(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】医療機器用の無線周波数識別装置を有するインサートアセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61C 17/20 20060101AFI20240605BHJP
A61B 17/00 20060101ALI20240605BHJP
A61B 17/32 20060101ALI20240605BHJP
A61C 1/00 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
A61C17/20
A61B17/00 700
A61B17/32 510
A61C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2022507789
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 IB2020057430
(87)【国際公開番号】W WO2021028790
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】102019000014556
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】520415856
【氏名又は名称】メクトロン・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】MECTRON S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ミヌートリ,サヴェーリオ
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-227572(JP,A)
【文献】特表2015-521888(JP,A)
【文献】特表2008-528223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 1/00,17/00
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサート(2)及び無線周波数識別装置(3)を備え、医療機器ハンドピース(4)に挿入されるように適合したインサートアセンブリ(1)であって、
インサート(2)は、患者の身体の一部と相互作用するように適合され、かつインサート金属タング(5)を備え、
無線周波数識別装置(3)は、
インサート(2)の金属タング(5)に向かって配置され、強磁性材料を含む強磁性層(6)と、
強磁性層(6)と接触して配置された誘電体層(7)と、
誘電体層(7)と接触して配置され、既定の実質的に平坦な外形(P)に沿って延在するインサートアンテナ金属エレメント(9)を備えるインサートアンテナ(8)であって、外形(P)は、全体として、少なくとも金属タング(5)を包囲し、変調されても変調されなくても、既定の周波数範囲内で電磁場を送受信するように構成される、インサートアンテナ(8)と、
識別チップ(10)であって、インサートアンテナ(8)に動作可能に接続され、作動状態において、インサートアセンブリ(1)に関する情報を送信及び/又は受信するように構成される、識別チップ(10)と、
を備え、
強磁性層(6)は、送信/受信された電磁場と、インサート金属タング(5)の金属部品、及び/又はインサートに存在する液体、及び/又はインサートアンテナ金属エレメント(9)との相互作用に起因する、インサートアンテナ(8)の近傍における電界寄生効果によって引き起こされる電磁場の減衰及び/又は歪みの現象を低減又は取り消すように適合され、
医療機器ハンドピース(4)は、ハンドピースアンテナ(12)を備え、強磁性層(6)、誘電体層(7)、及びインサートアンテナ(8)は、識別チップ(10)をハンドピース(4)のハンドピースアンテナ(12)と無線通信させるように適合された送受信装置(11)を形成し、
インサートアンテナ(8)は、インサート金属タング(5)から離れて面するインサートアンテナ金属エレメント(9)の実質的に平坦な外形(P)の第1側面又は外面(14)を備え、
インサートアンテナ(8)は、インサート金属タング(5)の方に向いているインサートアンテナ金属エレメント(9)の実質的に平坦な外形(P)の第2側面又は内面(15)を備え、
強磁性層(6)及び/又は誘電体層(7)は、チップシート(13)を備え、
識別チップ(10)は、少なくとも第1側面又は外面(14)から突出することを回避するようにインサートアンテナ(8)に動作可能に接続され、
識別チップ(10)の一部は、そのチップ部分(16)と共に外面(14)に対して反対側で突出している、すなわち、第2側面又は内面(15)から突出しており、
突出しているチップ部分(16)は、チップシート(13)に収容されている、
インサートアセンブリ。
【請求項2】
強磁性層(6)、誘電体層(7)、及びインサートアンテナ(8)は、50マイクロメートルと800マイクロメートルとの
間の厚さのスタックを形成し、6400マイクロメートルを超えない、その長手方向延在部を横断する寸法のインサートの上方に配置されるように適合され、及び/又は、
誘電体層(7)は、強磁性層(6)とは異なり、強磁性層(6)の強磁性材料に対してインサートアンテナ(8)のインサートアンテナ金属エレメント(9)を電気的に絶縁するように、強磁性層(6)とインサートアンテナ(8)との間に介在する、請求項1に記載のインサートアセンブリ。
【請求項3】
強磁性層(6)の厚さ、すなわちインサート(2)の長手方向延在部に対する半径方向の寸法は、20マイクロメートルと400マイクロメートルとの
間の範囲である、請求項1又は2に記載のインサートアセンブリ。
【請求項4】
内側絶縁層(17
)が、強磁性層(6)に対して内側に、すなわちインサート金属タング(5)と強磁性層(6)との間に配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のインサートアセンブリ。
【請求項5】
誘電体層(7)が、アクリル系又は溶剤系の両面接着剤である、請求項1から4のいずれか一項に記載のインサートアセンブリ。
【請求項6】
インサートアンテナ(8)がアルミニウム製であり、及び/又は、
アルミニウム製のインサートアンテナ(8)が、平坦な長方形の形状を有し、その短辺が1mmと6mmとの
間であり、その長辺が10mmと30mmとの
間である長方形の辺の寸法を有し、インサートアンテナ(8)の厚さが50マイクロメートル未満である、請求項1から5のいずれか一項に記載のインサートアセンブリ。
【請求項7】
強磁性層(6)、誘電体層(7)、識別チップ(10)、及びインサートアンテナ(8)に対して外側に配置された外側絶縁層(18)をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のインサートアセンブリ。
【請求項8】
強磁性層(6)、誘電体層(7)、識別チップ(10)、及びインサートアンテナ(8)に対して外側に配置された保護層(19)をさらに含む、及び/又は、
外側絶縁層(18)に対して外側に配置された保護層(19)をさらに含む、及び/又は、
外側絶縁層(18)は、PVC(ポリ塩化ビニル)、又はPET(ポリエチレンテレフタレート)、又はポリアミ
ドで作製され、及び/又は、
保護層(19)は、生体適合性であり、及び/又は、
保護層(19)は、一成分又は多成分エポキシ化合物又は塗料である、請求項1から7のいずれか一項に記載のインサートアセンブリ。
【請求項9】
強磁性層(6)、誘電体層(7)、及びインサートアンテナ(8)は、スタックを形成している、請求項1から8のいずれか一項に記載のインサートアセンブリ。
【請求項10】
強磁性層(6)、誘電体層(7)、及びインサートアンテナ(8)は、中心の金属エレメント(5)の周りに実質的に同心の構造を形成するインサート金属タング(5)を包む、請求項1から9のいずれか一項に記載のインサートアセンブリ。
【請求項11】
強磁性層(6)は、フェライトで作製され、及び/又は、
強磁性層(6)は、材料全体に分散されたマイクロメートルサイズの磁性粉末と混合された、薄く、高透磁性の焼結フェライト又はポリマーベースで作製され、及び/又は、
識別チップ(10)は、RFIDタグチップであり、及び/又は、
識別チップ(10)は、50マイクロメートルと1200マイクロメートルとの
間の基部側の寸法、及び300マイクロメートル未満の厚さを有する平行六面体形状を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載のインサートアセンブリ。
【請求項12】
インサートアセンブリ(1)は、歯科又は予防又はインプラント学用の医療機器、及び、顎顔面又は頭蓋顔面又は神経-脊髄又は整形外科分野又は他の解剖学的領域における医療用途用の医療機器、と関連して動作するように構成される、請求項1から11のいずれか一項に記載のインサートアセンブリ。
【請求項13】
制御エレメント(21)と、RF送受信器用のハンドピースアンテナ(12)を設けた医療機器ハンドピース(4)と、請求項1から12のいずれか一項に記載のインサートアセンブリ(1)と、を備えた医療機器(20)であって、インサートアセンブリ(1)は、ハンドピース(4)に分離して動作可能かつ機械的に接続される、医療機器。
【請求項14】
医療機器ハンドピース(4)は、ハンドピース遠位端(30)で終端するハンドピース遠位部分(22)と、中央のハンドピース部分(23)と、近位ハンドピース部分(24)とを備え、超音波発生器又は制御ユニット(26)に接続された振動子(25
)は、医療機器ハンドピース(4)に受け入れられ、インサート取り付け用のねじ付きタング(27)は、ハンドピース遠位部分(22)を通って突出し、作動時にインサート(2)を共振させるようにインサート(2)に取り外し可能に接続し、
インサート取り付けタング(27)は、インサートアセンブリ(1)のねじ接続用にねじが切られており、及び/又は、
ハンドピース遠位部分(22)は、ハンドピース(4)に固定又は取り外し可能に接続されるハンドピースアンテナ(12)を備え、及び/又は、
ハンドピース遠位部分(22)は、ハンドピースアンテナ接続エレメント(28)を備え、ハンドピースアンテナ(12)は、ハンドピースアンテナ接続エレメント(28)に支持されて電気的に接続され、インサートがハンドピース(4)に接続された状態にてインサートアンテナ(8)の近傍に配置されるように、ハンドピースアンテナ接続エレメント(28)からハンドピース遠位端(30)の方へ突出し、及び/又は、
ハンドピース遠位部分(22)は、ハンドピースアンテナ接続エレメント(28)を備え、ハンドピースアンテナ(12)は、ハンドピースアンテナ接続エレメント(28)に支持されて電気的に接続され、インサートがハンドピース(4)に接続された状態にてハンドピースアンテナがインサートアンテナ(8)と少なくとも部分的に重なり配置されるように、ハンドピースアンテナ接続エレメント(28)からハンドピース遠位端(30)の方へ突出し、及び/又は、
ハンドピースアンテナ接続エレメント(28)は、固定された又は取り外し可能な形態でハンドピースに電気的に接続され、ハンドピースアンテナ接続エレメント(28)は、少なくとも1つのLED(29)を備え、及び/又は、
少なくとも1つの集光器(32)を備える導光エレメント(31)は、医療機器(20)の作業領域を照らすためにハンドピースの遠位端(30)で少なくとも1つのLED(29)の光を導くように、ハンドピースアンテナ接続エレメント(28)に関連付けられ、及び/又は、
導光エレメント(31)、ハンドピースアンテナ接続エレメント(28)、及びハンドピースアンテナ(12)は、ハンドピース遠位部分(22)に取り外し可能に接続されるハンドピース遠位部分蓋(33)によって覆われている、請求項13に記載の医療機器。
【請求項15】
医療機器(20)は、電気及び流体供給用の接続ケーブル(34)によってハンドピース(4)を超音波発生器又は制御ユニット(26)に接続し、医療機器ハンドピース(4)は、超音波マイクロ振動を発生させるための機
器に機械的に結合されたインサート(2)を交換可能に受け入れ、インサートは、選択されたインサート(2)の種類の機能として異なる電力及び振幅の超音波範囲において動作する、請求項13又は14に記載の医療機器(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線周波数識別装置を有するインサートに動作可能に接続されるように適合した医療機器及び/又は歯科機器用の無線周波数識別装置を有するインサートアセンブリに関する。
【0002】
例えば、本発明は、小型無線周波数識別装置を使用することによってインサートを認識するように適合された超音波圧電素子用のハンドピースアセンブリに関する。
【0003】
特に、本発明は、インサートと無線周波数識別装置とを備えるインサートアセンブリに関し、該インサートアセンブリは、医療機器ハンドピースに挿入されるように適合され、インサートは、患者の身体の一部と相互作用するように適合される。
【0004】
さらに、本発明は、医療外科分野(例えば、神経-脊髄、頭蓋顔面、整形外科、耳鼻咽喉科)、歯科、外科、及び非外科分野(例えば、口腔外科手術、インプラント学、歯科衛生、及び予防など)に特に及び有利に適用されるが、他の実施形態により工業又は建設分野でも等しく使用可能な超音波システムの状況に関する。
【0005】
より正確には、そのようなシステムは、材料、例えば石灰化材料の除去、摩耗、切断又は穿孔を行う必要がある分野で使用することができる。
【0006】
以下、用途(application)とは、医療外科分野(例えば、神経-脊髄、頭蓋顔面、整形外科、耳鼻咽喉科)、歯科分野、外科及び非外科分野(例えば、口腔外科、インプラント学、歯科衛生、及び予防などにおける)での用途を意味するが、他の実施形態による工業又は建設分野、例えば、骨、エナメル質、象牙質、歯石、及びバイオフィルムなどの石灰化型材料の除去、摩耗、切断又は穿孔を行う必要がある分野において等しく使用可能である。
【背景技術】
【0007】
医療又は歯科分野、特に外科又はインプラント学分野では、超音波のパワーが、硬質組織(骨)及び軟組織の切開、血管の焼灼、及び歯石除去用の歯科予防の分野において適用されている。
【0008】
単に例として、インプラント学の分野を参照すると、骨へのねじ又は他の固定システムの挿入用の部位は、上述したタイプの回転ツールを使用することによって準備されるが、術者にとっては術中、患者にとっては術後の両方に深刻な制限がある。
【0009】
ほんの数例を挙げると、従来の器具は、困難な又は制限された外科的アクセスの複雑な解剖学的構造の存在下で、又は神経及び血管などの繊細な解剖学的構造の近くで、手術部位を手術するときに問題がある。
【0010】
回転によって生成される大量の機械的エネルギー及び術者が機器に加えなければならないかなりの圧力は、非石灰化構造体への損傷の可能性、かなりの量の熱の生成、摩擦による損失、結果として石灰化組織の過熱、要求される術中の精度及び制御の労力における術者の疲労の原因となる。
【0011】
本発明の内容は、例えば口腔インプラント学などの医療及び歯科用途のための超音波動力システムに関する。しかしながら、本発明は、医療分野及び工業分野の他の分野にも同様に適用することができる。
【0012】
ほとんどの超音波動力システムの動作は、印加手段における縦波の伝送に基づく。そのような波は、圧電変換器によって生成され、超音波ホーンと呼ばれる集光器つまり導波路を介して手段に伝達される。
【0013】
しかしながら、撓み、ねじり、又は複合振動が使用される用途がある。歯科分野では、例えば、超音波振動子で励起された長手方向の振動は、非対称形状の先端又はインサートを介して撓み振動に変換される。インサートの外形に1つ又は複数の曲線を組み込むことは、すなわち、口腔の内部への良好なアクセスを可能にし、インサートの操作部の近くに振動子の長手方向の動きを線形の撓み振動に変換するという二重の目的を有する。
【0014】
超音波アブレータでは、フック状インサートの撓み運動は、通常、歯から石灰化した堆積物(歯石)を除去するために使用される。超音波メス(例えば、Mectron S.p.A.の「Piezosurgery device」など)では、鎌状インサートで生成された横方向の動きを使用して、下顎骨及び他の石灰化組織を正確に切開する。
【0015】
独国特許発明第102005044074A1号明細書又は欧州特許第2057960B1号明細書に記載されるように、線形振動及び楕円振動の両方によって歯石を除去する超音波アブレータもある。これらのシステムでは、直交平面における振動子の撓み振動によってインサートにおいて双方向成分を有する振動運動が生成される(特に欧州特許第2057960B1号明細書参照)。これらの撓み振動子の構成は、反対の極性により半径方向及び軸方向に挿入された隣接する圧電容積によって横方向の振動が引き起こされるという以前に開示された概念を参照する。[Mori,E.et al.,“New Bolt Clamped Flexural Mode Ultrasonic High Power Transducer with One-Dimensional Construction”,Ultrasonics International 89 Conference Proceedings”;Watanabe,Y.et al.,“A Study on a New Flexural-mode Transducer-solid Horn System and its Application to Ultrasonic Plastic Welding”,Ultrasonics Vol.34,1996,pp.235-238;Yun,C-H.et al“A High Power Ultrasonic Linear Motor using a Longitudinal and Bending Hybrid Bolt-Clamped Langevin Type Transducer”,Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.40,2001,pp.3773-3776を参照。]
【0016】
顎顔面手術処置では、インサートの超音波振動が骨組織を切断するために一般的に使用される。
【0017】
歯科インプラント学プロトコルによれば、縮小されたサイズの最初の穴が得られると、インプラントと適合する直径に達するまで、増大セクションの回転ドリルを使用して徐々に拡大される。
【0018】
口腔内で行われる手術用の超音波システムにおいて通常使用されるインサートは、インプラント部位の準備のすべての段階を実行するには不十分な振動振幅を有する。このような制限は、インサートのセクションが大きいほど、同じハンドピースを使用して生成される振動の振幅が小さくなるという、これらの機器の設計に固有のものである。このような、インサートのセクションと振動との間の逆の関係は、特に直径数ミリメートルの穿孔が必要とされる口腔インプラント学において、技術の適用性の限界である。
【0019】
インサートの線形振動に関するさらなる問題が存在し、これは、ハンドピースの手動のスイングがそれとの組み合わせにおいて適用されない限り、下顎組織の穿孔ができないことである。そのような補助動作は、口の内側で術者によって生成するのは確実に困難であり、いずれの場合でも、臨床でのインプラントの実施が今日必要とする精度の要件に、あまり適合していない。
【0020】
ねじり振動、又はねじり及び長手方向の超音波振動の組み合わせの励起によって生体組織を切開するのに適した超音波装置は、米国特許第7374552B2号明細書、米国特許第6402769B1号明細書、米国特許出願公開第2009/236938A1号明細書、米国特許出願公開第2011/0278988A1号明細書から知られている。これらの装置の共通の特徴は、それらがすべて単一の幾何学的展開軸を有し、基本的に軸対称システムであることである。歯科インプラントなどの顎顔面用途では、口腔内で使用される振動インサートは、振動子軸に対して著しく非対称な展開を有する。したがって、これらの分野では、上述の発明の教示に従ってインサートの操作部に、ねじりの又は長手方向及びねじりの振動を生成することはできない(振動子及び操作部が同軸であるシステムにのみ有効である)。
【0021】
Slipszenko(米国特許出願公開第2013/0253559A1号明細書)は、振動子の軸に垂直な発生軸を有する、軟組織の治療用の超音波メスにおいて、ねじり、撓み、又は長手方向の振動が交互に生成される超音波システム構成を考案した。この解決策によれば、圧電変換器の横方向の振動は、振動子軸に対して偏心して取り付けられた超音波ホーン又は導波路を組み込むことによって、ねじり振動、撓み振動、又は縦(長手方向)振動に変換することができる。振動の伝達が正しく行われるために、ホーンの後部の直径は、変換器の直径よりも大きくなければならない。直交平面に代替的な振動ファミリーを生成することは可能であるが、Slipszenkoの解決策を適用することによって、歯科及び医療の機器のコンパクトさ、人間工学、及び重さの特定の要件を達成することはできない。超音波ホーンの大きなサイズ及び偏心取り付けは、口腔内の視認性を著しく制限するだろう。さらに、Slipszenkoの解決策では、適切な振動を伝達するために、メスと変換/振動伝達ホーンとの間に、1つ又は複数の導波路が挿入される。これらの構成要素の数を最小限に減らしても、装置の全長は、口腔又は顎顔面又は神経脊髄又は頭蓋骨腔の内側などの小さい、窮屈な、繊細な空間における用途に関し、依然として不適合である。
【0022】
Mishiro(特開平3-0373207号公報)は、歯科用途において適用性を理論的に見出すことができる材料の除去用の超音波システムを提案した。提案された解決策は、導波路に連結された超音波振動子によって形成されたジョイントにおいて生成された楕円振動が、導波路の先端と接触したままの操作ツールの回転を生成する、超音波モータの典型的な動作原理に基づいている。特開平3-0373207号公報に開示されている構成では、その対称軸が振動子の軸に対して垂直又は平行であり得る操作ツールは、回転に加えて超音波振動し、材料の除去を可能にする。振動運動が伝達される、操作ツールと導波路との間の接触点は、回転によって生成され、振動子-導波路のジョイントにおいて生成される長手方向(縦)振動及び横方向振動の腹に対応する。この解決策に記載された構成によれば、動作要素は、振動要素に沿って生成された同数の静止ノードに位置する2つのパッドによって支持される。そのような解決策は、その実施において複雑であり、歯科インプラントにおけるように、操作ツール(インサート)が連続して使用され及び交換されなければならない用途には適していないように思われる。
【0023】
さらに、生物医学又は医療器具の分野では、患者の安全性の継続的な改善の必要性が強く感じられる。
【0024】
このため、生物医学的器具(例えば、歯科用の医療機器における患者の歯、又は例えば、顎顔面又は神経-脊椎又は頭蓋骨又は整形外科領域などの区域で外科的に使用するための器具における骨、において動作するように適合されたインサート)用のインサートが、常に正確かつ安全に動作し、信頼できる製造業者から得られ、医療機器に適したタイプであり、使い過ぎていないことなどを保証しなければならない。
【0025】
この目的のために、インサート及びその動作に関する情報を医療機器の制御ユニットに提供するように適合された識別装置を設けたインサートを有することが非常に重要である。
【0026】
これに関して、RFID識別装置を設け、医療機器の残りの部分と無線通信するように適合されたインサートが知られている。
【0027】
この種の解決策は、例えば、国際公開第2006082340号パンフレット、米国特許出願公開第2011087605A1号明細書、米国特許出願公開第2015147718A1号明細書、米国特許出願公開第2009047624A1号明細書、米国特許出願公開第2008044790A1号明細書、米国特許出願公開第2009065565A1号明細書、米国特許出願公開第2015150647A1号明細書に記載されている。独国特許出願公開第10204884A1号明細書は、医療機器での使用に関連せず、13.56MHzの周波数で動作する小型発振回路及びアンテナを設けた「トランスポンダ付きラベル」又は「RFIDラベル」を記載している。
【0028】
しかしながら、この分野で使用されるインサートの特定の特徴、とりわけ非常に小さいサイズ、及びインサート本体を形成する金属エレメントの存在のために、既知の解決策によって提供される通信能力は、ニーズに対して満足するものではない、又は今日のユーザに利用可能な用途が見つからない。
【0029】
より具体的には、医療機器の残りの部分と共にRFID識別装置の無線通信を保証するために、すなわちRFID識別装置の励起のために、インサートに配置された小型アンテナは、インダクタンスのように作用する。
【0030】
しかしながら、そのようなインダクタンスは、インサート本体の金属の存在によって、さらには電磁場の敵対者(antagonists)として作用するインサートに存在し得る可能な液体(例えば、本来生理食塩水である生理学的溶液)によって、乱される。なぜならば、それらは電磁場を吸収し、金属の場合、電磁場を対称的に再放出して、金属の境界ゾーンで電磁場の取り消しを引き起こす傾向があるからである。
【0031】
要約すると、そのような現象の全体的な結果は、インサートアンテナの近傍における電磁場によって搬送される信号の強い減衰、又はさらに打ち消しであり、これは、RFID識別装置と医療機器の残りの部分との間の通信の能力を低下させ、又はさらにそのような通信が行われるのを防止する。
この状況は、RFID識別装置の利点を効果的に損なう。
【0032】
RFID識別装置を有するインサートの前述の既知の解決策のさらなる欠点は、様々な国におけるこの種の通信用の異なる予想される規格に従って、UHF RFID通信によって必要とされる周波数で動作するインサートアンテナを設計することが困難であることにある。
要約すると、医療機器の残りの部分との効果的かつ信頼性の高い通信をサポートするように適合された識別装置を設けた医療器具インサートの必要性は、満たされていないままである。
【0033】
さらに、インサートは、超音波発生器に交換可能に接続されなければならず、繰り返し使用されるためには、インサートをハンドピースから分離してオートクレーブに配置することができなければならず、それに接続される任意のRFID識別装置に関して繰り返しで、非常にストレスの多い処理サイクルを引き起こすということを考慮しなければならない。
【0034】
したがって、サイズが小さいだけでなく、したがってハンドピースの小さな遠位部分に適合することができる、すなわち、狭い操作又は介入分野に適合するだけでなく、同時に、オートクレーブ又はその滅菌のための同様の処理サイクルによって与えられる応力に対して非常に耐性がある、インサート識別解決策用の必要性が依然として強く感じられている。
【0035】
前述の、インサートのRFID識別装置を医療機器の残りの部分と無線通信させる必要性は、医療機器ハンドピースに追加の要件を課す。そのようなハンドピースは、適切に給電されなければならない無線周波数アンテナを設けなければならない。
【0036】
ハンドピースの内側に配置される読み取りアンテナは、非常に厳しい寸法及び動作要件を満たさなければならない。アンテナをハンドピースに収容できるように、アンテナの寸法は、小型化されねばならない。このことは、リング又はループアンテナを使用することを示唆している。
【0037】
しかしながら、小さなリング又はループアンテナは、いくつかの問題を抱えている。主な問題の1つは、アンテナリングを循環する電流が、動作周波数及び幾何学的寸法に依存して、いわゆる空隙、つまり電流が位相反転を受けるポイント、を有する傾向があるという事実から生じる。このような現象は、電流が0であるため、アンテナ放射が幾つかのポイントで0であること、また、位相電流が一次電流とは反対である、他の低い放射ポイントをも引き起こすということを意味する。最終的に、このことは、アンテナの送信能力を著しく低下させる。
【0038】
環境の電磁気疑似事象に起因するエネルギー損失及び線路反射の発生を最小化するためのさらなる基本的な必要性は、UHF周波数範囲におけるアンテナインピーダンスを、医療機器の発生器への整合を確保する必要性から生じ、これは、アンテナ及び利用可能スペースの小さいサイズに起因して、この適用範囲で達成することは容易ではない。
【0039】
最後に、インピーダンス整合条件下で、無線周波数コネクタが存在しない状態で、ハンドピースアンテナに供給するように意図されたハンドピース内部の無線周波数信号を送信する必要が生じる。
【0040】
したがって、インサート無線周波数識別装置との効果的な無線通信を可能にするためのハンドピースにおける効果的な無線周波数信号の送受信器の解決策のさらなる必要性は、依然として強く感じられ、現在満たされていない。
【発明の概要】
【0041】
本発明の目的は、背景技術を参照して上述した欠点を解決し、考慮される技術分野において特に感じられる前述の必要性に応答することを可能にする医療機器アセンブリを提供することである。
【0042】
そのような目的は、請求項1に記載のアセンブリによって達成される。
【0043】
そのようなアセンブリのさらなる実施形態は、請求項2から12に定義されている。
【0044】
本発明のさらなる目的は、前述のハンドピースを備える医療機器を提供することである。
【0045】
そのような目的は、請求項13に記載の医療機器によって達成される。
【0046】
そのような機器のさらなる実施形態は、請求項14及び15に定義されている。
【0047】
本発明から生じる主な利点のいくつかは以下の通りである。
材料の位置、厚さ、及び種類は、手術部位の臨床医の視界を妨げることなく、インサートの直径の増加を最小化することを可能にし、したがって、患者の安全性を保証し維持する;
材料及びRFIDチップの、すなわちインサートの金属に添加される材料の、小さい寸法及び軽量が15グラム未満であることは、超音波振動子がインサートに機械的に結合されるときに超音波振動子の機械的特性に大きく影響せず、したがって、機器の超音波周波数及び振幅及び電力などの動作パラメータを変更せず、医療機器の最大かつ安全な性能を常に保証する。
【0048】
インサートにおける材料及びRFIDチップの位置、小さい寸法、及び重量は、劣化を防止し、インサートがその寿命、効率、及び有効性を維持することを確実にする。
【0049】
位置及びインサートの直径のわずかな増加は、動力学的方法に基づくトルクレンチ又は器具によるインサートと振動子との間の機械的結合の単純さに影響を及ぼさない。
【0050】
インサートにおけるRFIDシステム材料の種類(タイプ)は、オートクレーブ及び/又は機器洗浄器などの滅菌プロセスで使用される温度に適している。
【0051】
患者と相互作用するインサートにおけるRFIDコーティング材料の種類(タイプ)は、生体適合性である。
【0052】
インサートにおけるRFIDシステムの少ない数の層は、製造プロセスの単純さを保証し、常に非常に効率的なシステムを提供する。
【0053】
RFIDシステムの厚さの減少及びその結果としてのインサートの直径の最小の増加は、ハンドピースを取り囲む構成要素がない適切な同心領域を保証し、手術中に臨床医によって与えられる過剰な圧力によって引き起こされる製造プロセスの公差又は撓みが、振動子の機械部品をインサートと接触可能とし、機器の動作パラメータにおける変化を引き起こすことを保証する。
【0054】
RFIDインサートチップの固有の書き込み不可能なコードによるインサートの識別。
RFIDハンドピースチップの固有の書き込み不可能なコードによるハンドピース又はハンドピースアンテナの識別。
【0055】
特に、患者の安全のために、医療機器と協力して固有のRFID識別により、以下が可能になる。
a.インサート又はハンドピースのライフサイクル全体にわたる、インサート又はハンドピースのトレーサビリティを確保する。
b.インサート及びハンドピースが適切かつ適合性であるという臨床医への表示。
c.選択されたインサートが選択された介入タイプに適切かつ適していることの臨床医への表示。
d.現在及び過去の使用方法及び使用時間の経時変化を評価した、インサートの性能の臨床医への表示。
e.使用中のインサートに関する医療機器の適切な設定に関する臨床医への指示。
f.臨床プロトコル及び手術の各ステップの表示。
g.予測的メンテナンス。
h.定期的メンテナンス。
i.製品及びその使用条件の統計及び継続的な改善のために製造業者とのデータの共有。
j.医療機器、並びにインサートを有する医療システムのより良い効率及び有効性のために新しい製品又は使用モデルの可能な統合を更新するための、製造業者とのデータの共有。
k.大学、トレーニングセンターなどとのデータの共有。
l.患者の治療用に使用される、医療記録及びインサートの具体的な履歴の書き込み。
【0056】
通常の臨床プロトコルに従って、インサートと遠位アンテナハンドピース位置との両方、並びに、ハンドピース、及び医療機器をハンドピースに接合するケーブル、のすべてのRFIDシステムの容易な洗浄及び滅菌。
【0057】
いくつかの実施態様における、メンテナンス並びに洗浄及び滅菌のためにアンテナハンドピースを抜き出す可能性。
【0058】
RFIDシステムのデータ伝送チャネルは、より多くの接続及びワイヤに起因する異常の可能性を増加させず、医療機器をハンドピースに接合するケーブルの可撓性を維持するという利点と共に、存在する場合、遠位位置におけるハンドピースコーンの照明用の接続を共有する。
【0059】
したがって、本発明は、歯科手術及び予防、もしくは顎顔面手術、整形外科、神経脊髄、耳鼻咽喉科、頭蓋顔面の手術、並びに、医療及び工業分野における他の分野の両方に適用可能な普遍的な解決策を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
本発明による医療機器ハンドピースのさらなる特徴及び利点は、添付の図面を参照して、例示的で非限定的な例として与えられる好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【
図1】
図1は、例えば歯科又は顕微鏡手術での使用のための、励起ハンドピース及び交換可能なインサートアセンブリを有する超音波システムを備える医療機器の概略的なアセンブリを示す。
【
図2】
図2は、
図1のハンドピースアセンブリ及びインサートアセンブリの特定の
図1の線II-IIに沿って得られた断面図を示し、ここでは、振動子例えば圧電変換器などのハンドピースの構成要素が強調表示されている。
【
図3】
図3は、
図1のハンドピースアセンブリ及びインサートアセンブリのいくつかの構成要素の一部が分離された不等角投影図を示し、インサートアセンブリ、ハンドピース遠位部蓋、集光器を有する導光部、ハンドピースアンテナ接続エレメントによって支持されたハンドピースアンテナ、及び圧電変換器などのハンドピース内部構成要素が示されている。
【
図4】
図4は、インサートアセンブリの堅固な交換可能な接続用の振動子シャフト挿入接続タングを強調して、遠位部分蓋及びハンドピースアンテナ無しでのハンドピースの中央部分のみの不等角投影図を示している。
【
図5】
図5は、インサートアセンブリの不等角投影図を示す。
【
図6】
図6は、無線周波数識別装置の異なる層が強調表示されている、
図5のインサートの分離された部分の不等角投影図を示す。
【
図7】
図7は、インサートのインサート足部を包み取り囲む、又は部分的に取り囲むように適合された、その平面外形の延長におけるインサートアンテナの拡大平面図を示す。
【
図8】
図8は、識別チップの本体全体がインサートアンテナの延在面の片側のみから突出した状態で識別チップを配置するように、識別チップが接続されたインサートアンテナの細部の不等角投影図を示している。
【
図9】
図9は、識別チップに接続されるインサートアンテナのさらなる実施形態の不等角投影図を示している。
【
図10】
図10は、識別チップが接続された
図9のインサートアンテナの細部の詳細な不等角投影図を示しており、識別チップの本体全体がインサートアンテナの延在面の片側のみから突出した状態で識別チップを配置している。
【
図11】
図11は、識別チップが接続されたインサートアンテナの細部の不等角投影図を示しており、識別チップの本体全体がインサートアンテナと同じ本体レベルにあり、インサートアンテナの延在面の片側のみを部分的に超えてつまり超えて突出するように識別チップを配置している。
【
図13】
図13は、無線周波数識別装置が強調表示されている、
図12のインサートの
図12の線XIII-XIIIに沿って得られた断面図を示す。
【
図14】
図14は、無線周波数識別装置の層が強調表示されている、
図13のXIVで示された部分の拡大図を示す。
【
図16】
図16は、さらなる実施形態によるインサートアセンブリの断面の詳細を示す。
【
図17】
図17は、ハンドピース遠位部分の構成要素及びインサートに関連する無線周波数識別装置の様々な層を備えたインサートアセンブリと共に、ハンドピースアンテナの部分が分離された状態の不等角投影図を示す。
【
図18】
図18は、RFID識別チップ及びインサートアンテナからなるアセンブリの連続した等価電気回路の例を示す。
【
図19】
図19は、接続モデルも含む、RFID識別チップ及びインサートアンテナからなるアセンブリの別の例の等価電気回路の並列表現を示す。
【
図20】
図20は、インサートアンテナ及び識別チップの実施形態のブロック図を示す。
【
図21】
図21は、ハンドピースアンテナを含む医療機器ハンドピース部分のブロック図を示す。
【
図22】
図22は、ハンドピースにおけるRF信号分配モードの簡略化したブロック図を示す。
【
図23】
図23は、ハンドピースと医療システム制御ユニットとを接続するように適合された同軸ケーブル接続のブロック図を示す。
【
図24】
図24は、ハンドピースアンテナの実施形態の等価回路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
「小型化された」という用語は、50マイクロメートルと800マイクロメートルとの間、好ましくは100マイクロメートルと600マイクロメートルとの間のサイズを有する機器又は構成要素を意味する。
【0062】
「医療機器」という用語は、圧電ハンドピースが超音波周波数インサートの機械的運動を作動させる電気機械機器を意味する。これらの機器は、いくつかの分野に適用することができ、以下に例としてのみ列挙されている。
【0063】
・医療:特に、神経-脊椎、頭蓋-顎顔面、整形外科、耳鼻咽喉科、小児科分野における手術;
【0064】
・歯科、特に、手術、歯科全般、衛生及び予防(特に、歯石、歯垢、及びバイオフィルムの除去)。
【0065】
骨又は歯に対して機器によって実行される機能は、例えば、以下のものを意味する。
・切断;
・穿孔;
・除去;
・浸食。
【0066】
歯石/プラーク/バイオフィルムに対して機器によって実行される機能は、例えば、以下のものを意味する。
・除去;
・崩壊。
【0067】
図1において、参照符号101は、接続されたインサート2において振動を発生する、超音波微小振動を発生させる振動子25に動作可能に接続される発生器手段102又は制御エレメント21を備える超音波システム101を全体として識別する。
【0068】
単なる例として、超音波システム101は、外科用又は予防用機器、例えば歯科機器又は医療機器である。他の実施形態によれば、本超音波システム101は産業機器である。
【0069】
無線周波数識別装置3を有するインサートアセンブリ1は、以下に説明する。このようなインサートアセンブリ1は、医療機器のハンドピース4に挿入されるのに適合している。
【0070】
インサートアセンブリ1は、その一般的な実施形態によれば、インサート2と、強磁性層6と、誘電体層7と、インサートアンテナ8と、識別チップ10とを備える。
【0071】
インサート2は、患者の身体の一部と相互作用するのに適し、少なくとも1つのインサート金属タング5を備える。
【0072】
強磁性層6は、インサート2の前述のインサート金属タング5と接触して、又はその一部に配置される。
【0073】
実施形態によれば、強磁性層6は、インサート2のインサート金属タング5に接着される。異なる実施形態によれば、強磁性層6は、両面接着剤を介在させることによって金属タング5に付けられる。
【0074】
強磁性層6は、強磁性材料を備える。
【0075】
誘電体層7は、前述の強磁性層6に接して配置される。
【0076】
インサートアンテナ8は、前述の誘電体層7と接触して配置され、既定の、本質的に平坦な外形Pに沿って延在するインサートアンテナ金属エレメント9を備える。外形Pは、全体として、金属タング5を少なくとも部分的に包囲して巻き付ける。
【0077】
このようなインサートアンテナ8は、変調又は非変調のいずれかで、既定の周波数範囲内で、電磁場を受信及び送信するように構成される。
【0078】
識別チップ10は、前述のインサートアンテナ8に動作可能に接続され、作動したとき、インサートアセンブリ1に関する情報を送信するように構成されている。
【0079】
前述の強磁性層6は、送信/受信される電磁場と、インサート2のインサート金属タング5の金属部分、及び/又はインサート2に存在する液体、及び/又はインサートアンテナ金属エレメント9との相互作用に起因する、アンテナインサート8の近傍における電界寄生効果(field parasitic effects)によって引き起こされる電磁場の減衰及び/又は歪みの現象を低減又は取り消すように適合されている。
【0080】
前述の強磁性層6、誘電体層7、及びインサートアンテナ8は、インサートアセンブリ1が挿入されるのに適したハンドピース4に含まれるハンドピースアンテナ12と、識別チップ10とを無線通信させるように適合された送受信装置11を形成する。
【0081】
さらなる実施形態によれば、インサートアセンブリ1は、インサート2と、無線周波数識別装置3とを備える。
【0082】
インサートアセンブリ1は、医療機器ハンドピース4に挿入されるように適合されている。
【0083】
インサートアセンブリ1は、
患者の身体の一部と相互作用するように適合されたインサート2であって、インサート金属タング5を備えるインサート2と、
無線周波数識別装置3と、を備える。
【0084】
無線周波数識別装置は、インサート2のインサート金属タング5の側面に配置された、言い換えれば、強磁性層6とインサート金属タング5との間に介在する接着剤又は両面接着剤の層を考慮して直接接触している、強磁性層6を備える。
【0085】
強磁性層6は、強磁性材料を備える。特に、強磁性層6は、送信/受信された電磁場と、インサート金属タング5の金属部品、及び/又はインサートに存在する液体、及び/又はインサートアンテナ金属エレメント9との相互作用に起因する、インサートアンテナ8の近傍における電界寄生効果によって引き起こされる電磁場の減衰及び/又は歪みの現象を、低減又は取り消すように適合される。
【0086】
無線周波数識別装置は、強磁性層6と接触して配置される誘電体層7をさらに備える。
【0087】
無線周波数識別装置は、誘電体層7と接触して配置されたインサートアンテナ8をさらに備え、既定の本質的に平坦な外形Pに沿って延在するインサートアンテナ金属エレメント9を備える。外形Pは、全体として、金属タング5を少なくとも部分的に包囲する。例えば、外形Pは円筒面に延びる。
【0088】
インサートアンテナ8は、変調又は非変調のいずれかで、所与の周波数範囲内で電磁場を受信及び送信するように構成される。
【0089】
無線周波数識別装置は、識別チップ10をさらに備える。
【0090】
識別チップ10は、インサートアンテナ8に動作可能に接続され、作動したとき、インサートアセンブリ1に関する情報を送信するように構成されている。
【0091】
さらに、医療機器ハンドピース4は、ハンドピースアンテナ12を備える。
【0092】
強磁性層6、誘電体層7、及びインサートアンテナ8は、識別チップ10をハンドピース4のハンドピースアンテナ12と無線通信させるように適合された送受信装置11を形成する。インサートアセンブリ1の実施形態によれば、前述の誘電体層7は、前述の強磁性層6とは異なる。さらに、強磁性層6の強磁性材料に対してインサートアンテナの前述のインサートアンテナ金属エレメント9を電気的に絶縁するように、誘電体層7は、強磁性層6とインサートアンテナ8との間に置かれる。
【0093】
有利には、強磁性層6及び/又は誘電体層7は、チップシート13を備える。
【0094】
識別チップ10は、インサートアンテナ8のインサートアンテナ金属エレメント9の実質的に平坦な外形Pの少なくとも第1面つまり外面14からの突出を回避するように、インサートアンテナ8に動作可能に接続される。
【0095】
さらに、識別チップ10は、そのチップ部分16と共に、インサートアンテナ8のインサートアンテナ金属エレメント9の内面15から突出して、実質的に平坦な外形Pの外面14に対して反対側から突出する。
【0096】
有利には、突出したチップ部分16は、チップシート13に受け入れられ、無線周波数識別装置を特にコンパクトかつ省スペースにする。
【0097】
さらに、チップシート13への突出チップ部分16の挿入は、識別チップ10をさらに遮蔽し、外部の電磁妨害に対してより堅牢にし、また、識別チップ10とインサートアンテナ8とのアセンブリを、外部応力に対してより機械的に堅牢にし、例えば、滅菌オートクレーブ又は器具洗浄器によって加えられる熱応力から、より熱的に保護される。
【0098】
実施形態によれば、強磁性層6、誘電体層7、及びインサートアンテナ8は、50マイクロメートルと800マイクロメートルとの間、好ましくは100マイクロメートルと600マイクロメートルとの間の範囲の寸法のスタックを形成し、その長手方向延在部を横断する寸法、例えば、その長手方向延在軸の一方での半径方向の寸法が6,400マイクロメートルを超えない寸法で、インサートの上方に配置されるように適合される。これらの値は、平面におけるスタックの厚さを指し、したがってそれらは、例として円筒形であるインサート2の半径を増加し、一方、インサートの半径方向の寸法は、例えば円筒形であるインサート2の金属の直径である。
【0099】
実施形態によれば、強磁性層6の厚さ、すなわちインサート2の長手方向延在部に対する半径方向の寸法は、20マイクロメートルと400マイクロメートルとの間、好ましくは50マイクロメートルと300マイクロメートルとの間の範囲内である。
【0100】
実施形態によれば、内側絶縁層17、例えば両面接着剤は、強磁性層6に対して内側に、すなわちインサート金属タング5と強磁性層6との間に配置される。
【0101】
実施形態によれば、誘電体層7は、両面接着剤で作製される。
【0102】
実施形態によれば、インサートアンテナ8は、アルミニウム製である。
【0103】
実施形態によれば、インサートアンテナ8は、平坦な矩形形状で、それぞれ、1mmと6mmとの間、好ましくは2mmと4mmとの間の短辺、及び10mmと30mmとの間、好ましくは12mmと25mmと間の長辺の矩形面の寸法を有し、50マイクロメートル未満のインサートアンテナ8の厚さを有する。
【0104】
実施形態によれば、無線周波数識別装置3は、強磁性層6、誘電体層7、識別チップ10、及びインサートアンテナ8に対して外部に配置された外側絶縁層18をさらに備える。
【0105】
実施形態によれば、無線周波数識別装置3は、強磁性層6、誘電体層7、識別チップ10、及びインサートアンテナ8に対して外部に配置された、例えば生体適合性の保護層19をさらに備える。
【0106】
実施形態によれば、無線周波数識別装置3は、外側絶縁層18に対して外部に配置された、例えば生体適合性の保護層19をさらに備える。
【0107】
実施形態によれば、外側絶縁層18は、PVC(ポリ塩化ビニル)、又はPETポリエチレンテレフタレート、又はポリアミド、例えばKapton(登録商標)で作製される。
【0108】
実施形態によれば、保護層19は、生体適合性であり、例えば、塗料、又は1つ以上の成分を有するエポキシ化合物である。
【0109】
実施形態によれば、強磁性層6、誘電体層7、及びインサートアンテナ8は、スタックを形成する。
【0110】
実施形態によれば、強磁性層6、誘電体層7、及びインサートアンテナ8は、インサート金属タング5を包み、中心の金属エレメント5の周りに実質的に同心の構造を形成する。「同心」という用語は、構造が中心の金属エレメントを完全に囲んでいることを意味するのではなく、またそれと完全に同心でなければならないことを意味するものでもなく、例えば、インサートの周囲の周りのインサートアンテナの最小伸長、所望の送受信器に適合した伸長を可能にするために、それが、中心の金属エレメントの周囲の一部に沿って内側の金属エレメントを取り巻くことのみを意味する。
【0111】
実施形態によれば、そのような強磁性層6は、フェライトを含む。実施形態によれば、強磁性層6は、材料全体に分散されたマイクロメートルサイズの磁性粉末と混合された、高透磁率を有する薄い焼結フェライト又は高分子基材(ポリマーベース)で作製される。
【0112】
実施形態によれば、強磁性層6、識別チップ10は、RFIDタグチップである。
【0113】
実施形態によれば、識別チップ10は、50マイクロメートルと1200マイクロメートルとの間、好ましくは100マイクロメートルと1000マイクロメートルとの間の基部側の寸法、及び300マイクロメートル未満の厚さを有する平行六面体形状である。
【0114】
実施形態によれば、インサートアセンブリ1は、歯科又は予防又はインプラント学用の医療機器、及び、顎顔面又は頭蓋顔面又は神経-脊髄又は整形外科又は他の解剖学的領域における医療用途用の医療機器、と関連して動作するように構成される。
【0115】
本発明はさらに、制御エレメント21と、RF送受信器用のハンドピースアンテナ12を設けた医療機器ハンドピース4と、上述の実施形態のいずれか1つによるインサートアセンブリ1とを備えた医療機器20に関する。
【0116】
実施形態によれば、インサートアセンブリ1は、ハンドピース4から動作可能かつ機械的に分離可能に接続される。
【0117】
実施形態によれば、医療機器ハンドピース4は、ハンドピース遠位端30で終端するハンドピース遠位部分22と、中央ハンドピース部分23と、近位ハンドピース部分24とを備える。振動子25、例えば圧電変換器は、超音波発生器又は制御ユニット26に接続される。振動子25は、医療機器ハンドピース4に受容され、インサート取り付け用タング27は、作動時にインサート2を共振させるように、取り外し可能にインサート2に接続するハンドピース遠位部分22を通って突出する。
【0118】
実施形態によれば、ハンドピース遠位部分22は、ハンドピースアンテナ12を備える。実施形態によれば、ハンドピースアンテナ12は、ハンドピース4に取り外し可能に接続する。実施形態によれば、ハンドピースアンテナ12は、ハンドピース4に収容され、ハンドピース4に固定される態様で接続する。
【0119】
実施形態によれば、ハンドピース遠位部分22は、ハンドピースアンテナ接続エレメント28を備える。
【0120】
ハンドピースアンテナ12は、ハンドピースアンテナ接続エレメント28に支持され電気的に接続され、インサートがハンドピース4に接続されたときに、インサートアンテナ8と少なくとも部分的に重なるようにハンドピースアンテナ接続エレメント28からハンドピース遠位端30の方へ突出する。
【0121】
実施形態によれば、ハンドピースアンテナ12は、インサートがハンドピース4に接続されたときに、インサートアンテナ8と重ならないように、ハンドピースアンテナ接続エレメント28からハンドピース遠位端30の方へ突出する。
【0122】
実施形態によれば、ハンドピースアンテナ接続エレメント28は、固定又は取り外し可能な態様でハンドピースに電気的に接続される。ハンドピースアンテナ接続エレメント28は、少なくとも1つのLED29を備えてもよい。
【0123】
実施形態によれば、ハンドピースアンテナ接続エレメント28は、LED29を含まない。
【0124】
実施形態によれば、ハンドピースアンテナ接続エレメント28が少なくとも1つのLED29を備える場合、ハンドピースアンテナ接続エレメント28は、ハンドピースアンテナ接続エレメント28に関連する少なくとも1つの集光器32を備えた導光エレメント31を備えてもよく、ハンドピース遠位端30で少なくとも1つのLED29の光を誘導し、医療機器20の作業領域を照らすことができる。
【0125】
実施形態によれば、導光エレメント31、ハンドピースアンテナ接続エレメント28、及びハンドピースアンテナ12は、ハンドピース遠位部分22に取り外し可能に接続された、例えばアルミニウム製のハンドピース遠位部分蓋33によって覆われている。
【0126】
実施形態によれば、医療機器20は、電気及び流体の供給用の接続ケーブル34によって、ハンドピース4を超音波発生器又は制御ユニット21に接続する。
【0127】
実施形態によれば、医療機器ハンドピース4は、選択されたインサート2の種類の機能として、異なる周波数並びに電力及び超音波振幅の範囲で動作する、超音波微小振動を発生させる機器例えば圧電変換器25に機械的に結合される、インサート2を交換可能に受け入れる。
【0128】
インサートアセンブリの実施形態によれば、インサートアンテナ8は、無線周波数で動作するように適合されたRFアンテナであり、識別チップ10は、無線周波数識別チップであり、前述の周波数の範囲は、1つ又は複数の無線周波数の範囲を含む。
【0129】
インサートアセンブリ1の実施形態によれば、強磁性層6、誘電体層7、及びインサートアンテナ8によって形成された前述の送受信装置(以降「送受信器構造」とも称する)は、電気的パラメータが強磁性層6のサイズ及び材料に依存する電気回路によってモデル化することができる。
【0130】
実施オプションによれば、強磁性層6、誘電体層7、インサートアンテナ8、及び識別チップ10によって形成された前述の送受信器構造は、LC電気回路によってモデル化することができ、ここで、インダクタンスLa及び静電容量Ccのパラメータは、強磁性層6、誘電体層7、インサートアンテナ8、及び識別チップ10の寸法及び材料に依存する。特に、インダクタンスLaは、強磁性層、誘電体層、及びインサートアンテナの寸法及び材料に主に依存し、一方、静電容量Ccは、識別チップ10に主に依存する。
【0131】
この場合、送受信器構造が動作することができる周波数範囲は、前述のインダクタンスLa及び静電容量Ccのパラメータに依存する。実際、LC回路において他の要素が存在しない場合、共振周波数は、周知の式f0=1/[2π(LaCc)1/2]から求められる。強磁性層は、インダクタンスLA値に寄与するが、それがインサートアンテナから電気的に絶縁されている場合には、それは等価電気回路にさらなる要素を導入しない、ということに留意されたい。代わりに、強磁性材料がインサートアンテナの金属部分と、部分的にのみでさえ、接触していた場合には、それは、電圧に応じた非線形インピーダンスに対応するさらなる等価要素を等価電気回路に導入するであろうし、したがって共振周波数の望ましくない制御不能な摂動を引き起こす。これに関連して、前述の実施形態は、強磁性層6の強磁性材料に対してインサートアンテナのインサートアンテナ金属エレメント9を電気的に絶縁するように、強磁性層6とインサートアンテナ8との間に誘電体層7が介在しており、特に有利である。実際、この特徴により、強磁性材料とアンテナの金属部品との間の接触(不完全又は完全な絶縁のいずれか)によって引き起こされる問題、これは、送受信器システムの安定性、再現性及び効率特性を損なうことになるであろうし、設計値における単一の安定した共振周波数を保証することができなくなるであろう、は排除される。実際、アンテナを強磁性層から分離するような態様で配置された誘電体層は、共振RFIDシステムを外部摂動から絶縁し、その安定性及び再現性を保証する機能を実行し、とりわけ、本発明のインサートアセンブリの共振RFIDシステムが、有利にも、動作するように適合される高周波数(後述)においても、その安定性及び再現性を保証する。
【0132】
インサートアセンブリの使用の選択肢によれば、送受信器構造の動作周波数範囲は、UHF RFID帯域(860MHzと960MHzとの間)の周波数範囲、例えば、865-868MHzのETSI欧州技術標準、902-928MHzのFCC FHSS北米技術標準、916.7-920.9MHz及び916.7-923.5MHzのMIC LBT日本技術標準、902-907.5MHz、及び915-928MHzのANATEL FHSSブラジル技術標準、920.5-924.5MHzのMII FHSS中国技術標準を含む。
【0133】
インサートアセンブリの実施オプションによれば、強磁性層の厚さ、すなわちインサートに対する半径方向の寸法は、20マイクロメートルと400マイクロメートルとの間の範囲である。
【0134】
より好ましくは、強磁性層の厚さ、すなわちインサートに対する半径方向の寸法は、50マイクロメートルと300マイクロメートルとの間の範囲である。
【0135】
インサートアセンブリの実施の様々な可能な選択肢によれば、強磁性層は、材料全体に分散されたマイクロメートルサイズの磁性粉末と混合された、高透磁率の薄い焼結フェライト又はポリマーベースで作製される。
【0136】
インサートアセンブリ1の実施形態によれば、識別チップ10は、RFIDチップ(例えば、それ自体既知のRFIDチップ)である。
【0137】
インサートアセンブリ1の実施形態によれば、識別チップ10は、励起されたときに、前述の送受信器構造を介して、以下のセットに属する1つ又は複数の情報項目を格納し、送信するように構成される:
【0138】
インサートアセンブリの一意かつ不変の識別コード情報;
インサートアセンブリの製造業者及びトレーサビリティ、並びに/又は、インサートアセンブリが動作することができる1つもしくは複数の種類の医療器具に関する情報;
インサートアセンブリの送受信器構造が動作することができる動作周波数範囲に関する情報;
ハンドピースにねじ込まれたインサートが医療機器において選択された手術の種類に適しているという情報;
使用モード及び使用時間の履歴に関する情報;
患者に対する臨床外科段階の効率及び有効性を最大化するためのインサートアセンブリの完全性に関する情報;
適切な予定されたメンテナンスのためのインサートアセンブリの完全性に関する情報;
インサートアセンブリがそれぞれのハンドピースに挿入された場合、インサートアセンブリが正しく挿入されているか否かに関する情報;
異常な動作状況の存在下でのインサートアセンブリの動作パラメータ及び/又はエラーもしくは警報のメッセージに関する情報。
【0139】
使用例によれば、インサートアセンブリは、歯科もしくは予防もしくはインプラント学用の医療機器、及び、顎顔面もしくは頭蓋顔面、もしくは神経-脊髄、もしくは整形外科、もしくは他の解剖学的領域における医療用途用の医療機器、と関連して動作するように構成される。
【0140】
本発明による医療機器が本明細書に記載される。
【0141】
そのような医療機器は、制御ユニットと、ハンドピースアンテナを有するハンドピースと、上述の実施形態のいずれか1つによるインサートアセンブリとを備え、該医療機器において、そのようなインサートアセンブリは、医療機器の前述のハンドピースに動作可能かつ機械的に接続され、インサートアンテナは、ハンドピースアンテナと無線通信するように構成される。
【0142】
図18から
図20を参照して、インサートアセンブリの可能な実施形態に関するさらなる情報が以下で得られる。
【0143】
図18は、RFID識別チップ10及びインサートアンテナ8からなるアセンブリの直列表現における等価電気回路を示す。全体の寄生静電容量を無視して、識別チップ10は、静電容量Cc及び抵抗Rcによってモデル化され、つまりインサートアンテナ8は、インダクタンスLa及び抵抗Raでモデル化されている。実際、電気回路全体は、LC回路であり、一方、抵抗構成要素は、「理想的ではない状況」、すなわち放射システム損失及びエネルギー損失を考慮に入れる。
【0144】
そのようなモデルは、無線送受信器構造が近距離無線UHF技術(860MHz÷960MHz)に基づいており、好ましくはセグメント化された閉ループ形状を有するいわゆる「磁気アンテナ」として動作している電磁場の反応部分を利用する実施形態である。
【0145】
場(fields)の観点から、強磁性層は、無線送受信器構造をインサート本体の金属部分から絶縁する機能を有し、したがって、可変一次磁場によって誘導される迷走電流によって引き起こされる反射敵対(打消し)磁場(reflected antagonist field)の生成を防止し、したがって、電磁場全体の減衰又はゼロ化の現象を回避する。
【0146】
言い換えれば、複合有効透磁率(complex effective magnetic permeability)を有する強磁性層の添加は、相互インダクタンス及び自己インダクタンスに影響を及ぼすことによって磁気プロファイルを変更する。強磁性層(例えば、上述の実施の選択肢のように)の材料及び寸法を適切に選択することにより、送受信器構造の設計を最適化し、アンテナに存在する全ての場の強度を最大化し、必要に応じて通信を改善する自由度を有することが可能である。
【0147】
「集中パラメータ」の電気的な観点から、強磁性層は、LCシステムのインダクタンスを増加させる効果を決定する(ここで、Cはチップによって支配される)。この特徴は、次に、「アンテナチップ」システムの共振周波数を低下させる追加の効果を決定し、これは、UHF帯域によって必要とされる制限範囲にそれをもたらすという利点を有する(したがって、送受信器構造の設計を容易にして改善し、所望の用途に、より容易に適合させることができる)。
【0148】
図19は、接続Gのモデルも含む、RFID識別チップ10及びインサートアンテナ8からなるアセンブリの別の例の等価電気回路の並列表現を示す。この表現は、アンテナ寄生静電容量などのシステム寄生要素を含む。
【0149】
特に、この場合、インサートアンテナ8及び強磁性層6を備える送受信器構造は、RLC回路によってモデル化され、一方、識別チップ10は、RC回路を使用してモデル化される。
【0150】
実質的な観点から、
図18に関して上で既になされた考慮事項が適用される。
【0151】
図20は、インサートアンテナ8及び識別チップ10の実施形態のブロック図を示す。
【0152】
特に、磁場線は、近接場アンテナ8の周りで強調表示されている。
【0153】
この実施形態では、識別チップ10は、コントローラ73(例えばRFIDタグなどの、それ自体知られているタイプのもの)及び不揮発性メモリ74を有する、アナログフロントエンド(電力管理エレメント71及び変調器/復調器エレメント72)及びデジタル制御部を備える。
【0154】
52段落(ix-x-xi)に示すように、不揮発性メモリ74は、インサートが元の場所(複数の診療室を有する臨床医)以外の場所で使用されるが常に適切で互換性のある医療機器で使用される場合であっても、臨床医に更新された状況を提供するように、累積の使用時間の合計及び統計的に推定された摩耗度などの使用情報を記憶するように構成される。
【0155】
特定の実施オプションによれば、データの完全性及び信頼性を保証するために、インサートを関連付けることができる適切な医療機器によってのみデコードされることができる暗号化又はパスワード認証プロセスの後でも、データを不揮発性メモリ74に記憶することができる。
【0156】
医療機器ハンドピース4を備える医療機器ハンドピースアセンブリが以下に説明されている。そのようなハンドピース4は、無線周波数識別装置3、インサートアンテナ8、及び患者の身体の一部と相互作用するように適合されたインサート2を備えたインサートアセンブリ1(例えば、上述の実施形態によるインサートアセンブリ)の挿入によって受け入れるのに適したハンドピース遠位部分22を備える。
【0157】
医療機器ハンドピースアセンブリは、ハンドピース遠位部分22に配置されたハンドピースアンテナ12と、ハンドピースアンテナ12によって送信されるように適合された無線周波数信号をハンドピースアンテナ12に供与するように構成された無線周波数信号供給手段とをさらに備える。
【0158】
前述のハンドピースアンテナ12は、ハンドピース遠位部分22に含まれる挿入領域Rにおいて、インサートアセンブリがハンドピース4へ挿入されたとき、インサートアンテナ8と無線通信するように構成される。
【0159】
前述のハンドピースアンテナ12は、電気的に直列に配置された少なくとも2つのハンドピースアンテナセグメントS1、S2、これは以下「第1のセグメント」S1及び「最後のセグメント」S2と呼ばれる、を備えた単一コイルのループアンテナ、好ましくはセグメント化されたリングアンテナである。少なくとも2つのハンドピースアンテナセグメントの第1セグメントS1の第1端部41は、無線周波数信号供給手段の第1端子51に動作可能に接続され、上述の最後のセグメントS2の第2端部42は、無線周波数信号供給手段の第2端子52に動作可能に接続されて、前述の挿入領域Rの周りに、前述の無線周波数信号に依存する無線周波数を有する電磁場をそのような挿入領域Rに生成するように構成されたコイル放射構造を形成する。
【0160】
単一コイルループ又は前述の少なくとも2つのハンドピースアンテナセグメント(S1,S2)の各々は、UHF RFID範囲(860MHz÷960MHz)において、ハンドピースアンテナ12のコイルを循環する電流における放射金属エレメントのインダクタンスLに起因する影響を補償するような、静電容量Cを有する、静電容量エレメント(S12,S22)に直列に電気的に接続されたそれぞれのインダクタンスLによって特徴付けられる放射金属エレメント(S11,S21)を備える。
【0161】
ハンドピースアセンブリの実施形態によれば、各々の静電容量エレメント(S12,S22)における前述の静電容量Cは、ハンドピースアンテナ12の特性インピーダンスを、ハンドピースアセンブリに動作可能に接続された医療機器20の制御エレメント21に配置された無線周波数発生器にさらに適合させるようなものである。
【0162】
前述のハンドピースの実施形態によれば、前述のハンドピースアンテナ12は、信号供給手段の前述の第1端子51及び第2端子52と、ハンドピースアンテナ12の第1セグメント41の前述の第1端部及び最後のセグメント42の第2端部との間に含まれる入力インピーダンス整合第1電気回路網43をさらに備え;さらに、セグメント化されたアンテナリングに含まれ、前述の少なくとも2つのハンドピースアンテナセグメントの2つのセグメント(S1’,S2’)間に電気的に直列に接続されたアンテナインピーダンスの第2整合電気回路網44を備える。
【0163】
実施オプションによれば、前述の第1の入力インピーダンス整合第1電気回路網43は、LCインダクタンス-静電容量回路又は静電容量回路を備える。
【0164】
実施オプションによれば、前述のアンテナインピーダンス整合第2電気回路網44は、アンテナインピーダンスを所望のインピーダンス値に適合させるように構成され、医療機器21によって生成され、ケーブル34及びハンドピース4に沿って搬送される無線周波数信号の送信を最適化するように適合されたRC抵抗-静電容量回路又は静電容量回路を備える。
【0165】
例えば、UHF RFID範囲(860MHz÷960MHz)におけるそのようなインピーダンス値は、20オームと80オームとの間、好ましくは45オームと55オームとの間のモジュールを有する複素数Z=R+iXで表すことができる。
【0166】
ハンドピース4の実施形態によれば、セグメント化されたリングアンテナの前述の放射金属エレメント(S11,S21)は、インダクタンスL及び抵抗Rを備えた等価電気回路によってモデル化することができ、該等価電気回路において、インダクタンスは、2nHと30nHとの間、好ましくは4nHと20nHとの間の範囲にある。
【0167】
前述の静電容量エレメント(S12,S22)は、LC=(ω2)-1、ここでω=2πf、及びfは動作共振周波数である、として定義されるシステムの共振関係によって管理され、1pFと12pFとの間、好ましくは2pFと10pFとの間の静電容量を有するコンデンサである。
【0168】
ハンドピース4の実施形態によれば、前述のハンドピースアンテナ12は、860MHzと960MHzとの間のUHF RFID帯域における周波数範囲において動作するように構成される。
【0169】
実施オプションによれば、すべてのアンテナセグメントは、等しい静電容量C及びインダクタンスLの値によって特徴付けられる。
【0170】
別の実施オプションによれば、放射金属エレメントのインダクタンス値Lは、セグメントごとに異なり、静電容量エレメントの静電容量値Cは、それぞれのセグメントのインダクタンス値Lに応じてセグメントごとに異なる。
【0171】
実施形態によれば、ハンドピースアセンブリ4は、前述のハンドピースアンテナ12と無線又は有線によって通信するように適合されたハンドピース識別装置45をさらに備える。
【0172】
そのようなハンドピース識別装置45は、ハンドピースアンテナ識別情報、及び/又はハンドピースアンテナ12の動作条件及び/又は動作周波数に関連する情報、を提供するように構成される。
【0173】
ハンドピースアセンブリ4の実施形態によれば、前述の無線周波数信号供給手段は、信号ガイド50と、ハンドピースアンテナ接続エレメント28とを備える。
【0174】
信号ガイドは、好ましい実施形態によれば、ハンドピース4と医療機器20の制御エレメント21との間で、接続ケーブル34からハンドピースアンテナ12へ無線周波数供給信号を搬送するように構成された50オームのインピーダンスのマイクロストリッププリント回路を備える。
【0175】
別の実施形態によれば、信号ガイド50は、50オームのインピーダンスの小型化同軸ケーブルを備える。
【0176】
信号ガイド50及びハンドピースアンテナ12に接続されたハンドピースアンテナ接続エレメント28は、無線周波数信号供給手段の第1端子51及び第2端子52を備える。
【0177】
実施形態によれば、前述のマイクロストリップ回路は、厚さが1ミリメートル未満の金属トラックを備えた50オームのインピーダンス制御された回路である。
【0178】
前述のマイクロストリップ回路は、それ自体既知の技術に基づく多層プリント回路によって得ることができる。
【0179】
実施の特定のオプションによれば、金属トラックを備える前述のマイクロストリップ回路は、0.2mmと1.0mmとの間、好ましくは0.35mmと0.85mmとの間の厚さであり、Vetronite材料タイプFR4又はKapton-ポリアミドもしくはRogersで作製される。
【0180】
ハンドピースアセンブリの実施形態によれば、ハンドピースアンテナの前述のコイル放射構造は、ハンドピース遠位部分22の内壁内に収容されるように30mm未満の直径を有する。
【0181】
ハンドピースアセンブリの実施形態によれば、ハンドピースアンテナ12は、ハンドピース遠位部分22に固定又は分離可能に接続される。
【0182】
ハンドピースアセンブリの特定の実施形態によれば、ハンドピースアンテナ12は、T字形又はГ字形の可撓性剛性多層プリント回路基板から作製され、ここでは、可撓性部分(例えば、Kapton-ポリアミド)が剛性部分(例えば、VetroniteのタイプFR4又はRogers)から延在する。
【0183】
前述の可撓性剛性多層プリント回路基板がハンドピースの円錐内側の所定位置に配置されたとき、T字形又はГ字形の上側部分は、導光部の円錐に包み込み、T字形又はГ字形の上側部分の縁部を重なり合わせ、例えばはんだ付け又は超音波溶接によって電気接点(すなわち、ループ又はセグメント化されたリングを形成する)を可能にする。
【0184】
この場合、T字形又はГ字形の垂直セグメントと水平セグメントとのちょうど接合部分に、タグ(TAG)が配置され、デカップリングコンデンサを介して電気的に接続される。そのようなタグは、前述のハンドピース識別装置の機能を実行し、例えばトレーサビリティの目的で、地理的領域(例えば、目的地の大陸又は国(例えば、欧州、米国又は日本)に応じて、ハンドピースアンテナをローカル動作周波数に適合させる必要性が生じ、これは、正しい動作周波数に適合された適切な値を有するアンテナコンデンサの特定のセットを用いて達成することができる)に対する正しい使用を検証するために、及び臨床用途に対するインサートの互換性のために、ハンドピースアンテナコーンを識別する機能を実行する。
【0185】
図21から
図24を参照して、医療機器ハンドピースアセンブリの可能な実施形態に関するさらなる情報が以下に提供される。
【0186】
図22は、ハンドピースにおけるRF信号分配モードの簡略化したブロック図を示す。そのようなブロック図では、前述の実施形態におけるマイクロストリップ回路50は、多層フレキシブル回路を備えて示されており、多層フレキシブル回路は、順次、プリント回路53におけるインピーダンス整合回路と、そのような回路53の各端部に、それぞれのRF54インピーダンス整合ネットワークとを備える。
【0187】
この実施形態では、マイクロストリップ回路50は、ハンドピースアンテナ用のRF信号と光コーンのLED点灯回路用のDC信号との両方を含む合成信号を、最も低い可能な損失で送信する機能を有する。
【0188】
マイクロストリップ又はストリップライン回路は、高周波信号の高度な完全性が維持されるべき、制御されたインピーダンスのプリント回路基板の分野において確立された技術である。加えて、そのようなマイクロストリップ回路は、非常に小さい寸法(特に厚さ)を有し、したがって、ハンドピースにおいて利用可能な小さい内部空間に適合する。例えば、マイクロストリップは、0.2÷1.0mmの間、好ましくは0.35÷0.85mmの間の範囲の厚さを得るように適合される。
【0189】
マイクロストリップ回路の上流(
図22及び
図23においてBとして示される参照ポイント)には、ピン接続を有する最小RF領域コネクタ55があり、該コネクタ55は、同軸ケーブル60により結合されたピン接続を有する対応の最小RF領域コネクタ65に接続するように構成される。
【0190】
そのような同軸ケーブル60(
図23に示す)は、ハンドピース4を医療機器の制御エレメント21に接続し、ハンドピース4と制御エレメント21との間でRF信号を送信するために使用される。
【0191】
図22に戻り、マイクロストリップ回路の下流(
図22及び
図21においてCとして示される参照ポイント)には、ピン接続を有する別の最小RF領域コネクタ55があり、該コネクタ55は、RF-DCデカップリングネットワーク(又はデカプラ)56と結合されるピン接続を有する対応の最小RF領域コネクタ55に接続するように構成される。
【0192】
実際、この場合、可撓性剛性回路では、RF及びDC成分を分離し、DC成分を光コーンのLED点灯回路57にルーティングし、RF成分をハンドピースアンテナ12にルーティングするRF-DCデカプラ56も得られる(
図21に示す)。
【0193】
ピン接続を有する前述の最小RF領域コネクタ55は、相互接続ポイントでのRF放射損失を最小にするように、挿入面積を最小にし、同軸ケーブル用の既知のRFコネクタが寸法上の理由で使用できない状況であっても適切な伝送能力を有効にするように構成される。
【0194】
図21はまた、点灯回路57及び光信号ガイドDC58、並びにRF入力インピーダンス調整59を有する近接場アンテナであるハンドピースアンテナ12に対応する機能ブロックを示す。
【0195】
図21は、また、ハンドピース45の識別装置(タグ)に対応する機能ブロックを示し、それは、デカップリングコンデンサによってハンドピースアンテナ12と無線近接場モード又は有線モードにおいて接続される。
【0196】
図24は、実施形態による、ハンドピースアンテナの等価電気回路を示す。
【0197】
以下では、制御エレメント21と、上述の実施形態のいずれか1つによる医療機器ハンドピース4と、無線周波数識別装置3、インサートアンテナ8、及び患者の身体の一部と相互作用するのに適したインサート2を備えるインサートアセンブリ1と、を備える医療機器20が記述されている。
【0198】
前述のインサートアセンブリ1は、ハンドピースアセンブリのハンドピース4から分離して動作可能かつ機械的に接続される。
【0199】
前述のインサートアンテナ8及びハンドピースアンテナ12は、無線周波数で互いに無線通信するように構成される。
【0200】
実施形態によれば、医療機器20は、インサートアセンブリ1がハンドピース4に接続されたとき、インサートアンテナ8が、ハンドピースアンテナ4によって生成された無線周波数電磁場が放射状態で存在する前述の挿入領域Rにおいて、ハンドピースアンテナ4の近傍に配置されるように構成される。
【0201】
留意され得るように、本発明の目的は、その構造的及び機能的特徴により、上で発展及び記載されたシステムチェーン(インサートアセンブリ1-ハンドピースアセンブリ22;4;24-ケーブル34-医療機器20-制御機器21)によって完全に達成される。
【0202】
実際、上で詳細に説明した特徴により、インサートアセンブリは、インサートアセンブリと医療機器の残りの部分との間の通信を悪化させる望ましくない現象を低減及び最小化することを可能にする。
【0203】
特に、場(fields)の観点から、強磁性層は、インサート本体の金属部分から無線送受信器構造を分離し、反射された敵対(打消し)磁場の生成を防止し、したがって電磁場全体の減衰又はゼロ化の現象(従来技術では問題とされている)を回避する機能を有する。
【0204】
複合有効透磁率を有する強磁性層の追加は、相互インダクタンス及び自己インダクタンスに影響を及ぼすことによって磁気プロファイルを変更する。強磁性層(例えば、上述の実施の選択肢のように)の材料及び寸法を適切に選択することにより、送受信器構造の設計を最適化する自由度を有することが可能であり、アンテナに存在する全ての場の強度を最大化し、必要に応じて通信を改善する。
【0205】
最終的に、これは患者における安全要求事項の改善につながり、これは、示されている技術分野及び用途の分野において、特に当該文書において定義されている歯科及び医療の分野において、極めて重要である。
【0206】
「集中パラメータ(concentrated parameters)」の電気的な観点から、強磁性層は、LCシステム(ここで、Cはチップ)のインダクタンスを増加させる。この特徴は、次に、「アンテナ-チップ」システムの共振周波数を低下させるさらなる効果を決定し、これはさらなる利点を有し、UHF帯域によって必要とされる制限範囲にそれをもたらすというさらなる目的を達成し、したがって、送受信器構造の設計を容易にして改善し、所望の用途により容易に適合させることができる。
【0207】
ハンドピースアンテナの要件に関して、ハンドピースアンテナは、上述の機能的及び構造的特徴により、非常に小さい寸法(使用状況に適合)を有し、容易に製造することができ、適切な透過能力を提供することがわかる。
【0208】
実際、ループ又はセグメント化されたループ構造、及び、インサートアセンブリの挿入領域の周りのハンドピース遠位部分の位置決めにより、ハンドピースアンテナは、その放射領域全体にわたって均一な放射ローブを有し、インサートアセンブリの挿入領域に正確に安定した十分に強い電磁場を生成する。
【0209】
対応する銅線部分のインダクタンスをその静電容量で補償及び/又は取り消すコンデンサによって接続されたライン部分を備えるセグメント化されたリングアンテナの構造は、コイルを循環する電流の位相反転を回避し、したがって、ハンドピースアンテナと通信するように意図されたインサートアンテナが配置された領域において、特にコイルの中心において均一で強い場を得て、最終的に固有のインサート識別装置が読み取られることを可能にし、インサートの動作及び保守パラメータが不揮発性メモリに書き込まれ、又は不揮発性メモリから読み取られることを可能にする。
【0210】
セグメント化されたリングアンテナ構造体のライン部分を接続するコンデンサの直列構成は、共振周波数の正確なチューニングを可能にし、市場によって与えられる粗い公差及び公称値を有する単一の構成要素ではなく、総静電容量値の精密な分解能を保証する多数のコンデンサによって達成される全体の静電容量に依存することができる。
【0211】
さらに、ハンドピースは、小さな構造であっても適切なインピーダンス整合(効果的なRF信号送信及び放射に不可欠)を可能にすることができる通信ライン(ハンドピースアンテナ及び関連する無線周波数信号供給手段)を備え、これは、一般的なインピーダンス整合のRF送信方法(例えば、同軸ケーブル及び関連するRFコネクタ)の使用を可能にしない。そのような目的は、例えば、アンテナのセグメント化されたリング構造に含まれるインピーダンス整合電源ネットワークを介して、及び上述の特徴を有するマイクロストリップRF信号分配回路によって達成される。
【0212】
当業者は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、上述のインサートアセンブリ及び医療システムの実施形態に変更及び適合を加えることができ、又は条件付きの必要性を満たすために機能的に同等である要素を他の要素と置き換えることができる。可能な実施形態に属するものとして上述されたすべての特徴は、説明された他の実施形態に関係なく実施されてもよい。
【符号の説明】
【0213】
1 インサートアセンブリ
2 インサート
3 無線周波数識別装置
4 医療機器ハンドピース
5 インサート金属タング
6 強磁性層
7 誘電体層
8 インサートアンテナ
9 インサートアンテナ金属エレメント
10 識別チップ
11 送受信装置
12 ハンドピース用アンテナ
13 チップシート
14 インサートアンテナのインサートアンテナ金属エレメントの実質的に平坦な外形の外面
15 インサートアンテナのインサートアンテナ金属エレメントの内面
16 突出チップ部分
17 内側絶縁層、例えば両面接着剤
18 外側絶縁層、例えばPVC又はPET又はポリアミド
19 生体適合性保護層、例えば塗料又は一成分もしくは多成分エポキシ化合物
20 医療機器
21 制御エレメント
22 ハンドピース遠位部分
23 ハンドピース中央部分
24 ハンドピース近位部分
25 振動子、例えば圧電変換器
26 超音波発生器又は制御ユニット
27 インサート取り付け用のねじ付きタング
28 ハンドピースアンテナ接続エレメント
29 LED
30 ハンドピース遠位端
31 導光エレメント
32 集光器
33 ハンドピース遠位部蓋
34 接続ケーブル
41 ハンドピースアンテナ第1セグメントの第1端部
42 ハンドピースアンテナの最後のセグメントの第2端部
43 ハンドピースアンテナ入力インピーダンス整合第1電気回路網
44 ハンドピースアンテナ-アンテナインピーダンス整合第2電気回路網
45 ハンドピース識別装置
50 無線周波数信号供給手段の信号ガイド(例えば、マイクロストリップ回路)
51 信号供給手段の第1端子
52 信号供給手段の第2端子
53 マイクロストリッププリント回路基板のインピーダンス整合回路
54 マイクロストリップ回路RFインピーダンス整合ネットワーク
55 ピン接続の最小RF領域コネクタ
56 RF-DCデカップリングネットワーク(又はデカプラ)
57 LED点灯回路
58 DC光信号用のガイド
59 ハンドピースアンテナ入力RFインピーダンス整合網
60 ハンドピースと制御ユニットとの間の同軸接続ケーブル
61 50オームRF同軸コネクタ
65 ピン接続の最小RF領域コネクタ
71 識別チップ電力管理エレメント71
72 識別チップ変調器/復調器エレメント
73 識別チップコントローラ
74 識別チップ不揮発性メモリ
101 超音波システム
102 発生器手段