(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】バッテリー診断装置、バッテリーパック、電気車両及びバッテリー診断方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20240604BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240604BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20240604BHJP
G01R 31/396 20190101ALI20240604BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
H02J7/10 C
H02J7/10 H
G01R31/396
(21)【出願番号】P 2023511675
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(86)【国際出願番号】 KR2022010158
(87)【国際公開番号】W WO2023287180
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0091231
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、スン-ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョル-テク
(72)【発明者】
【氏名】スン、ヨン-チュル
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-027663(JP,A)
【文献】特開2011-030306(JP,A)
【文献】特開2002-334722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0366852(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H02J 7/00
H02J 7/10
G01R 31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーセルのセル電圧を測定する電圧検出器と、
所定の期間にわたってサンプリング時間毎に測定された前記セル電圧を示す複数の電圧値の時系列である基準電圧カーブに第1時間長さのムービングウィンドウを適用して、複数のサブ電圧カーブを決定する制御回路と、を含み、
前記制御回路は、各サブ電圧カーブに対し、前記第1時間長さの第1平均フィルタを用いて前記サブ電圧カーブの長期平均電圧値を決定し、前記第1時間長さよりも短い第2時間長さの第2平均フィルタを用いて前記サブ電圧カーブの短期平均電圧値を決定し、各サブ電圧カーブの前記長期平均電圧値及び前記短期平均電圧値の一方から他方を引いて、前記サブ電圧カーブに関連した電圧偏差を決定し、
前記制御回路は、前記複数のサブ電圧カーブに対して決定された複数の前記電圧偏差のそれぞれを第1臨界偏差及び第2臨界偏差の少なくとも一つと比較し、前記バッテリーセルの異常を判断する、バッテリー診断装置。
【請求項2】
前記第1臨界偏差は正の数であり、
前記第2臨界偏差は前記第1臨界偏差と絶対値が等しい負の数である、請求項1に記載のバッテリー診断装置。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記複数のサブ電圧カーブのうちの所定個数以上のサブ電圧カーブの前記電圧偏差が、前記第1臨界偏差よりも大きいかまたは前記第2臨界偏差よりも小さい場合、前記バッテリーセルが異常であると判断する、請求項1に記載のバッテリー診断装置。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記複数のサブ電圧カーブに対して決定された前記複数の電圧偏差のうちのいずれか二つの電圧偏差が第1条件、第2条件及び第3条件を満たす場合、前記バッテリーセルが異常であると判断し、
前記第1条件は、前記二つの電圧偏差の一方が前記第1臨界偏差以上である場合に満たされ、
前記第2条件は、前記二つの電圧偏差の他方が前記第2臨界偏差以下である場合に満たされ、
前記第3条件は、前記二つの電圧偏差の間の時間間隔が臨界時間以下である場合に満たされる、請求項1に記載のバッテリー診断装置。
【請求項5】
前記バッテリーセルを通じて流れるバッテリー電流を測定する電流検出器をさらに含む、請求項1に記載のバッテリー診断装置。
【請求項6】
前記制御回路は、
前記所定の期間にわたって前記サンプリング時間毎に測定された前記バッテリー電流を示す複数の電流値の時系列である基準電流カーブに対して前記ムービングウィンドウを適用して複数のサブ電流カーブを決定し、
前記複数のサブ電流カーブは、前記複数のサブ電圧カーブに一対一で対応する、請求項5に記載のバッテリー診断装置。
【請求項7】
前記制御回路は、各サブ電流カーブに対し、
前記サブ電流カーブの最大電流値と最小電流値との差である電流変化量を決定し、
前記電流変化量が臨界変化量未満であることを条件にして、前記サブ電流カーブに関連した前記サブ電圧カーブの前記長期平均電圧値及び前記短期平均電圧値を決定する、請求項6に記載のバッテリー診断装置。
【請求項8】
請求項1から7のうちいずれか一項に記載のバッテリー診断装置を含む、バッテリーパック。
【請求項9】
請求項8に記載のバッテリーパックを含む、電気車両。
【請求項10】
所定の期間にわたってサンプリング時間毎にバッテリーセルのセル電圧を測定し、前記セル電圧を示す複数の電圧値の時系列である基準電圧カーブに第1時間長さのムービングウィンドウを適用して複数のサブ電圧カーブを決定する段階と、
前記複数のサブ電圧カーブの各サブ電圧カーブに対し、前記第1時間長さの第1平均フィルタを用いて前記サブ電圧カーブの長期平均電圧値を決定し、前記第1時間長さよりも短い第2時間長さの第2平均フィルタを用いて前記サブ電圧カーブの短期平均電圧値を決定し、各サブ電圧カーブの前記長期平均電圧値及び前記短期平均電圧値の一方から他方を引いて前記サブ電圧カーブに関連した電圧偏差を決定する段階と、
前記複数のサブ電圧カーブに対して決定された複数の前記電圧偏差のそれぞれを第1臨界偏差及び第2臨界偏差の少なくとも一つと比較して前記バッテリーセルの異常を判断する段階と、を含む、バッテリー診断方法。
【請求項11】
前記バッテリーセルの異常を判断する段階は、
前記複数のサブ電圧カーブのうちの所定個数以上のサブ電圧カーブの前記電圧偏差が、前記第1臨界偏差よりも大きいかまたは前記第2臨界偏差よりも小さい場合、前記バッテリーセルが異常であると判断する段階である、請求項10に記載のバッテリー診断方法。
【請求項12】
前記バッテリーセルの異常を判断する段階は、
前記複数のサブ電圧カーブに対して決定された前記複数の電圧偏差のうちのいずれか二つの電圧偏差が第1条件、第2条件及び第3条件を満たす場合、前記バッテリーセルが異常であると判断する段階であり、
前記第1条件は、前記二つの電圧偏差の一方が前記第1臨界偏差以上である場合に満たされ、
前記第2条件は、前記二つの電圧偏差の他方が前記第2臨界偏差以下である場合に満たされ、
前記第3条件は、前記二つの電圧偏差の間の時間間隔が臨界時間以下である場合に満たされる、請求項10または11に記載のバッテリー診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年7月12日付け出願の韓国特許出願第10-2021-0091231に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、バッテリーセルの異常を診断する技術に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、ノートパソコン、ビデオカメラ、携帯電話などのような携帯用電子製品の需要が急激に伸び、電気車両、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、人工衛星などの開発が本格化するにつれて、繰り返して充放電可能な高性能バッテリーに対する研究が活発に行われている。
【0004】
現在、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウムバッテリーなどのバッテリーが商用化しているが、中でもリチウムバッテリーはニッケル系のバッテリーに比べてメモリ効果が殆ど起きず充放電が自在であって、自己放電率が非常に低くてエネルギー密度が高いという長所から脚光を浴びている。
【0005】
近年、高電圧を必要とするアプリケーション(例えば、電気車両、エネルギー貯蔵システム)が広く普及され、それにつれてバッテリーパック内に直列に接続された複数のバッテリーセルそれぞれの異常を正確に検出する診断技術の必要性が増大している。
【0006】
従来は、主に、各バッテリーセルの状態パラメータ(例えば、セル電圧)を他のバッテリーセルのうちの少なくとも一つのバッテリーセルの状態パラメータと比較することで各バッテリーセルの異常を検出する方式を採用している。しかし、該方式は、(i)複数のバッテリーセルの個数ほどの比較過程を経なければならないため、すべてのバッテリーセルの異常を個別的に診断するのに多くのソフトウェア的な資源(演算負荷)と時間が必要であるという短所、及び(ii)複数のバッテリーセルのうち異常バッテリーセルの個数が増えるほど誤診断が発生する可能性が高くなるという短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、単一のバッテリーセルまたは直列に接続された複数のバッテリーセルそれぞれの異常診断において、各バッテリーセルのセル電圧を他のバッテリーセルのセル電圧と比較する過程なしに、各バッテリーセルのセル電圧の経時的変化を活用して該当バッテリーセルの異常を診断するバッテリー診断装置、バッテリーパック、電気車両及びバッテリー診断方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解でき、本発明の実施形態によってより明らかに分かるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組み合わせによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によるバッテリー診断装置は、バッテリーセルのセル電圧を測定するように構成される電圧検出器と、所定の期間にわたってサンプリング時間毎に測定された前記セル電圧を示す複数の電圧値の時系列である基準電圧カーブに第1時間長さのムービングウィンドウを適用して、複数のサブ電圧カーブを決定するように構成される制御回路と、を含む。前記制御回路は、各サブ電圧カーブに対し、前記第1時間長さの第1平均フィルタを用いて前記サブ電圧カーブの長期平均電圧値を決定し、前記第1時間長さよりも短い第2時間長さの第2平均フィルタを用いて前記サブ電圧カーブの短期平均電圧値を決定し、各サブ電圧カーブの前記長期平均電圧値及び前記短期平均電圧値の一方から他方を引いて、前記サブ電圧カーブに関連した電圧偏差を決定するように構成される。前記制御回路は、前記複数のサブ電圧カーブに対して決定された複数の前記電圧偏差のそれぞれを第1臨界偏差及び第2臨界偏差の少なくとも一つと比較し、前記バッテリーセルの異常を判断するように構成される。
【0010】
前記第1臨界偏差は正の数であり、前記第2臨界偏差は前記第2臨界偏差と絶対値が等しい負の数であり得る。
【0011】
前記制御回路は、前記複数のサブ電圧カーブのうちの所定個数以上のサブ電圧カーブの前記電圧偏差が、前記第1臨界偏差よりも大きいかまたは前記第2臨界偏差よりも小さい場合、前記バッテリーセルが異常であると判断するように構成され得る。
【0012】
前記制御回路は、前記複数のサブ電圧カーブに対して決定された前記複数の電圧偏差のうちのいずれか二つの電圧偏差が第1条件、第2条件及び第3条件を満たす場合、前記バッテリーセルが異常であると判断するように構成され得る。前記第1条件は、前記二つの電圧偏差の一方が前記第1臨界偏差以上である場合に満たされる。前記第2条件は、前記二つの電圧偏差の他方が前記第2臨界偏差以下である場合に満たされる。前記第3条件は、前記二つの電圧偏差の間の時間間隔が臨界時間以下である場合に満たされる。
【0013】
前記バッテリー診断装置は、前記バッテリーセルを通じて流れるバッテリー電流を測定するように構成される電流検出器をさらに含み得る。
【0014】
前記制御回路は、前記所定の期間にわたって前記サンプリング時間毎に測定された前記バッテリー電流を示す複数の電流値の時系列である基準電流カーブに対して前記ムービングウィンドウを適用して、複数のサブ電流カーブを決定するように構成され得る。前記複数のサブ電流カーブは、前記複数のサブ電圧カーブに一対一で対応する。
【0015】
前記制御回路は、各サブ電流カーブに対し、前記サブ電流カーブの最大電流値と最小電流値との差である電流変化量を決定し、前記電流変化量が臨界変化量未満であることを条件にして、前記サブ電流カーブに関連した前記サブ電圧カーブの前記長期平均電圧値及び前記短期平均電圧値を決定するように構成され得る。
【0016】
本発明の他の一態様によるバッテリーパックは、上述したバッテリー診断装置を含む。
【0017】
本発明のさらに他の一態様による電気車両は、上述したバッテリーパックを含む。
【0018】
本発明のさらに他の一態様によるバッテリー診断方法は、所定の期間にわたってサンプリング時間毎に測定されたバッテリーセルのセル電圧を示す複数の電圧値の時系列である基準電圧カーブに第1時間長さのムービングウィンドウを適用して複数のサブ電圧カーブを決定する段階と、前記複数のサブ電圧カーブの各サブ電圧カーブに対し、前記第1時間長さの第1平均フィルタを用いて前記サブ電圧カーブの長期平均電圧値を決定し、前記第1時間長さよりも短い第2時間長さの第2平均フィルタを用いて前記サブ電圧カーブの短期平均電圧値を決定し、各サブ電圧カーブの前記長期平均電圧値及び前記短期平均電圧値の一方から他方を引いて、前記サブ電圧カーブに関連した電圧偏差を決定する段階と、前記複数のサブ電圧カーブに対して決定された複数の前記電圧偏差のそれぞれを第1臨界偏差及び第2臨界偏差の少なくとも一つと比較して前記バッテリーセルの異常を判断する段階と、を含む。
【0019】
前記バッテリーセルの異常を判断する段階は、前記複数のサブ電圧カーブのうちの所定個数以上のサブ電圧カーブの前記電圧偏差が、前記第1臨界偏差よりも大きいかまたは前記第2臨界偏差よりも小さい場合、前記バッテリーセルが異常であると判断する段階であり得る。
【0020】
前記バッテリーセルの異常を判断する段階は、前記複数のサブ電圧カーブに対して決定された前記複数の電圧偏差のうちのいずれか二つの電圧偏差が第1条件、第2条件及び第3条件を満たす場合、前記バッテリーセルが異常であると判断する段階であり得る。前記第1条件は、前記二つの電圧偏差の一方が前記第1臨界偏差以上である場合に満たされ得る。前記第2条件は、前記二つの電圧偏差の他方が前記第2臨界偏差以下である場合に満たされ得る。前記第3条件は、前記二つの電圧偏差の間の時間間隔が臨界時間以下である場合に満たされ得る。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様のうち少なくとも一つによれば、単一のバッテリーセルまたは直列に接続された複数のバッテリーセルそれぞれの異常診断において、各バッテリーセルのセル電圧を他のバッテリーセルのセル電圧と比較する過程なしに、各バッテリーセルのセル電圧の経時的変化を活用して該当バッテリーセルの異常を診断することができる。したがって、各バッテリーセルの異常を診断するのに必要なソフトウェア的な資源と時間を節約可能であると同時に、複数のバッテリーセルのうちの異常バッテリーセルの増加による誤診断の可能性が低下する。
【0022】
本発明の一態様のうち少なくとも一つによれば、各バッテリーセルのセル電圧の長期的趨勢と短期的趨勢との差を求めることで、該当バッテリーセルのセル電圧の測定値に含まれた測定ノイズが効果的に除去され、該当バッテリーセルのセル電圧の異常な変化を精密に検出することができる。
【0023】
本発明の効果は上記の効果に制限されず、他の効果は特許請求の範囲の記載から当業者に明確に理解できるであろう。
【0024】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の詳細な説明ともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明による電気車両の構成を例示的に示した図である。
【
図2】バッテリーセルのセル電圧の実際電圧値の原始時系列(raw time series)に対応する電圧カーブを例示的に示したグラフである。
【
図3】
図2の電圧カーブに対応する原始時系列に測定ノイズを合成して取得された測定電圧カーブを例示的に示したグラフである。
【
図4】
図3の電圧カーブに第1平均フィルタを適用して取得される第1移動平均カーブを例示的に示したグラフである。
【
図5】
図3の電圧カーブに第2平均フィルタを適用して取得される第2移動平均カーブを例示的に示したグラフである。
【
図6】
図4の第1移動平均カーブと
図5の第2移動平均カーブとの差である電圧偏差カーブを例示的に示したグラフである。
【
図7】本発明の第1実施例によるバッテリー診断方法を例示的に示したフロー図である。
【
図8】本発明の第2実施例によるバッテリー診断方法を例示的に示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0027】
したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0028】
第1、第2などのように序数を含む用語は、多様な構成要素のうちある一つをその他の要素と区別するために使われたものであり、これら用語によって構成要素が限定されることはない。
【0029】
明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に言及されない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。また、明細書に記載された「制御回路」のような用語は少なくとも一つの機能や動作を処理する単位を意味し、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで具現され得る。
【0030】
さらに、明細書の全体において、ある部分が他の部分と「連結(接続)」されるとするとき、これは「直接的な連結(接続)」だけではなく、他の素子を介在した「間接的な連結(接続)」も含む。
【0031】
図1は、本発明による電気車両の構成を例示的に示した図である。
【0032】
図1を参照すると、電気車両1は、車両コントローラ2、バッテリーパック10、インバータ30、及び電気モータ40を含む。バッテリーパック10の充放電端子P+、P-は、充電ケーブルなどを通じて充電器3に電気的に結合され得る。充電器3は、電気車両1に含まれたものであるか、または、充電ステーションに設けられたものであり得る。
【0033】
車両コントローラ2(例えば、ECU:Electronic Control Unit)は、電気車両1に備えられた始動ボタン(図示せず)がユーザによってオン(ON)位置に変えられたことに応えて、キーオン信号をバッテリー診断装置100に伝送するように構成される。車両コントローラ2は、始動ボタンがユーザによってオフ(OFF)位置に変えられたことに応えて、キーオフ信号をバッテリー診断装置100に伝送するように構成される。充電器3は、車両コントローラ2と通信して、バッテリーパック10の充放電端子P+、P-を通じて定電流または定電圧の充電電力を供給し得る。充電器3は、放電機能を有し得、後述する第1充電ステージS1の開始に先立って、車両コントローラ2の要請に応じてバッテリー11のバッテリー電圧(例えば、OCV:Open Circuit Voltage)が所定の基準電圧以下になるようにバッテリー11を放電させ得る。
【0034】
バッテリーパック10は、バッテリー11、リレー20及びバッテリー診断装置100を含む。
【0035】
バッテリー11は、少なくとも一つのバッテリーセルBCを含む。
図1には、バッテリー11が直列に接続された複数のバッテリーセルBC
1~BC
N(Nは2以上の自然数)を含むものとして例示されている。複数のバッテリーセルBC
1~BC
Nは、互いに同じ電気化学的仕様を有するように提供されたものであり得る。以下、複数のバッテリーセルBC
1~BC
Nに共通の内容を説明する際、バッテリーセルには参照符号「BC」を付することにする。
【0036】
バッテリーセルBCは、例えばリチウムイオンセルのように繰り返して充放電可能なものであれば、その種類は特に限定されない。
【0037】
リレー20は、バッテリー11とインバータ30とを連結する電力経路を通じてバッテリー11に電気的に直列に接続される。
図1には、バッテリー11の正極端子と充放電端子P+との間に連結されているリレー20が示されている。リレー20は、バッテリー診断装置100からのスイッチング信号に応答してオンオフ制御される。リレー20は、コイルの磁気力によってオンオフされる機械式コンタクタであるか、または、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)のような半導体スイッチであり得る。
【0038】
インバータ30は、バッテリー診断装置100または車両コントローラ2からの命令に応答して、バッテリーパック10に含まれたバッテリー11からの直流電流を交流電流に変換するように提供される。電気モータ40は、インバータ30からの交流電力を用いて駆動する。電気モータ40としては、例えば三相交流モータを用い得る。インバータ30及び電気モータ40を含めて、バッテリー11の放電電力の供給を受ける電気車両1内の構成を電気負荷と総称し得る。
【0039】
バッテリー診断装置100は、電圧検出器110及び制御回路140を含む。バッテリー診断装置100は、電流検出器120、温度検出器130及び通信回路150のうちの少なくとも一つをさらに含み得る。
【0040】
電圧検出器110は、バッテリーセルBCの正極端子及び負極端子に接続されてバッテリーセルBCの両端にかかった電圧であるセル電圧を測定し、測定されたセル電圧を示す電圧信号を生成するように構成される。電圧検出器110は、電圧測定IC(Integrated Circuit、集積回路)などのような公知の電圧検出素子のうちの一つまたは二つ以上の組み合わせで具現され得る。
【0041】
電流検出器120は、バッテリー11とインバータ30との間の電流経路を通じてバッテリー11に直列に接続される。電流検出器120は、バッテリー11を通じて流れるバッテリー電流(「充放電電流」とも称する)を測定し、測定されたバッテリー電流を示す電流信号を生成するように構成される。複数のバッテリーセルBC1~BCNが直列に接続されているため、複数のバッテリーセルBC1~BCNのうちのいずれかに流れるバッテリー電流は他のバッテリーセルに流れるバッテリー電流と同一である。電流検出器120は、シャント抵抗、ホール効果素子などのような公知の電流検出素子のうちの一つまたは二つ以上の組み合わせで具現され得る。
【0042】
温度検出器130は、バッテリー11の温度であるバッテリー温度を測定し、測定されたバッテリー温度を示す温度信号を生成するように構成される。温度検出器130は、熱電対、サーミスタ、バイメタルなどのような公知の温度検出素子のうちの一つまたは二つ以上の組み合わせで具現され得る。
【0043】
通信回路150は、制御回路140と車両コントローラ2との間の有線通信または無線通信を支援するように構成される。有線通信は、例えばCAN(controller area network)通信であり得、無線通信は、例えばジグビー(登録商標)(ZigBee(登録商標))やブルートゥース(登録商標)(Bluetooth(登録商標))通信であり得る。勿論、制御回路140と車両コントローラ2との間の有無線通信を支援するものであれば、通信プトトコルの種類は特に限定されない。通信回路150は、制御回路140及び/または車両コントローラ2から受信された情報をユーザ(運転者)が認識可能な形態で提供する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカ)を含み得る。
【0044】
制御回路140は、リレー20、電圧検出器110及び通信回路150に動作可能に結合される。二つの構成が動作可能に結合されるとは、片方向または両方向に信号を送受信可能に、二つの構成が直間接的に接続されていることを意味する。
【0045】
制御回路140は、電圧検出器110からの電圧信号、電流検出器120からの電流信号、及び/または温度検出器130からの温度信号を収集し得る。すなわち、制御回路140は、内部に設けられたアナログ-デジタル変換回路(ADC:Analog to Digital Converter)を用いて、センサ(110、120、130)から収集されたそれぞれのアナログ信号をデジタル値に変換及び記録し得る。代案的には、電圧検出器110、電流検出器120及び温度検出器130はそれぞれ、その内部にADCを含み、デジタル値を制御回路140に伝送し得る。
【0046】
制御回路140は、「バッテリーコントローラ」とも称され、ハードウェア的に、ASICs(application specific integrated circuits)、DSPs(digital signal processors)、DSPDs(digital signal processing devices)、PLDs(programmable logic devices)、FPGAs(field programmable gate arrays)、マイクロプロセッサ、その他の機能を実行するための電気的ユニットのうちの少なくとも一つを用いて具現され得る。
【0047】
メモリ141は、例えばフラッシュメモリ、ハードディスク、SSD(solid state disk)、SDD(silicon disk drive)、マルチメディアマイクロカード、RAM(random access memory)、SRAM(static RAM)、ROM(read only memory)、EEPROM(electrically erasable programmable ROM)、PROM(programmable ROM)のうち少なくとも一つの形態の記録媒体を含み得る。メモリ141には、制御回路140による演算動作に必要なデータ及びプログラムが記録され得る。メモリ141には、制御回路140による演算動作の結果を示すデータが記録され得る。メモリ141には、バッテリーセルBCの異常を判断するのに用いられる、データセット及びソフトウェアが記録され得る。メモリ141は、制御回路140内に集積化され得る。
【0048】
電気負荷(30、40)及び/または充電器3の動作中にリレー20がターンオンされる場合、バッテリー11は充電モードまたは放電モードになる。バッテリー11が充電モードまたは放電モードで使用されている途中にリレー20がターンオフされると、バッテリー11は休止モードに切り換えられる。
【0049】
制御回路140は、キーオン信号に応答してリレー20をターンオンさせ得る。制御回路140は、キーオフ信号に応答してリレー20をターンオフさせ得る。キーオン信号は、休止から充電または放電への切換を要請する信号である。キーオフ信号は、充電または放電から休止への切換を要請する信号である。代案的にリレー20のオンオフ制御は、制御回路140の代わりに車両コントローラ2が担当してもよい。
【0050】
図1の図示ではバッテリー診断装置100が電気車両1のためのバッテリーパック10に含まれているが、これは一例として理解されねばならない。すなわち、バッテリー診断装置100は、バッテリーセルBCの製造工程で異常バッテリーセルの選別に用いられるテストシステムに含まれてもよい。
【0051】
図2はバッテリーセルのセル電圧の実際電圧値の原始時系列に対応する電圧カーブを例示的に示したグラフであり、
図3は
図2の電圧カーブに対応する原始時系列に測定ノイズを合成して取得された測定電圧カーブを例示的に示したグラフであり、
図4は
図3の電圧カーブに第1平均フィルタを適用して取得される第1移動平均カーブを例示的に示したグラフであり、
図5は
図3の電圧カーブに第2平均フィルタを適用して取得される第2移動平均カーブを例示的に示したグラフであり、
図6は
図4の第1移動平均カーブと
図5の第2移動平均カーブとの差である電圧偏差カーブを例示的に示したグラフである。
【0052】
まず、
図2を参照すると、電圧カーブ200は、所定の期間t
1~t
Mにわたって充電するとき、バッテリーセルBCのセル電圧の実際電圧値を含む原始時系列の一例である。理解を助けるため、セル電圧は線形的に増加し、t
1以前の期間とt
M以後の期間に対する実際電圧値の図示は省略した。
【0053】
バッテリーセルBCが正常である場合、充電中にはセル電圧が持続的に緩やかに上昇する。一方、バッテリーセルBCがその内部に如何なる故障(例えば、微細な短絡、電極タブの一部分が破れる)が生じた異常状態である場合、充電中であるにもセル電圧が一時的に急低下または急上昇する異常挙動が不規則に観測され得る。
図2の電圧カーブ200は、バッテリーセルBCの異常に関連するものであり、領域Xはセル電圧が異常に急低下する時間範囲を、領域Yはセル電圧が異常に急上昇する時間範囲を示している。
図2は充電中のセル電圧を例示しているが、異常バッテリーセルは放電中または休止中にもセル電圧が異常に変化し得る。例えば、放電中において、正常バッテリーセルのセル電圧は持続的に緩やかに低下する一方、異常バッテリーセルのセル電圧は一時的に急上昇または急低下し得る。
【0054】
次いで、
図3を参照すると、電圧カーブ300は、
図2の電圧カーブ200の実際セル電圧に測定ノイズが合成された結果、すなわち、測定されたセル電圧を示す電圧値を時間順に整列した時系列を示す。Mが所定の総サンプリング回数(例えば、300)を示す自然数であり、KがM以下の自然数であるとすると、t
Kは電圧カーブ300に含まれた総M個の電圧値のうち時間順にK番目の電圧値(V
m[K])の測定タイミング(第K測定タイミングt
K)であり、隣接した二つの測定タイミングの間の時間間隔は所定のサンプリング時間(例えば、0.1秒)だけ離隔している。電圧値(V
m[K])は、電圧カーブ300に含まれた総M個の電圧値のうち、測定タイミングt
Kにインデックスされたデータポイントである。
【0055】
測定ノイズは、電圧検出器110の内外部的な要因(例えば、電圧測定器の温度、サンプリングレート、電磁気波など)によって時間に応じて不規則に発生し得る。電流カーブ310は、所定の期間t1~tMにわたって測定されたバッテリー電流の電流値を含む時系列である。説明の便宜上、バッテリー電流は所定の期間t1~tM中に一定しているものとして例示した。
【0056】
図3の電圧カーブ300を
図2の電圧カーブ200と比較すると、
図2の測定ノイズのない電圧カーブ200からは異常挙動(X、Y)を容易に識別できる一方、
図3の所定の期間t
1~t
Mの全体にわたって測定ノイズが混在された電圧カーブ300からは異常挙動(X、Y)を識別し難いという課題がある。
【0057】
本発明者らは、セル電圧の測定タイミングで発生した測定ノイズが含まれた電圧値(測定値)の時系列(300)に第1平均フィルタ及び第2平均フィルタを適用することで、上述した課題が解決されることを確認した。診断対象であるバッテリーセルBCに対し、過去の所定期間にわたって取得された電圧値の時系列を「基準電圧カーブ」と称し、電流値の時系列を「基準電流カーブ」と称し得る。以下では、電圧カーブ300及び電流カーブ310をそれぞれ基準電圧カーブ及び基準電流カーブと仮定して説明する。
【0058】
まず、制御回路140は、基準電圧カーブ300に対し、第1時間長さのムービングウィンドウを適用して複数のサブ電圧カーブを決定し得る。さらに、制御回路140は、基準電流カーブ310に対し、第1時間長さのムービングウィンドウを適用して、複数のサブ電圧カーブに一対一で対応する複数のサブ電流カーブを決定し得る。
【0059】
KがM以下の自然数であるとすると、基準電圧カーブ300から総M個のサブ電圧カーブ(すなわち、第1~第Mサブ電圧カーブ)が決定され得る。基準電圧カーブ300は、サンプリング時間W毎に順次に測定された総M個の電圧値(すなわち、第1~第M電圧値)を含む。サブ電圧カーブSKは、基準電圧カーブ300の部分集合として時間順に連続した(A/W+1)個の電圧値を含む。一例として、サンプリング時間Wが0.1秒、第1時間長さAが10秒である場合、サブ電圧カーブSKは総101個の電圧値、すなわち第(K-P)電圧値から第(K+P)電圧値までの時系列である。P=A/2W=50。
【0060】
図3において、R
Kはサブ電圧カーブS
Kに関連したサブ電流カーブである。したがって、サブ電流カーブR
Kも時間順に連続した(A/W+1)個のデータポイント(電流値)を含み得る。
【0061】
バッテリー電流が大きく変動するほど、セル電圧も大きく変動する。バッテリー電流によるセル電圧の急激な変動は、基準電圧カーブ300からセル電圧の異常な挙動を識別するのに妨害要素になる。したがって、制御回路140は、サブ電流カーブRKの電流変化量が臨界変化量以下であることを条件にして、サブ電圧カーブSKに対する後述する演算過程を行い得る。サブ電流カーブRKの電流変化量は、サブ電流カーブRKの最大電流値と最小電流値との差であり得る。本発明は、定電流充電または休止のようにバッテリー電流の変動が小さい期間中に測定されたセル電圧の時系列からバッテリーセルの異常を診断するのに適している。
【0062】
図4を参照すると、第1平均電圧カーブ400は、基準電圧カーブ300に第1時間長さAの第1平均フィルタを適用して取得される。第1平均フィルタは、ローパスフィルタ(low-pass filter)の一種であって、第1時間長さAに対応する部分集合サイズ(subset size、A/W+1)を有する中心化移動平均(centered moving average)であり得る。一例として、制御回路140は、サブ電圧カーブS
Kに含まれた(A/W+1)個の電圧値、すなわち、第(K-P)電圧値~第(K-1)電圧値、第K電圧値、及び第(K+1)電圧値~第(K+P)電圧値を平均して、測定タイミングt
Kにインデックスされる長期平均電圧値V
av1[K]を決定する。下記の数式1は、第1平均フィルタを示す。
【0063】
【0064】
数式1において、V
m[i]は基準電圧カーブ300に含まれた第i電圧値、Aは第1時間長さ、Wはサンプリング時間、PはA/2W、V
av1[K]は測定タイミングt
Kにおける長期平均電圧値である。制御回路140は、数式1のKに1からMを代入することで、
図4の第1平均電圧カーブ400を決定し得る。第1時間長さAはサンプリング時間Wの整数倍として予め決められている。したがって、第1時間長さAは、長期平均電圧値V
av1[K]を求めるのに用いられる部分集合の大きさ(A/W+1)を示す。
【0065】
図5を参照すると、第2平均電圧カーブ500は、基準電圧カーブ300に第1時間長さAよりも短い第2時間長さBの第2平均フィルタを適用して取得される。第2平均フィルタは、ローパスフィルタの一種であって、第2時間長さBに対応する部分集合サイズ(B/W+1)を有する中心化移動平均であり得る。一例として、制御回路140は、サブ電圧カーブS
Kに含まれた(B/W+1)個の電圧値、すなわち、第(K-Q)電圧値~第(K-1)電圧値、第K電圧値、及び第(K+1)電圧値~第(K+Q)電圧値を平均して、測定タイミングt
Kにインデックスされる短期平均電圧値V
av2[K]を決定する。Q=B/2W。短期平均電圧値V
av2[K]は、サブ電圧カーブS
Kの部分集合U
Kの平均である。部分集合U
Kは、サブ電圧カーブS
Kの時間範囲t
K-P~t
K+P内に位置しながら、時間範囲t
K-P~t
K+Pと中心t
Kが同一である時間範囲t
K-Q~t
K+Qの電圧カーブである。下記の数式2は、第2平均フィルタを示す。
【0066】
【0067】
数式2において、V
m[i]は基準電圧カーブ300に含まれた第i電圧値、Bは第2時間長さ、Wはサンプリング時間、QはB/2W、V
av2[K]は測定タイミングt
Kにおける短期平均電圧値である。制御回路140は、数式2のKに1からMを一度ずつ代入することで、
図5の第2平均電圧カーブ500を決定し得る。第2時間長さBはサンプリング時間Wの整数倍として予め決められている。したがって、第2時間長さBは、短期平均電圧値V
av2[K]を求めるのに用いられる部分集合の大きさ(B/W+1)を示す。
【0068】
第1時間長さA>第2時間長さB、第1平均電圧カーブ400の各データポイント(すなわち、長期平均電圧値)を「長期平均値」と称し、第2平均電圧カーブ500の各データポイント(すなわち、短期平均電圧値)を「短期平均値」と称し得る。一例として、AはBの10倍であり得る。
【0069】
図6を参照すると、電圧偏差カーブ600は、第1平均電圧カーブ400及び第2平均電圧カーブ500の一方から他方を引いた結果である。すなわち、電圧偏差カーブ600は、所定の期間t
1~t
Mに対する総M個の電圧偏差の時系列である。サブ電圧カーブS
Kに関連した電圧偏差ΔV[K]は、長期平均電圧値V
av1[K]及び短期平均電圧値V
av2[K]の一方から他方を引いた値である。一例として、ΔV[K]=V
av2[K]-V
av1[K]である。
【0070】
上述したように、長期平均電圧値Vav1[K]は測定タイミングtKを中心にする第1時間長さAの長期間に対する平均セル電圧であり、短期平均電圧値Vav2[K]は測定タイミングtKを中心にする第2時間長さBの短期間に対する平均セル電圧である。したがって、長期平均電圧値Vav1[K]及び短期平均電圧値Vav2[K]の一方から他方を引いて電圧偏差ΔV[K]を求めることで、測定タイミングtK前後の一定期間にわたって発生した測定ノイズが効果的に除去される効果がある。
【0071】
長期平均電圧値Vav1[K]及び短期平均電圧値Vav2[K]の一方から他方を引く過程を通じて、測定タイミングtK前後の一定期間にわたって発生した測定ノイズが相当水準で相殺される長所がある。
【0072】
制御回路140は、電圧偏差ΔV[K]を第1臨界偏差TH1及び第2臨界偏差TH2と比較し得る。第1臨界偏差TH1は所定の正の数(例えば、+0.001V)であり、第2臨界偏差TH2は第1臨界偏差TH1と絶対値が等しい所定の負の数(例えば、-0.001V)であり得る。
【0073】
制御回路140は、電圧偏差カーブ600に含まれたすべての電圧偏差のうち所定個数(例えば、10)以上の電圧偏差が、第1臨界偏差TH1以上であるかまたは第2臨界偏差TH2以下である場合、バッテリーセルBCが異常であると判断し得る。
【0074】
制御回路140は、電圧偏差カーブ600に含まれた総M個の電圧偏差のうち、ある二つの電圧偏差が第1条件、第2条件及び第3条件を満たす場合、バッテリーセルBCが異常であると判断し得る。第1条件は、二つの電圧偏差の一方が第1臨界偏差TH
1以上である場合に満たされる。第2条件は、二つの電圧偏差の他方が第2臨界偏差TH
2以下である場合に満たされる。第3条件は、二つの電圧偏差の間の時間間隔が臨界時間以下である場合に満たされる。臨界時間は、第1時間長さA未満に予め決められ得る。
図6を参照すると、電圧偏差ΔV[a]は第2臨界偏差TH
2以下であり(第2条件を満たす)、電圧偏差ΔV[b]は第1臨界偏差TH
1以上である(第1条件を満たす)。したがって、二つの電圧偏差(ΔV[a]、ΔV[b])の間の時間間隔(Δt=tb-ta)が臨界時間以下である場合、バッテリーセルBCは異常であると判断される。
【0075】
図7は、本発明の第1実施例によるバッテリー診断方法を例示的に示したフロー図である。
【0076】
図1~
図7を参照すると、段階S710において、制御回路140は、基準電圧カーブ300に第1時間長さAのムービングウィンドウを適用して複数のサブ電圧カーブを決定する。基準電圧カーブ300は、所定の期間t
1~t
Mにわたってサンプリング時間毎に測定されたバッテリーセルBCのセル電圧を示す複数の電圧値の時系列である。
【0077】
段階S720において、制御回路140は、複数のサブ電圧カーブの各サブ電圧カーブSKに関連した電圧偏差ΔV[K]を決定する。段階S720は、下位段階として段階S722、S724及びS726を含み得る。
【0078】
段階S722において、制御回路140は、第1時間長さAの第1平均フィルタを用いてサブ電圧カーブSKの長期平均電圧値Vav1[K]を決定する(数式1を参照)。
【0079】
段階S724において、制御回路140は、第2時間長さBの第2平均フィルタを用いてサブ電圧カーブSKの短期平均電圧値Vav2[K]を決定する(数式2を参照)。
【0080】
段階S726において、制御回路140は、長期平均電圧値Vav1[K]及び短期平均電圧値Vav2[K]の一方から他方を引いて電圧偏差ΔV[K]を決定する。
【0081】
段階S730において、制御回路140は、複数のサブ電圧カーブに対して決定された複数の電圧偏差のそれぞれを第1臨界偏差及び第2臨界偏差の少なくとも一つと比較してバッテリーセルBCの異常を判断する。段階S730の値が「はい」である場合、段階S740に進む。
【0082】
段階S740において、制御回路140は、バッテリーセルBCが異常であることを通知する診断メッセージを生成する。診断メッセージは、車両コントローラ2及び/またはユーザデバイスに有無線を通じて伝送され得る。
【0083】
図8は、本発明の第2実施例によるバッテリー診断方法を例示的に示したフロー図である。
【0084】
図1~
図6及び
図8を参照すると、段階S800において、制御回路140は、基準電流カーブ310に第1時間長さAのムービングウィンドウを適用して複数のサブ電流カーブを決定する。基準電流カーブ310は、所定の期間t
1~t
Mにわたってサンプリング時間毎に測定されたバッテリーセルBCのバッテリー電流を示す複数の電流値の時系列である。
【0085】
段階S810において、制御回路140は、基準電圧カーブ300に第1時間長さAのムービングウィンドウを適用して複数のサブ電圧カーブを決定する。段階S810は、段階S710と同じである。
【0086】
段階S812において、制御回路140は、各サブ電流カーブRKの電流変化量を決定する。
【0087】
段階S820において、制御回路140は、複数のサブ電圧カーブのうち、電流変化量が臨界変化量以下である各サブ電流カーブR
Kに関連した各サブ電圧カーブS
Kの電圧偏差ΔV[K]を決定する。段階S820は、
図7の段階S722、S724、S726を含み得る。
【0088】
段階S830において、制御回路140は、段階S820で決定された各電圧偏差を第1臨界偏差及び第2臨界偏差の少なくとも一つと比較してバッテリーセルBCの異常を判断する。段階S830の値が「はい」である場合、段階S840に進む。
【0089】
段階S840において、制御回路140は、バッテリーセルBCが異常であることを通知する診断メッセージを生成する。
【0090】
上述した本発明の実施形態は、装置及び方法のみによって具現されるものではなく、本発明の実施形態の構成に対応する機能を実現するプログラムまたはそのプログラムが記録された記録媒体を通じても具現され得、このような具現は上述した実施形態の記載から当業者であれば容易に具現できるであろう。
【0091】
以上のように、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【0092】
また、上述した本発明は、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者により、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で様々な置換、変形及び変更が可能であって、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、多様な変形のため各実施形態の全部または一部が選択的に組み合わせられて構成され得る。
【符号の説明】
【0093】
1:電気車両
2:車両コントローラ
10:バッテリーパック
11:バッテリー
BC:バッテリーセル
100:バッテリー診断装置
110:電圧検出器
120:電流検出器
140:制御回路