(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】ブロー成形用ダイ
(51)【国際特許分類】
B29C 49/42 20060101AFI20240605BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
B29C49/42
B29C49/04
(21)【出願番号】P 2020107519
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】小野田 茂
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-030261(JP,A)
【文献】実開平04-040909(JP,U)
【文献】特開平01-244810(JP,A)
【文献】特開平07-088942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形機の本体部に取付けられるブロー成形用ダイ
の組み立て方法であって、
該ブロー成形用ダイは、分割可能な円筒状の第1ダイと円筒状の第2ダイを備え、
前記第1ダイの下方端部には、径方向において内側方向に突出する環状鍔部が形成され、
前記第2ダイには、径方向において外側方向に突出する係合突起部が複数形成され、
前記第1ダイの前記環状鍔部には、前記第2ダイの前記係合突起部が上下方向に通過可能な切り欠き部が形成されており、
前記第1ダイを前記ブロー成形機の前記本体部の下端部に取付けることにより、前記本体部の前記下端部と前記第1ダイの前記環状鍔部との間に、前記第2ダイの前記係合突起部が周方向に移動可能な空間が形成され、
前記第2ダイの前記係合突起部を、前記第1ダイの前記切り欠き部の下方から上方に通過させた後、前記第2ダイを周方向に回転して前記第2ダイの前記係合突起部を前記第1ダイの前記環状鍔部上に移動させ、前記第1ダイと前記第2ダイを固定することにより、前記第1ダイと前記第2ダイが組み立てられることを特徴とするブロー成形用ダイ
の組み立て方法。
【請求項2】
前記第2ダイの前記係合突起部は、円周部と、該円周部の両側に前記円周部から連続して形成された前記円周部の半径より短い短径部を備えている請求項1に記載のブロー成形用ダイ
の組み立て方法。
【請求項3】
前記係合突起部の前記短径部は、前記円周部から離れるにつれて肉厚が薄く形成される請求項2に記載のブロー成形用ダイ
の組み立て方法。
【請求項4】
前記係合突起部の前記円周部の周方向の係合突起部側面部には、ダイ固定ピン挿入孔が形成され、
前記第1ダイの側面部には、前記第2ダイを周方向に回転して前記第2ダイの前記係合突起部を前記第1ダイの前記環状鍔部上に移動させたときに前記ダイ固定ピン挿入孔と合致する位置に前記第1ダイの前記側面部を貫通する孔部が形成され、
前記第1ダイの前記孔部から前記第2ダイの前記ダイ固定ピン挿入孔に至るダイ固定ピンが挿入されて前記第2ダイの周方向が固定される請求項2又は請求項3に記載のブロー成形用ダイ
の組み立て方法。
【請求項5】
前記ブロー成形機の前記本体部の前記下端部には、前記第2ダイを周方向に回転して前記第2ダイの前記係合突起部を前記第1ダイの前記環状鍔部上に移動させたときに、前記係合突起部の係合突起部上面部の位置に、前記本体部の側面側から溝部が形成され、
前記本体部の前記溝部から前記第2ダイの前記係合突起部上面部に至るダイ押えピンが挿入され、該ダイ押えピンが、前記溝部と前記係合突起部上面部に当接することにより、前記第2ダイの上下方向が固定される請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のブロー成形用ダイ
の組み立て方法。
【請求項6】
前記ダイ押えピンは、前記第2ダイの前記係合突起部上面部において、円柱形状の側面の一部が除去された平面部が形成された柱状であり、
前記平面部を下方に向けた状態で前記ブロー成形機の前記本体部の前記溝部に挿入され、
前記ダイ押えピンが前記第2ダイの前記係合突起部上面部に到達した後に、前記ダイ押えピンを回転させ、前記平面部以外の円柱部が前記溝部と前記係合突起部上面部に当接することにより前記第2ダイの上下方向が固定される請求項5に記載のブロー成形用ダイ
の組み立て方法。
【請求項7】
前記第1ダイの前記側面部には、前記第1ダイを貫通するネジ孔が複数形成され、
該ネジ孔には、偏肉調整ボルトが挿入される請求項
4に記載のブロー成形用ダイ
の組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形品を成形するブロー成形機において、パリソンを押し出すブロー成形用ダイ(「ダイス」ともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料タンク等の樹脂製のタンクを成形するものとして、中空体を成形することの容易性からブロー成形法が多く用いられている。このブロー成形法では、溶融した樹脂材料を管状に射出したパリソンを成形型で挟み、その成形型内に空気を吹き込んで中空体を形作っている。
【0003】
ブロー成形機は、樹脂材料を管状に射出してパリソンを形成するブロー成形用ダイと、そのパリソンから製品を形作るブロー成形用型から構成されている。
【0004】
ブロー成形用ダイは、内部にコアが配置され、ブロー成形用ダイの内周縁とコアの外周縁との間で円筒形状の樹脂流路が形成され、その樹脂流路内に充填された樹脂材料が押し出されて、パリソンが形成されるように構成されている。したがって、コアとダイとの隙間がパリソンの射出口として形成される。
【0005】
又、ブロー成形用ダイは、小径のパリソンから大径のパリソンを射出できるように、テーパー角度の異なるコアとダイを交換し、射出するパリソンの径を調整できるように着脱可能な構造になっている。
【0006】
着脱可能なブロー成形用ダイとしては、例えば、特許文献1の技術が知られている。特許文献1の技術について、
図8と
図9に基づいて説明する。なお、特許文献1では、ダイスと称している。
図8に示すように、ブロー成形用ダイス100は上部ダイス部200と下部ダイス部300から構成されている。又、上部ダイス部200の内側の上方は上部樹脂通路穴210が形成されている。そして、下方にテーパー状の下部樹脂通路穴220が形成されている。
【0007】
更に、上部ダイス部200の上方の外側はフランジ状の環状鍔部230が形成されている。この環状鍔部230は
図9に示すようにブロー成形用ダイス100が公知のブロー成形機等に用いられる際に、環状鍔部230の下方面がダイリング400面に載置される。そして、環状鍔部230の側面は偏肉調整リング500に設けられている複数の偏肉調整ボルト600によって固定される。
【0008】
又、環状鍔部230の下方の内側には、内側ネジ部240が形成されている。そして、この内側ネジ部240は下部ダイス部300の外側ネジ部320と螺合される。下部ダイス部300の環状射出口310方向の面には、上部ダイス部200と下部ダイス部300を螺合するための引っ掛けスパナ用穴330が複数箇所に設けられている。そして、引っ掛けスパナにより下部ダイス部300が回され、上部ダイス部200の内側ネジ部240と下部ダイス部300の外側ネジ部320が螺合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1のブロー成形用ダイス(ダイ)は、上部ダイス部200と下部ダイス部300が、上部ダイス部200の内側ネジ部240と下部ダイス部300の外側ネジ部320を螺合することによって組み立てられ、その組み立て方法は、引っ掛けスパナによるものであるので、例えば、ペットボトルのような小さな成形品を製造するには好適である。
【0011】
しかし、自動車の樹脂製燃料タンクのような大きな成形品を製造する場合は、上部ダイス部200の内側ネジ部240と下部ダイス部300の外側ネジ部320を螺合させるには、上部ダイス部200と下部ダイス部300の双方の傾きや位置を正確に合わせた後に、それを引っ掛けスパナによって行うことが必要であり、容易ではない。
【0012】
又、螺合によって組み立てられた上部ダイス部200と下部ダイス部300においては、組み立て後の熱膨張などにより上部ダイス部200から下部ダイス部300が外れにくくなり、着脱の作業効率が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の課題を解決し、自動車の樹脂製燃料タンクのような大きな製品であっても、着脱が容易なブロー成形用ダイを実現するものであり、請求項1の本発明は、ブロー成形機の本体部に取付けられるブロー成形用ダイの組み立て方法であって、ブロー成形用ダイは、分割可能な円筒状の第1ダイと円筒状の第2ダイを備え、第1ダイの下方端部には、径方向において内側方向に突出する環状鍔部が形成され、第2ダイには、径方向において外側方向に突出する係合突起部が複数形成され、第1ダイの環状鍔部には、第2ダイの係合突起部が上下方向に通過可能な切り欠き部が形成されており、第1ダイをブロー成形機の本体部の下端部に取付けることにより、本体部の下端部と第1ダイの環状鍔部との間に、第2ダイの係合突起部が周方向に移動可能な空間が形成され、第2ダイの係合突起部を、第1ダイの切り欠き部の下方から上方に通過させた後、第2ダイを周方向に回転して第2ダイの係合突起部を第1ダイの環状鍔部上に移動させ、第1ダイと第2ダイを固定することにより、第1ダイと第2ダイが組み立てられることを特徴とするブロー成形用ダイの組み立て方法である。
【0014】
請求項1の本発明では、ブロー成形用ダイは、分割可能な円筒状の第1ダイと円筒状の第2ダイを備え、第1ダイの下方端部には、径方向において内側方向に突出する環状鍔部が形成され、第2ダイには、径方向において外側方向に突出する係合突起部が複数形成され、第1ダイの環状鍔部には、第2ダイの係合突起部が上下方向に通過可能な切り欠き部が形成されており、第1ダイをブロー成形機の本体部の下端部に取付けることにより、本体部の下端部と第1ダイの環状鍔部との間に、第2ダイの係合突起部が周方向に移動可能な空間が形成され、第2ダイの係合突起部を、第1ダイの切り欠き部の下方から上方に通過させた後、第2ダイを周方向に回転して第2ダイの係合突起部を第1ダイの環状鍔部上に移動させ、第1ダイと第2ダイを固定することにより、第1ダイと第2ダイが組み立てられるので、第1ダイへの第2ダイの組み立てを容易に短時間で行うことができる。又、別の第2ダイへの交換も容易に短時間で行うことができる。
【0015】
請求項2の本発明は、第2ダイの係合突起部は、円周部と、円周部の両側に円周部から連続して形成された円周部の半径より短い短径部を備えているブロー成形用ダイの組み立て方法である。
【0016】
請求項2の本発明では、第2ダイの係合突起部は、円周部と、円周部の両側に円周部から連続して形成された円周部の半径より短い短径部を備えているので、径方向において、第2ダイの係合突起部と第1ダイとの隙間が狭い場合であっても、第2ダイの係合突起部を周方向にスムーズに回転させることができ、着脱作業を容易に、効率良く行うことができる。
【0017】
請求項3の本発明は、係合突起部の短径部は、円周部から離れるにつれて肉厚が薄く形成されるブロー成形用ダイの組み立て方法である。
【0018】
請求項3の本発明では、係合突起部の短径部は、円周部から離れるにつれて肉厚が薄く形成されるので、上下方向において、本体部の下端部と第1ダイの環状鍔部との間に形成された空間と第2ダイの係合突起部との隙間が狭い場合であっても、第2ダイの係合突起部を周方向によりスムーズに回転させることができ、着脱作業をより容易に、効率良く行うことができる。
【0019】
請求項4の本発明は、係合突起部の円周部の周方向の係合突起部側面部には、ダイ固定ピン挿入孔が形成され、第1ダイの側面部には、第2ダイを周方向に回転して第2ダイの係合突起部を第1ダイの環状鍔部上に移動させたときにダイ固定ピン挿入孔と合致する位置に第1ダイの側面部を貫通する孔部が形成され、第1ダイの孔部から第2ダイのダイ固定ピン挿入孔に至るダイ固定ピンが挿入されて第2ダイの周方向が固定されるブロー成形用ダイの組み立て方法である。
【0020】
請求項4の本発明では、係合突起部の円周部の周方向の係合突起部側面部には、ダイ固定ピン挿入孔が形成され、第1ダイの側面部には、第2ダイを周方向に回転して第2ダイの係合突起部を第1ダイの環状鍔部上に移動させたときにダイ固定ピン挿入孔と合致する位置に第1ダイの側面部を貫通する孔部が形成され、第1ダイの孔部から第2ダイのダイ固定ピン挿入孔に至るダイ固定ピンが挿入されて第2ダイの周方向が固定されるので、周方向における第1ダイと第2ダイの固定を容易に行うことができる。
【0021】
又、孔部とダイ固定ピン挿入孔にはダイ固定ピンが挿入されて第2ダイの周方向が固定され、第1ダイと第2ダイを螺合やボルト等で完全に締結・拘束しないので、第1ダイと第2ダイは、組み立て後においても熱膨張などにより第2ダイが第1ダイから外れにくくなることもない。
【0022】
更に、第1ダイと第2ダイを完全に締結・拘束しないので、溶融樹脂を押出し、溶融樹脂がブロー成形用ダイ内を流れる時に、第2ダイが動かない程度の強度での設計、すなわち、構造体の強度を低めに設定することができ、第1ダイと第2ダイを薄く、小さくコンパクトに設計することができる。
【0023】
請求項5の本発明は、ブロー成形機の本体部の下端部には、第2ダイを周方向に回転して第2ダイの係合突起部を第1ダイの環状鍔部上に移動させたときに、前記係合突起部の係合突起部上面部の位置に、前記本体部の側面側から溝部が形成され、本体部の溝部から第2ダイの係合突起部上面部に至るダイ押えピンが挿入され、ダイ押えピンが、溝部と係合突起部上面部に当接することにより、第2ダイの上下方向が固定されるブロー成形用ダイの組み立て方法である。
【0024】
請求項5の本発明では、ブロー成形機の本体部の下端部には、第2ダイを周方向に回転して第2ダイの係合突起部を第1ダイの環状鍔部上に移動させたときに、前記係合突起部の係合突起部上面部の位置に、前記本体部の側面側から溝部が形成され、本体部の溝部から第2ダイの係合突起部上面部に至るダイ押えピンが挿入され、ダイ押えピンが、溝部と係合突起部上面部に当接することにより、第2ダイの上下方向が固定されるので、上下方向におけるブロー成形機の本体部と第2ダイの固定を容易に、且つ確実に行うことができる。
【0025】
又、本体部と第2ダイはダイ押えピンによる当接によって上下方向が固定され、ブロー成形機の本体部と第2ダイを完全に締結・拘束しないので、ブロー成形機の本体部と第2ダイは、組み立て後においても熱膨張などにより第2ダイが本体部から外れにくくなることもない。
【0026】
請求項6の本発明は、ダイ押えピンは、第2ダイの係合突起部上面部において、円柱形状の側面の一部が除去された平面部が形成された柱状であり、平面部を下方に向けた状態でブロー成形機の本体部の溝部に挿入され、ダイ押えピンが第2ダイの係合突起部上面部に到達した後に、ダイ押えピンを回転させ、平面部以外の円柱部が溝部と係合突起部上面部に当接することにより第2ダイの上下方向が固定されるブロー成形用ダイの組み立て方法である。
【0027】
請求項6の本発明では、ダイ押えピンは、第2ダイの係合突起部上面部において、円柱形状の側面の一部が除去された平面部が形成された柱状であり、平面部を下方に向けた状態で第1ダイの溝部に挿入されるので、ダイ押えピンを第2ダイの係合突起部上面部上に容易に挿入することができる。
【0028】
又、ダイ押えピンが第2ダイの係合突起部上面部に到達した後に、ダイ押えピンを回転させ、平面部以外の円柱部が溝部と係合突起部上面部に当接することにより第2ダイの上下方向が固定されるので、上下方向におけるブロー成形機の本体部と第2ダイの固定を容易に、且つ確実に行うことができる。
【0031】
請求項7の本発明は、第1ダイの側面部には、第1を貫通するネジ孔が複数形成され、ネジ孔には、偏肉調整ボルトが挿入されるブロー成形用ダイの組み立て方法である。
【0032】
請求項7の本発明では、第1ダイの側面部には、第1ダイを貫通するネジ孔が複数形成され、ネジ孔には、偏肉調整ボルトが挿入されるので、偏肉調整ボルトによって、パリソンの偏肉等に影響を及ぼす中心軸の位置合わせを行うことができる。
【0033】
又、第1ダイをブロー成形機の本体部の下端部に取付けた後に、偏肉調整ボルトによって、パリソンの偏肉等に影響を及ぼす中心軸の位置合わせを行う(初期設定する)ことにより、その後は、第2ダイの着脱のみを行えばよい。これは、中心軸の位置合わせは第1ダイで既に行われているので、第2ダイを固定した後に改めて位置合わせを行う必要がないからである。
【発明の効果】
【0034】
ブロー成形用ダイは、分割可能な円筒状の第1ダイと円筒状の第2ダイを備え、第1ダイの下方端部には、径方向において内側方向に突出する環状鍔部が形成され、第2ダイには、径方向において外側方向に突出する係合突起部が複数形成され、第1ダイの環状鍔部には、第2ダイの係合突起部が上下方向に通過可能な切り欠き部が形成されており、第1ダイをブロー成形機の本体部の下端部に取付けることにより、本体部の下端部と第1ダイの環状鍔部との間に、第2ダイの係合突起部が周方向に移動可能な空間が形成され、第2ダイの係合突起部を、第1ダイの切り欠き部の下方から上方に通過させた後、第2ダイを周方向に回転して第2ダイの係合突起部を第1ダイの環状鍔部上に移動させ、第1ダイと第2ダイを固定することにより、第1ダイと第2ダイが組み立てられるので、ボルトレス構造であり、第2ダイの組み立てを容易に短時間で行うことができる。又、組み立てのみならず、別の第2ダイへの交換も容易に短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の実施形態のブロー成形用ダイを説明する断面図である。
【
図2】本発明の実施形態の第1ダイに関する
図1におけるX-X断面図である。
【
図3】本発明の実施形態の第2ダイに関する
図1におけるY-Y断面図である。
【
図4】(a)は、
図3におけるA部の拡大図であり、(b)は(a)の側面図である。
【
図5】第2ダイの係合突起部における、第1ダイの切り欠き部の下方から上方への通過を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図6】第2ダイの係合突起部の周方向の回転を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図7】ダイ押えピンによる係合突起部の上下方向の固定を説明する図であり、(a)はダイ押えピンの側面図、(b)はダイ押えピン挿入時の断面図及びレバーの位置との関係図、(c)はダイ押えピン回転時の断面図及びレバーの位置との関係図である。
【
図8】従来のブロー成形機用ダイスの断面図である(特許文献1)。
【
図9】従来のブロー成形機の断面模式図である(特許文献1)。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の実施形態は、自動車等の車両に搭載される樹脂製燃料タンクに関し説明するものであるが、他の物品にも適用可能である。本発明の実施形態であるブロー成形用ダイ1について、
図1から
図7に基づいて説明する。
【0037】
ブロー成形機Bは、
図1に示すように、軸Oを有する円筒状であり、本体部60、第1ダイ2と第2ダイ3を備えるブロー成形用ダイ1、円筒部7、パリソンガイド部8とダイコア10を備えている。そして、本体部60、第2ダイ3、パリソンガイド部8とダイコア10との空間にパリソン流路90が形成される。
【0038】
本体部60の上方に配置された図示しない押出機から押し出された溶融樹脂がパリソン流路90を流れ、下方に形成されたパリソン射出口91から押し出されて管状のパリソンが形成される。パリソンガイド部8とダイコア10は、下方に広がる形状に形成されているので、パリソンは、パリソン射出口91から更に口径が広がるように押し出される。
【0039】
なお、以下の説明において、軸Oと直交する方向を径方向といい、軸Oの周囲を回転する方向を周方向という。
【0040】
本実施形態における樹脂製燃料タンクは、高密度ポリエチレン(HDPE)を主材とし、燃料の透過性の極めて少ないバリヤ層には、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EvOH)を用い、樹脂製燃料タンクの内側から、主材/接着材層/バリヤ層/接着材層/再生材層/主材構造の4種6層構造で構成されている。なお、主材/接着材層/バリヤ層/接着材層/主材の3種5層であってもよい。又、ポリプロピレンやポリアミド等の、ブロー成形が可能な合成樹脂であれば、いずれの合成樹脂も使用することができる。
【0041】
図1と
図5(b)に示すように、第2ダイ3の径方向において外側に突出する係合突起部30の係合突起部側面部34には、ダイ固定ピン挿入孔35が形成され、第1ダイ2の側面部23には、第2ダイ3の係合突起部30の周方向を固定するための貫通孔である孔部24が形成され、第1ダイ2の孔部24から第2ダイ3のダイ固定ピン挿入孔35に至るダイ固定ピン4が挿入されている(
図6(b))。
【0042】
又、
図1と
図7(c)に示すように、ブロー成形機Bの本体部60の下端部61には、本体部60の側面側から溝部62が形成され、溝部62から第2ダイ3の係合突起部上面部31に至るダイ押えピン5が挿入されている。なお、溝部62は、第2ダイ3のダイ固定ピン挿入孔35にダイ固定ピン4が挿入され、第2ダイ3が周方向に固定されたときの係合突起部30の係合突起部上面部31の円周部33に合致する位置に形成されている。円周部33については、後に詳述する。
【0043】
図1に示すように、本体部60の下端部61の側面側には、ダイ押えピン5が挿入可能であり、ダイ押えピン5が本体部60の溝部62と第1ダイ2と第2ダイの係合突起部上面部31との間をスムーズに移動することを可能とするダイ押えピンガイド部53が取付けられている。ダイ押えピン5の先端には、レバー部52が取付けられ、ダイ押えピン5を容易に回転できるようになっている。ダイ押えピン5については、後に詳述する。
【0044】
図1に示すように、第1ダイ2の側面部23には、第1ダイ2を貫通するネジ孔26が形成され、ネジ孔26には、偏肉調整ボルト6が挿入されている。この偏肉調整ボルト6によってパリソン流路90の隙間が調整され、パリソンの偏肉の程度が調整される。
【0045】
なお、
図1において、ダイ固定ピン4、ダイ固定ピン挿入孔35、孔部24、ダイ押えピン5、溝部62、偏肉調整ボルト6及びネジ孔26が同時に、実線で描かれているが、これは、左記部材の上下方向の位置関係を示すためである。これらの平面における位置関係については、以下の
図2と
図3において説明する。
【0046】
図2は、第1ダイ2に関する
図1におけるX-X断面図である。なお、
図2において、ダイコア10、パリソンガイド部8と円筒部7は省略されている。又、平面における孔部24とネジ孔26、本体部60に形成される溝部62とダイ押えピン5との位置関係を明確にするために、それらを破線で示した。
【0047】
第1ダイ2には、径方向において内側方向に突出する半径R2の環状鍔部20が形成され、環状鍔部20には、径方向において半径R1、周方向において最短部の長さがL1の切り欠き部22が、45度の一定間隔で8箇所形成されている。
【0048】
ダイ固定ピン4を挿入するための孔部24は、周方向において、切り欠き部22の形成されていない環状鍔部20であって、180度の間隔で2箇所形成されている。
【0049】
又、偏肉調整ボルト6を挿入するネジ孔26は、周方向において、孔部24の両側に22.5度離れて位置するとともに、45度の一定間隔を有し、8箇所形成されている。
【0050】
一方、本体部60の下端部61に形成される溝部62は、周方向において、孔部24の両側に45度離れて位置し、4箇所形成されている。
【0051】
なお、周方向における切り欠き部22、孔部24、ネジ孔26及び溝部62を形成する位置、個数、間隔は、上記の位置、個数、間隔には限定されない。
【0052】
図3は、第2ダイ3に関する
図1におけるY-Y断面図である。なお、
図3において、第1ダイ2とダイコア10は省略されている。
【0053】
第2ダイ3には、径方向において外側方向に突出する半径R3、周方向において最長部の長さがL2の係合突起部30が、周方向において、45度の一定間隔で8箇所形成されている。又、係合突起部30の中央部に、軸O方向に、ダイ固定ピン挿入孔35が180度の間隔で2箇所形成されている。なお、係合突起部30以外の部分の半径はR4である。又、後述するダイ押えピン5の円柱部55と当接するダイ押えピン当接部37を破線で示した。
【0054】
図4(a)は、
図3における係合突起部30のA部の拡大図であり、(b)は(a)の側面図である。
図4(a)に示すように、係合突起部30は、8箇所の係合突起部30の外周円を形成する半径R3の円周部33と、円周部33の両側に円周部33から連続して形成された円周部33の半径R3より短い短径部36(両側の端部における軸Oからの距離L3)を備えている。
【0055】
この短径部36により、径方向において、第2ダイ3の係合突起部30と第1ダイ2との隙間が狭い場合、すなわち、第1ダイ2の切り欠き部22の半径R1と第2ダイ3の係合突起部30の半径R3の差が非常に小さい場合であっても、第2ダイ3を周方向にスムーズに回転させることができ、第1ダイ2に対する第2ダイ3の着脱作業を容易に、効率良く行うことができる。
【0056】
図4(a)において、短径部36は、円周部33に対して対称に描かれているが、対称形状には限定されない。又、本実施形態では、8箇所の係合突起部30の全てに短径部36を形成したが、全てに形成しなくてもよい。但し、第2ダイ3の係合突起部30を周方向にスムーズに回転させる観点では、短径部36は、軸Oに対して点対称の位置の係合突起部30に複数箇所形成することが望ましい。
【0057】
又、
図4(b)に示すように、係合突起部30の短径部36は、円周部33から離れるにつれて肉厚が薄く形成されている。その結果、上下方向において、本体部60の下端部61と第1ダイ2の環状鍔部20との間に形成された空間と第2ダイ3の係合突起部30との隙間が狭い場合であっても、第2ダイ3の係合突起部30を周方向によりスムーズに回転させることができ、着脱作業をより容易に、効率良く行うことができる。なお、係合突起部30の短径部36の肉厚は、円周部33と同じであり、係合突起部30は一定肉厚に形成されていても良い。
【0058】
ここで、
図2、
図3及び
図4(a)において、第1ダイ2の切り欠き部22の半径R1と環状鍔部20の半径R2、第2ダイ3の係合突起部30の半径R3、係合突起部30以外の部分の半径R4と係合突起部30の両端部と軸Oとの距離L3との間には、R4<R2<L3<R3<R1の関係が成立する。この関係により、第2ダイ3の係合突起部30を周方向にスムーズに回転させることができ、且つ係合突起部30を環状鍔部20上に確実に移動することができるので、第1ダイ2と第2ダイ3の着脱作業を容易に、効率良く行うことができる。
【0059】
一方、第1ダイ2の切り欠き部22における最短部の長さL1と第2ダイ3の係合突起部30における最長部の長さL2の間には、L1>L2が成立する。この関係によって、第2ダイ3の係合突起部30を、第1ダイ2の切り欠き部22の上下方向に容易に通過させることができる。
【0060】
次に、
図1、
図5から
図7に基づいて、第1ダイ2と第2ダイ3の固定と、第2ダイの交換について説明する。
図5(a)と
図6(a)は第1ダイ2と第2ダイ3を上方から見た図である。又、
図5(a)と
図6(a)には、第1ダイ2に関する孔部24、第2ダイ3に関するダイ固定ピン挿入孔35、本体部60に関するダイ押えガイド部53と溝部62の位置を破線で示した。
【0061】
まず、本体部60の下端部61に第1ダイ2を取付ける。この第1ダイ2の本体部60の下端部61への取付けは、本体部60の下端部61に上向きに形成された図示しないネジ孔に、第1ダイ2に形成された図示しない貫通孔からボルトを挿入して行った。なお、本体部60の下端部61への第1ダイ2の取付けは、上記方法には限定されない。
【0062】
次に、
図1に示すように、第1ダイ2の側面部23から第1ダイ2に形成したネジ孔26に偏肉調整ボルト6を挿入し、本体部60の側面に当接させる。上記の通り、ネジ孔26は、8箇所形成されているので、これら8箇所の偏肉調整ボルト6によって本体部60の中心軸と第1ダイ2の中心軸を一致させる初期設定を行う。
【0063】
次に、
図5(a)に示すように、円筒部7、パリソンガイド部8を取付けた第2ダイ3の係合突起部30と第1ダイ2の切り欠き部22の位置を合わせる。そして、第2ダイ3を上方に引き上げ(
図5(b)の矢印)、第1ダイ2の切り欠き部22を通過させる。
【0064】
図5(b)に示すように、本体部60の下端部61には、上方に抉られた空間部27が形成されている。この空間部27により、第2ダイ3の係合突起部30が、第1ダイ2の環状鍔部20を確実に通過することができ、且つ、その後の第2ダイ3の周方向の回転を容易に行うことができる(
図6(b))。この空間部27を形成する代わりに、第1ダイ2を厚く形成して空間を形成してもよい。ただし、この場合は、重量増となる。
【0065】
次に、
図6(a)に示すように、第2ダイ3を所定の角度回転させ、第2ダイ3の係合突起部30を第1ダイ2の環状鍔部20の上に移動させる。又、この回転により第1ダイ2に形成した孔部24と第2ダイ3の係合突起部30の係合突起部側面部34に形成したダイ固定ピン挿入孔35が合致する。
【0066】
そして、
図6(b)に示すように、ダイ固定ピン4を第1ダイ2の孔部24から第2ダイ3のダイ固定ピン挿入孔35に挿入し、周方向において、第1ダイ2と第2ダイ3を固定する。
【0067】
このダイ固定ピン4により第1ダイ2と第2ダイ3を固定する方法では、第1ダイ2と第2ダイ3を完全に締結・拘束しないので、第1ダイ2と第2ダイ3は、組み立て後においても熱膨張などにより第2ダイ3が第1ダイ2から外れにくくなることはない。又、溶融樹脂を押出し、溶融樹脂がブロー成形用ダイ1内を流れる時に、第2ダイ3が動かない程度の強度で設計、すなわち、構造体の強度を低めに設定することができ、第1ダイ2と第2ダイ3を薄く、小さくコンパクトに設計することができる。
【0068】
次に、本体部60の溝部62からダイ押えピン5を挿入する。
図7は、ダイ押えピン5によるダイ押えを説明する図であり、(a)は、ダイ押えピン5の側面図、(b)は、ダイ押えピン5を挿入する時の本体部60、第2ダイ3とダイ押えピン5の断面図及びレバーの位置との関係図、(c)はダイ押えピン5を回転した時の本体部60、第2ダイ3とダイ押えピン5の断面図及びレバーの位置との関係図である。なお、
図7(b)と
図7(c)において、レバー部52は片方のみ示した。
【0069】
又、
図7(b)と
図7(c)において、ダイ押えピン5を挿入する係合突起部30の円周部33の係合突起部上面部31には、当接するダイ押えピン5の円柱部55の形状に合わせて削られたダイ押えピン当接部37が形成されている。なお、このダイ押えピン当接部37は形成しなくてもよい。ダイ押えピン当接部37を形成しない場合は、係合突起部上面部31には、ダイ押えピン5の円柱部55が線状に当接することになる。
【0070】
ダイ押えピン5は、
図7(a)に示すように、レバー部52、挿入部50と第2ダイ3の係合突起部上面部31に位置するダイ押え部51から構成される。挿入部50は、円柱形状であり、ダイ押え部51は、円柱形状の側面の一部が除去された平面部54と平面部54を除く円柱部55から構成されている。又、円柱形状の挿入部50の半径は、ダイ押え部51の円柱部55の中心から平面部54までの距離よりも短い。
【0071】
図7(b)に示すように、ダイ押えピン5は、ダイ押え部51の平面部54を下方に向けた状態で溝部62に挿入する。ダイ押え部51の平面部54は、円柱形状の側面の一部が除去されて形成されているので、ダイ押えピン5を第2ダイ3のダイ押えピン当接部37上に容易に挿入することができる。
【0072】
次に、ダイ押えピン5を回転させ、
図7(c)に示すように、ダイ押えピン5の円柱部55を溝部62の上面と係合突起部30のダイ押えピン当接部37に当接させる。この結果、ダイ押えピン5は、溝部62の上面を上方に、第2ダイ3のダイ押えピン当接部37を下方に押えるので、上下方向において、本体部60と第2ダイ3の固定を容易に、且つ確実に行うことができる。
【0073】
このダイ押えピン5により本体部60と第2ダイ3を固定する方法では、本体部60と第2ダイ3を完全に締結・拘束しないので、組み立て後においても熱膨張などにより第2ダイ3が本体部60から外れにくくなることはない。
【0074】
又、第1ダイ2を本体部60に取付けた後の8箇所の偏肉調整ボルト6により第1ダイ2の中心軸の初期設定は完了しているので、第2ダイ3を固定した後に改めて軸の調整を行う必要はない。この初期設定により、その後は、第2ダイ3の着脱交換のみを行えばよい。
【0075】
第2ダイ3の交換については、上記の固定の逆の手順で行う。本体部60と第1ダイ2と第2ダイ3は、ダイ押えピン5とダイ固定ピン4で固定され、完全に締結・拘束されていないので、第2ダイ3の交換時に本体部60と第1ダイ2と第2ダイ3が十分に冷めていない状態においても第2ダイ3が第1ダイ2から外れにくくなることはない。
【0076】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0077】
例えば、
図4(a)においては、短径部36は、円周部33から離れるにつれて、軸Oからの距離が円周部33の半径R3から連続して短くなり距離L3に至る弧状に描かれているが、円周部33から直線により軸Oからの距離を短くし、この直線に連続して、円周部33の半径R3より短い半径R5で形成する、すなわち、円周部33と短径部36を共に円弧とし、左記両円弧を直線によって連結することによって形成してもよい。
【0078】
例えば、
図7(b)と
図7(c)において、本体部60に形成された溝部62の断面は、コ字状であるが、上側をダイ押え部51の円柱部55に合わせた弧状であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 ブロー成形用ダイ
2 第1ダイ
3 第2ダイ
4 ダイ固定ピン
5 ダイ押えピン
6 偏肉調整ボルト
20 環状鍔部
22 切り欠き部
24 孔部
26 ネジ孔
30 係合突起部
33 円周部
35 ダイ固定ピン挿入孔
36 短径部
37 ダイ押えピン当接部
51 ダイ押え部
54 平面部
55 円柱部
60 本体部
61 下端部
62 溝部
B ブロー成形機