(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/631 20060101AFI20240605BHJP
【FI】
H01R13/631
(21)【出願番号】P 2021087320
(22)【出願日】2021-05-25
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 康平
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-243322(JP,A)
【文献】特開2017-174749(JP,A)
【文献】特開2014-099267(JP,A)
【文献】特開2015-122182(JP,A)
【文献】特開2017-191704(JP,A)
【文献】特開2017-182994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/629
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに対して組付け位置に装着されるカバーと、
前記カバーに回動可能に支持されるレバーと、
前記ハウジングに移動可能に支持されるスライダと、を備え、
前記レバーは、ピニオンを有し、
前記スライダは、前記ピニオンと噛み合うラックを有し、
前記カバーは、ガイド部を有し、
前記ハウジングは、前記ガイド部と係合し、前記カバーを前記組付け位置に案内するガイド受け部を有し、
前記レバーは、被干渉部を有し、
前記カバーが前記組付け位置に移動する過程で前記レバーの回動方向に前記被干渉部と対向する干渉部をさらに備え
、
前記レバーは、前記ハウジングが相手側ハウジングに嵌合した状態において、前記レバーの前記回動方向に前記干渉部と対向する突起を有している、コネクタ。
【請求項2】
前記干渉部は、前記スライダに設けられている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記干渉部は、前記ラックに連続して設けられ、
前記被干渉部は、前記ピニオンによって構成される請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記突起は、前記カバーが前記スライダに対して誤った組付け姿勢をとる場合に、前記カバーが前記組付け位置に移動する過程で前記ラックと干渉する誤組付防止突起である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レバー式コネクタが開示されている。このレバー式コネクタは、コネクタハウジングと、カバーと、レバーと、スライダとを備える。レバーは、回動可能にカバーに取り付けられる。カバーは、コネクタハウジングに対して嵌合方向に組み付けられた後、嵌合方向と交差する方向に変位して、装着位置に配置される。これにより、カバーのガイド部がコネクタハウジングのガイド受け部に係合し、カバーが嵌合方向に外れ止めされる。カバーが装着位置に配置された後、レバーが回動されると、レバーのギヤがスライダのラック歯に噛み合い、スライダが嵌合方向と交差する方向に変位する。なお、レバー式コネクタは、特許文献2から特許文献4にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-99267号公報
【文献】特開2011-243322号公報
【文献】特開2017-191704号公報
【文献】特開2017-182994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のレバー式コネクタでは、カバーを装着位置に配置させてから、レバーを回動させる必要がある。しかし、カバーを装着位置に向けて移動させながらレバーを回動させるような不正な動作が行われることも考えられる。この場合、ギヤとラック歯が正しく噛み合わず、その結果、レバー式コネクタと相手側コネクタとの嵌合に不具合が生じるおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、レバーとスライダが不正に噛み合うことを抑制することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、ハウジングと、前記ハウジングに対して組付け位置に装着されるカバーと、前記カバーに回動可能に支持されるレバーと、前記ハウジングに移動可能に支持されるスライダと、を備え、前記レバーは、ピニオンを有し、前記スライダは、前記ピニオンと噛み合うラックを有し、前記カバーは、ガイド部を有し、前記ハウジングは、前記ガイド部と係合し、前記カバーを前記組付け位置に案内するガイド受け部を有し、前記レバーは、被干渉部を有し、前記カバーが前記組付け位置に移動する過程で前記レバーの回動方向に前記被干渉部と対向する干渉部をさらに備える、コネクタである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、レバーとスライダが不正に噛み合うことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1のコネクタの斜視図である。
【
図4】
図4は、カバーが仮組付け位置に配置された状態のコネクタを、ガイド部及びガイド受け部を通る仮想平面で切断した平断面図である。
【
図5】
図5は、カバーが仮組付け位置に配置された状態のコネクタを、ピニオン及びラックを通る仮想平面で切断した平断面図である。
【
図6】
図6は、ピニオンが干渉部に干渉した状態をあらわす説明図である。
【
図7】
図7は、カバーが組付け位置に配置された状態のコネクタを、ガイド部及びガイド受け部を通る仮想平面で切断した平断面図である。
【
図8】
図8は、カバーが組付け位置に配置された状態のコネクタを、ピニオン及びラックを通る仮想平面で切断した平断面図である。
【
図9】
図9は、コネクタが相手側コネクタと嵌合する前の状態を示す平断面図である。
【
図10】
図10は、コネクタが相手側コネクタと嵌合する途中の状態を示す平断面図である。
【
図11】
図11は、コネクタが相手側コネクタと嵌合した状態を示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)ハウジングと、前記ハウジングに対して組付け位置に装着されるカバーと、前記カバーに回動可能に支持されるレバーと、前記ハウジングに移動可能に支持されるスライダと、を備え、前記レバーは、ピニオンを有し、前記スライダは、前記ピニオンと噛み合うラックを有し、前記カバーは、ガイド部を有し、前記ハウジングは、前記ガイド部と係合し、前記カバーを前記組付け位置に案内するガイド受け部を有し、前記レバーは、被干渉部を有し、前記カバーが前記組付け位置に移動する過程で前記レバーの回動方向に前記被干渉部と対向する干渉部をさらに備える、コネクタである。
【0010】
この構成によれば、カバーが組付け位置に移動する過程で、レバーが回動しようとすると、レバーの被干渉部が干渉部に干渉する。よって、レバーの回動を規制しつつカバーとレバーを組付け位置へ移動させることができるため、レバーのピニオンとスライダのラックとが不正に噛み合うことを抑制することができる。
【0011】
(2)前記干渉部は、前記スライダに設けられていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、互いに噛み合うピニオンとラックのうち、ピニオンを有するレバーに被干渉部が設けられ、ラックを有するスライダに干渉部が設けられるため、被干渉部を干渉部に干渉させる構造を簡素化することができる。
【0013】
(3)前記干渉部は、前記ラックに連続して設けられ、前記被干渉部は、前記ピニオンによって構成されることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、互いに噛み合うピニオンとラックのうち、ピニオンによって被干渉部が構成され、ラックに連続して干渉部が設けられるため、被干渉部を干渉部に干渉させる構造をより簡素化することができる。
【0015】
(4)前記レバーは、前記ハウジングが相手側ハウジングに嵌合した状態において、前記レバーの前記回動方向に前記干渉部と対向する突起を有していることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、ハウジングが相手側ハウジングに嵌合した状態でレバーに外力が作用したときに、レバーが回動することを突起により規制することができる。
【0017】
(5)前記突起は、前記カバーが前記スライダに対して誤った組付け姿勢をとる場合に、前記カバーが前記組付け位置に移動する過程で前記ラックと干渉する誤組付防止突起であることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、突起が、カバーの誤組付けを防止する機能とレバーの回動を規制する機能とを兼用することができる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
<実施形態1>
図1には、実施形態1のコネクタ10が開示されている。コネクタ10は、相手側コネクタ90(
図9参照)に嵌合される。以下の説明では、コネクタ10が相手側コネクタ90に嵌合する嵌合方向を前方とする。コネクタ10が相手側コネクタ90から離脱する離脱方向を後方とする。
図2、
図4から
図11にあらわれる左右方向をそのまま左右方向とする。
図2、
図4から
図11において紙面と直交する方向を上下方向とする。図面においては、前方を「F」、後方を「B」、左方を「L」、右方を「R」、上方を「U」、下方を「D」と表記する。左右方向は、前後方向に対して交差(本実施形態では直交)し、上下方向に対して交差(本実施形態では直交)する。上下方向は、前後方向に対して交差(本実施形態では直交)し、左右方向に対して交差(本実施形態では直交)する。
【0021】
コネクタ10は、
図1及び
図2に示すように、ハウジング11と、カバー12と、レバー13と、スライダ14と、端子15と、電線16と、を備える。
【0022】
ハウジング11は、合成樹脂製であり、絶縁性を有する。ハウジング11は、
図3に示すように、ハウジング本体20と、延設部21と、ガイド受け部22と、スライダ収容室23と、を有する。
【0023】
ハウジング本体20は、
図2に示すように、端子15を収容する複数のキャビティ24を有する。端子15は、金属製であり、導電性を有する。端子15は、例えば金属板を曲げ加工等して形成される。端子15は、キャビティ24内に収容される。端子15の後端部には、電線16の芯線が電気的に接続される。電線16は、芯線を被覆で覆った構成をなす。芯線は、導電性を有し、被覆は、絶縁性を有する。電線16は、ハウジング11の後面に形成された開口から後方に導出される。
【0024】
延設部21は、
図3に示すように、ハウジング本体20の後端部の上下両側から後方に延びている。ガイド受け部22は、延設部21の後端部から上下方向内側に突出している。ガイド受け部22とハウジング本体20との間には、左右方向に沿って延びるガイド溝25が形成されている。ガイド受け部22は、左右方向に間隔を置いて複数設けられている。ガイド受け部22間には、隙間26が形成されている。ガイド受け部22及び隙間26は、それぞれ後方から見て点対称となる位置に配置されている。
【0025】
スライダ収容室23は、
図3に示すように、ハウジング本体20の上下両側に設けられている。スライダ収容室23は、
図9に示すように、左右両側に開放されている。スライダ収容室23には、左方又は右方からスライダ14が収容される。スライダ収容室23の前端部には、貫通孔27が形成されている。貫通孔27は、スライダ収容室23の前壁を前後方向に貫通している。貫通孔27には、相手側コネクタ90のカムピン92が進入可能となっている。
【0026】
カバー12は、合成樹脂製である。カバー12は、
図1に示すように、ハウジング11の後側に装着され、ハウジング11を後方から覆う形態をなす。カバー12は、
図3に示すように、カバー本体30を有する。カバー本体30は、カバー12の上下両側面、後面及び右面を構成する。カバー本体30の内側には、
図2に示すように、電線16が配置される空間が形成されており、この空間は、カバー12の前方及び左方に開放されている。ハウジング11の開口から後方に導出された電線16は、カバー本体30の前方から内側に入り込み、左方に曲げられてカバー本体30の左方に導出される。
【0027】
カバー12は、
図3に示すように、回動軸32と、規制突起33とを有する。回動軸32は、カバー本体30の上下両側に設けられる。回動軸32は、軸線を上下方向に向けて配置される。回動軸32は、カバー本体30から上下方向外側に突出している。規制突起33は、回動軸32の先端部から径方向外側に突出している。規制突起33は、本実施形態では2つ設けられている。
【0028】
カバー12は、
図3に示すように、レバー13の後述する係止部43を係止する係止受け部34を有する。係止受け部34は、カバー本体30の右端側の外面に設けられる。
【0029】
カバー12は、
図3に示すように、ガイド部35を有する。ガイド部35は、カバー本体30の前端部の上下両側に設けられている。ガイド部35は、カバー本体30から上下方向外側に突出し、左右方向に延びている。ガイド部35は、左右方向に間隔を置いて複数設けられている。左右方向に並ぶガイド部35の間には、隙間36が形成されている。ガイド部35及び隙間36は、それぞれ後方から見て、カバー12の中心を中心として点対称となる位置に配置されている。
【0030】
カバー12は、
図3に示すように、係止アーム部37を有する。係止アーム部37は、ガイド部35の後側に配置されている。係止アーム部37は、右端部がカバー本体30に固定されており、左端側が前後方向に撓み変形可能となっている。
【0031】
レバー13は、合成樹脂製である。レバー13は、
図3に示すように、上下一対の側板部40と、一対の側板部40の端部同士を連結させる連結部41と、を有する。側板部40には、側板部40を上下方向に貫通した軸孔42が形成されている。軸孔42には、カバー12の回動軸32が挿通される。これにより、レバー13が、カバー12に対して回動可能に支持される。
【0032】
レバー13は、
図2に示すように、係止部43を有する。係止部43は、連結部41に設けられる。係止部43は、カバー12の係止受け部34に係止される。これにより、レバー13の回動が規制され、レバー13が待機位置、及びコネクタ14が相手側コネクタ90に嵌合されたときの嵌合位置(
図11参照)に保持される。
【0033】
レバー13は、
図3に示すように、ピニオン44を有する。ピニオン44は、側板部40に設けられる。ピニオン44は、ピニオン歯44A,44B,44Cを有する。ピニオン歯44A,44B,44Cは、軸孔42を中心として径方向外側に放射状に突出し、軸孔42の軸周り方向に並んで配置されている。ピニオン歯44A,44B,44Cは、
図5に示すように、軸孔42を中心とし、ピニオン歯44Cを基点として、反時計回り方向にピニオン歯44B、44Aの順に配置されている。ピニオン44のピニオン歯44A,44B,44Cのうちピニオン歯44Aは、被干渉部として機能する。
【0034】
レバー13は、
図3に示すように、誤組付防止突起46を有する。誤組付防止突起46は、側板部40に設けられる。誤組付防止突起46は、ピニオン歯44A,44B,44Cの並び方向の延長線上に配置されている。より具体的には、誤組付防止突起46は、
図5に示すように、ピニオン歯44Aよりも軸孔42を中心とした反時計回り方向において、ピニオン歯44Aとの間に隙間47をあけて配置される。
【0035】
スライダ14は、合成樹脂製である。スライダ14は、
図3に示すように、上下一対で設けられる。スライダ14は、上下方向に厚さを有する板状をなしている。スライダ14は、
図5に示すように、スライダ収容室23内に収容される。これにより、スライダ14は、前後方向及び上下方向の移動が規制され、且つ左右方向の移動が可能な状態で支持される。
【0036】
スライダ14は、
図5に示すように、スライダ基部50と、スライダ基部50に形成されるカム溝51と、スライダ基部50から後方に突出するラック52と、ラック52から右方に突出する干渉部53と、を有する。
【0037】
スライダ基部50は、
図5に示すように、矩形形状をなしており、スライダ14の前端部から前後方向中央部までの部位を構成している。
【0038】
カム溝51は、スライダ基部50を上下方向に貫通して形成されている。カム溝51の一端は、
図5に示すように、スライダ14の前面に開口しており、相手側コネクタ90のカムピン92が進入可能となっている。カム溝51は、
図5に示すように、開口端から後方に向かうにつれて右方に延びている。
【0039】
ラック52は、
図5に示すように、スライダ14の後端部に設けられている。ラック52は、左右方向に沿って並んで配置されるラック歯52A,52B,52C,52Dを有する。ラック歯52A,52B,52C,52Dは、スライダ基部50から後方に突出した形態をなしている。ラック歯52A,52B,52C,52Dは、それぞれ上下方向の厚みが一定であり、先端に向けて左右方向の幅寸法が小さくなっている。ラック歯52A,52B,52C,52Dの間には、凹部54A,54B,54Cが形成されている。レバー13が回動した場合、凹部54Aには、ピニオン歯44Aが嵌まり、凹部54Bには、ピニオン歯44Bが嵌まり、凹部54Cには、ピニオン歯44Cが嵌まる。
【0040】
干渉部53は、
図5に示すように、ラック歯52A,52B,52C,52Dのうち最も右側に配置されるラック歯52Aの先端部(後端部)から右方に突出している。干渉部53の後面は、左右方向及び上下方向に沿った平坦面であり、ラック歯52Aの先端(後端)に連なっている。つまり、干渉部53の後面と、ラック歯52Aの後面は、面一となっている。前後方向において、干渉部53とスライダ基部50との間には、逃げ空間55が形成されている。逃げ空間55は、右方及び上下方向内側に開放されている。
【0041】
次の説明は、コネクタ10の作用に関する。
コネクタ10を組み立てる際、まず、ハウジング11のスライダ収容室23内に、スライダ14が収容される。スライダ14は、ハウジング11に係止されることで所定位置に弾性的に保持される。他方、レバー13は、軸孔42に回動軸32を挿通させることで、カバー12に回動可能に支持される。レバー13は、回動することでレバー13の係止部43がカバー12の係止受け部34に係止され、カバー12に対して待機位置で保持される。そして、カバー12は、ガイド部35がガイド受け部22間の隙間26を通り、ガイド受け部22がガイド部35間の隙間36を通るように、ハウジング11の後方から接近する。これにより、カバー12は、
図4及び
図5に示すように、仮組付け位置に配置される。
【0042】
仮組付け位置では、
図4に示すように、カバー12のガイド部35の後側にハウジング11のガイド受け部22が配置されていないため、カバー12は、後方に移動可能となっている。また、
図5に示すように、干渉部53は、レバー13の回動方向にピニオン歯44Aと対向する位置に配置される。言い換えると、干渉部53は、レバー13が反時計回り方向(後述する初期位置に向かう方向)に回動したときにピニオン歯44Aが移動する先に配置される。このため、仮に、レバー13とカバー12との係止状態が解除されて、レバー13が反時計周り方向に回動されたとしても、
図6に示すように、ピニオン歯44Aが干渉部53に干渉される。
【0043】
カバー12は、仮組付け位置から左方に移動すると、
図7及び
図8に示すように、組付け位置に配置される。カバー12が仮組付け位置から組付け位置に向けて移動する過程では、ハウジング11のガイド受け部22にカバー12のガイド部35が摺動し、カバー12が組付け位置に案内される。カバー12が仮組付け位置から組付け位置に向けて移動する過程では、レバー13の回動方向にピニオン歯44Aとラック歯52Aが対向して配置される位置に到達するまでの間、レバー13の回動方向にピニオン歯44Aと対向する位置に干渉部53が常に配置されるようになっている。このため、カバー12が仮組付け位置から組付け位置に配置されるまでの間、ピニオン歯44Aが、ラック歯52Aの手前(右方)に落ち込むことが防止される。しかも、干渉部53の後面と、ラック歯52Aの後面は、面一となっている。このため、干渉部53とラック歯52Aとの間に溝が形成されて、ピニオン歯44Aが嵌まるおそれもない。
【0044】
カバー12が組付け位置に向けて移動する過程及びカバー12が組付け位置に配置された状態では、
図7に示すように、カバー12のガイド部35の後側にハウジング11のガイド受け部22が配置される。このため、カバー12の後方への移動が規制される。また、組付け位置では、カバー12の係止アーム部37がハウジング11のガイド受け部22に係止された状態となる。これにより、カバー12が、組付け位置に保持される。このようにして、コネクタ10が組み立てられる。
【0045】
また、カバー12は、左右180度反転された状態であっても、ハウジング11に対して組付け可能となっている。このため、カバー12の向きを変えることで、電線16の導出方向を変えることができる。但し、カバー12の向きを変える場合、スライダ14の向きも変える必要がある。そこで、コネクタ10は、カバー12の向きとスライダ14の向きが整合しない場合、カバー12をハウジング11に組み付ける際、レバー13の誤組付防止突起46と、ラック52が干渉するように構成されている。これに対し、カバー12の向きとスライダ14の向きが整合する場合には、レバー13の誤組付防止突起46とラック52が干渉しない。また、カバー12が仮組付け位置から組付け位置に移動する際、レバー13の誤組付防止突起46は、スライダ14の逃げ空間55内に配置される。誤組付防止突起46は、カバー12が組付け位置に配置された状態(スライダ14の逃げ空間55内に配置された状態)において、干渉部53の前側に配置され、回動方向に干渉部53と接触可能に対向して配置される。よって、レバー13は、初期位置に保持される。
【0046】
コネクタ10は、相手側コネクタ90に嵌合する際、レバー13の係止部43とカバー12の係止受け部34との係止状態が解除され、レバー13が回動される。上述したようにカバー12にレバー13を組み付ける過程では、レバー13の不正な回動が干渉部53によって規制されることから、レバー13が回動されると、ピニオン44とラック52は、正しく噛み合う。レバー13は、回動されて、
図9に示すように、初期位置に配置される。レバー13の回動に伴い、スライダ14が左方に移動する。スライダ14は、レバー13が初期位置に配置された状態では、カム溝51の開口がスライダ収容室23の貫通孔27と連通する位置に配置される。
【0047】
レバー13が初期位置に配置された後、コネクタ10のハウジング11が、相手側コネクタ90の相手側ハウジング91に嵌合される。相手側ハウジング91は、カムピン92を有する。
図10に示すように、コネクタ10のカム溝51の入り口付近に、カムピン92が挿入される。この状態から、レバー13が、待機位置側(嵌合位置側)に回動されると、スライダ14が左方に移動して、カムピン92がカム溝51の奥側に引き寄せられ、その結果、ハウジング11と相手側ハウジング91との嵌合が進む。ハウジング11と相手側ハウジング91との嵌合が完了すると、
図11に示すように、レバー13の係止部43とカバー12の係止受け部34とが係止され、レバー13が待機位置(嵌合位置)に保持される。
【0048】
以上のように、コネクタ10は、カバー12が仮組付け位置に配置された状態において、干渉部53がレバー13の回動方向にピニオン44と対向する位置に配置される。このため、カバー12が仮組付け位置に配置された状態において、レバー13が回動しようとすると、レバー13のピニオン44が干渉部53に干渉する。また、コネクタ10は、カバー12が仮組付け位置から組付け位置に向けて移動する過程でも、干渉部53がレバー13の回動方向にピニオン44と対向する位置に配置される。このため、カバー12が仮組付け位置に配置されてから組付け位置に向けて移動する過程で、レバー13が回動しようとすると、レバー13のピニオン44が干渉部53に干渉される。よって、この構成によれば、レバー13の回動を規制しつつレバー13を仮組付け位置から組付け位置へ移動させることができるため、レバー13とスライダ14が不正に噛み合うことを抑制することができる。
【0049】
更に、干渉部53は、スライダ14に設けられている。この構成によれば、互いに噛み合うピニオン44とラック52のうち、ピニオン44を有するレバー13に被干渉部が設けられ、ラック52を有するスライダ14に干渉部53が設けられるため、被干渉部を干渉部53に干渉させる構造を簡素化することができる。
【0050】
更に、干渉部53は、ラック52に連続して設けられ、被干渉部は、ピニオン44によって構成されている。この構成によれば、互いに噛み合うピニオン44とラック52のうち、ピニオン44によって被干渉部が構成され、ラック52に連続して干渉部53が設けられるため、被干渉部を干渉部53に干渉させる構造をより簡素化することができる。
【0051】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
(1)上記実施形態のコネクタは、干渉部がスライダに設けられる構成であったが、干渉部がスライダ以外の部材に設けられる構成であってもよい。例えば、干渉部がハウジングに設けられる構成であってもよい。
(2)上記実施形態のコネクタは、干渉部がラックに連続して設けられる構成であったが、干渉部がラックに連続しない構成であってもよい。例えば、干渉部がスライダ基部から突出し、ラックと間隔をあけて配置される構成であってもよい。
(3)上記実施形態のコネクタは、被干渉部がピニオンによって構成されているが、被干渉部がピニオンによって構成されていなくてもよい。例えば、レバーの側板部に突起状の被干渉部を設けてもよい。
(4)上記実施形態のコネクタは、干渉部とスライド基部との間に逃げ空間が形成される構成であったが、逃げ空間が形成されない構成であってもよい。例えば、逃げ空間が埋められた構成であってもよい。
(5)上記実施形態のコネクタは、レバーに誤組付防止突起が設けられる構成であったが、誤組付防止突起が設けられない構成であってもよい。
(6)上記実施形態のコネクタは、カバーを前方に移動させて仮組付け位置に配置してから左側の組付け位置に移動させる構成であったが、前方へ移動させる動作をすることなく、初めからカバーを左右方向に移動させて組付け位置に移動させる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…コネクタ
11…ハウジング
12…カバー
13…レバー
14…スライダ
15…端子
16…電線
20…ハウジング本体
21…延設部
22…ガイド受け部
23…スライダ収容室
24…キャビティ
25…ガイド溝
26…隙間
27…貫通孔
30…カバー本体
32…回動軸
33…規制突起
34…係止受け部
35…ガイド部
36…隙間
37…係止アーム部
40…側板部
41…連結部
42…軸孔
43…係止部
44…ピニオン
44A…ピニオン歯(被干渉部)
44B…ピニオン歯
44C…ピニオン歯
46…誤組付防止突起(突起)
47…隙間
50…スライダ基部
51…カム溝
52…ラック
52A…ラック歯
52B…ラック歯
52C…ラック歯
52D…ラック歯
53…干渉部
54A…凹部
54B…凹部
54C…凹部
55…逃げ空間
90…相手側コネクタ
91…相手側ハウジング
92…カムピン