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特許7498476子宮頸癌高線量率密封小線源治療用膣内挿入具
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  • 特許-子宮頸癌高線量率密封小線源治療用膣内挿入具 図1
  • 特許-子宮頸癌高線量率密封小線源治療用膣内挿入具 図2
  • 特許-子宮頸癌高線量率密封小線源治療用膣内挿入具 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】子宮頸癌高線量率密封小線源治療用膣内挿入具
(51)【国際特許分類】
   A61M 36/10 20060101AFI20240605BHJP
   A61B 17/42 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
A61M36/10
A61B17/42
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020053235
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021151400
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-02-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和2年2月28日 https://doi.org/10.5114/jcb.2020.92406
(73)【特許権者】
【識別番号】502285457
【氏名又は名称】学校法人順天堂
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久能木 裕明
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-533787(JP,A)
【文献】特表2012-502781(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0117996(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 36/10-36/12
A61B 1/303
A61N 5/10
A61B 17/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された一対の略半円筒体の基部をヒンジにより対向間隔の拡開・閉止可能に連結して構成され、かつ、密封小線源治療用の針アプリケータ挿入ガイド溝が、外周壁の長手軸方向に直線状に適宜数形設されている略円筒状の生体適合性合成樹脂製膣挿入部を備えていることを特徴とする子宮頸癌高線量率密封小線源治療用膣内挿入具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子宮頸癌高線量率密封小線源治療用膣内挿入具に関する。
【背景技術】
【0002】
子宮頸癌高線量率密封小線源治療は、進行子宮頸癌患者の根治的婦人科放射線治療に用いられている療法である。この子宮頸癌高線量率密封小線源治療は、CT画像から密封小線源と病巣及び正常組織の位置関係を三次元的に把握して行われている。より詳細には、まず密封小線源が後充填されるストロー状の針アプリケータを子宮頸部病巣の近くや内部にCT画像もしくは超音波画像で確認しながら多数刺入留置する。多数の針アプリケータの刺入留置にあたっては最初の針アプリケータの位置をCT画像もしくは超音波画像で確認し、次いで確認された当該最初の針アプリケータの位置に基づいて、標的部位に対する追加の針アプリケータの刺入点と方向の決定を、CTもしくは超音波の画像の観察下に行なうものである。
【0003】
当該追加の針アプリケータの子宮頸部病巣への刺入点と方向の決定は、精度と効率性の点からCT画像もしくは超音波画像のみならず、本来直接視認による評価も加えてなされるべきであるが、密封小線源の膣内挿入に拡開機能を有する膣鏡(例えば、特許文献1参照)を使用しようとしても、従来の膣鏡は外側面が曲面状を呈しているため、当該外側面から直線状の針アプリケータの刺入留置は事実上不可能と云う問題があった。また、従来の膣鏡の殆どが金属製で、電子密度が水に近くないので、放射線治療には不向きと云う問題があった。金属製の膣鏡を用いて針アプリケータの子宮頸部病巣への刺入点と方向を決定して刺入したのちに上記の不都合のない材質の放射線治療用膣内留置器具に入れ替えることも、子宮頸部や子宮膣部の変形を来たすため精度と効率性において問題があった。そのため、CT画像もしくは超音波画像のみによらざるを得ないのが実状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6617896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上位の如き従来の問題と実状に鑑みてなされたものであり、CT画像もしくは超音波画像のみならず、子宮頸部病巣を直接視認して針アプリケータを刺入留置した子宮頸癌高線量率密封小線源治療を実施できる膣内挿入具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために種々研究を重ねた結果、生体適合性を有した合成樹脂製の膣内挿入具の外周壁部に、密封小線源が後充填される密封小線源治療用針アプリケータが挿入可能な直線状のガイド溝を形設すれば、極めて良い結果が得られることを見い出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、密封小線源治療用の針アプリケータ挿入ガイド溝が、外周壁の長手軸方向に直線状に適宜数形設されている略円筒状の生体適合性合成樹脂製膣挿入部を備えていることを特徴とする子宮頸癌高線量率密封小線源治療用膣内挿入具により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、略円筒状の生体適合性合成樹脂製膣挿入部の中空部自体は開放状態となっているので、子宮頸部病巣を直接視認しつつ、密封小線源治療用の針アプリケータを刺入留置することができる。その結果、追加の密封小線源治療用針アプリケータの刺入点と方向の決定を、CT画像もしくは超音波画像と共に当該膣挿入部の中空部から直接視認して行なうことができるので、より精度が高まると共に、時間的にも効率的に子宮頸癌高線量率密封小線源治療を実施することができる。また、当該膣挿入部の外周壁に形設された直線状のガイド溝を利用して適宜追加の密封小線源用の針アプリケータを膣内を経由して子宮頸部病巣部に刺入留置することができ、かなり大きな子宮頸癌病巣に対しても治療対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明膣内挿入具の正面説明図。
図2図1のA-A線拡大断面説明図。
図3】本発明膣内挿入具の斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
【0011】
図1図3において、10は略円筒状の膣挿入部で、対向配置された一対の略半円筒体10a、10bから構成されている。当該一対の略半円筒体10a、10bの基部は、膣鏡と同様にヒンジ(図示省略)により弧状回転可能に連結され、対向間隔が拡開・閉止自在となっている。当該対向間隔の拡開程度としては、最大35mm程度が好ましい。尚、一対の略半円筒体10a、10bの先部は、それぞれ内方にやや湾曲した曲面とするのが、膣への挿入性の点で好ましい。
また、当該略半円筒体10a、10bのヒンジ連結部より下位の外側部には、それぞれ対向間隔操作用の把持部20a、20bが一対付設されていると共に、当該拡開状態の係持固定手段が適宜付与されている。この把持部20a、20bは、図1及び図3に示すように、従来の膣鏡のハンドル部に比して突出度合が少なく、拡開操作時の横開き(後述する矢印Y方向への拡開)に支障とならないようになっている。
当該略半円筒体10a、10b及び把持部20a、20bは、放射線治療のため、その材質は電子密度が水に近い生体適合性の合成樹脂とする必要がある。また、材質を合成樹脂とすれば3Dプリンターによる一体成形性の点でも有利である。合成樹脂は、硬い合成樹脂が使用される。合成樹脂としては、光硬化樹脂が好ましく、紫外線硬化樹脂がより好ましい。紫外線硬化樹脂は、例えば、ウレタンアクリレート、アクリル樹脂アクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート系樹脂が挙げられる。具体的には、Form2やForm3にて用いるレジン(Formlabs, Inc.)がある。
尚、膣挿入部10のサイズは患者の膣サイズに応じて適宜選定される。
【0012】
30は密封小線源が後充填される密封小線源治療用針アプリケータの挿入ガイド溝で、膣挿入部10の外周壁の長手軸方向に直線状に形設されている。当該ガイド溝30はその断面形状を、直接3mm程度の略半円形状とするのが、直径が0.9mm程度の密封小線源治療用の針アプリケータの挿入をスムースに行なう上で好ましい。因みに、高線量率密封小線源は、一般に駆動用ワイヤーケーブル(直径0.7mm)の先端に、線源(イリジウム192もしくはコバルト60)を格納したカプセル(直径0.9mm、長さ4.5mm)を溶接して構成されている。
当該ガイド溝30の形設数としては、特に限定されないが、この実施の形態においては図2に示されている如く、一対の略半円筒体10a、10bのそれぞれに約5mmの間隔で5本ずつ、計10本形設され、最大10本の密封小線源の挿入が可能となっており、従来の子宮頸癌高線量率密封小線源治療にて作成される典型的な洋梨型の放射線分布が作成可能である。
【0013】
次に、斯かる実施の形態に係る本発明膣内挿入具の使用例を説明する。
【0014】
まず、一対の略半円筒体10a、10bの対向間隔を閉止し、対向間隔を上にした状態で膣内に挿入すると共に、当該基部の対向間隔操作用の把持部20a、20bは膣外に露出せしめる。次いで、当該露出している対向間隔操作用の把持部20a、20bを図中矢印X方向に挟持すれば、ヒンジを介する弧状回転により膣内の一対の略半円筒体10a、10bの対向間隔が図中矢印Y方向に拡開するので、その状態を付与された適宜手段により保持固定する。そこで、より視野が大きくなった当該拡開部を介して子宮頸部病巣を直接視認すると共に、CT画像もしくは超音波画像も観察しながら適切な密封小線源の刺入点と方向を決定して刺入留置する。また、直線状のガイド溝30を利用して、密封小線源治療用の針アプリケータを順次病巣部に刺入留置し、放射線治療を実施する。
【符号の説明】
【0015】
10:膣挿入部
10a:略半円筒体
10b:略半円筒体
20a:把持部
20b:把持部
30:ガイド溝
図1
図2
図3