(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
C03B 17/06 20060101AFI20240605BHJP
G01B 11/06 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
C03B17/06
G01B11/06 101Z
(21)【出願番号】P 2020160346
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】大庭 直樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 基
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-512850(JP,A)
【文献】国際公開第2019/173358(WO,A1)
【文献】特表2017-518501(JP,A)
【文献】特開2017-137237(JP,A)
【文献】特開2018-197185(JP,A)
【文献】特開2011-16705(JP,A)
【文献】国際公開第2010/070963(WO,A1)
【文献】特開2002-228422(JP,A)
【文献】国際公開第2019/097940(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 17/06
G01B 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効部と、前記有効部よりも厚肉な耳部と、を有するガラス原板を対象として、
前記耳部における板厚を測定する第一測定工程を備えたガラス板の製造方法であって、
前記第一測定工程では、吸収方式の測定器により、前記耳部における板厚を測定することを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記ガラス原板が、前記有効部を間に挟んで両端に前記耳部を有し、
前記両端の耳部を結ぶ方向を幅方向としたとき、
前記第一測定工程では、前記幅方向に沿って前記ガラス原板の一方端から他方端まで板厚を測定することで、前記ガラス原板の板厚分布を得て、
前記ガラス原板の板厚分布に基づいて、前記幅方向における前記ガラス原板の長さを取得することを特徴とする請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記ガラス原板を吊り下げ支持した状態で前記幅方向に搬送する第一搬送工程を備え、
前記第一搬送工程を実行しながら、前記ガラス原板の搬送経路に配置した前記吸収方式の測定器により前記第一測定工程を実行すると共に、前記ガラス原板の上部において板厚を測定することを特徴とする請求項2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記ガラス原板から前記耳部を分断することで、前記ガラス原板から前記有効部でなるガラス板を得る分断工程と、
前記ガラス板を対象として、分光干渉方式の測定器により、前記幅方向に沿って前記ガラス板の一方端から他方端まで板厚を測定することで、前記ガラス板の板厚分布を得る第二測定工程と、
を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
前記ガラス板の板厚分布に基づいて、前記幅方向における前記ガラス板の長さを取得することを特徴とする請求項4に記載のガラス板の製造方法。
【請求項6】
前記ガラス板を吊り下げ支持した状態で前記幅方向に搬送する第二搬送工程を備え、
前記第二搬送工程を実行しながら、前記ガラス板の搬送経路に配置した前記分光干渉方式の測定器により前記第二測定工程を実行すると共に、前記ガラス板の上部において板厚を測定することを特徴とする請求項4又は5に記載のガラス板の製造方法。
【請求項7】
有効部と、前記有効部よりも厚肉な耳部と、を有するガラス原板を対象として、
前記耳部における板厚を測定する測定器を備えたガラス板の製造装置であって、
前記測定器が、吸収方式の測定器であることを特徴とするガラス板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラス板の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等に代表されるディスプレイには、ガラス板が使用されている。
【0003】
ガラス板の製造工程では、まず、ダウンドロー法(例えばオーバーフローダウンドロー法)やフロート法により、溶融ガラスから連続的にガラスリボンを成形する。次に、ガラスリボンを所定の長さ毎に幅方向に沿って切断する。これにより、幅方向の両端に厚肉な耳部を有するガラス原板をガラスリボンから切り出す。次に、ガラス原板から両端の耳部を分断することで、ガラス原板からガラス板を得る。その後、ガラス板に対して検査等を実施する。
【0004】
検査の一例としては、特許文献1に開示されるような板厚の測定が挙げられる。同文献に開示された測定の形態では、ガラス板を吊り下げ支持した状態で搬送しながら測定を行っている。そして、板厚の測定には、ガラス板における下部面(下端に位置した端面)の高さの変化を検出する第1CCDカメラ、下部面の画像を撮像する第2CCDカメラ、下部面の高さの変化に応じて第2CCDカメラを昇降させる昇降手段、下部面の画像を処理して板厚を求める制御部等を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ガラス板の品質管理を目的として、ガラス原板の耳部における板厚を把握することが必要になる場合がある。しかしながら、特許文献1に開示されるような形態では、耳部の板厚を測定すること自体が想定されていないため、このような測定を実現するための手段を確立することが期待されていた。
【0007】
以上の事情に鑑みて解決すべき技術的課題は、ガラス板を製造するに際し、厚肉な耳部を有するガラス原板について、耳部における板厚の測定を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためのガラス板の製造方法は、有効部と、有効部よりも厚肉な耳部と、を有するガラス原板を対象として、耳部における板厚を測定する第一測定工程を備えた方法であって、第一測定工程では、吸収方式の測定器により、耳部における板厚を測定することを特徴とする。
【0009】
本方法では、第一測定工程を実行するにあたって吸収方式の測定器を用いる。吸収方式の測定器は測定できる板厚の範囲が広いことから、ガラス原板の厚肉な耳部における板厚を問題なく測定することが可能となる。
【0010】
上記の方法では、ガラス原板が、有効部を間に挟んで両端に耳部を有し、両端の耳部を結ぶ方向を幅方向としたとき、第一測定工程では、幅方向に沿ってガラス原板の一方端から他方端まで板厚を測定することで、ガラス原板の板厚分布を得て、ガラス原板の板厚分布に基づいて、幅方向におけるガラス原板の長さを取得することが好ましい。
【0011】
このようにすれば、ガラス原板の板厚分布に基づいて、幅方向におけるガラス原板の長さ(以下、原板幅と表記)を取得することで、ガラス原板から得られるガラス板の品質管理を好適に行うことができる。例えば、原板幅の増減に伴ってガラス板の品質が変動することを防止する目的の下、ガラスリボンから切り出される多数枚のガラス原板について、これらガラス原板の原板幅を同一にするための管理を行いやすくなる。
【0012】
上記の方法では、ガラス原板を吊り下げ支持した状態で幅方向に搬送する第一搬送工程を備え、第一搬送工程を実行しながら、ガラス原板の搬送経路に配置した吸収方式の測定器により第一測定工程を実行すると共に、ガラス原板の上部において板厚を測定することが好ましい。
【0013】
このようにすれば、ガラス原板の上部、つまり吊り下げ支持された箇所の付近において板厚が測定されることになる。そのため、第一搬送工程の実行に伴って搬送中のガラス原板に揺れが生じたとしても、揺れの振幅が小さい箇所が測定されることから、揺れが測定結果に与える影響を可及的に小さくすることが可能となる。従って、ガラス原板の板厚分布を正確に得ることができる。
【0014】
上記の方法では、ガラス原板から耳部を分断することで、ガラス原板から有効部でなるガラス板を得る分断工程と、ガラス板を対象として、分光干渉方式の測定器により、幅方向に沿ってガラス板の一方端から他方端まで板厚を測定することで、ガラス板の板厚分布を得る第二測定工程と、を備えることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、ガラス板の板厚分布を得る第二測定工程を実行するにあたり、吸収方式よりも高分解能な測定が可能な分光干渉方式の測定器を用いることで、精細なガラス板の板厚分布を得ることができる。
【0016】
上記の方法では、ガラス板の板厚分布に基づいて、幅方向におけるガラス板の長さを取得することが好ましい。
【0017】
このようにすれば、ガラス板の板厚分布に基づいて、幅方向におけるガラス板の長さを取得することで、ガラス板の品質管理を更に好適に行うことが可能となる。
【0018】
上記の方法では、ガラス板を吊り下げ支持した状態で幅方向に搬送する第二搬送工程を備え、第二搬送工程を実行しながら、ガラス板の搬送経路に配置した分光干渉方式の測定器により第二測定工程を実行すると共に、ガラス板の上部において板厚を測定することが好ましい。
【0019】
このようにすれば、第二搬送工程の実行に伴って搬送中のガラス板に揺れが生じたとしても、揺れが測定結果に与える影響を可及的に小さくできる。従って、ガラス板の板厚分布をより正確に得ることが可能となる。
【0020】
また、上記の課題を解決するためのガラス板の製造装置は、有効部と、有効部よりも厚肉な耳部と、を有するガラス原板を対象として、耳部における板厚を測定する測定器を備えた装置であって、測定器が、吸収方式の測定器であることを特徴とする。
【0021】
本装置によれば、上記のガラス板の製造方法について既述の作用・効果を同様に得ることが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本開示に係るガラス板の製造方法および製造装置によれば、ガラス板を製造するに際し、厚肉な耳部を有するガラス原板について、耳部における板厚の測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】ガラス板の製造方法および製造装置を示す平面図である。
【
図2】ガラス板の製造方法および製造装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態に係るガラス板の製造方法および製造装置について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、
図1及び
図2に表したX方向、Y方向、及びZ方向は互いに直交する方向である。X方向はガラス原板G1及びガラス板G2の幅方向に等しく、Y方向はガラス原板G1及びガラス板G2の厚み方向に等しい。また、Z方向は上下方向である。
【0025】
<ガラス板の製造装置>
まず、ガラス板の製造装置1(以下、単に製造装置1と表記)から説明する。
【0026】
図1及び
図2に示した製造装置1は、縦置き姿勢のガラス原板G1又はガラス板G2を吊り下げ支持した状態で幅方向(X方向)に搬送するための複数の搬送装置2と、幅方向に沿ってガラス原板G1の一方端G1aから他方端G1bまで板厚を測定するための第一測定装置3と、ガラス原板G1から耳部Gxを分断することで、ガラス原板G1から有効部Gyでなるガラス板G2を得るための切断装置(図示省略)と、幅方向に沿ってガラス板G2の一方端G2aから他方端G2bまで板厚を測定するための第二測定装置4と、を備えている。
【0027】
ここで、ガラス原板G1及びガラス板G2について説明する。
【0028】
ガラス原板G1は、ダウンドロー法(例えばオーバーフローダウンドロー法)やフロート法により溶融ガラスから連続的に成形したガラスリボンを、所定の長さ毎に幅方向に沿って切断することで、ガラスリボンから切り出したものである。ガラス原板G1は、後にガラス板G2となる有効部Gyと、有効部Gyよりも厚肉な耳部Gxとを有し、有効部Gyを間に挟んで幅方向の両端に耳部Gxが形成されている。ガラス板G2は、切断装置により耳部Gxと分断された後の有効部Gyでなる。ガラス板G2(有効部Gy)の厚みt1は、一例として30μm~1100μmであり、耳部Gxの厚みt2は、一例として1200μm~3000μmである。厚みの割合(t2/t1)は一例として3~8である。
【0029】
X方向に延びたガラス原板G1(ガラス板G2)の搬送経路(
図1及び
図2において右側が上流側、左側が下流側)は、複数の区間に分割されており、各区間に一基ずつ搬送装置2が配置されている。つまり、本製造装置1は、区間の数と同じ数の搬送装置2を備えている。各搬送装置2は、X方向に沿って往復動作が可能であり、所属する区間内にて上流端と下流端との間を移動することが可能である。
【0030】
各搬送装置2は、所属する区間の上流端でガラス原板G1又はガラス板G2を受け取る。各搬送装置2は、受け取ったガラス原板G1又はガラス板G2を区間の下流端まで搬送した後、隣接する区間に所属する搬送装置2にガラス原板G1又はガラス板G2を受け渡す。ガラス原板G1又はガラス板G2を受け渡した後の各搬送装置2は、次のガラス原板G1又はガラス板G2を受け取るために所属する区間の上流端に帰還する。
【0031】
本製造装置1では、複数の搬送装置2により、上流工程から移送されてきた複数枚のガラス原板G1を順々に切断装置に搬入すると共に、これらガラス原板G1から切り出された複数枚のガラス板G2を順々に切断装置から搬出して下流工程へと移送する。
【0032】
各搬送装置2は、ガラス原板G1又はガラス板G2の上辺部を支持(把持)することが可能な支持部材としてのチャック5を備えている。このチャック5により、ガラス原板G1又はガラス板G2が吊り下げられる。チャック5は、上述したガラス原板G1又はガラス板G2の受け取りおよび受け渡しに際し、当該チャック5に備わった爪を開閉させることで、上辺部の支持および支持の解除を行う。
【0033】
ここで、本実施形態の変形例として、製造装置1が、複数の搬送装置2に代えて、ガラス原板G1(ガラス板G2)の搬送経路に沿って往復動作が可能な単一の搬送装置を備えていてもよい。つまり、単一の搬送装置により、ガラス原板G1及びガラス板G2を搬送してもよい。また、本実施形態の別の変形例として、搬送装置2が、チャック5に代わる支持部材として、ガラス原板G1又はガラス板G2の上辺部の吸着が可能な吸着パッドを備えていてもよい。
【0034】
第一測定装置3は、ガラス原板G1の搬送経路に配置されている。この第一測定装置3は、吸収方式の測定器としての赤外線厚さ計である。第一測定装置3は、投光器6と受光器7とを備えている。投光器6と受光器7とは、搬送に伴ってガラス原板G1が通過するパスラインを間に挟んで対向している。投光器6と受光器7との両者は、上下方向(Z方向)において同一の高さ位置に配置されている。投光器6は、ガラス原板G1の表面G1sに対して垂直に赤外線8を発することが可能である。
【0035】
第一測定装置3によるガラス原板G1の板厚の測定に際しては、投光器6が発した赤外線8にガラス原板G1を透過(表面G1s側から裏面G1t側へと透過)させて受光器7に到達させる。この際に減衰された赤外線8を電気信号として検出して電流値に変換することで、ガラス原板G1の板厚を測定する。
【0036】
第一測定装置3は、ガラス原板G1の上部において板厚が測定されるように、その高さ位置(Z方向における位置)が調節されている。これは、ガラス原板G1の搬送に伴って当該ガラス原板G1に生じる揺れ(Y方向に沿った揺れ)が測定結果に与える影響を可及的に小さくする目的である。第一測定装置3の高さ位置について、より詳細に説明すると、ガラス原板G1の上部のうち、チャック5に支持(把持)された箇所よりも下方で、且つ、チャック5の支持(把持)に伴うガラス原板G1の変形がない箇所で板厚が測定されるように、第一測定装置3の高さ位置が調節されている。第一測定装置3(板厚測定箇所)の高さ位置の一例としては、ガラス原板G1の上辺(上側のエッジ)から下方に100mm~300mmの距離だけ離れた位置である。
【0037】
第一測定装置3は、投光器6と受光器7との間をガラス原板G1に横切らせることにより、ガラス原板G1の一方端G1aから他方端G1bまで板厚を連続的に測定していく(例えば1mmピッチで測定)。これにより、
図2に二点鎖線で示した線9に沿って同図の左側から右側に向かって板厚の測定が進行していく。ここで、第一測定装置3が測定できる板厚の範囲は、一例として0μm超~3200μmである。また、第一測定装置3の分解能は、一例として約2μmである。
【0038】
ここで、本実施形態の変形例として、赤外線厚さ計以外の吸収方式の測定器を第一測定装置3としてもよい。
【0039】
切断装置(図示省略)は、ガラス原板G1(ガラス板G2)の搬送経路上にて、第一測定装置3よりも下流側で、且つ、第二測定装置4よりも上流側に配置されている。切断装置としては、ガラス原板G1から耳部Gxを分断できる限りで任意の装置を採用することが可能である。一例としては、吊り下げ支持された状態にあるガラス原板G1に対して、耳部Gxと有効部Gyとの境界線10に沿ってスクライブ線を形成する機構と、スクライブ線に沿ってガラス原板G1を折り割って切断する機構と、を備えた装置を採用できる。この他、レーザー割断やレーザー溶断により境界線10に沿ってガラス原板G1を切断する装置を切断装置としてもよい。
【0040】
第二測定装置4は、ガラス板G2の搬送経路に配置されている。この第二測定装置4は、分光干渉方式の測定器としての分光干渉計11と、鏡盤12とを備えている。分光干渉計11と鏡盤12とは、搬送に伴ってガラス板G2が通過するパスラインを間に挟んで対向している。分光干渉計11と鏡盤12との両者は、上下方向(Z方向)において同一の高さ位置に配置されている。分光干渉計11は、ガラス板G2の表面G2sに対して垂直にレーザー光13を発することが可能であると共に、反射光を受光することが可能である。鏡盤12は、平坦な反射面12aを有すると共に、反射面12aがガラス板G2の表面G2sおよび裏面G2tと平行になるように配置されている。
【0041】
第二測定装置4によるガラス板G2の板厚の測定に際しては、分光干渉計11が発したレーザー光13のうち、ガラス板G2の表面G2sで反射した一部の光と、裏面G2tで反射した一部の光とを、共に分光干渉計11に受光させる。さらに、分光干渉計11が発したレーザー光13のうち、ガラス板G2を透過(表面G2s側から裏面G2t側に透過)して鏡盤12の反射面12aで反射したのち、再びガラス板G2を透過(裏面G2t側から表面G2s側に透過)した一部の光を分光干渉計11に受光させる。この際の光の干渉に基づいて、ガラス板G2の板厚を測定する。
【0042】
第二測定装置4(分光干渉計11および鏡盤12)は、第一測定装置3と同様の理由から、ガラス板G2の上部において板厚が測定されるように、その高さ位置(Z方向における位置)が調節されている。詳細には、ガラス板G2の上部のうち、チャック5に支持(把持)された箇所よりも下方で、且つ、チャック5の支持(把持)に伴うガラス板G2の変形がない箇所で板厚が測定されるように、第二測定装置4の高さ位置が調節されている。本実施形態では、第一測定装置3と第二測定装置4とが同一の高さ位置にある。しかしながら、この限りではなく、両装置3,4が異なる高さ位置にあってもよい。
【0043】
第二測定装置4は、分光干渉計11と鏡盤12との間をガラス板G2に横切らせることにより、ガラス板G2の一方端G2aから他方端G2bまで板厚を連続的に測定していく(例えば1mmピッチで測定)。これにより、
図2に二点鎖線で示した線14に沿って同図の左側から右側に向かって板厚の測定が進行していく。ここで、第二測定装置4が測定できる板厚の範囲は、一例として0.05μm~800μmである。また、第二測定装置4の分解能は、一例として0.01μm以下である。このとおり、第二測定装置4は、第一測定装置3との比較において、測定できる板厚の範囲が狭い一方で、測定の分解能が高くなっている。
【0044】
ここで、本実施形態の変形例として、第二測定装置4から鏡盤12を省略しても構わない。この場合、分光干渉計11が発したレーザー光13のうち、ガラス板G2の表面G2sで反射した一部の光と、裏面G2tで反射した一部の光とを、共に分光干渉計11に受光させる。この際の光の干渉に基づいて、ガラス板G2の板厚を測定する。
【0045】
<ガラス板の製造方法>
以下、上記の製造装置1を用いたガラス板の製造方法(以下、単に製造方法と表記)について説明する。
【0046】
本製造方法は、
図1及び
図2に示すように、搬送装置2を用いて、ガラスリボン(図示省略)から切り出したガラス原板G1を搬送する第一搬送工程P1と、第一測定装置3を用いて、ガラス原板G1の板厚を測定することで、ガラス原板G1の板厚分布(
図3を参照)を得る第一測定工程P2と、切断装置を用いて、第一測定工程P2を経たガラス原板G1から耳部Gxを分断してガラス板G2を得る分断工程P3と、搬送装置2を用いて、ガラス板G2を搬送する第二搬送工程P4と、第二測定装置4を用いて、ガラス板G2の板厚を測定することで、ガラス板G2の板厚分布(
図4を参照)を得る第二測定工程P5と、を備えている。
【0047】
第一測定工程P2は、第一搬送工程P1を実行しながら行う。第一測定工程P2が完了すると、
図3に示すようなガラス原板G1の板厚分布が得られる。ガラス原板G1の板厚分布には、耳部Gxの板厚分布および有効部Gyの板厚分布が含まれている。そして、ガラス原板G1の板厚分布に基づいて、幅方向におけるガラス原板G1の長さL1を取得することができる。さらに、ガラス原板G1の板厚分布から耳部Gxの幅(幅方向に沿った長さ)についても把握することができる。
【0048】
分断工程P3は、搬送装置2による搬送(ガラス原板G1の搬送)を一旦停止させた状態の下で行う。ガラス原板G1から耳部Gxが分断されてガラス板G2が得られると、搬送装置2による搬送(ガラス板G2の搬送)を再開させる。
【0049】
第二測定工程P5は、第二搬送工程P4を実行しながら行う。第二測定工程P5が完了すると、
図4に示すようなガラス板G2の板厚分布が得られる。ガラス板G2の板厚分布には、耳部Gxの板厚分布は含まれておらず、ガラス板G2(有効部Gy)の板厚分布のみが含まれている。なお、
図4に示すガラス板G2の板厚分布は、
図3において四角Aで囲った箇所の板厚分布に相当するが、
図3の板厚分布よりも、精細である。そして、ガラス板G2の板厚分布に基づいて、幅方向におけるガラス板G2の長さL2を取得することができる。
【0050】
第二測定工程P5後のガラス板G2は、板厚の測定以外の検査等を経た後、出荷や保管等に備えて、例えばパレット上に梱包される。以上のようにして、ガラス板G2が製造される。
【0051】
以下、上記の製造装置1および製造方法による主たる作用・効果について説明する。
【0052】
上記の製造装置1および製造方法では、ガラス原板G1の耳部Gxの厚みを測定するにあたり、吸収方式の測定器である第一測定装置3(赤外線厚さ計)を用いている。吸収方式の測定器は、測定できる板厚の範囲が広いことから、ガラス原板G1の厚肉な耳部Gxにおける板厚を問題なく測定することが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
1 ガラス板の製造装置
3 第一測定装置(赤外線厚さ計)
11 分光干渉計
G1 ガラス原板
G1a ガラス原板の一方端
G1b ガラス原板の他方端
G2 ガラス板
G2a ガラス板の一方端
G2b ガラス板の他方端
Gx 耳部
Gy 有効部
L1 ガラス原板の長さ
L2 ガラス板の長さ
P1 第一搬送工程
P2 第一測定工程
P3 分断工程
P4 第二搬送工程
P5 第二測定工程