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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】接合構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/07 20060101AFI20240604BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20240604BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
F16B5/07 C
F16B5/02 A
B25J19/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023500831
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2022005754
(87)【国際公開番号】W WO2022176817
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2021025391
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】白松 大祐
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-201117(JP,A)
【文献】特開平05-310164(JP,A)
【文献】特開2016-198849(JP,A)
【文献】特開2017-087392(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0168126(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/07
F16B 5/02
B25J 1/00- 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主接合面と、前記第1主接合面と立体的に交差する第1副接合面と、を有する第1部材と、
前記第1主接合面に対向する第2主接合面と、前記第1副接合面に対向する第2副接合面と、を有する第2部材と、
前記第1主接合面と前記第2主接合面との対向間距離が縮まるにつれて、前記第1副接合面と前記第2副接合面との対向間距離をしだいに縮めるとともに、前記第1主接合面に前記第2主接合面が接合すると、前記第1副接合面への前記第2副接合面の接合を可能とし、かつ、前記第1部材に対して前記第2部材を位置決めするガイド部と、
接合した前記第1主接合面と前記第2主接合面とを互いに締結する締結部材と、を備える、接合構造。
【請求項2】
前記ガイド部は、
前記第1主接合面および前記第2主接合面のうちの一方に設けられたガイド突起と、
前記第1主接合面および前記第2主接合面のうちの他方に設けられ、前記ガイド突起が嵌合するガイド穴と、を含み、
前記ガイド穴は、前記ガイド突起が嵌合していくにつれて、前記第2部材を前記第1副接合面に向けて移動させるガイド斜面を有する、請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記ガイド部は、
前記第1主接合面に設けられた第1ガイド穴と、
前記第2主接合面に設けられた第2ガイド穴と、
前記第1ガイド穴および前記第2ガイド穴の双方に嵌合するガイド片と、を含み、
前記第1ガイド穴および前記第2ガイド穴のそれぞれは、前記ガイド片が嵌合していくにつれて、前記第2部材が前記第1副接合面に向けて移動可能な方向に延びている、請求項1に記載の接合構造。
【請求項4】
前記第1主接合面と前記第2主接合面との間、および前記第1副接合面と前記第2副接合面との間のそれぞれに、シール材が介装される、請求項1~3のいずれか1項に記載の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材どうしを接合する接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体的に交差する2つの面を備えた部材に対して、それら2つの面に対向する面を備えた別の部材を、対向する面どうしを密着する状態に接合して固定する構造がある。例えば特許文献1には、装置本体のフレームを複数のカバーで覆う構造において、フレームは、互いにほぼ直交する状態で立体的に交差する接合面としての開放端とロボット連結部とを備え、カバーは、第一端および第二端と下端とを備え、フレームの開放端にカバーの第一端および第二端を接合し、フレームのロボット連結部にカバーの下端を接合する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-198347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような接合構造においては、一方側の接合面どうしが互いに密着するように2つの部材どうしを締結した場合、他方側の接合面においてその締結力の方向は面方向に沿ったものとなるため、締結力が伝わらない。このため、その他方側の接合面の密着状態を強めて液密的にシールすることが難しい。そこで、2つの部材の立体的に交差する接合面どうしを密着させることができる接合構造が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る接合構造は、第1主接合面と、前記第1主接合面と立体的に交差する第1副接合面と、を有する第1部材と、前記第1主接合面に対向する第2主接合面と、前記第1副接合面に対向する第2副接合面と、を有する第2部材と、前記第1主接合面と前記第2主接合面との対向間距離が縮まるにつれて、前記第1副接合面と前記第2副接合面との対向間距離をしだいに縮めるとともに、前記第1主接合面に前記第2主接合面が接合すると、前記第1副接合面への前記第2副接合面の接合を可能とし、かつ、前記第1部材に対して前記第2部材を位置決めするガイド部と、接合した前記第1主接合面と前記第2主接合面とを互いに締結する締結部材と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
一態様によれば、2つの部材の立体的に交差する接合面どうしを密着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第1実施形態に係る接合構造が適用された多関節ロボットの斜視図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る接合構造が適用された多関節ロボットの第2アーム部を一方向から見た分解斜視図である。
図3】本開示の第1実施形態に係る接合構造が適用された多関節ロボットの第2アーム部を他方向から見た分解斜視図である。
図4】本開示の第1実施形態に係る接合構造のガイド部を示す図であって、上記第2アーム部のケーシングにカバーが接合された状態を示す一部断面平面図である。
図5】本開示の第1実施形態に係る接合構造のガイド部を示す図であって、上記第2アーム部のケーシングとカバーとが分離した状態の一部断面平面図である。
図6】本開示の第1実施形態のガイド部の変形例を示す図であって、上記第2アーム部のケーシングにカバーが接合された状態を示す一部断面平面図である。
図7図6のVII-VII断面図である。
図8】本開示の第1実施形態のガイド部の変形例を示す図であって、上記第2アーム部のケーシングとカバーとが分離した状態の一部断面平面図である。
図9】本開示の第2実施形態に係る接合構造が適用された多関節ロボットの第2アーム部を一方向から見た分解斜視図である。
図10】本開示の第2実施形態に係る接合構造が適用された多関節ロボットの第2アーム部を他方向から見た分解斜視図である。
図11】本開示の第2実施形態に係る接合構造のガイド部を示す図であって、上記第2アーム部のケーシングにカバーが接合された状態を示す一部断面平面図である。
図12】本開示の第2実施形態に係る接合構造のガイド部を示す図であって、上記第2アーム部のケーシングとカバーとが分離した状態の一部断面平面図である。
図13】本開示の第3実施形態に係る多関節ロボットの第2アーム部を一方向から見た分解斜視図である。
図14】本開示の第3実施形態に係る多関節ロボットの第2アーム部を他方向から見た分解斜視図である。
図15】本開示の第3実施形態に係る多関節ロボットの第2アーム部のケーシングと前側カバーおよび後側カバーとが分離した状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、本明細書での「略」は厳密にその状態、大きさ、方向、向き等を特定するものではなく、それらの機能や効果を達成可能な範囲で近似する状態を含むという意味である。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る接合構造が適用された産業用の多関節ロボット1の外観を示している。多関節ロボット1は、基台1Aと、基台1Aに旋回可能に支持された第1アーム部1Bと、第1アーム部1Bの先端にジョイント部1Cを介して旋回可能に支持された第2アーム部1Dと、第2アーム部1Dの先端に旋回可能に支持された手首部1Eと、を備えている。図1において、S1は第1アーム部1Bの旋回軸線を示し、S2は第2アーム部1Dの旋回軸線を示し、S3は手首部1Eの旋回軸線を示している。第2アーム部1Dに、第1実施形態の接合構造が適用されている。
【0010】
図2および図3に示すように、第2アーム部1Dは、第1部材としてのケーシング2と、第2部材としてのカバー3と、ガイド部4と、締結部材としてのねじ5と、を備える。
【0011】
なお、図2および図3には、第2アーム部1Dの長さ方向を矢印Lで示し、幅方向を矢印Wで示し、長さ方向Lおよび幅方向Wに直交する上下方向を矢印Tで示している。また、特に長さ方向Lにおいては、第2アーム部1Dの先端側をL1、後端側をL2で示している。また、特に幅方向Wにおいては、後述の開口部23が配置される左側をW1、その反対側をW2で示している。
以下の説明での長さ方向、幅方向(または左右方向)および上下方向は、図2および図3にそれぞれ示す長さ方向L、幅方向Wおよび上下方向Tに基づくものとする。
また、図4図15においても、これら長さ方向L、幅方向Wおよび上下方向Tのいずれかを同様に適用している。
【0012】
ケーシング2は、第2アーム部1Dの主体をなす。ケーシング2は、本体部21と、本体部21の先端のフォーク部22と、を有する。フォーク部22は、互いに平行な一対の突出部221を含む。一対の突出部221は、本体部21と一体であって、先端L1側に突出しており、第2アーム部1Dの左右の側部にそれぞれ配置されている。一対の突出部221のそれぞれの先端は、半円弧状に形成されている。一対の突出部221の間に手首部1Eが配置され、かつ、旋回可能に支持される。ケーシング2の内部に、手首部1Eを旋回させる不図示の駆動機構等が収容される。
【0013】
ケーシング2は、左W1側の側部に開口部23を有する。開口部23は、本体部21における長さ方向Lの中間部分から、一方の突出部221にわたって設けられている。開口部23は、側方(左W1側)に面するU字状の第1主接合面24と、先端L1側に面する第1副接合面25と、に囲まれている。第1主接合面24と第1副接合面25とは、略直交する状態で立体的に交差する。
【0014】
開口部23は、第1主接合面24に囲まれて側方(左W1側)に開口する主開口部231と、第1副接合面25に囲まれて先端L1側に開口する副開口部232と、を含む。主開口部231と副開口部232とは連続している。図2の二点鎖線233は、主開口部231と副開口部232との境界を示している。ケーシング2の第1主接合面24の所定箇所に、複数のねじ穴26が設けられている。
【0015】
カバー3は、ケーシング2に固定されて開口部23を塞ぐ部材である。カバー3は、主開口部231を覆う形状および寸法を有する平板部31と、平板部31の長さ方向Lに延びるU字状の縁からケーシング2側に略直角に立ち上がる(右W2側に延びる)U字状の枠壁部32と、を有する。カバー3の内側(ケーシング2側)には、枠壁部32で囲まれた凹所33が形成されている。枠壁部32は、ケーシング2の第1主接合面24に対向し(右W2側に面し)、この第1主接合面24に接合される第2主接合面34を有する。また、カバー3は、ケーシング2の第1副接合面25に対向し(後端L2側に面し)、この第1副接合面25に接合される第2副接合面35を有する。
【0016】
枠壁部32の第2主接合面34には、複数の挿通穴36が設けられている。複数の挿通穴36のそれぞれは、ケーシング2の第1主接合面24に設けられた複数のねじ穴26のそれぞれに対応する箇所に配置されている。複数の挿通穴36に挿通されたねじ5が、各挿通穴36に対応するねじ穴26にねじ込まれることにより、カバー3がケーシング2に締結される。カバー3がケーシング2に締結されて固定されると、開口部23が閉塞される。
【0017】
本明細書において、「面に穴が設けられる」とは、面を含む部位に、面から延びるように穴が設けられるということである。「面に突起(およびそれに類似するもの)が設けられる」とは、面を含む部位から突起が突出しているということである。
【0018】
図2に示すように、ケーシング2とカバー3との間に、ゴム等の弾性材からなるシール材6が介装される。シール材6は、ケーシング2の第1主接合面24および第1副接合面25に沿って配置される形状およびサイズを有する。シール材6は、第1主接合面24と第2主接合面34との間、および第1副接合面25と第2副接合面35との間に介装される。シール材6は、ねじ5による締結力によりケーシング2とカバー3とに強く挟まれて潰れる。これにより、開口部23は液密的にシールされる。
【0019】
ガイド部4は、上記のようにカバー3がケーシング2の開口部23を閉塞した状態で、カバー3の第2主接合面34をケーシング2の第1主接合面24に位置決めする機能を備える。また、カバー3の第2副接合面35をケーシング2の第1副接合面25に位置決めするとともに、ある程度の押圧力をもって密着させる機能を備える。
【0020】
図2および図3に示すように、第1実施形態に係るガイド部4は、カバー3の第2主接合面34に設けられた複数のガイド突起41と、ケーシング2の第1主接合面24に設けられたガイド穴42と、を含む。図4に示すように、ガイド突起41は、右W2側に突出しており、右W2側に凹んでいるガイド穴42に嵌合される。本実施形態では、図3に示すように、ガイド突起41は、カバー3の第2主接合面34の長さ方向Lに延びる上下の部分に1つずつ配置されている。そしてガイド穴42は、図2に示すように、各ガイド突起41に対応する2箇所に配置されている。
なお、ガイド突起41およびガイド穴42の数や位置は限定されないが、位置決め精度を高める観点から、複数が分散して配置されることが好ましい。
【0021】
図5に示すように、ガイド穴42は略円筒穴であって、その開口側に、ガイド斜面としてのテーパ内周面421を有する。テーパ内周面421は、ガイド穴42の奥に向かうにつれて縮径するように円錐穴状に形成されている。一方、ガイド突起41は略円柱状であって、その先端側にテーパ外周面411を有する。テーパ外周面411は、ガイド突起41の先端に向かうにつれて縮径するように円錐状に形成されている。ガイド突起41はガイド穴42に対して、テーパ外周面411の一部がテーパ内周面421の一部に摺動しながら挿入され、嵌合する。
【0022】
本実施形態のガイド部4によれば、上述したようにカバー3によりケーシング2の開口部23を閉塞するにあたり、ケーシング2の第1主接合面24にカバー3の第2主接合面34が合致するようにカバー3をケーシング2に近付けていくと、2つのガイド突起41のそれぞれは、対応するケーシング2のガイド穴42に挿入されていく。
【0023】
ここで、ケーシング2の第1主接合面24と、カバー3の第2主接合面34との対向間距離が縮まるにつれて、ガイド突起41はガイド穴42に挿入されていく。その挿入の過程において、ガイド突起41がガイド穴42のテーパ内周面421にガイドされることにより、カバー3はケーシング2の第1副接合面25に向けて移動し、第1副接合面25と第2副接合面35との対向間距離もしだいに縮まっていく。図5の矢印F1は、そのときのカバー3の移動方向を示しており、ケーシング2に近付くにつれてカバー3は図5において左側(ケーシング2での後端L2側)の第1副接合面25に向けて移動していく。そして、図4に示すようにガイド穴42にガイド突起41が嵌合してカバー3の第2主接合面34がケーシング2の第1主接合面24に密着する状態に接合すると、カバー3の第2副接合面35がケーシング2の第1副接合面25に密着する状態に接合する。
【0024】
ケーシング2の複数のねじ穴26のそれぞれにカバー3の複数の挿通穴36のそれぞれが合致し、各挿通穴36に通したねじ5がねじ穴26にねじ込まれると、カバー3の第2主接合面34がケーシング2の第1主接合面24に押圧されて締結する締結力が発生する。カバー3はこの締結力によってケーシング2に固定されるが、ガイド突起41がガイド穴42に嵌合するに伴ってカバー3がケーシング2の第1副接合面25側に移動することにより、その締結力は、カバー3の第2副接合面35がケーシング2の第1副接合面25を押圧して密着させるように働く。
【0025】
本実施形態では、ケーシング2とカバー3との間にシール材6が介装される。シール材6における、ケーシング2の第1主接合面24とカバー3の第2主接合面34との間に挟まれる部分、およびケーシング2の第1副接合面25とカバー3の第2副接合面35との間に挟まれる部分、すなわちシール材6の全体が、ねじ5による締結力によって強く挟まれて潰れる。これにより、開口部23は液密的にシールされる。
【0026】
ねじ5による締結力の方向は、ねじ5がねじ込まれる方向、すなわちケーシング2の第1主接合面24に略直交する方向である。このため、通常は、第1主接合面24に略直交して立体的に交差する第1副接合面25と第2副接合面35とを互いに密着させる締結力は発生しない。ところが本実施形態では、カバー3をケーシング2に近付けていくと、ガイド部4の作用によってカバー3がケーシング2の第1副接合面25の方向に移動するため、ねじ5による締結力は、カバー3の第2副接合面35をケーシング2の第1副接合面25に押し付けるように働く。このため、ねじ5によってカバー3をケーシング2に固定すると、カバー3の第2主接合面34をケーシング2の第1主接合面24に密着接合させることができることはもとより、カバー3の第2副接合面35をケーシング2の第1副接合面25に容易に密着接合させることができる。
【0027】
なお、ガイド突起41をケーシング2の第1主接合面24に設け、ガイド穴42をカバー3の第2主接合面34に設けてもよい。あるいは、ガイド突起41およびガイド穴42をケーシング2側に設け、これらに対応するガイド穴42およびガイド突起41をカバー3側に設けてもよい。
【0028】
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
多関節ロボット1の第2アーム部1Dに適用された第1実施形態に係る接合構造は、第1主接合面24と、第1主接合面24と立体的に交差する第1副接合面25と、を有するケーシング2と、第1主接合面24に対向する第2主接合面34と、第1副接合面25に対向する第2副接合面35と、を有するカバー3と、第1主接合面24と第2主接合面34との対向間距離が縮まるにつれて、第1副接合面25と第2副接合面35との対向間距離をしだいに縮めるとともに、第1主接合面24に第2主接合面34が接合すると、第1副接合面25への第2副接合面35の接合を可能とし、かつ、ケーシング2に対してカバー3を位置決めするガイド部4と、接合した第1主接合面24と第2主接合面34とを互いに締結するねじ5と、を備える。
【0029】
これにより、ケーシング2とカバー3の、立体的に交差する接合面どうし、すなわちケーシング2の第1主接合面24とカバー3の第2主接合面34、およびケーシング2の第1副接合面25とカバー3の第2副接合面35、のいずれの接合面どうしを、一方向にねじ込むねじ5によって密着させることができる。
【0030】
第1実施形態において、ガイド部4は、第1主接合面24および第2主接合面34のうちの一方に設けられたガイド突起41と、第1主接合面24および第2主接合面34のうちの他方に設けられ、ガイド突起41が嵌合するガイド穴42と、を含み、ガイド穴42は、ガイド突起41が嵌合していくにつれて、第2部材を第1副接合面25に向けて移動させるテーパ内周面421を有する。
【0031】
これにより、簡素な構造でガイド部4を構成することができる。
【0032】
第1実施形態において、ケーシング2の第1主接合面24とカバー3の第2主接合面34との間、およびケーシング2の第1副接合面25とカバー3の第2副接合面35との間のそれぞれには、シール材6が介装される。
【0033】
シール材6は、ケーシング2の第1主接合面24とカバー3の第2主接合面34との間に挟まれる部分のみならず、上記のようにケーシング2の第1副接合面25とカバー3の第2副接合面35との間に挟まれる部分も、ねじ5による締結力によって強く挟まれて潰れる。これにより、開口部23の全体が液密的にシールされる。
【0034】
図6図8は、上記第1実施形態のガイド部4を構成するガイド突起およびガイド穴の変形例を示している。当該変形例では、第1実施形態のガイド突起41に代えてガイド突起45をカバー3が備え、第1実施形態のガイド穴42に代えてガイド穴44をケーシング2が備えている。
【0035】
図6および図7は、ガイド穴44にガイド突起45が嵌合した状態を示している。
ケーシング2のガイド穴44は断面矩形状であって、図8に示すように、その内壁における第2アーム部1Dの先端L1側に、ガイド斜面441を有する。ガイド斜面441は第2アーム部1Dの上下T方向に沿っているが、ガイド穴44の奥に向かうにつれて後端L2側、すなわち第1副接合面25の方向にせり出しており、第1主接合面24に対して傾斜している。
【0036】
カバー3のガイド突起45は、断面矩形状であって、図8に示すように、第2アーム部1Dの先端L1側に、傾斜面451を有する。傾斜面451は、ガイド突起45がガイド穴44に挿入される際に、ガイド斜面441に摺動するように傾斜している。
【0037】
この変形例によれば、ガイド突起45をガイド穴44に挿入して嵌合させる過程で、ガイド突起45の傾斜面451がガイド穴44のガイド斜面441を摺動することにより、カバー3がケーシング2の第1副接合面25の方向にしだいに移動し、第1副接合面25と第2副接合面35との対向間距離もしだいに縮まっていく。図8の矢印F2は、そのときのカバー3の移動方向を示している。そして、図6に示すようにガイド穴44にガイド突起45が嵌合してカバー3の第2主接合面34がケーシング2の第1主接合面24に密着する状態に接合すると、カバー3の第2副接合面35がケーシング2の第1副接合面25に密着する状態に接合する。
【0038】
したがってこの変形例によっても、ケーシング2の第1主接合面24とカバー3の第2主接合面34、およびケーシング2の第1副接合面25とカバー3の第2副接合面35、のいずれの接合面どうしを、一方向にねじ込むねじ5によって密着させることができる。
【0039】
続いて、第2実施形態および第3実施形態を説明する。第2実施形態および第3実施形態は、上述した第1実施形態と同様の構成を多く備える。そこで、図面を参照するにあたっては、第1実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付してそれらの説明を省略または簡略化し、主に相違点のみを説明する。
【0040】
(第2実施形態)
図9図12を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態のガイド部4の構成が異なっている。
【0041】
図9および図10に示すように、第2実施形態に係るガイド部4は、ケーシング2の第1主接合面24に設けられた複数の第1ガイド穴46と、カバー3の第2主接合面34に、各第1ガイド穴46に対応して設けられた複数の第2ガイド穴47と、互いに対応する第1ガイド穴46および第2ガイド穴47の双方に嵌合するガイド片48と、を含む。本実施形態では、第1ガイド穴46は、第1主接合面24の長さ方向Lに延びる上下の部分に1つずつ配置されている。そしてこれに対応して、第2ガイド穴47は、第2主接合面34の長さ方向Lに延びる上下の部分に1つずつ配置されている。
なお、第1ガイド穴46および第2ガイド穴47の数や位置は限定されないが、位置決め精度を高める観点から、複数が分散して配置されることが好ましい。
【0042】
図11は、第1ガイド穴46および第2ガイド穴47の双方にガイド片48が嵌合した状態を示している。第1ガイド穴46および第2ガイド穴47はいずれも略円筒穴であって、互いにほぼ同じ内径を有する。第1ガイド穴46は右W2側に凹んでいる。第2ガイド穴47は左W1側に凹んでいる。
【0043】
第1ガイド穴46は、軸線方向が第2アーム部1Dの長さ方向Lおよび幅方向Wで形成される面内に沿っているが、奥に向かうにつれて後端L2側、すなわち第1副接合面25の方向に軸線が傾斜している。そして第2ガイド穴47の軸線は、カバー3がケーシング2に固定された状態において、第1ガイド穴46の軸線と平行になるように設定されている。
【0044】
第2実施形態のガイド部4は、ガイド片48を各第1ガイド穴46および各第2ガイド穴47のうちの一方に嵌合させてから、カバー3で開口部23を塞ぐように、カバー3をケーシング2に近付けていく。例えば、ガイド片48をケーシング2の第1ガイド穴46に嵌合させ、ガイド片48にカバー3の第2ガイド穴47が嵌合するように、カバー3をケーシング2に近付ける。
【0045】
第2ガイド穴47の双方にガイド片48が入った初期段階では、互いに対向するカバー3の第2副接合面35とケーシング2の第1副接合面25とは隙間が空いている。そして、第2ガイド穴47にガイド片48が嵌合していく過程で、カバー3の第2主接合面34はケーシング2の第1主接合面24に近付くとともに、カバー3はガイド片48にガイドされてケーシング2の第1副接合面25の方向にしだいに移動し、第1副接合面25と第2副接合面35との対向間距離がしだいに縮まっていく。図12の矢印F3は、そのときのカバー3の移動方向を示している。そして、図11に示すようにカバー3の第2主接合面34がケーシング2の第1主接合面24に密着する状態に接合すると、カバー3の第2副接合面35がケーシング2の第1副接合面25に密着する状態に接合する。
【0046】
第2実施形態におけるガイド部4は、ケーシング2の第1主接合面24に設けられた第1ガイド穴46と、カバー3の第2主接合面34に設けられた第2ガイド穴47と、第1ガイド穴46および第2ガイド穴47の双方に嵌合するガイド片48と、を含み、第1ガイド穴46および第2ガイド穴47のそれぞれは、ガイド片48が嵌合していくにつれて、カバー3がケーシング2の第1副接合面25に向けて移動可能な方向に延びている。
【0047】
これにより、ケーシング2の第1主接合面24とカバー3の第2主接合面34、およびケーシング2の第1副接合面25とカバー3の第2副接合面35、のいずれの接合面どうしを、一方向にねじ込むねじ5によって密着させることができる。
【0048】
(第3実施形態)
図13図15を参照して第3実施形態について説明する。第3実施形態は、第1実施形態の第2アーム部1Dの構成が異なっている。
【0049】
図13および図14に示すように、第3実施形態に係る第2アーム部1Dの先端L1側の部分は、第1実施形態と同様の構成、すなわち手首部1Eを支持するフォーク部22、開口部23、開口部23を閉塞するカバー3を備える。さらに、ガイド部4として、第1実施形態と同様に、ケーシング2の第1主接合面24に複数(ここでは、2つ)のガイド穴42を有し、カバー3の第2主接合面34に、ガイド穴42に対応するガイド突起41を有する。第3実施形態の開口部23およびカバー3は、第1実施形態のものより長さが短い。
【0050】
第3実施形態に係る第2アーム部1Dは、後端L2側にも、側方(左W1側)に開口する開口部27、およびこの開口部27を閉塞するカバー7を備える。以下、先端L1側の開口部23およびカバー3を、それぞれ前側開口部23、前側カバー3といい、後端L2側の開口部27およびカバー7を、それぞれ後側開口部27、後側カバー7という。
【0051】
後側開口部27は、前側開口部23と同じ側の側方(左W1側)に開口している。後側開口部27は、上下一対の長さ方向Lに延びる部分と、後端部の上下方向Tに延びる部分とにより形成される第1主接合面84と、後端L2側に面する第1副接合面85と、に囲まれている。第1主接合面84と第1副接合面85とは、略直交する状態で立体的に交差する。第1主接合面84には、複数のねじ穴26が設けられている。後側カバー7は、前側カバー3と同様に、ねじ穴26にねじ込まれるねじ5によってケーシング2に固定される。
【0052】
後側開口部27は、第1主接合面84に囲まれて側方(左W1側)に開口する主開口部281と、第1副接合面85に囲まれて後端L2側に開口する副開口部282と、を含む。主開口部281と副開口部282とは連続している。図14の二点鎖線283は、主開口部281と副開口部282との境界を示している。第1主接合面84の所定箇所に、複数のねじ穴26が設けられている。
【0053】
後側開口部27を塞ぐ後側カバー7は、主開口部281を覆う形状および寸法を有する平板部71と、平板部71の長さ方向Lに延びる縁および後端部の縁からケーシング2側に略直角に立ち上がる(右W2側に延びる)枠壁部72と、を有する。後側カバー7の内側(ケーシング2側)には、枠壁部72で囲まれた凹所73が形成されている。枠壁部72は、ケーシング2の第1主接合面84に対向し(右W2側に面し)、この第1主接合面84に接合される第2主接合面74を有する。また、後側カバー7は、ケーシング2の第1副接合面85に対向し(先端L1側に面し)、この第1副接合面85に接合される第2副接合面75を有する。
【0054】
ケーシング2の本体部21は、後側開口部27と前側開口部23との間に、第1主接合面24、84から側方(左W1側)にせり出す中間壁部211を有する。中間壁部211の内側は、本体部21内に連通する。中間壁部211の内側には、副開口部232、282のそれぞれに開口し、かつ、ケーシング2に固定された状態での前側カバー3の凹所33および後側カバー7の凹所73に連通するスペースが空いている。
【0055】
ケーシング2の内部には、図1に示した手首部1Eを旋回させる駆動部90が収容される。駆動部90は、先端L1側の従動プーリ91と、後端L2側の駆動プーリ92と、従動プーリ91と駆動プーリ92とに巻架されて駆動プーリ92の回転を従動プーリ91に伝達する伝達ベルト93と、を備える。伝達ベルト93は、長さ方向Lに延びている。従動プーリ91は、手首部1Eの回転軸に連結されている。従動プーリ91の回転に応じて手首部1Eは旋回する。駆動部90は、駆動プーリ92が不図示のモータにより回転駆動され、駆動プーリ92の回転が伝達ベルト93により従動プーリ91に伝達し、手首部1Eを旋回させる。
【0056】
駆動部90は、前側開口部23および後側開口部27に近接してケーシング2内に配置されている。伝達ベルト93は、中間壁部211の内側に配置され、前側の副開口部232および後側の副開口部282を通っている。
【0057】
駆動部90の少なくとも一部は、ケーシング2の第1主接合面24および第1主接合面84よりも外側(左W1側)に配置される。詳細には、従動プーリ91の少なくとも一部は、第1主接合面24および第1主接合面84よりも外側(左W1側)に配置される。駆動プーリ92の少なくとも一部は、第1主接合面24および第1主接合面84よりも外側(左W1側)に配置される。さらには、従動プーリ91および駆動プーリ92とともに、伝達ベルト93の少なくとも一部は、第1主接合面24および第1主接合面84よりも外側(左W1側)に配置される。
【0058】
このように駆動部90の少なくとも一部を第1主接合面24および第1主接合面84よりも外側(左W1側)に配置すると、ケーシング2内の収容スペースに余裕が生じ、他の収容機器等がある場合、それら他の収容機器の配置の自由度が向上したり、駆動部90や他の収容機器のメンテナンスが容易になったりする利点がある。
【0059】
後側カバー7は、第1実施形態と同様のガイド部4により、ケーシング2に対して位置決めされるとともに接合され、後側開口部27を閉塞する。第3実施形態のガイド部4は、後側カバー7が後側開口部27を閉塞した状態で、後側カバー7の第2主接合面74をケーシング2の第1主接合面84に位置決めする機能を備える。また、後側カバー7の第2副接合面75をケーシング2の第1副接合面85に位置決めするとともに、ある程度の押圧力をもって密着させる機能を備える。
【0060】
第3実施形態に係るガイド部4は、後側カバー7の第2主接合面74に設けられた複数のガイド突起41と、ケーシング2の第1主接合面84に設けられたガイド穴42と、を含む。ガイド突起41はガイド穴42に嵌合される。ガイド穴42は、第1主接合面84の長さ方向Lに延びる上下の部分に1つずつ配置されている。ガイド突起41は、ガイド穴42に対応する2箇所に配置されている。
【0061】
第3実施形態のガイド部4によれば、後側カバー7により後側開口部27を閉塞するにあたり、ケーシング2の第1主接合面84に後側カバー7の第2主接合面74が合致するように後側カバー7をケーシング2に近付けていくと、2つのガイド突起41のそれぞれは、対応するケーシング2のガイド穴42に挿入されていく。
【0062】
ここで、ケーシング2の第1主接合面84と、後側カバー7の第2主接合面74との対向間距離が縮まるにつれて、ガイド突起41は、第1実施形態と同様にガイド穴42に挿入されていくが、その過程で、後側カバー7は先端L1側、すなわち第1副接合面85の方向に移動していき、第1副接合面85と第2副接合面75との対向間距離もしだいに縮まっていく。図15の矢印F4は、そのときの後側カバー7の移動方向を示しており、ケーシング2に近付くにつれて後側カバー7は図15において右側の第1副接合面85に向けて移動していく。そして、ガイド穴42にガイド突起41が嵌合して後側カバー7の第2主接合面74がケーシング2の第1主接合面84に密着する状態に接合すると、後側カバー7の第2副接合面75がケーシング2の第1副接合面85に密着する状態に接合する。
【0063】
なお、第3実施形態は、図示は省略するが、第1実施形態のように、ケーシング2と後側カバー7との間に、ゴム等の弾性材からなるシール材を介装して液密的にシールする態様を含む。すなわちそのシール材は、第1主接合面84および第1副接合面85に沿って配置される形状およびサイズを有し、第1主接合面84と第2主接合面74との間、および第1副接合面85と第2副接合面75との間に介装される。
【0064】
第3実施形態によれば、中間壁部211は、その厚さ全体を中実とする肉を有さず、内側に前側の副開口部232および後側の副開口部282に連通するスペースが空いている。このため、重量の増大が抑制される。また、ケーシング2内の収容空間が増大し、駆動部90の配置の自由度を向上させることができる。
【0065】
本開示は、上記各実施形態に制限されることはなく、適宜変更が可能である。
本開示のガイド部としては、ケーシング2の第1主接合面24とカバー3の第2主接合面34との対向間距離が縮まるにつれて、ケーシング2の第1副接合面25とカバー3の第2副接合面35とケーシング2の第1副接合面25との対向間距離をしだいに縮め、接合時において位置決めできる構成であれば、いかなる態様であってよい。
締結部材としてねじを用いているが、ねじの代わりにリベット等の他の締結部材を用いてもよい。
第1部材および第2部材として多関節ロボットのアーム部を構成するケーシング2およびカバー3を開示しているが、本開示の第1部材および第2部材を接合する接合構造はこれに限定されず、立体的に交差する2つの接合面どうしを接合する接合構造であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
2 ケーシング(第1部材)
3 カバー(第2部材)
4 ガイド部
5 ねじ(締結部材)
6 シール材
24、84 第1主接合面
25、85 第1副接合面
34、74 第2主接合面
35、75 第2副接合面
41 ガイド突起
42 ガイド穴
46 第1ガイド穴
47 第2ガイド穴
48 ガイド片
421 テーパ内周面(ガイド斜面)
441 ガイド斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15