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特許7498396ゴム材料の混練工程管理システムおよびゴム材料の混練方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】ゴム材料の混練工程管理システムおよびゴム材料の混練方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/28 20060101AFI20240605BHJP
   B29B 7/18 20060101ALI20240605BHJP
   B29B 7/52 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
B29B7/28
B29B7/18
B29B7/52
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020185613
(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公開番号】P2022075068
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】郡司 雄二
(72)【発明者】
【氏名】川口 剛
(72)【発明者】
【氏名】石田 政幸
(72)【発明者】
【氏名】川田 豊
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-58223(JP,U)
【文献】特開2006-142802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/28
B29B 7/18
B29B 7/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練ロール装置の所定位置の画像データを取得するカメラ装置と、前記画像データ、前記混練ロール装置の稼働情報および前記混練ロール装置により混練されるゴム材料の固有情報が入力、記憶される記憶部と、前記記憶部と通信可能に接続された演算部とを備えて、
前記ゴム材料の混練バッチ毎に、前記画像データに基づいて前記演算部により前記混練ロール装置に前記ゴム材料が予め設定された正規状態で巻き付けられているか否かが判断されて、この判断結果と前記稼働情報とを用いて前記ゴム材料の前記混練ロール装置による混練時間が算出されて、この算出された混練時間が前記稼働情報および前記固有情報と関連付けられて前記記憶部に記憶される構成にしたことを特徴とするゴム材料の混練工程管理システム。
【請求項2】
前記画像データの前記所定位置の色の濃淡に基づいて、前記混練ロール装置に前記ゴム材料が前記正規状態で巻き付けられているか否かが判断される請求項1に記載のゴム材料の混練工程管理システム。
【請求項3】
前記記憶部に、前記混練ロール装置に前記ゴム材料が前記正規状態で巻き付けられている正規状態画像データと、前記混練ロール装置に前記ゴム材料が前記正規状態以外の状態で巻き付けられている非正規状態画像データと、前記混練ロール装置に何も巻き付けられていないゴム無し状態画像データとを教師データとして機械学習された予測モデルが記憶されていて、前記予測モデルを用いて前記カメラ装置により取得された前記画像データとに基づいて、前記演算部により前記混練ロール装置に前記ゴム材料が前記正規状態で巻き付けられているか否かが判断される請求項1に記載のゴム材料の混練工程管理システム。
【請求項4】
前記カメラ装置として、前記混練ロール装置の正面視で前記所定位置の前記画像データを取得する正面カメラ装置と、前記混練ロール装置の側面視で前記所定位置の前記画像データを取得する側面カメラ装置とを有する請求項1~3のいずれかに記載のゴム材料の混練工程管理システム。
【請求項5】
前記混練ロール装置の外部環境温度を検知する温度センサを有し、前記温度センサにより検知された検知温度データが、算出された前記混練時間とともに前記稼働情報および前記固有情報と関連付けられて前記記憶部に記憶される請求項1~4のいずれかに記載のゴム材料の混練工程管理システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のゴム材料の混練工程管理システムを用いて前記混練ロール装置によって前記ゴム材料を混練することにより、予め設定された所定仕様の混練ゴムを製造することを特徴とするゴム材料の混練方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム材料の混練工程管理システムおよびゴム材料の混練方法に関し、さらに詳しくは、混練ロール装置による混練工程でのゴム材料の実際の混練状態をより高精度で把握できるゴム材料のゴム材料の混練工程管理システムおよびこの混練工程管理システムを用いたゴム材料の混練方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤやコンベヤベルトなど種々のゴム製品は、未加硫の成形品を加硫することで製造される。この成形品を成形するには、原料ゴムと種々の配合剤とからなるゴム材料を混練した混練ゴムが使用される。例えば、バンバリーミキサ(密閉型混練機)によって混練されたゴム材料を、いわゆるアンダーミキサと呼ばれる混練装置によって繰り返し混練することで、所定仕様の混練ゴムが製造される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この混練装置としてはオープン型の混練ロール装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。混練ロール装置による混練工程での混練時間は、製造する混練ゴムの所定仕様に応じて設定される。この混練時間が過小であると、原料ゴムに対する各種配合剤の分散具合が不十分になって所定仕様の混練ゴムを確保できないことがある。一方、この混練時間が過剰になれば生産性が低下する。一般的に、この混練時間は混練ロール装置の稼働時間で管理されている。
【0004】
ところが、ゴム材料の実際の混練時間は、混練ロール装置にゴム材料が予め設定された正規状態で巻き付けられた状態になって混練が開始されてから混練が終了するまでの時間である。ゴム材料の混練を開始するまでには混練ロール装置を稼働させてゴム材料を正規状態に巻き付けるなど、多少の準備時間が必要になる。この準備時間は混練バッチ毎にばらつくことがあるため、混練ロール装置の稼働時間だけを指標にすると、ゴム材料の実際の混練時間を精度よく把握できない。それ故、混練ロール装置による混練工程でのゴム材料の実際の混練状態をより高精度で把握するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-43486号公報
【文献】特開2005-66877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、混練ロール装置による混練工程でのゴム材料の実際の混練状態をより高精度で把握できるゴム材料の混練工程管理システムおよびこの混練管理システムを用いたゴム材料の混練方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のゴム材料の混練工程管理システムは、混練ロール装置の所定位置の画像データを取得するカメラ装置と、前記画像データ、前記混練ロール装置の稼働情報および前記混練ロール装置により混練されるゴム材料の固有情報が入力、記憶される記憶部と、前記記憶部と通信可能に接続された演算部とを備えて、前記ゴム材料の混練バッチ毎に、前記画像データに基づいて前記演算部により前記混練ロール装置に前記ゴム材料が予め設定された正規状態で巻き付けられているか否かが判断されて、この判断結果と前記稼働情報とを用いて前記ゴム材料の前記混練ロール装置による混練時間が算出されて、この算出された混練時間が前記稼働情報および前記固有情報と関連付けられて前記記憶部に記憶される構成にしたことを特徴とする。
【0008】
本発明のゴム材料の混練方法は、上記のゴム材料の混練工程管理システムを用いて前記混練ロール装置によって前記ゴム材料を混練することにより、予め設定された所定仕様の混練ゴムを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のゴム材料の混練工程管理システムによれば、前記画像データに基づいて前記演算部により前記混練ロール装置に前記ゴム材料が予め設定された正規状態で巻き付けられているか否かを判断する。そのため、この判断結果と前記稼働情報とを用いて前記演算部により前記ゴム材料の前記混練ロール装置による混練時間をより正確に算出することができる。そして、算出した前記混練時間を前記稼働情報および前記固有情報と関連付けて前記記憶部に記憶することで、混練バッチ毎に、前記混練ロール装置による混練工程での前記ゴム材料の実際の混練状態をより高精度で把握することが可能になる。
【0010】
本発明のゴム材料の混練方法によれば、前記混練工程での前記ゴム材料の実際の混練状態をより高精度で把握できるので、予め設定された所定仕様の混練ゴムを製造するには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】混練ロール装置に設置された本発明のゴム材料の混練工程管理システムの実施形態を混練ロール装置の側面視で例示する説明図である。
図2図1の混練ロール装置を平面視で例示する説明図である。
図3図1の混練ロール装置にゴム材料が正規状態で巻き付けられて混練工程の準備が完了した状態を例示する説明図である。
図4図3の混練ロール装置を平面視で例示する説明図である。
図5図3の混練ロール装置によってゴム材料を混練している状態を例示する説明図である。
図6図5の混練ロール装置を平面視で例示する説明図である。
図7】製造された混練ゴムが取り出された状態の混練ロール装置を側面視で例示する説明図である。
図8】管理システムによって取得された画像データを例示する説明図である。
図9】記憶部に記憶されているデータベースを例示する説明図である。
図10】混練ロール装置にゴム材料が正規状態で巻き付けられていることを示す画像データを例示する説明図である。
図11】混練ロール装置にゴム材料が非正規状態で巻き付けられていることを示す画像データを例示する説明図である。
図12】混練ロール装置に何も巻き付けられていない状態を示す画像データを例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のゴム材料の混練工程管理システムおよびゴム材料の混練方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1図2に例示する本発明のゴム材料の混練工程管理システム1(以下、管理システム1という)の実施形態は、カメラ装置2と、カメラ装置2により取得された画像データDが入力、記憶される記憶部3と、記憶部3と通信可能に接続された演算部4とを備えている。この実施形態では、管理システム1はさらに温度センサ5およびモニタ6を備えている。
【0014】
この管理システム1は、オープン型の混練ロール装置7に設置される。混練ロール装置7は例えば、バンバリーミキサの下方に配置される。混練ロール装置7は、一対の混練ロール8と、一対の混練ロール8の上方位置に配置されるブレンダロール9とを有している。それぞれの混練ロール8とブレンダロール9は平行に配列されている。それぞれの混練ロール8は互いに反対方向に回転する。ブレンダロール9にはロール外周面をロール幅方向に移動するトラバース部9aが備わっている。混練ロール装置7は混練制御装置10によって制御される。
【0015】
バンバリーミキサによって混練されたゴム材料Rは、一対の混練ロール8の間に投入されて通過し、通過したゴム材料Rはブレンダロール9に掛け回されて再び一対の混練ロール8の間に投入される。このようにして、ゴム材料Rが混練ロール装置7によって繰り返し混練されることで所定仕様の混練ゴムRmが製造される。
【0016】
カメラ装置2は、混練ロール装置7の所定位置Pの画像データDを取得する。この所定位置Pは、ゴム材料Rが予め設定された正規状態で混練ロール装置7に巻き付けられていることが、取得した画像データDによって確認できる位置に設定される。この正規状態とは、ゴム材料Rが不具合なく正常に混練ロール装置7によって混練できるように、一対の混練ロール8とブレンダロール9との間に掛け回されている状態である。所定位置Pは例えば、ブレンダロール9の幅方向中央部(幅方向中央部のブレンダロール9の長さの50%~70%程度の範囲)に設定される。この実施形態では、ブレンダロール9の幅方向中央部で、一対のトラバース部9aの間の領域が所定位置Pに設定されている。
【0017】
カメラ装置2としては、静止画または動画の画像データDを取得できるデジタルカメラ(CCDカメラ)が用いられる。この実施形態では、カメラ装置2として、混練ロール装置7の正面視で所定位置Pの画像データDを取得する正面カメラ装置2Aと、混練ロール装置7の側面視で所定位置Pの画像データDを取得する側面カメラ装置2Bとを有している。正面カメラ装置2A、側面カメラ装置2Bはそれぞれ1台に限らず複数台設けることもできる。側面カメラ装置2Bは任意で設ければよく、正面カメラ装置2Aだけを有する仕様にすることもできる。
【0018】
記憶部3および演算部4としては、種々のコンピュータを用いることができる。したがって、記憶部3はコンピュータのメモリであり、演算部4はCPUである。記憶部3および演算部4には、温度センサ5、モニタ6、混練制御装置10が通信可能に接続されている。
【0019】
温度センサ5は、混練ロール装置2の外部環境温度(設置場所の温度)を検知する。温度センサ5により検知された検知温度データは、記憶部3に入力、記憶される。温度センサ5は任意で設けることができる。
【0020】
モニタ6は、記憶部3に記憶されているデータや演算部4により演算、算出されたデータを表示する。記憶部3および演算部4を別途、一般的なモニタに接続して使用することができるので、記憶部3および演算部4に常時接続される専用のモニタ6は任意で設ければよい。
【0021】
混練制御装置10から記憶部3には、混練バッチ毎のゴム材料Rの固有情報F(バッチ番号、原料ゴムや配合剤の仕様、設定されている混練時間などのデータ)が入力されて記憶部3に記憶される。また、混練バッチ毎に、混練制御装置10から記憶部3に、混練ロール装置7の稼働情報M(混練ロール装置7の稼働時間、混練ロール8の回転速度、トラバース部9aの移動速度、移動範囲などのデータ)が入力されて、記憶部3に記憶される。
【0022】
演算部4は、画像データDに基づいて混練ロール装置7にゴム材料Rが正規状態で巻き付けられているか否かを判断する。この判断をするために例えば、演算部4には、混練ロール装置7にゴム材料Rが正規状態で巻き付けられているときの所定位置Pの色の濃度の許容範囲が記憶されている。正規状態ではブレンダロール9の所定位置Pにはゴム材料Rが巻き付けられているので、所定位置Pの色はブレンダロール9の外周面の色ではなくゴム材料Rの色になる。そこで、このゴム材料Rの色の濃度を基準にして、所定位置Pの色の濃度の許容範囲が決定される。そして、画像データDの所定位置Pでの濃度が許容範囲であれば、ゴム材料Rが正規状態で巻き付けられていると判断する。この濃度が許容範囲外であれば、ゴム材料Rが正規状態で巻き付けられていないと判断する。
【0023】
このように画像データDでの所定位置Pの濃度(濃淡)に基づいて、混練ロール装置7にゴム材料Rが正規状態で巻き付けられているか否かが判断される。所定位置Pの色の濃淡を利用する場合は、ブレンダロール9の外周面の色を、ゴム材料Rの色に対して濃淡差が大きいものにする必要がある。そこで、ブレンダロール9の外周面の色は、ゴム材料Rが黒色系であれば銀色系や白色系の淡い色にして、ゴム材料Rが白色系であれば黒色系などの濃い色にする。
【0024】
次に、この管理システム1を用いた本発明のゴム材料の混練方法の手順の一例を説明する。
【0025】
混練ロール装置7には、バンバリーミキサによって混練されたゴム材料Rが投入される。このゴム材料Rは、原料ゴムに対して種々の配合剤が十分に分散されていない状態である。
【0026】
混練ロール装置7では、混練工程の準備のために混練ロール装置7を稼働させて、図3図4に例示するように、ゴム材料Rを一対の混練ロール8の間に挿入、通過させてブレンダロール9に掛け回す。ゴム材料Rがこのようにブレンダロール9に掛け回された状態になると、混練工程の準備が完了する。
【0027】
引き続き、混練ロール装置7が稼働することで図5図6に例示する混練工程が開始される。混練工程では、図5に例示するように、ゴム材料Rが環状につながった状態で、一対の混練ロール8の間に投入されて通過し、その後、ブレンダロール9に掛け回されて再び一対の混練ロール8の間に投入される。このようにして、ゴム材料Rが設定された時間で混練ロール装置7によって繰り返し混練されて、所定仕様の混練ゴムRmが製造される。混練工程中には、ブレンダロール9のロール外周面をトラバース部9aが互いの間隔を一定に保ってロール幅方向に往復移動を繰り返すことで、ゴム材料Rでの各種配合剤の分散が促進される。
【0028】
図7に例示するように、製造された混練ゴムRmは、混練ロール装置7から取り出されて別工程において成形品を成形するための部材として使用される。次いで、成形された成形品を加硫することでゴム製品が完成する。ゴム製品としては、タイヤ、コンベヤベルト、防舷材などを例示できる。
【0029】
混練ロール装置7による混練工程では、ゴム材料Rの混練バッチ毎に、図8に例示するように、カメラ装置2(正面カメラ装置2A)によって所定位置Pの画像データDが取得される。尚、側面カメラ装置2Bにより取得される画像データDは、図5に示す所定位置Pを拡大したようなものになる。そして、画像データDに基づいて演算部4により混練ロール装置7にゴム材料Rが正規状態で巻き付けられているか否かが判断される。この判断結果と稼働情報Mとを用いて、混練ロール装置7によるゴム材料Rの実際の混練時間Tが演算部4により算出される。
【0030】
具体的には、画像データDに基づいてゴム材料Rが正規状態で巻き付けられていると判断され、かつ、混練ロール装置7が稼働している時間が、ゴム材料Rの実際の混練時間Tとして算出される。算出された混練時間Tは、稼働情報Mおよび固有情報Fと関連付けられて記憶部3に記憶される。
【0031】
記憶部3には、図9に例示するデータベースが構築されていて、混練バッチ毎に、固有情報F、稼働情報M、画像データD、検知温度データ、算出された混練時間Tが関連付けられて記憶される。稼働情報M、画像データD、検知温度データは、時系列で記憶される。したがって、所望の混練バッチの固有情報F(バッチ番号)を演算部4に入力することで、記憶部3に記憶されているそのバッチ番号のゴム材料Rの混練時間Tをモニタ6に表示して把握することができる。さらに、そのバッチ番号のゴム材料Rのその他の固有情報F、稼働情報M、画像データD、検知温度データもモニタ6に表示して把握することができる。
【0032】
このように、この管理システム1では、画像データDに基づいて混練ロール装置7にゴム材料Rが正規状態で巻き付けられているか否かを判断するので、混練ロール装置7によるゴム材料Rの実際の混練時間をより正確に算出することができる。そして、算出した混練時間Tを稼働情報Mおよび固有情報Fと関連付けて記憶部3に記憶することで、混練バッチ毎に、混練ロール装置7による混練工程でのゴム材料Rの実際の混練状態をより高精度で把握することができる。
【0033】
ゴム材料Rの実際の混練状態を精度よく把握できるので、混練不足の混練バッチを特定することができる。そして、上述した種々のデータを分析することで、混練不足の原因を把握することができ、所定仕様どおりの混練ゴムRmを得るための混練条件を把握することもできる。この分析結果をフィードバックして混練工程を行うことで、種々の配合剤がより均等化して分散された混練ゴムRmを安定して得るには有利になる。
【0034】
この実施形態のように温度センサ5を有していると、混練バッチ毎の混練工程での外部環境温度が把握できる。そのため、製造された混練ゴムRmの特性に対する外部環境温度の影響具合を混練バッチ毎により詳細に分析することができる。
【0035】
カメラ装置2として、正面カメラ装置2Aと側面カメラ装置2Bとを有していると、正面カメラ装置2Aにより取得された画像データDだけでなく、側面カメラ装置2Bにより取得された画像データDも用いて、混練ロール装置7にゴム材料Rが正規状態で巻き付けられているか否かを判断できる。これに伴い、この混練工程でのゴム材料Rの実際の混練時間Tを精度よく把握するには益々有利になる。
【0036】
先の実施形態では、混練ロール装置7にゴム材料Rが正規状態で巻き付けられているか否かを、画像データDでの所定位置Pの色の濃淡に基づいて判断しているが、その他に例えばAI技術を用いて判断する構成にすることもできる。
【0037】
例えば、様々な画像データDを教師データとして機械学習された予測モデルPMを用いて、混練ロール装置7にゴム材料Rが正規状態で巻き付けられているか否かを判断することもできる。この構成の場合は、図10に例示する混練ロール装置7にゴム材料Rが正規状態で巻き付けられている正規状態画像データD1と、図11に例示する混練ロール装置7にゴム材料Rが正規状態以外の状態で巻き付けられている非正規状態画像データD2と、図12に例示する混練ロール装置7に何も巻き付けられていないゴム無し状態画像データD3とを教師データとして機械学習された予測モデルPMが記憶部3に記憶される。
【0038】
この予測モデルPMは、記憶部3に入力された所定位置Pの画像データDに基づいて、混練ロール装置7にゴム材料Rが正規状態で巻き付けられているか否かを予測するためのコンピュータプログラムである。この実施形態では、カメラ装置2によって画像データDが取得される所定位置Pが、混練ロール8、ブレンダロール9およびこれらの間の領域になっている。
【0039】
画像データD1、D2、D3では、ゴム材料Rによって覆われる混練ロール装置7の範囲(ゴム材料Rの位置)、ゴム材料Rの大きさ、形状(形態)が異なる。それ故、画像データD1、D2、D3を教師データとして用いて、正規状態でゴム材料Rが巻き付けられている場合と、正規状態以外(非正規状態でゴム材料Rが巻き付けられている場合および何も巻き付けられていない場合)の場合とでの混練ロール装置7における相違点や、それぞれの場合における特徴を人工知能(AI)に機械学習させることで、前述した予測モデルPMを生成することが可能になる。記憶部3による機械学習の手法としては、例えば、ディープラーニングや、ニューラルネットワーク、回帰、クラスタリング、パターンマッチングなどが例示できる。
【0040】
混練ロール装置7による混練工程では、混練バッチ毎に、予測モデルPMを用いてカメラ装置2により取得された画像データDに基づいて、演算部4により混練ロール装置7にゴム材料Rが正規状態で巻き付けられているか否かが判断される。この判断結果と稼働情報Mとを用いて混練ロール装置7によるゴム材料Rの実際の混練時間Tが算出されるのは先の実施形態と同じである。また、算出された混練時間Tが、稼働情報Mおよび固有情報Fと関連付けられて記憶部3に記憶されるのも先の実施形態と同じである。予測モデルPMの予測精度を高めるために、記憶部3には、できるだけ多数の多様なそれぞれの画像データD1、D2、D3を記憶させて機械学習させることが好ましい。
【符号の説明】
【0041】
1 管理システム
2 カメラ装置
2A 正面カメラ装置
2B 側面カメラ装置
3 記憶部
4 演算部
5 温度センサ
6 モニタ
7 混練ロール装置
8 混練ロール
9 ブレンダロール
9a トラバース部
10 混練制御装置
R ゴム材料
Rm 混練ゴム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12