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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-04
(45)【発行日】2024-06-12
(54)【発明の名称】送液装置及び送液方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/32 20060101AFI20240605BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20240605BHJP
【FI】
G01N30/32 C
F04B49/06 321
【請求項の数】 53
(21)【出願番号】P 2019233153
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021101179
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390030188
【氏名又は名称】ジーエルサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100063842
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118119
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 大典
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸治
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-186979(JP,A)
【文献】特開2011-012541(JP,A)
【文献】特許第2960441(JP,B2)
【文献】特開平03-094157(JP,A)
【文献】特開2015-166724(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0193275(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/32
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液において、流量を減少させる時に、所定の時間をかけて、流量を減少させると共に、流量が変化している時のうち少なくとも一部の時間においては、流量の減少率を変化させることを特徴とする送液装置。
【請求項2】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液において、処理時の流量から流量を減少させて処理終了後の流量にする処理終了時に、所定の時間をかけて、流量を減少させ、前記処理終了時には、常に流量を変化させることを特徴とする送液装置。
【請求項3】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液において、処理時の流量から流量を減少させて処理終了後の流量にする処理終了時に、所定の時間をかけて、流量を減少させると共に、流量が変化している時のうち少なくとも一部の時間においては、流量の減少率を変化させることを特徴とする送液装置。
【請求項4】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液において、処理時の流量から流量を減少させて処理終了後の流量にする処理終了時に、所定の時間をかけて、流量を減少させ、前記処理終了時には、常に流量を減少させることを特徴とする送液装置。
【請求項5】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液において、処理時の流量から流量を減少させて処理終了後の流量にする処理終了時に、所定の時間をかけて、流量を減少させ、前記処理終了時のうち少なくとも一部の時間においては、流量の減少率を一定とし、前記処理終了時のうち前記少なくとも一部の時間とは異なる他の少なくとも一部の時間においては、流量を変化させると共に、流量の減少率を変化させることを特徴とする送液装置。
【請求項6】
前記処理終了時における減少率が変化して流量が減少している時には、減少率が連続的に変化することを特徴とする請求項3又は5に記載の送液装置。
【請求項7】
前記減少率は、前記処理終了時の後半に比べて前記処理終了時の前半に小さいことを特徴とする請求項3、5又は6に記載の送液装置。
【請求項8】
前記減少率は、前記処理終了時の前半に比べて前記処理終了時の後半に小さいことを特徴とする請求項3、5又は6に記載の送液装置。
【請求項9】
前記処理終了時の前半において、前記処理終了時の開始時からの時間が短い程、前記減少率が小さいことを特徴とする請求項3、5、6、7又は8に記載の送液装置。
【請求項10】
前記処理終了時の後半において、処理終了後までの時間が短い程、前記減少率が小さいことを特徴とする請求項3、5、6、7、8又は9に記載の送液装置。
【請求項11】
前記処理終了時の時間が1秒以上であることを特徴とする請求項2から10のうち何れか1項に記載の送液装置。
【請求項12】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液において、処理時の流量から流量を減少させて処理終了後の流量にする処理終了時に、所定の時間をかけて、流量を減少させ、前記処理終了時の時間が1秒以上であることを特徴とする送液装置。
【請求項13】
前記処理終了時のうち少なくとも一部の時間における流量の減少は、減少率が一定であることを特徴とする請求項12に記載の送液装置。
【請求項14】
前記処理時の流量が0.05mL/min~1000mL/minであることを特徴とする請求項2から13のうち何れか1項に記載の送液装置。
【請求項15】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液において、処理時の流量から流量を減少させて処理終了後の流量にする処理終了時に、所定の時間をかけて、流量を減少させ、前記処理時の流量が0.05mL/min~1000mL/minであることを特徴とする送液装置。
【請求項16】
前記処理終了時のうち少なくとも一部の時間における流量の減少は、減少率が一定であることを特徴とする請求項15に記載の送液装置。
【請求項17】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液において、流量を増加させる時に、所定の時間をかけて、流量を増加させると共に、少なくとも一部の時間においては、流量の増加率を連続的に変化させることを特徴とする送液装置。
【請求項18】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液において、処理準備前の流量から流量を増加させて処理時の流量にする処理準備時に、所定の時間をかけて、流量を増加させると共に、前記処理準備時のうち少なくとも一部の時間においては、流量の増加率を連続的に変化させることを特徴とする送液装置。
【請求項19】
前記処理準備時の前半において、前記処理準備時の開始時からの時間が短い程、前記増加率が小さいことを特徴とする請求項18に記載の送液装置。
【請求項20】
前記処理準備時の後半において、前記処理時までの時間が短い程、前記増加率が小さいことを特徴とする請求項18又は19に記載の送液装置。
【請求項21】
前記処理準備時の時間が1秒以上であることを特徴とする請求項18から20のうち何れか1項に記載の送液装置。
【請求項22】
前記処理時の流量が0.05mL/min~1000mL/minであることを特徴とする請求項18から21のうち何れか1項に記載の送液装置。
【請求項23】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液を行う送液装置であって、請求項1から16のうち何れか1項に記載の送液装置であって、且つ、請求項17から22のうち何れか1項に記載の送液装置。
【請求項24】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液を行う送液装置であって、流量を減少させる時に、所定の時間をかけて、流量を減少させる送液装置であって、且つ、請求項17から22のうち何れか1項に記載の送液装置。
【請求項25】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液を行う送液装置であって、処理時の流量から流量を減少させて処理終了後の流量にする処理終了時に、所定の時間をかけて、流量を減少させる送液装置であって、且つ、請求項17から22のうち何れか1項に記載の送液装置。
【請求項26】
前記処理終了時のうち少なくとも一部の時間においては、流量の減少率が一定であることを特徴とする請求項25に記載の送液装置。
【請求項27】
流量の増加又は/及び減少を、予め設定された流量の変化又は/及び前記送液ポンプと前記送液対象物間に設置された圧力センサにより測定された圧力の変化に基づいて制御することを特徴とする請求項1から26のうち何れか1項に記載の送液装置。
【請求項28】
請求項1から27のうち何れか1項に記載の送液装置を備えることを特徴とする液体クロマトグラフ。
【請求項29】
請求項1から27のうち何れか1項に記載の送液装置を備えることを特徴とする超臨界流体クロマトグラフ。
【請求項30】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液において、流量を減少させる時に、所定の時間をかけて、流量を減少させると共に、流量が変化している時のうち少なくとも一部の時間においては、流量の減少率を変化させることを特徴とする送液方法。
【請求項31】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液において、処理時の流量から流量を減少させて処理終了後の流量にする処理終了時に、所定の時間をかけて、流量を減少させ、前記処理終了時には、常に流量を変化させることを特徴とする送液方法。
【請求項32】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液において、処理時の流量から流量を減少させて処理終了後の流量にする処理終了時に、所定の時間をかけて、流量を減少させると共に、流量が変化している時のうち少なくとも一部の時間においては、流量の減少率を変化させることを特徴とする送液方法。
【請求項33】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液において、処理時の流量から流量を減少させて処理終了後の流量にする処理終了時に、所定の時間をかけて、流量を減少させ、前記処理終了時には、常に流量を減少させることを特徴とする送液方法。
【請求項34】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液において、処理時の流量から流量を減少させて処理終了後の流量にする処理終了時に、所定の時間をかけて、流量を減少させ、前記処理終了時のうち少なくとも一部の時間においては、流量の減少率を一定とし、前記処理終了時のうち前記少なくとも一部の時間とは異なる他の少なくとも一部の時間においては、流量を変化させると共に、流量の減少率を変化させることを特徴とする送液方法。
【請求項35】
前記処理終了時における減少率が変化して流量が減少している時には、減少率を連続的に変化させることを特徴とする請求項32又は34に記載の送液方法。
【請求項36】
前記減少率を、前記処理終了時の後半に比べて前記処理終了時の前半に小さくすることを特徴とする請求項32、34又は35に記載の送液方法。
【請求項37】
前記減少率を、前記処理終了時の前半に比べて前記処理終了時の後半に小さくすることを特徴とする請求項32、34又は35に記載の送液方法。
【請求項38】
前記処理終了時の前半において、前記処理終了時の開始時からの時間が短い程、前記減少率を小さくすることを特徴とする請求項32、34、35、36又は37に記載の送液方法。
【請求項39】
前記処理終了時の後半において、処理終了後までの時間が短い程、前記減少率を小さくすることを特徴とする請求項32、34、35、36、37又は38に記載の送液方法。
【請求項40】
前記処理終了時の時間が1秒以上であることを特徴とする請求項31から39のうち何れか1項に記載の送液方法。
【請求項41】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液において、処理時の流量から流量を減少させて処理終了後の流量にする処理終了時に、所定の時間をかけて、流量を減少させ、前記処理終了時の時間が1秒以上であることを特徴とする送液方法。
【請求項42】
前記処理終了時のうち少なくとも一部の時間における流量の減少は、減少率を一定とすることを特徴とする請求項41に記載の送液方法。
【請求項43】
前記処理時の流量が0.05mL/min~1000mL/minであることを特徴とする請求項31から42のうち何れか1項に記載の送液方法。
【請求項44】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液において、処理時の流量から流量を減少させて処理終了後の流量にする処理終了時に、所定の時間をかけて、流量を減少させ、前記処理時の流量が0.05mL/min~1000mL/minであることを特徴とする送液方法。
【請求項45】
前記処理終了時のうち少なくとも一部の時間における流量の減少は、減少率を一定とすることを特徴とする請求項44に記載の送液方法。
【請求項46】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液において、流量を増加させる時に、所定の時間をかけて、流量を増加させると共に、少なくとも一部の時間においては、流量の増加率を連続的に変化させることを特徴とする送液方法。
【請求項47】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液において、処理準備前の流量から流量を増加させて処理時の流量にする処理準備時に、所定の時間をかけて、流量を増加させると共に、前記処理準備時のうち少なくとも一部の時間においては、流量の増加率を連続的に変化させることを特徴とする送液方法。
【請求項48】
前記処理準備時の前半において、前記処理準備時の開始時からの時間が短い程、前記増加率を小さくすることを特徴とする請求項47に記載の送液方法。
【請求項49】
前記処理準備時の後半において、前記処理時までの時間が短い程、前記増加率を小さくすることを特徴とする請求項47又は48に記載の送液方法。
【請求項50】
前記処理準備時の時間が1秒以上であることを特徴とする請求項47から49のうち何れか1項に記載の送液方法。
【請求項51】
前記処理時の流量が0.05mL/min~1000mL/minであることを特徴とする請求項47から50のうち何れか1項に記載の送液方法。
【請求項52】
分離カラム、トラップカラム、ガードカラム、反応カラムから選択される1以上の送液対象物への送液ポンプによる送液を行う送液方法であって、請求項30から45のうち何れか1項に記載の送液方法であって、且つ、請求項46から51のうち何れか1項に記載の送液方法。
【請求項53】
流量の増加又は/及び減少を、目的とする時間毎の流量又は/及び目的とする時間毎の圧力に基づいて制御することを特徴とする請求項30から52のうち何れか1項に記載の送液方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離カラム等の送液対象物への送液を行うための、送液ポンプを備えた送液装置及び送液対象物への送液を行う送液方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の分析や分取その他の目的により、分析等を行うための装置や機器を送液対象物として、送液ポンプにより液体を送液することが行われている。一具体例としては、液体クロマトグラフ(液体クロマトグラフィー装置)を用いた分析や分取等において、分析や分取等の目的を達成するための処理である試料中の目的化合物の分離を行うために、内部空間に粒状の充填剤が詰められて構成された充填層を備えた分離カラムを送液対象物として使用することが行われている。又、試料中の目的化合物の分離に対応した移動相(溶離液)を送液対象物としての分離カラムへ送液するために、送液ポンプを備えた送液装置が用いられている。
【0003】
しかし、送液ポンプによる送液開始時に、送液ポンプのモータが停止した状態から、即ち送液をしていない状態から、直ちに分析や分取等の目的に対応した流量で移動相を送液するための駆動状態にすることにより、分離カラム内部の圧力が急激に増加し、圧力ショックが生じる。そして、この圧力ショックを分離カラム内の充填層が受けて、充填剤が圧縮されることで、分離カラム内部の充填層に新たな隙間が作られてしまい、分離カラムの分離性能を落としてしまうことがあった。
【0004】
上記の圧力ショックを防ぐため、液体クロマトグラフ用送液ポンプにおいて、送液ポンプの送液開始時には、駆動用モータを直ちに設定流量に対応する回転数にせず、勾配を持って回転数を上昇させ、送液ポンプ始動時に急激な圧力ショックが発生するのを低減する技術が提案されている(特許文献1)。
【0005】
又、液体クロマトグラフィーにおいて、分離カラムに至る流路に流路切り替えバルブを接続し、複数の種類の分離カラムを切り替えつつ最適な分析条件を探索する場合に、分離カラムの切り替え時に分離カラムに加わるダメージを低減する技術として、分離カラムの切り替え時に送液ポンプの流量を低くし、その後低い流量から目的流量に向かって階段状に増加させる液体クロマトグラフの制御方法が提案されている(特許文献2)。
【0006】
又、送液ポンプが送液する送液対象物としては、液体クロマトグラフィーにおける充填剤が充填された分離カラムの他、送液ポンプにとって背圧になり得る装置である、充填層がモノリス体で形成された分離カラム、抵抗管、フィルター、ノズル、注入装置、反応装置、混合装置等が含まれている。
【0007】
又、送液ポンプが送液する送液対象物としては、送液ポンプの下流の流路上に設置されて使用される、送液ポンプにとって背圧抵抗になり得る装置が含まれる。液体クロマトグラフィー及び超臨界流体クロマトグラフィーにおいては充填剤が充填された分離カラムの他、充填層がモノリス体で形成された分離カラム、充填剤が充填された又は充填層がモノリス体で形成されたトラップカラム、充填剤が充填された又は充填層がモノリス体で形成されたガードカラム、充填剤が充填された又は充填層がモノリス体で形成された反応カラム、フィルター、流路切り替え用や試料注入用等のバルブ、検出器セル、抵抗管、可変抵抗、流路配管、ダンパー、質量分析計用のスプレイヤー等が送液ポンプにとって背圧抵抗になり得る装置、即ち送液対象物として挙げられる。
【0008】
例えば送液ポンプの下流の流路上に試料注入バルブ、充填剤が充填されたガードカラム、充填剤が充填された分離カラム、検出器セルの順番で装置が接続された場合、これらの装置は全て送液ポンプにとっての背圧抵抗であるが、これらの装置の中では相対的に細く長い流路を持ち、抵抗の高い分離カラム、その上流にあるガードカラム及び試料注入バルブは、送液ポンプの送液開始時には、検出器セルよりも高い圧力ショックを受ける。又、分離カラムにおいては、分離カラム入口側の充填層の方が、分離カラム出口側の充填層よりも高い圧力ショックを受ける。
【0009】
又、液体クロマトグラフィー及び超臨界流体クロマトグラフィー以外でも、様々な目的で送液ポンプの下流の流路上に設置されて使用され、送液ポンプにとっての背圧抵抗になり得る装置としての送液対象物としては、フィルター、流路切り替え用や試料注入用等のバルブ、充填剤が充填された又は充填層がモノリス体で形成された反応カラム、検出器セル、抵抗管、可変抵抗、流路配管、ダンパー、ノズル、注入装置、反応装置、混合装置等が含まれ、送液ポンプの送液開始時には、圧力ショックを受けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平3-94157号公報
【文献】特許第6331484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、特許文献1及び特許文献2に開示された技術は、送液対象物としての分離カラムへの送液開始時の送液方法であり、分離カラムへの送液開始によって分離カラムにかかる圧力ショックを低減するための技術であった。
【0012】
又、特許文献1及び特許文献2を含め、液体クロマトグラフを用いた分析や分取における従来の運転方法では、送液ポンプの送液を開始し、分析や分取等の目的に対応した移動相(溶離液)の処理時の流量を分離カラムに流し、分離カラムを平衡化し、その後分析や分取を行っていた。そして、分析や分取を終えた後、必要に応じて分離カラムを洗浄し、その後送液ポンプを停止して、分離カラムへの送液を停止していたが、特許文献1及び特許文献2を含め、送液ポンプの停止は時間をかけずに瞬時に行われ、分離カラムへの移動相の送液は、時間をかけずに停止し、送液量は直ちに処理時の流量からゼロにしていた。
【0013】
しかし、送液ポンプの停止による分離カラムへの送液終了時/処理終了時に、分離カラムへの移動相の流量が処理時の流量から急激にゼロになることにより、分離カラム内の充填層が高い圧力から低い圧力への急激な圧力の変化にさらされ、分離カラム内で充填剤の充填構造の崩れが起こり、分離カラムの分離性能を落としてしまうことがあった。
【0014】
又、特許文献1及び特許文献2に開示された技術は、送液対象物としての分離カラムへの送液開始時に移動相の送液量を処理時の流量まで増加させる際に、特許文献1に記載の技術では、明細書の作用の記載及び図7等からも明らかなように、モータの回転数は直線的上昇、即ち一定の増加率で増加し、分離カラムへの送液量も一定の増加率で増加する技術であり、特許文献2に記載の技術では、請求項1、明細書の段落0022及び図9からも明らかなように、分離カラムへの送液量は階段状に増加する技術であった。
【0015】
このような、分離カラムへの送液開始時の送液量の増加方法によれば、従来のように、送液をしていない状態から直ちに処理時の流量を送液する方法に比べて、分離カラムにかかる圧力ショックを低減することによる分離カラムの分離性能の低下を抑制することが可能となったが、分離カラムの分離性能の低下の抑制は充分ではなかった。
【0016】
又、充填剤が充填された分離カラム以外の送液対象物の破損の防止や性能低下の抑制については、特に考慮されないことが殆どであった。
【0017】
そこで、本発明は、液体クロマトグラフィーに用いられる、内部に充填剤が詰められた分離カラムに送液するための液体クロマトグラフ用送液ポンプをはじめ、送液ポンプの吐出側出口と配管で接続され、送液ポンプの下流の流路上に設置されて使用される送液対象物に送液するための送液ポンプの送液による、送液対象物のダメージや性能の低下を抑制することを目的の一つとする。又、送液を終了又は送液する量を減少させる時に、送液対象物にかかる急激な圧力の変化を低減し、送液対象物のダメージを抑制することを目的の一つとする。又、送液を開始又は流量を増加させる時に、送液対象物にかかる圧力による送液対象物のダメージや性能の低下をより抑制することを目的の一つとする。又、分離カラムへの送液時に、分離カラム内における充填剤の充填状態の変化を抑制し、分離カラムの分離性能の低下を抑制することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するための手段としての本発明は、送液対象物への送液ポンプによる送液において、流量を減少させる時に、所定の時間をかけて、流量を減少させる送液装置である。
【0019】
又、送液対象物への送液ポンプによる送液において、処理時の流量から流量を減少させて処理終了後の流量にする処理終了時に、所定の時間をかけて、流量を減少させる送液装置である。
【0020】
又、上記送液装置において、前記処理終了時のうち少なくとも一部の時間における流量の減少は、減少率が一定である送液装置である。
【0021】
又、上記送液装置において、前記処理終了時における流量の減少は、減少率が変化する送液装置である。
【0022】
又、上記送液装置において、前記処理終了時のうち少なくとも一部の時間における流量の減少は、減少率が連続的に変化する送液装置である。
【0023】
又、上記送液装置において、前記減少率は、前記処理終了時の後半に比べて前記処理終了時の前半に小さい送液装置である。
【0024】
又、上記送液装置において、前記減少率は、前記処理終了時の前半に比べて前記処理終了時の後半に小さい送液装置である。
【0025】
又、上記送液装置において、前記処理終了時の前半において、前記処理終了時の開始時からの時間が短い程、前記減少率が小さい送液装置である。
【0026】
又、上記送液装置において、前記処理終了時の後半において、処理終了後までの時間が短い程、前記減少率が小さい送液装置である。
【0027】
又、上記送液装置において、前記処理終了時の時間が1秒以上である送液装置である。
【0028】
又、上記送液装置において、前記処理時の流量が0.05mL/min~1000mL/minである送液装置である。
【0029】
更に、送液対象物への送液ポンプによる送液において、流量を増加させる時に、所定の時間をかけて、流量を増加させ、少なくとも一部の時間における流量の増加は、増加率が連続的に変化する送液装置である。
【0030】
又、送液対象物への送液ポンプによる送液において、処理準備前の流量から流量を増加させて処理時の流量にする処理準備時に、所定の時間をかけて、流量を増加させ、前記処理準備時のうち少なくとも一部の時間における流量の増加は、増加率が連続的に変化する送液装置である。
【0031】
又、上記送液装置において、前記処理準備時の前半において、前記処理準備時の開始時からの時間が短い程、前記増加率が小さい送液装置である。
【0032】
又、上記送液装置において、前記処理準備時の後半において、前記処理時までの時間が短い程、前記増加率が小さい送液装置である。
【0033】
又、上記送液装置において、前記処理準備時の時間が1秒以上である送液装置である。
【0034】
又、上記送液装置において、前記処理時の流量が0.05mL/min~1000mL/minである送液装置である。
【0035】
更に、上記送液装置において、送液対象物への送液ポンプによる送液において、流量を減少させる時に、所定の時間をかけて、流量を減少させ、送液対象物への送液ポンプによる送液において、流量を増加させる時に、所定の時間をかけて、流量を増加させ、少なくとも一部の時間における流量の増加は、増加率が連続的に変化する送液装置である。
【0036】
又、上記送液装置において、流量の増加又は/及び減少を、予め設定された流量の変化又は/及び前記送液ポンプと前記送液対象物間に設置された圧力センサにより測定された圧力の変化に基づいて制御する送液装置である。
【0037】
又、上記送液装置を備える液体クロマトグラフである。
【0038】
又、上記送液装置を備える超臨界流体クロマトグラフである。
【0039】
更に、送液対象物への送液ポンプによる送液において、流量を減少させる時に、所定の時間をかけて、流量を減少させる送液方法である。
【0040】
又、送液対象物への送液ポンプによる送液において、処理時の流量から流量を減少させて処理終了後の流量にする処理終了時に、所定の時間をかけて、流量を減少させる送液方法である。
【0041】
又、上記送液方法において、前記処理終了時のうち少なくとも一部の時間における流量の減少は、減少率を一定とする送液方法である。
【0042】
又、上記送液方法において、前記処理終了時における流量の減少は、減少率を変化させる送液方法である。
【0043】
又、上記送液方法において、前記処理終了時のうち少なくとも一部の時間における流量の減少は、減少率を連続的に変化させる送液方法である。
【0044】
又、上記送液方法において、前記減少率を、前記処理終了時の後半に比べて前記処理終了時の前半に小さくする送液方法である。
【0045】
又、上記送液方法において、前記減少率を、前記処理終了時の前半に比べて前記処理終了時の後半に小さくする送液方法である。
【0046】
又、上記送液方法において、前記処理終了時の前半において、前記処理終了時の開始時からの時間が短い程、前記減少率を小さくする送液方法である。
【0047】
又、上記送液方法において、前記処理終了時の後半において、処理終了後までの時間が短い程、前記減少率を小さくする送液方法である。
【0048】
又、上記送液方法において、前記処理終了時の時間が1秒以上である送液方法である。
【0049】
又、上記送液方法において、前記処理時の流量が0.05mL/min~1000mL/minである送液方法である。
【0050】
更に、送液対象物への送液ポンプによる送液において、流量を増加させる時に、所定の時間をかけて、流量を増加させ、少なくとも一部の時間における流量の増加は、増加率を連続的に変化させることを特徴とする送液方法である。
【0051】
又、送液対象物への送液ポンプによる送液において、処理準備前の流量から流量を増加させて処理時の流量にする処理準備時に、所定の時間をかけて、流量を増加させ、前記処理準備時のうち少なくとも一部の時間における流量の増加は、増加率を連続的に変化させることを特徴とする送液方法である。
【0052】
又、上記送液方法において、前記処理準備時の前半において、前記処理準備時の開始時からの時間が短い程、前記増加率を小さくする送液方法である。
【0053】
又、上記送液方法において、前記処理準備時の後半において、前記処理時までの時間が短い程、前記増加率を小さくする送液方法である。
【0054】
又、上記送液方法において、前記処理準備時の時間が1秒以上である送液方法である。
【0055】
又、上記送液方法において、前記処理時の流量が0.05mL/min~1000mL/minである送液方法である。
【0056】
更に、送液対象物への送液ポンプによる送液において、流量を減少させる時に、所定の時間をかけて、流量を減少させ、送液対象物への送液ポンプによる送液において、流量を増加させる時に、所定の時間をかけて、流量を増加させ、少なくとも一部の時間における流量の増加は、増加率を連続的に変化させる送液方法である。
【0057】
又、上記送液方法において、流量の増加又は/及び減少を、目的とする時間毎の流量又は/及び目的とする時間毎の圧力に基づいて制御する送液方法である。
【発明の効果】
【0058】
以上のような本発明によれば、液体クロマトグラフィーに用いられる、内部に充填剤が詰められた分離カラムに送液するための液体クロマトグラフ用送液ポンプをはじめ、送液ポンプの吐出側出口と配管で接続され、送液ポンプの下流の流路上に設置されて使用される送液対象物に送液するための送液ポンプの送液による、送液対象物のダメージや性能の低下を抑制することが可能となった。又、送液を終了又は送液する量を減少させる時に、送液対象物にかかる急激な圧力の変化を低減し、送液対象物のダメージを抑制することが可能となった。又、送液を開始又は流量を増加させる時に、送液対象物にかかる圧力による送液対象物のダメージや性能の低下をより抑制することが可能となった。又、分離カラムへの送液時に、分離カラム内における充填剤の充填状態の変化を抑制し、分離カラムの分離性能の低下を抑制することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】本発明液体クロマトグラフの一実施例概略図
図2】本発明液体クロマトグラフの他実施例概略図
図3】本発明送液装置の一実施例機能的概略構成ブロック図
図4】タイムテーブルの一実施例
図5】液体クロマトグラフ制御装置の一実施例機能的概略構成ブロック図
図6】本発明超臨界流体クロマトグラフの一実施例概略図
図7】(a)本発明の送液方法の概念図と(b)その方法を用いた分析結果のクロマトグラム
図8】本発明の送液方法の概念図
図9】(a)比較例の送液方法の概念図と(b)その方法を用いた分析結果のクロマトグラム
図10】(a)比較例の送液方法の概念図と(b)その方法を用いた分析結果のクロマトグラム
図11】比較例の送液方法の概念図
図12】本発明の送液方法の概念図
図13】(a)本発明の送液方法の概念図と(b)その方法を用いた分析結果のクロマトグラム
図14】本発明の送液方法の概念図
図15】本発明の送液方法の概念図
図16】本発明の送液方法の概念図
図17】(a)本発明の送液方法の概念図と(b)その方法を用いた分析結果のクロマトグラム
図18】本発明の送液方法の概念図
図19】(a)本発明の送液方法の概念図と(b)その方法を用いた分析結果のクロマトグラム
図20】本発明の送液方法の概念図
図21】本発明の送液方法の概念図
図22】本発明の送液方法の概念図
図23】本発明の送液方法の概念図
図24】本発明の送液方法の概念図
図25】比較例の送液方法の概念図
図26】本発明の送液方法の概念図
図27】比較例の送液方法の概念図
図28】本発明の送液方法の概念図
図29】比較例の送液方法の概念図
図30】本発明の送液方法の概念図
図31】本発明の送液方法の概念図
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明は、送液対象物への送液ポンプによる送液を減少させて処理終了後の流量にする際に、所定の時間をかけて、処理時の流量から処理終了後の流量まで流量を減少させる送液装置及び送液方法であり、又、送液対象物への送液ポンプによる送液を増加させて処理時の流量にする際に、所定の時間をかけて、処理準備前の流量から処理時の流量まで流量を増加させ、流量の増加は、前記所定の時間のうち少なくとも一部の時間は、増加率が連続的に変化する送液装置及び送液方法である。
【0061】
送液ポンプが送液する送液対象物としては、液体クロマトグラフィーにおける充填剤が充填された分離カラムの他、送液ポンプの下流の流路上に設置されて使用され、送液ポンプにとって背圧抵抗になり得る装置が含まれる。具体的には、これらに限定されないが、液体クロマトグラフィーにおいては充填層がモノリス体で形成された分離カラム、充填剤が充填された又は充填層がモノリス体で形成されたトラップカラム、充填剤が充填された又は充填層がモノリス体で形成されたガードカラム、充填剤が充填された又は充填層がモノリス体で形成された反応カラム、フィルター、流路切り替え用や試料注入用等のバルブ、検出器セル、抵抗管、可変抵抗、流路配管、ダンパー、質量分析計用のスプレイヤー等が含まれる。
【0062】
又、送液対象物としては、超臨界流体クロマトグラフィーにおいては充填剤が充填された又は充填層がモノリス体で形成された分離カラム、充填剤が充填された又は充填層がモノリス体で形成されたトラップカラム、充填剤が充填された又は充填層がモノリス体で形成されたガードカラム、充填剤が充填された又は充填層がモノリス体で形成された反応カラム、フィルター、流路切り替え用や試料注入用等のバルブ、検出器セル、抵抗管、可変抵抗、流路配管、ダンパー、質量分析計用のスプレイヤー等が含まれる。
【0063】
又、液体クロマトグラフィー及び超臨界流体クロマトグラフィー以外においても、様々な目的で送液ポンプの下流の流路上に設置されて使用され、送液ポンプにとっての背圧抵抗になり得る送液対象物があり、これらに限定されないが、フィルター、流路切り替え用や試料注入用等のバルブ、充填剤が充填された又は充填層がモノリス体で形成された反応カラム、検出器セル、抵抗管、可変抵抗、流路配管、ダンパー、ノズル、注入装置、反応装置、混合装置等が含まれる。
【0064】
尚、送液対象物として、一種類の装置が単体で設置されていてもよいし、一種類の装置が複数設置されていてもよい。又、複数種類の装置が組み合わせられて設置されていてもよい。送液対象物として、複数或いは複数種類の装置が設置されている場合は、同じ流路上に直列に設置されていてもよいし、分岐した流路上に並列に設置されていてもよい。又、送液対象物の材質は特に限定されず、シリカゲル、ポリマー、ステンレス、チタン、アルミニウム等の様々な材料で構成される又はこれらの材料を適宜組み合わせて構成される送液対象物が含まれる。
【0065】
送液ポンプが送液する流量の減少、増加等の制御のための送液ポンプの制御は、流量制御で行うこととしてもよいし、圧力制御で行うこととしてもよい。又、圧力制御で送液ポンプの制御を行う場合、送液ポンプ出口の圧力センサで検出される圧力を所定の値に維持するために送液ポンプの流量を変化させることが出来る。即ち、所定の圧力に対応した流量に制御を行うことが出来る。更に、送液ポンプの制御は、流量制御と圧力制御を組み合わせて行うこととしてもよい。
【0066】
以下、液体クロマトグラフィーにおける充填剤が充填された分離カラムを、送液対象物の例として説明する。尚、充填剤は特に限定されず、液体クロマトグラフィーに用いることが出来る充填剤を使用することが出来る。
【0067】
送液ポンプが所定の目的をもって流路に移動相を供給するための工程は、工程順に処理準備前、処理準備時、処理時、処理終了時、処理終了後を含んで構成することが出来る。尚、それぞれの工程において送液ポンプから送液される単位時間あたりの流量を、処理準備前の流量、処理準備時の流量、処理時の流量、処理終了時の流量、処理終了後の流量という。
【0068】
液体クロマトグラフィーにおいては、これらの流量の制御のための送液ポンプの制御は、圧力制御で行うこともあるが、主に流量制御で行われている。又、送液ポンプの制御は、流量制御と圧力制御を組み合わせて行うこととしてもよい。この場合、送液ポンプ出口の圧力センサで検出される圧力を所定の値に維持するために送液ポンプの流量を変化させることが出来る。
【0069】
処理時は、試料中の成分の分析、分取等のための分離カラムによる分離、分離カラムの洗浄、分離カラムの平衡化等、送液ポンプによる送液の目的のための処理が送液対象物において行われている工程である。即ち、送液ポンプが送液対象物に送液をする目的のための作動や作用を、送液ポンプによる送液を受けることで送液対象物が行っている時を処理時という。処理時は、分析や分取等の、送液ポンプによる送液の目的により、処理準備時と処理終了時の間で1回のみならず複数回設定されることがある。
【0070】
又、処理時の流量は、処理の目的に対応して予め決定されている。処理時の流量は、一定流量の場合もあるが、所定の変化をする流量の場合もある。流量が変化する場合には、処理の目的に対応して意図的に流量を変化させる場合や、送液ポンプの制御を、流量制御の他に圧力制御で行う場合、所定の圧力範囲内に維持するために流量を変化させる場合等がある。
【0071】
処理準備前は、処理時に向けた待機状態の工程である。処理準備前の流量は、送液ポンプによる送液を完全に停止して0mL/minにしてもよいが、例えばこれには限定されないが、ウォームアップ等のために、送液ポンプによる送液を完全に停止せずに処理時の流量未満の所定の流量で送液を行うこととしてもよい。又、処理準備前の流量は、一定でもよいし変化させてもよい。
【0072】
処理準備時は、処理準備前の流量から処理時の流量へ流量を増加させる工程である。処理準備時は、0mL/minの他、処理時の流量未満の所定の流量から流量を増加させて処理時の流量に達するまでの時間が含まれる。
【0073】
処理終了時は、処理時の流量から処理終了後の流量へ減少させる工程である。処理終了時は、処理時の流量から流量を減少させて0mL/minの他、処理時の流量未満の所定の流量とするまでの時間が含まれる。
【0074】
処理終了後は、処理時を終了させた後の待機状態の工程である。この工程は次に処理準備前の工程に続く場合と送液ポンプが停止して移動相を供給する工程が終了する場合がある。処理終了後の流量は、送液ポンプによる送液を完全に停止して0mL/minにしてもよいが、例えばこれには限定されないが、ウォームアップ等のために、送液ポンプによる送液を完全には停止せずに処理時の流量未満の所定の流量で送液を行うこととしてもよい。又、処理終了後の流量は、一定でもよいし変化させてもよい。尚、処理準備前の流量と処理終了後の流量は、同じ流量としてもよく、異なる流量としてもよい。
【0075】
又、処理時から処理終了時へ移行する時点は、分離等の処理が終了した時のみならず、任意に送液ポンプによる送液を停止又は減少させ始める時や、送液ポンプ、送液装置或いは液体クロマトグラフィー装置等のエラーや故障により送液ポンプによる送液が停止又は減少し始める時も含まれる。
【0076】
本発明の液体クロマトグラフは、分析用液体クロマトグラフ(流量5mL/min未満で使用される液体クロマトグラフ)及び分取用液体クロマトグラフ(流量5mL/min以上で使用される液体クロマトグラフ)を含む。又、低圧液体クロマトグラフ或いは中圧液体クロマトグラフ(0.5~3.0MPa付近の圧力下で実行される液体クロマトグラフ)及び高性能液体クロマトグラフ(高速液体クロマトグラフ又はHPLCとも言う。最大40MPaの圧力下で実行される液体クロマトグラフ)及び超高性能液体クロマトグラフ(超高速液体クロマトグラフ又はUHPLCとも言う。40MPaより大きく200MPaまでの圧力下で実行される液体クロマトグラフ)を含む。
【0077】
本発明の液体クロマトグラフ1は、図1及び図2に示すように、移動相容器17内の移動相171を、流量を制御して送液対象物である分離カラム2を含む流路61に供給する送液ポンプ51と、試料注入用流路切り替えバルブ31及びサンプルループ32を備え、所定量の試料を適時に流路に供給する試料注入装置30と、試料を成分毎に分離する、送液対象物としての分離カラム2と、分離カラム2で分離された試料成分を検出する、検出器セル91を備えた検出器9と、これらを接続する配管6と、送液ポンプ51の動作を制御する送液ポンプ制御装置52と、液体クロマトグラフを制御する液体クロマトグラフ制御装置10とを備えて構成されている。
【0078】
送液対象物には分離機構、分離装置が含まれ、一具体例として分離カラム2がある。分離カラム2は、内部空間に粒状の充填剤が詰められて構成された充填層を備えた分離カラムである。
【0079】
又、液体クロマトグラフ1は送液装置5を備えて構成されている。本発明の送液装置5は、移動相容器17内の移動相171を流路61及び分離カラム2に送液して供給するための送液ポンプ51と、送液ポンプ51の動作を制御する送液ポンプ制御装置52を備えて構成されている。
【0080】
送液ポンプ制御装置52は、送液ポンプ51の動作を制御して、流路61及び分離カラム2に供給される移動相171の流量を制御するための装置である。送液ポンプ制御装置52はコンピュータで構成することが出来る。送液ポンプ制御装置52は、図3に示すように、CPUを備えて構成される制御部80、コンピュータプログラムやタイムテーブル等の各種データを記憶する、ROM、RAM又はメモリ等で構成される記憶装置82、液体クロマトグラフ制御装置10や送液ポンプ51と有線又は無線通信するための通信インターフェイス83を備えて構成されている。又、送液ポンプ制御装置52は、操作パネル等で構成される入力装置521、ディスプレイ等で構成される表示装置522を備えている。入力装置521は各種設定、情報や指示の入力を行うための装置であり、表示装置522は、入力装置521で入力された数値等の情報や各種設定を行うための画面を表示するための装置である。
【0081】
又、送液ポンプ制御装置52は流量制御部85を備えている。流量制御部85は、送液ポンプ51の動作を制御して、分離カラム2を含む流路61に供給される移動相171の流量を制御する。流量制御部85は、記憶装置82に格納された、流路に供給される移動相171の流量を制御する流量制御用プログラムが制御部80のCPUの制御のもとに実行されることにより構成される。
【0082】
このように、送液ポンプ51の制御は、送液ポンプ制御装置52から、タイムテーブルに入力され、予め設定された、目的とする時間毎の流量を送液ポンプ51に送信し、指示して行う流量制御で行うことが出来る。又、送液ポンプ51の制御は、送液ポンプ制御装置52から、タイムテーブルに入力された流量を送液ポンプ51に指示すると共に、送液ポンプ51に設けた圧力センサ57により、送液ポンプ51出口側の圧力を測定し、その測定結果が送液ポンプ制御装置52に送信され、流量制御部85が、予め設定された所定の圧力範囲内かを判定し、予め設定された所定の圧力範囲内ではない場合に、予め設定された所定の圧力範囲内に維持するために、送液する流量の増減を送液ポンプ51に送信し、指示して送液ポンプ51の流量を制御する方法も採用することが出来る。
【0083】
液体クロマトグラフ1は、図1及び図2に示すように、1台の送液ポンプ51と1個の移動相容器17が1つの流路61に接続されて構成されている。尚、送液装置5の送液ポンプの設置台数は特に限定されず、1つの流路61に複数台の送液ポンプと複数個の移動相容器が接続された構成や、1つの流路61に1台の送液ポンプと複数個の移動相容器が接続された構成としてもよい。尚、1種類の移動相を送液する送液ポンプ複数台を1つの流路に接続して使用する高圧グラジエント方式の送液ポンプや、複数の移動相を送液する送液ポンプ1台を1つの流路につないで使用する低圧グラジエント方式の送液ポンプも使用することが出来る。複数台の送液ポンプを設置する場合、夫々の送液ポンプ毎に送液ポンプ制御装置52を設置する構成としてもよく、1台の送液ポンプ制御装置52により全ての送液ポンプを制御する構成としてもよい。
【0084】
送液ポンプ51が流路61に移動相171を供給する時の流量、即ち、処理準備時の流量、処理時の流量、処理終了時の流量或いは更に処理準備前の流量及び処理終了後の流量は、予め記憶装置82に記憶されたタイムテーブルを用いて制御することが出来る。タイムテーブルは記憶装置82に記憶されたプログラムに組み込んでもよいが、プログラムとは別個のファイルとして記憶させてもよい。送液ポンプ制御装置52の流量制御部85は、記憶装置82に記憶されるタイムテーブルを抽出し、参照して、送液ポンプ51に、タイムテーブルに設定された時間毎の流量を流路61及び分離カラム2に送液するように指示する。
【0085】
タイムテーブルは、分離カラム2及び流路61に送液ポンプから供給する移動相171の流量を時間毎に設定したものであり、処理準備時、処理時、処理終了時或いは更に処理準備前及び処理終了後における時間毎の予め目的とする流量が設定され、記録されて構成されている。このタイムテーブルは、送液の目的、処理対象の試料、分離カラムのサイズ等に応じて予め所定の数値に設定が可能である。
【0086】
又、タイムテーブルには、予め目的とする時間毎の流量が入力されて構成されていてもよいが、タイムテーブルには読み取られた直前の流量が入力されて構成されていてもよい。更に、タイムテーブルの該当工程時の先頭又は/及び最後の流量値が入力されていると共に、時間毎の値を0%から100%とするような、時間毎の流量の相対値が入力されて構成されていてもよい。この場合、タイムテーブルの該当工程時の先頭の流量値は予め入力されていてもよいが、直前の工程の直前の流量値が流量制御部85により入力されてもよい。又、タイムテーブルの該当工程時の最後の値は予め入力されていてもよいが、直後の工程の予め設定された最初の流量値が流量制御部85により入力されてもよい。
【0087】
又、夫々に時間毎の流量の設定値が異なる複数種のタイムテーブルを予め記憶装置82に記憶させ、当該複数のタイムテーブルから操作者が入力装置521又は入力装置71を介して選択する方法や操作者がタイムテーブルの時間や流量等の項目を入力装置521又は入力装置71を介して自由に設定する方法を採用することが出来る。選択する方法の場合には、出力装置522又は出力装置72に、時間及び流量の選択肢を表示させて操作者に選択を要求する。選択肢の表示方法として、タイムテーブルの表から選択させ、或いは、流量の時間当たりの変化を示すグラフから選択させることが出来る。この場合、処理準備前、処理準備時、処理時、処理終了時及び処理終了後を一括して表示し選択させてもよく、処理準備前、処理準備時、処理時、処理終了時及び処理終了後を分けて表示し選択させてもよい。又、自由に設定する方法の場合には、処理準備時、処理時及び処理終了時の時間及びその時間毎の流量等の入力欄を表示させ操作者に入力を要求する画面を表示させることとしてもよい。このように、タイムテーブルの設定により、処理終了時や処理準備時の流量の制御において、様々な制御が可能となる。
【0088】
図4(a)に示すタイムテーブル77は、処理終了時に参照されるタイムテーブルの一例を部分的に示したものである。尚、このタイムテーブルに従うと、処理終了時の流量の減少率が一定となる。又、処理準備時、処理時、処理終了時に参照されるタイムテーブルには、送液ポンプから流路61に供給する移動相171の流量の時間毎の相対値及び当該テーブルが参照される直前の流量と、当該テーブルを参照して到達を目指す流量を設定、記録することとしても良い。図4(b)に示すタイムテーブル78には、処理終了時に参照されるタイムテーブルの一例を部分的に示している。
【0089】
又、送液ポンプ51の制御は、タイムテーブルに替えて又はタイムテーブルと共に関数を用いて行うことも出来る。関数は、1次関数、多次元関数、伝達関数、ベジェ曲線等の関数、これらを組み合わせた関数を用いることが出来る。これらの関数は、分離カラム2及び流路61に送液ポンプから供給する移動相171の流量を時間毎に算出可能に設定された式であり、処理準備時、処理時、処理終了時或いは更に処理準備前及び処理終了後における時間毎の予め目的とする流量を算出することが出来る。この関数は、送液の目的、処理対象の試料、分離カラムのサイズ等に応じて設定が可能である。又、これらの関数は、式として予め記憶装置82に記憶させ、操作者が入力装置521又は入力装置71を介して選択する方法や自由に設定する方法を採用することが出来る。送液ポンプ制御装置52の流量制御部85は、記憶装置82に記憶される関数式を抽出し、計算して、算出した時間毎の流量を流路61及び分離カラム2に送液するように指示する。このように、関数の設定により、処理終了時や処理準備時の流量の制御において、様々な制御が可能となる。
【0090】
処理準備時には、送液ポンプ制御装置52に制御された送液ポンプ51により、分離カラム2に、処理準備前の流量、即ち0mL/min又は処理時の流量未満の所定の流量から処理時の流量に所定の時間をかけて、即ち0秒より多くの時間をかけて徐々に増加させて移動相171を供給し、処理時の流量に達した後は、分析や分取等の送液目的に対応した処理時の流量、即ち一定の流量又は所定の変化流量を所定の時間送液させて移動相171を供給し、処理終了時には、処理時の流量から処理終了後の流量に所定の時間をかけて、即ち0秒より多くの時間をかけて徐々に減少させて移動相171を供給し、処理終了後の流量、即ち0mL/min又は処理時の流量未満の所定の流量にする。
【0091】
処理時の流量から流量を減少させる処理終了時の時間は、0秒でなければ特に限定されないが、送液対象物にかかる急激な圧力の変化を抑制するためには1秒以上が好ましく、より好ましくは2秒以上である。又、処理終了時の時間が長ければ長いほど送液対象物にかかる急激な圧力の変化を抑制することが出来るので、処理終了時の時間は30分以上でも1時間以上でもよいが、時短の要請がある場合には10秒以下が好ましい。
【0092】
処理終了時の単位時間当たりの流量の減少量、即ち減少率は一定としてもよく、変化させてもよい。減少率を変化させる場合には、異なる数値の複数の、一定の減少率が組み合わさったものとしてもよく、減少率が連続的に変化するものとしてもよく、減少率が連続的に変化するものと一定の減少率が組み合わさったものとしてもよい。減少率が連続的に変化するものには、減少率が処理終了時の前半において大きく処理終了時の後半において小さい場合や、減少率が処理終了時の前半において小さく処理終了時の後半において大きい場合が含まれる。又、処理終了時又はその前半において、処理終了時の開始時からの時間が短い程、減少率を小さくしてもよく、処理終了時又はその後半において、処理終了後までの時間が短い程、減少率を小さくしてもよい。これらの場合、減少率が連続的に変化してよいが、所定の間隔で変化してもよい。
【0093】
処理準備前の流量から流量を増加させて処理時の流量に達するまでの時間である処理準備時の時間は特に限定されないが、送液対象物にかかる急激な圧力の変化を抑制するためには1秒以上が好ましく、より好ましくは3秒以上である。又、処理準備時の時間が長ければ長いほど送液対象物にかかる急激な圧力の変化を抑制することが出来るので、処理準備時の時間は30分以上でも1時間以上でもよいが、分析等のための処理サイクルの時短の要請がある場合には10秒以下が好ましい。
【0094】
処理準備時の単位時間当たりの流量の増加量、即ち増加率は連続的に変化させることが出来る。増加率が連続的に変化する時間は処理準備時の全部の時間としてもよく、一部の時間としてもよい。増加率が連続的に変化する時間が処理準備時の全部の時間の場合、増加率が連続的に変化する変化率は同じでもよいが、途中で変化してもよい。
【0095】
又、増加率が連続的に変化する時間が処理準備時の一部の時間の場合、増加率が連続的に変化するのは、処理準備時のどこの時間でもよい。増加率が連続的に変化するものには、増加率が処理準備時の前半において大きく処理準備時の後半において小さい場合や、増加率が処理準備時の前半において小さく処理準備時の後半において大きい場合が含まれる。又、処理準備時において、増加率が連続的に変化するものと一定の増加率のものを組み合わせてもよい。又、処理準備時又はその前半において、処理準備時の開始時からの時間が短い程、増加率を小さくしてもよく、処理準備時又はその後半において、処理時までの時間が短い程、減少率を小さくしてもよい。
【0096】
尚、処理終了時に処理時の流量から所定の時間をかけて処理終了後の流量まで徐々に減少させる場合、処理準備時は、処理準備前の流量から所定の時間をかけて徐々に処理時の流量まで増加させることが好ましく、更には増加率が連続的に変化する時間がある場合がより好ましいが、時間をかけずに処理時の流量まで増加させること、言い換えれば、処理準備前の流量から直ちに処理時の流量を送液すること、処理準備前の流量が0mL/minの場合は、処理時の流量で送液を開始すること、即ち処理準備時の時間は0秒とすることも可能である。
【0097】
又、処理準備時の少なくとも一部の時間において、流量を所定の時間をかけて徐々に増加させ、増加率が連続的に変化する時間がある場合、処理終了時の流量は、処理時の流量から所定の時間をかけて徐々に処理終了後の流量まで減少させることが好ましいが、時間をかけずに処理時の流量から処理終了後の流量まで減少させること、言い換えれば、処理時の流量から直ちに処理終了後の流量にすること、処理終了後の流量が0mL/minの場合は、送液を停止すること、即ち処理終了時の時間は0秒とすることも可能である。
【0098】
処理終了時及び処理準備時の流量の制御において、流量の変化がない時間を挿入することは、本発明の効果が損なわれない範囲で挿入することは可能である。このような流量の変化は、例えばこれに限定されないが、階段状に減少又は増加する変化が挙げられる。
【0099】
又、処理終了時の流量の制御において流量が増加する時間を挿入すること、処理準備時の流量の制御において流量が減少する時間を挿入することは、本発明の効果が損なわれない範囲で挿入することは可能である。
【0100】
分離等の処理が正常に終了し、タイムテーブルどおりに処理時から処理終了時へ正常に移行する時ではなく、任意に送液ポンプによる送液を停止又は減少させる時や、送液ポンプ、送液装置或いは液体クロマトグラフ装置等のエラーや故障により送液ポンプが停止してしまう非常停止時の場合、送液対象物にかかる急激な圧力の変化を抑制するため、流量制御部85が、その時点で処理時から処理終了時へ移行するように送液ポンプ51の流量を制御し、所定の時間をかけて徐々に処理終了後の流量まで減少させることが好ましい。この場合、流量制御部85の制御により、その時点の流量を100%として、図4(b)に示すような相対値を記載したタイムテーブル78に従い、送液ポンプ51の流量を制御することが好ましい。
【0101】
タイムテーブルの最小時間単位と、流量制御用プログラムの解像度との関係は、タイムテーブルの最小時間単位が小さい程、流量制御用プログラムの解像度は大きくなる。そして、直線状のプログラム即ち増加率又は減少率が一定、又は、曲線状のプログラム即ち増加率又は減少率が連続的に変化する場合にも、滑らかな変化を実現することが出来る。尚、タイムテーブルの最小時間単位は特に限定されない。0.1sでもよく、0.01sより短い時間であってもよい。
【0102】
液体クロマトグラフ制御装置10は、液体クロマトグラフ1全体を制御するための装置である。液体クロマトグラフ制御装置10は、図5に示すように、CPUを備えて構成される制御部11、コンピュータプログラムや各種データを記憶する、ROM、RAM又はメモリ等で構成される記憶装置12、送液ポンプ制御装置52を含む、液体クロマトグラフ1を構成する装置との有線通信又は無線通信をするための通信インターフェイス13を備えて構成されている。又、送液ポンプ制御装置52に送液ポンプの始動開始の指示や必要な場合に各種データを送信して送液ポンプ51の動作を制御するポンプ指示部15、検出器9が出力したデータ信号を処理してクロマトグラムを作成し、記憶装置12に記憶させると共に、出力装置72に表示させるデータ処理部17を備え、これらは記憶装置12に格納されたプログラムが制御部11のCPUの制御のもとに実行されることにより構成される。液体クロマトグラフ制御装置10はコンピュータで構成することが出来る。
【0103】
又、液体クロマトグラフ制御装置10は、マウス、キーボード又はタッチパネル等で構成される入力装置71、ディスプレイやプリンタ等で構成される出力装置72と接続されている。入力装置71は各種設定、情報や指示の入力を行うための装置であり、出力装置72は、各種設定を行うための画面や分析結果のクロマトグラム等を表示し、或いはクロマトグラムをプリントするための装置である。
【0104】
尚、送液ポンプ制御装置52の記憶装置82ではなく、液体クロマトグラフ制御装置10の記憶装置12に流量制御用プログラム及びタイムテーブルを記憶させ、液体クロマトグラフ制御装置10が、送液ポンプ51の動作を直接制御する構成としてもよい。この場合、液体クロマトグラフ制御装置10は、流路61及び分離カラム2に供給される移動相171の流量を制御する、図示しない流量制御部を備え、送液ポンプ51の動作を制御することで、流路61及び分離カラム2に供給される移動相171の流量を制御する。この様な構成の場合、本発明の送液装置は、送液ポンプ51及び液体クロマトグラフ制御装置10の一部を備えて構成されることとなる。又、液体クロマトグラフ制御装置10が備える流量制御部は記憶装置12に格納された流量制御用プログラムが制御部11のCPUの制御のもとに実行されることにより構成される。
【0105】
更に、液体クロマトグラフ制御装置10が送液ポンプ制御装置52を介して送液ポンプ51の動作を制御する構成としてもよい。この場合、送液ポンプ制御装置52及び液体クロマトグラフ制御装置10が、流路61及び分離カラム2に供給される移動相171の流量を制御する。この様な構成の場合、本発明の送液装置は、送液ポンプ51、液体クロマトグラフ制御装置10の一部を備えて構成されることとなる。
【0106】
試料注入装置30は、サンプルループ32を接続して固定した試料注入用流路切り替えバルブ31を含む構成の固定ループ注入方式のオートサンプラーを用いている。尚、サンプルループを接続して固定した試料注入用流路切り替えバルブを含む構成のマニュアルインジェクター、サンプル容器から試料を吸引するためのニードルを含む流路がサンプルループとしても使用され、試料注入用流路切り替えバルブを含む構成のダイレクト注入方式もしくはダイレクトインジェクション方式のオートサンプラー、試料送液用ポンプからの流路が試料注入用流路切り替えバルブや逆止弁を介して、移動相送液用ポンプと分離カラムをつないだ流路に接続されたオートサンプラー等、移動相送液用ポンプと分離カラムをつないだ流路に、試料注入用流路切り替えバルブや逆止弁を介して試料を注入出来る試料注入装置を用いることが出来る。
【0107】
分離カラム恒温槽39は、内部に分離カラム2を収納したエアオーブンを用いるが、ウォーターバスやオイルバス等の液体を用いる恒温槽を用いることも出来る。又、金属等の固体を用いる恒温槽を用いることも出来る。エアオーブンの場合は、図1に示すように、試料注入用流路切り替えバルブ31の流路部をエアオーブン内に収納することも出来る。
【0108】
又、特に分取用液体クロマトグラフの場合は、図2に示すように、試料注入装置30の前の流路にプレヒートミキサー38を接続して、恒温槽39内に収納することが好ましい。このような構成とすることで、分離カラム2と同じ温度に恒温した移動相を分離カラム2による分離に用いることが出来、分離カラム2の中での温度分布を一定にすることが出来、分離カラム2で分離される試料中の成分のピークの形状を良くする効果がある。尚、分析用液体クロマトグラフ、分取用液体クロマトグラフのいずれにおいても、室温で分離カラム2による分離を行う場合、分離カラム恒温槽を用いない場合もある。
【0109】
検出器9は、検出器セル91を備える検出器を用いるが、質量分析計のように、検出器セル91を持たない検出器を使用することも出来る。又、検出器の種類によっては、複数の検出器を直列に接続して使用することも出来る。
【0110】
クロマトグラムの採取は、検出器9からデータ処理部17に送られた信号を、出力装置72に表示すると共に記憶装置12に記録することで行われる。試料注入用流路切り替えバルブ31が切り替わり、試料が分離カラム2と試料注入用流路切り替えバルブ31の間の配管に注入された時からクロマトグラムの採取を始め、分離カラム2で分離された試料中の成分のピークの検出を確認した後クロマトグラムの採取を終わることが出来るが、試料注入用流路切り替えバルブ31の切り替えとクロマトグラムの採取はそれぞれ独立させて行うことが出来るので、試料注入用流路切り替えバルブ31が切り替わり、試料が分離カラム2と試料注入用流路切り替えバルブ31の間の配管に注入された時からクロマトグラムの採取を始めた後、更に試料注入用流路切り替えバルブ31を複数回切り替えて試料を分離カラム2と試料注入用流路切り替えバルブ31の間の配管に注入し、複数の注入回数分の試料中の成分のピークを含むクロマトグラムの採取を行うことが出来る。又、クロマトグラムの採取を先に始めた後、試料注入用流路切り替えバルブ31を切り替えて試料を分離カラム2と試料注入用流路切り替えバルブ31の間の配管に注入し、分離カラム2で分離された試料中の成分のピークの検出を確認した後、クロマトグラムの採取を終わることが出来る。
【0111】
本発明の送液装置及び送液方法は、種々の液体クロマトグラフィーだけでなく、超臨界流体クロマトグラフィーにも適用することが出来る。本発明の送液装置を備えた超臨界流体クロマトグラフ100は、図6に示すように、モディファイアー溶媒容器70内のモディファイアー溶媒701を、流量を制御して流路を介して送液対象物である分離カラム2に供給する送液ポンプ51と、液化二酸化炭素(液化炭酸ガス)をボンベ599から流路に供給する送液ポンプ501と、試料注入用流路切り替えバルブ31及びサンプルループ32を備え、所定量の試料を適時に流路に供給する試料注入装置30と、試料を成分毎に分離する、送液対象物としての分離カラム2と、分離カラム2で分離された試料成分を検出する、検出器セル91を備えた検出器9、これらを接続する配管6と、送液ポンプ51と送液ポンプ501の動作を制御する送液ポンプ制御装置520と、超臨界流体クロマトグラフを制御する超臨界流体クロマトグラフ制御装置110とを備えて構成されている。
【0112】
試料注入装置30の前の流路に接続したプレヒートミキサー41を分離カラム恒温槽42内に収納することで、分離カラム2と同じ温度に恒温した移動相(超臨界状態の二酸化炭素とモディファイアー溶媒の混合物)を分離カラム2による分離に用いることで、分離カラム2の中での温度分布を一定にすることが出来、分離カラム2で分離される試料中の成分のピークの形状を良くする効果がある。背圧調整弁44は、二酸化炭素を超臨界状態に保つために使用する。送液ポンプ51の吐出側出口と送液ポンプ501の吐出側出口にそれぞれ設置されたストップバルブ46は、安全上の設備であり、設置されていることが望ましいが、超臨界流体クロマトグラフの運転に際し必須では無い。
【0113】
又、超臨界流体クロマトグラフ100は送液装置580を備えて構成されている。本発明の送液装置580は、モディファイアー溶媒容器70内のモディファイアー溶媒701を流路61及び分離カラム2に送液して供給するための送液ポンプ51、液化二酸化炭素をボンベ599から流路61及び分離カラム2に供給する送液ポンプ501、送液ポンプ51及び送液ポンプ501の動作を制御する送液ポンプ制御装置520を備えて構成されている。
【0114】
送液装置580が液体クロマトグラフ1の送液装置5と異なる点は、移動相容器17内の移動相171を送液するか、モディファイアー溶媒容器70内のモディファイアー溶媒701を送液するかの点及び液化二酸化炭素を流路61に供給する送液ポンプ501を備える点である。又、送液ポンプ制御装置520が液体クロマトグラフ1の送液ポンプ制御装置52と異なる点は、送液ポンプ制御装置520は送液ポンプ501の動作も制御する点である。
【0115】
送液ポンプ制御装置520は、送液ポンプ51の動作を制御して、流路61及び分離カラム2に供給されるモディファイアー溶媒701の流量を制御すると共に、送液ポンプ501の動作を制御して、流路61及び分離カラム2に供給される液化二酸化炭素の流量を制御するための装置である。超臨界流体クロマトグラフ100は、送液ポンプ制御装置520の記憶装置に送液ポンプ51の制御用の流量制御用プログラム及びタイムテーブルに加えて送液ポンプ501の制御用の流量制御用プログラム及びタイムテーブルを備えている。超臨界流体クロマトグラフ100のその他の構成は、液体クロマトグラフ1と同一の構成とすることが出来る。
【0116】
次に、液体クロマトグラフ1の分析時の処理の流れを説明するが、送液装置5による流量が制御された送液に関する処理の流れに関連する工程のみを説明し、分析時の他の公知の工程の説明は省略する。先ず、液体クロマトグラフ1の機器的な準備が完了後、液体クロマトグラフ制御装置10が起動される。そして、液体クロマトグラフ制御装置10のポンプ指示部15が、送液ポンプ制御装置52に送液ポンプの始動開始の指示を送信し、液体クロマトグラフ制御装置10からの送液ポンプ始動開始の指示を受信した送液ポンプ制御装置52は、流量制御部85が記憶装置82に記憶されるタイムテーブルを参照して、送液ポンプ51に、タイムテーブルに設定された時間毎の流量を流路61及び分離カラム2に送液するように指示する。送液ポンプ51は、送液ポンプ制御装置52の指示に従って、処理準備時の流量、処理時の流量及び処理終了時の流量の順で或いは加えて処理準備時の前に処理準備前の流量及び/又は処理終了時の後に処理終了後の流量を流路61及び分離カラム2に送液する。
【0117】
処理準備前の流量が0mL/minの場合は、送液を停止していた送液ポンプ51が作動し、処理準備時の流量を送液し、処理準備前の流量が0mL/min以外の処理時の流量未満の所定の流量の場合は、0mL/min以外の処理準備前の流量で送液していた送液ポンプ51が処理準備時の流量を送液し、続いて処理時の流量を送液する。
【0118】
処理準備時には、送液ポンプ制御装置52に制御された送液ポンプ51は、分離カラム2に、処理準備前の流量から処理時の流量に所定の時間をかけて、即ち0秒より多くの時間をかけて徐々に増加させて移動相171を供給する。処理時の流量に達した後は、分析や分取等の送液目的に対応した処理時の流量を所定の時間送液して移動相171を供給する。処理終了時には、処理時の流量から処理終了後の流量に所定の時間をかけて、即ち0秒より多くの時間をかけて徐々に減少させて移動相171を供給し、処理終了後の流量にする。尚、処理準備時に所定の時間をかけ、増加率が連続的に変化する時間がある場合には、処理終了時の時間は0秒としてもよく、又、処理終了時に所定の時間をかける場合には、処理準備時の時間は0秒としてもよい。
【0119】
又、任意に送液ポンプによる送液を停止又は減少させる時や、送液ポンプ、送液装置或いは液体クロマトグラフ装置等のエラーや故障により送液ポンプが停止してしまう非常停止時の場合、流量制御部85が、その時点で処理時から処理終了時へ移行するように送液ポンプ51の流量を制御し、所定の時間をかけて徐々に処理終了後の流量まで減少させることが好ましい。
【0120】
送液ポンプ制御装置52による送液ポンプ51の制御は、他の液体クロマトグラフ1の構成要素の制御と連動して行ってもよいが、連動せずに、独立して制御することとしてもよい。具体的には、送液ポンプ51の送液の開始、流量の変化、送液の停止の制御は、オートサンプラーや分離カラム恒温槽、検出器等の付属装置の制御と連動して行ってもよいが、連動せずに、独立して制御することとしてもよい。より具体的には、分離カラム恒温槽39内の温度が所定の温度になることにより、送液ポンプ51の送液を開始するように制御してもよいが、分離カラム恒温槽39の温度の制御とは無関係に、送液ポンプ51の送液を開始するように制御してもよい。
【0121】
送液ポンプの制御方法は、以下のようにも実施することが出来る。先ず、送液ポンプの下流の流路に圧力センサと可変抵抗を組み込み、処理時の流量で送液していた送液ポンプが送液を停止し始める或いは制御の流量を逸脱して減少し始めることに合わせて、可変抵抗による送液ポンプへの背圧を、送液ポンプの処理時の流量での送液時に圧力センサで検出されていた圧力と同じ圧力まで上げ、その後可変抵抗による送液ポンプへの背圧を緩やかに下げることにより、送液ポンプの処理終了時の流量が下がる勾配を緩やかにする方法を採用することが出来る。又、送液ポンプの下流の流路にフローセンサを組み込み、処理時の流量で送液していた送液ポンプが送液を停止し始め或いは制御の流量を逸脱して減少し始めた時、フローセンサから送液ポンプ制御装置52に信号が送られ、処理終了時の送液ポンプの流量が緩やかに下がる制御が実行される方法を採用することが出来る。又、送液ポンプの下流の流路に可変ダンパー等の適したダンパーを組み込み、送液ポンプの送液の停止時或いは制御の流量を逸脱した減少時の勾配を緩やかにする方法を採用することが出来る。
【0122】
上述の実施形態では、送液対象物への送液ポンプによる送液において、流量制御部85は、送液ポンプ51に、タイムテーブル等から得られた目的とする時間毎の流量値に基づいて送液の流量を指示することにより送液の流量を制御する流量制御を用いた構成であるが、流量制御部85が、送液ポンプ51に、目的とする時間毎の圧力値に基づいて算出された送液の流量を指示することにより送液の流量を制御する圧力制御を用いた構成とすることとしてもよい。以下、流量制御部85が、送液ポンプ51に目的とする圧力値から算出された送液の流量を指示する圧力制御を用いた場合の構成について、上述の流量制御部85が送液ポンプ51にタイムテーブル等から得られた目的とする流量値から送液の流量を指示する場合と異なる構成のみ説明する。
【0123】
以下、液体クロマトグラフィーに使用する分離カラムを作製する際に使用する、パッカー、充填剤を含むスラリー、空カラムを用いて分離カラムを作製する構成を例として説明する。尚、この場合、充填剤を含むスラリーが空カラムに充填されたものが送液対象物となる。液体クロマトグラフィー用の分離カラムを製造する際、空カラムへの充填剤の充填には送液ポンプを使用する。そして、移動相容器に移動相を入れ、送液ポンプと接続する。送液ポンプの吐出側出口には圧力センサを設置し、その下流の流路に、充填剤を含むスラリーを入れたパッカー、空カラムの順に設置する。送液ポンプは図1及び図2における送液ポンプと同様に、送液装置に含まれる。以下、図1に示す、移動相容器17内の移動相171を、流量を制御して送液対象物と流路61に供給する送液ポンプ51、送液ポンプ51に設けた圧力センサ57を備え、試料注入装置30の設置個所にパッカー、カラム2の設置個所に空カラムが設置され、検出器9、分離カラム恒温槽39及び液体クロマトグラフ制御装置10を備えない、分離カラムを作製する構成を例に説明する。
【0124】
送液ポンプ51の送液を開始すると、移動相171が流路61に送られ、パッカー内のスラリーを空カラム内に移動させ、スラリー内の充填剤は空カラム内に充填されていき、スラリー内の溶媒は空カラム出口に排出される。この際、充填剤を均一に空カラム内に充填するためには、充填中に送液対象物である充填剤を含むスラリーが空カラムに充填されたものにかかる圧力が一定であることが望ましいため、送液ポンプ51は圧力センサ57で検出される圧力が一定に保たれるように送液する。
【0125】
図3に示すように、送液ポンプ51を制御する送液ポンプ制御装置52は流量制御部85を備える。流量制御部85は、送液ポンプ51の動作を制御し、流路61に供給される移動相171の流量に対応する圧力を制御し、流路61に供給される移動相171の流量を制御する。この構成では、流量制御部85は、記憶装置82に格納された、流路61に供給される移動相171の流量に対応する圧力を制御する圧力利用流量制御用プログラムが制御部80のCPUの制御のもとに実行されることにより構成される。
【0126】
尚、処理時の圧力は、処理の目的に対応して予め決定されている。そして、処理時の流量は処理の目的に対応して予め決定されている処理時の圧力を維持するための流量でもある。
【0127】
送液ポンプ51が流路61に移動相171を供給する時の流量は、予め記憶装置82に記憶されたタイムテーブルを用いて制御することが出来る。タイムテーブルは、流路61に移動相171を供給する時に目的とする圧力を時間毎に設定、記録したタイムテーブルである。タイムテーブルには、予め目的とする時間毎の圧力が入力されていても良い。即ち、ここでのタイムテーブルは、上述の流量が入力されたタイムテーブルの流量の欄に、流量に替わって圧力センサ57で検出される圧力が入力される構成であり、その他の構成、記録、入力、使用方法等は上述のタイムテーブルと同様である。
【0128】
又、図4(c)に示すタイムテーブル79は、処理終了時に参照されるタイムテーブルの一例を部分的に示したものであり、当該テーブルを参照して到達を目指す圧力を時間毎に設定、記録されると共に、時間毎の値を0%から100%とするような、送液ポンプ51に設けた圧力センサ57で検出される圧力の相対値(%)が入力されたタイムテーブルでもよい。
【0129】
送液ポンプ制御装置52の流量制御部85は、記憶装置82に記憶されるタイムテーブルを抽出し、参照して、タイムテーブルに設定された時間毎の圧力に対応する流量を算出して、送液ポンプ51に、当該算出された流量を流路61及び分離カラム2に送液するように指示する。
【0130】
送液ポンプ51に設けた圧力センサ57により、送液ポンプ51にとっての背圧抵抗になり得る送液対象物にかかる圧力を測定し、その測定結果が送液ポンプ制御装置52に送信され、流量制御部85が、現在の圧力が予め設定された所定の圧力かを判定し、予め設定された所定の圧力ではない場合に、予め設定された所定の圧力に維持するために、送液する流量の増減を送液ポンプ51に送信し、指示して送液ポンプ51の流量を制御する。
【0131】
又、処理準備時には、送液ポンプ制御装置52に制御された送液ポンプ51により、カラムに、処理準備前の流量に対応する圧力即ち0MPa又は処理時の流量未満の所定の流量に対応する圧力から処理時の流量に対応する圧力に所定の時間をかけて、即ち0秒より多くの時間をかけて徐々に増加させることにより、流量を増加させて移動相171を供給し、処理時の流量に対応する圧力に達した後は、パッキング等の送液目的に対応した処理時の流量に対応する圧力即ち一定の圧力又は所定の変化圧力で所定の時間送液させて移動相171を供給し、処理終了時には、処理時の流量に対応する圧力から処理終了後の流量に対応する圧力に所定の時間をかけて、即ち0秒より多くの時間をかけて徐々に減少させることにより、流量を減少させて移動相171を供給し、処理終了後の流量に対応する圧力即ち0MPa又は処理時の流量未満の所定の流量に対応する圧力にして、送液し或いは送液を停止する。
【0132】
処理終了時及び処理準備時の圧力の制御において、圧力の変化がない時間を挿入することは、本発明の効果が損なわれない範囲で挿入することは可能である。このような圧力の変化は、例えばこれに限定されないが、階段状に減少又は増加する変化が挙げられる。又、処理終了時の圧力の制御において圧力が増加する時間を挿入すること、処理準備時の圧力の制御において圧力が減少する時間を挿入することは、本発明の効果が損なわれない範囲で挿入することは可能である。
【実施例
【0133】
以下、本発明の実施例を比較例と比較して説明する。各実施例、比較例及びその結果並びに対応する図の番号を表1に示す。又、送液する流量の時間当たりの変化を線グラフを用いて概念的に示す概念図を図7図31のクロマトグラム以外に示している。この線グラフにおいて、送液する流量の増加の増加率が一定の場合には、右肩上がりの直線で表される。増加率が途中で変化し、夫々が一定の増加率であるが互いに異なる増加率が含まれる場合には、右肩上がりの折れ線で表される。更に、増加率が連続して変化する場合には、曲線で表され、曲線は、増加率が工程の前半に大きく工程の後半に小さい場合には斜め上方向の凸状の曲線で表され、増加率が工程の前半に小さく工程の後半に大きい場合には斜め下方向に凹む凹状の曲線で表される。又、この線グラフにおいて、送液する流量の減少の減少率が一定の場合には、右肩下がりの直線で表される。減少率が途中で変化し、夫々が一定の減少率であるが互いに異なる減少率が含まれる場合には、右肩下がりの折れ線で表される。更に、減少率が連続して変化する場合には、曲線で表され、曲線は、減少率が工程の前半に小さく工程の後半に大きい場合には斜め上方向の凸状の曲線で表され、減少率が工程の前半に大きく工程の後半に小さい場合には斜め下方向に凹む凹状の曲線で表される。尚、送液する流量の時間当たりの増加及び減少がなく、流量が一定の場合には水平方向直線で表される。又、時間の経時的変化がなく流量が増加又は減少する場合には、垂直方向直線で表される。尚、表1及び以下の実施例において、単に「直線」及び「直線状」とは増加率又は減少率が一定であることを意味し、単に「曲線」及び「曲線状」とは増加率又は減少率が連続して変化することを意味している。
【0134】
【表1】
【実施例1】
【0135】
設定温度で平衡化した分離カラム恒温槽内に分離カラムを取り付けた液体クロマトグラフの送液ポンプを用いて、処理準備時として、処理時の流量での送液を開始し、処理時に、分離カラムと送液ポンプを含む液体クロマトグラフ全体が処理時の流量で平衡化した後、試料の注入を行い、試料ピークの溶出を確認した。その後、処理終了時に、送液の停止を、流量が処理時の流量から直線状に減少し、0mL/minになるように制御する操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。1回のサイクルごとにクロマトグラムを3分間採取し、何回目のサイクルで試料ピークの形状が悪化し、分離カラムが劣化したかを確認した。試料ピークの形状が悪化したとする判定の基準は、1本のピークに、明らかに2つ以上のピークトップが現れたと目視で判別出来ることとした。試料ピークの形状が割れたことで、分離カラムが劣化したと判断した。
【0136】
クロマトグラムの採取は、分取用液体クロマトグラフPLC761(ジーエルサイエンス社)を使用し、送液ポンプPU714Mの改造品(ジーエルサイエンス社)を用いて移動相(アセトニトリル/水=30/70,v/v)を20mL/minの流量で送液した。分離カラムはオクタデシル化シリカゲル(Inertsil(登録商標) ODS、粒子径5μm、ジーエルサイエンス社)を充填した内径20mm、長さ5cmの分離カラムを使用した。分離カラム恒温槽CO705C(ジーエルサイエンス社)の設定温度は30℃とした。送液ポンプ吐出側出口の圧力センサの値は、5.0MPaであった。検出には、UV検出器(UV702、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出波長は254nmとした。試料には、3’-フルオロアセトアニリド(20mg/mL)のアセトニトリル/水=30/70溶液を使用した。試料注入容量は50μLとした。送液ポンプPU714Mは、処理準備時、処理終了時等に用いる流量制御用プログラムの解像度を上げるため、タイムテーブルの最小時間単位を、0.01minから0.01sに変更して、更にレスポンスは流量制御用プログラムに迅速に応答し、スムーズで迅速な駆動が出来るように対応して、PU714Mの改造品とした。
【0137】
実施例1-1として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、即ち、処理準備時の時間を0秒として、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量を、20mL/minから同一の減少率で(概念図で直線状に)減少させて10秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。400回目のサイクルで試料ピークが割れた(図7)。
【0138】
実施例1-2として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、即ち、処理準備時の時間を0秒として、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量を、20mL/minから同一の減少率で(概念図で直線状に)減少させて2秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図8)として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。260回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0139】
比較例1として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、即ち、処理準備時の時間を0秒として、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が20mL/minから直ちに0mL/minになるように、即ち、処理終了時の時間を0秒として行う操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。125回目のサイクルで試料ピークが割れ、280回目のサイクルでは試料ピークの形状が大きく崩れた(図9)。
【0140】
比較例2として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直線状に増加して10秒後に処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が20mL/minから直ちに0mL/minになるように行う操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。250回目のサイクルで試料ピークが割れた(図10)。
【0141】
比較例3として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直線状に増加して3秒後に処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が20mL/minから直ちに0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図11)として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。145回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0142】
比較例1では125回目のサイクルで分離カラムが劣化し、比較例2、比較例3では、それぞれ250回目、145回目のサイクルで分離カラムが劣化した。これらに対し、実施例1-1及び実施例1-2では、それぞれ400回目、260回目のサイクルで分離カラムが劣化した。これらの結果から、処理準備時と処理終了時にかける時間を同じとした場合、処理終了時において処理時の流量から処理終了後の流量の0mL/minまで直線状に流量を減少させる、即ち同一の減少率で減少させることによる、分離カラムでのピーク形状を保つ効果の方が、処理準備時において処理準備前の流量の0mL/minから処理時の流量まで直線状に流量を増加させる、即ち同一の増加率で増加させることによる、分離カラムでのピーク形状を保つ効果よりも高いことを確認した。
【0143】
又、比較例2では250回目のサイクルで分離カラムが劣化し、実施例1-2では260回目のサイクルで分離カラムが劣化したことから、処理準備時において処理時の流量まで一定の時間をかけて直線的に流量を増加させることによる、分離カラムでのピーク形状を保つ効果よりも、処理終了時において処理時の流量から上述の一定の時間より短い時間をかけて直線的に流量を減少させることによる、分離カラムでのピーク形状を保つ効果の方が、高いことを確認した。
【実施例2】
【0144】
設定温度で平衡化した分離カラム恒温槽内に分離カラムを取り付けた液体クロマトグラフの送液ポンプを用いて、処理準備時として、処理時の流量での送液を開始し、処理時に、分離カラムと送液ポンプを含む液体クロマトグラフ全体が処理時の流量で平衡化した後、試料の注入を行い、試料ピークの溶出を確認した。その後、処理終了時に、送液の停止を、流量が処理時の流量から曲線を描くように減少し、或いは流量が処理時の流量から直線と曲線を描くように減少し、或いは流量が処理時の流量から勾配の異なる複数の直線を描くように減少し、流量が0mL/minになるように制御する操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。1回のサイクルごとにクロマトグラムを3分間採取し、何回目のサイクルで試料ピークの形状が悪化し、分離カラムが劣化したかを確認した。試料ピークの形状が悪化したとする判定の基準は、1本のピークに、明らかに2つ以上のピークトップが現れたと目視で判別出来ることとした。試料ピークの形状が割れたことで、分離カラムが劣化したと判断した。
【0145】
クロマトグラムの採取は、分取用液体クロマトグラフPLC761(ジーエルサイエンス社)を使用し、送液ポンプPU714Mの改造品(ジーエルサイエンス社)を用いて移動相(アセトニトリル/水=30/70,v/v)を20mL/minの流量で送液した。分離カラムはオクタデシル化シリカゲル(Inertsil(登録商標) ODS、粒子径5μm、ジーエルサイエンス社)を充填した内径20mm、長さ5cmの分離カラムを使用した。分離カラム恒温槽CO705C(ジーエルサイエンス社)の設定温度は30℃とした。送液ポンプ吐出側出口の圧力センサの値は、5.0MPaであった。検出には、UV検出器(UV702、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出波長は254nmとした。試料には、3’-フルオロアセトアニリド(20mg/mL)のアセトニトリル/水=30/70溶液を使用した。試料注入容量は50μLとした。送液ポンプPU714Mは、処理準備時、処理終了時等に用いる流量制御用プログラムの解像度を上げるため、タイムテーブルの最小時間単位を、0.01minから0.01sに変更して、更にレスポンスは流量制御用プログラムに迅速に応答し、スムーズで迅速な駆動が出来るように対応して、PU714Mの改造品とした。
【0146】
実施例2-3として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、即ち、処理準備時の時間を0秒として、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が20mL/minから同一の減少率で(概念図で直線状に)5秒間減少させ、その後流量が0mL/minに近づく程、即ち送液停止時までの時間が短い程緩やかな勾配である曲線を描くように減少し、即ち送液の停止を、流量が20mL/minから10秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図12(a))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。480回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0147】
実施例2-4として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が処理時の流量の20mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように20mL/minから5秒間減少し、その後流量が0mL/minに近づく程直線状に5秒間減少し、即ち送液の停止を、流量が20mL/minから10秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図12(b))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。700回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0148】
実施例2-5として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が処理時の流量の20mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように20mL/minから5秒間減少し、その後流量が0mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように5秒間減少し、即ち送液の停止を、流量が20mL/minから10秒間で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。700回目のサイクルで試料ピークの形状が変化し始め、900回目のサイクルでは試料ピークの割れが顕著になった(図13)。
【0149】
実施例2-6として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が直線状に5秒間減少し、続いて前述の5秒間よりも緩やかな勾配で直線状に5秒間減少し、即ち減少させる所定の時間の前期に比べて後期に小さい減少率で、送液の停止を、流量が20mL/minから10秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図14(a))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。385回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0150】
実施例2-7として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が直線状に5秒間減少し、続いて前述の5秒間よりも急な勾配で直線状に5秒間減少し、即ち減少させる所定の時間の後期に比べて前期に小さい減少率で、送液の停止を、流量が20mL/minから10秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図14(b))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。450回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0151】
実施例2-8として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が直線状に6.7秒間減少し、続いて前述の6.7秒間よりも緩やかな勾配で直線状に3.3秒間減少し、即ち減少させる所定の時間の前期に比べて後期に小さい減少率で、送液の停止を、流量が20mL/minから10秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図14(c))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。390回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0152】
実施例2-9として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が直線状に3.3秒間減少し、続いて前述の3.3秒間よりも急な勾配で直線状に3.4秒間減少し、続いて前述の3.4秒間よりも緩やかな勾配で直線状に3.3秒間減少し、即ち送液の停止を、流量が20mL/minから10秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図14(d))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。680回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0153】
実施例2-10として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が直線状に3.3秒間減少し、続いて前述の3.3秒間よりも急な勾配で直線状に1.7秒間減少し、続いて前述の1.7秒間よりも緩やかな勾配で直線状に1.7秒間減少し、続いて前述の1.7秒間よりも緩やかな勾配で直線状に3.3秒間減少し、即ち送液の停止を、流量が20mL/minから10秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図15(a))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。650回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0154】
実施例2-11として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が直線状に3.3秒間減少し、続いて前述の3.3秒間よりも急な勾配で直線状に1.7秒間減少し、続いて前述の1.7秒間よりも急な勾配で直線状に1.7秒間減少し、続いて前述の1.7秒間よりも緩やかな勾配で直線状に3.3秒間減少し、即ち送液の停止を、流量が20mL/minから10秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図15(b))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。640回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0155】
実施例2-12として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が20mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように4.4秒間減少し、続いて直線状に1.2秒間減少し、その後流量が0mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように4.4秒間減少し、即ち送液の停止を、流量が20mL/minから10秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図15(c))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。895回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0156】
実施例2-13として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が直線状に3.3秒間減少し、続いて前述の3.3秒間よりも緩やかな勾配で直線状に3.4秒間減少し、続いて前述の3.4秒間よりも急な勾配で直線状に3.3秒間減少し、即ち送液の停止を、流量が20mL/minから10秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図15(d))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。400回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0157】
実施例2-3、実施例2-4では、それぞれ480回目、700回目のサイクルで分離カラムが劣化した。これらの結果から、処理終了時として送液停止にかける時間を同じとした場合、流量が処理時の流量に近い程緩やかな勾配である曲線を描くように流量を減少させることによる、分離カラムでのピーク形状を保つ効果の方が、流量が0mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように流量を減少させることによる、分離カラムでのピーク形状を保つ効果よりも高いことを確認した。
【0158】
又、実施例2-6、実施例2-7では、それぞれ385回目、450回目のサイクルで分離カラムが劣化した。これらの結果から、処理終了時として送液停止にかける時間を同じとした場合、流量が処理時の流量に近い前半の方が、0mL/minに近い後半よりも緩やかな勾配であるように直線状に流量を減少させることによる、分離カラムでのピーク形状を保つ効果が、流量が0mL/minに近い後半の方が、処理時の流量に近い前半よりも緩やかな勾配であるように直線状に流量を減少させることによる、分離カラムでのピーク形状を保つ効果よりも高いことを確認した。
【0159】
又、実施例2-8、実施例2-9では、それぞれ390回目、680回目のサイクルで分離カラムが劣化した。これらの結果から、処理終了時として送液停止にかける時間を同じとした場合、緩やかな勾配で直線的に流量を減少させる部分が、処理時の流量に近い前部に入ることにより、分離カラムでのピーク形状を保つ効果が、大きく向上することを確認した。
【0160】
又、実施例2-10、実施例2-11では、それぞれ650回目、640回目のサイクルで分離カラムが劣化した。これらの結果から、処理終了時として送液停止にかける時間を同じとして、緩やかな勾配で直線的に流量を減少させる部分が、処理時の流量に近い前部と0mL/minに近い後部にある場合、分離カラムでのピーク形状を保つ効果はいずれも高く、前部と後部の間の中間部の勾配に変化があっても、分離カラムでのピーク形状を保つ効果には、あまり大きく影響しないことを確認した。
【0161】
又、実施例2-5、実施例2-12では、それぞれ900回目、895回目のサイクルで分離カラムが劣化した。これらの結果から、処理終了時として送液停止にかける時間を同じとした場合、送液ポンプの流量を下げる制御に、処理時の流量に近い程緩やかな勾配を持つ前部、又、0mL/minに近い程緩やかな勾配を持つ後部がある場合、分離カラムでのピーク形状を保つ効果はいずれも高く、前部と後部の間の中間部が直線状であっても曲線状であっても、分離カラムでのピーク形状を保つ効果には、大きく影響しないことを確認した。
【0162】
実施例2-9、実施例2-5では、それぞれ680回目、900回目のサイクルで分離カラムが劣化した。これらの結果から、処理終了時として送液停止にかける時間を同じとした場合、送液停止に用いる流量減少のための送液ポンプ制御のパターンを、直線状から、送液ポンプの流量が処理時の流量に近い程緩やかな勾配である曲線を描くように減少し、その後流量が0mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように減少する曲線状に変更することにより、分離カラムでのピーク形状を保つ効果が大きく向上することを確認した。
【実施例3】
【0163】
設定温度で平衡化した分離カラム恒温槽内に分離カラムを取り付けた液体クロマトグラフの送液ポンプを用いて、処理準備時として、処理時の流量での送液を開始し、処理時に、分離カラムと送液ポンプを含む液体クロマトグラフ全体が処理時の流量で平衡化した後、試料の注入を行い、試料ピークの溶出を確認した。その後、処理終了時として、送液の停止を、流量が処理時の流量から曲線を描くように減少し、0mL/minになるように制御する操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。1回のサイクルごとにクロマトグラムを3分間採取し、何回目のサイクルで試料ピークの形状が悪化し、分離カラムが劣化したかを確認した。試料ピークの形状が悪化したとする判定は、1本のピークに、明らかに2つ以上のピークトップが現れたと目視で判別出来ることとした。試料ピークの形状が割れたことで、分離カラムが劣化したと判断した。
【0164】
クロマトグラムの採取は、分取用液体クロマトグラフPLC761(ジーエルサイエンス社)を使用し、送液ポンプPU714Mの改造品(ジーエルサイエンス社)を用いて移動相(アセトニトリル/水=30/70,v/v)を20mL/minの流量で送液した。分離カラムはオクタデシル化シリカゲル(Inertsil(登録商標) ODS、粒子径5μm、ジーエルサイエンス社)を充填した内径20mm、長さ5cmの分離カラムを使用した。分離カラム恒温槽CO705C(ジーエルサイエンス社)の設定温度は30℃とした。送液ポンプ吐出側出口の圧力センサの値は、5.0MPaであった。検出には、UV検出器(UV702、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出波長は254nmとした。試料には、3’-フルオロアセトアニリド(20mg/mL)のアセトニトリル/水=30/70溶液を使用した。試料注入容量は50μLとした。送液ポンプPU714Mは、処理準備時、処理終了時等に用いる流量制御用プログラムの解像度を上げるため、タイムテーブルの最小時間単位を、0.01minから0.01sに変更して、更にレスポンスは流量制御用プログラムに迅速に応答し、スムーズで迅速な駆動が出来るように対応して、PU714Mの改造品とした。
【0165】
実施例3-14として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに20mL/minになるように送液を行い、即ち、処理準備時の時間を0秒として、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が20mL/minに近い程、即ち送液停止時までの時間が短い程緩やかな勾配である曲線を描くように2.5秒間減少し、その後流量が0mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように2.5秒間減少し、即ち送液の停止を、流量が20mL/minから5秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図16(a))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。500回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0166】
実施例3-15として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が20mL/minの処理時の流量に近い程緩やかな勾配である曲線を描くように1秒間減少し、その後流量が0mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように1秒間減少し、即ち送液の停止を、流量が20mL/minから2秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図16(b))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。300回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0167】
実施例3-14、実施例3-15では、それぞれ500回目、300回目のサイクルで分離カラムが劣化した。又、実施例2-5では、900回目のサイクルで分離カラムが劣化した。これらの結果から、送液停止に用いる流量減少のための送液ポンプ制御のパターンを同じ曲線状として、送液停止にかける時間を変化させた場合、より長い時間の方が、分離カラムでのピーク形状を保つ効果が高いことを確認した。
【実施例4】
【0168】
設定温度で平衡化した分離カラム恒温槽内に分離カラムを取り付けた液体クロマトグラフの送液ポンプを用いて、処理準備時に、送液ポンプの流量が曲線を描くように増加して処理時の流量になるように送液し、処理時に、分離カラムと送液ポンプを含む液体クロマトグラフ全体が処理時の流量で平衡化した後、試料の注入を行い、試料ピークの溶出を確認した。その後、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が処理時の流量から直ちに0mL/minになるように、即ち、処理終了時の時間を0秒として制御する操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。1回のサイクルごとにクロマトグラムを3分間採取し、何回目のサイクルで試料ピークの形状が悪化し、分離カラムが劣化したかを確認した。試料ピークの形状が悪化したとする判定の基準は、1本のピークに、明らかに2つ以上のピークトップが現れたと目視で判別出来ることとした。試料ピークの形状が割れたことで、分離カラムが劣化したと判断した。
【0169】
クロマトグラムの採取は、分取用液体クロマトグラフPLC761(ジーエルサイエンス社)を使用し、送液ポンプPU714Mの改造品(ジーエルサイエンス社)を用いて移動相(アセトニトリル/水=30/70,v/v)を20mL/minの流量で送液した。分離カラムはオクタデシル化シリカゲル(Inertsil(登録商標) ODS、粒子径5μm、ジーエルサイエンス社)を充填した内径20mm、長さ5cmの分離カラムを使用した。分離カラム恒温槽CO705C(ジーエルサイエンス社)の設定温度は30℃とした。送液ポンプ吐出側出口の圧力センサの値は、5.0MPaであった。検出には、UV検出器(UV702、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出波長は254nmとした。試料には、3’-フルオロアセトアニリド(20mg/mL)のアセトニトリル/水=30/70溶液を使用した。試料注入容量は50μLとした。送液ポンプPU714Mは、処理準備時、処理終了時等に用いる流量制御用プログラムの解像度を上げるため、タイムテーブルの最小時間単位を、0.01minから0.01sに変更して、更にレスポンスは流量制御用プログラムに迅速に応答し、スムーズで迅速な駆動が出来るように対応して、PU714Mの改造品とした。
【0170】
実施例4-16として、処理準備時に、処理準備時の前半に、送液ポンプの流量が0mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように0mL/minから5秒間増加し、その後処理準備時の後半に、流量が処理時の流量の20mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように5秒間増加し、即ち送液の開始を、流量が0mL/minから10秒で20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が20mL/minから直ちに0mL/minになるように行う操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。300回目のサイクルで試料ピークが割れた(図17)。
【0171】
実施例4-17として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように0mL/minから2.5秒間増加し、その後流量が処理時の流量の20mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように2.5秒間増加し、即ち送液の開始を、流量が0mL/minから5秒後に20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が20mL/minから直ちに0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図18(a))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。250回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0172】
実施例4-18として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように0mL/minから1.5秒間増加し、その後流量が処理時の流量の20mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように1.5秒間増加し、即ち送液の開始を、流量が0mL/minから3秒後に処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が20mL/minから直ちに0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図18(b))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。170回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0173】
実施例4-16、実施例4-17、実施例4-18では、それぞれ300回目、250回目、170回目のサイクルで分離カラムが劣化した。これらの結果から、送液開始に用いる流量増加のための送液ポンプ制御のパターンを同じ曲線状として、処理準備時として送液開始にかける時間を変化させた場合、より長い時間の方が、分離カラムでのピーク形状を保つ効果が高いことを確認した。
【0174】
実施例4-16では300回目、比較例2では250回目のサイクルで分離カラムが劣化した。これらの結果から、処理準備時として送液開始にかける時間を同じとして、送液開始に用いる流量増加のための送液ポンプ制御のパターンを、直線状から、送液ポンプの流量が0mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように増加し、その後流量が処理時の流量に近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように増加する曲線状に変更することにより、分離カラムでのピーク形状を保つ効果が向上することを確認した。
【実施例5】
【0175】
設定温度で平衡化した分離カラム恒温槽内に分離カラムを取り付けた液体クロマトグラフの送液ポンプを用いて、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから曲線を描くように増加して処理時の流量になるように送液し、処理時に、分離カラムと送液ポンプを含む液体クロマトグラフ全体が処理時の流量で平衡化した後、試料の注入を行い、試料ピークの溶出を確認した後、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が曲線を描くように減少して0mL/minになるように制御する操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。1回のサイクルごとにクロマトグラムを3分間採取し、何回目のサイクルで試料ピークの形状が悪化し、分離カラムが劣化したかを確認した。又、分離カラムを取り付けた液体クロマトグラフと送液ポンプを用いて、送液ポンプの流量が0mL/minから直線状に増加して処理時の流量になるように送液し、分離カラムと送液ポンプを含む液体クロマトグラフ全体が処理時の流量で平衡化した後、試料の注入を行い、試料ピークの溶出を確認した後、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が直線状に減少して0mL/minになるように制御する操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。1回のサイクルごとにクロマトグラムを3分間採取し、何回目のサイクルで試料ピークの形状が悪化し、分離カラムが劣化したかを確認した。試料ピークの形状が悪化したとする判定の基準は、1本のピークに、明らかに2つ以上のピークトップが現れたと目視で判別出来ることとした。試料ピークの形状が割れたことで、分離カラムが劣化したと判断した。
【0176】
クロマトグラムの採取は、分取用液体クロマトグラフPLC761(ジーエルサイエンス社)を使用し、送液ポンプPU714Mの改造品(ジーエルサイエンス社)を用いて移動相(アセトニトリル/水=30/70,v/v)を20mL/minの流量で送液した。分離カラムはオクタデシル化シリカゲル(Inertsil(登録商標) ODS、粒子径5μm、ジーエルサイエンス社)を充填した内径20mm、長さ5cmの分離カラムを使用した。分離カラム恒温槽CO705C(ジーエルサイエンス社)の設定温度は30℃とした。送液ポンプ吐出側出口の圧力センサの値は、5.0MPaであった。検出には、UV検出器(UV702、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出波長は254nmとした。試料には、3’-フルオロアセトアニリド(20mg/mL)のアセトニトリル/水=30/70溶液を使用した。試料注入容量は50μLとした。送液ポンプPU714Mは、処理準備時、処理終了時等に用いる流量制御用プログラムの解像度を上げるため、タイムテーブルの最小時間単位を、0.01minから0.01sに変更して、更にレスポンスは流量制御用プログラムに迅速に応答し、スムーズで迅速な駆動が出来るように対応して、PU714Mの改造品とした。
【0177】
実施例5-19として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように0mL/minから5秒間増加し、その後流量が処理時の流量の20mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように5秒間増加し、即ち送液の開始を、流量が0mL/minから10秒後に20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が20mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように20mL/minから5秒間減少し、その後流量が0mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように5秒間減少し、即ち送液の停止を、流量が20mL/minから10秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。1000回目のサイクルでも試料ピークは割れなかった(図19)。
【0178】
実施例5-20として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直線状に増加して10秒で処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行い、試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が20mL/minから直線状に減少して10秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図20(a))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。500回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0179】
実施例5-21として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように0mL/minから1.5秒間増加し、その後流量が処理時の流量の20mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように1.5秒間増加し、即ち送液の開始を、流量が0mL/minから3秒後に20mL/minになるように送液を行い、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が20mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように20mL/minから1秒間減少し、その後流量が0mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように1秒間減少し、即ち送液の停止を、流量が20mL/minから2秒後に0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図20(b))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。400回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0180】
実施例5-20では500回目のサイクルで分離カラムが劣化した。実施例5-19では1000回目のサイクルでも分離カラムの劣化は見られなかった。これらの結果から、処理準備時としての送液開始にかける時間を同じとして、送液開始に用いる流量増加のための送液ポンプ制御のパターンを、直線状から、送液ポンプの流量が0mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように増加し、その後流量が処理時の流量に近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように増加する曲線状に変更することと同時に、処理終了時としての送液停止にかける時間を同じとして、送液停止に用いる流量減少のための送液ポンプ制御のパターンを、直線状から、送液ポンプの流量が処理時の流量に近い程緩やかな勾配である曲線を描くように減少し、その後流量が0mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように減少する曲線状に変更することにより、分離カラムでのピーク形状を保つ効果が大きく向上することを確認した。
【0181】
実施例5-19では1000回目のサイクルでも分離カラムの劣化は見られなかった。実施例5-21では400回目のサイクルで分離カラムが劣化した。これらの結果から、送液開始に用いる流量増加のための送液ポンプ制御のパターンを同じ曲線状として、処理準備時としての送液開始にかける時間を変化させ、加えて送液停止に用いる流量減少のための送液ポンプ制御のパターンを同じ曲線状として、処理終了時としての送液停止にかける時間を変化させた場合、送液開始にかける時間と送液停止にかける時間のいずれもより長い時間の方が、分離カラムでのピーク形状を保つ効果が高いことを確認した。
【実施例6】
【0182】
設定温度で平衡化した分離カラム恒温槽内に分離カラムを取り付けた液体クロマトグラフの送液ポンプを用いて、処理時に、処理時の流量での送液を開始し、分離カラムと送液ポンプを含む液体クロマトグラフ全体が処理時の流量で平衡化した後、試料の注入を行った。試料ピークの溶出を確認した後、処理終了時に、送液の停止を、流量が部分的に曲線を描くように減少して0mL/minになるように制御する操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。1回のサイクルごとにクロマトグラムを3分間採取し、何回目のサイクルで試料ピークの形状が悪化し、分離カラムが劣化したかを確認した。試料ピークの形状が悪化したとする判定の基準は、1本のピークに、明らかに2つ以上のピークトップが現れたと目視で判別出来ることとした。試料ピークの形状が割れたことで、分離カラムが劣化したと判断した。
【0183】
クロマトグラムの採取は、分取用液体クロマトグラフPLC761(ジーエルサイエンス社)を使用し、送液ポンプPU714Mの改造品(ジーエルサイエンス社)を用いて移動相(アセトニトリル/水=30/70,v/v)を20mL/minの流量で送液した。分離カラムはオクタデシル化シリカゲル(Inertsil(登録商標) ODS、粒子径5μm、ジーエルサイエンス社)を充填した内径20mm、長さ5cmの分離カラムを使用した。分離カラム恒温槽CO705C(ジーエルサイエンス社)の設定温度は30℃とした。送液ポンプ吐出側出口の圧力センサの値は、5.0MPaであった。検出には、UV検出器(UV702、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出波長は254nmとした。試料には、3’-フルオロアセトアニリド(20mg/mL)のアセトニトリル/水=30/70溶液を使用した。試料注入容量は50μLとした。送液ポンプPU714Mは、処理準備時、処理終了時等に用いる流量制御用プログラムの解像度を上げるため、タイムテーブルの最小時間単位を、0.01minから0.01sに変更して、更にレスポンスは流量制御用プログラムに迅速に応答し、スムーズで迅速な駆動が出来るように対応して、PU714Mの改造品とした。
【0184】
実施例6-22として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、即ち、処理準備時の時間を0秒として、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が20mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように20mL/minから1秒間減少し、流量が10mL/minに達した後直ちに流量が0mL/minになるように減少し、即ち送液の停止を、流量が20mL/minから1秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図21(a))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。255回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0185】
実施例6-23として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が20mL/minから直ちに10mL/minに減少し、その後0mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように10mL/minから1秒間減少し、即ち送液の停止を、流量が20mL/minから1秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図21(b))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。175回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0186】
実施例6-22、実施例6-23では、それぞれ255回目、175回目のサイクルで分離カラムが劣化した。これらの結果から、処理終了時としての送液停止にかける時間を同じとした場合、流量が処理時の流量に近い程緩やかな勾配である曲線を描くように流量を減少させることによる、分離カラムでのピーク形状を保つ効果の方が、流量が0mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように流量を減少させることによる、分離カラムでのピーク形状を保つ効果よりも高いことを確認した。
【実施例7】
【0187】
設定温度で平衡化した分離カラム恒温槽内に分離カラムを取り付けた液体クロマトグラフの送液ポンプを用いて、処理準備時に、送液ポンプの流量が部分的に曲線を描くように増加して処理時の流量になるように送液し、処理時に、分離カラムと送液ポンプを含む液体クロマトグラフ全体が処理時の流量で平衡化した後、試料の注入を行った。試料ピークの溶出を確認した後、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が直ちに0mL/minになるように、即ち、処理終了時の時間を0秒として制御する操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。1回のサイクルごとにクロマトグラムを3分間採取し、何回目のサイクルで試料ピークの形状が悪化し、分離カラムが劣化したかを確認した。試料ピークの形状が悪化したとする判定の基準は、1本のピークに、明らかに2つ以上のピークトップが現れたと目視で判別出来ることとした。試料ピークの形状が割れたことで、分離カラムが劣化したと判断した。
【0188】
クロマトグラムの採取は、分取用液体クロマトグラフPLC761(ジーエルサイエンス社)を使用し、送液ポンプPU714Mの改造品(ジーエルサイエンス社)を用いて移動相(アセトニトリル/水=30/70,v/v)を20mL/minの流量で送液した。分離カラムはオクタデシル化シリカゲル(Inertsil(登録商標) ODS、粒子径5μm、ジーエルサイエンス社)を充填した内径20mm、長さ5cmの分離カラムを使用した。分離カラム恒温槽CO705C(ジーエルサイエンス社)の設定温度は30℃とした。送液ポンプ吐出側出口の圧力センサの値は、5.0MPaであった。検出には、UV検出器(UV702、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出波長は254nmとした。試料には、3’-フルオロアセトアニリド(20mg/mL)のアセトニトリル/水=30/70溶液を使用した。試料注入容量は50μLとした。送液ポンプPU714Mは、処理準備時、処理終了時等に用いる流量制御用プログラムの解像度を上げるため、タイムテーブルの最小時間単位を、0.01minから0.01sに変更して、更にレスポンスは流量制御用プログラムに迅速に応答し、スムーズで迅速な駆動が出来るように対応して、PU714Mの改造品とした。
【0189】
実施例7-24として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように0mL/minから1秒間増加し、その後流量が10mL/minに達した後直ちに処理時の流量の20mL/minになるように、即ち送液の開始を、流量が0mL/minから1秒後に20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が20mL/minから直ちに0mL/minになるように、即ち、処理終了時の時間を0秒として行う操作を1回のサイクル(図22(a))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。155回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0190】
実施例7-25として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに10mL/minになるように送液を行い、その後処理時の流量の20mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように1秒間増加するように、即ち送液の開始を、流量が0mL/minから1秒後に20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行い、試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が20mL/minから直ちに0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図22(b))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。150回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0191】
実施例7-24、実施例7-25では、それぞれ155回目、150回目のサイクルで分離カラムが劣化した。これらの結果から、処理準備時としての送液開始にかける時間を同じとした場合、送液開始において流量が0mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように流量を増加させることによる、分離カラムでのピーク形状を保つ効果の方が、送液開始において流量が処理時の流量に近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように流量を増加させることによる、分離カラムでのピーク形状を保つ効果よりも高いことを確認した。
【実施例8】
【0192】
設定温度で平衡化した分離カラム恒温槽内に分離カラムを取り付けた液体クロマトグラフの送液ポンプを用いて、処理準備時に、分離カラムに処理時の流量での送液を開始し、処理時に、分離カラムと送液ポンプを含む液体クロマトグラフ全体が処理時の流量で平衡化した後、試料の注入を行った。試料ピークの溶出を確認した後、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が曲線を描くように減少し、或いは流量が直線と曲線を描くように減少し、0mL/minになるように制御する操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。1回のサイクルごとにクロマトグラムを3分間採取し、何回目のサイクルで試料ピークの形状が悪化し、分離カラムが劣化したかを確認した。又、分離カラムを取り付けた液体クロマトグラフの送液ポンプを用いて、送液ポンプの流量が曲線を描くように増加して処理時の流量になるように送液し、分離カラムと送液ポンプを含む液体クロマトグラフ全体が処理時の流量で平衡化した後、試料の注入を行い、試料ピークの溶出を確認した後、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が直ちに0mL/minになるように制御する操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。1回のサイクルごとにクロマトグラムを3分間採取し、何回目のサイクルで試料ピークの形状が悪化し、分離カラムが劣化したかを確認した。試料ピークの形状が悪化したとする判定の基準は、1本のピークに、明らかに2つ以上のピークトップが現れたと目視で判別出来ることとした。試料ピークの形状が割れたことで、分離カラムが劣化したと判断した。
【0193】
クロマトグラムの採取は、分取用液体クロマトグラフPLC761(ジーエルサイエンス社)を使用し、送液ポンプPU714Mの改造品(ジーエルサイエンス社)を用いて移動相(アセトニトリル/水=30/70,v/v)を20mL/minの流量で送液した。分離カラムはオクタデシル化シリカゲル(Inertsil(登録商標) ODS、粒子径5μm、ジーエルサイエンス社)を充填した内径20mm、長さ5cmの分離カラムを使用した。分離カラム恒温槽CO705C(ジーエルサイエンス社)の設定温度は30℃とした。送液ポンプ吐出側出口の圧力センサの値は、5.0MPaであった。検出には、UV検出器(UV702、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出波長は254nmとした。試料には、3’-フルオロアセトアニリド(20mg/mL)のアセトニトリル/水=30/70溶液を使用した。試料注入容量は50μLとした。送液ポンプPU714Mは、処理準備時、処理終了時等に用いる流量制御用プログラムの解像度を上げるため、タイムテーブルの最小時間単位を、0.01minから0.01sに変更して、更にレスポンスは流量制御用プログラムに迅速に応答し、スムーズで迅速な駆動が出来るように対応して、PU714Mの改造品とした。
【0194】
実施例8-26として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の20mL/minになるように、即ち、処理準備時の時間を0秒として、送液を行った。処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行い、試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が20mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように20mL/minから2.2秒間減少し、その後直線状に0.6秒間減少し、その後流量が10mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように2.2秒間減少し、その後送液ポンプの流量が10mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように10mL/minから2.2秒間減少し、その後直線状に0.6秒間減少し、その後流量が0mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように2.2秒間減少し、即ち送液の停止を、流量が20mL/minから10秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図23(a))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。550回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0195】
実施例8-27として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行い、試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が20mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように20mL/minから2.5秒間減少し、その後流量が10mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように2.5秒間減少し、その後送液ポンプの流量が10mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように10mL/minから2.5秒間減少し、その後流量が0mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように2.5秒間減少し、即ち送液の停止を、流量が20mL/minから10秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図23(b))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。555回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0196】
実施例8-28として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように0mL/minから2.5秒間増加し、その後流量が10mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように2.5秒間増加し、その後送液ポンプの流量が10mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように10mL/minから2.5秒間増加し、その後流量が処理時の流量の20mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように2.5秒間増加し、即ち送液の開始を、流量が0mL/minから10秒で20mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量20mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行い、試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が20mL/minから直ちに0mL/minになるように、即ち、処理終了時の時間を0秒として行う操作を1回のサイクル(図23(c))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。330回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0197】
又、実施例8-26、実施例8-27では、それぞれ550回目、555回目のサイクルで分離カラムが劣化した。これらの結果から、処理終了時としての送液停止にかける時間を同じとして、処理時の流量に近い程緩やかな勾配を持つ前部、又、処理時の流量の半分の流量に近い程緩やかな勾配を持つ後部がある曲線と、処理時の流量の半分の流量に近い程緩やかな勾配を持つ前部、又、0mL/minに近い程緩やかな勾配を持つ後部を持つ曲線が組み合わされた曲線を描くような制御により送液ポンプが停止される場合、それぞれの曲線の中間部が直線状であっても曲線状であっても、分離カラムでのピーク形状を保つ効果には、大きく影響しないことを確認した。
【実施例9】
【0198】
設定温度で平衡化した分離カラム恒温槽内に分離カラムを取り付けた液体クロマトグラフの送液ポンプを用いて、処理準備時に、送液ポンプの流量が曲線を描くように増加して処理時の流量になるように送液し、処理時に、分離カラムと送液ポンプを含む液体クロマトグラフ全体が処理時の流量で平衡化した後、試料の注入を行った。試料ピークの溶出を確認した後、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が曲線を描くように0mL/minになる制御を行う操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。1回のサイクルごとにクロマトグラムを20分間採取し、何回目のサイクルで試料ピークの形状が悪化し、分離カラムが劣化したかを確認した。試料ピークの形状が悪化したとする判定は、1本のピークに、明らかに2つ以上のピークトップが現れたと目視で判別出来ることとした。試料ピークの形状が割れたことで、分離カラムが劣化したと判断した。
【0199】
クロマトグラムの採取は、分取用液体クロマトグラフPLC761(ジーエルサイエンス社)を使用し、送液ポンプPU718Bの改造品(ジーエルサイエンス社)を用いて移動相(アセトニトリル/水=45/55)を1000mL/minの流量で送液した。分離カラムはオクタデシル化シリカゲル(Inertsil(登録商標) ODS、粒子径10μm、ジーエルサイエンス社)を充填した内径200mm、長さ30cmの分離カラムを使用した。分離カラム恒温槽であるウォーターバスの設定温度は30℃とした。検出には、UV検出器(UV702、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出波長は254nmとした。試料には、3’-フルオロアセトアニリド(20mg/mL)のアセトニトリル/水=45/55溶液を使用した。試料注入容量は2500μLとした。送液ポンプPU718Bは、処理準備時、処理終了時等に用いる流量制御用プログラムの解像度を上げるため、タイムテーブルの最小時間単位を、0.01minから0.01sに変更して、更にレスポンスは流量制御用プログラムに迅速に応答し、スムーズで迅速な駆動が出来るように対応して、PU718Bの改造品とした。
【0200】
実施例9-29として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように0mL/minから5秒間増加し、その後流量が処理時の流量の1000mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように5秒間増加し、即ち送液の開始を、流量が0mL/minから10秒後に1000mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量1000mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行い、試料注入から20分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が1000mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように1000mL/minから5秒間減少し、その後流量が0mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように5秒間減少し、即ち送液の停止を、流量が1000mL/minから10秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図24)として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、20分間行い、試料ピークの溶出を確認した。1000回目のサイクルでも試料ピークは割れなかった。
【0201】
比較例4として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の1000mL/minになるように送液を行い、即ち、処理準備時の時間を0秒として、処理時に、流量1000mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行い、試料注入から20分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が1000mL/minから直ちに0mL/minになるように、即ち、処理終了時の時間を0秒として行う操作を1回のサイクル(図25(a))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、20分間行い、試料ピークの溶出を確認した。130回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0202】
比較例5として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直線状に増加して10秒後に処理時の流量の1000mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量1000mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行い、試料注入から20分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が1000mL/minから直ちに0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図25(b))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、20分間行い、試料ピークの溶出を確認した。300回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【実施例10】
【0203】
設定温度で平衡化した分離カラム恒温槽内に分離カラムを取り付けた液体クロマトグラフの送液ポンプを用いて、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから曲線を描くように増加して処理時の流量になるように送液し、処理時に、分離カラムと送液ポンプを含む液体クロマトグラフ全体が処理時の流量で平衡化した後、試料の注入を行った。試料ピークの溶出を確認した後、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が処理時の流量から曲線を描くように0mL/minになる制御を行う操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。1回のサイクルごとにクロマトグラムを3分間採取し、何回目のサイクルで試料ピークの形状が悪化し、分離カラムが劣化したかを確認した。試料ピークの形状が悪化したとする判定の基準は、1本のピークに、明らかに2つ以上のピークトップが現れたと目視で判別出来ることとした。試料ピークの形状が割れたことで、分離カラムが劣化したと判断した。
【0204】
クロマトグラムの採取は、分析用液体クロマトグラフLC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、分析用液体クロマトグラフLC800に付属する送液ポンプの改造品を用いて移動相(アセトニトリル/水=20/80,v/v)を0.4mL/minの流量で送液した。分離カラムはオクチル化シリカゲル(InertSustainSwift(登録商標) C8、1.9μm、ジーエルサイエンス社)を充填した内径2.1mm、長さ2cmの分離カラムを使用した。分析用液体クロマトグラフLC800に付属する分離カラム恒温槽の設定温度は40℃とした。検出には、UV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出波長は254nmとした。試料には、3’-フルオロアセトアニリド(100mg/L)のアセトニトリル/水=20/80溶液を使用した。試料注入容量は0.5μLとした。分析用液体クロマトグラフLC800に付属する送液ポンプは、処理準備時、処理終了時等に用いる流量制御用プログラムの解像度を上げるため、タイムテーブルの最小時間単位を、0.01minから0.01sに変更して、更にレスポンスは流量制御用プログラムに迅速に応答し、スムーズで迅速な駆動が出来るように対応して、LC800に付属する送液ポンプの改造品とした。
【0205】
実施例10-30として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように0mL/minから5秒間増加し、その後流量が処理時の流量の0.4mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように5秒間増加し、即ち送液の開始を、流量が0mL/minから10秒で0.4mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量0.4mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行い、試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が0.4mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように0.4mL/minから5秒間減少し、その後流量が0mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように5秒間減少し、即ち送液の停止を、流量が0.4mL/minから10秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図26)として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。1000回目のサイクルでも試料ピークは割れなかった。
【0206】
比較例6として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の0.4mL/minになるように送液を行い、即ち、処理準備時の時間を0秒として、処理時に、流量0.4mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行い、試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が0.4mL/minから直ちに0mL/minになるように、即ち、処理終了時の時間を0秒として行う操作を1回のサイクル(図27(a))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。120回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0207】
比較例7として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直線状に増加し、10秒後に処理時の流量の0.4mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量0.4mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行い、試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が0.4mL/minから直ちに0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図27(b))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。290回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【実施例11】
【0208】
設定温度で平衡化した分離カラム恒温槽内に分離カラムを取り付けた液体クロマトグラフの送液ポンプを用いて、処理準備時に、送液ポンプの流量が曲線を描くように0mL/minから増加して処理時の流量になるように送液し、処理時に、分離カラムと送液ポンプを含む液体クロマトグラフ全体が処理時の流量で平衡化した後、試料の注入を行った。試料ピークの溶出を確認した後、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が処理時の流量から曲線を描くように0mL/minになる制御を行う操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。1回のサイクルごとにクロマトグラムを3分間採取し、何回目のサイクルで試料ピークの形状が悪化し、分離カラムが劣化したかを確認した。試料ピークの形状が悪化したとする判定の基準は、1本のピークに、明らかに2つ以上のピークトップが現れたと目視で判別出来ることとした。試料ピークの形状が割れたことで、分離カラムが劣化したと判断した。
【0209】
クロマトグラムの採取は、分析用液体クロマトグラフLC800(ジーエルサイエンス社)を使用し、分析用液体クロマトグラフLC800に付属する送液ポンプの改造品を用いて移動相(アセトニトリル/水=20/80,v/v)を0.05mL/minの流量で送液した。分離カラムはオクタデシル化シリカゲル(Inertsil(登録商標) ODS、5μm、ジーエルサイエンス社)を充填した内径1.0mm、長さ1cmの分離カラムを使用した。分析用液体クロマトグラフLC800に付属する分離カラム恒温槽の設定温度は40℃とした。検出には、UV検出器(MU701、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出波長は254nmとした。試料には、3’-フルオロアセトアニリド(100mg/L)のアセトニトリル/水=20/80溶液を使用した。試料注入容量は0.5μLとした。分析用液体クロマトグラフLC800に付属する送液ポンプは、処理準備時、処理終了時等に用いる流量制御用プログラムの解像度を上げるため、タイムテーブルの最小時間単位を、0.01minから0.01sに変更して、更にレスポンスは流量制御用プログラムに迅速に応答し、スムーズで迅速な駆動が出来るように対応して、LC800に付属する送液ポンプの改造品とした。
【0210】
実施例11-31として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように0mL/minから5秒間増加し、その後流量が処理時の流量の0.05mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように5秒間増加し、即ち送液の開始を、流量が0mL/minから10秒後に0.05mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量0.05mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が0.05mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように0.05mL/minから5秒間減少し、その後流量が0mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように5秒間減少し、即ち送液の停止を、流量が0.05mL/minから10秒後に0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図28)として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。1000回目のサイクルでも試料ピークは割れなかった。
【0211】
比較例8として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直ちに処理時の流量の0.05mL/minになるように送液を行い、即ち、処理準備時の時間を0秒として、処理時に、流量0.05mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行い、試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が0.05mL/minから直ちに0mL/minになるように、即ち、処理終了時の時間を0秒として行う操作を1回のサイクル(図29(a))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。105回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0212】
比較例9として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直線状に増加して10秒後に処理時の流量の0.05mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量0.05mL/minで液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行い、試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が0.05mL/minから直ちに0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図29(b))として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。270回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【実施例12】
【0213】
設定温度で平衡化した分離カラム恒温槽内に分離カラムを取り付けた液体クロマトグラフの送液ポンプを用いて、処理準備時に、送液ポンプ吐出側出口に設置された圧力センサで検出される圧力が0.0MPaから曲線を描くように増加して処理時の流量に対応する圧力になるように送液し、処理時に、分離カラムと送液ポンプを含む液体クロマトグラフ全体が処理時の流量で平衡化した後、試料の注入を行い、試料ピークの溶出を確認した後、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプに設置された圧力センサで検出される圧力が曲線を描くように減少して0.0MPaになるように制御する操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。1回のサイクルごとにクロマトグラムを3分間採取し、何回目のサイクルで試料ピークの形状が悪化し、分離カラムが劣化したかを確認した。試料ピークの形状が悪化したとする判定の基準は、1本のピークに、明らかに2つ以上のピークトップが現れたと目視で判別出来ることとした。試料ピークの形状が割れたことで、分離カラムが劣化したと判断した。
【0214】
クロマトグラムの採取は、分取用液体クロマトグラフPLC761(ジーエルサイエンス社)を使用し、送液ポンプPU714Mの改造品(ジーエルサイエンス社)を用いて移動相(アセトニトリル/水=30/70,v/v)を送液ポンプ吐出側出口の圧力が5.0MPaに対応する流量で送液した。分離カラムはオクタデシル化シリカゲル(Inertsil(登録商標) ODS、5μm、ジーエルサイエンス社)を充填した内径20mm、長さ5cmの分離カラムを使用した。分離カラム恒温槽CO705C(ジーエルサイエンス社)の設定温度は30℃とした。検出には、UV検出器(UV702、ジーエルサイエンス社)を使用した。検出波長は254nmとした。試料には、3’-フルオロアセトアニリド(20mg/mL)のアセトニトリル/水=30/70溶液を使用した。試料注入容量は50μLとした。PU714Mは、処理準備時、処理終了時等に用いる圧力利用流量制御用プログラムの解像度を上げるため、タイムテーブルの最小時間単位を、0.01minから0.01sに変更して、更にレスポンスは圧力利用流量制御用プログラムに迅速に応答し、スムーズで迅速な駆動が出来るように対応して、PU714Mの改造品とした。
【0215】
実施例12-32として、処理準備時に、送液ポンプ吐出側出口に設置された圧力センサで検出される圧力が0.0MPaに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように0.0MPaから5秒間増加し、その後圧力が5.0MPaに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように5秒間増加し、即ち送液の開始を、圧力が0.0MPaから10秒後に5.0MPaになるように送液を行い、処理時に、圧力5.0MPaに対応する流量で液体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から3分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプに設置された圧力センサで検出される圧力が5.0MPaに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように5.0MPaから5秒間減少し、その後圧力が0.0MPaに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように5秒間減少し、即ち送液の停止を、圧力が5.0MPaから10秒後に0.0MPaになるように行う操作を1回のサイクル(図30)として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、3分間行い、試料ピークの溶出を確認した。1000回目のサイクルでも試料ピークは割れなかった。
【0216】
実施例12-32では1000回目のサイクルでも分離カラムの劣化は見られなかった。実施例5-19においても、1000回目のサイクルでも分離カラムの劣化は見られなかった。これらの結果から、処理準備時に、送液開始に用いる流量増加のための送液ポンプ制御のパターンを、送液ポンプの流量が0mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように増加し、その後流量が処理時の流量に近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように増加することと同時に、処理終了時に、送液停止に用いる流量減少のための送液ポンプ制御のパターンを、送液ポンプの流量が処理時の流量に近い程緩やかな勾配である曲線を描くように減少し、その後流量が0mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように減少することにより得られる、分離カラムでのピーク形状を保つ効果と、処理準備時としての送液開始にかける時間と処理終了時としての送液停止にかける時間を同じとして、処理準備時に、送液開始に用いる圧力増加のための送液ポンプ制御のパターンを、送液ポンプに設置された圧力センサで検出される圧力が0.0MPaに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように増加し、その後圧力が処理時の流量に対応した圧力に近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように増加することと同時に、送液停止に用いる圧力減少のための送液ポンプ制御のパターンを、送液ポンプに設置された圧力センサで検出される圧力が処理時の流量に対応した圧力に近い程緩やかな勾配である曲線を描くように減少し、その後圧力が0.0MPaに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように減少することにより得られる、分離カラムでのピーク形状を保つ効果は、同等であることを確認した。
【実施例13】
【0217】
設定温度で平衡化した分離カラム恒温槽内に分離カラムを取り付けた超臨界流体クロマトグラフの送液ポンプを用いて、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから曲線を描くように増加して処理時の流量になるように送液し、処理時に、分離カラムと送液ポンプを含む超臨界流体クロマトグラフ全体が処理時の流量で平衡化した後、試料の注入を行い、試料ピークの溶出を確認した後、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が曲線を描くように減少して0mL/minになるように制御する操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。1回のサイクルごとにクロマトグラムを3分間採取し、何回目のサイクルで試料ピークの形状が悪化し、分離カラムが劣化したかを確認した。試料ピークの形状が悪化したとする判定の基準は、1本のピークに、明らかに2つ以上のピークトップが現れたと目視で判別出来ることとした。試料ピークの形状が割れたことで、分離カラムが劣化したと判断した。
【0218】
超臨界流体クロマトグラムの採取は、超臨界流体クロマトグラフ(超臨界流体クロマトグラフィー装置)を使用し、送液ポンプを用いて移動相(二酸化炭素/メタノール)を15mL/minの流量で送液した。移動相中のメタノールの比率を増やすグラジエントは、メタノールの比率を5%から10分間で40%になるように行った。分離カラムは粒子径5μmのジエチルアミノ化シリカゲルを合成、充填した内径10mm、長さ5cmの分離カラムを使用した。分離カラム恒温槽の設定温度は40℃とした。検出には、UV検出器を使用し、検出波長は254nmとした。検出器の下流に設置した背圧調整弁の調整圧力は10.0MPaとした。送液ポンプ吐出側出口に設置された圧力センサで検出された圧力は、11.0MPaであった。試料には、カフェイン(100mg/mL)のメタノール/水=50/50溶液を使用した。試料注入容量は50μLとした。
【0219】
実施例13-33として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように0mL/minから5秒間増加し、その後流量が処理時の流量の15mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように5秒間増加し、即ち送液の開始を、流量が0mL/minから10秒後に15mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量15mL/minで超臨界流体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行った。試料注入から10分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が15mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように15mL/minから5秒間減少し、その後流量が0mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように5秒間減少し、即ち送液の停止を、流量が15mL/minから10秒で0mL/minになるように行う操作を1回のサイクル(図31)として繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、10分間行い、試料ピークの溶出を確認した。300回目のサイクルでも試料ピークは割れなかった。
【0220】
比較例10として、処理準備時に、送液ポンプの流量が0mL/minから直線状に増加して10秒後に処理時の流量の15mL/minになるように送液を行い、処理時に、流量15mL/minで超臨界流体クロマトグラフ全体が平衡化した後、試料の注入を行い、試料注入から10分後に、処理終了時に、送液の停止を、送液ポンプの流量が15mL/minから直ちに0mL/minになるように、即ち、処理終了時の時間を0秒として行う操作を1回のサイクルとして繰り返し行った。クロマトグラムの採取は、試料の注入時から開始し、10分間行い、試料ピークの溶出を確認した。150回目のサイクルで試料ピークが割れた。
【0221】
以上の結果より、以下のことがわかる。即ち、実施例1-1及び比較例2の結果から、処理準備時と処理終了時を同じ時間とした場合、送液停止において処理時の流量から0mL/minまで直線状に流量を下げることによる、分離カラムでのピーク形状を保つ効果の方が、送液開始において0mL/minから処理時の流量まで直線状に流量を上げることによる、分離カラムでのピーク形状を保つ効果よりも高いことがわかった。
【0222】
又、実施例2の結果から、処理終了時としての送液停止にかける時間を同じとした場合、処理時の流量に近い部分で緩やかな勾配の直線状或いは処理時の流量に近い程緩やかな勾配の曲線状に流量を下げるように送液ポンプを制御すると、分離カラムでのピーク形状を保つ効果が高まる傾向があることがわかった。
【0223】
又、実施例2の結果から、処理終了時としての送液停止にかける時間を同じとした場合、処理時の流量に近い部分で緩やかな勾配の直線状或いは処理時の流量に近い程緩やかな勾配の曲線状に流量を下げるように送液ポンプを制御し、更に0mL/minに近い部分で緩やかな勾配の直線状或いは0mL/minに近い程緩やかな勾配の曲線状に流量を下げるように送液ポンプを制御すると、分離カラムでのピーク形状を保つ効果が更に高まる傾向があることがわかった。
【0224】
又、実施例2の結果から、処理終了時にかける時間を同じとした場合、送液ポンプの流量を下げる制御に、処理時の流量に近い程緩やかな勾配を持つ前部、又、0mL/minに近い程緩やかな勾配を持つ後部がある場合、分離カラムでのピーク形状を保つ効果が更に高まる傾向があることがわかった。
【0225】
又、実施例2と実施例3の結果から、処理終了時の送液ポンプの流量を減少させる制御に用いる曲線のパターンを同じとし、処理終了時としての送液停止にかける時間を変化させた場合、より長い時間の方が、分離カラムでのピーク形状を保つ効果が高いことがわかった。
【0226】
又、実施例4の結果から、処理準備時の、送液ポンプの流量を増加させる制御に用いる曲線のパターンを同じとし、処理準備時の時間を変化させた場合、より長い時間の方が、分離カラムでのピーク形状を保つ効果が高いことがわかった。
【0227】
又、実施例1と実施例2の結果から、処理終了時の時間を同じとした場合、送液ポンプの流量を処理時の流量から0mL/minに減少させる制御を直線状に行った結果に比べ、送液ポンプの流量を処理時の流量に近い程緩やかな勾配の曲線を描くように減少させ、その後0mL/minに近い程緩やかな勾配の曲線を描くように減少させた結果は、分離カラムでのピーク形状を保つ効果が900/400=2.25倍であった。
【0228】
又、比較例2及び比較例3と実施例4の結果から、処理準備時の時間を同じとした場合、送液ポンプの流量を0mL/minから処理時の流量に増加させる制御を直線状に行った結果に比べ、送液ポンプの流量を0mL/minに近い程緩やかな勾配の曲線を描くように増加させ、その後処理時の流量に近い程緩やかな勾配の曲線を描くように増加させた結果は、分離カラムでのピーク形状を保つ効果が300/250=1.2倍、170/145=1.17倍と、約1.2倍であった。
【0229】
又、実施例5の結果から、送液開始と送液停止にかける時間即ち処理準備時と処理終了時を同じ時間とした場合、処理準備時に送液ポンプの流量を0mL/minから処理時の流量に増加させる制御を直線状に行い、且つ処理終了時に送液ポンプの流量を処理時の流量から0mL/minに減少させる制御を直線状に行った結果に比べ、処理準備時に送液ポンプの流量を0mL/minから処理時の流量に増加させる制御を、送液ポンプの流量を0mL/minに近い程緩やかな勾配の曲線を描くように増加させ、その後処理時の流量に近い程緩やかな勾配の曲線を描くように増加させ、且つ処理終了時に送液ポンプの流量を処理時の流量から0mL/minに減少させる制御を、送液ポンプの流量を処理時の流量に近い程緩やかな勾配の曲線を描くように減少させ、その後0mL/minに近い程緩やかな勾配の曲線を描くように減少させた結果は、分離カラムでのピーク形状を保つ効果が1000/500=2倍以上であった。
【0230】
又、実施例6の結果から、処理終了時としての送液停止にかける時間を同じとした場合、処理時の流量に近い程緩やかな勾配である曲線を描くように流量を減少させることによる、分離カラムでのピーク形状を保つ効果の方が、0mL/minに近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように流量を減少させることによる、分離カラムでのピーク形状を保つ効果よりも高いことが分かった。
【0231】
又、実施例7の結果から、処理準備時としての送液開始にかける時間を同じとした場合、0mL/minに近い程緩やかな勾配である曲線を描くように流量を増加させることによる、分離カラムでのピーク形状を保つ効果の方が、処理時の流量に近づく程緩やかな勾配である曲線を描くように流量を増加させることによる、分離カラムでのピーク形状を保つ効果よりも高いことが分かった。
【0232】
又、実施例8の結果から、処理終了時としての送液停止にかける時間を同じとし、処理時の流量に近い程緩やかな勾配を持つ前部、又、処理時の流量の半分の流量に近い程緩やかな勾配を持つ後部がある曲線と、処理時の流量の半分の流量に近い程緩やかな勾配を持つ前部、又、0mL/minに近い程緩やかな勾配を持つ後部を持つ曲線が2つ組み合わされた曲線を描くように流量を減少させる場合、それぞれの曲線の中間部が直線状であっても曲線状であっても、分離カラムでのピーク形状を保つ効果には、大きく影響しないことが分かった。
【0233】
又、実施例1~8にて内径20mm、長さ5cmの分離カラムを使い確認した、送液停止と送液開始に用いた送液ポンプの流量の制御による分離カラムでのピーク形状を保つ効果は、実施例9、実施例10、実施例11の結果から、分離カラムの内径が1.0mmから200mm、分離カラムの長さが1cmから30cmの範囲内の分離カラムについて、同様に得られることが分かった。
【0234】
又、実施例5の結果と実施例12の結果から、送液停止と送液開始に用いた送液ポンプの流量の制御による分離カラムでのピーク形状を保つ効果と、送液停止と送液開始に用いた送液ポンプの吐出側出口に設置された圧力センサで検出される圧力の制御による分離カラムでのピーク形状を保つ効果は、送液ポンプの制御方法以外の条件が同じである場合には、同等であることが分かった。
【0235】
上記の実施例において、分離カラム劣化の判定に統一基準として、試料中の成分のピークの2本以上へのピーク割れを採用したが、分離カラムの劣化により現れるピーク形状の変化はこれに限定されるものではなく、ピークのテーリングやリーディング等も含み、本発明の効果として、ピークのテーリングやリーディング等を生じさせる分離カラムの劣化を防ぐことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0236】
以上のような本発明によれば、特に液体クロマトグラフィー又は超臨界流体クロマトグラフィーにおいて、分離カラム内における充填剤の充填状態の変化を抑制し、分離カラムの分離性能の低下を抑制することが可能となったので、分離カラムを用いた物質の分析、分取、分離を必要とする多くの産業で有効に使用することが出来る。
【符号の説明】
【0237】
1 液体クロマトグラフ
10 液体クロマトグラフ制御装置
17 移動相容器
171 移動相
2 分離カラム
30 試料注入装置
5 送液装置
51 送液ポンプ
52 送液ポンプ制御装置
6 配管
61 流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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