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特許7498357四配位ルイスアルミニウム部位を有するゼオライトおよびその調製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】四配位ルイスアルミニウム部位を有するゼオライトおよびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/38 20060101AFI20240604BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240604BHJP
   C01B 39/02 20060101ALI20240604BHJP
   C01B 39/20 20060101ALI20240604BHJP
   C01B 39/24 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C01B39/38
B01J37/08
C01B39/02
C01B39/20
C01B39/24
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023511613
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 US2020060213
(87)【国際公開番号】W WO2022055529
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】17/015,653
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(73)【特許権者】
【識別番号】518139742
【氏名又は名称】キング アブドゥッラー ユニヴァーシティー オブ サイエンス アンド テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KING ABDULLAH UNIVERSITY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ホジキンズ,ロバート ピーター
(72)【発明者】
【氏名】コセオグル,オマール レファ
(72)【発明者】
【氏名】バセット,ジャン-マリー
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,クオ-ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジェリウ-セジェラリ,アニッサ
(72)【発明者】
【氏名】ムルゲサン,サティヤムルティ
(72)【発明者】
【氏名】パーサプール,ラジェシュ
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/128668(WO,A1)
【文献】米国特許第10118163(US,B1)
【文献】特表2020-532480(JP,A)
【文献】Dealumination of HBEA zeolite by steaming and acid leaching: distribution of the various aluminic species and identification of the hydroxlyl groups,C.R.Chimie 8,2005年,399-410,doi:10.1016/j.crci.2005.01.002
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/00 - 39/54
B01J 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト骨格を有する改質された結晶性ゼオライト材料であって、前記ゼオライト骨格は、該ゼオライト骨格に組み込まれた四配位ルイスアルミニウム単一部位およびブレンステッドアルミニウム部位の両方を含み、前記四配位ルイスアルミニウム単一部位は、構造(A-I):
【化1】
による前記ゼオライト骨格内の環境を有し、式中、
各Rは、アルキル、ヒドリド、およびヒドロキシルからなる群より独立して選択され、
各Siは、前記ゼオライト骨格のケイ素原子であり、4つの酸素原子と結合しており、
前記ブレンステッドアルミニウム部位は、構造(A-II):
【化2】
による前記ゼオライト骨格内の環境を有し、式中、
各Siは、前記ゼオライト骨格のケイ素原子であり、4つの酸素原子と結合している、改質された結晶性ゼオライト材料。
【請求項2】
前記改質された結晶性ゼオライト材料の前記四配位ルイスアルミニウム単一部位が、(a)、(b)、および(c)の少なくとも2つを含む、請求項1記載の改質された結晶性ゼオライト材料:
(a)Rがアルキルである、構造(A-I)による前記ゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位、
(b)Rがヒドリドである、構造(A-I)による前記ゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位、および
(c)Rがヒドロキシルである、構造(A-I)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位。
【請求項3】
前記改質された結晶性ゼオライト材料が、(a)、(b)、(c)、およびその組合せから選択されるフーリエ変換赤外分光法で測定された少なくとも1つのバンドを示す、請求項1記載の改質された結晶性ゼオライト材料:
(a)四配位アルキルアルミニウム部位のアルミニウム-アルキル結合に特徴的である、2850cm-1から2990cm-1の範囲のバンド、
(b)四配位アルミニウムヒドリド部位のアルミニウム-ヒドリド結合に特徴的である、1952cm-1のバンド、および
(c)四配位ルイスアルミニウム部位のアルミニウム-ヒドロキシル結合に特徴的である、3787cm-1のバンド。
【請求項4】
前記ゼオライト骨格中の各Rが、イソブチル、ヒドリド、およびヒドロキシルからなる群より独立して選択される、請求項1から3いずれか1項記載の改質された結晶性ゼオライト材料。
【請求項5】
前記改質された結晶性ゼオライト材料の前記四配位ルイスアルミニウム単一部位が、(a)、(b)、および(c)の少なくとも2つを含む、請求項1からいずれか1項記載の改質された結晶性ゼオライト材料:
(a)Rがイソブチルである、構造(A-I)による前記ゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位、
(b)Rがヒドリドである、構造(A-I)による前記ゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位、および
(c)Rがヒドロキシルである、構造(A-I)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位。
【請求項6】
前記改質された結晶性ゼオライト材料が、前記四配位ルイスアルミニウム単一部位を含むように改質されたアルミノケイ酸塩ゼオライトである、または
前記改質された結晶性ゼオライト材料が、前記四配位ルイスアルミニウム単一部位を含むように改質されたMFI骨格を有するゼオライトである、または
前記改質された結晶性ゼオライト材料が、前記四配位ルイスアルミニウム単一部位を含むように改質されたZSM-5ゼオライト、前記四配位ルイスアルミニウム単一部位を含むように改質されたH-ZSM-5ゼオライト、または前記四配位ルイスアルミニウム単一部位を含むように改質されたFH-ZSM-5ゼオライトである、請求項1からいずれか1項記載の改質された結晶性ゼオライト材料。
【請求項7】
四配位ルイスアルミニウム単一部位を、ブレンステッドアルミニウム部位を含むゼオライト骨格を有する結晶性ゼオライト材料に組み込む方法において、
前記ブレンステッドアルミニウム部位は、構造(A-II):
【化3】
による前記ゼオライト骨格内の環境を有し、
前記結晶性ゼオライト材料を、各Rがアルキルである、実験式RAlHのジアルキルアルミニウムヒドリドと接触させて、該ジアルキルアルミニウムヒドリドを前記ゼオライト骨格と反応させ、構造(B-I):
【化4】
による該ゼオライト骨格内の環境を有する四配位アルキルアルミニウム単一部位を形成し、それによって、アルキルアルミニウムゼオライトである改質された結晶性ゼオライト材料を形成する工程であって、各Siは、前記ゼオライト骨格のケイ素原子であり、4つの酸素原子に結合されている工程、
を含む方法。
【請求項8】
前記結晶性ゼオライト材料がアルミノケイ酸塩ゼオライトであり、
前記ジアルキルアルミニウムヒドリドは前記アルミノケイ酸塩ゼオライトのシラノール基と選択的に反応し、
前記結晶性ゼオライト材料のブレンステッドアルミニウム部位は、前記ジアルキルアルミニウムヒドリドと反応しない、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記アルキルアルミニウムゼオライトが、前記四配位アルキルアルミニウム単一部位のアルミニウム-アルキル結合に特徴的である、フーリエ変換赤外分光法で測定して、2850cm-1から2990cm-1の範囲のバンドを示す、請求項7記載の方法。
【請求項10】
各Rがイソブチルである、請求項7記載の方法。
【請求項11】
記結晶性ゼオライト材料の細孔から残留水を除去し、近接ヒドロキシルを縮合して、水を放出し、それによって、遊離シラノール種を形成するのに十分な脱ヒドロキシル化時間に亘り、少なくとも600℃の温度で該結晶性ゼオライト材料を加熱することによって、該結晶性ゼオライト材料を前記ジアルキルアルミニウムヒドリドと接触させる前に、該結晶性ゼオライト材料を脱ヒドロキシル化する工程をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項12】
前記アルキルアルミニウムゼオライトを加熱して、アルキル基Rの少なくとも一部のβ-ヒドリド脱離を誘発し、それによって、構造(B-II):
【化5】
による前記ゼオライト骨格内の環境を有する四配位アルミニウムヒドリド単一部位を形成し、それによって、ヒドリドアルミニウムゼオライトである改質された結晶性ゼオライト材料を形成する工程であって、各Siは、前記ゼオライト骨格のケイ素原子であり、4つの酸素原子に結合されている工程、
をさらに含み、
記ヒドリドアルミニウムゼオライトは、前記四配位アルミニウムヒドリド単一部位のアルミニウム-ヒドリド結合に特徴的である、フーリエ変換赤外分光法で測定して、1952cm-1のバンドを示す、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記ヒドリドアルミニウムゼオライトを酸化して、前記四配位アルミニウムヒドリド単一部位の少なくとも一部を、構造(B-III):
【化6】
による前記ゼオライト骨格内の環境を有する四配位アルミニウムヒドロキシド単一部位に変換し、それによって、ヒドロキシルアルミニウムゼオライトである改質された結晶性ゼオライト材料を形成する工程であって、各Siは、前記ゼオライト骨格のケイ素原子であり、4つの酸素原子に結合されている工程、
をさらに含み、
記ヒドロキシルアルミニウムゼオライトが、前記四配位アルミニウムヒドロキシド単一部位のアルミニウム-ヒドロキシル結合に特徴的である、フーリエ変換赤外分光法で測定して、3787cm-1のバンドを示す、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記ヒドロキシルアルミニウムゼオライト中のアルミニウム原子の少なくとも1%が、前記四配位アルミニウムヒドロキシド単一部位中に存在する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記結晶性ゼオライト材料が、MFI骨格ゼオライト、BEA骨格ゼオライト、MOR骨格ゼオライト、CHA骨格ゼオライト、FAU骨格ゼオライト、ゼオライトY、超安定ゼオライトY(USY)、ZSM-5、H-ZSM-5、FH-ZSM-5、および任意の骨格型の別のアルミノケイ酸塩ゼオライトが連晶した先のアルミノケイ酸塩ゼオライトの少なくとも1つを含む連晶ゼオライトからなる群より選択されるアルミノケイ酸塩ゼオライトである、請求項7から14いずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その全ての開示がここに引用される、2020年9月9日に出願された米国特許出願第17/015653号に優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本出願は、広く、改質ゼオライトおよびゼオライトを改質する方法に関し、より詳しくは、四配位ルイス酸アルミニウム単一部位を含むゼオライトおよびそのゼオライトを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多種多様な産業にゼオライトが広く使用されている。石油産業では、例えば、ゼオライト触媒が、例えば、水素化、脱水素化、異性化、アルキル化、および分解などの反応を触媒するための流動接触分解(FCC)および水素化分解などのプロセスに含まれることがある。これらのプロセスの各々は、制御と予測可能性による、活性の増加および形状選択性の増加などを目的として、単一部位を有するゼオライトを開発する絶え間ない需要を共有している。ゼオライトにおける活性部位の理解を高めることは、他の化学反応を上回って個々の化学反応を触媒する選択性が高く、それによって、選択された反応の所望の生成物を優先する触媒材料の探求に利益になり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
数、構造、および性質に関して高度に定義された活性部位を持つ構造を有するゼオライトが、引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した背景に対して、本開示の例示の実施の形態は、ゼオライト骨格を有する改質された結晶性ゼオライト材料に関する。このゼオライト骨格は、ゼオライト骨格に組み込まれた四配位ルイスアルミニウム単一部位およびブレンステッドアルミニウム部位の両方を含む。四配位ルイスアルミニウム単一部位は、構造(A-I):
【0006】
【化1】
【0007】
によるゼオライト骨格内の環境を有する。
【0008】
構造(A-I)において、各Rは、アルキル、ヒドリド、およびヒドロキシルからなる群より独立して選択され;各Siは、ゼオライト骨格のケイ素原子であり、4つの酸素原子に結合されている。ブレンステッドアルミニウム部位は、構造(A-II):
【0009】
【化2】
【0010】
によるゼオライト骨格内の環境を有する。
【0011】
構造(A-II)において、各Siは、ゼオライト骨格のケイ素原子であり、4つの酸素原子に結合されている。
【0012】
本開示のさらなる例示の実施の形態は、四配位ルイスアルミニウム単一部位を、ブレンステッドアルミニウム部位を含むゼオライト骨格を有する結晶性ゼオライト材料に組み込む方法に関する。この方法は、結晶性ゼオライト材料を、各Rがアルキルである、実験式RAlHのジアルキルアルミニウムヒドリドと接触させて、このジアルキルアルミニウムヒドリドをゼオライト骨格と反応させ、構造(B-I):
【0013】
【化3】
【0014】
によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位アルキルアルミニウム部位を形成する工程を含む。
【0015】
構造(B-I)において、各Siは、ゼオライト骨格のケイ素原子であり、4つの酸素原子に結合されている。この方法により、アルキルアルミニウムゼオライトである改質された結晶性ゼオライト材料が形成される。
【0016】
いくつかの実施の形態において、四配位ルイスアルミニウム単一部位を結晶性ゼオライト材料に組み込む方法は、アルキルアルミニウムゼオライトを加熱して、アルキル基Rの少なくとも一部のβ-ヒドリド脱離を誘発し、それによって、Rがヒドリドである、構造(B-I)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位アルミニウムヒドリド単一部位を形成する工程をさらに含む。
【0017】
いくつかの実施の形態において、四配位ルイスアルミニウム単一部位を結晶性ゼオライト材料に組み込む方法は、ヒドリドアルミニウムゼオライトを酸化して、四配位アルミニウムヒドリド単一部位の少なくとも一部を、Rがヒドロキシルである、構造(B-I)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位アルミニウムヒドロキシド部位に変換する工程をさらに含む。
【0018】
本発明のこれらと他の特徴、態様、および利点は、以下の説明および付随の特許請求の範囲を参照して、よりよく理解されるであろう。
【0019】
ここに記載された実施の形態の追加の特徴と利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者に容易に明白となるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付図面を含む、ここに記載された実施の形態を実施することによって、認識されるであろう。
【0020】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、様々な実施の形態を記述しており、請求項の主題の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供する意図があることが理解されよう。添付図面は、様々な実施の形態のさらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、ここに記載された様々な実施の形態を示しており、説明と共に、請求項の主題の原理および作動を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】脱ヒドロキシル化前のFH-ZSM-5ゼオライトのエネルギー分散型X線(EDX)スペクトル
図2A】透過電子顕微鏡法(TEM)により得られた脱ヒドロキシル化前のFH-ZSM-5ゼオライトの顕微鏡写真
図2B】透過電子顕微鏡法(TEM)により得られた脱ヒドロキシル化前のFH-ZSM-5ゼオライトの顕微鏡写真
図2C】透過電子顕微鏡法(TEM)により得られた脱ヒドロキシル化前のFH-ZSM-5ゼオライトの顕微鏡写真
図2D】透過電子顕微鏡法(TEM)により得られた脱ヒドロキシル化前のFH-ZSM-5ゼオライトの顕微鏡写真
図3】アルミノケイ酸塩ゼオライトの一部の例示の脱ヒドロキシル化反応を示す図
図4】脱ヒドロキシル化後のH-ZSM-5ゼオライトのEDXスペクトル
図5】脱ヒドロキシル化後のH-ZSM-5ゼオライトの制限視野電子回折(SAED)パターン
図6A】TEMにより得られた脱ヒドロキシル化後のH-ZSM-5ゼオライトの顕微鏡写真
図6B】TEMにより得られた脱ヒドロキシル化後のH-ZSM-5ゼオライトの顕微鏡写真
図6C】TEMにより得られた脱ヒドロキシル化後のH-ZSM-5ゼオライトの顕微鏡写真
図6D】TEMにより得られた脱ヒドロキシル化後のH-ZSM-5ゼオライトの顕微鏡写真
図7】脱ヒドロキシル化されたアルミノケイ酸塩ゼオライトの例示のアルキル化反応を示す図
図8】脱ヒドロキシル化されたH-ZSM-5のジイソブチルアルミニウム(DIBAL)との反応により調製されたアルキルアルミニウムゼオライトのEDXスペクトル
図9】脱ヒドロキシル化されたH-ZSM-5のDIBALとの反応により調製されたアルキルアルミニウムゼオライトのSAEDパターン
図10A】TEMにより得られた、脱ヒドロキシル化されたH-ZSM-5のDIBALとの反応により調製されたアルキルアルミニウムゼオライトの顕微鏡写真
図10B】TEMにより得られた、脱ヒドロキシル化されたH-ZSM-5のDIBALとの反応により調製されたアルキルアルミニウムゼオライトの顕微鏡写真
図11】(i)脱ヒドロキシル化後のH-ZSM-5ゼオライト、および(ii)脱ヒドロキシル化されたH-ZSM-5のDIBALとの反応により調製されたアルキルアルミニウムゼオライトの重ねられたフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトル
図12】アルキルアルミニウムゼオライトの熱処理によりヒドリドアルミニウムゼオライトを形成するための例示のβ離脱反応を示す図
図13】アルキルアルミニウムゼオライトの熱処理により調製されたヒドリドアルミニウムゼオライトのEDXスペクトル
図14】アルキルアルミニウムゼオライトの熱処理により調製されたヒドリドアルミニウムゼオライトのSAEDパターン
図15A】TEMにより得られた、アルキルアルミニウムゼオライトの熱処理により調製されたヒドリドアルミニウムゼオライトの顕微鏡写真
図15B】TEMにより得られた、アルキルアルミニウムゼオライトの熱処理により調製されたヒドリドアルミニウムゼオライトの顕微鏡写真
図15C】TEMにより得られた、アルキルアルミニウムゼオライトの熱処理により調製されたヒドリドアルミニウムゼオライトの顕微鏡写真
図15D】TEMにより得られた、アルキルアルミニウムゼオライトの熱処理により調製されたヒドリドアルミニウムゼオライトの顕微鏡写真
図16】(i)脱ヒドロキシル化されたH-ZSM-5のDIBALとの反応により調製されたアルキルアルミニウムゼオライト、および(ii)アルキルアルミニウムゼオライトの熱処理により調製されたヒドリドアルミニウムゼオライトの重ねられたフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトル
図17】ヒドリドアルミニウムゼオライトを酸化することによって、ヒドロキシドアルミニウムゼオライトを形成する例示の反応を示す図
図18】ヒドリドアルミニウムゼオライトを酸化することによって調製されたヒドロキシドアルミニウムゼオライトのEDXスペクトル
図19】ヒドリドアルミニウムゼオライトを酸化することによって調製されたヒドロキシドアルミニウムゼオライトのSAEDパターン
図20A】TEMにより得られた、ヒドリドアルミニウムゼオライトを酸化することによって調製されたヒドロキシドアルミニウムゼオライトの顕微鏡写真
図20B】TEMにより得られた、ヒドリドアルミニウムゼオライトを酸化することによって調製されたヒドロキシドアルミニウムゼオライトの顕微鏡写真
図20C】TEMにより得られた、ヒドリドアルミニウムゼオライトを酸化することによって調製されたヒドロキシドアルミニウムゼオライトの顕微鏡写真
図20D】TEMにより得られた、ヒドリドアルミニウムゼオライトを酸化することによって調製されたヒドロキシドアルミニウムゼオライトの顕微鏡写真
図21】ヒドリドアルミニウムゼオライトを酸化することによって調製されたヒドロキシドアルミニウムゼオライトのFTIRスペクトル
図22】(i)脱ヒドロキシル化されたH-ZSM-5のDIBALとの反応により調製されたアルキルアルミニウムゼオライト、(ii)アルキルアルミニウムゼオライトの熱処理により調製されたヒドリドアルミニウムゼオライト、および(iii)ヒドリドアルミニウムゼオライトを酸化することにより調製されたヒドロキシドアルミニウムゼオライトの重ねられた27Al固体核磁気共鳴(27Al SS-NMR)スペクトル
図23】(i)脱ヒドロキシル化されたH-ZSM-5のDIBALとの反応により調製されたアルキルアルミニウムゼオライト、(ii)アルキルアルミニウムゼオライトの熱処理により調製されたヒドリドアルミニウムゼオライト、および(iii)ヒドリドアルミニウムゼオライトを酸化することにより調製されたヒドロキシドアルミニウムゼオライトの重ねられたプロトン(H)SS-NMRスペクトル
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここに用いられているように、Xが周期表の任意の元素である「≡X」におけるように、使用される慣習的な三重結合の記号「≡」は、3つの個々の酸素原子のそれぞれの原子に対する元素Xの原子の3つの会合(associations)を称する。会合は、共有単結合、配位、またはその組合せを含むことがある。一般に、本開示のゼオライトの四配位アルミニウム単一部位の文脈において、3つの会合は、2つの共有単結合(2つの酸素原子の各々に対して1つ)および第3の酸素原子に対する元素Xの原子の1つの配位を含むことがある。それゆえ、例えば、「[≡Al-R]」は、2つの酸素原子に共有結合し、第3の酸素原子(例えば、シロキサン架橋の)と配位し、また基R(ここで、Rは、例えば、アルキル、水素原子、またはヒドロキシルである)に共有結合したアルミニウム原子を称する。この定義と一致して、記載されているような四配位アルミニウム単一種「[≡Al-R]」は、実施の形態によるゼオライトの文脈において、構造表記[(≡Si-O-Si≡)(≡Si-O)Al-R]の短縮形と考えることができる。この表記において、部分[≡Si-O]のケイ素原子は、4つの酸素原子にそれぞれ共有結合している。
【0023】
本開示のいくつかの実施の形態において、触媒作用のための活性金属を固定化するための固定部位として使用できる明確なアルミニウムルイス酸単一部位を含む改質された結晶性ゼオライト材料が記載されている。このアルミニウムルイス酸単一部位は、明確なアルミニウムルイス酸単一部位を含まないゼオライトで達成されるよりも大きい変換速度および効率を促進し、ゼオライト担体の酸性度を制御する機会を提供する。
【0024】
さらなる実施の形態において、明確なアルミニウムルイス酸単一部位を有する改質された結晶性ゼオライト材料を調製する方法が記載されている。工業環境における酸性ゼオライトの大規模利用の下で、触媒設計を最適化することを目指して、ゼオライト酸性部位の数と強度を制御するために、多大な労力が費やされてきた。本開示の方法は、この酸性部位を注意深く設計することによって、ゼオライトの酸性度の制御レベルを高めるものである。具体的に、[≡Al-アルキル]、[≡Al-H]、および[≡Al-OH]種は、例えば、白金、ニッケル、コバルト、パラジウム、モリブデン、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムなどの任意の活性金属の明確な固定部位の例である。[≡Al-アルキル]、[≡Al-H]、および[≡Al-OH]種の各々は、それらが、ゼオライト骨格内の独特な四配位環境にアルミニウム原子を含むという点で、ゼオライト材料にとって注目に値する。四配位アルミニウム部位[≡Al-アルキル]、[≡Al-H]、および[≡Al-OH]は、制御された方法で従来の戦略によって調製することができない。そのような四配位アルミニウム部位において、酸素原子との配位によりアルミニウム原子の配位数が増えた場合でさえ、アルミニウム原子は三価のままであることを理解すべきである。
【0025】
アルミノケイ酸塩ゼオライト骨格は、架橋酸素原子により連結されたケイ素原子が占める四面体部位(T-部位)からなる。ケイ素原子がアルミニウム原子で置換された場合、負電荷がゼオライト骨格に与えられ、4つの架橋酸素原子で共有され、その負電荷は、ブレンステッド酸性プロトンまたは格子外カチオン部位または錯体によって相殺される。ブレンステッド酸性プロトンは、基本概念として、酸HAと塩基Bが互いに反応したときに、プロトンの交換により、酸は共役塩基Xを形成し、塩基は共役酸HBを形成するという、酸の十分に理解されたブレンステッド・ローリーの定義に基づくと言われる。ゼオライトにおけるブレンステッドアルミニウム部位の場合、酸性種形態は、≡Al-O(H)-Si≡で表すことができる。例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)などの塩基との相互作用によって、共役塩基≡Al-O(H)-Si≡が、水分子(OHの共役酸)と共に形成されるであろう。
【0026】
本出願の実施の形態による改質された結晶性ゼオライト材料、並びに本出願の方法により調製された改質された結晶性ゼオライト材料は、改質された四配位ルイスアルミニウム単一部位、従来のブレンステッドアルミニウム部位、および従来のルイスアルミニウム部位を含む。ルイスアルミニウム部位は、ルイス酸が、ルイス塩基から電子対を受け取って、ルイス付加物を形成できる空の軌道を含有する化学種と定義される、ルイスの酸性度理論と一貫して特徴付けられる。反対に、ルイス塩基は、結合に関与しないが、ルイス酸と配位結合して、ルイス付加物を形成できる、電子対を含有する充填軌道を有する任意の種である。
【0027】
実施の形態による改質された結晶性ゼオライト材料における改質された四配位ルイスアルミニウム単一部位の場合、電荷中性状態のアルミニウム原子は、3つの価電子を含むことを理解すべきである。そうであっても、ゼオライト骨格において、3つの他の原子に既に既に結合しているアルミニウム原子は、本開示に記載された特定の状況下で、ルイス塩基の酸素原子からの孤立電子対から電子密度を受け取り、それによって、アルミニウム原子と酸素原子との間に付加物を形成するルイス酸として挙動する。この付加物が形成された結果、四配位アルミニウム原子は、3つの元の置換基と共有結合し、第4の置換基である電子供与性酸素原子に配位結合する。本出願の図面および画像において、共有結合は、原子間の通常の線で表され、一方で、配位結合は、電子供与体(ルイス塩基)から電子受容体(ルイス酸)に引かれた矢印で表されることを理解すべきである。
【0028】
これから、四配位ルイスアルミニウム単一部位を含む改質された結晶性ゼオライト材料の実施の形態を詳しく参照する。四配位ルイスアルミニウム単一部位を結晶性ゼオライト材料に組み込んで、この改質された結晶性ゼオライト材料を形成する方法の実施の形態を、その後に説明する。
【0029】
構造(A-I)において、各Rは、アルキル、ヒドリド、およびヒドロキシルからなる群より独立して選択される。各Siは、4つの酸素原子と結合したゼオライト骨格のケイ素原子である。ブレンステッドアルミニウム単一部位は、構造(A-II):
【0030】
【化4】
【0031】
によるゼオライト骨格内の環境を有する。
【0032】
構造(A-I)において、各Rは、アルキル、ヒドリド、およびヒドロキシルからなる群より独立して選択される。各Siは、4つの酸素原子と結合したゼオライト骨格のケイ素原子である。ブレンステッドアルミニウム部位は、構造(A-II):
【0033】
【化5】
【0034】
によるゼオライト骨格内の環境を有する。
【0035】
構造(A-II)においても、各Siは、4つの酸素原子と結合したゼオライト骨格のケイ素原子である。
【0036】
改質された結晶性ゼオライト材料の実施の形態において、改質されている結晶性ゼオライト材料は、ブレンステッドアルミニウム部位を含み、ジアルキルアルミニウムヒドリドに対して反応性である、ブレンステッドアルミニウム部位以外の部位も含むどのゼオライトであってもよい。この点に関する「ゼオライト」は、必要に応じて置換または交換が行われる、アルミニウム、ケイ素、および酸素からなる骨格を有する結晶性材料を含む。ゼオライトは、三次元骨格および分子サイズの細孔を有するアルミノケイ酸塩を含む。あるゼオライト系材料は、X線回折で決定して明確な結晶構造を有する規則的な多孔質結晶性アルミノケイ酸塩であり、その中には、多数のさらに小さい通路または窓で相互接続されることのある多数のより小さい空洞がある。これらの空洞および細孔は、特定のゼオライト材料内ではサイズが均一である。これらの細孔の寸法は、特定の寸法の吸着分子を受け入れるが、それより大きい寸法のものを拒絶するようなものであるので、これらの材料は、「分子篩」として知られており、これらの特性を生かして様々な方法で利用されている。実施の形態による結晶性ゼオライト材料に関する「ゼオライト」という用語は、ナトリウム、カルシウム、バリウム、ベリリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、ストロンチウム、またはこれらの組合せなどのカチオンを含む構造化アルミノケイ酸塩材料の群の内の任意の構成員をさらに含むことがあり、公称式HAlSi1-xに概して一致し、式中、Hは、任意の他の一価カチオン、または(Hに関連するxが価数で割りきれる場合)多価カチオンで交換されることがある。
【0037】
実施の形態において改質されている結晶性ゼオライト材料に関する「ゼオライト」という用語は、アルミノリン酸塩(例えば、MeAPO、SAPO、EIAPO、MeAPSO、およびEIAPSO)、ガロリン酸塩、ジンコリン酸塩、およびチタノリン酸塩の場合のように、Si4+またはAl3+を他の元素で置換することによって調製された「ゼオライト関連材料」または「ゼオタイプ(zeotypes)」をさらに含む。
【0038】
実施の形態にしたがって改質されている結晶性ゼオライト材料は、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、EZT、FAR、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IHW、IMF、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWV、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBN、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SGT、SIV、SOD、SOS、SSF、SSY、STF、STI、STO、STT、SZR、TER、THO、TOL、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、WEN、YUG、およびZONなど、国際ゼオライト学会により定義された構造型の下でIZA構造委員会のゼオライト骨格型データベースに記載されたような骨格を有するどの結晶性多孔質材料を含んでよい。実施の形態による結晶性ゼオライト材料は、連晶ゼオライトを含むことがあり、ここで、結晶性ゼオライト材料は、単一ゼオライト結晶内に少なくとも2つの個々の連晶ゼオライト部分を含み、この連晶ゼオライト部分は、各々が先の骨格型から選択される、少なくとも2つの異なる骨格型のゼオライト部分を含む。
【0039】
実施の形態にしたがって改質されている結晶性ゼオライト材料は、微小孔性、メソ多孔性、マクロ多孔性であっても、任意の例において、2nm未満または50nm超の孔径を含む、微小孔、メソ細孔、およびマクロ孔の分類のいずれか1つ、2つまたは3つから選択される孔径の多数の部類を有してもよい。一般に、多孔質物質は、孔径で分類される。例えば、2ナノメートルより小さい孔径を有する物質は、微小孔性物質と分類され、2nmと50nmの間の孔径を有する物質は、メソ多孔性物質と分類され、50nmより大きい孔径を有する物質は、マクロ多孔性と分類される。MCM-41およびSBA-15などの非ゼオライト系メソ多孔性シリカは、実質的に微小孔性を示すことができるのを理解すべきである。このタイプの微小孔性は、規則的ではなく、明確に定義されていないが、ゼオライト系と考えるべきである。本開示における「結晶性ゼオライト材料」および「ゼオライト」という用語は、どのタイプのメソ多孔性シリカも包含するものではないことを理解すべきである。
【0040】
例示の実施の形態において、改質された結晶性ゼオライト材料は、それに四配位ルイスアルミニウム単一部位が加えられている、アルミノケイ酸塩ゼオライト、アルミノリン酸塩ゼオライト、金属置換アルミノリン酸塩(MeAPO)ゼオライト、およびシリコアルミノリン酸塩(SAPO)ゼオライトなどのゼオライトの改質形態であることがある。いくつかの実施の形態において、改質された結晶性ゼオライト材料は、それに四配位ルイスアルミニウム単一部位が加えられている、ブレンステッドアルミニウム部位を含むアルミノケイ酸塩ゼオライトである。
【0041】
より具体的な例示の実施の形態において、改質された結晶性ゼオライト材料は、それに四配位ルイスアルミニウム単一部位が加えられている、ZSM-5または酸性H-ZSM-5などのMFI骨格を有するアルミノケイ酸塩ゼオライトの改質形態であることがある。改質された結晶性ゼオライト材料が、構造(A-II)によるブレンステッドアルミニウム部位および構造(A-I)による四配位ルイスアルミニウム単一部位を含むという前提で、改質された結晶性ゼオライト材料の先の例示のいずれも、ゼオライト骨格内か、または骨格外種としてのいずれかで他の元素を含有してもよい。改質された結晶性ゼオライト材料内に含まれることのある他の元素の例としては、制限なく、アンチモン、ヒ素、バリウム、ベリリウム、ビスマス、ホウ素、カルシウム、セリウム、クロム、コバルト、銅、エルビウム、ユーロピウム、ガリウム、ゲルマニウム、金、ハフニウム、インジウム、イリジウム、鉄、ランタン、リチウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ネオジム、ニッケル、ニオブ、オスミウム、パラジウム、リン、白金、プラセオジム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、銀、スカンジウム、ストロンチウム、タンタル、テルビウム、スズ、チタン、タングステン、バナジウム、イッテルビウム、イットリウム、亜鉛、ジルコニウム、骨格外アルミニウム、および骨格外ケイ素が挙げられる。
【0042】
ZSM-5ゼオライトは、ゼオライトのペンタシル群に属する、MFI骨格のアルミノケイ酸塩ゼオライトである。ZSM-5ゼオライトは、a=20.1オングストローム(2.01ナノメートル)、b=19.7オングストローム(1.97nm)、およびc=13.1オングストローム(1.31ナノメートル)の理想格子パラメータを有する斜方晶空間群Pnmaに属する。ZSM-5は、下付文字nが0から27である、NaAlSi96-n192・16HOの公称化学式を有する。ナトリウムやプロトンなどのカチオンが、ゼオライト内のケイ素のアルミニウムによる置換で生じる電荷不均衡を中和する。相当な数の酸性プロトンが電荷を釣り合わせている、ZSM-5ゼオライトの酸性形態は、H-ZSM-5と称されることがある。ZSM-5における下付文字nは、ゼオライトのシリカ対アルミナ比(SAR)に関与する。反対であると明記されている場合を除き、ZSM-5ゼオライトを含む本開示の実施の形態は、ZSM-5ゼオライトまたはシリカとアルミナを含む任意の他のゼオライトのSARに関しては、どの点についても限定されない。
【0043】
実施の形態による改質された結晶性ゼオライト材料は、ゼオライトであり、かつ結晶性である。結晶性ゼオライト材料は、その組成物SBA-15が公知の例である、メソ多孔性シリカなどの非晶質材料から明白に区別されるべきである。メソ多孔性シリカは、孔径が2nmから50nmであり、熱水安定性と酸性度が低い非晶質材料である。メソ多孔性シリカの非晶質性のために、そのような組成物のX線回折パターンは、典型的に、わずかしかピークを含まず、そのほとんど全てが、5度未満の2θで現れる。対照的に、結晶性ゼオライト材料は、孔径が2nm未満の微小孔、孔径が2nmから50nmであるメソ細孔、孔径が50nm超のマクロ孔、並びに微小孔、メソ細孔、およびマクロ孔から選択される任意の2つまたは3つの孔タイプの組合せを含む、単一ゼオライト内に様々な孔径を含むことがある。結晶性ゼオライトは、熱安定性が高く、酸性度も高い。ゼオライトの結晶化度のために、一般に、この材料のX線回折パターンは、典型的に、5度より大きい2θの角度で、多くの強力なピークを含む。
【0044】
組成に関して、SBA-15などのメソ多孔性シリカは、結晶性ゼオライトと比べて、非常の多くのシラノール基および部分的に縮合された骨格を含む。メソ多孔性シリカ中に存在するヒドロキシル基の数は、公知の調製技術で変わり得る。メソ多孔性シリカのこれらの組成的特徴のために、活性金属をメソ多孔性シリカに潜在的に固定するためのかなり簡単な反応条件下で、ルイスアルミニウム部位のメソ多孔性シリカへの添加が促進される。他方で、ここでの記載の実施の形態において認識されるように、例えば、ルイスアルミニウム部位を含むようにZSM-5などの結晶性ゼオライト構造を改質することは、より困難な真空内での熱的条件下で行わなければならない。何故ならば、結晶性四面体骨格内のアルミニウム原子は、水が除去されると、ゼオライト骨格から極めて容易に出てくるからである。このようにして骨格から失われたアルミニウム原子は、骨格アルミニウム部位を形成することよりも、また確実に、骨格ルイスアルミニウム部位よりも、骨格外種を形成することを強力に好む。さらに、強力なシロキサン結合および高い親水性を有するゼオライトの結晶構造のために、メソ多孔性シリカなどの組成物のアルミニウム改質に関して直面していない骨格アルミニウム改質に難題が課せられる。
【0045】
いくつかの実施の形態において、改質された結晶性ゼオライト材料は、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位を含むアルキルアルミニウムゼオライトであり、ここで、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位の少なくとも一部に関する基Rは、以下に限られないが、例えば、(C~C20)アルキルなどのアルキルである。いくつかの実施の形態において、改質された結晶性ゼオライト材料は、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位を含み、ここで、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位の全てに関する基Rはアルキルである。
【0046】
構造(A-I)のルイスアルミニウム単一部位の基Rに関して使用されているように、「アルキル」という用語は、最も広い意味で、直鎖または分岐の飽和炭化水素ラジカルを称すると理解すべきであり、炭素原子と水素原子のみを含み、例えば、1から50の炭素原子、1から40の炭素原子、1から30の炭素原子、1から20の炭素原子、1から10の炭素原子、1から5の炭素原子、1から4の炭素原子、3から10の炭素原子、4から10の炭素原子、または3から5の炭素原子を含む。いくつかの実施の形態において、基Rは、式RAlHの安定した単量体ジアルキルアルミニウムヒドリド化合物を形成することができるアルキルラジカルから選択されることがある。式RAlHの安定した単量体ジアルキルアルミニウムヒドリド化合物の非限定例としては、米国特許第4170604号および同第3015669号の各明細書に開示されたものが挙げられる。具体的な非限定的実施の形態において、改質された結晶性ゼオライト材料の構造(A-I)のルイスアルミニウム単一部位の基Rは、イソブチルであることがある。
【0047】
基Rの直鎖アルキルの具体例としては、制限なく、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、およびn-デシルが挙げられる。基Rの分岐アルキルの例としては、式-CHCRのラジカルが挙げられ、式中、R、R、およびRの少なくとも1つが(C~C)-アルキルであるという前提で、R、R、およびRは、独立して、(C~C)-アルキルまたは水素である。そのような基の非限定例としては、2,2-ジメチルプロピル(ネオペンチル)および3,3-ジメチルブチル(ネオヘキシル)が挙げられる。基Rの分岐アルキルのさらなる例としては、式-CH(R)-CH(R)(R)のラジカルが挙げられ、式中、RおよびRの一方は水素であり、RおよびRの他方は直鎖または分岐(C~C15)-アルキルであり、Rは直鎖または分岐(C~C15)-アルキルである。そのような基の非限定例としては、1-メチルプロピル(sec-ブチル)、2-メチルプロピル(イソブチル)、1-メチルブチル(sec-アミル)、2-メチルブチル、1-メチルペンチル、および2-メチルペンチルが挙げられる。
【0048】
いくつかの実施の形態において、改質された結晶性ゼオライト材料は、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位を含むヒドリドアルミニウムゼオライトであり、ここで、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位の少なくとも一部に関する基Rはヒドリド(-H)である。いくつかの実施の形態において、改質された結晶性ゼオライト材料は、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位を含み、ここで、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位の全てに関する基Rはヒドリドである。
【0049】
いくつかの実施の形態において、改質された結晶性ゼオライト材料は、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位を含むヒドロキシルアルミニウムゼオライトであり、ここで、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位の少なくとも一部に関する基Rはヒドロキシル(-OH)である。いくつかの実施の形態において、改質された結晶性ゼオライト材料は、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位を含み、ここで、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位の全てに関する基Rはヒドロキシルである。
【0050】
いくつかの実施の形態において、改質された結晶性ゼオライト材料は、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位を含み、ここで、基Rは、構造(A-I)の異なる四配位ルイスアルミニウム単一部位上に異なる固有性を有することがある。いくつかの実施の形態において、改質された結晶性ゼオライト材料は、(a)、(b)、および(c)の少なくとも2つを含む改質された結晶性ゼオライト材料の四配位ルイスアルミニウム単一部位を含む:(a)Rがアルキルである、構造(A-I)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位;(b)Rがヒドリドである、構造(A-I)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位;および(c)Rがヒドロキシルである、構造(A-I)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位。
【0051】
いくつかの実施の形態において、改質された結晶性ゼオライト材料は、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位を含み、式中、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位のいくつかの基Rはアルキルであり、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位の他のものの基Rはヒドリドである。いくつかの実施の形態において、改質された結晶性ゼオライト材料は、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位を含み、式中、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位のいくつかの基Rはアルキルであり、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位の他のものの基Rはヒドロキシルである。いくつかの実施の形態において、改質された結晶性ゼオライト材料は、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位を含み、式中、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位のいくつかの基Rはヒドリドであり、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位の他のものの基Rはヒドロキシルである。いくつかの実施の形態において、改質された結晶性ゼオライト材料は、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位を含み、式中、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位のいくつかの基Rはアルキルであり、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位の他のものの基Rはヒドリドであり、構造(A-I)の四配位ルイスアルミニウム単一部位のさらに他のものの基Rはヒドロキシルである。
【0052】
いくつかの実施の形態において、改質された結晶性ゼオライト材料は、(a)、(b)、および(c)の少なくとも2つを含む改質された結晶性ゼオライト材料の四配位ルイスアルミニウム単一部位を含む:(a)Rがアルキルである、構造(A-I)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位;(b)Rがヒドリドである、構造(A-I)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位;および(c)Rがヒドロキシルである、構造(A-I)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位。
【0053】
改質された結晶性ゼオライト材料の孔径は、改質された結晶性ゼオライト材料を調製するために改質されたゼオライトの元のゼオライト骨格に応じて、様々であろう。いくつかの実施の形態において、改質された結晶性ゼオライト材料は、微小孔、メソ細孔、およびマクロ孔のどの組合せを有してもよい。例示の実施の形態において、改質された結晶性ゼオライト材料は、2nm未満の微小孔径を有する微小孔、および2nmから50nmの孔径を有するメソ細孔を含むことがある。
【0054】
いくつかの実施の形態によれば、改質された結晶性ゼオライト材料は、構造(A-I)のルイスアルミニウム単一部位の基Rの一部が、または構造(A-I)のルイスアルミニウム単一部位の基Rの全てが、アルキルである、アルキルアルミニウムゼオライトであることがある。そのような実施の形態において、アルキルアルミニウムゼオライトは、四配位アルキルアルミニウム部位のアルミニウム-アルキル結合に特徴的である、フーリエ変換赤外分光法で測定して、2850cm-1から2990cm-1の範囲のバンドを示すことがある。具体的な例示の実施の形態において、改質された結晶性ゼオライト材料は、構造(A-I)のルイスアルミニウム単一部位の基Rの一部が、または構造(A-I)のルイスアルミニウム単一部位の基Rの全てが、イソブチルである、アルキルアルミニウムゼオライトであることがある。
【0055】
いくつかの実施の形態によれば、改質された結晶性ゼオライト材料は、構造(A-I)のルイスアルミニウム単一部位の基Rの一部が、または構造(A-I)のルイスアルミニウム単一部位の基Rの全てが、ヒドリドである、ヒドリドアルミニウムゼオライトであることがある。そのような実施の形態において、ヒドリドアルミニウムゼオライトは、四配位アルミニウムヒドリド部位のアルミニウム-ヒドリド結合に特徴的である、フーリエ変換赤外分光法で測定して、1952cm-1のバンドを示すことがある。
【0056】
いくつかの実施の形態によれば、改質された結晶性ゼオライト材料は、構造(A-I)のルイスアルミニウム単一部位の基Rの一部が、または構造(A-I)のルイスアルミニウム単一部位の基Rの全てが、ヒドロキシルである、ヒドロキシルアルミニウムゼオライトであることがある。そのような実施の形態において、ヒドロキシルアルミニウムゼオライトは、四配位アルミニウムヒドロキシド部位のアルミニウム-ヒドロキシル結合に特徴的である、フーリエ変換赤外分光法で測定して、3787cm-1のバンドを示すことがある。
【0057】
実施の形態による改質された結晶性ゼオライト材料を説明してきたが、これから、四配位ルイスアルミニウム単一部位を、ブレンステッドアルミニウム部位を含むゼオライト骨格を有する結晶性ゼオライト材料に組み込む方法を説明する。
【0058】
四配位ルイスアルミニウム単一部位を結晶性ゼオライト材料に組み込む方法は、結晶性ゼオライト材料を、各Rがアルキルである、実験式RAlHのジアルキルアルミニウムヒドリドと接触させる工程を含む。このジアルキルアルミニウムヒドリドは、ゼオライト骨格と反応し、四配位アルキルアルミニウム部位を形成する。結果として得られた改質された結晶性ゼオライト材料は、アルキルアルミニウムゼオライトである。四配位アルキルアルミニウム単一部位は、構造(B-I):
【0059】
【化6】
【0060】
によるゼオライト骨格内の環境を有する。
【0061】
構造(B-I)において、各Siは、4つの酸素原子に結合されたゼオライト骨格のケイ素原子である。
【0062】
四配位ルイスアルミニウム単一部位を結晶性ゼオライト材料に組み込む方法の実施の形態において、結晶性ゼオライト材料は、ブレンステッドアルミニウム部位を含み、ジアルキルアルミニウムヒドリドに対して反応性である、ブレンステッドアルミニウム部位以外の部位も含むどのゼオライトであってもよい。この点に関する「ゼオライト」は、必要に応じて置換または交換が行われる、アルミニウム、ケイ素、および酸素からなる骨格を有する結晶性材料を含む。一般に、ゼオライトは、三次元骨格および分子サイズの細孔を有するアルミノケイ酸塩と記載される。あるゼオライト系材料は、X線回折で決定して明確な結晶構造を有する規則的な多孔質結晶性アルミノケイ酸塩であり、その中には、多数のさらに小さい通路または窓で相互接続されることのある多数のより小さい空洞がある。これらの空洞および細孔は、特定のゼオライト材料内ではサイズが均一である。これらの細孔の寸法は、特定の寸法の吸着分子を受け入れるが、それより大きい寸法のものを拒絶するようなものであるので、これらの材料は、「分子篩」として知られており、これらの特性を生かして様々な方法で利用されている。実施の形態による結晶性ゼオライト材料に関する「ゼオライト」という用語は、ナトリウム、カルシウム、バリウム、ベリリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、ストロンチウム、またはこれらの組合せなどのカチオンを含む構造化アルミノケイ酸塩材料の群の内の任意の構成員をさらに含むことがあり、公称式HAlSi1-xに概して一致し、式中、Hは、任意の他の一価カチオン、または(Hに関連するxが価数で割りきれる場合)多価カチオンで交換されることがある。
【0063】
実施の形態の結晶性ゼオライト材料に関する「ゼオライト」という用語は、アルミノリン酸塩(例えば、MeAPO、SAPO、EIAPO、MeAPSO、およびEIAPSO)、ガロリン酸塩、ジンコリン酸塩、およびチタノリン酸塩の場合のように、Si4+またはAl3+を他の元素で置換することによって調製された「ゼオライト関連材料」または「ゼオタイプ(zeotypes)」をさらに含む。
【0064】
実施の形態において、結晶性ゼオライト材料は、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、EZT、FAR、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IHW、IMF、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWV、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBN、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SGT、SIV、SOD、SOS、SSF、SSY、STF、STI、STO、STT、SZR、TER、THO、TOL、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、WEN、YUG、およびZONなど、国際ゼオライト学会により定義された構造型の下でIZA構造委員会のゼオライト骨格型データベースに記載されたような骨格を有するどの結晶性多孔質材料を含んでよい。実施の形態による結晶性ゼオライト材料は、連晶ゼオライトを含むことがあり、ここで、結晶性ゼオライト材料は、単一ゼオライト結晶内の少なくとも2つの個々の連晶ゼオライト部分を含み、この連晶ゼオライト部分は、各々が先の骨格型から選択される、少なくとも2つの異なる骨格型のゼオライト部分を含む。
【0065】
一般に、多孔質物質は、孔径で分類される。例えば、2ナノメートルより小さい孔径を有する物質は、微小孔性物質と分類され、2nmと50nmの間の孔径を有する物質は、メソ多孔性物質と分類され、50nmより大きい孔径を有する物質は、マクロ多孔性と分類される。実施の形態による結晶性ゼオライト材料は、微小孔性、メソ多孔性、マクロ多孔性であっても、もしくは、いずれの場合でも、2nm未満または50nm超の孔径を含む、微小孔、メソ細孔、およびマクロ孔の分類のいずれか1つ、2つ、または3つから選択される複数の部類の孔径を有してもよい。MCM-41およびSBA-15などの非ゼオライト系メソ多孔性シリカは、実質的に微小孔性を示すことができるのを理解すべきである。このタイプの微小孔性は、規則的ではなく、明確に定義されていないが、ゼオライト系と考えるべきである。本開示において「結晶性ゼオライト材料」および「ゼオライト」という用語は、どのタイプのメソ多孔性シリカを包含するものではないことを理解すべきである。
【0066】
いくつかの例示の実施の形態において、結晶性ゼオライト材料は、アルミノケイ酸塩ゼオライト、アルミノリン酸塩ゼオライト、金属置換アルミノリン酸塩ゼオライト、およびシリコアルミノリン酸塩ゼオライトから選択されることがある。いくつかの実施の形態において、結晶性ゼオライト材料は、アルミノケイ酸塩ゼオライトである。アルミノケイ酸塩ゼオライトは、例えば、ジアルキルアルミニウムヒドリドに対して反応性である、シラノール基(≡Si-OH)を含む。特にアルミノケイ酸塩ゼオライトに関して。さらなる例示の実施の形態において、結晶性ゼオライト材料は、異なる骨格型を有する追加のゼオライト部分が連晶した下記の骨格型のいずれかを有する少なくとも1つのゼオライト部分を含む連晶ゼオライトを含む、MFI骨格、BEA骨格、モルデナイト(MOR)骨格、菱沸石(CHA)骨格、またはフォージャサイト(FAU)骨格を有するアルミノケイ酸塩ゼオライトであることがある。実施の形態において、FAUゼオライトは、ゼオライトYまたはUSYゼオライト(超安定ゼオライトY)であることがある。具体的な非限定例の実施の形態において、結晶性ゼオライト材料は、例えば、ZSM-5ゼオライトまたは酸性H-ZSM-5ゼオライトなどのMFI骨格を有するアルミノケイ酸塩ゼオライトであることがある。
【0067】
実験式RAlHのジアルキルアルミニウムヒドリドは、二量体または単量体であることがある。実施の形態において、実験式RAlHのジアルキルアルミニウムヒドリドは、安定した単量体化合物である。式RAlHの安定した単量体ジアルキルアルミニウムヒドリド化合物の非限定例としては、米国特許第4170604号および同第3015669号の各明細書に開示されたものが挙げられる。ジアルキルアルミニウムヒドリドの2つの基Rは、同一であっても、異なってもよい。いくつかの実施の形態において、ジアルキルアルミニウムヒドリドの2つの基Rは、同一である。ジアルキルアルミニウムヒドリドの基Rに関して使用されているように、「アルキル」という用語は、最も広い意味で、直鎖または分岐の飽和炭化水素ラジカルを称すると理解すべきであり、炭素原子と水素原子のみを含み、例えば、1から50の炭素原子、1から40の炭素原子、1から30の炭素原子、1から20の炭素原子、1から10の炭素原子、1から5の炭素原子、1から4の炭素原子、3から10の炭素原子、4から10の炭素原子、または3から5の炭素原子を含む。
【0068】
ジアルキルアルミニウムヒドリドの基Rの直鎖アルキルの具体例としては、制限なく、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、およびn-デシルが挙げられる。ジアルキルアルミニウムヒドリドの基Rの分岐アルキルの例としては、式-CH2CRのラジカルが挙げられ、式中、R、R、およびRの少なくとも1つが(C~C)アルキルであるという前提で、R、R、およびRは、独立して、(C~C)アルキルまたは水素である。そのような基の非限定例としては、2,2-ジメチルプロピル(ネオペンチル)および3,3-ジメチルブチル(ネオヘキシル)が挙げられる。ジアルキルアルミニウムヒドリドの基Rの分岐アルキルのさらなる例としては、式-CH(R)-CH(R)(R)のラジカルが挙げられ、式中、RおよびRの一方は水素であり、RおよびRの他方は直鎖または分岐(C~C15)アルキルであり、Rは直鎖または分岐(C~C15)アルキルである。そのような基の非限定例としては、1-メチルプロピル(sec-ブチル)、2-メチルプロピル(イソブチル)、1-メチルブチル(sec-アミル)、2-メチルブチル、1-メチルペンチル、および2-メチルペンチルが挙げられる。
【0069】
具体的な例示の実施の形態において、各Rはイソブチルである。そのような実施の形態において、ジアルキルアルミニウムヒドリドの基Rおよび改質された結晶性ゼオライト材料の構造(B-I)のルイスアルミニウム単一部位の基Rも、イソブチルである。
【0070】
いくつかの実施の形態によれば、ジアルキルアルミニウムヒドリドとゼオライト骨格との反応により、ゼオライト骨格にジアルキルアルミニウムヒドリドのアルミニウム原子と1つのアルキル基Rが結合し、副生成物として炭化水素化合物RHが失われる。例えば、ジアルキルアルミニウムヒドリドがジイソブチルアルミニウムヒドリドである場合、イソブチルアルミニウム種がゼオライト骨格に結合し、気体イソブタンの分子が生成される。
【0071】
実施の形態によれば、ジアルキルアルミニウムヒドリドがゼオライト骨格と反応したときに、結晶性ゼオライト材料のブレンステッドアルミニウム部位はジアルキルアルミニウムヒドリドと反応しない。いくつかの実施の形態において、結晶性ゼオライト材料は、アルミノケイ酸塩ゼオライトであることがある。結晶性ゼオライト材料がアルミノケイ酸塩ゼオライトである場合、ジアルキルアルミニウムヒドリドは、アルミノケイ酸塩ゼオライトのシラノール基と選択的に反応することができ、結晶性ゼオライト材料のブレンステッドアルミニウム部位とは反応することがない。
【0072】
いくつかの実施の形態において、四配位ルイスアルミニウム単一部位を結晶性ゼオライト材料に組み込む方法は、結晶性ゼオライト材料をジアルキルアルミニウムヒドリドと接触させる前に、結晶性ゼオライト材料を脱ヒドロキシル化する工程をさらに含むことがある。結晶性ゼオライト材料を脱ヒドロキシル化する工程は、必要に応じて真空下または流動気体下で、ゼオライトの細孔から残留水を除去し、遊離シラノールを生成しつつ、隣接シラノール種をなくすまたは阻むのに十分な脱ヒドロキシル化時間に亘り、結晶性ゼオライト材料を少なくとも600℃の温度で加熱する工程を含むことがある。例示の実施の形態において、脱ヒドロキシル化時間は、少なくとも10時間であることがある。脱ヒドロキシル化は、ジアルキルアルミニウムヒドリドに対して反応性である結晶性ゼオライト材料中の利用可能な官能種の数を最適化することによって、遊離した四配位アルミニウムの形成を可能にすると考えられる。
【0073】
実施の形態において、ジアルキルアルミニウムヒドリドのゼオライト骨格との反応により、反応前の結晶性ゼオライト材料中のアルミニウムの質量パーセントに対して、少なくとも0.01%、少なくとも0.02%、少なくとも0.05%、少なくとも0.1%、少なくとも0.2%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも5%、または少なくとも10%だけ、ゼオライト骨格中のアルミニウムの質量パーセントが増加することがある。この点に関してアルミニウムの質量パーセントの増加は、ジアルキルアルミニウムヒドリドとの反応前のアルキルアルミニウムゼオライト中のアルミニウムの質量パーセントと結晶性ゼオライト材料中のアルミニウムの質量パーセントとの差を、ジアルキルアルミニウムヒドリドとの反応前の結晶性ゼオライト材料中のアルミニウムの質量パーセントで除算し、100を乗じることによって計算される。反応の前後のゼオライト中のアルミニウムの質量パーセントは、酸化物基準で計算される。実施の形態において、アルキルアルミニウムゼオライトでは、アルキルアルミニウムゼオライト中の全てのアルミニウム原子の0.01%から50%、または0.01%から10%、または0.01%から5%、または0.01%から2%、または0.01%から1%が、四配位アルキルアルミニウム単一部位としてゼオライト骨格中に存在することがある。
【0074】
実施の形態により調製されたアルキルアルミニウムゼオライトは、四配位アルキルアルミニウム単一部位のアルミニウム-アルキル結合に特徴的な、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)で測定されるバンドを示すことがある。実施の形態において、四配位アルキルアルミニウム単一部位のアルミニウム-アルキル結合に特徴的なバンドは、2850cm-1から2990cm-1の範囲でFTIRスペクトルに現れることがある。理論で束縛する意図はないが、四配位アルキルアルミニウム単一部位のアルミニウム-アルキル結合に特徴的なピークの波数範囲は、アルキル基Rの固有性に依存せず、それゆえ、先に定義されたような構造(B-I)による任意の種類のアルキルアルミニウム部位の存在を示すように、依拠されることがあると考えられる。
【0075】
四配位ルイスアルミニウム単一部位を結晶性ゼオライト材料に組み込む方法は、アルキルアルミニウムゼオライトのアルキルアルミニウム部位の全てまたは一部をアルミニウムヒドリド部位に変換し、それによって、ヒドリドアルミニウムゼオライトである改質された結晶性ゼオライト材料を形成する工程をさらに含むことがある。アルキルアルミニウム部位をアルミニウムヒドリド部位に変換する工程は、アルキルアルミニウムゼオライトを熱処理または加熱して、アルキル基Rの少なくとも一部のβ-ヒドリド脱離を誘発する工程を含むことがある。構造(B-I)による部位からアルキル基Rの少なくとも一部のベータ-ヒドリド脱離の際に、構造(B-II):
【0076】
【化7】
【0077】
によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位アルミニウムヒドリド単一部位が形成される。
【0078】
構造(B-II)において、各Siは、4つの酸素原子に結合されたゼオライト骨格のケイ素原子である。
【0079】
アルキルアルミニウムゼオライトの熱処理は、アルキルアルミニウムゼオライトを、例えば、200℃から500℃、または300℃から500℃、または300℃から450℃、または350℃から450℃、または約400℃のピーク処理温度で加熱することにより行われることがある。ピーク処理温度は、アルキルアルミニウムゼオライトを周囲条件から、1℃から20℃の昇温速度で加熱し、所望の時間に亘り、例えば、10分から6時間の保持期間に亘り、またはベータ-ヒドリド脱離反応が完了するまで、ピーク温度に保持することによって、達することがある。いくつかの実施の形態において、それより低いピーク温度またはそれより短い加熱時間では、アルミニウムヒドリド部位およびアルキルアルミニウム部位の両方を含む改質された結晶性ゼオライト材料が生じるであろう。ピーク処理温度は、ベータ-ヒドリド脱離を開始するのに十分高いが、ルイスアルミニウム部位の損失またはゼオライト骨格からの骨格アルミニウムの拒絶などのゼオライト骨格の転位を避けるのに十分に低くなければならない。実施の形態において、加熱は、真空条件下でどの適切な反応器内で行われてもよい。
【0080】
実施の形態において、ヒドリドアルミニウムゼオライトでは、ヒドリドアルミニウムゼオライト中の全てのアルミニウム原子の少なくとも0.01%、または少なくとも0.1%、または少なくとも1%、または少なくとも10%、または0.01%から50%、または0.01%から10%、または0.01%から5%、または0.01%から2%、または0.01%から1%が、四配位アルミニウムヒドリド単一部位としてゼオライト骨格中に存在することがある。
【0081】
実施の形態による調製されたヒドリドアルミニウムゼオライトは、四配位アルミニウムヒドリド単一部位のアルミニウム-ヒドリド結合に特徴的な、FTIRで測定されるバンドを示すことがある。実施の形態において、四配位アルミニウムヒドリド単一部位のアルミニウム-ヒドリド結合に特徴的なバンドは、約1952cm-1でFTIRスペクトルに現れることがある。
【0082】
四配位ルイスアルミニウム単一部位を結晶性ゼオライト材料に組み込む方法は、ヒドリドアルミニウムゼオライトのアルミニウムヒドリド部位の全てまたは一部をヒドロキシルアルミニウム部位に変換し、それによって、ヒドロキシルアルミニウムゼオライトである改質された結晶性ゼオライト材料を形成する工程をさらに含むことがある。アルミニウムヒドリド部位をアルミニウムヒドロキシド部位に変換する工程は、ヒドリドアルミニウムゼオライトを酸化する工程を含むことがある。四配位アルミニウムヒドロキシド単一部位は、構造(B-III):
【0083】
【化8】
【0084】
によるゼオライト骨格内の環境を有する。
【0085】
構造(B-III)において、各Siは、4つの酸素原子に結合されたゼオライト骨格のケイ素原子である。
【0086】
酸化は、アルミニウムヒドリド部位をアルミニウムヒドロキシド部位に酸化するのに十分な酸化能力を有するどの酸化気体または酸化液体の存在下で行われてもよい。非限定例の実施の形態において、酸化気体としては、亜酸化窒素(NO)、酸素、ヨードソベンゼン(PhIO)、または亜酸化窒素と酸素の混合物が挙げられるであろう。酸化液体の例に、過酸化物があるであろう。酸化は、酸化が所望の完了状態まで継続されることを確実にするのに十分な期間に亘り、70℃から200℃、または90℃から150℃、または約100℃などの高温で行われることがある。酸化時間は、10分から5日間、または1時間から5日間、24時間から5日間、または約2日間であることがある。いくつかの実施の形態において、それより低い酸化温度、それより弱い酸化気体、またはそれより短い酸化加熱時間では、アルミニウムヒドロキシド部位およびアルミニウムヒドリド部位の両方を含む改質された結晶性ゼオライト材料が得られるであろう。いくつかの実施の形態において、酸化後、改質された結晶性ゼオライト材料は、アルキルアルミニウム部位、アルミニウムヒドリド部位、およびアルミニウムヒドロキシド部位を含むことがある。単一ゼオライト骨格中の様々なそのような部位により、触媒選択性、触媒活性、またはその両方に関して、ゼオライト特性を微調整し、所望の触媒プロセスに最適化する能力が生じるであろう。
【0087】
実施の形態において、ヒドロキシルアルミニウムゼオライトでは、ヒドロキシルアルミニウムゼオライト中の全てのアルミニウム原子の少なくとも0.01%、または少なくとも0.1%、または少なくとも1%、または少なくとも10%、または0.01%から50%、または0.01%から10%、または0.01%から5%、または0.01%から2%、または0.01%から1%が、四配位アルミニウムヒドロキシド単一部位としてゼオライト骨格中に存在することがある。
【0088】
実施の形態による調製されたヒドロキシルアルミニウムゼオライトは、四配位アルミニウムヒドロキシド単一部位のアルミニウム-ヒドロキシル結合に特徴的なFTIRで測定されるバンドを示すことがある。実施の形態において、四配位アルミニウムヒドロキシド単一部位のアルミニウム-ヒドロキシル結合に特徴的なバンドは、約3787cm-1でFTIRスペクトルに現れることがある。
【実施例
【0089】
本開示の特定の実施の形態は、説明のために提示され、当業者が限定であることを意図しないと理解される、以下の実施例を参照することによって、よりよく理解されるであろう。
【0090】
実施例1
アルキル-アルミニウムゼオライトの調製
この実施例において、繊維状階層型ZSM-5(FH-ZSM-5)アルミノケイ酸塩ゼオライトを官能化して、四配位アルキルアルミニウム単一部位を含ませる。提供された状態のFH-ZSM-5を、エネルギー分散型X線(EDX)分析および透過電子顕微鏡法(TEM)で特徴付けた。提供された状態のFH-ZSM-5のEDXスペクトルが、図1に与えられている。提供された状態のFH-ZSM-5の様々な部分の4つのTEM顕微鏡写真が、図2A~2Dに与えられている。
【0091】
アルキル化前に、FH-ZSM-5を30時間に亘り、10-5ミリバール(0.001Pa)、700℃で脱ヒドロキシル化した。脱ヒドロキシル化反応の態様が、図3に概略示されている。図3の反応スキームは、新たなFH-ZSM-5出発材料の部分および生成物としての脱ヒドロキシル化された材料の部分を示す。脱ヒドロキシル化反応中、シラノールのヒドロキシル基およびアルミニウム-酸素-ケイ素架橋プロトンが、水の分子として除去されて、アルミノケイ酸塩骨格上に反応部位を形成する。
【0092】
脱ヒドロキシル化されたFH-ZSM-5を、EDX分析、制限視野電子回折(SAED)、TEM、およびフーリエ変換赤外(FTIR)分光法で特徴付けた。脱ヒドロキシル化されたH-ZSM-5のEDXスペクトルが、図4に与えられている。脱ヒドロキシル化されたH-ZSM-5のSAEDパターンが、図5に与えられている。脱ヒドロキシル化されたH-ZSM-5の様々な部分の4つのTEM顕微鏡写真が、図6A~6Dに与えられている。
【0093】
アルキル化反応の態様が、図7に概略示されている。図7の反応図に示されているように、脱ヒドロキシル化された材料がジアルキルアルミニウムヒドリド(RAlH)と反応する際に、アルキルアルミニウム部位がゼオライト骨格に組み込まれる。この実施例において、ジアルキルアルミニウムヒドリドのRはイソブチルであり、ジアルキルアルミニウムヒドリドは、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAL)であった。反応中に、形成されたAl-R部位毎に、イソブタンの分子が遊離した。
【0094】
アルキル化反応を不活性雰囲気下で行った。二重シュレンク管の第1区画に、0.5gの脱ヒドロキシル化されたH-ZSM-5を導入した。二重シュレンク管の第2区画に、3mLの乾燥脱気ペンタンおよびヘキサン中1.0Mのジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAL-H)の1当量(脱ヒドロキシル化後に存在するシラノールの量に対して計算した)を導入し、5分に亘り室温で撹拌した。液体窒素中で、H-ZSM-5へのDIBAL-Hの溶液の移動を行った。この反応を、1時間に亘り撹拌しながら室温で維持した。濾過によって揮発性物質を除去し、白色固体を乾燥ペンタンで2回洗浄して、未反応のDIBAL-Hを取り除いた。得られた固体を動的真空下(10-5ミリバール(0.001Pa)で12時間に亘り乾燥させた。
【0095】
アルキルアルミニウムゼオライト、具体的に、イソブチルアルミニウムゼオライトをEDX、SAED、TEM、FTIR、27Al固体核磁気共鳴(SS-NMR)、およびプロトン(H)SS-NMRで分析した。イソブチルアルミニウムゼオライトのEDXスペクトルが、図8に与えられている。イソブチルアルミニウムゼオライトのSAEDパターンが、図9に与えられている。イソブチルアルミニウムゼオライトの様々な部分の2つのTEM顕微鏡写真が、図10Aおよび10Bに与えられている。
【0096】
図11の重ねられたFTIRスペクトルは、(i)DIBALとの反応前の脱ヒドロキシル化されたH-ZSM-5、および(ii)脱ヒドロキシル化されたH-ZSM-5をDIBALと反応させることにより得られたイソブチルアルミニウムゼオライトを示す。振動イソブチル基が、範囲2965~2864cm-1[νas(CH)、νas(CH)]、および1465cm-1[δas(CH)]に見える。水素化ケイ素種の形成が、2189cm-1での広いバンドにより特徴付けられている。
【0097】
イソブチルアルミニウムゼオライトのFTIRスペクトルは、反応化学のいくつかの態様を示す。第一に、脱ヒドロキシル化されたH-ZSM-5からイソブチルアルミニウムゼオライトへのSi-OH振動に起因する3750cm-1でのピーク強度の減少は、DIBALがゼオライト骨格中のシラノール種と実質的に反応したことを示すであろう。予期せぬことに、Al-OH振動に起因する3611cm-1でのピークは、DIBAL反応の後に残っていた。このピークの維持から、DIBALは、シラノール種と反応しただけでなく、ブレンステッドアルミニウム部位とは反応せずに、選択的にそのように反応したと考えられる。このように、FTIRによって、アルキルアルミニウムゼオライトは、支持されたイソブチルアルミニウム種(図7の種1)、シリルヒドリド種(図7の種2)、およびイソブチルシロキサン種(図7の種3)を含むと判定された。
【0098】
アルキルアルミニウムの27Al SS-NMRスペクトルは、図22の重ねられたスペクトルのトレース(i)である。アルキルアルミニウムのH SS-NMRスペクトルは、図23の重ねられたスペクトルのトレース(i)である。これらのSS-NMRスペクトルが、実施例3においてより詳しく比較して述べられている。
【0099】
実施例2
ヒドリドアルミニウムゼオライトの調製
実施例1にしたがって調製したアルキルアルミニウムゼオライトをヒドリドアルミニウムゼオライトに変換した。ヒドリド形成反応の態様が、図12に概略示されており、その反応により、アルキルアルミニウムゼオライトの熱処理の際に、ゼオライト骨格に様々なヒドリド種が形成される。
【0100】
実施例1に記載されたように、アルキルアルミニウムゼオライトは全体として、図12に示されたように、3つの種1、2、および3を含み、式中、Rはイソブチルであった。実施例1のアルキルアルミニウムゼオライトをガラス製反応器(275mL)に入れた。反応器を、毎時8℃の昇温速度で室温から400℃に加熱し、動的真空(10-5ミリバール(0.001Pa))下で1時間に亘り400℃に保持した。真空下での熱処理により、アルケン(C2x)、詳しくは、イソブテン(2-メチルプロペン)が放出されて、ゼオライト骨格上のイソブチル基のベータ-ヒドリド脱離が誘発された。
【0101】
ヒドリドアルミニウムゼオライトをEDX、SAED、TEM、FTIR、27Al SS-NMR、およびH SS-NMRで分析した。ヒドリドアルミニウムゼオライトのEDXスペクトルが、図13に与えられている。ヒドリドアルミニウムゼオライトのSAEDパターンが、図14に与えられている。ヒドリドアルミニウムゼオライトの様々な部分の4つのTEM顕微鏡写真が、図15A~15Dとして与えられている。
【0102】
図16の重ねられたFTIRスペクトルは、(i)脱ヒドロキシル化されたH-ZSM-5をDIBALと反応させることにより得られたイソブチルアルミニウムゼオライト、および(ii)イソブチルアルミニウムゼオライトの熱処理後のヒドリドアルミニウムゼオライトを示す。ヒドリドアルミニウムゼオライトのFTIRスペクトルは、範囲2958~2871cm-1[νas(CH)、νas(CH)]、および1468cm-1[δas(CH)]にイソブチル基の振動バンドの強力な減少を示した。Al-Hのバンドは、1952cm-1[ν(Al-H)]で見えた。
【0103】
ヒドリドアルミニウムゼオライトのFTIRスペクトルは、反応化学のいくつかの態様を示す。第一に、アルミニウム-ヒドリド結合[Al-H]の存在が、アルキルアルミニウムゼオライトでは存在しなかった1952cm-1でのバンドにより証明された。3738cm-1でのバンドは、シラノール種[Si-OH]に起因した。3611cm-1でのバンドは、熱処理中のブレンステッドアルミニウム部位の維持と非反応を証明した。2257cm-1でのバンドは、ジヒドリドシリル種に起因した。最後に、全てがアルキルアルミニウムゼオライト中の炭素-水素伸縮に起因する、2958cm-1、2929cm-1、2909cm-1、2871cm-1、および1468cm-1でのピークは、アルキルアルミニウムゼオライトに対してヒドリドアルミニウムゼオライトにおいて減少し、イソブチル基が、ベータ-脱離反応後にヒドリドで実質的に置換されたことを証明した。1468cm-1でのピークの維持は、イソブチルシロキサン種の存在を示すと考えられる。このように、FTIRによって、ヒドリドアルミニウムゼオライトは、支持されたアルミニウムヒドリド種(図12の種4)、シリルヒドリド種(図12の種2)、イソブチルシロキサン種(図12の種3)、シリルジヒドリド種(図12の種5)、およびテトラオキソ配位アルミニウム種(図12の種6)を含むと判定された。
【0104】
ヒドリドアルミニウムの27Al SS-NMRスペクトルは、図22の重ねられたスペクトルのトレース(ii)である。ヒドリドアルミニウムのH SS-NMRスペクトルは、図23の重ねられたスペクトルのトレース(ii)である。図22および23のSS-NMRスペクトルが、実施例3においてより詳しく比較して述べられている。
【0105】
実施例3
ヒドロキシルアルミニウムゼオライトの調製
実施例2のヒドリドアルミニウムゼオライトをヒドロキシルアルミニウムゼオライトに変換した。ヒドロキシル形成反応の態様が、図17に概略示されており、その反応により、ヒドリドアルミニウムゼオライトの酸化の際に、ゼオライト骨格中のアルミニウムヒドリド種が、ゼオライト骨格中のヒドロキシルアルミニウム種に変換される。
【0106】
実施例1および2にしたがって調製したヒドリドアルミニウムゼオライトに酸化工程を施して、[Al-H]表面種を酸化して、「Al-H」種を形成した。酸化は、2日間に亘り100℃でヒドリドアルミニウムゼオライトをNO(0.7バール(70kPa))に曝露することによって行った。酸化生成物であるヒドロキシルアルミニウムゼオライトをEDX、SAED、TEM、FTIR、27Al SS-NMR、およびH SS-NMRで分析した。ヒドロキシルアルミニウムゼオライトのEDXスペクトルが、図18に与えられている。ヒドロキシルアルミニウムゼオライトのSAEDパターンが、図19に与えられている。ヒドロキシルアルミニウムゼオライトの様々な部分の4つのTEM顕微鏡写真が、図20A~20Dとして与えられている。
【0107】
ヒドロキシルアルミニウムゼオライトのFTIRスペクトルが、図21として与えられている。そのスペクトルは、亜酸化窒素中の酸化処理の結果としての[Al-H]の[Al-OH]への完全な変換を証明している。具体的に、[Al-H]に割り当てられた1952cm-1でのバンドは、もはや存在せず、新たなバンドが3787cm-1に現れ、ヒドロキシルアルミニウムゼオライト中の[Al-OH]ルイス部位を表した。3611cm-1でのバンドは、酸化中のブレンステッドアルミニウム部位の維持と非反応を証明した。他の目立つバンドが、シラノール種については3741cm-1に、シリルヒドリドについては2260cm-1と2186cm-1に現れた。炭素-水素伸縮および振動は、2965cm-1、2877cm-1、および1468cm-1でのバンドから明らかであった。このように、FTIRによって、ヒドロキシルアルミニウムゼオライトは、支持されたアルミニウムヒドロキシル種(図17の種7)、シリルヒドリド種(図17の種2)、イソブチルシロキサン種(図17の種3)、シリルジヒドリド種(図17の種5)、およびテトラオキソ配位アルミニウム種(図17の種6)を含むと判定された。
【0108】
図2227Al SS-NMRスペクトルは、(i)実施例1のアルキルアルミニウムゼオライトから、(ii)実施例2のヒドリドアルミニウムゼオライトから、(iii)この実施例3のヒドロキシルアルミニウムゼオライトへのアルミニウム環境の展開を示す。6つの近接酸素原子の影響を受けるアルミニウム原子[Al(O)]は、約0.85ppmでのピークを表す。5つの近接酸素原子の影響を受けるアルミニウム原子[Al(O)]は、約29.2ppmでのピークを表す。4つの近接酸素原子の影響を受けるアルミニウム原子[Al(O)]は、約52.5ppmでのピークを表す。アルキルアルミニウムゼオライトおよびヒドリドアルミニウムゼオライトについては、Al(O)ピークが優勢であるのに対し、ヒドロキシルアルミニウムゼオライトについては、Al(O)ピークが優勢である。ヒドロキシルアルミニウムゼオライトのAl(O)ピークは、[Al-OH]種の結果として増加したと考えられる。全ての場合で、27Al SS-NMRスペクトルは、アルキルアルミニウムゼオライト、ヒドリドアルミニウムゼオライト、およびヒドロキシルアルミニウムゼオライトが、それぞれのゼオライト骨格中に四配位アルミニウム原子を含むことを証明している。
【0109】
同様に、図23H SS-NMRスペクトルは、(i)実施例1のアルキルアルミニウムゼオライトから、(ii)実施例2のヒドリドアルミニウムゼオライトから、(iii)この実施例3のヒドロキシルアルミニウムゼオライトへのアルミニウム環境の展開を示す。垂直線が、特に関心にあるピーク領域を強調している。線Aは、[≡Al-O]種の水素原子のピーク位置であり、そこではヒドロキシルアルミニウムゼオライトのみが信号を示す。線Bは、シリルヒドリド[≡Si-]、シリルジヒドリド[=Si(]、およびアルミニウムヒドリド[≡Al-]の水素原子のピーク位置であり、そこではヒドリドアルミニウムゼオライトおよびヒドロキシルアルミニウムゼオライトのみが信号を示す。線Cは、[≡Si-CH(CH]および[≡Al-CH(CH]のイソブチル基のベータ炭素原子上の単一水素原子のピーク位置である。3種類のゼオライト全てが、この位置に信号を示し、アルキルアルミニウムゼオライトのピークが、イソブチルシロキサン種[≡Si-CH(CH]に加え、イソブチルアルミニウム種[≡Al-CH(CH]の存在のために、最も顕著である。線Dは、[≡Si-CHCH(C ]および[≡Al-CHCH(C ]のイソブチル基の末端メチル基上の6つの同等の水素原子の伸縮に対応するピーク位置である。3種類のゼオライト全てが、この位置に顕著なピークを含み、重ねて、アルキルアルミニウムゼオライトのピークが、イソブチルシロキサン種[≡Si-CHCH(C ]に加え、イソブチルアルミニウム種[≡Al-CHCH(C ]の存在のために、最も顕著である。線Eは、イソブチル基[≡Si-C CH(CH]および[≡Al-C CH(CH]のアルファ炭素原子上の2つの同等の水素原子のピーク位置である。これらの水素原子に対応するピークは、線Dでの強力なピークのそばの肩部として識別するのが難しい。
【0110】
項目の列挙
本開示の実施の形態は、少なくとも以下の項目を含み、これらの項目は、全体としての本開示の範囲、または付随する特許請求の範囲を限定する意図はない。
【0111】
項目A1:ゼオライト骨格を有する改質された結晶性ゼオライト材料であって、このゼオライト骨格は、ゼオライト骨格に組み込まれた四配位ルイスアルミニウム単一部位およびブレンステッドアルミニウム部位の両方を含み、四配位ルイスアルミニウム単一部位は、本明細書に先に述べられたような構造(A-I)によるゼオライト骨格内の環境を有し、ここで、各Rは、アルキル、ヒドリド、およびヒドロキシルからなる群より独立して選択され、各Siは、ゼオライト骨格のケイ素原子であり、4つの酸素原子と結合しており、ブレンステッドアルミニウム部位は、本明細書に先に述べられたような構造(A-II)によるゼオライト骨格内の環境を有し、各Siは、ゼオライト骨格のケイ素原子であり、4つの酸素原子と結合している、改質された結晶性ゼオライト材料。
【0112】
項目A2:ゼオライト骨格中の各Rが、イソブチル、ヒドリド、およびヒドロキシルからなる群より独立して選択される、項目A1の改質された結晶性ゼオライト材料。
【0113】
項目A3:改質された結晶性ゼオライト材料の四配位ルイスアルミニウム単一部位が、(a)、(b)、および(c)の少なくとも2つを含む:(a)Rがアルキルである、構造(A-I)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位;(b)Rがヒドリドである、構造(A-I)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位;および(c)Rがヒドロキシルである、構造(A-I)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位、項目A1またはA2の改質された結晶性ゼオライト材料。
【0114】
項目A4:ゼオライト骨格中の各Rが、イソブチル、ヒドリド、およびヒドロキシルからなる群より独立して選択される、先の項目のいずれかの改質された結晶性ゼオライト材料。
【0115】
項目A5:改質された結晶性ゼオライト材料の四配位ルイスアルミニウム単一部位が、(a)、(b)、および(c)の少なくとも2つを含む:(a)Rがイソブチルである、構造(A-I)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位;(b)Rがヒドリドである、構造(A-I)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位;および(c)Rがヒドロキシルである、構造(A-I)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位、先の項目のいずれかの改質された結晶性ゼオライト材料。
【0116】
項目A6:各Rがヒドリドである、項目A1の改質された結晶性ゼオライト材料。
【0117】
項目A7:各Rがヒドロキシルである、項目A1の改質された結晶性ゼオライト材料。
【0118】
項目A8:各Rが(C~C20)アルキルである、項目A1の改質された結晶性ゼオライト材料。
【0119】
項目A9:各Rがイソブチルである、項目A1の改質された結晶性ゼオライト材料。
【0120】
項目A10:改質された結晶性ゼオライト材料が、(a)、(b)、(c)、およびその組合せから選択されるフーリエ変換赤外分光法で測定された少なくとも1つのバンドを示す:(a)四配位アルキルアルミニウム単一部位のアルミニウム-アルキル結合に特徴的である、2850cm-1から2990cm-1の範囲のバンド、(b)四配位アルミニウムヒドリド単一部位のアルミニウム-ヒドリド結合に特徴的である、1952cm-1のバンド、および(c)四配位アルミニウム部位のアルミニウム-ヒドロキシル結合に特徴的である、3787cm-1のバンド:先の項目のいずれかの改質された結晶性ゼオライト材料。
【0121】
項目A11:改質された結晶性ゼオライト材料が、四配位ルイスアルミニウム単一部位を含むように改質されたアルミノケイ酸塩ゼオライトである、先の項目のいずれかの改質された結晶性ゼオライト材料。
【0122】
項目A12:改質された結晶性ゼオライト材料が、四配位ルイスアルミニウム単一部位を含むように改質されたMFI骨格を有するゼオライトである、先の項目のいずれかの改質された結晶性ゼオライト材料。
【0123】
項目A13:改質された結晶性ゼオライト材料が、四配位ルイスアルミニウム単一部位を含むように改質されたZSM-5ゼオライト、四配位ルイスアルミニウム単一部位を含むように改質されたH-ZSM-5ゼオライト、または四配位ルイスアルミニウム単一部位を含むように改質されたFH-ZSM-5ゼオライトである、先の項目のいずれかの改質された結晶性ゼオライト材料。
【0124】
項目A14:改質された結晶性ゼオライト材料が、アルミノケイ酸塩ゼオライト、アルミノリン酸塩ゼオライト、金属置換アルミノリン酸塩ゼオライト、およびシリコアルミノリン酸塩ゼオライトから選択される、先の項目のいずれかの改質された結晶性ゼオライト材料。
【0125】
項目A15:改質された結晶性ゼオライト材料がアルミノケイ酸塩ゼオライトである、先の項目のいずれかの改質された結晶性ゼオライト材料。
【0126】
項目A16:改質された結晶性ゼオライト材料が、2nm未満の微小孔径を有する微小孔および2nmから50nmのメソ孔径を有するメソ細孔を含む、先の項目のいずれかの改質された結晶性ゼオライト材料。
【0127】
項目B1:四配位ルイスアルミニウム単一部位を、ブレンステッドアルミニウム部位を含むゼオライト骨格を有する結晶性ゼオライト材料に組み込む方法において、この方法は、結晶性ゼオライト材料を、各Rがアルキルである、実験式RAlHのジアルキルアルミニウムヒドリドと接触させて、このジアルキルアルミニウムヒドリドをゼオライト骨格と反応させ、本明細書に先に記載されたような構造(B-I)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位アルキルアルミニウム単一部位を形成し、それによって、アルキルアルミニウムゼオライトである改質された結晶性ゼオライト材料を形成する工程であって、各Siは、ゼオライト骨格のケイ素原子であり、4つの酸素原子に結合されている工程を含む方法。
【0128】
項目B2:結晶性ゼオライト材料のブレンステッドアルミニウム部位が、ジアルキルアルミニウムヒドリドと反応しない、項目B1の方法。
【0129】
項目B3:結晶性ゼオライト材料がアルミノケイ酸塩ゼオライトであり、ジアルキルアルミニウムヒドリドはそのアルミノケイ酸塩ゼオライトのシラノール基と選択的に反応し、結晶性ゼオライト材料のブレンステッドアルミニウム部位は、ジアルキルアルミニウムヒドリドと反応しない、項目B1またはB2の方法。
【0130】
項目B4:アルキルアルミニウムゼオライトが、四配位アルキルアルミニウム単一部位のアルミニウム-アルキル結合に特徴的である、フーリエ変換赤外分光法で測定して、2850cm-1から2990cm-1の範囲のバンドを示す、項目B1からB3のいずれかの方法。
【0131】
項目B5:各Rがイソブチルである、項目B1からB4のいずれかの方法。
【0132】
項目B6:結晶性ゼオライト材料をジアルキルアルミニウムヒドリドと接触させる前に、結晶性ゼオライト材料を脱ヒドロキシル化する工程をさらに含む、項目B1からB5のいずれかの方法。
【0133】
項目B7:結晶性ゼオライト材料を脱ヒドロキシル化する工程が、結晶性ゼオライト材料の細孔から残留水を除去し、近接ヒドロキシルを縮合して、水を放出し、それによって、遊離シラノール種を形成するのに十分な脱ヒドロキシル化時間に亘り、少なくとも600℃の温度で結晶性ゼオライト材料を加熱する工程を含む、項目B6の方法。
【0134】
項目B8:結晶性ゼオライト材料が、MFI骨格ゼオライト、BEA骨格ゼオライト、MOR骨格ゼオライト、CHA骨格ゼオライト、FAU骨格ゼオライト、ゼオライトY、超安定ゼオライトY(USY)、ZSM-5、H-ZSM-5、FH-ZSM-5、および任意の骨格型の別のアルミノケイ酸塩ゼオライトが連晶した先のアルミノケイ酸塩ゼオライトの少なくとも1つを含む連晶ゼオライトからなる群より選択されるアルミノケイ酸塩ゼオライトである、項目B1からB7のいずれかの方法。
【0135】
項目B9:アルキルアルミニウムゼオライトを加熱して、アルキル基Rの少なくとも一部のβ-ヒドリド脱離を誘発し、それによって、本明細書に先に記載されたような構造(B-II)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位アルミニウムヒドリド単一部位を形成し、それによって、ヒドリドアルミニウムゼオライトである改質された結晶性ゼオライト材料を形成する工程であって、各Siは、ゼオライト骨格のケイ素原子であり、4つの酸素原子に結合されている工程をさらに含む、項目B1からB8のいずれかの方法。
【0136】
項目B10:ヒドリドアルミニウムゼオライトが、四配位アルミニウムヒドリド単一部位のアルミニウム-ヒドリド結合に特徴的である、フーリエ変換赤外分光法で測定して、1952cm-1のバンドを示す、項目B9の方法。
【0137】
項目B11:ヒドリドアルミニウムゼオライトを酸化して、四配位アルミニウムヒドリド単一部位の少なくとも一部を、本明細書に先に記載されたような構造(B-III)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位アルミニウムヒドロキシド単一部位に変換し、それによって、ヒドロキシルアルミニウムゼオライトである改質された結晶性ゼオライト材料を形成する工程であって、各Siは、ゼオライト骨格のケイ素原子であり、4つの酸素原子に結合されている工程をさらに含む、項目B9からB10のいずれかの方法。
【0138】
項目B12:ヒドロキシルアルミニウムゼオライト中のアルミニウム原子の少なくとも1%が、四配位アルミニウムヒドロキシド単一部位中に存在する、項目B11の方法。
【0139】
項目B13:ヒドロキシルアルミニウムゼオライトが、四配位アルミニウムヒドロキシド単一部位のアルミニウム-ヒドロキシル結合に特徴的である、フーリエ変換赤外分光法で測定して、3787cm-1のバンドを示す、項目B11またはB12の方法。
【0140】
項目B14:結晶性ゼオライト材料が、アルミノケイ酸塩ゼオライト、アルミノリン酸塩ゼオライト、金属置換アルミノリン酸塩ゼオライト、およびシリコアルミノリン酸塩ゼオライトから選択される、項目B1からB13のいずれかの方法。
【0141】
項目B15:結晶性ゼオライト材料がアルミノケイ酸塩ゼオライトである、項目B1からB14のいずれかの方法。
【0142】
項目B16:結晶性ゼオライト材料が、MFI骨格、BEA骨格、FAU骨格、または任意の骨格型の別のアルミノケイ酸塩ゼオライトが連晶した先のアルミノケイ酸塩ゼオライトの少なくとも1つを含む連晶ゼオライトである、項目B1からB15のいずれかの方法。
【0143】
項目B17:結晶性ゼオライト材料がゼオライトYまたは超安定ゼオライトY(USY)である、項目B1からB16のいずれかの方法。
【0144】
項目B18:結晶性ゼオライト材料が、ZSM-5、H-ZSM-5、またはFH-ZSM-5である、項目B1からB17のいずれかの方法。
【0145】
項目C1:項目B1からB18のいずれか1つの方法により形成された改質された結晶性ゼオライト材料。
【0146】
項目D1:工業プロセスにおける触媒または触媒添加剤としての、項目A1からA16のいずれか1つの改質された結晶性ゼオライト材料、または項目B1からB18のいずれか1つの方法により形成された改質された結晶性ゼオライト材料の使用。
【0147】
特に明記のない限り、ここに使用した全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。この中の説明に使用した専門用語は、特定の実施の形態を説明するためだけであって、限定を意図するものではない。明細書および付随の特許請求の範囲に使用されているように、名詞は、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、複数の対象も含む意図がある。
【0148】
特定の実施の形態をここに説明し、記載してきたが、請求項の主題の精神および範囲から逸脱せずに、様々な他の変更および改変を行えることを理解すべきである。さらに、請求項の主題の様々な態様がここに記載されてきたが、そのような態様は、組合せで利用される必要はない。したがって、付随の特許請求の範囲は、請求項の主題の範囲内にあるそのような変更および改変の全てを対象とすることが意図されている。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
ゼオライト骨格を有する改質された結晶性ゼオライト材料であって、前記ゼオライト骨格は、該ゼオライト骨格に組み込まれた四配位ルイスアルミニウム単一部位およびブレンステッドアルミニウム部位の両方を含み、前記四配位ルイスアルミニウム単一部位は、構造(A-I):
【化9】
による前記ゼオライト骨格内の環境を有し、式中、
各Rは、アルキル、ヒドリド、およびヒドロキシルからなる群より独立して選択され、
各Si は、前記ゼオライト骨格のケイ素原子であり、4つの酸素原子と結合しており、
前記ブレンステッドアルミニウム部位は、構造(A-II):
【化10】
による前記ゼオライト骨格内の環境を有し、式中、
各Si は、前記ゼオライト骨格のケイ素原子であり、4つの酸素原子と結合している、改質された結晶性ゼオライト材料。
実施形態2
前記改質された結晶性ゼオライト材料の前記四配位ルイスアルミニウム単一部位が、(a)、(b)、および(c)の少なくとも2つを含む、実施形態1に記載の改質された結晶性ゼオライト材料:
(a)Rがアルキルである、構造(A-I)による前記ゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位、
(b)Rがヒドリドである、構造(A-I)による前記ゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位、および
(c)Rがヒドロキシルである、構造(A-I)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位。
実施形態3
前記改質された結晶性ゼオライト材料が、(a)、(b)、(c)、およびその組合せから選択されるフーリエ変換赤外分光法で測定された少なくとも1つのバンドを示す、実施形態1または2に記載の改質された結晶性ゼオライト材料:
(a)四配位アルキルアルミニウム部位のアルミニウム-アルキル結合に特徴的である、2850cm -1 から2990cm -1 の範囲のバンド、
(b)四配位アルミニウムヒドリド部位のアルミニウム-ヒドリド結合に特徴的である、1952cm -1 のバンド、および
(c)四配位ルイスアルミニウム部位のアルミニウム-ヒドロキシル結合に特徴的である、3787cm -1 のバンド。
実施形態4
前記ゼオライト骨格中の各Rが、イソブチル、ヒドリド、およびヒドロキシルからなる群より独立して選択される、実施形態1から3のいずれか1つに記載の改質された結晶性ゼオライト材料。
実施形態5
前記改質された結晶性ゼオライト材料の前記四配位ルイスアルミニウム単一部位が、(a)、(b)、および(c)の少なくとも2つを含む、実施形態1から4のいずれか1つに記載の改質された結晶性ゼオライト材料:
(a)Rがイソブチルである、構造(A-I)による前記ゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位、
(b)Rがヒドリドである、構造(A-I)による前記ゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位、および
(c)Rがヒドロキシルである、構造(A-I)によるゼオライト骨格内の環境を有する四配位ルイスアルミニウム単一部位。
実施形態6
前記改質された結晶性ゼオライト材料が、前記四配位ルイスアルミニウム単一部位を含むように改質されたアルミノケイ酸塩ゼオライトである、または
前記改質された結晶性ゼオライト材料が、前記四配位ルイスアルミニウム単一部位を含むように改質されたMFI骨格を有するゼオライトである、または
前記改質された結晶性ゼオライト材料が、前記四配位ルイスアルミニウム単一部位を含むように改質されたZSM-5ゼオライト、前記四配位ルイスアルミニウム単一部位を含むように改質されたH-ZSM-5ゼオライト、または前記四配位ルイスアルミニウム単一部位を含むように改質されたFH-ZSM-5ゼオライトである、実施形態1から5のいずれか1つに記載の改質された結晶性ゼオライト材料。
実施形態7
四配位ルイスアルミニウム単一部位を、ブレンステッドアルミニウム部位を含むゼオライト骨格を有する結晶性ゼオライト材料に組み込む方法において、
前記結晶性ゼオライト材料を、各Rがアルキルである、実験式R AlHのジアルキルアルミニウムヒドリドと接触させて、該ジアルキルアルミニウムヒドリドを前記ゼオライト骨格と反応させ、構造(B-I):
【化11】
による該ゼオライト骨格内の環境を有する四配位アルキルアルミニウム単一部位を形成し、それによって、アルキルアルミニウムゼオライトである改質された結晶性ゼオライト材料を形成する工程であって、各Si は、前記ゼオライト骨格のケイ素原子であり、4つの酸素原子に結合されている工程、
を含む方法。
実施形態8
前記結晶性ゼオライト材料がアルミノケイ酸塩ゼオライトであり、
前記ジアルキルアルミニウムヒドリドは前記アルミノケイ酸塩ゼオライトのシラノール基と選択的に反応し、
前記結晶性ゼオライト材料のブレンステッドアルミニウム部位は、前記ジアルキルアルミニウムヒドリドと反応しない、実施形態7に記載の方法。
実施形態9
前記アルキルアルミニウムゼオライトが、前記四配位アルキルアルミニウム単一部位のアルミニウム-アルキル結合に特徴的である、フーリエ変換赤外分光法で測定して、2850cm -1 から2990cm -1 の範囲のバンドを示す、実施形態7または8に記載の方法。
実施形態10
各Rがイソブチルである、実施形態7から9のいずれか1つに記載の方法。
実施形態11
好ましくは、前記結晶性ゼオライト材料の細孔から残留水を除去し、近接ヒドロキシルを縮合して、水を放出し、それによって、遊離シラノール種を形成するのに十分な脱ヒドロキシル化時間に亘り、少なくとも600℃の温度で該結晶性ゼオライト材料を加熱することによって、該結晶性ゼオライト材料を前記ジアルキルアルミニウムヒドリドと接触させる前に、該結晶性ゼオライト材料を脱ヒドロキシル化する工程をさらに含む、実施形態7から10のいずれか1つに記載の方法。
実施形態12
前記アルキルアルミニウムゼオライトを加熱して、アルキル基Rの少なくとも一部のβ-ヒドリド脱離を誘発し、それによって、構造(B-II):
【化12】
による前記ゼオライト骨格内の環境を有する四配位アルミニウムヒドリド単一部位を形成し、それによって、ヒドリドアルミニウムゼオライトである改質された結晶性ゼオライト材料を形成する工程であって、各Si は、前記ゼオライト骨格のケイ素原子であり、4つの酸素原子に結合されている工程、
をさらに含み、
好ましくは、前記ヒドリドアルミニウムゼオライトは、前記四配位アルミニウムヒドリド単一部位のアルミニウム-ヒドリド結合に特徴的である、フーリエ変換赤外分光法で測定して、1952cm -1 のバンドを示す、実施形態7から11のいずれか1つに記載の方法。
実施形態13
前記ヒドリドアルミニウムゼオライトを酸化して、前記四配位アルミニウムヒドリド単一部位の少なくとも一部を、構造(B-III):
【化13】
による前記ゼオライト骨格内の環境を有する四配位アルミニウムヒドロキシド単一部位に変換し、それによって、ヒドロキシルアルミニウムゼオライトである改質された結晶性ゼオライト材料を形成する工程であって、各Si は、前記ゼオライト骨格のケイ素原子であり、4つの酸素原子に結合されている工程、
をさらに含み、
好ましくは、前記ヒドロキシルアルミニウムゼオライトが、前記四配位アルミニウムヒドロキシド単一部位のアルミニウム-ヒドロキシル結合に特徴的である、フーリエ変換赤外分光法で測定して、3787cm -1 のバンドを示す、実施形態12に記載の方法。
実施形態14
前記ヒドロキシルアルミニウムゼオライト中のアルミニウム原子の少なくとも1%が、前記四配位アルミニウムヒドロキシド単一部位中に存在する、実施形態13に記載の方法。
実施形態15
前記結晶性ゼオライト材料が、MFI骨格ゼオライト、 BEA骨格ゼオライト、MOR骨格ゼオライト、CHA骨格ゼオライト、FAU骨格ゼオライト、ゼオライトY、超安定ゼオライトY(USY)、ZSM-5、H-ZSM-5、FH-ZSM-5、および任意の骨格型の別のアルミノケイ酸塩ゼオライトが連晶した先のアルミノケイ酸塩ゼオライトの少なくとも1つを含む連晶ゼオライトからなる群より選択されるアルミノケイ酸塩ゼオライトである、実施形態7から14のいずれか1つに記載の方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図20C
図20D
図21
図22
図23