(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ケーソン刃口下部の掘削除去装置
(51)【国際特許分類】
E02D 23/08 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
E02D23/08 D
E02D23/08 C
E02D23/08 F
(21)【出願番号】P 2023201494
(22)【出願日】2023-11-29
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000207780
【氏名又は名称】大豊建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】寺田 慶
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 高広
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-223444(JP,A)
【文献】特開2003-193478(JP,A)
【文献】特開平09-279598(JP,A)
【文献】特開昭52-065913(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109469082(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーソンの沈設作業時、又は前記ケーソンが所定深度まで沈設された床付時に前記ケーソンの刃口下部の土砂を掘削して除去するケーソン刃口下部の掘削除去装置であって、
地上の圧送ポンプから前記刃口下部付近まで配設されて高圧水が送り込まれる高圧配管と、
前記高圧配管に接続され、噴射口から前記刃口下部の土砂に向けて前記高圧水をジェット噴射する少なくとも1本のジェット噴射管と、
前記ジェット噴射管の下側に配設され、前記ケーソンの底盤部に当接する当接板と、を備え、
前記ジェット噴射管の噴射口からの噴射方向が水平方向よりも上側となるように前記噴射口が設けられ、前記当接板の先端部が前記噴射口より少なくとも前記刃口下部側へ突出するように設けられ、前記噴射口の噴射によって前記刃口下部の掘削された前記土砂及び前記刃口下部に堆積されたスライムを吸込管の吸込口から吸い込むように構成されていることを特徴とするケーソン刃口下部の掘削除去装置。
【請求項2】
前記吸込管が前記ジェット噴射管と平行に配設され、
前記噴射口と前記吸込管の吸込口とが互いに近傍に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のケーソン刃口下部の掘削除去装置。
【請求項3】
前記ジェット噴射管が複数配設され、これらのジェット噴射管における任意のジェット噴射管の噴射口から噴射する水平方向とのなす角度と、他のジェット噴射管の噴射口から噴射する水平方向とのなす角度が異なるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のケーソン刃口下部の掘削除去装置。
【請求項4】
装置本体に吸入ポンプが設置され、該吸入ポンプを駆動することによって前記刃口下部の掘削された前記土砂及び前記刃口下部に堆積された前記スライムを前記吸込管を通して前記吸入ポンプで吸い込むとともに、前記ケーソンの底盤部よりも下側のスライムを前記吸入ポンプの吸入口から吸入し、前記ケーソンの外部に排出するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のケーソン刃口下部の掘削除去装置。
【請求項5】
前記吸入ポンプの吸入口の上部及び側部がそれぞれ上面板及び側面板で囲まれるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のケーソン刃口下部の掘削除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばオープンケーソン工法における床付時のケーソン刃口下部の掘削除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オープンケーソン工法において、ケーソン刃口下部に付着した土砂を掘削するには、直上から直接掘削することができず、特に粘着力が高い土質の場合、掘残しが発生する場合がある。そのため、従来では、潜水士によるウォータージェット噴射で上記刃口下部の土砂突き崩しを行っていた。しかし、この場合には、上記刃口下部の先端部分までの確実な掘削、排土の施工や確認ができず、特に粘着力が高い土質では、深度が深い場合、土砂を綺麗に除去することができず、掘残しが発生する可能性があった。
【0003】
また、刃口部や底盤部に堆積したスライム(軟泥やヘドロ)は、スライムクリーナー(水中サンドポンプ)で排出するものの、この場合にはスライムよりも比重の軽い立坑内水が多く排出されることから非効率的であった。そして、床付の過掘りが発生する場合には、その場所に突き崩し土やスライムが堆積してしまうことがあった。
【0004】
このような状態で底盤コンクリートを打設すると、底盤強度が不足するとともに、出水の原因となり、構造物全体の品質低下につながる。また、沈設作業時の過掘りは、過沈下、傾斜、偏芯を誘発しかねず、次ロットのケーソン躯体の構築に影響を及ぼしたり、ケーソン躯体の沈設精度等、品質管理上の問題と成り兼ねない。
【0005】
従来、オープンケーソンの刃口の付着物を水流で剥離させ、ポンプで吸い込んで排出する技術として、特許文献1に記載された水中付着物除去装置がある。
【0006】
また、オープンケーソンの刃口下部の掘残しをジェット噴射で除去する技術として特許文献2に記載されたオープンケーソンの施工法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平5-132948号公報
【文献】特開平9-279598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された水中付着物除去装置では、刃口に薄く土砂が付着した程度であれば問題ないが、粘着力を有する粘土等が付着していた場合、ポンプの吐出力だけでは上記付着物が取り除けず、人力での突き崩し等で補助する必要がある。
【0009】
また、特許文献2に記載されたオープンケーソンの施工法では、ウォータージェット噴射管から噴射される圧力水が水平よりも下側に噴射されることがあり、この場合には刃口先端よりも下方まで過掘りをしてしまう可能性がある。また、高水圧環境下においては、ほぐしたスラリーを直ちに回収しなければ、除去された土砂が再固結してしまう可能性がある。
【0010】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、沈設作業時又は床付時の過掘りを未然に防止することができ、ケーソン刃口下部の土砂及びスライムを確実に排出可能なケーソン刃口下部の掘削除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明は、ケーソンの沈設作業時、又は前記ケーソンが所定深度まで沈設された床付時に前記ケーソンの刃口下部の土砂を掘削して排土するケーソン刃口下部の掘削排土装置であって、地上の圧送ポンプから前記刃口下部付近まで配設されて高圧水が送り込まれる高圧配管と、前記高圧配管に接続され、噴射口から前記刃口下部の土砂に向けて前記高圧水をジェット噴射する少なくとも1本のジェット噴射管と、前記ジェット噴射管の下側に配設され、前記ケーソンの底盤部に当接する当接板と、を備え、前記ジェット噴射管の噴射口からの噴射方向が水平方向よりも上側となるように前記噴射口が設けられ、前記当接板の先端部が前記噴射口より少なくとも前記刃口下部側へ突出するように設けられ、前記噴射口の噴射によって前記刃口下部の掘削された前記土砂及び前記刃口下部に堆積されたスライムを吸込管から吸い込むように構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記吸込管が前記ジェット噴射管と平行に配設され、前記噴射口と前記吸込管の吸込口とが互いに近傍に配置されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記ジェット噴射管が複数配設され、これらのジェット噴射管における任意のジェット噴射管の噴射口から噴射する水平方向とのなす角度と、他のジェット噴射管の噴射口から噴射する水平方向とのなす角度が異なるように設定されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、装置本体に吸入ポンプが設置され、該吸入ポンプを駆動することによって前記刃口下部の掘削された前記土砂及び前記刃口下部に堆積された前記スライムを前記吸込管を通して前記吸入ポンプで吸い込むとともに、前記ケーソンの底盤部よりも下側のスライムを前記吸入ポンプの吸入口から吸入し、前記ケーソンの外部に排出するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の構成に加え、前記吸入ポンプの吸入口の上部及び側部がそれぞれ上面板及び側面板で囲まれるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、少なくとも1本のジェット噴射管の噴射口からの噴射方向が水平方向よりも上側となるように噴射口が設けられ、当接板の先端部が噴射口より少なくとも刃口下部側へ突出するように設けられ、噴射口の噴射によって刃口下部の掘削された土砂及び刃口下部に堆積されたスライムを吸込管の吸込口から吸い込むように構成されているので、沈設作業時又は床付時の過掘りを未然に防止することができ、ケーソン刃口下部の土砂及びスライムを確実に排出することが可能となる。
【0017】
また、本発明の請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、吸込管がジェット噴射管と平行に配設され、噴射口と吸込管の吸込口とが互いに近傍に配置されていることにより、噴射口の噴射によって刃口下部の掘削された土砂を吸込管の吸込口から確実に吸い込むことができる。
【0018】
また、本発明の請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加え、任意のジェット噴射管の噴射口から噴射する水平方向とのなす角度と、他のジェット噴射管の噴射口から噴射する水平方向とのなす角度が異なるように設定されているので、ケーソン刃口下部の土砂を突き崩し易くなり、土砂を突き崩す作業効率を各段に向上させることができる。
【0019】
また、本発明の請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、吸入ポンプを駆動することによって刃口下部の掘削された土砂及び刃口下部に堆積されたスライムを吸込管を通して吸入ポンプで吸い込むとともに、ケーソンの底盤部よりも下側のスライムを吸入ポンプの吸入口から吸入し、ケーソンの外部に排出するように構成されているので、刃口下部の土砂及びスライムと底盤部よりも下側のスライムをケーソンの外部に確実かつ容易に排出することが可能となる。
【0020】
また、本発明の請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の効果に加え、吸入ポンプの吸入口の上部及び側部がそれぞれ上面板及び側面板で囲まれるように構成されていることにより、立坑内水をほとんど吸い込むことなく、刃口下部に堆積されたスライムを吸込管の吸込口から確実に吸い込むとともに、ケーソンの底盤部よりも下側のスライムを吸入ポンプの吸入口から確実に吸入することができる。その結果、スライムをケーソンの外部に効果的に排出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るケーソン刃口下部の掘削除去装置の沈設状態を示す構成図である。
【
図2】
図1の掘削除去装置でケーソン刃口下部を掘削する前にクラムシェルバケットでケーソン躯体内を床付高さまで掘削する状態を示す構成図である。
【
図3】
図1のケーソン刃口下部の掘削除去装置を示す概略平面図である。
【
図4】
図1のケーソン刃口下部の掘削除去装置を示す概略正面図である。
【
図5】
図4のケーソン刃口下部の掘削除去装置のジェット噴射管、当接板及び吸込口付近の構造を示す拡大図である。
【
図6】
図4のジェット噴射管及び噴射口を示す拡大側面図である。
【
図7】
図1の吸込管及び吸入ポンプを示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
[一実施の形態]
図1は、本発明の一実施の形態に係るケーソン刃口下部の掘削除去装置の沈設状態を示す構成図である。
図2は、
図1の掘削除去装置でケーソン刃口下部を掘削する前にクラムシェルバケットでケーソン躯体内を床付高さまで掘削する状態を示す構成図である。
図3は、
図1のケーソン刃口下部の掘削除去装置を示す概略平面図である。
図4は、
図1のケーソン刃口下部の掘削除去装置を示す概略正面図である。
図5は、
図4のケーソン刃口下部の掘削除去装置のジェット噴射管、当接板及び吸込口付近の構造を示す拡大図である。
図6は、
図4のジェット噴射管及び噴射口を示す拡大側面図である。
図7は、
図1の吸込管及び吸入ポンプを示す拡大側面図である。
【0024】
なお、本実施の形態の装置本体としてのケーソン刃口下部の掘削除去装置(以下、単に掘削除去装置という。)1は、オープンケーソン工法の施工に用いられる。このオープンケーソン工法とは、上下面が開放された筒状のケーソン躯体の内部を地上からクラムシェルバケット等の掘削機械により、掘削・排土しながら、地上で構築したケーソン躯体を徐々に沈設していく工法である。
【0025】
また、以下の本実施の形態の掘削除去装置1では、上記のようにしてケーソン躯体が所定深度まで沈設された床付時にケーソン躯体の刃口下部の土砂を掘削し、この土砂をスライムとともに排出する例について説明する。ここで、本発明は、ケーソン躯体が所定深度まで沈設された床付時だけではなく、ケーソン躯体の沈設作業時でも適用可能である。
【0026】
図1及び
図2に示すように、掘削除去装置1は、ケーソン躯体2が水中の所定深度まで沈設され、その刃口3は、ケーソン躯体2の下部において内周面から外周面にかけて傾斜する傾斜面となるテーパ面3aが形成されている。ケーソン躯体2内の底盤部(内底部)8は、
図2に示すように地上4からクラムシェルバケット5を操作して掘削・排土作業を繰り返し行うことにより、
図1に示すように所定深度までケーソン躯体2が構築される。クラムシェルバケット5は、索条体であるワイヤ6を介して地上に設置された巻上手段としてのクローラクレーン7によって立坑9内に吊下げ支持されている。
【0027】
上記のようにクラムシェルバケット5による掘削・排土作業だけでは、刃口3下部に土砂の掘残しが発生するだけでなく、テーパ面3aに粘性の高い土砂が付着しているとともに、スライムが堆積している状態である。
【0028】
本実施の形態の掘削除去装置1は、ケーソン躯体2の底盤部8に水中コンクリートを打設して底盤コンクリート層を構築するため、刃口3下部に掘り残した土砂や堆積したスライムを除去するとともに、テーパ面3aに付着している粘性の高い土砂を除去して床付けしておく。
図1では、この床付高さをHで示している。このようにすることで、底盤コンクリート層を構築した際の底盤強度の不足及び出水の原因を回避し、構造物全体の品質の低下を未然に防止するようにしている。
【0029】
掘削除去装置1は、刃口3下部付近に設置される。掘削除去装置1は、架台10を有し、この架台10は、例えばL型鋼を立体形状に組み合わせて溶接等の固定手段によって相互に接合して構成されている。なお、架台10は、
図1に示す形状に限らず如何なるものでもよく、ケーソン躯体2内の底盤部8へ設置した際に安定性を維持できる形状であればよい。
【0030】
図1に示すように、掘削除去装置1の底盤部8への設置状態において、架台10の刃口3下部側には、ジェット噴射部20が配設されている。このジェット噴射部20は、高圧配管11に接続されている。この高圧配管11は、地上4に設置された圧送ポンプ12から刃口3下部付近まで配設され、圧送ポンプ12を駆動することによって高圧水を、高圧配管11を通してジェット噴射部20に送り込むようにしている。
【0031】
掘削除去装置1の底盤部8への設置状態において、架台10の刃口3下部側と反対側には、ウエイト(重量物)13が配置されている。このウエイト13は、ジェット噴射部20によって刃口3下部の土砂に向けて高圧水をジェット噴射Jしたときでも、その反力に十分に耐え得るだけの重量を有している。
【0032】
架台10の中央部には、吸入ポンプとしてのスライムクリーナ(水中サンドポンプ)14が設置されている。このスライムクリーナ14は、底面側に吸入口14aが設けられる一方、上下方向略中間部に排出口14bが設けられている。この排出口14bには、排泥配管15の一端が接続され、この排泥配管15の他端がケーソン躯体2内を経て地上4まで延びている。なお、スライムクリーナ14は、例えばアキュムレータ付油圧モータを内蔵し、強力で安定した排泥機能を有するものである。このスライムクリーナ14は、駆動手段としてアキュムレータ付油圧モータを内蔵したが、これに限らず強力で安定した排泥機能を有する駆動手段であれば、それ以外のものを内蔵するようにしてもよい。
【0033】
ジェット噴射部20には、
図3~
図6に示すように複数(本実施の形態では4本)互いに平行に並設されたジェット噴射管21~24が設けられている。これらのジェット噴射管21~24は、それぞれ先端部に噴射口21a~24aを備えている。これらの噴射口21a~24aからは刃口3下部の土砂ESに向けて高圧水がジェット噴射Jされるように構成されている。本実施の形態では、ジェット噴射管21~24は、左右2本のジェット噴射管21,22、ジェット噴射管23,24をそれぞれ一組として2組設けられている。2組のジェット噴射管21,22と、ジェット噴射管23,24との間には、吸込管25が配置されている。この吸込管25は、ジェット噴射管21~24と平行に配設されている。吸込管25は、円筒状に形成されて下側がテーパ状に切り欠かれた吸込口25aを有し、この吸込口25aは噴射口21a~24aの近傍に配置されている。吸込管25は、スライムクリーナ14の吸入口14aと連通状態となるように設けられている。
【0034】
吸込管25は、噴射口21a~24aから噴射された高圧水によって刃口3下部の掘削された土砂ES及び刃口3下部に堆積されたスライムSを吸込口25aによって吸い込むように構成されている。すなわち、スライムクリーナ14を駆動するとともに、圧送ポンプ12を駆動して高圧配管11を通してジェット噴射管21~24の噴射口21a~24aから刃口3下部の土砂ESにジェット噴射Jして刃口3下部の土砂ESを突き崩すことによって、刃口3下部の突き崩された土砂ES及び刃口3下部に堆積されたスライムSが吸込管25を通してスライムクリーナ14に吸い込まれるとともに、ケーソン躯体2の底盤部8よりも下側のスライムSがスライムクリーナ14の吸入口14aから吸入され、その排出口14bを経て排泥配管15を通してケーソン躯体2の外部に排出するように構成されている。
【0035】
ジェット噴射管21~24の下側には、それぞれ断面L字状に形成された鋼板製の当接板26~29が配設されている。これらの当接板26~29は、掘削除去装置1の底盤部8への設置状態において、ケーソン躯体2の底盤部8に当接するように構成されている。これらの当接板26~29は、それぞれの先端部が噴射口21a~24aより少なくとも刃口3下部側へ突出するような長さに延びている。また、当接板26~29は、それぞれの幅が各ジェット噴射管21~24の径よりも広く形成されている。したがって、各ジェット噴射管21~24は、それぞれの当接板26~29の長さと幅の内側に納まるようになっている。
【0036】
図6に示すように、ジェット噴射管21,22の噴射口21a,22aは、それぞれ噴射する水平方向とのなす角度が異なるように設定されている。同様に、ジェット噴射管23,24の噴射口23a,24aもまた、それぞれ噴射する水平方向とのなす角度が異なるように設定されている。具体的に本実施の形態では、ジェット噴射管22,23の噴射口22a,噴射口23aの水平方向とのなす角度α、すなわち上向きの角度αが1度に設定され、ジェット噴射管21,24の噴射口21a,噴射口24aの水平方向とのなす角度β、すなわち上向きの角度βが30度に設定されている。
【0037】
スライムクリーナ14の下部は、角形の箱状に形成された鉄板製の包囲部材30によって包囲されている。具体的には、包囲部材30は、底面部が開口され、スライムクリーナ14の吸入口14aの取付部分が切り欠かれた1枚の角形の上面板31と、この上面板31の4辺からそれぞれ立ち下がるように4枚の側面板32を備えている。これにより、スライムクリーナ14の吸入口14aの上部及び側部が1枚の上面板31と4枚の側面板32a~32dとで囲まれるように構成されている。
【0038】
4枚の側面板32の内の1枚の側面板32aには、ジェット噴射管21~24及び吸込管25が貫通するように固定されている。上面板31と側面板32aとの角部には、保護部材35の後端部が溶接によって固定されている一方、その先端部が当接板26~29の先端近傍に溶接によって固定されている。これにより、保護部材35は、上面板31と側面板32aとの角部と当接板26~29の先端近傍との間で傾斜して設けられている。保護部材35は、断面L字状に形成された鋼板製のL字金具によって平面視コ字状に形成されている。
【0039】
保護部材35は、その幅が当接板26~29の全体の幅よりも広く、かつその長さが噴射口21a~24aの近傍まで延びて形成されている。このように保護部材35を形成したことにより、掘削除去装置1の移送時にジェット噴射管21~24及び吸込管25が他の部材に衝突して損傷するのを未然に防止することが可能となる。
【0040】
次に、本実施の形態に係るケーソン刃口下部の掘削除去装置の作用について説明する。
【0041】
まず、
図2に示すように地上4からクラムシェルバケット5を操作して掘削・排土作業を繰り返し行うことにより、床付高さHまで掘削する。
【0042】
次に、本実施の形態に係る掘削除去装置1を例えばクローラクレーン7によって吊り下げて立坑9内に吊り下げて掘削除去装置1のジェット噴射部20がケーソン躯体2の刃口3下部に対向するように底盤部8に着床させる。
【0043】
そして、スライムクリーナ14を駆動させて刃口3下部に堆積されたスライムSを吸込管25から吸い込むとともに、ケーソン躯体2の底盤部8よりも下側のスライムSを吸入口14aから吸入し、これらのスライムSを、排泥配管15を経て外部に排出する。
【0044】
さらに、圧送ポンプ12を駆動して高圧配管11を通してジェット噴射管21~24の噴射口21a~24aから刃口3下部の土砂ESに向けてジェット噴射Jする。これにより刃口3下部の土砂ESの突き崩しを行う。ここで、ジェット噴射管21,22の噴射口21a,22aは、それぞれ噴射する水平方向とのなす角度が異なるように設定されるとともに、ジェット噴射管23,24の噴射口23a,24aもまた、それぞれ噴射する水平方向とのなす角度が異なるように設定されている。
【0045】
具体的には、噴射口22a,噴射口23aの水平方向とのなす角度α、すなわち上向きの角度αが1度に設定され、噴射口21a,噴射口24aの水平方向とのなす角度β、すなわち上向きの角度βが30度に設定されているので、噴射口21aと噴射口24aからそれぞれジェット噴射Jした噴流が交差して合流するように刃口3下部の土砂ESに噴射される。これにより、土砂ESへの噴射量が倍加されて崩れ易くなり、刃口3下部における土砂ESの突き崩す作業効率を各段に向上させることができる。
【0046】
そして、掘削除去装置1が床付高さHの深さになったら、掘削除去作業が完了となり、次の施工箇所に掘削除去装置1全体を例えばクローラクレーン7によって吊り下げて移動させる。
【0047】
なお、本実施の形態では、潜水夫による刃口3下部の土砂ESの突き崩し作業がなくなるので、潜水作業が大幅に削減され安全性及び作業性を向上させることができる。
【0048】
このように本実施の形態によれば、複数のジェット噴射管21~24の噴射口21a~24aからの噴射方向が水平方向よりも上側となるように噴射口21a~24aが設けられ、当接板26~29の先端部が噴射口21a~24aより少なくとも刃口3下部側へ突出するように設けられ、噴射口21a~24aの噴射によって刃口3下部の掘削された土砂ES及び刃口3下部に堆積されたスライムSを吸込管25の吸込口25aから吸い込むように構成されているので、床付時の過掘りを未然に防止することができ、刃口3下部の土砂ES及びスライムSを確実に排出することが可能となる。この場合、ケーソン躯体2が所定深度まで沈設された床付時だけではなく、ケーソン躯体2の沈設作業時でも同様の効果を得ることができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、吸込管25がジェット噴射管21~24と平行に配設され、噴射口21a~24aと吸込管25の吸込口25aとが互いに近傍に配置されていることにより、噴射口21a~24aの噴射によって刃口3下部の掘削された土砂ESを吸込管25の吸込口25aから確実に吸い込むことができる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、任意のジェット噴射管21,23の噴射口21a,23aから噴射する水平方向とのなす角度αと、他のジェット噴射管22,24の噴射口22a,24aから噴射する水平方向とのなす角度βが異なるように設定されているので、刃口3下部の土砂ESを突き崩し易くなり、土砂ESを突き崩す作業効率を各段に向上させることができる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、スライムクリーナ14を駆動することによって刃口3下部の掘削された土砂ES及び刃口3下部に堆積されたスライムSを吸込管25を通してスライムクリーナ14で吸い込むとともに、底盤部8よりも下側のスライムSをスライムクリーナ14の吸入口14aから吸入し、ケーソン躯体2の外部に排出するように構成されているので、刃口3下部の土砂ES及びスライムSと底盤部8よりも下側のスライムSをケーソン躯体2の外部に確実かつ容易に排出することが可能となる。
【0052】
また、本実施の形態によれば、スライムクリーナ14の吸入口14aの上部及び側部がそれぞれ上面板31及び側面板32a~32dで囲まれるように構成されていることにより、立坑内水をほとんど吸い込むことなく、刃口3下部に堆積されたスライムSを吸込管25の吸込口25aから確実に吸い込むとともに、ケーソン躯体2の底盤部8よりも下側のスライムSをスライムクリーナ14の吸入口14aから確実に吸入することができる。その結果、スライムSをケーソン躯体2の外部に効果的に排出することが可能となる。
【0053】
また、本実施の形態によれば、掘削除去装置1にウエイト13を配置したことにより、高圧水をジェット噴射Jしたときでも、その反力に十分に耐え得る効果に加えて、掘削除去装置1の重量バランスがとれるとともに、底盤部8に堆積するスライムSに対し掘削除去装置1の側面板32a~32dの下端部を押し付けることによって密閉空間を形成することができる。これにより、底盤部8に堆積するスライムSを確実かつ容易に吸入することができる。
【0054】
また、本実施の形態によれば、吸込管25の吸込口25aの下側がテーパ状に切り欠かれて形成されているので、立坑内水をさほど吸い込むことなく、刃口3下部の土砂ES及びスライムSをより多く確実に吸い込むことができる。
【0055】
[発明の他の実施形態]
本発明の一実施の形態を説明したが、この実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0056】
上記一実施の形態においては、ジェット噴射管21,23の噴射口21a,噴射口23aの水平方向とのなす角度αを1度に設定し、ジェット噴射管22,24の噴射口22a,噴射口24aの水平方向とのなす角度βを30度に設定した例について説明したが、これに限らずジェット噴射管21~24と噴射口21a~24aとの間をそれぞれ自在継手配管によって接続することで、噴射口21a~24aの噴射角度を任意に変更することができるようにしてもよい。
【0057】
ここで、噴射口21a~24aから噴射されるジェット噴射Jによって土砂ESに対する最も突き崩し効果の高い噴射角度は、刃口3下部のテーパ面3aの形状や土砂ESの形状によって異なることから、刃口3下部のテーパ面3aの形状や土砂ESの形状に基づいて噴射口21a~24aの噴射角度を変更するようにすれば、土砂ESの突き崩す作業効率を各段に向上させることができる。
【0058】
また、上記一実施の形態では、ジェット噴射管21~24において左右2本のジェット噴射管21,22、ジェット噴射管23,24をそれぞれ一組として2組設けた例について説明したが、これに限らず水平方向にそれ以上の複数組又は複数本並設するようにしてもよく、また複数組又は複数本のジェット噴射管を上下方向に多段に配設するようにしてもよい。さらに、上記一実施の形態では、複数本(4本)のジェット噴射管21~24を設けた例について説明したが、これに限らず1本でもよく、つまり少なくとも1本設けられていればよい。
【0059】
さらに、ジェット噴射管21~24にそれぞれ隣接して土砂ESを突き崩すための先尖状の突き刺し棒を噴射口21a~24aよりも刃口3下部側へ突出するように設けてもよい。このように構成することで、突き刺し棒によって土砂ESを突き刺すと同時に、ジェット噴射管21~24のジェット噴射Jによって土砂ESを突き崩す効果を一段と向上させることができる。
【0060】
そして、上記一実施の形態では、ケーソン躯体2の全体形状を円形容器状に形成した例について説明したが、これに限らず角形容器状、楕円容器状、又は多角形容器状に形成したものでもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 掘削除去装置
2 ケーソン躯体
3 刃口
3a テーパ面
4 地上
5 クラムシェルバケット
6 ワイヤ
7 クローラクレーン
8 底盤部
9 立坑
10 架台
11 高圧配管
12 圧送ポンプ
13 ウエイト
14 スライムクリーナ(吸入ポンプ)
14a 吸入口
14b 排出口
15 排泥配管
20 ジェット噴射部
21~24 ジェット噴射管
21a~24a 噴射口
25 吸込管
25a 吸込口
26~29 当接板
30 包囲部材
31 上面板
32a~32d 側面板
35 保護部材
ES 土砂
H 床付高さ
S スライム
J シェット噴射
【要約】
【課題】沈設作業時又は床付時の過掘りを未然に防止することができ、ケーソン刃口下部の土砂及びスライムを確実に排出可能なケーソン刃口下部の掘削除去装置を提供する。
【解決手段】掘削除去装置1は、一例として複数のジェット噴射管21~24の噴射口21a~24aからの噴射方向が水平方向よりも上側となるように噴射口21a~24aが設けられ、当接板26~29の先端部が噴射口21a~24aより少なくとも刃口下部側へ突出するように設けられ、噴射口21a~24aの噴射によって刃口下部の掘削された土砂及び刃口下部に堆積されたスライムを吸込管25の吸込口25aから吸い込むように構成されている。
【選択図】
図3