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  • 特許-車両用シート 図1
  • 特許-車両用シート 図2
  • 特許-車両用シート 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/427 20060101AFI20240605BHJP
   B60N 2/64 20060101ALI20240605BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
B60N2/427
B60N2/64
B60N2/68
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019190501
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021066210
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】石原 慶隆
(72)【発明者】
【氏名】泊岩 好
(72)【発明者】
【氏名】増野 秀一
(72)【発明者】
【氏名】西村 顕次
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-315088(JP,A)
【文献】特開2001-186957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 7/40-7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、シートバックと、を有する車両用シートにおいて、
前記シートバックは、内部に上下に分割されたアッパーフレームとロアフレームとを備え、
前記アッパーフレームは、前記ロアフレームに対して一本の支持軸によって固定されるとともに、前記アッパーフレームは、全体の横幅が途中から下方に向かって狭くなるテーパー状に形成されていて、横方向の両側の下方は、前記アッパーフレームと前記ロアフレームとの間に、中心付近と比較して大きな空間が形成されており、
前記支持軸は、前記アッパーフレームに衝撃荷重が加わった際に、前記アッパーフレームよりも先に後方側、斜め方向、横方向及びねじれ方向に変形することを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記支持軸は、前記アッパーフレームの曲げ剛性よりも低い曲げ剛性に作製されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特に、車両の衝突時に発生する衝撃力を吸収できるようにした車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の衝突時における衝撃が乗員に加わるのを緩和するために、車両用シート自体に緩和装置を設けたものがある。例えば、シートを構成するシートクッションの下面に、車両の衝突時に作用する衝撃荷重に応じて塑性変形する係止部材からなる衝撃緩和部材を設け、この衝撃緩和部材を介して、上記シートクッションを車体に支持し、上記衝撃緩和部材を塑性変形させることによって衝撃時の衝撃エネルギーを吸収するようにした車両用シートがある(特許文献1)。
【0003】
一方で、近年では衝撃を緩和するためにエアバッグが車両に搭載されている。このエアバッグにより正面衝突時における衝撃が緩和される。しかしながら、このエアバッグの押圧力によって、上半身が再度、後方に押し返されることがあり、この押し返しによる頭部や背中の車両用シートへの衝撃によって頚椎や胸椎を損傷する可能性がある。
【0004】
そのためには、座席全体ではなく、シートバックによる衝撃の緩和が効果的であることが発明者によって確かめられている。しかしながら、特許文献1に記載の発明は、あくまで車両用シートの形態が変形するものではなく、車両用シート全体が移動することによって衝撃を緩和するものであるため、エアバッグの押圧力による後方への押し返しに対して効果的に衝撃を緩和することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-356240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、エアバッグによる押し返しに対する頭部や背中に対する衝撃を効果的に緩和することができる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0008】
本発明にかかる車両用シートは、
シートクッションと、シートバックと、を有する車両用シートにおいて、
前記シートバックは、内部に上下に分割されたアッパーフレームとロアフレームとを備え、
前記アッパーフレームは、ロアフレームに対して一本の支持軸によって固定されており、
前記支持軸は、アッパーフレームに衝撃荷重が加わった際に、アッパーフレームよりも先に変形することを特徴とする。
【0009】
シートバックをアッパーフレームとロアフレームに分割して形成し、アッパーフレームをロアフレームに対して一本の支持軸で固定することによって、衝突時にエアバッグによる押し戻しによる衝撃がシートバックに加わった場合にアッパーフレームに加わる圧力が支持軸に集中することになる。そのため、支持軸が脆弱部となり、支持軸が変形することによってアッパーフレームが後方側へ倒れ、乗員の頭部や背中に加わる衝撃力を緩和することができる。これにより、頚椎や胸椎が損傷するのを低減することができる。
【0010】
また、本発明にかかる車両用シートにおいて、
前記支持軸は、前記アッパーフレームの曲げ剛性よりも低い曲げ剛性に作製されていることを特徴とするものであってもよい。
【0011】
かかる構成を採用することによって、アッパーフレームが折れ曲がるよりも先に支持軸を確実に変形させることができる。これにより、アッパーフレームが後方側へ倒れ、乗員の頭部や背中に加わる衝撃力を緩和することができる。これにより、頚椎や胸椎が損傷するのを低減することができる。
【0012】
さらに、本発明にかかる車両用シートにおいて、
前記支持軸は、ヘッドレストに衝撃荷重が加わった際に、ヘッドレストステーよりも先に変形することを特徴とするものであってもよい。
【0013】
かかる構成を採用することにおって、ヘッドレストステーが折れ曲がるよりも先に支持軸を確実に変形させることによって、頚椎や胸椎が損傷する可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態にかかる車両用シート100の斜視図である。
図2図2は、実施形態にかかる車両用シート100の内部構造を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態にかかる車両用シート100のシートバックフレーム30の支持軸60が折曲り、アッパーフレーム50が倒れた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。また、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。
【0016】
本実施形態にかかる車両用シート100は、車両に取り付けられるシートであって、図1に示すように、シートクッション1と、シートバック2とを備えている。図2には、クッションを除いた内部構造の斜視図が示されている。本実施形態にかかる車両用シート100の内部構造は、図2に示すよう、主として、シートクッション1内部に配置されるシートクッションフレーム20と、このシートクッションフレーム20に対してリクライニング可能に取り付けられ、シートバック2内に配置されるシートバックフレーム30と、を主として備えている。
【0017】
シートバックフレーム30は、シートクッションフレーム20に対してリクライニング機構13を介して取り付けられているロアフレーム40と、ロアフレーム40の上方に支持軸60を介して取り付けられるアッパーフレーム50とを備えている。
【0018】
ロアフレーム40は、図3に示すように、略逆U字型に形成されており、アッパーフレーム50を固定可能な支持軸60が中央に一本取り付けられている。
【0019】
アッパーフレーム50は、シートバックの形状を保持するためのフレームであり、シートバックの上方側を支持する上方フレーム51と、両側を支持する側方フレーム52と、下方に位置する下方フレーム53とを有している。下方フレーム53は、中央付近が水平に形成されており、途中から斜め上方に傾斜して側方フレーム52に接続されており、アッパーフレーム50は、横幅が途中から下方に向かって狭くなるようにテーパー状に形成されていて、全体として、四角形と逆台形を組み合わせたような形態をしている。アッパーフレーム50は、下方フレーム53の中央付近で前述した支持軸60に固定されている。また、アッパーフレーム50の両側の下方は、テーパー状に形成されているので、アッパーフレーム50とロアフレーム40との間に、中心付近と比較して大きな空間αが形成されている。かかる空間αを形成することによって、アッパーフレーム50は、後方側のみでなく、斜め方向や横方向にも倒れるように、支持軸60を変形させることができる。
【0020】
アッパーフレーム50には、ヘッドレスト用ガイドブラケット91が設けられており、このヘッドレスト用ガイドブラケット91にヘッドレストステー10が差し込まれてヘッドレスト(図示しない。)が固定される。
【0021】
支持軸60の断面形状は、四角形、円形、楕円形等のように特に限定するものではない。円形に形成すれば、いずれの方向に加わっても、同様の衝撃力でその方向に変形させることができる。楕円形に形成すれば短軸側に力が加わった場合に変形しやすくなり、長軸側に力が加わった場合には折れ曲がりづらくすることができる。このように、支持軸60の断面形状を選択することによって、所定の方向への折れ曲がりやすさ、折れ曲がりづらさを調整することができる。また、支持軸60は、アッパーフレーム50の剛性よりも低い剛性を有し、アッパーフレーム50が変形するよりも先に変形するか、又は変形率が大きくなるように形成されている。また、支持軸60は、ヘッドレストに衝撃荷重が加わった際に、ヘッドレストステー10よりも先に変形するように形成されている。支持軸60は、変形した際に、アッパーフレーム50とロアフレーム40が干渉しない程度の幅が設けられるような長さに形成されている。さらに、支持軸60は、支持軸60を中心に捻じれ方向にも変形可能に形成されており、図3に示すように、捻じれながら変化することもできる。
【0022】
以上のようにして作製された車両用シート100は、図1に示すように、シートクッションフレーム20にシート用クッション3が取り付けられ、アッパーフレーム50及びロアフレーム40のそれぞれにアッパークッション4及びロアクッション5が取り付けられて車両用シート100とされる。こうして作製された車両用シート100は、車両が衝突した後に、エアバッグによる押し返しがされた際の乗員の背中や頭部による衝撃によって、アッパークッション4が後方側に折れ曲がり、頭部や背中に与える衝撃を緩和させることができる。また、本実施形態にかかる車両用シート100は、アッパーフレーム50とロアフレーム40とが、1本の支持軸60で形成されているので、車両に側突された場合等に後方以外の後方斜め方向や側方方向に大きな力が加わった場合であってもアッパーフレーム50が後方斜め方向や側方方向へ変形することができるため、衝撃の方向に応じて適切な方向に折れ曲がることによって、頭部や背中に与える衝撃を緩和させることができる。また、例えば、右半身側に強い衝撃が加わり、左半身側が弱い場合には、強い衝撃を受けたアッパーフレーム50の右半身側が捻られるように変形させることができるので、強い衝撃を受けた右半身側の衝撃を大きく緩和させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
上述した実施形態で示すように、自動車用の車両シートとして産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1…シートクッション1、2…シートバック、3…シート用クッション、4…アッパークッション、5…ロアクッション、10…ヘッドレストステー、13…リクライング機構、20…シートクッションフレーム、30…シートバックフレーム、40…ロアフレーム、50…アッパーフレーム、51…上方フレーム、52…側方フレーム、53…下方フレーム、60…支持軸、91…ヘッドレスト用ガイドブラケット、100…車両用シート
図1
図2
図3