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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】塊成鉱及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/243 20060101AFI20240605BHJP
   C22B 1/14 20060101ALI20240605BHJP
   C21B 15/00 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
C22B1/243
C22B1/14
C21B15/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023549746
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 JP2022035380
(87)【国際公開番号】W WO2023048232
(87)【国際公開日】2023-03-30
【審査請求日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2021155671
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】水谷 守利
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-316675(JP,A)
【文献】特開昭58-117839(JP,A)
【文献】特開平10-007414(JP,A)
【文献】特開平10-291816(JP,A)
【文献】特開2004-269978(JP,A)
【文献】国際公開第00/049184(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 3/00-15/00
C22B 1/00- 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の粒子が混合された成型物である塊成鉱であって、
前記複数種類の粒子は、炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子を少なくとも含み、
少なくとも一部の酸化鉄粒子は、前記塊成鉱の表層に露出しており、
前記塊成鉱の気孔率は、20%以上40%以下であり、
前記塊成鉱に含まれるトータル鉄の質量に対する、金属鉄と炭化鉄中の鉄との合計質量の割合は、40質量%以上80質量%以下であり、
炭化鉄粒子中の炭素を含む炭素濃度は、1.0質量%以上4.5質量%以下である、
ことを特徴とする塊成鉱。
【請求項2】
前記複数種類の粒子は、金属鉄粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の塊成鉱。
【請求項3】
原料鉱石を還元することにより、トータル鉄の質量に対する、金属鉄と炭化鉄中の鉄との合計質量の割合が40質量%以上80質量%以下である還元鉱石を製造する還元工程と、
前記還元鉱石を炭化することにより、炭素濃度が1.0質量%以上4.5質量%以下である炭化鉱石を製造する炭化工程と、
前記炭化鉱石を粉砕し、篩目が0.5mmである篩網を用いて粉砕後の前記炭化鉱石を選別して、炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子を少なくとも製造する粉砕工程と、
少なくとも炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子を混合して成型機によって成型することにより、気孔率が20%以上40%以下である塊成鉱を製造する成型工程と、
を有することを特徴とする塊成鉱の製造方法。
【請求項4】
前記粉砕工程では、炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子に加えて、金属鉄粒子を製造することを特徴とする請求項3に記載の塊成鉱の製造方法。
【請求項5】
1つのシャフト炉内において、前記還元工程及び前記炭化工程を行うことを特徴とする請求項3又は4に記載の塊成鉱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉で用いられる塊成鉱と、この塊成鉱の製造方法に関する。
本願は、2021年9月24日に、日本に出願された特願2021-155671号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直径1mm以下の粒子を気孔率が20%以上40%以下となるように塊成化した高炉用塊成鉱であって、塊成鉱の金属化率を40質量%以上80質量%以下とし、塊成鉱内部の金属化率の分布を均一とした高炉用塊成鉱が記載されている。この高炉用塊成鉱によれば、圧潰強度を高くできるとともに、優れた還元性が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2014-80649号公報
【文献】日本国特開平8-253801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来の塊成鉱よりも被還元性に優れた塊成鉱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の態様1の塊成鉱は、複数種類の粒子が混合された成型物である塊成鉱であって、複数種類の粒子は、炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子を少なくとも含み、少なくとも一部の酸化鉄粒子は、塊成鉱の表層に露出している。塊成鉱の気孔率は、20%以上40%以下である。塊成鉱に含まれるトータル鉄の質量に対する、金属鉄と炭化鉄中の鉄との合計質量の割合は、40質量%以上80質量%以下である。炭化鉄粒子中の炭素を含む炭素濃度は、1.0質量%以上4.5質量%以下である。
【0006】
(2)本発明の態様2は、態様1の塊成鉱において、複数種類の粒子には、金属鉄粒子を含めることができる。
【0007】
(3)本発明の態様3の塊成鉱の製造方法は、還元工程、炭化工程、粉砕工程及び成型工程を有する。還元工程では、原料鉱石を還元することにより、トータル鉄の質量に対する、金属鉄と炭化鉄中の鉄との合計質量の割合が40質量%以上80質量%以下である還元鉱石を製造する。炭化工程では、還元鉱石を炭化することにより、炭素濃度が1.0質量%以上4.5質量%以下である炭化鉱石を製造する。粉砕工程では、炭化鉱石を粉砕し、篩目が0.5mmである篩網を用いて粉砕後の前記炭化鉱石を選別して、炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子を少なくとも製造する。成型工程では、少なくとも炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子を混合して成型機によって成型することにより、気孔率が20%以上40%以下である塊成鉱を製造する。
【0008】
(4)本発明の態様4は、態様3の塊成鉱の製造方法において、粉砕工程では、炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子に加えて、金属鉄粒子を製造することができる。
(5)本発明の態様5は、態様3または態様4の塊成鉱の製造方法において、1つのシャフト炉内において、還元工程及び炭化工程を行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の塊成鉱は、従来の塊成鉱よりも被還元性に優れている。また、本開示の塊成鉱の製造方法によれば、従来の塊成鉱よりも被還元性に優れた塊成鉱が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態である塊成鉱の製造方法を説明するフローチャートである。
図2】還元工程によって製造された還元鉱石の内部構造を示す概略図である。
図3】炭化工程によって製造された炭化鉱石の内部構造を示す概略図である。
図4】シャフト炉を用いて還元工程及び炭化工程を行うシステム(一例)の概略図である。
図5】シャフト炉を用いて還元工程及び炭化工程を行うシステム(一例)の概略図である。
図6】粉砕工程によって製造された粒子(金属鉄粒子、酸化鉄粒子及び炭化鉄粒子)を示す概略図である。
図7】成型工程によって製造された塊成鉱の内部構造を示す概略図である。
図8】炭素濃度(実施例、比較例及び参考例)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(塊成鉱の構成)
本実施形態に係る塊成鉱は、高炉で用いられるものであり、具体的には、焼結鉱、ペレット、塊鉱石といった鉄源と共に高炉に装入されるものである。本実施形態に係る塊成鉱は、以下の構成(A)~(F)のすべてを有する。
【0012】
(A)塊成鉱は、複数種類の粒子が混合された成型物である。
(B)複数種類の粒子は、炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子を少なくとも含む。
(C)少なくとも一部の酸化鉄粒子は、塊成鉱の表層に露出している。
(D)塊成鉱の気孔率は、20%以上40%以下である。
(E)塊成鉱に含まれるトータル鉄の質量に対する、金属鉄と炭化鉄中の鉄との合計質量の割合は、40質量%以上80質量%以下である。
(F)炭化鉄粒子中の炭素を含む炭素濃度は、1.0質量%以上4.5質量%以下である。
【0013】
(構成A~C)
本実施形態に係る塊成鉱は、複数種類の粒子を混合した混合物を成型機によって成型した成型物である。複数種類の粒子を混合しておき、この混合物に対して成型機によって圧縮力を与えることにより、成型物を得ることができる。成型物の形状は、特に限定されるものではないが、例えば、球状とすることができる。
【0014】
複数種類の粒子には、少なくとも炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子が含まれる。炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子のそれぞれの最大直径は0.5mm以下であることが好ましい。「最大直径が0.5mm以下である粒子」とは、篩目が0.5mmである篩を用いて篩い分けを行い得られた粒子をいう。篩目が0.5mm以下であっても、粒子の形状によっては、直径(粒径)が0.5mm以上となる粒子が含まれる場合がある。その場合も、全粒子の95%の粒子の粒径が0.5mm以下であればよい。塊成鉱内の粒子を評価する方法として、例えば塊成鉱の断面を光学顕微鏡や電子顕微鏡と撮影すると共に、エネルギー分散型X線分光法(EDS)や電子プローブマイクロアナライザ―(EPMA)により各粒子の元素濃度を取得し、粒子の画像の輝度や元素濃度から炭化鉄粒子と酸化鉄粒子を特定し、さらに画像解析により全粒子の最大直径を計測する手法がある。各粒子の元素濃度が酸素濃度で5~28%、鉄濃度で72~95%であれ酸化化鉄粒子と判定し、炭素濃度で1~6.7%、鉄濃度で93.3~99%であれば炭化鉄粒子として判定する。
【0015】
炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子の最大直径が0.5mmよりも大きい場合(篩目の篩目が0.5mmよりも大きい場合)には、炭化鉄粒子の存在によって、成型機での成型が容易ではなく、塊成鉱に所望の強度を持たせることが困難になる場合がある。また、後述するように、本実施形態に係る塊成鉱では、炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子による直接還元反応(吸熱反応)を進行させることにより、高炉内の熱保存帯温度を低下させて、還元材比を低減することができる。ここで、炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子の最大直径が0.5mmよりも大きい場合(篩目の篩目が0.5mmよりも大きい場合)には、炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子による直接還元反応が進行しにくくなる。
【0016】
したがって、炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子のそれぞれの最大直径を0.5mm以下とすることにより、塊成鉱の成型性及び強度をより向上することができるとともに、炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子による直接還元反応を進行させやすくすることができる。
【0017】
上述した効果を達成する上では、本実施形態に係る塊成鉱を構成するすべての粒子(成型前の粒子)の最大直径を0.5mm以下とすることが好ましいが、上述のように直径(粒径)が0.5mmよりも大きい粒子が塊成鉱に含まれていてもよい。具体的には、直径(粒径)が0.5mmよりも大きい粒子の含有量が全粒子の質量に対して、5質量%以下であれば、上述した効果を達成することができる。
【0018】
塊成鉱には、炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子の他に、金属鉄粒子が含まれていてもよい。金属鉄粒子の最大直径は、炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子と同様に、0.5mm以下であることが好ましい。即ち、金属鉄粒子は、篩目が0.5mmである篩を用いて篩い分けを行い得られた粒子であることが好ましい。なお、上述した効果(塊成鉱の成型性及び強度の確保)が得られる限りにおいて、直径(粒径)が0.5mmよりも大きい金属鉄粒子が塊成鉱に含まれていてもよい。ここで、直径が0.5mmよりも大きい炭化鉄粒子、酸化鉄粒子及び金属鉄粒子の合計の含有量は、全粒子の質量に対して、5質量%以下であることが好ましい。
【0019】
本実施形態に係る塊成鉱には、上述した粒子(炭化鉄粒子、酸化鉄粒子、金属鉄粒子)の他に、バインダが含まれていてもよい。バインダとしては、セメント、生石灰、コーンスターチ等の非助燃性のバインダを用いることができる。
【0020】
本実施形態に係る塊成鉱は、少なくとも炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子を混合した成型物であるため、炭化鉄粒子は、塊成鉱の表層に露出していたり、塊成鉱の内部で分散していたりする。同様に、酸化鉄粒子は、塊成鉱の表層に露出していたり、塊成鉱の内部で分散していたりする。酸化鉄粒子が塊成鉱の表層に露出していることにより、特許文献1と同様に、塊成鉱の被還元性を向上させることができる。
【0021】
また、本実施形態に係る塊成鉱の表層に露出する酸化鉄粒子は、高炉内を流通する還元ガスによる還元作用を受けることにより、酸素の脱離と、酸化鉄から金属鉄への化学変化とが発生し、密度の変化(5.9g/cmから7.86g/cmへの変化)によって、塊成鉱の表層に気孔が生成される。この気孔は、高炉内の還元ガスを塊成鉱の内部に導いて拡散させることができ、塊成鉱の内部に存在する酸化鉄粒子も還元させることができる。結果として、塊成鉱の被還元性を向上させることができ、還元材比を低減することができる。
【0022】
さらに、炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子を混合することにより、酸化鉄粒子の周囲に炭化鉄粒子を存在させ、酸化鉄粒子及び炭化鉄粒子を互いに接触させることができる。これにより、高炉内の800℃以下の温度領域において、下記の化学反応式(A)で示すように、炭化鉄及び酸化鉄による直接還元反応を進行させることができる。
FeC+FeO = 4Fe+CO・・・(A)
【0023】
上述した直接還元反応は吸熱反応であるため、高炉内の熱保存帯温度を低下させて、還元材比を低減させることができる。また、直接還元反応で発生したCOガスは、高炉内において塊成鉱の周囲に存在する鉄源(焼結鉱、ペレット、塊鉱石など)を還元させることができる。
【0024】
(構成D)
塊成鉱の気孔率は、例えば、JIS M8716(1990)の規定に準じて測定することができる。塊成鉱の気孔率を40%よりも高くすると、成型物が崩壊しやすくなり、塊成鉱が所定形状を維持することができず、塊成鉱の被還元性が低下する。また、塊成鉱の気孔率を20%よりも低くすると、成型物が緻密な構造となりやすく、成型機内で粒子が閉塞状態となってしまい、塊成鉱の被還元性が低下する。そこで、塊成鉱の気孔率を20%以上40%以下とすることにより、塊成鉱の被還元性を向上させることができる。
【0025】
(構成E)
塊成鉱に含まれるトータル鉄T.Feの質量は、例えば、JIS M8205(2000)の規定に準じて測定することができる。金属鉄M.Feの質量と、炭化鉄FeCに含まれる鉄Feの質量とは、例えば、JIS M8213(1995)の規定に準じて測定することができる。JIS M8213(1995)による測定方法では、金属鉄M.Feの質量と、炭化鉄FeCに含まれる鉄Feの質量との合計量を測定することができ、金属鉄M.Feの質量と、炭化鉄FeCに含まれる鉄Feの質量とを区別して測定することはできない。
【0026】
構成Eにおけるトータル鉄の質量に対する、金属鉄と炭化鉄中の鉄との合計質量の割合Rは、下記式(1)で表される。
【数1】
【0027】
上記式(1)において、M.Feは金属鉄の質量[g]であり、Fe(FeC)は炭化鉄FeCに含まれる鉄Feの質量[g]であり、T.Feは塊成鉱に含まれるトータル鉄T.Feの質量[g]である。割合Rは、特許文献1,2に記載の金属化率に相当する。
【0028】
特許文献1に記載されているように、塊成鉱の圧潰強度が高炉の使用で求められる強度(1000N)を満たすためには、割合Rが少なくとも40質量%である必要がある。また、被還元性を高めるためにも割合Rが少なくとも40質量%である必要がある。すなわち、割合Rは40質量%以上とする必要がある一方、特許文献2に記載されているように、金属化率が80質量%よりも高くなると、トータルエネルギが上昇しやすくなり、かつ被還元性が低下するため、割合Rは80質量%以下とする必要がある。ここで、トータルエネルギは、特許文献2に記載されているように、高炉所要エネルギ(高炉燃料比、熱風炉、発生高炉ガス及び送風に要するエネルギ)と、還元鉄所要エネルギ(還元ガス原単位、塊成化、輸送、各種ユーティリティー、設備建設、維持に要するエネルギ)との和である。上述した理由により、割合Rは、40質量%以上80質量%以下とする。
【0029】
(構成F)
塊成鉱の炭素濃度は、例えば、JIS Z2615(2015)の規定(ガス容量法)に準じて測定することができる。上述したように、塊成鉱には炭化鉄粒子が含まれるため、上述した炭素濃度には、炭化鉄粒子中の炭素の濃度も含まれる。
【0030】
金属鉄から炭化鉄を製造するときには、炭化鉄の他に、グラファイト(C)が製造されることがあり、塊成鉱にグラファイトが含まれることがある。この場合には、上述した炭素濃度には、グラファイトの濃度も含まれる。塊成鉱に対して粉末X線分析を行い、FeC相のピークを検出することにより、炭化鉄の存在を確認することができる。ここで、グラファイト相のピークも検出すれば、グラファイトが塊成鉱に含まれていることを確認でき、グラファイト相のピークを検出しなければ、グラファイトが塊成鉱に含まれていないことを確認できる。一方、リートベルト解析によって、炭化鉄FeCの定量分析を行うこともできる。
【0031】
炭素濃度が1.0質量%よりも低い場合には、本発明の効果(被還元性の向上)を得ることができない。一方、炭素濃度が4.5質量%よりも高い場合には、炭化鉄の量よりもグラファイトの量が多くなりやすくなり、グラファイトの存在によって成型物が得られにくくなる。すなわち、成型物としての塊成鉱を製造しようとしても、成型物としての形状を維持しにくくなる。上述した理由により、炭素濃度は1.0質量%以上4.5質量%以下とする必要がある。
【0032】
(塊成鉱の製造方法)
本実施形態である塊成鉱の製造方法について、図1に示すフローチャートを用いて説明する。図1に示すように、塊成鉱の製造方法には、還元工程S101、炭化工程S102、粉砕工程S103及び成型工程S104が含まれる。以下、各工程について説明する。
【0033】
(還元工程)
還元工程S101では、原料鉱石を還元することによって還元鉱石を製造する。原料鉱石としては、例えば、Feを主体とする鉄鉱石(塊状又は粉状)、各種集塵装置等から回収される多種の含鉄や含炭ダストが用いられるが、これに限られるものではない。塊状鉄鉱石はそのままの形態で用いることができ、粉状鉄鉱石やダスト類は、塊成化したペレット又はブリケットの形態で用いることができる。
【0034】
還元工程S101で使用される反応器としては、例えば、交流移動層式反応器(シャフト炉)、流動層式反応器、固定層式反応器を用いることができる。そして、例えば、700~1000℃の温度環境において、還元ガスを原料鉱石に供給することによって還元工程S101を行うことができる。還元ガスとしては、例えば、H、CO、CH及びNの混合ガスを用いることができる。還元工程S101では、上述した割合Rが40~80質量%となるように還元鉱石を製造する。ここで、割合Rが40~80質量%から外れると、被還元性が低下してしまう。割合Rが40~80質量%となるように原料鉱石を還元する条件は還元ガスの種類に応じて適宜設定することができる。例えば、還元ガスの組成がHガス(90vol%)とNガス(10vol%)とを混合した気体である場合、還元ガスの温度を980℃とし、処理時間を45minとしてもよい。
【0035】
還元工程S101によって、図2に示す還元鉱石20が製造される。この還元工程S101では、原料鉱石の全体が完全に金属鉄に至らない程度に還元する。図2は、還元鉱石20の内部構造を示す概略図である。還元工程S101では、原料鉱石の表面から内部に向かって還元反応が進行し、還元鉱石20は、金属鉄(Fe)からなる表層部2と、酸化鉄(FeO)からなる中心部1とを有する。ここで、還元工程S101の条件によって、表層部(金属鉄)2の厚みが変化する。
【0036】
(炭化工程)
炭化工程S102では、還元工程S101で製造された還元鉱石20を炭化することによって炭化鉱石20Aを製造する。炭化工程S102で使用される反応器としては、例えば、交流移動層式反応器(シャフト炉)、流動層式反応器、固定層式反応器を用いることができる。そして、例えば、500~600℃の温度環境において、炭化ガスを還元鉱石20に供給することによって炭化工程S102を行うことができる。例えば、反応温度が450℃の場合は、炭化反応が遅くなり、反応温度が650℃の場合は、炭化反応がしにくくなる。そのため、反応温度としては、500℃~600℃が好ましい。炭化ガスとしては、例えば、CHガス、COガス、CH及びCOの混合ガスを用いることができる。炭化工程S102では、炭素濃度が1.0質量%以上4.5質量%以下となるように炭化鉱石20Aを製造する。炭化反応時の温度は、例えば、反応器内の最高温度としてもよい。また、処理時間は、炭化反応時の温度によって適宜調整することができる。処理時間は温度が500℃の場合、例えば45min~105minである。処理時間は温度が550℃の場合、20min~70minである。処理時間は温度が600℃の場合、10min~30minである。N環境下で表3の温度が安定し、炭化ガスに切り替えてから、炭化ガスを停止しNに切り替えるまでの時間を処理時間とする。
【0037】
炭化工程S102によって、図3に示す炭化鉱石20Aが製造される。図3は、炭化鉱石20Aの内部構造を示す概略図である。炭化工程S102では、還元鉱石20の表面から内部に向かって炭化反応が進行し、炭化鉱石20Aは、炭化鉄(FeC)からなる第2表層部3、金属鉄(Fe)からなる中層部2Aと、酸化鉄(FeO)からなる中心部1とを有する。ここで、炭化工程S102の条件によっては、還元鉱石20の表層部(金属鉄)2の全体が炭化されることにより、中層部(金属鉄)2Aが存在しないこともある。また、炭化工程S102の条件によっては、第2表層部(炭化鉄)3の表面にグラファイトの析出物が形成されることがある。
【0038】
上述した還元工程S101及び炭化工程S102は、別々の反応器を用いて行ってもよいし、1つの反応器を用いて行ってもよい。例えば、1つのシャフト炉内において、還元工程S101及び炭化工程S102を行ってもよい。以下、1つの反応器を用いて、還元工程S101及び炭化工程S102の両方を行う場合について、図4及び図5を用いて説明する。
【0039】
図4に示すシステム(一例)において、原料鉱石は、シャフト炉(交流移動層式反応器)100の上部から装入される。シャフト炉100の内部には、上部から下部に向かって、還元帯Z1、遷移帯Z2及び冷却帯Z3が設けられている。遷移帯Z2は、還元帯Z1及び冷却帯Z3の間に位置しており、還元帯Z1から冷却帯Z3に移行する領域である。
【0040】
還元帯Z1では、下記反応式(B)で示すように、原料鉱石の還元が行われ、還元鉱石20が製造される。下記反応式(B)では、還元ガスとして水素ガス(H)を用いている。ここで、還元帯Z1では、還元ガスの温度を700~1000℃とし、還元ガスの流量を1000~1800Nm/tとすることができる。
Fe+3H→2Fe+3HO・・・(B)
【0041】
シャフト炉100の上部からは、水蒸気(HO)及び水素ガス(H)が排出され、冷却器101によって水蒸気が取り除かれる。冷却器101を通過した水素ガスは、コンプレッサ102によって圧縮された後、加熱器103に送られる。加熱器103は、水素ガスを加熱した後、シャフト炉100の還元帯Z1に供給する。加熱器103には、コンプレッサ102からの水素ガスに加えて、補充の水素ガスを供給することができる。加熱器103からシャフト炉100に供給された水素ガスは、還元ガスとして原料鉱石の還元に用いられる。
【0042】
冷却帯Z3では、還元帯Z1で製造された還元鉱石20に対して炭化が行われ、炭化鉱石20Aが製造される。この炭化鉱石20Aは、シャフト炉100の下部から排出される。冷却帯Z3では、炭化ガスの温度を0~100℃とし、炭化ガスの流量を100~400Nm/tとすることができる。ここでは、炭化ガスとしてメタンガス(CH)を用いているため、下記反応式(C)で示す反応が進行する。
3Fe+CH→FeC+2H・・・(C)
【0043】
シャフト炉100の冷却帯Z3からは、メタンガス(CH)及び水素ガス(H)が排出され、冷却器104に供給される。冷却器104を通過したメタンガス及び水素ガスは、コンプレッサ105によって圧縮された後、膜分離器106に供給される。膜分離器106では、メタンガス及び水素ガスが分離され、水素ガスは、加熱器103に供給され、メタンガスは、シャフト炉100の冷却帯Z3に供給される。膜分離器106での分離では、圧力を1.0~2.0MPaとし、温度を0~100℃とすることができる。冷却帯Z3には、膜分離器106からのメタンガスに加えて、補充のメタンガス(CH)を供給することができる。
【0044】
次に、図5に示すシステム(一例)において、原料鉱石は、シャフト炉(交流移動層式反応器)200の上部から装入される。シャフト炉200の内部には、上部から下部に向かって、還元帯Z1、遷移帯Z2及び冷却帯Z3が設けられている。遷移帯Z2は、還元帯Z1及び冷却帯Z3の間に位置しており、還元帯Z1から冷却帯Z3に移行する領域である。
【0045】
還元帯Z1では、図4に示すシステムと同様に、原料鉱石の還元が行われ、還元鉱石20が製造される。なお、還元帯Z1における還元ガスの温度や流量は、図4に示すシステムと同様に設定することができる。
【0046】
シャフト炉200の上部からは、水蒸気(HO)及び水素ガス(H)が排出され、冷却器201によって水蒸気が取り除かれる。冷却器201によって取り除かれた水蒸気は、炭材のガス化に用いられる。炭材のガス化ではガス(CO,H)が生成され、これらのガスは、膜分離器202によって分離され、水素ガス(H)が加熱器203に供給されるとともに、一酸化炭素ガス(CO)がシャフト炉200の冷却帯Z3に供給される。膜分離器202での分離では、圧力を1.0~2.0MPaとし、温度を0~100℃とすることができる。
【0047】
冷却器201を通過した水素ガスは、コンプレッサ204によって圧縮された後、加熱器203に供給される。加熱器203は、水素ガスを加熱した後、シャフト炉200の還元帯Z1に供給する。加熱器203には、膜分離器202やコンプレッサ204からの水素ガスに加えて、補充の水素ガスを供給することができる。加熱器203からシャフト炉200に供給された水素ガスは、還元ガスとして原料鉱石の還元に用いられる。
【0048】
冷却帯Z3では、還元帯Z1で製造された還元鉱石20に対して炭化が行われ、炭化鉱石20Aが製造される。この炭化鉱石20Aは、シャフト炉200の下部から排出される。冷却帯Z3における炭化ガスの温度や流量は、図4に示すシステムと同様に設定することができる。ここでは、炭化ガスとしてメタンガス(CH)及び一酸化炭素ガス(CO)を用いているため、下記反応式(D)~(H)で示す反応が進行する。
3Fe+CH→FeC+2H・・・(D)
3Fe+2CO→FeC+CO・・・(E)
3Fe+CO+H→FeC+HO・・・(F)
CH+CO→2CO+2H・・・(G)
CH+HO→CO+3HO・・・(H)
【0049】
シャフト炉200の冷却帯Z3からは、ガス(CO,CH,H)が排出され、冷却器205に供給される。冷却器205を通過したガス(CO,CH,H)は、コンプレッサ206によって圧縮された後、膜分離器207に供給される。膜分離器207では、ガス(CO,CH)と水素ガス(H)とが分離され、水素ガスは、加熱器203に供給され、ガス(CO,CH)は、シャフト炉200の冷却帯Z3に供給される。膜分離器207での分離では、圧力を1.0~2.0MPaとし、温度を0~100℃とすることができる。冷却帯Z3には、膜分離器202からの一酸化炭素ガス(CO)や膜分離器207からのガス(CO,CH)に加えて、補充のメタンガス(CH)を供給することができる。
【0050】
(粉砕工程)
粉砕工程S103では、炭化工程S102で製造された炭化鉱石20Aを粉砕することによって、炭化鉄粒子や酸化鉄粒子を製造する。S103において、炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子に加えて、金属鉄粒子を製造することが好ましい。図6には、炭化鉱石20Aを粉砕した後に製造された炭化鉄粒子(FeC)11、酸化鉄粒子(FeO)12及び金属鉄粒子(Fe)10の概略を示す。
【0051】
上述したように、炭化鉱石20Aが、炭化鉄(FeC)からなる第2表層部3、金属鉄(Fe)からなる中層部2Aと、酸化鉄(FeO)からなる中心部1とを有する場合(図3参照)には、第2表層部(炭化鉄)3の粉砕によって炭化鉄粒子11が得られ、中層部(金属鉄)2Aの粉砕によって金属鉄粒子10が得られ、中心部(FeO)の粉砕によって酸化鉄粒子12が得られる。また、炭化鉱石20Aに金属鉄(中層部)2Aが含まれていない場合には、この炭化鉱石20Aの粉砕によって、炭化鉄粒子11及び酸化鉄粒子12が得られる。さらに、炭化鉱石20Aの表面にグラファイト(C)の析出物が形成されている場合には、この炭化鉱石20Aの粉砕によって、グラファイト粒子が得られることがある。
【0052】
炭化鉱石20Aを粉砕する方法は、公知の方法を適宜用いることができる。例えば、ボールミルやロッドミルなどの粉砕機を用いて、炭化鉱石20Aを粉砕することができる。粉砕工程S103では、粉砕物(上述した炭化鉄粒子11、酸化鉄粒子12や金属鉄粒子10)の粒径が0.5mm以下となるように、炭化鉱石20Aを粉砕する。粉砕工程S103では、次に、粉砕工程S103で製造された粉砕物(上述した炭化鉄粒子11、酸化鉄粒子12や金属鉄粒子10)から、篩目が0.5mmである篩網を用いて、粒径0.5mm以下の粉砕物を選別する。篩網の篩目を0.5mm以下とする理由は、後述する成型工程S104において、最大直径が0.5mm以下である粉砕物(上述した炭化鉄粒子11、酸化鉄粒子12や金属鉄粒子10)を混合して成型するためである。
【0053】
(成型工程)
成型工程S104では、粉砕工程S103で選別された粉砕物を混合した後、この混合物に対して圧縮力を与えて成型することによって塊成鉱を製造する。成型工程S104において、少なくとも炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子を混合して成型機によって成型することにより、気孔率が20%以上40%以下である塊成鉱を製造する。炭化鉄粒子及び酸化鉄粒子を混合する際にさらに金属鉄粒子を加えて混合してもよい。図7には、成型工程S104によって製造された塊成鉱の内部構造の概略を示す。
【0054】
混合される粉砕物については、直径(粒径)が0.5mm以下である粉砕物だけを用いることが好ましいが、直径が0.5mmよりも大きい粉砕物が含まれていてもよい。具体的には、直径が0.5mmよりも大きい粉砕物の含有量を5質量%以下とすることができる。
【0055】
成型工程S104で用いられる成型機は、粉砕物に対して圧縮力を与えることができるものであればよく、例えば、ロール型のブリケット成型機を用いることができる。ここで、粉砕物を成型するとき、金属鉄を酸化させるようなバインダ(水など)は使用しないことが好ましい。
【0056】
成型工程S104では、成型物としての塊成鉱の気孔率が20%以上40%以下となるように、粉砕物の混合物に圧縮力を与える。ここで、圧縮力と塊成鉱の気孔率との間には、所定の相関関係があるため、この相関関係に基づいて、塊成鉱の気孔率が20%以上40%以下となるように圧縮力を設定すればよい。上述したように、塊成鉱の気孔率を20%以上40%以下とすることにより、塊成鉱の被還元性を向上することができる。
【0057】
上述した還元工程S101では、割合Rが40~80質量%となるように還元鉱石20を製造しているため、炭化工程S102、粉砕工程S103及び成型工程S104を経て製造された塊成鉱においても、割合Rは40~80質量%に維持される。これにより、割合Rが40質量%以上80質量%以下である塊成鉱を製造することができる。
【0058】
上述したように、粉砕物(上述した炭化鉄粒子11、酸化鉄粒子12や金属鉄粒子10)を混合して成型することにより、図7に示すように、塊成鉱の表層に酸化鉄粒子12が露出することになる。これにより、上述したように、高炉内を流通する還元ガスによって酸化鉄粒子12を還元させて、塊成鉱の表層に気孔を生成することができ、この気孔を介した塊成鉱の被還元性を向上させることができる。
【0059】
また、粉砕物(上述した炭化鉄粒子11、酸化鉄粒子12や金属鉄粒子10)を混合することにより、酸化鉄粒子12の周囲に炭化鉄粒子11を存在させることができ、酸化鉄粒子12及び炭化鉄粒子11を互いに接触させることができる。これにより、上述したように、高炉内の800℃以下の温度領域において、炭化鉄及び酸化鉄による直接還元反応を進行させることができる。
【0060】
本実施形態に係る塊成鉱は、高炉に用いることが好ましいが、転炉、電気炉などに用いることができる。
【実施例
【0061】
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明は、これに限られるものではない。
【0062】
(原料鉱石)
原料鉱石として、下記表1に示す化学組成を有するペレットA(1.0kg)を用いた。
【0063】
【表1】
【0064】
(還元工程)
固定層電気炉を用いて、原料鉱石(ペレットA)の還元を行った。還元条件を下記表2に示す。還元工程を行った後の還元鉱石について、割合Rを求めたところ、割合Rは70%であった。表2の還元工程の処理時間が10minでは割合R:30%となった(比較例4-3)。また、表2の還元工程の処理時間が90minでは割合R:90%となった(比較例4-4)。
【0065】
【表2】
【0066】
(炭化工程)
固定層電気炉を用いて、還元工程によって製造された還元鉱石の炭化を行った。炭化条件を下記表3に示す。本実施例では、下記表3に示す温度(3つ)のそれぞれにおいて、処理時間を設定した。具体的には、500℃の場合は、炭化工程の処理時間は、30min、45min、60min、90min、105min、120minとした。550℃の場合は、炭化工程の処理時間は、10min、20min、30min、60min、70min、90min、120minとした。600℃の場合は、炭化工程の処理時間は、5min、10min、20min、30min、60min、90min、120minとした。なお、表3の温度は、固定層電気炉内の最高温度をいう。温度の測定位置は、固定層電気炉に設置した還元鉱石の1cm直上とした。N環境下で表3に記載の温度(炭化ガスの温度)に安定し、炭化ガスに切り替えてから、炭化ガスを停止しNに切り替えるまでの時間を処理時間とする。
【0067】
【表3】
【0068】
炭化工程によって製造された炭化鉱石と、炭化工程を行う前の還元鉱石とについて、炭素濃度を測定した。この炭素濃度の測定は、JIS Z2615(2015)の規定(ガス容量法)に準じて行った。下記表4には、各炭化条件での炭素濃度を示す。下記表4において、本発明に含まれるものを実施例とし、本発明に含まれないものを比較例とし、炭化工程を行う前のものを参考例とした。下記表4から分かるとおり、炭化条件を適宜設定することにより、炭素濃度を1.0質量%以上4.5質量%以下とすることができる。図8は、下記表4の内容を棒グラフとして表したものである。
【0069】
【表4】
【0070】
上記表4に示す参考例である還元鉱石および実施例である温度550℃、処理時間30分で炭化処理した炭化鉱石(炭素濃度(合計):1.4質量%)を用いて以下の処理を実施した。また、比較例4-1として、温度550℃、処理時間10分で炭化処理した炭化鉱石(炭素濃度(合計):0.5質量%)を用いて、以下の処理を行った。比較例4-2として、温度500℃、処理時間120分で炭化処理した炭化鉱石(炭素濃度(合計):4.6質量%)を用いて、以下の処理を行った。比較例4-3として、還元工程および炭化工程の条件を変えて、割合Rが30質量%であり、炭素濃度(合計)が1.4質量%である炭化鉱石を作製し、以下の処理を行った。比較例4-4として、還元工程および炭化工程の条件を変えて、割合Rが90質量%であり、炭素濃度(合計)が1.4質量%である炭化鉱石について、以下の処理を行った。
【0071】
(粉砕工程)
ボールミルを用いて、還元鉱石および炭化鉱石を粉砕した。粉砕した後の各粒子それぞれ、篩目が0.5mmである篩を用いて篩い分けを行った。
【0072】
(成型工程)
粉砕工程で篩い分けをした後の篩下の粒子(最大直径が0.5mm以下である粒子)を混合した後、成型工程を行った。成型工程では、ダブルロール圧縮成型機(ロール直径700mm,ロール幅650mm)を用いて、約7cc(体積)のピロー型ブリケット(成型物)を成型した。比較例4-5として、温度550℃、処理時間30分で炭化処理した炭化鉱石(炭素濃度(合計):1.4質量%)を上記の通り粉砕し、粉砕後の成型条件を変えて、気孔率が10%になるように、ピロー型ブリケットを成型した。比較例4-6として、温度550℃、処理時間30分で炭化処理した炭化鉱石(炭素濃度(合計):1.4質量%)を上記の通り粉砕し、粉砕後の成型条件を変えて、気孔率が50%になるように、ピロー型ブリケットを成型した。なお、比較例4-1~4-4についても、粉砕後の成型条件を変えて、気孔率が30%になるように、ピロー型ブリケットを成型した。実施例の塊成鉱について、EDSで分析したところ、少なくとも一部の酸化鉄粒子が塊成鉱の表層に露出していることを確認した。
【0073】
(品質試験方法)
ピロー型ブリケットについて、気孔率、圧潰強度、割合R及び被還元性を測定した。気孔率は、JIS M8716(1990)の規定に準じて測定した。圧潰強度は、JIS Z8841(1993)の規定に準じて測定した。割合Rは、上記式(1)から求めた。
【0074】
被還元性の評価は、JIS M8713の規定に準じて行い、JIS-RI(到達JIS還元率)を測定した。還元率は、所定の還元時間を経過したときに鉄酸化物から除去されている酸素の割合であり、還元前の鉄と結合した酸素に対して、除去された酸素の比率である。
【0075】
被還元性の評価では、還元温度を900℃とし、還元時間を180minとし、還元ガスとして、COガス(30vоl%)及びNガス(70vоl%)の混合ガスを用いた。下記表5に、品質評価の結果を示す。
【0076】
【表5】
【0077】
(被還元性の評価)
上記表5から分かるとおり、参考例では、JIS-RIが92質量%であったのに対して、実施例では、JIS-RIが98質量%であった。また、気孔率、炭素濃度および割合Rのいずれかの条件を満たさない比較例4-1~4-6は、JIS-RIが95質量%未満であった。このため、実施例については、参考例および比較例4-1~4-6よりも被還元性を向上させることができた。
【符号の説明】
【0078】
100,200:シャフト炉、101,104,201,205:冷却器
102,105,204,206:コンプレッサ
103,203:加熱器、106,202,207:膜分離器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8