向炭素繊維シート、又はそれらが複合して積層されたものに多孔質シートが積層された表面材用部材に熱硬化性樹脂が含浸硬化した表面材が積層されたハニカム積層体の製造方法において、
前記炭素繊維織物、前記一方向炭素繊維シート、又はそれらが複合して積層されたものに熱硬化性樹脂を含浸させる含浸工程と、
前記熱硬化性樹脂が含侵したものに前記多孔質シートを貼り付けてプリプレグを作成するプリプレグ作成工程と、
前記ハニカムコアの両面に、前記多孔質シートが前記ハニカムコアと当接するように、前記プリプレグを配置して圧縮加熱用積層体を得る積層工程と、
前記圧縮加熱用積層体を10~15MPaの面圧で圧縮及び加熱することにより、前記多孔質シートに前記ハニカムコアを食い込ませ、該食い込んだ部分で前記多孔質シートから前記熱硬化性樹脂を滲出させ、該滲出した前記熱硬化性樹脂及び前記表面材用部材内の前記熱硬化性樹脂を硬化させて、前記表面材と前記ハニカムコアを一体化する圧縮加熱工程と、
を有することを特徴とするハニカム積層体の製造方法。
【請求項2】
ハニカムコアの両面に表面材が積層されたハニカム積層体において、
前記表面材は、炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたものに多孔質シートが積層された表面材用部材に熱硬化性樹脂が含浸硬化したものからなり、
前記表面材と前記ハニカムコアは、前記多孔質シートと前記ハニカムコアが当接し、
前記多孔質シートと前記ハニカムコアとの当接位置では、前記多孔質シート内に前記ハニカムコアが食い込んで前記多孔質シートから滲出した熱硬化性樹脂が硬化しており、曲げ弾性率が20GPa以上であることを特徴とするハニカム積層体。
【請求項3】
平面形状が三角形、四角形、五角形、八角形、又は円形であるセルを複数有するコアの両面に表面材が積層された積層体において、
前記表面材は、炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたものに多孔質シートが積層された表面材用部材に熱硬化性樹脂が含浸硬化したものからなり、
前記表面材と前記コアは、前記多孔質シートと前記コアが当接し、
前記多孔質シートと前記コアとの当接位置では、前記多孔質シート内に前記コアが食い込んで前記多孔質シートから滲出した熱硬化性樹脂が硬化していることを特徴とする積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムコアの両面に、熱硬化性樹脂が含浸硬化した表面材が積層されたハニカム積層体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハニカムコアの両面に、熱硬化性樹脂が含浸硬化した表面材が積層されたハニカム積層体は、軽量で高剛性のため、航空機、自動車、建築等の分野で用いられている。
【0003】
ハニカム積層体の製造には、熱硬化性樹脂が含浸したプリプレグをハニカムコアの両面に配置し、プリプレグの熱硬化性樹脂を硬化させることにより、表面材の形成と、表面材(プリプレグ)とハニカムコアの接着とを同時に行うコキュア成形がある。
【0004】
また、ハニカム積層体は、プリプレグの熱硬化性樹脂によってハニカムコアの壁の端部で表面材(プリプレグ)と接着し、ハニカムコアの壁で包囲されるセル内の部分(中空部分)では表面材と接着していないため、ハニカムコアと表面材との接着強度を高めるには、ハニカムコアの壁と表面材との間に形成されるフィレットを良好に形成することが重要である。フィレットは、表面材(プリプレグ)からハニカムコアの壁の端部を挟むように熱硬化性樹脂が盛り上がって形成されたものである。
【0005】
フィレットを良好に形成する方法として、プリプレグの熱硬化性樹脂に、粘度調整したエポキシ樹脂組成物を用いることが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4639899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、粘度調整したエポキシ樹脂組成物をプリプレグの熱硬化性樹脂に用いてフィレットを形成する方法では、表面材から盛り上がったフィレットで、ハニカムコアの壁の端部を挟むだけであるため、表面材とハニカムコアとの接着強度が高いものではなかった。
【0008】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、表面材とハニカムコアとの接着強度が高く、表面材がハニカムコアから剥がれ難いハニカム積層体とその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明の態様は、ハニカムコアの両面に表面材が積層されたハニカム積層体において、前記表面材は、炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたものに多孔質シートが積層された表面材用部材に熱硬化性樹脂が含浸硬化したものからなり、前記表面材と前記ハニカムコアは、前記多孔質シートと前記ハニカムコアが当接し、前記多孔質シートと前記ハニカムコアとの当接位置では、前記多孔質シート内に前記ハニカムコアが食い込んで前記多孔質シートから滲出した熱硬化性樹脂が硬化していることを特徴とする。
【0010】
第2の発明の態様は、第1の発明の態様において、前記多孔質シートの厚みが0.5~2mmであることを特徴とする。
【0011】
第3の発明の態様は、第1または第2の発明の態様において、前記多孔質シートは発泡体または不織布からなることを特徴とする。
【0012】
第4の発明の態様は、第3の発明の態様において、前記発泡体の密度が5~100kg/mであり、前記不織布の目付が2~200g/mであることを特徴とする。
【0013】
第5の発明の態様は、第1から第4の発明の態様の何れか一において、前記ハニカムコアのセルサイズが1/32~1/1インチであることを特徴とする。
【0014】
第6の発明の態様は、ハニカムコアの両面に表面材が積層されたハニカム積層体の製造方法において、前記表面材は、炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたものに多孔質シートが積層された表面材用部材に熱硬化性樹脂が含浸硬化したものからなり、前記表面材用部材に熱硬化性樹脂を含浸させる含浸工程と、前記ハニカムコアの両面に、前記熱硬化性樹脂が含浸した表面材用部材を、前記多孔質シートが前記ハニカムコアと当接するように配置して圧縮加熱用積層体を得る積層工程と、前記圧縮加熱用積層体を圧縮及び加熱することにより、前記多孔質シートに前記ハニカムコアを食い込ませ、該食い込んだ部分で前記多孔質シートから前記熱硬化性樹脂を滲出させ、該滲出した前記熱硬化性樹脂及び前記表面材用部材内の前記熱硬化性樹脂を硬化させて、前記表面材と前記ハニカムコアを一体化する圧縮加熱工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
第7の発明の態様は、第6の発明の態様において、前記多孔質シートの厚みが0.5~2mmであることを特徴とする。
【0016】
第8の発明の態様は、第6または第7の発明の態様において、前記多孔質シートは発泡体または不織布からなることを特徴とする。
【0017】
第9の発明の態様は、第8の発明の態様において、前記発泡体の密度が5~100kg/mであり、前記不織布の目付が2~200g/m2であることを特徴とする。
【0018】
第10の発明の態様は、第6から第9の発明の態様の何れか一において、前記ハニカムコアのセルサイズが1/32~1/1インチであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ハニカムコアの両面の表面材を、炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたものに多孔質シートが積層された表面材用部材に熱硬化性樹脂が含浸硬化したものとし、表面材の多孔質シートにハニカムコアが食い込んで、多孔質シートから滲出した熱硬化性樹脂が硬化しているため、ハニカムコアと表面材との接着強度が良好になる。
【0020】
さらに、ハニカム積層体の製造の際、ハニカムコアが多孔質シートに食い込むことにより、その部分で多孔質シートが圧縮されて熱硬化性樹脂が滲出し、その滲出した熱硬化性樹脂が、ハニカムコアの食い込んだ壁に沿って盛り上がった状態で硬化し、良好にフィレットを形成する。また、製造されたハニカム積層体は、表面材の多孔質シートにハニカムコアが食い込んでいることにより得られる接着強度増大効果と、フィレットにより得られる接着強度増大との両方の効果により、ハニカムコアと表面材との接着が強固(表面材の剥離強度が大)になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明におけるハニカム積層体の一実施形態について一部を切り欠いて示す平面図である。
図2図1の2-2断面図である。
図3】本発明の製造方法の一実施形態における含浸工程を示す図である。
図4】本発明の製造方法の一実施形態における積層工程を示す図である。
図5】本発明の製造方法の一実施形態における加熱圧縮工程を示す図である。
図6】実施例と比較例の構成及び評価を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のハニカム積層体及びその製造方法について図面を用いて説明する。
図1及び図2に示す本発明の一実施形態に係るハニカム積層体10は、ハニカムコア11と、ハニカムコア11の両面に積層一体化された表面材21とからなり、ハニカムコア11と表面材21との接着強度(表面材の剥離強度)が高いものである。
【0023】
ハニカムコア11は、壁13によって区画されたセル15を複数有する。ハニカムコア11は、セル15の平面形状が本実施形態のような六角形(ハニカム)からなるものの他に、四角形、三角形、五角形、八角形、フルート形(波形)、円形等からなるものがあり、限定されない。ハニカムコア11の強度や製造のし易さからは、セルの平面形状が六角形のものが好ましい。
【0024】
ハニカムコア11の材質としては、紙、金属、樹脂、セラミック、アラミド繊維シート等を挙げることができるが、特に軽量性及び不燃性に優れるアルミニウム(アルミハニカムコア)が好ましい。また、ハニカムコア11のセルサイズ(目開き)dは、小さすぎるとハニカムコア11の重量が増大してハニカム積層体10が重くなり、一方、大きすぎるとハニカム積層体10の強度低下や表面材21の窪みの原因となるため、1/32~1/1インチの範囲が好ましく、1/32~1/2インチがより好ましい。また、ハニカムコア11の高さ(厚み)は、低すぎると嵩の割りに重くなり、高すぎるとハニカムコア11の強度低下を生じることから、2~150mmの範囲が好ましい。
【0025】
表面材21は、炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの23に多孔質シート25が積層された表面材用部材27に熱硬化性樹脂が含浸硬化したものからなる。
表面材21の厚みは、窪みなどの自然変形を防ぐため及び軽量性のため、各側で0.2~3.0mmが好ましい。
【0026】
炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの23は、ハニカムコア11の各側において一層に限られず、複数層の積層(複層)で構成してもよい。
炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの23は、軽量及び高剛性に優れるものである。炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたものは、特に、繊維が一方向のみではない織り方のもの(織物)が好ましく、例えば、縦糸と横糸で構成される平織、綾織、朱子織及び3方向の糸で構成される三軸織などが好適である。また、炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの23は、熱硬化性樹脂の含浸及び剛性の点から、繊維重さが90~400g/mのものが好ましい。
【0027】
多孔質シート25は、発泡体または不織布からなり、ハニカムコア11が当接して該当接位置でハニカムコア11が多孔質シート25内に食い込んでいる。
多孔質シートの厚みは、薄すぎるとハニカムコア11の食い込みできなくなる。一方、厚すぎると重くなり、また熱硬化性樹脂のハニカムコア11への染み出しが不十分となり、接着強度の増大が効果的でなくなるため、0.5~2mmが好ましい。
【0028】
発泡体としては、熱硬化性樹脂の含浸を可能にするために連続気泡構造の発泡体が好ましく、例えば、ウレタン樹脂発泡体又はメラミン樹脂発泡体を挙げることができる。また、メラミン樹脂発泡体は良好な難燃性を有するため、ハニカム積層体10に難燃性が求められる場合に好適なものである。発泡体の密度(JIS K 7222)は、低すぎると熱硬化性樹脂の含浸性及び保持性が悪くなり、一方、高すぎるとハニカムコアが食い込めなくなるため、5~100kg/mが好ましく、より好ましくは20~80kg/mである。
【0029】
不織布としては炭素繊維不織布、ガラス不織布、ナイロン不織布、PET不織布等を挙げることができる。また不織布の目付量は小さすぎると含浸性及び保持性が悪くなり、一方、大きすぎるとハニカムコアが食い込めなくなるため、2~200g/mが好ましい。
【0030】
また、図2に示すように、ハニカムコア11が多孔質シート25内に食い込んでいる位置では、多孔質シート25が圧縮されて熱硬化性樹脂が滲出し、その滲出した熱硬化性樹脂が、ハニカムコア11の食い込んだ壁13に沿って盛り上がり、該壁13の端部を挟んだ状態となって硬化し、フィレット17を形成している。
【0031】
熱硬化性樹脂は、特に限定されないが、ハニカム積層体10の剛性を高めるためには、熱硬化性樹脂自体がある程度の剛性を有する必要があり、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の混合物、ウレタン樹脂からなる群より選択することができる。また、ハニカム積層体10に難燃性が求められる場合、熱硬化性樹脂は難燃性のものが好ましい。フェノール樹脂は良好な難燃性を有するために好適である。熱硬化性樹脂の含浸量は、含浸後の表面材用部材に対して50~80重量%が好ましい。
【0032】
ハニカムコア11と表面材21の一体化は、表面材用部材27に含浸している熱硬化性樹脂が、ハニカム積層体10の製造時に多孔質シート25から滲出してハニカムコア11と接触し、さらに前記フィレット17を形成して硬化することにより行われる。
【0033】
次に、本発明のハニカム積層体10の製造方法について説明する。
発明のハニカム積層体10の製造方法は、含浸工程、積層工程、圧縮加熱工程とからなる。
含浸工程では、炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたものに多孔質シートが積層された表面材用部材に熱硬化性樹脂を含浸させて含浸済み表面材用部材を作製する。含浸工程の一例を次に示す。
図3の例では、まず図3の(3-1)に示すように、炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの23Aに熱硬化性樹脂Fを含浸させて含浸済み炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの23Bを形成する。炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの23A及び熱硬化性樹脂Fは、前記ハニカム積層体10において説明した炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの及び熱硬化性樹脂と同じである。含浸時に用いる熱硬化性樹脂Fは、未硬化の液状からなる。
【0034】
次に図3の(3-2)に示すように、含浸済み炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの23Bの片面に多孔質シート25Aを積層し、含浸済み表面材用部材27Aを形成する。その際、含浸済み炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの23Bの表面に付着している熱硬化性樹脂のタック性(粘着性)により、多孔質シート25Aを含浸済み炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの23Bの片面に貼り付けることができる。含浸済み炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの23Bに積層された多孔質シート25Aは、多孔質シート25Aと接する含浸済み炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの23Bの表面に付着している熱硬化性樹脂が含浸する。多孔質シート25Aは、前記ハニカム積層体10において説明した多孔質シートと同じである。
【0035】
熱硬化性樹脂Fは、含浸を容易にするため、溶剤に溶かしたものが好ましく、含浸後に、含浸済み表面材用部材27Aを、熱硬化性樹脂Fの硬化反応を生じない低い温度で乾燥させることにより、溶剤を除去する。
【0036】
含浸手段は、液状の熱硬化性樹脂Fを収容した槽に炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの23Aを浸ける方法、スプレーにより行う方法、ロールコータにより行う方法等、適宜の方法により行うことができる。
【0037】
なお、前記ハニカム積層体10における表面材21の炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの23を複数層とする場合、前記含浸済み炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの23Bを複数枚積層した後に前記多孔質シート25Aを積層することにより、前記含浸済み表面材用部材27Aを形成する。
【0038】
前記含浸工程は、炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの23Aと多孔質シート25Aのそれぞれに熱硬化性樹脂Fを含浸させた後に積層して、含浸済み表面材用部材27Aとしてもよい。また、予め炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの23Aに多孔質シート25Aを積層して含浸前の表面材用部材を作製し、その表面材用部材に熱硬化性樹脂を含浸させて含浸済み表面材用部材27Aとしてもよい。
【0039】
積層工程では、図4に示すように、ハニカムコア11Aの両面に含浸済み表面材用部材27Aを配置して圧縮加熱用積層体10Aを得る。その際、含浸済み表面材用部材27Aは、多孔質シート25Aを内側にして、多孔質シート25Aとハニカムコア11Aが対向して接するようにする。ハニカムコア11Aは、前記ハニカム積層体10において説明したとおりである。なお、積層作業は、次に行う圧縮加熱工程(図5)で用いるプレス成形用下型31の上面に、含浸済み表面材用部材27A、ハニカムコア11A、含浸済み表面材用部材27Aの順に重ねて行ってもよい。また、含浸済み表面材用部材27Aとハニカムコア11Aは、平面サイズが同サイズのものが好ましい。
【0040】
圧縮加熱工程では、図5に示すように、圧縮加熱用積層体10Aをプレス成形用下型31と上型33により圧縮すると共に加熱する。なお、予め前記プレス成形用下型31と上型33間の間隔を変化させてハニカム積層体を実際に製造し、得られたハニカム積層体における表面材の厚みを測定して目的の表面材の厚みとなるプレス成形用下型31と上型33間の間隔を見つける。圧縮加熱工程時、プレス成形用下型31と上型33間には適宜の位置にスペーサを設置して、プレス成形用下型31と上型33間が所定間隔となるようにする。また、圧縮加熱用積層体の加熱方法は特に限定されないが、プレス成形用下型31と上型33にヒーター等の加熱手段を設けて、プレス成形用下型31と上型33を介して加熱するのが簡単である。加熱温度は、熱硬化性樹脂の硬化反応温度以上とされる。
【0041】
圧縮加熱工程時に圧縮加熱用積層体10Aが圧縮されると、含浸済み炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの23Bに含浸している熱硬化性樹脂が押し出されて、含浸済み炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの23Bと接している多孔質シート25Aに含浸し、含浸済み表面材用部材27Aの全体に含浸する。なお、多孔質シート25Aには、前記含浸工程においてすでに熱硬化性樹脂が含浸しているが、この圧縮加熱工程によって、多孔質シート25Aにさらに熱硬化性樹脂が含浸する。また、圧縮加熱工程によって、多孔質シート25Aは、ハニカムコア11Aと当接している部位がハニカムコア11Aの壁の端部によって圧縮されて窪み、ハニカムコア11Aが食い込む。ハニカムコア11Aが食い込んだ部位では、多孔質シート25A内の熱硬化性樹脂が滲出し、その滲出した熱硬化性樹脂が、ハニカムコア11Aの壁に沿って盛り上がって壁の端部を挟んだ状態となる。
【0042】
熱硬化性樹脂は加熱により硬化反応を開始し、含浸済み表面材用部材27Aから前記表面材21が形成され、該表面材21とハニカムコア11A(11)が接着一体化した前記ハニカム積層体10が形成される。さらに、多孔質シートとハニカムコアの当接位置では、滲出した熱硬化性樹脂が、前記ハニカムコア11Aの壁に沿って盛り上がり、ハニカムコア11Aの壁の端部を挟んだ状態で硬化することにより、前記フィレット17が形成される。その後、加熱圧縮を解除して前記ハニカム積層体10を得る。
【実施例
【0043】
フェノール樹脂溶液(住友ベークライト株式会社製、品名:PR-55791B、樹脂濃度60wt%エタノール溶液)中に、綾織の炭素繊維織物(帝人株式会社製、品名;W-3161、繊維重さ200g/m)を漬け、取り出して含浸済み炭素繊維織物を作製した。炭素繊維織物は、200×350mmの平面サイズに裁断したもの(重量14g/枚)を用いた。
【0044】
同様にして各実施例及び比較例に必要な枚数の含浸済み炭素繊維織物を作製し、そのうちの各実施例に使用する各2枚の含浸済み炭素繊維織物の片面には、炭素繊維織物に含浸した熱硬化性樹脂のタック性を利用して多孔質シートを貼り付けた。
【0045】
多孔質シートは、実施例1~3及び実施例5~6については、シート状の軟質ウレタンフォーム(連通気泡構造、株式会社イノアックコーポレーション製、品名:MF-50、厚み0.7mm、密度30kg/m)を用い、実施例4についてはカーボン不織布(阿波製紙製、品名:CARMIX CFRP、厚み1mm、目付120g/m)を用いた。
なお、比較例用の含浸済み炭素繊維織物については、多孔質シートを貼り付けなかった。
【0046】
その後、多孔質シートが貼り付けられた含浸済み炭素繊維織物と、多孔質シートが貼り付けられていない含浸済み炭素繊維織物を、25℃の室温で2時間自然乾燥させ、さらに60℃の雰囲気下で1時間乾燥させて、多孔質シート有りのプリプレグと、多孔質シート無しのプリプレグを作製した。
【0047】
ハニカムコアとして、各実施例及び比較例用に、それぞれ200×350mmの平面サイズに裁断した、セルサイズ1/8インチのアルミハニカム(厚み3mm、重量37g/枚)と、セルサイズ1インチのアルミハニカム(厚み3mm、重量40g)と、セルサイズ1/8インチのアルミハニカム(厚み2mm、重量25g)を用いた。
【0048】
次に、予め離型剤を表面に塗布したSUS製のプレス成形用の下型の上に、各実施例については、多孔質シート無しのプリプレグの所要枚数、多孔質シート有りのプリプレグ、アルミハニカム、多孔質シート有りのプリプレグ、多孔質シート無しのプリプレグの所要枚数を、この順に重ねて配置し、その際に多孔質シートがアルミハニカムと当接するようにした。それにより、ハニカムコアとプリプレグの多孔質シートが当接するようにして、プリプレグをハニカムコアの両面に配置した構成の圧縮加熱用積層体を、プレス成形用下型上にセットした。多孔質シート無しのプリプレグと多孔質シート有りのプリプレグの積層体は、含浸済み表面材用部材に相当する。なお、比較例については、多孔質シート無しのプリプレグの所要枚数、アルミハニカム、多孔質シート無しのプリプレグの所要枚数を、この順に重ねて配置した構成の圧縮加熱用積層体を、プレス成形用下型上にセットした。
【0049】
プレス成形用下型の四隅に各実施例及び比較例のハニカム積層体の厚みに応じた厚みのSUS製スペーサを配置し、プレス成形用下型上の圧縮加熱用積層体を、150℃で30分間、プレス成形用上型(平板状)で押圧し、圧縮及び加熱を行い、フェノール樹脂を反応硬化させた。その際の圧縮加熱用積層体の加熱は、プレス成形用下型と上型に取り付けられた鋳込みヒーターにより行った。なお、実施例1~2、実施例4~6及び比較例については10MPaの面圧(プレス圧力)をかけ、一方、実施例3については15MPaの面圧(プレス圧力)をかけてプレス成形用上型(平板状)で押圧し、圧縮及び加熱を行った。
【0050】
その後、プレス成形用下型と上型を室温で冷却させた後に、プレス成形用下型と上型を開き、ハニカム積層体を得た。得られた各実施例のハニカム積層体は、多孔質無しプリプレグと多孔質シート有りプリプレグとの積層体(含浸済み表面材用部材)が硬化してなる表面材が、アルミハニカムの両面に積層一体化したものであり、多孔質シートにアルミハニカムが食い込み、該食い込み位置でフィリップが形成されていた。一方、比較例のハニカム積層体は、多孔質無しプリプレグの複数枚が積層されて硬化した表面材が、アルミハニカムの両面に積層一体化したものであり、ハニカムコアの食い込みがなく、フィレットが形成されていなかった。
【0051】
また、各実施例及び比較例のハニカム積層体について、表面材の曲げ弾性率の測定を行った。その結果、曲げ弾性率が20GPa以上でかつハニカム積層体の剥離がない場合に評価を「◎」とし、それ以外の場合(曲げ弾性率が20GPa未満、又は/および、ハニカム積層体の剥離がある場合)に評価を「×」とした。
曲げ弾性率の測定は、JIS K 7074に基づいて行った。
【0052】
各実施例及び比較例の構成と評価を図6に示す。実施例1~6のハニカム積層体は、何れも、曲げ弾性率25~31GPaで表面材の剥離無く、評価「◎」であった。実施例1~6のハニカム積層体は、ハニカムコアが表面材の多孔質シートに食い込んでいることによる接着強度増大と、フィレットによる接着強度増大との両方によって、表面材の剥離強度が高く、剛性の高いものであった。
【0053】
一方、比較例のハニカム積層体は、曲げ弾性率が6GPaであり、評価「×」であった。比較例のハニカム積層体は、表面材(プリプレグ)がハニカムコアに単に当接して硬化しているだけであって、表面材へのハニカムコアの食い込みが無く、フィレットも形成されてないため、各実施例と比べて表面材の接着強度が低くなって表面材が剥離し易く、かつ剛性が大きく低下した。
【0054】
このように、本発明によれば、ハニカムコアの両面に積層された表面材の多孔質シートにハニカムコアが食い込んでフィレットが形成されたハニカム積層体を得ることができるため、ハニカムコアの食い込みにより得られる接着強度増大効果と、フィレットにより得られる接着強度増大との両方の効果により、ハニカムコアと表面材の接着を強固(表面材の剥離強度が大)なものにできる。
【0055】
さらに、本発明のハニカム積層体10の製造方法では、表面材をあらかじめ形成して、その表面材をハニカムコアと接着剤で接着させることを要しない。すなわち、本発明のハニカム積層体10の製造方法では、プリプレグの熱硬化性樹脂を硬化させる際に、表面材(プリプレグ)の形成とハニカムコアの接着とを同時に行うことができ、製造工程を合理化できる。
【符号の説明】
【0056】
10 ハニカム積層体
10A 圧縮加熱用積層体
11、11A ハニカムコア
13 壁
17 フィレット
21 表面材
23、23A 炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの
23B 含浸済み炭素繊維織物、一方向炭素繊維シートもしくはそれらが複合して積層されたもの
25、25A 多孔質シート
27 表面材用部材
27A 含浸済み表面材用部材
31 プレス成形用下型
32 プレス成形用上型
図1
図2
図3
図4
図5
図6