(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤、それを用いた蓋材及び密封容器用部材セット
(51)【国際特許分類】
C09J 123/08 20060101AFI20240605BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240605BHJP
C09J 191/06 20060101ALI20240605BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240605BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
C09J123/08
C09J11/08
C09J191/06
C09J11/04
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2023215354
(22)【出願日】2023-12-21
【審査請求日】2024-01-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】米村 俊佑
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-95142(JP,A)
【文献】特開2022-101230(JP,A)
【文献】特開2022-47840(JP,A)
【文献】特開2023-2260(JP,A)
【文献】特開2005-161503(JP,A)
【文献】特開平5-25460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットメルト接着剤100質量%中に、190℃、荷重2.16kgにおけるメルトマスフローレートが3~400g/10分であるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)を20~50質量%、軟化点が90~150℃である粘着付与樹脂(B)を10~30質量%、融点が60~120℃であるワックス(C)を20~50質量%、タルク(D)を5~25質量%、及びシリコーンオイル(E)を0.1~2.0質量%含有
し、
前記ワックス(C)100質量%中に、融点が60~83℃かつ下記式を満足するワックス(C1)を50質量%以上含有することを特徴とする、ホットメルト接着剤。
(式)5℃≦Y-X≦30℃
X:示差走査熱量計(DSC)測定により得られたDSC曲線における吸熱ピークのオンセット温度
Y:示差走査熱量計(DSC)測定により得られたDSC曲線における吸熱ピークのエンドセット温度
【請求項2】
前記粘着付与樹脂(B)が、石油系樹脂及び/またはテルペン系樹脂を含有することを特徴とする、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
前記シリコーンオイル(E)の25℃における動粘度が、50~10,000mm
2/sであることを特徴とする、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の酢酸ビニル含有率が、20~35質量%であることを特徴とする、請求項1~
3いずれか1項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項5】
樹脂シート、紙、及びアルミニウムシートからなる群より選ばれる少なくとも2種類以上が積層された基材の片面に、請求項
4記載のホットメルト接着剤からなるホットメルト層を設けてなる、蓋材。
【請求項6】
容器と、請求項
5記載の蓋材とからなる、開封可能な密封容器用部材セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工適性、耐ブロッキング性、及び低温ヒートシール性が良好なことに加えて、高温環境下でもシール剥がれが生じない耐熱性を有し、かつ剥離時のジッピングがなく、安定したシール強度及び優れた剥離外観を示すホットメルト接着剤、それを用いた蓋材及び密封容器用部材セットに関する。
【背景技術】
【0002】
物品包装の分野では、内容物の保護や保存のために、容器の開口部に、シール性の優れたヒートシール層を介して蓋材を接着する方法が利用されている。
【0003】
ハイインパクトポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET
)等の熱可塑性樹脂シートを真空成型して得られた容器を、アルミニウム箔、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等のシート、またはそれらを成型した蓋材で密封する方法としては、蓋材の接着面に、低密度ポリエチレン、低分子量ポリエステルあるいはエチレン-不飽和エステル共重合体等の低融点樹脂をラミネートしたシート素材を使用するか、シール部分にのみ、あらかじめホットメルト接着剤を塗布しておく方法がとられている。
【0004】
中でも、食品容器のシーリングに使用するホットメルト接着剤は、接着のみを目的とした一般のホットメルト接着剤に要求される、塗工適性、気密性、耐水性、耐油性、耐アルカリ性、無毒性、耐ブロッキング性といった基本性能はもとより、以下のような特殊な品質が要求される。
【0005】
・剥離時のジッピング(強い抵抗感と音を伴う現象)がなく、剥離感が良好であること。・内容物がこぼれたり、飛散したりしないようスムーズな均等剥離ができること。
・接着力の調整が容易であること。容易に開封できるような接着力(開封強度)として、10N~15Nに設定できること(易開封性)。
・高温環境下における保管や輸送時にシール剥がれが生じないこと(耐熱性)。
・容器フランジ部に付着した内容物に熱が奪われ、ヒートシール温度が低下した場合でも接着できること(低温ヒートシール性)
【0006】
このうち、剥離時のジッピングを抑制するためには、ホットメルト層と容器間における界面剥離でなく、ホットメルト層において凝集破壊させる手法が用いられる。凝集破壊させる手法としては、低分子量の樹脂の添加や、特許文献1に開示されているように相溶性の低い樹脂の混合により、ホットメルト接着剤の凝集力を低下させる手法が開示されている。しかしながら、これらの手法は凝集力の低下に伴い、耐熱性が損なわれてしまうという課題がある。また、特許文献2にはタルク等の無機フィラーを添加する手法が開示されているが、ホットメルト接着剤に用いた場合、タルクの添加量が少ないと凝集破壊せず、凝集破壊するまでタルクの添加量を増やした場合、接着強度、及び耐熱性が著しく低下してしまう。そのため、特許文献1~2に記載の手法では、凝集破壊によるジッピングの抑制と耐熱性の両立が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-089521号公報
【文献】特開平5-295340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ホットメルト接着剤の基本性能(塗工適性、耐ブロッキング性、及び低温ヒートシール性)が良好なことに加えて、高温環境下でもシール剥がれが生じない耐熱性を有し、かつ剥離時のジッピングがなく、安定したシール強度及び優れた剥離外観を示すホットメルト接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討した結果、以下に定める特定のホットメルト接着剤により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の一態様に係るホットメルト接着剤は、ホットメルト接着剤100質量%中に、190℃、荷重2.16kgにおけるメルトマスフローレートが3~400g/10分であるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)を20~50質量%、軟化点が90~150℃である粘着付与樹脂(B)を10~30質量%、融点が60~120℃であるワックス(C)を20~50質量%、タルク(D)を5~25質量%、及びシリコーンオイル(E)を0.1~2.0質量%含有することを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係るホットメルト接着剤は、前記ワックス(C)100質量%中に、融点が60~100℃かつ下記式を満足するワックス(C1)を50質量%以上含むことを特徴とする。
(式)5℃≦Y-X≦30℃
X:示差走査熱量計(DSC)測定により得られたDSC曲線における吸熱ピークのオンセット温度
Y:示差走査熱量計(DSC)測定により得られたDSC曲線における吸熱ピークのエンドセット温度
【0012】
本発明の一態様に係るホットメルト接着剤は、前記粘着付与樹脂(B)が、石油系樹脂及び/またはテルペン系樹脂を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係るホットメルト接着剤は、前記シリコーンオイル(E)の25℃における動粘度が、50~10,000mm2/sであることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係るホットメルト接着剤は、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の酢酸ビニル含有率が、20~35質量%の範囲であることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る蓋材は、樹脂シート、紙、及びアルミニウムシートからなる群より選ばれる少なくとも2種類以上が積層された基材の片面に、上述するホットメルト接着剤からなるホットメルト層を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る開封可能な密封容器用部材セットは、容器と、上述する蓋材とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、ホットメルト接着剤の基本性能(塗工適性、耐ブロッキング性、及び低温ヒートシール性)が良好なことに加えて、高温環境下でもシール剥がれが生じない耐熱性を有し、かつ剥離時のジッピングがなく、安定したシール強度、優れた剥離外観を示すホットメルト接着剤、及びそれを用いた蓋材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明のホットメルト接着剤を構成する各成分について、詳細を説明する。
なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
【0019】
≪ホットメルト接着剤≫
本発明のホットメルト接着剤は、ホットメルト接着剤100質量%中に、190℃、荷重2.16kgにおけるメルトマスフローレートが3~400g/10分であるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)を20~50質量%、軟化点が90~150℃である粘着付与樹脂(B)を10~30質量%、融点が60~120℃であるワックス(C)を20~50質量%、タルク(D)を5~25質量%、及びシリコーンオイル(E)を0.1~2.0質量%含有することを特徴とする。このようなホットメルト接着剤とすることで、高温環境下でもシール剥がれが生じない耐熱性を有し、かつ剥離時のジッピングがなく、安定したシール強度、優れた剥離外観を示すホットメルト接着剤を得ることができる。本発明のホットメルト接着剤は、蓋材に好適に用いることができる。
【0020】
<エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)>
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)は、エチレンと酢酸ビニルの共重合体である。ホットメルト接着剤における主成分の一つであり、主に接着力、凝集力を付与する役割を担うものである。エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
本発明のホットメルト接着剤100質量%中のエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の含有率は、20~50質量%の範囲である。含有率が20質量%未満であると、接着性が不十分となり、耐熱性及び易開封性に劣る。50質量%を超えると、粘度が上昇し、塗工適性が低下する。エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の含有率は、好ましくは25~45質量%の範囲である。
【0022】
また、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の190℃、荷重2.16kgにおけるメルトマスフローレートは、3~400g/10分の範囲である。メルトマスフローレートは、JIS K 7210に準拠して測定される、190℃、荷重2.16kgでの10分間の流出量(g/10分)である。メルトマスフローレートが3g/10分未満であると、ホットメルト接着剤の粘度が上昇し、塗工適性が低下する。400g/10分を超えると、耐熱性が不足する。
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の190℃、荷重2.16kgにおけるメルトマスフローレートは、好ましくは10~150g/10分である。
【0023】
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の、酢酸ビニル含有率は、好ましくは20~35質量%の範囲であり、より好ましくは25~32質量%の範囲である。酢酸ビニル含有率を上記範囲内とすることで、接着力、及び低温ヒートシール性に優れる。なお、酢酸ビニル含有率とは、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)100質量%中の、酢酸ビニル単量体の含有率(質量%)である。
【0024】
複数のエチレン-酢酸ビニル共重合体を使用した場合の酢酸ビニル含有率は、各々のエチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有率と配合比とから算出することができる。例えば、第1のエチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有率をVA1、配合量をW1とし、第2のエチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有率をVA2、配合量をW2とした場合、全体としての酢酸ビニル含有率VAは、以下の式により求められる。
(式) VA=(VA1×W1+VA2×W2)/(W1+W2)
【0025】
<粘着付与樹脂(B)>
本発明に使用される粘着付与樹脂(B)は、公知のものから適宜選択することができる。例えば、フェノール系樹脂、キシレン樹脂、クマロン・インデン樹脂、石油系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等が挙げられる。
フェノール系樹脂としては、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、キシレンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
石油系樹脂としては、脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、共重合系(C5/C9系)石油樹脂、脂環族系石油樹脂(水素添加若しくはジシクロペンタジエン(DCPD)系の石油樹脂)、低分子量ポリスチレン系樹脂が挙げられる。
ロジン系樹脂としては、ロジン、ロジン誘導体(水素化ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、ロジンエステル(アルコール、グリセリン、ペンタエリストール等のエステル化ロジン))等が挙げられる。
テルペン系樹脂としては、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、ジペンテン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、酸変性テルペン樹脂、スチレン化テルペン樹脂テルペン系樹脂等が挙げられる。
中でも、易開封性、及びジッピング抑制の観点から、石油系樹脂及びテルペン系樹脂が好適に用いられ、粘着付与樹脂(B)は、石油系樹脂及び/またはテルペン系樹脂を含むことが好ましい。石油系樹脂及びテルペン系樹脂と、その他の粘着付与樹脂と併用してもよい。
【0026】
ホットメルト接着剤100質量%中の粘着付与樹脂(B)の含有率は、10~30質量%であり、好ましくは15~25質量%である。粘着付与樹脂の含有率が10質量%未満であると、耐熱性及び易開封性が低下し、30質量%を超えると、耐ブロッキング性及び易開封性が低下する。
【0027】
粘着付与樹脂(B)の軟化点は、90~150℃の範囲であり、好ましくは100~145℃の範囲であり、さらに好ましくは120℃~140℃の範囲である。軟化点が上記範囲内であることで、耐熱性及び低温ヒートシール性が良好となる。
粘着付与樹脂(B)の軟化点は、JIS K 2207に準拠して求めることができる。具体的には、樹脂組成物を充填した規定の環を12時間以上静置させた後、熱媒体中に入れて、規定の球を、樹脂組成物を充填した規定の環の上に置き、一定の割合で熱媒体の温度を上昇させたとき、樹脂組成物の軟化により球が沈み環台の底板に触れたときの温度である。 粘着付与樹脂(B)が複数の粘着付与樹脂を含む場合、粘着付与樹脂(B)の軟化点は、各々の粘着付与樹脂の軟化点とその質量比率から求めることができる。
【0028】
<ワックス(C)>
本発明に使用されるワックス(C)は、公知のものから適宜選択することができる。例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、カルナバワックス、エチレンワックス、ポリエチレンワックス、プロピレンワックス、ポリプロピレンワックス、エチレン・プロピレンワックス、ポリエチレン・ポリプロピレンワックス、ポリエチレン・ポリプロピレン共重合物にスチレンがグラフトした物等の変性ワックスが挙げられる。中でも、耐熱性、及び耐ブロッキング性の観点から、好ましくはパラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックスである。これらワックスは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
ホットメルト接着剤100質量%中のワックス(C)の含有率は、20~50質量%であり、好ましくは25~45質量%である。20質量%未満であると粘度上昇による塗工適正の低下、及び耐ブロッキング性が低下する。50質量%を超えると開封強度が低下する。
【0030】
ワックス(C)の融点は、60~120℃の範囲であり、好ましくは60~100℃の範囲である。融点を上記範囲とすることで、ホットメルト接着剤の耐熱性、及び低温ヒートシール性が良好となる。なお、本明細書における融点は、示差走査熱量計(DSC)測定で、JIS K7121:1987に準拠し10℃/分で昇温した際のピークトップの温度である。なお、融点の測定方法の詳細は実施例に記載する。
【0031】
また、本発明のホットメルト接着剤は、低温シール性、及び耐熱性、耐ブロッキング性の観点から、ワックス(C)100質量%中に、融点が60~100℃、かつ下記式を満たすワックス(C1)を50質量%以上含むことが好ましい。より好ましくは70質量%以上である。ワックス(C)100質量%中のワックス(C1)の含有率は多い方が好ましく、100質量%が特に好ましい。
(式)5℃≦Y-X≦30℃
X:示差走査熱量計(DSC)測定により得られたDSC曲線における吸熱ピークのオンセット温度
Y:示差走査熱量計(DSC)測定により得られたDSC曲線における吸熱ピークのエンドセット温度
【0032】
ワックス(C1)の融点は、70~90℃の範囲がより好ましい。融点が70~90℃であると、ホットメルト接着剤の耐熱性、及び低温ヒートシール性が良好となる。
【0033】
ワックス(C1)のエンドセット温度とオンセット温度の差(Y-X)は、5℃≦Y-X≦30℃であり、好ましくは5℃≦Y-X≦20℃の範囲である。上記範囲とすることで、耐熱性、及び低温ヒートシール性の両立が可能な優れたホットメルト接着剤となる。なお、本明細書において、JIS K7121:1987にて定義される補外融解開始温度(Tim)をオンセット温度(X)、補外融解終了温度(Tem)をエンドセット温度(Y)とする。複数の吸熱ピークを有する場合、最も低温側の吸熱ピークのオンセット温度、及び最も高温側の吸熱ピークのエンドセット温度を用いて計算する。
【0034】
ワックス(C1)の市販品としては、King Honor International社製の「KHパラフィンワックス70H」(融点:70℃、Y-X:25℃)、Sasol社製の「サゾールC80」(融点83℃、Y-X:18℃)、日本精蝋社製の「HNP-3」(融点:66℃、Y-X:18℃)等が挙げられる。
【0035】
<タルク(D)>
本発明のホットメルト接着剤は、タルク(D)を含有する。ホットメルト接着剤にタルク(D)を添加することで、ホットメルト層における凝集破壊を促進させ、剥離時のジッピングを抑制することができる。なお、凝集破壊とは、接着剤層が破壊する剥離形態である。タルクは、沈降性の観点から、平均粒子径が比較的小さいことが好ましい。タルクの平均粒子径は、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは20μm以下である。ここで、タルクの平均粒子径は、沈降法で測定される平均粒子径(D50(粒子径分布のメジアン径))である。タルク(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
ホットメルト接着剤100質量%中のタルク(D)の含有率は、5~25質量%であり、好ましくは10~20質量%である。5質量%未満であるとホットメルト層における凝集破壊の割合が低下して剥離時にジッピングしやすくなり、25質量%を超えると耐熱性、及び開封強度が低下する。
【0037】
<シリコーンオイル(E)>
シリコーンオイル(E)は、主にホットメルト接着剤の塗工物の耐ブロッキング性、滑り性の向上を目的に配合される。また、上記タルク(D)とシリコーンオイル(E)とを併用して用いることで相乗効果が生まれ、タルクの添加量が少量の場合でもホットメルト層の凝集破壊を促進させ、剥離時のジッピングを抑制することができる。シリコーンオイル(E)としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジエンシリコーンオイルが挙げられる。これらのシリコーンオイルは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0038】
ホットメルト接着剤100質量%中のシリコーンオイル(E)の含有量は、0.1~2.0質量%であり、好ましくは0.5~1.5質量%である。0.1質量%未満では、耐ブロッキング性が低下、及びホットメルト層の凝集破壊の割合が低下し、2.0質量%を超えるとブリードアウトにより耐熱性、開封強度が低下する。
【0039】
本発明のホットメルト接着剤中のシリコーンオイル(E)の25℃における動粘度は、50~10,000mm2/sが好ましく、更に好ましくは100~1,000mm2/sである。動粘度を上記範囲とすることで、ホットメルト層における凝集破壊が促進され、かつ耐ブロッキング性、及び耐熱性が良好となる。シリコーンオイル(E)の動粘度は、JIS Z8803:2011に準拠して測定される。
【0040】
<その他成分>
本発明のホットメルト接着剤は、任意成分として酸化防止剤、シランカップリング剤、ブロッキング防止剤、疎水性酸化物微粒子等を含有できる。これらその他成分は、各々1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が挙げられ、具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジエチル〔[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル〕ホスフォネート、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル]プロピオネート、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましく、リン系酸化防止剤としては、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトが好ましい。
【0042】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトブチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0043】
ブロッキング防止剤としては、例えば、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド;ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド;が挙げられる。
【0044】
疎水性酸化物微粒子としては、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ、チタニア、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。
【0045】
上記任意成分の含有率は、ブリードアウトを抑制する観点から、ホットメルト接着剤の質量を基準として、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下である。
【0046】
<ホットメルト接着剤の製造方法>
本発明のホットメルト接着剤は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)、粘着付与樹脂(B)、ワックス(C)、タルク(D)、シリコーンオイル(E)、及び必要に応じて用いられる任意成分を、公知の方法で混合して得ることができる。例えば、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、撹拌機を備えた溶融釜、又は、一軸若しくは二軸の押し出し機を用いて加熱混合することで、加熱溶融型のホットメルト接着剤を得ることができる。また例えば、公知の溶剤に溶解して撹拌混合することで、溶剤型のホットメルト接着剤を得ることができる。
本発明のホットメルト接着剤は蓋材用途に好適に用いられるものであり、残留溶剤の観点から、溶剤を使用しない加熱溶融型のホットメルト接着剤であることが好ましい。
【0047】
本発明のホットメルト接着剤は、塗工適性の観点から、好ましくは160℃における溶融粘度が500~5,000mPa・sの範囲である。本明細書における溶融粘度は、JIS K 6862に準拠して、B型粘度計を用い、160℃、ローターNo.3、12rpm、30秒間の条件で測定した値である。
【0048】
≪蓋材≫
本発明のホットメルト接着剤は、蓋材用途として好適に使用することができる。本発明の蓋材は、基材の片面に本発明のホットメルト接着剤からなるホットメルト層を設けてなるものであり、開封可能な容器に用いることができる。
蓋材の製造方法は、特に限定されず、既知の製造方法を使用して製造することができる。ホットメルト層の形成方法は、特に限定されず、接触塗工法、非接触塗工法のいずれもあってもよい。
接触塗工法は、ホットメルト接着剤を塗工する際、噴出機を部材やフィルムに接触させる塗工方法であり、例えば、スロットコーター塗工、グラビアコーター塗工、ロールコーター塗工が挙げられる。
非接触塗工法は、ホットメルト接着剤を塗工する際、噴出機を部材やフィルムに接触させない塗工方法であり、例えば、螺旋状に塗工できるスパイラル塗工、波状に塗工できるオメガ塗工、コントロールシーム塗工、面状に塗工できるスロットスプレー塗工、カーテンスプレー塗工、点状に塗工できるドット塗工、線状に塗工できるビード塗工が挙げられる。
ホットメルト層の厚みは、通常1~100μmの範囲である。また、ホットメルト層は、加熱又は紫外線照射によって架橋されていてもよい。
【0049】
[基材]
本発明の蓋材に使用できる基材は、樹脂、紙、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも2種類以上が積層された基材である。
上記基材を構成する樹脂として好ましくは、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリノルボルネン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、アクリル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスチレン樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、より好ましくは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びポリエチレンテレフタレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むものである。樹脂層は、アルミ等の金属を蒸着させた金属蒸着層、又は、アルミナ、酸化ケイ素等を蒸着させた透明蒸着層を有していてもよい。
上記金属層における金属としては、アルミニウムが好適に用いられ、例えば、アルミニウム箔、アルミ蒸着層が挙げられる。
基材は、さらに、不織布、織布、布、ガラス等のその他層を有していてもよい。
【0050】
基材の構成として好ましくは、例えば、「紙/ポリエチレン樹脂」、「ポリエチレンテレフタレート樹脂/紙/ポリエチレン樹脂」、「ポリエチレンテレフタレート樹脂/アルミ箔/ポリエチレン樹脂」が挙げられる。また、基材の表面は、必要に応じて、コロナ放電処理、プラズマ処理、ブラスト処理、ケミカルエッチング処理のような易接着処理、帯電防止処理、着色処理等がなされていてもよい。基材の厚みは特に制限されず、通常、1~300μmの範囲である。
【0051】
≪密封容器用部材セット、密封容器≫
本発明の密封容器用部材セットは、容器と上記蓋材からなる。また、密封容器用部材セットは、容器の開口部と蓋材を、ホットメルト層によりヒートシールすることで、開封可能な密封容器として用いることができる。一般的に、開封強度が5~15Nの範囲であれば易開封性が良好であるといえる。
本発明の開封可能な密封容器は、ホットメルト層の塗布量が10~30g/m2の範囲において、開封強度が5~20Nの範囲であることが好ましい。
【0052】
<容器>
本発明で用いる容器として、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等を用いた容器が挙げられ、特にポリスチレン製の容器が好ましい。
また、内容物を保つことができる容器であればどのような形態であってもよく、一般的に食品や飲料の充填、収容に用いられる成形容器の形態が好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様に過ぎず、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、例中、「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」をそれぞれ表すものとする。
【0054】
[融点]
インジウム標準にて較正した島津製作所社製示差走査型熱量計(DSC―60A plus)を用いて、DSC測定を行い、融点(Tm)を求めた。
試料10mgになるようにアルミニウム製DSCパン上に上記測定サンプルを秤量し、蓋をパンにクリンプして密閉雰囲気下とし、サンプルパンを得た。次にサンプルパンをDSCセルに配置し、リファレンスとして空のアルミニウムパンを配置した。DSCを用いて、30mL/分の窒素気流下で室温から10℃/分で200℃まで昇温した後、10℃/分で-80℃まで冷却、再び170℃まで10℃/分で昇温してDSC曲線を測定した。二度目の昇温工程で観測される吸熱曲線から融点、オンセット温度(X)、エンドセット温度(Y)を求めた。
【0055】
<ホットメルト接着剤の製造>
(実施例1)
撹拌機の備えられたステンレスビーカーに、ワックス(C)としてC1-1(サゾールC80)を37部と、酸化防止剤としてIrganox1010を0.1部加え、内容物が180℃以上にならないように注意して加熱した。ワックスの溶融を確認した後、攪拌を開始し、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)としてA1(ウルトラセン752)を37部、粘着付与樹脂(B)としてB1(アルコンP-125)を20部、タルク(D)としてD1(MS-K)を5部、シリコーンオイル(E)としてE3(シリコーンオイルKF-96-20cs)0.9部を添加し、完全に混合するまで撹拌することにより、ホットメルト接着剤を得た。
【0056】
(実施例2~39、比較例1~14)
表1~3に示した材量及び配合比(質量)に変更した以外は、実施例1と同様にしてホットメルト接着剤を得た。
【0057】
なお、表1~3に記載した略称は、以下に示す通りである。
<エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)>
・A1:ウルトラセン752(東ソー社製エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含量:32%、MFR:60g/10分)
・A2:ウルトラセン720(東ソー社製エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含量:28%、MFR:150g/10分)
・A3:ウルトラセン722(東ソー社製エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含量:28%、MFR:400g/10分)
・A4:ウルトラセン633(東ソー社製エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含量:20%、MFR:20g/10分)
・A5:ウルトラセン625(東ソー社製エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含量:15%、MFR:14g/10分)
<その他エチレン-酢酸ビニル共重合体(A’)>
・A’1:ウルトラセン735(東ソー社製エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含量:28%、MFR:1000g/10分)
【0058】
<粘着付与樹脂(B)>
・B1:アルコンP-125(荒川化学工業社製、水素添加石油樹脂、軟化点:125℃)
・B2:アルコンP-140(荒川化学工業社製、水素添加石油樹脂、軟化点:140℃)
・B3:アルコンP-100(荒川化学工業社製、水素添加石油樹脂、軟化点:100℃)
・B4:クリアロンP-125(ヤスハラケミカル社製、水素添加テルペン樹脂、軟化点:125℃)
・B5:ハリタックFK125(ハリマ化成社製、ロジンエステル、軟化点:125℃)
<その他粘着付与樹脂(B’)>
・B’1:ハリタックF85(ハリマ化成社製、ロジンエステル、軟化点:85℃)
【0059】
<ワックス(C1)>
・C1-1:サゾールC80(Sasol Chemical Industries社製、フィッシャー・トロプシュワックス、DSC融点:83℃、Y-X:18℃)
・C1-2:KHパラフィンワックス70H(King Honor Internationals社製、パラフィンワックス、DSC融点:70℃、Y-X:25℃)
・C1-3:HNP-3(日本精蝋社製、パラフィンワックス、DSC融点:66℃、Y-X:18℃)
<(C1)以外のワックス(C):(C2)>
・C2-1:ハイワックスNL800(三井化学社製、ポリエチレンワックス、DSC融点:104℃、Y-X:12℃)
・C2-2:KHパラフィンワックス80M(King Honor Internationals社製、パラフィンワックス、DSC融点:79℃、Y-X:79℃)
・C2-3:KHパラフィンワックスF60(King Honor Internationals社製、パラフィンワックス、DSC融点:62℃、Y-X:35℃)
<その他ワックス(C’)>
・C’1:Paraffin Wax-125(日本精蝋社製、パラフィンワックス、DSC融点:54℃、Y-X:32℃)
・C’2:ハイワックス200P(三井化学社製、ポリエチレンワックス、DSC融点:124℃、Y-X:8℃)
【0060】
<タルク(D)>
・D-1:MS-K(日本タルク社製、平均粒子径:16μm)
・D-2:PAOG-R(日本タルク社製、平均粒子径:30μm)
【0061】
<シリコーンオイル(E)>
・E-1:シリコーンオイルKF-96-20cs(信越シリコーン社製、動粘度:20mm2/s)
・E-2:シリコーンオイルKF-96-50cs(信越シリコーン社製、動粘度:50mm2/s)
・E-3:シリコーンオイルKF-96-100cs(信越シリコーン社製、動粘度:100mm2/s)
・E-4:シリコーンオイルKF-96-1000cs(信越シリコーン社製、動粘度:1,000mm2/s)
・E-5:シリコーンオイルKF-96-10000cs(信越シリコーン社製、動粘度:10,000mm2/s)
・E-6:シリコーンオイルKF-96-50000cs(信越シリコーン社製、動粘度:50,000mm2/s)
【0062】
<添加剤>
・酸化防止剤:Irganox1010(BASFジャパン社製)
【0063】
<ホットメルト接着剤の評価方法>
得られたホットメルト接着剤の塗工適正と、ホットメルト接着剤を用いて製造した蓋材の耐熱性、ジッピング、剥離外観、低温ヒートシール性、耐ブロッキング性及び易開封性について、以下の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0064】
[塗工適性(溶融粘度)]
得られたホットメルト接着剤について、JIS K 6862に準拠して、溶融粘度を測定した。具体的には、B型粘度計を使用し、温度160℃、ローターNo.3、回転数12rpm、30秒間の条件で測定を行い、以下の基準で評価した。
○:溶融粘度が5,000mPa・s以下(使用可能)
×:溶融粘度が5,000mPa・sを超える(使用不可)
【0065】
[蓋材の作製]
20μmのポリエチレンテレフタレート(PET)、15μmのアルミ箔(Al)、及び20μmのポリエチレン(PE)がこの順に積層された基材のPE面上に、グラビアコーターを使用して、ホットメルト接着剤を塗布量16g/m2で塗工し、蓋材を得た。
【0066】
[耐熱性]
得られた蓋材を70mm×15mmのサイズに裁断した。得られた70mm×15mmのサイズの蓋材の端部を、70mm×15mmのサイズのポリスチレン(PS)シートの中心近くに重ね合わせ、ゲージ圧0.1MPa、シール温度150℃、シール時間1.0秒、接着面積20mm×15mmの条件でヒートシールし、試験片を作製した。
得られた試験片を50℃の恒温器中で引張強度試験機を用いて、200mm/分の速度で180度角剥離により剥離強度を測定した。測定は5回行い、平均強度(N/15mm)の平均値を耐熱強度とし、以下の基準で耐熱性を評価した。
〇:耐熱強度が6N/15mm以上(良好)
△:耐熱強度が4N/15mm以上、6N/15mm未満(使用可能)
×:耐熱強度が4N/15mm未満(使用不可)
【0067】
[ジッピング]
得られた蓋材を70mm×70mmのサイズに断裁し、開口部の大きさが52mmΦPS容器と、ゲージ圧0.3MPa、150℃、1.0秒の条件でヒートシールして密封し、容器を得た。得られた容器を、温度23℃、相対湿度65%の恒温恒湿室に24時間静置した後、同室において200mm/分の速度で45度角剥離により剥離させた際のジッピングの有無を、以下の基準で評価した。
〇:ジッピングが観測されない(使用可能)
△:わずかにジッピングが観測される(使用可)
×:全体的にジッピングが観測される(使用不可)
【0068】
[剥離外観]
得られた蓋材を70mm×70mmのサイズに断裁し、開口部の大きさが52mmΦPS容器と、ゲージ圧0.3MPa、150℃、1.0秒の条件でヒートシールして密封し、容器を得た。得られた容器を、温度23℃、相対湿度65%の恒温恒湿室に24時間静置した後、同室において200mm/分の速度で45度角剥離により剥離させた際のヒートシール面積に対する凝集破壊した面積の割合を観察し、以下の基準で剥離外観を評価した。
〇:凝集破壊した面積の割合が90%以上(良好)
△:凝集破壊した面積の割合が50%以上90%未満(使用可能)
×:凝集破壊した面積の割合が50%未満(使用不可)
【0069】
[低温ヒートシール性]
得られた蓋材を70mm×70mmのサイズに断裁し、開口部の大きさが52mmΦPS容器と、ゲージ圧0.3MPa、120℃、1.0秒の条件でヒートシールして密封し、容器を得た。得られた容器を、温度23℃、相対湿度65%の恒温恒湿室に24時間静置した後、同室において200mm/分の速度で45度角剥離により剥離強度を測定した。測定は5回行い、開封時の最大荷重(N)の平均値を開封強度とし、以下の基準で易開封性を評価した。
〇:開封強度が10N以上15N未満(良好)
△:開封強度が5N以上10N未満、又は15N以上20N未満(使用可能)
×:開封強度が5N未満、又は20N以上(使用不可)
【0070】
[耐ブロッキング性]
蓋材を5cm×5cmのサイズに5枚裁断し、ホットメルト面に積層体のPET面が接するように重ね合わせた。重ね合わせた試料を、荷重10kgの条件で40℃24時間経時させた。試料を取り出し23℃、相対湿度65%の雰囲気で2時間放置した後、重ね合わせた試料を手で剥離した。剥離時の状態について、下記基準で評価した。
〇:抵抗なく剥がれる。(非常に良好)
△:若干の抵抗がある(使用可能)
×:剥離時の抵抗が大きい、又は剥離不可(使用不可)
【0071】
[易開封性]
得られた蓋材を70mm×70mmのサイズに断裁し、開口部の大きさが52mmΦPS容器と、ゲージ圧0.3MPa、150℃、1.0秒の条件でヒートシールして密封し、容器を得た。得られた容器を、温度23℃、相対湿度65%の恒温恒湿室に24時間静置した後、同室において200mm/分の速度で45度角剥離により剥離強度を測定した。測定は5回行い、開封時の最大荷重(N)の平均値を開封強度とし、以下の基準で易開封性を評価した。
〇:開封強度が10N以上15N未満(良好)
△:開封強度が5N以上10N未満、又は15N以上20N未満(使用可能)
×:開封強度が5N未満、又は20N以上(使用不可)
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
評価結果によれば、特定のエチレン-酢酸ビニル共重合体、ワックス、粘着付与樹脂に加えて、特定量のタルクとシリコーンオイルを併用してなる本願のホットメルト接着剤は、塗工適性、耐ブロッキング性、及び低温ヒートシール性が良好なことに加えて、優れた耐熱性と易開封性、剥離外観を備えており、蓋材用ホットメルト接着剤として有用であることが示された。一方、タルク及びシリコーンオイルをそれぞれ単体で用いる比較例は、ホットメルト層での凝集破壊の割合が低下し、剥離外観が悪化していた。
【要約】 (修正有)
【課題】ホットメルト接着剤の基本性能(塗工適性、耐ブロッキング性、及び低温ヒートシール性)が良好なことに加えて、高温環境下でもシール剥がれが生じない耐熱性を有し、かつ剥離時のジッピングがなく、安定したシール強度、優れた剥離外観を示すホットメルト接着剤、及び該組成物を用いてなる蓋材の提供。
【解決手段】ホットメルト接着剤100質量%中に、190℃、荷重2.16kgにおけるメルトマスフローレートが3~400g/10分であるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)を20~50質量%、軟化点が90~150℃である粘着付与樹脂(B)を10~30質量%、融点が60℃以上120℃未満であるワックス(C)を20~50質量%、タルク(D)を5~25質量%、及びシリコーンオイル(E)を0.1~2.0質量%含有するホットメルト接着剤。
【選択図】なし