(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】短靴のヒール構造
(51)【国際特許分類】
A43B 23/02 20060101AFI20240605BHJP
A43B 23/17 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
A43B23/02 103
A43B23/02 101A
A43B23/17
(21)【出願番号】P 2023171015
(22)【出願日】2023-09-30
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】517288852
【氏名又は名称】株式会社クラフトワークス
(73)【特許権者】
【識別番号】523375375
【氏名又は名称】福建匯夏貿易有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100129986
【氏名又は名称】森田 拓生
(72)【発明者】
【氏名】付 穹
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-192839(JP,A)
【文献】国際公開第2022/130537(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3242065(JP,U)
【文献】特表2022-514060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 23/02
A43B 23/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の剛性の弾性樹脂製の成形体からなる
上芯材と、前記上芯材の所定の剛性よりも小さい剛性の弾性樹脂製の板状体からなる
下芯材と、を上下に組み合わせて構成され、鉛直方向を除く所定の傾斜方向に傾斜し
かつ湾曲したヒール壁を有する立体形状をなす組合せ芯材と、
前記
上芯材の前部、上部、及び後部を覆囲するクッション製材を有してなる
上部ステーと、
前記
上部ステー及び前記組み合わせ芯材を被覆材で全体被覆すると共に、かかと後部から両側部までを立体的に覆う立体補強部を外被着してなる
カウンターヒールと、
足形のかかと部分の底面及びその周側部を含む履き底面を有して靴底全体を構成する
ソール板とからなる、短靴のヒール構造であって、
前記
下芯材は、
板状体を平面展開した展開面視にて幅方向中央部が突出した山形形状からなる弾性板体の幅方向中央部の上辺に沿って
上芯材の下辺が連結されて組合せ芯材を構成し、
前記組合せ芯材は、
前記
下芯材の山形形状の下辺を、
ソール板の履き底面の面形状に沿って湾曲させ、前記
下芯材の山形形状の下辺のうち少なくとも左右の
接地部を、
ソール板の前記履き底面の周側部に沿った底面上に置き固定した状態で、前記
カウンターヒールの被覆材の内部に収容されることを特徴とする、短靴のヒール構造。
【請求項2】
前記
上芯材の成形体は、
両側部に対して中央部が凹状に湾曲する
ヘラ凹面を上面に有した、ヘラ状の立体成形体からなり、
この立体成形体の下辺の外面に沿って
倒立凹形状の連結部が形成され、
また、前記
下芯材の板状体は、
展開時山形形状の幅方向中央部の突出部分の内面に、前記
連結部に対応する
、側面断面視にて階段状の段差部が形成され、
上芯材の連結部を、
下芯材の段差部に沿って縫合又は/及び接着することで、
上芯材のヘラ凹面の接平面の法線がいずれも斜め上方を向き、かつ、
上芯材を覆う上部ステーが、靴の履き口のかかと部の後部を構成すると共にさらにその後方寄りの斜め上方へ延伸して突出形成されることを特徴とする、請求項1に記載の短靴のヒール構造。
【請求項3】
前記
下芯材の板状体は、前記展開状態の展開面視にて前記山形形状の下辺のうち左右の接地部22が、外側部に向かって斜め上方に傾斜した、左右対称の傾斜辺からなると共に、
前記山形形状の下辺のうち、左右の
接地部に挟まれた幅方向中央部の少なくとも一部の幅方向区間が、前記展開状態の展開面視にて
切欠き形状部をなし、
組合せ芯材として湾曲変形した立体形状の状態で、この
切り欠き形状部が、
ソール板の底面よりも上方へ離間した中空状態となることを特徴とする、請求項2に記載の短靴のヒール構造。
【請求項4】
下芯材は、展開状態の展開板面内にて、幅方向に湾曲して左右端付近まで伸びる
格子窓列が、上下2列以上で列形成された板状体からなり、
少なくとも最上列の格子窓列の左右端部の左右の各延長先に、左右の
接地部が形成されることを特徴とする、請求項1に記載の短靴のヒール構造。
【請求項5】
前記
カウンターヒールは、前記
下芯材の格子窓列の列形成位置に合わせて、外面を
湾曲状又は倒立V字状の
折り曲げラインの上辺及び下辺とする切り替え幅ラインを、その上下構成材よりも伸び率の高い延伸材で切り替え構成してなることを特徴とする、請求項4記載の短靴のヒール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は短靴のヒール構造に関する。このヒール構造を有した靴として、安全靴などの作業靴の他、スリップオンシューズ、ジョギングシューズといった、平坦なソール部を有した短靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドッフィングレッジを有する履物品として、襟エレベータ(たとえば、襟エレベータ350および450)を有する履物品は、着用者が履物品を操作するために自分の手を使用しなくても、着用者が着用し得る履物品が開示される。例えば特許文献1(特公表2022-514060)に記載の履物品は、足首の襟を前記降下状態から前記直立状態に戻すように動作可能な襟エレベータであって、内側レバーアームと、外側レバーアームと、前記内側レバーアームを前記外側レバーアームに結合し、前記足首の襟の後方部分の近くに位置する中央連結バンドと、を有する襟エレベータ;を備える。中央連結バンドの下のアッパーの部分325または425は、アッパーの他の部分よりも柔軟な1つ以上の織地の壁を含み、アッパーのより柔軟な領域は、たとえば少なくとも部分的にヒールカウンター領域にあり得る。特に、このようなアッパーのより柔軟な部分325または425は、足首の襟が降下状態に移動するときに容易に折り畳まれ得、襟エレベータがより圧縮されていない状態に戻るときに襟エレベータに一層小さな抵抗を提供し得る、とされる。
【0003】
また、たとえば、着用者の足指は、足挿入開口318または418を通じて挿入され得る一方、自分の足のアーチまたは踵は、足首の襟336または436をソール312または412に向かって下方へ圧迫するのに用いられる。このように、足首の襟336または436をソールにより近く降下状態に調整することにより、足挿入開口318または418のサイズが大きくなり得る。着用者の足が足受容空洞316または416内にスライドすると、襟エレベータ350または450は、足首の襟を降下状態(すなわち、
図3Cおよび
図4C)から直立状態(すなわち、
図3Aおよび
図4A)へ移動させて履物品を着用者の足に固定する、とされる。
【0004】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記従来の履物品は、繰り返しかかとの体重付与による変形を行うと、ヒール下部の構造体であるアウトカウンター自体の弾性復帰力が弱まり、或いは破断、圧潰ないし塑性変形して元の形状にまで自立復帰できない状態となる。また、接着部が繰り返し変形し引張外力を受けるため、耐久性に欠けて破損しやすいといった問題点があった。
【0007】
そこで本発明は、繰り返しかかとの体重付与による変形を行っても、ヒール下部の構造自体の弾性復帰力を比較的維持することができ、元の形状にまで繰り返し自立復帰できるヒール構造を提供することを課題とする。また、繰り返し変形した場合でも耐久性を維持でき、破損しにくいヒール構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく下記の解決手段を講じている。
【0009】
〔1〕本発明の短靴のヒール構造は、
所定の剛性(弾性係数)の弾性樹脂製の成形体からなる上芯材1と、前記上芯材の所定の剛性よりも小さい剛性の弾性樹脂製の板状体からなる下芯材2と、を上下に組み合わせて構成され、鉛直方向を除く所定の傾斜方向に傾斜しかつ湾曲したヒール壁を有する立体形状をなす組合せ芯材と、
前記上芯材1の前部、上部、及び後部を覆囲するクッション製材を有してなる上部ステー1HLと、
前記上部ステー1HL及び前記組み合わせ芯材を被覆材で全体被覆すると共に、かかと後部から両側部までを立体的に覆う立体補強部を外被着してなるカウンターヒール3と、
足形のかかと部分の底面及びその周側部を含む履き底面を有して靴底全体を構成するソール板MSとからなる、短靴のヒール構造であって、
前記下芯材2は、
板状体を平面展開した展開面視にて幅方向中央部が突出した山形形状からなる弾性板体の幅方向中央部の上辺に沿って上芯材1の下辺が連結されて組合せ芯材を構成し、
前記組合せ芯材は、
前記下芯材2の山形形状の下辺を、ソール板MSの履き底面の面形状に沿って湾曲させ、前記下芯材2の山形形状の下辺のうち少なくとも左右の接地部22を、ソール板MSの前記履き底面の周側部に沿った底面上に置き固定した状態で、前記カウンターヒール3の被覆材の内部に収容されることを特徴とする。
【0010】
このようにして構成された組合せ芯材は、比較的品啓しにくく且つ外力の大部分を受ける上芯材1と、弾性板状体の立体湾曲材によって弾性変形しやすい下芯材2との連結構造で構成したため、何度踏まれても損壊しにくいものとなった。すなわち、上記構成によって、組合せ芯材は、外力がかからない開放状態にて、所定の(部分錐体からなる)湾曲立体形状を維持することができる。
【0011】
(2)
前記上芯材1の成形体は、
両側部に対して中央部が凹状に湾曲するヘラ凹面1Hを上面に有した、ヘラ状の立体成形体からなり、
この立体成形体の下辺の外面に沿って倒立凹形状の連結部1Eが形成され、
また、前記下芯材2の板状体は、
展開時山形形状の幅方向中央部の突出部分の内面に、前記連結部1Eに対応する、側面断面視にて階段状の段差部21Dが形成され、
上芯材1の連結部1Eを、下芯材2の段差部21Dに沿って縫合又は/及び接着することで、
上芯材1のヘラ凹面1Hの接平面の法線がいずれも斜め上方を向き、かつ、
上芯材1を覆う上部ステー1HLが、靴の履き口のかかと部の後部を構成すると共にさらにその後方寄りの斜め上方へ延伸して突出形成されることを特徴とする。
【0012】
このような上芯材1を内部に有した上部ステー1HLの構造を有することで、使用者のかかとによって踏まれた圧潰状態では、少なくとも前記板状芯材2の左右接地部22よりも上部の弾性板体が弾性変形すると共に、その際の弾性復帰力によって、上芯材1のヘラ凹面が斜め上方を配向して使用者のかかとを靴内部へすべり誘導するような、誘導を促す力を生じる。そして、前記圧潰状態が弾性復帰した後の開放状態では、組合せ芯材の弾性復帰力によって、上部ステー1Hが斜め上方に延伸し且つ使用者のかかとの上部を覆う縦方向よりの傾斜状態に自立復帰する。
【0013】
(3)前記短靴のヒール構造において、
前記下芯材2の板状体は、前記展開状態の展開面視にて前記山形形状の下辺のうち左右の接地部22が、外側部に向かって斜め上方に傾斜した、左右対称の傾斜辺からなると共に、
前記山形形状の下辺のうち、左右の接地部22に挟まれた幅方向中央部の少なくとも一部の幅方向区間が、前記展開状態の展開面視にて切欠き形状部22Dをなし、
組合せ芯材として湾曲変形した立体形状の状態で、この切り欠き形状部22Dが、ソール板MSの底面よりも上方へ離間した中空状態となることを特徴とする。
【0014】
中央部を非固定部とすることで変形時の潰れ領域となり、埋め込み固定される左右固定部への引張外力の発生を低減することができる。
【0015】
(4)前記いずれか記載の短靴のヒール構造において、
下部の変形芯材2は、展開状態の展開板面内にて、幅方向に湾曲して左右端付近まで伸びる格子窓列231,232が、上下2列以上で列形成された板状体からなり、
少なくとも最上列の格子窓列の左右端部の左右の各延長先に、左右の接地部22が形成されることを特徴とする。
【0016】
このように構成したことで、圧潰縮時には、複数列の格子窓が変形代となって弾性変形する。格子窓が扇状の複数列からなり、板状パーツが斜め傾斜側面を有して斜めに立固定されるため、元の角度の弾性復帰面を形成しやすい。
【0017】
(5)カウンターヒール3は、前記下芯材2の格子窓列の列形成位置に合わせて、外面を湾曲状又は倒立V字状の折り曲げライン231BL,232BLの上辺及び下辺とする切り替え幅ラインを、その上下構成材よりも伸び率の高い延伸材で切り替え構成してなることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例1の端靴のヒール部分の内部形状を示す、内部透過の拡大斜視図
【
図2】
図1の開放状態(a)及び変形状態(b)の平面図
【
図3】2段階の圧縮状態(b1)(b2)の内部形状を示す、内部透過の拡大斜視図
【
図4】上芯材1,下芯材2の分解状態の内面構成図。
【
図6】短靴の使用状態(a)(b1)(b2)(c)を示す、側面説明図
【0019】
上記手段を講じることで、繰り返しかかとの体重付与による変形を行っても、ヒール下部の構造自体の弾性復帰力を比較的維持することができ、元の形状にまで繰り返し自立復帰できるヒール構造を提供するものとなった。また、繰り返し変形した場合でも耐久性を維持でき、破損しにくいヒール構造を提供するものとなった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態例について
図1~6とともに説明する。
【0021】
〔1〕本発明の短靴のヒール構造は、
所定の剛性(弾性係数)の弾性樹脂製の成形体からなる上芯材1と、前記上芯材の所定の剛性よりも小さい剛性の弾性樹脂製の板状体からなる下芯材2と、を上下に組み合わせて構成され、鉛直方向を除く所定の傾斜方向に傾斜して部分円筒状又は部分円錐状に湾曲したヒール壁を有する立体形状をなす組合せ芯材と、
前記上芯材1の前部、上部、及び後部を覆囲するクッション製材を有してなる上部ステー1HLと、
前記上部ステー1HL及び前記組み合わせ芯材を被覆材で全体被覆すると共に、かかと後部から両側部までを立体的に覆う立体補強部を外被着してなるカウンターヒール3と、
足形のかかと部分の底面及びその周側部を含む履き底面を有して靴底全体を構成するソール板MSとからなる、短靴のヒール構造であって、
前記下芯材2は、
板状体を平面展開した展開面視にて幅方向中央部が突出した山形形状からなる弾性板体の幅方向中央部の上辺に沿って上芯材1の下辺が連結されて組合せ芯材を構成し、
前記組合せ芯材は、
前記下芯材2の山形形状の下辺を、ソール板MSの履き底面の面形状に沿って湾曲させ、前記下芯材2の山形形状の下辺のうち少なくとも左右の接地部22を、ソール板MSの前記履き底面の周側部に沿った底面上に置き固定した状態で、前記カウンターヒール3の被覆材の内部に収容されることを特徴とする。
【0022】
このようにして構成された組合せ芯材は、比較的品啓しにくく且つ外力の大部分を受ける上芯材1と、弾性板状体の立体湾曲材によって弾性変形しやすい下芯材2との連結構造で構成したため、何度踏まれても損壊しにくいものとなった。
【0023】
より具体的には、ヒール壁及びその上部の芯部を構成する弾性樹脂製の芯材を、剛性の比較的大きい上芯材1と、剛性の比較的小さい下芯材2と、を連結して組み合わせ構成してなることで、使用者のかかとで踏み潰すように靴を履く際、上芯材が踏み潰し時の接触部の受け体の役割を主として果たし、かつ、その下部に連結された下芯材が弾性変形体としての役割を主として果たすことで、使用者のかかとを靴内に収めるのを促す形状に弾性変形する。
【0024】
ここで、下芯材2は、弾性材からなる板状体を湾曲させて立体形状に弾性変形させ、弾性反力による内部応力を有した状態でカウンターヒール3の被服材内に収容されている。また、この立体形状は、鉛直方向を除く所定の傾斜方向に傾斜して部分円筒状又は部分円錐状に湾曲したヒール壁を有する形状からなり、全体が平面ではなく部分円筒状又は部分円錐状に連続湾曲してなる。さらに、下芯材の板状体の山形形状の上辺に沿って、より大きい剛性の上芯材の下辺を連結させてなる。これらによって、踏み潰し外力によって弾性変形した場合でも、元の立体形状に弾性復帰しやすく、弾性復帰後は元の立体形状を維持しやすいものとなっている。
【0025】
すなわち、上記構成によって、組合せ芯材は、外力がかからない開放状態にて、所定の(部分錐体からなる)湾曲立体形状を維持することができる。
【0026】
(2)
前記上芯材1の成形体は、
両側部に対して中央部が凹状に湾曲するヘラ凹面1Hを上面に有した、ヘラ状の立体成形体からなり、
この立体成形体の下辺の外面に沿って倒立凹形状の連結部1Eが形成され、
また、前記下芯材2の板状体は、
展開時山形形状の幅方向中央部の突出部分の内面に、前記連結部1Eに対応する、側面断面視にて階段状の段差部21Dが形成され、
上芯材1の連結部1Eを、下芯材2の段差部21Dに沿って縫合又は/及び接着することで、
上芯材1のヘラ凹面1Hの法線がいずれも斜め上方を向き、かつ、
上芯材1を覆う上部ステー1HLが、靴の履き口のかかと部の後部を構成すると共にさらにその後方寄りの斜め上方へ延伸して突出形成されることを特徴とする。
【0027】
このような上芯材1を内部に有した上部ステー1HLの構造を有することで、使用者のかかとによって踏まれた圧潰状態では、少なくとも前記板状芯材2の左右接地部22よりも上部の弾性板体が弾性変形すると共に、その際の弾性復帰力によって、上芯材1のヘラ凹面が斜め上方を配向して使用者のかかとを靴内部へすべり誘導するような、誘導を促す力を生じる。そして、前記圧潰状態が弾性復帰した後の開放状態では、組合せ芯材の弾性復帰力によって、上部ステー1Hが斜め上方に延伸し且つ使用者のかかとの上部を覆う縦方向よりの傾斜状態に自立復帰する。
【0028】
(3)前記短靴のヒール構造において、
前記下芯材2の板状体は、前記展開状態の展開面視にて前記山形形状の下辺のうち左右の接地部22が、外側部に向かって斜め上方に傾斜した、左右対称の傾斜辺からなると共に、
前記山形形状の下辺のうち、左右の接地部22に挟まれた幅方向中央部の少なくとも一部の幅方向区間が、前記展開状態の展開面視にて切欠き形状部22Dをなし、
組合せ芯材として湾曲変形した立体形状の状態で、この切り欠き形状部22Dが、ソール板MSの底面よりも上方へ離間した中空状態となることを特徴とする。
【0029】
前記左右接地部22が、前記山形形状の下辺のうち、幅方向中央部を除く範囲にてソール板MS上面に接地した状態で、幅方向中央の切り欠き形状部22Dは、ソール板MSに接触しないですき間を開けた非接地部からなる。この非接地部が、下芯材2の弾性変形時の変形代となって凹み形状に弾性変形し、非接地部の左右の接地部22の内部応力をきっかけとして弾性復帰する。
【0030】
すなわち、この切り欠き形状部22Dは開放時には中央部が後方へ突出するように凸状湾曲してなるところ、使用者のかかとによって踏まれた場合には、前記板状芯材2の下辺のうち、左右接地部22を除く幅方向中央部が変形時の潰れ領域となり、上部が凹状の湾曲状態に裏返るように徐々に弾性変形する(
図3)。
【0031】
前記圧潰状態が解除された開放状態では、湾曲状に立体形状に弾性変形されると共にかかと形状の側面に沿って設置収容された左右の接地部22を起点とした弾性復帰力によって前記立体形状に自立復帰する。
【0032】
中央部を非固定部とすることで変形時の潰れ領域となり、埋め込み固定される左右固定部への引張外力の発生を低減することができる。
【0033】
後述の実施例では、山形形状の下辺の左右接地部22は展開平面視にて斜め方向の直線をなし、ソール板MS上面のかかと形状の内外側部に沿って形成した埋め込み溝内へ、湾曲状に埋め込み固定される。
【0034】
左右接地部22を除く山形形状の下辺中央部は切欠き部22Dをなす。立体形状において、切欠き部22Dはソール板と非接触の中空状態をなす。
【0035】
(4)前記いずれか記載の短靴のヒール構造において、
下部の変形芯材2は、展開状態の展開板面内にて、幅方向に湾曲して左右端付近まで伸びる格子窓列231,232が、上下2列以上で列形成された板状体からなり、
少なくとも最上列の格子窓列の左右端部の左右の各延長先に、左右の接地部22が形成されることを特徴とする。
【0036】
実施例では、中央が突出する山形「ヘ」の字線状の第一、第二格子窓列231、232,及び、中央下部の横長だ円状の格子窓列233からなる全3列の格子窓列が板状面内に形成されると共に、最上列と第2列の各格子窓列231,232の左右端部の左右の各延長先に、直線状にカットされた傾斜辺からなる左右の接地部22が形成される。そして、横長だ円状の第三格子窓列233は、第一、第二格子窓列231、232よりも半分以下の幅で中央下部に小区画形成されると共に、この第三格子窓列233の下部であって板状体の下辺の中央区画の下辺中央部に前記切欠き部22Dが形成される。
【0037】
このように構成したことで、圧潰縮時には、複数列の格子窓が変形代となって弾性変形する。格子窓が扇状の複数列からなり、板状パーツが斜め傾斜側面を有して斜めに立固定されるため、元の角度の弾性復帰面を形成しやすい。
【0038】
板状体下辺中央22Dが中空に浮いた非接着区間に設定され、板状パーツの中央部の可変両端22が底板に埋め込み固定されて、底板上に、底板の中央寄りに向かって斜め傾斜した円錐側面を有した向きで立設固定されてなる。
【0039】
(5)カウンターヒール3は、前記下芯材2の格子窓列の列形成位置に合わせて、外面を湾曲又は倒立V字状の折り曲げライン231BL,232BLの上辺及び下辺とする切り替え幅ラインを、その上下構成材よりも伸び率の高い延伸材で切り替え構成してなることを特徴とする。
【0040】
前記カウンターヒールは、剛性の低い柔軟布で構成した切り替え幅ラインを、折り曲げライン231BL,232BLに沿って形成してなる。折り曲げライン231BL,232BLで折り曲げ変形することで、カウンターヒールの切り替え幅ライン上辺、下辺が折り曲がって潰れる。
【0041】
前記いずれか記載の短靴のヒール構造において、
上ヘラ芯材1は下部の変形芯材2よりも厚手の高剛性体の凹湾曲状の立体成形体からなり、立体成形体の凹湾曲面が斜め上を向いた状態で、変形芯材の上部の切り欠きに嵌入縫合される(
図4a)。
【0042】
踏み変形した状態では、下部の芯材が圧縮変形することで、上部の立体成形体の凹湾曲面が水平よりの上方を向いた状態に方向を変え、かかとの踏み代となることを特徴とする。
【0043】
その他、本発明は上記の実施形態に限らず種々の変形が可能である。要素ごとの組合せ、一部要素の抽出、部品ごとへの分解構成或いは一体構成も可能である。
【要約】
【課題】繰り返しかかとの体重付与による変形を行っても、ヒール下部の構造自体の弾性復帰力を比較的維持することができ、元の形状にまで繰り返し自立復帰できるヒール構造を提供する。
【解決手段】所定の剛性の弾性樹脂製の成形体からなる上芯材1と、前記上芯材の所定の剛性よりも小さい剛性の弾性樹脂製の板状体からなる下芯材2と、を上下に組み合わせて構成され、鉛直方向を除く所定の傾斜方向に傾斜して部分円筒状又は部分円錐状に湾曲したヒール壁を有する立体形状をなす組合せ芯材と、前記上芯材1の前部、上部、及び後部を覆囲するクッション製材を有してなる上部ステー1HLと、前記上部ステー1HL及び前記組み合わせ芯材を被覆材で全体被覆すると共に、かかと後部から両側部までを立体的に覆う立体補強部を外被着してなるカウンターヒール3と、足形のかかと部分の底面及びその周側部を含む履き底面を有して靴底全体を構成するソール板MSとからなる、短靴のヒール構造。
【選択図】
図6