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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】多発性骨髄腫の治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/351 20060101AFI20240605BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240605BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240605BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240605BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
A61K31/351
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K9/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020015201
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021123530
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】517110874
【氏名又は名称】株式会社セラバイオファーマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 充弘
(72)【発明者】
【氏名】今泉 厚
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-535626(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003857(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104657(WO,A1)
【文献】特表2008-521928(JP,A)
【文献】特開2019-156798(JP,A)
【文献】特表2012-528151(JP,A)
【文献】川田英明他1名,多発性骨髄腫の最新治療:骨髄腫腎や分子標的薬を含めて,日腎会誌,日本,2012年,54(5),586-592
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クルクミンモノグルクロニドを含有する、プロテアソーム阻害薬耐性の多発性骨髄腫治療用非経口投与剤。
【請求項2】
前記多発性骨髄腫が、ボルテゾミブ耐性の多発性骨髄腫である、請求項1記載の非経口投与剤。
【請求項3】
他の多発性骨髄腫治療薬と組み合わせたことを特徴とする、請求項1又は2記載の非経口投与剤。
【請求項4】
非経口投与剤が、注射剤である請求項1~3のいずれか1項記載の非経口投与剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多発性骨髄腫の治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
多発性骨髄腫(MM:Multiple Myeloma)は、形質細胞(血液細胞の一つ)が癌化した骨髄腫細胞が主に骨髄中で異常増殖する疾患である。骨髄腫細胞の異常増殖により、造血抑制に伴う貧血、感染症、出血傾向など、Mタンパク(異常免疫グロブリン)産生に伴う腎障害、血液循環障害など、あるいは、骨破壊によって骨痛、骨折、高カルシウム血症などの症状を引き起こす。
多発性骨髄腫の治療は薬物療法が中心である。従来用いられているメルファランなどの抗がん剤とステロイド剤に加えて、現在では、さまざまな薬剤を適切に組み合わせた治療が行われている。そのような薬剤としては、例えばプロテアソーム阻害薬:ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、免疫調整薬:レナリドミド、サリドマイド、ポマリドミド、抗体医薬:エロツズマブ、ダラツムマブなどがある。
これらの薬剤のなかでも、ボルテゾミブがkey drugとして用いられるが、治療を受けた症例の約70~80%がボルテゾミブ耐性となり重篤な状態になると推定されている。
従って、多発性骨髄腫、さらには再発・難治性の多発性骨髄腫に対する安全で有効な治療剤が求められている。
【0003】
クルクミンは、近年、腫瘍形成阻害作用、抗酸化作用、抗炎症作用、コレステロール低下作用、抗アレルギー作用、脳疾患予防作用、心疾患予防治療作用などの薬理作用を有することが明らかとなり、食品(例えば、機能性食品)、医薬品や化粧品などへの利用が検討されている。
クルクミンと多発性骨髄腫との関連性については、「クルクミンによるヒト多発性骨髄腫の治療」として、4つの多発性骨髄腫細胞株(U266、RPMI8226、MM.1およびMM.1R)を用い、クルクミンは多発性骨髄腫細胞によって発現する恒常的なNF-κB を抑制したこと、またクルクミンはビンクリスチンの細胞毒性効果を増強したとの報告がある(特許文献1)。しかしながら、この特許文献1には、クルクミンによる多発性骨髄腫治療に関するin vivoデータなど、具体的な作用効果は全く開示されていない。
一方、クルクミンを水溶性物質(例えばグルクロン酸、硫酸、グルタチオンおよびアミノ酸など)との抱合体とし、この抱合体を有効成分とする非経口投与用医薬治療剤が、水難溶性なクルクミンの吸収性を改善した結果、クルクミンが有する抗腫瘍作用などの薬理作用が十分に得られることが報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2005-535626号公報
【文献】WO2018/003857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、安全で有効な多発性骨髄腫の治療剤、さらにプロテアソーム阻害薬耐性の多発性骨髄腫の治療剤などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は、種々の多発性骨髄腫、特にボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害薬耐性の多発性骨髄腫に対して有効な治療剤を開発すべく種々検討したところ、クルクミン類の水溶性物質抱合体がプロテアソーム阻害薬耐性の多発性骨髄腫に対して優れた増殖阻害作用を有することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、次の発明[1]~[11]を提供するものである。
[1]クルクミン類の水溶性物質抱合体を有効成分とする多発性骨髄腫の治療剤。
[2]クルクミン類が、クルクミンおよびその誘導体から選ばれる1種以上である上記[1]記載の治療剤。
[3]クルクミンの誘導体が、ビスデメトキシクルクミン、デメトキシクルクミンおよびテトラヒドロクルクミンから選ばれる1種以上である上記[2]記載の治療剤。
[4]前記水溶性物質が、グルクロン酸、硫酸、グルタチオンおよびアミノ酸から選ばれる1種以上である上記[1]~[3]のいずれかに記載の治療剤。
[5]前記水溶性物質が、グルクロン酸および硫酸から選ばれる1種以上である上記[1]~[3]のいずれかに記載の治療剤。
[6]前記クルクミン類の水溶性物質抱合体が、クルクミンモノグルクロニドである上記[1]記載の治療剤。
[7]前記多発性骨髄腫が、プロテアソーム阻害薬耐性の多発性骨髄腫である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の治療剤。
[8]前記多発性骨髄腫が、ボルテゾミブ耐性の多発性骨髄腫である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の治療剤。
[9]他の多発性骨髄腫治療薬と組み合わせたことを特徴とする、上記[1]~[8]のいずれかに記載の治療剤。
[10]前記他の多発性骨髄腫治療薬が、プロテアソーム阻害薬から選ばれる1種以上である[9]に記載の治療剤。
[11]非経口投与用治療剤である、上記[1]~[10]のいずれかに記載の治療剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明のクルクミン類の水溶性物質抱合体を有効成分とする多発性骨髄腫の治療剤は、後記実施例に示すように、種々の多発性骨髄腫、特にプロテアソーム阻害薬耐性の多発性骨髄腫に対して安全で有効な治療効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1におけるクルクミンモノグルクロニド投与によるマウス多発性骨髄腫の増殖抑制効果を示す。図中、CMGはクルクミンモノグルクロニド、bortezomibはボルテゾミブを示す。
図2】実施例1におけるクルクミンモノグルクロニド投与時の経日的体重変化を示す。図中、CMGはクルクミンモノグルクロニド、bortezomibはボルテゾミブを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下,本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0011】
クルクミンは、ウコン色素に含まれるクルクミノイドの主成分であり、下記構造式(1)で表される化合物である。
【0012】
【化1】
【0013】
本発明のクルクミン類は、クルクミンおよびその誘導体から選ばれる1種以上である。クルクミンの誘導体としては、ビスデメトキシクルクミン、デメトキシクルクミンおよびテトラヒドロクルクミンが挙げられる。
本発明においてクルクミンは、化学合成されたクルクミンを用いてもよいし、ウコン色素として流通しているものを用いてもよい。ウコン色素としては、ショウガ科ウコン(Curcuma longa LINNE)の根茎の乾燥物を粉末にしたウコン末、該ウコン末を適当な溶媒(例えば、エタノール、油脂、プロピレングリコール、ヘキサン、アセトンなど)を用いて抽出して得られる粗製クルクミン或いはオレオレジン(ターメリックオレオレジン)、および精製したクルクミンを挙げることができる。
なお、クルクミンには、互変異性体であるケト型およびエノール型のいずれも含まれる。
【0014】
本発明のクルクミン類の水溶性物質抱合体の水溶性物質としては、グルクロン酸、硫酸、グルタチオンおよびアミノ酸から選ばれる1種以上が挙げられる。アミノ酸としては、生体内に存在するアミノ酸、例えば必須アミノ酸が挙げられる。クルクミン類の水溶性物質抱合体は、遊離型クルクミンの血中濃度を高い値で維持することができる。これにより、クルクミンが有する薬理作用が十分に得られ、またクルクミン抱合体はクルクミンの生体内代謝産物であることから、安全性が非常に高いので好ましい。
クルクミン抱合体におけるクルクミンと前記水溶性物質との結合モル比は、クルクミン:水溶性物質=1:1~1:3であるのが好ましく、1:1~1:2がより好ましく、1:1がさらに好ましい。
【0015】
クルクミンと前記水溶性物質の抱合形態(結合形態)は、例えば式(2)の形態である。
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、RおよびRの少なくとも一方は前記水溶性物質の残基であり、残余は水素原子である。)
【0018】
前記式(2)中、RおよびRの一方または両方はグルクロン酸残基または硫酸残基が好ましく、残余は水素原子が好ましい。なかでも、Rがグルクロン酸残基でRが水素原子であるクルクミンモノグルクロニドの場合がより好ましい。
クルクミン類の水溶性物質抱合体は、前記特許文献2記載の方法によって製造することができる。
【0019】
本発明の治療剤が対象とする多発性骨髄腫は、通常の多発性骨髄腫、さらには再発・難治性の多発性骨髄腫、なかでもプロテアソーム阻害薬耐性の多発性骨髄腫に好ましく用いられる。とくに、この治療剤は、ボルテゾミブを対象に継続的に投与した結果ボルテゾミブ耐性が生じた多発性骨髄腫患者に対する多発性骨髄腫の治療剤として好ましく用いられる。
【0020】
本発明の治療剤は,安全とされている投与量の範囲内において,ヒトを含む哺乳動物に対して,必要量(有効量)が投与される。本発明の治療剤中のクルクミン類の水溶性物質抱合体の含有量は、多発性骨髄腫の種類、患者の性別、年齢、症状などに応じて最終的には医師または獣医師の判断により適宜決定されるため、一概に決定することはできないが、例えば、1日当たり1回~数回対象に投与される。例えば、1回あたり本発明の治療剤中のクルクミン類の水溶性物質抱合体の含有量が1~100質量%のものを有効量投与してもよく、該クルクミン類の水溶性物質抱合体の含有量が5~100質量%のものを有効量投与してもよい。さらに、1回あたり該クルクミン類の水溶性物質抱合体の含有量が10~100質量%のものを有効量投与してもよい。
【0021】
本発明の治療剤の投与経路は、疾患、症状などに応じて、全身投与および局所投与や、経口経路および非経口経路のいずれも選択することができる。それらの投与方法や経路により、本発明の治療剤も、好適な剤形、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤などの形態での経口投与、または注射剤(例えば、静注、筋注など)、坐剤、経皮剤、経鼻剤、吸入剤などの形態での非経口投与を選択できる。
【0022】
投与経路が経口投与の場合には、本発明の治療剤は、主成分であるクルクミン類の水溶性物質抱合体を不活性な賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、溶解補助剤、不活性な溶剤(例えば、精製水、エタノールなど)などと混合することにより常法に従って製造される。賦形剤は、例えば、乳糖(ラクトース)、セルロース、マンニトール、ブドウ糖であり得る。滑沢剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウムであり得る。崩壊剤は、例えば、カルボキシメチルスターチナトリウムであり得る。錠剤または丸剤は、必要により糖衣または胃溶性若しくは腸溶性コーティング剤で被膜してもよい。液剤は、必要により可溶化剤、湿潤剤、懸濁化剤、甘味剤、矯味剤、芳香剤、緩衝剤(例えば、クエン酸ナトリウムなど)、安定化剤または防腐剤を含有してもよい。
【0023】
本発明の治療剤の投与経路としては、非経口投与が好ましく、なかでも注射剤が特に好ましい。注射剤としては、通常の静脈内投与、動脈内投与の他、関節内、皮下、皮内、筋肉内などへの注射(用時溶解型の粉末充填剤を含む)により投与できる。注射剤の主成分であるクルクミン類の水溶性物質抱合体を溶解・分散などさせる注射剤用の水性の溶剤は、例えば、蒸留水、生理食塩水、リンゲル液などであり得る。注射剤用の非水性の溶剤は、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、またはポリソルベート80(局方名)であり得る。このような製剤は、さらに等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖など)、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、pH調節剤(例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなど)、緩衝剤、局所麻酔剤ないし無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン、塩酸リドカインなど)または溶解補助剤を含有してもよい。
これらの製剤は、例えば、バクテリア保留フィルターによる濾過、殺菌剤の配合、または放射線照射によって無菌化され得る。また、無菌の固体治療剤を使用前に無菌の水または注射用溶媒に溶解または懸濁して得られた治療剤をこれらの製剤として使用することもできる。これらの製剤は、製剤工程において通常用いられる公知の方法により製造することができる。
【0024】
本発明の治療剤は、他の多発性骨髄腫治療薬(他の抗がん剤)と組み合わせて投与することができる。この場合、組み合わせての投与とは、両薬剤が単一製剤中に含まれた製剤が投与されてもよく、またそれぞれが別々に製剤化され、別々に投与されても良い。別々に製剤化される場合、その投与時期は特に限定されない。それらの投与は、同一回数となる場合もあり、異なる回数となる場合もある。また、それぞれが別々に製剤化される場合、各製剤の投与方法(投与経路)は同じであってもよく、異なる投与方法(投与経路)で投与されてもよい。また、両薬剤が同時に体内に存在する必要は無く、ある一定期間(例えば一ヶ月間、好ましくは1週間、さらに好ましくは数日間、さらにより好ましくは1日間)の間に体内に取り込まれていればよく、いずれかの投与時にもう一方の有効成分が体内から消失していてもよい。
本発明においては、2種の異なる製剤とした場合は、それらを含むキットとすることもできる。
【0025】
前記のように組み合わせて投与される薬剤としては、例えばプロテアソーム阻害薬:ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、免疫調節薬:レナリドミド、サリドマイド、ポマリドミド、抗体医薬:エロツズマブ、ダラツムマブなどを挙げることができる。これらのなかでもプロテアソーム阻害薬、特にボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブなどが好ましい。
【実施例
【0026】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は下記に説明する特定の態様に限定されることはない。
【0027】
製造例1
(クルクミンの水溶性物質抱合体(クルクミンモノグルクロニド)の調製方法)
WO2018/03857号公報記載の方法に準じて、クルクミンモノグルクロニドを合成した。すなわち、アセトブロモ-α-D-グルクロン酸メチルエステル1.0g(2.52mmol)とバニリン326.0mg(2.15mmol)を原料として反応させて得られた化合物(1)(β-D-グルコピラノシドウロン酸,4-ホルミル-2-メトキシフェニル,メチルエステル,トリアセタート)491.6mg(収率49%)と、2,4-ペンタジオン3.3mL(32.07mmol)とバニリン2.2gを原料として反応させて得られた化合物(2)(5-ヒドロキシ-1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,4-ヘキサジエン-3-オン)とを反応させて、得られた化合物(3)(クルクミンβ-D-グルコピラノシドウロン酸2,3,4-トリ-O-アセチル,メチルエステル)の脱アセチル化・精製によりクルクミンモノグルクロニド(253.1mg)を得た。
【0028】
実施例1
(クルクミンモノグルクロニドによるマウス多発性骨髄腫の腫瘍退縮効果)
A.多発性骨髄細胞株移植マウスの作成
供試動物として、NOD Scidマウス(雌性6週齢、日本チャールスリバー、体重約20g)を7日環境馴化させたものを用いた。
上記供試動物の皮下に、1×10のKMS11/BTZ(ボルテゾミブ耐性多発性骨髄腫細胞株、JCRB)を移植した。
B.投与方法
上記の多発性骨髄細胞株移植マウス(n=6)に対し、移植2週間後から薬剤投与を開始した。
薬剤投与は、クルクミンモノグルクロニドは30mg/kgで3回/週、90mg/kgで3回/週、またはボルテゾミブは1mg/kgで2回/週とし、クルクミンモノグルクロニドは蒸留水、ボルテゾミブはDMSOとPBSに溶解したものを注射剤として腹腔内投与した。対照群としては、各溶媒を用いた。
C.腫瘍サイズの評価方法
供試動物の腫瘍サイズは、7日おきにノギスを用い腫瘍の長径と短径を測定し、次式によって算出した。
腫瘍サイズ=長径×短径×短径÷2。
【0029】
投与開始(Day0)からDay7、Day14、およびDay21の時点で、マウスの腫瘍サイズ(Tumor volume)と体重(Body weight)を測定し、結果を図1および図2に示した。
【0030】
図1から、ボルテゾミブ投与による効果がほとんどないにもかかわらず、本発明の90mg/kgクルクミンモノグルクロニドの投与によって、ボルテゾミブ耐性多発性骨髄腫の腫瘍の退縮が有意に起きたことがわかる(p<0.05)。また、クルクミンモノグルクロニドの投与量30mg/kgとした場合にも、有意の腫瘍退縮効果が確認された(p<0.05)。
さらに、図2から、クルクミンモノグルクロニドの投与は、副作用が少なく安全であることが分かる。
図1
図2