(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】高アスペクト構造からのデブリ除去
(51)【国際特許分類】
G03F 1/82 20120101AFI20240605BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20240605BHJP
G01Q 60/24 20100101ALI20240605BHJP
G01Q 80/00 20100101ALI20240605BHJP
G03F 1/24 20120101ALI20240605BHJP
【FI】
G03F1/82
B82Y30/00
G01Q60/24
G01Q80/00 111
G03F1/24
(21)【出願番号】P 2018539846
(86)(22)【出願日】2017-01-26
(86)【国際出願番号】 US2017015062
(87)【国際公開番号】W WO2017132331
(87)【国際公開日】2017-08-03
【審査請求日】2020-01-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-30
(32)【優先日】2016-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522189012
【氏名又は名称】ブルーカー ナノ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン トッド
【合議体】
【審判長】波多江 進
【審判官】安藤 達哉
【審判官】野村 伸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-298858(JP,A)
【文献】特開2010-170019(JP,A)
【文献】特表2010-539714(JP,A)
【文献】特開2013-068786(JP,A)
【文献】特開2006-351595(JP,A)
【文献】特開2002-329700(JP,A)
【文献】特開2010-091774(JP,A)
【文献】特開2010-117403(JP,A)
【文献】特開2010-117412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00 - 1/86
H01L 21/027
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デブリを基板の表面から除去する方法であって、
前記基板上のデブリに隣接して先端を位置決めする工程と、
デブリを拘束するために、前記先端の表面上の流体コーティングを、荷電粒子ビームによって流体から固体に変化させ、デブリを取り囲んで、前記先端の表面に機械的に捕捉することにより、デブリを前記先端の表面で捕捉する工程と、
前記先端を前記基板から離れるように動かすことにより、前記基板の表面からデブリを除去する工程と、
を有し、
前記基板は極端紫外線リソグラフィフォトマスクであることを特徴とするデブリ除去方法。
【請求項2】
さらに、前記基板上の前記デブリを特定する工程、及び/又は前記デブリを除去した後、前記基板の表面を洗浄する工程を有する請求項1記載のデブリ除去方法。
【請求項3】
デブリを基板の表面から除去する方法であって、
前記デブリを捕捉する流体コーティングを有する先端を、前記基板上の前記デブリに隣接して位置決めする工程と、
前記流体コーティングを前記デブリに接触させる工程と、
前記先端の表面で前記デブリを取り囲んで捕捉するために、前記流体コーティングの材料が流体から固体に変化するように外部エネルギ源からエネルギーを付与する工程と、
前記先端を前記基板から離れるように動かすことにより、前記基板の前記表面から前記デブリを除去する工程と、
を有し、
前記基板は極端紫外線リソグラフィフォトマスクであることを特徴とするデブリ除去方法。
【請求項4】
前記外部エネルギ源は、荷電粒子ビームである請求項
3記載のデブリ除去方法。
【請求項5】
さらに、前記基板上の前記デブリを特定する工程、及び/又は前記デブリを除去した後、前記基板の表面を洗浄する工程を有する請求項
3記載のデブリ除去方法。
【請求項6】
基板の表面からデブリを除去するデブリ除去装置であって、
先端を前記基板上のデブリに隣接して位置決めする手段と、
エネルギーを付与することにより、前記先端の流体コーティングを流体から固体へ相変化させ、前記デブリを取り囲んで前記デブリを前記先端の表面に捕捉する外部エネルギ源と、
前記先端を前記基板から離れるように動かすことにより、前記基板の前記表面から前記デブリを除去する手段と、
を有し、
前記基板は極端紫外線リソグラフィフォトマスクであることを特徴とするデブリ除去装置。
【請求項7】
前記外部エネルギ源は、荷電粒子ビームである請求項
6記載のデブリ除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
この特許出願は、2007年9月17日出願の米国特許出願第11/898,836号(米国特許第8,287,653号として交付)の継続出願である2012年10月15日出願の米国特許出願第13/652,114号(米国特許第8,696,818号として交付)の分割出願である2014年2月28日出願の現在特許出願中の米国特許出願第14/193,725号の一部継続出願であり、かつその優先権利益を主張するものであり、これらの全ては、その全体が引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明の開示は、一般的に、ナノ機械加工処理に関する。より具体的には、本発明の開示は、ナノ機械加工処理中及び/又は後のデブリ除去に関する。これに加えて、本発明の開示のデブリ除去処理は、基板に対して異質な何物の除去にも適用することができる。
【背景技術】
【0003】
ナノ機械加工は、定義により、例えば、フォトリソグラフィマスク、半導体基板/ウェーハ、又は走査プローブ顕微鏡法(SPM)をその上に実行することができるいずれかの面から材料のナノスケール容積を機械的に除去することを伴う。この議論の目的に対して、「基板」は、ナノ機械加工をその上に実行することができるあらゆる物体を指すことになる。
【0004】
フォトリソグラフィマスクの例は、標準フォトマスク(193nm波長、液浸の有無に関わらず)、次世代リソグラフィマスク(インプリント、有向自己組織化など)、極紫外線リソグラフィフォトマスク(EUV又はEUVL)、及びあらゆる他の実行可能又は有用なマスク技術を含む。基板と見なされる他の面の例は、膜、ペリクルフィルム、マイクロ電気/ナノ電気機械システムMEMS/NEMSである。本発明の開示での用語「マスク」又は「基板」の使用は、上述の例を含むが、他のフォトマスク又は面も適用可能である場合があることは当業者によって認められるであろう。
【0005】
関連技術でのナノ機械加工は、原子間力顕微鏡(AFM)の片持ちアーム上に位置決めされた先端(例えば、ダイヤモンド切削ビット)で基板の面に力を印加することによって実行することができる。より具体的には、先端は、最初に基板の面の中に挿入することができ、次に、先端は、面に平行である平面(すなわち、xy平面)内で基板を通して引っ張ることができる。これは、基板からの先端がそれに沿って引っ張られる時の材料の転移及び/又は除去をもたらす。
【0006】
このナノ機械加工の結果として、デブリ(基板面に対して異質な何物も含む)が基板上に発生する。より具体的には、小粒子が、材料が基板から除去される時にナノ機械加工処理中に形成される場合がある。これらの粒子は、一部の事例では、ナノ機械加工処理が完了した状態で基板上に留まる。そのような粒子は、多くの場合に、例えば、基板上に存在するトレンチ及び/又はキャビティに見出される。
【0007】
基板に対して異質なデブリ、粒子、又は何物をも除去するために、特に高アスペクトフォトリソグラフィマスク構造及び電子回路では、湿式洗浄技術が使用されている。より具体的には、液体状態の化学薬品の使用及び/又は全体マスク又は回路の撹拌が使用される場合がある。しかし、化学的方法及び例えばメガソニック撹拌のような撹拌方法の両方は、高アスペクト比構造及びマスク光学近接性補正特徴部(すなわち、一般的に、これらの特徴が結像するのではなく、むしろパターンを形成するマスク設計者によって有益に利用される回折パターンを形成するほど小さい特徴部)の両方に悪影響を及ぼす又は破壊する可能性がある。
【0008】
高アスペクト形状及び構造が化学薬品及び撹拌によって特に破壊されやすい理由をより良く理解するために、そのような形状及び構造が、定義により、面積量が大きく、従って熱力学的に非常に不安定であることを考慮しなければならない。従って、これらの形状及び構造は、化学的及び/又は機械的エネルギが印加されると層間剥離及び/又は他の形態の破壊を非常に受けやすい。
【0009】
インプリントリソグラフィ及びEUV(又はEUVL)では、複写されるリソグラフィ面から粒子を離しておくためのペリクルの使用が現在実現可能でないことに注意することが重要である。ペリクルを使用することができない技術は、一般的に、ウェーハにパターンを転写する機能を阻害する粒子汚染による不良をより受けやすい。ペリクルは、EUVマスクに対して開発中であるが、DUVペリクルマスクを用いた以前の経験が示すように、ペリクルの使用は、重篤粒子及び他の汚染物が面上に落下するのを単に軽減する(しかし、完全には防止しない)だけであり、高エネルギ光子へのいずれのその後の露出も、これらの粒子をより大きい接着度でマスク面に固定する傾向があることになる。これに加えて、これらの技術は、より小さい特徴部サイズ(1から300nm)と共に実施される場合があり、典型的に使用することができる標準湿式洗浄実施中に損傷に対してそれらをより弱くする。EUV又はEUVLの特定の場合では、この技術は、使用中及び恐らくは使用待ちの保管中に基板が真空環境にあることを要求する場合がある。標準湿式洗浄技術を使用するために、この真空は、破壊されるべきであると考えられ、これは、容易に更に別の粒子汚染に至る可能性があるであろう。
【0010】
基板からデブリを除去するための他の現在利用可能な方法は、極低温洗浄システム及び技術を使用する。例えば、高アスペクト形状及び/又は構造を含有する基板は、砂の代わりに二酸化炭素粒子を使用して実質的に「サンドブラスト」することができる。
【0011】
しかし、関連技術における極低温洗浄システム及び処理でさえも、高アスペクト特徴部に悪影響を及ぼす又はそれを破壊することが同じく公知である。これに加えて、極低温洗浄処理は、基板の比較的広い区域に影響を及ぼす(例えば、処理される区域は、ナノメートル桁の寸法を有するデブリを洗浄するために約10ミリメートル又はそれ以上にわたる場合がある)。その結果、デブリをそこから除去する必要のない場合がある基板区域が、それにもかかわらず極低温洗浄処理にかつそれに関連付けられた潜在的構造破壊エネルギに露出される。ナノ及びマイクロレジーム間には多くの物理的な相違点があり、ここでの目的に対してナノ粒子洗浄処理に関連する相違点に着目することになることに注意されたい。ナノ及びマクロスケール洗浄処理の間には多くの類似点があるが、多くの重大な相違点も存在する。本発明の開示の目的に対して、ナノスケールの一般的定義が使用され、これは、1から100nmのサイズ範囲を定義する。これは、本明細書で精査される処理の多くがこの範囲よりも下で(原子スケールの中に)生じる場合があり、かつこの範囲より大きい(マイクロレジームの中への)粒子に影響を及ぼすことができるので一般化された範囲である。
【0012】
マクロ及びナノ粒子洗浄処理間の一部の物理的相違点は、表面積、平均自由行程、熱、及び場の効果を含む輸送関連特性を含む。このリストの最初の2つは、粒子の熱的-機械的-化学的挙動により関連するが、最後の1つは、電磁場との粒子の相互作用により関連している。熱輸送現象は、それも粒子の周りの熱-機械的物理化学であり、赤外線波長レジームでの電磁場との粒子の相互作用であるという点でこれら2つのレジームと交差する。これらの相違点の一部を機能的に明らかにするために、高アスペクト線及び空間構造(深さ70nmで幅40nm、~AR=1.75)の底部に捕捉されたナノ粒子の思考実験例を仮定する。マクロスケール処理を用いてこの粒子を洗浄するために、粒子を除去するのに必要とされるエネルギは、基板上の特徴部又はパターンに損傷を与えるのに必要とされるエネルギとほぼ同じであり、それによって高アスペクト線及び空間構造を損傷することなく洗浄することを不可能にする。マクロスケール洗浄処理(水性、界面活性剤、音波撹拌など)に対して、ナノ粒子が除去されるエネルギレベルでは、周囲特徴部又はパターンも損傷する。ナノ粒子に対してナノ距離内で正確にナノシャープ(又はナノスケール)構造を操作する技術的機能がある場合に、ナノ粒子を洗浄するエネルギは、ナノ粒子だけに印加することができる。ナノスケール洗浄処理に対して、ナノ粒子を除去するのに必要とされるエネルギは、ナノ粒子にのみ印加され、基板上の周囲特徴部又はパターンには印加されない。
【0013】
最初に、粒子の表面積特性を見ると、理論上の粒子(ここでは完全な球体としてモデル化される)がナノスケールレジームに近づく時に明白である数学的なスケーリング相違点が存在する。材料のバルク特性は、材料の容積を用いて評価されるが、面は、外部区域によって評価される。仮想的な粒子の場合に、その容積は、粒子の直径に対して立方(3乗)によって逆比例で減少するが、表面積は、平方によって減少する。この差は、マクロ及び更にはマイクロスケール直径での粒子の挙動を支配する材料特性がナノレジーム(及びより小さい)の中に向かう時に無視することができるようになることを意味する。これらの特性の例は、音波撹拌又はレーザ衝撃のような一部の洗浄技術に対して重大な考慮事項である粒子の質量及び慣性特性を含む。
【0014】
ここで考察する次の輸送特性は、平均自由行程である。マクロからマイクロのレジームに対して、流体(液体と気体の両方、及び混合状態における)は、それらの挙動において連続体流れとして正確にモデル化することができる。AFM先端及びナノ粒子の面のようなナノスケール又はそれ未満の間隙によって分離された面を考えると、これらの流体は、連続体と見なすことはできない。これは、流体が古典流れモデルに従って移動せず、希薄気体又は更には真空の弾道原子運動により正確に関連する可能性があることを意味する。標準温度及び圧力での気体内の平均原子又は分子(直径が約0.3nm)に対して、計算された平均自由行程(すなわち、分子が別の原子又は分子に平均的に衝突することになる前に直線で進むことになる距離)は、約94nmであり、これは、AFM走査プローブにとって大きい距離である。流体は、気体よりも遥かに密度が高いので、それらは、遥かに小さい平均自由行程を有することになるが、いずれの流体に対する平均自由行程も原子又は分子の直径よりも小さくなることはできないことに注意すべきである。典型的な先端に対して上記に与えた0.3nmという仮定された原子又は分子直径を1nm程に小さい可能性がある、すなわち、最も密度の高い流体を除く非接触走査モード中の面平均分離距離と比較すると、AFM先端頂点と走査されている面との間の流体環境は、希薄気体から近真空までの流体特性の範囲で挙動することになる。先の精査での知見は、マクロからナノスケールまでスケーリングされる時に熱-流体過程が根本的に異なる方法で挙動することを明らかにするのに極めて重要である。これは、化学反応、環境への遊離粒子のような生成物の除去、荷電又は電荷中和、及び熱又は熱エネルギの輸送のような様々な処理態様の機構及び動力学に影響を及ぼす。
【0015】
マクロ及びナノからサブナノスケールへの公知の熱輸送の相違点は、走査熱プローブ顕微鏡を使用する研究によって見出された。1つの早期に見出された相違点は、熱エネルギの輸送速度がナノスケール距離にわたってマクロスケールよりも1桁小さい可能性があるということである。これが、走査熱プローブ顕微鏡が、先端から面までの分離がナノ又はオングストロームスケール程に小さい非接触モードでそれが走査している面に対して、時には数百度の温度差まで加熱されたナノプローブを使用して機能することができる理由である。このより低い熱輸送に対する理由は、流体における平均自由行程に関する前節で示唆されている。しかし、熱輸送の一形態は強化され、それは黒体輻射である。与えられた温度での黒体スペクトル放射輝度に関するプランク限界は、ナノスケール距離で超える可能性があることが実験的に示されている。従って、熱輸送の大きさが減少するだけでなく、主要な輸送のタイプが、希薄から真空への流体挙動を保ちながら伝導/対流から黒体へと変化する。
【0016】
場(他の可能な例と比較してそのより長い波長に起因して電磁場が本明細書での主要な意図する例である)の相互作用における相違点は、この議論での目的に対して、波長関連及び他の量子効果(特にトンネリング)として更に細分類することができると考えられる。ナノスケールでは、発生源(ここでは、主要な発生源として又は比較的遠距離場の発生源の修正としてかに関わらず、AFM先端の頂点として想定される)と面の間の電磁場の挙動は、遠距離場発生源が体験することになる分解能に対する波長依存の回折限界を受けないことになる。一般的に近距離場光学系と呼ばれるこの挙動は、近距離場走査光学顕微鏡(NSOM)のような走査プローブ技術に大きい成功をもって使用されている。計測学での応用を超えて、近距離場挙動は、互いからナノ距離で離間した全てのナノスケールサイズの物体の電磁相互作用に影響を及ぼす可能性がある。言及する次の近距離場挙動は、粒子、特に電子が、それが古典的には貫通することができないと考えられる障壁を横切って輸送されることが可能である量子トンネリングである。この現象は、マクロスケールでは見られない手段によるエネルギ輸送を可能にし、かつ走査トンネリング顕微鏡(STM)及び一部の固体電子デバイスに使用されている。最後に、近接性励起及びプラズモン共鳴の感知のようなナノスケールでの電磁場を用いて(しかし、それに限定されない)多くの場合に見られるより難解な量子効果が存在するが、現在の議論がマクロ及びナノスケール物理過程間の根本的な相違点の十分な論証を与えることは当業者によって認められるであろう。
【0017】
以下では、用語「表面エネルギ」は、仕事(この場合は、それぞれ基板及び先端の面へのデブリの接着の仕事)を実行するのに利用可能である面の熱力学特性を指すのに使用される場合がある。古典的にこれを計算する1つの方法は、
G(p,T)=U+pV-TS
として与えられるGibbの自由エネルギであり、ここで
U=内部エネルギ
p=圧力
V=容積
T=温度、及び
S=エントロピー
である。現行の慣例では、圧力、容積、及び温度を変えないので(これらのパラメータも同等に操作して望ましい効果を得ることが同様に可能なので、そうである必要はないが)、それらは詳細には議論されない。すなわち、上述の式中で操作される項は、内部エネルギと以下で議論する方法における駆動機構としてのエントロピーだけであることになる。エントロピーは、プローブ先端面は洗浄されている基板よりも清浄であることになる(すなわち、デブリ及び意図しない面汚染がない)と意図されるので、当然のことながら、基板の上の先端面を選択的に汚染する(及び、次に、その後に軟質材料の洗浄機パレットを汚染する)熱力学的駆動機構である。内部エネルギは、パレット、先端、デブリ、及び基板面の間でそれらのそれぞれの表面エネルギによって特徴付けられる熱力学特性によって操作される。微分表面エネルギをGibbs自由エネルギに関連付ける1つの方法は、単軸張力Pの下で半径r及び長さlの円柱に対する高温(すなわち、それらの融点温度の有意な画分)での工学材料のクリープ特性に関する理論的展開を考察することである:
dG=-P
*dl+γ
*dA、
ここで、
γ=表面エネルギ密度[J/m2]、及び
A=面積[m2]。
物体の応力及び外因性表面エネルギがそのGibbs自由エネルギにおけるファクタであるという知見は、これらのファクタ(表面エネルギ密度γに加えて)を同じく操作して先端(基板に対する)及びその後に続けて軟質パレットへのデブリの可逆的選択的接着を実行することができるであろうと信じさせる。これを行う手段は、印加応力(外的又は内的印加に関わらず)及び温度を含む。この駆動過程は、選択的に基板を洗浄して引き続き軟質パレットを選択的に汚染するための微分表面エネルギ勾配を与えるために正味ΔG<0による一連の面相互作用を常にもたらすことになることが意図されることに注意しなければならない。これは、斜面をより低いエネルギ状態へと選択的に転がり落ちるボールに類似していると考えることができるであろう(但し、ここでは、熱力学的表面エネルギにおける勾配は、全体系での全体的無秩序又はエントロピーも含む)。
図6は、本明細書に説明する方法が選択的に汚染を除去して選択的に軟質パッチ上にそれを堆積させるために下り熱力学的Gibbs自由エネルギ勾配を与えることができると考えられる面相互作用の1つの可能なセットを示している。このシーケンスは、低表面エネルギフッ化炭素材料をダイヤモンドのような中から低程度の表面エネルギ先端材料と共に使用する現行の慣例態様を担うと考えられている理論的機構の1つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
少なくとも以上の見地から、基板面に対して異質なデブリ、粒子、又は何物をも除去するための新しい装置及び方法、特に、高アスペクト比構造を有する基板、フォトマスク光学近接性補正特徴部などをナノスケールでのそのような構造及び/又は特徴部を破壊することなく洗浄することができる新しい装置及び方法に対する要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の開示の態様により、基板の面からデブリを除去するためのシステムを提供する。システムは、片持ちアームと近位部分及び遠位部分を有する先端とを含む。先端は、先端の近位部分で片持ちアームによって支持される。システムは、先端の遠位部分から延びる少なくとも1つのナノフィブリルを更に含み、ナノフィブリルは、デブリ又は基板の面に対して又はその周りで弾性的に変形するように構成される。
【0020】
すなわち、本明細書の詳細説明をより良く理解することができるように、かつ当業技術への本発明の貢献をより良く認めることができるように、幾分大まかに本発明のある一定の態様を概説した。当然のことながら、以下に説明し、かつ本明細書に添付される特許請求の範囲の主題を形成することになる本発明の追加の態様が存在する。
【0021】
この点に関して、本発明の開示の様々な態様をより詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明で明らかにされるか又は図面に示される構成要素の構成の詳細に及びその配置に限定されないことは理解されるものとする。本発明は、説明されたものに追加の実施形態が可能であり、かつ様々な方法を使用して実施かつ実行することができる。同じく、本明細書に使用される表現及び用語、並びに要約は、説明目的のためのものであり、制限であると見なすべきではないことは理解されるものとする。
【0022】
従って、当業者は、本発明の開示がその基礎を置く概念は本発明の開示のいくつかの目的を実行するために他の構造、方法、及びシステムを設計するための基礎として直ちに利用することができることを認めるであろう。従って、特許請求の範囲は、それらが本発明の開示の精神及び範囲から逸脱しない限りにそのような均等な構成を含むと見なさなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】本発明の開示の態様による一連の面相互作用中のデブリ除去デバイスの一部分の断面図である。
【
図1B】本発明の開示の態様による一連の面相互作用中のデブリ除去デバイスの一部分の断面図である。
【
図1C】本発明の開示の態様による一連の面相互作用中のデブリ除去デバイスの一部分の断面図である。
【
図2】本発明の開示の態様によるデブリ除去デバイスの一部分の断面図である。
【
図3】
図2に示すデブリ除去デバイスの別の部分の断面図である。
【
図4】粒子が低エネルギ材料のパッチ又はリザーバに埋められている
図2に示すデブリ除去デバイスのその部分の断面図である。
【
図5】先端がもはや低エネルギ材料のパッチ又はリザーバと接触しない
図4に示すデブリ除去デバイスのその部分の断面図である。
【
図6】本発明の開示の態様によるブリストル又はフィブリルを有する先端の断面図である。
【
図7A】本発明の開示の態様による硬性フィブリルと巻き付けフィブリル間の一般的相違点を示す図である。
【
図7B】本発明の開示の態様による硬性フィブリルと巻き付けフィブリル間の一般的相違点を示す図である。
【
図8A】本発明の開示の態様による単一の硬性フィブリルを使用してターゲット基板からナノ粒子を取り外して除去する工程を示す図である。
【
図8B】本発明の開示の態様による単一の硬性フィブリルを使用してターゲット基板からナノ粒子を取り外して除去する工程を示す図である。
【
図8C】本発明の開示の態様による単一の硬性フィブリルを使用してターゲット基板からナノ粒子を取り外して除去する工程を示す図である。
【
図9A】本発明の開示の態様による複数の硬性フィブリルを使用してターゲット基板からナノ粒子を取り外して除去する工程を示す図である。
【
図9B】本発明の開示の態様による複数の硬性フィブリルを使用してターゲット基板からナノ粒子を取り外して除去する工程を示す図である。
【
図9C】本発明の開示の態様による複数の硬性フィブリルを使用してターゲット基板からナノ粒子を取り外して除去する工程を示す図である。
【
図10A】本発明の開示の態様による単一の巻き付けフィブリルを使用してターゲット基板からナノ粒子を除去する工程を示す図である。
【
図10B】本発明の開示の態様による単一の巻き付けフィブリルを使用してターゲット基板からナノ粒子を除去する工程を示す図である。
【
図10C】本発明の開示の態様による単一の巻き付けフィブリルを使用してターゲット基板からナノ粒子を除去する工程を示す図である。
【
図11A】本発明の開示の態様によるDNA-折り紙機能式巻き付けフィブリルを使用してターゲット基板からナノ粒子を除去する工程を示す図である。
【
図11B】本発明の開示の態様によるDNA-折り紙機能式巻き付けフィブリルを使用してターゲット基板からナノ粒子を除去する工程を示す図である。
【
図11C】本発明の開示の態様によるDNA-折り紙機能式巻き付けフィブリルを使用してターゲット基板からナノ粒子を除去する工程を示す図である。
【
図11D】本発明の開示の態様によるDNA-折り紙機能式巻き付けフィブリルを使用してターゲット基板からナノ粒子を除去する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明をここで図面を参照して説明するが、図面では全体を通して同様な参照番号は同様な部分を指す。
【0025】
図1Aから1Cは、本発明の開示の態様による一連の面相互作用中のデブリ除去デバイス1の一部分の断面図を示している。基板3から粒子2を選択的に付着させて次にそれを軟質パッチ4に転移させることができる可能な一連の面相互作用を図に示す(左から右へ移動する)。
図1Aで、粒子2は(比較的)高い表面エネルギ基板3を汚染し、それによってその表面エネルギは減少して全系におけるエントロピーは増加する。次に
図1Bで、拡散的可動性の低表面エネルギコーティングを有する先端5は、結果として(再び比較的)高い表面エネルギ基板3及び粒子2を被覆するように促され、それらを引き剥がす。続いて、低表面エネルギ材料の喪失は先端5の表面エネルギを僅かに増加させることができるので(その通常の非被覆時の値に近づく)、この時点で引き剥がされた粒子2を先端の面6に付着させるためのエネルギ勾配が存在する(これに加えて、フッ化炭素のような材料は、一般的に良好な結合力を有する)。これらの相互作用はまた、先端面6が基板よりも清浄ならば系のエントロピーを増大させるはずである。最後に、
図1Cで、粒子2は軟質パッチ材料4内に機械的に持ち込まれ、この機械的なアクションも、低表面エネルギ材料で先端面6を再被覆し、それによってそのエネルギを低減して系のエントロピーを増大させるはずである。
【0026】
図2は、本発明の開示の態様によるデブリ除去デバイス10の一部分の断面図を示している。デバイス10は、低表面エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14に隣接して位置決めされたナノスケール先端12を含む。リザーバ内の低表面エネルギ材料は、固体、液体、半液体、又は半固体であるものとすることができる。
【0027】
先端12上にはコーティング16が形成される。コーティング16を形成する前に、先端12は、その表面エネルギを変えるために(例えば、毛細管、濡れ性、及び/又は面張力の効果を変えるために)予備被覆又は面処理をすることができる。適切に選択された状態で、コーティング16により、先端12が非被覆先端よりも長期間にわたって鋭いままであることが可能になる。例えば、PTFE被覆ダイヤモンド先端は、非被覆ダイヤモンド先端よりも長い作動寿命を有することができる。
【0028】
本発明の開示のある一定の態様により、コーティング16は、低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14内に見出されるのと同じ低表面エネルギ材料を含むことができる。同じく、本発明の開示のある一定の態様により、先端12は、低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14と直接接触することができ、コーティング16は、低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14に対して先端12を擦りつけるか又は接触させることにより、先端12の面上に形成(又は補充)することができる。これに加えて、低エネルギ材料のパッチ又はリザーバに対して先端12を擦りつける及び/又はパッド14を引掻くことにより、先端12の面にわたって低表面エネルギ材料の面拡散を強化することができる。
【0029】
本発明の開示のある一定の態様により、コーティング16及び低エネルギ材料14のパッチ又はリザーバ14は共に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような塩素化及びフッ素化された炭素含有分子、又はフッ素化エチレンプロピレン(FEP)のような他の類似材料で製造可能であるか又は少なくともそれらを含むことができる。本発明の開示の他の態様により、金属材料、酸化物、金属酸化物、又は何らかの他の高表面エネルギ材料の中間層15を先端12の面と低表面エネルギ材料コーティング16の間に配置することができる。中間層の代表的な例は、セシウム(Cs)、イリジウム(Ir)、及びそれらの酸化物(及び塩化物、フッ化物など)を含むがこれらに限定されない。これら2つの例示的元素金属は、それぞれ低い及び高い表面エネルギを有する比較的軟質の金属であり、従って、与えられた汚染、基板、及び周囲環境に対する最適な表面エネルギ勾配の最適化を表している。これに加えて又はこれに代えて、先端12の面を粗くするか又はドープすることができる。高表面エネルギ材料又は先端の処理は、一般的に、低表面エネルギ材料コーティング16を先端12により強く結び付けるように作用する。先端の形状も局所的な表面エネルギ密度の変化に影響を与えるので(すなわち、ナノスケールの鋭利さは表面エネルギ密度をちょうど先端部で大きく増大することになる)、先端の形状は先端に粒子の選択的な接着力の増加を与えるように修正することができる。先端12の先端面13を粗くすることにより、粒子及び多くの潜在的結合部位と接触する面積の増加(dA)に起因して、より大きい接着力を提供することができる。粒子又は一部の中間コーティングと反応して接着力を増大することができる非常に不安定で化学的に活性なダングリングボンドを先端面13が含むように先端面13を処理することも可能である(一部の事例では、化学的処理又はプラズマ処理により)。先端13はまた、粒子と相互作用する先端12の面積を増大させるために高密度炭素(HDC)又はダイヤモンド状炭素(DLC)のような高面積材料で被覆することができる。
【0030】
本発明の開示のある一定の態様により、高表面エネルギ前処理は、低表面エネルギコーティング16なしで利用される。そのような態様では、以下で議論する粒子20は、本明細書で説明するものと類似の方法を使用して何らかの他の軟質ターゲット(例えば、Au、Al)に埋め込まれる場合があり、又は先端12は消耗品であるものとすることができる。同じく、本発明の開示の見地から当業者に理解されるように、先端処理及び/又は粒子のピックアップ/ドロップオフを強化するために他の物理的及び/又は環境的なパラメータを修正することができる(例えば、温度、圧力、化学作用、湿度)。
【0031】
本発明の開示のある一定の態様により、
図2及び3に示す構成要素の全てはAFMに含まれる。一部のそのような構成では、低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14は実質的に平坦であり、基板18を支持するステージに取り付けられる。同じく、本発明の開示のある一定の態様により、低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14はステージから取り外し可能であり、容易に取り替えることができるか又は容易に補充可能である。例えば、低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14は、容易に解除可能なクランプ又は磁気マウント(図示せず)でAFMに固定することができる。
【0032】
図3は、
図2に示すデブリ除去デバイス10の別の部分の断面図を示している。
図3に示すのは、一般的に
図2に示す低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14に隣接して配置される基板18である。また
図3は、基板18の面に形成されたトレンチ22に存在する場合がある複数の粒子20を示している。粒子20は、典型的にファンデルワールス近距離力よってトレンチ22の面に付着する。
図3では、粒子20を先端12に物理的に付着させるために、先端12を移動して基板18に隣接して位置決めすることができる。トレンチ22の底に達するように、
図2及び3に示すような先端12は、高アスペクト比の先端とすることができる。トレンチ22を
図3に示すが、粒子20は洗浄すべき別の構造上に付着するか又は見出される場合がある。
【0033】
図4は、
図2に示すデブリ除去デバイス10のその部分の断面図を示し、ここでは、低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14の面内に又は面に対して先端12を延長することにより、粒子20を先端12から移送することができ、低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14に埋め込むことができる。その後に、
図5の断面図に示す通り、先端12がもはや低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14と接触しないように先端12を後退させることができる。先端12は低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14から後退するか又は引き出されるので、以前先端12上にあった粒子20は、低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14と共に残る。
【0034】
本発明の開示のある一定の態様により、
図2-5に示すデバイス10は、デブリ除去の方法を実行するのに利用可能である。本発明の開示のある一定の態様は、本明細書で説明する方法の前に又はそれに従って他の粒子洗浄処理と併せて利用可能であることに注意しなければならない。ただ1つの先端12を説明して図に示すが、複数の先端を同時に使用して複数の構造から同時に粒子を除去することが可能であることにも注意しなければならない。これに加えて、複数の先端を本明細書に説明する方法で並行して同時に使用することができる。
【0035】
上述のデブリ除去方法は、
図3の基板18上に存在するように示す粒子20(すなわち、デブリの断片)の1又は2以上に隣接して先端12を位置決めする段階を含むことができる。本方法は、これも
図3に示すように粒子20を先端12に物理的に接着させる段階(静電気的に接着させる段階とは対照的)と共に、粒子20及び周囲の面と接触した時の先端12の何らかの可能な繰返し運動を更に含むことができる。粒子20の先端12への物理的接着の後に、本方法は、
図4に示すように、先端12を基板18から離す及び/又は引き出して、先端12を粒子20と共に低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14へ移動することにより、粒子20を基板18から除去する段階を含むことができる。
【0036】
本発明の開示のある一定の態様により、本方法は、先端12の少なくとも一部分にコーティング16を形成する段階を含むことができる。本発明の開示のある一定の態様により、コーティング16は、基板18の表面エネルギよりも低い表面エネルギを有するコーティング材料を有することができる。これに加えて又はこれに代えて、コーティング16は、基板18と接触する粒子20の面積よりも大きい面積を有するコーティング材料を有することができる。
【0037】
上記に加えて、本方法の一部の態様は、先端12が粒子又はデブリの他の断片(図示せず)に隣接し、そのために粒子又はデブリの他の断片が先端12に物理的に付着するように、基板18の少なくとも第2の位置へ先端12を移動する段階を更に含むことができる。粒子又はデブリの他の断片は、その後に、
図4に示すものと同様な方法で基板18から先端12を離すことによって基板18から除去することができる。
【0038】
デブリ(例えば、上述の粒子20)が基板18から除去された状態で、本発明の開示による一部の方法は、基板から離して位置決めされた材料の断片(例えば、上述の低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14)にデブリの断片を置く段階を含むことができる。
【0039】
先端12は大量のデブリを除去するために繰返し使用することができるので、本発明の開示のある一定の態様により、本方法は、低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14に先端12を押し込むことによってコーティング16を補充する段階を含むことができる。低エネルギ材料のパッチ又はリザーバからの低表面エネルギ材料は、時間と共に先端12のコーティング16内に発達している場合があるあらゆる孔又は間隙を被覆することができる。この補充段階は、低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14内に先端12を押し込んだ後に低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14内で先端12を横方向に移動する段階、先端12の面を擦りつける段階、又は先端12及び/又は低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14の物理的パラメータ(例えば、温度)を修正する段階のうちの1又は2以上を伴う場合がある。
【0040】
本発明の開示によるある一定の方法は、修復が完了した後に取り去られた材料が塊になって再度基板に強く接着する可能性を低減するために、修復の前に欠陥又は粒子の周りの小区域を低表面エネルギ材料に露出する段階を含むことができることに注意しなければならない。例えば、欠陥/粒子、及び欠陥周りの約1-2ミクロンの区域は、本発明の開示のある一定の態様に従ってPTFE又はFEPで予備被覆することができる。そのような場合に、低表面エネルギ材料で被覆した又は製造された先端12(例えば、PTFE又はFEP先端)を使用して、他の修復ツール(レーザ、電子ビーム)を利用している場合でも低表面エネルギ材料を修復区域に非常に豊富に付加することができる。先端12上のコーティング16に加えて、先端12の一部又は全部は、塩素化及びフッ素化炭素含有分子などを含むがこれに限定されない低エネルギ材料を有することができる。そのような材料の例は、PTFE又はFEPを含むことができる。これに加えて又はこれに代えて、金属及びその化合物のような他の材料を使用することができる。一部の代表的な例は、Cs、Ir、及びそれらの酸化物(及び塩化物、フッ化物など)を含む。これら2つの例示的元素金属は、それぞれ低い及び高い表面エネルギを有する比較的軟質の金属であり、従って、与えられた汚染、基板、及び周囲環境に対して最適な表面エネルギ勾配の最適化を表すものである。これに加えて又はこれに代えて、他の炭素系化合物を使用することができる。一部の代表的な例は、HDC又はDLCを含む。
【0041】
本発明の開示のある一定の態様により、本方法は、粒子を先端12の頂点からAFM片持ちアーム(図示せず)に向けて押しやるために低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14を使用する段階を含む。そのような粒子20の押上げは、先端12の頂点付近にスペ―スを空けてより多くの粒子20を物理的に接着させることができる。
【0042】
本発明の開示のある一定の態様により、先端12を低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14に見出される軟質材料のパレット内に交互に浸す、挿入する、及び/又は押し下げることにより、例えば、基板18のトレンチ22のような高アスペクト比構造からナノ機械加工のデブリを除去するように先端12が使用される。選択態様では、低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14の軟質材料は、こね粉のような又は展性の粘りを有することができる。この軟質材料は、一般的に、それ自身よりも先端12及び/又はデブリ材料(例えば、粒子20内の)に対して大きい接着力を有することができる。軟質材料はまた、ナノ機械加工のデブリ粒子20を先端12に静電気的に引き付ける極性特性を有するように選択することができる。例えば、低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14は、可動性界面活性剤を有することができる。
【0043】
上記に加えて、本発明の開示のある一定の態様により、先端12は、1又は2以上の誘電性面(すなわち、電気絶縁性の面)を含むことができる。これらの面を特定の環境条件(例えば、低湿度)で類似の誘電性面に擦りつけて、静電気的な面帯電によって粒子のピックアップを容易にすることができる。これに加えて、本発明の開示のある一定の態様により、コーティング16は、水素結合、化学反応、強化された面拡散を含むことができるがこれらに限定されない他の近距離機構によって粒子を引き付けることができる。
【0044】
低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14の軟質のパレット材料を貫通する(すなわち、凹ませる)のに十分強固で硬いあらゆる先端を使用することができる。従って、非常に高いアスペクトの先端形状(1:1よりも大きい)は、本発明の開示の範囲内である。先端が軟質の(一部の事例では粘着性の)材料を貫通するのに十分に硬い状態で、強固で可撓性のある高アスペクト比の先端が、より脆い及び/又は可撓性の小さい先端よりも一般的に選択される。従って、本発明の開示のある一定の態様により、トレンチ22又は基板18を損傷するか又は変化させることなく、基板18の修復トレンチ22の側面及びコーナの中に先端を擦りつけることができる。この作動の大雑把なマクロスケール類似物は、深い内径の内側を移動する硬いブリストルである。本発明の開示のある一定の態様により、以下でより詳細に説明することになるが、先端12は複数の剛性又は硬いナノフィブリルブリストルを有することができる。
図6に示すような一態様では、複数の剛性又は硬いナノフィブリルブリストル30の各ブリストルは、先端12から直線的に延びることができる。一態様では、複数の剛性又は硬いナノフィブリルブリストル30は、カーボンナノチューブ、金属ウィスカなどで形成することができる。以下でより詳細に説明することになるが、先端12は、これに加えて又はこれに代えて、複数の可撓性又は巻き付けフィブリルを有することができる。複数の可撓性又は巻き付けフィブリルは、例えば、ポリマー材料を使用して先端12上に形成することができる。他の材料及び構造も勿論意図している。
【0045】
本発明の開示のある一定の態様により、1又は2以上の粒子がピックアップされたか否かの感知は、粒子を感知する関心領域(ROI)の非接触AFM走査を使用することによって実行することができる。先端12は、次に、ターゲットにおける後処理まで再走査することなく、基板18から引き出すことができる。しかし、先端12によってピックアップされたデブリ材料の総質量も、先端の共振振動数の相対的シフトによりモニタすることができる。これに加えて、他の動力学を同じ機能に対して使用することができる。
【0046】
上述のようにかつ
図5に示すように粒子20を除去するために軟質材料内に窪みを作る代わりに、粒子20を除去するために低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14の中に先端12を向けることができる。従って、先端が偶然に粒子20をピックアップした場合に、粒子20は別の修復を行うことによって除去することができる。特に方向付けによって粒子20を堆積させるために異なる材料が使用される場合に、金箔のような軟質金属を利用することができる。
【0047】
上記に加えて、先端12を被覆するために及びコーティング16を形成するために、紫外(UV)光硬化材料又は同様に化学的非可逆反応を受けやすい他の材料を使用することができる。UV硬化の前に、その材料は基板18から粒子20をピックアップする。先端12が基板18から移送された状態で、先端12は、その材料特性を変化させて粒子20の先端12に対する接着力を低減し、かつ低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14内の材料に対する接着力を高めるUV光源に露出することができ、その後に粒子20を先端12から取り除いて低エネルギ材料のパッチ又はリザーバ14と共に置くことができる。粒子のピックアップ及び除去の選択性を強化するか又は可能にする他の非可逆過程も勿論意図している。
【0048】
本発明の開示のある一定の態様は、様々な利点を提供する。例えば、本発明の開示のある一定の態様は、非常に高いアスペクトのAFM先端形状(1:1よりも大きい)を使用して高アスペクトトレンチ構造からの能動的デブリ除去を可能にする。同じく、本発明の開示のある一定の態様は、非常に高いアスペクトの先端を使用すること、及びAFMオペレータが現在使用中のソフトウエア修復シーケンスに比較的軽微な調整を行うことに加えて、低表面エネルギ又は軟質材料パレットをAFMに取り付けることによって比較的容易に実行することができる。これに加えて、本発明の開示のある一定の態様により、他のいずれの方法でも洗浄することができないマスクの面から粒子を選択的に除去するのに使用することができる(ナノピンセットのように)新しいナノ機械加工ツールを実施することができる。これは、デブリが最初に非被覆先端で面から移動され、次に被覆先端でピックアップされるより従来的な修復と組み合わせることができる。
【0049】
低表面エネルギ材料は上述の局所的洗浄方法に使用されるが、一般的に、他の可能な変形も本発明の開示の範囲内であることに注意しなければならない。一般的に、これらの変形は、粒子20を先端12に引き付ける表面エネルギ勾配(すなわち、Gibbs自由エネルギ勾配)を作り出し、その後に他の処理によって逆転されて粒子20を先端12から放出することができる。
【0050】
本発明の開示の一態様は、高アスペクト構造内での機能を改善すると同時に下にある基板に対して機械的により攻撃的でない処理を可能にするために、AFM先端の作動端への少なくとも1つのナノフィブリルの取り付けを伴う。これらのフィブリルは、その機械的特性及びナノ粒子洗浄に向けた用途に応じて、2つの異なるラベル、すなわち、「硬い」フィブリルと「巻き付け」フィブリルに分類することができる。その違いを理解するために、
図7A及び7Bは、これら2つのタイプのフィブリル、すなわち、先端710に取り付けられた硬性フィブリル700と先端760に取り付けられた巻き付けフィブリル750とを示している。これに加えて、BitClean粒子洗浄で必要とされる2つの重要な過程:ナノ粒子の移動、汚れた面からナノ粒子の結合及び抽出を最初に理解しなければならない。これらの定められた最重要段階により、2つの異なるフィブリル間の機能的な相違点は以下のように与えられる。
【0051】
図7Aに関連して、硬性フィブリル700は、ナノ粒子を移動するためにフィブリル自身の機械的アクション及び機械的強度により多く依存する。従って、破断することなく首尾よく移動を達成するために、それはまた剪断及び曲げ強度及び弾性率にも依存する。これは、単結晶ダイヤモンドの強度及び硬さ(一般的にその硬度と呼ばれる)を超えるか又はそれを満たすことができる材料がほとんどないことを意味する。カーボンナノチューブ及びグラフェンは、共にダイヤモンドにも見出される炭素-炭素sp3混成軌道原子間結合(公知である最強結合の1つ)を使用するので、これらの中に入る。他の仮定される材料は、ダイヤモンドの機械的強度及び硬さを超える可能な特性を有するホウ素含有化学の特定相を含む。一般的に、多くの材料(ダイヤモンドを含む)は、その次元数が減少する時に本質的により強固にかつより硬くなる場合がある。これは、初めてナノ結晶性金属で観察されたが、分子シミュレーション及び単結晶ナノピラーに関連して同じく生じる一部の実験でも確認されている材料現象である。この挙動に対する1つの有力な仮説は、塑性変形の欠陥拡散機構に関連付けられる。より大きいスケールでは、これらの結晶欠陥(孔隙、転位など)は、バルク支配型動力学で拡散して相互作用する。より小さいスケールでは(材料及び温度のような全てが同じ場合)、これら欠陥の動きは、結晶のバルクにおけるよりも遥かに激しい面拡散型動力学に支配されるようになると考えられている。材料連続体近似の範囲内で考えると、この大きい面拡散速度は、結果的に低応力レベルでの材料の塑性変形(降伏とも呼ばれる)又は破損にさえ変わる。例えば、Tiの単結晶ナノピラーに関して、降伏応力は約8から14nmの範囲までは断面幅の減少と共に増加すること(部分的に、応力の方向及びナノピラーの結晶方位に依存して)が明らかにされたが、この範囲以下では、その挙動は、降伏応力が断面幅の減少と共に実際には減少する変曲点を体験する。
【0052】
図8Aから8Cは、AFM先端810の頂点又はその近くに取り付けられた単一硬性フィブリル800を使用してターゲット基板からナノ粒子を取り外して除去する例示的処理を示している。先端810は面に接近し、硬性フィブリルなしのAFM走査と同じ原理を使用して走査する。先端810の頂点に取り付けられた単一硬性フィブリルを考慮して、異なる作動パラメータが適用可能であることは当業者によって認められるであろう。粒子が位置付けられた状態で、先端810は、面830に向けて移動され、硬性フィブリル800は、一般的に
図8Bに示すように弾性変形する。一態様では、硬性フィブリル800の変形は、圧縮性、剪断性、曲げ性、引張性、又はその組合せとすることができ、面830からナノ粒子820を機械的に移動するのに使用することができる。ナノ粒子820が移動された状態で、硬性フィブリル800、基板840、及びナノ粒子820の面間の表面エネルギ及び面積の違いが、その後にナノ粒子820が基板面から取り出される時に硬性フィブリル820に付着するか否かを決定する。
【0053】
これに対して、硬性フィブリルのナノ粒子洗浄処理に独特の例外は、
図9Aから9Cに示すように、2又は3以上の硬性フィブリルが、ナノ粒子の直径よりも小さい(しかし、それらの剪断及び曲げ弾性率及び幅に対する長さの比によって決定されるような硬性フィブリルに対する弾性変形限界より小さくはない)距離で先端面に強固に取り付けられる場合である。2又は3以上の硬性フィブリル900a、900bがナノ粒子の直径よりも小さい距離で先端910に取り付けられた態様により、そのシーケンスは、
図8Aから8Cに関連して上述したような単一硬性フィブリルと非常に似通っている。その相違点は、一般的に
図9Bに示すように、ナノ粒子920の周りにより歪んだ又は変形した硬性フィブリル900a、900bが存在し、それによって1又は2以上の硬性フィブリル900a、900bが定められた洗浄シナリオに対してナノ粒子920を転移するのに必要とされるような方法(力及び印加する力の角度)でナノ粒子に衝撃を与える確率を増大させるという観察に始まる。転移段階の後に、多フィブリル先端910は、粒子920が付着する(すなわち、濡れる)より多くの潜在的面積を有することができる。先端910が基板から引き出される時に、一般的に
図9Cに示すように、フィブリルの長さ及び間隔が適正範囲にある場合は別の相違点が現れる。この構成に対するナノ粒子920は、硬いナノフィブリル900a、900b間の空間内に機械的に捕捉される可能性を有し、それによって多フィブリル900a、900bへの接着力の増大と、基板面930からナノ粒子920を取り出す確率の増大とをもたらすことができる。同様に、別の面にナノ粒子920を置くことが望ましい場合に、先端910を面に再接近させて、硬性フィブリル900a、900bにナノ粒子920の機械的な捕捉を緩めるように再び応力を印加することができ、それによってナノ粒子920を望ましい面位置に置く確率が高まる。上述のように、これはフィブリル900a、900bの長さ及び間隔が適正範囲にあることを仮定しており、1次のモデルでは、これらの範囲は、ナノ粒子920(砕けることのない強固なナノ粒子を仮定している)の最小幅よりも小さいが、フィブリル900a、900bがその剪断及び曲げ強度の限界(フィブリルの相対的な長さにも依存し、フィブリル取り付けの接着強度はこの限界よりも小さい)を超えて曲がることのないほどに大きいフィブリル間隔を含み、それは本発明の開示の見地から当業者によって認められるであろう。選択態様では、2又は3以上の硬性フィブリルは、様々な等しくない長さを有することができる。
【0054】
硬性フィブリルとは何であるか(巻き付けフィブリルに対立するものとして)を定めるために、特定の材料及びナノ構造に対して非等方的なバネ定数(有効剪断及び曲げ弾性率に関連付けられる)を定めることができなければならない。これは実際に行うことが非常に困難であるので、本明細書での目的に対して、これらの特性は引張(別名ヤングの)弾性率及び強度にほぼ比例すると仮定する。引張弾性率は、材料が弾性的な(すなわち、バネ様の)機械的特性を示す応力範囲内での材料剛性の可能な尺度である。それは、歪みで割った応力として与えられ、従って、応力と同じ単位をもたらす(歪みは初期寸法に対する最終寸法の変形率として定められるので)。引張強度は具体的に剛性を定めないが、フィブリルは、切れて追加の汚れを基板面に生成することなくナノ粒子を移動するのに十分な力を印加することができなければならないので、引張強度も重要である。強度も応力の単位(パスカル)で与えられる。ダイヤモンドに関して、その固有の引張弾性率は、約1.22テラパスカル(TPa)で引張強度は8.7から16.5ギガパスカル(GPa)であり、かつ本明細書での剛性及び強度に対する一般的な基準尺度を与える(引張弾性率に関して0.5TPaのタングステンに対する値の範囲に近づき、又はこれらの値を超える)。カーボンナノチューブは、その性質上、本質的な存在ではないので、その引張弾性率は個々の分子及びその特性に独特である(例えば、単層又は多層、それぞれSWNT又はMWNT、鏡像異性など)。SWNTに関して、その引張弾性率は、1から5TPaであり、その引張強度は13から53GPaに及ぶ場合がある。この範囲にある別の部類の材料と比較するために、BxNy(様々な化学量論組成の窒化ホウ素化合物)は、0.4から0.9TPaに及ぶ引張弾性率を有する。巻き付けフィブリルと硬性フィブリルを区別してその間の境界を定めるために、最も適切で適用可能な標準的機械的材料特性は降伏応力である。硬性フィブリルは、0.5GPa(1GPa=1x109N/m2)よりも大きいか又はそれに等しい降伏応力を有する材料としてここでは定める。従って、消去法により、0.5GPaよりも小さい降伏応力を有するあらゆる材料は、巻き付けフィブリルと見なすことになる。特にナノスケールでは、多くの材料は非等方的な機械的特性を示す場合があるので、降伏応力は、フィブリルの主要な(すなわち、最も長い)寸法を横切る剪断応力(又は同等な曲げ応力)に対して明示することが重要であるということに注意しなければならない。
【0055】
巻き付けフィブリルは、硬性フィブリルとは対照的に、十分に高い(同等の)引張強度と共に遥かに小さいバネ定数を有することになる。巻き付けフィブリルの場合に、適用方法の違いのために、基板面からナノ粒子を移動する及び取り出すために引張力が印加されるので、引張強度は直接的にその性能に関連付けられる。しかし、文献に引用されるほとんどの機械的特性は、原則として、単分子フィブリル(あるいは、単分子スケールに近づくナノスケールフィブリル)に対する引張特性にはほとんど完全に無関係なバルク材料に関することに注意しなければならない。例えば、PTFEはバルク材料では非常に低い引張弾性率及び強度を有するが(それぞれ、0.5GPa及び一部の事例では<<20MPa)、分子の骨格が炭素-炭素sp-混成軌道化学結合から構成されるので、その単分子の引張強度は、多くの他の材料、カーボンナノチューブ、及びグラフェン(これらの全ては、同種の化学結合を含む)よりもダイヤモンドに匹敵することができるはずである。バルク材料の機械的特性は、その近傍と相互作用する単一分子の鎖の振舞いにより関連するので、それは凝集力と単分子の曲げ及び剪断弾性率の両方と比較することができるべきである。これらのタイプの材料(ポリマー)は塑性変形に関連付けられた機械的特性の良い例になるので、それらの分子は、高い可撓性を示すより拡散性の熱的挙動に従って変形することが予期される。硬性フィブリルに対する巨視的な例がガラスの細長い小片であるならば、巻き付けフィブリルの相当する例は、薄い炭素繊維である(後者は、高い引張強度と共にマクロスケールで高い可撓性を有するように見える)。
【0056】
図10Aから10Cは、本発明の開示の一態様に従ってAFM先端1010の先端の近くに又は先端に取り付けられた巻き付け(可撓性)ナノフィブリル1000を使用するナノ粒子洗浄シーケンスを示している。巻き付け型フィブリル1000を変形するのに圧縮応力は一切必要とされないので、近距離表面エネルギ力によってフィブリル1000がナノ粒子面に付着することが可能になる程にフィブリル1000をナノ粒子面に接近させるために、先端1010は面1030の極めて近くに近づけられる。フィブリル1000、ナノ粒子1020、及び基板面の相対的な表面エネルギは、フィブリルが選択的にナノ粒子面に付着するようにターゲット化されるので、フィブリル1000がフィブリル長さに十分な弛みを有して接触した状態で、フィブリル1000が粒子1020の周りを捕捉することを可能にするために時間及び印加される撹拌エネルギ(一部の事例では機械的及び/又は熱的な)だけが必要である。より剛性の先端からの機械的なエネルギ(フィブリル1000を取り付けた先端1010によるか又は前の処理通過における別の先端によるかを問わず)は、最初は粒子1120を転移するために印加することができる。フィブリル1000がナノ粒子1020に十分に巻き付けられた状態で、一般的に
図10Bに示すように、先端1010は、次に基板面1030から引き出される。このフェーズ中に、フィブリル1000のナノ粒子1020への接着力(ナノ粒子の周りに巻き付いて絡まるほど強化される)、フィブリル1000の引張強度、及びそのAFM先端1010に対する接着力の全てがナノ粒子1020の基板1040に対する接着力より大きい場合に、ナノ粒子1020は、一般的に
図10Cに示すように、基板1040から引き出されることになる。
【0057】
ナノ(又は分子)スケール巻き付けフィブリルを製造するのに使用可能な材料の一部の例は、RNA/DNA、アクチン、アミロイドのナノ構造、及びイオノマーを含む。RNA(リボ拡散)及びDNA(デオキシリボ核酸)は、類似の化学的性質、調製、及び取扱い方法を示すので一緒に説明する。最近、俗に「DNA折り紙」として公知の技術に関して重要な進歩を達成され、それによってDNA分子を互いにリンクする方法の精密な化学工学が可能になっている。これらの又は類似の化学的性質に適用される類似の処理は、長いポリマーの鎖状分子が分離して列を成して互いにリンクされることを可能にする。最も一般的な方法があるとすれば、特定のDNA配列は、化学的に作り出されるか又は公知の一本ストランドウイルスDNA配列から商業的に得られることになり、適切に化学的に機能化された(化学力顕微鏡法の実施で行われるように)AFM先端1110は、後者が設計通りに結合するようなDNA配列を含有する水溶液に浸されるか又は面に対するAFM接触状態に置かれる。先端1110は、次に、
図11Aから11Dに示すように、基板面1130からの粒子除去のために機能化することができる。図で左から右へ移ると、機能化された先端1110は、
図11Aに示すように、粒子1120及び基板面1130に接近するように(DNAストランド1100の長さよりも近くに)移動されるか又は起動することができる。先端1110が
図11Bに示すように転移された粒子1120の近くにある間に、活性化する化学反応(商業的にも入手可能なヘルパーDNAストランドか又はマグネシウム塩のような他のイオン性活性化材料)と共により高温を印加することができる(恐らく~90℃)。次に環境は冷却されて(恐らく~20℃まで)、ストランド1100における狙った配列が
図11Cに示すように接続されることを可能にすることができる(結合するストランド1100は、分子の両自由端にある)。ナノ粒子1120が確実に付着する点にDNAコーティング1100が凝固した状態で、次に
図11Dに示すように基板面1130から先端1110を引き出すことができる。これらの小スケールでは、ナノ粒子と先端間のこの結合が機械的であると見なすことができるが、粒子が分子スケールの場合に、立体結合として説明することができる。立体効果は、十分に近い原子の反発力により生成することができる。原子又は分子は、全ての可能な拡散方向に原子に取り囲まれている場合に、実質的に捕捉され、その周囲にあるあらゆる他の原子又は分子と化学的に又は物理的に相互作用することができない。本発明の開示の見地から当業者には理解されることであるが、RNAも同様に操作することができる。
【0058】
次に可能な巻き付けナノフィブリルの候補は、真核細胞中にフィラメントを形成する類似した球状の多機能タンパク質の族であり、その1つはアクチンとして公知である。アクチンは骨組み、係止、機械的支持、及び結合のために細胞内部に使用され、これは、それが高度に適応可能で十分に強固なタンパク質フィラメントであることを示している。それは、上述のDNA折り紙関連処理と非常に似通った方法で適用され、かつ使用されることになる。実験は、このタンパク質が6.7x4.0x3.7nmの寸法の分子に結晶化可能であることを示している。
【0059】
ある一定の海洋生物(フジツボ、藻類、海洋扁形動物など)が広範囲の基質材料に擬生化学的に(又は直接的に)強固に結合可能である機構に関する研究は、別の巻き付けフィブリル候補を提供する。これらの海洋生物は、一般的に略語DOPA(3、4-ジヒドロキシフェニルアラニン)で呼ばれる材料を分泌し、それは機能性アミロイドのナノ構造でこれらの基質面に結合する。アミロイド分子の接着特性は、フィブリル軸に対して垂直に向けられて高密度の水素結合網によって結合されたβストランドに起因する。この結合網は、多くの場合に何千もの分子単位にわたって連続的に延びる超分子βシートをもたらす。そのようなフィブリル状ナノ構造は、水中接着、環境悪化に対する耐性、自己重合による自己修復、及び広大なフィブリル面積を含むいくつかの利点を有する。先に説明したように、広大なフィブリル面積は、フジツボの接着性プラークにおける接触面積の増加により接着力を高める。アミロイドのナノ構造はまた、一般的なアミロイド分子間βシート構造に関連付けられた凝集強度及びアミロイドコア外部の接着性残基に関連付けられた接着強度のような可能な機械的利点も有する。これらの特性により、アミロイド構造は広範囲の用途に関して有望な新世代の生体発想型接着剤の基礎とされる。分子自己組織化の利用の進歩により、ナノ技術上の応用のために合成アミロイド及びアミロイド類似性接着剤の生成が可能となったが、部分的には、基礎を成す生物学的設計原理を理解する限界のために、完全に合理的な設計はまだ実験的に示されていない。
【0060】
巻き付けフィブリル材料の最後の例は、イオノマーとして公知のポリマーの部類である。簡潔には、これらは、分子鎖に沿ってターゲットとされたイオン荷電部位に強固に結合する長い熱可塑性ポリマーである。イオノマー化学の一般的な例は、ポリ(エチレン-コ-メタクリル酸)である。本発明の開示の態様により、イオノマーを走査熱プローブの面に対して機能化することができる。ナノ粒子を洗浄する処理は、その場合に、特に走査熱プローブに使用される時に水性の環境が必ずしも必要とされないことを除いて、上述のDNA折り紙処理に関して示したものと非常に似通っている。イオノマー機能化コーティングも、水性(又は類似の溶媒)環境内で選択的共役結合のためにイオン性界面活性剤と対にすることができる。これらの例(特にDNA/RNA及びアクチン)は、細胞のような生体構造内部でのナノ粒子状エンティティの除去及び操作に関して高度に生体適合性であることに言及しなければならない。
【0061】
例えば、使用可能な一変形は、高表面エネルギ先端コーティングを使用することを含む。別の変形は、粒子を低表面エネルギ材料で前処理して粒子を解離させ、次に粒子を高表面エネルギ先端コーティング(一部の事例では異なる先端上の)と接触させる段階を含む。更に別の変形は、先端面コーティングと粒子面との間で起こる化学反応に対応する化学エネルギ勾配を利用してその2つを結合する段階を含む。これは、先端が消耗するまで実行されるか又は何らかの他の処理で逆転させることができる。
【0062】
本発明の開示の更に他の態様により、接着剤又は粘着性コーティングが、上述のファクタのうちの1又は2以上と組み合わせて使用される。同じく、面粗度又は小スケール(例えば、ナノスケール)のテクスチャは、粒子洗浄処理効率を最大にするように設計することができる。
【0063】
上記に加えて、典型的には、モップと類似して粒子20を機械的に巻き込むことができるフィブリルを先端12が含む場合に、機械的結合を使用することができる。本発明の開示のある一定の態様による機械的交絡は、表面エネルギ又は接触又は環境に対する化学変化によって駆動される及び/又は強化される。
【0064】
本発明の開示の更に他の態様により、先端12は、分子ピンセット(すなわち、分子クリップ)で被覆することができる。これらのピンセットは、ゲスト(例えば、上述の粒子20)を結び付けることができる開放キャビティを有する非環状化合物を有することができる。ピンセットの開放キャビティは、典型的には、水素結合、金属配位、疎水力、ファンデルワールス力、π-π相互作用、及び/又は静電効果を含む非共有結合を使用してゲストを結合する。これらのピンセットは、ゲスト分子を結合させる2つのアームが一般的には一端でのみ結合していることを除いて、大環状分子受容体に時に類似している。
【0065】
上記に加えて、拡散接合又はカシミール効果を使用して先端によって粒子20を除去することができる。同じく、
図6に示す本発明の開示の態様のように、ブリストル又はフィブリル30を先端12の端部に取り付けることができる。戦略的な配置又はランダムな配置に関わらず、これらのブリストル又はフィブリル30は、いくつかの方法で局所的な清浄度を高めることができる。例えば、関連の面積の増加は、粒子に対する面(近距離)結合に利用することができる。
【0066】
本発明の開示の態様の一部により、フィブリル30は、選択的に(例えば、面又は環境のいずれかにより)粒子20の周りに巻き付いて粒子20と交絡し、面接触を最大にする分子であるように設計される。同じく、典型的には、硬いブリストル30が先端12に取り付けられた時に、本発明の開示のある一定の態様に従って粒子20の転移が発生する。しかし、フィブリル30はまた、粒子20と交絡し、粒子20を引っ張ることによって機械的に粒子20を転移することができる。対照的に、比較的剛性のブリストル30は、一般的に、先端12が到達困難である裂け目の中に入り込むことを可能にする。その場合に、ブリストル30の衝撃変形応力、粒子20を跳ね返すための先端12の面改質、又は何らかの組合せにより、粒子20を転移する。これに加えて、本発明の開示のある一定の態様は、粒子20を先端12に機械的に結合させる。フィブリルが先端12上にある場合に、フィブリル全体又は摩耗したフィブリルのうちの1又は2以上の交絡が生じる場合がある。ブリストルが先端12上にある場合に、(弾性的に)応力を印加されたブリストル間に粒子20を押し込むことができる。
【0067】
本発明の開示の更に他の態様により、デブリ除去の方法は、局所的な洗浄を容易にするためにその環境を変える段階を含む。例えば、気体又は液体の媒質を導入することができ、又は化学的及び/又は物理特性(例えば、圧力、温度、及び湿度)を修正することができる。
【0068】
上述の構成要素に加えて、本発明の開示のある一定の態様は、除去すべきデブリを識別する画像認識システムを含む。従って、自動デブリ除去デバイスも本発明の開示の範囲にある。
【0069】
本発明の開示のある一定の態様により、複雑な形状の内側輪郭、壁、及び/又は底部への望ましくない損傷を回避するために比較的柔らかい洗浄先端が使用される。適切である場合に、より強い力を使用して比較的柔らかい先端を面と遥かに強く接触させて、同時に走査速度も増大させる。
【0070】
低表面エネルギ材料に露出された及び/又は低表面エネルギ材料で被覆した先端は、ナノレベル構造のデブリ除去(洗浄)の他の目的に使用することができることにも注意しなければならない。例えば、そのような先端はまた、本発明の開示のある一定の態様により、化学反応を閉じ込めるためにミクロンレベル又はより小さいデバイス(MEMS/NEMSのような)を定期的に潤滑化するのに使用することができる。
【0071】
この方法は、用途の要件に応じてかつ基板面から低エネルギ材料のパッチ又はリザーバへの粒子の差別的接着力を更に高めるために様々な環境で実行することができる。これらの環境は、真空、様々な組成及び圧力のシールドガス、及び可変組成の流体(変化するイオン強度及び/又はpHを有する流体を含む)を含むことができるがこれらに限定されない。
【0072】
基板、先端、デブリ、及び軟質パッチ間のGibbs自由エネルギ勾配に影響を与える多くの他ファクタが存在するので、これらの他ファクタを操作して基板から軟質パッチへ粒子を移動する下り勾配を生成することができる。1つのファクタは温度である。望ましい勾配を生成するために、基板及び軟質パッチ材料の温度と共に走査熱プローブを使用することが可能であると考えられる。Gibbs自由エネルギの基本式は、デブリがより高い相対温度の面(式中のT*S項が負であるため)に連続的に接触する場合に、ΔG<0の可能な駆動力を与えることができることを示している。高温下で変形したロッドのΔGの式から、別のファクタは先端に加わる応力であり、これがデブリの接着力を潜在的に増大することも見ることができる。これは、外部ハードウエア(すなわち、異なる熱膨張係数を有する生体材料ストリップ)により、又はナノ機械加工又は先端破損に関する閾値未満での基板に対する圧縮又は剪断によって達成することができる。先端材料の変形はまた、特にそれが粗面化されている(又はナノブリストルで覆われている)場合に及び/又は面に高い微細構造欠陥(すなわち、空隙)密度を有する場合にデブリの機械的捕捉機構を提供することができる。以下に議論する最後のファクタは、化学ポテンシャルエネルギであろう。デブリ材料を先端に結合させるための選択的化学反応を生成するために、先端及び/又は軟質パッチ面の化学状態を変えることが可能である。これらの化学結合は、本質的に共有結合又はイオン結合とすることができる(sp3混成軌道共有結合が最も強い)。デブリは、ターゲット化されたロック・アンド・キー型化学結合の化学構造対のうちの1つの成分で被覆することができる。先端(又は別の先端)は、他方の化学薬品で被覆され、デブリ面と接触させてデブリを先端に結合させることができる。ロック・アンド・キー型化学構造対の1つの非限定的な例は、化学力顕微鏡(CFM)実験で多くの場合に使用されるストレプトアビジン及びビオチンである。イオン結合を使用する別の例は、デブリ及び先端面上の分子の露出した極性端が反対荷電である2つの界面活性剤の極性分子化学構造であろう。欠乏した溶媒和及び立体化学的に相互作用するコーティング又は面を含む面化学相互作用接着機構に対する追加の関連態様が存在する。先端面に対する化学変化はまた、その面エネルギ、並びにデブリを取り囲み(表面積dAを最大にするために)かつそれを先端面でそれに結合するために機械的に捕捉することができる相変化(特に流体から固体への)に対するターゲット化された変化を可能にすると考えられる。これらの化学変化(先端材料面又は何らかの中間コーティングに対するものかに関わらず)は、熱(温度)、紫外線、及び荷電粒子ビームのような外部エネルギ源によって引き起こされる場合がある。
【0073】
本発明の開示の多くの特徴及び利点は詳細な明細書から明らかであり、従って、本発明の真の精神及び範囲に入る本発明の全てのそのような特徴及び利点を網羅するように添付の特許請求の範囲によって意図している。更に、本発明の開示に鑑みて多くの修正及び変形が当業者には容易に明らかであることになるので、図示かつ説明した構成及び作動の通りに本発明を限定することは望ましくなく、従って、全ての適切な修正及び均等物を用いることができ、本発明の範囲に該当するものである。
なお、好ましい構成態様として、本発明を次のように構成することもできる。
1. 基板の面からデブリを除去するためのシステムであって、
片持ちアームと、
近位部分と遠位部分とを有する先端であって、該先端の該近位部分で前記片持ちアームによって支持される前記先端と、
を含み、
少なくとも1つのナノフィブリルが、前記先端の前記遠位部分から延び、該ナノフィブリルは、前記デブリ又は前記基板の前記面に対して又はその周りで弾性的に変形するように構成される、
ことを特徴とするシステム。
2. 前記基板の前記面は、ナノ機械加工をその上に行うことができる面であることを特徴とする上記1に記載のシステム。
3. 前記基板は、フォトリソグラフィマスク又は半導体基板/ウェーハであることを特徴とする上記1に記載のシステム。
4. 前記基板は、膜、ペリクルフィルム、マイクロ電子機械システム(MEMS)、又はナノ電子機械システム(NEMS)であることを特徴とする上記1に記載のシステム。
5. 前記少なくとも1つのナノフィブリルは、硬性フィブリルであり、かつ0.5GPa以上の降伏応力を有することを特徴とする上記1に記載のシステム。
6. 前記少なくとも1つのナノフィブリルは、巻き付けフィブリルであり、かつ0.5GPaよりも小さい降伏応力を有することを特徴とする上記1に記載のシステム。
7. 前記巻き付けフィブリルは、デオキシリボ核酸、リボ核酸、アクチン、アミロイドナノ構造、及びイオノマーのうちの1又は2以上で作られることを特徴とする上記6に記載のシステム。
8. 前記巻き付けフィブリルは、水溶液に前記先端の少なくとも一部分を浸すこと、又はデオキシリボ核酸を含有する面に該先端の少なくともその部分を接触させることによって形成されることを特徴とする上記6に記載のシステム。
9. 前記デブリは、複数のナノ粒子を含むことを特徴とする上記1に記載のシステム。
10. 前記少なくとも1つのナノフィブリルは、少なくとも2つの硬性フィブリルを含み、該2つの硬性フィブリルは、該2つの硬性フィブリルが前記デブリの直径よりも小さい距離で離間するように前記先端に取り付けられることを特徴とする上記1に記載のシステム。
11. 前記少なくとも2つの硬性フィブリルは、0.5GPa以上の降伏応力を有することを特徴とする上記11に記載のシステム。
12. 前記少なくとも2つの硬性フィブリルは、等しくない長さを有することを特徴とする上記11に記載のシステム。
13. 前記少なくとも1つのナノフィブリルは、少なくとも2つの巻き付けフィブリルを含み、該少なくとも2つの巻き付けフィブリルは、少なくとも1つのナノ粒子の周りに巻き付くように構成されることを特徴とする上記1に記載のシステム。
14. 前記少なくとも2つの巻き付けフィブリルは、0.5GPaよりも小さい降伏応力を有することを特徴とする上記13に記載のシステム。
15. 前記先端は、前記デブリを結び付けるように構成された開放キャビティを有する非環状化合物を含む分子ピンセットで被覆されることを特徴とする上記1に記載のシステム。
16. 前記デブリは、ナノ粒子を含むことを特徴とする上記1に記載のシステム。
17. 前記分子ピンセットは、非共有結合、金属配位、疎水力、ファンデルワールス力、π-π相互作用、及び静電効果のうちの1又は2以上を通じてナノ粒子を結び付けることを特徴とする上記16に記載のシステム。
18. 前記少なくとも1つのナノフィブリルは、硬性及び巻き付けフィブリルの両方の組合せを含むことを特徴とする上記1に記載のシステム。
【符号の説明】
【0074】
1 デブリ除去デバイス
2 粒子
3 基板
4 軟質パッチ
5 先端