(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】端子ユニットおよび端子ユニットにおいて用いられる雌端子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/04 20060101AFI20240605BHJP
H01R 13/11 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
H01R13/04 E
H01R13/11 K
H01R13/11 Z
(21)【出願番号】P 2021036558
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】逢澤 勝彦
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-061743(JP,A)
【文献】特表2011-530154(JP,A)
【文献】実公昭52-029271(JP,Y2)
【文献】実開昭62-123074(JP,U)
【文献】国際公開第2018/190288(WO,A1)
【文献】特開2011-100685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/04
H01R 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の雄端子と、
前記雄端子に接続される雌端子と、を備え、
前記雌端子は、前記雄端子が挿入されて配置される雄端子挿入隙間を隔てて対向配置された第1壁部と第2壁部を有し、
前記第1壁部は、前記雄端子の板厚方向の一方側の面に対向しており、前記第2壁部に向かって突出して前記第2壁部から離隔する方向に弾性変形可能な第1弾性接触部と、前記第1弾性接触部に設けられて前記雄端子の前記一方側の面に接触する第1接点部を有し、前記第1弾性接触部は、前記雄端子を前記第2壁部に向かって付勢し、
前記第2壁部は、前記雄端子の前記板厚方向の他方側の面に対向しており、前記第1壁部に向かって突出して、前記第1壁部から離隔する方向に弾性変形可能な複数の前記第2弾性接触部と、前記複数の第2弾性接触部にそれぞれ設けられて前記雄端子の前記他方側の面に接触する複数の第2接点部を有し、各前記第2弾性接触部は、前記雄端子を前記第1壁部に向かって付勢し、
前記複数の第2接点部は、前記雄端子の前記雄端子挿入隙間への挿入方向において、前記第1接点部の両側に離隔した複数箇所に配置されており、
前記雄端子は、前記挿入方向に交差する第1方向の両側に、前記雄端子の前記板厚方向の一方側に傾斜する一対の傾斜部を有し、
各前記傾斜部に対して、前記複数の第2弾性接触部に設けられた前記複数の第2接点部が、前記挿入方向において、前記第1接点部の両側に離隔した複数箇所で接触しており、
前記雌端子の前記第2壁部は、前記雄端子の前記一対の傾斜部にそれぞれ対向する一対の側縁部と、前記第1方向で前記一対の側縁部の間に位置する中間部とを有し、
各前記側縁部は、前記板厚方向に貫通する窓部と、前記窓部に面する前記中間部の端面において基端部が連結されて片持ち梁状に前記窓部側に突出する板ばね状の2つの前記第2弾性接触部を有し、
各前記側縁部の2つの前記第2弾性接触部が、前記挿入方向において、前記第1接点部の両側に離隔した2箇所にそれぞれ配置され、各前記第2弾性接触部は、前記基端部よりも先端側が前記第1壁部に接近するように傾斜しており、各前記第2弾性接触部の前記先端側に前記第2接点部が設けられている、
端子ユニット。
【請求項2】
前記雄端子は、板幅方向で前記一対の傾斜部の間に配置された平坦部を有し、
前記雌端子の前記第1弾性接触部の前記第1接点部は、前記雄端子の前記平坦部に接触する、請求項1に記載の端子ユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の端子ユニットにおいて用いられる雌端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子ユニットおよび当該端子ユニットに用いられる雌端子と雄端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タブ状などと表現される板状をなす雄端子と、雄端子に接続される雌端子からなる端子ユニットが開示されている。雌端子は、雄端子挿入隙間を隔てて対向配置された一対の壁部を有し、一方の壁部には雄端子を他方の壁部に押圧する弾性接触片が設けられ、他方の壁部には複数の接点が突設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の端子ユニットでは、雌端子の一対の壁部の間に挟み込まれた板状の雄端子が、一方の壁部に設けられた弾性接触片により他方の壁部に設けられた接点に押圧されている。そのため、車両振動等により、雄端子挿入隙間に挿し入れられた雄端子が、弾性接触片による押圧点を回転中心として、挿入方向の前方部分と後方部分が上下逆向きに変位するおそれがある。この場合、雄端子が他方の壁部に設けられた接点から離隔したり、強く押し付けられることによる端子表面のめっき摩耗等の不具合が発生するおそれがあった。
【0005】
そこで、雌雄端子嵌合時における雌端子の接点からの雄端子の離隔やめっき摩耗を抑制できる、端子ユニットおよび当該端子ユニットに用いられる雌端子と雄端子を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の端子ユニットは、板状の雄端子と、前記雄端子に接続される雌端子と、を備え、前記雌端子は、前記雄端子が挿入されて配置される雄端子挿入隙間を隔てて対向配置された第1壁部と第2壁部を有し、前記第1壁部は、前記雄端子の板厚方向の一方側の面に対向しており、前記第2壁部に向かって突出して前記第2壁部から離隔する方向に弾性変形可能な第1弾性接触部と、前記第1弾性接触部に設けられて前記雄端子の前記一方側の面に接触する第1接点部を有し、前記第1弾性接触部は、前記雄端子を前記第2壁部に向かって付勢し、前記第2壁部は、前記雄端子の前記板厚方向の他方側の面に対向しており、前記第1壁部に向かって突出して、前記第1壁部から離隔する方向に弾性変形可能な複数の前記第2弾性接触部と、前記複数の第2弾性接触部にそれぞれ設けられて前記雄端子の前記他方側の面に接触する複数の第2接点部を有し、各前記第2弾性接触部は、前記雄端子を前記第1壁部に向かって付勢し、前記複数の第2接点部は、前記雄端子の前記雄端子挿入隙間への挿入方向において、前記第1接点部の両側に離隔した複数箇所に配置されており、前記雄端子は、前記挿入方向に交差する第1方向の両側に、前記雄端子の前記板厚方向の一方側に傾斜する一対の傾斜部を有し、各前記傾斜部に対して、前記複数の第2弾性接触部に設けられた前記複数の第2接点部が、前記挿入方向において、前記第1接点部の両側に離隔した複数箇所で接触しており、前記雌端子の前記第2壁部は、前記雄端子の前記一対の傾斜部にそれぞれ対向する一対の側縁部と、前記第1方向で前記一対の側縁部の間に位置する中間部とを有し、各前記側縁部は、前記板厚方向に貫通する窓部と、前記窓部に面する前記中間部の端面において基端部が連結されて片持ち梁状に前記窓部側に突出する板ばね状の2つの前記第2弾性接触部を有し、各前記側縁部の2つの前記第2弾性接触部が、前記挿入方向において、前記第1接点部の両側に離隔した2箇所にそれぞれ配置され、各前記第2弾性接触部は、前記基端部よりも先端側が前記第1壁部に接近するように傾斜しており、各前記第2弾性接触部の前記先端側に前記第2接点部が設けられている、端子ユニットである。
本開示の雌端子は、本開示の端子ユニットにおいて用いられる雌端子である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、雌雄端子嵌合時における雌端子の接点からの雄端子の離隔やめっき摩耗を抑制できる、端子ユニットおよび当該端子ユニットに用いられる雌端子と雄端子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る端子ユニットを示す全体斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す雌端子を別の方向から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態2に係る端子ユニットを示す全体斜視図である。
【
図8】
図8は、
図6に示す雌端子を別の方向から見た斜視図である。
【
図9】
図9は、
図7のIX-IX断面において、雄端子を仮想線で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の端子ユニットは、
(1)板状の雄端子と、前記雄端子に接続される雌端子と、を備え、前記雌端子は、前記雄端子が挿入されて配置される雄端子挿入隙間を隔てて対向配置された第1壁部と第2壁部を有し、前記第1壁部は、前記雄端子の板厚方向の一方側の面に対向しており、前記第2壁部に向かって突出して前記第2壁部から離隔する方向に弾性変形可能な第1弾性接触部と、前記第1弾性接触部に設けられて前記雄端子の前記一方側の面に接触する第1接点部を有し、前記第1弾性接触部は、前記雄端子を前記第2壁部に向かって付勢し、前記第2壁部は、前記雄端子の前記板厚方向の他方側の面に対向しており、前記第1壁部に向かって突出して、前記第1壁部から離隔する方向に弾性変形可能な複数の前記第2弾性接触部と、前記複数の第2弾性接触部にそれぞれ設けられて前記雄端子の前記他方側の面に接触する複数の第2接点部を有し、各前記第2弾性接触部は、前記雄端子を前記第1壁部に向かって付勢し、前記複数の第2接点部は、前記雄端子の前記雄端子挿入隙間への挿入方向において、前記第1接点部の両側に離隔した複数箇所に配置されている、端子ユニットである。
【0010】
本開示の端子ユニットによれば、雄端子の板厚方向の両側に接触する、雌端子の第1接点部と第2接点部が、それぞれ雄端子を板厚方向の両側から付勢する第1弾性接触部と第2弾性接触部に設けられている。それゆえ、雌雄端子嵌合時の車両振動等により、雄端子が雌端子に対して変位する場合でも、第1/第2弾性接触部がそれらの弾性変形により雄端子の変位に追従することができる。その結果、第1/第2弾性接触部に設けられた第1/第2接点部を雄端子へ接触した状態に保持することができる。加えて、複数の第2接点部が、雄端子の雄端子挿入隙間への挿入方向において、第1接点部の両側に離隔した複数箇所に配置されている。これにより、第1接点部を回転中心とした挿入方向の両側における上下逆向きの雄端子の変位を、いずれも第2弾性接触部の弾性変形により安定して吸収し、複数の第2接点部の雄端子への追従性を向上させることができる。その結果、雄端子が第2接点部から離隔することや、雄端子が第2接点部に必要以上に強く押し付けられて雌雄端子の表面のめっきが摩耗することも抑制できる。すなわち、本開示の端子ユニットは、雌雄端子嵌合時における雌端子の接点からの雄端子の離隔やめっき摩耗を抑制できる。
【0011】
(2)前記雄端子は、前記挿入方向に交差する第1方向の両側に、前記雄端子の前記板厚方向の一方側に傾斜する一対の傾斜部を有し、各前記傾斜部に対して、前記複数の第2弾性接触部に設けられた前記複数の第2接点部が、前記挿入方向において、前記第1接点部の両側に離隔した複数箇所で接触する、ことが好ましい。雄端子は、雄端子の板幅方向の両側に、雄端子の板厚方向の一方側に傾斜する一対の傾斜部を有しており、各傾斜部に対して、雌端子の複数の第2弾性接触部に設けられた複数の第2接点部が接触する。これにより、雌端子の第1接点部を回転中心とした挿入方向の両側における上下逆向きの雄端子の変位が生じた場合でも、雄端子の各傾斜部に対する雌端子の第2接点部の接触状態を好適に維持することができる。それゆえ、雄端子の傾斜部の第2接点部からの離隔やめっき摩耗等といった不具合の抑制を図ることができる。しかも、雄端子挿入隙間に挿入された雄端子が、雌端子の第1弾性接触部により第2壁部側に押圧されると、雄端子の板幅方向の両側において雄端子の傾斜部が雌端子の第2接点部に押圧されて、板幅方向の内方に向かう分力(第2接点部からの反力)が発生する。その結果、雄端子の板幅方向の外力に対して雄端子の変位を阻止する力を大きくすることができ、雌端子に対する雄端子の板幅方向での変位も併せて抑制することができる。振動等による雌雄端子間の微摺動摩擦やそれによる接触抵抗値の増大も併せて抑制することができる。
【0012】
(3)前記雌端子の前記第2壁部は、前記雄端子の前記一対の傾斜部にそれぞれ対向する一対の側縁部と、前記第1方向で前記一対の側縁部の間に位置する中間部とを有し、各前記側縁部は、前記板厚方向に貫通する窓部と、前記窓部に面する前記中間部の端面において基端部が連結されて片持ち梁状に前記窓部側に突出する板ばね状の2つの前記第2弾性接触部を有し、各前記側縁部の2つの前記第2弾性接触部が、前記挿入方向において、前記第1接点部の両側に離隔した2箇所にそれぞれ配置され、各前記第2弾性接触部は、前記基端部よりも先端側が前記第1壁部に接近するように傾斜しており、各前記第2弾性接触部の前記先端側に前記第2接点部が設けられていることが好ましい。雄端子の一対の傾斜部に対向する雌端子の一対の側縁部において、中間部から片持ち梁状に突出する板ばね状の第2弾性接触部を、プレス打ち抜き加工等により簡単に設けることができる。しかも、各傾斜部に対向する各側縁部において、雄端子の挿入方向で、第1接点部の両側に離隔した2箇所にそれぞれ第2弾性接触部が配置されている。そして、各第2弾性接触部の先端側に第2接点部が設けられている。それゆえ、第1接点部を回転中心とした挿入方向の両側における上下逆向きの雄端子の変位を、いずれも第2弾性接触部の弾性変形により安定して吸収でき、雄端子の傾斜部の第2接点部からの離隔やめっき摩耗等といった不具合の抑制を図ることができる。
【0013】
加えて、各第2弾性接触部は、基端部よりも先端側が第1壁部に接近するように傾斜している。これにより、雄端子の一対の傾斜部にそれぞれ接触する第2接点部からの反力であって、第2接点部に垂直な方向に発生する反力も、雄端子の板幅方向の両側において雄端子の板幅方向の内方に向かわせることができる。これにより、第2接点部からの反力を一層有利に利用して、雄端子の板幅方向の外力に対して雄端子の変位を阻止する力を大きくできる。それゆえ、雌端子に対する雄端子の板幅方向での変位の抑制効果も向上させることができる。
【0014】
(4)前記雄端子は、板幅方向で前記一対の傾斜部の間に配置された平坦部を有し、前記雌端子の前記第1弾性接触部の前記第1接点部は、前記雄端子の前記平坦部に接触する、ことが好ましい。雄端子の板厚方向の一方側から、雄端子の平坦部に雌端子の第1接点部が押圧され、雄端子の板厚方向の他方側から、雄端子の一対の傾斜部に雄端子の挿入方向で第1接点部から離隔した複数箇所で、雌端子の第2接点部が押圧される。これにより、雄端子を雌端子の少なくとも5つの接点部により安定して保持することができ、接触抵抗の低減を図ることができる。
【0015】
本開示の雌端子は、
(5)上記(1)から上記(4)のいずれかに記載の端子ユニットにおいて用いられる雌端子である。本開示の雌端子によれば、上記(1)から上記(4)のいずれかに記載の端子ユニットにおいて用いられることから、上記(1)から上記(4)の端子ユニットが享受しうる作用効果を同様に有することができる。それゆえ、雌雄端子嵌合時における雌端子の接点からの雄端子の離隔やめっき摩耗を抑制できる。
【0016】
本開示の雄端子は、
(6)上記(2)から上記(4)のいずれかに記載の端子ユニットにおいて用いられる雄端子である。本開示の雄端子によれば、上記(2)から上記(4)のいずれかに記載の端子ユニットにおいて用いられることから、上記(2)から上記(4)の端子ユニットが享受しうる作用効果を同様に有することができる。それゆえ、雌雄端子嵌合時における雌端子の接点からの雄端子の離隔やめっき摩耗を抑制できる。
【0017】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示の端子ユニットおよび当該端子ユニットに用いられる雌端子と雄端子の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1の端子ユニット10について、
図1から
図4を用いて説明する。端子ユニット10は、雄端子12と雌端子14とを備えている。そして、雄端子12が雌端子14に挿入されて相互に接触することで、雄端子12と雌端子14とが電気的に接続されるようになっている。なお、端子ユニット10は、任意の向きで配置することができるが、以下では、上下方向,左右方向,前後方向を、図中に示す上下方向,左右方向および前後方向を基準として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0019】
<雄端子12>
雄端子12は、全体として板状をなしており、図示しない平板金具を用いて構成されている。平板金具は矩形状を有しており、所定の板幅寸法(
図2中の左右方向寸法)および板厚寸法(
図4中の上下方向寸法)を有しており、ストレートに延びている。雄端子12は、導電性を有しており、例えば銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の電気抵抗の低い金属により形成される。
【0020】
雄端子12は、後述するように、雄端子12を雌端子14の雄端子挿入隙間16に挿入した状態において、板厚方向一方側の面(上面)が雌端子14の第1壁部22と対向配置されている。また、板厚方向他方側の面(下面)が雌端子14の第2壁部24と対向配置されている。
【0021】
雄端子12において、雌端子14の雄端子挿入隙間16への挿入方向で基端側には、図示しないストレートに延びる平板部が設けられている。平板部には、例えばボルト挿通孔が設けられて機器の端子部に固定されたり、電線が固着される。
【0022】
<雌端子14>
雌端子14は、例えば
図4に示すように、内部に前後方向に開口する雄端子挿入隙間16を有する箱状の本体部18と、図示しない電線の芯線が固着される電線接続部20と、を含んで一体的に構成されている。より詳細には、雌端子14は、導電性を有しており、且つプレス加工や打抜き加工等が可能な種々の金属材料、例えば真鍮や銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を用いて形成される。
【0023】
<本体部18>
本体部18は略箱状に形成されており、上下方向に対向する第1壁部22,第2壁部24と、左右方向に対向する一対の側壁26,28と、を備えている。加えて、本体部18は、後述する第1弾性接触部32の突出先端部を前方から覆う保護壁30を備えて構成されている。
【0024】
上方に位置する第1壁部22の後端には、舌片状の第1弾性接触部32が延出して設けられており、
図4に示すように、第1壁部22の後端から本体部18内方に折り返して形成されている。第1弾性接触部32は、第1壁部22の後端から前方および軸中心に向かって斜め方向に真っ直ぐ延出した後、先端部が上方に屈曲された形状とされている。この結果、第1弾性接触部32は、雄端子12の板厚方向一方側の面(上面)に接触する第1接点部34を有している(
図4参照)。そして、第1弾性接触部32と第2壁部24間の隙間に、雄端子12の先端部が挿入可能となっている。すなわち、第1弾性接触部32は、後端側が第1壁部22に片持ち梁状に保持されて、前方側に延びるに従い、第2壁部24に向かって次第に接近しつつ突出している。第1弾性接触部32と第2壁部24間に雄端子12が挿入されることにより、第1弾性接触部32は、第2壁部24から離隔する方向に弾性変形可能となっている。この結果として第1弾性接触部32は、雄端子12を第2壁部24に向かって付勢している。
【0025】
上方に位置する第1壁部22の前端には、一対の側壁26,28間の離隔距離よりも小さい幅寸法で第2壁部24に向かって突出する矩形平板状の保護壁30が設けられている。保護壁30の突出先端部と第2壁部24間の隙間から、雄端子12の先端部が挿入可能となっている。
図4に示すように、保護壁30は第1弾性接触部32の突出先端部を前方から覆うように構成されている。これにより、第1弾性接触部32は、雄端子12の先端部が第1弾性接触部32の突出先端部に当接することによる第1弾性接触部32の異常な変形から保護されている。
【0026】
下方に位置する第2壁部24の前方側には、2つの第2弾性接触部36が、第1壁部22に向かって突出して設けられている。2つの第2弾性接触部36はそれぞれ、第1壁部22に向かって突出した後、先端部が下方に屈曲された形状とされている(
図2および
図3参照)。より詳細には、第2壁部24の前方側には、板厚方向に貫通する窓部38が設けられており、板ばね状の第2弾性接触部36が、窓部38の側壁26,28側の周縁部にそれぞれ基端部が連結されて片持ち梁状に窓部38側に突出されている。この結果、2つの第2弾性接触部36はそれぞれ、雄端子12の板厚方向他方側の面(下面)に接触する第2接点部40を有している(
図4参照)。そして、2つの第2弾性接触部36と1つの第1弾性接触部32間の隙間に、雄端子12の先端部が挿入されることにより、2つの第2弾性接触部36はいずれも、第1壁部22から離隔する方向に弾性変形可能となっている。この結果として、2つの第2弾性接触部36はいずれも、雄端子12を第1壁部22に向かって付勢する。また、2つの第2接点部40は、雄端子12の雄端子挿入隙間16への挿入方向において、第1接点部34の両側に離隔した2箇所に配置されている(
図4参照)。
【0027】
ところで、このような構造の雌端子14は、以下のような方法で製造することができる。例えば、金属平板をプレス打ち抜きした後、屈曲加工を施すことにより、第1弾性接触部32,第2弾性接触部36,保護壁30を形成する。続いて、底板に当たる第2壁部24から両側壁26,28を対向するように折り曲げ、さらに側壁26から連続した天井板に当たる第1壁部22を第2壁部24と対向するように折り曲げて、前後両端が開放された箱状の本体部18を組み上げる。
【0028】
側壁28の側縁部には、図示しない係合孔が貫設されており、第1壁部22の側縁部には、係合孔に嵌め入れられる係止部が突設されている。係止部を係合孔に嵌め入れた後、側壁28の側縁部を第1壁部22に当接するまで折り曲げることにより、側壁28と第1壁部22が係合固定される。この状態で、本体部18内に、第1弾性接触部32および2つの第2弾性接触部36が配置されている。最後に、電線接続部20に図示しない電線の芯線を固着する。
【0029】
このような構造とされた本開示の端子ユニット10によれば、雌端子14の第1接点部34と第2接点部40がそれぞれ、雄端子12の板厚方向一方側の面(上面)と他方側の面(下面)に接触する。雌端子14の第1接点部34と第2接点部40はそれぞれ、雄端子12を板厚方向の一方側の面(上面)から付勢する第1弾性接触部32と、他方側の面(下面)から付勢する第2弾性接触部36に設けられている。それゆえ、雌端子14と雄端子12が嵌合した状態で、車両振動等により雄端子12が雌端子14に対して変位するような場合であっても、第1弾性接触部32および第2弾性接触部36が弾性変形することにより雄端子12の変位に追従できる。すなわち、第1弾性接触部32および第2弾性接触部36に設けられた第1接点部34および第2接点部40を雄端子12へ接触した状態に保持することができる。しかも、2つの第2接点部40が、雄端子12の雄端子挿入隙間16への挿入方向(前後方向)において、第1接点部34の両側に離隔した2箇所に配置されている(
図4参照)。これにより、第1接点部34を回転中心として挿入方向の両側において雄端子12が上下逆向きの変位をした場合であっても、2つの第2弾性接触部36が弾性変形することにより変位を安定して吸収できる。それゆえ、雄端子12に対する追従性を向上させることができる。以上の結果、雄端子12が第2接点部40から離隔したり、雄端子12が第2接点部40に必要以上に強く押し付けられて雌端子14および雄端子12の表面のめっきが摩耗することも抑制できる。すなわち、本開示の端子ユニット10によれば、雌端子14と雄端子12の嵌合時における雌端子14との接点である第1接点部34および第2接点部40からの雄端子12の離隔やめっき摩耗を抑制できる。
【0030】
このような構造とされた本開示の雌端子14によれば、上述の端子ユニット10が享受しうる作用効果を同様に有することができる。それゆえ、雌端子14と雄端子12の嵌合時における雌端子14との接点である第1接点部34および第2接点部40からの雄端子12の離隔やめっき摩耗を抑制できる。
【0031】
<実施形態2>
図5から
図9には、本開示の実施形態2の端子ユニット42が示されている。以下の説明において、実施形態1と実質的に同一の部材及び部位は、図中に同一の符号を付して説明を省略する。
【0032】
上記実施形態1では、
図2に示すように、雄端子12は平板形状を有していたが、これに限定されない。例えば、
図6に示す実施形態2の端子ユニット42のように、雄端子44は、全体として板状をなしている点は上記実施形態1と同じであるが、板幅方向両端部分を板厚方向の一方側(上方)に屈曲させて傾斜させた点が上記実施形態1と異なる。これにより、雄端子44の挿入方向に交差する第1方向である雄端子44の板幅方向の両側には、一対の傾斜部46,46が形成されている。雄端子44の板幅方向中央部分、要するに板幅方向で一対の傾斜部46,46の間には、平坦に広がる平坦部48が設けられている。雄端子44の平坦部48に対して、雌端子50の第1弾性接触部32の第1接点部34が接触する(
図7参照)。
【0033】
雌端子50の第2壁部52は、雌端子
50と雄端子44の嵌合時において雄端子44の一対の傾斜部46,46にそれぞれ対向する一対の側縁部54,54と、第1方向である板幅方向で一対の側縁部54,54の間に位置する中間部56と、を有している(
図7参照)。
図8に示すように、各側縁部54の前方側には、板厚方向に矩形断面形状で貫通する窓部58が設けられている。窓部58には、窓部58に面する中間部56の端面59に基端部が連結されて片持ち梁状に窓部58側に向かって斜め上方に突出する板ばね状の2つの第2弾性接触部60が設けられている。さらに、各側縁部54において2つの第2弾性接触部60が、雄端子44の挿入方向である前後方向において、第1接点部34の両側に離隔した2箇所にそれぞれ配置されている(
図9参照)。なお、
図9では、雄端子44を仮想線で示している。各第2弾性接触部60は、基端部よりも先端側が第1壁部22に接近するように傾斜しており、各第2弾性接触部60の先端側に第2接点部62が設けられている(
図7参照)。この結果、各傾斜部46に対して、2つの第2弾性接触部60に設けられた2つの第2接点部62が、挿入方向において、第1接点部34の両側に離隔した2箇所で接触する。
【0034】
このような実施形態2の端子ユニット42によれば、雄端子44の板幅方向の両側には、板厚方向の一方側(上方)に屈曲させて傾斜させた一対の傾斜部46,46が形成されている。各傾斜部46に対して、雌端子50の2つの第2弾性接触部60に設けられた2つの第2接点部62が、挿入方向において、第1接点部34の両側に離隔した2箇所で接触する。また、雄端子44の平坦部48に対して、雌端子50の第1弾性接触部32の第1接点部34が接触する。これにより、雌端子50の第1接点部34を回転中心とした挿入方向の両側における上下逆向きの雄端子44の変位が生じた場合であっても、雄端子44の各傾斜部46に対する雌端子50の第2接点部62の接触状態を好適に維持することができる。それゆえ、雄端子44の傾斜部46における雌端子50の第2接点部62からの離隔やめっき摩耗等といった不具合の抑制を図ることができる。しかも、雄端子挿入隙間16に挿入された雄端子44が、雌端子50の第1弾性接触部32によって第2壁部52側に押圧されている。雄端子44の傾斜部46が雌端子50の第2接点部62に押圧されることによる反力(F1)によって、板幅方向内方に向かう分力(F3)が発生する。これにより、雄端子44の板幅方向の外力に対して雄端子44の変位を阻止する力を大きくすることができる。それゆえ、雌端子50に対する雄端子44の板幅方向での変位も併せて抑制することができるので、振動等による雌端子50と雄端子44間の微摺動摩擦やそれに伴う接触抵抗値の増大も併せて抑制することができる。
【0035】
また、雌端子50の一対の側縁部54,54において、中間部56から片持ち梁状に突出する板ばね状の第2弾性接触部60の作成は、プレス打ち抜き加工等により簡単に行うことができる。さらに、各側縁部54において、雄端子44の挿入方向(前後方向)で、第1接点部34の両側に離隔した2箇所にそれぞれ第2弾性接触部60が配置され、各第2弾性接触部60の先端側に第2接点部62が設けられている。それゆえ、第1接点部34を回転中心とした挿入方向の両側における上下逆向きの雄端子44の変位を、いずれも第2弾性接触部60の弾性変形により安定して吸収できる。これにより、雄端子44の傾斜部46における雌端子50の第2接点部62からの離隔やめっき摩耗等といった不具合の抑制を図ることができる。
【0036】
加えて、各第2弾性接触部60は、基端部よりも先端側が第1壁部22に接近するように傾斜している。これにより、雄端子44の一対の傾斜部46,46にそれぞれ接触する雌端子50の第2接点部62からの反力であって、第2接点部62に垂直な方向の反力(F1)を雄端子44の板幅方向の両側で板幅方向の内方に向かわせることができる。このように、第2接点部62からの反力を有利に利用して、雄端子44の変位を阻止する力を大きくできるので、雌端子50に対する雄端子44の板幅方向での変位の抑制効果も向上させることができる。
【0037】
また、雄端子44は、一方側(上方側)から雄端子44の平坦部48に対して雌端子50の1つの第1接点部34が押圧され、他方側(下方側)から雄端子44の一対の傾斜部46,46に対して雌端子50の4つの第2接点部62が押圧されている。これにより、雄端子44を雌端子50の合計5つの接点部34,62により安定して保持することができることから、接触抵抗の低減を図ることができる。
【0038】
このような構造とされた本開示の雌端子50および雄端子44によれば、上述の端子ユニット42が享受しうる作用効果を同様に有することができる。それゆえ、雌端子50と雄端子44の嵌合時における雌端子50との接点である第1接点部34および第2接点部62からの雄端子44の離隔やめっき摩耗を抑制できる。
【0039】
<変形例>
以上、本開示の具体例として、実施形態1および実施形態2について詳述したが、本開示はこの具体的な記載によって限定されない。本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。例えば次のような実施形態の変形例も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0040】
(1)上記実施形態では、雄端子12,44の上面に対する雌端子14,50の第1接点部34は、1つのみであったが、これに限定されない。第1接点部34が複数あってもよい。第1接点部34が、傾斜部46に接触するようになっていてもよい。
【0041】
(2)上記実施形態1では、雌端子14の第2接点部40は、雄端子12の挿入方向において第1接点部34の両側に離隔した2箇所に設けられていたが、これに限定されない。すなわち、雌端子14の第2接点部40は、雄端子12の挿入方向において第1接点部34の両側に離隔した複数箇所に設けられていればよく、各一方側に1箇所以上設けられていればよい。雄端子12の挿入方向における一方側と他方側に設けられる第2接点部40の数が相互に異なっていてもよい。また、上記実施形態2では、雌端子50の第2接点部62は、雌端子50の各側縁部54,54において、雄端子44の挿入方向において第1接点部34の両側に離隔した2箇所に設けられていたが、これに限定されない。第2接点部62は、各側縁部54,54において、雄端子44の挿入方向で第1接点部34の両側に離隔した複数箇所に設けられていれば、いずれの態様でもよい。
【0042】
(3)上記実施形態2では、雄端子44が、一対の傾斜部46,46の間に平坦部48を有していたが、平坦部48は必須なものではなく、傾斜部46同士が雄端子44の幅方向中央で連結された形状であってもよい。
【0043】
(4)上記実施形態では、第1壁部22には舌片状の第1弾性接触部32が延出して設けられていたが、これに限定されない。第1弾性接触部は、第1壁部22に設けられて第2壁部24,52に向かって突出しかつ第2壁部24,52から離隔する方向に弾性変形可能で雄端子12,44を第2壁部24,52に向かって付勢するものであればよく、例えば第1壁部22に保持されたコイルばねや板ばね等によって構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 端子ユニット(実施形態1)
12 雄端子
14 雌端子
16 雄端子挿入隙間
18 本体部
20 電線接続部
22 第1壁部
24 第2壁部
26 側壁
28 側壁
30 保護壁
32 第1弾性接触部
34 第1接点部
36 第2弾性接触部
38 窓部
40 第2接点部
42 端子ユニット(実施形態2)
44 雄端子
46 傾斜部
48 平坦部
50 雌端子
52 第2壁部
54 側縁部
56 中間部
58 窓部
59 端面
60 第2弾性接触部
62 第2接点部