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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】作業用車両用ユーザ管理システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/04 20130101AFI20240604BHJP
   F02N 11/08 20060101ALI20240604BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20240604BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B60R25/04
F02N11/08 X
E02F9/26 A
E02F9/24 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023185274
(22)【出願日】2023-10-30
【審査請求日】2024-01-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000150154
【氏名又は名称】株式会社竹内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 俊平
(72)【発明者】
【氏名】神野 祐己
(72)【発明者】
【氏名】山崎 勇太朗
(72)【発明者】
【氏名】児玉 澪央
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-109518(JP,A)
【文献】特開2016-094134(JP,A)
【文献】国際公開第2019/043954(WO,A1)
【文献】特開2016-203744(JP,A)
【文献】特開2005-194799(JP,A)
【文献】特開2006-117202(JP,A)
【文献】特開2003-034235(JP,A)
【文献】特開2019-065634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/00-25/40
E02F 9/24
F02N 11/08
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業用車両に設けられている表示部を介して入力されたユーザ情報に基づいてユーザ認証を含むユーザ管理業務を行う作業用車両用ユーザ管理システムであって、
前記表示部を介して入力されたユーザ識別IDと、あらかじめ登録されている登録ユーザ識別IDが一致するか否かを判定し、前記ユーザ識別IDと、あらかじめ登録されている登録ユーザ識別IDが一致した場合に、エンジン始動ボタンが所定時間以上押されたか否かを判定し、前記エンジン始動ボタンが所定時間以上押された場合に、エンジンを始動させる制御ユニットと、
少なくとも、前記ユーザ識別IDと、ユーザごとに紐づけされた作業時間を含む作業内容および前記作業用車両の機構に対する動作設定情報を含むユーザ作業履歴情報とを有するユーザ情報を記憶するデータベースと、
前記ユーザの前記表示部への入力を含むアクセスに応じて前記データベースに記憶された前記ユーザ識別ID、前記ユーザ作業履歴情報を、前記ユーザ作業履歴情報を前記ユーザ識別IDに紐づけして登録、更新を行う登録処理部と、を有し、
登録、更新が行われた前記ユーザ識別ID、前記ユーザ作業履歴情報は前記表示部に表示される、
ことを特徴とする作業用車両用ユーザ管理システム。
【請求項2】
前記動作設定情報は、少なくとも前記作業用車両を構成する走行装置の走行レバー感度設定の情報と、前記作業用車両を構成するアタッチメントのアタッチメントレバー感度設定の情報とを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業用車両用ユーザ管理システム。
【請求項3】
前記ユーザは管理者と使用者を含み、前記管理者と前記使用者とで前記ユーザ情報へのアクセス権限の範囲を異ならせる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の作業用車両用ユーザ管理システム。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記ユーザごとに異なるRFIDタグが配布され、当該RFIDタグに付与されているタグユーザIDと、あらかじめ登録されているタグユーザIDが一致するか否かを判定し、前記タグユーザIDと、あらかじめ登録されているタグユーザIDが一致した場合に、エンジン始動ボタンが所定時間以上押されたか否かを判定し、前記エンジン始動ボタンが所定時間以上押された場合に、エンジンを始動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業用車両用ユーザ管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業用車両用ユーザ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械等の作業用車両としては、例えば、クローラ式スキッドステアローダが広く知られている。このような作業用車両の車両本体には、先端にバケットなどのアタッチメントが着脱自在に取り付けられ上下動するアームが設けられている。そして、バケットを例えば上下に揺動させることによって、掘削した土砂の移動など種々の作業を行うことができる。なお、アタッチメントを作業目的に応じて着脱交換することにより、種々の作業を行うことができる。
【0003】
また、この種の作業用車両は、車両上部にユーザが搭乗するキャビンが設けられている。キャビン内には、ユーザが着座するオペレータシートの近傍に、作業用車両を走行動作させるための第1の操作レバーと、バケットなどのアタッチメントを動作させるための第2の操作レバーとが設けられている(特許文献1参照)。
【0004】
建設機械等の作業用車両のキャビンには、ユーザに作業用車両の作動状況(例えば、エンジンのオン・オフ等)を視認させるための表示装置(モニター)が設けられている(特許文献1参照)。この表示装置は、ユーザによる表示画面の切り替え操作により、表示される画面の種類が変更され、例えば水温や油温などの作業用車両の各部の状況を表示する画面や、メンテナンスに関する画面など種々の画面が表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2022-56577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、エンジンの始動は、キーシリンダにキーを挿入して、エンジン始動位置にキーを回すことにより行われる。これは、どのユーザによっても同様の操作となっている。近年、作業の効率化を図るためにユーザの業務管理は非常に重要となってきている。また、セキュリティの観点からもユーザごとに異なるユーザ識別IDを所有させることは重要である。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、セキュリティの向上を図るととも作業用車両におけるユーザの作業状況の管理を容易にすることができる作業用車両用ユーザ管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本実施形態の作業用車両用ユーザ管理システムは、作業用車両に設けられている表示部を介して入力されたユーザ情報に基づいてユーザ認証を含むユーザ管理業務を行う作業用車両用ユーザ管理システムである。作業用車両用ユーザ管理システムは、表示部を介して入力されたユーザ識別IDと、あらかじめ登録されている登録ユーザ識別IDが一致するか否かを判定する制御ユニットを有する。制御ユニットは、ユーザ識別IDと、あらかじめ登録されている登録ユーザ識別IDが一致した場合に、エンジン始動ボタンが所定時間以上押されたか否かを判定し、エンジン始動ボタンが所定時間以上押された場合に、エンジンを始動させる。したがって、ユーザ認証が成功した作業者のみエンジンの始動ができるのでセキュリティと安全性の向上が図れる。さらに、ユーザ認証により特定されたユーザとその後のエンジン始動を含めた作業履歴を紐づけできるのでより細かいユーザ管理を容易に行うことができる。
[2]本実施形態の作業用車両用ユーザ管理システムにおいて、少なくともデータベースと登録処理部を有することが好ましい。データベースは、ユーザ識別IDと、作業用車両の機構に対する設定情報を含むユーザ作業履歴情報とを有するユーザ情報を記憶する。登録処理部は、ユーザの表示部への入力を含むアクセスに応じてデータベースに記憶されたユーザ識別ID、ユーザ作業履歴情報の登録、更新を行う。登録、更新が行われたユーザ識別ID、ユーザ作業履歴情報は表示部に表示される。これにより、作業履歴情報がユーザごとに表示されるので、例えば前回使用の際の各種動作設定がわかり、その都度一から設定しなおす手間が省け、作業の効率化が図れる。
[3]本実施形態の作業用車両用ユーザ管理システムにおいて、ユーザは管理者と使用者を含み、管理者と使用者とでユーザ情報へのアクセス権限の範囲を異ならせることが好ましい。管理者と使用者の権限範囲を明確にすることにより、管理者と使用者の操作範囲が区別されるため円滑な作業管理を図ることができる。
[4]本実施形態の作業用車両用ユーザ管理システムにおいて、制御ユニットは、ユーザごとに異なるRFIDタグが配布され、当該RFIDタグに付与されているタグユーザIDと、あらかじめ登録されているタグユーザIDが一致するか否かを判定する。制御ユニットは、タグユーザIDと、あらかじめ登録されているタグユーザIDが一致した場合に、エンジン始動ボタンが所定時間以上押されたか否かを判定し、エンジン始動ボタンが所定時間以上押された場合に、エンジンを始動させる。これにより、表示部から行うユーザ認証が失敗した場合に、RFIDタグを用いた別の認証手段として機能するので、より確実にユーザ認証処理が行われる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の作業用車両用ユーザ管理システムは、セキュリティの向上を図るとともに作業用車両におけるユーザの作業状況の管理を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る作業用車両用ユーザ管理システムが搭載される作業用車両を斜め前方側から見た斜視図である。
図2】実施形態に係る作業用車両用ユーザ管理システムの構成を示したブロック図である。
図3】制御ユニットの構成を示したブロック図である。
図4】データベースの構成を示したブロック図である。
図5】制御ユニットのユーザ認証処理を説明するためのフローチャートである。
図6】ユーザ認証からエンジン始動までの処理の流れを模式的に表した図である。
図7】文字等の言語設定画面を示した図である。
図8】作業用車両の各機構の動作設定画面を示した図である。
図9】ユーザの作業履歴情報画面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明において、上下左右について述べる場合には、作業用車両10の底面の側を下、底面とは反対側を上とし、作業用車両10を後面の側から見たときの当該作業用車両10の左側面の側を左、右側面の側を右とする。
【0012】
[作業用車両の構成]
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。実施形態に係る作業用車両用ユーザ管理システム1については、作業用車両としてアームの先端にバケットを装着したクローラ式のスキッドステアローダを例にとって説明する。図1は、実施形態に係る作業用車両用ユーザ管理システムが搭載される作業用車両を斜め前方側から見た斜視図ある。また、実施形形態に係る作業用車両10の外観構成は、本発明の要旨となるものではないため、概略的な説明にとどめる。図2は、実施形態に係る作業用車両用ユーザ管理システム1の構成を示したブロック図である。図3は、制御ユニットの構成を示したブロック図である。図4は、データベースの構成を示したブロック図である。図5は、制御ユニットのユーザ認証処理を説明するためのフローチャートである。図6は、ユーザ認証からエンジン始動までの処理の流れを模式的に表した図である。図7は、文字等の言語設定画面を示した図である。図8は、作業用車両の各機構の動作設定画面を示した図である。図9は、ユーザの作業履歴情報画面を示した図である。なお、図2図9において、図1に示す構成要素と同じ構成要素については同一の符号が付されている。
【0013】
作業用車両10は、図1に示すように、走行装置12と、走行装置12等が搭載される本体フレーム13と、本体フレーム13の中央上部に設けられたキャビン25とを有している。走行装置12は、左右の無端状の履帯(以下、「クローラ」と呼ぶ。)11a,11b、油圧ポンプ30および油圧モータ40を有する。走行装置12が左右に取り付けられた本体フレーム13と、本体フレーム13の中央上部に設けられたキャビン25とを有している。
【0014】
キャビン25は、箱状に形成さており、キャビン25内には、ユーザが車両前側に向いて着座するオペレータシート61が設けられている。キャビン25内には、シートの近傍に、作業用車両10を走行動作やバケットなどのアタッチメントを動作させるための操作レバー20(右側操作レバー20R,左側操作レバー(図示せず))が設けられている。また、操作レバー20近傍でユーザが視認しやすい位置に、ユーザからのユーザ認証処理を受け付けるメニュー画面、作業用車両の作動状況(レバー操作感度等)およびメンテナンス状況等を表示する表示部60が設けられている。この表示部60は、ユーザによる表示画面の切り替え操作により、表示される画面の種類が変更される。
【0015】
また、作業用車両10は、キャビン25の後方位置に、エンジン21(図2参照)が設けられている。エンジン21は、左右の本体フレーム13に覆われている。左右の本体フレーム13の内側には油圧ポンプ30(図2参照)や表示部60等の動作を総括的に制御するコントロールユニットとして機能する第1のECU(Electronic Control Unit:車両ECU)22(図2参照)、エンジン21を制御する第2のECU32(エンジンECU)およびバッテリー(図示せず)が設けられている。第1のECU22は、第2のECU32、油圧ポンプ30、表示部60およびバッテリーに電気的に接続されている。第2のECU32はエンジン21およびバッテリーに電気的に接続されている。
【0016】
油圧ポンプ30はエンジン21により駆動される。油圧モータ40は、左側油圧モータ140と右側油圧モータ141で構成され、油圧ポンプ30から吐出される圧油(作動油)によって回転する。油圧ポンプ30の圧油は制御部130を構成する油圧ポンプ制御部(図示せず)からの制御信号によって左側油圧モータ140と右側油圧モータ141のそれぞれに供給、排出される。左側クローラ11aは左側油圧モータ140によって駆動され、右側クローラ11bは右側油圧モータ141によって駆動される。すなわち、左側クローラ11aと右側クローラ11bは独立して駆動されるようになっている。なお、本実施例では、油圧ポンプ30が一つの場合を想定して述べているが、左側油圧モータに対応する油圧ポンプと右側油圧モータに対応する油圧ポンプの計2つを備えるものであってもよい。
【0017】
左右の油圧モータ40のそれぞれには、油圧モータ40の回転数を計測する第1の回転数センサ(図示せず),第2の回転数センサ(図示せず)が取り付けられている。第1の回転数センサおよび第2の回転数センサの検出回転数は第1のECU22へ送信される。第1のECU22は、第1及び第2の回転数センサで検出される回転数に基づくクローラ11a,11bの走行速度および後述する走行モード情報に基づいて後述する走行動作制御を行うか否かを判断する。
【0018】
また、キャビン25の右側面上側には270度カメラ(オートバックカメラ)50が取り付けられており、左側面上側には270度カメラ(オートバックカメラ)52が取り付けられており、背面上側には270度カメラ(オートバックカメラ)54が取り付けられている。この270度カメラ(オートバックカメラ)50,52,54は作業用車両10の周囲を撮像し、その撮像データは表示部60に表示される。
【0019】
[ユーザ管理システム]
以下に、図2図5を参照してユーザからの入力情報(ユーザ情報:後述するユーザ識別情報、ユーザの作業履歴情報等)に基づいてユーザ管理を行う作業用車両用ユーザ管理システム1について説明する。
【0020】
作業用車両用ユーザ管理システム1は、第1のECU22、データベース24、第2のECU32、操作レバーセンサ27、270度カメラ50,52,54、および表示部60を有している。第1のECU22は、制御ユニット23を有している。第1のECU22は、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)、入出力ポート、通信ポートを含むマイクロコンピュータで構成されている。第1のECU22に入力される信号としては、例えば、左右独立して設けられる回転数センサからの左右駆動軸の回転数情報や等が挙げられる。第1のECU22からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。第1のECU22から出力される信号としては、例えば、油圧ポンプ30への制御信号が挙げられる。
【0021】
操作レバーセンサ27は前後左右に傾動操作可能な操作レバー20(例えばジョイステック)に設けられた角度センサであり、例えばポテンショメータが挙げられる。操作レバーセンサ27は、操作レバーの操作方向が前方(直進を意味する)から左右(左右方向の移動を意味する)の範囲(180度)にあるか否かと、傾動量が所定傾動量を超えたか否かをレバー角度により検出する。例えば所定傾動量を傾動最大値(いわゆるフルレバー)に設定している場合に、操作レバーを前方に上限まで倒したときには直進かつフルレバー状態として検知される。なお、上記のような動作を検知できるものであれば検知方法はこれに限定されない。
【0022】
表示部60は、タッチパネルモニターであり、情報入力可能なユーザインタフェースとして機能する。このタッチパネルモニターは、ディスプレイパネルとタッチパネルを有する。ディスプレイパネルは、液晶パネルあるいは有機EL(Electro Luminescence)パネルであり、さまざまな図形情報、テキスト情報などが表示され、またボタンなどが表示される。タッチパネルは、ディスプレイパネルに重ねて設けられ、抵抗式あるいは静電容量式を用いることができる。
【0023】
制御ユニット23は、制御部(メインコントローラー)130、入力部133、出力部134を有する。制御部130は、判定部131、登録処理部132、表示制御部136を有している。表示制御部136は、入力部133からの入力情報に基づくユーザ認証の認証結果やユーザの後述する選択情報に基づく判定部131からのエンジン始動に関する判定結果を受けて、認証結果や判定結果を表示させるための制御信号を生成して出力する。
【0024】
また、制御部130は動作制御対象である油圧ポンプ30の作動油量を調節するための制御信号を生成して出力し、作動油量が調節されることによって駆動軸の回転数が制御され、作業用車両10の走行速度やアームの上下動速度が制御される。判定部131は入力部133を介して入力されたユーザ識別情報(パスコード)がそのユーザのあらかじめ登録されているユーザ識別情報に一致するか否かを判定し、一致すれば入力したユーザが登録済ユーザであると判定される。また、判定部131は、回転数センサ、操作レバーセンサ27等からの検出結果に応じて油圧ポンプ30の吐出量を制限するか否かを判定し、その判定結果を出力する。なお、パスコードは、ユーザごとに設定され、コード変更可能な複数桁の英数字の組み合わせであるが、桁数は複数に限定されず英数字については例えば大文字小文字を含ませたりしてもよい。なお、パスコードに限らず指紋認証、音声認証、顔認証等の認証方法でユーザ識別を行うようにしてもよい。
【0025】
入力部133には、表示部60のタッチパネルを介してユーザ識別情報、ユーザ登録情報(氏名、属性等)、ユーザの各機構に対する設定情報(走行レバー感度設定、アタッチメントレバー感度設定等)を含むユーザの作業履歴情報等が入力され、加えて回転数センサおよび操作レバーセンサ27等からの検出結果が入力される。なお、属性情報はユーザが管理者(例えば各種設定情報のすべてを閲覧したり変更等できる権限を有する者)か使用者(例えば各種設定情報の一部のみ閲覧したり変更等できる権限を有する者)かを特定する情報である。出力部134からは、制御部130からの制御信号(動作制御信号、表示制御信号等)が制御対象(油圧ポンプ30、表示部60等)に出力される。データベース24は後述するユーザ認証に使用されるユーザ識別情報やユーザ登録情報を記憶するユーザ登録情報記憶部121、ユーザの作業履歴情報(作業用車両10の動作設定内容を含む)を記憶するユーザ履歴情報記憶部122を有する。登録処理部132は、あらかじめユーザ側から取得されたユーザ識別情報、ユーザ登録情報、ユーザの作業履歴情報(作業用車両10の動作設定内容を含む)をデータベース24に登録するとともに更新された場合にはデータベース24に登録済のユーザ識別情報、ユーザ登録情報、ユーザの作業履歴情報(作業用車両10の動作設定内容を含む)の更新を行う。
【0026】
表示部60は、作業用車両10のキャビン25内の運転席前方に設けられており、表示制御部136からの所定の表示制御信号に基づいてユーザ認証受付画面、ユーザの作業履歴情報画面(作業用車両10の動作設定内容を含む)等が表示される。
【0027】
[ユーザ認証処理]
以下に、具体的にどのようにユーザ認証を行うのかについて図5のフローチャートを参照して説明する。プッシュボタン72(エンジン始動ボタン:図6参照)が短押しされる(ステップS101)と、表示部60にパスコード認証画面が表示される(ステップS102)。パスコード認証画面は、図6に示すように所定桁数のパスコードを入力するように促す画面である。図6の例では、パスコード入力を促す画面が表示されているが、セキュリティを強化するためにユーザIDの入力の後にパスコードの入力を促すようにしてもよい。
【0028】
ステップS103において、表示部60の表示画面にパスコードが入力されると、ステップS104において、判定部131は、入力されたパスコードとデータベース24のユーザ登録情報記憶部121に記憶されている登録済のユーザのパスコードを比較する。そして判定部131は、入力されたパスコードがそのユーザのあらかじめ登録されているパスコードに一致する場合には認証が成功したと判定され(ステップS105)、入力したユーザが登録済ユーザであると判定される。次に、判定部131は、ステップS106において、プッシュボタン72が所定時間以上長押されたか否かを判定する。プッシュボタン72が所定時間以上長押された場合には、その判定結果を受けて第2のECU32がエンジン21を始動させる(ステップS107)。その後、プッシュボタン72が長押しあるいは短押しされる(ステップS108)とアクサリー電源がオフされ(ステップS109)、処理が終了する。
【0029】
ステップS104に戻り、判定部131は、入力されたパスコードがそのユーザのあらかじめ登録されているパスコードに一致しない場合には認証が失敗したと判定され(ステップS112)、ステップS102の処理に戻る。
【0030】
(変形例)
なお、ステップS102において、パスコード入力画面でそのユーザが登録済パスコードを入力しなかった場合でも、ユーザごとに異なるタグ情報を有するRFIDタグ(図6の例ではRFIDキー)71(図6参照)が配布されている場合には、このタグ情報をユーザ認証用のパスコードとして利用できる。なお、RFIDタグ71のタグ情報を読み取るRFIDタグ検出部(図示せず:読み取りリーダ)はエンジン始動ボタン72(プッシュボタン:図6参照)近傍に設けられている。RFIDタグ71には、個別ID(タグユーザID)が付与されており、使用者(作業者)等の氏名、属性等の情報がデータベース24に登録(記憶)されている。なお、属性情報は、ユーザが管理者か使用者かの区別するための情報である。
【0031】
以下に、RFIDタグ71を使ったユーザ認証について図5および図6を参照して説明する。具体的には、RFIDタグ検出部(図示せず:読み取りリーダ)にRFIDタグ71をかざし(ステップS110)、判定部131は、かざしたRFIDタグ71のタグ情報と予め登録されている登録済タグ情報とが一致しているかを判定する(ステップS111)。そして判定部131は、かざしたRFIDタグ71のタグ情報がそのユーザのあらかじめ登録されているタグ情報に一致する場合には認証が成功したと判定され(ステップS105)、入力したユーザが登録済ユーザであると判定される。ステップS111において、判定部131は、入力されたパスコードがそのユーザのあらかじめ登録されているパスコードに一致しない場合には認証が失敗したと判定され(ステップS112)、ステップS102の処理に戻る。
【0032】
上記した構成によれば、ユーザ認証が成功した作業者のみエンジンの始動ができるのでセキュリティと安全性の向上が図れる。さらに、表示部から行うユーザ認証が失敗した場合に、別の認証手段として機能するので、より確実にユーザ認証処理が行われる。
【0033】
[ユーザの作業履歴管理]
データベース24を構成するユーザ登録情報記憶部121には、上記したユーザ認証に使用されるユーザ登録情報(パスコード、RFID情報)が記憶されている。また、ユーザ履歴情報記憶部122には、ユーザの作業履歴情報が作業を行った各ユーザに紐づけされて記憶されている。この作業履歴情報は、作業者の氏名、ユーザID、作業日時、作業内容(例えば作業時間)、後述する言語設定内容、各機構の動作設定内容等であり、作業のたびにそのユーザに紐づけされて更新される。表示部60が起動されるとメニュー表示画面(図示せず)が表示され、メニュー表示画面に表示された作業履歴情報のボタン(例えばアイコン)を選択すると、例えば図9に示すような各ユーザ300の作業時間に関する作業履歴情報が表示される。図9に示す情報は作業用車両の運転開始時間310および作業用車両の運転終了時間320が表示され、今回の作業が終わればその作業時間が追加され、作業履歴情報がそのユーザに紐づけされて登録処理部132にて更新される。作業時間以外にも作業内容やユーザによる作業用車両の各機構の動作設定(走行レバー感度設定、アタッチメントレバー感度設定等)の情報(図示せず)も表示される。動作設定の詳細については後述する。なお、管理者と使用者で閲覧内容や作業履歴情報の中の利用できる情報に制限をかける(利用できる情報を区別する)ことができる。例えば、作業履歴情報の中の作業内容についての閲覧操作や使用者の登録・削除は管理者のみができて使用者はできないようにしたり、作業履歴情報の中の各機構の動作設定については使用者のみが設定できるようにすることができる。これは一例であって、操作制限(操作できる内容)は管理者と利用者のいずれかが利用可能とする設定をしてもよいし、両方が利用可能とするように設定をしてもよい。
【0034】
管理者と使用者で閲覧内容や作業履歴情報の中の利用できる情報に制限をかける(差を設ける)場合においては、管理者にとっては、例えば使用者の登録・削除ができるので、使用者の管理を円滑に行うことができる。また、ユーザごとに紐づけされた作業時間等の作業履歴情報を表示部60にて閲覧できるので、例えば、ある使用者の前回使用の際の各種動作設定がわかり、その使用者に対する作業の好み等がわかり使用者に対する管理の効率化を図ることができる。一方、使用者にとっては、自身の設定した過去の動作(走行レバー感度設定、アタッチメントレバー感度)を容易に把握できるので、例えば過去の設定と同じ設定を行いたい場合でも、その都度一から設定しなおすことなく短時間で設定が終了するので、作業の効率化を図ることができる。
【0035】
[表示画面に表示される文字等の言語設定]
表示部60が起動されるとメニュー表示画面(図示せず)が表示され、メニュー表示画面に表示された言語設定情報のボタン(例えば図7に示すようなアイコン151)を選択すると、例えば図7に示すような複数の言語選択ボタン150が表示される。今回の作業が終われば、今回選択された言語の情報がそのユーザに紐づけされて更新され、次回のそのユーザによる表示部60の起動後は表示部内に表示される文字等の言語は前回選択された言語となる。これにより言語が異なる外国人でも容易に設定等を行うことができる。
【0036】
[作業用車両の各機構の動作設定]
表示部60が起動されるとメニュー表示画面(図示せず)が表示され、メニュー表示画面に表示された各機構に関する動作設定ボタン(例えば図8に示すようなアイコン251)を選択すると、例えば図8に示すような複数の動作設定アイコン252,254,256および動作設定ボタン200,210,220が表示される。
【0037】
(走行レバー感度設定1)
動作設定ボタン200は、右側および左側の走行装置12の走行レバー感度をそれぞれ複数段階(図8では、レベルR1~レベルR10とレベルL1~レベルL10)で設定可能とするためのものである。なお、走行レバー感度を上昇させれば走行速度が上昇する。図8に示す動作設定ボタン200において、例えば、左側レベル選択ボタン337Lのタッチ回数に応じて左側レベルが上昇し、右側レベル選択ボタン337Rのタッチ回数に応じて右側レベルが上昇する。設定が完了すると、その設定された走行レバー感度は、登録処理部132により設定したユーザの情報に紐づけされてデータベース24に記憶される。
【0038】
(走行レバー感度設定2)
走行レバー感度設定ボタン(動作設定ボタン)220は、作業用車両10の走行レバー感度を例えば3段階(低感度、中感度、通常感度)で設定可能とするためのものである。なおこの段階は3段階に限られない。ユーザは、走行レバー感度設定ボタン220を押下して、自分の技量又は作業内容に応じて所望とするレベル(段階)を選択する。図8に示す走行レバー感度設定ボタン220において、例えば、走行レバー感度の選択は、左側レベル選択ボタン537Lのタッチ回数に応じて走行レバー感度のレベルが下がり、右側レベル選択ボタン537Rのタッチ回数に応じて走行レバー感度のレベルが上がる。設定が完了すると、その設定された走行レバー感度は設定したユーザの情報に紐づけされてデータベース24に記憶される。
【0039】
(アタッチメントレバー感度設定)
アタッチメントレバー感度設定ボタン(動作設定ボタン)210は、アタッチメントレバー感度を3段階(L1~L3)で設定可能とするためのものである。なおこの段階は3段階に限られないことは言うまでもない。なお、アタッチメントレバー感度を上昇させればアタッチメントの動作速度が上昇する。図8に示す動作設定ボタン210において、例えば、アタッチメントレバー感度速度の選択は、左側レベル選択ボタン437Lのタッチ回数に応じて左側レベルが上昇し、右側レベル選択ボタン437Rのタッチ回数に応じて右側レベルが上昇する。設定が完了すると、その設定されたアタッチメントレバー感度は、登録処理部132によって設定したユーザの情報に紐づけされてデータベース24に記憶される。
【0040】
(その他の設定)
上記した以外にも270度カメラ50,52,54で構成される270度カメラのオンオフ設定が挙げられる。
【0041】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。
【符号の説明】
【0042】
1・・・作業用車両用ユーザ管理システム、10・・・作業用車両(クローラローダ)、11a,11b・・・無端状の履帯(クローラ)、12・・・走行装置、13・・・本体フレーム、21・・・エンジン、22・・・第1のECU、23・・・制御ユニット、24・・・データベース、25・・・キャビン、27・・・操作レバーセンサ、30・・・油圧ポンプ、32・・・第2のECU、40・・・油圧モータ、60・・・表示部、61・・・オペレータシート、71・・RFIDタグ(RFIDキー)、72・・プッシュボタン(エンジン始動ボタン)、140・・左側油圧モータ、141・・右側油圧モータ
【要約】
【課題】セキュリティの向上を図るととも作業用車両のユーザの作業状況の管理を容易にすることができる作業用車両用ユーザ管理システムを提供すること。
【解決手段】作業用車両用ユーザ管理システム1は、作業用車両10に設けられている表示部60を介して入力されたユーザ情報に基づいてユーザ認証を含むユーザ管理業務を行う。制御ユニット23は、表示部60を介して入力されたユーザ識別IDと、あらかじめ登録されている登録ユーザ識別IDが一致するか否かを判定し、ユーザ識別IDと、あらかじめ登録されている登録ユーザ識別IDが一致した場合に、エンジン始動ボタンが所定時間以上押されたか否かを判定し、エンジン始動ボタンが所定時間以上押された場合に、エンジンを始動させる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9