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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】止水装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20240605BHJP
   E06B 7/22 20060101ALI20240605BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/22 Z
E04H9/14 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021033339
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134294
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-10-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000168115
【氏名又は名称】KTX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】野田 太一
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-059379(JP,A)
【文献】登録実用新案第3214872(JP,U)
【文献】特開2017-061793(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2015-0000357(KR,U)
【文献】特開2007-040098(JP,A)
【文献】登録実用新案第3001374(JP,U)
【文献】特開2016-113858(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0467597(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E04H 9/14
E06B 7/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が通る出入口又は通路の被取付部材に取り付けて使用される止水板であって、
アルミニウム合金で形成されている止水板本体(2)と、止水板本体(2)の背面の左右側縁付近にそれぞれ取着された縦方向に延びる弾性変形可能な背面パッキン(6)と、止水板本体(2)の背面の左右側縁付近にそれぞれ取着された永久磁石(7)とを含み構成された止水板(1)と、人が通る出入口又は通路の左右の被取付部材(11)の正面にそれぞれ取着された強磁性体板(12)とを含み、前記背面パッキン(6)の背面は、永久磁石(7)の背面よりも背方にあり、前記永久磁石(7)を強磁性体板(12)に磁気吸着させると、前記背面パッキン(6)が強磁性体板(12)に押し付けられるように構成され
前記永久磁石(7)は、止水板本体(2)の背面にネジ(8)により着脱可能に取着されていることを特徴とする止水装置。
【請求項2】
永久磁石(7)は、背面パッキン(6)に形成された穴又は切欠を挿通して止水板本体(2)の背面に取着されている請求項1記載の止水装置。
【請求項3】
止水板本体(2)の下端面に取着された横方向に延びる弾性変形可能な下端面パッキン(9)を含む請求項1又は2記載の止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人が通る出入口や通路に取り付けて、建物内や通路内への水の浸入を止める止水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化が世界的規模で進展し、降水量が拡大・増加しており、記憶に新しい2015年9月の東日本豪雨、2020年7月の西日本豪雨による大規模災害など、日本各地でゲリラ豪雨による激甚災害が多発している。都市型水害も深刻化し、内水氾濫(住宅地や商業地でマンホールなどから水が溢れ出る現象)や、側溝による排水の飽和などの理由で、建物の回りの水位が上がり、建物の出入口の隙間から建物内に浸水する事例が増加している。特に金融機関やコンビニエンスストアなどへの浸水は、社会インフラを停止させ、2次被害をもたらす。
【0003】
このような建物内への浸水を防止するには、一般に「土のう」が使用されている。しかし、土のうは嵩張り、保管場所の確保が大変であり、袋当たり約18kgもあり積み上げるのに大変な労力を要するという問題がある。
【0004】
そこで、従来においても、土のうに代えて次のように「止水板」を出入口に種々の構造で取り付ける浸水対策が考えられている。これらによれば、上記の問題は緩和されるが、次のような問題があった。
【0005】
止水板を溝付き支柱の溝に落とし込むもの(特許文献1,2)は、溝付き支柱止水板の作製及び設置に時間がかかる。
止水板を枠体にボルトとナットにより締め付けるもの(特許文献3)は、止水板の取り付けに時間がかかる。
止水板を断面L字形に形成し、その水平部に錘をのせるもの(特許文献4)は、止水板が前方に嵩張り、重い錘の取り扱いが大変である。
止水板を枠体に締付金具により締め付けるもの(特許文献5,6)や、止水板の係合部を枠体の係合部に係合するもの(特許文献7,8)は、止水板が締付金具や係合部により横方向に嵩張りやすい。また、締付金具や係合部が緩むと止水性能が低下し、締付金具や係合部が壊れると修理や部品交換が面倒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-278458号公報
【文献】特開2008-169561号公報
【文献】特許第4810059号公報
【文献】特許第6491707号公報
【文献】特開2003-41557号公報
【文献】特開2020-7726号公報
【文献】特許第6367881号公報
【文献】特許第6713119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、人が通る出入口又は通路の被取付部材に簡単にかつ早く取り付けることができ、軽量で、横方向にも前方向にも嵩張らず、止水性能が高く、部品交換が簡単にできる止水板を提供すること、また、止水板を様々な出入口又は通路に対応して取り付けることができる止水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]止水板
人が通る出入口又は通路の被取付部材に取り付けて使用される止水板において、
止水板本体と、止水板本体の背面の左右側縁付近にそれぞれ取着された縦方向に延びる弾性変形可能な背面パッキンと、止水板本体の背面の左右側縁付近にそれぞれ取着された永久磁石とを含み構成されたことを特徴とする止水板。
【0009】
永久磁石は、止水板本体の背面にネジにより着脱可能に取着されていることが好ましい。永久磁石の交換が簡単になるからである。
【0010】
永久磁石は、背面パッキンに形成された穴又は切欠を挿通して止水板本体の背面に取着されていることが好ましい。永久磁石を背面パッキンで保護でき、また、背面パッキンが均一に潰れ変形しやすいからである。
【0011】
背面パッキンの背面は、永久磁石の背面よりも背方にあることが好ましい。背面パッキンの潰し代を形成できるからである。
【0012】
止水板本体の下端面に取着された横方向に延びる弾性変形可能な下端面パッキンを含むことが好ましい。止水板本体と地面との間からの浸水を防ぐことができるからである。
【0013】
止水板本体は、アルミニウム合金で形成されていることが好ましい。軽量性と強度を両立させることができるからである。
【0014】
[2]止水装置
上記の止水板と、人が通る出入口又は通路の左右の被取付部材の正面にそれぞれ取着された強磁性体板とを含み構成され、前記永久磁石を強磁性体板に磁気吸着させると、前記背面パッキンが被取付部材に押し付けられるように構成されていることを特徴とする止水装置。
【0015】
[作用]
(a)永久磁石を強磁性体板に磁気吸着させるという簡単でかつ早く行える操作で、止水板を被取付部材に着脱可能に取り付けることができる。
(b)止水板は、永久磁石という付加物があるもののそれは比較的軽いため、従来例のような締付金具や係合部や錘を付加したものと比べれば、軽量である。
(c)止水板は、従来例のような締付金具や係合部や錘が無いので、横方向にも前方向にも嵩張らない。
(d)永久磁石の磁気吸着力により、常に背面パッキンを被取付部材に押し付けているので、止水性能が高い。
(e)永久磁石は、劣化したり壊れたりしても、交換が簡単である。
(f)被取付部材が永久磁石に付かないものであっても、強磁性体板を取り付けることで磁気吸着可能となるので、止水装置は様々な出入口又は通路に対応可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の止水板によれば、人が通る出入口又は通路の被取付部材に簡単にかつ早く取り付けることができ、軽量で、横方向にも前方向にも嵩張らず、止水性能が高く、修理や部品交換が簡単にできる。また、本発明の止水板は、様々な出入口又は通路に対応して取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は実施例1の止水板を建物の出入口の枠体に取り付ける前の斜視図である。
図2図2は同止水板を背面から見た斜視図である。
図3図3(a)は止水板を枠体に取り付け始めるときの一部破断側面図、(b)は止水板を枠体に取り付け終えたときの一部破断側面図である。
図4図4は同取り付け後の止水装置の斜視図である。
図5図5は実施例2の止水板を背面から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1)止水板本体
止水板本体の材料は、特に限定されないが、アルミニウム(合金を含む。)、ステンレス鋼、樹脂(繊維等により強化した樹脂を含む。)等を例示できる。軽量性の点ではアルミニウム合金が好ましい。
止水板本体の形状は、特に限定されないが、正面視で長方形(正方形を含む。)が好ましい。
止水板本体の縦長さは、特に限定されないが、300~1000mmが好ましく、350~500mmがより好ましい。
止水板本体の横長さは、特に限定されないが、500~3000mmが好ましく、700~2000mmがより好ましい。
止水板本体の前後厚さは、特に限定されないが、20~100mmが好ましく、30~50mmがより好ましい。
【0019】
(2)パッキン
各パッキンの材料は、特に限定されないが、ゴム、エラストマー、樹脂等を例示でき、いずれも発泡したものを含む。
【0020】
(3)永久磁石
永久磁石の材料は、特に限定されないが、希土類磁石(ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石等)、合金磁石(アルニコ磁石、鉄クロムコバルト磁石等)、フェライト磁石等を例示できる。
永久磁石を止水板本体に取着する手段は、特に限定されないが、前記のとおりネジによる着脱可能な取着が好ましい。特に希土類磁石は、合金磁石と比べて磁力が高いが、硬くて脆く、壊れて交換を要することもあるため、ネジによる螺着であれば交換が簡単である。
永久磁石が希土類磁石からなる粒状のものである場合、その使用数は止水板本体の縦長さに応じて決めることができ、各側縁付近において2~20個が好ましく、3~12個がより好ましい。
【0021】
(4)出入口又は通路の被取付部材
人が通る出入口としては、特に限定されないが、建物の出入口、エレベーターの出入口、駐車場の出入口、地下鉄の出入口等を例示できる。
人が通る通路としては、特に限定されないが、玄関までの通路、駐車場までの通路等を例示できる。
被取付部材としては、特に限定されないが、枠体、支柱等を例示できる。
【0022】
(5)強磁性体板
強磁性体板の材料は、磁石に付くものであれば特に限定されないが、鉄、鋼、ステンレス鋼(磁石に付くマルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼)等を例示できる。
【実施例
【0023】
以下、本発明を具体化した実施例について図面を参照して説明する。なお、実施例で記す材料、構成、数値は例示であって、適宜変更できる。
【0024】
[実施例1]
図1は、建物の出入口が、被取付部材としてのアルミニウム合金製の左右の枠体11と、両枠体11間の開口を左右にスライドして開閉するスライドドア13とからなる例を示している。図1図4に示す実施例1の止水装置は、止水板1と、左右の枠体11の正面にそれぞれ取り付けられた強磁性体板12とを含み構成されている。
【0025】
止水板1は、止水板本体2と、止水板本体2の背面の左右側縁付近にそれぞれ取着された縦方向に延びる弾性変形可能な背面パッキン6と、止水板本体2の背面の左右側縁付近にそれぞれ取着された永久磁石7と、止水板本体2の下端面に取着された横方向に延びる弾性変形可能な下端面パッキン9とを含み構成されている。
【0026】
止水板本体2は、アルミニウム合金により形成され、軽量性と、水圧に余裕をもって耐えうる強度とを兼ね備えている。
止水板本体2の形状は正面視で長方形であり、寸法は縦長さ500mm、横長さ980mm、横方向中間部の前後厚さ30mmである。
【0027】
各背面パッキン6は、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDMゴム)の独立気泡発泡体により形成されている。
各背面パッキン6は、止水板本体2の背面に接着剤で接着されている。
各背面パッキン6の寸法は、縦長さ511mm(止水板本体2の下端よりも下方へ11mm突出している。)、横幅30mm、前後厚さ11mmである。
各背面パッキン6には、6個の直径15mmの挿通穴が上下方向に相互間隔をおいて貫設されている。
【0028】
永久磁石7は、厚さ9mm、外直径15mm、内直径4mmの中央穴のある円筒形粒状であり、ネオジム磁石で形成されている。
永久磁石7は、背面パッキン6の挿通穴を挿通して止水板本体2の背面に、中央穴を通したネジ8(例えばビス)により着脱可能に取着されている。従って、背面パッキン6の背面は、永久磁石7の背面よりも2mmほど背方にあり、この2mm分が背面パッキン6の潰し代となる。また、永久磁石7の使用数は、止水板本体2の各側縁付近において6個である。左右の背面パッキン6及び永久磁石7の位置は、左右の強磁性体板12の位置に対応している。
【0029】
下端面パッキン9は、EPDMゴムの独立気泡発泡体により形成されている。
下端面パッキン9は、止水板本体2の下端面に接着剤で接着されている。
下端面パッキン9の寸法は、横長さ511mm、前後幅30mm、縦厚さ11mmである。
【0030】
各強磁性体板12は、フェライト系ステンレス鋼板である。
各強磁性体板12は、両面粘着テープにより各枠体11に取着されている。取着手段は両面粘着テープに限定されず、場合によっては例えばビス止めでもよい。
各強磁性体板12の縦横寸法は、背面パッキン6の縦横寸法以上である。
【0031】
以上のように構成された実施例1の止水装置は、出入口からの浸水を防ぐために、次のように使用される。
(1)図1に示すように、出入口の左右の枠体11の正面に、強磁性体板12を取着する。
(2)次に、図1に示すように、左右の背面パッキン6及び永久磁石7が左右の強磁性体板12の直前位置に合致するように、止水板1を枠体11に接近させる。
(3)続いて、図3(a)に示すように、下端面パッキン9を地面に当てて潰すとともに、背面パッキン6の下端部を強磁性体板12に当てて潰すように、作業者は止水板1を斜め前下方へ押さえ付ける。
(4)続いて、図3(b)に示すように、背面パッキン6の全体を強磁性体板12に当てて前記2mm分を潰すように、作業者は止水板1を前方へ押さえ付け、強磁性体板12の背面を強磁性体板12に当接させて磁気吸着させる。その後作業者が手を離しても、この磁気吸着により、常に背面パッキン6が強磁性体板12を介して枠体11に押し付けられ、図4に示す取付状態となる。
【0032】
本実施例1によれば、次の作用効果が得られる。
(a)永久磁石7を強磁性体板12に磁気吸着させるという簡単でかつ早く行える操作で、止水板1を被取付部材としての枠体11に着脱可能に取り付けることができる。
(b)止水板1は、永久磁石7という付加物があるもののそれは比較的軽いため、従来例のような締付金具や係合部や錘を付加したものと比べれば、軽量である。
(c)止水板1は、従来例のような締付金具や係合部や錘が無いので、横方向にも前方向にも嵩張らない。
(d)永久磁石7の磁気吸着力により、常に背面パッキン6を被取付部材としての枠体11に押し付けているので、止水性能が高い。
(e)永久磁石7は、劣化したり壊れたりしても、交換が簡単である。
(f)枠体11が永久磁石7に付かないものであっても、強磁性体板12を取り付けることで磁気吸着可能となるので、止水装置は様々な出入口や通路に対応可能である。
【0033】
[実施例2]
次に、図5に示す実施例2の止水装置は、背面パッキン6に挿通穴が形成されておらず、永久磁石7は背面パッキン6の隣において止水板本体2の背面に取着されている点においてのみ実施例1と相違し、その他は実施例1と共通である。
本例の背面パッキン6は、枠体11のうち強磁性体板12がない部分に押し付けられてもよい。
実施例2によっても、実施例1と同様の効果が得られる。
【0034】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 止水板
2 止水板本体
6 背面パッキン
7 永久磁石
8 ネジ
9 下端面パッキン
11 枠体
12 強磁性体板
13 スライドドア
図1
図2
図3
図4
図5