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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】低背型複合アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/22 20060101AFI20240605BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20240605BHJP
   H01Q 9/36 20060101ALI20240605BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20240605BHJP
   H01Q 19/02 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
H01Q1/22 B
H01Q1/32 Z
H01Q9/36
H01Q13/08
H01Q19/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022050668
(22)【出願日】2022-03-25
(65)【公開番号】P2023143344
(43)【公開日】2023-10-06
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000165848
【氏名又は名称】原田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124257
【弁理士】
【氏名又は名称】生井 和平
(72)【発明者】
【氏名】飯野 慎治
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-121143(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105235(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/004612(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/22
H01Q 1/32
H01Q 9/36
H01Q 13/08
H01Q 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の複数の周波数帯の信号を受信可能な低背型複合アンテナ装置であって、該低背型複合アンテナ装置は、
車両に固定されるベースプレートと、
前記ベースプレート上に載置され第1周波数帯の信号を受信可能な、パッチ電極を有する第1アンテナと、
第1周波数帯よりも低い第2周波数帯の信号を受信可能な第2アンテナであって、前記ベースプレートに対して高さ方向に間隔を設けて配置される容量素子であるトップロード部を有し、該トップロード部は、第1アンテナのパッチ電極を上面視で覆わず、トップロード部の長手方向の延長軸上にパッチ電極が位置するようにパッチ電極近傍に配置されると共に、第1アンテナの導波器としても機能するように、トップロード部の長手方向を電気的に前後に分ける少なくとも1つのスタブを有する、第2アンテナと、
を具備することを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の低背型複合アンテナ装置において、前記第2アンテナは、
前記トップロード部が、トップロード部の長手方向に延在する稜線部と、該稜線部の両側から延在する側面部と、からなり、
前記スタブが、一方の側面部の下端から稜線部を通り他方の側面部の途中まで平行に延在する2本の第1スリットと、他方の側面部の下端から2本の第1スリットの間の途中まで第1スリットに平行に延在する第2スリットとにより構成される、
ことを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の低背型複合アンテナ装置において、前記第2アンテナは、
前記トップロード部が、トップロード部の長手方向に延在する稜線部と、該稜線部の両側から延在する側面部と、からなり、
前記スタブが、一方の側面部の下端から稜線部方向に延在する幅広スリットと、幅広スリットの最深部両端から他方の側面部の途中まで平行に延在する2本の第1スリットと、他方の側面部の下端から2本の第1スリットの間の途中まで第1スリットに平行に延在する第2スリットとにより構成される、
ことを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の低背型複合アンテナ装置において、前記第2アンテナは、前記スタブが、第1アンテナの信号受信特性が最も良くなるように、トップロード部の長手方向のパッチ電極側の端部から又はパッチ電極側とは反対側の端部から所定の距離だけ離れる位置に配置されることを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の低背型複合アンテナ装置において、前記第2アンテナは、前記スタブが配置されるトップロード部の長手方向のパッチ電極側の端部から又はパッチ電極側とは反対側の端部からの所定の距離が、第1アンテナのパッチ電極寸法の2倍から3倍であることを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の低背型複合アンテナ装置において、前記第1アンテナは、GNSSのL1周波数帯用アンテナからなることを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れかに記載の低背型複合アンテナ装置において、前記第1アンテナは、GNSSのL1周波数帯用アンテナ及びL5周波数帯用アンテナからなることを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項の何れかに記載の低背型複合アンテナ装置において、前記第2アンテナは、さらに、トップロード部に一端が接続されるコイルを有し、トップロード部がAMアンテナとして機能すると共に、トップロード部及びコイルがFMアンテナとして機能するように構成されることを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低背型複合アンテナ装置に関し、特に、車両用の複数の周波数帯の信号を受信可能な低背型複合アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用アンテナ装置としては、AM放送及びFM放送を受信可能なものが一般的に用いられている。車両用アンテナ装置は、ロッドアンテナやフィルムアンテナ、ガラスアンテナ等が用いられているが、近来では所謂シャークフィンアンテナといった、小型且つ低背型のアンテナ装置も存在する。アンテナ長としては、FM波帯においてはその1/4波長の長さを有するようにロッドアンテナ等が構成されている。また、車両用アンテナ装置では、外部突起物規制により、車両ルーフから突出する高さが制限されるため、アンテナ素子をヘリカル状に巻回して短く構成したヘリカルアンテナもある。しかしながら、AM波帯においては波長に対して遥かに短いアンテナ長となるため、受信感度が著しく低下する。このため、アンテナ素子の開放端側に金属体のトップロード部を取り付けて静電容量を持たせた容量アンテナとして構成することで、AM/FM用エレメントとしたシャークフィンタイプの低背型アンテナ装置も開発されている。
【0003】
そして、このような低背型アンテナ装置に対してさらに複数の周波数帯の信号を受信可能とするためにパッチアンテナを組み合わせた低背型複合アンテナ装置として、例えば特許文献1が存在する。特許文献1は、AM/FM用エレメントとして機能する容量板の幅方向の寸法を、AM/FM用エレメントの下方に配置されるパッチアンテナの受信周波数の略1/4波長以下に設定すると共に、長さ方向に延びるメアンダ状にしたものである。パッチアンテナの受信波における容量板の長さ方向の偏波成分が、幅方向に略平行に配置されたラインに対して直交することとなるため、パッチアンテナのアンテナ特性に影響を及ぼし難いものとしている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の低背型複合アンテナ装置は、メアンダ状の容量板のため複雑な形状であり、また組み立て時に変形する可能性もあり組み立てが容易でなく、安価に製造するのが難しかった。
【0005】
このような課題を解決するものとして、本願出願人と同一出願人による特許文献2も存在する。特許文献2は、パッチアンテナと、パッチアンテナを覆うように配置されパッチアンテナの導波器としても機能する導電性面状態を有するトップロード部を有するAM/FM用エレメントを有する低背型複合アンテナ装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-034226号
【文献】特開2018-121143号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、車両用アンテナ装置では、さらなる低背化が望まれるようになってきている。特許文献1や特許文献2のようなトップロード部については、性能を向上させるためにはベースプレートからの高さが必要となるものであった。しかしながら、より低背化するためにトップロード部の高さを下げようとした場合、パッチアンテナと容量結合してしまうため、AM/FM用エレメントのアンテナ受信特性が劣化するおそれがあった。
【0008】
さらに、これまでのGNSS(Global Navigation Satellite System)は、L1信号の搬送波を用いるものであった。しかしながら、近年、所謂マルチバンドGNSSが台頭してきており、さらにL5信号も用いるようになってきている。L1信号とL5信号は帯域が離れているため、一般的には2周波に対応したパッチアンテナが用いられる。2周波対応パッチアンテナは、具体的には例えばL5信号用パッチアンテナ上にL1信号用パッチアンテナを積層した積層型パッチアンテナであり、高さが必要となる。一方、特許文献1や特許文献2のようなトップロード部についても、上述の通り性能を向上させるためにはベースプレートからの高さが必要となるものであったが、高さのある積層型パッチアンテナを覆うようにその上部にトップロード部を収めるのは難しい場合があった。したがって、高さ方向に制限があるより低背型の筐体であってもパッチアンテナのアンテナ受信特性を向上させた低背型複合アンテナ装置の開発が望まれていた。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑み、高さ方向に制限がある低背型の筐体であってもパッチアンテナのアンテナ受信特性を向上させた低背型複合アンテナ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明による低背型複合アンテナ装置は、車両に固定されるベースプレートと、ベースプレート上に載置され第1周波数帯の信号を受信可能な、パッチ電極を有する第1アンテナと、第1周波数帯よりも低い第2周波数帯の信号を受信可能な第2アンテナであって、ベースプレートに対して高さ方向に間隔を設けて配置される容量素子であるトップロード部を有し、該トップロード部は、第1アンテナのパッチ電極を上面視で覆わず、トップロード部の長手方向の延長軸上にパッチ電極が位置するようにパッチ電極近傍に配置されると共に、第1アンテナの導波器としても機能するように、トップロード部の長手方向を電気的に前後に分ける少なくとも1つのスタブを有する、第2アンテナと、を具備するものであれば良い。
【0011】
ここで、第2アンテナは、トップロード部が、トップロード部の長手方向に延在する稜線部と、該稜線部の両側から延在する側面部と、からなり、スタブが、一方の側面部の下端から稜線部を通り他方の側面部の途中まで平行に延在する2本の第1スリットと、他方の側面部の下端から2本の第1スリットの間の途中まで第1スリットに平行に延在する第2スリットとにより構成される、ものであれば良い。
【0012】
また、第2アンテナは、トップロード部が、トップロード部の長手方向に延在する稜線部と、該稜線部の両側から延在する側面部と、からなり、スタブが、一方の側面部の下端から稜線部方向に延在する幅広スリットと、幅広スリットの最深部両端から他方の側面部の途中まで平行に延在する2本の第1スリットと、他方の側面部の下端から2本の第1スリットの間の途中まで第1スリットに平行に延在する第2スリットとにより構成される、ものであっても良い。
【0013】
また、第2アンテナは、スタブが、第1アンテナの信号受信特性が最も良くなるように、トップロード部の長手方向のパッチ電極側の端部から又はパッチ電極側とは反対側の端部から所定の距離だけ離れる位置に配置されるものであれば良い。
【0014】
また、第2アンテナは、スタブが配置されるトップロード部の長手方向のパッチ電極側の端部から又はパッチ電極側とは反対側の端部からの所定の距離が、第1アンテナのパッチ電極寸法の2倍から3倍であれば良い。
【0015】
また、第1アンテナは、GNSSのL1周波数帯用アンテナからなるものであれば良い。
【0016】
また、第1アンテナは、GNSSのL1周波数帯用アンテナ及びL5周波数帯用アンテナからなるものであっても良い。
【0017】
また、第2アンテナは、さらに、トップロード部に一端が接続されるコイルを有し、トップロード部がAMアンテナとして機能すると共に、トップロード部及びコイルがFMアンテナとして機能するように構成されるものであっても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明の低背型複合アンテナ装置には、パッチアンテナを上面視で覆わないようにトップロード部を配置することで、高さ方向に制限がある低背型の筐体であってもパッチアンテナのアンテナ受信特性を向上させることが可能であるという利点がある。さらに、トップロード部の下部にパッチアンテナを配置しないため、結果としてトップロード部の性能も向上するという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の低背型複合アンテナ装置を説明するための概略図である。
図2図2は、本発明の低背型複合アンテナ装置を説明するための概略図である。
図3図3は、本発明の低背型複合アンテナ装置のトップロード部の折曲形成前の展開図である。
図4図4は、本発明の低背型複合アンテナ装置のスタブの効果を説明するための第1アンテナの利得変化グラフである。
図5図5は、本発明の低背型複合アンテナ装置のスタブの他の効果を説明するための第1アンテナの利得変化グラフである。
図6図6は、本発明の低背型複合アンテナ装置のトップロード部の他のスタブの例の折曲形成前の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を図示例と共に説明する。図1は、本発明の低背型複合アンテナ装置を説明するための概略図であり、図1(a)が上面図であり、図1(b)が一部断面側面図である。本発明の低背型複合アンテナ装置は、車両用の複数の周波数帯の信号を受信可能なものであり、図示の通り、ベースプレート10と、第1アンテナ20と、第2アンテナ30とから主に構成されている。そして、これらがアンテナカバー1により覆われるように構成されている。アンテナカバー1は、エレメントや回路等を収容する内部空間を有するものであり、低背型複合アンテナ装置の外形を画定するものである。本発明の低背型複合アンテナ装置は、例えばAM周波数帯の信号を受信可能な容量アンテナと、GNSS用やSDARS用等のパッチアンテナを組み合わせた複合アンテナとして構成されれば良い。
【0021】
ベースプレート10は、車両に固定されるものである。ベースプレート10は、具体的には、例えば樹脂等の絶縁体で形成される所謂樹脂ベースであっても良いし、金属等の導電体で形成される所謂金属ベースであっても良い。また、ベースプレート10は、樹脂と金属のコンポジットベースであっても良い。ベースプレート10には、例えばねじボス11が設けられている。車両のルーフ等に設けられた孔にねじボス11が挿入され、車両室内からナットを用いてルーフ等を挟み込むようにしてベースプレート10が車両に固定される。ねじボス11には、車両内部とアンテナ装置とを接続するケーブル等が挿通される。また、ベースプレート10は、アンテナカバー1により覆われるように構成されている。ベースプレート10とアンテナカバー1が嵌合することで、内部空間が密閉されれば良い。
【0022】
第1アンテナ20は、ベースプレート10上に載置される。そして、第1アンテナ20は、第1周波数帯の信号を受信可能なパッチ電極21を有するものである。第1アンテナ20は、例えばセラミックス等を用いた円偏波を用いる誘電体型パッチアンテナ22であれば良い。例えばGPS用やGLONASS用等、GNSS用のパッチアンテナであれば良い。また、SDARS用のXMアンテナであっても良い。
【0023】
第2アンテナ30は、第1周波数帯よりも低い第2周波数帯の信号を受信可能なものである。第2アンテナ30は、具体的には、例えばMF帯を共振周波数とするAMアンテナであれば良い。第2アンテナ30は、容量素子であるトップロード部31を有している。即ち、トップロード部31は、導電体からなり静電容量を持たせた容量アンテナとして機能させるものである。トップロード部31は、ベースプレート10に対して高さ方向に間隔を設けて配置されている。ここで、トップロード部31は、第1アンテナ20のパッチ電極21を上面視で覆わず、トップロード部31の長手方向の延長軸上にパッチ電極21が位置するようにパッチ電極21近傍に配置されるものである。即ち、トップロード部31は、第1アンテナ20を覆うようには配置されていない。そして、トップロード部31は、第1アンテナ20の導波器としても機能するように、トップロード部31の長手方向を電気的に前後に分ける少なくとも1つのスタブ32を有している。ここで、スタブ32は、電流の向きが互いに相殺される向きに流れるようにトップロード部31に互い違いに設けられる複数のスリット33からなる折り返しパターンにより形成されている。
【0024】
ここで、上述の図示例では、第1アンテナ20は、1つのパッチアンテナからなるものを示した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。本発明の低背型複合アンテナ装置では、トップロード部31が第1アンテナ20のパッチ電極21を上面視で覆わないように構成可能であるため、第1アンテナ20の高さ方向の制限が緩和される。したがって、第1アンテナ20は、高さのある積層型パッチアンテナであっても良い。
【0025】
図2は、本発明の低背型複合アンテナ装置の他の例を説明するための概略図であり、図2(a)が上面図であり、図2(b)が一部断面側面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。この例は、第1アンテナ20が積層型パッチアンテナからなるものである。具体的には、第1アンテナ20は、マルチGNSS用のL1信号の搬送波の周波数帯に対応するL1信号用パッチアンテナ23と、L5信号の搬送波の周波数帯に対応するL5信号用パッチアンテナ24とからなるものである。図示例の第1アンテナ20は、L5信号用のパッチアンテナ24の上に、L1信号用のパッチアンテナ23を積層したものを示した。積層型パッチアンテナとは、周波数帯の異なる複数のパッチアンテナを積層したものである。例えば、L1用パッチアンテナ23は、L1周波数帯の信号を受信可能なパッチ電極25を有するものである。また、L5用パッチアンテナ24は、L5周波数帯の信号を受信可能なパッチ電極26を有するものである。このようなパッチアンテナは、例えばセラミックス等を用いた円偏波を用いる誘電体型パッチアンテナであれば良く、これを積層したものであっても良いし、誘電体型パッチアンテナとギャップ型パッチアンテナを組み合わせて積層したものであっても良い。
【0026】
なお、第1アンテナ20は、マルチバンド対応とする場合に複数のパッチアンテナを積層したものに限定されるものではなく、複数のパッチアンテナを平面上に並べたものでも良いし、2重環状のパッチアンテナであっても良い。
【0027】
ここで、第2アンテナ30のトップロード部31は、例えばMF帯(AM周波数帯)では容量アンテナとなり、第2周波数帯の信号を受信可能なように構成されるが、本発明はこれに限定されない。本発明の低背型複合アンテナ装置では、第2アンテナ30は、AM/FMアンテナとしても構成可能である。即ち、第2アンテナ30は、図2に示されるように、トップロード部31に接続されるコイル40を有しても良い。コイル40の一端がトップロード部31に接続され、他端が給電部に接続されている。これにより、第2アンテナ30は、トップロード部31が容量アンテナとなりAMアンテナとして機能するように構成可能であると共に、トップロード部31及びコイル40が容量装荷アンテナとなり、エレメント長が短縮されたFMアンテナとして機能するように構成可能である。
【0028】
図3を用いて本発明の低背型複合アンテナ装置のトップロード部の詳細を説明する。図3は、本発明の低背型複合アンテナ装置のトップロード部の折曲形成前の展開図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。第2アンテナ30は、具体的には、トップロード部31が、トップロード部31の長手方向に延在する稜線部31aと、該稜線部31aの両側から延在する側面部31b、31b'と、からなる流線形状のものを示した。トップロード部31は、シャークフィン形状等のアンテナカバー1の形状に対応する形状となるように折曲形成されれば良い。このような形状のトップロード部31に対して、スタブ32は、一方の側面部31bの下端から稜線部31aを通り他方の側面部31b'の途中まで平行に延在する2本の第1スリット33aと、他方の側面部31b'の下端から2本の第1スリット33aの間の途中まで第1スリット33aに平行に延在する第2スリット33bとにより構成されている。このようなスタブ32をトップロード部31の途中に設けることで、トップロード部31の長手方向を電気的に前後に分けることが可能となる。
【0029】
トップロード部31は、例えば、平面板状体から図示例のような所定の形状となるように切り出され、板金加工等により山折りに折り曲げることで容易に形成可能である。なお、適宜切り欠きやタブ等によりねじ留め部を形成しても良い。
【0030】
トップロード部31のスタブ32は、第1アンテナ20の信号受信特性が最も良くなるように、トップロード部31の長手方向のパッチ電極25,26側の端部から所定の距離Dだけ離れる位置に配置されれば良い。即ち、トップロード部31が第1アンテナ20に対して導波器として機能するようにスタブ32の配置位置が調整されれば良い。これは、第1アンテナ20のアンテナ利得等のアンテナ受信特性を見て、アンテナ受信特性が向上するようにスタブ32の配置位置が決定されれば良い。一例を挙げると、例えば第1アンテナ20がGNSS用のパッチアンテナの場合、パッチ電極25,26側の端部からスタブ32までの距離Dが、第1アンテナ20のパッチ電極25,26の電極寸法の2倍から3倍であれば良い。即ち、図面上、トップロード部31の左端(トップロード部先端)からスタブ32までの距離Dが、パッチ電極25,26の電極寸法の2倍から3倍であれば良い。より具体的には、例えばトップロード部31の長手方向の寸法が100mmの場合であって、例えばL1信号用のパッチ電極25の電極寸法が1辺21mmの場合や、L5信号用のパッチ電極26の電極寸法が1辺28mmの場合、トップロード部31の先端からスタブ32までの距離Dは67mm程度であれば良い。
【0031】
なお、第1アンテナ20が例えばSDARS用のMXアンテナ等のより高周波数帯のパッチアンテナ場合、トップロード部31のパッチ電極側とは反対側の端部(トップロード部後端)から所定の距離D'だけ離れる位置にスタブ32が配置されるものであっても良い。即ち、トップロード部31の後端からスタブ32までの距離D'が、パッチ電極の電極寸法の2倍から3倍であれば良い。このように、第1アンテナ20の周波数帯に応じて、第1アンテナ20のアンテナ受信特性が向上するように、第2アンテナ30に設けられるスタブ32の配置位置を適宜調整すれば良い。
【0032】
ここで、本発明の低背型複合アンテナ装置のスタブの効果を説明する。図4に、本発明の低背型複合アンテナ装置のスタブの効果を説明するための第1アンテナの利得変化グラフを示す。横軸が周波数であり、縦軸が第1アンテナの利得である。図中、実線が図2に示される本発明の低背型複合アンテナ装置の第1アンテナ20の利得変化グラフである。また、比較例として、第2アンテナ30を用いない場合の第1アンテナの利得変化グラフを破線で示した。図示の通り、本発明によるスタブ32を設けたトップロード部31からなる第2アンテナ30を用いた場合には、用いない場合と比べて、L1信号もL5信号何れの搬送波の周波数帯も利得が向上していることが分かる。
【0033】
また、図5に、本発明の低背型複合アンテナ装置のスタブの他の効果を説明するための第1アンテナの利得変化グラフを示す。横軸が周波数であり、縦軸が第1アンテナの利得である。図5(a)は、本発明の低背型複合アンテナ装置において第1アンテナと第2アンテナの間の距離を変化させた場合の第1アンテナの利得変化グラフである。図5(b)は、比較例として、スタブを用いないトップロード部と積層型パッチアンテナの間の距離を変化させた場合の積層型パッチアンテナの利得変化グラフである。なお、第1アンテナと第2アンテナの間の距離は、図3においてD"で表した。図示の通り、本発明の低背型複合アンテナ装置の場合には、スタブ32の存在により第2アンテナ30が導波器としても機能するので、第1アンテナ20と第2アンテナ30を近付けても遠ざけても利得の変化は少ない。即ち、第1アンテナ20と第2アンテナ30の配置の自由度が高いことが分かる。一方、スタブを用いないトップロード部の場合、距離に応じて利得の変動が大きく、遠ざけるほど利得が高くなる。即ち、スタブが存在しない場合には、近付けるほど積層型パッチアンテナのアンテナ受信特性は劣化する。したがって、配置の自由度が低いことが分かる。また、得られる利得については、そもそも比較例と比べて本発明のほうが全体的に高いことも分かる。
【0034】
このように、本発明の低背型複合アンテナ装置では、第1アンテナ20を上面視で覆わないようにしつつ、第1アンテナ20に近付けて第2アンテナ30のトップロード部31を配置することが可能となる。これにより、高さ方向に制限がある低背型の筐体であっても、第1アンテナ20のアンテナ受信特性を向上させることが可能となる。
【0035】
さらに、本発明の低背型複合アンテナ装置では、第2アンテナ30のトップロード部31の下部にパッチアンテナである第1アンテナ20を配置しないため、第1アンテナ20のパッチ電極等の金属体がトップロード部31の下部近傍に配置されなくなる。したがって、トップロード部31の金属体への結合のおそれがなくなり、第2アンテナ30のアンテナ受信特性も結果的に向上することになる。また、第2アンテナ30のトップロード部31の高さを抑えることが可能となるため、より低背化が可能となる。
【0036】
ここで、上述の図示例では、第2アンテナ30のスタブ32が一方の側面部31bから稜線部31aを通り他方の側面部31b'まで延在する例を示した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、スタブ32は第1アンテナ20の導波器としても機能するように、トップロード部31の長手方向を電気的に前後に分けることが可能であれば良い。例えば、スタブ32は、一方の側面部のみに配置され、他方の側面部は幅広スリットにより構成されるものであっても良い。以下、図6を用いて詳細に説明する。
【0037】
図6は、本発明の低背型複合アンテナ装置のトップロード部の他のスタブの例の折曲形成前の展開図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示の通り、トップロード部31は、稜線部31aと、側面部31b、31b'とからなり、スタブ32が幅広スリット33cと、2本の第1スリット33aと、第2スリット33bとにより構成されている。トップロード部31は、折曲形成前は平面板状体からなっている。平面板状体から図示のような所定の形状に切り出され、所定の位置で山折りに折り曲げることでトップロード部31が形成される。
【0038】
ここで、スタブ32の幅広スリット33cは、一方の側面部31bの下端から稜線部31a方向に延在するものである。幅広スリット33cは、電流の向きが互いに相殺されるものではないが、トップロード部31の前後が強く結合しない程度にある程度幅のあるスリットである。そして、2本の第1スリット33aは、幅広スリット33cの最深部両端から他方の側面部31b'の途中まで平行に延在している。また、第2スリット33bは、他方の側面部31b'の下端から2本の第1スリット33aの間の途中まで第1スリット33aに平行に延在している。即ち、スタブ32の電流の向きが互いに相殺される向きに流れるスリットは、例えば一方の側面部にのみに延在するものであっても良い。
【0039】
このように、本発明の低背型複合アンテナ装置のスタブ32は、トップロード部31の長手方向を電気的に前後に完全に分ける必要はなく、第1アンテナ20の導波器としても機能するものであれば、幅広スリット33cと組み合わせて構成されても良い。
【0040】
さらに、上述の図示例のトップロード部31は、シャークフィン形状等の流線形状のものを示した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、平面板状導電体であっても良い。即ち、水平方向や垂直方向に配置される平面板状体の長手方向を前後に分けるスタブが所定の位置に配置されたトップロード部であっても良い。
【0041】
なお、本発明の低背型複合アンテナ装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
1 アンテナカバー
10 ベースプレート
11 ボス
20 第1アンテナ
21,25,26 パッチ電極
22 誘電体型パッチアンテナ
23 L1信号用のパッチアンテナ
24 L5信号用のパッチアンテナ
30 第2アンテナ
31 トップロード部
31a 稜線部
31b 側面部
32 スタブ
33 スリット
33a 第1スリット
33b 第2スリット
33c 幅広スリット
40 コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6