(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】磁気ストライプを読み取る磁気読み取りセンサ装置及び磁気読み取りセンサを製造する方法
(51)【国際特許分類】
G01R 33/09 20060101AFI20240605BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20240605BHJP
G06K 7/08 20060101ALI20240605BHJP
G11B 5/02 20060101ALI20240605BHJP
G11B 5/39 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
G01R33/09
G01R33/02 U
G01R33/02 V
G06K7/08 070
G11B5/02 U
G11B5/39
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019220019
(22)【出願日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-20
(32)【優先日】2018-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】524154452
【氏名又は名称】アレグロ・マイクロシステムズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】アリ・アラウィ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・チルドレス
(72)【発明者】
【氏名】アテシュ・グルカン
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-275309(JP,A)
【文献】特開2009-168796(JP,A)
【文献】特開平07-006340(JP,A)
【文献】特開2013-197524(JP,A)
【文献】特開2005-108420(JP,A)
【文献】特開2017-173123(JP,A)
【文献】特開2008-134181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/00-33/26
G06K 7/08
G11B 5/02
G11B 5/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ストライプを読み取る磁気読み取り(MR)センサ装置を備える、パッケージ化されたMRセンサ装置であって、
前記MRセンサ装置が、ウエハ上に設けられた基板と、配線工程(BEOL)相互接続層と、前記BEOL相互接続層内に埋め込まれた複数の磁気抵抗センサ素子とを備え、
前記MRセンサ装置が、少なくとも3GPaのビッカース硬さを有する保護層を備え、前記保護層が前記BEOL相互接続層に直接載っていて、
前記パッケージ化されたMRセンサ装置が、パッケージ基板にさらに相互接続されていて、前記パッケージ化されたMRセンサ装置が、前記パッケージ基板の天頂面上に、面取りされた外形を備え、前記面取りされた外形が、前記MRセンサ装置の幅と同一の幅を持つ平坦部分を備える、パッケージ化されたMRセンサ装置。
【請求項2】
前記保護層は、1より小さな摩擦係数μ、又は0.5より小さな摩擦係数μを持つ、請求項1に記載のパッケージ化されたMRセンサ装置。
【請求項3】
前記保護層の摩耗率は、10
-7mm
3N
-1m
-1未満である、請求項1に記載のパッケージ化されたMRセンサ装置。
【請求項4】
前記保護層は、DLC層を備える、請求項1に記載のパッケージ化されたMRセンサ装置。
【請求項5】
前記MRセンサ装置と前記パッケージ基板との間の相互接続を提供するはんだボールを備える、請求項1に記載のパッケージ化されたMRセンサ装置。
【請求項6】
前記BEOL相互接続層は、前記基板と前記保護層との間にあり、
前記MRセンサ装置は、ビアと前記はんだボールとが、MRセンサダイと前記パッケージ基板との間の相互接続を提供するように基板を貫通する前記ビアを備える、請求項5に記載のパッケージ化されたMRセンサ装置。
【請求項7】
磁束集中器をさらに備える、請求項1に記載のパッケージ化されたMRセンサ装置。
【請求項8】
パッケージ化されたMRセンサ装置を製造する方法であって、前記パッケージ化されたMRセンサ装置が、
ウエハ上に設けられた基板と、配線工程(BEOL)相互接続層と、前記BEOL相互接続層内に埋め込まれた複数の磁気抵抗センサ素子とを備えるMRセンサ装置を備え、
前記MRセンサ装置が、少なくとも3GPaのビッカース硬さを有する保護層を備え、前記保護層が前記BEOL相互接続層に直接載っていて、
前記パッケージ化されたMRセンサ装置が、パッケージ基板にさらに相互接続されていて、
前記パッケージ化されたMRセンサ装置が、前記パッケージ基板の天頂面上に、面取りされた外形を備え、前記面取りされた外形が、前記MRセンサ装置の幅と同一の幅を持つ平坦部分を備える、前記パッケージ化されたMRセンサ装置を製造する方法が、
ウエハを用意することと、
前記ウエハ上に基板を形成することと、
前記基板上に少なくとも1つの配線工程(BEOL)相互接続層を形成することと、
少なくとも1つの前記BEOL相互接続層内に埋め込まれた複数の磁気抵抗センサ素子を備える少なくとも1つのMRセンサ回路を形成することと、
少なくとも3GPaのビッカース硬さを持つ保護塗布層を形成することと
を備える方法。
【請求項9】
前記保護層の厚みは、1nmと1μmとの間にある、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
個々のダイスを得るべく前記ウエハをダイシングすることをさらに備え、前記MRセンサ装置の各ダイは前記MRセンサ回路を備え、
少なくとも1つのダイスをパッケージ基板に配置することと、
1つの前記ダイスのBEOL相互接続層と前記パッケージ基板との間に相互接続を提供することと
を備える、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの前記BEOL相互接続層を前記基板上に形成し、前記保護塗布層は、少なくとも1つの前記BEOL相互接続層上に形成し、
前記相互接続を提供することは、はんだボールをMRセンサ装置に形成することを備え、 前記相互接続を提供することは、貫通シリコンビアと前記はんだボールとが、前記MRセンサ装置のダイと前記パッケージ基板との間の相互接続を提供するように、前記貫通シリコンビアを前記基板に提供することをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気ストライプを読み取るための、磁気抵抗センサ素子を備える磁気ストライプ読み取り装置に関する。本開示はさらに、磁気ストライプ読み取り装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ストライプは、典型的には、クレジットカード、デビットカード、ギフトカード、ホテルのキーカード、メンバーシップカード、ロイヤルティカードに見られる。これらの磁気ストライプは、通常カード所有者に関連する情報を保存するために使用される。データは、標準の国際仕様又はカスタムプロトコルを使用して、これらの磁気ストライプに保存可能である。
【0003】
磁気ストライプは、磁化を切り替えることによりプログラム可能な多数の小さな磁気要素で構成される。通常、クレジットカードは、トラックに応じて1インチ当たり75ビット又は1インチあたり210ビットを格納可能である。1インチ当たりのビット数は、ストライプ上のトラックを構成する磁気要素の幅(又はピッチ)に関連する。磁気ストライプは、カセットやハードドライブのような長期保存デバイスにも見られる。
【0004】
図1は、磁気ストライプの各磁気素子102によって生成される磁場101がどのように伝播するかを示す磁気ストライプ100の断面図である。
【0005】
典型的には、磁気ストライプから情報を抽出するために、磁気リーダヘッド(MRH)が使用される。MRHは通常、通常は銅で作られたコイル、通常は鉄(Fe)の積層シートで作られたフェライトコア、及びアルミニウムハウジングで構成される。MRHは、磁気抵抗センサに基づいてもよい。
【0006】
磁気素子102の小さなサイズのため、各磁石によって生成される磁場を選択的に感知するために、磁気リーダを磁気ストライプに非常に近づける必要がある。これを解像度という。高解像度の磁気読み取りセンサは全ての磁場をピックアップするが、低解像度の磁気読み取りセンサはストライプ上の単数より多い磁石要素から放出される磁場の合計をピックアップする。
【0007】
ISO 7811-4規格によれば、クレジットカード番号、有効期限及びカード所有者のフルネームを保持するトラック1はインチ当たり210ビットのトラックであり、センサはストライプから60μmである必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
磁気読み取りセンサと磁気ストリップ100との間の距離が磁気素子102のピッチよりも大きい場合、磁気読み取りセンサは、磁気ストリップ100上の各磁気素子102によって生成された磁界101を拾うことができない場合がある。
【0009】
磁気読み取りセンサと磁気ストライプとの間の距離を最小化すると、信号振幅が増加し、各磁気素子102の磁場間の重畳(又はクロストーク)が減少する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、磁気ストライプを読み取るための磁気読み取り(MR)センサ装置に関し、MRセンサ装置は、ウエハ上に設けられた基板と、配線工程(BEOL)相互接続層と、BEOL相互接続層内に埋め込まれた複数の磁気抵抗素子とを備える。MRセンサ装置は、少なくとも3GPaのビッカース硬さを有する保護層を備える。
【0011】
本開示は、MRセンサデバイス1を製造する方法に関する。この方法は、以下を備える。
ウエハを用意することと、
ウエハ上に基板を形成することと、
基板上に少なくとも1つの配線工程(BEOL)相互接続層を形成することと、
少なくとも1つのBEOL相互接続層内に埋め込まれた複数の磁気抵抗センサ素子を備える少なくとも1つのMRセンサ回路を形成することである。
【0012】
好ましくは、MRセンサ装置は、保護層の形成前に形成され、試験される。
【0013】
保護層はDLC(すなわちダイヤモンドライクカーボン)層を備える。
【0014】
一実施形態では、保護層は、1より小さく、好ましくは0.5より小さな摩擦係数μを持つ。
【0015】
一実施形態では、保護層の摩耗率は、10-7mm3N-1m-1未満である。
【0016】
MRセンサ装置は、磁気ストライプの表面に20μm又はそれ以下の距離で近づけられる。これにより、磁気ストライプは、増加した解像度で読み取れる。保護層は、MRセンサ装置の寿命と、クレジットカードの100万回超のスワイプの標準試験とを長持ちさせられる。
【0017】
別の実施形態において、MRセンサ装置のパッケージは、面取りされた外形を備える。面取りされた外形により、MRセンサ装置を、カードを容易にスワイプできるようになる機械的セットアップに統合できるようになる。例えば、パッケージのエポキシに当てないために、面取りされたエッジを導入する。
【0018】
本発明は、例として与えられ、図面によって示される実施形態の説明の助けにより、よりよく理解されるであろう。図面は以下の内容である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、生成された磁場を示す磁気ストライプの断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態による、磁気抵抗センサ素子を備えるMRセンサ装置の部分的及び概略的な表現を示す図である。
【
図3】
図3は、磁気抵抗センサ素子の可能な構成を示す。
【
図4】
図4は、一実施形態による、パッケージ基板に相互接続されたMRセンサデバイスを示す。
【
図5】
図5は、MRセンサ装置とパッケージ基板との間の従来のワイヤボンディングを示す。
【
図6】
図6は、別の実施形態によるMRセンサ装置を示す。
【
図7】
図7は、別の実施形態によるMRセンサ装置を示す。
【
図8】一実施形態による、MRセンサ装置デバイスを製造する方法のステップを示す。
【
図9】
図9は、一実施形態による、フリップチップ法を使用してパッケージ基板に相互接続されたMRセンサ装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図2は、一実施形態による磁気リーダ(MR)センサ装置1の部分的及び概略的な表現を示す。MRセンサ装置1は、基板10を備えるウエハ200と、配線工程(バックエンドオブライン、BEOL)相互接続層20と、BEOL相互接続層20内に埋め込まれた複数の磁気抵抗センサ素子25とを備えるMRセンサ回路を備える。MRセンサ装置1は、BEOL相互接続層20と、MRセンサ回路とを備えるウエハ200の一部、又はダイを備えてもよい。MRセンサ装置1は、磁気ストリップに記憶された情報を読み取り、読み取り信号を出力するように構成されている。
【0021】
図3は、ホイートストン(フルブリッジ)構成に従って接続された磁気抵抗センサ素子25を備えるMRセンサ回路の可能な構成を示す。この構成では、磁気抵抗センサ素子25R1とR2の間に形成されるノードと磁気抵抗センサ素子25のR3とR4の間に形成されるノード(測定対角線)との間で読み取り信号を測定可能である。読取信号の値は、磁気抵抗センサ素子25の抵抗R1:R2及びR4:R3の比に依存する。もちろん、ハーフブリッジ構成を含む、他の直列配置と、並列配置との少なくとも一方の配置が可能である。
【0022】
磁気抵抗センサ素子25は、ホール効果センサを備えてもよい。代替的に、磁気抵抗センサ素子25は、xMRセンサ、すなわち、異方性磁気抵抗(AMR)、巨大磁気抵抗(GMR)、又は磁気トンネル接合(TMR)ベースのセンサのいずれか、あるいはそれらの組み合わせを備えてもよい。
【0023】
MRセンサ装置1は、読取信号を復号し、バイナリデータを抽出するように構成された処理モジュール(図示せず)をさらに備えてもよい。
【0024】
図2の実施形態では、MRセンサ装置1は、少なくとも3GPaのビッカース硬さを有する保護層30を備える。保護層30は、MRセンサ装置1の磁気抵抗センサ素子25を磁気ストライプの表面に可能な限り近づけることを可能にし、その結果、読取信号の分解能が増大する。
【0025】
一実施形態では、保護層30は、MRセンサ装置1を使用して磁気ストライプを読み取る際の典型的な環境条件に対して、1未満、好ましくは0.5未満の摩擦係数μを有する。
【0026】
保護層30は、高い耐摩耗性をさらに有する。より詳細には、保護層30は、10-7mm3N-1m-1未満の摩耗率を持つものであってもよい。
【0027】
好ましい実施形態では、保護層30は、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)層を含む。
【0028】
ここで、DLC層30は、様々な種類のアモルファスカーボン層を含むことができる。 特に、DLC層30は、水素を含まないDLC、aCと、水素化DLC、aC:Hと、四面体アモルファス炭素、ta-Cと、水素化四面体アモルファス炭素、ta-C:Hと、Si-DLC及びMe-DLCのような、DLCを含有する各種シリコン又は金属のドーパントと、を備えてもよい。
【0029】
DLC層は、鋼材のような材料に対して、高いビッカース硬さ、低い摩擦係数を有し、それら材料は一般に化学的に不活性である。DLC層の特性として生じるこれらの望ましいトライボロジー特性は、堆積プロセスを制御することにより、ダイヤモンド状、又はグラファイト状の特性を付与するために、操作してもよい。加えて、窒素、水素、シリコン、又は金属ドーピングを組み込むことで、化学、ひいては膜の摩擦化学を制御する可能性をさらに与える。
【0030】
代替的に、保護層30は、少なくとも3GPaのビッカース硬さ、可能なら1よりも小さな、好ましくは0.5よりも小さな係数μと、可能なら10-7mm3N-1m-1未満の摩耗率を有する、セラミック又は任意の適切な材料を含有してもよい。
【0031】
保護層30はさらに、外部環境からMRセンサ装置1を機械的及び化学的に保護する役割を果たす。保護層30は、したがって、MRセンサ装置1の寿命を延長可能である。例えば、MRセンサ装置1は、磁気ストライプに非常に近く(60μm未満)に置かれている間、クレジットカードの100万回超のスワイプの標準試験に容易に耐えられる。
【0032】
図4に示す実施形態によれば、MRセンサ装置1又はMRセンサダイ1は、パッケージ化されたMRセンサデバイス300を形成するように、パッケージ基板40にさらに相互接続される。
【0033】
MRセンサダイ1は、基板10を完全に貫通するビア11を備えてもよい。このようなビア11は、しばしば貫通シリコンビア又はスルーホールコンタクトと呼ばれる。MRセンサダイ1は、ウエハ200の下面24上にビア12と接続するはんだボール12をさらに備えてもよい。ビア11及びはんだボール12は、MRセンサダイ1とパッケージ基板40との間の相互接続を提供する。
【0034】
図6に示す別の実施形態では、パッケージ化されたMRセンサ装置300は、パッケージ40の上面42に面取りされた外形43を備える。上面42の面取りされた外形43の平坦部分45の幅「A」は、パッケージ内のMRセンサダイ1の幅と同じであり、「B」は、はんだボール12及び保護層30を備えるMRセンサダイ1の総厚を表す。底部パッド46は、はんだボール12がパッケージ基板40に相互接続されているところと反対のパッケージ基板40の表面に可視となっている。
【0035】
カードがスワイプされると、面取りにより滑らかなスワイプが可能になる。一方、標準的なパッケージの90°の角は、スワイプアクションを停止するか、カードのストライプを破損する。
【0036】
図7に示す別の実施形態では、パッケージ化されたMRセンサ装置300は少なくとも1つの磁束集中器44を備える(
図7の例では、パッケージ化されたMRセンサ装置300は2つの磁束集中器44を備える)。磁束集中器44は、MRセンサ装置1と磁気ストリップとの間の距離をさらに短くすることを可能にし、MRセンサ装置1がパッケージの頂部と可能な限り同一平面になるように制約を緩和する。
【0037】
実際、MRセンサ1は、パッケージの上部と同一平面にある必要があり、MRセンサダイ1内の磁気抵抗センサ素子25が、磁気ストライプ100によって生成された磁場を捕捉できるようにする。
図7の実施形態では、軟強磁性合金(ミューメタルなど)で作られた磁束集中器(又は磁束ガイド)44を使用して、ストライプ100の磁場をMRセンサダイ1に配向可能である。したがって、この構成(MRセンサダイ1が平坦部45と同一平面である
図6のような)MRセンサダイ1をパッケージの天頂部と同一平面にする必要性を回避する。
図6及び
図7では、BEOL相互接続層20及び磁気抵抗センサ素子25は示されていない。
【0038】
図8は、一実施形態による、MRセンサデバイス1を製造する方法のステップを示す。この方法は、以下を備える。
ウエハ200を用意することと、
ウエハ200上に基板10を形成することと、
基板10上に少なくとも1つの配線工程(BEOL)相互接続層20を形成することと、
少なくとも1つのBEOL相互接続層20内に埋め込まれた複数の磁気抵抗センサ素子25を備える少なくとも1つのMRセンサ回路を形成することである。
【0039】
この方法は、BEOL相互接続層20の上に保護層30を形成することをさらに備える。保護層30は、少なくとも3GPaのビッカース硬さを有する。
【0040】
好ましい実施形態では、保護層30はDLC層を備え、DLC層30は、物理気相堆積(PVD)又は化学気相堆積(CVD)のような任意の適切な堆積方法を使用して堆積される。DLC層は室温で堆積してもよい。
【0041】
一実施形態では、保護層30の厚さは、数ナノメートルから1マイクロメートル、より具体的には1nmから1μmの範囲にある。
【0042】
別の実施形態では、保護層30は、少なくとも3Gpaのビッカース硬さを持つセラミック又は任意の適した材料を含有してなる。
【0043】
保護層30は、少なくとも3GPaのビッカース硬さを有し、他の集積回路部品、すなわちBEOL相互接続層20及び磁気装置を破損しないように十分に低い温度で堆積可能な任意の適切な材料を含む。例えば、保護層30は、少なくとも3GPaのビッカース硬さを有し、室温付近及び300℃未満の温度で堆積可能な任意の適切な材料を含む。
【0044】
一実施形態では、MRセンサ装置1及び処理モジュールは、ウエハ200上に形成されている。
【0045】
少なくとも1つのBEOL相互接続層20内に埋め込まれた複数の磁気抵抗センサ素子25は、ウエハ200の表面近くに形成してもよい。複数の磁気抵抗センサ素子25は、第1方向(X)に沿った行と、第2の方向に沿った(Y)列とに配置してもよい(図示せず)。
【0046】
製造方法は、次に、ウエハ200をダイシングして、それぞれが少なくとも1つのMRセンサ回路を備える個々のMRセンサダイス1を得る工程をさらに備えてもよい。ダイシング工程は、機械的切断又は他の適切な技術によって実現してもよい。
【0047】
製造方法は、さらに、パッケージされたMRセンサ装置300を作るべく、各MRセンサダイ1を取り上げて(ピッキング)、パッケージ基板40に配置する(プレイス)工程を備えてもよい。
【0048】
製造方法は、さらに、少なくとも1つの磁気読み取りセンサ装置1を備えるMRセンサダイ1と、パッケージ基板40との間に相互接続を提供することを備えてもよい。
【0049】
相互接続の提供は、従来、ワイヤボンディング技術を使用することによって実行可能であり、ボンディングワイヤ23(
図5参照)は、ウエハ200(ダイ1)の天頂面22、すなわち、基板10に接する下面24及びパッケージ基板40に対向する面に位置する、ワイヤボンドパッド21を接続する。ワイヤボンディング技術は、ウエハ200(ダイ1)の天頂面22と、パッケージ基板40の天頂面42との間の距離に、数マイクロメートル、典型的には20μmを追加する。さらに、ウエハ200(ダイ1)の天頂面22を覆う保護層30は、保護層30を通して又は保護層30内の上部パッドへの接触アクセスを提供する必要があることがあり、相互接続製造をより複雑にする。
【0050】
図4を参照し、相互接続を提供するステップは、基板10を完全に貫通するビア(シリコン貫通ビア又はスルーホールコンタクト)11を形成することを備える。ビア11を形成するステップは、好ましくはウエハ200上で実行される。
【0051】
製造方法は、はんだボール12を、ウエハ200の下面24にビア12と接続して、形成することを備えてもよい。
【0052】
個々のダイス1を得るためのウエハ200のダイシングのステップと、各ダイ1を取り上げてパッケージ基板40上に配置するステップとは、ビア11及びはんだボール12の形成後、次に実施されてもよい。
【0053】
はんだボール12は、リフロー工程後、ダイ1をパッケージ基板40に接着及び相互接続するのに使用される。
【0054】
図9に示す別の実施形態では、MRセンサダイ1は、BEOL相互接続層20上にはんだボール12を備える。はんだボール12は、パッケージされたMRセンサ装置を形成するなどのために、MRセンサダイ1とパッケージ基板40との間の相互接続を提供する。
【0055】
図9の構成では、基板10は、保護層30とBEOL相互接続層20の間にある。これは、BEOL相互接続層20が基板10と保護層30との間にある、
図4のMRセンサダイ1とは対照的である。
【0056】
図9の構成を達成するために、相互接続を提供するステップは、BEOL相互接続層20上にはんだボール12を形成することを備える。方法は、はんだボール12が形成された後、フリップチップのステップをさらに備える。MRセンサダイ1は、はんだボール12がパッケージ基板40に接触するように、パッケージ基板40上で上下を反転する(ひっくり返す)。BEOL相互接続層20は、それゆえ、基板10よりもパッケージ基板40に近い。MRセンサダイ1の反転後、それから、基板10の上部に保護層30が形成される。
【0057】
図9の構成では、基板10の厚さは、磁気ストライプ100上の磁気素子102のピッチによって決定される。ISO 7816規格のクレジットカードの場合、磁気ストライプのトラック2は、1インチ当たり75ビット(1mm当たり2.95ビット)である。基板の厚さは解像度損失なしで約100μmである。一方で、最良の結果を得るべく、トラック1及び3は1インチ当たり210ビット(1mm当たり8.27ビット)、基板10の厚さは約40μmより薄い。そのため、この製造方法は、保護層30を形成する前に、基板10を薄くするステップを備えてもよい。基板10を薄くするステップを、MRセンサダイ1をはんだボール12ではんだ付けする前又は後に実施してもよい。
【0058】
別の実施形態では、製造方法は、カスタムモールドを使用して、パッケージ40の上面42に面取りされた外形43を提供する工程を備える(
図5を参照)。面取りされた外形43は、金融取引のためにクレジットカードがスキャンされる販売端末の地点におけるMRセンサ装置のより良い統合を可能にする。面取りされた外形43は、MRセンサ装置1における(カードの)磁気ストライプのスワイプを容易にすることを可能にする。
【0059】
均等な実施形態は、上記に示唆された形態とは異なるとはいえども同じ技術効果を得るステップのつながりを包含する。
【符号の説明】
【0060】
1 MRセンサ装置、MRセンサダイ
10 基板
100 磁気ストライプ
101 磁場
102 磁性要素
11 スルーホールコンタクト
12 はんだボール
20 BEOL相互接続層
21 接着パッド
22 ウエハの天頂面
23 接着ワイヤ
24 ウエハの下面
25 磁気抵抗センサ要素
26 磁気抵抗要素
30 保護層
40 パッケージ基板
41 面取りした形状
42 パッケージの天頂面
43 面取りした外形
44 磁束集中器
45 平坦な部
46 底部パッド
300 パッケージしたMRセンサ装置
200 ウエハ