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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】トレイ及びトレイの製造システム
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/04 20060101AFI20240605BHJP
   B65D 19/32 20060101ALI20240605BHJP
   B65D 19/44 20060101ALI20240605BHJP
   B65D 81/107 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
B65D25/04 G
B65D19/32 Z
B65D19/44 D
B65D81/107 100Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022148710
(22)【出願日】2022-09-20
(65)【公開番号】P2023047327
(43)【公開日】2023-04-05
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2021155421
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521418986
【氏名又は名称】株式会社崇雅
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】奥松 輝久
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-62787(JP,A)
【文献】特開平2-139135(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0210665(US,A1)
【文献】特開2000-153872(JP,A)
【文献】特開2012-253310(JP,A)
【文献】特開平05-246527(JP,A)
【文献】特開2005-242977(JP,A)
【文献】実開昭62-137250(JP,U)
【文献】実開昭57-017986(JP,U)
【文献】特開平2-242702(JP,A)
【文献】特開2004-224432(JP,A)
【文献】特開2019-55819(JP,A)
【文献】特開2004-51164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 19/44
B65D 19/32
B65D 25/04
B65D 57/00 - 59/08
B65D 81/00 - 81/17
B65D 85/30 - 85/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口を備える有底のトレイ本体と、前記上部開口を塞ぐ蓋体とを備えており、
前記トレイ本体の内部にホットメルト接着剤から成るホットメルト層を備えており、
前記蓋体の内面側に弾性層を備えており、
前記ホットメルト層の表面に被搬送物の形状に対応した凹部が成形され、前記被搬送物は前記ホットメルト接着剤の接着力により前記凹部の内面に接着した状態で保持され、
前記弾性層によって前記被搬送物の一部が保護されることを特徴とするトレイ。
【請求項2】
前記上部開口を前記蓋体で塞いだ状態で、内部を真空状態にするための吸引口を備えることを特徴とする請求項1に記載のトレイ。
【請求項3】
上部開口を備える有底のトレイ本体と、前記上部開口を塞ぐ蓋体とを備えるトレイの製造システムにおいて、
加熱したホットメルト接着剤を前記トレイ本体の内部に充填してホットメルト層を形成する充填部と、
前記ホットメルト層の表面に被搬送物の形状に対応した凹部を成形する成形部と、前記ホットメルト層を冷却して前記凹部の形状を維持させる冷却部とを一体化した成形冷却部を備えており、
前記成形冷却部は前記被搬送物の形状に対応した凹部を成形するための押し型を備えており、
前記押し型は前記ホットメルト層を冷却して前記凹部の形状を維持できる温度に冷却されており、
前記被搬送物は前記ホットメルト接着剤の接着力により前記凹部の内面に接着した状態で保持されることを特徴とするトレイの製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被搬送物を載せて所定位置まで搬送するためのトレイ及びこのトレイの製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機で成形された成形品等の被搬送物を載せるためのトレイ(「パレット」と呼ばれることもある。)が知られている。被搬送物はトレイに載せられた状態でコンベアによって所定位置まで搬送される。
トレイ上の被搬送物が搬送中に位置ずれすることを防止するために、被搬送物の形状に対応した窪みをトレイの表面に設けたり、特殊な治具で被搬送物をトレイ表面に固定したりするのが一般的である。
例えば特許文献1にはトレイの表面にピン状の櫛形部材を多数設けておき、射出成形機で成形された試験管形状のプリフォームを下向きにして櫛型部材に差し込むことで搬送中の位置ずれを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-142476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のようにトレイの表面に被搬送物の形状に対応した窪みを設ける場合、このトレイを異なる形状の他の被搬送物に使用できないため廃棄せざるを得ず、環境負荷の観点から好ましくないという問題がある。また、特殊な治具を用いる場合はトレイの製造コストを上昇させるという問題もある。
【0005】
本発明は、上記のような問題を考慮して、被搬送物の形状によらず繰り返し使用することができるトレイ及びこのトレイの製造システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のトレイは、上部開口を備える有底のトレイ本体と、前記上部開口を塞ぐ蓋体とを備えており、前記トレイ本体の内部にホットメルト接着剤から成るホットメルト層を備えており、前記蓋体の内面側に弾性層を備えており、前記ホットメルト層の表面に被搬送物の形状に対応した凹部が成形され、前記被搬送物は前記ホットメルト接着剤の接着力により前記凹部の内面に接着した状態で保持され、前記弾性層によって前記被搬送物の一部が保護されることを特徴とする。
また、前記上部開口を前記蓋体で塞いだ状態で、内部を真空状態にするための吸引口を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明のトレイの製造システムは、上部開口を備える有底のトレイ本体と、前記上部開口を塞ぐ蓋体とを備えるトレイの製造システムにおいて、加熱したホットメルト接着剤を前記トレイ本体の内部に充填してホットメルト層を形成する充填部と、前記ホットメルト層の表面に被搬送物の形状に対応した凹部を成形する成形部と、前記ホットメルト層を冷却して前記凹部の形状を維持させる冷却部とを一体化した成形冷却部を備えており、前記成形冷却部は前記被搬送物の形状に対応した凹部を成形するための押し型を備えており、前記押し型は前記ホットメルト層を冷却して前記凹部の形状を維持できる温度に冷却されており、前記被搬送物は前記ホットメルト接着剤の接着力により前記凹部の内面に接着した状態で保持されることを特徴とする。




【発明の効果】
【0008】
トレイ本体のホットメルト層は加熱することで液状化する。一度使用したトレイ本体を回収して加熱することでホットメルト層が液状化して凹部が消滅する。したがって、次の被搬送物の形状に対応した凹部を再度成形することが可能となり、トレイ本体を繰り返し使用できるので環境負荷の観点から好ましく、トレイの製造コストを抑えることが可能になる。
また、ホットメルト層を加熱することで殺菌効果を得られるので被搬送物を無菌又は減菌した状態で搬送することができる。
また、被搬送物が凹部に保持されることで搬送中の振動等によって被搬送物がトレイ内部で位置ずれする事態を防止できる。
また、トレイ本体に蓋体を被せることで被搬送物の一部は蓋体の弾性層によって保護されるため、搬送中の振動等により被搬送物が破損する事態を防止できる。
また、押し型を冷却することにより、凹部の形成作業と冷却作業を同時に行うことができるのでトレイの製造時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】トレイ本体の斜視図(a)及び蓋体の斜視図(b)
図2】ホットメルト層を備えるトレイ本体の斜視図(a)及び蓋体の斜視図(b)
図3】ホットメルト層に凹部を設けた状態を示す斜視図
図4】吸引口を示す斜視図
図5】トレイの製造システムを示す斜視図
図6】トレイの製造システムを示す正面図
図7】トレイの製造システムを示す斜視図
図8】トレイの製造システムを示す斜視図
図9】トレイの製造システムを示す斜視図
図10】トレイの製造システムを示す側面図
図11】トレイの製造システムの変形例を示す縦断面図(a)~(e)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のトレイの実施の形態について説明する。
図1に示すようにトレイ1はトレイ本体10及び蓋体20で構成される。
トレイ本体10は上部開口11を備える有底の形状であり、矩形の底部12と、底部12の四辺から上方に立ち上がる側部13からなる。トレイ本体10を構成する素材としてはステンレス、アルミ等の金属や、繊維強化プラスチック、エンジニアリング・プラスチック等の樹脂が挙げられる。トレイ本体10の形状は矩形に限らず、五角形以上の多角形、円形、楕円形等であってもよい。
【0011】
図2(a)に示すようにトレイ本体10はその内部にホットメルト接着剤から成るホットメルト層14を備えている。ホットメルト層14の厚みは特に限定されず、被搬送物の外形寸法に応じて調節すればよい。
ホットメルト接着剤とは、常温で固体の無溶剤の接着剤であり、加温により液状化し、冷却することで接着性を保持したまま固化する。本発明で使用するホットメルト接着剤としては一般的に入手可能なものであればよく、熱可塑性ポリマー、例えば、ポリアミド(PA)、コポリアミド、ポリエステル(PES)、コポリエステル、酢酸エチルビニル(EVA)およびそのコポリマー(EVAC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、非晶質ポリアルファオレフィン(APAO)、ポリウレタン(PU)等が挙げられる。
【0012】
蓋体20はトレイ本体10の上部開口11を塞ぐための部材である。蓋体20の外形はトレイ本体10の外形に対応していればよい。
図2(b)に示すように蓋体20の内面側、すなわち蓋体20で上部開口11を塞いだ状態でホットメルト層14と対向する側に弾性層21を備える。弾性層21とは外力を加えた場合に変形し、外力を取り除いた場合に元の形状又は元の形状に近い形状に復元する材料から構成される層をいう。弾性層21は発泡弾性層であってもよいし非発泡弾性層であってもよい。弾性層21の材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、若しくはポリプロピレン等の発泡性の樹脂、または、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、塩素化ポリイソプレン、イソプレン、スチレン-ブタジエンゴム、水素添加ポリブタジエン、ブチルゴム等のゴム材料を1種類、又は2種類以上を混合してなる材料が挙げられる。これらに発泡助剤、整泡剤、触媒、硬化剤、可塑剤、又は加硫促進剤等の助剤を加えてもよい。
【0013】
図3はホットメルト層14の表面に被搬送物の形状に対応した凹部15を成形した状態を示している。凹部15を成形するための押し型を用意しておき、加熱したホットメルト接着剤をトレイ本体10に充填し、その上から押し型を押し付けて凹部15を成形し、冷却してホットメルト接着剤を固化させることで凹部15の形状を維持することができる。
ホットメルト層14の厚み(上下方向の長さ)を大きくすることで、例えば試験管等の上下方向に長い被搬送物を凹部15内に立てた状態で搬送することもできる。
被搬送物はホットメルト接着剤の接着力により凹部15の内面に接着した状態で保持される。
【0014】
被搬送物の全体が埋まってしまうほど凹部15を深く成形する必要はない。後の工程で被搬送物を凹部15から取り出しやすくするために搬送中の被搬送物が振動等により凹部15から抜け出さない程度の深さ、つまりホットメルト層14の表面から被搬送物の一部が露出した状態になればよい。被搬送物が凹部15に保持されることで搬送中の振動等によって被搬送物がトレイ1の内部で位置ずれする事態を防止できる。
凹部15に被搬送物を保持させた状態で、トレイ本体10の上方から蓋体20を被せることで上部開口11を塞ぐ。ホットメルト層14の表面から露出している被搬送物の一部を蓋体20の弾性層が弾性変形して覆うため、搬送中の振動等により被搬送物が破損する事態を防止できる。
【0015】
図4に示すようにトレイ本体10に吸引口16を設けてもよい。上部開口11を蓋体20で塞いだ状態で吸引口16を介してトレイ1の内部の空気を外部に排出することで真空状態にすることができるので、被搬送物がプリント基板等の精密部品の場合にトレイ1の防塵性や防湿性を高めることができる。
【0016】
本発明のトレイの製造システムの実施の形態について説明する。
図5及び図6に示すようにトレイの製造システム30は上流側から下流側に向けて搬入部40、充填部50、成形部60、冷却部70及び搬出部80を備えており、トレイ本体10を上流側から下流側までコンベア90で移動させる仕組みになっている。
【0017】
図7に示すように搬入部40においてトレイ本体10はリフトテーブル41に積み重ねられており、周知のピックアップ装置42が最上部のトレイ本体10をピックアップして充填部50まで移動させる。
図8に示すように充填部50ではトレイ本体10の内部に加熱したホットメルト接着剤を充填する。具体的にはホットメルト接着剤を貯蔵するためのタンク51、加熱部52(図6参照)、タンク51の下部に繋がるパイプ53、パイプ53の先端に設けられる充填口54等を備える。
【0018】
ホットメルト接着剤は常温で固体であり、固体のままタンク51の内部に投入される。タンク51内のホットメルト接着剤は加熱部52により加熱されて液状化され、パイプ53を通って充填口54からトレイ本体10の内部に充填される。充填されたホットメルト接着剤がトレイ本体10によって吸熱され固化しないように、トレイ本体10を下方から加熱する仕組みにしてもよい。
ホットメルト接着剤が充填されたトレイ本体10はコンベア90に載って成形部60まで移動する。
【0019】
成形部60ではホットメルト層14に被搬送物の形状に対応した凹部15を成形する。具体的には図9及び図10に示すように凹部15を形成するための押し型61を備えており、液状化した状態のホットメルト接着剤の上方から押し型61を押し付けることで被搬送物の形状に対応した凹部15を形成する。
次にトレイ本体10はコンベアに載って冷却部70まで移動する。
【0020】
図5に示すように冷却部70では周知の冷却装置を使用してホットメルト層14を冷却する。冷却によりホットメルト接着剤が固化するので凹部15の形状を維持することができる。
次にトレイ本体10は周知のピックアップ装置81により冷却部70からピックアップされ、搬出部80のリフトテーブル82に積み重ねられる。作業者は適当なタイミングでリフトテーブル82を移動させる。
【0021】
一度使用したトレイ本体10を回収し、加熱部52で再度加熱することでホットメルト層14を液状化させる。これにより凹部15が消滅してホットメルト層14の表面が平滑な状態に戻るので、次に搬送する予定の被搬送物の形状に対応した凹部15を成形部60において再度成形することができる。蓋体20はそのまま何度も繰り返し使用すればよい。
なお、図示は省略するが、冷却部70の下流側に周知の射出成型機及びピックアップ装置を配置し、射出成型品をピックアップ装置でピックアップして凹部15に嵌め込んでいく仕組みにしてもよい。また、トレイ本体10又は蓋体20にバーコード等の周知の情報識別用の標識を貼り付けておき、当該標識によって被搬送物の種類、形状、数、凹部15の位置等を管理する仕組みにしてもよい。
【0022】
トレイの製造システムの他の実施例として成形部60と冷却部70を一体化させてもよい。
具体的には、図11(c)に示すように成形部60と冷却部70を一体化させて成形冷却部100とする。
成形冷却部100は被搬送物の形状に対応した凹部200を成形するための押し型101を備える。
押し型101はホットメルト層14を冷却して凹部200の形状を維持できる温度まで冷却されている。押し型101を冷却する温度はホットメルト接着剤の種類に応じて変更すればよい。
【0023】
図11(a)に示すように充填部50においてトレイ本体10の内部に加熱したホットメルト接着剤201をタンク51から充填する。ホットメルト接着剤201が充填されたトレイ本体10はコンベアに載って図11(c)に示すように成形冷却部100まで移動する。
図11(d)に示すように成形冷却部100では押し型101を下降させて用いてホットメルト層14に被搬送物の形状に対応した凹部を形成する。押し型101が冷却されていることから、まず凹部200が冷却され、次に凹部以外の部分も冷却され、最終的にはホットメルト層14全体が冷却される。なお、外気の侵入を遮断した空間内に成形冷却部100を配置して、当該空間全体を冷却しておけばホットメルト層14全体を冷却するまでの時間を短縮できる。冷却によりホットメルト接着剤が固化するので図11(e)に示すように凹部200の形状を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、被搬送物の形状によらず繰り返し使用することができるトレイ及びこのトレイの製造システムを提供であり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0025】
1 トレイ
10 トレイ本体
11 上部開口
12 底部
13 側部
14 ホットメルト層
15 凹部
16 吸引口
20 蓋体
21 弾性層
30 トレイの製造システム
40 搬入部
41 リフトテーブル
42 ピックアップ装置
50 充填部
51 タンク
52 加熱部
53 パイプ
54 充填口
60 成形部
61 押し型
70 冷却部
80 搬出部
81 ピックアップ装置
82 リフトテーブル
90 コンベア
100 成形冷却部
101 押し型
200 凹部
201 ホットメルト接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11