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  • 特許-表皮ブドウ球菌SOD活性促進剤 図1
  • 特許-表皮ブドウ球菌SOD活性促進剤 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】表皮ブドウ球菌SOD活性促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9761 20170101AFI20240604BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A61K8/9761
A61Q19/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023078605
(22)【出願日】2023-05-11
【審査請求日】2023-06-27
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 奈佳子
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102920636(CN,A)
【文献】皮膚常在優勢菌(Staphylococcus epidermidis)のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)分泌を促進する化粧水(Mn/Zn含有)を用いた皮膚へのSOD送達法,Drug Delivery System,1997年,Vol.12,No.5,pp.339-345
【文献】Biological Activity and Component Analyses of Chamaecyparis obtusa Leaf Extract: Evaluation of Antiwrinkle and Cell Protection Effects in UVA-Irradiated Cells,Medicina,2023年04月13日,Vol.59,No.755,pp.1-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒノキ水を有効成分として含有する表皮ブドウ球菌SOD活性促進剤であって、
表皮ブドウ球菌の増殖を伴わない、表皮ブドウ球菌SOD活性促進剤。
【請求項2】
請求項1に記載の表皮ブドウ球菌SOD活性促進剤を含有する、表皮ブドウ球菌の増殖を伴わない、表皮ブドウ球菌SOD活性促進のための皮膚塗布用組成物。
【請求項3】
皮膚抗酸化のための、請求項2に記載の表皮ブドウ球菌の増殖を伴わない、表皮ブドウ球菌SOD活性促進のための皮膚塗布用組成物。
【請求項4】
必要とする対象の皮膚抗酸化のための美容目的の方法であって、
方法は、対象の皮膚にヒノキ水を適用することを含み、
皮膚抗酸化は、対象の皮膚における表皮ブドウ球菌SODの活性を促進による皮膚抗酸化である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表皮ブドウ球菌SOD活性促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
活性酸素が皮膚に存在すると皮膚成分を酸化させ、しみ、しわ、くすみ、たるみ、光老化等、様々な悪影響を及ぼし皮膚ダメージを与え皮膚老化を促進する。したがって、皮膚における活性酸素を除去することが皮膚の抗老化に有効である。そのため、活性酸素除去機能を向上させるための薬剤等に関する先行技術が多く存在する。しかしながら、それらの薬剤は皮膚のバリア構造により内部への浸透が難しいという経皮吸収の点で有効性に問題がある。そこで、皮膚バリア内部から活性酸素除去機能を向上させるような方策が求められる。
【0003】
皮膚常在菌は皮膚内部に常在し皮膚の健康のために機能している。皮膚常在菌の中でも存在割合の高い表皮ブドウ球菌は、皮膚にスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を分泌することが知られている(非特許文献1)。
【0004】
特許文献1は、ヒトの皮膚表面から採取した細菌の菌体等を含む組成物を開示するが、安全性で万全とは言えない。特許文献2は、表皮ブドウ球菌の栄養源として1-ケトースを含む表皮ブドウ球菌の増殖促進剤を外用剤として用いることを開示する。特許文献3は、表皮ブドウ球菌などの皮膚共生微生物の成長を促進して皮膚効果を提供する方法であって、ガラクトオリゴ糖などのプレバイオティクスを含む化粧品組成物を適用する工程を含む方法を開示する。しかしながら、特許文献2、3の方法だと、プレバイオティクスなどの作用による皮膚常在菌の増殖は期待できても、皮膚常在菌のSOD活性を促進するわけではない。非特許文献1は、Mn、Znなどの金属イオンによる表皮ブドウ球菌のSOD活性の誘導を報告する。しかしながら、これらの金属イオンの使用は化粧品原料として許容されてはいるものの、皮膚状態によっては必ずしも望ましいものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-177489号公報
【文献】特開2022-184273号公報
【文献】特開2017-8095号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】金子ら、皮膚常在優勢菌(Staphylococcus epidermidis)のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)分泌を促進する化粧水(Mn/Zn含有)を用いた皮膚へのSOD送達法、Drugs Delivery System Vol.12, No.5 1997, DOI:10.2745/DDS.12.339
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、表皮ブドウ球菌SOD活性促進剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、皮膚常在菌に着目しその活性酸素除去機能を向上させることにより皮膚抗酸化活性を向上させるべく、様々な成分についてについて鋭意研究の結果、ヒノキ水が、表皮ブドウ球菌SOD活性促進剤として特に高い効果を有することを見出し、以下の発明を完成するに至った:
(1)ヒノキ水を有効成分として含有する表皮ブドウ球菌SOD活性促進剤。
(2)(1)に記載の表皮ブドウ球菌SOD活性促進剤を含有する、皮膚塗布用組成物。
(3)皮膚抗酸化のための、(2)に記載の組成物。
(4)必要とする対象の皮膚抗酸化のための方法であって、
方法は、対象の皮膚にヒノキ水を適用することを含み、
皮膚抗酸化は、対象の皮膚における表皮ブドウ球菌SODの活性を促進による皮膚抗酸化である、方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の表皮ブドウ球菌SOD活性促進剤の適用により、表皮ブドウ球菌のSOD活性を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、ヒノキ水A、B(1.0重量%、2.5重量%、又は5.0重量%)添加の場合における表皮ブドウ球菌の菌体濃度(OD600)あたりのSOD活性を、無添加の対照のSOD活性を100とした相対値(%)として示す(スチューデントのt検定、*:P<0.05,**:P<0.01,***:P<0.001)。
図2図2は、ヒノキ水A、B(1.0重量%、2.5重量%、又は5.0重量%)を添加した場合における菌体濃度(OD600)の経時変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
皮膚における活性酸素は、タンパク質やDNAにダメージを与え皮膚を酸化させ、様々な悪影響を及ぼし皮膚の老化を促進する。また、活性酸素は、紫外線、ストレス、激しい運動等の様々な要因により発生する。例えば、光老化は、紫外線によって皮膚内部で活性酸素や過酸化脂質が発生することにより、タンパク質の化学修飾など下流の反応が引き起こされるというメカニズムを有する。したがって、皮膚における活性酸素を除去することがしみ、しわ、くすみ、たるみ、光老化等の皮膚老化の抑制に有効である。しかしながら、皮膚外部から抗酸化物質を適用しても、皮膚のバリア構造により内部への浸透が難しいという問題がある。
【0012】
本発明者らは、皮膚の外部から抗酸化物質を適用するのではなく、皮膚に存在する表皮ブドウ球菌のSOD活性を促進することで、皮膚の抗酸化活性を向上させることに想到した。
【0013】
本発明は、ヒノキ水を有効成分として含有する表皮ブドウ球菌SOD活性促進剤およびそれを含む皮膚抗酸化剤(以下、包括的に本発明の剤と称することがある)を提供する。本発明は、皮膚に存在する表皮ブドウ球菌のSOD活性を促進することにより、皮膚バリア内部から抗酸化作用を付与することができる点で、皮膚外部から塗布する薬剤等に比べて経皮吸収の点で利点がある。また、ヒノキ水は天然物であるヒノキの水抽出物由来であるため、皮膚に対する刺激が少ない点でも好ましい。
【0014】
表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)は、主に表皮に存在する好気性常在細菌であり、汗や皮脂を餌にグリセリンや脂肪酸を作り出しバリア機能を保つ役割を有する。また、他の常在菌属に比べ高いSOD活性を有することが報告されている(非特許文献1)。
【0015】
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)とは、毒性の高い活性酸素の一種であるスーパーオキシドの不均化反応を触媒することにより、体内に発生する活性酸素を除去する機能を有する酵素である。SOD活性の促進とは、例えば表皮ブドウ球菌SOD活性促進剤を付与していない状態(対照)に比べて、表皮ブドウ球菌SOD活性促進剤を付与した場合に、例えば、有意水準を5%とした統計学的有意差(例えばスチューデントのt検定)を有するSOD活性の促進、あるいは例えば5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、200%以上、300%以上、400%以上、又は500%以上の促進を意味する。
【0016】
このようなSOD活性の促進作用は、in vivo、in vitro、ex vivo等を含む各種方法で測定できる。例えば、被験物質を表皮ブドウ球菌の培地に接種し培養後、培地のSOD活性を非特許文献1に記載のようなNBT法や実施例に記載のような水溶性テトラゾリウム塩(WST)法、あるいはシトクロムc法、エピネフリン法、亜硝酸法等、その他の任意の方法により測定できる。
【0017】
本発明で用いられるヒノキ水は、ヒノキ(Chamaecyparis obtusa Siebold et Zuccarini)の幹及び/又は枝から水で抽出して得られた水抽出物を水蒸気蒸留して得られる水相部であり、医薬部外品原料規格2006(外原規2006)に示される「外原規 ヒノキ水」の規格内容に合致するものである。ヒノキ水は、「外原規 ヒノキ水」の規格の「基原」に記載されている製造方法に基づき製造される。また市販品を容易に入手可能である。
【0018】
ヒノキエキスあるいはヒノキチオール又はその誘導体などのヒノキ含有化合物については、抗菌(特開2002-047123号公報、特開2000-319171号公報、特開2021-138687号公報、特開2021-138688号公報、特開2002-114669号公報)、メラニン生成抑制による美白(特開2001-316242号公報、特開2002-60336号公報、特開2002-060337号公報、特開2002-47167号公報)、ビタミンA類及及び表皮脂質成分との組み合わせによる抗しわ(特開2011-241228号公報、特開2002-179549号公報)、メラニン生成抑制による美白、角質形成細胞分化促進による皮膚保湿、抗炎症及び皮膚再生効果(特表2012-528147号公報)、ヘパラナーゼ阻害による抗しわ(特開2014-208720号公報)、皮膚常在菌の生態系バランス調整(特開2007-246411号公報)などの作用が知られている。しかしながら、本発明は、皮膚常在菌が有する機能を促進する点、水抽出物由来のヒノキ水を用いている点でこれらの先行技術とは異なる。具体的にはヒノキ水の有する表皮ブドウ球菌のSOD活性を促進する効果は本発明者らにより初めて発見された。
【0019】
特定の実施形態では、本発明の剤は、有効成分としてヒノキ水を、例えば、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は99質量%以上含有する。別の実施形態では、本発明の剤は、ヒノキ水からなる。
【0020】
本発明の剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品等の組成物に含有されてもよい。本発明の組成物は、表皮ブドウ球菌SOD活性の促進による皮膚抗酸化のための組成物であってもよい。本発明の組成物は、表皮ブドウ球菌SOD活性の促進による、しみ、しわ、くすみ、たるみ、光老化等の活性酸素を起因とする皮膚老化抑制のための組成物であってもよい。
【0021】
本発明の組成物におけるヒノキ水の配合量は、それらの種類、目的、形態、利用方法などに応じて、適宜決めることができる。例えば、外用投与する場合、例えば、ヒノキ水の配合量は、本発明の組成物の総重量当たり0.001~100重量%、0.005~75重量%、0.01~50重量%、0.05~25重量%、0.1~20重量%、0.5~15重量%、1.0~10.0重量%、1.0~5.0重量%等とすることができる。
【0022】
本発明の表皮ブドウ球菌SOD活性促進剤又は組成物は、必要に応じて添加剤を任意に選択し併用することができる。添加剤としては賦形剤等を含ませることができる。
【0023】
賦形剤としては、所望の剤型としたときに通常用いられるものであれば何でも良く、例えば、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、シクロデキストリンなどのでんぷん類、結晶セルロース類、乳糖、ブドウ糖、砂糖、還元麦芽糖、水飴、フラクトオリゴ糖、乳化オリゴ糖などの糖類、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、マンニトールなどの糖アルコール類が挙げられる。これら賦形剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0024】
その他の添加剤として、着色剤、保存剤、増粘剤、結合剤、崩壊剤、分散剤、安定化剤、ゲル化剤、酸化防止剤、界面活性剤、保存剤、pH調整剤、油分、水、アルコール類、キレート剤、シリコーン類、紫外線吸収剤、保湿剤、香料、各種薬効成分、防腐剤、中和剤等の公知のものを適宜選択して使用できる。
【0025】
上記成分に加えて、さらに必要により、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常化粧品、医薬品、医薬部外品等等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば酸化防止剤、油分、紫外線防御剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0026】
本発明の剤又は組成物は、経口、経皮、静脈投与、等、任意の経路で適用されてもよい。しかしながら、皮膚に存在する表皮ブドウ球菌に作用するよう経皮による適用が好ましい。皮膚に適用される場合、化粧品、医薬部外品等、特に好適には化粧品として適用可能であり、その形態も限定されず、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水-油二層系、水-油-粉末三層系、軟膏、化粧水、ゲル、エアゾール等任意である。化粧品として用いる場合は、例えば、フェイスクリーム、マッサージクリーム、ボディクリーム、乳液、ローション、美容液、ジェル、パック、クレンジングクリーム、ハンドクリーム、化粧水、ファンデーション、口紅、リップクリーム、ハンドパウダー、ボディシャンプー、浴用化粧品等の形態として用いてもよい。外用製剤であれば、ローション剤、懸濁剤・乳剤、液剤、軟膏剤、貼付剤等の各種形態として使用できる。しかしながら、本発明の剤および組成物の採り得る形態は、上述のものに限定されるものではない。
【0027】
適用頻度は、4週間に1回、2週間に1回、1週間に1回、3日に1回、2日に1回、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、都度適用等任意に選択できるがこれらに限定されない。
【0028】
また、本発明は、必要とする対象にヒノキ水あるいは本発明の剤又は組成物を適用することを含む、対象における表皮ブドウ球菌のSOD活性の促進による皮膚抗酸化のための方法も提供する。本発明の一実施形態では、必要とする対象にヒノキ水あるいは本発明の剤又は組成物を適用することを含む、対象における表皮ブドウ球菌のSOD活性の促進による、しみ、しわ、くすみ、たるみ、光老化等の活性酸素を起因とする皮膚老化抑制のための方法も提供する。
【0029】
一実施形態では、必要とする対象は、ヒトを含む哺乳動物であり、好ましくはヒト対象である。対象は,活性酸素による皮膚ダメージが客観的又は主観的に認められる対象であっても,皮膚酸化によるダメージを予防したいと希望する対象であってもよい。例えば、皮膚の酸化度が高い等と判断された対象であってもよく、例えば、紫外線に暴露する環境やストレスが多い環境など酸化を誘発しやすい環境にある対象であってもよく、あるいは,活性酸素による皮膚ダメージ、例えば、しみ、しわ、くすみ、たるみ、光老化等を気にしている又は予防したいと希望する対象であってもよい。
【0030】
本発明の方法は、美容を目的とする方法であり、疾患の治療、医師や医療従事者による治療といった医療行為ではないことがある。このような美容方法は、個人的に行われてもよいし、美容室や、化粧品の販売店、エステサロンなどで行われてもよい。
【0031】
さらに、本発明は、表皮ブドウ球菌のSOD活性の促進による、皮膚抗酸化あるいはしみ、しわ、くすみ、たるみ、光老化等の活性酸素を起因とする皮膚老化抑制ための医薬の製造におけるヒノキ水の使用も提供する。本発明は、表皮ブドウ球菌のSOD活性の促進による、皮膚抗酸化あるいはしみ、しわ、くすみ、たるみ、光老化等の活性酸素を起因とする皮膚老化抑制に使用するためのヒノキ水も提供する。
【実施例
【0032】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0033】
ヒノキ水の調製
ヒノキ水は、医薬部外品原料規格2006の「外原規 ヒノキ水」の規格の「基原」に記載されている製造方法に基づき製造した。より具体的には、ヒノキ(Chamaecyparis obtusa Siebold et Zuccarini)の幹及び/又は枝から水で抽出して得られた抽出物を水蒸気蒸留して得られた液をヒノキ水として使用した。ロットの異なるヒノキ水をそれぞれヒノキ水Aおよびヒノキ水Bとする。
【0034】
表皮ブドウ球菌の培養
1.0重量%、2.5重量%、又は5.0重量%となるようにヒノキ水を添加または添加しないM9塩、Ca、Mg、0.1%酵母エキス、0.5%グルコースを含有する液体最少培地10mLに表皮ブドウ球菌の各株を接種し28℃、62rpm、好気条件で3日間振とう培養した。培養後、OD600で測定を行い細胞濃度を測定した。標準株として用いたのはNBRC12993株、それ以外の株は社内研究所内で健康な成人2名の皮膚から採取、単離した株を、タカラバイオ社のBacterial 16S rDNA PCR Kitを用いた16SrRNA遺伝子配列の解析にかけ、標準株の16S rDNA塩基配列(約1,500bp)に対する相同性が99.0%以上を示したことにより表皮ブドウ球菌と同定した株である(それぞれ、単離株1,2とする)。
【0035】
4℃で10分間、25Kgで遠心分離を行い細胞を沈殿させた。上清に4倍量の氷冷アセトン(40mL)を加え、よく混ぜた後、4℃で一晩静置した。静置後、4℃で30分間、25Kgで遠心分離を行い、タンパク質を沈殿させアセトンを除去した。残存する微量のアセトンは、フード付きクリーンベンチ内で蒸散させることで完全に除去した。400μLの滅菌蒸留水でタンパク質を再懸濁し、市販のWSTキット(同仁化学研究所、SODアッセイキット-WST)を用いてSOD活性を測定し、細胞濃度(OD600)で除算することにより細胞濃度あたりのSOD活性を求めた。
【0036】
結果を図1、2に示す。図1に示すように、いずれのロットのヒノキ水を添加した場合でも、表皮ブドウ球菌のSOD活性は無添加の対照と比較して有意に増加した。一方、図2に示すように、細胞濃度はいずれのロットのヒノキ水でも添加と無添加の間で有意な差は見られなかった。したがって、ヒノキ水には表皮ブドウ球菌の増殖ではなく、表皮ブドウ球菌が有するSOD活性を促進する作用があることが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の表皮ブドウ球菌SOD活性促進剤の適用により、皮膚に存在する表皮ブドウ球菌のSOD活性を促進することができる。皮膚におけるSOD活性が促進されると、活性酸素を除去することが可能となり、ひいてはしみ、しわ、くすみ、たるみ、光老化等、活性酸素に起因する皮膚老化の抑制が期待できる。
【要約】
【課題】 表皮ブドウ球菌SOD活性促進剤の提供。
【解決手段】 本発明は、ヒノキ水を有効成分として含有する表皮ブドウ球菌SOD活性促進剤を提供する。また、本発明は、対象の皮膚にヒノキ水を適用することを含む、対象の皮膚における表皮ブドウ球菌SODの活性を促進することによる皮膚抗酸化のための方法を提供する。
【選択図】図1
図1
図2