IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ KJケミカルズ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】不飽和ウレタン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 269/02 20060101AFI20240605BHJP
   C07C 271/20 20060101ALI20240605BHJP
   C07C 271/18 20060101ALI20240605BHJP
   C07C 271/24 20060101ALI20240605BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20240605BHJP
   C08G 18/22 20060101ALI20240605BHJP
   C08G 18/81 20060101ALI20240605BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240605BHJP
【FI】
C07C269/02
C07C271/20
C07C271/18
C07C271/24
C08G18/67
C08G18/22
C08G18/81
C07B61/00 300
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020085394
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2020189833
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2019093988
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314001841
【氏名又は名称】KJケミカルズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清貞 俊次
(72)【発明者】
【氏名】足立 祐輔
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/141578(WO,A1)
【文献】特開2003-327637(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047220(WO,A1)
【文献】特表2015-507652(JP,A)
【文献】特表2015-508389(JP,A)
【文献】特開2015-028607(JP,A)
【文献】特開2000-034268(JP,A)
【文献】特開2013-060492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 269/02
C07C 271/20
C07C 271/18
C07C 271/24
C08G 18/67
C08G 18/22
C08G 18/81
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子間に不飽和結合を有する不飽和ウレタン化合物の製造方法であって、アルコール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)とを、エーテル結合を有する化合物(D)、触媒(C)であるチタン、アルミニウム、ハフニウム、ジルコニウム、ビスマス、鉄から選択される少なくとも1種以上の金属元素の有機塩又は錯体の存在下で、反応させることを特徴とする不飽和ウレタン化合物の製造方法であって、
Dは、アルキレン(炭素数1~4、以下同じ)グリコールジアルキル(炭素数1~18、以下同じ)エーテル、ジアルキレングリコールジアルキルエーテル、トリアルキレングリコールジアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル、アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート、トリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート、アルキレングリコールジアリールエーテル、ジアルキレングリコールジアリールエーテル、トリアルキレングリコールジアリールエーテル、ポリアルキレングリコールジアリールエーテル、アルキレングリコールアリールエーテルアセテート、ジアルキレングリコールアリールエーテルアセテート、トリアルキレングリコールアリールエーテルアセテート、ポリアルキレングリコールアリールエーテルアセテート、アルキレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジアルキレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート、トリアルキレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート、アリールアルキレングリコール(メタ)アクリレート、アリールジアルキレングリコール(メタ)アクリレート、アリールトリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、アリールポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、環状エーテル類、環状エーテル基導入(メタ)アクリレート類である、不飽和ウレタン化合物の製造方法
【請求項2】
アルコール化合物(A)は炭素原子間に不飽和結合を有するアルコール化合物(a1)及び/又は2個以上の水酸基を有するポリオール(a2)、イソシアネート化合物(B)は炭素原子間に不飽和結合を有するイソシアネート化合物(b1)及び/又は2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(b2)、かつ、水酸基(OH)とイソシアネート基(NCO)のモル比は0.9~1.1であることを特徴とする請求項1に記載の不飽和ウレタン化合物の製造方法。
【請求項3】
不飽和結合は、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルエーテル基、メチルビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アリルエーテル基とマレイミド基からなる群より選択される1種以上の不飽和結合であることを特徴とする請求項1又は2 に記載の不飽和ウレタン化合物の製造方法。
【請求項4】
アルコール化合物(A)、イソシアネート化合物(B)及び触媒(C)のいずれか1種以上の化合物にはエーテル結合及び/またはアミド結合を有することを特徴とする請求項1~ のいずれか一項に記載の不飽和ウレタン化合物の製造方法。
【請求項5】
化合物(D)が、更にアミド結合を有する化合物であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の不飽和ウレタン化合物の製造方法。
【請求項6】
化合物(D)が、活性水素を有しない脂肪族、脂環族、芳香族化合物であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の不飽和ウレタン化合物の製造方法。
【請求項7】
触媒(C)の配合量が、アルコール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)の合計に対して0.001~5.0%(質量比)であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の不飽和ウレタン化合物の製造方法。
【請求項8】
化合物(D)の配合量が、アルコール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)の合計に対して1~200%(質量比)であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の不飽和ウレタン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の金属元素の有機塩又は錯体を触媒として用いた不飽和ウレタン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素原子間に不飽和結合を有するウレタン化合物(不飽和ウレタン化合物)は、炭素原子間の不飽和基とウレタン化合物の多様な骨格構造を有していることから、硬化性樹脂組成物の原料として広く用いられており、なかでも光硬化性樹脂組成物に用いることで、硬化物に可撓性、屈曲性、柔軟性、強靭性、耐溶剤性、耐摩耗性など様々な性能を容易に付与することが可能であり、粘着剤、コーティング、インクなど様々な分野に幅広く使用されている。
【0003】
このような不飽和ウレタン化合物は通常、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させ、両末端に水酸基またはイソシアネート基を有するポリウレタンを得、その後、それぞれが水酸基含有不飽和化合物またはイソシアネート基含有不飽和化合物とさらに反応することにより合成されている(特許文献1~3)。
【0004】
イソシアネート基と水酸基によるウレタン化反応には、触媒としてジブチル錫ジラウレートなどの有機スズ化合物や3級アミン類がよく使用されている。しかし、不飽和ウレタン化合物の合成に多く採用されている多段階反応において、3級アミン類は触媒活性が低いため適しておらず、また、有機スズ化合物は良好な触媒活性が示されるが、内分泌かく乱物質として問題視され、近年その使用の規制が加速してきた。
【0005】
そこで、有機スズ化合物の代替として、新たに様々な有機金属化合物がウレタン化触媒として検討されている。例えば、ウレタンアクリレートが亜鉛化合物の存在下で合成され、得られたウレタンアクリレートと、水酸基含有アクリレートから構成する硬化型組成物において、亜鉛化合物を含有することにより、スズ触媒で発生する組成物の減粘(経時的粘度低下)トラブルが抑制することができた(特許文献4)。また、ポリウレタンを製造するため、スズフリーである新規な触媒として亜鉛のコンプレックス又はその塩が提案された(特許文献5)。しかしながら、これらの亜鉛触媒は、従来のスズ触媒に比べ、活性が低く、通常の条件において、反応の進行が極めて遅くなり、触媒添加量を3倍まで増やしてもウレタン化反応が完結せず、しかも反応の生成物が着色してしまう問題が発生している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-267703号公報
【文献】WO2015/141537号公報
【文献】WO2017/047615号公報
【文献】特開2010-215774号公報
【文献】特表2012-511056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、有機スズ触媒を使用せず、優れた反応活性を有する触媒を用いて、通常の反応条件(反応温度、触媒添加量等)における不飽和ウレタン化合物の製造方法を提供することを課題とする。また、該触媒を用いて、温度制御におけるトラブルが発生せず、良好な色相と品質を有する不飽和ウレタン化合物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アルコール化合物とイソシアネート化合物とを反応させて不飽和ウレタン化合物を製造する際に、触媒として第1~3遷移元素と第13~15族元素(スズを除く)から選択される少なくとも1種以上の金属元素の有機塩又は錯体を用いることにより、効率よく、良好な品質の不飽和ウレタン化合物を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は
(1)炭素原子間に不飽和結合を有する不飽和ウレタン化合物の製造方法であって、アルコール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)とを、触媒(C)である第1~3遷移元素と第13~15族元素(スズを除く)から選択される少なくとも1種以上の金属元素の有機塩又は錯体の存在下で、反応させることを特徴とする不飽和ウレタン化合物の製造方法、
(2)アルコール化合物(A)は炭素原子間に不飽和結合を有するアルコール化合物(a1)及び/又は2個以上の水酸基を有するポリオール(a2)、イソシアネート化合物(B)は炭素原子間に不飽和結合を有するイソシアネート化合物(b1)及び/又は2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(b2)、かつ、水酸基(OH)とイソシアネート基(NCO)のモル比は0.9~1.1であることを特徴とする前記(1)に記載の不飽和ウレタン化合物の製造方法、
(3)不飽和結合は、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルエーテル基、メチルビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アリルエーテル基とマレイミド基からなる群より選択される1種以上の不飽和結合であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の不飽和ウレタン化合物の製造方法、
(4)触媒(C)はスカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、鉛、ビスマスから選択される少なくとも1種の金属元素の有機塩又は錯体であることを特徴とする前記(1)~(3)のいずれか一項に記載の不飽和ウレタン化合物の製造方法、
(5)アルコール化合物(A)、イソシアネート化合物(B)及び触媒(C)のいずれか1種以上の化合物にはエーテル結合及び/またはアミド結合を有することを特徴とする前記(1)~(4)のいずれか一項に記載の不飽和ウレタン化合物の製造方法、
(6)エーテル結合及び/またはアミド結合を有する化合物(D)をさらに含有することを特徴とする前記(1)~(5)のいずれか一項に記載の不飽和ウレタン化合物の製造方法、
(7)化合物(D)が、活性水素を有しない脂肪族、脂環族、芳香族化合物であることを特徴とする前記(1)~(6)のいずれか一項に記載の不飽和ウレタン化合物の製造方法、
(8)触媒(C)の配合量が、アルコール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)の合計に対して0.001~5.0%(質量比)であることを特徴とする前記(1)~(7)のいずれか一項に記載の不飽和ウレタン化合物の製造方法、
(9)化合物(D)の配合量が、アルコール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)の合計に対して1~200%(質量比)であることを特徴とする前記(1)~(8)のいずれか一項に記載の不飽和ウレタン化合物の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アルコール化合物とイソシアネート化合物とを反応させて炭素原子間に不飽和結合を有する不飽和ウレタン化合物を製造する際に、第1~3遷移元素と第13~15族元素(スズを除く)から選択される少なくとも1種以上の金属元素の有機塩又は錯体を触媒として用いることにより、有機スズ触媒を使用せず、通常の反応条件における不飽和ウレタン化合物を効率よく製造することができる。また、新規な触媒を用いることにより、反応温度が制御されやすく、良好な色相と品質を有する不飽和ウレタン化合物を取得することができる。
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の不飽和ウレタン化合物の製造方法は、アルコール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)とを、触媒(C)である第1~3遷移元素と第13~15族元素(スズを除く)から選択される少なくとも1種以上の金属元素の有機塩又は錯体の存在下で反応させることを特徴とする。以下、本発明の製造方法における各構成について説明する。
【0012】
本発明に用いられるアルコール化合物(A)は、炭素原子間に不飽和結合を有するアルコール化合物(a1)及び/又は2個以上の水酸基を有するポリオール(a2)であることが好ましい。また、アルコール化合物(a1)は、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルエーテル基、メチルビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アリルエーテル基とマレイミド基からなる群より選択される1種以上の不飽和結合を含むことがより好ましい。
【0013】
(a1)としては、炭素数1~20の直鎖、分岐、環状のアルキレン基を導入したヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキル(メチル)ビニルエーテル、ヒドロキシアルキル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシアルキルマレイミド、アルキレングリコールの炭素数が1~9、アルキレングリコールの繰り返し単位が1~23であるポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリルアミド、ポリアルキレングリコールビニルエーテル、ポリアルキレングリコール(メチル)ビニルエーテル、ポリアルキレングリコール(メタ)アリルエーテル、ポリアルキレングリコールマレイミド、前記(メタ)アクリルアミド系モノマーの窒素原子に炭素数1から8の直鎖、分岐或いは環状のアルキル基、アルキレン基を導入したN-アルキル(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(ポリアルキレングリコール)(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミドなど、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシフェニルビニルエーテル、ヒドロキシフェニル(メチル)ビニルエーテル、ヒドロキシフェニル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシフェニルマレイミドが挙げられ、なかでも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドを用いることで不飽和ウレタン化合物の重合性が良好となるため好ましい。これらの(a1)は、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
(a2)としては、分子中に2個以上の水酸基を有し、アルキレンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、水素添加ポリアルカジエンポリオール、ポリアルカジエンポリオール、シリコーン骨格を有するポリオールであることが好ましく、なかでも、分子中に2個の水酸基を有し、アルキレンジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、水素添加ポリアルカジエンジオール、ポリアルカジエンジオール、シリコーン骨格を有するポリオールであることがより好ましい。これらの(a2)は、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
アルキレンポリオールとしては、炭素数2~18の直鎖、分岐、環状のアルキレンジオール、アルキレントリオール、アルキレンテトラオールが挙げられ、具体的にはエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,10-デカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0016】
ポリエーテルポリオールとしては、炭素数2~18の直鎖、分岐、環状のポリアルキレングリコールが挙げられ、具体的にはポリエチレングリコール、グリセリントリ(ポリオキシエチレン)エーテル、トリメチロールプロパントリ(ポリオキシエチレン)エーテル、ペンタエリスリトールテトラ(ポリオキシエチレン)エーテル、ポリ(オキシ-1,3-プロピレン)グリコール、グリセリントリ(ポリオキシ-1,3-プロピレン)エーテル、トリメチロールプロパントリ(ポリオキシ-1,3-プロピレン)エーテル、ペンタエリスリトールテトラ(ポリオキシ-1,3-プロピレン)エーテル、ポリ(オキシ-1,2-プロピレン)グリコール、グリセリントリ(ポリオキシ-1,2-プロピレン)エーテル、トリメチロールプロパントリ(ポリオキシ-1,2-プロピレン)エーテル、ペンタエリスリトールテトラ(ポリオキシ-1,2-プロピレン)エーテル、ポリ(オキシ-1,4-ブチレン)グリコール、ポリ(オキシ-1,5-ペンチレン)グリコール、ポリ(オキシ-3-メチル-1,5-ペンチレン)グリコール、ポリ(オキシ-1,6-ヘキシレン)グリコールなどのアルキレングリコール類が挙げられる。
【0017】
ポリエステルポリオールとしては、ポリカルボン酸とポリオールからなり、分子中にポリエステル骨格を含み、末端に水酸基を有するものである。ポリカルボン酸成分としては、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、ヘミメリト酸、トリメリット酸、トリメシン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、ピロメリット酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、などが挙げられ、ポリオール成分としては、前記[0015]項記載のアルキレンポリオール類などが挙げられる。
【0018】
ポリカーボネートポリオールとしては、カルボニル成分とポリオールからなり、分子中にカーボネート骨格を含み、末端に水酸基を有するものが挙げられる。カルボニル成分としては、ホスゲン、クロロギ酸エステル、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート及びアルキレンカーボネートなどが挙げられ、ポリオール成分としては、前記[0015]項記載のアルキレンポリオール類などが挙げられる。
【0019】
水素添加ポリアルカジエンポリオールとしては、1,2-水添ポリブタジエンジオール、1,4-水添ポリブタジエンジオール、水添ポリイソプレンポリオールなどが挙げられ、ポリアルカジエンポリオールとしては、1,2-ポリブタジエンジオール、1,4-ポリブタジエンジオール、ポリイソプレンポリオールなどが挙げられる。
【0020】
シリコーン骨格を有するポリオールとしては、分子中にシロキサン結合を主査骨格に含み、かつ両末端又は側鎖に2つ以上の水酸基を有するものであり、側鎖導入型のカルビノール変性シリコーン、両末端導入型のカルビノール変性シリコーン、側鎖および両末端導入型のカルビノール変性シリコーンなどが挙げられる。
【0021】
本発明に用いられるイソシアネート化合物(B)としては、炭素原子間に不飽和結合を有するイソシアネート化合物(b1)及び/又は2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(b2)であることが好ましい。また、イソシアネート化合物(b1)は(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルエーテル基、メチルビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アリルエーテル基とマレイミド基からなる群より選択される1種以上の不飽和結合を含むことがより好ましい。
【0022】
(b1)としては、炭素数1~18の直鎖、分岐、環状のアルキレン基を導入したイソシアナトアルキル(メタ)アクリレート、イソシアナトアルキル(メタ)アクリルアミド、イソシアナトアルキルビニルエーテル、イソシアナトアルキル(メチル)ビニルエーテル、イソシアナトアルキル(メタ)アリルエーテル、イソシアナトアルキルマレイミド、イソシアナトアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、イソシアナトアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、イソシアナトアルコキシアルキルビニルエーテル、イソシアナトアルコキシアルキル(メチル)ビニルエーテル、イソシアナトアルコキシアルキル(メタ)アリルエーテル、イソシアナトアルコキシアルキルマレイミド、前記(メタ)アクリルアミド系モノマーの窒素原子に炭素数1から8の直鎖、分岐或いは環状のアルキル基、アルキレン基を導入したN-アルキル(イソシアナトアルキル)(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(イソシアナトアルコキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(イソシアナトフェニル)(メタ)アクリルアミドなど、イソシアナトフェニル(メタ)アクリレート、イソシアナトフェニル(メタ)アクリルアミド、イソシアナトフェニルビニルエーテル、イソシアナトフェニル(メチル)ビニルエーテル、イソシアナトフェニル(メタ)アリルエーテル、イソシアナトフェニルマレイミドが挙げられ、なかでも、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレート、イソシアナトアルキル(メタ)アクリルアミドを用いることで不飽和ウレタン化合物の重合性が良好となるため好ましい。これらの(b1)は、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
(b2)としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソンアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート類もしくは、これらのアダクトタイプ、イソシアヌレートタイプ、ビュレットタイプなどが挙げられる。これらは、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明の製造方法により、不飽和ウレタン化合物を得るにあたり、アルコール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)の組み合わせは任意であるが、不飽和ウレタン化合物が炭素原子間に不飽和結合を含有するために、(A)と(B)の少なくとも一方には不飽和結合を有する。具体的には、不飽和結合を有するアルコール化合物(a1)及び/または不飽和結合を有するイソシアネート化合物(b1)を含むことを特徴とする。更に、2個以上の水酸基を有するポリオール(a2)、及び2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(b2)を含むと、(a2)と(b2)の比率により、得られる不飽和ウレタン化合物の分子量を任意に調整できるため好ましい。
【0025】
アルコール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)の組み合わせは任意であるが、不飽和結合を有するアルコール化合物(a1)及び/又は2個以上の水酸基を有するポリオール(a2)に含まれる水酸基の合計(モル)と、不飽和結合を有するイソシアネート化合物(b1)及び/又は2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(b2)に含まれるイソシアネート基の合計(モル)から計算されるモル比は、水酸基(OH)/イソシアネート基(NCO)=0.9~1.1であることが好ましく、得られる不飽和ウレタン化合物中にイソシアネート基が残存していると空気中の水分と反応するなど不安定化の要因となるため、水酸基がイソシアネート基よりも過剰となる水酸基(OH)/イソシアネート基(NCO)=1.0~1.1であることがより好ましい。
【0026】
本発明に用いられる触媒(C)は、第1~3遷移元素と第13~15族元素(スズを除く)から選択される少なくとも1種以上の金属元素の有機塩又は錯体である。具体的には、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、鉛、ビスマスから選択される少なくとも1種の金属元素の有機塩又は錯体であることが好ましい。このなかでも、チタン、鉄、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、ビスマスであることがより好ましく、鉄、ジルコニウム、ビスマスであることが特に好ましい。
【0027】
前記金属元素の有機塩としては、有機酸と金属の塩、有機酸と金属酸化物の塩、有機酸とアルキル金属の塩、有機酸とアルコキシ金属の塩などが好ましく、有機酸としては炭素数1~18の直鎖、分岐、環状のアルキルカルボン酸、蟻酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、マレイン酸、フマル酸、乳酸、シュウ酸、ナフテン酸、酒石酸、クエン酸、オレイン酸、(メタ)アクリル酸、ピリジン-2-カルボン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸などが挙げられる。良好な触媒活性を示す点からチタン、鉄、ジルコニウム、ビスマスの有機塩が好ましく、ビス(酢酸)鉄(II)、トリス(2-エチルヘキサン酸)鉄(III)、ビス(ステアリン酸)鉄(II)、トリス(ステアリン酸)鉄(III)、ビス(ドデシルベンゼンスルホン酸)ジイソプロポキシチタン、ジルコニウムテトラキス(2-エチルヘキサン酸)、ジルコニウムテトラキス(ステアリン酸)、ビスマストリス(2-エチルヘキサン酸)、ビスマストリス(ネオデカンサン酸)などが挙げられ、着色性が低くいことからトリス(ステアリン酸)鉄、ビスマストリス(2-エチルヘキサン酸)、ビスマストリス(ネオデカンサン酸)、ジルコニウムテトラキス(2-エチルヘキサン酸)、ジルコニウムテトラキス(ステアリン酸)であることがより好ましい。
【0028】
前記金属元素の錯体としては、金属元素の錯体、金属酸化物の錯体、アルキル金属の錯体、アルコキシ金属の錯体、ハロゲン化金属の錯体などが好ましく、具体的には、アセチルアセトナート錯体、エチルアセトアセテート錯体、ジメトキシエタン錯体、テトラヒドロフラン錯体、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト錯体、トリフルオロアセチルアセトナート錯体、ヘキサフルオロアセチルアセトナート錯体、シクロペンタジエニル錯体、ペンタフルオロシクロペンタジエニル錯体などが好ましく、良好な触媒活性を示す点からチタン、鉄、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、ビスマスとの錯体が好ましく、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、ビス(シクロペンタジエニル)鉄、鉄(II)ビス(アセチルアセトナート)、鉄(III)トリス(アセチルアセトナート)、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジルコニウムエチルアセトアセテート、テトラキス(アセチルアセトナート)ハフニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(2,2,6,6,-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)ビスマスであることがより好ましく、着色性が低いことからジルコニウムモノアセチルアセトナート、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジルコニウムエチルアセトアセテート、テトラクロロビス(テトラヒドロフラン)ジルコニウムであることが更に好ましい。
【0029】
これらの触媒(C)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。(C)の使用量は、アルコール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)の合計に対して質量比で0.001~5.0%であることが好ましい。0.001%以上の使用により、ウレタン化反応を速やかに進行できるため好ましく、5.0%以下の使用により触媒による着色を抑制できるため好ましい。更に0.01~1.0%であることがより好ましい。
【0030】
本発明の不飽和ウレタン化合物の製造方法は、反応成分としてアルコール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)とを混合し、触媒(C)添加する公知の方法で実施することができるが、反応系内にエーテル結合及び/又はアミド結合を有する化合物を含有すると、ウレタン化反応の速度が向上するため、低温または短時間での不飽和ウレタン化合物の製造が可能となり、また得られる不飽和ウレタン化合物の色相も品質も良好で、低温・短時間反応による製造コストの低減を図れるため好ましい。
【0031】
前記のエーテル結合及び/またはアミド結合を有する化合物を反応系内に含有させる方法としては、(1)本発明に用いられるアルコール化合物(A)やイソシアネート化合物(B)、触媒(C)に当該結合を有するものを用いる方法、及び(2)当該結合を有する化合物(D)を添加する方法、が挙げられる。
【0032】
前記(1)の方法において、エーテル結合を有する化合物として具体的には、アルコール化合物(A)として、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリルアミド、ポリエーテルポリオールなどが挙げられ、イソシアネート化合物(B)として、2-(2-イソシアナトエトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、触媒(C)として、テトラクロロビス(テトラヒドロフラン)ジルコニウムなどが挙げられる。このうち、よりエーテル構造を多く反応系内に導入できるポリエーテルポリオールが好ましい。
【0033】
前記(1)の方法において、アミド結合を有する化合物として具体的には、アルコール化合物(A)として、ヒドロキシアルキル(炭素数1~18)(メタ)アクリルアミド、アルキレングリコールの炭素数が2~6、アルキレングリコールの繰り返し単位が1~23であるポリアルキレングリコール(メタ)アクリルアミド、前記(メタ)アクリルアミド系モノマーの窒素原子に炭素数1~8の直鎖、分岐或いは環状のアルキル基、アルキレン基を導入したN-アルキル(ヒドロキシアルキル(炭素数1~18))(メタ)アクリルアミド、アルキレングリコールの炭素数が2~6、アルキレングリコールの繰り返し単位が1~23であるポリアルキレングリコール-N-アルキル(メタ)アクリルアミド、(ヒドロキシフェニル)-N-アルキル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。このうち、ヒドロキシアルキル(炭素数1~18)(メタ)アクリルアミドがより好ましく、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミドがPII=0.0と皮膚刺激性が低く安全性が高いことから特に好ましい。
【0034】
前記(1)の方法において、(A)、(B)と(C)のいずれか1種以上の化合物にエーテル結合を有することにより、触媒活性が向上することができ、低温、短時間での反応を行うことができ、本発明に関わる不飽和ウレタン化合物の不飽和結合に起因する着色しやすい問題が解決できるため、好ましい。また、(A)、(B)と(C)のいずれか1種以上の化合物にアミド結合を有することにより、水酸基とイソシアネート基の反応性が向上し、結果として不飽和ウレタン化合物の製造において、製造工程で生じやすい重合や増粘等のトラブルが抑制できるため、好ましい。さらに、(A)、(B)と(C)を用いる反応系内にエーテル結合とアミド結合を同時に有する場合、不飽和ウレタン化合物が安定的に製造でき、得られる不飽和ウレタン化合物の着色も防止可能できるため、より好ましい。本発明者らの推測であるが、分子内又は分子間のエーテル結合とアミド結合が接近すると、それらの相互作用によって、それぞれの特異効果が増されると同時に、ウレタン化反応の速度もさらに向上され、短時間で反応を完結することができる。
【0035】
前記(2)の方法において用いる化合物(D)としては、エーテル結合及び/またはアミド結合を有する化合物であれば特に限定されないが、(A)、(B)又は(C)と反応しないもの(活性水素を有しない)であれば、好適に用いることができる。化合物(D)に有するエーテル結合及び/またはアミド結合が前記同様な効果を有し、また、(A)、(B)と(C)を用いる反応系内にエーテル結合とアミド結合の一方又は両方を有しない場合、エーテル結合とアミド結合の一方又は両方を有する化合物(D)を含有させることにより、反応系内にエーテル結合とアミド結合を同時に含有させ、前記同様にそれらの相互作用による相乗効果が提供できるため、より好ましい。さらに、エーテル結合とアミド結合を同時に有する化合物(D)を用いることが、少量添加でも高い効果が期待でき、特に好ましい。
【0036】
化合物(D)としては、エーテル結合及び/またはアミド結合を含有し、活性水素を有しない脂肪族、脂環族、芳香族化合物が挙げられ、具体的には、炭素数1~4のアルキレングリコールと炭素数1~18の直鎖、分岐、環状のアルキル基もしくはアリール基からなるアルキレングリコールジアルキルエーテル、ジアルキレングリコールジアルキルエーテル、トリアルキレングリコールジアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル、アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート、トリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート、アルキレングリコールジアリールエーテル、ジアルキレングリコールジアリールエーテル、トリアルキレングリコールジアリールエーテル、ポリアルキレングリコールジアリールエーテル、アルキレングリコールアリールエーテルアセテート、ジアルキレングリコールアリールエーテルアセテート、トリアルキレングリコールアリールエーテルアセテート、ポリアルキレングリコールアリールエーテルアセテートなどのグリコール類、ジアルキルホルムアミド、ジアルキルアセトアミド、ジアルキルプロピオンアミドなどのアミド類、モルホリンアセトアミド、モルホリンプロパンアミド、アルコキシ-N,N-ジアルキルアセトアミド、アルコキシ-N,N-ジアルキルプロパンアミドなどのアミドエーテル類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類、アルキレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジアルキレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート、トリアルキレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート、アリールアルキレングリコール(メタ)アクリレート、アリールジアルキレングリコール(メタ)アクリレート、アリールトリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、アリールポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどのグリコール(メタ)アクリレート類、アルキレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリルアミド、ジアルキレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリルアミド、トリアルキレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリルアミド、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリルアミド、アルキレングリコールアリールエーテル(メタ)アクリルアミド、ジアルキレングリコールアリールエーテル(メタ)アクリルアミド、トリアルキレングリコールアリールエーテル(メタ)アクリルアミド、ポリアルキレングリコールアリールエーテル(メタ)アクリルアミドなどのグリコール(メタ)アクリルアミド類、ジアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどの置換(メタ)アクリルアミド類、テトラヒロドフルフリル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレートなどの環状エーテル基導入(メタ)アクリレート類、テトラヒロドフルフリル(メタ)アクリルアミド、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリンなどの環状エーテル基導入(メタ)アクリルアミド類などが挙げられる。これらは、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
本発明に用いられる化合物(D)は、分子構造中にエーテル結合及びアミド結合の両方を含有するとよりウレタン化反応の反応性が良好となるため、モルホリンアセトアミドやメトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドなどのアミドエーテル類、アクリロイルモルホリンなどの環状エーテル基導入(メタ)アクリルアミド類を用いることがより好ましい。
【0038】
化合物(D)の配合量は、アルコール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)の合計に対して1.0~200.0%(質量比)であることが好ましい。1.0%以上であれば、ウレタン化反応の速度が向上され、また得られる不飽和ウレタン化合物の色相が低いため、好ましい。200.0%以下である場合、化合物(D)の反応促進効果と、反応系中のアルコール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)の濃度低下による反応速度の低下とが、バランスが取れ、反応速度が制御しやすいため、好ましい。
【0039】
本発明の不飽和ウレタン化合物(F)の製造方法における反応温度は、任意の温度で行うことができるが、20~100℃の温度で行うことが好ましい。20℃以上であれば、反応が速やかに進行することができ、また、100℃以下であれば、製造時によるに着色や、増粘等が抑制できるため、好ましい。また、反応温度が30~80℃であることがより好ましい。
【0040】
本発明の不飽和ウレタン化合物(F)の製造方法において、反応成分の混合手順は特に制限されず、一括で行ってもよく、いくつかの段階に分けて行うこともできる。また、本発明の製造方法は無溶媒でも実施可能であるが、必要に応じて前記化合物(D)や、エーテル結合又は/及びアミド結合を有しないその他成分(E)を有機溶剤や反応性希釈剤として用いることできる。
【0041】
その他成分(E)のうち、有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテルなどの脂肪族炭化水素系溶剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
その他成分(E)のうち、反応性希釈剤としては、例えば、炭素数1~18の直鎖、分岐、環状のアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、炭素数2~18の直鎖、分岐、環状のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
(E)の添加量は、不飽和ウレタン化合物(F)に応じて適宜に設定すればよいが、(F)の粘度、製造上の簡便性及び経済性の観点から、アルコール化合物(A)とイソシアネート化合物(B)の合計に対して1.0~200.0%(質量比)であることが好ましい。
【0044】
本発明の製造方法において、必要に応じて各種添加剤を適宜使用することができる。添加剤としては、紫外線増感剤、熱重合禁止剤、老化防止剤、酸化防止剤、防腐剤、リン酸エステル系およびその他の難燃剤、界面活性剤、湿潤分散材、帯電防止剤、着色剤、可塑剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、増粘材、顔料、有機フィラー、無機フィラーなどが挙げられ、特に、炭素原子間の不飽和結合の重合を防止するために、熱重合禁止剤を添加することが好ましい。
【0045】
熱重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p-tert-ブチルカテコールなどのキノン系重合禁止剤;2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノールなどのアルキルフェノール系重合禁止剤;アルキル化ジフェニルアミン、N,N′-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、フェノチアジンなどのアミン系重合禁止剤、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシルなどのN-オキシル類;ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅などのジチオカルバミン酸銅系重合禁止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
熱重合禁止剤の添加量としては、不飽和基の種類や不飽和基当量などに応じて適宜に設定すればよいが、重合抑制効果、製造上の簡便性及び経済性の観点から、得られる不飽和ウレタン化合物(F)に対して通常0.001~5.0質量%であることが好ましく、0.01~1.0質量%であることがさらに好ましい。
【0047】
本発明の製造方法において得られる不飽和ウレタン化合物(F)の分子量は、特に制限はないが、数平均分子量250~1,000,000であることが好ましい。(F)は、硬化性樹脂組成物の原料として用いられ、これを硬化した硬化物に可撓性、屈曲性、柔軟性、強靭性、耐溶剤性、耐摩耗性などの様々な性能を容易に付与することが可能であるため、粘着剤、コーティング、インクなど様々な分野に幅広く使用される。これらの用途に好適に用いるために数平均分子量は250以上が好ましく、また、重合性モノマーや有機溶剤などとの良好な相溶性と、操作性に適した粘度を維持する面から、数平均分子量は1,000,000以下であることが好ましく、数平均分子量400~100,000であることがより好ましい。
【0048】
不飽和ウレタン化合物(F)の不飽和基当量は特に制限はないが、250~500,000が好ましい。不飽和基当量が250以上であると、(F)の分子中に1個以上の不飽和基を有し、重合性や硬化性樹脂の原料に用いることができる。また、不飽和基当量が500,000以下であると、高分子量の不飽和ウレタン化合物(F)においても、分子中に2個以上の不飽和基を有するため、それを用いて得られる硬化物が柔軟性と可撓性を有し、特に、不飽和基として(メタ)アクリルアミド基を有するウレタン(メタ)アクリルアミドを用いた硬化物が強靭性、耐溶剤性と耐摩耗性にも良好であるため、好ましい。また、不飽和基当量が400~50,000であることがより好ましい。
【0049】
不飽和ウレタン化合物(F)は、他の不飽和モノマーや不飽和オリゴマーなどと混合し、重合性の硬化性樹脂組成物を調製することができる。樹脂組成物の硬化性、得られた硬化物の強度や伸度などの物性値を使用する用途に応じて調整する方法としては、添加する不飽和モノマーや不飽和オリゴマーの種類や量を調整する方法や、(F)のウレタン骨格の種類や炭素原子間の不飽和結合の数、分子量などによって調整する方法が挙げられる。
【0050】
前記硬化性樹脂組成物の重合方法としては、特に限定することはなく、不飽和基の重合方法として公知の方法を用いることができる。例えば、活性エネルギー線または熱によるラジカル重合やアニオン重合、カチオン重合などが挙げられる。活性エネルギー線として、具体的には、紫外線、可視光線、赤外線、X線、ガンマー線、電子線等が挙げられる。
【0051】
前記硬化性樹脂組成物は様々な用途に活用できる。具体的には、自動車、電化製品、家具などの塗料やコーティング材などに用いられるコーティング向けの材料や、緩衝材、パッキン、防振材、吸音材、印刷版、シーリング材、研磨剤などに用いられるエラストマー向けの材料や、透明粘着シートや、UV硬化型粘・接着剤といった接着剤や粘着剤、シーリング用材料や封止材、歯科衛生材料、光学材料、光造形材料、強化プラスチック用材料、三次元光造形用樹脂組成物などが挙げられるが、用途としては必ずしもこれらに限定されない。
【実施例
【0052】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は特記しない限りすべて質量基準である。
【0053】
実施例の不飽和ウレタン化合物(F-1)~(F-23)と比較例用のウレタン化合物(I-1)~(I-7))
実施例1 不飽和ウレタン化合物(F-1)の合成
セパラブルフラスコにジエチレングリコールジエチルエーテル(D-1)50.0質量部、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(a1-1)53.5質量部、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(b2-1)46.5質量部、触媒としてジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン(オルガチックスTC-750 マツモトファインケミカル株式会社製)(C-1)5.0質量部、重合禁止剤としてメトキシヒドロキノン(H-1)0.01質量部を入れ、60℃にて攪拌した。15時間後、赤外吸収(IR)スペクトルにより分析を行い、b2-1に由来するイソシアネート基特有の吸収(2260cm-1付近)の消失を確認し、不飽和ウレタン化合物(F-1)のD-1溶液を得た。
【0054】
実施例2~9 不飽和ウレタン化合物(F-2)~(F-9)の合成
表1に示す組成で、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~9に相当する不飽和ウレタン化合物(F-2)~(F-9)の溶液を得た。それらの反応温度および反応時間を表1に示す。
【0055】
比較例1
触媒C-1を除いた以外は、実施例1と同様の反応を行い、48時間後の赤外吸収(IR)スペクトル分析によりイソシアネート基特有の吸収(2260cm-1付近)が殆ど減少せず、ウレタン化反応が殆ど進行しなかったことを確認した。
【0056】
比較例2と3 ウレタン化合物(I-2)と(I-3)の合成
表1に示す組成で、実施例1と同様の操作を行い、比較例2、3に相当するウレタン化合物(I-2)の溶液と(I-3)の溶液を得た。それらの反応温度および反応時間(反応完結の所要時間)を表1に示す。
【0057】
実施例10 不飽和ウレタン化合物(F-10)の合成
セパラブルフラスコにクラレポリオールP-1012(株式会社クラレ製)(a2-3)58.0質量部、イソホロンジイソシアネート(b2-2)25.8質量部、触媒としてテトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム(C-6)0.1質量部、重合禁止剤としてメトキシヒドロキノン(H-1)0.01質量部を入れ、60℃にて攪拌した。IR分析を行い、b2-2に由来するイソシアネート基特有の吸収(2260cm-1付近)の減少停止(反応開始24時間後)を確認し、一段目反応を終了した。得られた反応液にヒドロキシエチルアクリレート(a1-7)16.2質量部を添加し、60℃にて攪拌し二段目反応を開始した。同様にIR分析によりイソシアネート基の消失を確認し(二段目反応開始12時間後)、二段目反応を終了し、不飽和ウレタン化合物(F-10)を得た。
【0058】
実施例16 不飽和ウレタン化合物(F-16)の合成
セパラブルフラスコにN-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(a1-1)8.7質量部、クラレポリオールP-2010(a2-6)74.5質量部、イソホロンジイソシアネート(b2-2)16.8質量部、N-アクリロイルモルホリン(D-6)100質量部、触媒としてビスマストリス(2-エチルヘキサン酸)(C-5)0.05質量部、重合禁止剤として2,6-ジ-tert-ブチルフェノール(H-2)0.05質量部を入れ、60℃にて6時間を攪拌した。同様にIR分析により反応の終了を確認し、不飽和ウレタン化合物(F-16)のD-6溶液を得た。
【0059】
実施例11~15、17~23 不飽和ウレタン化合物(F-11)~(F-15)、(F-17)~(F-23)の合成
表2に示す組成で、実施例10と同様の操作により、実施例11~15、17~23を行い、不飽和ウレタン化合物(F-11)~(F-15)、(F-17)~(F-23)を得た。それらの一段目反応、二段目反応の反応温度と反応時間を表2に示す。
【0060】
比較例4 ウレタン化合物(I-4)の合成
表2に示す組成、反応条件で、実施例10と同様の操作を行い、比較例4に相当するウレタン化合物(I-4)の合成を行ったが、48時間後の赤外吸収(IR)スペクトル分析結果により、イソシアネート基特有の吸収(2260cm-1付近)が初期状態から殆ど変化せず、一段目反応が殆ど進行しなかったことが分かった。
【0061】
比較例5 ウレタン化合物(I-5)の合成
表2に示す組成で、実施例10と同様の操作を行い、比較例5に相当するウレタン化合物(I-5)の溶液を得た。反応温度と反応時間を表2に示す。
【0062】
比較例6と7 ウレタン化合物(I-6)と(I-7)の合成
表2に示す組成で、実施例16と同様の操作を行い、比較例6と7に相当するウレタン化合物(I-6)の溶液と(I-7)の溶液を得た。それぞれの反応温度と反応時間を表2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
不飽和ウレタン化合物(F)およびウレタン化合物(I)の合成において使用する原料を示す。
(炭素原子間に不飽和結合を有するアルコール化合物(a1))
a1-1:N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)(登録商標「HEAA」、登録商標「Kohshylmer」、KJケミカルズ株式会社製)
a1-2:2-ヒドロキシエチルマレイミド(HEMI)
a1-3:ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)
a1-4:4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)
a1-5:4-ヒドロキシブチルビニルエーテル(4HBVE)
a1-6:2-ヒドロキシエチルアリルエーテル
a1-7:ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)
a1-8:N-(2-ヒドロキシプロピル)アクリルアミド(HPAA)
a1-9:N-(2-ヒドロキシエチル)メタクリルアミド(HEMAA)
【0066】
(2個以上の水酸基を有するポリオール(a2))
a2-1:数平均分子量650のポリテトラメチレングリコール(PTMG650、三菱ケミカル株式会社製)
a2-2:数平均分子量300ポリプロピレングリコール, トリオール型(富士フイルム和光純薬株式会社製)
a2-3:数平均分子量1,000のポリエステルジオール(3-メチル-1,5-ペンタンジオール/アジピン酸/テレフタル酸の縮合物)(クラレポリオール P-1012、株式会社クラレ製)
a2-4:数平均分子量2,000のポリカーボネートジオール(3-メチル-1,5-ペンタンジオール/1,6-ヘキサンジオール/ジエチルカーボネートの縮合物)(クラレポリオール C-2090、株式会社クラレ製)
a2-5:数平均分子量6,000のポリエステルポリオール(3-メチル-1,5-ペンタンジオール/アジピン酸)(クラレポリオール P-6010、株式会社クラレ製)
a2-6:数平均分子量2,000のポリエステルポリオール(3-メチル-1,5-ペンタンジオール/アジピン酸)(クラレポリオール P-2010、株式会社クラレ製)
a2-7:数平均分子量1,000の水素添加ポリ1,2-ブタジエンジオール(GI-1000、日本曹達株式会社製)
a2-8:数平均分子量1,800のカルビノール変性ポリエーテルシリコーンオイル(KF-6001、信越化学工業株式会社製)
a2-9:数平均分子量1,000のポリカーボネートジオール(3-メチル-1,5-ペンタンジオール/1,6-ヘキサンジオール/ジエチルカーボネートの縮合物)(クラレポリオール C-1090、株式会社クラレ製)
【0067】
(炭素原子間に不飽和結合を有するイソシアネート化合物(b1))
b1-1:イソシアナトエチルアクリレート(カレンズAOI 昭和電工株式会社製)
【0068】
(2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(b2))
b2-1:2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)
b2-2:イソホロンジイソシアネート(IPDI)
b2-3:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(HDI-I)
b2-4:ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)
b2-5:メチレンビス(1,4-シクロヘキサンジイル)ジイソシアナート(水添MDI)
【0069】
(触媒(C)および(G))
C-1:ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン(オルガチックスTC-750 マツモトファインケミカル株式会社製)
C-2:トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム(オルガチックスAL-3100 マツモトファインケミカル株式会社製)
C-3:テトラキス(アセチルアセトナート)ハフニウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)
C-4:ジルコニウムテトラキス(2-エチルヘキサン酸)(オルガチックスZC-200 マツモトファインケミカル株式会社製)
C-5:ビスマストリス(2-エチルヘキサン酸)(富士フイルム和光純薬株式会社)
C-6:トリス(アセチルアセトナート)鉄(III)(富士フイルム和光純薬株式会社)
C-7:テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム(オルガチックスZC-150 マツモトファインケミカル株式会社製)
C-8:トリス(ステアリン酸鉄)(III)(東京化成工業株式会社製)
G-1:N,N,N,N-テトラメチルエチレンジアミン
G-2:亜鉛ビス(ネオデカン酸)(Borchi Kat22 松尾産業株式会社製)
G-3:ビス( アセチルアセトナート) 亜鉛(東京化成工業株式会社製)
G-4:ジブチル錫ジラウレート(東京化成工業株式会社製)
【0070】
(化合物(D))
D-1:ジエチレングリコールジエチルエーテル
D-2:テトラヒドロフルフリルアクリレート
D-3:テトラヒドロフラン
D-4:モルホリンアセトアミド
D-5:メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(登録商標「KJCMPA」、KJケミカルズ株式会社製)
D-6:N-アクリロイルモルホリン(登録商標「ACMO」、登録商標「Kohshylmer」、KJケミカルズ株式会社製)
D-7:N,N-ジエチルアクリルアミド(登録商標「DEAA」、登録商標「Kohshylmer」、KJケミカルズ株式会社製)
D-8:ジアセトンアクリルアミド(登録商標「Kohshylmer」、KJケミカルズ株式会社製)
D-9:N,N-ジメチルアセトアミド
【0071】
(その他成分(E))
E-1:イソボルニルアクリレート
E-2:酢酸エチル
【0072】
(重合禁止剤(H))
H-1:メトキシヒドロキノン
H-2:2,6-ジ-tert-ブチルフェノール
H-3:4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル
【0073】
実施例1~9と比較例1~3の生成物の分子量測定と不飽和基当量算出
実施例1~9で得られた不飽和ウレタン化合物(F-1)~(F-9)、比較例2、3で得られたウレタン化合物(I-2)、(I-3)は単一の化合物として得られるため、TSQ Quantum Acess MAX(Thermo Science社製)、ESIプローブ(H-ESI2、ポジ測定)を用いたインフュージョン法(溶離液としてアセトニトリル/0.1%酢酸水溶液=9/1(質量比))にてマススペクトルにより分子量を測定した。また、不飽和基当量(不飽和基1個当たりの分子量)を算出した(不飽和基当量=分子量/不飽和基数)。また、比較例1はウレタン化反応が殆ど進行しなかったため、分子量測定は行わなかった。これらの結果を表3に示す。
【0074】
実施例10~21、比較例4~7の生成物の分子量測定と不飽和基当量算出
実施例10~21で得られた不飽和ウレタン化合物(F-10)~(F-21)、比較例5~7で得られたウレタン化合物(I-5)~(I-7)は分子量分布のある高分子であり、高速液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製のLC10Aを用いて、カラムはShodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×10、理論段数:10,000段/本)、溶離液としてテトラヒドロフランを使用した。)により測定し、標準ポリスチレン分子量換算により数平均分子量を算出した。また不飽和基当量(不飽和基1個当たりの分子量)を算出した(不飽和基当量=数平均分子量/不飽和基数)。また、比較例4はウレタン化反応が殆ど進行しなかったため、分子量測定を行わなかった。これらの結果を表4に示す。
【0075】
(粘度測定)
ブルックフィードル型粘度計(装置名:デジタル粘度計 LV DV2T 英弘精機株式会社製)を使用し、JIS K5600-2-3に準じて、60℃にて、各実施例と比較例で得られた不飽和ウレタン化合物(F)とウレタン化合物(I)の粘度、或いは不飽和ウレタン化合物(F)とウレタン化合物(I)の溶液の粘度を測定した。また比較例1、4はウレタン化反応が殆ど進行しなかったため、測定を行わなかった。粘度測定の結果を表3、表4に示す。
【0076】
(色相)
各実施例と比較例で得られた不飽和ウレタン化合物(F)とウレタン化合物(I)の色相、或いは不飽和ウレタン化合物(F)とウレタン化合物(I)の溶液の色相としてハーゼン色数(APHA)を透過色測定専用器(日本電色TZ6000)にて測定し、APHAの値から以下の評価を行った。また比較例1、4はウレタン化反応が殆ど進行しなかったため、測定を行わなかった。色相測定の結果を表3、表4に示す。
◎:APHAが50未満
○:APHAが50以上かつ100未満
△:APHAが100以上かつ200未満
×:APHAが200以上
【0077】
(安定性)
各実施例と比較例で得られた不飽和ウレタン化合物(F)とウレタン化合物(I)の色相、或いは不飽和ウレタン化合物(F)とウレタン化合物(I)の溶液を60℃にて1週間保管し、保管後の粘度測定を行い、粘度変化から安定性の評価を行った。また比較例1、4はウレタン化反応が殆ど進行しなかったため、評価を行わなかった。安定性評価の結果を表3、表4に示す。
◎:粘度変化が±10%未満
○:粘度変化が±10%以上かつ±20%未満
△:粘度変化が±20%以上かつ±100%未満
×:粘度変化が±100%以上
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
分子量1000未満の不飽和ウレタン化合物の製造及び評価の結果を表1と表3に示す。これらの結果から明らかなように、本発明の方法により不飽和ウレタン化合物(F-1)~(F-9)を比較的低温、短時間で製造することができ、また、得られた(F-1)~(F-9)の色相も熱安定性も良好であった。一方、触媒を添加しない比較例1では反応は完結せず、3級アミンを触媒とした比較例2では、高温、長時間の反応が必要となり、得られたウレタン化合物(I-2)は茶褐色であり色相が悪かった。また、アミンと不飽和結合のマイケル付加などを起こしやすく、安定性も低かった。12族元素由来の亜鉛ビス(ネオデカン酸)を触媒とした比較例3では、触媒活性が低く、長時間の反応が必要となり、得られた生成物(I-3)の色相が悪く、更に安定性が低く、不溶物の生成が確認された。
【0081】
2個以上の水酸基を有するポリオール(a2)および2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(b2)を併用して得られた、分子量1000以上の高分子量タイプの不飽和ウレタン化合物の製造及び評価の結果を表2、表4に示す。これらの結果から明らかなように、本発明の方法により、実施例10のように(a2)と(b2)を反応させた後(a1)と反応させた(多段階反応)場合でも、実施例16の様に(a1)、(a2)、(b2)を一括で仕込んで反応させた場合でも、良好な反応性を示し、比較的低温、短時間で反応が完結することが分かった。また、高分子量、高粘度から、低分子量、低粘度まで様々な不飽和ウレタン化合物を製造可能であり、得られた不飽和ウレタン化合物(F-10)~(F-23)は、色相および熱安定性に優れるものであった。反応系内にアミド結合を含有する実施例11、12では、反応性が向上しており、さらに反応系内にエーテル結合とアミド結合を共に含有する実施例13~23では、反応性が更に向上し、得られた不飽和ウレタン化合物の色相がより低くなり、熱安定性がより向上された。一方、実施例14と同様にエーテル結合およびアミド結合の双方を含有していても、触媒未添加である比較例4では、反応が完結しなかった。3級アミンを触媒とした比較例5では、必要な反応温度が高く、反応時間が長く、得られたウレタン化合物(I-5)の色相と熱安定性が悪かった。また、特許文献4(特開2010-215774号公報)に記載の実施例2や比較例1を参考にし、希釈モノマーをエーテル結合およびアミド結合の双方を含有するアクリロイルモルホリン(D-6)に変更した比較例6、7については、比較的良好な反応性を示したが、亜鉛系触媒の比較例6では着色が激しく、またスズ系触媒の比較例7が若干の着色がみられた同時に、粘度が30%程度低下した。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上、説明してきたように、本発明の不飽和ウレタン化合物の製造方法は、触媒として第1~3遷移元素と第13~15族元素(スズを除く)から選択される少なくとも1種以上の金属元素の有機塩又は錯体を使用することを特徴としたものである。低温、短時間で効率よく不飽和ウレタン化合物が得られるため、低コスト化と、色相、品質の向上を図ることが可能である。また、有毒のスズ系触媒を使用せず、得られた不飽和ウレタン化合物の安全性が高く、硬化性樹脂組成物の原料として好適に用いることが可能であり、自動車、電化製品、家具などの塗料や、コーティング材、緩衝材、パッキン、防振材、吸音材、印刷版、シーリング材、研磨剤、透明粘着シート、UV硬化型粘・接着剤、シーリング用材料、封止材、歯科衛生材料、光学材料、光造形材料、強化プラスチック用材料、三次元光造形用樹脂組成物など様々な分野に使用することができる。