(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】電力変換装置およびその制御方法ならびに交流電車用電源回路
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20240605BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240605BHJP
【FI】
H02M7/12 Q
H02M7/48 E
H02M7/12 F
(21)【出願番号】P 2021134675
(22)【出願日】2021-08-20
【審査請求日】2023-10-18
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業、「SiCスイッチングモジュールの高性能化とその応用開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】521344607
【氏名又は名称】ネクスファイ・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舟木 剛
(72)【発明者】
【氏名】福田 典子
(72)【発明者】
【氏名】中村 孝
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-508798(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012146(WO,A1)
【文献】特開2011-041339(JP,A)
【文献】特開2016-135087(JP,A)
【文献】米国特許第05734258(US,A)
【文献】特開2016-032350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電位が与えられる基準ノードと、
前記基準電位に対して正および負に変化する交流電圧が入力されるか、または前記交流電圧を出力する交流ノードと、
前記基準電位に対して正の直流電圧が入力されるか、または前記直流電圧を出力する直流ノードと、
インダクタと、
前記インダクタの第1端と前記交流ノードとの間に接続された第1スイッチと、
前記インダクタの前記第1端と前記基準ノードとの間に接続された第2スイッチと、
前記インダクタの第2端と前記直流ノードとの間に接続された第3スイッチと、
前記インダクタの前記第2端と前記基準ノードとの間に接続された第4スイッチと、
前記インダクタの前記第1端と前記直流ノードとの間に接続された第5スイッチと、
前記交流電圧の瞬時値と前記直流電圧と前記基準電位との間の大小関係に基づいて、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、前記第3スイッチ、前記第4スイッチ、および前記第5スイッチの開閉を制御する制御部とを備える、電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記交流電圧の瞬時値が前記直流電圧より高い第1期間において、前記第3スイッチを閉状態に制御し、前記第4スイッチおよび前記第5スイッチを開状態に制御し、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチを相補的に開閉を繰り返すように制御し、
前記制御部は、前記交流電圧の瞬時値が前記直流電圧よりも低くかつ前記基準電位よりも高い第2期間において、前記第1スイッチを閉状態に制御し、前記第2スイッチおよび前記第5スイッチを開状態に制御し、前記第3スイッチおよび前記第4スイッチを相補的に開閉を繰り返すように制御し、
前記制御部は、前記交流電圧の瞬時値が前記基準電位よりも低い第3期間において、前記第4スイッチを閉状態に制御し、前記第2スイッチおよび前記第3スイッチを開状態に制御し、前記第1スイッチおよび前記第5スイッチを相補的に開閉を繰り返すように制御する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記インダクタの前記第2端と前記交流ノードとの間に接続された第6スイッチをさらに備え、
前記制御部は、前記交流電圧の瞬時値と前記直流電圧と前記基準電位との間の大小関係に基づいて、前記第6スイッチの開閉をさらに制御する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記交流電圧の瞬時値が前記直流電圧より高い第1期間において、前記第3スイッチを閉状態に制御し、前記第4スイッチ、前記第5スイッチおよび前記第6スイッチを開状態に制御し、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチを相補的に開閉を繰り返すように制御し、
前記制御部は、前記交流電圧の瞬時値が前記直流電圧よりも低くかつ前記基準電位よりも高い第2期間において、前記第1スイッチを閉状態に制御し、前記第2スイッチ、前記第5スイッチおよび前記第6スイッチを開状態に制御し、前記第3スイッチおよび前記第4スイッチを相補的に開閉を繰り返すように制御し、
前記制御部は、前記交流電圧の瞬時値が前記基準電位よりも低い第3期間において、前記第4スイッチを閉状態に制御し、前記第2スイッチ、前記第3スイッチおよび前記第6スイッチを開状態に制御し、前記第1スイッチおよび前記第5スイッチを相補的に開閉を繰り返すように制御するか、または、前記第2スイッチを閉状態に制御し、前記第1スイッチ、前記第4スイッチ、前記第5スイッチを開状態に制御し、前記第3スイッチおよび前記第6スイッチを相補的に開閉を繰り返すように制御する、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
基準電位が与えられる基準ノードと、
前記基準電位に対して正および負に変化する交流電圧が入力されるか、または前記交流電圧を出力する交流ノードと、
前記基準電位に対して正の直流電圧が入力されるか、または前記直流電圧を出力する直流ノードと、
インダクタと、
前記インダクタの第1端と前記交流ノードとの間に接続された第1スイッチと、
前記インダクタの前記第1端と前記基準ノードとの間に接続された第2スイッチと、
前記インダクタの第2端と前記直流ノードとの間に接続された第3スイッチと、
前記インダクタの前記第2端と前記基準ノードとの間に接続された第4スイッチと、
前記インダクタの前記第2端と前記交流ノードとの間に接続された第5スイッチと、
前記交流電圧の瞬時値と前記直流電圧と前記基準電位との間の大小関係に基づいて、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、前記第3スイッチ、前記第4スイッチ、および前記第5スイッチの開閉を制御する制御部とを備える、電力変換装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記交流電圧の瞬時値が前記直流電圧より高い第1期間において、前記第3スイッチを閉状態に制御し、前記第4スイッチおよび前記第5スイッチを開状態に制御し、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチを相補的に開閉を繰り返すように制御し、
前記制御部は、前記交流電圧の瞬時値が前記直流電圧よりも低くかつ前記基準電位よりも高い第2期間において、前記第1スイッチを閉状態に制御し、前記第2スイッチおよび前記第5スイッチを開状態に制御し、前記第3スイッチおよび前記第4スイッチを相補的に開閉を繰り返すように制御し、
前記制御部は、前記交流電圧の瞬時値が前記基準電位よりも低い第3期間において、前記第2スイッチを閉状態に制御し、前記第1スイッチおよび前記第4スイッチを開状態に制御し、前記第3スイッチおよび前記第5スイッチを相補的に開閉を繰り返すように制御する、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記交流ノードを流れる交流電流が前記交流電圧に比例するように、相補的に開閉を繰り返す2個のスイッチの開閉タイミングを制御する、請求項2、4、および6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記交流ノードが架線に接続され、前記基準ノードがレールに接続される、請求項1~7のいずれか1項に記載の電力変換装置と、
前記電力変換装置から出力される前記直流電圧を3相交流電圧に変換し、前記変換された3相交流電圧をモータに供給するインバータとを備えた交流電車用電源回路。
【請求項9】
電力変換装置の制御方法であって、
前記電力変換装置は、
基準電位が与えられる基準ノードと、
前記基準電位に対して正および負に変化する交流電圧が入力されるか、または前記交流電圧を出力する交流ノードと、
前記基準電位に対して正の直流電圧が入力されるか、または前記直流電圧を出力する直流ノードと、
インダクタと、
前記インダクタの第1端および第2端と、前記基準ノード、前記交流ノードおよび前記直流ノードとの間の接続を切り替える切替回路とを含み、
前記制御方法は、
現時点が、前記交流電圧の瞬時値が前記直流電圧より高い第1期間にあるか、前記交流電圧の瞬時値が前記直流電圧よりも低くかつ前記基準電位よりも高い第2期間にあるか、前記交流電圧の瞬時値が前記基準電位よりも低い第3期間にあるかを判定するステップと、
現時点が前記第1期間にある場合に、前記インダクタの前記第1端を前記交流ノードと前記基準ノードとに交互に接続し、前記インダクタの前記第2端を前記直流ノードに接続するステップと、
現時点が前記第2期間にある場合に、前記インダクタの前記第1端を前記交流ノードに接続し、前記インダクタの前記第2端を前記直流ノードと前記基準ノードとに交互に接続するステップと、
現時点が前記第3期間にある場合に、前記インダクタの前記第1端を前記交流ノードと前記直流ノードとに交互に接続し、前記インダクタの前記第2端を前記基準ノードに接続するか、または前記インダクタの前記第1端を前記基準ノードに接続し、前記インダクタの前記第2端を前記交流ノードと前記直流ノードとに交互に接続するステップとを備える、電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置およびその制御方法ならびに交流電車用電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
入力交流電圧が全波整流された全波整流電圧と出力直流電圧との大小関係に基づいて動作モードを切り替えるPFC(Power Factor Correction:力率改善)コンバータが知られている。たとえば、特開2016-032350号公報(特許文献1)に開示された電力変換装置は、全波整流電圧が出力直流電圧よりも小さいときに昇圧モードで動作し、全波整流電圧が出力直流電圧よりも大きいときに降圧モードで動作し、全波整流電圧が出力直流電圧に等しいときに昇降圧モードで動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献の電力変換装置では、全波整流用のブリッジ回路が設けられているために、損失が比較的大きく、双方向電力潮流制御ができない。本開示の目的の一つは、交流電力と直流電力との間の双方向変換が可能なブリッジレスの電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態の電力変換装置は、基準ノードと、交流ノードと、直流ノードと、インダクタと、第1スイッチと、第2スイッチと、第3スイッチと、第4スイッチと、第5スイッチと、制御部とを備える。基準ノードには、基準電位が与えられる。交流ノードは、基準電位に対して正および負に変化する交流電圧が入力されるか、または当該交流電圧を出力する。直流ノードは、基準電位に対して正の直流電圧が入力されるか、または当該直流電圧を出力する。第1スイッチは、インダクタの第1端と交流ノードとの間に接続される。第2スイッチは、インダクタの第1端と基準ノードとの間に接続される。第3スイッチは、インダクタの第2端と直流ノードとの間に接続される。第4スイッチは、インダクタの第2端と基準ノードとの間に接続される。第5スイッチは、インダクタの第1端と直流ノードとの間に接続される。もしくは、第5スイッチは、インダクタの第2端と交流ノードとの間に接続されていてもよい。制御部は、上記交流電圧の瞬時値と上記直流電圧と基準電位との間の大小関係に基づいて、第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチ、第4スイッチ、および第5スイッチの開閉を制御する。
【発明の効果】
【0006】
上記のブリッジレス電力変換装置によれば、上記交流電圧の瞬時値と上記直流電圧と基準電位との間の大小関係に基づいて、第1~第5スイッチの開閉を制御することによって、交流電力と直流電力との間の双方向変換が可能になる。さらに、PFC制御および高調波除去用のローパスフィルタ(平滑用コンデンサなど)と組み合わせることにより、原理的には力率0.999およびTHD(全高調波歪み:Total Harmonic Distortion)2~3%の電力変換が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の回路方式を有する電力変換装置の構成図である。
【
図2】
図1の電力変換装置の動作を説明するための図である。
【
図3】
図1の第1から第5スイッチの具体的構成を示す回路図である。
【
図4】第2の回路方式を有する電力変換装置の構成図である。
【
図5】
図4の電力変換装置の動作を説明するための図である。
【
図6】第3の回路方式を有する電力変換装置の構成図である。
【
図7】
図6の電力変換装置の動作を説明するための図である。
【
図8】
図1、
図4、および
図6に示す電力変換装置の切替回路の制御方法を示すフローチャートである。
【
図9】電力変換装置の力行動作におけるシミュレーション結果を示す図である。
【
図10】電力変換装置の回生動作におけるシミュレーション結果を示す図である。
【
図11】交流電車用電源回路の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、以下の説明において、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰り返さない場合がある。
【0009】
<実施の形態1>
実施の形態1では、双方向ブッリッジレスPFCコンバータとして3つの回路方式を提案する。さらに、力行動作および回生動作の場合のシミュレーション結果を示す。本開示では、交流電力を直流電力に変換する順変換の場合を力行動作と称し、直流電力を交流電力に変換する逆変換の場合を回生動作と称する。
【0010】
[回路方式1]
(構成)
図1は、第1の回路方式を有する電力変換装置の構成図である。
図1に示すように、電力変換装置3Aは、交流ノード(node)11,12と、直流ノード13,14と、インダクタ16と、第1から第5スイッチSa~Seとを備える。
【0011】
交流ノード11と12の間に単相の交流電源1が接続される。直流ノード13と14との間には、力行動作の場合に負荷が接続され、回生動作の場合には等価的な直流電源2が接続される。交流ノード12と直流ノード14とは配線によって直結され、基準電位として接地電位(0V)が与えられる。
【0012】
以下、基準電位が与えられる交流ノード12と直流ノード14とを総称して基準ノード15と称する。この場合、交流ノード11には基準電位に対して正および負に変化する交流電圧V1が入力されるか(力行動作)、または交流ノード11は当該交流電圧V1を出力する(回生動作)。直流ノード13は基準電位に対して正の直流電圧V2を出力するか(力行動作)、または直流ノード13には当該直流電圧V2が入力される(回生動作)。
【0013】
スイッチSaは、インダクタ16の第1端17と交流ノード11との間に接続される。スイッチSbは、インダクタ16の第1端17と基準ノード15との間に接続される。スイッチScは、インダクタ16の第2端18と直流ノード13との間に接続される。スイッチSdは、インダクタ16の第2端18と基準ノード15との間に接続される。スイッチSeは、インダクタ16の第1端17と直流ノード13との間に接続される。
【0014】
スイッチSa~Seは、たとえば、高電圧を高速にスイッチングできるパワー半導体素子を用いて構成される。
図3を参照して後述するように、スイッチSa~Seは、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)を用いて構成してもよいし、MESFET(Metal Semiconductor FET)、バイポーラトランジスタ、またはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などを用いてもよい。バイポーラトランジスタおよびIGBTなどの場合には、各パワー半導体素子はそれぞれに逆並列に接続された環流ダイオードとともに用いられる。また、これらのパワー半導体素子の材料として、Si、SiC、またはGaNなどを用いてもよい。
【0015】
電力変換装置3Aは、さらに、第1および第2の電圧検出器21,22と、電流検出器23とを備える。電圧検出器21は、交流ノード11と12との間の交流電圧V1の瞬時値を検出する。電圧検出器22は、直流ノード13と14との間の直流電圧V2を検出する。電流検出器23は、インダクタ16に流れるインダクタ電流ILを検出する。電力変換装置3Aは、さらに、交流ノード11に流れる交流電流I1を検出する電流検出器24、および直流ノード13に流れる直流電流I2を検出する電流検出器25を備えていてもよい。
【0016】
また、
図1に示すように、交流ノード11と12との間および直流ノード13と14との間に、それぞれ平滑用コンデンサ31,32を設けるのが望ましい。これにより、高調波が除去できるので、PFC制御の際に力率をさらに高めることができる。
【0017】
電力変換装置3Aは、さらに、電圧検出器21,22と電流検出器23~25との各検出値に基づいて、スイッチSa~Seのスイッチングを制御する制御部20を備える。制御部20は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリを含むマイクロコンピュータに基づいて構成されていてもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)によって構成されていてもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用の回路によって構成されていてもよい。もしくは、制御部20は、上記の2つ以上の組み合わせによって構成されていてもよい。
【0018】
(動作)
図2は、
図1の電力変換装置の動作を説明するための図である。
図2では、交流電圧V1および直流電圧V2の時間波形と、それに対応するスイッチSa~Seの開閉動作が概念的に示されている。制御部20は、交流電圧V1の瞬時値、直流電圧V2、および基準電位(0V)の大小関係に基づいて、スイッチSa~Seの開閉を制御する。具体的に、電力変換装置3Aは以下の3つの動作モードを有する。
【0019】
なお、以下の説明において、インダクタ16の第1端17から第2端18に流れるインダクタ電流I
Lの方向を正方向とし、逆方向を負方向とする。また、
図2において「co」は相補動作を意味する。後述する
図5および
図7においても同様である。
【0020】
(1)第1動作モード
交流電圧V1の瞬時値が直流電圧V2より高い第1期間(時刻t2からt3の期間)において、制御部20は、スイッチScを閉状態に制御し、スイッチSd,Seを開状態に制御する。さらに、制御部20は、スイッチSa,Sbのうち一方が開で他方が閉となるように相補的に開閉を繰り返させる(
図2で相補動作coと記載)。
【0021】
したがって、電力変換装置3Aは、力行動作の場合には降圧チョッパとして動作する。この場合、スイッチSaが閉でスイッチSbが開のとき、電流は、交流電源1、スイッチSa、インダクタ16、スイッチSc、負荷(直流電源2)、交流電源1の順に流れる。逆に、スイッチSaが開でスイッチSbが閉のとき、電流は、インダクタ16、スイッチSc、負荷(直流電源2)、スイッチSb、インダクタ16の順に流れる。このように、インダクタ電流ILは正方向に流れる。
【0022】
一方、電力変換装置3Aは、回生動作の場合には昇圧チョッパとして動作する。この場合、スイッチSaが閉でスイッチSbが開のとき、電流は、直流電源2、スイッチSc、インダクタ16、スイッチSa、交流電源1、基準ノード15、直流電源2の順に流れる。逆に、スイッチSaが開でスイッチSbが閉のとき、電流は、直流電源2、スイッチSc、インダクタ16、スイッチSb、直流電源2の順に流れる。このように、インダクタ電流ILは負方向に流れる。
【0023】
(2)第2動作モード
交流電圧V1の瞬時値が直流電圧V2より低くかつ基準電位(0V)よりも高い第2期間(時刻t1からt2および時刻t3からt4の期間)において、制御部20は、スイッチSaを閉状態に制御し、スイッチSb,Seを開状態に制御し、スイッチSc,Sdを相補的に開閉を繰り返すように制御する。
【0024】
したがって、電力変換装置3Aは、力行動作の場合には昇圧チョッパとして動作する。この場合、スイッチScが閉でスイッチSdが開のとき、電流は、交流電源1、スイッチSa、インダクタ16、スイッチSc、負荷(直流電源2)、交流電源1の順に流れる。逆に、スイッチScが開でスイッチSdが閉のとき、電流は、交流電源1、スイッチSa、インダクタ16、スイッチSd、交流電源1の順に流れる。このように、インダクタ電流ILは正方向に流れる。
【0025】
一方、電力変換装置3Aは、回生動作の場合には降圧チョッパとして動作する。この場合、スイッチScが閉でスイッチSdが開のとき、電流は、直流電源2、スイッチSc、インダクタ16、スイッチSa、交流電源1、基準ノード15、直流電源2の順に流れる。逆に、スイッチScが開でスイッチSdが閉のとき、電流は、インダクタ16、スイッチSa、交流電源1、スイッチSd、インダクタ16の順に流れる。このように、インダクタ電流ILは負方向に流れる。
【0026】
(3)第3動作モード
交流電圧V1の瞬時値が基準電位(0V)よりも低い負電圧になる第3期間(時刻t4からt5の期間)において、制御部20は、スイッチSdを閉状態に制御し、スイッチSb,Scを開状態に制御し、スイッチSa,Seを相補的に開閉を繰り返すように制御する。
【0027】
したがって、電力変換装置3Aは、力行動作の場合には昇降圧チョッパとして動作するこの場合、スイッチSaが閉でスイッチSeが開のとき、電流は、交流電源1、基準ノード15、スイッチSd、インダクタ16、スイッチSa、交流電源1の順に流れる。逆に、スイッチSaが開でスイッチSeが閉のとき、電流は、インダクタ16、スイッチSe、負荷(直流電源2)、スイッチSd、インダクタ16の順に流れる。このように、インダクタ電流ILは負方向に流れる。
【0028】
また、電力変換装置3Aは、回生動作の場合にも昇降圧チョッパとして動作する。この場合、スイッチSaが閉でスイッチSeが開のとき、電流は、インダクタ16、スイッチSd、交流電源1、スイッチSa、インダクタ16の順に流れる。逆に、スイッチSaが開でスイッチSeが閉のとき、電流は、直流電源2、スイッチSe、インダクタ16、スイッチSd、直流電源2の順に流れる。このように、インダクタ電流ILは正方向に流れる。
【0029】
制御部20は、さらに、第1~第3動作モードに共通して、高調波成分を低減させるためにPFC制御を行う。具体的に、制御部20は、インダクタ電流ILの検出値が所望の電流波形になるように相補動作する2個のスイッチの開閉タイミングを制御する。これにより、交流ノード11を流れる交流電流I1の波形を正弦波に近付けるように、結果として交流電流I1が正弦波の交流電圧V1に相似形になるようにする。このインダクタ電流ILの制御方法には、連続モード制御、不連続モード制御、および境界モード制御の3つの制御方法が知られており、そのいずれを用いてもよい。さらに、インダクタ電流ILを、交流電流I1の検出値または直流電流I2の検出値に基づいて制御してもよい。
【0030】
前述のように、第1~第3動作モードにおいて電力変換装置3Aは、昇圧チョッパ、降圧チョッパ、または昇降圧チョッパとして動作する。したがって、これらの回路を利用したPFC制御で実現されている力率=0.999およびTHD=2~3%は、本実施形態の電力変換装置3Aにおいても実現可能である。
【0031】
(具体的構成例)
次に、
図1のスイッチSa~SeをNチャネルのパワーMOSFET(以下、NMOSFETと記載する)で構成した例について、
図3を参照して説明する。パワーMOSFETの材料として炭化ケイ素(SiC)を用いると、シリコン(Si)製のパワーMOSFETに比べて、高耐圧、低損失、高速動作が期待されるので望ましい。なお、他の種類の半導体素子を用いた場合も
図3と同様の構成とすることができる。たとえば、IGBTを用いた場合には、パワーMOSFETの寄生ダイオードに代えて逆並列に接続された環流ダイオードが設けられる。
【0032】
図3は、
図1の第1から第5スイッチの具体的構成を示す回路図である。
図3に示すように、第1から第5スイッチSa~Seの各々は、ソースからドレインの方向を逆方向にした2個のNMOSFETを直列に接続する(以下、「逆直列接続」と称する)ことによって構成される。これによって、スイッチSa~Seの各々を開状態(オフ状態)にしたときに、寄生ダイオードを介して電流が流れないようにできる。
【0033】
具体的に、
図3において、スイッチSaは逆直列接続された2個のNMOSFETNMa1,NMa2によって構成される。同様に、スイッチSbは逆直列接続されたNMOSFETNMb1,NMb2によって構成され、スイッチScは逆直列接続されたNMOSFETNMc1,NMc2によって構成され、スイッチSdは逆直列接続されたNMOSFETNMd1,NMd2によって構成され、スイッチSeは逆直列接続されたNMOSfETNMe1,NMe2によって構成される。
【0034】
たとえば、
図3のスイッチSbの場合、NMOSFETNMb1のソースSは、基準ノード15に接続され、NMOSFETNMb1のドレインDは、NMOSFETNMb2のドレインDに接続される。NMOSFETNMb2のソースSはインダクタ16の第1端17に接続される。この場合、NMOSFETNMb1の寄生ダイオードPDとNMOSFETNMb2の寄生ダイオードPDとは逆方向になるので、NMOSFETNMb1,NMb2がオフ状態のときに、それぞれの寄生ダイオードPDを介して電流が流れないようにできる。なお、NMOSFETNMb1,NMb2を
図3の場合と逆方向に接続してもよい。すなわち、
図3のようにドレインD同士を直結するようにNMOSFETNMb1,NMb2を直列接続しても、逆にソースS同士を直結するようにNMOSFETNMb1,NMb2を直列接続してもよい。いずれの場合もNMOSFETNMb1,NMb2がオフ状態のときに、それぞれの寄生ダイオードPDを介した電流の流れを防止できる。
【0035】
連続モードのPFC制御を行う場合、スイッチSa~Seの各々を構成する2個のNMOSFETのゲートには同じハイレベル(Hレベル)またはロウレベル(Lレベル)の信号が入力される。不連続モードまたは境界モードのPFC制御を行う場合には、相補動作させるスイッチのうち環流ダイオードとして動作させるスイッチについては、片方のゲート信号をLレベルにすることによりダイオード動作させてもよい。なお、この場合も、環流ダイオードでの電圧降下を避けるためには、当該スイッチを構成する2個のNMOSFETに同じ信号を入力することにより、いわゆる同期整流させたほうが望ましい。
【0036】
たとえば、第1動作モードの力行動作の場合には、制御部20は、スイッチSbを構成するNMOSFETNMb1のゲートにLレベル信号を供給してNMOSFETNMb1をオフ状態に制御し、NMOSFETNMb2のゲートにHレベル信号を供給してNMOSFETNMb2をオン状態に制御してもよい。この場合、NMOSFETNMb1の寄生ダイオードが環流ダイオードとして動作する。他のスイッチSa,Sc~Seの各々を構成する2個のNMOSFETのゲートには同じ信号が入力される。また、第1動作モードの回生動作の場合には、制御部20は、スイッチSaを構成するNMOSFETNMa1のゲートにLレベル信号を供給してNMOSFETNMa1をオフ状態に制御し、NMOSFETNMa2にHレベル信号を供給してNMOSFETNMa2をオン状態に制御してもよい。この場合、NMOSFETNMa1の寄生ダイオードが環流ダイオードとして動作する。他のスイッチSb~Seの各々を構成する2個のNMOSFETのゲートには同じ信号が入力される。他の動作モードの場合も同様である。
【0037】
[回路方式2]
(構成)
図4は、第2の回路方式を有する電力変換装置の構成図である。
図4の電力変換装置3Bは、第5スイッチSeの接続が
図1の電力変換装置3Aの場合と異なる。すなわち、
図1の電力変換装置3Aの場合には、スイッチSeはインダクタ16の第1端17と直流ノード13との間に接続されていたのに対し、
図4の電力変換装置3Bの場合には、スイッチSeはインダクタ16の第2端18と交流ノード11との間に接続される。
図4のその他の点は
図1の場合と同様であるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。なお、
図4では、平滑用コンデンサ31,32の図示を省略している。
【0038】
(動作)
図5は、
図4の電力変換装置の動作を説明するための図である。
図5では、
図2の場合と同様に、交流電圧V1および直流電圧V2の時間波形と、それに対応するスイッチSa~Seの開閉動作が概念的に示されている。
図5に示すように、第1動作モード(時刻t2からt3の期間)および第2動作モード(時刻t1からt2および時刻t3からt4の期間)の場合のスイッチSa~Seの開閉動作は、
図2の場合と同様であるので、説明を繰り返さない。
【0039】
以下、第3動作モード、すなわち、交流電圧V1の瞬時値が基準電位(0V)よりも低い負電圧の場合(時刻t4からt5の期間)の動作について説明する。第3動作モードにおいて、制御部20は、スイッチSbを閉状態に制御し、スイッチSa,Sdを開状態に制御し、スイッチSc,Seについて相補的に開閉を繰り返させる。
【0040】
したがって、電力変換装置3Bは、力行動作の場合に昇降圧チョッパとして動作する。この場合、スイッチScが閉でスイッチSeが開のとき、電流は、インダクタ16、スイッチSc、負荷(直流電源2)、スイッチSb、インダクタ16の順に流れる。逆に、スイッチScが開でスイッチSeが閉のとき、電流は、交流電源1、スイッチSb、インダクタ16、スイッチSe、交流電源1の順に流れる。このように、インダクタ電流ILは正方向に流れる。
【0041】
また、電力変換装置3Bは、回生動作の場合にも昇降圧チョッパとして動作する。この場合、スイッチScが閉でスイッチSeが開のとき、電流は、直流電源2、スイッチSc、インダクタ16、スイッチSb、直流電源2の順に流れる。逆に、スイッチScが開でスイッチSeが閉のとき、電流は、インダクタ16、スイッチSb、交流電源1、スイッチSe、インダクタ16の順に流れる。このように、インダクタ電流ILは負方向に流れる。
【0042】
なお、第1~第3動作モードで共通して行われるPFC制御は、第1の回路方式の場合と同様であるので説明を繰り返さない。
【0043】
(具体的構成例)
第2の回路方式の場合も、
図3の場合と同様にNMOSFETを用いて電力変換装置3Bを構成できる。ただし、第2の回路方式の場合には、スイッチSbおよびスイッチScは、開状態のときに寄生ダイオードを介して導通する可能性がないので、
図3のNMOSFETNMb1およびNMOSFETNMc1のみによって構成できる。スイッチSa,Sd,Seの各々は、ソースからドレインの方向を逆方向にした2個のNMOSFETを直列に接続することによって構成される。
【0044】
[回路方式3]
(構成)
図6は、第3の回路方式を有する電力変換装置の構成図である。
図6の電力変換装置3Cは、第6スイッチSfをさらに含む点で
図1の電力変換装置3Aと異なる。スイッチSfは、インダクタ16の第2端18と交流ノード11との間に接続される。
図6のその他の点は
図1の場合と同様であるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。なお、
図6では、平滑用コンデンサ31,32の図示を省略している。
【0045】
(動作)
図7は、
図6の電力変換装置の動作を説明するための図である。
図7では、
図2および
図5の場合と同様に、交流電圧V1および直流電圧V2の時間波形と、それに対応するスイッチSa~Sfの開閉動作が概念的に示されている。
【0046】
図7に示す第3の回路方式の電力変換装置3Cの動作は、
図2に示す第1の回路方式の電力変換装置3Aの動作と、
図5に示す第2の回路方式の電力変換装置3Bの動作とを組み合わせたものである。
【0047】
具体的に、第1動作モード(時刻t2からt3の期間)および第2動作モード(時刻t1からt2および時刻t3からt4の期間)において、スイッチSe,Sfは、開状態に制御される。スイッチSa~Sdの開閉状態は、
図2の第1の回路方式および
図5の第2の回路方式の場合と同様に制御される。
【0048】
第3動作モード、すなわち、交流電圧V1の瞬時値が基準電位(0V)よりも低い負電圧となる第3期間(時刻t4からt5の期間)においては、
図2に示す第1の回路方式の場合と同様に制御することもできるし、
図5に示す第2の回路方式の場合と同様に制御することもできる。
【0049】
具体的に、
図7においてその1として示すように、制御部20は、スイッチSdを閉状態に制御し、スイッチSb,Sc,Sfを開状態に制御し、スイッチSa,Seについて相補的に開閉を繰り返させてもよい。この場合、電力変換装置3Cは、第1の回路方式の電力変換装置3Aと同様に動作する。
【0050】
もしくは、
図7においてその2として示すように、制御部20は、スイッチSbを閉状態に制御し、スイッチSa,Sd,Seを開状態に制御し、スイッチSc,Sfについて相補的に開閉を繰り返させてもよい。この場合、第2の回路方式の電力変換装置3BにおいてスイッチSeをスイッチSfと読み替えることにより、電力変換装置3Cは、第2の回路方式の電力変換装置3Bと同様に動作する。
【0051】
なお、第1~第3動作モードで共通して行われるPFC制御は、第1の回路方式の場合と同様であるので説明を繰り返さない。
【0052】
(具体的構成例)
第3の回路方式の場合も、
図3の場合と同様にNMOSFETを用いて電力変換装置3Cを構成できる。具体的に、スイッチSa~Sfの各々は、ソースからドレインの方向を逆方向にした2個のN型MOSFETを直列に接続することによって構成される。
【0053】
[電力変換装置3A~3Cの制御方法のまとめ]
以下、電力変換装置3A~3Cの制御方法について、これまでの説明を総括して統一的に説明する。具体的に、
図1、
図4および
図6の電力変換装置3A~3Cのいずれの場合も、インダクタ16の第1端17および第2端18と、交流ノード11、直流ノード13、および基準ノード15との間の接続を切り替える切替回路10A~10Cを備えると考えることができる。
【0054】
図8は、
図1、
図4および
図6に示す電力変換装置の切替回路の制御方法を示すフローチャートである。まず、制御部20は、電圧検出器21,22の検出値に基づいて、現時点が、交流電圧V1の瞬時値が直流電圧V2よりも高い第1期間にあるか(ステップS100)、交流電圧V1の瞬時値が直流電圧V2よりも低くかつ基準電位(0V)よりも高い第2期間にあるか(ステップS110)、または交流電圧V1の瞬時値が基準電位(0V)よりも低い第3期間にあるか(ステップS120)を判定する。
【0055】
現時点が、交流電圧V1の瞬時値が直流電圧V2よりも高い第1期間にある場合には(ステップS100でYES)、制御部20は、インダクタ16の第1端17を交流ノード11と基準ノード15とに交互に接続し、インダクタ16の第2端18を直流ノード13に接続する(ステップS130)。この制御は、前述の第1動作モードに対応する。
【0056】
現時点が、交流電圧V1の瞬時値が直流電圧V2よりも低くかつ基準電位(0V)よりも高い第2期間に場合には(ステップS110でYES)、制御部20は、インダクタ16の第1端17を交流ノード11に接続し、インダクタ16の第2端18を直流ノード13と基準ノード15とに交互に接続する(ステップS140)。この制御は、前述の第2動作モードに対応する。
【0057】
現時点が、交流電圧V1の瞬時値が基準電位(0V)よりも低い第3期間にある場合には(ステップS120でYES)、制御部20は、インダクタ16の第1端17を交流ノード11と直流ノード13とに交互に接続し、インダクタ16の第2端18を基準ノード15に接続する。または、制御部20は、インダクタ16の第1端17を基準ノード15に接続し、インダクタ16の第2端18を交流ノード11と直流ノード13とに交互に接続してもよい(ステップS150)。これらの制御は、前述の第3動作モードに対応する。
【0058】
なお、ステップS100,S110,S120のいずれにも該当しない場合、すなわち、交流電圧V1の瞬時値と直流電圧V2が等しい場合、または交流電圧V1の瞬時値が基準電位(0V)に等しい場合には、制御部20は、直前の電圧状態における動作モードを維持するようにしてもよい(ステップS160)。たとえば、
図2、
図5および
図7を参照して、制御部20は、時刻t1,t5ではステップS150を実行し、時刻t2,t4ではステップS140を実行し、時刻t3ではステップS130を実行してもよい。
【0059】
[シミュレーション結果]
以下、
図1または
図4に示す第1または第2の回路方式の電力変換装置3A,3Bのシミュレーション結果について説明する。
【0060】
図9は、電力変換装置の力行動作におけるシミュレーション結果を示す図である。
図9(A)は、電圧検出器21,22でそれぞれ検出される交流電圧V1の波形と直流電圧V2の波形とを示す。
図9(B)は、電流検出器24で検出される交流電流I1(交流ノード11を流れる電流)の波形を、交流電圧V1の波形に対応付けて示す。
【0061】
図9(B)に示すように、力行動作における交流電流I1は、正弦波の交流電圧V1に対して概ね相似形になっており、PFC制御が実現していることがわかる。電流値が0付近で交流電流I1の測定値がハンチングしているが、制御パラメータを調整することによって交流電流I1をより安定的に制御できると考えられる。
【0062】
図10は、電力変換装置の回生動作におけるシミュレーション結果を示す図である。
図10(A)は、交流電圧V1の波形と直流電圧V2の波形とを示す。
図10(B)は、交流電流I1の測定波形を交流電圧V1の波形に対応付けて示す。
【0063】
図10(B)に示すように、回生動作における交流電流の符号は、
図9(A)に示す力行動作における交流電流の符号を反転したものとなっており、両者の交流電流の方向が反対方向であることがわかる。さらに、回生動作における交流電流I1は、交流電圧V1の位相と180°異なる位相を有するとともに、正弦波の交流電圧V1の波形に概ね相似形になっており、PFC制御が実現していることがわかる。電流値が0付近で交流電流I1の測定値がハンチングしているが、制御パラメータを調整することによって交流電流I1をより安定的に制御できると考えられる。
【0064】
[実施の形態1の効果]
以上のとおり、実施の形態1では、
図1、
図4、
図6に示す3つの回路方式の電力変換装置3A~3Cを示した。電力変換装置3A~3Cは、全波整流回路を必要としないブリッジレスで構成されており、片極が接地されている単相交流電圧と直流電圧とを双方向に変換できる。また、PFC制御および高調波除去用のローパスフィルタ(平滑用コンデンサなど)と組み合わせることにより、原理的には、力率=0.999およびTHD=2~3%が実現可能である。
【0065】
なお、電力変換装置3A~3Cは、単相交流電圧に代えて直流電圧が入力されてもそのまま利用できる。具体的に、交流ノード11に入力される直流電圧が、直流ノード13から出力する直流電圧よりも高い場合には、制御部20は、スイッチSa~Se(Sf)を前述の第1動作モードで制御する。逆に、交流ノード11に入力される直流電圧が、直流ノード13から出力する直流電圧よりも低い場合には、制御部20は、スイッチSa~Se(Sf)を前述の第2動作モードで制御する。
【0066】
<実施の形態2>
実施の形態2では、実施の形態1で説明した電力変換装置3A~3Cを交流電車用電源回路40に適用した例について説明する。以下の説明では、電力変換装置3A~3Cを総称して、電力変換装置3と記載する。
【0067】
図11は、交流電車用電源回路の構成例を示す回路図である。
図11に示すように、交流電車用電源回路40は、実施の形態1で説明した電力変換装置3と、インバータ41とを備える。
【0068】
電力変換装置3の交流ノード11は架線51に接続され、電力変換装置3の交流ノード12(すなわち、基準ノード15)はレール52に接続される。架線51とレール52との間に単相交流電源1が接続される。また、電力変換装置3の直流ノード13は、インバータ41の高電位側配線42Pに接続され、電力変換装置3の直流ノード14(すなわち、基準ノード15)は、インバータ41の低電位側配線42Nに接続される。
【0069】
インバータ41は、U相スイッチング素子43P,43Nと、V相スイッチング素子44P,44Nと、W相スイッチング素子45P,45Nと、各スイッチング素子に逆並列に接続されたフリーホイールダイオード47とを含む。U相スイッチング素子43P,43Nは、高電位側配線42Pと低電位側配線42Nとの間に互いに直列に接続される。同様に、V相スイッチング素子44P,44Nは、高電位側配線42Pと低電位側配線42Nとの間に互いに直列かつU相スイッチング素子43P,43Nの直列接続体と並列に接続される。同様に、W相スイッチング素子45P,45Nは、高電位側配線42Pと低電位側配線42Nとの間に互いに直列かつU相スイッチング素子43P,43Nの直列接続体と並列に接続される。U相スイッチング素子43P,43Nの中点46U、V相スイッチング素子44P,44Nの中点46V、およびW相スイッチング素子45P,45Nの中点46Wからモータ50に3相交流電力が供給される。
【0070】
上記の構成によれば、実施の形態1で説明した電力変換装置3によって架線51の電圧を降圧できるので、交流電車用電源回路40にトランスを設ける必要がなく、交流電車用電源回路40を軽量化できる。この点で本実施形態の交流電車用電源回路40は、降圧用の絶縁トランスが必要な既存のブリッジ付きPFC回路またはブリッジレスPFC回路を利用する場合よりも有利である。電力変換装置3においてPFC制御を行うことにより、饋電回路の力率を改善できる。電力変換装置3は、ブリッジレスで構成されているので、力行および回生の双方向電力潮流制御が可能である。電力変換装置3の交流ノード11,12は片極が接地されているので、交流電気鉄道のレール52が接地されているという特徴をうまく利用できる。また、架線51に直流電圧が供給されている場合も交流電車用電源回路40をそのまま利用できる。なお、実施の形態1の電力変換装置3は、交流電車の電気回路方式に限らず、片極が接地された交流回路と直流回路との双方向電力変換に利用できる。
【0071】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この出願の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
1 単相交流電源、2 直流電源、3,3A~3C 電力変換装置、10A~10C 切替回路、11,12 交流ノード、13,14 直流ノード、15 基準ノード、16 インダクタ、17 第1端、18 第2端、20 制御部、21,22 電圧検出器、23,24,25 電流検出器、31,32 平滑用コンデンサ、 40 交流電車用電源回路、41 インバータ、42N 低電位側配線、42P 高電位側配線、43N,43P,44N,44P,45N,45P スイッチング素子、46U,46V,46W 中点、47 フリーホイールダイオード、50 モータ、51 架線、52 レール、NMa1,NMa2~NMe1,NMe2 NMOSFET、D ドレイン、S ソース、PD 寄生ダイオード、I1 交流電流、I2 直流電流、IL インダクタ電流、Sa~Sf スイッチ、V1 交流電圧、V2 直流電圧。