(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】還元鉄の製造設備および還元鉄の製造方法
(51)【国際特許分類】
C21B 13/00 20060101AFI20240605BHJP
C22B 1/16 20060101ALI20240605BHJP
C22B 7/02 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
C21B13/00 101
C22B1/16 K
C22B7/02 A
(21)【出願番号】P 2023565053
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2022044198
(87)【国際公開番号】W WO2023100936
(87)【国際公開日】2023-06-08
【審査請求日】2024-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2021194494
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】牛尾 昌史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 公仁
(72)【発明者】
【氏名】飯島 孝
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-175809(JP,A)
【文献】特開昭50-149513(JP,A)
【文献】国際公開第2020/111666(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/034198(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 11/00-15/04
C22B 1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動化時に熱分解しない媒体粒子が流動して形成された流動層で、鉄分を含有するメディアン径が50μm以下の原料微粉から造粒粉を造粒する造粒装置と、
前記造粒粉が流動して形成された流動層で、少なくとも前記造粒粉を還元する還元装置と、を備える、還元鉄の製造設備。
【請求項2】
前記還元装置は、循環流動層を形成する一つ以上の循環流動層還元装置または気泡流動層を形成する一つ以上の気泡流動層還元装置の少なくともいずれかを備える、請求項1に記載の還元鉄の製造設備。
【請求項3】
前記還元装置は、少なくとも一部未還元の鉄鉱石の微粒子を含むダストを捕集する捕集装置を有する、請求項1または2に記載の還元鉄の製造設備。
【請求項4】
前記還元装置は、前記捕集装置により捕集された前記ダストを前記造粒装置の造粒容器に送入する送入装置を有する、請求項3に記載の還元鉄の製造設備。
【請求項5】
前記造粒装置が有する前記媒体粒子は、融点が1200℃超である、炭化物、酸化物または窒化物の少なくとも1種以上を含む、請求項
1又は2に記載の還元鉄の製造設備。
【請求項6】
前記造粒装置は、前記流動層における圧力損失を測定する機構を含む、請求項
1又は2に記載の還元鉄の製造設備。
【請求項7】
前記造粒装置は、前記流動層から前記造粒粉を分離する造粒粉分離装置を備え、
前記造粒粉分離装置は、磁選、乾式篩い分け、風力分級、または沈降分級の少なくともいずれかの機構を含む、請求項
1又は2に記載の還元鉄の製造設備。
【請求項8】
前記流動層が内部に形成された造粒容器は、前記流動層が配された領域における水平断面の断面積よりも、前記造粒容器の前記流動層より上部のフリーボード部における水平断面の最大断面積の方が大きくなっていることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の還元鉄の製造設備。
【請求項9】
前記流動層が内部に形成された造粒容器において、前記流動層より上部のフリーボード部における水平断面の最大断面積は、前記フリーボード部におけるガス空塔速度が前記原料微粉の終末速度となるときの断面積より大きい、請求項
1又は2に記載の還元鉄の製造設備。
【請求項10】
前記還元装置は、前記造粒粉を前記還元装置の内部に供給する管を備え、
前記管により、前記還元装置と前記造粒装置とが接続されている、請求項
1又は2に記載の還元鉄の製造設備。
【請求項11】
流動化時に熱分解しない媒体粒子が流動して形成された流動層で、鉄分を含有するメディアン径が50μm以下の原料微粉から造粒粉を造粒する造粒工程と、
前記造粒粉が流動して形成された流動層で、少なくとも前記造粒粉を還元する還元工程と、を有する、還元鉄の製造方法。
【請求項12】
前記還元工程では、一つ以上の循環型流動層反応容器、一つ以上の気泡型流動層反応容器、または、一つ以上の循環型流動層反応容器および一つ以上の気泡型流動層反応容器が用いられる、請求項11に記載の還元鉄の製造方法。
【請求項13】
前記還元工程では、少なくとも一部未還元の鉄鉱石の微粒子を含むダストが捕集される、請求項11または12に記載の還元鉄の製造方法。
【請求項14】
前記還元工程で捕集された前記ダストを前記造粒工程に用いる、請求項13に記載の還元鉄の製造方法。
【請求項15】
前記造粒工程で用いられる前記媒体粒子は、融点が1200℃超である、炭化物、酸化物または窒化物の少なくとも1種以上を含む、請求項
11又は12に記載の還元鉄の製造方法。
【請求項16】
前記造粒工程では、前記流動層における圧力損失が測定される、請求項
11又は12に記載の還元鉄の製造方法。
【請求項17】
前記造粒工程では、前記流動層から前記造粒粉が分離され、
前記造粒粉の分離は、磁選、乾式篩い分け、風力分級、または沈降分級の少なくともいずれかにより行われる、請求項
11又は12に記載の還元鉄の製造方法。
【請求項18】
前記流動層が内部に形成された造粒容器は、前記流動層が配された領域における水平断面の断面積よりも、前記造粒容器の前記流動層より上部のフリーボード部における水平断面の最大断面積の方が大きくなっていることを特徴とする、請求項
11又は12に記載の還元鉄の製造方法。
【請求項19】
前記造粒工程において形成された前記流動層より上部のフリーボード部における水平断面の最大断面積は、前記フリーボード部におけるガス空塔速度が前記原料微粉の終末速度となるときの断面積より大きい、請求項
11又は12に記載の還元鉄の製造方法。
【請求項20】
流動化時に熱分解しない媒体粒子が流動して形成された流動層で、鉄分を含有するメディアン径が50μm以下の原料微粉から前記造粒粉を造粒する造粒装置と、前記造粒粉を還元する還元装置と、を接続し、前記還元装置に備えられた管を介して、前記造粒粉は、前記還元装置に供給される、請求項
11又は12に記載の還元鉄の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元鉄の製造設備および還元鉄の製造方法に関する。本願は、2021年11月30日に、日本に出願された特願2021-194494号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、扱いが容易な粒径であり、脈石成分の少ない高品位の鉄鉱石原料が減少している。そのため、選鉱を経て脈石が除去されて粒径が小さくなった微粉鉱石や、脈石成分が多く劣質であり、微小粒径の鉱石を含む粒度範囲の広い粉状の鉄鉱石を還元処理する方法が求められている。
【0003】
上記のような微粉鉱石や粉状鉄鉱石を還元して還元鉄を製造する方法として、例えば、これらをペレット等に塊成して、当該ペレット等をシャフト炉で還元する方法や、微粉鉱石や粉状鉄鉱石を塊成することなく還元ガスと反応させる方法がある。後者の方法には、例えば、流動層を用いた方法が挙げられる。
【0004】
流動層は、容器内で粉体がガス等の流体で吹き上げられて浮遊懸濁状態となり、粉体が流動状態となった層である。流動層を形成する粉体は、単位体積当たりの比表面積が大きいため、流動層は化学反応や熱交換等に適用される。シャフト炉を用いた鉄鉱石の還元に要するコストは、塊成化に要するコストが大きい。そのため、粉状鉄鉱石から還元鉄を得る製鉄プロセスに粉状鉄鉱石の塊成化が不要な流動層を利用した方法は、コスト面で非常に有利となる可能性がある。一方で、流動層を利用した還元方法では、粉状鉄鉱石の粒子同士が還元過程で接着し、処理容器の内部が閉塞する場合がある。したがって、流動層を利用する場合、粉状鉄鉱石の還元過程での接着を防止しつつ、所定の還元率に達するような操業方法を見出すことが重要である。
【0005】
通常、流動層で粉体を処理する際には、対象となる粉体の比重および粒度に応じて容器内に供給するガスの流速が設定され、粉体が流動状態となるために必要な最小のガス流速(最小流動化速度)以上の流速により処理容器内で流動層が実現される。
【0006】
還元鉄を得るための製鉄プロセスとして粉状鉄鉱石を対象とした流動層による還元技術には多数の報告例がある。
【0007】
例えば、非特許文献1には、流動層を利用して、水素ガスで粒径が0.1~2.0mmの鉄鉱石粉を還元するプロセスが開示されている。このプロセスでは、粒径が0.1mm未満の小さな微粉を処理できないことから、0.1mm未満の鉄鉱石粉やダストは、混合機でバインダーやその他の造粒助剤と混合され、処理可能な大きさに造粒される。
【0008】
非特許文献2には、ウスタイト(Fe1-xO)を含有し、難流動性の微粉である転炉ダストを還元処理するために、転炉ダストよりも粒径が大きい流動性の媒体粒子を流動化させた一段の流動層へ転炉ダストを導入する粉粒流動層による処理方法が記載されている。
【0009】
特許文献1には、微粒子状鉄を含むブリケットを製造する方法が開示されており、この方法において、0.005mm~12mmの微粒子状鉄鉱石が流動層で還元されている。
【0010】
特許文献2には、ミクロンサイズの粒子を含む金属含有材を直接還元する工程において、金属含有材、固体炭素質材料、酸素含有ガスおよび流動化ガスを流動層容器内の流動層へ供給して該流動層容器内の流動層を維持することと、金属含有材を前記流動層容器内で少なくとも部分的に還元することと、少なくとも部分的に還元された金属含有材を含む生成物流を前記流動層容器から排出することとを含み、
(a)前記流動層内における炭素リッチな区域を確立および維持すること、
(b)金属化された材料を含む金属含有材を前記炭素リッチな区域を通過させること、および
(c)該炭素リッチな区域内に酸素含有ガスを噴射し、金属化された材料、固体炭素質材料および他の被酸化性固形物およびガスを酸化させ、粒子に調節されたアグロメレーションをもたらすことを特徴とする金属含有材を直接還元する工程が開示されている。
【0011】
特許文献3には、3段流動床反応器に微粒の鉄鉱石を装入し、還元ガスを供給して装入された微粒の鉄鉱石を還元させて海綿鉄を製造した後、前記海綿鉄を溶融ガス化炉に装入して溶融銑鉄を製造する溶融還元法が開示されている。特許文献3に記載の技術は、溶融ガス化炉から排出された排気ガスを還元ガスとダストとに分離している。分離された還元ガスは最終流動床反応器の下部に供給し、分離されたダストのうち粒子の小さいダストを前記最終流動床反応器の分散板上部に供給して、前記各流動床反応器内に流動している微粒の鉄鉱石に被覆させることにより、微粒の鉄鉱石の相互粘着と前記分散板への粘着を防止することを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2011/107349号
【文献】国際公開第2005/116274号
【文献】国際公開第01/046478号
【非特許文献】
【0013】
【文献】D. Nuber, H. Eichberger and B. Rollinger “Circored fine ore direct reduction”, Millennium Steel, (2006), 37.
【文献】宝田恭之ら、他6名、”粉粒流動層を用いた転炉微細ダストからの粉鉄の製造”、化学工学論文集、第19巻、第3号、(1993)、p.505~510
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の先行技術のように、流動層は全ての粒度範囲に対応可能な粉状鉄鉱石の還元処理法ではない。多くのプロセスでは、主たる粉状鉄鉱石の粒径に合わせたガス流速が選択されているが、粉状鉄鉱石に含まれる粒径がより小さい微粉鉱石に対して、そのガス流速は大きすぎることが多い。そのため、そのような微粉鉱石は、処理容器外へ吹き飛ばされてしまうのが一般的である。また、粒径の非常に小さな粒子は付着性が高い。これに起因して、チャネリングと呼ばれる、ガス流通時に粉体層におけるガスのバイパス現象が起こることがあり、均一な流動状態を実現することが困難となる場合がある。
【0015】
また、ガス流速を大きくして粉体をガスと同伴させて循環させる循環型流動層(Circulating Fluidized Bed;CFB)においても、粒径が小さすぎる粉体はガスと同伴して系外へ排出される傾向がある。一般的な比重の鉄鉱石は、Geldartの流動状態図で分類されているとおり、粒径が20~30μm程度では、難流動性を示す。そのため、通常は、このような微小粒径の鉄鉱石は流動層での処理の対象外とされている。また、単純に粒子に働くVan der Waals力を起因とする付着力Fと粒子径dpとの間には、F∝dpの関係が成り立つ。一方、粒子同士の分離力は、粒子の自重Wに比例し、W∝ρdp
3となり、粒子の真密度ρより粒子径dpの寄与が大きい。これらの関係から、一般的に多くの粒子において、50~100μmの粒径を境界に、付着力と自重による分離力がバランスし、粒径がこの領域より小さな粒子は付着力が相対的に大きくなり、粒子同士の凝集や壁面材との付着、閉塞などの問題が発生しやすくなる。
【0016】
非特許文献1に記載された技術においては、粉体を流動化させるために、微粉鉱石とバインダーを用いてより大きな造粒物を造粒しているが、流動層内での造粒物同士の衝突等による微粉化を防止するために、造粒物の強度を高めている。そのため、非特許文献1に記載された技術では、造粒工程と造粒物の強度を高めるための工程にエネルギーやコストを要する。
【0017】
非特許文献2に記載された技術では、媒体粒子を用いてサブミクロン~数十μm径の難流動性の微粉鉄酸化物粒子を媒体粒子と共に流動化させるが、微粉鉄酸化物粒子同士の凝集を防止するためにガス流速を大きくし、流動層から微小な還元鉄を飛び去らせて、回収している。この方法は、微粉鉄酸化物が飛び去る過程で還元が十分進行するように流動層内での滞留時間を確保する必要があるが、粒径が小さい粒子ほど滞留時間は短くなるため、処理対象粒子を非特許文献2が対象としている転炉ダストに限定しない場合、その制御は容易でない。したがって、非特許文献2に記載の技術は、対象の酸化鉄粒子の粒径はサブミクロン~数十μmであり、転炉ダストに限定されずより粒度分布の広い鉱石粉には対応が困難である。
【0018】
特許文献1に記載の技術では、微粉の還元が不十分であるとブリケットにおける鉄の含有率が低下する。このようなブリケットを製鋼の原料として用いた場合、製鋼コストが増加する。微粉は粒径が小さく、還元反応は進行しやすい一方で、還元を進行させる反応槽内からいち早く排出される傾向があるため、還元が不十分となる場合があり、ブリケット化された製品還元鉄における鉄の含有率低下をもたらす懸念がある。
【0019】
特許文献2に記載の技術は、流動層に炭素リッチな区域を用意するために、固形物噴射ランス等の固形物送達装置が必要であり、装置が煩雑となり、コスト増加に繋がる。
【0020】
特許文献3に記載の技術は、分離回収された還元が不十分なダストを流動層に導入して、当該ダストを金属鉄粒子に被覆することで金属鉄粒子同士の接着を防止するとしている。しかしながら、導入されたダストは、金属鉄粒子に付着する前にガスによって流動層から飛び去る可能性があり、そのため、金属鉄粒子同士の接着を防止することができない可能性がある。
【0021】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、本発明は、流動層を用い、微粉鉱石を高い歩留りかつ低コストで還元することができる、還元鉄の製造設備および還元鉄の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
流動化困難な微小な粒子径の微粉鉱石は付着性が高く、また、マグネタイト(Fe3O4)やウスタイト(Fe1-xO)など還元が途中まで進行している微粉の場合には再酸化性が高く、再酸化による発熱を伴ってシンタリングが起こり凝集しやすい。また、流動層を用いた鉄鉱石の還元プロセスでは、鉄鉱石が微粉の場合、還元に伴って金属鉄が表層に現れると粒子同士の接着(スティッキング)により凝集しやすい。本発明者らは、これらの点に着目し、従来の流動層を用いた製鉄プロセスでは忌避される凝集現象を積極的に用いて、難流動性の微粉鉱石を取り扱いが容易なサイズの鉄鉱石に自己造粒させることを着想した。本発明者らは、具体的には、流動層で微粉鉱石を凝集させて流動化容易な粒径に造粒した後、流動層を用いた還元プロセスへ造粒粉を導入することを着想した。ただし、従来から問題となっているとおり、難流動性の微粉鉱石からなる粉体では流動化が困難である。また、凝集現象が進行すると造粒容器内の目詰まりや閉塞が生じる。本発明者らの検討により、造粒容器内の流動層の形成を補助するために流動媒体として粗粒を装入しておくことで、粗粒により形成される流動層中で微粉鉱石を流動させながら目詰まりや閉塞が生じない程度に凝集させることができることが分かった。本発明者らが想到したような、難流動性を示す粒径の微粉鉄鉱石を流動させながら流動化容易な径まで造粒させ、還元鉄生産プロセスに応用する技術は報告されていない。さらに、凝集粉(造粒粉)を用いて、流動層で微粉鉱石を歩留り良く還元することができることが分かった。
【0023】
上記知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] 本発明の一態様に係る還元鉄の製造方法は、流動化時に熱分解しない媒体粒子が流動して形成された流動層で、鉄分を含有するメディアン径が50μm以下の原料微粉から造粒粉を造粒する造粒装置と、上記造粒粉が流動して形成された流動層で、少なくとも上記造粒粉を還元する還元装置と、を備える。
[2] 上記[1]に記載の還元鉄の製造設備では、上記還元装置は、循環流動層を形成する一つ以上の循環流動層還元装置または気泡流動層を形成する一つ以上の気泡流動層還元装置の少なくともいずれかを備えていてもよい。
[3] 上記[1]または[2]に記載の還元鉄の製造設備では、上記還元装置は、少なくとも一部未還元の鉄鉱石の微粒子を含むダストを捕集する捕集装置を有していてもよい。
[4] 上記[3]に記載の還元鉄の製造設備では、上記還元装置は、上記捕集装置により捕集された上記ダストを上記造粒装置の造粒容器に送入する送入装置を有していてもよい。
[5] 上記[1]~[4]のいずれかに記載の還元鉄の製造設備では、上記造粒装置が有する上記媒体粒子は、融点が1200℃超である、炭化物、酸化物または窒化物の少なくとも1種以上を含んでいてもよい。
[6] 上記[1]~[5]のいずれかに記載の還元鉄の製造設備は、上記流動層における圧力損失を測定する機構を含んでいてもよい。
[7] 上記[1]~[6]のいずれかに記載の還元鉄の製造設備は、上記流動層から上記造粒粉を分離する造粒粉分離装置を備え、上記造粒粉分離装置は、磁選、乾式篩い分け、風力分級、沈降分級の少なくともいずれかの機構を含んでいてもよい。
[8] 上記[1]~[7]のいずれかに記載の還元鉄の製造設備では、上記流動層が内部に形成された造粒容器は、上記流動層が配された領域における水平断面の断面積よりも、上記造粒容器の上記流動層より上部のフリーボード部における水平断面の最大断面積の方が大きくなっていてもよい。
[9] 上記[1]~[8]のいずれかに記載の還元鉄の製造設備では、上記流動層が内部に形成された造粒容器において、上記流動層より上部のフリーボード部における水平断面の最大断面積は、上記フリーボード部におけるガス空塔速度が上記原料微粉の終末速度となるときの断面積より大きくてもよい。
[10] 上記[1]~[9]のいずれかに記載の還元鉄の製造設備では、上記還元装置は、上記造粒粉を上記還元装置の内部に供給する管を備え、上記管により、上記還元装置と上記造粒装置とが接続されていてもよい。
【0024】
[11] また、本発明の別の態様に係る還元鉄の製造方法は、流動化時に熱分解しない媒体粒子が流動して形成された流動層で、鉄分を含有するメディアン径が50μ以下の原料微粉から造粒粉を造粒する造粒工程と、上記造粒粉が流動して形成された流動層で、少なくとも上記造粒粉を還元する還元工程と、を有する。
[12] 上記[11]に記載の還元鉄の製造方法における上記還元工程では、一つ以上の循環型流動層反応容器、一つ以上の気泡型流動層反応容器、または、一つ以上の循環型流動層反応容器および一つ以上の気泡型流動層反応容器が用いられてもよい。
[13] 上記[11]または[12]に記載の還元鉄の製造方法における上記還元工程では、少なくとも一部未還元の鉄鉱石の微粒子を含むダストが捕集されてもよい。
[14] 上記[13]に記載の還元鉄の製造方法では、上記還元工程で捕集された上記ダストを上記造粒工程に用いてもよい。
[15] 上記[11]~[14]のいずれかに記載の還元鉄の製造方法では、上記造粒工程で用いられる上記媒体粒子は、融点が1200℃超である、炭化物、酸化物または窒化物の少なくとも1種以上を含んでいてもよい。
[16] 上記[11]~[15]のいずれかに記載の還元鉄の製造方法における上記造粒工程では、上記流動層における圧力損失が測定されてもよい。
[17] 上記[11]~[16]のいずれかに記載の還元鉄の製造方法における造粒工程では、上記流動層から上記造粒粉が分離され、上記造粒粉の分離は、磁選、乾式篩い分け、風力分級、または沈降分級の少なくともいずれかにより行われてもよい。
[18] 上記[11]~[17]のいずれかに記載の還元鉄の製造方法では、上記流動層が内部に形成された造粒容器では、上記流動層が配された領域における水平断面の断面積よりも、上記造粒容器の上記流動層より上部のフリーボード部における水平断面の最大断面積の方が大きくなっていてもよい。
[19] 上記[11]~[18]のいずれかに記載の還元鉄の製造方法では、上記造粒工程において形成された上記流動層より上部のフリーボード部における水平断面の最大断面積は、上記フリーボード部におけるガス空塔速度が上記原料微粉の終末速度となるときの断面積より大きくてもよい。
[20] 上記[11]~[19]のいずれかに記載の還元鉄の製造方法では、流動化時に熱分解しない媒体粒子が流動して形成された流動層で、鉄分を含有するメディアン径が50μm以下の原料微粉から上記造粒粉を造粒する造粒装置と、上記造粒粉を還元する還元装置と、を接続し、上記還元装置に備えられた管を介して、上記造粒粉は、上記還元装置に供給されてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、流動層を用い、微粉鉱石を高い歩留りかつ低コストで還元することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る還元鉄の製造設備に備えられる造粒装置の一例を示す図である。
【
図2】同実施形態における造粒装置の変形例を示す図である。
【
図3】同実施形態における造粒装置の変形例を示す図である。
【
図4】同実施形態における造粒装置の変形例を示す図である。
【
図5】同実施形態における造粒装置の変形例を示す図である。
【
図6】同実施形態における輸送装置の一例を説明するための模式図である。
【
図7】同実施形態における輸送装置の別の例を説明するための模式図である。
【
図8】同実施形態における輸送装置の別の例を説明するための模式図である。
【
図9】同実施形態における圧力測定装置の別の例を説明するための模式図である。
【
図10】同実施形態における原料微粉の送入の例を説明するための模式図である。
【
図11】同実施形態における原料微粉の送入の別の例を説明するための模式図である。
【
図12】同実施形態における原料微粉の送入の別の例を説明するための模式図である。
【
図13】同実施形態における分散板の別の例を説明するための模式図である。
【
図14】同実施形態における還元装置を構成可能な循環流動層還元装置の模式図である。
【
図15】気泡流動層を説明するための模式図である。
【
図16】同実施形態における還元装置を構成可能な気泡流動層還元装置の模式図である。
【
図17】同実施形態における気泡流動層還元装置の反応器の別の例を示す模式図である。
【
図18】還元装置として一つの循環流動層還元装置が備えられた還元鉄の製造設備の一例を示す概略構成図である。
【
図19】還元装置として一つの気泡流動層還元装置が備えられた還元鉄の製造設備の一例を示す概略構成図である。
【
図20】還元装置として一つの循環流動層還元装置および三つの気泡流動層還元装置が備えられた還元鉄の製造設備の一例を示す概略構成図である。
【
図21】還元装置として一つの循環流動層還元装置および一つの気泡流動層還元装置が備えられた還元鉄の製造設備の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。また、図中の各構成要素の比率、寸法は、実際の各構成要素の比率、寸法を表すものではない。
【0028】
本実施形態に係る還元鉄の製造方法は、流動化時に熱分解しない媒体粒子が流動して形成された流動層で、鉄分を含有するメディアン径が50μm以下の原料微粉から造粒粉を造粒する造粒工程と、造粒粉が流動して形成された流動層で、少なくとも造粒粉を還元する還元工程と、を有する。造粒工程では例えば、以下に説明する、造粒装置10が用いられ、還元工程では還元装置20が用いられる。以下に造粒装置10および還元装置20について説明する。
【0029】
<造粒装置10>
図1、2を参照して、造粒装置10を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る還元鉄の製造設備に備えられる造粒装置の一例を示す図である。
図2~5は、本実施形態における造粒装置の変形例を示す図である。造粒装置10は、粉粒流動層(Particulate fluidized bed;PFB)400を形成する。造粒装置10は、例えば、
図1に示すように、造粒容器110と、乾式集塵機120と、を備える。造粒装置10は、適宜、容器170を備えてもよい。
【0030】
[造粒容器110]
造粒容器110は、底部に配された流動化ガス(供給ガス)のガス供給口111と、原料微粉403が造粒容器110の内部に供給される原料微粉供給口112と、ガス供給口111よりも上方に配された、複数の通気口を有し、ガスの流れを整流する分散板113と、造粒容器110の内部のガスの出口である出口114と、を有する。造粒容器110の内部における分散板113より上方には、原料微粉403より粒径が大きな媒体粒子401が装入されている。
【0031】
造粒容器110は、粉粒流動層400が配された領域1101と、造粒容器110Aの粉粒流動層400より上部のフリーボード部1102と、を有する。フリーボード部1102では、供給ガスの流速に応じて、粉粒流動層400から飛び出た原料微粉403や原料微粉403が造粒した造粒粉が存在することがある。
【0032】
造粒装置10の変形例である造粒装置10Aにおける造粒容器110Aは、
図2に示すように、粉粒流動層400が配された領域1101における水平断面の断面積よりも、造粒容器110Aの粉粒流動層400より上部のフリーボード部1102Aにおける水平断面の最大断面積の方が大きく構成されている。こうすることで、造粒容器110A内の上部でガス流速が下がり、造粒されていない状態の原料微粉403が粉粒流動層400から吹き上がっても出口114から造粒容器110A外へ飛び去ることが抑制され、当該原料微粉403を落下させて粉粒流動層400内部に戻すことが可能となる。したがって、造粒容器は、流動層が配された領域における水平断面の断面積よりも、造粒容器の流動層より上部のフリーボード部における水平断面の最大断面積の方が大きくなっていることが好ましい。このようなフリーボード部を有する造粒容器の例を
図2~5に示す。例えば、
図2に示すように、フリーボード部1102Aは、上方に向かって水平断面の断面積が大きくなっているテーパー形状となっている。また、
図3に示すように、フリーボード部1102Bは、途中までテーパー形状であり、それより上方では一定の断面積となった直胴形状となっている。また、
図4に示すように、フリーボード部1102Cは、その下方部分と上方部分とで水平断面の断面積が異なり、上方部分の断面積が下方部分の断面積よりも大きい形状となっている。また、
図5に示すように、フリーボード部1102Dは、正面視で、一方の側面が鉛直に延びており、他方の側面が鉛直方向に対して傾いて延び、上方に向かって水平断面の断面積が大きくなるような形状となっている。
図2~5に示したフリーボード部1102A、1102B、1102C、1102Dは、あくまでも、造粒容器110における領域1101の水平断面の断面積よりも水平断面の最大断面積が大きく構成されているフリーボード部の一例である。造粒容器110における領域1101の水平断面の断面積よりも水平断面の最大断面積が大きいフリーボード部の形状は、
図2~5に示した形状を組み合わせた形状であってもよいし、
図2~5に示した形状以外の形状であってもよい。
【0033】
更に、各フリーボード部1102、1102A、1102B、1102C、1102Dにおける水平断面の最大断面積は、フリーボード部におけるガスの空塔速度が原料微粉403の終末速度となるときの断面積より大きいことが好ましい。フリーボード部における水平断面の断面積、並びに、供給ガスの流速、供給ガスの密度、原料微粉403の粒子径、及び、原料微粉403の粒子密度によっては、フリーボード部におけるガスの空塔速度が原料微粉403の終末速度よりも大きくなる場合がある。しかしながら、各フリーボード部1102、1102A、1102B、1102C、1102Dにおける水平断面の最大断面積を、フリーボード部におけるガスの空塔速度が原料微粉403の終末速度となるときの断面積より大きくすることで、フリーボード部におけるガスの空塔速度が原料微粉403の終末速度よりも小さくなり、原料微粉403が造粒容器110から飛び出ることをより一層抑制することができる。
【0034】
原料微粉403の終末速度ut(m/s)は、原料微粉403の粒子を球状に一次近似した場合に、以下の式(1)で表すことができる。
【0035】
【0036】
上記式(1)中、g(m/s2)は重力加速度、ρp(kg/m3)は原料微粉403の粒子密度、ρf(kg/m3)は供給ガスの密度、Dp(m)は原料微粉403のメディアン径、Cd(-)は抗力係数であってレイノルズ数Reによって整理され、Brown and Lawlerの近似式(式(2))を用いて下記で表される。
【0037】
Cd=(24(1+0.15Re0.681)/Re)+(0.407/(1+8710Re-1) …式(2)
【0038】
g=9.8(m/s2)、原料微粉403を構成し得る鉄鉱石粒子の真密度は脈石成分の含有率に依存するが、多くの場合、ρp=4000~5300kg/m3)である。また、供給ガスのガス密度ρfは、候補となるガス種の混合条件の範囲としてρf=0.0899~1.784(kg/m3)とし、Dp=50×10-6(m)、及び、Re=0.01~2とすると、式(1)、(2)より、原料微粉403の終末速度utは0.03~0.5m/sとなる。
【0039】
詳細は後述するが、供給ガスの流速Uは、流動層の最小流動化速度以上であり、例えば、0.02m/s以上0.8m/s以下である。例えば、原料微粉403の終末速度utを0.5m/sとし、供給ガスの流速Uを0.8m/sとして造粒粉を造粒する場合、フリーボード部における水平断面の最大断面積を流動化部の断面積に対して0.8/0.5倍(=1.6倍)超にすることで、フリーボード部におけるガスの空塔速度が原料微粉403の終末速度よりも小さくなり、原料微粉403が造粒容器110から飛び出ることをより一層抑制することができる。
【0040】
原料微粉403のメディアン径が小さい程、原料微粉403の終末速度utは小さくなる。そのため、原料微粉403が造粒容器110から飛び出ることを抑制するために、原料微粉403のメディアン径が小さい程、フリーボード部における水平断面の最大断面積は大きければよい。ただし、設備設計の観点から、フリーボード部における水平断面の最大断面積は3000倍未満とすることが好ましい。
【0041】
上記の通り、フリーボード部における水平断面の断面積は、供給ガスの流速、原料微粉403のメディアン径、原料微粉403の粒子の密度等により定められればよい。
【0042】
原料微粉供給口112から原料微粉403が送入されるが、原料微粉供給口112には、適宜、原料微粉403の送入を制御する装置が設けられてもよい。そのような装置として、例えば、スライドゲートやスプレッダが挙げられる。なお、原料微粉供給口112からは、媒体粒子401が送入されてもよい。
【0043】
分散板113は、複数の通気口を有する板である。ガス供給口111から造粒容器110の内部に供給された供給ガスは、分散板113の通気口を通過して整流される。
【0044】
出口114は、造粒容器110の内部のガスの出口である。供給ガスの流速によっては、出口114から原料微粉403が造粒容器110の外へ排出されることがある。したがって、出口114には、後述する乾式集塵機120が接続されていることが好ましい。
【0045】
[乾式集塵機120]
造粒装置10では、出口114から排出された排ガス(オフガス)に、原料微粉403が含まれる場合がある。そこで、乾式集塵機120を用いて、オフガスに含まれる原料微粉403を捕集することが好ましい。乾式集塵機120は、
図1に示すように、出口114に接続される。原料微粉403を含む排ガスが出口114を通じて乾式集塵機120に送られ、乾式集塵機120により原料微粉403が捕集される。乾式集塵機120としては、例えば、サイクロンやマルチクロン、セラミックフィルターなどを用いることができる。乾式集塵機120で捕集された原料微粉403は、再度造粒容器110に送入することができる。例えば、
図1に示すように、乾式集塵機120の下方にはバルブ121を有する配管が設けられており、当該配管を介して乾式集塵機120と、バルブ171を有する配管を備える容器170とが接続されている構成により、原料微粉403を造粒容器110に送入することができる。具体的には、バルブ121、171を閉めた状態で粉粒流動層400を形成させる。この状態でバルブ121を開くことで容器170に原料微粉403が貯められる。その後、バルブ121を閉めて、バルブ171を開くことで、運転中のガスを外部に排出させることなく、容器170にたまった原料微粉403を排出することが可能である。排出された原料微粉403は、種々の方法で原料微粉供給口112から造粒容器110に送入してもよい。例えば、配管を原料微粉供給口112に接続して気流搬送により原料微粉供給口112から造粒容器110に送入してもよいし、人手による作業により原料微粉供給口112から造粒容器110に送入してもよい。なお、乾式集塵機120で捕集される粉末には、原料微粉403の他に造粒粉が含まれる場合がある。
【0046】
造粒装置10は、粉粒流動層400から造粒粉を分離する造粒粉分離装置130、ならびに、媒体粒子401および原料微粉403を少なくとも含む粉体を造粒粉分離装置130へ輸送する輸送装置140を備えていることが好ましい。以下に、
図6~8を参照して、造粒粉分離装置130及び輸送装置140を説明する。なお、
図6~8に示される造粒粉分離装置130及び輸送装置140は、あくまでも例示であり、これらに限られない。
【0047】
[造粒粉分離装置130]
造粒粉分離装置130は、磁選、乾式篩い分け、風力分級、または沈降分級の少なくともいずれかの機構を含む。造粒装置10で製造された造粒粉は、造粒粉分離装置130によって媒体粒子401から分離回収される。
【0048】
造粒粉分離装置130が乾式篩い分けの機構を含む場合、媒体粒子401とともに抜き出された造粒粉は、例えば、十分に大きな媒体粒子401との粒径差を利用して媒体粒子401と分離される。この際、所定の粒径まで造粒されていない原料微粉403は篩分けによって所定の粒径範囲となった造粒粉と分離し、媒体粒子401とともに再度造粒容器110に戻すようにしても良い。乾式篩い分けの機構は、例えば、一方に傾斜した第一の篩と、第一の篩よりも下方の位置で第一の篩の傾斜方向とは反対側に傾斜して配され、第一の篩よりも目開きが小さい第二の篩とを備える。上部に配された第一の篩は粗粒である媒体粒子401を捕捉するがそれ未満の粒径である造粒粉と原料微粉403を通し、下部に配された第2の篩は造粒粉を捕捉するが原料微粉403は通す。これにより、下部に配された第二の篩のみで捕捉された造粒粉が還元装置20側の輸送管に落下するようにすることができ、効果的に造粒粉を分離することが可能となる。
【0049】
また、造粒粉分離装置130が磁選の機構を含む場合、還元性ガスを用いた反応により造粒した造粒粉には鉄が生成していることを利用し、造粒装置10から抜き出した粉体(媒体粒子401、原料微粉403、および造粒粉の混合粉)を落下させる機構とし、鉄が生成した造粒粉が還元装置20側の輸送管に落下するように、当該造粒粉に外部から磁力を作用させることで効果的に造粒粉を分離することが可能となる。また、酸化性ガスを用いた反応により造粒する場合、原料微粉403は強磁性のマグネタイト状態であるが、造粒後の造粒粉は、マグネタイト状態から常磁性のヘマタイト状態に遷移している。この原料微粉403と造粒粉の磁性の違いを利用し、上記と逆に、原料微粉403と造粒粉とを磁力によって分離し、造粒粉のみを還元装置20側の輸送管へ導くことも可能である。
【0050】
さらに、造粒粉分離装置130が風力分級の機構を含む場合、抜き出した粉体(媒体粒子401、原料微粉403、および造粒粉の混合粉)を落下させながら、水平方向より一定の風を当てることで、粒径および比重の違いによって、落下中の水平方向への変位量が変化することを利用し、造粒粉のみ還元装置20側の輸送管に落下させることが可能である。
【0051】
造粒粉分離装置130が沈降分級の機構を含む場合、抜き出した粉体(媒体粒子401、原料微粉403、および造粒粉の混合粉)を別の容器内で不活性ガスにより流動化し、この際の不活性ガスの流速を原料微粉403の最小流動化速度以上、媒体粒子401の最小流動化速度未満とすることで媒体粒子401を流動層内で沈降させ、最下部より媒体粒子401、中間部より造粒粉を順次排出させることで分離することができる。
【0052】
造粒粉の分離を効率よく行うため、上記の方法2つ以上を組み合わせた機構を有する分離装置としてもよい。
【0053】
[輸送装置140]
輸送装置140は、媒体粒子401および原料微粉403のうちの少なくともいずれかを含む粉体を造粒粉分離装置130へ輸送する装置である。輸送装置140は、各種の粉体排出方式と輸送機構を有する装置であればよい。
【0054】
粉体排出方式には、例えば、供給ガスによって舞い上げられた粉体を排出する溢流方式や、造粒容器110の底部から粉体を排出する底部抜き取り方式などがある。溢流方式には、例えば、
図6に示すように、供給ガスによって舞い上げられた粉体を、造粒容器110の壁面に接続された溢流管141を通じて、造粒粉分離装置130に輸送する方式や、
図7に示すように、造粒容器110の下方から粉粒流動層400の上面近傍まで挿入されたダウンカマー142を通じて、造粒粉分離装置130に粉体を輸送する方式、またはこれらを組み合わせた方式などがある。
【0055】
底部抜き取り方式には、例えば、
図8に示すような、造粒容器110の下方から分散板113まで挿入されたダウンカマー143または造粒容器110における分散板113付近の壁面に接続されたダウンカマー144の少なくともいずれかを通じて、造粒粉分離装置130に輸送する方式などがある。
【0056】
粉体排出方式には、溢流方式と噴流方式とが組み合わされてもよい。
【0057】
また、排出された粉体を輸送する輸送機構には、各種の汎用的な粉体供給・輸送機構を利用することができる。粉体供給・輸送機構には、例えば、上述した溢流管141やダウンカマー142、143、144に設けられる、ロックホッパー、テーブルフィーダー、ロータリーバルブ、スクリューフィーダー、ニューマチックバルブなどが挙げられる。気流輸送によって粉体の供給や輸送が行われてもよい。なお、利用する粉体供給・輸送機構はガスのシール性に優れるものが好ましいが、造粒容器110内から粉体を排出し輸送することができるものであれば、これらに限定されるものではない。
【0058】
[圧力測定装置150]
本実施形態に係る造粒装置10は、圧力測定装置150を備えることが好ましい。圧力測定装置150は、媒体粒子401が存在する層より下部と上部の圧力差を測定し、粉粒流動層400の圧力損失を算出する。圧力測定装置150は、例えば、高さが異なる位置の圧力を測定する複数の圧力計で構成される。圧力の測定位置は、粉粒流動層400の圧力損失を算出できればよく、例えば、
図1に示すように、分散板113の下方と、フリーボード部1102の最上部との圧力差を測定してもよいし、
図9に示すように、分散板113直上付近と、フリーボード部1102の最上部との圧力差を測定してもよい。
図2~5に示す、フリーボード部1102A、1102B、1102C、1102Dのように、水平断面の断面積が鉛直方向の位置によって異なる場合は、断面積が最大となる位置の圧力を測定して、媒体粒子401が存在する層より下部と上部の圧力差を測定し、粉粒流動層400の圧力損失を算出することが好ましい。
【0059】
[粉粒流動層400]
流動層である粉粒流動層400は、ガス供給口111から供給され、分散板113の複数の通気口を通って整流されたガスによって媒体粒子401が流動して造粒容器110の内部に形成される。なお、粉粒流動層400を形成するためのガスの通気方法・形態は、
図1に示す分散板113、多孔質板やスリット板のような平板型のほか、単純なノズル型やノズル先端に各種形態の吹き出し孔付きキャップを設けたキャップ型、チューブ側面に複数の穴をあけたグリッドチューブを配置したパイプ型など、供給ガスを造粒容器110に供給し、粒子を吹き上げて流動層を形成可能なものであればその具体的な形態は限定されない。
【0060】
粉粒流動層400が形成された造粒容器110内に原料微粉供給口112から原料微粉403が供給される。粉粒流動層400には、原料微粉403よりも粒径が大きな媒体粒子401と、供給ガス(流動化ガス)の気泡402と、原料微粉403が存在する。この粉粒流動層400によって、原料微粉403からより大きな造粒粉が造粒される。なお、気泡402は流動状態に依存してその形態は様々であり、流動状態によっては明確な気泡が形成されない場合もある。
【0061】
[原料微粉403]
原料微粉403は、鉄分を含有し、還元する必要がある微粉であり、例えば、選鉱された微粉鉱石、篩い分けられた微小粒径鉱石、または各種製鉄プロセスから排出・回収されるダスト、または、後述する還元装置20が備える捕集装置(乾式集塵機240,320)により捕集されたダスト等である。また、原料微粉403は、これらを複数含んだものであってもよい。選鉱された微粉鉱石には、具体的には、従来ペレットの原料として用いられるペレットフィードのほか、マグネタイト精鉱、シンターフィード等が挙げられる。また、ここで言うダストとは、転炉で発生するいわゆる転炉ダストや、還元装置20で発生し得る一部未還元の鉱石の微粒子や還元鉄の微粒子等が含まれる。鉄製造のために利用される鉄鉱石の成分範囲として、原料微粉403には、一般的にFeは50~70質量%含まれている。不純物成分を分離する工程のエネルギー低減や鉱石原単位を抑える観点などから、原料微粉403には、例えば、55~68質量%のFeが含まれるものを用いてもよい。
【0062】
原料微粉403を構成する上述したような微粉は、密度が高く、メディアン径が50μm以下であると難流動性を示す。したがって、原料微粉403のメディアン径は50μm以下である。メディアン径が50μmを超える原料微粉403は、造粒装置10を用いて造粒せずに還元装置20に直接供給して還元鉄を製造することができる。また、メディアン径が50μm超であると、凝集により造粒粉が過度に大きくなりやすく、流動化の停止などを引き起こし、造粒容器110内で安定的に流動化させながら所望の粒径へ造粒することが困難となる。よって、原料微粉403のメディアン径は、50μm以下である。さらに、原料微粉403のメディアン径が大きすぎると、原料微粉403が造粒した造粒粉の粒径と媒体粒子401の粒径との差が小さくなる。この粒径差が小さい場合、粒径差を用いて造粒粉と媒体粒子401とを分離する場合、これらの分離が困難になる場合がある。媒体粒子401と原料微粉403とを容易に分離するという点から、原料微粉403のメディアン径は、好ましくは30μm以下である。
一方、メディアン径が1μm未満の粉末は、回収・ハンドリングが困難であり、原料として用いづらい。そのため、原料微粉403のメディアン径は、好ましくは、1μm以上である。ただし、原料微粉403のメディアン径は、この範囲に限定されるということではなく、1μm未満の粉末や50μm超の粉末であっても、凝集制御のための条件調整や媒体粒子401との分離操作を適切に行えば原料微粉403として使用可能である。
なお、原料微粉403の密度が高いとは、その真密度が500kg/m3以上であることを言う。
【0063】
原料微粉403のメディアン径は、以下の方法で測定することができる。すなわち、湿式測定装置であるレーザ回折式粒子径測定装置(Malvern Panalytical社製、Mastersizer 3000)を用いて測定した篩下積算分布における体積基準の粒子径d50を原料微粉403のメディアン径とする。測定時の設定条件は、分散媒:水、分散媒屈折率:1.33、粒子屈折率:2.918(酸化鉄Fe2O3の屈折率)である。粒径の大きな粒子を含む原料微粉の場合は、乾式篩により篩分けし、篩下の原料微粉より任意にサンプリングした粉末の粒子径を3回上記のレーザ回折式粒子径測定装置により測定し、そのd50平均値をメディアン径とすればよい。
【0064】
[媒体粒子401]
媒体粒子401は、原料微粉403を造粒粉とするための流動層の形成に不可欠であり、流動化時に熱分解せずに、流動化の最中に形状を保っている必要がある。そのため、媒体粒子401は、流動化時に熱分解しない粒子である。媒体粒子401は、炭化物、酸化物または窒化物の少なくとも1種以上を含む粒子、特にセラミックス粒子であることが好ましい。造粒工程では、供給ガス(流動化ガス)として還元性ガスが用いられ、原料微粉403が還元されながら造粒される場合と、酸化性ガスが用いられ、原料微粉403が酸化されながら造粒される場合がある。そのため、媒体粒子401は、原料微粉403の酸化反応を行う温度範囲が1200℃程度以下、還元反応を行う温度範囲が900℃程度以下であることから、融点が1200℃超であり、少なくとも1200℃の温度で溶融熱分解が進行しない高融点材料であることが好ましい。更に、媒体粒子401は、還元性ガスを用いる場合には、水素やCOガス等の還元雰囲気下でも不活性な材料であることがより好ましく、例えば、炭化物、または窒化物であることがより好ましい。炭化物としては、SiC、TiC、TaCまたはWC等が挙げられる。窒化物としては、Si3N4またはBN等が挙げられる。酸化性ガスを用いる場合には、媒体粒子401は、O2ガス雰囲気下で不活性な材料であることがより好ましく、例えば、酸化物であることがより好ましい。酸化物としては、SiO2、Al2O3、ZrO2またはMgO等が挙げられる。なお、上記のような酸化・還元雰囲気において分解反応が生じうる物質は媒体粒子には適さず、例えば石炭等からなる粒子は媒体粒子に適しない。
【0065】
媒体粒子401のメディアン径は、0.2mm以上0.8mm以下であることが好ましい。媒体粒子401のメディアン径が0.2mm以上0.8mm以下であると、媒体粒子401がガス供給により均一に流動化し、粉粒流動層400が形成されやすい。媒体粒子401のメディアン径は、より好ましくは、0.3mm以上である。また、媒体粒子401のメディアン径は、より好ましくは、0.6mm以下である。媒体粒子401のメディアン径は、より一層好ましくは、上記範囲において、原料微粉403のメディアン径の5倍以上、更に好ましくは10倍以上である。媒体粒子401のメディアン径が、0.3mm以上0.6mm以下であり、かつ、原料微粉403のメディアン径の10倍以上であると、粒径の小さな原料微粉403自体の自重より、近接する媒体粒子401への付着力の効果が相対的に支配的となる。そのため、原料微粉403が媒体粒子401に付着してその周りにまとわりつくようにして原料微粉403も媒体粒子401とともに流動化しやすくなり、粉粒流動層400が形成されやすい。
【0066】
媒体粒子401のメディアン径は、原料微粉403のメディアン径の測定方法と同様の方法で測定でき、この場合、使用する媒体粒子の材料によって粒子屈折率を設定する。
【0067】
媒体粒子401と原料微粉403の体積の割合(以下では、媒体粒子401と原料微粉403を合わせた全体の体積に対するそれぞれの割合を単に体積割合と呼称することがある。)は、例えば、原料微粉403の体積の割合は1体積%以上30体積%以下である。原料微粉403の体積割合は、好ましくは、3体積%以上である。原料微粉403の体積割合が3体積%以上であると、原料微粉の造粒処理効率が向上する。また、原料微粉403の体積割合が30体積%以下であると、原料微粉403に近接して存在する媒体粒子401が増加し、原料微粉403の媒体粒子401への付着が増加するため、原料微粉403単体のまま流動化ガスにより吹き飛ばされてしまうことが抑制される。また、原料微粉403の体積割合が30体積%以下であると、原料微粉403同士での接触頻度が減少するため、流動化が困難になったり、凝集が過大に進行したりすることが抑制される。原料微粉403の体積割合は、好ましくは、20体積%未満である。
【0068】
媒体粒子401と原料微粉403を合わせた全体の体積に対する原料微粉403の割合および媒体粒子401の割合は、以下の方法で測定することができる。すなわち、媒体粒子401および原料微粉403それぞれの乾燥状態での嵩密度を予め測定し、所定の体積割合となるそれぞれの重量を嵩密度から求める。使用される媒体粒子401の体積割合および原料微粉403の体積割合は、測定された嵩密度に対応した重量に基づいて算出することができる。嵩密度の測定にはPOWDER TESTER PT-X(ホソカワミクロン製)を用い、ゆるめ嵩密度測定モードにより嵩密度を測定する。
【0069】
[供給ガス]
供給ガスとしては、特段制限されず、酸化性ガス、還元性ガス、または不活性ガスを使用することができる。しかしながら、造粒容器110に供給されるガスは、酸化性ガスまたは還元性ガスであることが好ましい。
【0070】
酸化性ガスは、例えば、酸素を含むガスであり、空気であってもよい。酸化性ガスを用いることで、造粒容器110内の原料微粉403が酸化焼結し、容易に造粒することが可能となる。
【0071】
還元性ガスは、例えば、水素ガス、水素と窒素の混合ガス、水素とArの混合ガス、COガス、または、合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)等である。還元性ガスは、水素と水蒸気の混合ガスや、水素と水蒸気、窒素の混合ガスであっても良い。還元性ガスを用いることで、造粒容器110内の原料微粉403の表面が還元して原料微粉403同士が接着しやすくなる。そのため、容易に造粒することが可能となる。還元性ガスは、より好ましくは、水素ガスである。水素ガスであれば、COガスに比較して還元速度が大きく、COガスまたは合成ガスを用いた場合に発生する二酸化炭素の発生もないため、環境負荷が小さい。
【0072】
供給ガスの流速は、流動層の最小流動化速度以上であり、例えば、0.02m/s以上0.8m/s以下である。供給ガスの流速は、好ましくは0.03m/s以上である。また、供給ガスの流速は、好ましくは0.6m/s以下である。粒径の大きな媒体粒子401を安定的に流動化させる観点から、供給ガスの流速は、媒体粒子401の最小流動化速度の1.2倍以上3倍以下程度であることが好ましい。最小流動化速度とは、流動層における圧力損失がガス流速の増大に対して一定化する最小のガス流速であり、以下の方法で実験的に測定することができる。すなわち、例えば、
図1に示すように、媒体粒子401が存在する層より下部と上部の圧力差(分散板113下のガスだめ部分と層上部の空間部分(フリーボード部1102)における圧力の差)を圧力測定装置150により測定し、媒体粒子401及び原料微粉403を装入しない場合の差圧(分散板のみの圧力損失)を差し引くことで粉粒流動層400の圧力損失が得られる。この粉粒流動層400の圧力損失をガス空塔速度に対してプロットし、圧力損失が一定化する最小のガス流速を求める。ただし、初期の粒子充填構造の依存性を排除し、再現性のあるデータを取得するため、ガス流速は流動化に十分な大きさから徐々に減少させることで圧力損失が一定の領域から減少し始める点として最小流動化速度を決める。圧力損失の測定において、圧力の測定位置は、分散板113下のガスだめ部分とフリーボード部1102とに限る必要はない。圧力の測定位置は、例えば、
図9に示すように、分散板113直上付近と、フリーボード部1102より下方の粉粒流動層400が配された領域1101の最上部などにしてもよく、粉粒流動層400の圧力損失が測定できる圧力の測定位置であればよい。
【0073】
フリーボード部における水平断面の断面積によっては、フリーボード部におけるガスの空塔速度が原料微粉403の終末速度よりも大きくなる場合がある。したがって、供給ガスの流速は、フリーボード部における水平断面の最大断面積に応じて定められることが好ましい。
【0074】
また、安定した操業を実現する観点で、造粒装置10は、造粒容器110における粉粒流動層400での圧力損失が随時モニタリングされるように構成されてもよい。凝集が過度に進行してしまう場合や原料微粉403が偏析した領域でガスのバイパス現象(チャネリング)が起きるような場合には、粉粒流動層400全体の詰まりに起因して圧力損失が粉粒流動層400の重量分以上に過度に大きくなる、または、粉粒流動層400をガスが吹き抜けて流動化に寄与しない状態に起因して圧力損失がゼロに近づく、等の異常が現れる。この場合、造粒装置10に対する大規模のメンテナンスが生じる場合がある。しかしながら、粉粒流動層400での圧力損失が随時モニタリングされれば、詰まりや偏析が進んでメンテナンス負荷が大きくなる前に設備を適切なタイミングで停止することが可能となる。このような構成は、圧力測定装置150により実現される。
【0075】
供給ガスの流速は、造粒容器110に供給する単位時間当たりのガス流量を容器の断面積で除した値であり、ガス流量は、ガス供給配管に取り付けた流量計で測定することができる。
【0076】
造粒容器110内の粉粒流動層400における温度は、特段制限されないが、供給ガスが酸化性ガスの場合には800℃以上1200℃以下、還元性ガスの場合には500℃以上900℃以下であることが好ましい。粉粒流動層400における温度がこれらの範囲であれば、原料微粉403の酸化反応または還元反応が促進され、効率よく造粒することが可能となる。なお、粉粒流動層400内の温度制御方法は特に限定されないが、粉粒流動層400の特徴として、ガスと物質の混合が極めて良好であり、粉粒流動層400内の温度は均温化することから、粉粒流動層400の温度制御は他の反応制御方法と比較して容易である。加熱方法としては造粒容器110を断熱材で囲い、所定の温度に予め加熱した粒子とガスを供給して混合することで粉粒流動層400内の反応温度を調整することができる。また、外部から造粒容器110を加熱して容器壁面と熱交換させて粉粒流動層400内の温度を所定の温度に調整することも可能である。
【0077】
供給ガスの温度は、媒体粒子401を装入した層の下部(分散板113の下部)の位置で測定された温度である。
【0078】
原料微粉403の造粒容器110中の平均滞留時間は、所望の造粒粉の粒径や生産性を考慮して決定すればよく、温度の高い条件であればより短時間で所望の粒径への造粒が可能となる。原料微粉403の造粒容器110中の平均滞留時間は、例えば、3分以上60分以下である。平均滞留時間は、造粒の処理効率の観点、造粒粉が過度に凝集することを避ける観点から、好ましくは、30分以下である。平均滞留時間は、供給ガス速度や粉粒流動層400の高さと造粒容器110からの粒子抜き出し速度等を変更して制御することができる。
【0079】
[造粒粉]
造粒粉は、原料微粉403が造粒した粉末である。造粒粉は原料微粉403よりも大きいため、原料微粉403と比較して良好な流動性を示す。安定して操業するため、造粒粉のメディアン径は0.02mm以上であることが好ましい。造粒粉のメディアン径は、より好ましくは、0.05mm超である。造粒粉のメディアン径が0.05mm超であれば、造粒粉がより優れた流動性を示し、還元装置20で循環流動層または気泡流動層により、より安定して造粒粉を還元することができる。よって、造粒粉のメディアン径は、0.05mm超であることが好ましい。一方、造粒粉のメディアン径は、0.10mm未満であることが好ましい。造粒粉のメディアン径は、より好ましくは、0.08mm以下である。これは、凝集により造粒粉のメディアン径が大きくなりすぎると、造粒容器110内での安定的な流動化が妨げられる惧れがあり、場合によっては分散板113の通気口など造粒容器110内に部分的な閉塞をもたらす可能性があるためである。また、造粒粉が媒体粒子401の粒子径と同等まで大きくなると、媒体粒子401と造粒粉を粒径差で分離する場合、分離が困難になることからも、造粒粉のメディアン径は、0.08mm以下であることがより好ましい。
造粒粉のメディアン径は、上述した、媒体粒子401の成分、媒体粒子401のメディアン径、媒体粒子401の体積に対する原料微粉403の体積の割合、供給ガスの種類、供給ガス速度、温度、または滞留時間等を変更して調整することができる。調整においては、一定の温度、ガス流速の条件下で、造粒容器110内からの粒子の抜き出し速度(単位時間当たり、もしくは一定の時間間隔毎の排出量)を変え、造粒容器110内での平均滞留時間を変化させて、所望の粒径に造粒される抜き出し速度を見出すことが最も容易な調整法である。
【0080】
造粒粉のメディアン径は、原料微粉403のメディアン径の測定方法と同様の方法で測定できる。
【0081】
供給ガスが還元性ガスの場合、造粒粉の還元率は、33%以上80%以下であることが好ましく、さらに40%以上70%以下であることがより好ましい。還元率は、以下の方法で算出することができる。すなわち、0.1g程度の造粒粉を、窒素雰囲気のグローブボックス中で石英セルに計り取り、造粒粉が空気と接触するのを避けるため、造粒粉をベンゼンで浸す。石英セルを熱天秤(真空理工株式会社製、TGD7000)内に設置し、系内を真空排気する。その後、窒素を2.00×10-4m3/分で流し、20℃/minの昇温速度で200℃まで昇温し、ベンゼンを蒸発させる。その後、20℃/minの昇温速度で700℃まで昇温し、温度および天秤が安定した後、酸素を系内に導入し、重量増加がなくなるまで保持する。次いで、系内を100℃以下まで冷却した後、真空排気、窒素置換し、20℃/minの昇温速度で700℃まで再び昇温する。そして、水素ガスを2.00×10-4m3/分で流し、重量変化が認められなくなるまで保持する。上記による重量変化をもとに下記式(3)より還元率を求める。
【0082】
X={(mFe2O3-msample)-0.329×(mFe2O3-mFe)}/{0.671×((mFe2O3-mFe)} ・・・式(3)
ここで、式中、Xは、還元率(%)であり、mFe2O3は酸化後の造粒粉の重量(酸素導入後、重量増加がなくなったときの造粒粉の重量)であり、msampleは造粒粉の質量であり、mFeは還元後の造粒粉の重量(水素ガス導入後、重量増加がなくなったときの造粒粉の重量)である。なお、熱天秤による酸化後および還元後の造粒粉の化学形態は、X線回折によって、各々、Fe2O3およびFeであることを確かめることができる。
【0083】
還元率が33%以上となることによって、原料微粉403の表面に金属鉄が現れ、金属鉄の接触による接着を利用して造粒を進めることが可能となる。還元率が小さいと、接着による造粒が進行しない一方、還元率が80%を超えて大きくなり過ぎると、金属鉄同士の接着が過度に進行しやすくなり、造粒による粒径の制御が困難になる。原料微粉403の形態、脈石成分の含有量にも依存するため、一概に特定することはできないが、還元率が40%以上70%以下の範囲となるように条件を設定するのがより好ましい。
【0084】
ここまで、造粒装置10について説明した。造粒装置10はバッチ式の処理装置であってもよいし、連続式の処理装置であってもよい。バッチ式の場合は、造粒処理後の造粒粉は、媒体粒子401とともに、例えば、造粒容器110の下部に設けられた開閉可能な取り出し口に接続された輸送装置140から抜き出される。連続式の場合は、例えば、造粒容器110に設けられた開閉可能な取り出し口の弁が一定の時間間隔または連続的に開かれ、媒体粒子401とともに造粒粉が輸送装置140に抜き出されるとともに、造粒容器110の上部より媒体粒子401が補給される。
【0085】
また、上述した造粒装置10、10A、10B、10C、10Dでは、原料微粉403が原料微粉供給口2から粉粒流動層400の表面へ送入されるが、原料微粉403の送入は、上記態様に限られず、種々の態様が採用されてよい。例えば、
図10に示すように粉粒流動層400が形成する領域1101に原料微粉供給口112が設けられており、原料微粉供給口112に接続されたスクリューフィーダー160が原料微粉403を供給してもよい。
【0086】
また、
図11に示すように、造粒容器110の分散板113に接続された第1供給管161及び造粒容器110の下方から挿入され、粉粒流動層400の表面近傍まで延びた第2供給管162を通じて、原料微粉403は造粒容器110の内部に気流輸送されてもよい。なお、第1供給管161または第2供給管162のいずれかのみが設けられ、第1供給管161または第2供給管162を通じて、原料微粉403は造粒容器110の内部に気流輸送されてもよい。
【0087】
また、
図12に示すように、上方から粉粒流動層400に浸漬されたランス163、造粒容器110側面から粉粒流動層400に挿入されたダウンカマー164、および、領域1101に設けられた原料微粉供給口112に接続された供給管165の少なくともいずれかを通じて、原料微粉403の自重により原料微粉403が造粒容器110の内部に供給されてもよい。ランス163の先端にはオリフィス(図示せず)が設けられてもよい。また、ダウンカマー164には、原料微粉403の供給を制御するバルブ、例えば、トリクルバルブ166が設けられてもよい。また、供給管165には、補助気流が導入されていることが好ましい。
【0088】
乾式集塵機120で回収された原料微粉403の送入も、種々の態様が採用されてよい。
【0089】
また、分散板113は、
図13に示すように、造粒容器110の下方に接続された輸送装置140に媒体粒子401および造粒粉を移送しやすくするために、輸送装置140に向かって傾斜して設けられていてもよい。
【0090】
<還元装置20>
続いて、
図14~16を参照して還元装置20を説明する。
図14は、本実施形態における還元装置20を構成可能な循環流動層還元装置200の模式図である。
図15は、気泡流動層を説明するための模式図である。
図16は、本実施形態における還元装置20を構成可能な気泡流動層還元装置300の模式図である。
【0091】
還元装置20は、少なくとも造粒装置10で造粒された造粒粉を含む鉱石粉501が流動して形成された流動層で、少なくとも当該鉱石粉501を還元する。還元装置20は、例えば、循環流動層を形成する一つ以上の循環流動層還元装置200または気泡流動層(Bubbling fluidized bed;BFB)を形成する一つ以上の気泡流動層還元装置300の少なくともいずれかを備える。以下に循環流動層還元装置200および気泡流動層還元装置300について説明する。
【0092】
(循環流動層還元装置200)
循環流動層還元装置200は、例えば、
図14に示すように、鉱石粉501が還元される容器であるライザー部210、ライザー部210の上部に設けられた出口214に接続されたサイクロン220、および、サイクロン220の底部から下方に延びてライザー部210の下部に接続される循環ライン230、を備える。循環流動層還元装置200は、必要に応じて、サイクロン220に接続され、オフガスに含まれる微粉化した還元率が低い鉱石や還元鉄(ダスト)を回収する乾式集塵機240、および、ダストを造粒装置10の造粒容器110に送入する送入装置250(
図18参照)と、を備えることが好ましい。
【0093】
[ライザー部210]
ライザー部210は、底部に配されて供給ガスがライザー部210の内部に供給されるガス供給口211と、鉱石粉501が供給される鉱石粉供給口212と、ガス供給口211よりも上方に配された分散板213と、を有する。
【0094】
鉱石粉供給口212から供給される鉱石粉501は、少なくとも、造粒装置10で造粒された造粒粉を含む。鉱石粉501は、造粒装置10で造粒された造粒粉に限られず、例えば、流動性を示す粒径を有する微粉鉱石等を含んでもよい。
【0095】
ガス供給口211からライザー部210の内部に供給される供給ガスは、例えば、水素ガス、COガス、もしくは、合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)等の還元性ガス、または、還元性ガスと不活性ガスの混合ガスであってもよい。ライザー部210の内部に供給されるガスは、還元性ガスと不活性ガス、水蒸気の組み合わせであっても良い。上記の供給ガスにより鉱石が還元されて還元鉄が得られる。還元性ガスは、より好ましくは、水素ガスである。従来のシャフト炉を用いた還元鉄の製造では、還元反応で天然ガスや石炭、COガスを使用するため、地球温暖化の一因となり得るCO2が発生し、環境負荷が大きい。一方で、ライザー部210に供給する還元性ガスに水素ガスを用いれば、還元反応によるCO2の発生が無く、環境に与える負荷を抑制することができる。
【0096】
供給ガスの流速は、鉱石粉501の粒径に依存するが、例えば、1.0m/s以上10m/s以下である。供給ガスの流速(ガス空塔速度)は、循環流動層の利点として挙げられるガスとの反応効率の向上の観点から、平均ガス速度と粒子の平均速度の差(スリップ速度)が大きくなるように設定することが好ましい。一般的な鉄鉱石の比重と、造粒粉の粒径範囲から、供給ガスの流速は好ましくは、3.0m/s以上7.0m/s以下である。
【0097】
供給ガスの流速は、鉱石粉501を吹き上げるライザー部210の位置での空塔速度であり、供給する単位時間当たりのガス流量を容器のライザー部210の断面積で除した値であり、ガス供給配管に取り付けた流量計で測定することができる。
【0098】
還元装置20内の還元反応温度は、500℃以上900℃以下であることが好ましい。還元装置20内の還元反応温度が500℃以上900℃以下であれば、鉱石粉501の還元反応が促進され、製造性が向上する。還元装置20内の還元反応温度は、鉱石粉501の還元速度を向上させ、効率よく還元鉄を得る観点から、より好ましくは、550℃以上である。また、還元装置20内の還元反応温度は、鉱石粉501同士の接着による凝集の過度な進行を抑制する観点から、より好ましくは、850℃以下である。
【0099】
[サイクロン220]
サイクロン220は、排ガスとともに飛散する粒子を捕集する。捕集された粒子は、循環ライン230を通ってライザー部210に戻され、排ガスは、乾式集塵機240を介して循環流動層還元装置200外へ排出される。
【0100】
[循環ライン230]
循環ライン230は、サイクロン220の下部に接続され、サイクロン220でガスと分離された鉱石粉501の流路であるダウンカマー231と、ダウンカマー231の下端に一端が接続され、ライザー部210の分散板213の上方に他端が接続されたループシール部232と、を有する。ループシール部232は、一時的に溜められた鉱石粉501によりシールの効果を果たす。なお、造粒装置10の造粒容器110における流動層と同様に、循環流動層を形成するためのガスの通気方法・形態は、分散板213については多孔質板やスリット板のような平板型のほか、単純なノズル型やノズル先端に各種形態の吹き出し孔付きキャップを設けたキャップ型、チューブ側面に複数の穴をあけたグリッドチューブを配置したパイプ型など、供給ガスをライザー部210に供給し、粒子を吹き上げて流動層を形成可能なものであればその具体的な形態は限定されない。
【0101】
[乾式集塵機240]
循環流動層還元装置200では、排ガス(オフガス)に、微粉化した還元率が低い鉱石や還元鉄(ダスト)が含まれる場合がある。そこで、乾式集塵機240を用いて、オフガスに含まれる微粉化した還元率が低い鉱石や還元鉄を捕集することが好ましい。乾式集塵機240で捕集された鉱石や還元鉄は、造粒装置10に供給される原料微粉403として利用することができる。これにより、ダストロスを低減して投入原料の総重量に対する製品還元鉄重量の歩留りを向上させた還元システムの実現が可能である。つまり、還元装置20の前段に設けられた造粒装置10では、原料微粉403として、例えば、粒径の小さなペレットフィード等の微粉鉱石や、粒度分布の広いシンターフィードなどの粉鉱石から篩分けした微粒子の鉱石、または、還元が途中まで進行しウスタイトを多く含む転炉ダストやマグネタイト精鉱等の再酸化性のある微粉を造粒する。流動化容易な粒径に造粒された造粒粉は、還元装置20に輸送されて十分な滞留時間で還元処理されるが、還元装置20内では新たにダストが生成される。ダストをオフガスから回収して、再度、造粒装置10へ戻すことで、原料微粉403を出発原料とした還元処理を高歩留りで効率的に行うことが可能となる。なお、乾式集塵機240は、本発明に係る捕集装置に対応する。
【0102】
乾式集塵機240としては、例えば、サイクロンやマルチクロン、セラミックフィルターなどを用いることができる。循環流動層還元装置200では、例えば、サイクロン220の後方に乾式集塵機240としてサイクロン220より小型のサイクロンを直列に設けてもよい。
【0103】
[送入装置250]
送入装置250は、乾式集塵機240で回収された微粉を乾式集塵機240から造粒装置10の造粒容器110へ輸送する。すなわち、送入装置250は、捕集装置により捕集されたダストを造粒装置10の造粒容器110に送入する。送入装置250は、輸送装置140と同様に、各種の粉体排出方式と輸送機構を有する装置であればよい。ただし、循環流動層還元装置200では、循環流動層のサイクロン220の下部(ダウンカマー231途中)に取り出し口(図示せず)が設けられ、当該取り出し口に送入装置250が接続される場合が多い。
【0104】
鉱石粉供給口212から供給された鉱石粉501は、ガス供給口211から供給され、分散板213の複数の通気口を通って整流された供給ガスによって流動化される。詳細には、鉱石粉501は、ライザー部210の内部において、下方から上方へ輸送され、サイクロン220および循環ライン230を通り、循環流動層還元装置200の内部を循環する。したがって、循環流動層還元装置200の内部が循環流動層となっている。なお、ループシール部232では、鉱石粉501が暫く滞留している。鉱石粉501は、主にライザー部において流動しながら供給ガスによって還元されて還元鉄となる。循環流動層還元装置200による還元反応がバッチ式の処理の場合は、還元処理後の粉末は、例えば、サイクロン220の下部(ダウンカマー231途中)に設けられた開閉可能な取り出し口(図示せず)から抜き出される。還元処理が連続式の場合は、例えば、ライザー部210に設けられた開閉可能な取り出し口の弁が一定の時間間隔または連続的に開かれ、処理後の粉末が抜き出されるとともに、鉱石粉供給口212より鉱石粉が補給される。
【0105】
[平均滞留時間]
循環流動層還元装置200内に滞留する鉱石粉501の平均滞留時間は、還元反応の温度に依存するが、3分以上120分以下であることが好ましい。平均滞留時間が3分以上であれば、高い還元率の還元鉄が得られる。一方、平均滞留時間が120分以下であると、還元装置としての処理効率が高く維持される。また、平均滞留時間が120分以下であると、過剰な還元の進行による鉱石粉501の強度低下、または循環中の鉱石粉501同士もしくは鉱石粉501と装置との衝突により鉱石粉501が微粉化し、還元鉄としての回収効率が低下することが抑制される。よって、平均滞留時間は120分以下であることが好ましい。循環流動層還元装置200内に滞留する鉱石粉501の平均滞留時間は、より好ましくは、5分以上60分以下である。平均滞留時間の調整は、時間当たりに取出し口から抜き出す鉱石粉501の量を調整することで行う。
【0106】
鉱石粉501の平均滞留時間は、以下の方法で算出することができる。すなわち、トレーサー粒子として、例えば、メディアン径が等しく、脈石成分の異なる鉱石粉を一定量投入し、排出される還元鉄の脈石成分の含有率の時間変化を調べる。これにより得られる、投入したトレーサー鉱石粉を特徴づける脈石成分の含有率が最も高くなるピークの時間帯を鉱石粉501の平均滞留時間とする。上記の方法から、平均滞留時間を実験的に測定することが可能である。
【0107】
(気泡流動層還元装置300)
気泡流動層還元装置300は、
図16に示すように、反応器310、および乾式集塵機320を備える。
【0108】
気泡流動層還元装置300は、例えば、
図15に示すような、鉱石粉501による流動層においてガスによる気泡502が形成されている状態の流動層である気泡流動層500を反応器310の内部に形成する。気泡502は流動状態に依存してその形態はさまざまであり、流動状態によっては明確な気泡が形成されない場合もある。
【0109】
[反応器310]
反応器310は、例えば、
図16に示すように、ガス供給口311と、鉱石粉供給口312と、分散板313と、出口314と、を有する。反応器310は、基本的に循環流動層還元装置200のライザー部210と同様である。
【0110】
[気泡流動層500]
気泡流動層500は、ガス供給口311から供給され、分散板313の複数の通気口を通って整流されたガスによって鉱石粉501が流動して形成される。なお、造粒装置10の造粒容器110における流動層や循環流動層と同様に、気泡流動層500を形成するためのガスの通気方法・形態は、分散板313については多孔質板やスリット板のような平板型のほか、単純なノズル型やノズル先端に各種形態の吹き出し孔付きキャップを設けたキャップ型、チューブ側面に複数の穴をあけたグリッドチューブを配置したパイプ型など、供給ガスを反応器310に供給し、粒子を吹き上げて流動層を形成可能なものであればその具体的な形態は限定されない。
【0111】
鉱石粉501は、循環流動層還元装置200に使用される鉱石粉と同様であり、少なくとも、造粒装置10で造粒された造粒粉を含む。鉱石粉501は、造粒装置10で造粒された造粒粉に限られず、例えば、流動性を示す粒径を有する微粉鉱石等を含んでもよい。
【0112】
ガス供給口311から反応器310の内部に供給される供給ガスは、例えば、水素ガス、COガス、もしくは、合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)等の還元性ガス、または、還元性ガスと不活性ガスの混合であってもよく、還元性ガスと不活性ガス、水蒸気の組み合わせであっても良い。還元性ガスは、環境負荷低減の観点から、好ましくは、水素ガスである。
【0113】
供給ガスの流速は、鉱石粉501の粒径に依存するが、例えば、0.2m/s以上1.0m/s未満である。気泡流動層還元装置300に供給される供給ガスの流速(ガス空塔速度)は、循環流動層還元装置200に使用される供給ガスの流速より小さく、気泡流動層500から飛び出す鉱石粉は極めて少ない。気泡流動層還元装置300に供給される供給ガスの流速は、好ましくは、0.3m/s以上0.8m/s以下である。
【0114】
供給ガスの流速は、鉱石粉501の気泡流動層500が実現される気泡流動層還元装置300内での空塔速度であり、供給する単位時間当たりのガス流量を気泡流動層還元装置300の反応器310の流動層部断面積で除した値であり、ガス供給配管に取り付けた流量計で測定することができる。
【0115】
また、循環流動層還元装置200および気泡流動層還元装置300の供給ガスの流速は、造粒装置10における供給ガスの流速より大きく設定することが好ましい。これにより、循環流動層還元装置200のライザー部210内および気泡流動層還元装置300の反応器310内のそれぞれにおいて、鉱石粉は造粒装置10内より激しく流動することで互いに接着せず、鉱石粉が造粒装置10で造粒された粒径を大きく超えてさらに凝集が進行することを抑制することができる。その結果、ライザー部210または反応器310の閉塞を防止することができ、高い生産性を維持することができる。
【0116】
気泡流動層還元装置300内の還元反応温度は、500℃以上900℃以下であることが好ましい。気泡流動層還元装置300内の還元反応温度が500℃以上900℃以下であれば、鉱石粉501の還元反応が促進され、製造性が向上する。気泡流動層還元装置300内の還元反応温度は、鉱石粉501の還元速度を向上させ、効率よく還元鉄を得る観点から、より好ましくは、550℃以上である。また、気泡流動層還元装置300内の還元反応温度は、鉱石粉501同士の接着による凝集の過度な進行を抑制する観点から、より好ましくは、850℃以下である。
【0117】
気泡流動層還元装置300内に滞留する鉱石粉の平均滞留時間は、3分以上180分以下であることが好ましい。平均滞留時間が3分以上であれば、高い還元率の還元鉄が得られる。一方、平均滞留時間が180分以下であると、還元装置としての処理効率が高く維持される。また、平均滞留時間が180分以下であると、過剰な還元の進行による鉱石粉の強度低下、または循環中の鉱石粉501同士もしくは鉱石粉501と装置との衝突により鉱石粉501が微粉化し、還元鉄としての回収効率が低下することが抑制される。よって、平均滞留時間は180分以下であることが好ましい。気泡流動層還元装置300内に滞留する鉱石粉の平均滞留時間は、より好ましくは、5分以上150分以下である。平均滞留時間の調整は、循環流動層の場合と同様に、時間当たりに取出し口から抜き出す鉱石粉の量を調整することで行う。平均滞留時間の測定は、循環流動層還元装置200における鉱石粉の平均滞留時間の測定方法と同様の方法で行うことができる。
【0118】
鉱石粉供給口312から供給された鉱石粉501は、ガス供給口311から供給され、分散板313の複数の通気口を通って整流された供給ガスによって流動化される。詳細には、鉱石粉501は、反応器310の内部において、気泡流動層500を形成し、流動しながら供給ガスによって還元されて還元鉄となる。還元鉄は、開閉可能な還元鉄取り出し口(図示せず)から排出される。
【0119】
[反応器の変形例]
上記の反応器310は、一段の気泡流動層500を形成する反応器であるが、気泡流動層還元装置300に備えられる反応器は、反応器310に限られず、例えば、
図17に示すような、内部に複数の還元室を有する反応器310Aであってもよい。
図17は、本実施形態における気泡流動層還元装置の反応器の別の例を示す模式図である。
【0120】
反応器310Aは、例えば、長手方向の一方の側面に設けられた鉱石粉供給口312と、長手方向の他方の側面設けられた出口314と、長手方向に並列した複数のガス供給口311と、各ガス供給口311の上方に設けられた分散板313と、隣り合うガス供給口311の間に設けられた仕切り板315と、を備えてもよい。隣り合う仕切り板315の間の空間が鉱石粉501を還元する還元室である。仕切り板315の高さは、気泡流動層500の高さよりも短い。このような構成の反応器310Aは、鉱石粉の平均滞留時間を長くすることができ、到達還元率を高めることができる。なお、鉱石粉供給口の設置位置および設置数、出口の設置位置および設置数、ならびに仕切り板の設置位置および設置数等は、
図6に示す態様に限られず、適宜変更されてよいことは言うまでもない。
【0121】
[乾式集塵機320]
乾式集塵機320は、オフガスに含まれる微粉を捕集する。乾式集塵機320は、乾式集塵機120に適用可能な構成であればよい。なお、乾式集塵機320は、本発明に係る捕集装置に対応する。
【0122】
(変形例)
還元装置20は、一つの循環流動層還元装置200または一つの気泡流動層還元装置300であってもよいし、複数の循環流動層還元装置200または複数の気泡流動層還元装置300であってもよいし、一つ以上の循環流動層還元装置200および一つ以上の気泡流動層還元装置300を組み合わせたものであってもよい。循環流動層は、供給ガスの平均流速と鉱石の平均移動速度の差(スリップ速度)が大きいため、鉱石粉に接触する還元性ガスの交換頻度が高く、鉱石粉の周囲が平衡状態に近づいて還元反応が停滞することが避けられ、鉱石粉が効率よく還元される。一方で、鉱石粉の平均移動速度自体も大きいため、鉱石粉同士の衝突等により、機械的な摩耗や破壊が起こり、ダストが生じやすい。気泡流動層は、循環流動層と比較して供給ガスの平均流速と鉱石の平均移動速度の差(スリップ速度)が小さいため、気泡流動層による鉱石粉の還元効率は、循環流動層による鉱石粉の還元効率に劣る。一方で、ダストの発生については、循環流動層よりも抑制される傾向があるほか、ガス流速を抑えることでガス供給のためのエネルギー・コストを抑えることが可能である。循環流動層および気泡流動層の特徴、ならびに鉱石のメディアン径やFe含有量等を考慮して、還元装置20の構成を決定することが好ましい。
【0123】
<還元鉄の製造設備の構成例>
ここで、
図18~21を参照して、還元鉄の製造設備の構成例を説明する。
図18は、還元装置20として一つの循環流動層還元装置200が備えられた還元鉄の製造設備の一例を示す概略構成図である。
図19は、還元装置20として一つの気泡流動層還元装置300が備えられた還元鉄の製造設備の一例を示す概略構成図である。
図20は、還元装置20として、一つの循環流動層還元装置200および三つの気泡流動層還元装置300が備えられた還元鉄の製造設備の一例を示す概略構成図である。
図21は、還元装置20として、一つの循環流動層還元装置200および内部に複数の還元室を有する一つの気泡流動層還元装置300が備えられた還元鉄の製造設備の一例を示す概略構成図である。なお、
図18~21中の実線矢印は、粉体の流れを示し、破線矢印は、ガスの流れを示している。
【0124】
[第1の構成例]
図18に示した還元鉄の製造設備1は、造粒装置10と、還元装置20として一つの循環流動層還元装置200と、を備える。例えば、
図18に示した還元鉄の製造設備1では、以下のようにして還元鉄が製造される。まず、造粒装置10において、媒体粒子401が造粒容器110に装入され、造粒容器110の下部から供給ガス402が供給されている。媒体粒子401は、供給ガス402とともに、造粒容器110の内部で粉粒流動層400を形成している。原料微粉403が造粒容器110に供給され、粉粒流動層400により凝集し、造粒粉404が造粒される。
【0125】
造粒粉404と媒体粒子401との混合物は輸送装置140を介して造粒粉分離装置130に輸送され、造粒粉分離装置130により、造粒粉404と媒体粒子401とに分離される。分離された媒体粒子401は、再度、造粒容器110に装入される。造粒粉404は、管を介し、鉱石粉供給口212またはダウンカマー231を通じて、循環流動層還元装置200のライザー部210に供給される。
【0126】
一方、供給ガス402と共に造粒容器110の出口から排出された原料微粉403は、乾式集塵機120で捕集され、造粒容器110に再度供給される。
【0127】
ライザー部210に供給された造粒粉404は、ライザー部210の下部から供給された供給ガス402により、循環流動層を形成する。造粒粉404は、循環流動層内で、供給ガス402によって還元されて還元鉄406となる。造粒粉404と循環流動層内で新たに発生したダスト405を含むガスは、サイクロン220で分離され、造粒粉404はライザー部210に再度送入される。ダスト405を含むオフガスは、乾式集塵機240に送られる。ダスト405は、乾式集塵機240によってオフガスと分離されて回収され、リターン原料微粉(原料微粉403)として送入装置250を通じて造粒容器110に供給される。
【0128】
上記のように、例えば、造粒装置10と、還元装置20として一つの循環流動層還元装置200が備えられた還元鉄の製造設備によって、還元鉄が製造可能である。
【0129】
[第2の構成例]
図19に示した還元鉄の製造設備1Aは、造粒装置10Aと、還元装置20として一つの気泡流動層還元装置300と、を備える。例えば、
図19に示した還元鉄の製造設備1Aでは、以下のようにして還元鉄406が製造される。造粒粉404と媒体粒子401とが造粒粉分離装置130によって分離され、媒体粒子401が再度造粒容器110に装入されるまでは、
図18を用いて説明した例と同様であるため省略する。
【0130】
造粒粉404は、気泡流動層還元装置300の反応器310に供給される。反応器310に供給された造粒粉404は、反応器310の下部から供給された供給ガス402により、反応器310内で気泡流動層500を形成する。造粒粉404は、気泡流動層500内で還元されて還元鉄406となる。ダスト405を含むオフガスは、乾式集塵機320Bを経て、乾式集塵機320Aに送られる。ダスト405は、乾式集塵機320Aによってオフガスと分離されて回収され、リターン原料微粉(原料微粉403)として造粒容器110に供給される。
図19に示したように、気泡流動層還元装置300は、複数の乾式集塵機320、例えば、乾式集塵機320A、320Bを有していてもよい。これにより、粒度の異なる粉体を、それぞれ回収することができる。そのため、乾式集塵機320Bでは、オフガスに含まれ得る造粒粉404を回収することもできる。乾式集塵機320Bで回収された造粒粉404は、送入装置250を通じて、再度、反応器310に送入される。
【0131】
上記のように、例えば、造粒装置10と、還元装置20として一つの気泡流動層還元装置300が備えられた還元鉄の製造設備によって、還元鉄が製造可能である。
【0132】
[第3の構成例]
図20に示した還元鉄の製造設備1Bは、造粒装置10と、還元装置20として一つの循環流動層還元装置200および三つの気泡流動層還元装置300と、を備える。例えば、
図20に示した還元鉄の製造設備1Bでは、以下のようにして還元鉄406が製造される。造粒粉404と媒体粒子401とが造粒粉分離装置130によって分離され、媒体粒子401が再度造粒容器110に装入されるまでは、
図18を用いて説明した例と同様であるため省略する。
【0133】
造粒粉404は、循環流動層還元装置200のライザー部210に供給される。ライザー部210に供給された造粒粉404は、循環流動層内で供給ガス402によってその還元が進行する。一部還元した造粒粉404は、気泡流動層還元装置300における一段目の反応器310に送入され、反応器310において造粒粉404と供給ガス402とにより形成された気泡流動層500で、造粒粉404の還元が進行する。反応器310内の造粒粉404は、順次、二段目の反応器310、および三段目の反応器310に供給されて還元される。造粒粉404は、最終的に三段目の反応器310内の気泡流動層500で還元されて、還元鉄406となる。
【0134】
反応器310のそれぞれに接続された乾式集塵機320Bは、オフガスに含まれ得る造粒粉404を回収し、回収された造粒粉404は各反応器310に再度送入される。
【0135】
循環流動層還元装置200のサイクロン220、気泡流動層還元装置300の乾式集塵機320Bで分離された、ダスト405を含むオフガスは、乾式集塵機240に送られる。乾式集塵機240でオフガスと分離されて回収されたダスト405は、リターン原料微粉(原料微粉403)として送入装置250を通じて再度造粒容器110に供給される。
【0136】
上記のように、例えば、還元装置20として、一つの循環流動層還元装置200および三つの気泡流動層還元装置300が備えられた還元鉄の製造設備によって、還元鉄が製造可能である。循環流動層還元装置200の後段に気泡流動層還元装置300が設けられた還元装置20によれば、鉱石粉表面に到達する還元ガスの供給律速で還元反応が急速に進む傾向がある還元初期段階の還元時間を短時間で行い、還元速度が鉱石内部の物質拡散律速となり還元速度が停滞する傾向がある還元後期段階は還元ガスの過剰な利用を省くことができる。また、気泡流動層還元装置300を多段にすることで、鉱石粉の平均滞留時間を確保するとともに滞留時間のばらつきを抑制し、目的とする到達還元率の還元鉄を品質のばらつき少なく得ることができる。
【0137】
[第4の構成例]
図21に示した還元鉄の製造設備1Cは、造粒装置10と、還元装置20として、一つの循環流動層還元装置200および内部に複数の還元室を有する一つの気泡流動層還元装置300と、を備える。例えば、
図21に示した還元鉄の製造設備1Cでは、以下のようにして還元鉄406が製造される。循環流動層還元装置200内で一部還元した造粒粉404が供給ガス402によって還元されるまでは、
図20を用いて説明した例と同様であるため省略する。
【0138】
一部還元した造粒粉404は、気泡流動層還元装置300における内部に複数の還元室を有する反応器310Aに装入される。造粒粉404は、反応器310Aの複数の還元室を移動する。反応器310A内の各還元室に形成された気泡流動層により造粒粉404が還元されて還元鉄406となる。反応器310Aに接続された乾式集塵機320Bおよび乾式集塵機240は、
図9に示したものと同様である。また、サイクロン220、乾式集塵機320Bを経て、乾式集塵機240でオフガスと分離されて回収されたダスト405は、リターン原料微粉(原料微粉403)として送入装置250を通じて造粒容器110に供給される。
【0139】
上記のように、例えば、還元装置20として、一つの循環流動層還元装置200および一つの気泡流動層還元装置300が備えられた還元鉄の製造設備によって、
図9の多段にした気泡流動層と同様に、鉱石粉の平均滞留時間を確保するとともに滞留時間のばらつきを抑制し、目的とする到達還元率の還元鉄を品質のばらつき少なく得ることができる。
【0140】
なお、
図18~21には示されていないが、ライザー部210、反応器310、310Aには、造粒粉404以外にも例えば、流動性を示す粒径であるメディアン径が50μm以上の微粉鉱石等が供給されてもよい。
【0141】
還元装置20によって得られる還元鉄の還元率は、プロセスの目的に沿って設定される。このプロセスを、電気炉で精錬するための一般的な還元鉄製造法として用いる場合には、到達還元率は90%以上であることが好ましい。還元率が90%以上であれば、還元鉄の最終製品として、例えば電気炉で精錬を行うユーザーに提供することができる。なお、高炉に原料として投入し、高炉におけるコークスなどの還元材比使用率を下げる目的であれば、半還元鉄製品として、到達還元率は90%を超えるものである必要はなく、例えば70%程度の到達還元率であってもよい。還元鉄の還元率は、造粒粉の還元率と同様の方法で算出することができる。
【0142】
本実施形態に係る還元鉄の製造方法は、造粒工程で流動層を用いて難流動性を示す微粉から流動性を示す造粒粉を造粒し、還元工程で流動層を用いてこの造粒粉から還元鉄を製造することができる。そのため、高い歩留りで還元鉄を製造することができる。また、本実施形態に係る還元鉄の製造方法は、従来の塊成化を行う必要がないため、低コストで還元鉄を製造することができる。また、造粒装置および還元装置は複雑ではないため、設備導入コストも低い。
【0143】
なお、図面に示された造粒装置、循環流動層還元装置および気泡流動層還元装置は、あくまでも一例であって、本実施形態に係る造粒装置、循環流動層還元装置および気泡流動層還元装置は、図面に示された態様に限られないことは言うまでもない。例えば、造粒容器は、当該造粒容器の内部に当該造粒容器と同軸の供給ラインを有し、原料微粉は、この供給ラインから造粒容器の内部に送入されてもよい。還元装置を構成する反応器も同様である。
【実施例】
【0144】
次に本発明の実施例を示すが、実施例での条件は、本発明の実施可能性および効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0145】
表1~3に示す条件で原料微粉を造粒し、造粒粉を得た。No.A8~A10の例は、造粒工程が行われなかった例である。なお、表1~3に示す体積割合は、媒体粒子と合わせた全体の体積に対する原料微粉の体積の割合を意味する。
【0146】
原料微粉、媒体粒子、および造粒粉のメディアン径は、以下の方法で測定した。すなわち、湿式測定装置であるレーザ回折式粒子径測定装置(Malvern Panalytical社製、Mastersizer 3000)を用いて、分散媒:水、分散媒屈折率:1.33とし、粒子屈折率は、原料微粉および造粒粉の場合は2.918、媒体粒子の場合は使用する媒体粒子に合わせて設定した。例えば、媒体粒子がSiO2の場合は、その屈折率は1.55、である。それぞれの粉体は、投入された粉体を等分に分割することが可能な縮分機により100gまで分割した後、円錐四分法で2gまで取り出し、ここから任意に3回サンプリングした粉末の粒子径を上記のレーザ回折式粒子径測定装置により測定し、測定した篩下積算分布における体積基準の粒子径d50の平均値をメディアン径とした。
【0147】
媒体粒子と合わせた全体の粒子体積に対する原料微粉の体積は、以下の方法で測定した。すなわち、媒体粒子および原料微粉それぞれの乾燥状態での嵩密度を測定し、所定の体積割合となるそれぞれの重量を嵩密度から求めて投入した。嵩密度の測定にはPOWDER TESTER PT-X(ホソカワミクロン製)を用い、ゆるめ嵩密度測定モードにより嵩密度を測定し、投入重量を導出した。
【0148】
鉱石粉の平均滞留時間は、以下の方法で算出した。すなわち、トレーサー粒子としてメディアン径が原料微粉と等しく、脈石成分の異なる鉱石粉として、化学分析値においてMgを5倍以上の成分濃度で含む鉱石を用意した。これを、原料微粉を連続的に投入するフィーダーに投入した。このとき、原料微粉が還元鉄として排出される一定の物質流れが実現されている状態であり、そのまま装置を連続運転しながら排出される還元鉄の脈石成分Mgの含有率の時間変化を調べた。これにより得られた、投入したトレーサー鉱石粉を特徴づける脈石成分Mgの含有率が最も高くなるピークの時間帯を平均滞留時間とした。
【0149】
還元率は、以下の方法で測定した。すなわち、0.1g程度の造粒工程後の造粒粉または還元工程後の還元粉を、窒素雰囲気のグローブボックス中で石英セルに計り取り、造粒粉または還元工程後の還元粉が空気と接触するのを避けるため、ベンゼンで浸した。石英セルを熱天秤(真空理工株式会社製、TGD7000)内に設置し、系内を真空排気した。その後、窒素を2.00×10-4m3/分で流し、20℃/minの昇温速度で200℃まで昇温し、ベンゼンを蒸発させた。その後3℃/sの昇温速度で700℃まで昇温した。温度および天秤が安定した後、酸素を系内に導入し、重量増加がなくなるまで保持した。その後系内を100℃以下まで冷却した後、真空排気、窒素置換し、20℃/minの昇温速度で700℃まで再び昇温した。次いで、水素ガスを2.00×10-4m3/分で流し、重量変化が認められなくなるまで保持した。重量変化をもとに下記式(3)より還元率を求めた。
【0150】
X={(mFe2O3-msample)-0.329×(mFe2O3-mFe)}/{0.671×((mFe2O3-mFe)} ・・・式(3)
ここで、式中、Xは、還元率(%)であり、mFe2O3は酸化後の造粒粉または還元粉の重量(酸素導入後、重量増加がなくなったときの造粒粉または還元粉の重量)であり、msampleは造粒粉または還元粉の質量であり、mFeは水素ガス中保持後の造粒粉または還元粉の重量(水素ガス導入後、重量増加がなくなったときの造粒粉または還元粉の重量)である。なお、熱天秤による酸化後および水素ガス中保持後の造粒粉および還元粉の化学形態は、X線回折によって、各々、Fe2O3およびFeであることを確かめた。
【0151】
造粒容器内の分散板下部と粒子が流動化している部分の上部フリーボード部に圧力測定端子を導入し、これらの間の圧力損失を測定し、測定された圧力損失を造粒工程におけるモニタリング指標として用いた場合に、表1~3において、圧力損失モニタリング「有り」とし、圧力損失の測定を省略した場合に「無し」とした。
【0152】
造粒容器の形状として、水平断面の断面積において、粉粒流動層部分の任意の位置の断面積より、粉粒流動層より上部のフリーボード部の断面積の方が大きくなっているような上部拡大テーパー形状にした場合を、表1~3において、容器形状上部拡大テーパー「有り」、粉粒流動層より上部のフリーボード部の断面積の方が小さくなっている場合や拡大の無い直胴型で断面積が同じ場合を「無し」とした。
【0153】
造粒装置から造粒物を分離して取り出す部分について、表1~3中の造粒物分離工程の項目における「乾式篩」と記載の例では、前記の通り、上方に一方に傾斜した第一の篩を配置し、第一の篩よりも下方の位置で第一の篩の傾斜方向とは反対側に傾斜し、第一の篩よりも目開きが小さい第二の篩を配置した。第二の篩で補足された粉末は、還元装置側の輸送管に落下するように、第2の篩を傾斜させた。上下で目開きの異なる2つの篩を通し、上部の篩は一方に傾斜し、下部の篩は上部の篩とは反対側に傾斜させて配置したうえで、上部の篩は粗粒である媒体粒子を捕捉するがそれ未満の粒径である造粒粉と原料微粉を通し、下部の篩は造粒粉を捕捉するが原料微粉は通し、下部の篩のみで捕捉された造粒粉が還元装置側の輸送管に落下させた。また、「磁選」と記載の例では、造粒装置から抜き出した粉体を落下させる機構とし、落下させる配管外部から輸送管に落下するように磁力を外部から印加するようにした。「風力分級」と記載の例では、同様に抜き出した粉体を落下させながら、水平方向より一定の流速の窒素ガスを当て、造粒粉のみ還元装置側の輸送管に落下するようにした。「沈降分級」と記載の例では、抜き出した粉体を別の容器内で窒素ガスにより流動化し、この際のガス流速を原料微粉の最小流動化速度以上、媒体粒子の最小流動化速度未満とすることで媒体粒子を流動層内で沈降させ、最下部より媒体粒子、中間部より造粒粉を順次排出させることで分離した。なお、マグネタイト精鉱を原料に用いた造粒物の磁選については、分離効率を高めるため、乾式篩と組み合わせて用いた。
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
得られた造粒粉または造粒粉と鉱石粉の混合粉を表4~6の条件で還元した。表4~6には、2段の流動層の構成からなる還元槽の場合は、1段目と2段目の還元ガスの流速を記載している。表4~6に示す滞留時間は、還元装置に設けられた循環流動層を有するライザー部または気泡流動層を有する反応器に造粒粉が滞留した合計の時間である。
【0158】
また、表4~6に示すダスト循環の有無とは、流動層で発生したダストが回収されて造粒装置に再度送入されたか否かであり、「有り」は、当該ダストが造粒装置に再度送入されたことを意味し、「無し」は、当該ダストが造粒装置に送入されなかったことを意味する。No.B7、B12、B13、B16~B37の例は、循環流動層および気泡流動層を有する容器のそれぞれから発生するダストを回収した。なお、ダストの回収には、乾式集塵装置として小型のサイクロンからなるマルチクロンを使用した。
【0159】
歩留りは、以下のようにして算出した。すなわち、安定した連続処理状態で、単位時間あたりに還元工程に供した鉱石粉に含まれる鉄分の総質量に対して、同じ単位時間当たりに得られる還元鉄に含まれる鉄分の総質量の割合(%)を歩留りとした。
【0160】
還元率について、表1~6では以下のように記載した。E以上であれば、高い還元率と言える。
「A」:90%以上、95%以下
「B」:85%以上、90%未満
「C」:80%以上、85%未満
「D」:75%以上、80%未満
「E」:70%以上、75%未満
「F」:60%以上、70%未満
「G」:50%以上、60%未満
「H」:40%以上、50%未満
【0161】
歩留りについて、表4~6では以下のように記載した。F以上であれば、高い歩留まりと言える。
「A」:98%以上
「B」:95%以上、98%未満
「C」:90%以上、95%未満
「D」:80%以上、90%未満
「E」:70%以上、80%未満
「F」:60%以上、70%未満
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
表1~6に示すように、媒体粒子が流動して形成された流動層で、鉄分を含有するメディアン径が50μm以下の原料微粉から造粒粉を造粒する造粒工程と、造粒粉が流動して形成された流動層で、少なくとも造粒粉を還元する還元工程と、により、微粉鉱石および微粉鉱石を含む粉状鉄鉱石を高い歩留りで還元することができた例である。
No.B1、B11の例に示されるように、造粒工程において空気を供給して形成した流動層でマグネタイト精鉱の原料微粉を造粒した造粒粉を還元工程に供することで、高い歩留まり及び還元率でマグネタイト精鉱を還元することができた。
No.B2の例に示されるように、原料微粉にペレットフィード(ヘマタイト鉱石)を用いた場合にも高い歩留まり及び還元率で原料微粉を還元することができた。
No.B3~B5の例は、ダストを循環させ、流動層および滞留時間を変更し、その他の条件を同一にした例である。流動層を多段に設けることで、還元率がより向上することが分かった。
No.B6の例は、ダストを循環させ、その他の条件をNo.B3と同一にした例である。ダストを循環させることで、より高い歩留まりが得られることが分かった。
No.B7、B16~B20の例は、それぞれ媒体粒子の種類を変更し、その他の条件を同一にして行われた例である。いずれの例も熱分解しない媒体粒子が用いられており、高い歩留まり及び還元率で原料微粉を還元することができた。
一方、造粒工程を実施しなかったNo.B8~B10の例は、原料微粉単体で還元装置に投入したために流動化・ハンドリングが困難であり、気泡流動層での流動化不良や、循環流動層のダウンカマー部での滞留・詰まりにより還元鉄の安定な処理と排出が困難であった。そのため、No.B8~B10の例については、処理後の還元鉄が得られず、歩留りの算出自体が不可能であったため、歩留りおよび還元率の算出は行わなかった。すなわち、No.B8~B10の例では、流動層による還元ができなかったと言える。
No.B12~13の例は、原料微粉のメディアン径を変更し、その他の条件をNo.B7の例と同一にした例である。原料微粉のメディアン径が50μm以下であれば、高い歩留まり及び還元率で原料微粉を還元することができることが分かった。
No.B14~15の例は原料微粉のメディアン径が50μm超であり、粉粒流動化が困難であったほか、造粒容器内で凝集が始まると造粒粉が過度に大きくなり、流動化の停止によって造粒粉の取出しができず、還元工程は実施しなかった。
また、媒体粒子のメディアン径が異なるNo.B21~B25の例を比較すると、媒体粒子のメディアン径が原料微粉のメディアン径に対して大きいNo.B25の例では、媒体粒子を流動化させる流速が相対的に大きくなり、原料微粉の造粒容器からの散逸が増加した。その結果、媒体粒子のメディアン径がより小さいNo.B21~B24の例は、No.B25の例に比べて歩留りが高かった。
また、原料微粉の体積割合が異なるNo.B7、B26~B28の例を比較すると、原料微粉の体積割合が小さいほど、造粒容器からガスとともに散逸してしまう原料微粉の割合が小さくなる傾向があり、歩留りが向上した。
造粒粉の粒径を0.18mmまで大きくしたNo.B31の例は、造粒粉と媒体粒子の粒径差が小さく、造粒容器から抜き出された媒体粒子と造粒粉の分離がやや困難であった。
No.B32の例では、還元装置で還元する鉱石粉として、造粒容器で造粒された造粒粉に加え、流動性を示す粒径メディアン径70μmの鉱石(シンターフィード:ピソライト鉱石)を用いたものであり、他の実施例と同様に粉状鉄鉱石を高い歩留りで還元することができた。
No.B33の例では、造粒工程において圧力損失をモニタリングしなかった場合の例であり、造粒工程での造粒物が異常成長した際に圧力損失における異常を早期に検知できず、一部造粒物が造粒容器内に付着し、歩留まりがやや低下するとともに、装置停止タイミングで異常造粒した付着物を除去するためのメンテナンスに時間を要する場合があった。
No.B34の例では、造粒容器の内部形状として、上部の断面積が広がったテーパー形状でなく、断面積が同一の直胴型形状とした場合であり、この場合、造粒容器内で吹き上がった原料微粉が一部容器家以外から排出されてしまい、歩留まりが低下した。
No.B11の例は、造粒容器からの造粒物の分離に磁選および乾式篩を用い、No.B35の例は、風力分級を用い、No.36の例は、磁選および風量分級を用い、No.B37の例は、沈降分離を用いた例であり、それぞれ乾式篩の場合と同様に原料微粉と媒体粒子から造粒物を分離することができた。
【産業上の利用可能性】
【0166】
前述したように、本発明によれば、流動層を用い、難流動性の微粉鉱石および難流動性の微粉鉱石を含む粉状鉄鉱石を高い歩留りで還元することができる。還元されて得られた還元鉄は、スクラップや通常の直接還元鉄(DRI:Direct Reduced Iron)製品と同様に、電気炉で溶解精錬し、粗鋼製造用の鉄源として用いることができる。また、到達還元率の低いプロセスを設計した場合には、高炉における還元材使用率を下げる半還元鉄として高炉へ投入する鉄源として用いることもできる。
【符号の説明】
【0167】
10、10A、10B、10C、10D 造粒装置
20 還元装置
110、110A、110B、110C、110D 造粒容器
111 ガス供給口
112 原料微粉供給口
113 分散板
114 出口
120 乾式集塵機
121 バルブ
130 造粒粉分離装置
140 輸送装置
141 溢流管
142、143、144 ダウンカマー
150 圧力測定装置
160 スクリューフィーダー
161 第1供給管
162 第2供給管
163 ランス
164 ダウンカマー
165 供給管
166 トリクルバルブ
170 容器
171 バルブ
200 循環流動層還元装置
210 ライザー部
211 ガス供給口
212 鉱石粉供給口
213 分散板
214 出口
220 サイクロン
230 循環ライン
231 ダウンカマー
232 ループシール部
240 乾式集塵機
250 送入装置
300 気泡流動層還元装置
310、310A 反応器
311 ガス供給口
312 鉱石粉供給口
313 分散板
314 出口
315 仕切り板
320、320A、320B 乾式集塵機
400 粉粒流動層
401 媒体粒子
402 気泡(ガス、オフガス、供給ガス)
403 原料微粉
404 造粒粉
405 ダスト
406 還元鉄
500 気泡流動層
501 鉱石粉
502 気泡(ガス、オフガス、供給ガス)
1102、1102A、1102B、1102C、1102D フリーボード部