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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】光コム発生装置及び光コム距離計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 9/02002 20220101AFI20240605BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240605BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
G01B9/02002
G01B11/00 B
G01C3/06 120Q
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021196411
(22)【出願日】2021-12-02
(65)【公開番号】P2023082558
(43)【公開日】2023-06-14
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】503249810
【氏名又は名称】株式会社OptoComb
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】興梠 元伸
(72)【発明者】
【氏名】今井 一宏
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特許第6994128(JP,B1)
【文献】特許第6925550(JP,B1)
【文献】特開2010-014549(JP,A)
【文献】特開2020-012641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 9/02 - 9/2061
G01B 11/00
G01C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照光と測定光の干渉信号とどちらか一方が測定区間を通った参照光と測定光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計測用の光コム発生装置であって、
互いに変調状態が異なるN(Nは3以上の整数)種類の光コムを出力するN個の自励発振型の光コム発生器を備える光コム光源部と、
上記N個の光コム発生器が出力するN種類の光コムから、互いに変調状態が異なるM(Mは2以上の整数)種類の光コムを巡回的に選択して出力するN入力M出力の光スイッチと、
上記光スイッチによる光コムの選択動作を制御する光スイッチ制御部と
備え、
上記自励発振型の光コム発生器は、その発振出力の一部を検出する光検出器による検出出力から抽出される変調周波数成分を参照信号と比較する制御部により制御された光コムを出力することを特徴とする光コム発生装置。
【請求項2】
上記自励発振型の光コム発生器は、上記制御部により、レーザー発振周波数が制御されることを特徴とする請求項に記載の光コム発生装置。
【請求項3】
上記自励発振型の光コム発生器は、上記制御部により、光コム周波数が制御されることを特徴とする請求項に記載の光コム発生装置。
【請求項4】
上記光検出器は、光フィルタを介して上記自励発振型の光コム発生器の発振出力の一部を検出することを特徴とする請求項に記載の光コム発生装置。
【請求項5】
上記自励発振型の光コム発生器は、モードロックレーザーを用いた光コム発生器であることを特徴とする請求項乃至請求項4の何れか1項に記載の光コム発生装置。
【請求項6】
上記自励発振型の光コム発生器は、パラメトリック波長変換を用いた光コム発生器であることを特徴とする請求項乃至請求項4の何れか1項に記載の光コム発生装置。
【請求項7】
上記自励発振型の光コム発生器は、レーザー光源の直接変調を用いた光コム発生器であることを特徴とする請求項乃至請求項4の何れか1項に記載の光コム発生装置。
【請求項8】
上記N個の自励発振型の光コム発生器は、基準周波数信号を基準にして各駆動周波数が同期していることを特徴とする請求項乃至請求項6の何れか1項に記載の光コム発生装置。
【請求項9】
上記N入力M出力の光スイッチの入力側に挿入されたN個の光アイソレータを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の光コム発生装置。
【請求項10】
上記N入力M出力の光スイッチの出力側に挿入されたM個の光アイソレータを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の光コム発生装置。
【請求項11】
参照光と測定光の干渉信号とどちらか一方が測定区間を通った参照光と測定光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計測装置であって、
それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる1組以上の参照光と測定光を出力する光コム発生部と、
上記光コム発生部から参照光と測定光が入力され、入力された参照光と測定光を干渉させて参照用干渉光を生成するとともに、上記入力された参照光と測定光のどちらか一方を測定対象物に向けて出力し、どちらか一方が上記測定対象物までの距離を往復した上記参照光と測定光を干渉させて測定用干渉光を生成する光コム干渉計と、上記光コム干渉計により生成された参照用干渉光を検出して参照信号を出力する参照用光検出器と、上記光コム干渉計により生成された測定用干渉光を検出して測定信号を出力する測定用光検出器とを備える光コム干渉検出部と、
上記光コム干渉検出部から出力される参照信号および測定信号の時間差に基づいて、上記測定対象物までの距離を計算する信号処理部と
を備え、
上記光コム発生部は、複数の光コム発生器から出力される互いに変調状態が異なる複数種類の光コムを光スイッチで巡回的に選択することにより、参照光と測定光の周波数設定状態の切換えが行われる請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の光コム発生装置であることを特徴とする光コム距離計測装置。
【請求項12】
上記光コム発生部の光スイッチ制御部は、上記光スイッチを介して上記参照光と測定光として出力する光コムの変調状態を示す状態信号を出力する機能を有し、
上記信号処理部は、上記参照用光検出器から出力される参照信号および上記測定用光検出器から出力される測定信号と上記光スイッチ制御部から出力される状態信号に基づいて、上記測定対象物までの距離を計算することを特徴とする請求項11に記載の光コム距離計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、参照光と測定光の干渉信号とどちらか一方が測定区間を通った参照光と測定光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計測用の光コム発生装置及び光コム距離計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、精密なポイントの距離計測が可能なアクティブ式距離計測方法として、レーザー光を利用する光学原理による距離計測が知られている。レーザー光を用いて対象物体までの距離を測定するレーザー距離計ではレーザー光の発射時刻と、測定対象に当たり反射してきたレーザー光を受光素子にて検出した時刻との差に基づいて、測定対象物までの距離が算出される(たとえば特許文献1参照)。また、例えば、半導体レーザーの駆動電流に三角波等の変調をかけ、対象物での反射光を半導体レーザー素子の中に埋め込まれたフォトダイオードを使用して受光し、フォトダイオード出力電流に現れた鋸歯状波の主波数から距離情報を得ている。
【0003】
ある点から測定点までの絶対距離を高精度で測定する装置としてレーザー距離計が知られている。たとえば、特許文献1には、測定光の干渉信号と参照光の干渉信号の時間差から距離を測定する距離計が記載されている。
【0004】
従来の絶対距離計では、長い距離を高精度で測れる実用的な絶対距離計を実現することが難しく、高い分解能を得るためにはレーザー変位計のように原点復帰が必要なため絶対距離測定に適さない方法しか手段がなかった。
【0005】
本件発明者等は、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる干渉性のある参照光と測定光をパルス出射する2つの光コム発生器を備え、基準面に照射される参照光パルスと測定面に照射される測定光パルスとの干渉光を参照光検出器により検出するとともに、上記基準面により反射された参照光パルスと上記測定面により反射された測定光パルスとの干渉光を測定光検出器により検出して、上記参照光検出器と測定光検出器により得られる2つ干渉信号の時間差から、上記基準面までの距離と上記測定面までの距離の差を求めることにより、高精度で、しかも短時間に行うことの可能な光コム距離計を先に提案している(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、測定面までの距離の基準点位置を基準光路により規定して、長距離測定を高精度で、しかも短時間に行うことができるようにした光コム距離計を先に提案している(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
光コム距離計では、原理的に周波数が異なる2種類の変調信号により駆動される2つの光コム発生器からパルス出射される干渉性のある参照光パルスと測定光パルスを用いることにより、信号処理部において、参照光検出器により得られる干渉信号(以下、参照信号と言う。)と、測定光検出器により得られる干渉信号(以下、測定信号と言う。)について周波数解析を行い、光コムの中心周波数から数えたモード番号をPとして、参照信号と測定信号のP次モード同士の位相差を計算して光コム発生器から基準点までの光コム生成、伝送過程の光位相差を相殺した後、周波数軸で次数1あたりの位相差の増分を計算して測定信号パルスと参照信号パルスの位相差を求めることにより、基準点から測定面までの距離を算出する。
【0008】
ここで、マイクロ波帯域の変調周波数f(例えば25GHz)、周波数差Δf(例えば、500kHz)である1対の変調信号により駆動される2つの光コム発生器から出力される参照光パルスと測定光パルスを用いて測定される距離は、基準点から測定面までの全体の距離(絶対距離という)から変調周波数fの半波長の整数倍の距離を差し引いた剰余の部分である。干渉信号にはΔfの周期性があり、最も近い参照信号と測定信号の位相差が求められる。半波長を超える距離を測定する場合、2πに整数をかけた位相が基準時刻から比較している参照信号までの時間差に相当する位相として内在する。1組の周波数設定では、その整数値を判別することができない。変調周波数fを変えて複数回距離測定を実行することにより、複数の測定条件に合致する値としてその整数が逆算できる。
【0009】
すなわち、周波数の切り替えを要する絶対距離測定では、計測に要する時間は周波数の切り替え時間と計測時間、絶対距離計算時間を含めたものとなる。
【0010】
2つの光コム発生器を駆動する変調信号は、例えばPLL(Phase-Locked Loop)により周波数を設定できるようにした変調信号発生器を用いることにより、周波数を切り替えることができる。
【0011】
光コム発生器を駆動する信号はできる限り位相雑音の少ないものが望ましい。位相雑音の少ないVCOを外部参照信号に同期する際に制御の周波数帯域をむやみに広げず、駆動信号のクリーンアップを狙って参照信号の位相雑音のよりもVCOの位相雑音のほうが低くなるような周波数帯域についてはVCOの特性がそのまま出るように制御帯域を制限することが行われる。
【0012】
PLLの周波数が落ち着くまでの時間(セトリング時間)は概ね制御帯域の逆数に比例すると考えれば良く、クリーンアップを狙って制御帯域を狭めるとセトリング時間が長くなり、セトリング時間を短くするため制御帯域を広げると高周波数域の位相雑音の増加や比較周波数に関連するスプリアス信号の混入レベルの増加が発生する。
【0013】
PLLに関する参考文献(非特許文献1)には、設計例として、ローパス・フィルタの帯域幅を約207kHzとした場合、約51マイクロ秒で1kHzの誤差範囲内に周波数をロックすることが紹介されている。500kHzを周波数設定の単位とするように分周回路を設定する場合にはスプリアスの混入を避けるためにはローパス・フィルタの帯域幅をもっと下げなければならず、セトリング時間は51マイクロ秒の何倍もの時間がかかることが予想される。
【0014】
そこで、光コム距離計における2つの光コム発生器には、PLL回路により基準の周波数信号に位相同期された周波数が固定された状態の複数の変調信号をスイッチ回路で切り替えて駆動信号として供給するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2001-343234号公報
【文献】特許第5231883号公報
【文献】特開2020-12641号公報
【非特許文献】
【0016】
【文献】Analog Dialogue、AD33-03 フェーズ・ロック・ループ(PLL)の基礎 著者Ian Collins
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述の如く、従来の光コム距離計では、原理的に周波数が異なる2種類の変調信号により駆動される2つの光コム発生器からパルス出射される干渉性のある参照光パルスと測定光パルスを用いることにより、参照光、測定光の周波数切替によって参照光、測定光の光コム周波数間隔が変わると干渉信号の発生の時刻や参照信号と測定信号の時間差に変化が現れるので、距離計測に時間をかけて良ければ、外部の中央演算処理装置などから光源に周波数切り替え命令を送り、切替完了とみなされるまで十分時間をおいてデータ収集と位相計算を実行後、中央演算処理装置から次の周波数設定への周波数切り替え命令を送り、十分時間をおいてからデータ収集と位相計算を実行するという手順を繰り返すことによって周波数設定と位相値の関係を複数求めることができる。
【0018】
しかしながら、距離計算を実行するために必要な一組の位相値を得る過程で空気の屈折率揺らぎや測定対象距離の微振動が位相値に誤差として混入すると次数判別して距離計算をする際の誤差の要因となるので、空気屈折率の変動や測定距離の変化よりも速やかに一組のデータ収集を終える必要がある。
【0019】
そして、距離計算を短時間で確実に行うためには、周波数設定が確実に行われていることの確認やその位相値に対応した周波数設定状態など、位相値の信頼性を判断するための材料が各位相値それぞれに揃っていることが必須である。
【0020】
周波数設定状態の切換えを高速に実施して距離計算を短時間で行うためには、高速に切り替えられた状態で収集される干渉信号の波形のどの位置がどの周波数状態なのか波形単位で知ることが必要になる。
【0021】
本発明の目的は、上述のごとき従来の実情に鑑み、光源の周波数設定状態を切換えるのではなく、複数の光コム発生器から出力される互いに変調状態が異なる複数種類の光コムを光スイッチで巡回的に選択することにより、参照光と測定光の周波数設定状態の切換えを高速に且つ確実に実施することのできる光コム距離計測用の光コム発生装置及び光コム距離計測装置を提供することにある。
【0022】
また、本発明の他の目的は、光スイッチによる光コム出力の切り替えに伴う不安定動作状態を回避して参照光と測定光の周波数設定状態の切換えを瞬時に行うことができる光コム発生装置及び光コム距離計測装置を提供することにある。
【0023】
さらに、参照光と測定光の干渉信号と参照光と測定区間を通った測定光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計測装置において、周波数設定状態の切換えを高速に実施して距離計算を短時間で確実に行うことができるようにすることにある。
【0024】
本発明の他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明では、光源の周波数設定状態を切換えるのではなく、複数の自励発振型の光コム発生器から出力される互いに変調状態が異なる複数種類の光コムを光スイッチで巡回的に選択することにより、参照光と測定光の周波数設定状態の切換えを高速に且つ確実に実施する。
【0026】
すなわち、本発明は、参照光と測定光の干渉信号とどちらか一方が測定区間を通った参照光と測定光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計測用の光コム発生装置であって、互いに変調状態が異なるN(Nは3以上の整数)種類の光コムを出力するN個の自励発振型の光コム発生器を備える光コム光源部と、上記N個の光コム発生器が出力するN種類の光コムから、互いに変調状態が異なるM(Mは2以上の整数)種類の光コムを巡回的に選択して出力するN入力M出力の光スイッチと、上記光スイッチによる光コムの選択動作を制御する光スイッチ制御部とを備え、上記自励発振型の光コム発生器は、その発振出力の一部を検出する光検出器による検出出力から抽出される変調周波数成分を参照信号と比較する制御部により制御された光コムを出力することを特徴とする。
【0027】
本発明に係る光コム発生装置において、上記自励発振型の光コム発生器は、上記制御部により、レーザー発振周波数が制御されるものとすることができる。
【0028】
また、本発明に係る光コム発生装置において、上記自励発振型の光コム発生器は、上記制御部により、光コム周波数が制御されるものとすることができる。
【0029】
また、本発明に係る光コム発生装置において、上記光検出器は、光フィルタを介して上記自励発振型の光コム発生器の発振出力の一部を検出するものとすることができる。
【0030】
また、本発明に係る光コム発生装置において、上記自励発振型の光コム発生器は、モードロックレーザーを用いた光コム発生器であるものとすることができる。
【0031】
また、本発明に係る光コム発生装置において、上記自励発振型の光コム発生器は、パラメトリック波長変換を用いた光コム発生器であるものとすることができる。
【0032】
また、本発明に係る光コム発生装置において、上記自励発振型の光コム発生器は、レーザー光源の直接変調を用いた光コム発生器であるものとすることができる。
【0033】
また、本発明に係る光コム発生装置において、上記N個の自励発振型の光コム発生器は、基準周波数信号を基準にして各駆動周波数が同期しているものとすることができる。
【0037】
また、本発明に係る光コム発生装置において、上記N入力M出力の光スイッチの入力側に挿入されたN個の光アイソレータを備えるものとすることができる。
【0038】
さらに、本発明に係る光コム発生装置において、 上記N入力M出力の光スイッチの出力側に挿入されたM個の光アイソレータを備えるものとすることができる。
【0039】
また、本発明は、参照光と測定光の干渉信号とどちらか一方が測定区間を通った参照光と測定光の干渉信号の時間差から距離を測定する光コム距離計測装置であって、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる1組以上の参照光と測定光を出力する光コム発生部と、上記光コム発生部から参照光と測定光が入力され、入力された参照光と測定光を干渉させて参照用干渉光を生成するとともに、上記入力された参照光と測定光のどちらか一方を測定対象物に向けて出力し、どちらか一方が上記測定対象物までの距離を往復した上記参照光と測定光を干渉させて測定用干渉光を生成する光コム干渉計と、上記光コム干渉計により生成された参照用干渉光を検出して参照信号を出力する参照用光検出器と、上記光コム干渉計により生成された測定用干渉光を検出して測定信号を出力する測定用光検出器とを備える光コム干渉検出部と、上記光コム干渉検出部から出力される参照信号および測定信号の時間差に基づいて、上記測定対象物までの距離を計算する信号処理部とを備え、上記光コム発生部は、複数の光コム発生器から出力される互いに変調状態が異なる複数種類の光コムを光スイッチで巡回的に選択することにより、参照光と測定光の周波数設定状態の切換えが行われる請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の光コム発生装置であることを特徴とする。
【0040】
本発明に係る光コム距離計測装置において、上記光コム発生部の光スイッチ制御部は、上記光スイッチを介して上記参照光と測定光として出力する光コムの変調状態を示す状態信号を出力する機能を有し、上記信号処理部は、上記参照用光検出器から出力される参照信号および上記測定用光検出器から出力される測定信号と上記光スイッチ制御部から出力される状態信号に基づいて、上記測定対象物までの距離を計算するものとすることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明では、それぞれ発振出力の一部を検出する光検出器による検出出力から抽出される変調周波数成分を参照信号と比較する制御部により制御されるN個の自励発振型の光コム発生器が出力するN種類の光コムから、互いに変調状態が異なるM(Mは2以上の整数)種類の光コムを巡回的に選択して出力するN入力M出力の光スイッチを備えることにより、光源の周波数設定状態を切換えるのではなく、複数の自励発振型の光コム発生器から出力される互いに変調状態が異なる複数種類の光コムを光スイッチで巡回的に選択して、参照光と測定光の周波数設定状態の切換えを高速に且つ確実に実施することができる光コム距離計測用の光コム発生装置を提供することができる。
【0042】
本発明では、光スイッチの入力側及び/又は出力側に光アイソレータを備えることにより、光スイッチによる光コム出力の切り替えに伴う不安定動作状態を回避して参照光と測定光の周波数設定状態の切換えを瞬時に行うことができる光コム発生装置を提供することができる。
【0043】
本発明に係る光コム距離計測装置では、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる1組以上の参照光と測定光を出力する光コム発生部として、上記光コム発生装置を備えることにより、参照光と測定光の周波数設定状態の切換えを高速に且つ確実に実施して、信号処理部において、測定対象物までの距離計算を短時間で確実に行うことができる。
【0044】
さらに、本発明に係る光コム距離計測装置では、上記光コム発生部の光スイッチ制御部は、上記光スイッチを介して上記参照光と測定光として出力する光コムの変調状態を示す状態信号を出力する機能を有することにより、上記信号処理部は、上記参照光と測定光の変調状態を示す状態信号を用いて、干渉信号と同期して計測データを取り込み、波形の区間(場所)とその場所の周波数設定の状態を明確にして波形データを収録することにより、処理対象となる波形の区間において周波数状態の変化が無く一定であることが確認出来かつ波形データとして有効な区間であることの判定ができ、その区間の周波数設定値は計算で求められる位相値から遅延時間または距離への変換を行うことができる。すなわち、上記参照用光検出器から出力される参照信号および上記測定用光検出器から出力される測定信号と上記光スイッチ制御部から出力される状態信号に基づいて、上記測定対象物までの距離計算を短時間で確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明を適用した光コム発生装置を光コム発生部として備える光コム距離計測装置の構成例を示すブロック図である。
図2】上記光コム距離計測装置において、光スイッチを介して出力される2つ光コムの変調状態の遷移を示す状態遷移図である。
図3】上記光コム発生装置に備えられる自励発振型の光コム発生器の構成を示すブロック図であり、(A)は自励発振光源を備える光コム発生器の構成例を示し、(B)は自励発振光源を備える光コム発生器の他の構成例を示す。
図4】上記光コム発生装置に備えられる外部変調型光コム発生器の構成を示すブロック図であり、(A)は外部変調型光コム発生器の構成例を示し、(B)外部変調型光コム発生器の他の構成例を示す。
図5】本発明を適用した光コム発生装置を光コム発生部として備える光コム距離計測装置の構成例を示すブロック図である。
図6】本発明を適用した外部変調型の光コム発生装置を光コム発生部として備える光コム距離計測装置の他の構成例を示すブロック図である。
図7】本発明を適用した外部変調型の光コム発生装置を光コム発生部として備える光コム距離計測装置の他の構成例を示すブロック図である。
図8】本発明を適用した光コム発生装置を光コム発生部として備える光コム距離計測装置の他の構成例を示すブロック図である。
図9】本発明を適用した光コム発生装置を備える光コム距離計測装置の他の構成例を示すブロック図である。
図10】本発明を適用した光コム発生装置を光コム発生部として備える光コム距離計測装置の更に他の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、共通の構成要素については、共通の指示符号を図中に付して説明する。また、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0047】
図1は、本発明を適用した光コム発生装置を光コム発生部10として備える光コム距離計測装置100の構成例を示すブロック図である。
【0048】
この光コム距離計測装置100は、それぞれ周期的に強度又は位相が変調され、互いに変調周期が異なる1組以上の参照光Sと測定光Sを出力する光コム発生部10と、上記光コム発生部10から参照光Sと測定光Sが入力され、入力された参照光Sと測定光Sを干渉させた参照用干渉光Sを検出するとともに、入力された参照光Sと測定光Sのどちらか一方を上記測定対象物50に向けて出力して、どちらか一方が測定区間を通った参照光Sと測定光Sを干渉させた測定用干渉光Sを検出する光コム干渉検出部20と、上記光コム干渉検出部20において上記参照用干渉光Sを検出することにより得られる参照信号と上記測定用干渉光Sを検出することにより得られる測定信号の時間差に基づいて、上記測定対象物50までの距離を計算する信号処理部30とを備える。
【0049】
この光コム距離計測装置100における光コム発生部10は、互いに変調状態が異なる4種類の光コムを出力する4個の光コム発生器11A~11Dを備える光コム光源部11と、上記4種類の光コムが入力される4入力2出力の光スイッチ12と、上記光スイッチ12による光コムの選択動作を制御する光スイッチ制御部13とを備える。
【0050】
この光コム発生部10において、上記光スイッチ制御部13は、上記4個の光コム発生器11A~11Dが出力する4種類の光コムから、互いに変調状態が異なる2種類の光コムを巡回的に選択して出力するように、基準周波数信号発生器14により与えられる基準周波数信号FREFに同期して上記光スイッチ12による光コムの選択動作を制御する。
【0051】
そして、上記光コム発生部10は、上記光スイッチ12を介して互いに変調状態が異なる2種類の光コムを参照光Sと測定光Sとして、光コム干渉検出部20に入力する。
【0052】
この光コム距離計測装置100における光コム干渉検出部20は、上記光コム発生部10から入力される参照光Sと測定光Sのどちらか一方を測定対象物50に向けて出力し、測定対象物50まで距離を往復しない参照光Sと測定光Sを干渉させた参照用干渉光Sを参照用光検出器23で検出して参照信号として出力するとともに、どちらか一方が測定対象物50までの距離を往復し参照光Sと測定光Sを干渉させた測定用干渉光Sを測定用光検出器24で検出して測定信号として出力するもので、その干渉計の構成は様々であり、各光検出器23,24で必要な干渉信号が得られるようにビームスプリッタ(BS)や偏光ビームスプリッタ(PBS)が使い分けられる。
【0053】
この光コム距離計測装置100における光コム干渉検出部20では、上記光コム発生部10から出射された参照光Sと測定光Sは、互いに偏光面が直交しているものとし、参照光が半透鏡(BS)からなる光混合素子22Aに入射されるとともに測定光Sが全反射鏡21を介して上記光混合素子22Aに入射され、上記光混合素子22Aにより2つの混合光に分岐されて、一方の混合光が偏光ビームスプリッタ(PBS)からなる光分離混合素子22Bに入射されるとともに、他方の混合光が参照用光検出器23に入射され、上記一方の混合光が上記光分離混合素子22Bにより偏光に応じて参照光Sと測定光Sに分離されて、上記参照光Sが1/4波長板26Aを介して基準面25に入射され、また、上記測定光が1/4波長板26Bを介して測定対象物50に入射されるようになっている。上記光分離混合素子22Bにより反射された参照光Sと、1/4波長板26Aを介して基準面25に入射されて、上記基準面25により反射されて上記1/4波長板26Aを再度通過して上記光分離混合素子22Bに入射される参照光Sとは、偏光面が直交した状態になっており、上記光分離混合素子22Bは、上記1/4波長板26Aを再度通過した参照光Sを透過し、上記光分離混合素子22Bを透過した測定光Sと、1/4波長板26Bを介して測定対象物50に入射されて、上記測定対象物50により反射されて上記1/4波長板26Bを再度通過して上記光分離混合素子22Bに入射される測定光Sとは、偏光面が直交した状態になっており、上記光分離混合素子22Bは、上記1/4波長板26Bを再度通過した測定光Sを反射する。なお、上記1/4波長板26A、26Bは、それぞれファラデ-ローテータであってもよい。
【0054】
ここでは、上記光コム発生部10から出射された参照光Sと測定光Sは、互いに偏光面が直交したものとしたが、上記光混合素子22Aとして偏光ビームスプリッタを用いて、参照光Sと測定光Sの互いに偏光面が直交する成分を混合するようにしてもよい。
【0055】
さらに、上記基準面25により反射された参照光Sと、上記測定対象物50により反射された測定光Sは、上記光分離混合素子22Bにより混合され、その混合光が測定用光検出器24に入射されるようになっている。
【0056】
すなわち、上記光コム干渉検出部20は、どちらも上記測定対象物50までの距離を往復していない参照光Sと測定光Sを干渉させた参照用干渉光Sを上記参照用光検出器23で検出することにより参照信号を得て、また、上記基準面25までの基準光路の距離Lを往復した参照光Sと上記測定対象物50までの測定光路の距離Lを往復した測定光Sを干渉させた測定用干渉光Sを上記測定用光検出器24で検出することにより測定信号を得るようになっている。上記光コム干渉検出部20において、半透鏡(BS)、偏光ビームスプリッタ(PBS)、波長板、ファラデーローテータなどは干渉信号を生成するための構成要素の一部であって、干渉計の構成が変われば必要な部品も変わる。
【0057】
上記光コム干渉検出部20において、半透鏡(BS)、偏光ビームスプリッタ(PBS)、波長板、ファラデーローテータなどは干渉信号を生成するための構成要素の一部であって、干渉計の構成が変われば必要な部品も変わる。参照光と測定光は、直交した偏光状態では干渉しないが、上記参照用光検出器23、測定用光検出器24は、偏光子などで一方の射影成分を抽出するか、直交する射影成分のそれぞれを差動検出して干渉信号を強調する機能を含むなど、何らかの形で参照光と測定光の干渉を発生するようになっている。
【0058】
ここで、測定用光検出器24によって得られる干渉信号(測定信号)は、上記参照用光検出器23によって得られる干渉信号(参照信号)と同じくキャリア周波数が参照光Sと測定光Sのキャリア光周波数の差であり、上記参照光Sと測定光Sの周波数の差と同じ繰り返し周波数を持つ。しかし、上記測定用光検出器24に入力される干渉光Sは、基準面25までの距離Lと測定対象物30までの距離Lの距離差の絶対値(L-L)の分だけ、上記参照用光検出器23に入力される干渉光Sより入射タイミングが遅れる。上記参照用光検出器23によって得られる干渉信号(参照信号)と比較してこの遅れ時間が上記距離差の絶対値(L-L)の2倍の距離を光パルスが伝搬することによる遅延時間であり、真空中の光速Cをかけて屈折率nで割ることにより距離が得られる。
【0059】
すなわち、この光コム距離計測装置100において、信号処理部30では、上記参照用光検出器23により得られる参照信号と上記測定用光検出器24により得られる測定信号を取り込み、記参照光が往復した上記基準面25までの基準光路の距離Lと上記測定光が往復した上記測定対象物50までの測定光路の距離Lの距離差の絶対値(L-L)の2倍の距離を光が伝搬することによる遅延時間に相当する上記参照信号と測定信号の時間差に真空中の光速Cをかけて屈折率nで割ることにより、上記距離差の絶対値(L-L)を算出して、上記測定対象物50までの距離を求める。
【0060】
なお、この光コム距離計測装置100の光コム干渉検出部20では、参照光Sを通過させる距離Lの基準光路に基準面25を設けるようにしているが、上記基準面25に替えてリトロリフレクタや光ファイバを用いて距離Lの基準光路を形成するようにしてもよい。
【0061】
ここで、この光コム距離計測装置100において、光コム発生部10に備えられた4個の光コム発生器11A~11Dは、それぞれ周期的に強度又は位相が変調された互いに変調状態の異なる4種類の光コムを発生するもので、ここでは、基本周波数をf、距離判定に必要な基本周波数の偏移をΔf、光コム干渉を生成するための周波数差をΔfとして、第1の光コム発生器11Aは、第1の周波数Fm1=f=25000MHzで変調された第1の光コムを発生し、第2の光コム発生器11Bは、第2の周波数Fm2=f+Δf=25010MHzで変調された第2の光コムを発生し、第3の光コム発生器11Cは、第3の周波数Fm3=f+Δf=25000.5MHzで変調された第3の光コムを発生し、第4の光コム発生器11Dは、第4の周波数Fm4=f+Δf+Δf=25010.5MHzで変調された第4の光コムを発生するようになっている。
【0062】
そして、上記光スイッチ制御部13は、上記4個の光コム発生器11A~11Dから出力された互いに変調状態が異なる4種類の変調周波数Fm1~Fm4の光コムが入力される4入力2出力の光スイッチ12の動作を制御し、上記4種類の変調周波数Fm1~Fm4の光コムを巡回的に切り替えて、次の表1に示すように、互いに変調状態が異なる2種類の変調周波数FmA,FmBの光コムを出力する。
【0063】
【表1】
【0064】
表1は、設定#1~設定#4の各選択状態における互いに変調状態が異なる2種類の光コムの変調周波数FmA,FmBと位相差を示している。この表1において、Tは、距離差の絶対値(L-L)の2倍の距離を光パルスが伝搬することによる遅延時間に対応している。
【0065】
すなわち、設定#1の選択状態では、2種類の変調周波数FmA,FmBの光コムとして、第1の光コム発生器11Aから出力される第1の周波数Fm1=f=25000MHzで変調された第1の光コムと、第2の光コム発生器11Bから出力される第2の周波数Fm2=f+Δf=25010MHzで変調された第2の光コムが選択される。設定#2の選択状態では、2種類の変調周波数FmA,FmBの光コムとして、第3の光コム発生器11Cから出力される第3の周波数Fm3=f+Δf=25000.5MHzで変調された第3の光コムを発生し、と、第4の光コム発生器11Dから出力される第4の周波数Fm4=f+Δf+Δf=25010.5MHzで変調された第4の光コムが選択される。設定#3の選択状態では、2種類の変調周波数FmA,FmBの光コムとして、第2の光コム発生器11Bから出力される第2の周波数Fm2=f+Δf=25010MHzで変調された第2の光コムと、第1の光コム発生器11Aから出力される第1の周波数Fm1=f=25000MHzで変調された第1の光コムが選択される。設定#4の選択状態では、2種類の変調周波数FmA,FmBの光コムとして、第4の光コム発生器11Dから出力される第4の周波数Fm4=f+Δf+Δf=25010.5MHzで変調された第4の光コムと、第3の光コム発生器11Cから出力される第3の周波数Fm3=f+Δf=25000.5MHzで変調された第3の光コムが選択される。
【0066】
この光コム距離計測装置100に備えられた上記光コム発生部10は、4種類の光コムを出力する光コム光源部11と、上記光コム光源部11から4種類の光コムが入力される4入力2出力の光スイッチ12と、光スイッチ12による光コムの選択動作を制御する光スイッチ制御部13とを備える。
【0067】
上記光コム光源部11は、周期的に強度や位相、周波数、偏光、などが変調された互いに変調状態が異なる4種類の光コムを出力する4個の光コム発生器11A、11B、11C、11Dを備える。
【0068】
また、上記光スイッチ12は、光スイッチ制御部13により選択動作が制御される光経路の切換え機能を有しており、上記光コム光源部11から入力される4種類の光コムから巡回的に2種類の光コムを選択して、参照光Sと測定光Sとして出力する。
【0069】
そして、上記光スイッチ制御部13は、基準周波数信号発生器12により与えられる基準周波数信号FREFに同期して上記光スイッチ12による光コムの選択動作を制御するようになっている。
【0070】
このような構成の光コム発生部10では、光源の周波数設定状態を切換えるのではなく、4入力2出力の光スイッチ12を備えることにより、4個の光コム発生器11A、11B、11C、11Dが出力する4種類の光コムから、互いに変調状態が異なる2種類の光コムを巡回的に選択して、参照光Sと測定光Sとして出力することができ、参照光Sと測定光Sの周波数設定状態の切換えを高速に且つ確実に実施することができる。
【0071】
図2は、この光コム発生部10において、上記光スイッチ12を介して出力される参照光Sと測定光Sの変調状態の遷移を示す状態遷移図であり、横軸は時間、縦軸は光コムの変調周波数が異なるが光コムの光コムの表1に示される設定#1から設定#4の選択状態を示している。
【0072】
ここで、光コム距離計では、原理的に周波数が異なる2種類の変調信号により駆動される2つの光コム発生器からパルス出射される干渉性のある基準光パルスと測定光パルスを用いることにより、信号処理部において、基準光検出器により得られる干渉信号(以下、参照信号と言う。)測定光検出器により得られる干渉信号(以下、測定信号と言う。)について周波数解析を行い、光コムの中心周波数から数えたモード番号をNとして、参照信号と測定信号のN次モード同士の位相差を計算して光コム発生器から基準点までの光コム生成、伝送過程の光位相差を相殺した後、周波数軸で次数1あたりの位相差の増分を計算して信号パルスの位相差を求めることにより、基準点から測定面までの距離を算出する。
【0073】
なお、測定距離が変調周波数fの半波長を超えると物体光の周期性によりその半波長の整数倍の距離が不明となって一義的に距離を求められないので、表1に示す4通りの変調周波数に設定した基準光パルスと測定光パルスを用いて4回測定して、信号処理部において、同じ処理を行うことにより得られる各位相差を用いて、半波長相当の多義性距離(L=c/2f c:光速)を超える距離を算出する。
【0074】
すなわち、表1に示す4通りの変調周波数に巡回的に選択設定される参照光Sと測定光Sにより距離測定を行って得られる参照信号と測定信号の位相差は、変調周波数がfとf+Δfである設定#1の選択状態では-2πfTとなり、変調周波数がf+Δfとf+Δf+Δfである設定#2の選択状態では-2π(f+Δf)Tとなり、変調信号の変調周波数がf+Δfとfである設定#3の選択状態では-2π(f+Δf)Tとなり、変調周波数がf+Δf+Δfとf+Δfである設定#4の選択状態では-2π(f+Δf+Δf)Tとなる。
【0075】
距離(L=c/2f c:光速)も長い場合、参照信号と測定信号の位相差(-2πfT)は、mを整数としてφ+2mπの形であり、計算によりφの部分だけが求められるが、整数値mは不明である。
【0076】
一方、設定#1の選択状態での参照信号と測定信号の位相差-2πfTと#2の設定での参照信号と測定信号の位相差-2π(f+Δf)Tの差は2πΔfTであり、また、設定#3の選択状態での参照信号と測定信号の位相差-2π(f+Δf)Tと設定#4の選択状態での参照信号と測定信号の位相差-2π(f+Δf+Δf)Tの差は2πΔfTであり、1/Δfの波長に相当する距離(Δf=10MHzであればLは15m)までならば、一義的に位相が決まる。
【0077】
そして、この位相をf/Δf倍して設定#1の選択状態での位相差との比較により整数mを判定することができる。
【0078】
さらに、表1の設定#1の選択状態での位相差-2πfTと設定#3の選択状態での位相差-2π(f+Δf)Tの差から2πΔfが得られる。
【0079】
さらに、表1の設定#1の選択状態での位相差-2πfTと設定#3の選択状態位相差-2π(f+Δf)Tの差から2πΔfが得られる。
【0080】
ここで、f=25GHz、Δf=500kHz、Δf=10MHzとした場合、Δf=500kHzであるからL=300mまでの距離計測を行うことができる。
【0081】
この光コム発生部10を搭載した光コム距離計測装置100では、表1に示す4通りの変調周波数に巡回的に選択設定される参照光Sと測定光Sにより距離測定を行って得られる参照信号と測定信号を用いて絶対距離計測が行われる。すなわち、1つの状態を一定時間保持した後に他の状態に移り、一定の区間でその状態の信号位相計測を行い、設定#1、設定#2、設定#3、設定#4の各選択状態での位相を使って絶対距離の計算処理を実行する。
【0082】
光コム距離計測装置100における計測速度は、6mm以内の相対距離測定ではΔfに等しく500kHzであるのに対し、周波数の切り替えを要する絶対距離測定では、周波数の切り替え時間と絶対距離計算時間を含めたものとなる。
【0083】
上記光コム発生部10では、光源の周波数設定状態を切換えるのではなく、上記4個の光コム発生器11A、11B、11C、11Dが出力する4種類の光コムから、光スイッチ12で互いに変調状態が異なる2種類の光コムを巡回的に選択して、参照光Sと測定光Sとして出力することで、参照光Sと測定光Sの変調周波数の切換えを高速に且つ確実に実施することができ、参照光Sと測定光S2の変調周波数を切り替えて絶対距離計測を行う2つの光コム光源として用いることにより、絶対距離の測定時間を短縮することができる。
【0084】
なお、距離計測だけであれば、設定#1と設定#2の選択状態のみ、あるいは、設定#3と設定#4の選択状態のみでも可能であるが、上述のごとく設定#1,設定#2,設定#3,設定#4の各選択状態、すなわち、上記4種類の変調周波数Fm1,Fm2,Fm3,Fm4の光コムを上記光スイッチ12により巡回的に切り替えて参照光Sと測定光Sとすることにより、測定対象以外の信号伝送経路による位相オフセットを補正して高精度に絶対距離結果を得ることができる。すなわち、参照光S1と測定光S2の変調周波数を入れ替えたときに測定対象距離に由来の位相は絶対値が変わらず符号が反転する。一方、干渉信号伝送路のケーブル長さに由来するオフセットは符号が変わらず一定値になる。したがって、2回の位相測定の結果を差し引いて2で割るとオフセットを除外した位相値を求めることができる。
【0085】
ここで、上記光コム発生部10では、N=4、M=2として、光コム光源部11に備えられた4個の光コム発生器11A,11B,11C,11Dから出力される互いに変調状態の異なる4種類の光コムから、4入力2出力の光スイッチ12により巡回的に切り替えられた互いに変調状態の異なるM(M=2)種類の光コムを参照光S1と測定光S2として出力するようにしたが、光コム発生器の数Nは、N=4に限定されることなく、3以上の整数であればよく、又、光スイッチにより巡回的に切り替えて出力する光コムの数Mは、M=2に限定されることなく、2以上の整数であればよく、互いに変調状態が異なるN(Nは3以上の整数)種類の光コムを出力するN個の光コム発生器が出力するN種類の光コムから、N入力M出力の光スイッチにより、互いに変調状態が異なるM(Mは2以上の整数)種類の光コムを巡回的に選択して出力するものとすることができる。
【0086】
すなわち、上記光コム発生部10は、互いに変調状態が異なるN(Nは3以上の整数)種類の光コムを出力するN個の光コム発生器11A,11B,11C,11Dを備える光コム発生部11と上記N個の光コム発生器が出力するN種類の光コムから、互いに変調状態が異なるM(Mは2以上の整数)種類の光コムを巡回的に選択して出力するN入力M出力の光スイッチ12と、基準周波数信号FREFに同期して上記光スイッチによる光コムの選択動作を制御する光スイッチ制御部13とを備える本発明に係る光コム発生装置としての構成を有している。
【0087】
ここで、上記光コム発生部10すなわち本発明に係る光コム発生装置に備えられる上記N個の光コム発生器11A,11B,11C,11Dは、特許文献2(特許第5231883号公報)の第1の光源、第2の光源と同等の性能を持つ光源であり、上記光スイッチ12を介して出力される参照光S1と測定光S2は上記特許文献2における参照光S1と測定光S2に相当する光になっている。
【0088】
上記N個の光コム発生器11A,11B,11C,11Dには、モードロックレーザーを使う、パラメトリック波長変換を応用、連続レーザーの電気光学変調など各種方式でレーザー周波数コムすなわち光コムを生成する光コム発生器を用いることができる。
【0089】
上記光コム距離計測装置100における上記光コム発生部10すなわち本発明に係る光コム発生装置に備えられる上記N個の光コム発生器11A,11B,11C,11Dは、その具体的な構成例を図3の(A),(B)に示すように、自励発振型の光コム発生器である。
【0090】
すなわち、図3の(A),(B)は、上記光コム発生装置(光コム発生部10)の光コム光源部11に備えられた上記N個の光コム発生器11A,11B,11C,11Dとして用いられる自励発振型の光コム発生器110、120の構成例を示すブロック図であり、(A)は自励発振光源111を備える光コム発生器110の構成を示し、(B)は自励発振光源111を備える光コム発生器120の構成を示している。
【0091】
図3の(A)に示す光コム発生器110は、周期的に強度や位相、周波数、偏光、などが変調された光を自励発振する光源を想定しており、自励発振型の光発振器111と、この光発振器111の出力光の一部を検出する光検出器112と、この光検出器112により得られる検出信号が供給される制御部113を備え、上記制御部113により上記光発振器111のレーザー発振の中心周波数や繰り返し周波数を制御することによって、光コム周波数が制御された目的の変調状態の光コムを出力する。
【0092】
この光コム発生器110では、上記自励発振型の光発振器111の出力光の一部を光検出器112により検出して変調周波数成分を抽出した検出信号を制御部113に送り、この制御部113おいて、上記光検出器112による検出信号について、参照信号の周波数参照信号の周波数、位相と比較することにより、所望の周波数や位相となるように自励発振型の光コム発生器110の制御を行う制御信号を得て、上記自励発振型の光発振器111の共振器長や媒質の屈折率を制御することにより、光コム周波数が制御された目的の変調状態の光コムを上記自励発振型の光コム発生器110から出力する。
【0093】
上記光発振器111から出力する光コムの光コム周波数を制御する制御部113を備えることにより、レーザー発振の繰り返し周波数すなわち光コムの周波数間隔を制御することで、制御していないものに比べ上記光コム距離計測装置100における距離の測定精度を高くすることができ、また、レーザーの中心周波数を制御することで、上記光コム干渉検出部20に備えられる干渉信号の検出器23,24の検出帯域内に干渉信号を発生させることができる。
【0094】
ここで、位相や周波数、偏光が変調されている場合、上記光検出器112において、光強度を検出しただけでは変調周波数成分が検出されない可能性がある。
【0095】
そこで、図3の(B)に示す光コム発生器120では、上記光コム発生器110の自励発振型の光発振器111と光検出器112の間に波長フィルタや偏光フィルタ等の光フィルタ114を挿入した構成になっている。
【0096】
この光コム発生器120では、光フィルタ114を備えることにより、上記自励発振型の光コム発生器110の出力光位相や周波数、偏光が変調されていても、上記自励発振型の光発振器111の出力光の強度変調成分を上記光検出器112により確実に検出して変調周波数成分を抽出した検出信号を制御部113に送り、この制御部113おいて、上記光検出器112による検出信号について、参照信号の周波数参照信号の周波数、位相と比較することにより、所望の周波数や位相となるように自励発振型の光コム発生器110の制御を行う制御信号を得て、上記自励発振型の光発振器111の共振器長や媒質の屈折率を制御することにより、光コム周波数が制御された目的の変調状態の光コムを上記自励発振型の光コム発生器110から出力することができる。
【0097】
上記自励発振型の光コム発生器110、120には、強制モード同期や受動モード同期のモードロックレーザーを用いた光コム発生器、パラメトリック波長変換を用いた光コム発生器、レーザー光源の直接変調を用いた光コム発生器などを採用することができる。モードロックレーザーを用いた光コム発生器としては、共振器内に変調器を挿入して多モード間の同期をとる強制モード同期の範疇であれば、チタンサファイヤレーザーのような固体レーザー、アルゴンイオンレーザーのようなガスレーザー、他に色素レーザーや半導体レーザーを用いるものがある。レーザー光源の直接変調を用いた光コム発生器としては半導体レーザーの電流変調を用いるものがある。
【0098】
ここで、上記光コム距離計測装置100の光コム発生部10すなわち本発明に係る光コム発生装置は、自励発振型の光コム発生器を採用した上記N個の光コム発生器11A,11B,11C,11Dを光コム光源部11に備えるものであるが、本発明に係る光コム発生装置に備えられるN個の光コム発生器は、自励発振型の光コム発生器のみに限定されるものでなく、外部変調型の光コム発生器であってもよい。
【0099】
図4の(A),(B)は、本発明に係る光コム発生装置に備えられるN個の光コム発生器として用いられる外部変調型の光コム発生器130、140の構成例を示すブロック図であり、(A)は光源を内蔵した光源一体・外部変調型外部変調型の光コム発生器130を示し、(B)は光コム発生の元になるレーザー光が外部から入力される外部変調型外部変調型の光コム発生器140を示している。
【0100】
図4の(A)に示す光コム発生器140は、光コム発生の元になるレーザー光を出力する光源とこの光源から出力されたレーザー光を変調して光コムを発生させる光変調器を内蔵した光源一体・外部変調型外部変調型の光コム発生器115を備えており、参照信号に基づいて生成される駆動(変調)信号が光源一体・外部変調型光コム発生器115に外部から供給され、駆動(変調)信号によって内部の光変調器が駆動されることにより駆動信号周波数間隔の光コムを生成して出力する。
【0101】
図4の(B)に示す光コム発生器140は、外部のレーザー光源117から入力される光コム発生の元になるレーザー光を変調して光コムを発生させる光変調器を内蔵した外部変調型外部変調型の光コム発生器116を備えており、参照信号に基づいて生成される駆動(変調)信号が外部変調型光コム発生器116に外部から供給され、駆動(変調)信号によって内部の光変調器が駆動されることにより駆動信号周波数間隔の光コムを生成して出力する。
【0102】
図5は、本発明を適用した光コム発生装置を光コム発生部10Aとして備える光コム距離計測装置100Aの構成例を示すブロック図である。
【0103】
この光コム距離計測装置100Aは、上記光コム距離計測装置100を改良したもので、光コム発生部10Aは光コム光源部11に備えられるN個の光コム発生器11A,11B,11C,11Dから光スイッチ12を介して参照光S1と測定光S2として出力する光コムの変調状態を示す状態信号を出力する機能を有する光スイッチ制御部13Aを備えており、信号処理部30Aにおいて、光コム干渉検出部20の参照用光検出器から出力される参照信号および測定用光検出器から出力される測定信号と上記光スイッチ制御部13Aから出力される状態信号に基づいて、測定対象物50までの距離を計算するようになっている。
【0104】
上記N個の光コム発生器11A,11B,11C,11Dには、上記自励発振型の光コム発生器110(又は光コム発生器120)が採用されている。
【0105】
なお、この光コム距離計測装置100Aにおいて、上記光コム距離計測装置100の構成要素と同じ構成要素は、図中に同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0106】
この光コム距離計測装置100Aにおいて、上記信号処理部30Aは、上記光コム干渉検出部20から供給される参照信号と測定信号に加えて上記光コム光源部10Aの状態切替制御部12Aから供給される状態信号を取り込むようになっており、それらを同期して入力することにより、上記参照信号と測定信号と状態信号を同期させて処理して、上記光コム干渉検出部20において参照光Sが往復した基準光路の距離Lと測定光Sが往復した測定対象物50までの測定光路の距離Lの距離差の絶対値(L-L)の2倍の距離を光が伝搬することによる遅延時間に相当する参照用光検出器により得られる参照信号と測定用光検出器により得られる測定信号の時間差に真空中の光速Cをかけて屈折率nで割ることにより上記距離差の絶対値(L-L)を計算し、外部に出力する。
【0107】
この光コム距離計測装置100Aにおける信号処理部30Aでは、上記光コム発生部10Aの光スイッチ制御部13Aが、光スイッチ12を介して参照光Sと測定光Sとして出力する光コムの変調状態を示す状態信号を出力する機能を有することにより、信号処理部30Aにおいて、上記参照光Sと測定光Sの変調状態を示す状態信号を用いて、干渉信号と同期して計測データを取り込み、波形の区間(場所)とその場所の周波数設定の状態を明確にして波形データを収録することにより、処理対象となる波形の区間において周波数状態の変化が無く一定であることが確認出来かつ波形データとして有効な区間であることの判定ができ、その区間の周波数設定値は計算で求められる位相値から遅延時間または距離への変換を行うことができる。すなわち、上記光コム干渉検出部20の参照用光検出器から出力される参照信号および測定用光検出器から出力される測定信号と上記光スイッチ制御部13Aから出力される状態信号に基づいて、上記測定対象物50までの距離計算を短時間で確実に行うことができる。
【0108】
この光コム距離計測装置100Aは、上記自励発振型の光コム発生器110(又は光コム発生器120)を採用したN個の光コム発生器11A,11B,11C,11Dを光コム光源部11に備える光コム距離計測装置100を改良したものであるが、本発明に係る光コム距離計測装置は、図6図7に示す光コム距離計測装置100B、100Cのように、外部変調型の光コム発生器11A’,11B’,11C’,11D’を用いた光コム発生部を備えるものであってもよい。
【0109】
図6に示す光コム距離計測装置100Bは、上記外部変調型の光コム発生器130(又は光コム発生器140)を用いた光コム光源部11’を備える。
【0110】
この光コム距離計測装置100Bは、上記光コム距離計測装置100Bにおける光コム光源部11に備えられた自励発振型の光コム発生器11A,11B,11C,11Dを外部変調型の光コム発生器11A’,11B’,11C’,11D’に置き換えたもので、光コム発生部10Bに備えられた4個の外部変調型の光コム発生器11A’,11B’,11C’,11D’は、基準周波数信号発生器14により基準周波数信号FREFが与えられる4個の駆動用発振器14A,14B,14C,14Dから出力される上記基準周波数信号FREFを基準にして互いに同期した4種類の変調周波数Fm1,Fm2,Fm3,Fm4の駆動(変調)信号により駆動されるようになっている。
【0111】
そして、この光コム距離計測装置100Bは、上記光コム発生器11A’,11B’,11C’,11D’から出力される互いに変調状態が異なる4種類の光コムを光スイッチ12により巡回的に選択して参照光Sと測定光Sとして出力するとともに、上記光スイッチ12の動作を制御する光スイッチ制御部13Aから上記参照光Sと測定光Sの変調状態を示す状態信号を出力し、信号処理部30Aにおいて、光コム干渉検出部20の参照用光検出器から出力される参照信号および測定用光検出器から出力される測定信号と上記光スイッチ制御部13Aから出力される状態信号に基づいて、測定対象物50までの距離を計算するようになっている。
【0112】
なお、この光コム距離計測装置100Bにおいて、上記光コム距離計測装置100Aの構成要素と同じ構成要素は、図中に同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0113】
ここで、上記光コム距離計測装置100Bにおいて、上記光コム光源部11’に備えられる4個の外部変調型の光コム発生器11A’,11B’,11C’,11D’は、光コム発生の元になるレーザー光を発生するレーザー光源をそれぞれ内蔵しているものであるが、上記光コム発生の元になるレーザー光を発生するレーザー光源は外部に設けられていてもよく、例えば図7に示す光コム距離計測装置100Cのように、外部に設けられた1個のレーザー光源15Bから出力されるレーザー光が光分配器16を介して4個の外部変調型の光コム発生器11A”,11B”,11C”,11D”に分配供給されるようにしてもよい。
【0114】
図7に示す光コム距離計測装置100Cおける光コム光源部11”は、外部に設けられた1個のレーザー光源15Bから出力されるレーザー光が光分配器16を介して分配供給される4個の外部変調型の光コム発生器11A”,11B”,11C”,11D”を備えており、この光コム距離計測装置100Cは、上記光コム発生器11A”,11B”,11C”,11D”から出力される互いに変調状態が異なる4種類の光コムを光スイッチ12により巡回的に選択して参照光Sと測定光Sとして出力するとともに、上記光スイッチ12の動作を制御する光スイッチ制御部13Aから上記参照光Sと測定光Sの変調状態を示す状態信号を出力し、信号処理部30Aにおいて、光コム干渉検出部20の参照用光検出器から出力される参照信号および測定用光検出器から出力される測定信号と上記光スイッチ制御部13Aから出力される状態信号に基づいて、測定対象物50までの距離を計算するようになっている。
【0115】
なお、この光コム距離計測装置100Cにおいて、上記光コム距離計測装置100Bの構成要素と同じ構成要素は、図中に同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0116】
ここで、上記光コム距離計測装置100,100A,100B、100Cにおいて、光コム光源部11,11’11”が出力する互いに変調状態の異なる4種類の光コムから巡回的に選択して参照光Sと測定光Sとして出力する光スイッチ12は参照光Sと測定光Sの変調状態の切り替えを高速に行うことができるのであるが、レーザー光が通過する経路の遮断や解放することによる負荷変動による影響を光コム光源部11,11’11”や光コム干渉検出部20に及ぼす虞があるが、図8乃至得10に示す光コム距離計測装置100D,100E,100Fのように、光スイッチ12の入力側及び/又は出力側にアイソレータを挿入することにより、負荷変動による影響を抑制することができる。
【0117】
図8に示す光コム距離計測装置100Dは、光コム距離計測装置100における光スイッチ12の入力側にアイソレータ17A,17B,17C,17Dを挿入したものである。
【0118】
このように、光スイッチ12の入力側にアイソレータ17A,17B,17C,17Dを挿入して、上記光コム光源部11からアイソレータ17A,17B,17C,17Dを介して光スイッチ12に4種類の変調状態の光コムを入力して、光スイッチ12により 4種類のから巡回的に選択して参照光Sと測定光Sとして2種類の光コムを出力することにより、上記光スイッチ12によるレーザー光が通過する経路の遮断や解放することによる負荷変動で上記光コム光源部11の動作が不安定になるのを防止することができる。
【0119】
図9に示す光コム距離計測装置100Eは、光コム距離計測装置100における光スイッチ12の出力側にアイソレータ17E,17Fを挿入したものである。
【0120】
このように、光スイッチ12の出力側にアイソレータ17E,17Fを挿入して、上記光コム光源部11から光スイッチ12に4種類の変調状態の光コムを入力して、光スイッチ12により4種類のから巡回的に選択して参照光Sと測定光Sとして2種類の光コムをアイソレータ17E,17Fを介して光コム干渉検出部20に出力することにより、上記光コム干渉検出部20から戻ってきた光があった場合、主に光スイッチ12内で想定外の経路による光の混入を防ぐことができる。また、スイッチ12の出力側に挿入したアイソレータ17E,17Fは、上記光コム光源部11への戻り光を減らす効果もある。
【0121】
図10に示す光コム距離計測装置100Eは、光コム距離計測装置100における光スイッチ12の入力側にアイソレータ17A,17B,17C,17Dを挿入するとともに、上記光スイッチ12の出力側にアイソレータ17E,17Fを挿入したものである。
【0122】
このように、上記光スイッチ12の入力側に挿入したアイソレータ17A,17B,17C,17Dと上記光スイッチ12の出力側に挿入したアイソレータ17E,17Fを備える光コム距離計測装置100Eへは、上記光コム干渉検出部20から戻ってきた光があった場合に、主に光スイッチ12内で想定外の経路による光の混入を防ぐことができるとともに、上記光スイッチ12によるレーザー光が通過する経路の遮断や解放することによる負荷変動で上記光コム光源部11の動作が不安定になるのを防止することができる。
【0123】
なお、上記光コム距離計測装置100A~100Eでは、光スイッチ制御部13Aにより基準周波数信号FREFに同期して光スイッチ12の動作を制御しているが、光スイッチ制御部13Aによる光スイッチ12の動作制御は基準周波数信号FREFに同期していなくても、信号処理部30Aにおいて、光スイッチ制御部13Aにより与えられる状態信号から、波形と光源内部状態の対応関係を知ることができるので、光コム干渉検出部20の参照用光検出器から出力される参照信号および測定用光検出器から出力される測定信号と上記光スイッチ制御部13Aから出力される状態信号に基づいて、測定対象物50までの距離を計算することができる。光スイッチ12の動作制御を基準周波数信号FREFに同期しておくと波形の繰り返しと周波数設定状態の切り替えを同期することができるので、信号処理部30Aにおける信号処理データの波形が安定することにより、上記測定対象物50までの距離計算をより短時間で確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0124】
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F 光コム発生装置、11,11A,11’,11” 光コム光源部、11A,11A’,11A”,11B,11B’,11B”,11C,11C’,11C”,11D,11D’,11D” 光コム発生器、12 光スイッチ、13,13A 光スイッチ制御部、14 基準周波数発生器、20 光コム干渉検出部、21 全反射鏡、22A 光混合素子、22B 光分離混合素子、23 参照用光検出器、24 参照用光検出器、25 基準面、26A,26B 1/4波長板、30,30A 信号処理部、50 測定対象物、110,120 自励発振型の光コム発生器、111 自励発振型の光発振器、112 光検出器、113 制御部、114 光フィルタ、115,116 外部変調型 光コム発生器、117 レーザー光源
図1
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