(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】マンホール作業用防護柵
(51)【国際特許分類】
E02D 29/12 20060101AFI20240605BHJP
【FI】
E02D29/12 B
(21)【出願番号】P 2020172910
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】514104287
【氏名又は名称】ミラクルグリーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128521
【氏名又は名称】岩下 卓司
(72)【発明者】
【氏名】三宅 英文
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】実開平1-180520(JP,U)
【文献】特開2021-031990(JP,A)
【文献】実開昭61-80831(JP,U)
【文献】特開2018-197438(JP,A)
【文献】特開2006-045979(JP,A)
【文献】特開2001-011879(JP,A)
【文献】実開昭51-038375(JP,U)
【文献】実開昭54-078306(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0289905(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/00
29/045-37/00
E04G 21/32
E04H 17/00-17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形のマンホール開口部より外側の円周上に等間隔で立設される3本の垂直支柱と、前記3本の垂直支柱の各々に垂直軸方向に回動可能に取り付けられ、隣接する垂直支柱の間隙を開閉する中折れ可能な片開き式の3枚の扉体を備えたマンホール作業用防護柵であって、前記3本の垂直支柱の上端には、前記垂直支柱から水平方向に伸長する梁部が設けられているとともに、前記各梁部の先端は、前記梁部を等角度の三又状に固定可能な梁部連結部材によって連結されていることを特徴とするマンホール作業用防護柵。
【請求項2】
前記3枚の扉体は、全ての扉体を閉じた状態では、上面視で正六角形状をなしていることを特徴とする請求項1に記載のマンホール作業用防護柵。
【請求項3】
前記梁部連結部材は、前記各梁部の先端を垂直軸まわりに回動可能に連結することができることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマンホール作業用防護柵。
【請求項4】
前記3本の垂直支柱の下端部には支柱伸縮手段が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかひとつに記載のマンホール作業用防護柵。
【請求項5】
前記3本の垂直支柱の下端部には、前記マンホール開口部の縁に係止するフックが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかひとつに記載のマンホール作業用防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道等の地下管路の清掃・点検・工事などの作業をするため、路面に配置されているマンホールの開口部に設置する作業用の防護柵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地下管路で作業をする場合には、作業従事者がマンホールの蓋を取り外して開口部より入孔し、タラップを降りて管路内部の所定の位置まで移動したうえで作業を行っている。またその際には、管路内部の換気や各種機材の搬入のため、通常はマンホールの開口部は開けたままの状態で作業が行われており、開口部に通行人等が落下しないよう防護する配慮が必要となる。
【0003】
そこで従来より、マンホールの開口部の周囲に設置する様々な防護手段が提案されており、例えば特許文献1には、上端部がX状をなす梁で連結された伸縮可能な4本の支柱の周りに扉体を取り付けた構造を有する防護柵が記載されている。
【0004】
この防護柵は、円形状のマンホール開口部の周囲に4本の支柱を立設して使用するもので、柵の機能に加え、X状をなす梁の中心位置には、安全ブロックを取り付けてワイヤーロープで作業者のハーネスを係止できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで道路上に設けられたマンホールは、必ずしも平坦な路面の中央に配置されているとは限らず、凹凸のある路面や傾斜面に設けられているものがあるほか、道路際に設置されたマンホールでは、歩道の縁石や段差等がマンホール開口部の際まで近接している場合があるなど、様々な配置状況が見受けられる。
【0007】
以上のような実情を踏まえると、特許文献1に記載のような4本の支柱を備えた防護柵を、前述のような凹凸のある路面や傾斜している路面に設置しようとした場合、4本の支柱の長さを適宜調整して柵の水平を出すという非常に面倒な作業が必要となる。また道路際に設置されたマンホールでは、4本の支柱を設置する十分なスペースがとれない場合や、かろうじて設置できたとしても扉体の開閉に支障をきたすといった事態も想定される。さらに開閉可能な扉体が1個所しか設けられていないため、使い勝手が悪い場合もあると考えられる。
【0008】
そこで本発明は、前述のような様々な配置状況にあるマンホールに対して作業用防護柵を設置する際の問題点を鑑みなされたものであり、その目的は、三脚構造を採用することにより水平設置が容易にでき、またどの方向からも扉体の開閉が可能であり、道路際など十分なスペースが確保できないマンホールでも設置が可能なうえに、扉の開閉にも支障をきたすことなく、さらにはコンパクトに折りたたむことができる構造を採用したマンホール作業用防護柵を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして本発明は上記目的を達成するために、請求項1の防護柵では、円形のマンホール開口部より外側の円周上に等間隔で立設される3本の垂直支柱と、前記3本の垂直支柱の各々に垂直軸方向に回動可能に取り付けられ、隣接する垂直支柱の間隙を開閉する中折れ可能な片開き式の3枚の扉体を備えたマンホール作業用防護柵であって、前記3本の垂直支柱の上端には、前記垂直支柱から水平方向に伸長する梁部が設けられているとともに、前記各梁部の先端は、前記梁部を等角度の三又状に固定可能な梁部連結部材によって連結されていることを特徴としている。
【0010】
また請求項2の防護柵では、前記3枚の扉体は、全ての扉体を閉じた状態では、上面視で正六角形状をなしていることを特徴としている。
【0011】
この発明によれば、全ての扉体を閉じた状態では、上面視で正六角形状をなしているため、円形状のマンホール開口部に極力沿った状態で扉体が配置され、マンホールへの落下防止効果が高くて安全である。さらに道路際に防護柵を設置する際にも扉体が邪魔にならず、設置可能なマンホールの範囲が極めて広い。
【0012】
また請求項3の防護柵では、前記梁部連結部材は、前記各梁部の先端を垂直軸まわりに回動可能に連結することができることを特徴としている。
【0013】
この発明によれば、防護柵の設置時には、梁部連結部材で各梁部を強固に固定して使用し、運搬時には、各梁部の先端を垂直軸まわりに回動可能に連結して3本の支柱をコンパクトに折り畳むことができるようになる。
【0014】
また請求項4の防護柵では、前記垂直支柱の下端部には支柱伸縮手段が設けられていることを特徴としている。
【0015】
本発明の防護柵は三脚構造を採用しているために、基本的には設置面の状況にかかわらず安定した設置が可能であるが、特にこの発明によれば、傾斜面等に設置する際に支柱伸縮手段を伸縮させて容易に水平を出すことができる。
【0016】
また請求項5の防護柵では、前記3本の垂直支柱の下端部には、前記マンホール開口部の縁に係止するフックが設けられていることを特徴としている。
【0017】
この発明によれば、フックによって各支柱がマンホール開口部に強固に固定されるため、防護柵本体がずれることがなく安全に作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明のマンホール作業用防護柵を用いれば、三脚構造を採用しているため水平設置を確実かつ容易に行うことができる。さらに円形状のマンホールの開口部に沿った正六角形状の状態で扉体が配置されるため安全性に秀でており、またどの方向からも扉体が開閉可能で、道路脇など十分なスペースが確保できないマンホールに対しても、扉体の開閉に支障をきたすことなく設置が可能である。また運搬に際しても、コンパクトに折りたたむことができるという優れた効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態を示すマンホール作業用防護柵の使用状態図
【
図4】本発明のマンホール作業用防護柵を道路際に設置した場合の上面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明すると、請求項1に記載の発明に対応するマンホール作業用防護柵を、マンホール開口部1のある路面に設置した際の使用状態を
図1に、同様の状態の側面図を
図2に示している。また
図3には上面図を示しており、特に扉体5を全て閉じた状態のものをAに、扉体5のうち二つを開いた状態のものをBに、運搬用に折り畳んだ状態のものをCに示している。さらに
図4の上面図には、マンホール開口部1が道路際の縁石15等に近接した位置に配置されている場合の使用状態を示している。
【0021】
各図において2は、剛性の高い金属管等の素材で作成される長さ2メートル強の直線状の3本の垂直支柱で、いずれの形状・構造ともに同一のものであるが、少なくとも直径5センチメートル程度の素材を使用することが望ましい。またその上端には、前記垂直支柱2から水平方向に屈曲した梁部3が設けられている。当該梁部3もいずれの形状・構造ともに同一のものであるが、本発明の防護柵を設置する際には前記梁部3は垂直支柱2に対して強固に固定されている必要があり、その製造にあたり垂直支柱2の先端を屈曲させて梁部3を形成する一体構造を採用してもよいが、アルミ材で製造する場合には、剛性の高いジョイント4を介して垂直支柱2の上端に梁部3を取り付けるようにしても良い。
【0022】
また前記梁部3の先端は、梁部連結手段6によって垂直軸周りに回動可能に連結されている。
図1、
図2、
図3に記載の梁部連結手段6では、角を丸めた正三角形状の2枚の挟持板7により三か所の梁部3の先端を上下から挟持するとともに、上下方向に縦通する挟持ボルト8で2枚の挟持板7とともに固定する構造のものを採用している。
【0023】
前記挟持ボルト8は、
図3のAに示すように各々梁部3の長手方向に沿って8a及び8bの2本が設けられており、防護柵をマンホール開口部1に設置する際には、前記2本の挟持ボルト8a・8bを使用して固定すれば各梁部3の先端は等角度の三又状に強固に固定されるので、3本の垂直支柱2は、正三角形の頂点をなす三点支持の状態で、マンホール開口部より外側の円周上の地面に等間隔で立設させることができるようになる。
【0024】
また扉体5の幅は、2本の垂直支柱2の間隔よりも若干長く設定し、全ての扉体5を取り付けて扉体5を全て閉じれば、扉体5は全体として、
図3の上面
図Aに示すように上面視で正六角形状となるように設計されている。そして本発明の防護柵をマンホール開口部1に設置した状態では、円形状のマンホール開口部1の周囲に極力沿った状態で扉体5が配置されるため、マンホール開口部1の全周にわたり扉体5との間にほぼ一定の間隔を確保することができ、マンホールへの落下防止効果が高く安全性に秀でた防護柵として機能する。
【0025】
さらに本発明の扉体5は全てを開閉可能としているため、3方向のうち任意の方向からアクセスが可能であるとともに、各扉体5は中折れが可能なため、垂直方向に二つ折りにすれば、
図3のBに示すように扉体5を開放しても大きく外に張り出さず通行の邪魔になり難い。
【0026】
また運搬時には、挟持ボルト8aの固定を解除して先端側の挟持ボルト8bの1本のみを使用して梁部3を固定すれば、各梁部3の先端は挟持ボルト8bの垂直軸まわりに回動可能に連結された状態になるので、各梁部3を垂直支柱2とともに回動させて、扉体5を取り外せば
図3のCに示すような状態でコンパクトに折り畳むことができるようになる。
【0027】
また本発明の防護柵は、道路際に配置されたマンホールなど、マンホール開口部1近くまで縁石15等の障害物が迫っている場合であっても、
図4のDに示す使用状態にすることで縁石15等に邪魔されることなく防護柵を設置することができる。
【0028】
この場合は
図4のEに示すように、3本の垂直支柱2の接地位置を頂点とする正三角形17に、円形のマンホールの開口部1が内接する位置に垂直支柱2を接地させ、さらに縁石15に面する側の扉体5の係合ピン14を開放して扉体5を直線状に伸張すれば、
図4のDに示す使用状態となる。
【0029】
なお地下管路には様々な用途を有したものがあり、これらの用途に応じマンホール開口部の直径も複数の規格が存在する。そして最もマンホールの数が多いのは下水道用のマンホールであり、その大半が開口部の直径は60センチメートルの規格が採用されている。
【0030】
したがって、特に本発明の防護柵を、最も用途が多いと見込まれる下水道用に最適化しようとする場合には、
図4のEに示すように、マンホール開口部1の直径をXとした場合、垂直支柱2を等間隔に立設する円周16の直径Yは、マンホール開口部1の直径Xの2倍の長さ、すなわち120センチメートル程度に設定すれば、
図4のDに示す状態の設置が可能となる。
【0031】
本発明のマンホール作業用防護柵では、3本の垂直支柱2の間隔は前記梁部3の長さによって決定されるものであり、実際の製品の設計にあたっては、垂直支柱2自体の直径や、扉体5の厚みが各々5センチメートル程度あるため、扉体5の垂直支柱2への取り付け位置等に応じ、各垂直支柱2が直径120±10センチメートルの円周上に等間隔に立設するように前記梁部3の長さを適宜調整して製造すれば、特に下水道用に最適化されたマンホール作業用防護柵を提供することができる。
【0032】
さらに電話・電気・ガス等にも利用される共同溝マンホールでは、マンホール開口部1の直径が90センチメートルという規格が採用されており、こうした上記下水道用とは異なる規格のマンホールについても、上記と同様にYをXの2倍の長さ程度となるように梁部3の長さを適宜調整して製造すれば、所望の規格のマンホールに最適化することができる。また梁部3に長さが伸縮自在な機構を採用すれば、設置可能なマンホール開口部1の直径Xが広範囲に広がり、きわめて汎用性の高いマンホール作業用防護柵を提供することもできる。
【0033】
また
図6における左側の垂直支柱2aの下端部には、ねじ込み式の調整ボルト10を介して路面に接するベースプレート9が取り付けられたものを示しており、当該調整ボルト10を回転させて長さを調整すれば、垂直支柱2の長さを調整可能な支柱伸縮手段として機能させることができる。
【0034】
本発明の防護柵は三脚構造による三点支持のため、無造作に地面に設置しても垂直支柱2aは全て接地するためぐらつくことは無いが、傾斜や段差のある路面等に設置する場合には、前記支柱伸縮手段によって垂直支柱2aの長さを適宜調整することにより、防護柵全体の水平を容易に出すことができる。なお前記支柱伸縮手段は、三本の垂直支柱2の全てに設けることが望ましいが、1本の垂直支柱にのみ設けている場合でも最小限の水平調整機能を果たすことが可能であり、四脚構造の場合に比べて格段に調整が容易である。
【0035】
また
図6における右側の垂直支柱2bの下端部には、前記支柱伸縮手段に加えてフック18が取り付けられたものを示している。当該フック18は、先端部をL字型に屈曲させた長尺の金属板で、他端部の長手方向に設けられたスリット状の取付孔に調整ボルト10を挿通するとともに、上下から2つのナットで強固に固定する構造を採用している。なお前記フック18は、3本の垂直支柱2の全てに取り付けられている必要があり、三つのフック18における前記L字状に屈曲した先端部を、三方向からマンホール開口部1の縁に係止することにより、防護柵全体がマンホール開口部1に強固に固定されることとなり、安全に作業を行うことができる。
【0036】
またフック18を調整ボルト10に固定するにあたっては、前記スリット状の取付孔に沿って調整ボルト10の固定位置をフック18の長手方向にスライドさせることができるので、フック18の伸長を自在に調整することができる。
【0037】
特に本発明の防護柵では、
図1、
図2に示すように、梁部連結手段6の中心位置に、ウインチ11や滑車等を取り付けることができるので、ワイヤーロープで作業者のハーネスを係止して安全を確保したり、資材や工具等の搬入出作業を行う場合など、防護柵に相当の荷重をかける場合には、前記フック18によって防護柵をマンホール開口部1に確実に固定しておくことが望ましい。
【0038】
次に垂直支柱2に取り付ける扉体5の構造について説明すると、本発明の扉体5は
図5に示すように、縦長方形状の2枚の扉板を蝶番13aで接合したもので、中央部から垂直軸まわりに中折れ可能な片開き式となっており、全て同じ形状・構造を有する3枚の扉体5が各々3本の垂直支柱2に取り付けられている。扉体5の素材としては金属製のフレームを使用してもよいし、軽量なFRP等で製造してもよいが、安全性の見地から5センチメートル程度の厚みをもたせることが望ましい。
【0039】
扉体5は、その一側端部を蝶番13bによって垂直軸まわりに回動可能な状態で垂直支柱2に固定されるとともに、他側端部は、隣接する垂直支柱2に対して抜き差し可能な係合ピン14によって係合されているので、当該係合ピン14を開放すれば、
図1や
図3のBに示すような中折れ可能な片開き式の開き扉として、全ての扉体5を自在に開閉することができる。
【0040】
なお扉体5を垂直支柱2に取り付ける際の上下位置は、扉体5の下端部が地面の近くに位置するように取り付けることが安全上望ましく、扉体5の高さは1メートル程度を確保すればよい。また運搬時には、前記蝶番13として容易に分解可能な構造のものを採用すれば、垂直支柱2から扉体5を容易に取り外せるようになるほか、中折れ部からも扉体5を2つに分解することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように本発明のマンホール作業用防護柵は、三脚構造を採用しているため、設置可能なマンホールの適用範囲が広く、またコンパクトに折り畳めて運搬も容易であるため、下水道用のマンホールに使用するほか、様々な規格のマンホールに使用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 マンホール開口部、2 垂直支柱、3 梁部、4 ジョイント、 5 扉体、6 梁部連結手段、7 挟持板、8 挟持ボルト、9 ベースプレート、10 調整ボルト、11 ウインチ、13 蝶番、14 係合ピン、15 縁石、18 フック