(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】発光素子及び発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/10 20100101AFI20240604BHJP
H01L 33/38 20100101ALI20240604BHJP
【FI】
H01L33/10
H01L33/38
(21)【出願番号】P 2023018115
(22)【出願日】2023-02-09
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木津 紀幸
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-201411(JP,A)
【文献】特開2022-021559(JP,A)
【文献】特開2020-088383(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0283787(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0334061(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0270442(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体の積層構造を有するとともに、光を発する積層構造体と、
前記積層構造体を被覆する絶縁被覆部と、
前記積層構造体及び前記絶縁被覆部上に形成され、前記積層構造体から発される光を反射する反射電極と、を備え、
前記積層構造体の積層方向から見たとき、前記反射電極は、前記積層構造体における前記反射電極が形成された反射電極形成面から突出した突出部を有
し、
前記積層構造体は、n型半導体層と、前記n型半導体層の一方側に配された発光層と、前記発光層の前記n型半導体層側と反対側に配されたp型半導体層とを備え、
前記反射電極は、前記p型半導体層の前記発光層側と反対側の面にて構成される前記反射電極形成面、及び前記絶縁被覆部の表面に形成されており、
前記n型半導体層の前記発光層側の面に形成されたn側電極を更に有し、
前記積層方向から見たとき、前記突出部の一部は、前記絶縁被覆部を介して前記n側電極と重なっている、
発光素子。
【請求項2】
前記反射電極には、前記積層方向から見たときに前記n側電極と重なる位置に、貫通孔が形成されており、
前記貫通孔内に形成されるとともに、前記n側電極に電気的に接続されたコンタクト電極と、
前記反射電極及び前記コンタクト電極を覆うとともに、前記反射電極と前記コンタクト電極との間を電気的に絶縁する第2絶縁被覆部と、
前記反射電極に電気的に接続されたp側パッド電極と、
前記コンタクト電極に電気的に接続されたn側パッド電極と、をさらに備える、
請求項
1に記載の発光素子。
【請求項3】
光を発する積層構造体を形成する工程と、
前記積層構造体を被覆する絶縁被覆部を形成する工程と、
前記積層構造体及び前記絶縁被覆部上に、前記積層構造体から発される光を反射する反射電極を形成する工程と、を備え、
前記積層構造体の積層方向から見たとき、前記反射電極は、前記積層構造体における前記反射電極が形成された反射電極形成面から突出した突出部を有
し、
前記積層構造体を形成する工程は、n型半導体層を形成する工程と、前記n型半導体層の一方側に発光層を形成する工程と、前記発光層の前記n型半導体層側と反対側にp型半導体層を形成する工程と、を有し、
前記n型半導体層の前記発光層側の面にn側電極を形成する工程をさらに有し、
前記反射電極を形成する工程は、前記p型半導体層の前記発光層側と反対側の面にて構成される前記反射電極形成面及び前記絶縁被覆部の表面に、前記反射電極を形成する工程であり、
前記積層方向から見たとき、前記突出部の一部は、前記絶縁被覆部を介して前記n側電極と重なっている、
発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記反射電極を形成する工程にて形成される前記反射電極には、前記積層方向から見たときに前記n側電極と重なる位置に、貫通孔が形成されており、
前記絶縁被覆部を形成する工程の後、前記反射電極を形成する工程と、前記貫通孔内に形成されるととともに前記n側電極に電気的に接続されるコンタクト電極を形成する工程とが同時に実施され、
前記反射電極及び前記コンタクト電極を形成する工程の後、前記反射電極及び前記コンタクト電極を被覆するとともに、前記反射電極と前記コンタクト電極との間を電気的に絶縁する第2絶縁被覆部を形成する工程がさらに実施され、
前記第2絶縁被覆部を形成する工程の後、前記反射電極に電気的に接続されるp側パッド電極と、前記コンタクト電極に電気的に接続されるn側パッド電極とを形成する工程がさらに実施される、
請求項
3に記載の発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子及び発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板と、基板上に積層されたn型層、活性層及びp型層と、p型層上に形成された反射電極とを備える半導体発光素子が開示されている。反射電極は、活性層から反射電極側に発された光を反射し、基板側から取り出される光を増やす役割を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の半導体発光素子においては、一層の光出力向上の観点から改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、光出力の向上を図ることができる発光素子及び発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の目的を達成するため、半導体の積層構造を有するとともに、光を発する積層構造体と、前記積層構造体を被覆する絶縁被覆部と、前記積層構造体及び前記絶縁被覆部上に形成され、前記積層構造体から発される光を反射する反射電極と、を備え、前記積層構造体の積層方向から見たとき、前記反射電極は、前記積層構造体における前記反射電極が形成された反射電極形成面から突出した突出部を有し、前記積層構造体は、n型半導体層と、前記n型半導体層の一方側に配された発光層と、前記発光層の前記n型半導体層側と反対側に配されたp型半導体層とを備え、前記反射電極は、前記p型半導体層の前記発光層側と反対側の面にて構成される前記反射電極形成面、及び前記絶縁被覆部の表面に形成されており、前記n型半導体層の前記発光層側の面に形成されたn側電極を更に有し、前記積層方向から見たとき、前記突出部の一部は、前記絶縁被覆部を介して前記n側電極と重なっている、発光素子を提供する。
【0007】
また、本発明は、前記の目的を達成するため、光を発する積層構造体を形成する工程と、前記積層構造体を被覆する絶縁被覆部を形成する工程と、前記積層構造体及び前記絶縁被覆部上に、前記積層構造体から発される光を反射する反射電極を形成する工程と、を備え、前記積層構造体の積層方向から見たとき、前記反射電極は、前記積層構造体における前記反射電極が形成された反射電極形成面から突出した突出部を有し、前記積層構造体を形成する工程は、n型半導体層を形成する工程と、前記n型半導体層の一方側に発光層を形成する工程と、前記発光層の前記n型半導体層側と反対側にp型半導体層を形成する工程と、を有し、前記n型半導体層の前記発光層側の面にn側電極を形成する工程をさらに有し、前記反射電極を形成する工程は、前記p型半導体層の前記発光層側と反対側の面にて構成される前記反射電極形成面及び前記絶縁被覆部の表面に、前記反射電極を形成する工程であり、前記積層方向から見たとき、前記突出部の一部は、前記絶縁被覆部を介して前記n側電極と重なっている、発光素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光出力の向上を図ることができる発光素子及び発光素子の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態における、発光素子の平面図である。
【
図3】実施の形態における、第2絶縁被覆部、p側パッド電極及びn側パッド電極を省略した発光素子の平面図である。
【
図4】実施の形態における、積層構造体形成工程にて形成される積層構造体の断面図である。
【
図5】実施の形態における、第1蒸着工程後に得られる第1中間体の断面図である。
【
図6】実施の形態における、第1被覆工程後に得られる第2中間体の断面図である。
【
図7】実施の形態における、第2蒸着工程後に得られる第3中間体の断面図である。
【
図8】実施の形態における、第2被覆工程後に得られる第4中間体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、
図1乃至
図8を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0011】
(発光素子1)
図1は、本形態における発光素子1の平面図である。
図2は、
図1のII-II線矢視断面図である。
【0012】
本形態の発光素子1は、例えば発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)又は半導体レーザ(LD:Laser Diode)である。本形態において、発光素子1は、紫外光を発するLEDであり、例えば殺菌(例えば空気浄化、浄水等)、医療(例えば光線治療、計測・分析等)、UVキュアリング等の分野において用いることができる。
図2に示すごとく、本形態の発光素子1は、積層構造体2とn側電極3と第1絶縁被覆部4と反射電極5とコンタクト電極6と第2絶縁被覆部7とp側パッド電極8とn側パッド電極9とを備える。
【0013】
積層構造体2は、基板21と、バッファ層22と、n型半導体層23と、発光層24と、p型半導体層25とをこの順に有する。以後、積層構造体2の各層の積層方向(例えば
図2の上下方向)を上下方向Dといい、上下方向Dの一方側であって、基板21に対して各半導体層が積層された側(例えば
図2の上側)を上側、その反対側(例えば
図2の下側)を下側という。なお、上下の表現は便宜的なものであり、例えば発光素子1の使用時における、鉛直方向に対する発光素子1の姿勢を限定するものではない。
【0014】
基板21は、発光層24が発する光(本形態においては深紫外光)を透過する性質を有する基板であり、例えばサファイア(Al2O3)基板とすることができる。また、基板21として、例えば窒化アルミニウム(AlN)基板又は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)基板等を用いてもよい。
【0015】
バッファ層22、n型半導体層23、発光層24及びp型半導体層25を構成する半導体としては、例えば、AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)にて表される2~4元系のIII族窒化物半導体を用いることができる。本形態において、バッファ層22、n型半導体層23、発光層24及びp型半導体層25を構成する半導体としては、インジウムを含まないAlzGa1-zN系(0≦z≦1)半導体が用いられている。
【0016】
バッファ層22は、基板21上に形成されている。バッファ層22は、アンドープのAlaGa1-aN(0≦a≦1)からなる。一例として、バッファ層22は、基板21上に形成された窒化アルミニウム(すなわちa=1)からなるAlN層と、AlN層上に形成されたアンドープの窒化アルミニウムガリウム(すなわち0<a<1)からなるAlGaN層とを有する。なお、これに限られず、バッファ層22は単層とすることも可能である。また、基板21が窒化アルミニウム基板又は窒化アルミニウムガリウム基板である場合、バッファ層22は必ずしも設けなくてもよい。
【0017】
n型半導体層23は、バッファ層22上に形成されている。n型半導体層23は、n型不純物がドープされたAl
bGa
1-bN(0≦b≦1)からなる。n型半導体層23は、単層構造でも複数層構造でもよい。上側から見たとき、n型半導体層23は、バッファ層22よりも一回り小さく形成されている。
図1において、n型半導体層23の上面231の輪郭位置を破線にて表している。
【0018】
図2に示すごとく、発光層24は、n型半導体層23の上面231の一部に形成されており、発光層24上にp型半導体層25が形成されている。
図1に示すごとく、発光層24及びp型半導体層25は、上側から見た形状が櫛状となるよう形成されている。
図1においては、上側から見たときのp型半導体層25の上面251の輪郭位置を破線にて示している。発光層24及びp型半導体層25は、上下方向Dに直交する方向に延在する第1基部11と、第1基部11の複数箇所から上下方向D及び第1基部11の延在方向の双方に直交する方向に延在する複数の第1延設部12とを有する。
【0019】
発光層24は、AlcGa1-cN(0≦c≦1)からなり、例えば井戸層を1つ有する単一量子井戸構造、又は井戸層を複数有する多重量子井戸構造とすることができる。発光層24においては、n型半導体層23から供給される電子と、p型半導体層25から供給される正孔とが再結合し、発光する。発光層24は、波長365nm以下の紫外光を出力するために、バンドギャップが3.4eV以上となるよう構成されている。特に本形態において、発光層24は、中心波長が200nm以上365nm以下の紫外光を発することができるよう構成されている。また、発光層24は、中心波長が280nm以下の深紫外光を発するものであってもよい。
【0020】
図2に示すごとく、p型半導体層25は、発光層24上に形成されている。p型半導体層25は、p型不純物がドープされたAl
dGa
1-dN(0≦d≦1)からなる。p型半導体層25は、単層構造でも複数層構造でもよい。
【0021】
n側電極3は、n型半導体層23の上面231における発光層24から露出した露出面231aに形成されている。n側電極3は、n型半導体層23にオーミック接触している。
図1に示すごとく、上側から見たとき、n側電極3は、発光層(
図2の符号24参照)及びp型半導体層25に噛み合う櫛状に形成されている。n側電極3は、第1基部11と略平行に形成された第2基部31と、第2基部31の複数箇所から第1基部11側に向かって形成された複数の第2延設部32とを有する。
【0022】
図2に示すごとく、第1絶縁被覆部4は、積層構造体2及びn側電極3を覆っている。具体的には、第1絶縁被覆部4は、バッファ層22の上面221の位置から、p型半導体層25の上面251の位置までにおいて、積層構造体2及びn側電極3を覆っている。第1絶縁被覆部4の上面41は、p型半導体層25の上面251と面一に形成されている。第1絶縁被覆部4の上面41とp型半導体層25の上面251とが面一とは、これらを同一平面上に形成するよう設計したが、製造公差等によりこれらがわずかにずれるような場合も含む。なお、第1絶縁被覆部4の上面41は、p型半導体層25の上面251の位置からずれていてもよい。第1絶縁被覆部4には、n側電極3に向かって開口した複数のコンタクトホール42が形成されている。複数のコンタクトホール42の内側には、後述の複数のコンタクト電極6が形成されている。
【0023】
第1絶縁被覆部4は、電気的絶縁性を有する無機材料からなる。第1絶縁被覆部4は、例えば、発光層24から発される光の透過率が50%以上である。第1絶縁被覆部4は、例えば二酸化ケイ素(SiO2)、アルミナ(Al2O3)等からなる。
【0024】
図3は、第2絶縁被覆部(
図1及び
図2の符号7参照)、p側パッド電極(
図1及び
図2の符号8参照)及びn側パッド電極(
図1及び
図2の符号9参照)を省略した発光素子1の平面図である。
図3においては、反射電極5の形成範囲にハッチングを施している。
【0025】
反射電極5は、p型半導体層25の上面251全体、及び第1絶縁被覆部4の上面41の一部に形成されている。
図3に示すごとく、反射電極5は、上側から見たときp型半導体層25の反射電極5が形成された反射電極形成面(すなわちp型半導体層25の上面251)と重なる重なり部51と、上側から見たとき反射電極形成面から突出した突出部52とを有する。突出部52は、重なり部51から、反射電極形成面と略平行な方向(すなわち上下方向Dに略直交する方向)に突出している。本形態の発光素子1は、反射電極5を広く形成することで、発光層24から上側又は斜め上側に発された光の多くが反射電極5にて反射され、基板21側からの光出力が向上する。本形態において、反射電極5は、上側から見たとき、発光素子1の外形よりわずかに小さい略四角形状に形成されているとともに、突出部52におけるn側電極3と上下方向Dに重なる位置に、複数の貫通孔521が形成されている。
図2に示すごとく、貫通孔521は、n側電極3に電気的に接続された複数のコンタクト電極6をそれぞれ挿通させるための孔である。突出部52の一部は、第1絶縁被覆部4を介してn側電極3と上下方向Dに重なっている。なお、本形態においては、
図3に示すごとく、突出部52が積層構造体2の略全体を上側から覆う範囲の大きさである例を示しているが、突出部52の形成範囲は適宜変更可能である。
【0026】
反射電極5は、発光層24が発する光を反射可能な金属からなる。反射電極5は、発光層24が発する光の中心波長における反射率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。反射電極5は、発光層24が発する紫外光の反射率を高めるべく、ロジウム(Rh)又はアルミニウム(Al)を含有していることが好ましい。
【0027】
コンタクト電極6は、反射電極5の貫通孔521内に形成されているとともにn側電極3に電気的に接続されている。また、コンタクト電極6の上面61の位置は、反射電極5の上面53の位置に揃えられている。
【0028】
第2絶縁被覆部7は、反射電極5及びコンタクト電極6を覆っているとともに、反射電極5とコンタクト電極6との間を電気的に絶縁している。また、第2絶縁被覆部7には、反射電極5に連通するとともに、p側パッド電極8の後述するp側第1電極部81が配される第1穴部71と、複数のコンタクト電極6に連通するとともに、n側パッド電極9の後述する複数のn側第1電極部91が配される第2穴部72とが形成されている。第2絶縁被覆部7は、電気的絶縁性を有する材料からなる。本形態において、第2絶縁被覆部7は、第1絶縁被覆部4を構成する材料と同じ材料からなる。なお、第2絶縁被覆部7は、第1絶縁被覆部4とは異なり、発光層24から発される光を透過しない材料にて構成してもよい。
【0029】
p側パッド電極8は、反射電極5の上面53に電気的に接続されており、n側パッド電極9は、複数のコンタクト電極6の上面61に電気的に接続されている。
図1に示すごとく、上側から見たとき、p側パッド電極8とn側パッド電極9とは、第1基部11と第2基部31との並び方向に並ぶよう形成されている。
【0030】
図2に示すごとく、p側パッド電極8は、第2絶縁被覆部7の第1穴部71に配されたp側第1電極部81と、第2絶縁被覆部7から露出したp側第2電極部82とを有する。n側パッド電極9は、第2絶縁被覆部7の複数の第2穴部72にそれぞれ配された複数のn側第1電極部91と、第2絶縁被覆部7から露出したn側第2電極部92とを有する。
【0031】
p側パッド電極8のp側第2電極部82及びn側パッド電極9のn側第2電極部92は、例えば図示しないサブマウントの電極に実装される。例えば、発光素子1は、基板21がサブマウントと反対側に位置する姿勢で、サブマウントの電極に、金(Au)バンプ等を介してフリップチップ実装される。この場合、発光素子1から発される光は、主に積層構造体2の基板21側からサブマウントと反対側に取り出される。
【0032】
(発光素子1の製造方法)
次に、
図4乃至
図8を参照しつつ、本形態の発光素子1の製造方法の一例につき説明する。
【0033】
発光素子1の製造方法は、積層構造体形成工程と、第1蒸着工程と、第1被覆工程と、第2蒸着工程と、第2被覆工程と、第3蒸着工程とを有する。
【0034】
図4は、積層構造体形成工程にて形成される積層構造体2の断面図である。積層構造体形成工程は、積層構造体2を形成する工程である。積層構造体形成工程においては、まず、基板21上にバッファ層22、n型半導体層23、発光層24及びp型半導体層25が順次エピタキシャル成長される。エピタキシャル成長法としては、有機金属化学気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)、分子線エピタキシ法(Molecular Beam Epitaxy:MBE)、ハライド気相エピタキシ法(Hydride Vapor Phase Epitaxy:HVPE)等の周知のエピタキシャル成長法を用いることができる。各層をエピタキシャル成長させるための成長温度、成長圧力、及び成長時間等の製造条件については、各層の構成に応じた一般的な条件とすることができる。
【0035】
次いで、p型半導体層25の上面251の所定箇所に、図示しないマスクが形成される。そして、マスクと上下方向Dに重ならない位置に形成されたp型半導体層25及び発光層24が、エッチングにより除去される。これにより、n型半導体層23に、発光層24から上側に露出した露出面231aが形成される。露出面231aを形成した後、マスクを除去することで、
図4に示すような積層構造体2が得られる。
【0036】
次いで、第1蒸着工程が行われる。
図5は、第1蒸着工程後に得られる第1中間体1aの断面図である。第1蒸着工程においては、蒸着により、n型半導体層23の露出面231a上にn側電極3が形成される。例えば、バッファ層22の上面221から上側に位置する積層構造体2の表面であって、n側電極3が形成される面以外の面にマスクが形成され、蒸着によりn側電極3が形成された後、マスクが除去される。蒸着としては、電子ビーム蒸着法やスパッタリング法等を採用可能であり、これについては第2蒸着工程及び第3蒸着工程においても同様である。第1蒸着工程により、
図5に示す第1中間体1aが得られる。
【0037】
次いで、第1被覆工程が行われる。
図6は、第1被覆工程後に得られる第2中間体1bの断面図である。第1被覆工程においては、例えば化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法などの周知の技術を用いて、第1中間体1aの表面のうちバッファ層22の上面221から上側であって、p型半導体層25の上面251よりも下側までが、二酸化ケイ素又はアルミナ等の無機材料にて覆われる。そして、形成された無機材料のうち、コンタクト電極6が形成される部位が除去されることで第1絶縁被覆部4が形成され、
図6に示す第2中間体1bが得られる。
【0038】
次いで、第2蒸着工程が行われる。
図7は、第2蒸着工程後に得られる第3中間体1cの断面図である。第2蒸着工程においては、蒸着により、反射電極5とコンタクト電極6とが同時に形成される。例えば、第2蒸着工程においては、第2中間体1bの、反射電極5及びコンタクト電極6が形成される箇所以外がマスクで覆われ、蒸着により反射電極5及びコンタクト電極6が同時形成され、その後マスクが除去される。このように、反射電極5とコンタクト電極6とは、フォトリソグラフィ技術によって同時に形成される。第2蒸着工程により、
図7に示す第3中間体1cが得られる。
【0039】
次いで、第2被覆工程が行われる。
図8は、第2被覆工程後に得られる第4中間体1dの断面図である。第2被覆工程においては、例えば化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法などの周知の技術を用いて、第1絶縁被覆部4上に露出している反射電極5及びコンタクト電極6が、二酸化ケイ素又はアルミナ等の無機材料にて覆われる。そして、形成された無機材料のうち、p側パッド電極8のp側第1電極部81及びn側パッド電極9のn側第1電極部91が形成される部位(すなわち第1穴部71の内側及び第2穴部72の内側)が除去されることで第2絶縁被覆部7が形成され、
図8に示す第4中間体1dが得られる。
【0040】
次いで、第3蒸着工程が行われる。第3蒸着工程後に、
図3に示すような発光素子1が得られる。第3蒸着工程においては、蒸着により、p側パッド電極8とn側パッド電極9とが同時に形成される。例えば、第3蒸着工程においては、第4中間体1dの、p側パッド電極8及びn側パッド電極9が形成される箇所以外がマスクで覆われ、蒸着によりp側パッド電極8及びn側パッド電極9が同時形成され、その後マスクが除去される。このように、反射電極5とコンタクト電極6とは、フォトリソグラフィ技術によって同時に形成される。
以上のように、本形態の発光素子1が製造される。
【0041】
(実施の形態の作用及び効果)
本形態の発光素子1は、半導体の積層構造を有するとともに、光を発する積層構造体2と、積層構造体2を被覆する第1絶縁被覆部4と、積層構造体2及び第1絶縁被覆部4上に形成され、積層構造体2から発される光を反射する反射電極5と、を備える。そして、積層構造体2の積層方向(すなわち上下方向D)から見たとき、反射電極5は、積層構造体2における反射電極5が形成された反射電極形成面(すなわちp型半導体層25の上面251)から突出した突出部52を有する。このように、反射電極5を広く形成することで、発光層24から基板21側と反対側にまっすぐ又は斜めに発された光が反射電極5にて反射され、基板21側から取り出される光の量を増やすことができる。これにより、発光素子1の光出力の向上を図ることができる。
【0042】
また、上下方向Dから見たとき、突出部52の一部は、第1絶縁被覆部4を介してn側電極3と重なっている。これにより、反射電極5がより広く形成され、より発光素子1の光出力の向上を図りやすい。
【0043】
また、反射電極5には、上下方向Dから見たときにn側電極3と重なる位置に、貫通孔521が形成されている。そして、発光素子1は、貫通孔521内に形成されるとともに、n側電極3に電気的に接続されたコンタクト電極6と、反射電極5及びコンタクト電極6を覆うとともに、反射電極5とコンタクト電極6との間を電気的に絶縁する第2絶縁被覆部7と、反射電極5に電気的に接続されたp側パッド電極8と、コンタクト電極6に電気的に接続されたn側パッド電極9と、をさらに備える。このようにコンタクト電極6を設けることで、n側パッド電極9とn側電極3との電気的接続を容易に実現することができる。また、第2絶縁被覆部7を設けることで、n側パッド電極9と反射電極5との間の電気的絶縁性を確保することができる。
【0044】
以上のごとく、本形態によれば、光出力の向上を図ることができる発光素子及び発光素子の製造方法を提供することができる。
【0045】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0046】
[1]本発明の第1の実施態様は、半導体の積層構造を有するとともに、光を発する積層構造体2と、前記積層構造体2を被覆する絶縁被覆部4と、前記積層構造体2及び前記絶縁被覆部4上に形成され、前記積層構造体2から発される光を反射する反射電極5と、を備え、前記積層構造体2の積層方向Dから見たとき、前記反射電極5は、前記積層構造体2における前記反射電極5が形成された反射電極形成面251から突出した突出部52を有する、発光素子1である。
これにより、発光素子1の光出力の向上を図ることができる。
【0047】
[2]本発明の第2の実施態様は、第1の実施態様において、前記積層構造体2が、n型半導体層23と、前記n型半導体層23の一方側に配された発光層24と、前記発光層24の前記n型半導体層23側と反対側に配されたp型半導体層25とを備え、前記反射電極5が、前記p型半導体層25の前記発光層24側と反対側の面にて構成される前記反射電極形成面251、及び前記絶縁被覆部4の表面に形成されており、前記n型半導体層23の前記発光層24側の面231に形成されたn側電極3を更に有し、前記積層方向Dから見たとき、前記突出部52の一部が、前記絶縁被覆部4を介して前記n側電極3と重なっていることである。
これにより、発光素子1の光出力の向上を図ることができる。
【0048】
[3]本発明の第3の実施態様は、第2の実施態様において、前記反射電極5には、前記積層方向Dから見たときに前記n側電極3と重なる位置に、貫通孔521が形成されており、前記貫通孔521内に形成されるとともに、前記n側電極3に電気的に接続されたコンタクト電極6と、前記反射電極5及び前記コンタクト電極6を覆うとともに、前記反射電極5と前記コンタクト電極6との間を電気的に絶縁する第2絶縁被覆部7と、前記反射電極5に電気的に接続されたp側パッド電極8と、前記コンタクト電極6に電気的に接続されたn側パッド電極9と、をさらに備えることである。
これにより、n側パッド電極9とn側電極3との電気的接続を容易に実現することができる。
【0049】
[4]本発明の第4の実施態様は、光を発する積層構造体2を形成する工程と、前記積層構造体2を被覆する絶縁被覆部4を形成する工程と、前記積層構造体2及び前記絶縁被覆部4上に、前記積層構造体2から発される光を反射する反射電極5を形成する工程と、を備え、前記積層構造体2の積層方向Dから見たとき、前記反射電極5は、前記積層構造体2における前記反射電極5が形成された反射電極形成面251から突出した突出部52を有する、発光素子1の製造方法である。
これにより、光出力が高い発光素子1を製造可能である。
【0050】
[5]本発明の第5の実施態様は、第4の実施態様において、前記積層構造体2を形成する工程が、n型半導体層23を形成する工程と、前記n型半導体層23の一方側に発光層24を形成する工程と、前記発光層24の前記n型半導体層23側と反対側にp型半導体層25を形成する工程と、を有し、前記n型半導体層23の前記発光層24側の面231にn側電極3を形成する工程をさらに有し、前記反射電極5を形成する工程が、前記p型半導体層25の前記発光層24側と反対側の面にて構成される前記反射電極形成面251及び前記絶縁被覆部4の表面に、前記反射電極5を形成する工程であり、前記積層方向Dから見たとき、前記突出部52の一部が、前記絶縁被覆部4を介して前記n側電極3と重なっていることである。
これにより、光出力が高い発光素子1を製造可能である。
【0051】
[6]本発明の第6の実施態様は、第5の実施態様において、前記反射電極5を形成する工程にて形成される前記反射電極5には、前記積層方向Dから見たときに前記n側電極3と重なる位置に、貫通孔521が形成されており、前記絶縁被覆部4を形成する工程の後、前記反射電極5を形成する工程と、前記貫通孔521内に形成されるととともに前記n側電極3に電気的に接続されるコンタクト電極6を形成する工程とが同時に実施され、前記反射電極5及び前記コンタクト電極6を形成する工程の後、前記反射電極5及び前記コンタクト電極6を被覆するとともに、前記反射電極と前記コンタクト電極との間を電気的に絶縁する第2絶縁被覆部7を形成する工程がさらに実施され、前記第2絶縁被覆部を形成する工程の後、前記反射電極5に電気的に接続されるp側パッド電極8と、前記コンタクト電極6に電気的に接続されるn側パッド電極9とを形成する工程がさらに実施されることである。
これにより、n側パッド電極9とn側電極3との電気的接続を容易に実現することができる。
【0052】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、前述した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…発光素子
2…積層構造体
23…n型半導体層
231…n型半導体層の上面
24…発光層
25…p型半導体層
251…反射電極形成面(p型半導体層の上面)
3…n側電極
4…絶縁被覆部(第1絶縁被覆部)
5…反射電極
52…突出部
521…貫通孔
6…コンタクト電極
7…第2絶縁被覆部
8…p側パッド電極
9…n側パッド電極
D…積層方向(上下方向)
【要約】
【課題】光出力の向上を図ることができる発光素子及び発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】発光素子1は、半導体の積層構造を有するとともに、光を発する積層構造体2と、積層構造体2を被覆する絶縁被覆部4と、積層構造体2及び絶縁被覆部4上に形成され、積層構造体2から発される光を反射する反射電極5と、を備える。積層構造体2の積層方向Dから見たとき、反射電極5は、積層構造体2における反射電極5が形成された反射電極形成面251から突出した突出部52を有する。
【選択図】
図2