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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6585 20110101AFI20240605BHJP
   H01R 13/6471 20110101ALI20240605BHJP
   H01R 12/91 20110101ALI20240605BHJP
   H01R 24/60 20110101ALI20240605BHJP
【FI】
H01R13/6585
H01R13/6471
H01R12/91
H01R24/60
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023529289
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2021023660
(87)【国際公開番号】W WO2022269770
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000177690
【氏名又は名称】山一電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】笠井 栄治
(72)【発明者】
【氏名】高平 浩司
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-113945(JP,A)
【文献】特開平8-138806(JP,A)
【文献】特開2002-334752(JP,A)
【文献】特開2001-210432(JP,A)
【文献】特開平9-199231(JP,A)
【文献】特開平8-213108(JP,A)
【文献】米国特許第6540559(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/6585
H01R 13/6471
H01R 12/91
H01R 24/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の外部基板に実装されるレセプタクルユニットと、第2の外部基板に実装され前記レセプタクルユニットに接続されるプラグユニットと、を備え、第1の方向で前記プラグユニットを前記レセプタクルユニットに挿入し篏合して接続することにより、前記第1の外部基板と前記第2の外部基板とを電気的に接続するコネクタであって、
前記レセプタクルユニットは、前記第1の方向に直交する第2の方向において所定間隔に配設され、一端で第1の外部基板に接続される複数の第1コンタクトを備え、
前記プラグユニットは、前記第1コンタクトに各々対応して前記第2の方向に配設され、それぞれ、一端で前記第1コンタクトの他端に接続され、他端で第2の外部基板に接続される複数の第2コンタクトを備え、
前記第1コンタクトおよび前記第2コンタクトは、各チャネルに対応して複数のシグナル用コンタクトを間に挟む2つのグランド用コンタクトのセットが複数セット配列されて構成され、
前記レセプタクルユニットおよび前記プラグユニットの少なくともいずれかは、少なくとも前記第2の方向で互いに離隔してそれぞれが異なるチャネルに対応するように設けられ、対応するチャネルのグランド用コンタクトまたは前記第1もしくは第2の外部基板のグランドにそれぞれ電気的に接続される複数の遮蔽板をさらに備える、
コネクタ。
【請求項2】
前記第1コンタクトおよび前記第2コンタクトは、前記第1の方向および前記第2の方向に共に直交する第3の方向にそれぞれ複数列設けられ、
前記遮蔽板は前記第3の方向に隣り合うチャネルの間に設けられる、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記レセプタクルユニットおよび前記プラグユニットにおいて、接続される前記第1または第2の外部基板側の端部に設けられる導電樹脂部材であって、前記チャネルのうち、対応する遮蔽板が設けられたチャネル以外のチャネルに対応して設けられ、対応するチャネルのグランド用コンタクトに電気的に接続される導電樹脂部材をさらに備える、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記遮蔽板は、短冊状の金属板と、該金属板の一端部の両端から延在して他端部へ向けてフック状に折り曲がってグランド接続されるフック部とを有する、
請求項2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記レセプタクルユニットおよび前記プラグユニットの少なくともいずれかは、前記第3の方向で隣接するチャネル間で前記遮蔽板の挿入を可能にする穴が穿設されている
請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記穴は、前記遮蔽板の幅に対応したサイズの溝であって前記穴の前記第2の方向で対向する内壁面から前記第2の方向の外側へ延在するように形成されて前記遮蔽板の挿入を導くガイド溝をさらに有する
請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記遮蔽板は、前記第3の方向に隣接するチャネルごとに配設され、
前記遮蔽板は、前記フック部が互いに反対方向を向くように2枚セットにして前記ガイド溝にそれぞれ圧入されることにより前記レセプタクルユニットまたは前記プラグユニットに装着される請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記遮蔽板は、前記穴を貫通して前記コネクタの外側面から露出するように配置される、
請求項5に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記レセプタクルユニットは、
中空枠体で構成され第1基板に固定される固定ハウジングと、
前記固定ハウジングの枠体に囲まれる開口部に可動空間をあけて収められた浮動ハウジングと、
を備え、
前記第1コンタクトは、前記固定ハウジングと前記浮動ハウジングとの間に架設され、前記固定ハウジングに支持される第1支持片部と、前記浮動ハウジングに支持される第2支持片部と、これら2つの支持片部の間に介在し、弾性変形が可能な弾性変形部とを有し、
前記弾性変形部は、
前記固定ハウジング及び前記浮動ハウジングにおける前記可動空間を向いた壁部に沿って延伸する2つの直線部と、前記2つの直線部の上端の間の可撓部と
を有し、
前記壁部における前記可撓部に対向する部分は前記可撓部の形状に倣って湾曲している、
請求項1から8のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記第1コンタクトは、
前記第1支持片部に繋がった端子部と、
前記第2支持片部に繋がった接点部と
を有し、
前記固定ハウジングは、
前記開口部を囲むようにして対向する第1壁部を有し、
前記浮動ハウジングは、
前記プラグユニットが挿入されるスロットを有し、
前記浮動ハウジングには、底面から前記スロット内に向けて貫通する貫通孔があり、
前記第1コンタクトは、前記貫通孔を介して前記接点部を前記スロット内に突出させ、前記弾性変形部を前記可動空間に収めるようにして、前記固定ハウジング及び前記浮動ハウジングに圧入されている
請求項9に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記導電樹脂部材は、下板部と、前記下板部の中央から前記第1または第2の外部基板の側である第1の側とは反対の第2の側に突出した凸部とを有し、
前記凸部が前記レセプタクルユニットまたは前記プラグユニットの外部基板側の面に設けられた溝に嵌っている、
請求項3に記載のコネクタ。
【請求項12】
前記下板部は、直方体の四隅を前記第1の方向および前記第2の方向に共に直交する第3の方向の外側に突出させた形状を有しており、
前記外側に突出させた部分から前記第2の側に起立した柱部が設けられており、
前記柱部は、対応するチャネルのグランド用のコンタクトに接触している
請求項11に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタの技術分野に関し、より具体的には、2つの基板を電気的に接続するためのボードトゥボードコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高速伝送用のコネクタにおいては、コンタクトに導電樹脂部材を接触させて取り付けて伝送特性の波形を鈍らせることにより、コンタクト間で発生し得るクロストークの低減を図っていた。
【0003】
しかしながら、導電樹脂部材には弾性構造を持たせることが容易でないためにコンタクトとの接触が不安定になることがあり、また、導電性樹脂材料によりコストが増大するという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-220427号公報
【文献】特開2019-160492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、コンタクト間のクロストークを低減するとともに、安定した接触構造を有する高速伝送用コネクタを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、第1の外部基板に実装されるレセプタクルユニットと、第2の外部基板に実装され前記レセプタクルユニットに接続されるプラグユニットと、を備え、第1の方向で前記プラグユニットを前記レセプタクルユニットに挿入し篏合して接続することにより、前記第1の外部基板と前記第2の外部基板とを電気的に接続するコネクタであって、
前記レセプタクルユニットは、前記第1の方向に直交する第2の方向において所定間隔に配設され、一端で第1の外部基板に接続される複数の第1コンタクトを備え、
前記プラグユニットは、前記第1コンタクトに各々対応して前記第2の方向に配設され、それぞれ、一端で前記第1コンタクトの他端に接続され、他端で第2の外部基板に接続される複数の第2コンタクトを備え、
前記第1コンタクトおよび前記第2コンタクトは、各チャネルに対応して複数のシグナル用コンタクトを間に挟む2つのグランド用コンタクトのセットが複数セット配列されて構成され、
前記レセプタクルユニットおよび前記プラグユニットの少なくともいずれかは、少なくとも前記第2の方向で互いに離隔してそれぞれが異なるチャネルに対応するように設けられ、対応するチャネルのグランド用コンタクトまたは前記第1もしくは第2の外部基板のグランドにそれぞれ電気的に接続される複数の遮蔽板をさらに備える、を備える。コンタクトが提供される。
【0007】
前記第1コンタクトおよび前記第2コンタクトは、前記第1の方向および前記第2の方向に共に直交する第3の方向にそれぞれ複数列設けられてもよく、
前記遮蔽板は、前記第3の方向に隣り合うチャネルの間に設けられてもよい。
【0008】
この態様の前記レセプタクルユニットおよび前記プラグユニットにおいて、接続される前記第1または第2の外部基板側の端部に設けられる導電樹脂部材であって、前記チャネルのうち、対応する遮蔽板が設けられたチャネル以外のチャネルに対応して設けられ、対応するチャネルのグランド用コンタクトに電気的に接続される導電樹脂部材をさらに備えてもよい。
【0009】
前記遮蔽板は、短冊状の金属板と、該金属板の一端部の両端から延在して他端部へ向けてフック状に折り曲がってグランド接続されるフック部とを有してもよい。
【0010】
また、前記レセプタクルユニットおよび前記プラグユニットの少なくともいずれかは、前記第3の方向で隣接するチャネル間で前記遮蔽板の挿入を可能にする穴が穿設されていてもよい。
【0011】
また、前記穴は、前記遮蔽板の幅に対応したサイズの溝であって前記穴の前記第2の方向で対向する内壁面から前記第2の方向の外側へ延在するように形成されて前記遮蔽板の挿入を導くガイド溝をさらに有してもよい。
【0012】
また、前記遮蔽板は、前記第3の方向に隣接するチャネルごとに配設され、
前記遮蔽板は、前記フック部が互いに反対方向を向くように2枚セットにして前記ガイド溝にそれぞれ圧入されることにより前記レセプタクルユニットまたは前記プラグユニットに装着されてもよい。
【0013】
また、前記遮蔽板は、前記穴を貫通して前記コネクタの外側面から露出するように配置されてもよい。
【0014】
また、前記レセプタクルユニットは、中空枠体で構成され第1基板に固定される固定ハウジングと、前記固定ハウジングの枠体に囲まれる開口部に可動空間をあけて収められた浮動ハウジングと、を備え、前記第1コンタクトは、前記固定ハウジングと前記浮動ハウジングとの間に架設され、前記固定ハウジングに支持される第1支持片部と、前記浮動ハウジングに支持される第2支持片部と、これら2つの支持片部の間に介在し、弾性変形が可能な弾性変形部とを有し、前記弾性変形部は、前記固定ハウジング及び前記浮動ハウジングにおける前記可動空間を向いた壁部に沿って延伸する2つの直線部と、前記2つの直線部の上端の間の可撓部とを有し、前記壁部における前記可撓部に対向する部分は前記可撓部の形状に倣って湾曲していてもよい。
【0015】
前記第1コンタクトは、前記第1支持片部に繋がった端子部と、前記第2支持片部に繋がった接点部とを有し、前記固定ハウジングは、前記開口部を囲むようにして対向する第1壁部を有し、 前記浮動ハウジングは、前記プラグユニットが挿入されるスロットを有し、前記浮動ハウジングには、底面から前記スロット内に向けて貫通する貫通孔があり、 前記第1コンタクトは、前記貫通孔を介して前記接点部を前記スロット内に突出させ、前記弾性変形部を前記可動空間に収めるようにして、前記固定ハウジング及び前記浮動ハウジングに圧入されていてもよい。
【0016】
また、前記導電樹脂部材は、下板部と、前記下板部の中央から前記第1または第2の外部基板の側である第1の側とは反対の第2の側に突出した凸部とを有し、前記凸部が前記レセプタクルユニットまたは前記プラグユニットの外部基板側の面に設けられた溝に嵌っていてもよい。
【0017】
さらに、前記下板部は、直方体の四隅を、前記第1の方向および前記第2の方向に共に直交する第3の方向の外側に突出させた形状を有しており、前記外側に突出させた部分から前記第2の側に起立した柱部が設けられており、前記柱部は、対応するチャネルのグランド用のコンタクトに接触していてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コンタクト間のクロストークが低減されて安定した接触構造を有する高速伝送用コネクタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るコネクタの全体構成を示す図の一例である。
図2図1のA―A線に沿ったコネクタ100の断面図である。
図3図1に示すコネクタが備えるプラグユニット97の斜視図の一例である。
図4図1に示すコネクタが備えるプラグユニット97を-Z側から見た平面図である。
図5図1に示すコネクタが備えるプラグユニット97を―Y側から見た正面図である。
図6図1に示すコネクタが備えるプラグユニット97を+Z側から見た底面図である。
図7図1に示すコネクタが備えるプラグユニット97を―X側から見た右側面図である。
図8図1に示すコネクタが備えるプラグユニット97の分解斜視図の一例である。
図9】遮蔽板80の詳細構成を示す斜視図の一例である。
図10図6の部分拡大図の一例である。
図11】コンタクト7-jおよびコンタクト3-jの接続態様を示す斜視図の一例である。
図12】遮蔽板80とコンタクト7-j,3-jとの位置関係を示す斜視図の一例である。
図13図1に示すコネクタが備えるレセプタクルユニット93の斜視図の一例である。
図14図13に示すレセプタクルユニット93を上(+Z)側から見た平面図である。
図15図13に示すレセプタクルユニット93を左(―Y)側から見た正面図である。
図16図13に示すレセプタクルユニット93を下(-Z)側から見た底面図である。
図17図13に示すレセプタクルユニット93を後(―X)側から見た右側面図である。
図18図13に示すレセプタクルユニット93の分解斜視図の一例である。
図19】コンタクト3-j(j=1~K)の個別の詳細構成を示す斜視図の一例である。
図20】導電樹脂部材5を示す斜視図の一例である。
図21A】レセプタクルユニット93の前(+X)方向へのフローティングの様子を示す図の一例である。
図21B】レセプタクルユニット93の前(+X)方向へのフローティングの様子を示す図の他の一例である。
図21C】レセプタクルユニット93の左右(±Y)方向のフローティングの様子を示す図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態のいくつかについて図面を参照しながら説明する。図面において同一のまたは対応する要素・部材には同一の参照符号を付し、その重複説明は適宜省略する。また、図中の各部材の形状・サイズについては、説明を容易にするため、適宜拡大・縮小・省略しており、このために現実の縮尺・比率とは合致していない場合がある。また、図面の説明においても、紙面の上下方向に即してそれぞれ「上」「下」の用語を便宜的に用いるために、重力加速度の方向と一致しない場合がある点に留意されたい。
【0021】
以下で使用される第1、第2等のような用語は、同一又は相応する構成要素を区別するための識別記号に過ぎず、従って、これら第1、第2等の用語によって同一又は相応する構成要素が特に限定されるものではない。
【0022】
また、「結合」は、各構成要素間の接触関係において、各構成要素間で物理的に直接接触される場合だけを意味するのではなく、他の構成が各構成要素間に介在し、各構成要素がその他の構成にそれぞれ接触している場合までも含む概念である。
【0023】
図1に本発明の一実施形態に係るコネクタの全体構成を示す。本実施形態のコネクタ100は、第1の外部基板(図示せず)に接続されるプラグユニット97と、第2の外部基板(図示せず)に接続されるレセプタクルユニット93と、を備え、プラグユニット97を図のZ方向で反転させて、そのヘッダ62をレセプタクルユニット93のスロット20に挿入して篏合させることにより、第1の外部基板と第2の外部基板とを接続させるボードトゥボードタイプのコネクタである。プラグユニット97およびレセプタクルユニット93は、第1の外部基板と第2の外部基板との間で電気的接続を実現するためのコンタクトを備える。本実施形態では、第1の外部基板および第2の外部基板として、例えば電子基板と拡張基板とを挙げて説明する。
クロストーク低減の構造
【0024】
図2は、図1のA―A線に沿ったコネクタ100の断面図を示す。図2に示すように、プラグユニット97は、K個のコンタクト7-j(j=1~K)(Kは、例えば、144個)を有する。コンタクト7-jは、Z方向に直交するX方向において各々所定の間隔をあけてプラグユニット97内に配設される。
【0025】
同様に、レセプタクルユニット93は、内部に配設されたK個のコンタクト3-j(j=1~K)(Kは、例えば、144個)を有する。これらのコンタクト3-jも、プラグユニット97のコンタクト7-jに各々対応するように所定の間隔をあけてX方向に配置されている。
【0026】
図2に示すように、レセプタクルユニット93のコンタクト3-j(j=1~K)およびプラグユニット97のコンタクト7-jは、各ユニットにおいて、Z方向およびX方向に直交するY方向に複数列配設される。本実施形態では、各ユニットのZ方向に沿った中心線に対称に2列配設されている。プラグユニット97をレセプタクルユニット93に挿入して篏合することにより、図11の斜視図に示すように、プラグユニット97のコンタクト7-jの(-Z方向)先端部分がレセプタクルユニット93のコンタクト3-jの(+Z方向)先端に当接し、これにより、双方のユニット93,97のコンタクト7-j,3-jが相互に電気的に接続される。
【0027】
以降の説明では、レセプタクルユニット93に対するプラグユニット97の嵌合の方向を適宜Z方向といい、Z方向と直交する、コンタクト7-j,3-jが列をなすようにそれぞれ配置される方向を適宜X方向といい、コンタクト7-j,3-jの列が複数列配置される、Z方向及びX方向の両方と直交する方向を適宜Y方向という。Z方向、X方向およびY方向は、例えば特許請求の範囲に規定する第1から第3の方向にそれぞれ対応する。また、+Z側を上側と称し、-Z側を下側と称し、+X側を前側と称し、-X側を後側と称し、+Y側を左側と称し、-Y側を右側と称することがある。ただし、図3図5図7および図8に関しては、関連する説明を容易にするため、これらの上下の名称が逆になっていることに留意されたい。
【0028】
また、レセプタクルユニット93のコンタクト3-j(j=1~K)及びプラグユニット97のコンタクト7-j(j=1~K)のうち、差動伝送のグランド用のコンタクト3-j及びコンタクト7-jに(G)の文字を付すと共に、シグナル用のコンタクト3-j及びコンタクト7-jに(S)の文字を付し、両者を区別する。
【0029】
本実施形態のコネクタ100において、プラグユニット97に設けられるコンタクト7-j,3-jの各列については、例えば図6に示すように、2つのシグナル用コンタクト7-j(S)を2つのグランド用コンタクト7-j(G)で間に挟むことにより、一つのチャネルを構成している。これに対応して、レセプタクルユニット93についても、例えば図16に示すように、2つのシグナル用コンタクト3-j(S)を2つのグランド用コンタクト3-j(G)で間に挟むことにより、同様に一つのチャネルを構成している。
【0030】
本実施形態のいくつかの特徴点のうち、第1の特徴点は、プラグユニットおよびレセプタクルユニットの少なくともいずれかが、信号間ノイズを吸収するための遮蔽板を備える点にある。本実施形態では、プラグユニットに遮蔽板が設けられている形態を取り上げて説明する。
【0031】
すなわち、本実施形態のコネクタ100が有するプラグユニット97は、図2の断面図に示すように、Y方向に対向配置された2列のコンタクト7-j(j=1~K)の間に挟まれX方向で互いに離隔するようにプラグユニット97内に配設された遮蔽板80-j-1,80-j-2(j=1~K)を備える(図12参照)。これらの遮蔽板80-j-1,80-j-2はいずれも、グランド用コンタクト7-j(G)、シグナル用コンタクト7-j(S)、シグナル用コンタクト7-j(S)およびグランド用コンタクト7-j(G)でそれぞれ構成されるチャネルごとに配置され、グランド用コンタクト7-j(G)に電気的に接続され、または拡張基板(図示せず)に電気的に直接接続されている。
遮蔽板80のより具体的な構成およびコネクタへの組み込み方法については後に詳述する。
【0032】
プラグユニット97の詳細構成について図3から図9を参照しながら説明する。図3は、プラグユニット97の斜視図の一例であり、図4から図7は、図3に示すプラグユニット97をそれぞれ―Z側、―Y側、+Z側、および―X側から見た、平面図、正面図、底面図および右側面図の例である。図8は、プラグユニット97の分解斜視図の一例である。図3から図8に示すように、プラグユニット97は、ハウジング6と、コンタクト7-jと、遮蔽板80と、アンカープレート8と、を有する。ハウジング6は、ヘッダ62と、ベース部63とを有する。
【0033】
図5から図7に示すように、ベース部63における前後(X方向)の側面の上面(図の紙面では下方)側(+Z側)には、位置決めボス613が設けられている。位置決めボス613は、プラグユニット97を拡張基板に固定するときに拡張基板の位置決め孔に嵌め込まれるものである
【0034】
また、図3に示すように、ベース部63における前後(X方向)の両側面の上縁(紙面では下縁)は、外縁部631として前後(X方向)外側に拡がっている。外縁部631には、アンカープレート8を装着するためのホルダ612が設けられている。
【0035】
アンカープレート8は、図8に示すように、2つの矩形片部181と、2つの矩形片部181の下端(紙面では上縁)間に架け渡された架設部180と、2つの矩形片部181の上縁から上側(紙面では下縁から下側)にそれぞれ突出する突出部183とを有する。アンカープレート8は、ベース部63の外縁部631に設けられたホルダ612に装着され、その突出部183は、図3および図5に示すように、ハウジング6の上端(紙面では下縁)のさらに上(+Z)側(紙面では下側)にまで延在している。
【0036】
図2に示すように、ベース部63におけるZ方向に沿った中心(図7の仮想中心線CLを参照)の左(-Y)側と右(+Y)側には、それぞれ、前後(X方向)に並ぶK/2個の貫通孔67-jの列が設けられている。貫通孔67-jは、当該ベース部63を上下に貫通している。ヘッダ62の左(-Y)側面および右(+Y)側面にはスリット66-jがそれぞれ形成され、左右の貫通孔67-jとそれぞれ連通している。
【0037】
図8の中段に示すように、コンタクト7-j(j=1~K)は、K/2個ずつのコンタクト7-jの左右(Y方向)の2列をなすように構成され、それぞれ、一端側において上下(±Z)方向に延在する直線部72と、他端側において 左右(±Y)方向に延在する端子部79と、これらの間に介在する連結部801とを有する。
【0038】
組み立て時において、コンタクト7-j(j=1~K)は、図8の紙面上側(-Z)側に示す直線部72の開放端から、プラグユニット97のハウジング6に圧入される。直線部72が貫通孔67-j(図2参照)に挿入され、その先端(開放端)側は貫通孔67-jを突き抜けてスリット66-jで保持され、後のユニット間の嵌合工程により、レセプタクルユニット93のコンタクト3-jと接続される。図2に示すように、コンタクト7-jの端子部79は、連結部801とともに、ハウジング6の上面の上側に露出していた状態で残留する。コンタクト7-jの端子部79は、プラグユニット97が拡張基板と結合される際、拡張基板のパッドにはんだ付けして固定される。
【0039】
図8の下段に示すように、遮蔽板80は、Z方向に延在する細長い短冊状の金属板81と、該金属板81の端部に設けられたフック部83とを有する。フック部83は、金属板81と別個に成型したものを繋ぎ合わせてもよいが、組立強度等を考慮すると、金属板81と一体で成型することが好ましい。例えば、1枚の短冊状の金属板から打ち抜き加工等により、長手方向の一端部における短手方向両側が細長く選択的に残存するように端部の中央部分を除去し、残存した両側の延在部を、フック形状をなすように折り曲げればよい。金属板81と一体でフック部83を形成することにより、より柔軟な弾性構造を持たせることができる。
【0040】
本実施形態において、フック部83は、図6に示すように各チャネルのグランド用コンタクト7-j(G)に電気的に接続される。従って、遮蔽板80は、例えば銅(Cu)、ニッケル(Ni)などの金属および金属合金などを材料にした導体で形成される。なお、前述した通り、遮蔽板80のグランド接続については、本実施形態のように、フック部83を介したグランド用コンタクト7-j(G)への電気的接続に限ることなく、遮蔽板80を拡張基板のグランドに、例えばはんだ付け等で直接接続することにより、拡張基板の配線を介して実現してもよい。その場合は、遮蔽板80のサイズは、その+Z側の端部がベース部63の頂面(+Z側の面)601(図12参照)と面一またはこれを超えて延在するように選択される。
【0041】
本実施形態において、フック部83は、弾性体としても機能するので、外部からの衝撃を吸収することもできる。この機能は、金属板81と一体成型されることにより、より安定したものとなる。
【0042】
遮蔽板80は、各チャネルに対応して配置され、前後(X方向)で互いに離隔するように配置されるとともに、本実施形態においては、左側および右側(±Y方向)の両チャネルにそれぞれ対応するように配置される。左右で2列をなすように配置されるので、図9の斜視図に示すように、フック部83が左右の側(Y方向)で互いに反対を向くようにそれぞれ配置される。
【0043】
図6に示すように、プラグユニット97には、その(Z方向)中心に沿って穴87が各チャネルに対応して設けられ、遮蔽板80は、穴87に圧入されて配設される。この穴87は、例えば、一般に成型の際の裕度を確保するために設けられる、いわゆる肉抜き穴を利用して形成することができる。図10は、図6の部分拡大図の一例である。本実施形態では、図10に示すように、圧入時に遮蔽板80を導くためのガイド溝89が、穴87の前後(X方向)の内壁に設けられている。ガイド溝89の深さは遮蔽板80の幅に対応し、ガイド溝89の幅は遮蔽板80の厚さに対応する。本実施形態では、左右(±Y)の側においてY方向2列で背中合わせに配置されるので、ガイド溝89の深さは2枚の遮蔽板80の厚さに相当する。遮蔽板80の圧入後、ガイド溝89の領域を除く穴87の壁面と遮蔽板80との間には空気層が残存する。
【0044】
遮蔽板80の具体的な圧入方法としては、例えば穴87のガイド溝89に位置合わせを行った上で、遮蔽板80の先端側からガイド溝89に沿って遮蔽板80を穴87に圧入すれば、安定してプラグユニット97に組み込むことができる。
【0045】
本実施形態における遮蔽板80とコンタクト7-j,3-jとの位置関係を図12の斜視図に示す。図11との対比により明らかなように、左右(Y方向)に2列で配置されるコンタクト7-j,3-jの列の間で、各チャネルに対して1対1の対応関係を有するように背中合わせに遮蔽板80が配設されている。
【0046】
このように、本実施形態のコネクタ100においては、チャネルごとに遮蔽板80が設けられているので、コネクタの内部がチャネルごとに電気的に分割され、これにより、前後(±X方向)に隣り合うチャネル間で発生し得るノイズのみならず、左右(±Y方向)に隣り合うチャネルのシグナル用コンタクト7-j(S)間で発生し得るノイズも吸収されるので、クロストークを大幅に低減することができる。
【0047】
本実施形態では、例えば図3に示すように、遮蔽板80の先端(フック部83と逆の側)がヘッダ62の頂面(―Z方向の端面)よりも内側に留まっているが、遮蔽板80の構造・組み立て態様はこれに限るものでなく、ヘッダ62の頂面と面一またはこれよりも外部へ露出するようにサイズを選択して組み込んでもよい。その場合は、プラグユニット97をレセプタクルユニット93内に挿入・嵌合する際に発生し得る静電気を逃がす(サージする)機能をも発揮するという利点がある。
フローティング構造
【0048】
本実施形態のいくつかの特徴点のうち、第2の特徴点は、レセプタクルユニット93が、プラグユニット97の嵌合時に発生し得る位置合わせズレを解消するためのフローティング構造を有する点にある。
【0049】
まず、レセプタクルユニット93の基本構成から説明する。図13は、レセプタクルユニット93の概略構成を示す斜視図の一例を示し、図14から図17は、ぞれぞれ、図13に示すレセプタクルユニット93を、+Z側から見た平面図、―Y側から見た正面図、―Z側から見た底面図、―X側から見た右側面図である。図18は、レセプタクルユニット93の分解斜視図の一例である。
【0050】
図13から図17に示すように、レセプタクルユニット93は、固定ハウジング1、浮動ハウジング2、コンタクト3-j(j=1~K)、アンカープレート4、及び導電樹脂部材5を有する。
【0051】
図18に示すように、固定ハウジング1は、矩形の中空枠体で構成され、枠体は、X方向で対向する壁部11と、Y方向で対向する壁部12とで構成される。以降、壁部11および壁部12で囲まれる領域を開口部10と称する。
【0052】
図13図17および図18に示すように、固定ハウジング1の前後(X方向)の壁部11の外側面の上(+Z)と左右(±Y)の縁は凸部111として前後(X方向)外側に突出している。壁部11の外側面における左右(Y方向)の凸部111の間には、上下(Z方向)に延在する中板112が設けられている。そして、壁部11の下面のうち中板112の下(―Z)近傍には、位置決めボス113が設けられている。この位置決めボス113は、レセプタクルユニット93を電子基板に固定するときに電子基板の位置決め孔に嵌め込まれるものである。
【0053】
固定ハウジング1の左右(Y方向)の壁部12の外側面における前側(+X)と後側(-X)の端部には、アンカープレート4を装着するためのホルダ121が設けられている。
【0054】
図2のコネクタ全体の断面図に戻ると、同図に示されるように、浮動ハウジング2の左右(Y方向)の壁部22の内側面は、上側の面に対して下側の面がスロット20側へ突出した段差面になっている。浮動ハウジング2の左右(Y方向)の壁部22の内側面の下側には、それぞれ、前後(X方向)に並ぶK/2個のスリット26-jの列が設けられている。左右(Y方向)の壁部22の外側面の上側には、四半円弧状に外側に湾曲した湾曲部24があり、その上には、外側面と平行な外縁部25がある。
【0055】
図2に示すように、浮動ハウジング2における前後(X方向)の壁部21の下端部の間には、スロット20の底をなす底部23が架設されている。底部23は、前後(X方向)に一直線状に延伸している。底部23とその左右(Y方向)両側の壁部22の内側面との間には、貫通孔220が設けられている。貫通孔220は、底面からスロット20内に向けて貫通している。浮動ハウジング2の底面には、導電樹脂部材5が設けられている。浮動ハウジング2の底部23の底面には、導電樹脂部材5を固定するための溝230が設けられている。導電樹脂部材5の底面には、グランド強化用金具280(図18の最下段参照)がさらに設けられている。グランド強化用金具280は、溝230の形状に対応したストライプ状の基部285と複数のフック部287とを含む。フック部287は、基部285の長手方向側面で、柱部59のX方向における間隔に適合する間隔で設けられ、基部285の側面から外側へわずかに延伸した先でわずかに内向きの弧を描くように溝230側へ向けて立設される。グランド強化用金具280は、基部285で導電樹脂部材5の凸部53を底面側から支持するとともに、柱部59のX方向における間隔にフック部287が嵌ることで導電樹脂部材5が側面側から把持され、これによりレセプタクルユニット93の安定性と堅牢性が高められる。
【0056】
図18の中段下方に、レセプタクルユニット93が備えるコンタクト3-j(j=1~K)の全体の概略構成を示し、図19の斜視図に、コンタクト3-j(j=1~K)の個別の詳細構成を示す。図19に示すように、コンタクト3-jは、一端側において左右(Y方向)方向に延在する端子部31と、他端側において上下方向に延在する接点部32と、端子部31と繋がった支持片部36と、接点部32と繋がった支持片部37と、これら2つの支持片部36及び37の間に介在する弾性変形部38とを有する。接点部32の先端は、くの字に折れ曲がっている。
【0057】
弾性変形部38は、アーチ状に丸まった可撓部380と、可撓部380の両端から下側に延伸する2つの直線部381及び直線部382と、直線部381の下端において支持片部36の側に折れ曲がり、支持片部36の上端と繋がる連結部386と、直線部382の下端において支持片部37の側に折れ曲がり、支持片部37の下縁と繋がる連結部387とを有する。弾性変形部38は、前後左右(X方向およびY方向)への弾性変形が可能である。
【0058】
図18に示すように、アンカープレート4は、本体部41と、本体部41の下縁から下側に突出する突出部42とを有する。突出部42には長孔421が設けられている。
【0059】
図20に示すように、導電樹脂部材5は、直方体の四隅を左右(±Y)方向の外側に突出させた下板部51と、下板部51の上面の中央から上側(+Z方向)に突出した凸部53と、下板部51の左右(±Y)方向外側に突出させた先端から上側(+Z方向)に起立した柱部59とを有する。凸部53の左右(±Y)方向の幅は、浮動ハウジング2の底部23の溝230の左右(±Y)方向の幅と略同じになっている。
【0060】
固定ハウジング1、浮動ハウジング2、コンタクト3-j(j=1~K)、アンカープレート4、及び導電樹脂部材5は、例えば、次のようにして組み合わされる。
【0061】
図13および図16に示すように、浮動ハウジング2は、固定ハウジング1の開口部10に収められ、浮動ハウジング2と固定ハウジング1の間に、左右(±Y)方向2列のコンタクト3-jが架設され、浮動ハウジング2の底部23の溝230(図2参照)に、導電樹脂部材5が装着され、導電樹脂部材5の底面にグランド強化用金具280が装着され、固定ハウジング1のホルダ121に、アンカープレート4が装着される。
【0062】
図13および図14に示すように、開口部10における固定ハウジング1の壁部11と浮動ハウジング2の壁部21との間には、浮動ハウジング2における前後(±X方向)のフローティングを許容するための可動空間101があけられており、固定ハウジング1の壁部12と浮動ハウジング2の壁部22との間には、浮動ハウジング2における左右(±Y方向)のフローティングを許容するための可動空間102があけられている。前述したコンタクト7-jと同様に、コンタクト3-j(j=1~K)も、2本のコンタクト3-j(G)と2本のコンタクト3-j(S)を1つの組とし、グランド用コンタクト2本の間にシグナル用コンタクト2本が収まるような配列順で配列されている。
【0063】
図2を再び参照すると、コンタクト3-jは、貫通孔220を介して接点部32をスロット20内に突出させ、弾性変形部38を可動空間102内に収めるようにして、固定ハウジング1及び浮動ハウジング2に下側から圧入されている。コンタクト3-jの支持片部36は、スリット17-jに収められて支持されている。コンタクト3-jの支持片部37は、スリット26-jに収められて支持されている。
【0064】
コンタクト3-jの連結部387は、浮動ハウジング2の下面に接している。コンタクト3-jの端子部31は、固定ハウジング1の下面の下側に露出している。コンタクト3-jの端子部31は、電子基板のパッドにはんだ付けして固定される。本実施形態において、隣り合うコンタクト3-jの間には、特に電気絶縁性部材の仕切りは無く、空気層が存在するだけである。
【0065】
図2に示すように、固定ハウジング1の内縁部15と浮動ハウジング2の外縁部25との間には、隙間120があいている。可動空間102における隙間120の下側において、壁部12の湾曲部14、及び壁部22の湾曲部24は、弾性変形部38の可撓部380の形状に倣って湾曲している。
【0066】
導電樹脂部材5の凸部53は、浮動ハウジング2の底部23の溝230に嵌っている。導電樹脂部材5の+Y側(図20の紙面左側)の2つの柱部59は、+Y側(図2の紙面左側)の2つのコンタクト3-j(G)に接触している。導電樹脂部材5の-Y側(図20紙面右側)の2つの柱部59は、-Y側(図2紙面右側)の2つのコンタクト3-j(G)に接触している。このように、導電樹脂部材5を介して、4つのコンタクト3-j(G)が電気的に接続される。ホルダ121に装着されているアンカープレート4の突出部42は、図15に示すように固定ハウジング1の下面の下(-Z)側まで延伸している。
【0067】
プラグユニット97が拡張基板に結合された状態でプラグユニット97の上下を反転させ相互の概略位置合わせを行った上で、図1および図2に示すように、プラグユニット97のヘッダ62をレセプタクルユニット93のスロット20に挿入することでプラグユニット97のヘッダ62とレセプタクルユニット93のスロット20とが嵌合する。これにより、プラグユニット97のコンタクト7-jの直線部72の開放端(図8参照)とレセプタクルユニット93のコンタクト3-jの接点部32(図20参照)とが接触して電気的に接続される。
【0068】
ここで、例えば位置合わせ時の精度不足などにより、プラグユニット97とレセプタクルユニット93の前後(±X)方向の相対位置がずれる場合があっても、例えば図21A及び図21Bに示すように、コンタクト3-jは、直線部381と直線部382を逆側に傾けるようにして捻じれるので、レセプタクルユニット93は固定ハウジング1の開口部10内において前(+X)側又は後(―X)側において、そのずれを修正する方向に動く。これにより、前後(±X)方向の位置ずれが解消する。
【0069】
また、図21Cに示すように、プラグユニット97とレセプタクルユニット93の左右(±Y)方向の相対位置がずれている場合、左右(±Y)方向のコンタクト3-jは、左右(±Y方向)のうち一方の直線部381及び直線部382が広がる一方で、左右(±Y)方向のうちのもう一方の直線部381及び直線部382が狭まるようにして捻じれるので、レセプタクルユニット93は固定ハウジング1の開口部10内において左側(+Y方向)又は右側(―Y方向)でずれを修正する方向に動く。これにより、左右方向(±Y方向)の位置ずれが解消する。
【0070】
このように、本実施形態のコネクタによれば、プラグユニット97とレセプタクルユニット93の位置ずれを、コンタクト可撓部の弾性変形で吸収することでフローティングを許容する。また、レセプタクルユニット93のハウジングが弾性変形部38の可撓部380の形状に対応するように湾曲した内面構造を有することでインピーダンス不整合が抑制される。
【0071】
以上、本実施形態の詳細構成について説明した。本実施形態のコネクタ100によれば、外部の電子基板に実装されるレセプタクルユニット93と、外部の拡張基板に実装されるプラグユニット97とを備え、第1の方向でプラグユニット97をレセプタクルユニット93に挿入し篏合して接続することにより、前記第1の外部基板と前記第2の外部基板とを電気的に接続するコネクタであって、レセプタクルユニット93およびプラグユニット97が、前記第1の方向に直交する第2の方向において所定間隔に配設された複数の第1コンタクト3-jと複数の第2コンタクト7-jとをそれぞれ備え、これらの第1コンタクト3-jおよび第2コンタクト7-jはそれぞれ、各チャネルに対応して複数のシグナル用コンタクト(S)を間に挟む2つのグランド用コンタクト(G)のセットが前記第2の方向に複数セット配列されることで構成され、かつ、これらの第1コンタクト3-jおよび第2コンタクト7-jはそれぞれ、前記第1の方向および前記第2の方向に共に直交する第3の方向に複数列設けられるコンタクトにおいて、レセプタクルユニット93およびプラグユニット97の少なくともいずれかが、各チャネルに対応するように少なくとも前記第2の方向で互いに離隔して設けられ、対応するチャネルのグランド用コンタクト(G)または電子基板もしくは拡張基板のグランドにそれぞれ電気的に接続されて少なくとも左右(±Y)方向に隣り合うチャネル間のノイズを遮断する遮蔽板をさらに備えるので、コネクタの内部がチャネルごとに電気的に分割され、これにより、少なくとも左右(±Y)方向に隣り合うチャネルのシグナル用コンタクト(S)間で発生し得るノイズを吸収するので、クロストークを低減する高速伝送用のコネクタを提供することができる。
【0072】
また、本実施形態のコネクタ100において、レセプタクルユニット93は、中空枠体で構成され外部の電子基板に固定される固定ハウジング1と、固定ハウジング1の枠体に囲まれる開口部10に、可動空間101及び可動空間102をあけて収められた浮動ハウジング2と、固定ハウジング1と浮動ハウジング2との間に架設された複数のコンタクト3-j(j=1~K)であって、固定ハウジング1に支持される支持片部36と、浮動ハウジング2に支持される支持片部37と、これら2つの支持片部36及び37の間に介在し、弾性変形が可能な弾性変形部38と、を有する複数のコンタクト3-j(j=1~K)とを備え、弾性変形部38が、固定ハウジング1及び浮動ハウジング2における可動空間102を向いた壁部12及び壁部22に沿って延伸する2つの直線部381及び382と、2つの直線部381及び382の上端の間の可撓部380とを有し、さらに、壁部12及び壁部22における可撓部380に対向する部分が可撓部380の形状に対応して湾曲している。よって、例えば図2に示すように、壁部12及び壁部22が可撓部380を覆うようにして可撓部380と対峙するようになり、コンタクト3-jの可撓部380とそれ以外の部分との間のインピーダンスのばらつきが小さくなる。一方、壁部12及び22における可撓部380に対向する部分によって、浮動ハウジング2の動きが規制されることもない。従って、コンタクト3-jのインピーダンス不整合を抑制しつつ、フローティング機能を円滑に発揮し得るコネクタ100が提供される。
変形例
以上、本発明の実施形態について説明したが、この実施形態に以下の変形を加えてもよい。
【0073】
(1)上記実施形態では、フローティング構造を有するレセプタクルユニットを含むボードトゥボードコネクタを取り挙げて説明したが、本発明はこれに限ることなく、前後(X方向)で互いに離隔して設けられる遮蔽板を備えるものであれば、フローティング構造を有しないコネクタにも適用できることは勿論である。
また、上記実施形態においては、遮蔽板80のいずれもが、グランド用コンタクト7-j(G)、シグナル用コンタクト7-j(S)、シグナル用コンタクト7-j(S)およびグランド用コンタクト7-j(G)でそれぞれ構成されるチャネルごとに配置される態様を取り挙げて説明したが、遮蔽板の配置態様はこれに限ることなく、例えばコンタクト7-jのそれぞれに対応させるなど、信号間ノイズを遮蔽するためであれば、どのような態様・形状で配置してもよい。
(2)上記実施形態において、レセプタクルユニット93が2列のコンタクト3-j(j=1~K)を有する場合を取り挙げたが、これに限ることなく、コンタクト3-j(j=1~K)の列は一列にしてもよいし、3列以上にしてもよい。同様に、プラグユニット97についても、2列のコンタクト7-j(j=1~K)を有する場合を取り挙げたが、これに限ることなく、一列にしてもよいし、3列以上にしてもよい。
【0074】
(3)上記実施形態において、遮蔽板80は、プラグユニット97側に設けた場合を取り挙げたが、これに限ることなく、レセプタクルユニット93の側に設けてよいし、プラグユニット97とレセプタクルユニット93の両方に遮蔽板80を設けてもよい。
【0075】
遮蔽板80の採用はまた、フローティング構造を有する側でも、該構造を有しない側でもよい。さらに、プラグユニット97とレセプタクルユニット93の一方に遮蔽板80を設ける場合は、上述した実施形態のように、遮蔽板80を設けないユニットには導電樹脂部材を設けるとよい。これにより、片方にのみ遮蔽板80を設けた場合に比べ、さらにクロストークを低減することができる。
【0076】
上記実施形態において、遮蔽板80は、プラグユニット97側で全てのチャネルに対応するように設けた形態を取り挙げたが、これに限ることなく、遮蔽板80と導電樹脂部材5の両方を混在させてもよい。この点は、プラグユニット97側のみならず、レセプタクルユニット93側に遮蔽板80を設ける場合も同様である。
【0077】
(4)導電樹脂部材5は、一列に限ることなく、例えばコンタクト3-j(j=1~K)の左側の列と右側の列に個別に設けてもよい。この場合、一つの導電樹脂部材5は、2つのコンタクト3-j(S)を挟む2つのコンタクト3-j(G)に接触し、それら2つのグランド用のコンタクト3-j(G)同士を電気的に接続するものであるとよい。
【0078】
(5)上記実施形態では、遮蔽板80の2枚分に対応するガイド溝89を設け、2枚重ねて穴87に圧入する場合を取り挙げたが、これに限ることなく、設計に裕度がある場合は、各遮蔽板80に個別に対応するように2セットのガイド溝を穴87に設け、前後(X方向)のみならず左右(Y方向)においても互いに離隔するように遮蔽板を圧入して配設してもよい。
(6)上記実施形態では、左側および右側(±Y方向)の両チャネルにそれぞれ1対1で対応するように遮蔽板80を2枚重ねてガイド溝89に圧入する態様を取り挙げたが、これに限ることなく、例えば上述した実施形態の2枚分に相当する厚さで金属板81を形成し、左右の側(Y方向)で互いに反対を向くフック部と一体となるように構成したものを配置してもよい。
(7)上記実施形態において、アンカープレート4の個数は、4個である必要はなく、1~3個にしてもよいし、5つ以上にしてもよい。
(8)上記実施形態において、コンタクト3-jの個数Kは、145個以上であってもよいし、143個以下であってもよい。
【0079】
以上、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明したが、これらは発明の容易な理解のためになされたものであり、これらをもって本発明の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0080】
当業者であれば、本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない範囲で、種々の変更を加えて本発明を実現でき、例えば、一つの実施例の特徴を別の実施例に組み込むことで、もう一つの実施例を得ることができる。当業者は、特許請求の範囲を逸脱することなく本発明の趣旨に沿って様々な変更、同等な置換、又は改良などを行うことができる。
【符号の説明】
【0081】
1 固定ハウジング
2 浮動ハウジング
3 コンタクト(第1コンタクト)
4,8 アンカープレート
5 導電樹脂部材
6 ハウジング
7 コンタクト(第2コンタクト)
10 開口部
11 壁部
12 壁部(第1壁部)
14,24 湾曲部
15 内縁部
17,26,66 スリット
20 スロット
21 壁部
22 壁部
23 底部
25 外縁部
31 端子部
32 接点部
36,37 支持片部
38 弾性変形部
41 本体部
42 突出部
51 下板部
53 凸部
59 柱部
62 ヘッダ
63 ベース部
67 貫通孔
72 直線部
79 端子部
80 遮蔽板
81 金属板
83 フック部
87 穴
89 ガイド溝
93 レセプタクルユニット
97 プラグユニット
100 コネクタ
101 可動空間
102 可動空間
111 凸部
112 中板
113 ボス
120 隙間
121,612 ホルダ
181 矩形片部
220 貫通孔
230 溝
280 グランド強化用金具
285 基部
287 フック部
380 可撓部
381 直線部
386 連結部
387 連結部
421 長孔
613 ボス
631 外縁部
X 第2の方向
Y 第3の方向
Z 第1の方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図21C