(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】パーフルオロエラストマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 214/26 20060101AFI20240605BHJP
【FI】
C08F214/26
(21)【出願番号】P 2022097886
(22)【出願日】2022-06-17
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 喬大
(72)【発明者】
【氏名】岩阪 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】角野 栄作
(72)【発明者】
【氏名】入江 正樹
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-540105(JP,A)
【文献】特開2013-189653(JP,A)
【文献】特開2021-007098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08F 2/00-2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内中で、テトラフルオロエチレン(1)およびテトラフルオロエチレン(1)以外のパーフルオロモノマー(2)を重合することにより、パーフルオロエラストマーを製造するパーフルオロエラストマーの製造方法であって、反応容器の内容積に占める、水および含フッ素溶媒の体積が、2.0体積%以下であり、パーフルオロモノマー(2)の少なくとも一部が、反応容器内で液体として存在し、パーフルオロエラストマーのガラス転移温度が、25℃以下であ
り、
パーフルオロモノマー(2)が、
一般式(2):CF
2
=CY-Rf-X
(式中、Rfは、パーフルオロアルキレン基、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロアルキレン基、パーフルオロオキシアルキレン基、または、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロオキシアルキレン基、Xは、-F、-I、-CH
2
I、-Br、-CH
2
Brまたは-CN、Yは、Fまたはパーフルオロアルキル基である)で表されるモノマーであり、
パーフルオロエラストマー中のテトラフルオロエチレン(1)単位とパーフルオロモノマー(2)単位との比率((1)/(2))が、45~90/55~10(モル%)である製造方法。
【請求項2】
反応容器の内圧が、反応容器内の液体の温度におけるパーフルオロモノマー(2)の飽和蒸気圧以上である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
パーフルオロモノマー(2)が、
一般式(2a):CF
2=CY-O-Rf
11
(式中、Rf
11は、パーフルオロアルキル基、または、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロアルキル基、Yは、Fまたはパーフルオロアルキル基である)で表されるモノマー、および、
一般式(2b):CF
2=CY-Rf
12-X
(式中、Rf
12は、パーフルオロアルキレン基、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロアルキレン基、パーフルオロオキシアルキレン基、または、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロオキシアルキレン基、Xは、-I、-CH
2I、-Br、-CH
2Brまたは-CN、Yは、Fまたはパーフルオロアルキル基である)で表されるモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1または2に製造方法。
【請求項4】
パーフルオロモノマー(2)が、
一般式(2a):CF
2=CY-O-Rf
11
(式中、Rf
11は、パーフルオロアルキル基、または、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロアルキル基、Yは、Fまたはパーフルオロアルキル基である)で表されるモノマーである請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
実質的に界面活性剤の非存在下で重合する請求項1または2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パーフルオロエラストマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パーオキシジカーボネートの存在下にテトラフルオロエチレン又はクロロトリフルオロエチレンを重合してフルオロポリマーを得る工程を含み、該パーオキシジカーボネートは、一般式:
R-O-C(=O)-O-O-C(=O)-O-R
(式中、Rは、同一又は異なって、炭素数4のアルキル基又はアルコキシアルキル基を表す。)で表されることを特徴とするフルオロポリマーの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示では、水および含フッ素溶媒を全く又はほとんど用いることなく、パーフルオロエラストマーを製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示によれば、反応容器内中で、テトラフルオロエチレン(1)およびテトラフルオロエチレン(1)以外のパーフルオロモノマー(2)を重合することにより、パーフルオロエラストマーを製造するパーフルオロエラストマーの製造方法であって、反応容器の内容積に占める、水および含フッ素溶媒の体積が、2.0体積%以下である製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、水および含フッ素溶媒を全く又はほとんど用いることなく、パーフルオロエラストマーを製造することができる製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0008】
特許文献1には、フルオロポリマーを得るための重合が、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、又は、塊状重合法により行われることが記載されている。しかしながら、塊状重合などの方法により、水および含フッ素溶媒を全く又はほとんど用いることなく、パーフルオロエラストマーを製造する方法はこれまで知られていない。
【0009】
本開示の製造方法は、反応容器内中で、テトラフルオロエチレン(1)およびテトラフルオロエチレン(1)以外のパーフルオロモノマー(2)を重合することにより、パーフルオロエラストマーを製造するための製造方法であって、重合の際に、反応容器の内容積に占める、水および含フッ素溶媒の体積を、2.0体積%以下とするものである。したがって、本開示の製造方法によれば、パーフルオロエラストマーを円滑に製造できることはもちろんのこと、従来の製造方法では必要であった凝析工程を経ることなく、パーフルオロエラストマーを回収することができる。また、従来の製造方法では凝析後に凝析剤を含有する溶媒が生じていたが、凝析工程が不要となることによって、このような溶媒の発生を回避できる。さらには、金属塩、酸などの凝析剤を用いる必要がないので、金属製の配管や槽を用いてパーフルオロエラストマーを製造した場合でも、凝析剤に由来する金属成分、または、金属製の配管や槽の腐食により生じる金属成分によるパーフルオロエラストマーの汚染も回避できる。
【0010】
反応容器の内容積に占める、水および含フッ素溶媒の体積は、2.0体積%以下であり、好ましくは1.0体積%以下であり、より好ましくは0.1体積%以下である。本開示の製造方法において、たとえば、重合開始剤を含フッ素溶媒に溶解させた溶液を反応容器に投入してもよいが、反応容器に投入される含フッ素溶媒の量を上記の数値範囲内に抑制する必要がある。
【0011】
反応容器の内容積は、たとえば、反応容器に充満させるために必要な水の体積を測定することにより、求めることができる。
【0012】
本開示の製造方法においては、重合の際に、水および含フッ素溶媒を全く用いないか、ほとんど用いない。「含フッ素溶媒」には、フッ素を含有する化合物であって、溶媒として用いられる不活性な化合物が含まれるが、モノマー、重合開始剤、連鎖移動剤、重合停止剤などの重合反応において他の化合物と反応する化合物は含まれない。
【0013】
本開示の製造方法においては、反応容器の内容積に占める、水、含フッ素溶媒およびフッ素非含有溶媒(ただし水を除く)の体積が、2.0体積%以下であることも、好ましい実施形態の1つである。すなわち、本開示の製造方法においては、重合の際に、如何なる不活性溶媒をも、全く用いないか、ほとんど用いないことが好ましい。
【0014】
反応容器の内容積に占める、水、含フッ素溶媒およびフッ素非含有溶媒(ただし水を除く)の体積は、好ましくは2.0体積%以下であり、より好ましくは1.0体積%以下であり、さらに好ましくは0.1体積%以下である。本開示の製造方法において、たとえば、重合開始剤を含フッ素溶媒またはフッ素非含有溶媒に溶解させた溶液を反応容器に投入してもよいが、反応容器に投入される含フッ素溶媒またはフッ素非含有溶媒の量を上記の数値範囲内に抑制する必要がある。
【0015】
本開示の製造方法において、重合の際に、パーフルオロモノマー(2)の少なくとも一部を、反応容器内で液体として存在させることが好ましい。パーフルオロモノマー(2)の少なくとも一部を液体として存在させることによって、テトラフルオロエチレン(1)およびパーフルオロモノマー(2)の重合反応を円滑に進行させることができる。重合温度および反応容器の内圧を適切に調整し、なおかつ、パーフルオロモノマー(2)の種類を適切に選択することによって、パーフルオロモノマー(2)の少なくとも一部を重合反応中に液体で存在させることができる。本開示の製造方法においては、重合反応の開始から停止までの全期間において、パーフルオロモノマー(2)の少なくとも一部を、反応容器内で液体として存在させることも好ましい実施形態の1つである。
【0016】
本開示の製造方法において、重合の際に、反応容器の内圧を、反応容器内の液体の温度におけるパーフルオロモノマー(2)の飽和蒸気圧以上とすることが好ましい。反応容器の内圧を飽和蒸気圧以上まで高めることによって、重合の際に、パーフルオロモノマー(2)の少なくとも一部が、反応容器内で液体として存在しやすくなり、テトラフルオロエチレン(1)およびパーフルオロモノマー(2)の重合反応を円滑に進行させることができる。反応容器の内圧は、反応容器に圧入するテトラフルオロエチレン(1)の量により調整することができる。本開示の製造方法においては、重合反応の開始から停止までの全期間において、反応容器の内圧を、反応容器内の液体の温度におけるパーフルオロモノマー(2)の飽和蒸気圧以上に維持することも好ましい実施形態の1つである。
【0017】
本開示の製造方法において、重合の際の反応容器の内圧は、たとえば、0.05~10MPaGである。重合の際の反応容器の内圧を、反応容器内の液体の温度におけるパーフルオロモノマー(2)の飽和蒸気圧以上となるように、0.05~10MPaGの範囲内で調整することも好ましい実施形態の1つである。
【0018】
本開示の製造方法において、重合温度は、たとえば、5~120℃である。重合温度を、重合の際の反応容器の内圧が反応容器内の液体の温度におけるパーフルオロモノマー(2)の飽和蒸気圧以上となるように、5~120℃の範囲内で調整することも好ましい実施形態の1つである。
【0019】
本開示の製造方法においては、テトラフルオロエチレン(1)およびテトラフルオロエチレン(1)以外のパーフルオロモノマー(2)を重合する。
【0020】
本開示において、パーフルオロモノマーとは、分子中に炭素原子-水素原子結合を含まないモノマーである。ただし、パーフルオロモノマーが架橋部位を与えるモノマーである場合には、架橋部位に炭素原子-水素原子結合を含んでもよい。パーフルオロモノマーは、炭素原子及びフッ素原子の他、炭素原子に結合しているフッ素原子のいくつかが塩素原子で置換されたモノマーであってもよく、炭素原子の他、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、燐原子、硼素原子又は珪素原子を有するものであってもよい。
【0021】
本開示において、架橋部位を与えるモノマーとは、架橋を形成するための架橋部位をフルオロポリマーに与える架橋性基を有するモノマー(キュアサイトモノマー)である。架橋部位としては、-I、-CH2I、-Br、-CH2Br、-CN、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、水酸基、ビニル基、アジド基、スルホニルアジド基、カルボニルアジド基、アルキン基(たとえばエチニル基)などが挙げられる。
【0022】
テトラフルオロエチレン(1)以外のパーフルオロモノマー(2)としては、
ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、
一般式(21):CF2=CF-ORf13
(式中、Rf13は、炭素数1~8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(22):CF2=CFOCF2ORf14
(式中、Rf14は炭素数1~6のパーフルオロアルキル基、炭素数5~6の環式パーフルオロアルキル基、炭素-炭素原子間に酸素原子を含む炭素数2~6のパーフルオロオキシアルキル基である)で表されるフルオロモノマー、および、
一般式(23):CF2=CFO-((CF2)l-CF(Y15)O)m-(CF2)nF
(式中、Y15はフッ素原子またはトリフルオロメチル基を表す。lは1~4の整数、mは1~4の整数である。nは1~4の整数である。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(24):CX4
2=CX5Rf
2X6
(式中、X4、X5は、それぞれ独立に、Fまたはパーフルオロアルキル基であり、Rf
2は1個以上の炭素-炭素原子間に酸素原子を有していてもよく、芳香環を有していてもよいパーフルオロアルキレン基であり、X6は-I、-CH2I、-Br、-CH2Br、-CN、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、水酸基、ビニル基、アジド基、スルホニルアジド基、カルボニルアジド基またはアルキン基(たとえばエチニル基)である)で表される架橋部位を与えるモノマー
などが挙げられる。
【0023】
本開示において、パーフルオロアルキル基、パーフルオロオキシアルキレン基は、いずれも、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
【0024】
一般式(21)で表されるフルオロモノマーとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、および、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、および、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)がさらに好ましい。
【0025】
一般式(22)で表されるフルオロモノマーとしては、CF2=CFOCF2OCF3、CF2=CFOCF2OCF2CF3、および、CF2=CFOCF2OCF2CF2OCF3からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0026】
一般式(23)で表されるフルオロモノマーとしては、CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)3F、CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)2(CF2)3F、CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)2(CF2)2F、および、CF2=CFOCF2CF2CF2OCF3からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0027】
一般式(24)で表される架橋部位を与えるモノマーとしては、
一般式:CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)m(CF2)n-X201
(式中、mは0~5の整数、nは1~3の整数、X201は、-I、-CH2I、-Br、-CH2Br、-CN、カルボキシル基、または、アルコキシカルボニル基である。)で表されるフルオロモノマーが挙げられる。X201は、-I、-CH2I、-Br、-CH2Brまたは-CNであることが好ましい。
【0028】
一般式(24)で表される架橋部位を与えるモノマーとしては、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2COOH、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CH2I、CF2=CFOCF2CF2CH2I、および、CF2=CFO(CF2)5CNからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CNおよびCF2=CFOCF2CF2CH2Iからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0029】
また、パーフルオロモノマーの重合においては、パーフルオロモノマーとともに、架橋部位を与えるモノマー(ただし、パーフルオロモノマーを除く)を重合させてもよい。
【0030】
架橋部位を与えるモノマー(ただし、パーフルオロモノマーを除く)としては、
一般式(11):CX181
2=CX182-Rf
181CHR181X183
(式中、X181及びX182は、独立に、水素原子、フッ素原子又はCH3、Rf
181は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基又はパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、R181は、水素原子又はCH3、X183は、ヨウ素原子又は臭素原子である。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(12):CX191
2=CX192-Rf
191X193
(式中、X191及びX192は、独立に、水素原子、フッ素原子又はCH3、Rf
191は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロポリオキシアルキレン基又はパーフルオロポリオキシアルキレン基、X193は、ヨウ素原子又は臭素原子である。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(13):CH2=CFCF2O(CF(CF3)CF2O)m(CF(CF3))n-X211
(式中、mは0~5の整数、nは1~3の整数、X211は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、又は-CH2OHである。)で表されるフルオロモノマー、及び、
一般式(14):CR221R222=CR223-Z221-CR224=CR225R226
(式中、R221、R222、R223、R224、R225及びR226は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。Z221は、直鎖又は分岐状で酸素原子を有していてもよい、炭素数1~18のアルキレン基、炭素数3~18のシクロアルキレン基、少なくとも部分的にフッ素化している炭素数1~10のアルキレン基若しくはオキシアルキレン基、又は、
-(Q)p-CF2O-(CF2CF2O)m(CF2O)n-CF2-(Q)p-
(式中、Qはアルキレン基又はオキシアルキレン基である。pは0又は1である。m/nが0.2~5である。)で表され、分子量が500~10000である(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である。)で表されるモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0031】
X183及びX193は、ヨウ素原子であることが好ましい。Rf
181及びRf
191は炭素数が1~5のパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。R181は、水素原子であることが好ましい。X211は、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、又は-CH2OHであることが好ましい。
【0032】
架橋部位を与えるモノマー(ただし、パーフルオロモノマーを除く)としては、CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CN、CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH、CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CH2OH、CH2=CHCF2CF2I、CH2=CH(CF2)2CH=CH2およびCH2=CH(CF2)6CH=CH2からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0033】
パーフオロモノマー(2)としては、なかでも、
一般式(2):CF2=CY-Rf-X
(式中、Rfは、パーフルオロアルキレン基、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロアルキレン基、パーフルオロオキシアルキレン基、または、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロオキシアルキレン基、Xは、-F、-I、-CH2I、-Br、-CH2Brまたは-CN、Yは、Fまたはパーフルオロアルキル基である)で表されるモノマーが好ましい。
【0034】
パーフオロモノマー(2)として、一般式(2)で表されるモノマーを用いることにより、重合の際に、パーフルオロモノマー(2)の少なくとも一部が、反応容器内で液体として存在しやすくなり、テトラフルオロエチレン(1)およびパーフルオロモノマー(2)の重合反応を円滑に進行させることができる。
【0035】
一般式(2)において、Rfとしては、炭素数1~12のパーフルオロアルキレン基、炭素数2~12の炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロアルキレン基、炭素数1~12のパーフルオロオキシアルキレン基、または、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロオキシアルキレン基が好ましい。
【0036】
一般式(2)において、Yとしては、Fまたは炭素数1~12のパーフルオロアルキル基が好ましく、FまたはCF3がより好ましい。
【0037】
パーフオロモノマー(2)としては、なかでも、
一般式(2a):CF2=CY-O-Rf11
(式中、Rf11は、パーフルオロアルキル基、または、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロアルキル基、Yは、Fまたはパーフルオロアルキル基である)で表されるモノマー、および、
一般式(2b):CF2=CY-Rf12-X
(式中、Rf12は、パーフルオロアルキレン基、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロアルキレン基、パーフルオロオキシアルキレン基、または、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロオキシアルキレン基、Xは、-I、-CH2I、-Br、-CH2Brまたは-CN、Yは、Fまたはパーフルオロアルキル基である)で表されるモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0038】
パーフオロモノマー(2)としては、なかでも、
一般式(2a):CF2=CY-O-Rf11
(式中、Rf11は、パーフルオロアルキル基、または、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロアルキル基、Yは、Fまたはパーフルオロアルキル基である)で表されるモノマーがさらに好ましい。
【0039】
パーフオロモノマー(2)として、一般式(2a)で表されるモノマーを用いる場合には、一般式(2a)で表されるモノマーとともに、一般式(2b)で表されるモノマーを用いることも、好ましい実施形態の1つである。
【0040】
一般式(2a)において、Rf11としては、炭素数1~12のパーフルオロアルキル基、または、炭素数2~12の炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0041】
一般式(2a)において、Yとしては、Fまたは炭素数1~12のパーフルオロアルキル基が好ましく、FまたはCF3がより好ましい。
【0042】
一般式(2b)において、Rf12としては、炭素数1~12のパーフルオロアルキレン基、炭素数2~12の炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロアルキレン基、炭素数1~12のパーフルオロオキシアルキレン基、または、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロオキシアルキレン基が好ましい。
【0043】
一般式(2b)において、Yとしては、Fまたは炭素数1~12のパーフルオロアルキル基が好ましく、FまたはCF3がより好ましい。
【0044】
一般式(2a)で表されるモノマーとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、および、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、および、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)がさらに好ましい。
【0045】
一般式(2b)で表されるモノマーとしては、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2COOH、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CH2I、CF2=CFOCF2CF2CH2I、および、CF2=CFO(CF2)5CNからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CNおよびCF2=CFOCF2CF2CH2Iからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0046】
パーフルオロモノマー(2)としてヨウ素原子を有するモノマーを使用する場合、パーフルオロエラストマーをパーオキサイド架橋させることができ、機械特性に優れたパーフルオロエラストマーの架橋された弾性体が得られる点で、得られるパーフルオロエラストマーのヨウ素含有量は、好ましくは0.02~5.0質量%であり、より好ましくは0.05~3.0質量%であり、さらに好ましくは0.1~2.0質量%である。
【0047】
本開示の製造方法において、重合開始剤の存在下にパーフルオロモノマーの重合を行ってもよい。重合開始剤としては、たとえば、
ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec-ブチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類;
t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類;
ジt-ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類;
ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロバレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パーオキサイド、ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル-ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル-パーオキサイド、ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル-パーフルオロブチリル-パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドなどのジ[パーフロロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類;
ジ(3-ヨード-2,2,3,3-テトラフルオロプロパノイル)パーオキサイド、ジ(ジフルオロヨードアセチル)パーオキサイド、ジ(ブロモジフルオロアセチル)パーオキサイド、ジ(ブロモフルオロヨードアセチル)パーオキサイドなどのヨウ素/臭素含有パーオキサイド;
3,3-ジオキシビス(2,2-ジフルオロ-3-オキソプロパンニトリル)などのニトリル含有パーオキサイド;
などが代表的なものとしてあげられる。
【0048】
重合開始剤の添加量としては、テトラフルオロエチレン(1)およびパーフルオロモノマー(2)の合計を100質量%とした場合に、好ましくは0.0001~10質量%であり、より好ましくは0.01~5質量%である。
【0049】
重合における重合開始剤の添加の時機は、特に限定されず、重合の開始前に添加してもよいし、重合の開始後に添加してもよい。また、上記重合において、重合開始剤を任意の時機に一括して添加してもよいし、連続的に添加してもよい。重合開始剤を連続的に添加するとは、たとえば、重合開始剤を一括ではなく、経時的に、かつ、間断なくまたは分割して、添加することである。重合開始剤を連続的に添加する場合は、添加した重合開始剤の合計量が、上記した範囲の添加量となるように添加することが好ましい。重合開始剤を添加する場合には、重合開始剤および含フッ素溶媒を含む溶液を調製し、該溶液を添加してもよい。
【0050】
本開示の製造方法においては、通常、モノマーの重合を、界面活性剤の非存在下で行う。界面活性剤としては、含フッ素界面活性剤が挙げられる。含フッ素界面活性剤としては、アニオン性含フッ素界面活性剤等が挙げられる。アニオン性含フッ素界面活性剤は、たとえば、アニオン性基を除く部分の総炭素数が20以下のフッ素原子を含む界面活性剤であってよい。
【0051】
本開示において「実質的に界面活性剤の非存在下に」とは、テトラフルオロエチレン(1)およびパーフルオロモノマー(2)の総質量に対する界面活性剤の量が、10質量ppm以下であることを意味する。界面活性剤の量としては、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、更に好ましくは10質量ppb以下であり、更により好ましくは1質量ppb以下である。
【0052】
テトラフルオロエチレン(1)およびパーフルオロモノマー(2)の重合反応は、たとえば、攪拌機を備えた耐圧の反応容器から酸素を除去し、パーフルオロモノマー(2)を反応容器に投入し、所定の温度にし、テトラフルオロエチレン(1)を反応容器に投入し、所定の圧力にし、重合開始剤を反応容器に投入することによって、開始することができる。所定量のテトラフルオロエチレン(1)を供給した時点で、供給を停止し、反応容器内のテトラフルオロエチレン(1)をパージし、反応を停止する。反応の進行とともに圧力が低下する場合は、初期圧力を維持するように、追加のテトラフルオロエチレン(1)を連続的又は間欠的に反応容器に投入することができる。また、必要に応じて、追加のパーフルオロモノマー(2)を連続的又は間欠的に反応容器に投入することができる。
【0053】
本開示の製造方法の一実施形態においては、重合終了後に、反応容器内に、生成したパーフルオロエラストマーが、液状のパーフルオロモノマー(2)に溶解した状態で得られる。したがって、反応容器内のパーフルオロエラストマーの溶液を回収し、回収した溶液を乾燥させることによって、塊状のパーフルオロエラストマーを得ることができる。乾燥温度は、好ましくは40~250℃である。
【0054】
本開示の製造方法においては、パーフルオロエラストマーを製造する。
【0055】
本開示において、エラストマーとは、非晶質ポリマーである。「非晶質」とは、ポリマーの示差走査熱量測定〔DSC〕(昇温速度10℃/分)あるいは示差熱分析〔DTA〕(昇温速度10℃/分)において現われた融解ピーク(ΔH)の大きさが4.5J/g以下であることをいう。パーフルオロエラストマーは、架橋することにより、エラストマー特性を示す。エラストマー特性とは、ポリマーを延伸することができ、ポリマーを延伸するのに必要とされる力がもはや適用されなくなったときに、その元の長さを保持できる特性を意味する。
【0056】
本開示において、パーフルオロエラストマーとは、全重合単位に対するパーフルオロモノマー単位の含有量が90モル%以上、好ましくは91モル%以上のフルオロポリマーであって、25℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有するフルオロポリマーであり、さらに、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度が71質量%以上、好ましくは71.5質量%以上であるポリマーである。本開示において、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度は、フルオロポリマーを構成する各モノマーの種類と含有量より、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度(質量%)を計算により求めるものである。
【0057】
本開示において、パーフルオロエラストマーを構成する各モノマーの含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析、その他公知の方法をモノマーの種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0058】
パーフルオロエラストマーのガラス転移温度は、25℃以下であり、好ましくは5℃以下であり、より好ましくは1℃以下であり、好ましくは-70℃以上であり、より好ましくは-60℃以上であり、さらに好ましくは-50℃以上である。
【0059】
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e)を用い、試料10mgを10℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線の二次転移前後のベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との2つの交点の中点を示す温度として求めることができる。
【0060】
パーフルオロエラストマー中のテトラフルオロエチレン(1)単位とパーフルオロモノマー(2)単位との比率((1)/(2))は、好ましくは45~90/55~10(モル%)である。このようなモル比率を有するパーフルオロエラストマーが得られるように、反応容器に投入するテトラフルオロエチレン(1)およびパーフルオロモノマー(2)の比率を調整することによって、テトラフルオロエチレン(1)およびパーフルオロモノマー(2)の重合反応を円滑に進行させることができる。
【0061】
パーフルオロエラストマーとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)/一般式(21)、(22)又は(23)で表されるフルオロモノマー共重合体及びTFE/一般式(21)、(22)又は(23)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0062】
その組成は、TFE/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)共重合体の場合、好ましくは、45~90/10~55(モル%)であり、より好ましくは、55~80/20~45であり、更に好ましくは、55~70/30~45である。
【0063】
TFE/PMVE/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは、45~89.9/10~54.9/0.01~4(モル%)であり、より好ましくは、55~77.9/20~49.9/0.1~3.5であり、更に好ましくは、55~69.8/30~44.8/0.2~3である。
【0064】
TFE/炭素数が4~12の一般式(21)、(22)又は(23)で表されるフルオロモノマー共重合体の場合、好ましくは、50~90/10~50(モル%)であり、より好ましくは、60~88/12~40であり、更に好ましくは、65~85/15~35である。
【0065】
TFE/炭素数が4~12の一般式(21)、(22)又は(23)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは、50~89.9/10~49.9/0.01~4(モル%)であり、より好ましくは、60~87.9/12~39.9/0.1~3.5であり、更に好ましくは、65~84.8/15~34.8/0.2~3である。
【0066】
これらの組成の範囲を外れると、ゴム弾性体としての性質が失われ、樹脂に近い性質となる傾向がある。
【0067】
上記パーフルオロエラストマーとしては、TFE/一般式(23)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるフルオロモノマー共重合体、TFE/一般式(23)で表されるパーフルオロビニルエーテル共重合体、TFE/一般式(21)で表されるフルオロモノマー共重合体、および、TFE/一般式(21)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0068】
上記パーフルオロエラストマーとしては、国際公開第97/24381号、特公昭61-57324号公報、特公平4-81608号公報、特公平5-13961号公報等に記載されているパーフルオロエラストマーも挙げることができる。
【0069】
上記パーフルオロエラストマーは、耐熱性が良好な点で、170℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、150以下であることが好ましく、120以下であることがより好ましく、110以下であることが更に好ましい。
【0070】
上記パーフルオロエラストマーは、耐熱性が良好な点で、140℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、180以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましく、110以下であることが更に好ましい。
【0071】
上記パーフルオロエラストマーは、耐熱性が良好な点で、100℃におけるムーニー粘度ML(1+10)が10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、120以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、80以下であることが更に好ましい。
【0072】
上記ムーニー粘度は、ALPHA TECHNOLOGIES社製 ムーニー粘度計MV2000E型を用いて、170℃又は140℃、100℃において、JIS K6300に従い測定することができる。
【0073】
本開示の製造方法により得られるパーフルオロエラストマーに対して、硬化剤、充填剤等を加え、パーフルオロエラストマー組成物を調製することができる。
【0074】
上記硬化剤としては、ポリオール、ポリアミン、有機過酸化物、有機スズ、ビス(アミノフェノール)テトラアミン、ビス(チオアミノフェノール)等が挙げられる。
【0075】
上記パーフルオロエラストマーを用いて成形加工することによりパーフルオロエラストマー成形体を得ることができる。上記成形加工する方法としては、特に限定されず、上述の硬化剤を用いて行う公知の方法が挙げられる。成形方法としては、圧縮成形法、注入成形法、インジェクション成形法、押出し成形法、ロートキュアーによる成形法などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
パーフルオロエラストマー組成物が硬化剤(架橋剤)を含有する場合、パーフルオロエラストマー組成物を架橋することにより、パーフルオロエラストマー成形体として、架橋物を得ることができる。架橋方法としては、スチーム架橋法、加熱による架橋法、放射線架橋法等が採用でき、なかでも、スチーム架橋法、加熱による架橋法が好ましい。限定されない具体的な架橋条件としては、通常、140~250℃の温度範囲、1分間~24時間の架橋時間内で、架橋促進剤、架橋剤および受酸剤などの種類により適宜決めればよい。
【0077】
上記パーフルオロエラストマー成形体は、シール、ガスケット、電線被覆、ホース、チューブ、積層体、アクセサリー等として好適であり、特に半導体製造装置用部品、自動車部品、等に好適である。
【0078】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0079】
<1> 本開示の第1の観点によれば、
反応容器内中で、テトラフルオロエチレン(1)およびテトラフルオロエチレン(1)以外のパーフルオロモノマー(2)を重合することにより、パーフルオロエラストマーを製造するパーフルオロエラストマーの製造方法であって、反応容器の内容積に占める、水および含フッ素溶媒の体積が、2.0体積%以下である製造方法が提供される。
<2> 本開示の第2の観点によれば、
パーフルオロモノマー(2)の少なくとも一部が、反応容器内で液体として存在する第1の観点による製造方法が提供される。
<3> 本開示の第3の観点によれば、
反応容器の内圧が、反応容器内の液体の温度におけるパーフルオロモノマー(2)の飽和蒸気圧以上である第2の観点による製造方法が提供される。
<4> 本開示の第4の観点によれば、
パーフルオロモノマー(2)が、
一般式(2):CF2=CY-Rf-X
(式中、Rfは、パーフルオロアルキレン基、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロアルキレン基、パーフルオロオキシアルキレン基、または、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロオキシアルキレン基、Xは、-F、-I、-CH2I、-Br、-CH2Brまたは-CN、Yは、Fまたはパーフルオロアルキル基である)で表されるモノマーである第1~第3のいずれかの観点による製造方法が提供される。
<5> 本開示の第5の観点によれば、
パーフルオロモノマー(2)が、
一般式(2a):CF2=CY-O-Rf11
(式中、Rf11は、パーフルオロアルキル基、または、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロアルキル基、Yは、Fまたはパーフルオロアルキル基である)で表されるモノマー、および、
一般式(2b):CF2=CY-Rf12-X
(式中、Rf12は、パーフルオロアルキレン基、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロアルキレン基、パーフルオロオキシアルキレン基、または、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロオキシアルキレン基、Xは、-I、-CH2I、-Br、-CH2Brまたは-CN、Yは、Fまたはパーフルオロアルキル基である)で表されるモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種である第1~第4のいずれかの観点による製造方法が提供される。
<6> 本開示の第6の観点によれば、
パーフルオロモノマー(2)が、
一般式(2a):CF2=CY-O-Rf11
(式中、Rf11は、パーフルオロアルキル基、または、炭素-炭素原子間に酸素原子を含むパーフルオロアルキル基、Yは、Fまたはパーフルオロアルキル基である)で表されるモノマーである第1~第5のいずれかの観点による製造方法が提供される。
<7> 本開示の第7の観点によれば、
パーフルオロエラストマーのガラス転移温度が、25℃以下である第1~第6のいずれかの観点による製造方法が提供される。
<8> 本開示の第8の観点によれば、
パーフルオロエラストマー中のテトラフルオロエチレン(1)単位とパーフルオロモノマー(2)単位との比率((1)/(2))が、45~90/55~10(モル%)である第1~第7のいずれかの観点による製造方法が提供される。
<9> 本開示の第9の観点によれば、
実質的に界面活性剤の非存在下で重合する第1~第8のいずれかの観点による製造方法が提供される。
【実施例】
【0080】
つぎに本開示の実施形態について実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0081】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0082】
(ポリマー組成)
19F-NMR(溶融NMR)およびフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)により測定した。
【0083】
(貯蔵弾性率(G’))
アルファテクノロジーズ社製のラバープロセスアナライザ(型式:RPA2000)により、100℃、1Hzで動的歪み1%時の貯蔵弾性率G’を測定した。
【0084】
(ヨウ素含有量)
元素分析により測定した。
【0085】
(ガラス転移温度)
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e)を用い、試料10mgを10℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、JIS K6240に規定される微分曲線のピークトップ温度をガラス転移温度とした。
【0086】
実施例1
3Lステンレス製オートクレーブを真空窒素置換で酸素を除去し、槽内を真空引きして2-(2-(Heptafluoropropoxy)-1,1,2,3,3,3-Hexafluoropropoxy)-1,1,2,3,3,3-Hexafluoropropyl(Trifluorovinyl) Ether(VE-1) 2332gおよび1,1,2,2-Tetrafluoro-3-Iodo-1-(1,2,2-Trifluoroethenoxy) Propane 68gを真空吸引した。系内を攪拌しながら25℃に温調し、テトラフルオロエチレン(TFE)で重合槽内圧が0.502MPaGになるよう圧入した。ジ-(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイドを8質量%含むパーフルオロヘキサン溶液(DHP)1.04g及びVE-1 5gを窒素で圧入して反応開始した。圧力が0.490MPaGまで降下したところで、TFEを0.510MPaGになるよう仕込み、反応開始5時間後にDHP1.08g及びVE-1 5gを窒素で圧入した。これを繰り返しTFE 90g仕込んだところで供給を停止し、オートクレーブ内のガスを放出し、冷却後に抜き出した溶液を200℃真空乾燥させることで、223.5gのポリマーを得た。得られたポリマーは、TFE/VE-1共重合体であり、TFE単位およびVE-1単位を84.0/16.0のモル比(TFE/VE-1)の割合で含んでいた。得られたポリマーの100℃におけるG’は350kPaであった。得られたポリマー中に0.69質量%のヨウ素を含んでいた。ガラス転移温度は-16.2℃であった。
【0087】
実施例2
3Lステンレス製オートクレーブを真空窒素置換で酸素を除去し、槽内を真空引きしてVE-1 2332gおよび1,1,2,2-Tetrafluoro-3-Iodo-1-(1,2,2-Trifluoroethenoxy) Propane 68gを真空吸引した。系内を攪拌しながら25℃に温調し、TFEで重合槽内圧が0.714MPaGになるよう圧入した。DHP 3.60g及びVE-1 5gを窒素で圧入して反応開始した。圧力が0.690MPaGまで降下したところで、TFEを0.705MPaGになるよう仕込み、反応開始5時間後にDHP1.80g及びVE-1 5gを窒素で圧入した。これを繰り返しTFE 64g仕込んだところで供給を停止し、オートクレーブ内のガスを放出し、冷却後に抜き出した溶液を200℃真空乾燥させることで、165.0gのポリマーを得た。得られたポリマーは、TFE/VE-1共重合体であり、TFE単位およびVE-1単位を79.8/20.2のモル比(TFE/VE-1)の割合で含んでいた。得られたポリマーの100℃におけるG’は70kPaであった。得られたポリマー中に0.64質量%のヨウ素を含んでいた。ガラス転移温度は-19.7℃であった。
【0088】
実施例3
3Lステンレス製オートクレーブを真空窒素置換で酸素を除去し、槽内を真空引きしてVE-1 2400gおよび1,1,2,2-Tetrafluoro-3-Iodo-1-(1,2,2-Trifluoroethenoxy) Propane 20gおよび1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロ-1,4-ジヨードブタン 2.5gを真空吸引した。系内を攪拌しながら25℃に温調し、TFEで重合槽内圧が0.610MPaGになるよう圧入した。DHP 2.08g及びVE-1 5gを窒素で圧入して反応開始した。圧力が0.590MPaGまで降下したところで、TFEを0.605MPaGになるよう仕込み、反応開始8時間後、12時間後にDHP1.80g及びVE-1 5gを窒素で圧入した。これを繰り返しTFE 126g仕込んだところで供給を停止し、オートクレーブ内のガスを放出し、冷却後に抜き出した溶液を200℃真空乾燥させることで、372.8gのポリマーを得た。得られたポリマーは、TFE/VE-1共重合体であり、TFE単位およびVE-1単位を82.0/18.0のモル比(TFE/VE-1)の割合で含んでいた。得られたポリマーの100℃におけるG’は24kPaであった。得られたポリマー中に0.56質量%のヨウ素を含んでいた。ガラス転移温度は-20.6℃であった。
【0089】
実施例4
0.5Lステンレス製オートクレーブを真空窒素置換で酸素を除去し、槽内を真空引きして系内を攪拌しながら15℃に温調し、Trifluoromethyl Trifluorovinyl Ether(VE-2) 109gおよびTFE 6.7gを導入した。DHP 2.05gを窒素で圧入して反応開始した。反応開始時の圧力は0.575MPaGであった。圧力が0.5640MPaGまで降下したところで、オートクレーブ内の液化ガスをオートクレーブ底部バルブから抜き出した際、液体だったため、反応容器内のガスが液化状態だったことが確認できた。抜き出した液体をガラス容器に受け、ガラス容器内の液体を揮発させた後、100℃で乾燥させることで、0.2gのポリマーを得た。得られたポリマーは、TFE/VE-2共重合体であり、TFE単位およびVE-2単位を61.1/38.9のモル比(TFE/VE-2)の割合で含んでいた。ガラス転移温度は0.5℃であった。