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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20240605BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240605BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20240605BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
F01N3/24 E ZAB
F01N3/28 301P
F01N3/035 A
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020173210
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064523
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】津田 豊史
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-007418(JP,A)
【文献】特開平02-102707(JP,A)
【文献】特開2020-163286(JP,A)
【文献】特開2019-022873(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0288416(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010053603(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/24
F01N 3/28
F01N 3/035
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスを通過可能とするように構成される流入管と、
前記流入管から流入する排ガスを浄化可能とするように構成されるウォールフロー型の
フィルタと
を備え、
前記フィルタが、
前記流入管から送給される排ガスが流入するように構成され、かつ前記流入管の横断面よりも大きな横断面を有する流入部と、
前記流入部から流入した排ガスが通過するように構成される本体部と、
前記本体部を通過した排ガスが前記フィルタの外部に流出するように構成される流出部と、
前記流入部から前記本体部を通って前記流出部に至るガス通過軸線に沿って形成される複数のガス通過空間を互いに隔てる隔壁と
を含む、排ガス浄化装置であって、
前記フィルタには、前記流入管から送給される前記排ガスの流れ方向にて前記流入管の横断面を投影した範囲に画定される前記流入部の主流区域、前記流入部の主流区域から流入した排ガスが通過する前記本体部の主流区域、及び前記本体部の主流区域を通過した排ガスが流出する前記流出部の主流区域を有する主流領域が形成されており、
記主流領域以外の非主流領域を流れる排ガスの速度は、前記主流領域を流れる排ガスの速度よりも遅く、
前記非主流領域における前記隔壁の内部にコーティングされた触媒によってもたらされる排ガス流の圧力損失は、前記主流領域における前記隔壁の表面にコーティングされた触媒によってもたらされる排ガス流の圧力損失よりも小さいことを特徴とする、排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記主流領域では、さらに前記隔壁の内部に触媒がコーティングされている、請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記複数のガス通過空間が、前記流入部に配置される目封じを有する複数の第1ガス通過空間と、前記流出部に配置される目封じを有する複数の第2ガス通過空間とを含み、
前記流入部、前記流出部、又は前記流入及び流出部のそれぞれにて、前記主流領域に位置する前記目封じのガス通過軸線方向の長さが、前記非主流領域に位置する前記目封じのガス通過軸線方向の長さよりも長くなっている、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記目封じのガス通過軸線方向の長さは、この目封じを設けた前記ガス通過空間を通過する排ガスの速度が増加するに従って増加するように設定されている、請求項3に記載の排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒を担持したウォールフロー型のフィルタを有する排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、スート(soot)、SOF(Soluble Organic Fraction)、サルフェート(硫黄酸化物)等の粒子状物質(PM)が含まれ、さらに、排ガス中には、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)等の有害物質が含まれる。そのため、特に、自動車等の車両においては、排ガス中の粒子状物質、有害物質等を低減可能とする排ガス浄化装置が搭載されている。
【0003】
このような排ガス浄化装置は、排ガス中の粒子状物質を捕集可能とするGPF(Gasoline Particulate Filter)、DPF(Diesel Particulate Filter)等のフィルタを有する。フィルタにおいては、その内部を通過する排ガス流を整流化することが望ましい。そのため、排ガス流を整流化可能とするフィルタを有する排ガス浄化装置が提案されている。
【0004】
このような排ガス浄化装置の一例としては、排ガス流路と、この排ガス流路の下流に位置し、かつ排ガス流路よりも大きな径を有する拡径排ガス流路と、この拡径排ガス流路に配置されるハニカム担体とを含み、ハニカム担体の表面には触媒層が形成され、排ガスの流れが集中するハニカム担体の領域では、その上流部分側に位置する触媒層と、その下流部分側に位置する触媒層とが、上流及び下流部分間の中間部分にて互いに重なっており、中間部分の開口率が、上流及び下流部分のそれぞれの開口率よりも小さくなるように、中間部分にて重なる触媒層の厚さが、上流及び下流部分のそれぞれに位置する触媒層の厚さよりも厚くなっている、フロースルー型の触媒が挙げられる。(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-022873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記排ガス浄化装置の一例のような構造を、ウォールフロー型のフィルタに適用した場合において、このフィルタの内部を通過する排ガス流を効率的に整流化することはできず、さらには、フィルタの温度が部分的に上昇するおそれがある。このようなフィルタの部分的な温度上昇は、フィルタにおける部分的な熱劣化を発生させるおそれがあり、かつフィルタの大きな温度差は、クラックを発生させるおそれがある。
【0007】
このような実情を鑑みると、ウォールフロー型のフィルタの内部を通過する排ガス流を効率的に整流化すること、ウォールフロー型のフィルタの温度を効率的に均一化することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するために、一態様に係る排ガス浄化装置は、排ガスを通過可能とするように構成される流入管と、前記流入管から流入する排ガスを浄化可能とするように構成されるウォールフロー型のフィルタとを備え、前記フィルタが、前記流入管から送給される排ガスが流入するように構成され、かつ前記流入管の横断面よりも大きな横断面を有する流入部と、前記流入部から流入した排ガスが通過するように構成される本体部と、前記本体部を通過した排ガスが前記フィルタの外部に流出するように構成される流出部と、前記流入部から前記本体部を通って前記流出部に至るガス通過軸線に沿って形成される複数のガス通過空間を互いに隔てる隔壁とを含む、排ガス浄化装置であって、前記フィルタには、前記流入管から送給される前記排ガスの流れ方向にて前記流入管の横断面を投影した範囲に画定される前記流入部の主流区域、前記流入部の主流区域から流入した排ガスが通過する前記本体部の主流区域、及び前記本体部の主流区域を通過した排ガスが流出する前記流出部の主流区域を有する主流領域が形成されており、前記主流領域以外の非主流領域を流れる排ガスの速度は、前記主流領域を流れる排ガスの速度よりも遅く、前記非主流領域における前記隔壁の内部にコーティングされた触媒によってもたらされる排ガス流の圧力損失は、前記主流領域における前記隔壁の表面にコーティングされた触媒によってもたらされる排ガス流の圧力損失よりも小さい
【発明の効果】
【0009】
一態様に係る排ガス浄化装置においては、ウォールフロー型のフィルタの内部を通過する排ガス流を効率的に整流化することができ、ウォールフロー型のフィルタの温度を効率的に均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る排ガス浄化装置を概略的に示す側面図である。
図2図2は、図1のA-A線断面図である。
図3図3は、図1のB-B線断面図である。
図4図4は、図2のC-C線断面図である。
図5図5は、図4のD部拡大図である。
図6図6は、図4のE部拡大図である。
図7図7は、一実施形態の第1変形例に係る排ガス浄化装置を、図2のC-C線に相当する線に沿って切断した状態で示す断面図である。
図8図8は、一実施形態の第1変形例に係る排ガス浄化装置を、図1のB-B線に相当する線に沿って切断した状態で示す断面図である。
図9図9は、一実施形態の第2変形例に係る排ガス浄化装置を、図2のC-C線に相当する線に沿って切断した状態で示す断面図である。
図10図10は、一実施形態の第2変形例に係る排ガス浄化装置を、図1のB-B線に相当する線に沿って切断した状態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一実施形態に係る排ガス浄化装置について以下に説明する。本実施形態に係る排ガス浄化装置(以下、必要に応じて、単に「浄化装置」という)は、排ガスを浄化可能とするフィルタを有する。浄化装置は、ガソリンエンジンを有する車両に適用される。この場合、浄化装置のフィルタは、ウォールフロー型のガソリンパティキュレートフィルタ(GPF)とすることができる。本実施形態に係る浄化装置を適用する車両は、自動車等とすることができる。
【0012】
しかしながら、浄化装置を適用する車両は、自動車に限定されない。また、かかる車両は、ガソリンエンジン以外の内燃機関を有することもできる。例えば、車両は、ディーゼルエンジンを有することができる。この場合、浄化装置のフィルタは、ウォールフロー型のディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)とすることができる。
【0013】
「排ガス浄化装置の概略」
図1図6を参照して、本実施形態に係る排ガス浄化装置について説明する。すなわち、浄化装置は、概略的には次のように構成される。図1及び図2に示すように、浄化装置は、排ガスを通過可能とするように構成される流入管10を有する。図2図6に示すように、浄化装置は、流入管10から流入する排ガスを浄化可能とするように構成されるウォールフロー型のフィルタ20を有する。
【0014】
図2図4に示すように、フィルタ20は、流入管10から送給される排ガスが流入するように構成される流入部21を有する。流入部21は、流入管10の横断面よりも大きな横断面を有する。フィルタ20は、流入部21から流入した排ガスが通過するように構成される本体部22を有する。フィルタ20は、本体部22を通過した排ガスがフィルタ20の外部に流出するように構成される流出部23を有する。フィルタ20は、流入部21から本体部22を通って流出部23に至るガス通過軸線Lに沿って形成される複数のガス通過空間31,32を互いに隔てる隔壁30を有する。以下において、ガス通過軸線Lに沿った方向をガス通過軸線方向(両側矢印Jにより示す)と呼ぶ。
【0015】
流入部21は、流入管10から送給される排ガスの流れ方向(片側矢印Fにより示す)にて流入管10の横断面を投影した範囲に画定される主流区域21aを有する。流入部21は、主流区域21a以外の区域である非主流区域21bを有する。本体部22は、流入部21の主流区域21aから流入した排ガスが通過する主流区域22aを有する。本体部22は、主流区域22a以外の区域である非主流区域22bを有する。
【0016】
流出部23は、本体部22の主流区域22aを通過した排ガスが流出する主流区域23aを有する。流出部23は、主流区域23a以外の区域である非主流区域23bを有する。フィルタ20には、流入部21の主流区域21a、本体部22の主流区域22a、及び流出部23の主流区域23aを有する主流領域20aが形成される。フィルタ20には、主流領域20a以外の領域である非主流領域20bもまた形成される。なお、図3においては、主流領域20aと非主流領域20bとの境界を一点鎖線Qにより示す。
【0017】
図5に示すように、フィルタ20の主流領域20aでは、隔壁30の表面に触媒P1がコーティングされる。図6に示すように、主流領域20a以外のフィルタ20の非主流領域20bでは、隔壁30の内部に触媒P2がコーティングされる。以下においては、必要に応じて、フィルタ20の主流領域20aにて隔壁30の表面にコーティングされる触媒P1を第1触媒P1と呼び、かつフィルタ20の非主流領域20bにて隔壁30の内部にコーティングされる触媒P2を第2触媒P2と呼ぶ。
【0018】
さらに、本実施形態に係る浄化装置は、概略的には次のように構成することができる。図5に示すように、フィルタ20の主流領域20aでは、さらに隔壁30の内部に触媒P3がコーティングされる。以下においては、必要に応じて、フィルタ20の主流領域20aにて隔壁30の内部にコーティングされる触媒P3を第3触媒P3と呼ぶ。しかしながら、フィルタの主流領域では、隔壁の内部に触媒がコーティングされなくてもよい。
【0019】
図4に示すように、複数のガス通過空間31,32は、流入部21に配置される目封じ(以下、必要に応じて、「流入側目封じ」という)33,34を有する複数の第1ガス通過空間31を含む。流入側目封じ33,34は、流入部21の主流区域21aに位置する第1流入側目封じ33と、流入部21の非主流区域21bに位置する第2流入側目封じ34とを有する。複数のガス通過空間31,32は、流出部23に配置される目封じ(以下、必要に応じて、「流出側目封じ」という)35,36を有する複数の第2ガス通過空間32を含む。流出側目封じ35,36は、流出部23の主流区域23aに位置する第1流出側目封じ35と、流出部23の非主流区域23bに位置する第2流出側目封じ36とを有する。
【0020】
第1流入側目封じ33のガス軸線方向の長さは、第2流入側目封じ34のガス軸線方向の長さよりも長くなっている。この場合、流入側目封じ33,34のガス通過軸線方向の長さは、この流入側目封じ33,34を設けた第1ガス通過空間31を通過する排ガスの速度が増加するに従って増加するように設定することができる。これに加えて、第1流出側目封じ35のガス軸線方向の長さは、第2流出側目封じ36のガス軸線方向の長さと略等しくなっている。
【0021】
しかしながら、第1流出側目封じのガス軸線方向の長さを、第2流出側目封じのガス軸線方向の長さよりも長くすることができる。この場合、流出側目封じのガス通過軸線方向の長さは、この流出側目封じを設けた第2ガス通過空間を通過する排ガスの速度が増加するに従って増加するように設定することができる。この場合また、第1流入側目封じのガス軸線方向の長さを、第2流入側目封じのガス軸線方向の長さと略等しくすることもできる。
【0022】
「排ガス浄化装置の詳細」
図1図4を参照すると、本実施形態に係る排ガス浄化装置は、詳細には次のように構成することができる。特に図示はしないが、流入管10は、それに対して排ガスの流れ方向の上流側にて、ガソリンエンジンに直接的又は間接的に接続されている。図1図4に示すように、浄化装置は、フィルタ20を収容するフィルタケース40を有する。図1及び図4に示すように、浄化装置は、フィルタ20を通過した排ガスを通過可能とするように構成される流出管50を有する。
【0023】
流入管10は、フィルタケース40に対して排ガスの流れ方向の上流側に隣接する。流出管50は、フィルタケース40に対して排ガスの流れ方向の下流側に隣接する。流入管10、フィルタケース40、及び流出管50の内部には、排ガスを通過可能とする空間が形成される。
【0024】
フィルタケース40は、フィルタ20に対応するようにガス通過軸線方向に沿って筒形状に形成されるケース胴体部41を有する。フィルタケース40は、ケース胴体部41に対して排ガスの流れ方向の上流側に隣接する流入側端部42を有する。フィルタケース40は、ケース胴体部41に対して排ガスの流れ方向の下流側に隣接する流出側端部43を有する。
【0025】
フィルタケース40のケース胴体部41の横断面は、流入管10及び流出管50の横断面よりも大きくなっている。流入側端部42は、その横断面がガス通過軸線方向にて流入管10からケース胴体部41に向かうに従って拡大するように形成されている。流出側端部43の横断面は、その横断面がガス通過軸線方向にてケース胴体部41から流出管50に向かうに従って拡大するように形成されている。
【0026】
流入管10、フィルタケース40、及び流出管50の中心軸線10a,40a,50aは、互いに略一致している。流入管10、フィルタケース40、及び流出管50の中心軸線10a,40a,50aは、略直線状に延びることができる。しかしながら、流入管、フィルタケース、及び流出管の中心軸線のうち1つの中心軸線を、他の1つ又は2つの中心軸線に対して傾けるように配向することができる。流出管の中心軸線のうち1つの中心軸線を、他の1つ又は2つの中心軸線に対してズラして配置することもできる。
【0027】
例えば、流入管の中心軸線を、フィルタケースの中心軸線に対して略平行を維持しながらフィルタケースの中心軸線に対してズラすことができる。例えば、流入管の中心軸線を、フィルタケースの中心軸線に対して傾けるように配向することができる。
【0028】
流入管10、フィルタケース40、及び流出管50のそれぞれは、金属を用いて構成されている。かかる金属は、アルミニウム又はアルミニウム合金、鉄又は鉄合金等とすることができる。しかしながら、当該金属は、これに限定されない。また、流入管、フィルタケース、及び流出管の少なくとも1つを、金属以外を用いて構成することもできる。
【0029】
「フィルタの詳細」
図2図6を参照すると、フィルタ20は、詳細には次のように構成することができる。図2図4に示すように、複数のガス通過空間31,32は、第1及び第2ガス通過空間31,32のみを含むことができる。言い換えれば、複数のガス通過空間31,32は、第1及び第2ガス通過空間31,32から構成することができる。しかしながら、複数のガス通過空間は、第1及び第2ガス通過空間に加えて、第1及び第2ガス通過空間とは異なるガス通過空間を含むこともできる。
【0030】
図5及び図6に示すように、フィルタ20の隔壁30は、多数(複数)の微細孔30aを有する。排ガスは、隣接する第1及び第2ガス通過空間31,32の一方から、隣接する第1及び第2ガス通過空間31,32間に位置する隔壁30の微細孔30aを通って、隣接する第1及び第2ガス通過空間31,32の他方に流れることができる。
【0031】
フィルタ20、特に、隔壁30は、セラミック製となっている。しかしながら、フィルタが、その隔壁に多数の微細孔を形成できるような構造を有していれば、フィルタは、セラミック以外の材料から作製することができる。例えば、フィルタが、その隔壁に多数の微細孔を形成できるような構造を有する場合において、フィルタは、コージェライト(SiO-Al-MgO)、炭化ケイ素(SiC)、Fe-Cr-Al合金、Ni-Cr-Al合金、ステンレス鋼合金等を用いて作製することもできる。
【0032】
隔壁30の内部にコーティングされる触媒P2,P3、すなわち、第2及び第3触媒P2,P3は、隔壁30の微細孔30aを画定する周面上にコーティングされる。上述した第1~第3触媒P1~P3は、白金、パラジウム、ロジウム、金、銀等、又はこれらのうち2種類以上の混合物等とすることができる。第1~第3触媒P1~P3は、同じ種類になっている。しかしながら、第1~第3触媒のうち1つを、第1~第3触媒のうち他の1つ又は2つと異なる種類とすることもできる。
【0033】
図2図4に示すように、ガス通過軸線方向で見て、複数のガス通過空間31,32はハニカム状に配置されている。言い換えれば、ガス通過軸線方向で見て、複数のガス通過空間31,32は行列状に配置されている。ガス通過軸線方向で見て、流入側目封じ33,34を有する第1ガス通過空間31と、流出側目封じ35,36を有する第2ガス通過空間32とは、行方向及び列方向のそれぞれにて交互に配置されている。
【0034】
フィルタ20の中心軸線20cは、ケース胴体部41の中心軸線41aと略一致している。フィルタ20の外周面20dは、ケース胴体部41の内周面41bと当接している。より具体的には、フィルタ20の外周面20dは、ケース胴体部41の内周面41bと密着する。
【0035】
フィルタ20の主流領域20aを流れる排ガスの速度は、フィルタ20の非主流領域20bを流れる排ガスの速度よりも速くなっている。さらに、フィルタ20の非主流領域20bを流れる排ガスの速度は、フィルタ20の主流領域20aからフィルタ20の外周面20dに向かうに従って遅くなる。
【0036】
本体部22の主流区域22aは、流入部21の主流区域21aとガス通過軸線方向に隣接し、かつ流入部21の主流区域21aに対して排ガスの流れ方向の下流側に位置する。流出部23の主流区域23aは、本体部22の主流区域22aとガス通過軸線方向に隣接し、かつ本体部22の主流区域22aに対して排ガスの流れ方向の下流側に位置する。
【0037】
上述のように、流入部21の主流区域21aは、流入管10から送給される排ガスの流れ方向(片側矢印Fにより示す)にて流入管10の横断面を投影した範囲に画定される。そのため、流入管10及びフィルタ20の中心軸線10a,20aが互いに略一致している場合、フィルタ20の主流領域20aの中心軸線20eもまた、フィルタ20の中心軸線20aと略一致する。
【0038】
ここで、本実施形態の第1変形例として、図7及び図8に示すように、流入管10の中心軸線10aが、フィルタ20の中心軸線20cと略平行を維持しながらフィルタ20の中心軸線20cにズレている場合、フィルタ20の主流領域20a及び流入部21の主流区域21aは、図8に示すようにフィルタ20の流入部21にて画定される。なお、本実施形態の構成要素に対応する第1変形例の構成要素の符号は、本願明細書の説明を簡略化するために、このような本実施形態の構成要素の符号と同じにしている。
【0039】
ここで、本実施形態の第2変形例として、図9及び図10に示すように、流入管10の中心軸線10aが、フィルタ20の中心軸線20cに対して傾いている場合、フィルタ20の主流領域20a及び流入部21の主流区域21aは、図10に示すようにフィルタ20の流入部21にて画定される。なお、本実施形態の構成要素に対応する第2変形例の構成要素の符号は、説明を簡略化するために、このような本実施形態の構成要素の符号と同じにしている。
【0040】
「排ガス浄化装置の製造方法」
本実施形態に係る排ガス浄化装置の製造方法の一例について説明する。特に、フィルタ20の作製について具体的に説明する。最初に、触媒P1~P3をコーティングする前のフィルタ20を、セラミック材料の成形、成形により得られた成形品の焼結等の工程によって、主流領域20aと非主流領域20bとを別々にした状態で形作る。
【0041】
次に、主流領域20aに、第1流入側目封じ33及び第1流出側目封じ35を取り付け、かつ非主流領域20bに、第2流入側目封じ34及び第2流出側目封じ36を取り付ける。その後、主流領域20aにおいて、隔壁30の微細孔30aに入り込むことができる大きさである微粒子を第3触媒P3として用いることができるように含有する第3触媒スラリーを用いて、隔壁30の内部に第3触媒P3をコーティングする。第3触媒P3をコーティングした後の主流領域20aにおいて、隔壁30の微細孔30aに入り込むことができない大きさである微粒子を第1触媒P1として用いることができるように含有する第1触媒スラリーを用いて、隔壁30の表面に第1触媒P1をコーティングする。なお、主流領域において、隔壁の内部に第3触媒をコーティングしない場合は、この第3触媒のコーティングの工程を省略することができる。
【0042】
非主流領域20bにおいて、隔壁30の微細孔30aに入り込むことができる大きさである微粒子を第2触媒P2として用いることができるように含有する第2触媒スラリーを用いて、隔壁30の内部に第2触媒P2をコーティングする。主流領域20aと非主流領域20bとを組み合わせる。
【0043】
しかしながら、フィルタ20の作製に用いられる第1~第3触媒スラリーは、次のようなものとすることもできる。第1触媒スラリーは、その微粒子を隔壁30の微細孔30aに入り込むことができる大きさとする一方で、減粘剤の添加等によって、その粘度を隔壁30の微細孔30aに入り込むことができないように調整されたものとすることができる。第2及び第3触媒スラリーのそれぞれは、その微粒子を隔壁30の微細孔30aに入り込むことができる大きさとし、かつ減粘剤の添加等によって、その粘度を隔壁30の微細孔30aに入り込むことができるように調整されたものとすることができる。
【0044】
また、フィルタ20は、次のように作製することもできる。触媒P1~P3をコーティングする前のフィルタ20を、セラミック原料の成形、焼結等の工程によって、主流領域20aと非主流領域20bとを一体にした状態で形作る。主流領域20aのガス通過空間31,32の開口を、浸透性の無い粘着テープ(例えば、ビニルテープ等)によって覆うようにマスキングを施す。上述のように、非主流領域20bにおいて、第2触媒スラリーを用いて隔壁30の内部に第2触媒P2をコーティングする。
【0045】
第2触媒P2のコーティングの後に、主流領域20aのガス通過空間31,32の開口を覆う粘着テープを剥がす。非主流領域20bのガス通過空間31,32の開口を、浸透性の無い粘着テープによって覆うようにマスキングを施す。上述のように、主流領域20aにおいて、第3触媒スラリーを用いて隔壁30の内部に第3触媒P3をコーティングする。さらに、主流領域20aにおいて、第1触媒スラリーを用いて隔壁30の表面に第1触媒P1をコーティングする。なお、主流領域において、隔壁の内部に第3触媒をコーティングしない場合は、この第3触媒のコーティングの工程を省略することができる。
【0046】
第1触媒P1のコーティングの後に、非主流領域20bのガス通過空間31,32の開口を覆う粘着テープを剥がす。主流領域20aに、第1流入側目封じ33及び第1流出側目封じ35を取り付ける。非主流領域20bに、第2流入側目封じ34及び第2流出側目封じ36を取り付ける。主流領域20aと非主流領域20bとを組み合わせる。
【0047】
さらに、フィルタ20の作製以降の工程は次のとおりである。フィルタケース40のケース胴体部41、流入側端部42、及び流出側端部43を、板材のプレス成型等の工程によって形作る。上述したフィルタ20をケース胴体41内に収容する。流入側端部42及び流出側端部43をケース胴体部41と組み合わせる。このようにフィルタ20を収容したフィルタケース40を、流入管10及び流出管50に取り付け、これによって、排ガス浄化装置が得られる。
【0048】
以上、本実施形態に係るに係る排ガス浄化装置は、排ガスを通過可能とするように構成される流入管10と、前記流入管10から流入する排ガスを浄化可能とするように構成されるウォールフロー型のフィルタ20とを備え、前記フィルタ20が、前記流入管10から送給される排ガスが流入するように構成され、かつ前記流入管10の横断面よりも大きな横断面を有する流入部21と、前記流入部21から流入した排ガスが通過するように構成される本体部22と、前記本体部22を通過した排ガスが前記フィルタ20の外部に流出するように構成される流出部23と、前記流入部21から前記本体部22を通って前記流出部23に至るガス通過軸線に沿って形成される複数のガス通過空間31,32を互いに隔てる隔壁30とを含む、排ガス浄化装置であって、前記フィルタ20には、前記流入管10から送給される前記排ガスの流れ方向にて前記流入管10の横断面を投影した範囲に画定される前記流入部21の主流区域21a、前記流入部21の主流区域21aから流入した排ガスが通過する前記本体部22の主流区域22a、及び前記本体部22の主流区域22aを通過した排ガスが流出する前記流出部23の主流区域23aを有する主流領域20aが形成されており、前記主流領域20aでは、前記隔壁30の表面に触媒P1がコーティングされ、前記主流領域20a以外の非主流領域20bでは、前記隔壁30の内部に触媒P2がコーティングされている。
【0049】
典型的に、排ガス浄化装置のウォールフロー型のフィルタにおいては、主流領域の排ガス流は非主流領域の排ガス流よりも速くなる。これに対して、本実施形態に係る排ガス浄化装置のウォールフロー型のフィルタ20によれば、主流領域20aにて隔壁30の表面にコーティングされた触媒P1によってもたらされる排ガス流の圧力損失は、非主流領域20bにて隔壁30の内部にコーティングされた触媒P2によってもたらされる排ガス流の圧力損失よりも大きく、その結果、主流領域20aの排ガス流の減速量は、非主流領域20bの排ガス流の減速量よりも大きくなる。
【0050】
よって、ウォールフロー型のフィルタ20の内部を通過する排ガス流を効率的に整流化することができる。さらに、排ガス流の整流化によって、フィルタ20の温度を効率的に均一化できる。その結果、フィルタ20における部分的な熱劣化を防ぐことができ、かつ大きな温度差に起因するクラックの発生を抑制することができる。
【0051】
付随的には、フィルタ20全体にて満遍なく排ガスを浄化することができ、その結果、排ガス浄化性能を向上させることができる。被毒性を有する吸着物質をフィルタ20全体に分散させることができ、その結果、被毒劣化を抑制することができる。
【0052】
本実施形態に係る排ガス浄化装置においては、前記主流領域20aでは、さらに前記隔壁30の内部に触媒P3がコーティングされている。
【0053】
このようなる排ガス浄化装置のウォールフロー型のフィルタ20によれば、主流領域20aにて隔壁30の表面及び内部にコーティングされた触媒P1,P3によってもたらされる排ガス流の圧力損失と、非主流領域20bにて隔壁30の内部にコーティングされた触媒P2によってもたらされる排ガス流の圧力損失との差を増加させることができる。よって、ウォールフロー型のフィルタ20の内部を通過する排ガス流を効率的に整流化することができる。
【0054】
本実施形態に係る排ガス浄化装置においては、前記複数のガス通過空間31,32が、前記流入部21に配置される目封じ33,34を有する複数の第1ガス通過空間31と、前記流出部23に配置される目封じ35,36を有する複数の第2ガス通過空間32とを含み、前記流入部21、前記流出部23、又は前記流入及び流出部21,23のそれぞれにて、前記主流領域20aに位置する前記目封じ33,35のガス通過軸線方向の長さが、前記非主流領域20bに位置する前記目封じ34,36のガス通過軸線方向の長さよりも長くなっている。
【0055】
典型的に、排ガス浄化装置のフィルタにおいて、主流領域の排ガス流は非主流領域の排ガス流よりも速くなるので、主流領域の温度は非主流領域の温度よりも低下し易い。また、触媒量が増加すると熱容量が増加し、これによって、温度が低下し難くなるので、目封じのガス通過軸線方向の長さが増加するに従って温度が低下し難くなる。これに対して、本実施形態に係る排ガス浄化装置のウォールフロー型のフィルタ20においては、主流領域20aに位置する目封じ33,35のガス通過軸線方向の長さが、非主流領域20bに位置する目封じ34,36のガス通過軸線方向の長さよりも長くなっているので、主流領域20a及び非主流領域20b間の温度差を小さくすることができる。
【0056】
本実施形態に係る排ガス浄化装置のフィルタ20においては、前記目封じ33~36のガス通過軸線方向の長さは、この目封じ33~36を設けた前記ガス通過空間31,32を通過する排ガスの速度が増加するに従って増加するように設定されている。
【0057】
このようなウォールフロー型のフィルタ20によれば、フィルタ20の温度を効率的に均一化できる。
【0058】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0059】
10…流入管
20…フィルタ、20a…主流領域、20b…非主流領域、21…流入部、21a…主流区域、22…本体部、22a…主流区域、23…流出部、23a…主流区域
30…隔壁、31…ガス通過空間、第1ガス通過空間、32…ガス通過空間、第2ガス通過空間、33…目封じ、流入側目封じ、第1流入側目封じ、34…目封じ、流入側目封じ、第2流入側目封じ、35…目封じ、流出側目封じ、第1流出側目封じ、36…目封じ、流出側目封じ、第2流出側目封じ
L…ガス通過軸線
P1…触媒、第1触媒、P2…触媒、第2触媒、P3…触媒、第3触媒
図1
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図10