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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】極板及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/44 20060101AFI20240604BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240604BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240604BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20240604BHJP
   H01M 50/528 20210101ALI20240604BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20240604BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01M10/44 A
H01M4/13
H01M10/052
H01M10/058
H01M50/528
H01M50/531
H01M10/42 P
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023513572
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 CN2021114867
(87)【国際公開番号】W WO2022042665
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】202010879566.1
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】梅日国
(72)【発明者】
【氏名】常▲曉▼雅
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼正皎
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼子文
(72)【発明者】
【氏名】潘▲儀▼
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-033476(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090410(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111525095(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111560595(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108539124(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/44
H01M 4/13
H01M 10/052
H01M 10/058
H01M 50/528
H01M 50/531
H01M 10/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体層(101)と、
前記集電体層(101)の少なくとも1つの表面上に配置された半導体層(102)と、
リチウム補充剤層又はナトリウム補充剤層であり、前記半導体層(102)上の前記集電体層(101)から離れた側に配置されたアルカリ金属補充層(103)と、を含む極板(1)。
【請求項2】
前記アルカリ金属補充層(103)の厚さ範囲が50μm~300μmである、請求項1に記載の極板(1)。
【請求項3】
前記アルカリ金属補充層(103)はリチウム補充剤層であり、リチウム補充剤層は負極リチウム補充剤層である、請求項1に記載の極板(1)。
【請求項4】
前記負極リチウム補充剤層は、金属リチウム、リチウムケイ素合金、リチウムアルミニウム合金、リチウムホウ素合金及びリチウムマグネシウム合金のうちの少なくとも1種を含む、請求項3に記載の極板(1)。
【請求項5】
前記アルカリ金属補充層(103)はリチウム補充剤層であり、リチウム補充剤層は正極リチウム補充剤層である、請求項1に記載の極板(1)。
【請求項6】
前記正極リチウム補充剤層は、酸化リチウム、鉄酸リチウム、コバルト酸リチウム及びニッケル酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む、請求項5に記載の極板(1)。
【請求項7】
前記半導体層(102)のシート抵抗範囲が10-3mΩ・m~10mΩ・mである、請求項1に記載の極板(1)。
【請求項8】
前記半導体層(102)の厚さ範囲が100nm~500nmである、請求項7に記載の極板(1)。
【請求項9】
正極板(2)、負極板(3)及び請求項1~8のいずれか一項に記載の極板(1)を含み、前記アルカリ金属補充層(103)がリチウム補充剤層であり、
前記正極板(2)と負極板(3)は、セパレータ(4)により互いに隔てられ、少なくとも1つの前記極板(1)は、前記セパレータ(4)により前記正極板(2)及び/又は前記負極板(3)から隔てられる、リチウムイオン電池。
【請求項10】
前記極板(1)は、負極リチウム補充極板であり、前記集電体層(101)から延出したリチウム補充タブを含み、前記負極板(3)は、負極タブを含み、前記リチウム補充タブは、前記負極タブに接続される、請求項9に記載のリチウムイオン電池。
【請求項11】
前記極板(1)は、正極リチウム補充極板であり、前記集電体層(101)から延出したリチウム補充タブを含み、前記正極板(2)は、正極タブを含み、前記リチウム補充タブは、前記正極タブに接続される、請求項9に記載のリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2020年8月27日に中国国家知識産権局に提出された、出願名称が「極板及びリチウムイオン電池」である中国特許出願第202010879566.1号の優先権を主張するものであり、その全ての内容は参照により本開示に組み込まれるものとする。
【0002】
本願は、電池装置の技術分野に関し、具体的には、極板及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、人々の環境保護意識が高くなっているにつれて、電気自動車が燃料車の代わりにユーザに大いに注目されている。電気自動車が絶え間なく更新される過程において、リチウムイオン電池が電気自動車の主な動力アセンブリであるため、リチウムイオン電池のエネルギー密度、サイクル寿命などの特性に対する要求がますます高まっている。
【0004】
リチウムイオン電池の初回充放電過程において、負極における固体電解質界面膜(SEI)の形成が活性リチウムイオンを消費するため、リチウムイオン電池の容量が顕著に低下し、黒鉛を負極とするリチウムイオン電池の初回充放電のクーロン効率が約92~94%であり、シリコンカーボンを負極とするリチウムイオン電池の初回クーロン効率が75~85%のみである。
【0005】
現在、主にプレリチウム化の技術によりリチウムイオン電池の容量を向上させ、具体的には、リチウム補充剤を極板に分散するか又は添加して電池を製造し、電池のサイクル充放電を活性化すると、極板に添加されたリチウム補充剤に付した活性リチウムイオンを放出することができるため、リチウムイオン電池の膜形成により消費された活性リチウムを補充し、リチウムイオン電池の容量の向上を実現する。しかしながら、このようなリチウム補充方法は、一般的に、リチウム一括補充であるため、リチウム補充過程を効果的に制御することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の実施例は、従来のリチウムイオン電池のリチウム補充過程を効果的に制御しにくいという問題を解決する極板及びリチウムイオン電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、本願の実施例は、下記技術手段を用いる。
【0008】
第1態様では、本願の実施例に係る極板は、
集電体層と、
前記集電体層の少なくとも1つの表面に設置された半導体層と、
リチウム補充剤層又はナトリウム補充剤層であり、前記半導体層の前記集電体層から離れた側に設置されたアルカリ金属補充層と、を含む。
【0009】
本開示のいくつかの実施例において、前記アルカリ金属補充層の厚さ範囲は、50μm~300μmである。
【0010】
本開示のいくつかの実施例において、前記アルカリ金属補充層は、負極リチウム補充剤層であるリチウム補充剤層である。
【0011】
本開示のいくつかの実施例において、前記負極リチウム補充剤層は、金属リチウム、リチウムケイ素合金、リチウムアルミニウム合金、リチウムホウ素合金及びリチウムマグネシウム合金のうちの少なくとも1種を含む。
【0012】
本開示のいくつかの実施例において、前記アルカリ金属補充層は、正極リチウム補充剤層であるリチウム補充剤層である。
【0013】
本開示のいくつかの実施例において、前記正極リチウム補充剤層は、酸化リチウム、鉄酸リチウム、コバルト酸リチウム及びニッケル酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む。
【0014】
本開示のいくつかの実施例において、前記半導体層のシート抵抗範囲は、10-3mΩ・m~10mΩ・mである。
【0015】
本開示のいくつかの実施例において、前記半導体層の厚さ範囲は、100nm~500nmである。
【0016】
第2態様では、本願の実施例に係るリチウムイオン電池は、正極板、負極板及び第1態様に記載の極板を含み、前記アルカリ金属補充層がリチウム補充剤層であり、
前記正極板と負極板は、セパレータにより互いに隔てられ、少なくとも1つの前記極板は、前記セパレータにより前記正極板及び/又は前記負極板から隔てられる。
【0017】
本開示のいくつかの実施例において、前記極板は、負極リチウム補充極板であり、前記集電体層から延出したリチウム補充タブを含み、前記負極板は、負極タブを含み、前記リチウム補充タブは、前記負極タブに接続される。
【0018】
本開示のいくつかの実施例において、前記極板は、正極リチウム補充極板であり、前記集電体層から延出したリチウム補充タブを含み、前記正極板は、正極タブを含み、前記リチウム補充タブは、前記正極タブに接続される。
【発明の効果】
【0019】
本願の実施例が用いる技術手段は、以下の有益な効果を達成することができる。
【0020】
本願の実施例に係る極板は、集電体層、半導体層及びアルカリ金属補充層を含み、前記半導体層は、前記集電体層の少なくとも1つの表面に設置され、前記アルカリ金属補充層は、リチウム補充剤層又はナトリウム補充剤層であり、前記アルカリ金属補充層は、前記半導体層の前記集電体層から離れた側に設置される。本願の実施例に係る極板は、前記半導体層を前記集電体層とアルカリ金属補充層との間に設置することにより、半導体層のトリガー条件の調整に基づいて前記半導体層のオンオフを柔軟に制御することができ、前記極板の制御可能性が向上する。
【0021】
本開示の追加の態様及び利点は、一部が以下の説明において示され、一部が以下の説明において明らかになるか、又は本開示の実施により把握される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
ここで説明される図面は、本願への理解を深めるためのものであり、本願の一部を構成し、本願の例示的な実施例及びそれらの説明は、本願を説明するものであり、本願を限定するものではない。
【0023】
図1】本願の実施例に係る極板の概略構成図である。
図2】本願の実施例に係るリチウムイオン電池の概略構成図である。
図3】本願の実施例に係るリチウム補充前後のリチウムイオン電池の容量測定曲線の比較図である。
図4】本願の実施例に係るリチウム補充前後のリチウムイオン電池のサイクル測定曲線の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の目的、技術手段及び利点をより明確にするために、以下、本願の具体的な実施例及び対応する図面を参照しながら、本願の技術手段を明確かつ完全に説明する。明らかに、説明された実施例は、本願の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本願における実施例に基づいて、当業者が創造的な労力をしない前提で得られる全ての他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0025】
本願の明細書及び特許請求の範囲における用語「第1」、「第2」などは、類似した対象を区別するためのものであり、特定の順序又は優先順位を説明するものではない。本願の実施例が、例えばここでの図示又は説明以外の順序でも実施できるように、このように使用されたデータは、適宜入れ替えてもよく、かつ「第1」、「第2」などで区別される対象は、一般的に同じ種類であり、対象の数を限定せず、例えば、第1対象が1つであってもよく、複数であってもよいことを理解されたい。また、明細書及び特許請求の範囲における「及び/又は」は、接続対象の少なくとも1つを表し、符号「/」は、一般的に前後の関連対象が「又は」の関係であることを表す。
【0026】
以下、図面を参照しながら、本願の各実施例に係る技術手段を詳細に説明する。
【0027】
本願の一態様では、図1に示すように、本願の実施例に係る極板1は、集電体層101、半導体層102及びアルカリ金属補充層103を含み、上記半導体層102は、上記集電体層101の少なくとも1つの表面に設置され、具体的には、上記半導体層102は、上記集電体層101の一側の表面に設置されてもよく、上記集電体層101の両側の表面に設置されてもよい。上記アルカリ金属補充層103は、リチウム補充剤層又はナトリウム補充剤層であり、上記半導体層102の上記集電体層101から離れた側に設置される。上記半導体層102は、通常状態で抵抗率が大きく、上記集電体層101とアルカリ金属補充層103とが導通せず、上記半導体層102が高温又は高圧の条件でトリガーされるとき、上記半導体層102の抵抗が顕著に低下し、上記集電体層101とアルカリ金属補充層103とが導通し、このとき、上記集電体層101とアルカリ金属補充層103との間に通路が形成され、上記アルカリ金属補充層103中の活性アルカリ金属が放出された後、アルカリ金属を補充する必要がある正極板及び/又は負極板に対して補充を行い、上記半導体層102のトリガー条件の調整に基づいて上記アルカリ金属補充層103の補充速度及び補充量を柔軟に制御することができる。
【0028】
本願の実施例に係る極板1は、上記半導体層102を上記集電体層101とアルカリ金属補充層103との間に設置することにより、極板1を押圧するときにアルカリ金属補充層103と電池の電極材料とが直接接触して反応することが回避される。より重要なことには、上記半導体層102は、そのトリガー条件の調整に基づいて上記半導体層102のオンオフを柔軟に制御し、かつ電池SOC(システムオンチップ)の状態、電池の温度又は内部圧力の制御により極板1における活性イオンの放出速度及び放出量を制御することにより、上記極板1の補充速度及び補充量を制御し、上記極板1の柔軟性が向上する。
【0029】
また、上記半導体層102の柔軟なオンオフにより、一定の程度で制御可能なリチウム補充又はナトリウム補充の過程を実現し、必要に応じてリチウムイオン電池又はナトリウムイオン電池に対して段階的でバッチごとに活性リチウム又は活性ナトリウムを放出することにより、電池の活性アルカリ金属が消費された後にタイムリーに補充され、電池のサイクル特性が大幅に向上する。したがって、上記半導体層102がトリガーされることは、第1トリガー段階及び第2トリガー段階を含んでもよく、上記第1トリガー段階及び第2トリガー段階は、2つのトリガー段階のみを含むだけでなく、上記半導体層102は、複数の補充段階を含んでもよく、上記極板1に依然として活性アルカリ金属が含まれるとともに上記半導体層102がオンになる場合であれば、該補充段階はいずれも実現することができる。
【0030】
本願の実施例において、上記アルカリ金属補充層103の厚さ範囲は、50μm~300μmであり、本願の1つの具体的な実施例において、上記アルカリ金属補充層103の厚さ範囲は、125μm~200μmである。
【0031】
具体的には、上記アルカリ金属補充層103の厚さは、上記極板1におけるアルカリ金属の補充回数及び補充量に直接的につながり、本願の上記厚さのアルカリ金属補充層103は、電池の正極板又は負極板のアルカリ金属補充量の需要を満たすとともに、浪費になることと、電池の多くのスペースを占めることとを回避することができる。
【0032】
本願の1つの実施例において、上記アルカリ金属補充層103は、負極リチウム補充剤層であるリチウム補充剤層である。
【0033】
具体的には、上記アルカリ金属補充層103が負極リチウム補充剤層であるとき、上記負極リチウム補充剤層は、金属リチウム、リチウムケイ素合金、リチウムアルミニウム合金、リチウムホウ素合金及びリチウムマグネシウム合金のうちの少なくとも1種を含む。金属リチウムは、超薄リチウムテープ、安定化リチウム金属粉末又はリチウムシートであってもよい。このとき、上記集電体層101は、銅箔であってもよく、負極リチウム補充剤層と銅箔との間に上記半導体層102が設置されている。上記極板1は、リチウムイオン電池の負極板に接続されてもよく、上記半導体層102がオンになるとき、上記極板1は、負極板にリチウムを補充することができる。
【0034】
本願の別の実施例において、上記アルカリ金属補充層103は、正極リチウム補充剤層であるリチウム補充剤層である。
【0035】
具体的には、上記アルカリ金属補充層103が正極リチウム補充剤層であるとき、上記正極リチウム補充剤層は、酸化リチウム、鉄酸リチウム、コバルト酸リチウム及びニッケル酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む。このとき、上記集電体層101は、アルミニウム箔であってもよく、正極リチウム補充剤層とアルミニウム箔との間に上記半導体層102が設置されている。上記極板1は、リチウムイオン電池の正極板に接続されてもよく、上記半導体層102がオンになるとき、上記極板1は、正極板にリチウムを補充することができる。
【0036】
本願のまた別の実施例において、上記半導体層102のシート抵抗範囲は、10-3mΩ・m~10mΩ・mである。これにより、半導体層102の柔軟なオンオフをさらに保証し、制御可能なリチウム補充又はナトリウム補充を実現することができる。
【0037】
具体的には、上記半導体層102は、感熱半導体であってもよく、該感熱半導体は、ZnO、CuO、NiO、Al、Fe、Mn及びCoのうちの1種の酸化物又は多種の酸化物を複合して得られる。上記半導体層102が感熱半導体であるとき、上記半導体層102の温度の制御によりオンオフを制御することができる。具体的には、上記半導体層102は、低い温度又は常温であるとき、シート抵抗が大きく、上記集電体層101とアルカリ金属補充層103とを隔てることができ、上記半導体層102は、高い温度であるとき、シート抵抗が顕著に減少し、上記集電体層101とアルカリ金属補充層103とが導通し、上記極板1の補充過程を実現し、上記極板1の補充を柔軟に制御する作用を果たすことができる。上記半導体層102は、低い温度又は常温である場合のシート抵抗が大きすぎるとき、温度が上昇した後にオンの状態に達しにくく、上記極板1の補充過程を実現しにくい。上記半導体層102は、低い温度又は常温である場合のシート抵抗が小さすぎるとき、大きい自己放電を発生させ、上記半導体層102のオンオフを効果的に制御する作用を果たさない可能性があり、昇温した後に上記半導体層102のシート抵抗が小さすぎる場合、上記半導体層102をオンにすることは、明らかな昇温過程を必要とせず、上記半導体層102が長期間にわたってオン状態にあることを引き起こし、上記極板1の補充を柔軟に制御する目的を達成しない可能性があり、昇温した後に上記半導体層102のシート抵抗が大きすぎる場合、上記半導体層102は温度が上昇した後にオン状態になりにくく、同様に上記極板1の補充過程を実現しにくい。
【0038】
1つの具体的な実施形態において、上記半導体層102の材料の成分及び上記半導体層102の被覆層の厚さを調整し制御することにより、上記半導体層102の被覆層のシート抵抗が10-3mΩ・m~10mΩ・mに保持される。上記半導体層102が常温オフ状態にあるとき、上記半導体層102のシート抵抗が10mΩ・mになり、上記半導体層102の両側が基本的に電子的に絶縁され、リーク電流が0.1μA/mより小さく、上記半導体層102が高温オン状態にある場合、例えば、リチウムイオン電池の内部温度が60℃である場合、上記半導体層102の被覆層のシート抵抗が10-3mΩ・mより小さく、このとき、上記半導体層102の被覆層の両側が電子的に導通し、上記極板1は、電池の極板にリチウムを補充するか又はナトリウムを補充することができる。また、上記半導体層102は、感圧半導体であってもよく、リチウムイオン電池の内部に圧力制御アセンブリが設置され、該圧力制御アセンブリは、感圧半導体のオンオフを制御することができる。
【0039】
本願のさらに別の実施例において、上記半導体層102の厚さ範囲は、100nm~500nmであり、本願の1つの具体的な実施例において、上記半導体層102の厚さ範囲は、180nm~350nmである。
【0040】
具体的には、上記半導体層102がオンになるようにトリガーされない場合、つまり、上記半導体層102がオフになる場合、上記半導体層102の抵抗が非常に高いため、上記半導体層102の厚さを数百ナノメートルとすれば、上記集電体層101とアルカリ金属補充層103との間の電子交換を効果的に遮断することができる。上記半導体層102が厚すぎると、浪費を引き起こすだけでなく、電池の内部の限られたスペースを占める。
【0041】
本願のさらなる態様では、図2に示すように、本願の実施例に係るリチウムイオン電池は、正極板2、負極板3及び上記極板1を含み、上記極板1の上記アルカリ金属補充層103がリチウム補充剤層であり、上記正極板2と負極板3は、セパレータ4により互いに隔てられ、少なくとも1つの上記極板1は、上記セパレータ4により上記正極板2及び/又は上記負極板3から隔てられる。
【0042】
具体的には、上記極板1において上記半導体層102を上記集電体層101とアルカリ金属補充層103との間に設置することにより、極板1を押圧するときにアルカリ金属補充層103と電池の負極材料とが反応して熱を生成することが回避される。同時に、リチウムイオン電池に電解液が注入された後、アルカリ金属補充層103と電池の負極材料とが激しく反応してSEI膜残留物を生成することがなく、リチウムイオン電池のリチウム析出のリスクが低減される。また、上記極板1の上記アルカリ金属補充層103がナトリウム補充剤層である場合、上記正極板2、負極板3及び上記極板1として上記リチウムイオン電池のものと類似する構造を用いてナトリウムイオン電池を製造してもよい。
【0043】
より重要なことには、上記半導体層102の柔軟なオンオフにより、一定の程度で制御可能なプレリチウム化過程を実現し、必要に応じてリチウムイオン電池に対して段階的でバッチごとに活性リチウムを放出することにより、リチウムイオン電池の活性リチウムが消費された後にタイムリーに補充され、リチウムイオン電池のサイクル特性が大幅に向上し、リチウムイオン電池の耐用年数が延長される。
【0044】
本願の1つの実施例において、上記極板1は、負極リチウム補充極板であり、上記集電体層101から延出したリチウム補充タブを含み、上記負極板3は、負極タブを含み、上記リチウム補充タブは、上記負極タブに接続される。
【0045】
具体的には、上記極板1の数は、1つ、2つ、3つ又はそれ以上であってもよく、上記負極板3の数は、1つ、2つ、3つ又はそれ以上であってもよく、複数の上記極板1のリチウム補充タブは、複数の上記負極板3の負極タブに接続され、上記半導体層102がオンになる場合、上記極板1と上記負極板3との間に通路が形成され、上記極板1は、上記負極板3にリチウムを補充することができ、上記負極板3がリチウムを補充する必要がないとき、上記半導体層102をオフにすることによりリチウム補充通路の遮断を実現することができる。
【0046】
1つの具体的な実施形態において、図2に示すように、1つのリチウムイオン電池において、上記極板1の数が2つであり、上記正極板2及び負極板3の数が複数であり、複数の上記正極板2と複数の負極板3は、交互に設置され、かつ上記セパレータ4により隔てられ、リチウムイオン電池の上下両側にいずれも上記負極板3に近接する極板1が設置され、上記負極板3と上記極板1とは、上記セパレータ4により隔てられ、2つの上記極板1のリチウム補充タブが複数の上記負極板3の負極タブに接続されることにより、上記極板1は、上記負極板3にリチウムを補充することができる。
【0047】
本願のさらなる実施例において、上記極板1は、正極リチウム補充極板であり、上記集電体層101から延出したリチウム補充タブを含み、上記正極板2は、正極タブを含み、上記リチウム補充タブは、上記正極タブに接続される。
【0048】
具体的には、上記極板1の数は、1つ、2つ、3つ又はそれ以上であってもよく、上記正極板2の数は、1つ、2つ、3つ又はそれ以上であってもよく、複数の上記極板1のリチウム補充タブは、複数の上記正極板2の正極タブに接続され、上記半導体層102がオンになる場合、上記極板1と上記正極板2との間に通路が形成され、上記極板1は、上記正極板2にリチウムを補充することができ、上記正極板2がリチウムを補充する必要がないとき、上記半導体層102をオフにすることによりリチウム補充通路の遮断を実現することができる。
【0049】
本願は、以下の具体的な実施例により極板及びそれを含むリチウムイオン電池を説明する。
(極板の実施例1)
【0050】
該極板は、
銅箔集電体を含み、銅箔の表面に緻密な半導体層が設置され、該半導体層は、感熱材料であり、厚さが100nmであり、配合(質量比)がZnO:NiO:Al:Fe=0.3:0.3:0.3:0.1であり、25℃の条件でのシート抵抗が2.3×10mΩ・mであり、60℃の条件でのシート抵抗が2.6×10-3mΩ・mであり、該半導体層の銅箔から離れた側にアルカリ金属補充層が設置され、アルカリ金属補充層の厚さが50μmである。
(極板の実施例2)
【0051】
該極板は、
銅箔集電体を含み、銅箔の表面に緻密な半導体層が設置され、該半導体層は、感熱材料であり、厚さが500nmであり、配合(質量比)がZnO:NiO:Al:Fe=0.4:0.4:0.1:0.1であり、25℃の条件でのシート抵抗が9×10mΩ・mであり、60℃の条件でのシート抵抗が1.6×10-2mΩ・mであり、該半導体層の銅箔から離れた側にアルカリ金属補充層が設置され、アルカリ金属補充層の厚さが300μmである。
(極板の実施例3)
【0052】
該極板は、
銅箔集電体を含み、銅箔の表面に緻密な半導体層が設置され、該半導体層は、感熱材料であり、厚さが180nmであり、配合(質量比)がZnO:NiO:Al=0.4:0.4:0.2であり、25℃の条件でのシート抵抗が6.3×10mΩ・mであり、60℃の条件でのシート抵抗が1.0×10-3mΩ・mであり、該半導体層の銅箔から離れた側にアルカリ金属補充層が設置され、アルカリ金属補充層の厚さが125μmである。
(極板の実施例4)
【0053】
該極板は、
銅箔集電体を含み、銅箔の表面に緻密な半導体層が設置され、該半導体層は、感熱材料であり、厚さが350nmであり、配合(質量比)がZnO:NiO:Al:Fe=0.25:0.25:0.25:0.25であり、25℃の条件でのシート抵抗が7.8×10mΩ・mであり、60℃の条件でのシート抵抗が2.6×10-3mΩ・mであり、該半導体層の銅箔から離れた側にアルカリ金属補充層が設置され、アルカリ金属補充層の厚さが200μmである。
(極板の実施例5)
【0054】
該極板は、
銅箔集電体を含み、銅箔の表面に緻密な半導体層が設置され、該半導体層は、感熱材料であり、厚さが250nmであり、配合(質量比)がZnO:NiO:Al:Fe=0.2:0.3:0.2:0.3であり、25℃の条件でのシート抵抗が8.5×10mΩ・mであり、60℃の条件でのシート抵抗が1.7×10-3mΩ・mであり、該半導体層の銅箔から離れた側にアルカリ金属補充層が設置され、アルカリ金属補充層の厚さが200μmである。
(極板の実施例6)
【0055】
該極板は、
銅箔集電体を含み、銅箔の表面に緻密な半導体層が設置され、該半導体層は、感熱材料であり、厚さが50nmであり、配合(質量比)がZnO:NiO:Al:Fe=0.2:0.3:0.2:0.3であり、25℃の条件でのシート抵抗が4.5×10mΩ・mであり、60℃の条件でのシート抵抗が3.9×10-4mΩ・mであり、該半導体層の銅箔から離れた側にアルカリ金属補充層が設置され、アルカリ金属補充層の厚さが50μmである。
(極板の実施例7)
【0056】
該極板は、
銅箔集電体を含み、銅箔の表面に緻密な半導体層が設置され、該半導体層は、感熱材料であり、厚さが100nmであり、配合(質量比)がZnO:NiO:Al:Fe=0.2:0.3:0.2:0.3であり、25℃の条件でのシート抵抗が3.2×10mΩ・mであり、60℃の条件でのシート抵抗が6.8×10-3mΩ・mであり、該半導体層の銅箔から離れた側にアルカリ金属補充層が設置され、アルカリ金属補充層の厚さが30μmである。
(極板の実施例8)
【0057】
該極板は、
銅箔集電体を含み、銅箔の表面に緻密な半導体層が設置され、該半導体層は、感熱材料であり、厚さが600nmであり、配合(質量比)がZnO:NiO:Al:Fe=0.2:0.3:0.2:0.3であり、25℃の条件でのシート抵抗が9.2×10mΩ・mであり、60℃の条件でのシート抵抗が8.8×10-3mΩ・mであり、該半導体層の銅箔から離れた側にアルカリ金属補充層が設置され、アルカリ金属補充層の厚さが50μmである。
(極板の実施例9)
【0058】
該極板は、
銅箔集電体を含み、銅箔の表面に緻密な半導体層が設置され、該半導体層は、感熱材料であり、厚さが100nmであり、配合(質量比)がZnO:NiO:Al:Fe=0.2:0.3:0.2:0.3であり、25℃の条件でのシート抵抗が2.4×10mΩ・mであり、60℃の条件でのシート抵抗が1.2×10-3mΩ・mであり、該半導体層の銅箔から離れた側にアルカリ金属補充層が設置され、アルカリ金属補充層の厚さが400μmである。
(極板の比較例1)
【0059】
従来のリチウムテープが使用され、該リチウムテープの厚さは、50μmである。
【0060】
本願において、上記実施例1~実施例9の極板を独立した電極としてリチウムイオン電池の積層されたセルに添加し、積層されたセルは、正極がリン酸鉄リチウムであり、正極の面密度が400g/mであり、圧密密度が2.60g/mであり、負極が天然黒鉛であり、負極の面密度が205g/mであり、負極の圧密密度が1.55g/mであり、積層数(正極板と負極板の対数)が30層である。リチウムイオン電池の実施例1~実施例9を得て、比較例1における従来のリチウムテープをリチウムイオン電池の積層されたセルの負極に直接的にロールプレスしたものをリチウムイオン電池の比較例1とし、極板が添加されない上記リチウムイオン電池を比較例2とし、上記リチウムイオン電池に活性化及び測定の過程を行い、具体的には、以下のとおり説明する。
【0061】
活性化過程について、リチウムイオン電池を常温で化成しグレーディングして、リチウムイオン電池のSOC状態を0%に調整し、このとき、リチウムイオン電池の開路電圧が2.45V~2.55V範囲にあり、次にリチウムイオン電池を45℃に加熱して高温で12h浸潤し、このとき、極板の半導体層が導通し、アルカリ金属補充層と集電体層との間に通路が形成され、このとき、アルカリ金属補充層の活性リチウムが極板から脱離してリチウムイオン電池の黒鉛負極に挿入される。リチウムイオン電池の電圧をリアルタイムに監視することにより極板のリチウム補充量を制御し調整し、リチウムイオン電池の開路電圧が0.2Vに上昇すると、リチウムイオン電池を25℃に降温させ、活性化過程を完了することができ、活性化過程が一般的に約8h~12hである(比較例1及び比較例2において活性化過程が行われない)。
【0062】
容量測定について、常温で、活性化されたリチウムイオン電池を0.1Cの定電流及び定電圧の条件で3.8Vに充電し、30min静置して、0.1Cの条件で定電流で2.0Vに放電し、30min静置し、以上の過程を3回繰り返して、安定する放電容量を得る。
【0063】
サイクル測定について、常温で、活性化されたリチウムイオン電池を0.33Cの定電流及び定電圧で3.8Vに充電し、30min静置して、0.33Cの条件で定電流で2.0Vに放電し、30min静置し、以上の過程を2000回繰り返す。100回サイクルごとに、1回の容量測定を行う。
【0064】
貯蔵測定について、活性化されたリチウムイオン電池を100%のSOCに充電して常温で貯蔵し、1週間おきに1回の容量測定を行う。
【0065】
表1には、実施例1~実施例9と比較例1及び比較例2とのリチウムイオン電池の測定結果が示され、表1から分かるように、本願の実施例1~実施例5に係るリチウムイオン電池は、初回充放電容量がいずれも150mAh/g以上に達することができ、2000回の充放電サイクルの後の容量維持率が88.3%以上に達することができ、26週間貯蔵後の容量維持率が依然として98.4%に達することができる。実施例4で得られたリチウムイオン電池は、2000回の充放電サイクルの後の容量維持率がひいては90%以上に達することができ、26週間貯蔵後の容量維持率が約100%であり、長期間にわたって貯蔵された後のリチウムイオン電池の容量が基本的に減衰しないことを示す。
【0066】
実施例6~実施例9における半導体層の厚さ又はアルカリ金属補充層の厚さが本願の好ましい実施例の範囲より低い又は本願の好ましい実施例の範囲より高い場合、リチウムイオン電池は、初回充放電容量が150.6mAh/g以下に達するが、依然として143.2mAh/g以上に維持することができ、2000回の充放電サイクルの後の容量維持率が80%~85%であり、26週間貯蔵後の容量維持率が93%~96%の範囲にあり、いずれも本願の実施例1~実施例5に係るリチウムイオン電池より低いが、依然として高い容量及び維持率を維持することができる。
【0067】
比較例1及び比較例2における従来のリチウムテープを用いてリチウムを補充して得られたリチウムイオン電池と、リチウムを補充せずに得られたリチウムイオン電池は、初回充放電容量がそれぞれ143.2mAh/g及び135.5mAh/gであり、2000回の充放電サイクルの後の容量維持率が約80%であり、26週間貯蔵後の容量維持率がいずれも93.5%より低く、いずれも本願の実施例に係るリチウムイオン電池より明らかに低い。リチウムを補充せずに得られたリチウムイオン電池の初回充放電容量は、リチウムが補充されたリチウムイオン電池の初回充放電容量より明らかに低い。
【0068】
【表1】
【0069】
図3及び図4には、上記実施例1におけるリチウムが補充されたリチウムイオン電池と比較例2におけるリチウムが補充されないリチウムイオン電池との容量測定曲線の比較図及びサイクル測定曲線の比較図が示され、図3及び図4並びに表1におけるデータから分かるように、実施例1におけるリチウムが補充されたリチウムイオン電池5の容量は、比較例2におけるリチウムが補充されないリチウムイオン電池の容量に比べて12%上昇し、リチウムが補充されたリチウムイオン電池5のサイクル特性は、リチウムが補充される前のリチウムイオン電池に比べて10%@2000cycles上昇した。リチウムが補充されたリチウムイオン電池5は、常温で26週間貯蔵した後に容量が9.4%のみ低下した。
【0070】
以上、図面を参照しながら本願の実施例を説明したが、本願は、上記具体的な実施形態に限定されるものではなく、上記具体的な実施形態は、制限的なものではなく、例示的なものに過ぎず、当業者であれば、本願の示唆で、本願の趣旨及び特許請求の範囲の保護範囲から逸脱せずに多くの形式を行うことができ、これらはいずれも本願の保護範囲内に属する。
【符号の説明】
【0071】
1 極板
101 集電体層
102 半導体層
103 アルカリ金属補充層
2 正極板
3 負極板
4 セパレータ
図1
図2
図3
図4